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特許7402152イン・ビトロおよびイン・ビボにおける組織伝導の増強のための導電性安息香酸系ポリマー含有生体材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】イン・ビトロおよびイン・ビボにおける組織伝導の増強のための導電性安息香酸系ポリマー含有生体材料
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/18 20060101AFI20231213BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20231213BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20231213BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20231213BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20231213BHJP
   A61N 1/06 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/22
A61L27/52
A61L27/56
A61N1/36
A61N1/06
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020504001
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 CA2018050914
(87)【国際公開番号】W WO2019018942
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】62/537,755
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レン-ケ、リ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529177(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025958(WO,A1)
【文献】Macromol. Biosci.,2012年,Vol.12,pp.241-250
【文献】Biosensors,2014年,Vol.4,pp.370-386
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
A61N 1/00- 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる生体適合性導電性生体材料であって、前記導電性ポリマーはアミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマー(但し、AMBAポリマーからポリ(アミノメトキシ安息香酸-co-アニリン)を除く)を含んでなり、ここで、前記導電性ポリマーが前記生体適合性成分の1以上のアミノ基に結合しており、生体適合性成分が、ゼラチンである、生体適合性導電性生体材料。
【請求項2】
AMBAが、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸(3-4-AMBA)、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸(4-2-AMBA)、4-アミノ-3-メトキシ安息香酸(4-3-AMBA)、2-アミノ-5-メトキシ安息香酸(2-5-AMBA)および2-アミノ-4-メトキシ安息香酸(2-4-AMBA)並びにそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項3】
生体適合性成分が、合成生成物を含んでなる、請求項1または2に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項4】
生体適合性成分が、生分解性合成ポリマーである、請求項3に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項5】
生体材料が、液体溶液、ヒドロゲル、膜、3Dパッチもしくはスポンジ、シートまたは移植用メッシュである、請求項1~4のいずれか一項に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項6】
生体材料が、ヒドロゲルである、請求項5に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項7】
前記ヒドロゲルが架橋されている、請求項6に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項8】
生体適合性導電性生体材料が、10-6S/cm以上、10-5S/cm以上、10-4S/cm以上、10-3S/cm以上または10-2S/cm以上の伝導率を有する、あるいは、生体適合性導電性生体材料が、導電性ポリマーを含まない対照生体材料よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍または少なくとも10倍高い伝導率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項9】
導電性ポリマーと生体適合性成分のモル比が、30:1~60:1である、請求項1~8のいずれか一項に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項10】
1以上の培養培地および心筋細胞をさらに含んでなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項11】
AMBAポリマーがアミノメトキシ安息香酸(AMBA)からなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の生体適合性導電性生体材料。
【請求項12】
アミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマー(但し、AMBAポリマーからポリ(アミノメトキシ安息香酸-co-アニリン)を除く)およびゼラチンを含んでなる、導電性ヒドロゲルであって、AMBAポリマーが、ゼラチンの1以上のアミノ基に結合している、導電性ヒドロゲル。
【請求項13】
1以上の培養培地および心筋細胞をさらに含んでなる、請求項12に記載の導電性ヒドロゲル。
【請求項14】
ヒドロゲルが、10-6S/cm以上、10-5S/cm以上、10-4S/cm以上、10-3S/cm以上または10-2S/cm以上の伝導率を有する、あるいは、ヒドロゲルが、AMBAポリマーを含まないゼラチンヒドロゲルよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍または少なくとも10倍高い伝導率を有する、請求項12または13に記載の導電性ヒドロゲル。
【請求項15】
ヒドロゲルの含水量が、前記ヒドロゲルの80重量%~90重量%である、請求項12~14のいずれか一項に記載の導電性ヒドロゲル。
【請求項16】
AMBAポリマーがアミノメトキシ安息香酸(AMBA)からなる、請求項12~15のいずれか一項に記載の導電性ヒドロゲル。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載の生体適合性導電性生体材料または請求項12~16のいずれか一項に記載の導電性ヒドロゲルを利用した、デバイス。
【請求項18】
デバイスが電極を含んでなる植込み型デバイスである、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
デバイスが心臓ペースメーカーまたは植込み型除細動器である、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
電極を含んでなる植込み型デバイスと、導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる生体適合性導電性生体材料と、装着時に前記生体適合性導電性生体材料が前記電極を囲むように前記デバイスを装着するための説明書とを含んでなる、キットであって、前記導電性ポリマーはアミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマー(但し、AMBAポリマーからポリ(アミノメトキシ安息香酸-co-アニリン)を除く)を含んでなり、ここで、前記導電性ポリマーが前記生体適合性成分の1以上のアミノ基に結合しており、生体適合性成分がゼラチンである、キット。
【請求項21】
植込み型デバイスがペースメーカーまたはICDである、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
AMBAポリマーがアミノメトキシ安息香酸(AMBA)からなる、請求項20または21に記載のキット。
【請求項23】
心臓の病態の寛解または処置に使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の生体適合性導電性生体材料、請求項12~16のいずれか一項に記載のヒドロゲル、請求項17~19のいずれか一項に記載のデバイスまたは請求項20~22のいずれか一項に記載のキット。
【請求項24】
心筋梗塞、虚血心筋、心筋線維症、心不全、房室ブロック、不整脈、徐脈および伝導異常から選択される心臓の病態の寛解または処置に使用するための、請求項23に記載の生体適合性導電性生体材料、ヒドロゲル、デバイスまたはキット。
【請求項25】
心臓の病態が、心臓手術に起因する、心臓の病態の寛解または処置に使用するための、請求項24に記載の生体適合性導電性生体材料、ヒドロゲル、デバイスまたはキット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年7月27日に出願された米国仮出願第62/537,755号の優先権の利益を主張する特許協力条約出願であり、その全体が引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、心臓インパルスの電位を保有することができる生体適合性導電性生体材料に関する。本開示はまた、導電性生体材料を用いた処置に関する。本開示はまた、導電性生体材料を用いたデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
房室ブロック(AVB)などの心臓電気伝導の遅延および遮断は、生命を脅かす調律異常および心不全のリスクを増大させる重篤な臨床状態と関連している[1]。標準治療は、同調性を人工的に回復させるための電子ペースメーカーに頼っている。しかしながら、心突然死の死亡率は、依然として主要な臨床的問題である。
【0004】
伝導系は再生しないため、永久的人工ペースメーカーがAVBに対する現在の治療法となっている。これは、症候性の徐脈に対する現在の治療法でもある。ペースメーカーは、患者の生存および生活の質を変革しているが、それらの制限は明らかであり、例えば、リードおよび電源の寿命が限られていることが挙げられる[2]。
【0005】
それらの限られた寿命のために、患者は、最初の植込み後に消耗したペースメーカーを交換するために、2回目の手術を受ける必要がある場合がある[2]。ペースメーカー閾値は、心臓ペースメーカーにおけるエネルギー消費と関連する重要なパラメーターであり[8,9]、閾値を減少させ得るいずれかの新規な技術が、心臓ペースメーカーのエネルギーの節約に有益である。
【0006】
ペースメーカーの機能を改善するために、多くの技術が開発されている。多孔質電極チップは、ペーシング閾値を減少させるために開発された[14]。ステロイド溶出チップは、炎症性応答を低下させ、次に、局所線維化を減少させ、低い刺激閾値をもたらす[15]。炭素チップ電極も、ペーシング閾値を減少させるために使用された[16]。これらの改変は有効であるが、バッテリー寿命は依然として限られており、心筋インピーダンスをさらに減少させ、ペースメーカー刺激の閾値を下げるために、さらなる技法が必要である。
【0007】
さらに、ペースメーカーにより示される活性化パターンは、生理的なものではない。右心室ペーシングは、適当なインパルス伝播をもたらさず、左心室ペーシングは、心室収縮の正常な順序を回復しない場合がある。従って、新たな治療戦略が必要である。過去10年間で、電子ペースメーカーの代替としてのバイオ人工ペースメーカーを製造するために、種々の遺伝子および細胞に基づく手法が探究されている[3]。静止心筋細胞をペースメーカー細胞に変換し、イン・ビボ(in vivo)での心臓における自発的な律動性の電気活動を生じさせるために、遺伝子改変が用いられている[4~6]。Choiらは、AVBの誘発後に右心房と右心室の間にラットにおいて植え込まれた細胞播種コラーゲンパッチを設計した。光学マッピングは、設計された心臓の3分の1が、確立された電気的AV伝導を有し、これは移植片が破壊されたときに消失したことを示した[7]。これらの研究データは、心臓の同期的収縮および組織工学によって作製された生体材料と天然心筋との電気的統合、並びに刺激に反応した収縮の適時の活性化を確実なものにするために、新規の技術が必要であることを示唆した。
【0008】
心筋梗塞は、世界的に死亡率および罹病率に寄与する主要な臨床的問題である。先端医学療法は、心臓発作後の患者の80%超を救う。しかしながら、ほとんどの生存者は、心筋線維症に続発する心筋細胞の壊死のために、心不整脈を有する。心筋における線維性組織は、大きな伝導抵抗を有する。従って、心筋線維性組織と正常心筋の間の不均等な伝導は、マイクロリエントリー経路を介した致死的心室頻脈性不整脈をもたらし、心臓突然死に至る。薬物療法は、有効性が限られている。
【0009】
導電性生体材料は、電気を伝達する有機生体材料のクラスである。それらの導電性特性は、電気化学的に増強することができる。導電性ポリマー(ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、およびポリ3-4-エチレンジオキシチオフェンなど)の可逆的酸化は、それらの伝導率を増加させ得るが、それでも酸化還元安定性を維持し得る。これらの導電性ポリマーは、バイオプローブとしての使用、神経再生の刺激、薬物の徐放、および人工筋肉に関して現在評価中である。
【0010】
過去数十年間で、梗塞領域を安定化し、MI後の瘢痕の菲薄化および心室拡張を予防するまたは遅延させるために、フィブリン、コラーゲンおよびヒアルロン酸を含む種々の生体材料が使用されている[11~13]。電子ペースメーカーの代替としてのバイオ人工ペースメーカーを製造するために、遺伝子および細胞に基づく手法が探究されている[3~7]。しかしながら、これらの生体材料のいずれも、導電性ではない。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、心筋梗塞および他の心臓関連病態を含む導電性関連異常の心臓の病態を処置できる生体適合性導電性生体材料に関する。
【0012】
一つの態様では、本開示は、導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる生体適合性導電性生体材料に関する。導電性ポリマーは、アミノメトキシ安息香酸(AMBA)などの安息香酸で重合することができる。生体適合性成分は、多糖、タンパク質またはポリペプチド、例えばゼラチンを含み得る。生体適合性導電性生体材料は、例えば、導電性ヒドロゲル、膜、3Dパッチもしくはスポンジ、シートまたは移植用メッシュに組み込まれ得るか、あるいは製造され得る。
【0013】
別の態様では、本開示は、心臓の病態を処置する方法に関し、前記方法は、生体適合性導電性生体材料を心臓に導入することを含んでなり、ここで、前記生体材料は、導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる。心臓の病態は、心筋梗塞、虚血心筋、心筋線維症、心不整脈、心不全、房室ブロック(AVB)、および/または他の伝導異常を含み得る。本開示はまた、個体における心臓の病態を処置するための生体適合性導電性生体材料の使用に関し、ここで、前記生体材料は、導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の生体適合性生体材料の1つを利用したペースメーカーデバイスに関する。
【0015】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、本開示の趣旨および範囲内での種々の変更および改変は、この詳細な説明から当業者に明らかとなるため、詳細な説明および具体例は、本開示の好ましい態様を示す一方で、単に例示として示されることが理解されるべきである。
本発明は以下の通りである。
[1]導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる生体適合性導電性生体材料であって、前記導電性ポリマーはアミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマーを含んでなり、ここで、前記導電性ポリマーが前記生体適合性成分に結合している、生体適合性導電性生体材料。
[2]AMBAが、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸(3-4-AMBA)、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸(4-2-AMBA)、4-アミノ-3-メトキシ安息香酸(4-3-AMBA)、2-アミノ-5-メトキシ安息香酸(2-5-AMBA)および2-アミノ-4-メトキシ安息香酸(2-4-AMBA)並びにそれらの混合物から選択される、上記[1]に記載の生体適合性導電性生体材料。
[3]生体適合性成分が、ゼラチン、キトサン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩並びにそれらの誘導体および混合物から選択されるか、あるいは、生体適合性成分が、合成生成物、場合により、生分解性合成ポリマーを含んでなる、上記[1]または[2]に記載の生体適合性導電性生体材料。
[4]生体適合性成分が、ゼラチンであるか、あるいはゼラチンを含んでなる、上記[3]に記載の生体適合性導電性生体材料。
[5]導電性ポリマーが、生体適合性成分に共有結合的に結合している、上記[1]~[5]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料。
[6]生体材料が、液体溶液、ヒドロゲル、膜、3Dパッチもしくはスポンジ、シートまたは移植用メッシュである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料。
[7]生体材料が、ヒドロゲルであり、場合により、前記ヒドロゲルが架橋されている、上記[1]~[6]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料。
[8]生体適合性導電性生体材料が、約10 -6 S/cm以上、約10 -5 S/cm以上、約10 -4 S/cm以上、約10 -3 S/cm以上または約10 -2 S/cm以上の伝導率を有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料。
[9]生体適合性導電性生体材料が、導電性ポリマーを含まない対照生体材料よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍または少なくとも10倍高い伝導率を有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料。
[10]導電性ポリマーと生体適合性成分のモル比が、約30:1~約60:1である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料。
[11]1以上の培養培地および心筋細胞をさらに含んでなる、上記[1]~[10]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料。
[12]アミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマーおよびゼラチンを含んでなり、場合により、1以上の培養培地および心筋細胞をさらに含んでなる、導電性ヒドロゲル。
[13]AMBAポリマーが、ゼラチンの1以上のアミノ基に結合している、上記[12]に記載の導電性ヒドロゲル。
[14]ヒドロゲルが、約10 -6 S/cm以上、10 -5 S/cm以上、約10 -4 S/cm以上、約10 -3 S/cm以上または10 -2 S/cm以上の伝導率を有する、上記[12]または[13]に記載の導電性ヒドロゲル。
[15]ヒドロゲルが、AMBAポリマーを含まないゼラチンヒドロゲルよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍または少なくとも10倍高い伝導率を有する、上記[12]または[13]に記載の導電性ヒドロゲル。
[16]ヒドロゲルの含水量が、前記ヒドロゲルの約80重量%~約90重量%である、上記[12]~[15]のいずれかに記載の導電性ヒドロゲル。
[17]上記[1]~[10]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料または上記[11]~[16]のいずれかに記載の導電性ヒドロゲルを利用した、デバイス。
[18]電極を含んでなる植込み型デバイスである、上記[17]に記載のデバイス。
[19]生体適合性導電性生体材料または導電性ヒドロゲルにより少なくとも部分的に被覆された少なくとも1つの電極を含んでなる、上記[18]に記載のデバイス。
[20]心臓ペースメーカー、場合により、シングルチャンバーペースメーカー、デュアルチャンバーペースメーカーまたは両心室ペースメーカーである、上記[17]~[19]のいずれかに記載のデバイス。
[21]植込み型除細動器である、上記[17]~[19]のいずれかに記載のデバイス。
[22]電極を含んでなる植込み型デバイス、場合により、ペースメーカーまたはICDと、導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる生体適合性導電性生体材料(前記導電性ポリマーはアミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマーを含んでなる)と、装着時に前記生体適合性導電性生体材料が前記電極を囲むように前記デバイスを装着するための説明書とを含んでなる、キット。
[23]心臓の病態の寛解または処置方法であって、生体適合性導電性生体材料を、それを必要とする対象の心臓に導入することを含んでなり、ここで、前記生体適合性導電性生体材料は導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなり、前記導電性ポリマーはアミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマーを含んでなる、方法。
[24]生体適合性導電性生体材料が、心臓の患部の中または上に導入される、上記[23]に記載の方法。
[25]心臓の病態が、場合により心臓手術に起因する、心筋梗塞、虚血心筋、心筋線維症、心不全、房室ブロック、不整脈、徐脈または伝導異常である、上記[23]または[24]に記載の方法。
[26]生体適合性導電性生体材料が、無処置対照と比較して、約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上または約10倍以上、場合により最大約20倍、心臓伝導率を増加させるためのものである、上記[23]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27]生体適合性導電性生体材料が、対象の心拍を順次同期化するためのものである、上記[23]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28]心臓の病態が房室ブロックであり、生体適合性導電性生体材料が房室伝導あるいは心臓弁置換後の心臓手術に起因する心臓の病態を回復させるためのものである、上記[25]に記載の方法。
[29]心臓の病態が心筋線維症であり、生体適合性導電性生体材料が線維性瘢痕組織の中または上に導入される、上記[25]に記載の方法。
[30]生体適合性導電性生体材料が、心不整脈の発生を低減させるためのものである、上記[29]に記載の方法。
[31]生体適合性導電性生体材料が、心臓ペースメーカーのペーシング閾値を減少させるためのものである、および/または、対象における心臓ペーシングに対する心筋反応性を増大させるためのものである、上記[23]~[30]のいずれかに記載の方法。
[32]対象の心臓に挿入されたペースメーカーの電極に隣接して生体適合性導電性生体材料を導入することを含んでなる、上記[31]に記載の方法。
[33]生体適合性導電性生体材料が、ペースメーカーの電極の周囲を被覆している、上記[32]に記載の方法。
[34]生体適合性導電性生体材料が、無処置対照と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍または少なくとも5倍、心臓ペーシング閾値電圧を減少させるためのものである、上記[23]~[33]のいずれかに記載の方法。
[35]生体適合性導電性生体材料が、無処置対照の心臓のペースを調整するペースメーカーと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%、心臓活動電位を増加させるためのものである、上記[23]~[34]のいずれかに記載の方法。
[36]生体適合性導電性生体材料が、無処置対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%、心臓伝導速度を増加させるためのものである、上記[23]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37]生体適合性導電性生体材料が、無処置対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%、QT間隔持続時間および/または心臓活動電位持続時間を減少させるためのものである、上記[23]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38]対象が、哺乳動物、場合により、ラット、マウスまたはヒトである、上記[23]~[37]のいずれかに記載の方法。
[39]上記[1]~[10]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料または上記[11]~[16]のいずれかに記載のヒドロゲルの製造方法であって、前記方法は、導電性ポリマーと生体適合性成分を結合させることを含んでなり、前記導電性ポリマーは、アミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマーを含んでなる、方法。
[40]AMBAとゼラチンを組み合わせること、AMBAとゼラチンを重合させてAMBA結合ゼラチンを製造すること、およびAMBA結合ゼラチンを架橋すること、またはAMBA結合ゼラチンを冷却することを含んでなる、ゼラチンを含んでなるヒドロゲルを製造するための、上記[39]に記載の方法。
[41]AMBAおよびゼラチンを、APSを用いて重合させる、上記[39]または[40]に記載の方法。
[42]AMBA結合ゼラチンを、EDCを用いて架橋させる、上記[39]~[42]のいずれかに記載の方法。
[43]培養培地および/または心筋細胞を加えること並びに心筋細胞を成長させることをさらに含んでなる、いずれかに記載の方法。
[44]心臓の病態、場合により、本明細書に記載の心臓の病態を寛解させるまたは処置するための、上記[1]~[11]のいずれかに記載の生体適合性導電性生体材料、上記[12]~[16]のいずれかに記載のヒドロゲル、上記[17]~[21]のいずれかに記載のデバイスまたは上記[22]に記載のキットの使用。
[45]心臓の病態、場合により、本明細書に記載の心臓の病態を寛解させるまたは処置するための、上記[12]~[16]のいずれかに記載の導電性ヒドロゲル、前記導電性ヒドロゲルを含んでなるデバイスまたは前記ヒドロゲルを製造するためのキットの使用。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に記載の態様をより理解するため、また、それらをいかに実行に移すかを明確に示すために、少なくとも1つの例示的態様を示す添付図面を単に例であるが参照に用いる。図面中、
図1図1は、ゼラチンおよび3-アミノ-4-メトキシ安息香酸(3-4-AMBA)モノマーの過硫酸アンモニウム(APS)による重合に次いで、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)による架橋反応を行い、3-4-AMBA-ゼラチンヒドロゲルを形成したことを示す概略図を示す。
図2図2は、ゼラチンおよびAMBA-ゼラチンまたはAMBA-ゼラチンスポンジの伝導率測定を示す。AMBA-ゼラチンまたはゼラチンを1.5cm×1.5cmディッシュに入れ、伝導率を試験した。(A)生体材料の抵抗(R)の測定に用いた装置の概略図。各電極間の距離は1.5cmである。伝導率(S/cmで測定)は、1/(2πDR)として算出され、ここで、Dはプローブ間の距離(mm)であり、R=V/Iであり、Iは供給電流(mA)であり、Vは対応する電圧(mV)である。(B)AMBA-ゼラチンは、ゼラチン群と比較して、約5倍高い伝導率を有する(**p<0.01、n=72)。(C)ゼラチンスポンジ(ゲルフォーム(登録商標))(ゲルフォーム、左)、ゲルフォーム(登録商標)と混合したAMBA(AMBA+ゲルフォーム、中央)および過硫酸アンモニウム(APS)による処理後のゲルフォーム(登録商標)と結合したAMBA(AMBA-ゲルフォーム、右)。(D)過硫酸アンモニウムによる処理後のゲルフォーム(登録商標)と結合したAMBAは、ゲルフォーム(登録商標)またはゲルフォーム(登録商標)と混合したAMBAと比較して、高い伝導率を有する。
図3図3は、ゼラチンと比較した、ポリマー3-4-AMBA、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸(4-2-AMBA)、4-アミノ-3-メトキシ安息香酸(4-3-AMBA)、2-アミノ-5-メトキシ安息香酸(2-5-AMBA)、および2-アミノ-4-メトキシ安息香酸(2-4-AMBA)の伝導率測定を示す(**p<0.01)。
図4図4は、イン・ビボにおける房室ブロックラット(AVB)モデルを示す。(A)正常ラットにおける代表的な生の体表面ECGトレース。各心房波「A」(灰色の矢印で同定)の後に、心室波「V」(黒色の矢印で同定)が認められた。(B)AVブロックラットにおける代表的な生の体表面ECGトレース。心房波「A」および心室波「V」は、ABVラットにおいて離れていた。「A」波の後に「V」波は認められなかった。(C)正常およびAVブロックラットの平均PP間隔。群間にPP間隔の有意差は認められなかった。(D)正常およびAVブロックラットの平均RR間隔。AVブロックラットは、正常ラットよりも有意に長いRR間隔を有していた(**p<0.01、n=5)。P=P波;R=R波。
図5図5は、3-4-AMBA-ゼラチン注射部位の局在を示す。AMBA-ゼラチンは、AV結節領域(丸)に注射された。
図6図6(A)は、ゼラチンおよび3-4-AMBA-ゼラチン注射ラットの平均心房レート(BPM)を示す。エタノール注射およびゼラチン処理の前または後のいずれかにおいて、群間に有意差は認められなかった。図6(B)は、ゼラチンおよびAMBA-ゼラチン注射ラットの平均心室レート(BPM)を示す。エタノール注射の前または後において、群間に有意差は認められなかった。しかしながら、AMBA-ゼラチン注射は、AVB心拍を正常近くまで回復させ、心拍は、ゼラチン単独注射ラットのものよりも有意に高い(P<0.01、n=6)。
図7図7は、電流を心臓生体電気に変換し、かつ電流刺激に対する心筋反応性を増大させる3-4-AMBA-ゼラチンを示す。図7(a)イン・ビトロ(in vitro)実験の概略図。図7(b) (a)に概略を示したアッセイの写真。ECGを用いて、活動電位を検出した。図7(cおよびd)10mV刺激下での、ゼラチン(c)およびAMBA-ゼラチン(d)群においてECGにより検出された活動電位。図7(e) 図7(a)に概略を示したアッセイの写真。多電極アレイ(MEA)を用いて、伝導速度を検出した。図7(fおよびg)MEAにより取得された信号は、300mV刺激下でのゼラチン(f)およびAMBA-ゼラチン(g)群における伝導を示した。図7(hおよびi)様々な電圧刺激下の場合の、ゼラチンに付着された心房心筋と比較して、有意に高い活動電位振幅(h)および伝導速度(i)を示すAMBA-ゼラチンに付着された心房心筋(n=6/群、*P<0.05)。
図8図8は、3-4-AMBA-ゼラチンは、ランゲンドルフ単離ラット心臓モデルにおける心臓ペーシング閾値電圧を減少させたことを示す。図8(a)ランゲンドルフ単離ラット心臓モデルの写真。単離された心臓を基準線で塗られたマットに置き、カソード電極を心尖近くのAMBA-ゼラチン領域に挿入し、アノード電極をカソード電極から約1.5cm離れたクレブス・ヘンゼライト緩衝液(KHB)に挿入した。ECGを用いて、心臓の電気活動を記録した。図8(b)AMBA-ゼラチン-電極ペーシングは、正常ペーシングまたはゼラチン-電極ペーシングと比較して、有意に低い閾値電圧を示した(n=6/群、*電極との比較でP<0.05、#ゼラチンとの比較でP<0.05)。図8(c)0.5v正常電極ペーシング下での代表的なECGトレース。刺激および心調律は、相互に独立していた。詳細なECGトレースは、ボックスに示した。図8(dおよびe)0.5v正常電極ペーシング下での代表的な光学マッピング結果。電極を心尖近くに挿入した(d)。活性化マップ(e)は、刺激は心臓のペースを調整しなかったが、局所脱分極を誘発したことを示した。活性化の方向は、黒色の矢印により同定される。図8(f)0.5vゼラチン-電極ペーシング下での代表的なECGトレース。刺激および心調律は、相互に独立していた。ECGトレースの詳細は、ボックスに示した。図8(gおよびh)0.5vゼラチン-電極ペーシング下での代表的な光学マッピング結果。電極を心尖近くのゼラチン注射領域に挿入した(g)。活性化マップ(h)は、刺激は心臓のペースを調整せず、ゼラチン注射領域が高ノイズを示したことを示した。活性化の方向は、黒色の矢印により同定した。図8(i)0.5v AMBA-ゼラチン-電極ペーシング下での代表的なECGトレース。刺激は心臓全体の脱分極の誘発に成功し、心臓はペーシング調律下であった。ECGトレースの詳細は、ボックスに示す。図8(jおよびk)0.5v AMBA-電極ペーシング下での代表的な光学マッピング結果。電極を心尖近くのAMBA-ゼラチン注射領域に挿入した(j)。活性化マップ(k)は、刺激は心臓のペース調整に成功し、ペースメーカー点(矢印の尾により同定された領域)は刺激を受けた際にAMBA-ゼラチン注射領域に変化したことを示した。活性化の方向は、黒色の矢印により同定される。
図9図9は、3-4-AMBA-ゼラチンは、ランゲンドルフ単離ラット心臓モデルにおけるペーシング電気生理学的性能を改善したことを示す。図9(a~c)5vペーシングでの正常電極(a)、ゼラチン-電極(b)およびAMBA-ゼラチン-電極(c)の代表的なECGトレース。Q-T波の持続時間は縦棒により同定され、刺激は黒色の矢印により同定される。図9(d)AMBA-ゼラチン-電極ペーシングは、正常電極ペーシングまたはゼラチン-電極ペーシングと比較して、有意に減少した相対Q-T波持続時間を示した(n=6/群、*電極との比較でP<0.05)。図9(e)5v刺激での直接電極、ゼラチン-電極およびAMBA-ゼラチン-電極下での光学マッピングにおける代表的な80%活動電位持続時間(APD)マップ。電極、ゼラチンおよびAMBA-ゼラチン注射領域は、矢印により同定される。図9(f)5vペーシングでの正常電極およびゼラチン-電極は、洞調律と比較して有意に高いAPD時間を示したが、一方、AMBA-ゼラチンペーシングは、差を示さなかった(n=6/群、*洞との比較でP<0.05)。図9(g)5v刺激での正常電極、ゼラチン-電極およびAMBA-ゼラチン-電極下での光学マッピングにおける代表的な心臓全体の伝導速度。電極、ゼラチンおよびAMBA-ゼラチン注射領域は、矢印により同定される。図9(h)5vペーシングでの正常電極およびゼラチン-電極は、洞調律と比較して有意に低い伝導速度を示したが、一方、AMBA-ゼラチンペーシングは、差を示さなかった(n=6/群、*洞との比較でP<0.05)。
図10図10は、AMBA-ゼラチンは、イン・ビボにおける心臓ペーシング閾値電圧およびペーシング電気生理学的性能を減少させたことを示す。図10(a)AMBA-ゼラチン-電極イン・ビボペーシングモデルの写真。カソード電極を心尖近くのAMBA-ゼラチン領域に挿入し、アノード電極を胸骨の左側の皮下に挿入した。図10(b)AMBA-ゼラチン-電極ペーシングは、イン・ビボにおける正常電極ペーシングまたはゼラチン-電極ペーシングと比較して、有意に低い閾値電圧を示した(n=6/群、*電極との比較でP<0.05、#ゼラチンとの比較でP<0.05)。図10(c~e)0.5vペーシングでの正常電極(c)、ゼラチン-電極(d)およびAMBA-ゼラチン-電極(e)下での代表的なECGトレース。刺激および心調律は、正常電極およびゼラチン-電極ペーシングにおいて相互に独立していたが、一方、AMBA-ゼラチン-電極ペーシングは、心臓全体の脱分極の誘発に成功し、心臓はペーシング調律下であった。アデノシンを用いて、房室ブロックを誘発し、心拍数を遅くさせた。ECGトレースの詳細は、ボックスに示す。図10(f~h)5vペーシングでの正常電極(f)、ゼラチン-電極(g)およびAMBA-ゼラチン-電極(h)の代表的なECGトレース。Q-T波の持続時間は縦棒により同定され、刺激は黒色の矢印により同定される。図10(i)AMBA-ゼラチン-電極ペーシングは、正常電極ペーシングおよびゼラチン-電極ペーシングと比較して、有意に減少した相対Q-T波持続時間を示したが、一方、ゼラチン-電極ペーシングは、正常電極ペーシングと比較して増加したQ-T波持続時間を示した(n=6/群、*電極との比較でP<0.05、#ゼラチンとの比較でP<0.05)。
図11図11は、アデノシンが房室ブロックモデルを誘発したことを示す。代表的なECGトレースは、アデノシン注射が、ECGトレースにおける反転したP波を誘発した洞房結節の電気活動を阻害したこと、およびアデノシン注射の数十秒後に洞調律が自然に回復したことを示した。詳細なECGトレースはボックスに示し、P波は矢印により同定される。
図12図12は、イン・ビボ実験に関する中心図を示す。イン・ビボ実験下で、アデノシンを用いて房室ブロックモデルを構築し、AMBA-ゼラチン-電極ペーシングは、心臓全体の脱分極の誘発に成功したが、一方、正常およびゼラチン-電極ペーシングは失敗した。
図13図13は、AMBA-ゼラチンが、線維性瘢痕組織において局所およびグローバル両方の電場電位振幅を増強したことを示す。図13(A)ラットにおいて左前下行枝(LAD)の結紮を行い、心筋梗塞(MI)を誘発した。1週後に、ゼラチンまたはAMBA-ゼラチンを結紮領域に注射した。MIの4週後に形成された線維性瘢痕組織上の局所電場電位振幅を、多電極アレイ(MEA36電極)により測定した。図13(B)36端子から記録された代表的な電位図。図13(C)瘢痕領域へのAMBA-ゼラチン注射は、MEAにより評価された局所線維性瘢痕組織電場電位振幅を増強した。図13(D)グローバル線維性瘢痕組織電場電位振幅を、8リードカテーテルにより評価した。図13(E)8リードカテーテルを介して、遠隔、境界および瘢痕領域で記録された代表的な電位図。図13(F)瘢痕/遠隔電場電位振幅の比は、ゼラチン注射ラットと比較して、AMBA-ゼラチン注射ラットにおいて有意に高かった。
図14図14は、AMBA-ゼラチン注射は、梗塞ラット心臓において、自発性および誘発性不整脈を減少させ、伝導速度を改善したことを示す。図14(A)ラットにおいて左前下行枝(LAD)の結紮を行い、心筋梗塞(MI)を誘発した。1週後に、ゼラチンまたはAMBA-ゼラチンを結紮領域に注射した。MIの4週後の自発性の心室性期外収縮(PVC、矢印)を、遠隔測定により測定した。図14(B)AMBA-ゼラチン群は、ゼラチン群と比較して、1時間あたりの自発性PVCの低いレートを有していた。図14(C)誘発性心室頻拍(VT)およびPVCを、プログラム電気刺激(PES)により評価した。図14(D)AMBA-ゼラチン群は、ゼラチン群と比較して、1時間あたりの誘発性PVCの低いレートを有していた。(E、F、G)生体外ランゲンドルフ灌流ラット心臓の電気信号伝導動態を、MIの4週後に電圧感受性色素ジ-4-ANEPPSでラット心臓を灌流することにより、測定した。心臓の左心室(LV)を介した電気インパルス伝播(矢印)の光学マッピングを行った。開始点には、星印が付いている。図14(H)伝導速度は、非梗塞正常心臓のものと比較して、梗塞心臓において有意に減少した。しかしながら、AMBA-ゼラチン処理心臓は、ゼラチン注射心臓よりも有意に大きい伝導速度を示した。
図15図15は、AMBA-ゼラチン注射は、MI後の心機能を改善したことを示す。図15(A)ラットにおいて左前下行枝(LAD)の結紮を行い、心筋梗塞(MI)を誘発した。1週後に、ゼラチンまたはAMBA-ゼラチンを結紮領域に注射した。MIの4週後に、心エコーにより心機能を評価した。MIの4週後の代表的なMモードエコー像は、AMBA-ゼラチン群はゼラチン群よりも小さな左心室収縮期内径(LVIDS)を有していたことを示した。実験群間の平均短縮率図15(B)および(LVIDS図15(C))を比較したとき、AMBA-ゼラチン注射は、ゼラチン単独群と比較して有意な改善を示した。LVIDd=左心室拡張期内径。
【発明を実施するための形態】
【0017】
先天性または後天性の伝導ブロックを有する患者は、電気インパルスの正常な伝播および同期的心室収縮を欠く。臨床試験は、ペースメーカーが心不全の進行を予防したことを示した。しかしながら、ペースメーカーの使用には限界があり、心筋梗塞(MI)後の心筋線維症または先天性欠損の部位における心臓組織の欠如は、重大な非同期障害を呈する。生理学的伝播を回復させる生体適合性導電性生体材料は、収縮を同期化し、心室機能を回復させ、患者をより活動的なライフスタイルに戻すことを可能にし得る。
【0018】
本開示は、心臓インパルスの電位を保有することができる生体適合性導電性生体材料(「生体適合性生体材料」)、および導電性生体材料を用いた処置に関する。特に、本開示は、生体適合性導電性生体材料を心臓に導入することによる、MIなどの心臓の病態の処置に関する。いくつかの態様では、本開示は、生体材料の中へのおよび生体材料を横断する電気インパルスの伝播を可能とする。導電性生体材料の注射は、損傷した心臓の導電性特徴を変える目的で、生体材料を心臓に導入するための有効な技法であり得る。いくつかの態様では、導電性生体材料は、電気伝導を生み出しまたは増強し、橋として作用することにより、電気的遅延または遮断を処置する。
【0019】
定義
本明細書で使用する場合、用語「アミノメトキシ安息香酸」または「AMBA」は、式:
【化1】
で表される化合物、並びにその誘導体および混合物、並びに前述のいずれかの塩を意味する。AMBAの例としては、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸(3-4-AMBA)、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸(4-2-AMBA)、2-アミノ-4-メトキシ安息香酸(2-4-AMBA)、4-アミノ-3-メトキシ安息香酸(4-3-AMBA)、5-アミノ-2-メトキシ安息香酸(5-2-AMBA)、それらの誘導体およびそれらの混合物が含まれる。AMBAは、当技術分野で公知の方法を用いて合成することができ、例えば、Sigma Aldrich(ミズーリ州)などの化学会社から購入することができる。
【0020】
「AMBAポリマー」または「AMBA系ポリマー」は、本明細書で使用する場合、AMBAを用いて製造されるいずれかのポリマーを意味し、場合により、前記ポリマーはAMBAを用いて全体が製造される。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「生体適合性」は、生体系に対して毒性または傷害性の作用を引き起こさない物品を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「生体材料」は、いずれかの組織、器官または身体の機能を部分的にまたは完全に増強または置換するためのポリマー組成物、ヒドロゲルまたは物品を指す。生体材料は、異なる物理形態の物品、例えば、ヒドロゲル、膜、スポンジ、場合により、シート、3Dパッチもしくはスポンジまたは移植用メッシュを含み得る。これらの形態は、手術において、または例えば心臓手術後の組織修復において使用される典型的な膜、シート、3Dパッチもしくはスポンジまたは移植用メッシュなどを含む。これらの物品は、天然物、合成生成物、またはそれらの組合せを含み得る。本開示の生体材料は、これらの物品の1つを形成するためにもっぱら使用され得るか、またはこれらの物品の1つの成分として使用され得る。
【0023】
用語「結合している」は、第1の化合物および第2の化合物に関連して本明細書で使用する場合、第1の化合物が、場合により、静電気的におよび/または共有結合を介して、第2の化合物に結合していることを意味する。
【0024】
用語「アミノ」は、本明細書で使用する場合、-NH基を意味する。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「ヒドロゲル」は、水中で膨張することができるまたは水で膨張化されることができる、ポリマー材料、一般に、ポリマー鎖のネットワークまたはマトリックスを指す。ヒドロゲルはまた、平衡状態で水を保持する材料であると理解され得る。ネットワークまたはマトリックスは、架橋されてもよいし、されなくてもよい。
【0026】
本明細書で使用する場合、「導電性ポリマー」は、本質的にまたは内因的に電気伝導が可能なポリマーを意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、「生体適合性成分」は、天然物、合成生成物またはそれらの組合せを意味するまたは含む。一つの態様では、生体適合性成分は、天然物、例えば、直鎖もしくは分岐多糖、タンパク質またはポリペプチドを含み得る。これらの天然物は、例えば、キトサン、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩並びにそれらの誘導体および組合せを含む。別の態様では、生体適合性成分は、合成生成物、例えば、生分解性合成ポリマーを含み得る。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「ゼラチン」は、一般に、ポリペプチドの不均一な混合物から構成される、コラーゲンのポリペプチド生成物誘導体を指し、A型およびB型ゼラチンを含む。ゼラチンは、例えば、コラーゲンを酸処理することにより、または好適な温度でコラーゲンを加熱することにより、得ることができる。ゼラチンは、ウシ、ブタもしくはヒツジコラーゲンなどの哺乳動物コラーゲン、および海洋コラーゲンまたはトリコラーゲンに由来し得る。ゼラチンは、例えば、ゲルフォーム(登録商標)などのスポンジとして使用され得る。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「伝導異常」は、心臓を介した不適当な電気インパルスにより引き起こされた障害を意味する。伝導異常は、例えば、脚ブロック、例えば、右脚ブロックおよび左脚ブロック;心ブロック、例えば第1度心ブロック、第2度心ブロック、第3度または完全心ブロック、左脚前枝ヘミブロック、左脚後枝ヘミブロック、二束ブロック(bifascicular black)、三束ブロック;およびQ-T延長症候群を含む。伝導異常は、例えば、心臓導電性細胞、心筋細胞もしくは線維芽細胞を含む心臓細胞の異常機能、心筋細胞もしくは導電性細胞の死、または心臓における線維性組織の蓄積により誘発された心臓異常により引き起こされ得る。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「ゲニピン」は、当業者により、化合物としてのゲニピンとして、または化合物としてのゲニピンの等価物として認識される化合物を含むことを意味する。用語「ゲニピン」は、誘導体、類似体、立体異性体およびそれらの混合物を網羅するものとする。ゲニピン化合物は、天然源由来であってもよいし、合成的に製造されてもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合、「電極を含んでなる植込み型デバイス」は、植込み型電子デバイスを意味する。電極を含んでなる植込み型デバイスは、例えば、ペースメーカー、植込み型除細動器(implantable cardioverter defribrillators)(ICD)、および心臓再同期療法(CRT)デバイスを含み得る。
【0032】
用語「処置する」または「処置」は、本明細書で使用する場合および当技術分野で十分理解される場合、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るための手法を意味する。有益なまたは所望の臨床結果は、限定されるものではないが、検出可能であるかまたは検出不可能であるかを問わず、1以上の症状または病態の軽減または寛解、疾患の程度の減少、疾患の安定化(すなわち、悪化していない)状態、疾患の伝播の予防、疾患進行の遅延または緩徐化、病態の寛解または緩和、疾患の再発の減少、および寛解(部分または完全を問わず)を含み得る。例えば、心臓の病態を有する対象は、心臓の病態の進行を予防するために処置することができ、あるいは、心臓の病態を有する対象は、例えば、心臓ペーシング、心臓伝導率および/または心臓伝導の伝播を改善することにより、心臓の病態を改善するために処置することができる。「処置する」および「処置」はまた、処置を受けない場合に予想される生存時間と比較して、生存時間を延長することを意味する。「処置する」および「処置」はまた、本明細書で使用する場合、予防的処置を含む。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「化合物」を含有する組成物は、2以上の化合物の混合物を含む。用語「または」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、「および/または」を含むその文において一般に用いられることにも留意されたい。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、単語「からなる」およびその派生語は、言及された特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の存在を指定し、かつ他の言及されない特徴、要素、成分、群、整数および/または工程の存在も排除する限定的な用語であるものとする。
【0035】
用語「約」、「実質的に」および「およそ」は、本明細書で使用する場合、最終結果が大幅に変更されないような、修飾された用語の逸脱の合理的な量を意味する。これらの程度の用語は、この逸脱が、それが修飾する単語の意味を否定しない場合、修飾された用語の少なくとも±5%または少なくとも±10%の逸脱を含むものとして解釈されるべきである。
【0036】
特定の項に記載の定義および態様は、それらが当業者により好適と理解される本明細書に記載の他の態様に適用可能であるものとする。例えば、以下の節において、異なる側面がより詳細に定義される。そのように定義された各側面は、そうでないことが明確に指示されていない限り、いずれかの他の1つまたは複数の側面と組み合わせてもよい。特に、好ましいまたは有利であると示されるいずれかの特徴は、好ましいまたは有利であると示されるいずれかの他の1つまたは複数の特徴と組み合わせてもよい。
【0037】
生体適合性導電性生体材料および使用方法
【0038】
本明細書で提供される第1の側面は、導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる生体適合性導電性生体材料に関する。
【0039】
本明細書で提供される第2の側面は、生体適合性導電性生体材料の製造方法であって、前記方法は、導電性ポリマーと生体適合性成分を結合させることを含んでなる。
【0040】
導電性ポリマーは、安息香酸系ポリマー、およびその混合物または共重合体を含み得る。特に、導電性ポリマーは、アミノメトキシ安息香酸(AMBA)系ポリマーであり得る、またはそれを含んでなり得る。
【0041】
いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸(AMBA)は、3-アミノ-4-メトキシ安息香酸(3-4-AMBA)である。いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸(4-2-AMBA)である。いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、2-アミノ-4-メトキシ安息香酸(2-4-AMBA)である。いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、4-アミノ-3-メトキシ安息香酸(4-3-AMBA)である。いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、5-アミノ-2-メトキシ安息香酸(5-2-AMBA)である。AMBAは、例えば、求核または求電子芳香族置換を用いて、他の置換ベンゼンから当技術分野で周知の方法を通じて合成することができる。
【0042】
いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、
【化2】
およびその塩を含む。
【0043】
いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、
【化3】
およびその塩を含む。
【0044】
いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、
【化4】
およびその塩を含む。
【0045】
いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、
【化5】
およびその塩を含む。
【0046】
いくつかの態様では、アミノメトキシ安息香酸は、
【化6】
およびその塩を含む。
【0047】
導電性ポリマーは、直鎖または分岐であり得る。いくつかの態様では、導電性ポリマーの分子量は、約300ダルトン、または約500ダルトン、または約1,000ダルトン、または約1,500ダルトン、または約2,000ダルトン、または約3,000ダルトン、または約4,000ダルトン、または約5,000ダルトン、または約7,000ダルトン、または約9,000ダルトン、または約10,000ダルトン、または約12,000ダルトン、または約14,000ダルトン、または約16,000ダルトン超である。他の態様では、導電性ポリマーの分子量は、約200ダルトン、または約500ダルトン、または約1,000ダルトン、または約1,500ダルトン、または約2,000ダルトン、または約3,000ダルトン、または約4,000ダルトン、または約5,000ダルトン、または約7,000ダルトン、または約9,000ダルトン、または約10,000ダルトン、または約12,000ダルトン、または約14,000ダルトン、または約16,000ダルトン、または約18,500ダルトン未満である。さらに他の態様では、分子量は、これらの値のいずれかの間の範囲(例えば、約200ダルトン~約7,000ダルトンの間、または約50ダルトン~約10,000ダルトンの間など)であり得る。
【0048】
ある態様では、生体適合性成分は、天然物、合成生成物、およびそれらの混合物を含んでなる。
【0049】
ある態様では、天然物は、ゼラチン、キトサン、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、アルギン酸塩、並びにそれらの誘導体および混合物から選択される。
【0050】
一つの態様では、生体適合性成分は、ゼラチンを含んでなるか、またはゼラチンである。ゼラチンは、コラーゲンの誘導体であり、その生体適合性および機械的特性のために、組織工学の分野において広く使用される。
【0051】
別の態様では、生体適合性成分は、合成生成物、例えば、生分解性合成ポリマーを含んでなる。
【0052】
生体適合性成分は、約50,000~約150,000ダルトン、場合により、約50,000ダルトン~約100,000ダルトンの範囲の分子量を有し得る。いくつかの態様では、分子量は、約50,000ダルトン、または約60,000ダルトン、または約70,000ダルトン、または約80,000ダルトン、または約90,000ダルトンまたは約100,000ダルトンまたは約110,000ダルトン、または約120,000ダルトン、または約130,000ダルトン超である。他の態様では、生体適合性成分の分子量は、約60,000ダルトン、または約70,000ダルトン、または約80,000ダルトン、または約90,000ダルトン、または約100,000ダルトン、または約110,000ダルトン、または約120,000ダルトンまたは約130,000ダルトン、または約140,000ダルトンまたは約150,000ダルトン未満である。
【0053】
導電性ポリマーおよび生体適合性成分は、例えば化学的結合により合わさって、導電性生体適合性生体材料を形成し得る。生体材料における導電性ポリマーと生体適合性成分のモル比は、それぞれ1000:1~1:1000の範囲を取り得る。いくつかの態様では、導電性ポリマーと生体適合性成分のモル比は、約1:3、または約1:2、または約1:1、または約2:1、または約3:1、または約5:1、または約10:1、または約25:1、または約50:1、または約100:1、または約150:1、または約200:1、または約250:1、または約300:1または約350:1または約400:1、または約500:1超であり得る。他の態様では、導電性ポリマーと生体適合性成分のモル比は、約1:2、または約1:1、または約2:1、または約3:1、または約5:1、または約10:1、または約25:1、または約50:1、または約100:1、または約150:1、または約200:1、または約250:1、または約300:1または約350:1または約400:1、または約500:1、または約1000:1未満であり得る。さらに他の態様では、導電性ポリマーと生体適合性成分のモル比は、これらの値のいずれかの間の範囲(例えば、1:1~1:350の間、または1:3~1:150の間、または3:1~300:1の間など)であり得る。一つの態様では、比は2:1~1000:1である。一つの態様では、モル比は、約30:1~約60:1である。
【0054】
いくつかの態様では、生体適合性導電性生体材料の分子量は、約50,000~約1,000,000ダルトンの範囲を取り得る。いくつかの態様では、生体材料の分子量は、約50,000ダルトン、または約60,000ダルトンまたは約75,000ダルトン、または約100,000ダルトン、または約150,000ダルトン、または約200,000ダルトン、または約300,000ダルトン、または約400,000ダルトン、または約500,000ダルトン、または約600,000ダルトン、または約700,000ダルトン、または約800,000ダルトン超である。他の態様では、生体適合性導電性生体材料の分子量は、約または約60,000ダルトン、または約75,000ダルトン、または約100,000ダルトン、または約150,000ダルトン、または約200,000ダルトン、または約300,000ダルトン、または約400,000ダルトン、または約500,000ダルトン、または約600,000ダルトン、または約700,000ダルトン、または約800,000ダルトン、または約1,000,000ダルトン未満である。さらに他の態様では、生体適合性導電性生体材料の分子量は、これらの値のいずれかの間の範囲(例えば、約50,000ダルトン~約800,000ダルトンの間、または約150,000ダルトン~約300,000ダルトンの間など)であり得る。
【0055】
一つの態様では、生体材料の伝導率は、約10-6S/cm以上または約10-5S/cm以上である。いくつかの態様では、生体材料の伝導率は、約10-5S/cm以上、約10-4S/cm以上、約10-3S/cm以上または約10-2S/cm以上である。例えば、範囲は、約10-6S/cm~約10-2S/cmまたは~約10-1S/cmであり得る。図7(h)に示されるように、本明細書に記載の方法に従って調製された生体適合性導電性生体材料は、ゼラチン単独と比較して、AMBA-ゼラチンの存在下で組織を0~100mVの間で刺激したとき、活動電位の振幅を増加させた。特定の態様では、材料は、約10~約110mV、または約20~約100mV、または約50~約100mV、または約75~約100mV、またはこれらの値の任意の組合せ(例えば、約50~約100mVなど)の心臓インパルスの電位を保有することができる。
【0056】
ある態様では、生体適合性導電性生体材料は、導電性ポリマーを含まない対照生体材料よりも約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上、約11倍以上、約12倍以上、約13倍以上、約14倍以上、約15倍以上または約20倍もしくは25倍以上または最大20倍もしくは25倍高い伝導率を有する。
【0057】
生体材料は、他の成分を含んでなり得る。例えば、AMBA-ゼラチンスポンジは、ゼラチンおよび他のポリペプチドなどの他の成分を含んでなり得る。
【0058】
ある態様では、生体材料は、液体溶液、ヒドロゲル、膜、3Dパッチもしくはスポンジ、シートまたは移植用メッシュである。例えば、実施例に示されるように、AMBAは、液体形態の結合された材料であるAPSを用いて、ゼラチンと結合させることができる。次に、この溶液を、例えばEDCを用いて架橋し、AMBA-ゼラチン溶液をヒドロゲルに架橋する。ゲルフォームなどのゼラチンスポンジまたはメッシュなどの他の足場などを使用するとき、APSを用いて、AMBAをゼラチンスポンジ(または足場)に結合させることができ、EDCなどの架橋剤は不要である。
【0059】
シートまたは3Dパッチもしくはスポンジ(3Dパッチとスポンジは互換的に使用される)として形成されたAMBA-ゼラチンは、例えば、保護カバーとして、または組織欠損に対する構造的支持を提供するために、使用され得る。AMBA-ゼラチンは、例えば、組織欠損の修復において、移植用メッシュとして形成されてもよい。
【0060】
AMBA-ゼラチンを含んでなる液体溶液またはヒドロゲルの製造方法は、実施例に記載される。例えば、その方法は、AMBA(1以上の異なるAMBA)とゼラチンを組み合わせること、AMBAとゼラチンを重合させてAMBA結合ゼラチン(例えば、液体溶液)を製造すること、および場合により、AMBA結合ゼラチンを架橋すること、またはヒドロゲルを形成するために液体溶液を冷却することを含んでなり得る。
【0061】
AMBAは、APSを用いて、ゼラチン(場合により、ゼラチンそれ自体またはゼラチンを含んでなる足場)に重合および結合され得る。ゼラチンまたは他の生体適合性ポリマーが、圧縮または足場なしで使用される場合、AMBA-ゼラチンは、例えばEDCを用いて架橋され得る。
【0062】
生体適合性導電性生体材料は、例えば、溶液の場合、ヒドロゲル形成を助けるための架橋剤を用いて、架橋され得る。例えば、実施例に示されるように、AMBA-ゼラチンポリマーは、架橋され、架橋ヒドロゲルを形成することができる。架橋剤は、公知の架橋剤であり得、求電子基、求核基、または両方を含有し得る。架橋剤は、天然物または合成生成物であり得る。使用され得る多機能架橋剤の例としては、例えば、EDC、N-ヒドロキシスクシンイミド、グルタルアルデヒド、メチレン-ビス-アクリルアミド、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコール-ビス-メタクリレート、エチレングリコール-ビス-メタクリレート、エチレングリコール-ジメタクリレート、ビスアクリルアミド、トリエチレングリコール-ビス-アクリレート、3,3’-エチリデン-ビス(N-ビニル-2-ピロリドン)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールトリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、他のポリアクリル酸およびポリメタクリル酸エステル、並びにそれらの混合物が含まれる。一つの態様では、架橋剤はEDCである。一つの態様では、架橋剤は、ゲニピンまたはタンニン酸である。
【0063】
生体適合性導電性生体材料に対する架橋剤の比は、容量で約2:100,000~約5:1,000の範囲内であり得る。架橋剤は、標的の位置(例えば、心臓)に導入する直前(例えば、導入の1~10分前)に生体材料に加えることができる。いくつかの態様では、生体材料をゲルにするには1~10分要する。ゲル化時間の間、生体材料は、標的の位置(例えば、心臓)に導入することができる。
【0064】
ある態様では、ヒドロゲルは、アミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマーおよびゼラチンを含んでなる。例えば、実施例で詳述するように、AMBAポリマーは、ゼラチンの1以上のアミノ基に結合する。
【0065】
ある態様では、ヒドロゲルの含水量は、約75重量%~約95重量%である。例えば、含水量は、約80重量%である。例えば、含水量は、約82重量%である。例えば、含水量は、約85重量%である。例えば、含水量は、約90重量%である。
【0066】
ある態様では、生体適合性導電性生体材料は、以下に詳述する実施例1および4に記載の方法に従って合成される。
【0067】
本明細書で提供される別の側面は、本明細書に記載の生体適合性生体材料の1つを利用したデバイスに関する。
【0068】
デバイスは、電極を含んでなる植込み型デバイスであり得る。
【0069】
一つの態様では、植込み型デバイスは、本明細書に記載の導電性ポリマーの少なくとも1つを含んでなる生体適合性導電性生体材料により少なくとも部分的に被覆される少なくとも1つの電極を含んでなる。例えば、生体適合性導電性生体材料は、伝導の改善を必要とする心臓組織(例えば、心房心室結節など)に注射され得、次に電極が被覆されるように、電極は、ゲル化の間または後のいずれかで生体材料に挿入され得る。別の例として、生体適合性導電性生体材料は、電極の末端周辺で鋳型形状に形成され得、その形状は、心臓組織内の所定のサイズの注射部位に対応する。
【0070】
ある態様では、植込み型デバイスは、心臓ペースメーカーである。
【0071】
例えば、心臓ペースメーカーは、シングルチャンバーペースメーカー、デュアルチャンバーペースメーカーまたは両心室ペースメーカーであり得る。
【0072】
別の態様では、デバイスは、植込み型除細動器(ICD)であり、ここで、少なくとも1つの電極が、本明細書に記載の導電性ポリマーの少なくとも1つを含んでなる生体適合性導電性生体材料により少なくとも部分的に被覆される。
【0073】
一つの態様では、ペースメーカーまたはICDのリードは、生体適合性生体材料により少なくとも部分的に被覆される。
【0074】
ペースメーカーおよびICDの性能を含んでなる二重機能デバイスも企図される。
【0075】
さらに別の側面は、ペースメーカーなどの電極を有するデバイスと、導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる生体適合性導電性生体材料とを含んでなるキットであって、前記導電性ポリマーは、例えば、アミノメトキシ安息香酸(AMBA)ポリマーを含んでなる、キットに関する。一つの態様では、キットは、デバイスを植え込むための、および植込み時に生体適合性導電性生体材料が電極を囲むように生体適合性導電性生体材料を導入するための、説明書を含んでなる。
【0076】
生体適合性導電性生体材料は、心臓欠損の心臓修復のために、または心筋細胞を成長させて心臓組織を作製するためのプラットフォームとしても使用され得る。例えば、3Dパッチまたはスポンジの伝導性は、実施例6に示されるように、パッチにおける心筋細胞を同期化することができる。生体適合性導電性生体材料(例えば、パッチとしての)は、単独でまたは心筋細胞とともに、先天性心臓欠損の修復、および例えば、うっ血性心不全を有する患者の拡張した心臓の外科的修復のために使用され得る。
【0077】
従って、別の態様では、場合により、ヒドロゲルもしくはシート、3Dパッチもしくはスポンジ、またはメッシュとしての生体適合性導電性生体材料と、1以上の培養培地と心筋細胞とを含んでなる組成物が提供される。
【0078】
別の態様では、本開示は、心臓の病態の寛解または処置方法であって、前記方法は、生体適合性導電性生体材料をそれを必要とする対象における心臓に導入することを含んでなり、ここで、前記生体材料は、本明細書に記載の導電性ポリマーおよび生体適合性成分を含んでなる、方法に関する。
【0079】
例えば、心臓の病態は、例えば心臓手術に起因する、心筋梗塞、虚血心筋、心筋線維症、心不全、房室ブロック、不整脈、徐脈および伝導異常を含み得る。
【0080】
場合によりヒドロゲル形態のAMBA-ゼラチンは、心臓手術により生じた伝導を再確立するためにも使用され得る。例えば、心臓弁置換術では、損傷弁は外科的に除去される。手術は、周囲の心臓組織を損傷し得、伝導ブロック(弁処置の副作用)をもたらすことがある。大動脈疾患を有する患者を処置するための十分に認められている選択肢である経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)は、TAVR関連伝導障害、主に新規左脚ブロックおよび永久的ペースメーカー植込みを必要とする高度房室ブロックに至る場合があることが報告されている。
【0081】
従って、ヒドロゲルおよび他の形態の本明細書に記載の生体適合性導電性生体材料は、このような状況における伝導を回復させるために注射され得る。
【0082】
ある態様では、生体適合性導電性生体材料は、心臓の患部の中または上に導入される。
【0083】
例えば、生体適合性導電性生体材料は、ペースメーカーまたは他のデバイスのリードが付着する境界面に近接した心臓組織の中または上に導入され得る。本明細書に示されるように、これは、リード刺激に対する組織の抵抗を低減させる。
【0084】
ある態様では、生体適合性導電性生体材料は、心臓の患部の中または上、例えば、線維性瘢痕組織の中または上に導入される。実施例に示されるように、これは、心不整脈の発生を低減させ得る。ある態様では、生体適合性導電性生体材料は、心臓伝導率を増加させるためのものである。
【0085】
ある態様では、導入される生体適合性導電性生体材料の量は、無処置対照と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍または少なくとも10倍、心臓組織伝導率を増加させるのに十分である。
【0086】
ある態様では、生体適合性導電性生体材料は、対象の房室心拍を順次(最初に心房拍動、次いで心室収縮)同期化するためのものである。
【0087】
本明細書に示されるように、生体適合性導電性生体材料は、心臓ペースメーカーのペーシング閾値電圧を減少させるためにも使用され得る。従って、生体適合性組成物は、それを必要とする対象における心臓ペーシングに対する心筋反応性を増大させるために使用され得る。
【0088】
このような態様では、生体適合性導電性生体材料は、ペースメーカーを含んでなる対象またはペースメーカー植込みを受ける対象において、ペースメーカーの1以上の電極の近位に導入され得る。生体適合性導電性生体材料は、対象がペースメーカー植込みを受ける前に導入されてもよいし、後に導入されてもよい。
【0089】
一つの態様では、生体適合性導電性生体材料は、対象の心臓の中または上に導入され、次いで、ペースメーカーによる心臓のペーシング、またはICDもしくはデュアルICDペースメーカーの植込みが行われる。
【0090】
ペースメーカーまたはICDなどの植込み型デバイスを用いた方法であって、ペースメーカーの1以上の電極が、本明細書に記載の生体適合性導電性生体材料で少なくとも部分的に被覆される、方法も企図される。
【0091】
一つの態様では、生体適合性導電性生体材料は、心臓ペーシング閾値電圧を減少させるためのものである。
【0092】
さらなる態様では、導入される生体適合性導電性生体材料の量は、無処置対照と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍または少なくとも5倍、心臓ペーシング閾値電圧を減少させるのに十分である。
【0093】
ある態様では、生体適合性導電性生体材料は、心臓活動電位の振幅を増加させる、心臓伝導速度を増加させる、またはQT間隔持続時間を減少させるためのものである。
【0094】
さらに別の態様では、導入される生体適合性導電性生体材料の量は、無処置対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%、ペースメーカーにより誘発される心臓活動電位の振幅を増加させるのに十分である。
【0095】
ある態様では、導入される生体適合性導電性生体材料の量は、無処置対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%、心臓伝導速度を増加させるのに十分なである。
【0096】
ある態様では、導入される生体適合性導電性生体材料の量は、無処置対照と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%、QT間隔持続時間および/または心臓活動電位持続時間を減少させるのに十分である。
【0097】
別の態様では、対象は、哺乳動物、場合により、ラット、マウスまたはヒトである。ある態様では、対象はヒトである。
【0098】
本明細書で提供されるさらなる側面は、それを必要とする対象における、心臓の病態を処置するため、および/または心臓ペーシングに対する心筋反応性を増大させるための、本明細書に記載の生体適合性導電性生体材料または本明細書に記載の導電性ヒドロゲルの使用である。
【0099】
生体適合性導電性生体材料(例えば、ヒドロゲル)は、ヒドロゲルおよび類似の材料で生体組織および器官を処理する公知の方法により、導入され得る。ある態様では、生体材料は、針注射、場合により画像誘導針注射により、患部の中または上に導入される。一つの態様では、生体適合性導電性生体材料は、心臓、例えば、心房心室伝導結節および周囲の領域の中または上に注射され得る。
【0100】
一つの態様では、生体適合性導電性生体材料は、凝固前に、患部の中または上に導入(場合により針注射)される。生体材料は、その後凝固する(例えば、ゲル化する)。別の態様では、生体材料は、プレキャスト形態で導入され、例えば、繊維、シート、3Dパッチもしくはスポンジ、またはメッシュにプレキャストされ、次に、患部に植え込まれる。
【0101】
生体適合性導電性生体材料はまた、シートにおいて形成され得、または、損傷組織の上部で使用され得る、もしくは、例えば心臓へのペースメーカーの電極接続部などのデバイスを囲むために使用され得る3Dパッチなどの他の物品において形成され得る。
【0102】
一つの態様では、組織または器官に導入される生体適合性導電性生体材料(例えば、ヒドロゲル)の量は、多数の因子、例えば、生体材料の組成物、組織もしくは器官の位置および状態、生体材料を導入する目的(例えば、MIの処置もしくはペーシング閾値の減少)、組織もしくは器官のサイズ並びに/または損傷領域もしくは処置される領域のサイズに依存し得る。一つの態様では、生体材料の容量は、約1μl~約10mL、または約2μl~約5mL、または約5μl~約3mL、または約10μl~約2mL、または約50μl~約1mL、または約100μl~約500μl、またはこれらの値の任意の組合せ(例えば、約1mL~約2mLなど)の範囲を取り得る。
【0103】
本明細書で示されるように、生体適合性導電性生体材料は、線維性瘢痕組織を有する心臓において有効である。従って、いくつかの態様では、対象は、心筋梗塞に罹患している、および/または瘢痕組織を有する。
【0104】
刊行物、特許、および特許出願を含む総ての引用した参考文献の開示は、引用することによりそれらの全内容が明示的に本明細書の一部とされる。
【0105】
量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値の一覧として与えられるとき、これは、範囲が別々に開示されているか否かを問わず、任意の範囲上限または好ましい値および任意の範囲下限または好ましい値の任意のペアから形成される総ての範囲を特異的に開示しているものと理解されるべきである。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、特に断りのない限り、その範囲は、その終点、並びにその範囲内の総ての整数および分数を含むものとする。本発明の範囲が、範囲を定義する際に列挙される特定の値に限定されることは意図されない。
【0106】
本発明は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示す一方で、単に例示として示されることが理解されるべきである。
【実施例
【0107】
実施例1:AMBA-ゼラチンヒドロゲルおよびゼラチンスポンジの合成
ある程度の流動性を有する心臓組織に注射可能な導電性ヒドロゲルを製造し、これは、心臓インパルス伝播を可能とする適当な伝導性を有することが見出された。重合AMBA(ポリAMBA)は、導電性ポリマーである(図1)。しかしながら、さらなる処理を受けていないポリAMBAは、非熱可塑性で、機械的的に強固および脆性であり、心臓への適用には最適ではない。AMBAを重合し、ゼラチンに結合させ、AMBA-ゼラチン導電性溶液を製造し、これを次に架橋して、AMBA-ゼラチンヒドロゲルを形成させた(図1並びに図2AおよびB)。また、AMBAを重合し、ゼラチンスポンジ(ゲルフォーム(登録商標))上に結合させ、導電性AMBA-ゼラチンスポンジ(AMBA-ゲルフォーム)を製造した(図2C)。
【0108】
導電性生体材料は、導電性ポリ3-アミノ-4-メトキシ安息香酸(AMBA)をゼラチン上に結合させることにより、製造した。2gのゼラチン粉末(ロット番号895893A、Fisher Scientific、カナダ)を10mlの脱イオン蒸留水に機械的撹拌下で溶かし、次に、0.2gの3-アミノ-4-メトキシ安息香酸粉末(B20669、Alfa Aesar、マサチューセッツ州)を溶液に加えた。粉末を完全に溶解させた後、0.546gの過硫酸アンモニウム(APS)(過硫酸アンモニウム、CAS番号7727-54-0、Bio Basic Canada Inc.)を溶液に加え、AMBAを重合させ、AMBAポリマーをゼラチンのアミノ基に結合させ、AMBA-ゼラチン溶液を形成させた。重合反応を、水浴中で50セルシウス度にて6時間維持した。最後に、AMBA-ゼラチン溶液のpHを、NaOH(Sigma-Aldrich)で約7.0に調整した。使用する前に、AMBA-ゼラチン溶液を4μlのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、22980、Thermo fisher、マサチューセッツ州)および2μlのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、130672-5G、Sigma-Aldrich、ミズーリ州)で5分間架橋し、AMBA-ゼラチンヒドロゲルを形成させた。
【0109】
実施例2:伝導率の評価
2点プローブ抵抗率測定装置(HF2IS、Zurich Instruments、スイス)を用いて、実施例1に従って製造したAMBA-ゼラチンヒドロゲルの室温での生体材料抵抗を測定した。プローブを、1.5cmの間隔を空けてゼラチンおよびAMBA-ゼラチンヒドロゲル膜に留置した。伝導率(S/cmで測定)は、1/(2πDR)として算出され、ここで、Dはプローブ間の距離(mm)であり、R=V/Iであり、ここで、Iは供給電流(mA)であり、Vは対応する電圧(mV)である。1.5cm×1.5cmディッシュにおけるゲル化したAMBA-ゼラチンの抵抗および生体材料抵抗を測定した(図2A)。AMBA-ゼラチンヒドロゲルは、ゼラチンと比較して、約5倍高い伝導率(抵抗の逆数)を有していた(図2B、**p<0.01、n=72)。異なるAMBA、すなわち3-4-AMBA、4-2-AMBA、4-3-AMBA、2-5-AMBAおよび2-4-AMBAを用いて、異なるAMBA-ゼラチンヒドロゲルを製造し、総てがゼラチンヒドロゲルより優れた伝導率を有することが見出された(図3)。
【0110】
実施例3:AVBモデル
エタノールを心臓のAV結節に注射することにより、AVBラットモデルを製造した。AVBを有するラットを用いて、イン・ビボにおけるAMBA-ゼラチンの電気伝導ブリッジ効果の能力を検討した。心電図(ECG)プロファイルを用いて、検討した。AMBA-ゼラチンヒドロゲル注射またはゼラチン注射動物の損傷したAV結節にわたる電流の伝播。
【0111】
総ての実験プロトコールは、Animal Resource Centre of the University Health Networkにより承認され、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(NIH、第8版、2011)に適合した。体重235~250gの雌SDラットが、以前に報告されたように、エタノール誘発AVブロックを受けた[10]。簡単に述べれば、ECGは、生理学的記録計で表示された。マイクロリットルシリンジに接続された30ゲージ針(Hamilton、リノ、ネバダ州)を用いて、溶液を心筋に注射した。結節組織に対する針の方向性を促進するために、針は、先端から3mmのシャフトにおいて90°曲げることにより、準備しなければならなかった。従って、針は、心外膜表面から最大3mmまでしか心筋に挿入することができなかった。正中胸骨切開および心膜切開の後、右心耳の先端を側方に曲げ、この領域内のAV接合部へのアクセスをもたらした。この手技は、AV結節に対する心外膜アプローチのための目印、すなわち、大動脈根と右心房の内側壁の間に一貫して位置する脂肪パッドを露出させた。この脂肪パッドは、大動脈弁の右弁尖と無冠動脈弁尖の間の交連に対応する大動脈根の外膜側面の点として目印になっている。針の先端を、脂肪パッドの1mm後方および1mm側方の点における心外膜表面に貫通させた。心臓の尖部に向けて(すなわち、心臓の長軸方向)、針をその屈曲部まで挿入した。針の角度のある部分を、常時上行大動脈と平行に維持した。針の挿入が瞬間的な完全AVブロック[心臓の電気機械解離および心電図(ECG)で決定された]をもたらした場合、50μlの70%エタノールを注射した。エタノール傷害後、ゼラチンまたはAMBA-ゼラチンをAV結節に注射した。エタノール傷害の前に、体表面ECGを得た。全動物を、形態学的解析のために注射後に屠殺した。
【0112】
ラットをイソフルランで麻酔し、従来の体表面ECGを用いて、心調律をモニタリングおよび記録した。ECG電極を心房および心室の心筋に別々に接続し、心房および心室の心臓波をモニタリングした。
【0113】
データは、平均±標準偏差として表した。解析は、限界α水準をp<0.05に設定したグラフパッドプリズムソフトウエア(v.6.0)を用いて行った。複数の群間の比較は、一元配置分散分析(ANOVA)を用いて行った。F値が有意であった場合、チューキーの多重範囲事後検定を用いて、群間差を検討した。
【0114】
AMBA-ゼラチンは、ゼラチンと比較して5倍高い伝導率を有すると決定された。ECGの結果は、55匹中48匹(87%)において、安定した完全AVBが生じたことを示した。生体材料をAVBラットに注射した後、体表面ECGの結果は、心房レートは有意差がなかったことを示し、このことは、いずれの処置もAV結節より上の洞インパルスに影響を及ぼさなかったことを示している。しかしながら、心室レートは、ゼラチン単独注射動物と比較して、AMBA-ゼラチン注射動物において有意に速く(290±87対60±28、p<0.01)、AMBA-ゼラチンの注射は房室伝導ブロックを回復させたが、ゼラチン注射心臓は、正常対照と比較して遅延した伝播パターンを継続して有することが示唆された。
【0115】
体表面ECGを行い、心房および心室の脱分極および再分極を記録した(図4AおよびB)。ECGの結果は、AVBラットのP波(P)-P間隔は、正常心臓と比較して延長しなかったが(図4C)、R波(R)-R間隔は、正常心臓と比較して有意に延長した(図4D、**p<0.01)ことを示した。延長したRR間隔は、AV結節より下のレベルから心室脱分極が認められることを示し、ペースが心室に到達しないため、心臓の心房と心室の間の伝導が障害されていることを示した。次に、イン・ビボでの無傷のAVB心臓においてAMBA-ゼラチンが機能する能力を評価した。図5は、AMBA-ゼラチンがAV結節領域にうまく注射されたことを示した。体表面ECGの結果は、心房レートは、エタノール-ゼラチンまたはAMBA-ゼラチン注射後に有意差はなかったことを示し、このことは、いずれの処置もAV結節レベルより上の洞インパルスに影響を及ぼさなかったが(図6A)、心室レートは、ゼラチン単独注射と比較して、AMBA-ゼラチン注射後に有意に速かったこと(図6B、p<0.01)を示した。これらの結果は、AMBA-ゼラチンは心臓伝導の伝播を回復させたが、ゼラチン注射心臓は遅延した伝播を継続して有することを示した。
【0116】
従って、AMBA-ゼラチンヒドロゲルは、心臓におけるAVBの再ブリッジング、および心調律の回復に有用であり得る。データは、AMBA-ゼラチン注射は、AVB心拍を正常近くまで回復させ、心拍は、ゼラチン単独注射ラットのものよりも有意に速いことを示した。これらの結果はまた、AMBA-ゼラチンは、ゼラチンの利点を有するだけでなく、インパルスをこのヒドロゲルを伝播することを可能にし得ることも示唆した。AMBA-ゼラチンは、弾性および止血性の特性を有し、多種多様な組織工学の適用に使用するための導電性生体材料であり得る。
【0117】
実施例4:導電性AMBA-ゼラチンヒドロゲルは心臓ペースメーカーのペーシング閾値電圧を減少させる
ゼラチンは、生体適合性天然タンパク質であり、優れた機械的特性を有する[19]。これは、心筋細胞外マトリックスの組成の一部を形成するが、これは導電性ではない。3-アミノ-4-メトキシ安息香酸(3-4-AMBA)をゼラチンの側鎖に結合させ、導電性生体材料AMBA-ゼラチンを製造し、心臓ペーシングに対するその効果を、それを心筋電極-組織境界面に注射することにより検討した。
【0118】
方法:
AMBA-ゼラチンヒドロゲルの合成
AMBA-ゼラチンヒドロゲルを、実施例1に記載の通りに合成した。
【0119】
AMBA-ゼラチンヒドロゲルの電気的特性のアッセイ
2点プローブ抵抗率測定装置(HF2IS、Zurich Instruments、スイス)を用いて、室温での生体材料抵抗を測定した。プローブを、1.5cmの間隔を空けてゼラチンおよびAMBA-ゼラチンヒドロゲル膜に留置した。伝導率(S/cmで測定)は、1/(2πDR)として算出し、ここで、Dはプローブ間の距離(mm)であり、R=V/Iであり、Iは供給電流(mA)であり、Vは対応する電圧(mV)である。
【0120】
イン・ビトロでの電極-組織境界面伝導の測定
電極-組織境界面の伝導をイン・ビトロで測定した。健常ラット心臓の心房心筋を左心房から単離し、それぞれ2つの側でゼラチンまたはAMBA-ゼラチンを介して刺激電極に連結させた。カソードは、アノードから5mm離した。3リード心電計(ECG)記録計(Power Lab、AD Instruments、コロラド州)を用いて心筋活動電位を検出し、多電極アレイ(MEA、Multichannel Systems Reutlingen、ドイツ)を用いて伝導速度を検出した。刺激は、ECG記録では1mv~100mvであり、MEA記録では100mv~1000mvを刺激装置(STG4002、Multichannel Systems Reutlingen、ドイツ)で提供し、総ての刺激は4msの持続時間で4Hzであった。MEAデータは、Cardio2D+(Multichannel Systems Reutlingen、ドイツ)で解析した。
【0121】
ランゲンドルフ単離ラット心臓モデルにおけるペーシング閾値電圧の測定
総ての実験プロトコールは、Animal Resource Centre of the University Health Networkにより承認され、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(NIH、第8版、2011)に適合した。体重235~250gの雌SDラットを、本試験に用いた。閾値電圧を測定するために、心臓を迅速に外植し、氷上で大動脈根を介して16G鈍針を用いてカニューレ処置した。次に、心臓をクレブス・ヘンゼライト(K-H)溶液(5%CO/95%Oガスで平衡化した117mM NaCl、24mM NaHCO、11.5mMデキストロース、3.3mM KCl、1.25mM CaCl、1.2mM MgSO、1.2mM KHPO)を用いて37℃にて10mL/分で逆行灌流した。動作ノイズを防ぐために、興奮収縮連関を2,3-ブタンジオンモノキシム(1mg/ml、B-0753、Sigma-Aldrich、ミズーリ州)で遮断した。ECGを用いて心臓の電気活動を検出し、刺激装置(SD9、Grass、カナダ)を用いて心臓を刺激した。K-H緩衝液灌流下で、約20μlのAMBA-ゼラチンヒドロゲルを心室尖部近くの心筋に注射した。次に、カソードをAMBA-ゼラチン領域に挿入し、アノード電極を、カソード電極から約1.5cm離れたクレブス・ヘンゼライト溶液に挿入した。刺激は0.5Vから開始し、心室捕捉が達成されるまで、0.1Vずつ増加させた。100%ペーシング調律に対する最低値をペーシング閾値電圧として記録した。各群において、5.0Vの刺激を行い、電気生理学的解析のためにECGをモニタリングした。注射なしの正常電極ペーシングおよびゼラチン注射ペーシングの領域におけるペーシング刺激が、対照としての役割を果たした。総ての刺激は、4msの持続時間で6Hzであった。
【0122】
心臓全体の光学マッピング
ランゲンドルフ灌流手順を、上記のように行った。自発性の拍動を伴う心臓の回復の5分後に、クレブス・ヘンゼライト溶液(25μM)に溶かした電圧感受性色素4-(2-(6-(ジブチルアミノ)-2-ナフタレニル)エテニル)-1-(3-スルホプロピル)-ピリジニウム(ジ-4ANEPPS;D1199、Invitrogen、カリフォルニア州)を用いて、5mL/分の速度で6分間心臓を灌流した。色素の投与後、AMBA-ゼラチンヒドロゲルを注射し、上記と同じ方法で電極を挿入した。0.5Vおよび5.0Vの刺激を刺激装置に採用し、光学マッピングデータをカメラ(Evolve 128、Photometrics、アリゾナ州)で記録した。Matlab(MathWorks、マサチューセッツ州)に基づいた特注ソフトウエアを、光学マッピング信号のデータ分析に用いた[20]。正常電極ペーシングおよびゼラチン注射ペーシングが、対照としての役割を果たした。総ての刺激は、4msの持続時間で6Hzであった。
【0123】
ラット房室ブロックモデル
アデノシン(AD;519 987、Boehringer Mannheim、ドイツ)を用いて、ラット房室ブロック(AVブロック)を誘発した。胸骨正中切開の後、150μlのAD(10mg/ml)を下大静脈を介して急速に注射して房室ブロックを誘発し、ブロックの時間を記録した。次に、AD用量を調整して、120秒のAVブロック持続時間を維持した。
【0124】
イン・ビボでのペーシング閾値電圧の測定
ラットをイソフルランで麻酔し、従来の体表面ECGを用いて、心調律をモニタリングおよび記録した。胸骨正中切開を行い、十分に心臓を露出させた後、20μlのAMBA-ゼラチンヒドロゲルを、心尖近くの右心室壁に注射した。次に、カソードをAMBA-ゼラチン領域に挿入し、アノード電極を胸骨の左側の皮下に挿入した。刺激手順は、ランゲンドルフ単離ラット心臓モデルに関する以前の記載と同様であり、ペーシング閾値電圧値を記録した。各群における5.0v刺激下のECGも、電気生理学的解析のために記録した。正常電極ペーシングおよびゼラチン注射ペーシングが、対照としての役割を果たした。総ての刺激は、4msの持続時間で6Hzであった。
【0125】
統計的方法
Statistical Package for Social Sciences、バージョン22.0(SPSS、シカゴ、Ill)をデータ解析に用いた。分散が等しかった場合、スチューデントのt検定および一元配置分散分析に次いでHSD事後検定を、それぞれ2群および3群以上に対して採用した。分散が等しくなかった場合は、ウェルチのt検定およびウェルチ分散分析に次いでTamhane T2事後検定を、それぞれ2群および3群以上に対して採用した。データは、平均±SDとして表した。P<0.05を統計的に有意とみなした。
【0126】
結果
AMBA-ゼラチンヒドロゲルの合成および特徴
図1に示されるように、AMBAを重合し、ゼラチンに結合させ、導電性AMBA-ゼラチン溶液を製造した。過硫酸アンモニウム(APS)を用いて、反応を触媒した。使用する前に、AMBA-ゼラチン溶液を4μlのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)で架橋し、AMBA-ゼラチンヒドロゲルを形成させた。ゼラチン単独と同様に、AMBA-ゼラチンは、室温でコロイド形態を維持し得る。さらに、AMBAは、重合され、ゼラチン移植片、例えば、ゲルフォーム(登録商標)などのゼラチンスポンジ上にAPS処理により結合され得る(図2C)。伝導率測定は、AMBA-ゼラチンはゼラチンと比較して有意に高い伝導率を有していたことを示した(図2B)。伝導率測定はまた、ゲルフォーム(登録商標)と結合したAMBA(AMBA-ゲルフォーム)は、ゲルフォーム(登録商標)(ゲルフォーム)またはゲルフォーム(登録商標)と混合したAMBA(AMBA+ゲルフォーム)と比較して、有意に高い伝導率を有していたことも示した(図2CおよびD)。
【0127】
単離された心房心筋で電極-組織境界面を刺激するためのイン・ビトロモデルを開発し、AMBA-ゼラチンとゼラチンの間の伝導を比較した(図7a)。最初に、単離された心房心筋の活動電位振幅を、ECGモニタリングで異なる刺激電圧下にて検出した(図7b)。心筋の活動電位振幅は、ゼラチンよりもAMBA-ゼラチンにおいて有意に大きかったことが見出された(図7c、7dおよび7h)。次に、単離された心房心筋の伝導速度を、MEAモニタリングで異なる刺激電圧にて検出した(図7e)。伝導速度は、ゼラチン単独と比較してAMBA-ゼラチン群において300から1,000mVの刺激へと有意に増加した(図7gおよび7i)。これらのデータは、導電性AMBA-ゼラチンヒドロゲルは、ゼラチン単独よりも有意に高い伝導率を示し、伝導の伝播を改善したことを示唆している。
【0128】
AMBA-ゼラチンヒドロゲルは、成体ラット心臓における心臓ペーシング閾値電圧を減少させた
ペーシング電極部位における心筋へのAMBA-ゼラチンの注射後の、心筋インピーダンスの変化および心臓ペーシング閾値電圧の減少を評価するため、ランゲンドルフ装置を用いて心臓を灌流し、心臓は洞調律で拍動していた(図8a)。ペーシングプローブを左心室に留置し、0.5Vの刺激を用いた。正常心臓群は、完全に離れた刺激波および心調律を示した(図8c)。光学マッピングは、電極挿入部位での小さな局所脱分極領域を示した(図8dおよび8e)。0.5V刺激でのゼラチン群において、ECGはまた、完全に離れた刺激波および心調律のトレーシングを示し(図8f)、光学マッピングは、ゼラチン注射領域におけるノイズを示し、これはゼラチンの低い伝導率を反映していた(図8gおよび8h)。AMBA-ゼラチン群において、0.5Vの刺激は、自律的な心調律からペーシング調律へと調律を変化させるのに十分高く(図8i)、光学マッピングの結果は、刺激下のAMBA-ゼラチン注射領域において異所性ペースメーカーを検出した(図8jおよび8k)。これらのデータは、導電性生体材料への0.5V刺激下は、ペーシング閾値を減少させることにより、心臓脱分極を増強したことを示唆した。心臓の3群において心臓脱分極を誘発するのに必要な最低電圧をさらに評価するため、刺激電圧を増加させて、ペーシング心臓に対する閾値を同定した(ペーシングと自律心拍数の同期化)。結果は、AMBA-ゼラチン注射は、正常電極または電極-ゼラチンペーシングと比較して、心臓ペーシング閾値電圧を有意に減少させたことを示した(図8b)。
【0129】
心筋におけるAMBA-ゼラチンはペーシング電気生理学的性能を改善した
正常、ゼラチンまたはAMBA-ゼラチン群におけるランゲンドルフ灌流下の正常心臓は、6Hzおよび4ms持続時間での5.0V刺激を用いて、一貫してペース調整された調律であった。ペーシング調律下でのECGデータを、電極(正常)、ゼラチンおよびAMBA-ゼラチン群に関して分析した(図9a、9bおよび9c)。AMBA-ゼラチン群は、正常電極およびゼラチン群と比較して、有意に減少したQ-T持続時間を有し(図9d)、このことは、左心室と右心室の間の良好な協調性収縮を示唆している[23]。
【0130】
光学マッピングデータを用いて、80%活動電位持続時間(80%APD)を算出した。各群における代表的な光学像および80%APDグラフを、図9eに示した。光学マッピングの結果は、ECG所見を確証するものであって、正常およびゼラチン群における80%APD時間は、AMBA-ゼラチン群よりも有意に長かったが、一方、5.0V刺激での洞調律とAMBA-ゼラチン群の間には80%APD時間の有意差は認められなかったことを示した(図9f)。
【0131】
光学マッピングデータはまた、3群における心筋伝導速度(CV)も例示した。正常心筋およびゼラチン群における伝導速度は、洞調律およびAMBA-ゼラチン群と比較して有意に遅かったが、一方、5.0V刺激の間の洞とAMBA-ゼラチン群の間には伝導速度の有意差は認められなかった(図9gおよび9h)。これらの結果は、AMBA-ゼラチンペーシングは、正常電極およびゼラチンペーシングと比較して、生理学的電気条件に近かったことを示し、これは、洞調律と比較して類似のQ-T間隔、80%APD時間およびCVに反映されていた。
【0132】
AMBA-ゼラチンヒドロゲルはイン・ビボにおいてペーシング閾値電圧を減少させ、ペーシング電気生理学的性能を改善した
【0133】
ペーシングの特徴を評価するため、アデノシン(AD)を下大静脈を介して注射し、イン・ビボにおける心拍数を減少させた(図10a)。AD注射後、洞結節は、ECGでのP波の逆転および心拍数減少を伴い、抑制された(図11)。代表的なECGは、正常組織およびゼラチン群における0.5V/6Hzおよび4ms持続時間を用いた電極刺激は、完全に離れたペーシングのトレーシングおよび自律的な調律をもたらしたが、一方、心調律は、AMBA-ゼラチン群において心拍数の増加を伴い完全にペース調整された調律に変化したことを示した(それぞれ図10c、10dおよび10e)。統計的結果は、AMBA-ゼラチン群におけるペーシング閾値電圧は、正常電極およびゼラチン群と比較して有意に減少したことを示した(図10b)。Q-T間隔の分析を、正常、ゼラチンおよびAMBA-ゼラチン群において行った(それぞれ図10f、10gおよび10h)。Q-T持続時間は、AMBA-ゼラチン群と比較して、正常およびゼラチン群において有意に増加した(図10i)。これらのデータは、AMBA-ゼラチンヒドロゲルの注射は、イン・ビボにおいて、ペーシング閾値電圧を減少させ、ペーシング電気生理学的性能を改善することを示唆しており、これは、ランゲンドルフ単離ラット心臓モデルにおける所見を裏付けている。
【0134】
まとめると、AMBA-ゼラチンは、高い電極-組織境界面を提供することにより、心臓ペーシング閾値電圧を減少させ、ペーシング電気生理学的性能を改善し得、電極と細胞膜の間の距離を減少させた可能性がある(図12)。
【0135】
AMBA-ゼラチンヒドロゲルの導電性生体材料を開発し、これは心臓ペーシング閾値電圧を減少させることが見出された。導電性生体材料は、ペースメーカーのエネルギー消費を低減するのに有用であり得る。
【0136】
臨床適用の段階で、心筋脱分極の開始が、局所線維化のために増加したインピーダンスを克服しなければならない場合、ペースメーカーのバッテリー寿命は機能的問題となる。いくつかの新しい技法が開発されており、例えば、電極表面積の低減[24]、カソード電極において微孔構造の採用[17]、新規材料の使用[25~27]および局所線維化を阻害するためのステロイド溶出リードの導入[28]が挙げられる。これらの技法の適用は、ペースメーカー閾値電圧を減少させ[29,30]、過去数十年間でペースメーカーのバッテリー寿命を延長させている[31,32]。しかしながら、現在のペースメーカーのエネルギー消費は依然として高く、ほとんどの患者は、消耗したバッテリーを交換するために2回目の手術を必要とする[33]。
【0137】
電極-心筋組織境界面が、心臓ペーシングにおいて重要な役割を果たすことが知られている。体外ペーシングでは、電極チップにおける電流は、電界を発生しなければならない。心筋細胞における電界がその閾値電圧に達する場合、それは細胞膜上の電位依存性ナトリウムチャネルを開き、活動電位を発生させる[28]。心筋線維症は、組織インピーダンスを増加させるため、心筋伝導率を減少させ、高いペーシング閾値に寄与する電気信号の伝播を遅延させる[18]。心筋組織インピーダンスの減少は、脱分極閾値を減少させ得る。電極-組織境界面へのAMBA-ゼラチンヒドロゲルの注射は、心筋細胞インピーダンスを減少させることにより、対照群と比較して、心筋細胞膜電圧を有意に増加させることが示されている。
【0138】
生体外試験は、1v未満の、および対照またはゼラチンペーシング電極より3~4倍低いAMBA-ゼラチンのペーシング閾値電圧を示した。同様に、イン・ビボ AVB試験は、AMBA-ゼラチンの閾値は0.5v未満であり、対照またはゼラチンペーシング電極より約3倍低かったことを示した。生体外およびイン・ビボの両方のデータは、ペーシング閾値電圧は、現在臨床で使用されている1.5vより低かったことを示した[29,30]。これらのデータは、AMBA-ゼラチンペーシングは、閾値を有意に減少させ得、それにより、エネルギー消費を低減させることを示唆している。
【0139】
以前の試験は、電極表面と細胞膜の間の距離が電極の幾何学的半径より長かった場合、閾値電圧は有意に増加したことを見出した[34]。現在、図12に例示されるように、電極-組織境界面にAMBA-ゼラチンヒドロゲルを注射することにより、電極表面から細胞膜までの距離は有意に減少した。これは、閾値を減少させる助けとなる細胞膜上でのより強い電界を生じさせる。
【0140】
導電性生体材料を製造した際、ゲル化することが困難であり、生体適合性が不十分なことから、AMBAは心筋組織への直接注射には使用できないことが見出された。生体適合性を増強し、ゲル形成の粘度を増やすために、AMBAを、コラーゲン由来の天然タンパク質であるゼラチンと結合させた。
【0141】
健常ラットにおけるペーシングの電気生理学も検討し、ペーシング電気生理学的性能は、対照またはゼラチンペーシング電極と比較して、AMBA-ゼラチンの生理学的電気条件に近かったことが見出された。データは、AMBA-ゼラチンの注射は、正常電極ペーシングと比較して、QT持続時間および80%APD時間を減少させたことを示した。さらに、AMBA-ゼラチンペーシング下での心臓全体の伝導速度は、正常電極ペーシングと比較して有意に増加した。QT間隔は、心室の電気的脱分極および再分極を表す。延長したQT間隔は、通常、脳室内伝導遅延の結果であり、進行性心不全に寄与し得る。AMBA-ゼラチンペーシングによる改善された心臓伝導および短縮されたQT間隔は、心室機能不全および進行性心不全の低減並びに心臓ペーシングにおける臨床適用を有し得る。
【0142】
実施例5:AMBA-ゼラチンヒドロゲルは線維性瘢痕組織における電気伝導率を改善した
方法:
心筋梗塞および生体材料の注射
【0143】
成体スプラーグドーリー(SD)ラット(230~260g)を、Charles River Laboratories(サン・コンスタン、ケベック州、カナダ)から購入した。総ての動物プロトコールおよび手順は、Animal Care Committee of the University Health Networkにより承認された。動物試験における試験手順は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals (NIH、第8版、2011)に従って行った。ラットを機械的に換気し、2%イソフルランで麻酔した。左片側開胸を行い心臓を露出させ、左前下行枝を結紮して心筋梗塞(MI)を生じさせた。次に、胸部を閉鎖し、動物に痛覚脱失のためにブプレノルフィン(0.05mg/kg)を投与した。総ての動物を、生理食塩水(n=12)、ゼラチン(n=12)、またはAMBA-ゼラチン(n=12)注射群に無作為化した。MIの1週後に、2回目の開胸を行い心臓にアクセスし、ここで、心室瘢痕が、左心室の前壁に白色-灰色領域として可視化された。28ゲージ針(BD Biosciences、ミシサガ、オンタリオ州)を用いて、100μLの生理食塩水、ゼラチン、またはAMBA-ゼラチンを1つの瘢痕および2つの境界領域に注射した。次に、胸部を閉鎖し、動物に痛覚脱失のためにブプレノルフィン(0.05mg/kg)を投与した。光学マッピング実験のために、生体材料の注射の12週後に、総ての動物を屠殺した。
【0144】
心臓の電気生理学
8リードカテーテルECG記録法および微小電極アレイ(MEA)を用いて、グローバルおよび局所心臓表面活動電位を評価した。
【0145】
遠隔測定ECG
Millar遠隔測定システム(Millar Inc.、ヒューストン、テキサス州)を用いて、意識のある自由に移動する動物からECG記録を取得した。総ての記録は、24時間にわたって得た。記録は、AMBA-ゼラチンまたはゼラチンを注射した動物から、注射後12週目に得た。総てのECGトレースは、ヒストグラムソフトウエア(Millar Inc.)を用いて、盲検化された心臓病専門医により評価され、この心臓病専門医は、単一および多形性の心室性期外収縮(PVC)、並びに非持続性および持続性心室頻拍(VT)を含む不整脈事象の総数および頻度を決定した。ランベス会議ガイドライン[21]に従って、VTを4発以上のPVCのランと定義し、持続性VTを15拍動超の速い心室調律と定義した。
【0146】
プログラム電気刺激
Nguyenら[22]から改変した方法を用いて、注射後12週目にプログラム電気刺激(PES)試験を行った。手短に言えば、各動物を機械的に換気し、2%イソフルランで麻酔した。モニタリングおよびその後のオフライン解析のためにアナログ-デジタル変換器(Lab Chart 6 Pro、AD Instruments)を介してコンピュータに接続された27ゲージ皮下電極を用いて、体表面ECGを記録した。胸骨において正中切開を行い、胸部を開き、心臓の心外膜表面を露出させた。2つの心外膜刺激電極針(Millar Inc.)を正常右心室心筋に挿入した。次に、絶縁刺激発生器(STG-4002、Multichannel Systems、ドイツ)を用いて、PES試験を行った。自発的な調律の下で適用されるバースト(120msサイクル長)、単一(70msサイクル長)、2連(60msサイクル長)、および3連(50msサイクル長)期外刺激を含む、標準的な臨床PESプロトコールを使用した。8連またはそれに次いで単一の期外刺激により、心臓を3回負荷した。PVCが誘発されなかった場合、この手順を繰り返して、2連および必要に応じて3連期外刺激により3回負荷を適用した。持続性(15拍動以上のVT)または非持続性VTが誘発された場合、またはプロトコールが消耗するまで、PESプロトコールを停止した。8連の条件刺激のみまたは最大3連期外刺激を適用して、PVCおよびVTを全梗塞動物において誘発した。不整脈感受性を、誘発性指数を用いて以下のように決定した:PVCまたはVTのない心臓には、スコア0を与えた;3連期外刺激で誘発された非持続性PVCまたはVT(15拍動以下)には、スコア1を与えた;3連期外刺激で誘発された持続性PVCまたはVT(15超)には、スコア2を与えた;2連期外刺激で誘発された非持続性PVCまたはVTには、スコア3を与えた;2連期外刺激で誘発された持続性PVCまたはVTには、スコア4を与えた;単一期外刺激で誘発された非持続性PVCまたはVTには、スコア5を与えた;単一期外刺激で誘発された持続性PVCまたはVTには、スコア6を与えた;8連の後に誘発された持続性または非持続性PVCまたはVTには、スコア7を与えた;ペーシング終了後の心停止には、スコア8を与えた。スコアが高いほど、不整脈誘導性が高い[22]。
【0147】
光学マッピング
12週のエンドポイント時に、動物を安楽死させ、それらの心臓を、心停止液を用いて停止させ、ランゲンドルフ(120142、Radnoti、モンロビア、カリフォルニア州)法を用いて灌流した(生理食塩水:n=6、ゼラチン:n=6、AMBA-ゼラチン:n=6)。心臓を、心停止液および電圧感受性色素(ジ-4-ANEPPS、D1199、Life Technologies)を用いて、氷上で10分間灌流した。電子増倍電荷結合素子カメラシステム(Evolve 128、Photometrics、ツーソン、アリゾナ州)を用いて電気伝導を測定し、等時マップを作成した。映像をブレインビジョンソフトウエア(ブレインビジョン株式会社、東京、日本)を用いて解析した。
【0148】
心臓左心室機能
梗塞前(0)、生体材料注射時、並びに注射の2および4週後に、心エコー(エコー、Vivid7、General Electric Healthcare)を用いて心機能を評価した。以下のパラメーターをエコーにより算出した(n=6/群):左心室収縮期内径(LVIDs)、左心室(LV)拡張期内径(LVIDd)、短縮率(LVFS)のパーセンテージおよび駆出率(LVEF)のパーセンテージ。
【0149】
統計解析
データは、平均±標準偏差として表す。解析は、限界α水準をp<0.05に設定したグラフパッドプリズムソフトウエア(v.6.0)を用いて行った。2群間の平均の比較にはスチューデントのt検定を用い、3以上の群間の平均の比較をANOVAを用いて行った。異なる時点で同じ動物を評価したECGおよび心エコー解析には、反復測定ANOVAを用いた。ANOVAのF値が有意であった場合、チューキーの事後検定を用いて、群間差を決定した。
【0150】
結果
導電性生体材料は、心筋線維性組織の抵抗率の減少を伴い、線維性瘢痕組織の電場電位振幅および電気インパルス伝播を増強した
イン・ビボにおける心臓瘢痕/線維性組織の電気活動および組織抵抗に対する導電性生体材料の効果を、ラットMIモデルを用いて評価した。注射の4週後、36リードフレキシブル微小電極アレイ(MEA)を用いて、局所電場電位を評価し、瘢痕領域を横断する電気インパルス伝播を検出した(図13A)。AMBA-ゼラチンを注射した梗塞心臓は、ゼラチンを注射した梗塞心臓と比較して、大きな瘢痕電場電位振幅を有していた(図13BおよびC、N=6/群)。
【0151】
導電性生体材料の生物学的導電性特性を評価するため、注射後4週目に、8リードカテーテルを用いて、収縮中のグローバル心臓表面電場電位振幅を測定し、2個のリードを正常心筋に留置し、2個のリードを境界帯に留置し、2個のリードを線維性瘢痕領域に留置した(図13D~F)。AMBA-ゼラチンを注射した心臓は、ゼラチンを注射した梗塞心臓と比較して、最も高い瘢痕電場電位振幅比(瘢痕振幅/遠隔振幅)を有していた(p<0.01、N=5/群)。これらの結果は、AMBA-ゼラチンの注射は線維性瘢痕組織における電気活動を改善したことを示唆している。
【0152】
AMBA-ゼラチンを注射した梗塞ラット心臓における導電性生体材料は、MI後の自発性不整脈の率を減少させた
心不整脈に対する感受性を増加させることに対する梗塞瘢痕への導電性ポリマーの注射に関する懸念を緩和するために、導電性材料を線維性瘢痕に注射した4週後に、携帯型遠隔測定ECG記録を得た。72時間の連続記録以内に、梗塞動物は一貫した前心室収縮(PVC)を示したが(図14A)、AMBA-ゼラチン群は、1時間あたりのPVCの低い率を有していた(図14、ゼラチンとの比較でp<0.05、N=5)。
【0153】
導電性生体材料の注射は誘発性不整脈を低減させた
心不整脈に対する梗塞心臓の感受性を検討するために、標準的な臨床法であるプログラム電気刺激(PES)を用いて、不整脈を誘発した。生体材料注射後4週目に、ラット心臓をPESに供し、PVC誘発に対する生体材料注射の効果を決定した(図14C)。PESで負荷した際、誘発性指数に基づいた不整脈感受性は、ゼラチンを注射したラットと比較して、AMBA-ゼラチンを注射したラットにおいて有意に低く、不整脈感受性は低いことが示唆された(図14D、p<0.01、N=5/群)。
【0154】
導電性生体材料の注射は、イン・ビボにおいて、グローバル線維性瘢痕組織の電場電位振幅を増強し、伝導速度を改善した
左心室の電気信号伝導速度を直接評価するために、生体材料を注射した動物における光学マッピング技術を用いた。健常ラット(MIなし)からの心臓、およびMI後にゼラチン単独またはAMBA-ゼラチンを注射した心臓を、試験終了時(4週目)に切除し、ランゲンドルフ灌流した。電圧感受性色素(ジ-4-ANEPPS)を用いて、全群における正常および梗塞瘢痕領域を横断する電気インパルス伝導速度を評価した(図14E~G)。図5Hは、ゼラチンを注射した心臓は、正常心臓と比較して、有意に減少した縦方向の伝導速度を有していたことを示す。しかしながら、AMBA-ゼラチンを注射した心臓における縦方向の伝導速度は、正常心臓と近く、ゼラチンを注射した心臓におけるものよりも有意に大きかった(図14H、p<0.01、N=6/群)。これらの結果は、AMBA-ゼラチンの注射は、傷害後の心臓の電気信号の伝導を改善することを示唆している。
【0155】
導電性生体材料は、推定された同期化収縮を改善し、MI後の心機能を保存した
AMBA-ゼラチンまたはゼラチンを注射した心臓を、生体材料注射と比較して、-7日目~最大+28日目に、心エコー(エコー)を用いて評価した(図15)。全群が、ベースラインと比較して、0日目に、減少した左心室短縮率(LVFS)および増加したLV収縮期内径(LVIDs)を示したが、2群間に有意差は認められなかった。ゼラチン対照群は、-7日目~最大+28日目の間に、増加したLVIDsおよび減少したFSを示した。しかしながら、AMBA-ゼラチンは、注射後28日目にこれらのパラメーターを改善し、ゼラチン対照と比較して低いLVIDsを伴い有意に大きいFSを示した(p<0.01、N=6)。低いLVIDsは、改善された同期化収縮におそらく起因する有害な心臓リモデリングの低減を示唆した。
【0156】
実施例6
AMBA-ゼラチンスポンジを、実施例1に記載の通りに調製した。AMBAゼラチンスポンジおよび通常のゼラチンスポンジ(AMBAポリマーなし)を心臓細胞培養培地に浸し、心筋細胞を各スポンジに載せた。
【0157】
細胞を約2週間成長させ、画像解析を用いてカルシウム放出を測定することにより、収縮の同期化に関して試験した。AMBA-ゼラチン上で成長した細胞は同期化されたが、AMBA-ゼラチンポリマーなしで成長した細胞は同期化されなかったことが見出された。
【0158】
実施例の態様を参照して本開示を特に示し、説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変更をその中において行えることが、当業者により理解されるであろう。
【0159】
総ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許または特許出願が、特別におよび個別にその全体が引用することにより本明細書の一部とされると示されるのと同じ程度まで、それらの全体が引用することにより本明細書の一部とされる。
参考文献

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