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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】積層型電極体の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20231213BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20231213BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021000511
(22)【出願日】2021-01-05
(65)【公開番号】P2022105896
(43)【公開日】2022-07-15
【審査請求日】2022-02-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】久保田 清幸
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-257861(JP,A)
【文献】特開2010-001146(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートおよび負極シートが、セパレータシートを介して複数積層された積層型電極体の製造方法であって、
吸着板の表面の所定の位置に第1セパレータシートを吸着させる、第1セパレータ吸着処理と、
前記吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、前記正負極シートのうちのいずれかからなる第1電極シートを吸着させる第1電極シート吸着処理と、
前記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートの相対的な位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得し、該取得した位置情報が予め定められている正常位置関係を示すか否かを検査する、電極吸着位置検査処理と、
前記電極吸着位置検査処理において、前記正常位置関係を示した場合に、前記吸着板に吸着させた状態の第1電極シートの表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着させ、
前記正常位置関係を示さない場合に、該吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートを所定の積層台に配置しないようにする、第1電極シート選別処理と、を包含する選択的第2セパレータ吸着処理と、
前記吸着させた状態の第1セパレータシート、第1電極シートおよび第2セパレータシートからなる3枚シートを、所定の積層台に配置する、3枚シート配置処理と、を包含する第1電極シート配置工程と、
前記吸着板の表面の所定の位置に、第1電極シートとは対極側の第2電極シートを吸着させる、第2電極シート吸着処理と、
前記吸着させた状態の第2電極シートを、前記第1電極シート配置工程後に得られる積層体上に配置する、電極シート配置処理と、を包含する第2電極シート配置工程と、を包含し、
前記第1電極シート配置工程と、前記第2電極シート配置工程とを、予め定められた前記正負極シートの積層数に到達するまで交互に繰り返し行う、積層型電極体の製造方法。
【請求項2】
正極シートおよび負極シートが、セパレータシートを介して複数積層された積層型電極体の製造方法であって、
吸着板の表面の所定の位置に第1セパレータシートを吸着させる、第1セパレータ吸着処理と、
前記吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、前記正極シートからなる第1電極シートを吸着させる第1電極シート吸着処理と、
前記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートの相対的な位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得し、該取得した位置情報が予め定められている正常位置関係を示すか否かを検査する、第1電極吸着位置検査処理と、
前記第1電極吸着位置検査処理において、前記正常位置関係を示した場合に、前記吸着板に吸着させた第1電極シートの表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着させ、
前記正常位置関係を示さない場合に、該吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび正極シートを所定の積層台に配置しないようにする、第1電極シート選別処理と、を包含する選択的第2セパレータ吸着処理と、
前記吸着させた第2セパレータシートの表面の所定の位置に、前記負極シートからなる第2電極シートを吸着させる、第2電極シート吸着処理と、
前記吸着板に吸着させた状態の第2セパレータシートおよび第2電極シートの相対的な位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得し、該取得した位置情報が予め定められている正常位置関係を示すか否かを検査する、第2電極吸着位置検査処理と、
前記第2電極吸着位置検査処理において、前記正常位置関係を示した場合に、前記吸着板に吸着させた状態の第1セパレータシート、第1電極シート、第2セパレータシートおよび第2電極シートからなる4枚シートを、所定の積層台に配置し、
該正常位置関係を示さない場合に、該吸着板に吸着させた状態の前記4枚シートを該積層台に配置しないようにする、第2電極シート選別処理と、を包含する選択的4枚シート配置処理、
を包含する4枚シート配置工程を、予め定められた前記正負極シートの積層数に到達するまで繰り返し行う、積層型電極体の製造方法。
【請求項3】
前記電極吸着位置検査処理において、前記相対的な位置情報は、前記対向する方向に配置したカメラにより撮影された前記吸着板の表面画像に基づいて取得される、請求項1または2に記載の積層型電極体の製造方法。
【請求項4】
前記第1電極シート、前記第2電極シート、および前記セパレータシートはいずれも矩形状であり、
前記電極吸着位置検査処理において、前記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートの4つの角部と、該吸着板に吸着させた状態の第1電極シートまたは第2電極シートの4つの角部との、相対的な位置情報を取得することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の積層型電極体の製造方法。
【請求項5】
前記吸着板は多孔質吸着板である、請求項1からのいずれか一項に記載の積層型電極体の製造方法。
【請求項6】
正極シートおよび負極シートが、セパレータシートを介して複数積層された積層型電極体を製造する製造装置であって、
前記正極シート、前記負極シート、および前記セパレータシートを積層する積層台と、
該積層台までシートを搬送する搬送手段であって、吸着板を有する駆動可動な吸着部を備えた搬送手段と、前記吸着板に吸着させる前の状態のセパレータシート、正極シートまたは負極シートの位置情報を、該吸着板の表面方向から取得する制御用カメラと、
前記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートと、該吸着板に吸着させた状態の正極シートまたは負極シートとの相対的な位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得する検査部と、
前記検査部、前記制御用カメラおよび前記搬送手段を制御するための制御部と、を備えており、
ここで、前記制御部は、以下の1)から
)前記吸着板の表面の所定の位置に第1セパレータシートを吸着させること、
前記吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、前記正負極シートの
うちのいずれかからなる第1電極シートを吸着させること、
前記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートの相対的な位
置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得し、該取得した位置情報が予め定め
られている正常位置関係を示すか否かを検査すること、
前記正常位置関係を示した場合に、前記吸着板に吸着させた状態の第1電極シートの
表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着させ、
前記正常位置関係を示さない場合に、該吸着板に吸着させた状態のセパレータシート
および第1電極シートを所定の積層台に配置しないようにすること、
前記吸着させた状態の第1セパレータシート、第1電極シートおよび第2セパレータ
シートからなる3枚シートを、所定の積層台に配置すること、
を包含する第1電極シート配置プロセスと、
前記吸着板の表面の所定の位置に、第1電極シートとは対極側の第2電極シートを吸
着させること、
前記吸着させた状態の第2電極シートを、前記第1電極シート配置プロセス後に得ら
れる積層体上に積層すること、
を包含する第2電極シート配置プロセスと、
を包含し、
前記第1電極シート配置プロセスと、前記第2電極シート配置プロセスとを、予め定
められた前記正負極シートの積層数に到達するまで交互に繰り返し行うこと、
)前記吸着板の表面の所定の位置に第1セパレータシートを吸着させること、
前記吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、前記正極シートからなる第1電極シートを吸着させること、
前記吸着させた第1電極シートの表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着
させること、
前記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートの相対的な位
置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得し、該取得した位置情報が予め定め
られている正常位置関係を示すか否かを検査すること、
前記正常位置関係を示した場合に、前記吸着板に吸着させた状態の第1電極シートの
表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着させ、
前記正常位置関係を示さない場合に、該吸着板に吸着させた状態のセパレータシート
および第1電極シートを所定の積層台に配置しないようにすること、
前記吸着させた第2セパレータシートの表面の所定の位置に、前記負極シートからなる第2電極シートを吸着させること、
前記吸着板に吸着させた状態の第2セパレータシートおよび第2電極シートの相対的
な位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得し、該取得した位置情報が予め
定められている正常位置関係を示すか否かを検査すること、
前記正常位置関係を示した場合に、前記吸着板に吸着させた状態の第1セパレータシ
ート、第1電極シート、第2セパレータシートおよび第2電極シートからなる4枚シー
トを所定の積層台に配置し、
該正常位置関係を示さない場合に、該吸着板に吸着させた状態の前記4枚シートを該
積層台に配置しないようにすること、
を包含する第1電極シートおよび第2電極シート配置プロセスを、予め定められた前記
正負極シートの積層数に到達するまで繰り返し行うこと、
のいずれかを実行するように構成されている、積層型電極体の製造装置。
【請求項7】
前記検査部は、前記吸着板の表面画像を撮影することができるカメラを備える、請求項に記載の積層型電極体の製造装置。
【請求項8】
前記吸着板は多孔質吸着板である、請求項またはに記載の積層型電極体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電極体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電池、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池は、電気を駆動源とする車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末等の電気製品等に搭載される電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)等の車両の駆動用高出力電源として好ましく、今後も需要が拡大するものと期待されている。
【0003】
かかる電池の一態様として、正極シートおよび負極シートが、セパレータシートを介して複数積層された積層型電極体を備えた電池が挙げられる。かかる積層型電極体は、典型的には、正極シート、負極シート、セパレータシートを個別に吸着部に吸着させて積層台まで搬送し、順次積層することにより製造される。例えば、下記特許文献1および2には、上記工程を実施するための部材を含む積層装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-116807号公報
【文献】特開2015-176699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、電池をより精度高く生産するために、該電池が備える電極体の精度を向上させることが要求されている。例えば、積層型電極体においてかかる要求を実現するためには、正極シート、負極シート、セパレータシートの位置を精度高く制御しながら積層すること等が必要であるとされる。しかしながら、従来の技術では、正極シート、負極シート、セパレータシートを個別に吸着部に吸着させて積層台まで運搬するため、積層体の態様においてそれぞれの位置を精度高く制御することは困難であった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされてものであり、その主な目的は、高精度な積層型電極体を製造することができる積層型電極体の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を実現するべく、本発明は、正極シートおよび負極シートが、セパレータシートを介して複数積層された積層型電極体の製造方法を提供する。
ここで開示される第1の製造方法は、吸着板の表面の所定の位置にセパレータシートを吸着させる、セパレータ吸着処理と、上記吸着させたセパレータシートの表面の所定の位置に、上記正負極シートのうちのいずれかからなる第1電極シートを吸着させる第1電極シート吸着処理と、上記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートの相対的な位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得し、該取得した位置情報が予め定められている正常位置関係を示すか否かを検査する、電極吸着位置検査処理と、上記電極吸着位置検査処理において、上記正常位置関係を示した場合に、上記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートを所定の積層台に配置し、該正常位置関係を示さない場合に、該吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートを該積層台に配置しないようにする第1電極シート選別処理と、を包含する選択的第1電極シート配置工程(第1の2枚シート配置工程)と、上記選択的第1電極シート配置工程の上記の各処理を、上記セパレータシートおよび上記第1電極シートとは対極側の第2電極シートを対象にして行う、選択的第2電極シート配置工程(第2の2枚シート配置工程)と、を包含し、上記選択的第1電極シート配置工程と、上記選択的第2電極シート配置工程とを、予め定められた上記正負極シートの積層数に到達するまで交互に繰り返し行うことを特徴とする。
かかる構成の積層型電極体の製造方法によると、積層前の段階においてセパレータシートおよび正極シート(または、負極シート)の相対的な位置関係を確認し、該相対的な位置関係が正常であるとみなされたもののみが積層される。これにより、積層体の態様において各シートの位置が精度高く制御された積層型電極体を製造することができる。
【0008】
ここで開示される第2の製造方法は、吸着板の表面の所定の位置に第1セパレータシートを吸着させる、第1セパレータ吸着処理と、上記吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、上記正負極シートのうちのいずれかからなる第1電極シートを吸着させる第1電極シート吸着処理と、上記吸着させた第1電極シートの表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着させる、第2セパレータ吸着処理と、上記吸着させた状態の第1セパレータシート、第1電極シートおよび第2セパレータシートからなる3枚シートを、所定の積層台に配置する、3枚シート配置処理と、を包含する第1電極シート配置工程と、上記吸着板の表面の所定の位置に、第1電極シートとは対極側の第2電極シートを吸着させる、第2電極シート吸着処理と、上記吸着させた状態の第2電極シートを、上記第1電極シート配置工程後に得られる積層体上に配置する、電極シート配置処理と、を包含する第2電極シート配置工程と、を包含し、上記第1電極シート配置工程と、上記第2電極シート配置工程とを、予め定められた上記正負極シートの積層数に到達するまで交互に繰り返し行うことを特徴とする。
かかる構成の積層型電極体の製造方法によると、セパレータシート、正極シート(または、負極シート)、セパレータシートの相対的な位置関係が維持された状態で、積層を実施することができる。これにより、積層体の態様において各シートの位置が精度高く制御された積層型電極体を製造することができる。
【0009】
ここで開示される第3の製造方法は、吸着板の表面の所定の位置に第1セパレータシートを吸着させる、第1セパレータ吸着処理と、上記吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、上記正負極シートのうちのいずれかからなる第1電極シートを吸着させる第1電極シート吸着処理と、上記吸着させた第1電極シートの表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着させる、第2セパレータ吸着処理と、上記吸着させた第2セパレータシートの表面の所定の位置に、上記第1電極シートとは対極側の第2電極シートを吸着させる、第2電極シート吸着処理と、上記吸着させた状態の第1セパレータシート、第1電極シート、第2セパレータシートおよび第2電極シートからなる4枚シートを、所定の積層台に配置する、4枚シート配置処理、を包含する4枚シート配置工程を、予め定められた上記正負極シートの積層数に到達するまで繰り返し行うことを特徴とする。
かかる構成の積層型電極体の製造方法によると、セパレータシート、正極シート(または、負極シート)、セパレータシート、負極シート(または、正極シート)の相対的な位置関係が維持された状態で、積層を実施することができる。これにより、積層体の態様において各シートの位置が精度高く制御された積層型電極体を製造することができる。
【0010】
ここで開示される積層型電極体の製造方法の好ましい一態様では、上記電極吸着位置検査処理において、上記相対的な位置情報は、上記対向方向に配置したカメラにより撮影された上記吸着板の表面画像に基づいて取得される。
カメラにより撮影された上記吸着板の表面画像によると、上記相対的な位置情報をより精度高い状態で取得することができるため、好ましい。
【0011】
ここで開示される積層型電極体の製造方法の好ましい一態様では、上記第1電極シート、上記第2電極シート、および上記セパレータシートはいずれも矩形状であり、上記電極吸着位置検査処理において、上記吸着板に吸着させた状態の該セパレータシートの4つの角部と、該吸着板に吸着させた状態の該第1電極シートまたは第2電極シートの4つの角部との、相対的な位置情報を取得する。
上記第1電極シート、上記第2電極シート、および上記セパレータシートが矩形状である場合、このような位置情報の取得は有効である。
【0012】
ここで開示される積層型電極体の製造方法の好ましい一態様では、上記吸着板は多孔質吸着板である。
吸着板として多孔質吸着板を用いることにより、セパレータシートに吸着痕が付きにくくなるため、好ましい。
【0013】
また、本発明は、他の側面として、正極シートおよび負極シートが、セパレータシートを介して複数積層された積層型電極体を製造する製造装置を提供する。
かかる製造装置は、上記正極シート、上記負極シート、および上記セパレータシートを積層する積層台と、該積層台までシートを搬送する搬送手段であって、吸着板を有する駆動可動な吸着部を備えた搬送手段と、上記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートと、該吸着板に吸着させた状態の正極シートまたは負極シートとの相対的な位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得する検査部と、上記検査部および上記搬送手段を制御するための制御部と、を備えている。そして、上記制御部は、以下の1)~3):
1)上記吸着板の表面の所定の位置にセパレータシートを吸着させること、上記吸着させたセパレータシートの表面の所定の位置に、上記正負極シートのうちのいずれかからなる第1電極シートを吸着させること、上記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートの相対的な位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得し、該取得した位置情報が予め定められている正常位置関係を示すか否かを検査すること、上記正常位置関係を示した場合に、上記吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートを所定の積層台に配置し、該正常位置関係を示さない場合に、該吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび第1電極シートを該積層台に配置しないようにすること、を包含する選択的第1電極シート配置プロセスと、上記選択的第1電極シート配置プロセスを、上記セパレータシートおよび上記第1電極シートとは対極側の第2電極シートを対象にして行う、選択的第2電極シート配置プロセスと、を包含し、上記選択的第1電極シート配置プロセスと、上記選択的第2電極シート配置プロセスとを、予め定められた上記正負極シートの積層数に到達するまで交互に繰り返し行うこと、
2)上記吸着板の表面の所定の位置に第1セパレータシートを吸着させること、上記吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、上記正負極シートのうちのいずれかからなる第1電極シートを吸着させること、上記吸着させた第1電極シートの表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着させること、上記吸着させた状態の第1セパレータシート、第1電極シートおよび第2セパレータシートからなる3枚シートを、所定の積層台に配置すること、を包含する第1電極シート配置プロセスと、上記吸着板の表面の所定の位置に、第1電極シートとは対極側の第2電極シートを吸着させること、上記吸着させた状態の第2電極シートを、上記第1電極シート配置プロセス後に得られる積層体上に積層すること、を包含する第2電極シート配置プロセスと、を包含し、上記第1電極シート配置プロセスと、上記第2電極シート配置プロセスとを、予め定められた上記正負極シートの積層数に到達するまで交互に繰り返し行うこと、
3)上記吸着板の表面の所定の位置に第1セパレータシートを吸着させること、上記吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、上記正負極シートのうちのいずれかからなる第1電極シートを吸着させること、上記吸着させた第1電極シートの表面の所定の位置に、第2セパレータシートを吸着させること、上記吸着させた第2セパレータシートの表面の所定の位置に、上記第1電極シートとは対極側の第2電極シートを吸着させること、上記吸着させた状態の第1セパレータシート、第1電極シート、第2セパレータシートおよび第2電極シートからなる4枚シートを、所定の積層台に配置すること、を包含する4枚シート配置プロセスを、予め定められた上記正負極シートの積層数に到達するまで繰り返し行うこと、
のいずれかを実行するように構成されていることを特徴とする。
かかる制御部を備えた積層型電極体の製造装置によると、積層体の態様において各シートの位置が精度高く制御された積層型電極体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る積層型電極体製造装置の主な構成を模式的に示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る第1の製造方法について説明するための大まかな工程図である。
図3】一実施形態に係る第1の製造方法ついて説明するための制御フローチャートである。
図4】(A)一実施形態に係る第1の製造方法における、吸着板に吸着させた状態のセパレータシートの表面の所定の位置に正極シートを吸着させるために、吸着前の正極シートの吸着位置情報を取得する態様を説明するための模式図であり、(B)該吸着位置情報として、該吸着前の正極シートの4つの角部の位置情報を取得する態様を模式的に示す平面図である。
図5】(A)一実施形態に係る第1の製造方法における、吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび正極シートの積層位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得する態様を説明するための模式図であり、(B)該吸着板の表面の態様を模式的に示す平面図である。
図6】一実施形態に係る第2の製造方法について説明するための制御フローチャートである。
図7】一実施形態に係る第3の製造方法について説明するための制御フローチャートである。
図8】一実施形態に係る積層型電極体を備えた電池の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ここで開示される積層型電極体の製造方法および製造装置に関する好適な一実施形態について、適宜図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の実施形態は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。また、本明細書にて示す図面では、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明している。さらに、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下の意味である。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
【0016】
先ず、本実施形態に係る積層型電極体製造装置1により製造される典型的な積層型電極体80を備えた電池100の構成について、図8を参照しつつ簡単に説明する。なお、以下では、外装体70としてラミネートフィルムからなる外装体を用いた場合を例にして説明するが、外装体をかかる種類に限定することを意図したものではない。外装体は、例えば六面体形状の金属製の電池ケース等であってよい。
【0017】
<電池の全体構成>
図8は、一実施形態に係る積層型電極体80を備えた電池100の構成を模式的に示す平面図である。図8に示すように、電池100は大まかにいって、積層型電極体80と、該電極体を収容する外装体70とを備えている。一対のラミネートフィルムの間に積層型電極体80を配置し、ラミネートフィルムの外周縁部を溶着して図示しない溶着部を形成することにより、積層型電極体80を収容する外装体70が形成される。
【0018】
詳しい図示は省略するが、本実施形態に係る積層型電極体80は、矩形状の正極シート40および負極シート50(以下、まとめて「電極シート」ともいう)が、同じく矩形状のセパレータシート60を介して複数積層されて形成されている。かかる電極シートは、箔状の金属部材である集電体(正極集電体42,負極集電体52)と、該集電体の表面(片面または両面)に形成された電極活物質層(正極活物質層41,負極活物質層51)とを備えている。
本実施形態に係る矩形状の電極シートにおいて、長辺方向の一方の側縁部に、電極活物質層が形成されておらず集電体が露出した活物質層非形成部分(正極活物質層非形成部分43,負極活物質層非形成部分53)が形成されている。そして、正極活部物質層非形成部分43が一方の側縁部からはみ出し、かつ、負極活物質層非形成部分53が他方の側縁部からはみ出すように各々の電極シートを重ねることによって積層型電極体80が形成される。かかる積層型電極体の長辺方向の中央部には、電極シートの電極活物質層が重ねられたコア部が形成されている。そして、長辺方向の一方の側縁部には、正極活物質層非形成部分43が複数層重ねられた正極端子接続部が形成され、他方の側縁部には、負極活物質層非形成部分53が複数層重ねられた負極端子接続部が形成される。正極集電端子44は正極集電端子接続部に接続されており、負極集電端子54は負極集電端子接続部に接続されている。
【0019】
なお、本実施形態に係る積層型電極体の製造方法により製造される積層型電極体80を備えた電池100は、例えば非水電解液二次電池であってもよいし、全固体電池であってもよい。非水電解液二次電池の場合、電極シートの間に絶縁性のセパレータシート60が挿入された積層型電極体80が用いられると共に、外装体70の内部に非水電解液が収容される。一方、全固体電池の場合、電極シートの間に固体電解質層(セパレータシート60に相当する)が挿入された積層型電極体80が用いられる。なお、これらの部材(具体的には、電極シート、セパレータシート、固体電解質層、非水電解液等)としては、この種の二次電池に使用され得るものを特に制限なく使用することができる。
【0020】
次に、ここで開示される第1~3の製造方法それぞれの好適な一実施形態について、積層型電極体の製造方法を具現化する積層型電極体製造装置1を交えて説明する。
図1は、一実施形態に係る積層型電極体製造装置1の主な構成を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、積層型電極体製造装置1は大まかにいって、積層台2と、シート収容部(正極シート収容部4,負極シート収容部6,セパレータシート収容部8)と、搬送手段10と、検査用カメラ20(検査部に相当する)と、制御部30とを備えている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0021】
<積層台2>
本実施形態に係る積層台2は、正極シート40、負極シート50、およびセパレータシート60を積層する台である。積層台2は、平面視が矩形状であり、少なくとも正極シート40、負極シート50、およびセパレータシート60を配置することができる程度の大きさを有する。積層台2の構成(例えば、構成材料等)は、ここで開示される技術を実施することができる限りにおいて特に制限されない。また、図示は省略するが、積層台2では、正極シート40の正極活物質層非形成部分43と、負極シート50の負極活物質層非形成部分53とが、逆方向に突出するように、セパレータシート60を介して積層される。
【0022】
<シート収容部>
本実施形態に係る積層型電極体製造装置1は、正極シート収容部4、負極シート収容部6、およびセパレータシート収容部8を備えている。正極シート収容部4には、正極シート40が、正極活物質層非形成部分43を同一方向に揃えた状態で複数枚積層されて収容されている。負極シート収容部6には、負極シート50が、負極活物質層非形成部分53を同一方向に揃えた状態で複数枚積層されて収容されている。そして、セパレータシート収容部8には、セパレータシート60が複数枚積層されて収容されている。
【0023】
<搬送手段10>
本実施形態に係る搬送手段10は、正極シート40、負極シート50、およびセパレータシート60を、積層台2まで搬送する手段である。図1に示すように、本実施形態に係る搬送手段10は、大まかにいって、アーム部11と、該アーム部の先端に備え付けられた吸着部12と、これらを支えるベース部17とから構成されている。アーム部11を操作することにより、吸着部12を所望の位置に移動させることができる。また、アーム部11およびベース部17としては、かかる用途に使用し得るものを特に制限なく使用することができる。
【0024】
本実施形態に係る吸着部12は、吸着板13と、吸着ベース14と、吸引チューブ15とを備えている。吸着板13は、正極シート40、負極シート50、およびセパレータシート60を吸着させる部分である。かかる吸着板の構成は、ここで開示される技術を実施することができる限りにおいて特に制限されないが、例えば多孔質体からなる吸着板(即ち、多孔質吸着板)や、人為的に孔が形成された多孔式吸着板等を用いることができる。なかでも、セパレータシート60に吸着痕が生じることを防止するという観点から、多孔質吸着板が好ましく用いられ得る。吸着板13は、吸着ベース14に設置されている。
また、図1に示すように、吸着部12の外部には吸引チューブ15が設置されている。かかる吸引チューブの他端側は、図示しないバキュームポンプに接続されており、該バキュームポンプは後述する制御部30によりオンオフの制御がなされている。これにより、吸着板13におけるシートの吸着および吸着解除がコントロールされている。
さらに、図1に示すように、本実施形態に係る吸着部12の先端には、制御用カメラ16が備えられている。かかる制御用カメラにより、吸着させる対象物(ここでは、正極シート40、負極シート50、およびセパレータシート60)の全体またはその一部を撮影する。そして、取得された画像データは、図示しない発信源から後述する制御部30に送信され、後述する吸着部12の位置調整等において活用される。なお、上記発信源は、制御用カメラ16に備えられていてもよいし、該制御用カメラ以外の部分に存在していてもよい。
【0025】
<検査用カメラ20>
本実施形態に係る検査用カメラ20では、吸着板13に吸着させた状態のセパレータシート60および正極シート40(または、負極シート50)の相対的な積層位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から画像データとして取得する。カメラにより得られた画像データによると、上記相対的な積層位置情報を精度高い状態で取得することができるため、好ましい。かかる画像データは、吸着板13の表面の全体の画像データであってもよいし、一部分の画像のデータであってもよい。
取得された画像データは、図示しない発信源から後述する制御部30に送信され、後述する吸着板13の表面に吸着された状態のセパレータシート60および正極シート40(または、負極シート50)を積層台2に配置するか否かの検査等において活用される。なお、上記発信源は、検査用カメラ20に備えられていてもよいし、該検査用カメラ以外の部分に存在していてもよい。
【0026】
<制御部30>
本実施形態に係る制御部30は、検査用カメラ20および搬送手段10(制御用カメラ16)を制御している。制御部30は、一般的な制御部と同様、演算部(CPU)、記憶部(メモリ)、入力部および出力部等から構成されている。記憶部には、本実施形態に係る積層型電極体の製造方法を実行するための種々のプログラムが記憶されており、演算部がかかるプログラムを読みだして実行することにより、本実施形態に係る積層型電極体の製造方法が実行される。なお、制御部30の構成自体は、本発明を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。以下、ここで開示される第1~3の製造方法それぞれの好適な一実施形態について、制御部30が実行する手順(図2図3図6図7)を交えて詳細に説明する。
【0027】
<第1の製造方法>
図2は、一実施形態に係る第1の製造方法ついて説明するための大まかな工程図である。図2に示すように、一実施形態に係る第1の製造方法は、大まかにいって、選択的第1電極シート配置工程(ステップS1)と、選択的第2電極シート配置工程(ステップS2)とを、予め定められた正極シート40および負極シート50の積層数に到達するまで交互に繰り返し行うことを特徴とする。また、図3は、図2をより具体的に説明するための制御フローチャートである。ここで、上記ステップS1およびステップS2は、図3におけるステップS10からステップS15を包含する工程であり得る。以下、上記第1電極シートを正極シート40、上記第2電極シートを負極シート50とした場合について、図3を交えて説明する。
【0028】
図3に示すように、一実施形態に係る第1の製造方法では、先ず、吸着板13の表面の所定の位置に、セパレータシート60を吸着させる(ステップS10)。そして、吸着板13に吸着させたセパレータシート60の表面の所定の位置に、正極シート40を吸着させる(ステップS11)。
ここで、上記ステップS11では、図4の(A)に示すように、制御用カメラ16により正極シート収容部4に収容されている正極シート40のうち最表面に存在するものの全体像を撮影する。そして、取得された画像データは図示しない発信源から発信され、制御部30により受信される。
続いて、上記取得された画像データにおける正極シート40の4つの角部(以下、かかる4つの角部のことを、単に「4隅」ともいう)の位置(図4の(B)を参照)と、制御部30に予め記憶されている画像データにおける正極シート40の4隅の位置とを照合する。ここで、上記予め記憶されている画像データにおける正極シート40の4隅の位置とは、正極シート40の吸着に際して吸着部12を移動させる時に、該吸着部が適切な位置に存在する場合、当該吸着部が備える制御用カメラ16により取得され得る画像データにおける正極シート40の4隅の位置を示している。そして、上記取得された正極シート40の4隅の位置と、上記予め記憶されている正極シート40の4隅の位置との間にズレが生じている場合、かかるズレをx軸座標およびy座標の移動量として捉え、かかる移動量だけ吸着部12を移動させる。このように、正極シート40を吸着させる前に吸着部12の位置を適切に調整することにより、該吸着板に吸着させたセパレータシート60の表面の所望の位置に、正極シート40を精度高く吸着させることが可能になる。
【0029】
次に、吸着板13に吸着させた状態のセパレータシート60および正極シート40の相対的な積層位置情報を、該吸着板の表面に対向する方向から取得する(ステップS12)。そして、上記ステップS12で取得した積層位置情報が、予め定められている正常位置関係を示すか否かを検査する(ステップS13)。
ここで、上記ステップS12では、図5の(A)に示すように、検査用カメラ20により吸着板13の表面に吸着させた状態のセパレータシート60および正極シート40の画像データを、該吸着板の表面と対向する方向から取得する。そして、取得された画像データは図示しない発信源から発信され、制御部30により受信される。
また、上記ステップS13では、図5の(B)に示すように、上記取得された画像データにおけるセパレータシート60の4隅および正極シート40の4隅のクリアランス(即ち、図5の(B)におけるP~P部分およびQ~Q部分)と、制御部30に予め記憶されているセパレータシート60の4隅および正極シート40の4隅のクリアランスとを照合する。ここで、上記予め記憶されている画像データにおけるセパレータシート60の4隅および正極シートの4隅のクリアランスとは、吸着板13に吸着された状態のセパレータシート60および正極シート40が適切な位置に存在する場合に、検査用カメラ20により取得され得る画像データにおける各々の4隅のクリアランスを示す。また、図5の(B)におけるP~P部分およびQ~Q部分は、各種アルゴリズムを駆使する等の方法により算出することができる。
【0030】
上記取得された画像データにおける4隅のクリアランスが、上記予め記憶されている4隅のクリアランスと比較して許容誤差内である場合、吸着板13に吸着された状態のセパレータシート60および正極シート40の相対的な位置関係は、正常位置関係を示すと判定される。また、上記取得された画像データにおける4隅のクリアランスが、上記予め記憶されている4隅のクリアランスと比較して許容誤差外である場合、吸着板13に吸着された状態のセパレータシート60および正極シート40の相対的な位置関係は、正常位置関係を示さないと判定される。なお、上記許容誤差は、例えばセパレータシート60の平面の大きさが305mm×425mm、正極シート40の平面の大きさが300mm×420mmである場合、±0.6~±1.1mm等とすることができる(下記(vi)に記載の距離における許容誤差についても同様である)。
【0031】
上記ステップS13において、吸着板13に吸着させた状態のセパレータシート60および正極シート40が予め定められた正常位置関係を示すと判定された場合、該吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび正極シートを、積層台2に配置する(ステップS15)。
一方、上記ステップS13において、吸着板13に吸着させた状態のセパレータシート60および正極シート40が、予め定められた正常位置関係を示さないと判定された場合、該吸着板に吸着させた状態のセパレータシートおよび正極シートを、積層台2に配置せずに該吸着板から除去し(ステップS14)、再度ステップS10に戻る。なお、吸着板13から除去されたシートはそのまま廃棄してもよいし、コスト削減等の観点から再度積層に利用してもよい。かかる操作を、ステップS15に到達するまで繰り返し行う。
【0032】
そして、上記ステップS15に到達した場合、正極シート40および負極シート50の積層数が予め定められた積層数に到達するかを確認する(ステップS16)。上記積層数に到達している場合は、積層を完了し(ステップS17)、該積層数に到達していない場合は、再度ステップS10に戻る。なお、セパレータシート60および正極シート40の配置が終了した後、再度ステップS10に戻る場合、今度は正極シート40の代わりに負極シート50を対象としてステップS10からステップS15までの操作を行う。これにより、セパレータシート60および負極シート50を配置する。かかる操作をステップS17に到達するまで繰り返し行うことにより、積層体を製造することができる。
【0033】
なお、一実施形態に係る第1の製造方法おいて製造される積層体の最下部(即ち、積層台2に接する部分)には、正極シート40が直に存在するため、該積層体の最下部にさらにセパレータシート60を配置してもよい。また、予め内部に絶縁シートが付与された外装体内に収容することを想定し、上記積層体の最上部に正極シート40または負極シート50をさらに配置してもよい。そして、従来公知の電池の製造方法を経て、積層型電極体80を備えた電池100を得ることができる。
【0034】
<第2の製造方法>
図6は、一実施形態に係る第2の製造方法について説明するための制御フローチャートである。以下、上記第1電極シートを正極シート40、上記第2電極シートを負極シート50とした場合について、図6を交えて説明する。
【0035】
図6に示すように、一実施形態に係る第2の製造方法は、先ず、吸着板13の表面の所定の位置に、セパレータシート60(第1セパレータシートに相当する)を吸着させる(ステップS20)。そして、吸着板13に吸着させたセパレータシート60の表面の所定の位置に、正極シート40を吸着させる(ステップS21)。続いて、ステップS21において吸着させた正極シート40の表面の所定の位置に、セパレータシート60(第2セパレータシートに相当する)を吸着させる(ステップS22)。そして、吸着板13に吸着させた状態の、第1セパレータシート、正極シート、第2セパレータシートを、積層台2に配置する(ステップS23)。次に、吸着板13の表面の所定の位置に、負極シート50を吸着させる(ステップS24)。そして、吸着板13に吸着させた状態の負極シート50を、ステップS23において得られた積層体の上に積層する(ステップS25)。
なお、上記ステップS20~22,S24において、吸着板13、各シートの所定の位置に所定のシートを吸着させる方法としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば、上記ステップS11に基づいた方法等を挙げることができる。
【0036】
上記ステップS25に到達した場合、正極シート40および負極シート50の積層数が予め定められた積層数に到達するかを確認する(ステップS26)。上記積層数に到達している場合は、積層を完了し(ステップS27)、該積層数に到達していない場合は、再度ステップS20に戻る。かかる操作をステップS27に到達するまで繰り返し行うことにより、積層体を製造することができる。上記のとおり作製した積層体は、例えば外装体内にそのまま収容してもよい。そして、従来公知の電池の製造方法を経て、積層型電極体80を備えた電池100を得ることができる。
【0037】
<第3の製造方法>
図7は、一実施形態に係る第3の製造方法について説明するための制御フローチャートである。以下、上記第1電極シートを正極シート40、上記第2電極シートを負極シート50とした場合について、図7を交えて説明する。
【0038】
図7に示すように、一実施形態に係る第3の製造方法では、先ず、吸着板13の表面の所定の位置に、セパレータシート60(第1セパレータシートに相当する)を吸着させる(ステップS30)。そして、吸着板13に吸着させた第1セパレータシートの表面の所定の位置に、正極シート40を吸着させる(ステップS31)。続いて、ステップS31において吸着させた正極シート40の表面の所定の位置に、セパレータシート60(第2セパレータシートに相当する)を吸着させる(ステップS32)。そして、ステップS32において吸着させた第2セパレータシートの表面の所定の位置に、負極シート50を吸着させる(ステップS33)。次に、吸着板13に吸着させた状態の第1セパレータシート、正極シート40、第2セパレータシート、負極シート50を、積層台2に配置する(ステップS34)。
なお、上記ステップS30~33において、吸着板13、各シートの所定の位置に所定のシートを吸着させる方法としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば、上記ステップS11に基づいた方法等を挙げることができる。
【0039】
上記ステップS34に到達した場合、正極シート40および負極シート50の積層数が予め定められた積層数に到達するかを確認する(ステップS35)。上記積層数に到達している場合は、積層を完了し(ステップS36)、該積層数に到達していない場合は、再度ステップS30に戻る。かかる操作をステップS36に到達するまで繰り返し行うことにより、積層体を製造することができる。
【0040】
なお、一実施形態に係る第3の製造方法において製造される積層体の最下部(即ち、積層台2に接する部分)には、負極シート50が直に存在するため、該積層体の最下部にさらにセパレータシート60を配置してもよい。また、予め内部に絶縁シートが付与された外装体内に収容することを想定し、上記積層体の最上部に正極シート40または負極シート50をさらに配置してもよい。そして、従来公知の電池の製造方法を経て、積層型電極体80を備えた電池100を得ることができる。
【0041】
<変形例>
以上、ここで開示される積層型電極体の製造方法の具体例(ここで開示される第1~3の製造方法それぞれの好適な一実施形態)を、積層型電極体製造装置1および図2図3図6図7を参照しつつ詳細に説明したが、ここで開示される積層型電極体の製造方法の内容をかかる具体例に限定するものではない。ここで開示される積層型電極体の製造方法は、上述した具体例をその目的を変更しない限りにおいて種々変更したものが包含される。以下(i)~(vi)において、変形例の一例について説明する。
【0042】
(i)上述した実施形態では、第1電極シートを正極シート40、第2電極シートを負極シート50として説明しているが、第1電極シートを負極シート50、第2電極シートを正極シート40とすることもできる。
【0043】
(ii)上述した実施形態では、正極シート40、負極シート50、およびセパレータシート60として矩形状のものを使用しているが、上記シートの中で4隅が丸形等のものがあってもよい。ただし、この場合、上記ステップS11,ステップS13において4隅を使用しない検査を行う必要がある。かかる4隅を使用しない検査は、それぞれ下記(iv),(vi)等において例示したものの中から適宜選択することができる。
【0044】
(iii)上述した実施形態では、平面視が矩形状の積層台2を使用しているが、例えば平面視が丸形、台形等のものを使用することもできる。
【0045】
(iv)上述した実施形態では、上記収容部に収容されている正極(負極)シートのうち最表面に存在するものの全体像を撮影し、その4隅の位置と、制御部30に予め記憶されている画像データにおける正極(負極)シートの4隅の位置とを照合していた。しかしながら、これに限定されず、例えば各々の正極(負極)シートの所定の1隅、2隅もしくは3隅の位置を照合してもよい。また、各々の正極(負極)シートにおける所定の1辺、2辺、3辺、あるいは4辺の位置、対角線(1本または2本)の位置、対角線の交点の位置等を照合してもよい。さらに、検査の精度を向上させるという観点から、上述したような方法を2つ以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(v)上述した実施形態(具体的には、一実施形態に係る第1の製造方法)では、検査部として検査用カメラ20を採用しているが、該検査用カメラの代わりに、超音波を受信する機器やレーザーを受信する機器等を用いてもよい。なお、超音波を受信する機器を用いる場合、該機器の内部または外部に、対象物に対して超音波を発信する機器を具備する必要がある。また、レーザーを受信する機器を用いる場合、該機器の内部または外部に、対象物に対してレーザーを照射する機器を具備する必要がある。
【0047】
(vi)上述した実施形態(具体的には、一実施形態に係る第1の製造方法)では、ステップS12において、吸着板13に吸着させた状態のセパレータシート60の4隅および正極(負極)シートの4隅のクリアランスと、制御部30に予め記憶されている画像データにおけるセパレータシート60の4隅および正極(負極)シートの4隅のクリアランスとを照合していた。しかしながら、これに限定されず、例えば各々におけるセパレータシート60および正極(負極)シートの所定の2隅もしくは3隅のクリアランスを照合してもよい。また、セパレータシート60および正極(負極)シートの所定の2隅、3隅あるいは4隅どうしの最短距離、セパレータシート60の4辺と正極(負極)シートの4辺(あるいは、各々の所定の1辺、2辺もしくは3辺)との間の距離、セパレータシート60の対角線の交点と正極(負極)シートの対角線の交点との相対的な位置関係等を照合してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 積層型電極体製造装置
2 積層台
4 正極シート収容部
6 負極シート収容部
8 セパレータシート収容部
10 搬送手段
11 アーム部
12 吸着部
13 吸着板
14 吸着ベース
15 吸引チューブ
16 制御用カメラ
17 ベース部
20 検査用カメラ
30 制御部
40 正極シート
41 正極活物質層
42 正極集電体
43 正極活物質層非形成部分
44 正極集電端子
50 負極シート
51 負極活物質層
52 負極集電体
53 負極活物質層非形成部分
54 負極集電端子
60 セパレータシート
70 外装体
80 積層型電極体
100 電池

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8