(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/09 20060101AFI20231213BHJP
C08G 18/16 20060101ALI20231213BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20231213BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
C08G18/09 020
C08G18/16
C08G18/00 H
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2021119470
(22)【出願日】2021-07-20
(62)【分割の表示】P 2020039307の分割
【原出願日】2017-12-08
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2016238783
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫生
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-099120(JP,A)
【文献】特表2017-508043(JP,A)
【文献】特表2013-511452(JP,A)
【文献】特開2014-084465(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129850(WO,A1)
【文献】特開2008-189882(JP,A)
【文献】特開平09-104734(JP,A)
【文献】特開2002-363241(JP,A)
【文献】特開2016-124912(JP,A)
【文献】特開2016-190971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、整泡剤、発泡剤、及びカルボン酸アンモニウム塩を含み、
前記カルボン酸アンモニウム塩のカチオン部分は第4級アンモニウムカチオンであり、
前記カルボン酸アンモニウム塩のアニオン部分は下記式(1)で表されるカルボン酸アニオンであり、
前記カルボン酸アンモニウム塩の含有量は、前記ポリオール100質量部に対して、3質量部以上、23質量部以下であり、
前記発泡剤としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含有し、
前記触媒が炭素数2~8のカルボン酸カリウムを含有することを特徴とする、ポリオール組成物。
【化1】
[式中、
R
1はC
nH
2n+1であり、
R
2はC
mH
2m+1であり、
R
3
はC
l
H
2l+1
であり、
n、m及びlは
1である。]
【請求項2】
前記炭素数2~8のカルボン酸カリウムを、前記ポリオール100質量部に対して、4質量部以上、25質量部以下の割合で含有することを特徴とする、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
有機酸ビスマス塩を含有する、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸アンモニウム塩のカチオン部分が、テトラメチルアンモニウムカチオンである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸アンモニウム塩のアニオン部分が、2,2-ジメチルプロパン酸アニオンである、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオール組成物とポリイソシアネート化合物との混合物であることを特徴とする発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項7】
イソシアネートインデックスが250以上であることを特徴とする請求項6に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の発泡性ポリウレタン組成物が硬化したポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物、発泡性ポリウレタンプレミックス組成物、発泡性ポリウレタン組成物及びポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂組成物は、その優れた断熱性及び接着性から、断熱材としてマンション等の集合住宅、戸建住宅、学校の各種施設、商業ビル等の建築物の断熱材として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2000-230028
【文献】日本国特開2004-339269
【文献】日本国特開2000-169542
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウレタン発泡体を得る方法の一つに吹付施工が挙げられる。吹付施工の際、触媒作用が不足しているのと横伸びが発生し、樹脂と基材との界面で剥離が発生する不具合がある。
【0005】
また、発泡剤として、従前ハイドロフルオロカーボン類(HFC)が広く使われていたが、HFCは2020年以降日本国においては法的に使用が禁止される。そこで、HFCの代替として地球温暖化係数(GWP)の低いハイドロフルオロオレフィン類(HFO)への切り替えが進んでいる。しかし、HFOは触媒による分解性が課題である。
【0006】
触媒には大きくアミン系触媒と金属塩触媒がある。アミン系触媒は、横伸びの低減には優れるものの、HFOと触媒との分解反応が進行してしまう。一方、金属塩触媒は、HFOと触媒との分解反応は抑制されるものの、横伸びの発生は十分抑制されない。
【0007】
横伸びを低減し、かつ、HFOとの分解反応を抑制できる組成は知られてなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく種々検討したところ、所定の構造を満たすカルボン酸アンモニウム塩を用いることで上記の課題を解決できることを見出した。本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
【0010】
項1、ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、整泡剤、発泡剤、及びカルボン酸アンモニウム塩を含み、前記カルボン酸アンモニウム塩のカチオン部分は第4級アンモニウムカチオンであり、前記カルボン酸アンモニウム塩のアニオン部分は下記式(1)で表されるカルボン酸アニオンであることを特徴とする、ポリオール組成物。
【0011】
【0012】
[式中、
R1はCnH2n+1であり、
R2はCmH2m+1であり、
R3は水素原子又はClH2l+1であり、
n、m及びlは独立して1以上の整数である。]
項2、前記カルボン酸アンモニウム塩の含有量が、ポリオール100質量部に対して5質量部以上である、項1に記載のポリオール組成物。
【0013】
項3、前記カルボン酸アンモニウム塩の含有量が、ポリオール100質量部に対して20質量部以下である、項1又は2に記載のポリオール組成物。
【0014】
項4、R3がClH2l+1である、項1~3のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【0015】
項5、前記カルボン酸アンモニウム塩のカチオン部分が、テトラメチルアンモニウムカチオンである、項1~4のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【0016】
項6、前記カルボン酸アンモニウム塩のアニオン部分が、2,2-ジメチルプロパン酸アニオンである、項1~5のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【0017】
項7、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含有する、項1~6のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【0018】
項8、ハイドロフルオロオレフィンがE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである、項7に記載のポリオール組成物。
【0019】
項9、項1~8のいずれか1項に記載のポリオール組成物及びポリイソシアネート化合物を分離して含む、発泡性ポリウレタンプレミックス組成物。
【0020】
項10、項1~9のいずれか1項に記載のポリオール組成物とポリイソシアネート化合物との混合物であることを特徴とする発泡性ポリウレタン組成物。
【0021】
項11、イソシアネートインデックスが250以上であることを特徴とする項10に記載の発泡性ポリウレタン組成物。
【0022】
項12、項10又は11に記載の発泡性ポリウレタン組成物が硬化したポリウレタン発泡体。
【0023】
項13、成形体であることを特徴とする項12に記載のポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、横伸びの低減と、HFOとの分解反応の抑制とを両立できる、ポリオール組成物、発泡性ポリウレタンプレミックス組成物、発泡性ウレタン樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、以下の態様を包含する。
(i)ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物であって、ポリオール、触媒、整泡剤、発泡剤、及び所定のカルボン酸アンモニウム塩を含有することを特徴とする、ポリオール組成物、
(ii)上記ポリオール組成物及びポリイソシアネート化合物を分離して含む、発泡性ポリウレタンプレミックス組成物、
(iii)上記ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物との混合物であることを特徴とする発泡性ポリウレタン組成物、及び
(iv)上記発泡性ポリウレタン組成物が硬化したポリウレタン発泡体。
【0026】
本発明のポリオール組成物はポリオール化合物、触媒、整泡剤、発泡剤、及び所定のカルボン酸アンモニウム塩、さらに任意選択でその他の成分を含有する。その他の成分としては、難燃剤などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0027】
ポリオール組成物は、例えば溶液または分散液である。
【0028】
ウレタン樹脂の主剤としてのポリイソシアネートとウレタン樹脂の硬化剤としてのポリオールは、化学反応により硬化して、ウレタン樹脂を形成する。
【0029】
以下、各成分について説明する。
【0030】
1.ポリオール
ウレタン樹脂の硬化剤であるポリオールとしては、例えばポリラクトンポリオール、ポリカーポネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0031】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
【0032】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物;ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0033】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0034】
脂環族ポリオールとしては、例えばシクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、ジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
【0037】
ここで多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。また多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0038】
ラクトンとしては、例えばε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0039】
またヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0040】
ポリマーポリオールとしては、例えば、ポリオールに対しエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、多価アルコールの変性ポリオールまたは、これらの水素添加物等が挙げられる。
【0041】
ポリオールに対しエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体におけるポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。また、ポリオールに対しエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体におけるエチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等が挙げられる。
【0042】
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
【0043】
多価アルコールとしては、例えば、
グリセリンおよびトリメチロールプロパン等の三価アルコール;
ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシドおよびその誘導体等の四~八価のアルコール;
フェノール、フロログルシン、クレゾール、ピロガロール、カテコ-ル、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1-ヒドロキシナフタレン、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、アントロール、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン、1-ヒドロキシピレン等のフェノールポリブタジエンポリオール;ひまし油ポリオール;
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体およびポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)
などが挙げられる。
【0044】
多価アルコールの変性方法は特に限定されない。多価アルコールの変性方法として、例えば、アルキレンオキサイド(以下、AOと略す)を付加させる方法が好適に用いられる。
【0045】
アルキレンオキサイド(AO)としては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、POと略す)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EOおよび1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、POおよびEOがより好ましい。AOを二種以上使用する場合(例えば、POおよびEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0047】
ポリエーテルポリオ-ルとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも一種の存在下に、少なくとも1種のアルキレンオキサイドを開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0048】
活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオ-ル等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。開環重合させるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の少なくとも1種が挙げられる。
【0049】
本発明に使用するポリオールは、燃焼した際の総発熱量の低減効果が大きいことからポリエステルポリオール、またはポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0050】
その中でも分子量200~800のポリエステルポリオールを用いることがより好ましく、分子量300~500のポリエステルポリオールを用いることがさらに好ましい。
【0051】
2.ポリイソシアネート化合物
ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネート化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。ウレタン樹脂の主剤は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートが好ましい。
【0056】
ポリオール化合物とイソシアネート化合物とを含む本発明の発泡性ポリウレタン組成物において、イソシアネートインデックスが250以上であることが好ましく、260以上700以下であることがより好ましく、280以上600以下であることが更に好ましく、300以上500以下であることが最も好ましい。
【0057】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
INDEX=イソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
【0058】
ここで、
イソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)÷100/NCOの分子量、
ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mg KOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート化合物中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0059】
3.カルボン酸アンモニウム塩
本発明の組成物は、カルボン酸アンモニウム塩を含有する。前記カルボン酸アンモニウム塩のカチオン部分は第4級アンモニウムカチオンであり、前記カルボン酸アンモニウム塩のアニオン部分は下記式(1)で表されるカルボン酸アニオンであることを特徴とする。
【0060】
【0061】
[式中、
R1はCnH2n+1であり、
R2はCmH2m+1であり、
R3は水素原子又はClH2l+1であり、
n、m及びlは独立して1以上の整数である。]
n、m及びlはそれぞれ独立して1以上の整数であり、好ましくは1~4の整数であり、より好ましくは1~2の整数である。
【0062】
CnH2n+1、CmH2m+1、及びClH2l+1はそれぞれ独立してアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、sec-プロピル基、tert-プロピル基、ブチル基、ヘキシル基が例示される。
【0063】
本発明の好ましい態様において、R3がClH2l+1である。
【0064】
カルボン酸アンモニウム塩のカチオン部分である第4級アンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオンが例示される。
【0065】
カルボン酸アンモニウム塩のアニオン部分であるカルボン酸アニオンとしては、2,2-ジメチルプロパン酸アニオン、2-エチルヘキサン酸アニオンが例示される。
【0066】
カルボン酸アンモニウム塩は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0067】
本発明の組成物における上記カルボン酸アンモニウム塩の含有量は、ポリオール100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、7質量部以上であることが特に好ましい。また、上記カルボン酸アンモニウム塩の含有量は、ポリオール100質量部に対して、23質量部以下であることが好ましく、17質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることが特に好ましい。
【0068】
上記カルボン酸アンモニウム塩の含有量はウレタン樹脂100質量部に対しては、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが特に好ましい。また、カルボン酸アンモニウム塩の含有量はウレタン樹脂100質量部に対しては、6質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
【0069】
上記下限値以上の場合は、十分な触媒作用が期待でき、良好な発泡体を形成することができる。上記上限値以下の場合は、樹脂化と三量化との活性の差を小さくし、発泡が2段階になることを抑制できる。
【0070】
4.触媒
本発明の樹脂組成物は、触媒を含む。ただし、上記「カルボン酸アンモニウム塩」に該当する成分は、「触媒」には含まれない。具体的には、触媒としては樹脂化触媒及び/又は三量化触媒が挙げられる。
【0071】
樹脂化触媒とは、ポリオール等とイソシアネートとの反応を促進する触媒である。樹脂化アミン触媒とは樹脂化触媒の中で、アミン構造を有する触媒であり、樹脂化金属触媒とは樹脂化触媒の中で、金属または金属塩を有する触媒である。
【0072】
三量化触媒とは、イソシアネートが互いに反応することでイソシアヌレートの生成を促進する触媒である。三量化アミン触媒とは三量化触媒の中で、アンモニウム塩を有する触媒であり、三量化金属触媒とは三量化触媒の中で、金属または金属塩を有する触媒である。
【0073】
樹脂化金属触媒としては、鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる金属塩が挙げられ、好ましくは鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどからなる有機酸金属塩であり、より好ましくはジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート、ビスマストリオクテート、ジオクチル酸スズ、ジオクチル酸鉛である。
【0074】
樹脂化アミン触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0075】
三量化金属触媒としては有機酸カリウムが挙げられ、好ましくはオクチル酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ブタン酸カリウム、安息香酸カリウムなどの炭素数2~8のカルボン酸カリウムが挙げられる。
【0076】
触媒は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0077】
本発明の組成物における樹脂化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.13質量部~7.5質量部の範囲であることが好ましく、0.25質量部~3.8質量部の範囲であることがより好ましく、0.4質量部~1.2質量部の範囲であることが更に好ましく、0.5質量部~1.0質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.05質量部~2.0質量部の範囲とすることができ、0.1質量部~1.0質量部の範囲であることがより好ましく、0.15質量部~0.30質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0078】
上記下限値以上の場合は樹脂化反応が活性に進行することで、樹脂化反応熱によって三量化の活性を助けることができ、良好な発泡体を形成することができる。上記上限値以下の場合は樹脂化と三量化との活性の差を小さくし、発泡が2段階になることを抑制できる。
【0079】
本発明の組成物における三量化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、1.3質量部~25.0質量部の範囲であることが好ましく、2.5質量部~20.0質量部の範囲であることがより好ましく、4.0質量部~14.0質量部の範囲であることが更に好ましく、5.5質量部~10.0質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.5質量部~6.5質量部の範囲とすることができ、1.0質量部~5.0質量部の範囲であることがより好ましく、1.5質量部~3.5質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0080】
上記下限値以上の場合は、十分な三量化触媒作用が期待でき、良好な発泡体を形成することができる。上記上限値以下の場合は、樹脂化と三量化との活性の差を小さくし、発泡が2段階になることを抑制できる。
【0081】
5.整泡剤
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
整泡剤の含有量は、一例を示すとすれば、例えば、ポリオール100質量部に対して、0.3質量部~38質量部の範囲が好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂に応じて適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1質量部~10質量部の範囲とすることができる。
【0083】
整泡剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0084】
6.発泡剤
発泡剤は、ウレタン樹脂の発泡を促進する。発泡剤としては、例えば、水;プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素;ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物;CHF3、CH2F2、CH3F等のフッ素化合物;トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン、ジクロロモノフルオロエタン、(例えば、HCFC141b (1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22 (クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))等のハイドロクロロフルオロカーボン化合物;HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等のハイドロフルオロカーボン;HFO-1233zd(E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)等のハイドロフルオロオレフィン;ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、あるいはこれらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
【0085】
良好な発泡体形成という観点から、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を含むことが好ましい。
【0086】
発泡剤の含有量は特に限定されない。発泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.3質量部~112質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部~67部の範囲、更に好ましくは1.8質量部~67質量部の範囲、最も好ましくは3.7質量部~37質量部の範囲である。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1質量部~30質量部の範囲とすることができ、0.1質量部~18質量部の範囲であることがより好ましく、0.5質量部~18質量部の範囲であることが更に好ましく、1質量部~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0087】
発泡剤の含有量が上記下限値以上の場合は発泡が促進され、得られる成形体の密度を低減することができる。また、発泡剤の含有量が上記上限値以下の場合は、発泡体が十分に発泡し良好な発泡体を形成することができる。
【0088】
発泡剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0089】
7.難燃剤
本発明の組成物は、得られる発泡体に難燃性を付与するために、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は、市販品を適宜選択して使用することができる。
【0090】
難燃剤としては、赤リン、針状フィラー、ホウ素含有難燃剤、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤及び金属水酸化物からなる群から選択される一種以上を含有することが好ましく、難燃剤として中でも少なくとも赤リンを含むことがより好ましい。
【0091】
本発明に使用する赤リンに限定はなく、市販品を適宜選択して使用することができる。
【0092】
また本発明に使用する赤リンの含有量は、ポリオール100質量部に対して、5.5質量部~193質量部の範囲であることが好ましく、5.5質量部~75質量部の範囲であることがより好ましく、7.4質量部~56質量部の範囲であることが更に好ましく、7.4質量部~38質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5質量部~52質量部の範囲とすることができ、1.5質量部~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0質量部~15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0質量部~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0093】
前記赤リンの範囲が上記下限値以上の場合は、発泡体の自己消火性が保持され、また上記上限値以下の場合には発泡性ウレタン組成物の発泡が阻害されない。
【0094】
ホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。
【0095】
酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
【0096】
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。
【0097】
具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0098】
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましい。
【0099】
ホウ素含有難燃剤は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0100】
本発明に使用するホウ素含有難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、5.5質量部~193質量部の範囲であることが好ましく、5.5質量部~75質量部の範囲であることがより好ましく、7.4質量部~56質量部の範囲であることが更に好ましく、7.4質量部~38質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5質量部~52質量部の範囲とすることができ、1.5質量部~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0質量部~15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0質量部~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0101】
針状フィラーは有機系針状フィラーであっても無機系針状フィラーであってもよく、好ましくは針状フィラーは無機系針状フィラーである。針状フィラーのアスペクト比は5~50であり、好ましくは8~40であり、より好ましくは10~40であり、更に好ましくは10~35であり、8~25が最も好ましい。ここで、本明細書でいう針状フィラーのアスペクト比とは、針状フィラーを走査型電子顕微鏡で観察して得られる画像にて確認されるフィラーの最大長さの最小厚さ(最大長さに対し垂直方向)に対する比(直径/厚さ比とも言う)である。また、針状フィラーのアスペクト比は、十分な数のフィラー、例えば針状フィラーの粒子250個以上の平均である。
【0102】
針状フィラーの平均粒径は0.1μm以上15μm未満であり、好ましくは0.1μm以上14μm以下、より好ましくは0.3~10μmである。平均粒径はX線透過式沈降法粒度分布測定装置により求められる。針状フィラーの融点は750℃以上であり、好ましくは800℃以上、より好ましくは1000℃以上である。
【0103】
針状の無機フィラーとしては、塩基性硫酸マグネシウム、硼酸アルミニウム、ウォラストナイト(珪灰石)、ゾノトライト、ドーソナイト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム系ウィスカー、珪素系ウィスカー、針状アルミナ、針状セラミック、アスベスト、針状炭酸カルシウム、石膏繊維、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、炭素繊維(カーボンナノチューブ等の繊維状、針状又はフラーレン等の球状のニューカーボンを含む)、グラファイト繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、金属繊維等が例示される。
【0104】
針状フィラーは、収縮及び変形のうちの少なくとも一方を防止する。本明細書で「収縮」とは、長さ方向の長さ、幅方向の長さ、及び厚み方向の長さを含む、長さの変化を指す。「変形」とは、反り等の形状の変化、特には厚み方向の形状の変化を指す。針状とは、長径が短径の3倍以上をしたものをいい、所謂針形状だけでなく、紡錘形状、円柱形状のもの等も含む。
【0105】
本発明の一実施形態では、針状フィラーはアスペクト比が5~50、平均粒径が0.1μm以上15μm未満の針状無機フィラーである。好ましい針状フィラーはウォラストナイト又はチタン酸カリウムウィスカーである。
【0106】
針状フィラーの含有量は、ポリオール100質量部に対して、2.5質量部~80質量部の範囲であることが好ましく、2.5質量部~70質量部の範囲であることがより好ましく、5.5質量部~50質量部の範囲であることが更に好ましい。発泡性ウレタン樹脂組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましく、1質量部~25質量部であることがより好ましく、2質量部~18質量部であることが更に好ましい。
【0107】
本発明に使用するリン酸エステルは特に限定されない。リン酸エステルとしては、例えば、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。
【0108】
モノリン酸エステルとしては、特に限定はない。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレ二ルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレ二ルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスフアフエナンスレン、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等が挙げられる。
【0109】
縮合リン酸エステルとしては、特に限定はない。縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート(大八化学工業社製、商品名PX-200)、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げられる。
【0110】
市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(ADEKA社製、商品名アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフエ-ト(商品名FP-600、FP-700)等を挙げることができる。
【0111】
上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度の低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いためモノリン酸エステルを使用することが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートを使用することがより好ましい。
【0112】
リン酸エステルは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0113】
リン酸エステルの含有量は、ポリオール100質量部に対して、5.5質量部~193質量部の範囲であることが好ましく、5.5質量部~75質量部の範囲であることがより好ましく、7.4質量部~56質量部の範囲であることが更に好ましく、7.4質量部~38質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5質量部~52質量部の範囲とすることができ、1.5質量部~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0質量部~15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0質量部~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0114】
リン酸エステルの含有量が上記下限値以上の場合には、発泡性ポリウレタン組成物からなる成形品が火災の熟により形成される緻密残渣が割れることを防止できる。リン酸エステルの含有量が上記上限値以下の場合には、発泡性ポリウレタン組成物の発泡が阻害されない。
【0115】
また本発明に使用するリン酸塩含有難燃剤はリン酸を含むものである。リン酸塩含有難燃剤に使用されるリン酸部分は特に限定はないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、およびそれらの組み合わせ等の各種リン酸部分が挙げられる。
【0116】
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンから選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩を挙げることができる。周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
【0117】
また脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。
【0118】
また芳香族アミンとして、ピリジン、トリアジン、メラミン、アンモニウム等が挙げられる。
【0119】
なお、上記のリン酸塩含有難燃剤は、シランカップリング剤処理、メラミン樹脂で被覆する等の公知の耐水性向上処理を加えてもよく、メラミン、ペンタエリスリトール等の公知の発泡助剤を加えても良い。
【0120】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
【0121】
モノリン酸塩としては特に限定されない。モノリン酸塩としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸-ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸-ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸-リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸-リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩等が挙げられる。
【0122】
またポリリン酸塩としては特に限定されない。ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0123】
これらの中でも、リン酸塩含有難燃剤の自己消火性が向上するため、モノリン酸塩を使用することが好ましく、リン酸二水素アンモニウムを使用することがより好ましい。
【0124】
リン酸塩含有難燃剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0125】
本発明に使用するリン酸塩含有難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、5.5質量部~193質量部の範囲であることが好ましく、5.5質量部~75質量部の範囲であることがより好ましく、7.4質量部~56質量部の範囲であることが更に好ましく、7.4質量部~38質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5質量部~52質量部の範囲とすることができ、1.5質量部~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0質量部~15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0質量部~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0126】
また本発明に使用する臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有する化合物であれば特に限定はない。臭素含有難燃剤としては、例えば、芳香族臭素化化合物等を挙げることができる。
【0127】
芳香族臭素化化合物の具体例としては、例えば、
ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフエノキシ)エタン、エチレンービス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー有機臭素化合物;
臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート;
臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物;
ポリ(臭素化ベンジルアクリレート);
臭素化ポリフェニレンエーテル;
臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌールおよび臭素化フェノールの縮合物;
臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン;
架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等のハロゲン化された臭素化合物ポリマー
などが挙げられる。
【0128】
燃焼初期の発熱量を制御する観点から、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモベンゼン等が好ましく、ヘキサブロモベンゼンがより好ましい。
【0129】
臭素含有難燃剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0130】
本発明に使用する臭素含有難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、5.5質量部~193質量部の範囲であることが好ましく、5.5質量部~75質量部の範囲であることがより好ましく、7.4質量部~56質量部の範囲であることが更に好ましく、7.4質量部~38質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5質量部~52質量部の範囲とすることができ、1.5質量部~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0質量部~15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0質量部~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0131】
また本発明に使用するアンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。
【0132】
酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。
【0133】
アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。
【0134】
ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
【0135】
本発明に使用するアンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
【0136】
アンチモン含有難燃剤は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0137】
アンチモン含有難燃剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、5.5質量部~193質量部の範囲であることが好ましく、5.5質量部~75質量部の範囲であることがより好ましく、7.4質量部~56質量部の範囲であることが更に好ましく、7.4質量部~38質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5質量部~52質量部の範囲とすることができ、1.5質量部~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0質量部~15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0質量部~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0138】
また本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等があげられる。
【0139】
金属水酸化物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0140】
金属水酸化物の含有量は、ポリオール100質量部に対して、5.5質量部~193質量部の範囲であることが好ましく、5.5質量部~75質量部の範囲であることがより好ましく、7.4質量部~56質量部の範囲であることが更に好ましく、7.4質量部~38質量部の範囲であることが最も好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5質量部~52質量部の範囲とすることができ、1.5質量部~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0質量部~15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0質量部~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0141】
本発明に使用する難燃剤の合計含有量は、ポリオール100質量部に対して、16質量部~260質量部の範囲であることが好ましく、16質量部~149質量部の範囲であることがより好ましく、16質量部~112質量部の範囲であることが更に好ましい。発泡性ポリウレタン組成物においては、ウレタン樹脂100質量部に対して4.5質量部~70質量部の範囲とすることができ、4.5質量部~40質量部の範囲であることがより好ましく、4.5質量部~30質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0142】
難燃剤の合計含有量が上記下限値以上の場合には、発泡性ポリウレタン組成物からなる成形品が火災の熱により形成される緻密残渣が割れることを防止できる。難燃剤の合計含有量が上記上限値以下の場合には、発泡性ポリウレタン組成物の良好な発泡が達成される。
【0143】
8.その他の成分
本発明の組成物は、さらに無機充填材を含んでもよい。無機充填材としては、特に限定はない。無機充填材として、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカパルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素パルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムポレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。ただし、上記「針状フィラー」に該当する成分は、「その他の成分」には含まれない。
【0144】
無機充填材は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0145】
本発明の組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の補助成分、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0146】
上記の1.~8.の成分が混合された発泡性ポリウレタン組成物は、反応して硬化するため、その粘度は時間の経過と共に変化する。そこで発泡性ポリウレタン組成物を使用する前に、発泡性ポリウレタン組成物を二以上に分割して、発泡性ポリウレタン組成物が反応して硬化することを防止する(発泡性ポリウレタンプレミックス組成物)。そして発泡性ポリウレタン組成物を使用する際に、二以上に分割しておいた発泡性ポリウレタン組成物を混合し一つにまとめることにより、発泡性ポリウレタン組成物が得られる。
【0147】
なお発泡性ポリウレタン組成物を二以上に分割するときは、二以上に分割された発泡性ポリウレタン組成物のそれぞれの成分単独では硬化が始まらず、発泡性ポリウレタン組成物のそれぞれの成分を混合した後に硬化反応が始まるようにそれぞれの成分を分割すればよい。
【0148】
発泡性ポリウレタン組成物の硬化は混合および常温で行なってもよいが、各成分を予め加熱しておいてもよい。
【0149】
上記の触媒、整泡剤、発泡剤及びカルボン酸アンモニウム塩、並びに、任意で用いてもよい難燃剤等のその他の成分は、ポリオールまたはポリイソシアネートのいずれと混合されてもよい。あるいは、ポリオール及びポリイソシアネートとは別に提供されてもよい。好ましくはポリオール、触媒、整泡剤、発泡剤及びカルボン酸アンモニウム塩、並びに、任意で用いてもよい難燃剤等のその他の成分は、ポリオールとこれらの成分とを含むポリオールプレミックスとして提供される(ポリイソシアネート化合物と反応させてポリウレタン発泡体を得るためのポリオール組成物)。また、上記の8.のその他の成分も、ポリオールまたはポリイソシアネートのいずれと混合されてもよい。あるいは、上記の8.のその他の成分は、ポリオールおよびポリイソシアネートとは別に提供されてもよい。、上記の7.のその他の成分は、好ましくはポリオールプレミックスに含まれる。
【0150】
ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、整泡剤、発泡剤及びカルボン酸アンモニウム塩、並びに、および難燃剤等のその他の成分が混合されて生じる発泡性ポリウレタン組成物は、発泡および硬化してポリウレタン発泡体となる。混合されて成分は、、好ましくはポリイソシアネートと、ポリオール、触媒、整泡剤、発泡剤及びカルボン酸アンモニウム塩、並びに、難燃剤等のその他の成分を含有するポリオールプレミックスとである。
【0151】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物の用途は、特に限定されない。例えば、本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、現場吹き付け用途として用いることができる。この他にも、例えば、乗物または建物の断熱材に使用される発泡体の補修用途に用いることができる。あるいは、建物の開口部または隙間を充填するために用いることもできる。
【0152】
ここで「建物」には、建物を構成する任意の構造が含まれ、壁、天井、屋根、床などの建物の構造材のみならず、窓(引き違い窓、開き窓、上げ下げ窓等を含む)、障子、扉(すなわちドア)、戸、ふすま、欄間などの建具も含まれる。また、「開口部」は、建物の構造材の間に生じる目地や、一つの構造材中に生じる穴を含め、建物に生じる任意の開口部を指すが、「隙間」とは開口部の中でも、構造材と構造材の間、構造材と建具の間、建具と建具の間、構造材または建具と家具(台所のシンク等)との間のように、向かい合う2つの部材または部分間に生じる開口部を指す。
【0153】
発泡性ポリウレタン組成物を発泡硬化して得られるポリウレタン発泡体は、防水性及び気密性に優れているため、建築物の開口部または隙間からの水等の侵入を効果的に遮断することができる。本発明の組成物が難燃剤を含む場合は、ポリウレタン発泡体に優れた難燃性を付与することができる。この場合、建築物の開口部または隙間からの煙や炎、燃焼により発生するガスをも効果的に遮断することができる。
【0154】
本発明の発泡性ポリウレタン組成物は、エアゾール式等の大掛かりな装置を用いることなく、例えばわずかな開口部または隙間を現場で補修するために、現場で基材に吹き付けて発泡体を形成する、現場吹き付けの用途に使用することができる。
【0155】
現場吹き付け工法においては、発泡性ポリウレタン組成物を二以上に分割することができる。具体的には、二以上に分割された発泡性ポリウレタン組成物のそれぞれの成分(「第1液」、「第2液」、・・・と呼ぶことができる。)単独では硬化が始まらず、発泡性ポリウレタン組成物のそれぞれの成分を混合した後に硬化反応が始まるようにそれぞれの成分を分割すればよい。
【0156】
現場吹き付けは、吹付装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガ(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。現場吹き付けは、別容器に入った発泡性ポリウレタン組成物を分割した各成分(例えば、第1液及び第2液)を吹付装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で各成分を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹付装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。
【0157】
また、カートリッジガン、吐出装置等の装置を利用して実施することができる。現場吹き付けは、例えば発泡性ポリウレタン組成物を第1液と第2液とに分割した場合、第1液及び第2液が別容器に入った2液混合容器、第1液及び第2液が一つの容器に収容されている2液混合容器のいずれもが利用可能である。混合容器は必要に応じて撹拌装置とともに、前述の装置と組み合わせて用いることができる。カートリッジガンも公知であり、市販品を使用することができる。
【0158】
現場吹き付けは、任意の基材(構造材)に対してすることができる。基材としては、金属(例えば鉄鋼)、セメント板、コンクリート、石膏ボードなどが例示される。
【0159】
発泡性ウレタン樹脂組成物を基材に吹き付ける厚み(吹付厚み)は特に限定されない。吹付厚みとしては、1~100mm、好ましくは10~100mm、特に好ましくは15~100mmとすることができる。
【0160】
現場吹き付け工法は、上記の発泡性ポリウレタン組成物を基材(構造材)に吹付けるステップを含むことを特徴とする。好ましくは現場吹き付け工法は、別容器に入った発泡性ポリウレタン組成物を分割した各成分を現場で混合するステップを含む。
【0161】
基材に吹付けた発泡性ウレタン樹脂組成物が発泡及び硬化し、基材に接着することで積層構造が製造される。
【0162】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0163】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0164】
1.発泡性ポリウレタン組成物およびその発泡体の製造
表1に示した配合により、実施例および比較例に係る発泡性ポリウレタン組成物を、(1)ポリオールプレミックスおよび(2)ポリイソシアネートの2つに分けて準備した。なお表中の各成分の詳細は次の通りである。
【0165】
(1)ポリオールプレミックス
・ポリオール
p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
【0166】
・整泡剤
ポリアルキレングリコール系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193)
【0167】
・カルボン酸アンモニウム塩
三量化触媒(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO TMR7)
【0168】
・触媒
三量化アミン触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TRX)
三量化アミン触媒(サンアプロ株式会社製、製品名:U-CAT 18X)
三量化金属触媒(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO K-15)
樹脂化アミン触媒(サンアプロ株式会社製、製品名:U-CAT 202)
樹脂化アミン触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-TT)
樹脂化アミン触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT(登録商標)-DM70)
樹脂化金属触媒(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-600)
樹脂化金属触媒(日東化成社製、製品名:ネオスタン U-830)
【0169】
・発泡剤
水
HFO(ハネウェル社製、製品名:ソルティスLBA)
【0170】
・難燃剤
トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP、「TMCPP」という。)
赤リン(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
ホウ酸亜鉛(早川商事株式会社製、製品名:Firebrake ZB)
ウォラストナイト(SiO2・CaO)(キンセイマテック社製、製品名:SH-1250)
【0171】
下記の表1の配合に従い、(1)ポリオールプレミックスの成分を1000mLポリプロピレンビーカーにはかりとり、25℃、1分間手混ぜで撹拝した。
【0172】
発泡体の形成は以下の手順に従った。(1)ポリオールプレミックスの成分の混練物に対して、(2)ポリイソシアネートを加え、ハンドミキサーで約10秒間擾拝し発泡性ポリウレタン樹脂組成物を作製した。得られた発泡性ポリウレタン樹脂組成物は時間の経過と共に流動性を失い、発泡性ポリウレタン樹脂組成物の発泡体を得た(各成分の割合をウレタン樹脂100質量部に対する質量部で示す)。
【0173】
2.評価
下記の基準により、実施例を評価した。
【0174】
[横伸び剥離の評価]
発泡時の横伸びが大きいと、凹凸部位に吹付施工などを行った際、基材界面との剥離が発生する。そこで、L字基材の凹部に向かって吹付施工を行い、剥離の有無により横伸びの評価を行った。L字基材としては、30cm四方の石膏ボード2枚を垂直に固定したものを用いた。吹き付けは、グラコ社製吹付装置H-25を用いた。
【0175】
L字基材凹部への吹付により剥離有:横伸び大きい、×
L字基材凹部への吹付でも剥離無:横伸び小さい、○
【0176】
[HFO/触媒分解性評価]
HFOと触媒との分解反応が発生すると、触媒の活性が低下し、発泡挙動に変化が見られる。そこで、ポリオールプレミックスを、60℃、1週間(1w)で加速試験をし、加速試験前後の発泡挙動に差があるかを、タックフリータイムにより評価した。
【0177】
加速試験前後でタックフリータイム変化が3割以上:発泡挙動に変化有り、×
加速試験前後でタックフリータイム変化が3割未満:発泡挙動に変化無し、○
【0178】
結果を表1に示す。
【0179】