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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】シューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A43B13/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021527298
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025932
(87)【国際公開番号】W WO2020261562
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 舞
(72)【発明者】
【氏名】谷口 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】阪口 正律
(72)【発明者】
【氏名】高増 翔
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04449306(US,A)
【文献】特開昭55-070202(JP,A)
【文献】実開平03-113603(JP,U)
【文献】特開2002-034605(JP,A)
【文献】特開昭58-049101(JP,A)
【文献】特表2011-525843(JP,A)
【文献】特開平07-255509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を有するアウトソールと、
前記アウトソール上に固定されたミッドソールと、
前記ミッドソールの周縁に沿って当該ミッドソールに結合されたアッパーとを備え、
前記ミッドソールは、内足側の後足部に対応する位置に前記ミッドソールの他の部分と同一の硬度を有する膨出部を備え、
前記膨出部の高さは、前記ミッドソールの前記後足部中央の高さと同じであり、
前記膨出部における前記ミッドソールの外縁が、前記接地面の外縁よりも内足方向に膨出しており、
当該膨出部は、上面視したときに、前記アッパーと前記ミッドソールとの結合部から、前記ミッドソールの外縁までの間の水平距離で測定された膨出長さL1を有し、
前記膨出長さL1は、前記膨出部が設けられていない所定部分における前記アッパーと前記ミッドソールの結合部からミッドソールの外縁までの水平長さL2よりも長い、シューズ。
【請求項2】
前記ミッドソールは、少なくとも踵骨を支持する部分において硬度が一定である、請求項1に記載のシューズ。
【請求項3】
前記ミッドソールは、二色成形されている、請求項1または2に記載のシューズ。
【請求項4】
前記膨出部は、内足側の後足部にのみ形成されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載のシューズ。
【請求項5】
前記膨出部は、前記接地面の踵部近傍の着地領域の外周以外の箇所に形成されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載のシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズに関し、特に安定性を高めたシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ランニングやウォーキングで用いられるシューズにおいては、着地時の衝撃を吸収するクッション性と、着地時の安定性との両立が求められている。特に着地時の安定性は、怪我を抑制する観点で重要視されており、シューズの安定性が低いと着地時に足が内足側に傾きすぎるいわゆるオーバープロネーションを起こし、怪我の可能性を高める。したがって、オーバープロネーションを抑制することは極めて重要であり、これを実現するための技術として例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5157020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたシューズは、ミッドソールに硬質な埋没部を設けており安定性が高いが、ユーザーの好みによっては突き上げ感が気になる場合がある。したがって、特許文献1とは異なる手段で安定性を高めるニーズが存在する。
【0005】
そこで本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、安定性をさらに高めるシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、接地面を有するアウトソールと、アウトソール上に固定されたミッドソールと、ミッドソールの周縁に沿ってミッドソールに結合されたアッパーとを備え、ミッドソールは、内足側の後足部に対応する位置に膨出部を備え、膨出部は、上面視したときに、アッパーとミッドソールとの結合部から、接地面の外縁までの間の水平距離で測定された膨出長さL1を有し、膨出長さL1は、最後端におけるアッパーとミッドソールの結合部からミッドソールの外縁までの水平長さL2よりも長い。
【0007】
本発明の異なる態様は、接地面を有するアウトソールと、アウトソール上に固定されたミッドソールと、ミッドソールの周縁に沿って当該ミッドソールに結合されたアッパーとを備え、記アウトソールは、内足側の後足部に対応する位置に膨出部を備え、膨出部は、上面視したときに、アウトソールとミッドソールとの結合部から、接地面の外縁までの水平距離で測定された膨出長さL1を有し、膨出長さL1は、最後端における、アッパーとミッドソールの結合部からミッドソールの外縁までの水平長さL2よりも長い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】足の骨格を示す上面図である。
図2】実施形態によるシューズの側面図である。
図3】実施形態によるシューズの底面図である。
図4】実施形態によるシューズの断面図を示す。
図5】実施形態によるシューズの断面図を示す。
図6】実施形態によるシューズの断面図を示す。
図7】実施形態によるシューズのミッドソールの概略断面図である。
図8】実施形態によるシューズのミッドソールの概略断面図である。
図9】実施形態によるシューズの側面図である。
図10】実施形態によるアウトソールとミッドソールの上面図である。
図11】実施形態によるミッドソールの上面図である。
図12】実施形態によるミッドソール及びアウトソールの底面図である。
図13】実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図14】実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図15】実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図16】実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図17】実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図18】実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図19】実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図20】第2の実施形態によるシューズの断面図である。
図21】第2の実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図22】第2の実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
図23】第2の実施形態の変形例によるシューズの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本明細書で用いる用語の定義について説明する。本明細書では、方向を示す用語として、前後方向、幅方向、及び上下方向を用いることがあるが、これら方向を示す用語は、シューズを平らな面に置き、シューズを着用したときの着用者の視点から見た方向を示す。したがって、前方向はつま先側を意味し、後方向はかかと側を意味する。また、方向を示す用語として、内足側、及び外足側を用いることがあるが、内足側とは足の幅方向内側、即ち足の縦アーチが設けられている側を意味し、外足側とは幅方向において内足側とは反対側を意味する。
【0010】
また、以下の説明では、シューズのミッドソール及びアウトソールの外縁について言及することがあるが、ミッドソール又はアウトソールの外縁とは、ミッドソール又はアウトソールをそれぞれ上面視したときの投影形状の外縁を意味する。また、以下の説明では、ミッドソールの外側(方向)又は内側(方向)について言及することがある。ミッドソールの外側はミッドソールを上面視したときに、ミッドソールの面から離れるあらゆる方向を意味する。ミッドソールの内側はミッドソールを上面視したときに、ミッドミッドソールの外側からミッドソールの面内に向かうあらゆる方向を意味する。さらにまた、幾つかの例では、3次元直交座標を用いて方向を説明することがある。この場合、X軸は内足側から外足側に向けて延び、Y軸は踵側からつま先側に向けて延び、Z軸は底面側から上側に向けて延びる。
【0011】
また、実施形態によるシューズの説明を行う前に、実施形態によるシューズと関連することがある足の骨格について、図1を参照しながら説明を行う。
【0012】
図1は、足の骨格を示す上面図である。人体の足は、主に、楔状骨Ba、立方骨Bb、舟状骨Bc、距骨Bd、踵骨Be、中足骨Bf、趾骨Bgで構成される。足の関節には、MP関節Ja、リスフラン関節Jb、ショパール関節Jcが含まれる。ショパール関節Jcには、立方骨Bbと踵骨Beがなす踵立方関節Jc1と、舟状骨Bcと距骨Bdがなす距舟関節Jc2とが含まれる。本明細書での着用者の「前足部」は、MP関節Jaよりも前側の部分をいい、つま先側から測定して足の全長の0~約30%をいう。また、「中足部」は、MP関節Jaからショパール関節Jcまでの部分をいい、つま先側から測定して足の全長の約30~80%をいう。また、「後足部」は、ショパール関節Jcよりも後側の部分をいい、つま先側から測定して足の全長の約80~100%をいう。また、図1において中心線Sは、シューズの中心線を示し、足幅方向中央部に沿って延びる。中心線Sは、人体の第三中足骨Bf3と踵骨Beの踵骨隆起内側突起Be1を通る直線上に位置する部位を想定している。図1では踵骨隆起内側突起Be1が位置すると想定される範囲を示す。
【0013】
図2は、シューズの側面図である。図2は、片方のシューズを内足側から見た側面図である。図2に示すように、シューズ1は、主として足の甲を覆うアッパー2と、アッパー2が結合されているミッドソール4と、歩行時に地面に接触する接地面を有するアウトソール6と、を備えている。
【0014】
アッパー2は、足の甲の上側を覆う形状を有している。アッパー2は、アッパー本体2aと、アッパーの緊締手段(緊締構造)2bと、アッパー2の幅方向中央付近においてアッパー2の前後方向に延びるスリット2cとを備えている。また、アッパー2にはシュータン2dが取り付けられている。本実施形態では、緊締手段2bとして、ハトメと、シューレースとの組み合わせによる構造を採用しているが、緊締手段としては面ファスナー等を用いてもよい。
【0015】
アッパー本体2aは、例えばポリエステル、ポリウレタン等の合成繊維を編んだメッシュ素材、合成皮革、天然皮革によって形成され、足の甲を覆う形状を有している。スリット2cは、シューレースの締め具合によってアッパー本体2aの幅を調整するための緩衝部分である。スリット2cの幅方向両側には、複数のハトメが設けられている。スリットからはシュータン2dが露出しており、シューレースを付けた際にシューレースが着用者の足の甲に接触しないようになっている。
【0016】
図3は、シューズの底面図である。図3に示すように、アウトソール6は、例えばラバーを所定形状に成形することで形成されている。アウトソール6は、ミッドソール4の底面を少なくとも部分的に覆うように、ミッドソール4の底面に貼り付けられている。アウトソール6は、地面に接触する接地面を有する。接地面の表面には所定の凹凸パターンが形成されており、凹凸パターンによりグリップを向上させる。
【0017】
図3に示す例では、アウトソール6は、複数の島状部分を所定のミッドソールの底面の所定位置に貼り付けて形成されている。接地面は、複数の島状部分の底面によって形成されており、島状部分の間からミッドソール4の底面が露出している。したがって、図示の例では接地面は、1つの連続する面を形成しておらず、複数の面によって形成されている。なお、アウトソール6を1枚の平らなシート状部材によって形成してもよい。この場合、シート状部材の底面が接地面を形成する。
【0018】
ミッドソール4は、衝撃を吸収する役割を果たし、例えば発泡EVA、発泡ウレタン、GEL、コルクのような衝撃を吸収する材料によって形成される。ミッドソール4は、足を上面視したときの投影形状を模した平面形状を有している。ミッドソール4の上面は、足の裏の凹凸形状に対応する凹凸形状を有している。また、ミッドソール4の上面には、アッパー2が結合される。より具体的にはアッパー2は、ミッドソール4の外縁に沿って、又は外縁よりも僅かにミッドソール4の内側に沿って結合されている。アッパー2をミッドソール4に結合する手段としては、アッパー2の縁をミッドソール4に縫い付けたり、接着剤等の接合手段を用いて結合したりする方法がある。ミッドソール4の形状や厚さは、シューズの用途に応じて適宜設定できる。
【0019】
図4図6は、シューズの断面図を示す。より具体的には図4図2の4-4断面の断面図であり、図5図2の5-5断面の断面図であり、図6図2の6-6断面の断面図である。図4図6の断面図は、後足部付近の断面をとっており、いずれもかかと側からつま先側を見た断面図である。図7及び図8は、ミッドソールの概略断面図であり、いずれもかかと側からつま先側を見た断面図である。
【0020】
図4図6に示すように、ミッドソール4は、外側に向けて膨出する膨出部8を備える。膨出部8は、例えば、ミッドソール4の側面を、上側から下側に向かうにつれて外側に広がるフレア形状とすることで形成される。膨出部8を設けることにより、いわゆるオーバープロネーションを抑制できる。オーバープロネーションを最大限に抑制できるようにするためには、膨出部8を、少なくとも内足側の後足部に相当する部分に、又は内足側の後足部に相当する部分にのみ設けることが好ましい。このような膨出部8は、ミッドソール4の膨出部8以外の部分と同一の材料により形成され、同一の硬度を有していてもよい。また、膨出部8を、ミッドソール4の膨出部以外の部分と異なる材料により形成し、膨出部8と、膨出部8以外の部分とで硬度を異ならせてもよい。例えば、図4図6に示すように、膨出部8の硬度をH1とし、膨出部8以外の部分の硬度をH2とした場合、H1>H2とすることができる。このような構成とすることで、安定性を向上しつつ、突上げ感を抑制できる。このような場合、ミッドソール4を二色成形により形成し、膨出部8と、膨出部8以外の部分とを一体成形することが好ましい。また、膨出部8をミッドソール4と別体で作製し、これらを接合してもよい。
【0021】
別の観点で説明すると、膨出部8は、上面視したときに、アッパー2とミッドソール4との結合部10を基準として、ミッドソール4の底面の外縁12が結合部10よりも外側に位置するような形状を有している。実施形態によるシューズ1では、内足側の後足部に対応する部分にのみ膨出部8が設けられている。なお他の態様では、内足側の後足部及び内足側の前足部にのみ膨出部8を設けてもよい。更なる態様では、内足側の後足部、内足側の前足部、及び外足側の前足部にのみ膨出部8を設けてもよい。また、更なる態様では、後述する踵部近傍の着地領域に対応する部分以外の全ての部分に膨出部8を設けてもよい。
【0022】
ここで、膨出部8が設けられているか否かの基準となるミッドソール4とアッパー2の結合部10は、ミッドソール4とアッパー2との結合方法によって異なる場合がある。つまり、ミッドソール4とアッパー2とが縫合されている場合、ミッドソール4とアッパー2は、面で接することとなり、結合部10が一定の幅を有する。この場合、ミッドソール4とアッパー2との接点を基準とし、ミッドソール4とアッパー2の接点よりも外側にミッドソール4の底面の外縁12がある場合には、ミッドソール4は膨出部8を有していることとなる。ミッドソール4の上面(アッパー2が結合される面)は、多少の凹凸を有しているとしてもほぼ平坦な形状を有するものとみなすことができる。これに対してアッパー2は、図4図6に示すように、足の甲を包み込めるような湾曲形状を有している。したがって、図4図6に示す断面においては、平らなミッドソール4と湾曲形状のアッパー2とが接する接点が存在する。この接点を基準として、ミッドソール4の底面の外縁12が、接点よりも外側に位置するようにミッドソール4を形付けることで、ミッドソール4に膨出部8を設けられる。
【0023】
膨出部8の高さは、ミッドソール4の高さと一致していても良いし(図7参照)、ミッドソール4よりも低くてもよい(図8参照)。なお、図7及び図8は、明確化のためにミッドソールの断面を概略的に示したものであり、特に傾斜面の角度を誇張して示す。膨出部8の高さとミッドソール4の高さが一致する場合、膨出部8は、例えば図7(a)に示すように、XZ断面において、ミッドソール4とアッパー2の結合部10からミッドソール4の外側に向けて水平方向に、XY平面に沿って延びる水平面と、水平面の端からほぼ鉛直方向にミッドソール4の底面に向けてYZ平面に沿って延びる鉛直面とを組み合わせた形状となる。また、膨出部8は、図7(b)に示すように、ミッドソール4とアッパーの結合部10から、ミッドソール4の底面に向けてYZ平面に沿って延びる鉛直面からなる形状であってもよい。鉛直面は、鉛直方向に対して±3°程度の傾斜を有していてもよい。また、図8に示すように、膨出部8の高さとミッドソール4の高さが一致しない場合、膨出部8は、膨出部8の膨出方向(内足方向)と直交するXZ断面において、ミッドソール4の高さ方向中間からほぼ鉛直方向にミッドソール4の底面に向けてYZ平面に沿って延びる鉛直面とを組み合わせた形状となる。
【0024】
膨出部8の高さが、ミッドソール4よりも低い場合、膨出部8は、ミッドソール4の高さ方向の任意の位置からミッドソール4の外側に向けて膨出させた形状となる。例えば図4~6に示す例では膨出部8の上端は、ミッドソール4の高さ方向中間にあり、膨出部8は上端からミッドソール4の底面に向かうにつれてミッドソール4の外側に広がる形状を有する。この場合において、膨出部8の上端は、ミッドソール4の高さ方向の中央付近に設けられていることがより好ましい。
【0025】
図9は、シューズの側面図である。図9は、内足側から見たシューズの側面図であり、膨出部が設けられている部分にハッチングを付してある。図9に示す例では、膨出部8は、中足部中間から後足部にかけて、前後方向において連続して延びている。膨出部8の後端は、後足部の中間にあり、後述する着地領域にかからないように定められている。また、図9に示す例では、膨出部8の高さが、前方に向かうにつれて低くなっている。図示の例では、膨出部8の上辺が、前方に向かうにつれてミッドソール4の上端から離れるように傾斜している。このように、膨出部8の高さを部位によって変化させてもよい。この場合、特に安定性が要求される後足部における膨出部の高さを高くし、前側に向かうにつれて低くしてもよい。また、変形例として、膨出部8を不連続形状とし、前後方向に断続的に延びる形状としてもよい。
【0026】
ミッドソール4とアウトソール6との形状によっては、ミッドソール4の外縁12は、上面視したときに接地面を有するアウトソール6の外縁14と一致する場合がある。ここで、アウトソール6の外縁14と、ミッドソール4の外縁12が一致する、とは、少なくとも以下の2つのパターンを含む。
【0027】
第1のパターンとして、アウトソール6が1枚のシート形状を有し、当該シート形状がミッドソール4の平面形状と一致することにより、上面視したときにアウトソール6の外縁14とミッドソール4の外縁12が一致する。
【0028】
第2のパターンとして、アウトソール6が複数の島状部分によって形成されている場合、ミッドソール4の外縁12の一部が、少なくとも1つの島状部分の外縁14の一部と一致していればよい。図10は、アウトソール6とミッドソール4の上面図である。図10では、一点鎖線によりアウトソール6の外縁14を示し、二点鎖線によりミッドソール4の外縁12を示し、アウトソール6とミッドソール4の外縁12,14が一致している部分を実線で示す。図10に示すように、島状のアウトソール6の外側方向の外縁14の一部だけがミッドソール4の外縁12の一部が一致している。
【0029】
また、膨出部8の水平方向への膨出長さL1(L1>0)は、膨出部8が設けられていない部分のアッパー2とミッドソール4の結合部10からミッドソール4の外縁12までの水平長さL2(L2≧0)よりも長い。以下、図11を参照して詳細な説明を行う。
【0030】
図11は、ミッドソールの上面図である。膨出部8の膨出長さL1は、アッパー2とミッドソール4との結合部10から、接地面の外縁14までの水平方向の距離である。なお、上述したように接地面の外縁14と、ミッドソール4の外縁12とは一致している場合には、膨出部8の膨出長さL1は、アッパー2とミッドソール4との結合部10から、ミッドソール4の外縁12までの距離と言い換えることもできる。一方で、膨出部8が設けられていない部分の水平長さL2は、アッパー2とミッドソール4の結合部10から、ミッドソール4の外縁12までの水平方向の距離である。水平長さL2は、膨出部8が設けられていない任意の部分で測定してもよい。膨出長さL1と、水平長さL2は、ミッドソール4の形状と結合部10の形状によって変化する場合がある。この場合、最も水平方向の距離が大きい位置でそれぞれ膨出長さL1及び水平長さL2をとり、両者を対比することが好ましい。また、外足側の水平長さL3(L3≧0)は、外足側におけるアッパー2とミッドソール4との結合部10から、接地面の外縁14までの水平方向の距離となる。
【0031】
膨出長さL1及び水平長さL2、L3の測定の仕方としては、様々な測定方法が想定されるが、基本的には両者を同じ基準で測定すればよい。一例として、膨出長さL1及び水平長さL2、L3を、ミッドソール4の外縁12の位置におけるYZ平面に沿って測定できる。また一例として、膨出長さL1及び水平長さL2、L3を結合部10の位置におけるYZ平面に沿って測定できる。また一例として、後足部において例えば中心線Sに沿う位置で任意の点をとり、点からミッドソールの外縁に向けて線を引き、当該線に沿って膨出長さL1及び水平長さL2、L3を測定してもよい。膨出部8の膨出長さL1は、膨出部8が設けられていない部分のアッパー2とミッドソール4の結合部10からミッドソール4の外縁12までの水平長さL2及びL3よりも長い。
【0032】
なお、ミッドソール4の外縁とアウトソール6の外縁とが一致しない場合としては、ミッドソール4の外縁12が、接地面の外縁14よりも内足側にある場合、及びミッドソール4の外縁12が、接地面の外縁14よりも外足側にある場合がある。前者の場合、膨出長さL1及び水平長さL2を、接地面の外縁14の位置に関わらず、アッパー2とミッドソール4との結合部10から、ミッドソール4の外縁12までの水平方向距離としてもよい。また、後者の場合、膨出長さL1及び水平長さL2を、ミッドソール4の外縁12の位置に関わらず、アッパー2とミッドソール4との結合部10から、接地面の外縁14までの水平方向距離としてもよい。
【0033】
図12は、ミッドソール及びアウトソールの底面図である。上述したように膨出部8は、踵部近傍の着地領域16に対応する部分には設けられていないことが好ましい。したがって、膨出部8が設けられていない部分としては、踵部近傍の着地領域16に対応する部分であることが好ましく、水平長さL2は、踵部近傍の着地領域16に対応する部分で測定することが好ましい。また、外足側に膨出部8が設けられていない場合には、水平長さL2を、外足側の任意の位置で測定してもよい。
【0034】
踵部近傍の着地領域16とは、シューズ1の底面のうち、踵から着地したときに最初に地面に接触する領域であり、シューズ1の用途等に応じて適宜設定可能である。例えばランニングシューズにおいては、図12に示すような、踵骨付近を幅方向に横切る仮想線VL1よりも後方側の領域でミッドソール4の厚みを踵側にいくにつれて漸減させることが知られている。これにより、踵付近を水平方向に対して踵側、及び/又は外足側を上方に傾斜させ、傾斜した面(着地領域16)を形成する。このような傾斜面を形成することにより、着地時の衝撃を緩和する。このような技術を前提に、実施形態によるシューズ1は、着地領域16に対応する部分には膨出部8を設けず、着地領域16に対応する部分以外の部分に膨出部8を設けている。着地領域16に対応する部分に膨出部8を設けないようにすることで、膨出部8が着地時に接地動作の邪魔をしない。着地領域16に膨出部8を設けない場合、水平長さL2は、着地領域16に対応する部分、特にかかと側の最後部で測定することが好ましい。
【0035】
また、着地領域16を規定する仮想線を、上述した仮想線VL1に代えて、前後方向に傾斜した仮想線VL2としてもよい。仮想線VL2は、外足側がより前方にあり、内足側がより後方にあり、上面視したときに傾斜した仮想線である。仮想線VL2の傾斜角度は任意に設定でき、仮想線VL1に対して0度より大きく約45度までの角度とすることができる。
【0036】
また、着地領域を規定する構造として、ミッドソール4の底面を傾斜させることに限らず、島状に配置された複数のアウトソール6の配置によって、着地領域16を定めてもよい。この場合、例えば仮想線VL1又は仮想線VL2に沿ってアウトソール6を形成せず、仮想線VL1又は仮想線VL2の前後方向にアウトソール6を形成する。これにより、アウトソール6の間に仮想線VL1又は仮想線VL2に沿ってミッドソール4の底面が露出した線を形成できる(例えば図3参照)。この線は、シューズ1を底面視したときにミッドソール4の表面が露出している部分であり、アウトソール6が形成されている部分よりも可撓性が高くなる。したがって、この線よりも後方側を着地領域16と定め、この着地領域16に対応する部分には膨出部8を設けず、それ以外の部分に膨出部8を設けてもよい。
【0037】
また、ミッドソールは、少なくとも後足部に相当する部分、特に着用時に踵骨の下側に位置する部分の硬度が一定であることが好ましい。オーバープロネーションを抑制するためには、ミッドソールの内足側の端付近の硬度を、他の部分の硬度よりも高め、着地時に足が内足側に倒れるのを抑制することが考えられる。しかしながら、ミッドソールに硬度差を持たせた場合、高硬度部分と低硬度部分との境目が必ず存在する。境目の位置が、上面視したときに足裏と重なる位置にあると、特に高硬度部分によって着用者に、いわゆる突き上げ感を与えてしまう。これに対して本実施形態によるシューズは、膨出部によりオーバープロネーションを抑制できるので、ミッドソールの硬度を一定にしても好適にオーバープロネーションを抑制できる。
【0038】
図13乃至図19は、シューズの断面図であり、より具体的には膨出部の断面形状の変形例を示す図である。
【0039】
図13に示す変形例では、膨出部8は、ミッドソール4の上面から底面に向けてフレア状に延び、ミッドソール4の高さ方向の中間に設けられた変曲点で傾斜角度が緩くなったフレア状に延びている。図14に示す変形例では、膨出部8は、ミッドソール4の高さ方向中間から内足側に延び、そこから底面に向けてフレア状に延びる。図15に示す変形例では、膨出部8は、ミッドソール4の高さ方向中間から湾曲形状をもって内足側に膨出している。図16に示す例では、膨出部8は、ミッドソール4の高さ方向の低い位置から湾曲形状をもって内足側に膨出している。
【0040】
図17乃至図19に示す変形例では、膨出部8に加えて、膨出部8以外のミッドソール4の一部を高硬度材料で形成している。これらの変形例では、膨出部8と連続する部分を高硬度材料で形成し、残りの部分を低硬度材料で形成している。なお、図17乃至図19では明確化のために、高硬度材料で形成されている部分にハッチングを付してある。図17に示す変形例は、膨出部8が図13に示す膨出部と同一の形状を有する。さらに図17に示す例では、膨出部8は、膨出部8とミッドソール4の膨出部8以外の部分との間の境界線を軸として線対称な形状の高硬度材料部を有している。図18に示す変形例では、膨出部8をミッドソール4の高さ方向の全長にわたって形成している。この例でも膨出部8と線対称な形状の高硬度材料部を有している。図19に示す変形例では、膨出部8を、ミッドソール4の高さ方向の全長にわたって形成し、かつ内足側に湾曲する形状としている。この例でも膨出部8と線対称な形状の高硬度材料部を有している。いずれの場合においても、高硬度材料部は、上面視したときに踵骨とほとんど重複しない位置までしかミッドソールの内側方向に延びない。なお、特に図17に示す例では、上面視したときに高硬度材料部が踵骨と部分的に重複する位置まで延びている。しかしながら、図17に示す例のように、ミッドソール4の高さ方向下側の位置で高硬度材料部をミッドソール4の内側方向に延ばしたとしても突き上げ感を抑制できる。したがって、高硬度材料部をミッドソール4の内側方向に延ばす場合には、高さ方向下側だけを延ばし、高さ方向上側だけが踵骨と重複しないようにすることが好ましい。この場合、例えば高さ方向中央より下方に高硬度材料部を設けるのがより好ましい。さらに、突き上げ感を好適に防止するために、高硬度材料部が踵骨と重複する位置において、上側に角をなすような形状を有さないことがより好ましい。このような高硬度材料部によって、突き上げ感を抑制できる。なお、高硬度材料部は、必ずしも膨出部8と線対称な形状である必要はない。
【0041】
以上のように実施形態にかかるシューズは、内足側の後足部に対応する位置に膨出部8を設けることで、着地時にしっかりと内足側を支持でき、オーバープロネーションを抑制できる。これにより安定性を向上させることができる。また、着地領域16には膨出部8を設けないことにより、膨出部8が着地動作を阻害するのを防げる。
【0042】
次に、シューズの第2の実施形態について説明する。上述した実施形態では、膨出部をミッドソールに設けたが、第2の実施形態では、膨出部はアウトソールに設けられている。
【0043】
図20は、シューズの断面図である。図20に示すように、シューズ20のアウトソール22は巻上げ部24を有し、膨出部26は巻上げ部24に形成されている。巻上げ部24は、アウトソール22の外縁から上側に向けて立ち上がる周壁によって形成されている。より具体的には、巻上げ部24は、アウトソール22の外縁から上側に向けて延びる。巻上げ部24は、シューズ20の剛性を向上させる。シューズ20の剛性とは、曲げ剛性やねじれ剛性をいう。巻上げ部24の上端の位置は、シューズ20の用途に応じて適宜変更可能である。
【0044】
巻上げ部24の高さは、均一であってもよく、位置によって異なってもよい。例えば、つま先側において剛性が求められる場合には、巻上げ部24を踵側において低くし、つま先側において高くしてもよいし、幅方向の内外で高さを変えてもよい
【0045】
膨出部26は、アウトソール22の側面を、上側から下側に向かうにつれて外側に広がるフレア形状とすることで形成される。このような膨出部26によっても、いわゆるオーバープロネーションを抑制できる。巻上げ部24を形成する位置としては、アウトソール22の外縁に沿ってアウトソール22の全周に形成してもよいし、アウトソール22の外縁に沿って一部にだけ形成してもよい。膨出部26は、アウトソール22の外縁に沿って、全ての巻上げ部24に形成されていてもよいし、一部にだけ形成されていてもよい。膨出部26は、内足側の後足部に対応する部分にのみ設けられていてもよい。他の態様では、内足側の後足部及び内足側の前足部にのみ膨出部26を設けてもよい。更なる態様では、内足側の後足部、内足側の前足部、及び外足側の前足部にのみ膨出部26を設けてもよい。また、更なる態様では、踵部近傍の着地領域に対応する部分以外の全ての部分に膨出部26を設けてもよい。
【0046】
膨出部26の高さは、巻上げ部24の高さと一致していても良いし、巻上げ部24よりも低くてもよい。一例として、図20に示すように、巻上げ部24の高さとミッドソール28の高さが一致し、さらに膨出部26の高さと巻上げ部24の高さが一致する場合がある。この場合、膨出部26は、膨出部26の膨出方向と直交するYZ断面において、巻上げ部24の上端からミッドソール28の外側に向けてXY平面に沿って延びる水平面と、水平面の端からYZ平面に沿ってミッドソール28の底面に向けて延びる鉛直面とを組み合わせた形状となる。
【0047】
図21図23は、シューズの断面図であり、膨出部の変形例を示す図である。図21に示すように、巻上げ部24の高さとミッドソール28の高さが一致し、膨出部26の高さが巻上げ部24の高さよりも低い場合、膨出部26は、巻上げ部24の高さ方向の任意の位置から巻上げ部24の外側に向けて膨出させた形状となる。一例として、図22に示すように、巻上げ部24の高さがミッドソール28の高さよりも低く、さらに膨出部26の高さと巻上げ部24の高さが一致する場合がある。この場合、膨出部26は、膨出部26の膨出方向と直交するYZ断面において、巻上げ部24の上端からミッドソール28の外側に向けてXY平面に沿って延びる水平面と、水平面の端からほぼYZ平面に沿ってアウトソール22の底面に向けて延びる鉛直面とを組み合わせた形状となる。図23に示すように、巻上げ部24の高さがミッドソール28の高さよりも低く、さらに膨出部26の高さが巻上げ部24の高さよりも低い場合、膨出部26は、巻上げ部24の高さ方向の任意の位置から巻上げ部24の外側に向けて膨出させた形状となる。
【0048】
第2の実施形態によっても、膨出部26を設けることで、着地時にしっかりと内足側を支持できオーバープロネーションを抑制できる。これにより安定性を向上させることができる。また、着地領域には膨出部26を設けないことにより、膨出部26が着地動作を阻害するのを防げる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、実施形態の各構成は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0050】
以下、特許請求の範囲に記載された発明から導き出せる本発明の態様について説明する。
【0051】
第1の態様は、接地面を有するアウトソールと、アウトソール上に固定されたミッドソールと、ミッドソールの周縁に沿ってミッドソールに結合されたアッパーとを備え、ミッドソールは、内足側の後足部に対応する位置に膨出部を備え、膨出部は、上面視したときに、アッパーとミッドソールとの結合部から、接地面の外縁までの間の水平距離で測定された膨出長さL1を有し、膨出長さL1は、最後端におけるアッパーとミッドソールの結合部からミッドソールの外縁までの水平長さL2よりも長い。
【0052】
第2の態様は、第1の態様において、ミッドソールは、少なくとも踵骨を支持する部分において硬度が一定である。
【0053】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、膨出部の硬度は、ミッドソールの膨出部以外の部分の硬度よりも高い。
【0054】
第4の態様は、第1乃至第3のいずれかに記載の態様において、膨出部は、ミッドソールとアウトソールの接合面から、ミッドソールの高さ方向中間にかけて形成されている。
【0055】
第5の態様は、第1乃至第4のいずれかに記載の態様において、膨出部の内足側の側面は、接地面に向かうにつれて結合部から遠ざかる形状を有する。
【0056】
第6の態様は、第1乃至第5のいずれかに記載の態様において、ミッドソールは、二色成形されている。
【0057】
第7の態様は、第1乃至第6のいずれかに記載の態様において、膨出部は、内足側の後足部にのみ形成されている。
【0058】
第8の態様は、第1乃至第6のいずれかに記載の態様において、膨出部は、接地面の踵部近傍の着地領域の外周以外の箇所に形成されている。
【0059】
第9の態様は、接地面を有するアウトソールと、アウトソール上に固定されたミッドソールと、ミッドソールの周縁に沿ってミッドソールに結合されたアッパーとを備え、アウトソールは、内足側の後足部に対応する位置に膨出部を備え、膨出部は、上面視したときに、アウトソールとミッドソールとの結合部から、接地面の外縁までの水平距離で測定された膨出長さL1を有し、膨出長さL1は、最後端における、アッパーとミッドソールの結合部からミッドソールの外縁までの水平長さL2よりも長い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、シューズに利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 シューズ、 2 アッパー、 4 ミッドソール、 6 アウトソール、 8 膨出部、 10 結合部、 12,14 外縁、 16 着地領域、 20 シューズ、 22 アウトソール、 26 膨出部、 28 ミッドソール
図1
図2
図3
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図5
図6
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