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特許7402231触媒、その製造方法、それを含む電極、それを含む膜-電極アセンブリー、及びそれを含む燃料電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】触媒、その製造方法、それを含む電極、それを含む膜-電極アセンブリー、及びそれを含む燃料電池
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/42 20060101AFI20231213BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20231213BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20231213BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20231213BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20231213BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20231213BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231213BHJP
【FI】
B01J23/42 M
B01J35/08 Z
B01J37/10
B01J37/16
H01M4/86 M
H01M4/88 K
H01M8/10 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021529046
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2019017768
(87)【国際公開番号】W WO2020138799
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0169073
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】キム チョンホ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103157519(CN,A)
【文献】特開2010-077473(JP,A)
【文献】特開2006-228450(JP,A)
【文献】特開2005-135900(JP,A)
【文献】特表2018-502982(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1802098(KR,B1)
【文献】CAILLARD, A. et al.,Journal of Physics D:Applied Physics, [online],2015年,Vol.48,475302,[令和4年11月16日検索], インターネット <URL:https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-01220392>,HAL Id:hal-01220392, <DOI:10.1088/0022-3727/48/47/475302>
【文献】YOON, J. et al.,RSC Advances,2014年09月16日,Vol.4,pp.46521-46526,<DOI:10.1039/c4ra09619c>
【文献】LI, H. et al.,The Journal of Physical Chemistry C,2015年02月05日,Vol.119,pp.4052-4061,<DOI:10.1021/jp5106168>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
H01M 4/86 - 4/98
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体及び該担体上に担持されているメイン粒子を含む未加工触媒(raw catalyst)を準備する段階;
前記メイン粒子は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)及び白金-Me合金からなる群から選ばれる少なくとも一つを含み、
前記Meは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)及びロジウム(Rh)からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、
金属前駆体を準備する段階-前記金属前駆体は、白金(Pt)を含む-
ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、ウレア、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、及びこれらのうち2種以上の混合物からなる群から選ばれる弱還元剤を準備する段階;
前記未加工触媒、前記金属前駆体、及び前記弱還元剤を混合して混合物を得る段階;及び
前記混合物を110~150℃の温度で、6~10時間水熱処理して、コア-シェル構造以外の構造を持った金属粒子を、触媒全重量の20重量%~80重量%で前記触媒に含まれている形で得る、ことを特徴とする、触媒製造方法。
【請求項2】
前記担体は、カーボンブラック、多孔性炭素、炭素繊維、炭素ナノチューブ、炭素ナノホーン及びグラフェンからなる群から選ばれる、請求項1に記載の触媒製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、その製造方法、それを含む電極、それを含む膜-電極アセンブリー、及びそれを含む燃料電池に関し、特に、未加工(raw)触媒に対する簡単な後処理工程によって得ることができる優れた触媒活性を有する触媒、その製造方法、それを含む電極、それを含む膜-電極アセンブリー、及びそれを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(fuel cell)は、メタノール、エタノール、天然気体のような炭化水素系の物質中に含まれている水素と酸素の化学反応エネルギーを電気エネルギーに直接変換させる発電システムである。かかる燃料電池の代表例としては、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell,PEMFC)を挙げることができる。前記PEMFCは、次世代エネルギ源として脚光を浴びており、特に、環境へのやさしさという利点から、自動車関連分野で商用化に向けた研究が活発に行われている。
【0003】
前記燃料電池システムにおいて、電気を実質的に発生させる膜-電極アセンブリー(Membrane Electrode Assembly,MEA)は、水素イオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を挟んでアノード(燃料極又は酸化電極ともいう。)とカソード(空気極又は還元電極ともいう。)が位置する構造を有する。各電極は、触媒、イオノマー、溶媒及び添加剤の混合物によって形成されるが、前記触媒は、燃料電池の活性及び耐久性を決定する主要因子である。
【0004】
酸化極及び還元極に用いられる触媒としては、比表面積が大きく、電気伝導性に優れた炭素担体に白金ナノ粒子を担持させたPt/C触媒が最も広く使用されている。しかし、Pt/C触媒は、高価の金属である純粋白金を使用して製造されるため、高価である。したがって、白金使用量を減らしながらも触媒活性を向上させるために担体に対する研究を続けてきた。例えば、前記担体としては、低価、高い比表面積、物理的・化学的安定性などの長所を有する炭素系材料のグラファイト、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ及びカーボンブラックなどが研究されている。
【0005】
炭素担体上に、ナノサイズの白金又は白金-遷移金属合金粒子を担持させる方法には、塩基性条件で強力な還元剤である水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を用いて白金イオンを白金に還元させる方法によるものがあり、溶媒でありながら還元剤としても働く溶媒にNaOH、白金前駆体及び炭素を所定の比率で混合した後、エチレングリコールを用いて白金前駆体から白金を還元させ、pH調節によって前記還元された白金と担体間の相互引力を誘発し、白金を担体に担持させる方法がある。
【0006】
しかしながら、これらの方法は、白金粒子の凝集が起きて粒子サイズ分布が適切に調節されない問題が発生することがあり、また、一応誤って製造された触媒は使用し難いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面は、未加工触媒に対する簡単な後処理工程によって得ることができる優れた触媒活性を有する触媒を提供することである。
【0008】
本発明の他の側面は、未加工触媒に対して簡単な後処理工程を行うことによって、(i)触媒活性をさらに増大させるか、(ii)誤って製作して使用が不可能な触媒の活性を使用可能なレベルにまで向上させ、高価の貴金属触媒が廃棄されることを防止できる、触媒製造方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の側面は、前記触媒を含む電極を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の側面は、前記電極を含む膜-電極アセンブリーを提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の側面は、前記膜-電極アセンブリーを含む燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によって、担体;及び前記担体上に担持されている金属粒子を含み、前記金属粒子は、メイン粒子;及び前記メイン粒子上の追加金属層(additional metal layer)を含み、前記メイン粒子と前記追加金属層は、同一の金属元素を含み、前記メイン粒子の特定の活性格子面だけが成長して前記追加金属層が形成されることによって前記金属粒子がバディング(budding)構造又は棒(rod)構造を有するか、或いは前記メイン粒子の全体の活性格子面が成長して前記追加金属層が形成されることによって前記金属粒子がコア-シェル(core-shell)構造を有する、触媒が提供される。
【0013】
前記追加金属層は、前記金属粒子のうち20重量%以上であってよい。
【0014】
一方、本発明の他の側面によって、担体及び該担体上に担持されているメイン粒子を含む未加工触媒(raw catalyst)を準備する段階;金属前駆体を準備する段階-前記メイン粒子と前記金属前駆体は、同一の金属元素を含む-;ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、ウレア、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、及びこれらのうち2種以上の混合物からなる群から選ばれる弱還元剤を準備する段階;前記未加工触媒、前記金属前駆体、及び前記弱還元剤を混合して混合物を得る段階;及び前記混合物を水熱処理して、前記メイン粒子の特定の活性格子面だけを選択的に成長させるか、或いは前記メイン粒子の全体の活性格子面を成長させる段階を含む、触媒製造方法が提供される。
【0015】
前記担体は、カーボンブラック、多孔性炭素、炭素繊維、炭素ナノチューブ、炭素ナノホーン及びグラフェンからなる群から選ばれてよい。
【0016】
前記メイン粒子は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)及び白金-Me合金からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことができる。
【0017】
前記Meは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)及びロジウム(Rh)からなる群から選ばれる少なくとも一つでよい。
【0018】
前記水熱処理は、60~250℃の温度で4~20時間行われてよい。
【0019】
本発明のさらに他の側面によって、前述した触媒;及びイオノマーを含む電極が提供される。
【0020】
本発明のさらに他の側面によって、アノード;カソード;及び前記アノードと前記カソードとの間のイオン交換膜を含む膜-電極アセンブリーであって、前記アノードと前記カソードの少なくとも一方が前述の電極である、膜-電極アセンブリーが提供される。
【0021】
本発明のさらに他の側面によって、前述した膜-電極アセンブリーを含む燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、未加工触媒、金属前駆体及び弱還元剤の混合物に簡単な水熱処理をすることによって触媒の活性をさらに増大させることができ、誤って製作した触媒に対してもその活性を使用可能なレベルに向上させることができ、高価の貴金属触媒が廃棄されずに済むので経済的である。
【0023】
前記後処理工程によって得られる触媒の金属粒子は、バディング形態の構造(budding-shaped structure)、棒形態の構造(rod-shaped structure)、又はコア-シェル構造(core-shell structure)などの構造を有し、その触媒活性及び性能が極大化し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例によって未加工触媒に後処理をして形態を多様に改善させた触媒を模式的に示す図である。
【0025】
図2】本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーをを示す概略断面図である。
【0026】
図3】本発明の一実施例に係る燃料電池の全体的な構成を示す模式図である。
【0027】
図4】後処理前の未加工触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0028】
図5】本発明の実施例1によって後処理された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0029】
図6】本発明の実施例2によって後処理された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真図である。
【0030】
図7】本発明の実施例3によって後処理された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0031】
図8】本発明の実施例4によって後処理された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0032】
図9】本発明の比較例1によって後処理された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0033】
図10】後処理前の未加工触媒のXRD分析結果を示すグラフである。
【0034】
図11】本発明の実施例1によって後処理された触媒のXRD分析結果を示すグラフである。
【0035】
図12】本発明の実施例2によって後処理された触媒のXRD分析結果を示すグラフである。
【0036】
図13】本発明の実施例3によって後処理された触媒のXRD分析結果を示すグラフである。
【0037】
図14】本発明の実施例4によって後処理された触媒のXRD分析結果を示すグラフである。
【0038】
図15】本発明の比較例1によって後処理された触媒のXRD分析結果を示すグラフである。
【0039】
図16】後処理前の未加工触媒と実施例3によって後処理された触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性測定結果を示すグラフである。
【0040】
図17】本発明の実施例3の触媒、比較例1の触媒、及び比較例2の触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、これらは例示として提示されるものであり、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は、後述する特許請求の範囲の範ちゅうによって定義されるだけである。
【0042】
本発明の触媒は、担体及び該担体上に担持されている金属粒子を含む。
【0043】
前記金属粒子は、メイン粒子及び該メイン粒子上の追加金属層(additional metal layer)を含む。前記メイン粒子と前記追加金属層は、同一の金属元素を含む。
【0044】
本発明によれば、(i)前記メイン粒子の特定の活性格子面だけが成長して前記追加金属層が形成されることによって前記金属粒子がバディング(budding)構造又は棒(rod)構造を有するか、或いは(ii)前記メイン粒子の全体の活性格子面が成長して前記追加金属層が形成されることによって前記金属粒子がコア-シェル(core-shell)構造を有する。
【0045】
担体上に前記メイン粒子が担持されている未加工触媒、例えば、商用触媒に対して、後処理を行って、前記メイン粒子の特定の活性格子面又は全体の活性格子面を反応活性格子面として活用して成長させることによって、バディング(budding)構造又は棒構造の金属粒子を形成させたり或いはコア-シェル構造の金属粒子を得ることができ、触媒の性能を極大化させることができる。
【0046】
このとき、触媒の活性を効果的に向上させるために、前記追加金属層は、前記金属粒子のうち20重量%以上であってよい。
【0047】
一方、本発明の触媒製造方法は、未加工触媒を準備する段階;金属前駆体を準備する段階;弱還元剤を準備する段階;前記未加工触媒、前記金属前駆体、及び前記弱還元剤を混合して混合物を得る段階;及び前記混合物を水熱処理して前記メイン粒子の特定の活性格子面だけを選択的に成長させたり或いは前記メイン粒子の全体の活性格子面を成長させる段階を含む。
【0048】
前記未加工触媒は、担体、及び該担体上に担持されているメイン粒子を含む。
【0049】
前記メイン粒子と前記金属前駆体は、同一の金属元素を含む。
【0050】
前記弱還元剤は、ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、ウレア、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、及びこれらのうち2種以上の混合物からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0051】
本発明に係る触媒製造方法は、未加工触媒、金属前駆体及び弱還元剤の混合物に簡単な水熱処理を行うことによって優れた活性の触媒を得ることができる。また、本発明の方法は、誤って製作して使用が不可能な未加工触媒の触媒活性を使用可能なレベルに増加させることができ、高価の貴金属触媒が廃棄されずに済むので経済的である。このとき、前記未加工触媒のメイン粒子の特定表面又は表面全体を反応活性点として活用し、前記メイン粒子の特定の活性格子面を選択的に成長させたり或いは前記メイン粒子の全体の活性格子面を成長させることによって触媒の性能を極大化させることができる。
【0052】
図1は、本発明の実施例によって未加工触媒を後処理して形態を多様に改善させた触媒を模式的に示す図である。図1を参照すると、担体1にメイン粒子2aが担持されている未加工触媒の後処理によって(i)前記メイン粒子2aの特定の活性格子面だけが成長して追加金属層2bが形成されることによって、前記メイン粒子2aがバディング形態(budding-shaped)の構造又は棒形態(rod-shaped)の構造を有する金属粒子2に転換するか(触媒A及び触媒C)、或いは(ii)前記メイン粒子2aの全体の活性格子面が成長して追加金属層2bが形成されることによって、前記メイン粒子2aがコア-シェル(core-shell)構造を有する金属粒子2に転換される(触媒B)。大部分の場合、前記3つの構造変化が全て発生するが、金属前駆体の種類、弱還元剤の種類、弱還元剤の量、水熱処理の時間、混合物のpH、及び水熱処理温度のうち少なくとも一つの調節によって最終金属粒子2の構造が決定され、所望の構造への転換が選択的に多く起こるように制御することができる。
【0053】
本発明の前記担体1は、(i)炭素系担体、(ii)ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアなどの多孔性無機酸化物、(iii)ゼオライトなどから選択されてよい。前記炭素系担体は、カーボンブラック(carbon black)、多孔性炭素(porous carbon)、炭素ナノチューブ(carbon nano tube,CNT)、炭素ナノホーン(carbonnano horn)、グラフェン(graphene)、スーパーピー(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、アセチレンブラック(acetylene black)、炭素球体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素及びこれらの2つ以上の組合せから選択されてよいが、これに限定されるものではなく、本発明の技術分野で使用可能な如何なる担体も使用可能である。
【0054】
前記担体1に担持されたメイン粒子2aは、前記担体1の表面上に位置してもよく、前記担体1の内部気孔(pore)を埋めながら担体1の内部に浸透してもよい。
【0055】
水素酸化反応及び/又は酸素還元反応に触媒金属として使用可能なものであればいずれも前記メイン粒子2aとして使用可能である。例えば、前記メイン粒子2aは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び白金-Me合金からなる群から選ばれる少なくとも一つの白金系金属を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記Meは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)及びロジウム(Rh)からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属元素である。すなわち、前記Meが1個の金属元素である場合、前記白金-Me合金は二元合金(binary alloy)であり、前記Meが2個の金属元素である場合、前記白金-Me合金は三元合金(ternary alloy)であり、前記Meが3個以上の金属元素である場合、前記白金-Me合金は多元合金(multi-component alloy)である。
【0057】
本発明の方法によって得られた前記金属粒子2は、前記触媒全重量の20重量%~80重量%で前記触媒に含まれてよい。前記金属粒子2の含有量が20重量%未満であると、前記触媒活性が低下することがあり、前記金属粒子2の含有量が80重量%を超えると、前記金属粒子2の凝集によって活性面積が減って触媒活性が却って低下することがある。
【0058】
また、前述したように、触媒活性を効果的に向上させるために、前記追加金属層2bは前記金属粒子2の20重量%以上であってよい。
【0059】
本発明の方法で使用可能な前記金属前駆体は、前記メイン粒子2aと同じ金属元素を含む。例えば、前記金属前駆体は、前述したような白金系金属を含む化合物であるか、或いは前記化合物を含有している溶液であってよい。
【0060】
本発明の方法で使用可能な前記弱還元剤は、NaBH、LiAlH、e-beam、水素気体、ジボラン、硫化(II)鉄などの強い還元剤と比較して少なく還元を起こさせる、相対的に弱い還元剤であり、ホルムアルデヒド、ギ酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、ウレア、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、及びこれらのうち2種以上の混合物からなる群から選ばれる。
【0061】
本発明の水熱処理は、60~250℃の温度で4~20時間行われてよい。
【0062】
前記水熱処理温度が60℃未満であるか、前記水熱処理時間が4時間未満であると、弱還元剤が働かず、前記追加金属層2bが十分に形成されないことがある。一方、前記水熱処理温度が250℃を超えたり或いは前記水熱処理時間が20時間を超えると、前記追加金属層2bが過度に形成されて前記金属粒子2の凝集が起こり、触媒性能が阻害することがあるため好ましくない。
【0063】
一方、前記金属前駆体と前記弱還元剤の重量比は、1:1~1:10でよいが、これに限定されず、所望の構造の金属粒子2を得るために適切な重量比を選択することができる。
【0064】
水熱処理の温度、pH及び時間と、金属前駆体及び弱還元剤の種類、投入時期及び投入量などを適切に調節し、所望の特定構造の金属粒子2を相対的に多く形成することができる。
【0065】
例えば、(i)弱還元剤の量を相対的に増やしながら、110~150℃の温度で、6~10時間水熱処理をすれば、特定の活性格子面のみから前記メイン粒子2aが成長して(すなわち、前記メイン粒子2aの前記特定の活性格子面上にのみ追加金属層2bが形成されて)バディング(budding)構造の金属粒子2が相対的に多く得られ、(ii)未加工触媒、金属前駆体、及び弱還元剤を混合して得られた混合物をNaOHを用いて塩基性にし、130~170℃の温度で、10~14時間水熱処理をすれば、全体の活性格子面から前記メイン粒子2aが成長して(すなわち、前記メイン粒子2aの全体の活性格子面上に追加金属層2bが形成されて)コア-シェル構造の金属粒子2が相対的に多く得られ、(iii)80~120℃の温度で、10~14時間比較的温和な条件で長時間水熱処理をすれば、棒構造の金属粒子2が相対的に多く得られる。
【0066】
本発明の電極は、前述した本発明の方法で製造された触媒;及び該触媒と混合されたイオノマーを含む。
【0067】
前記イオノマーは、プロトンのような陽イオンを交換できる陽イオン交換基を有する陽イオン伝導体であるか、又はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートのような陰イオンを交換できる陰イオン交換基を有する陰イオン伝導体であってよい。
【0068】
前記陽イオン交換基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基及びこれらの組合せからなる群から選ばれるいずれか一つであってよく、一般に、スルホン酸基又はカルボキシル基であってよい。
【0069】
前記陽イオン伝導体は、前記陽イオン交換基を含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン又はポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、又はポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子;スルホンイミドなどを挙げることができる。
【0070】
より具体的に、前記陽イオン伝導体が水素イオン陽イオン伝導体である場合、前記高分子は、側鎖に、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる陽イオン交換基を含むことができ、その具体的な例には、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン又はそれらの混合物を含むフルオロ系高分子;スルホン化されたポリイミド(sulfonated polyimide,S-PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone,S-PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone,SPEEK)、スルホン化されたポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole,SPBI)、スルホン化されたポリスルホン(sulfonated polysulfone,S-PSU)、スルホン化されたポリスチレン(sulfonated polystyrene,S-PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化されたポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化されたポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化されたポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化されたポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化されたポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化されたポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0071】
また、前記陽イオン伝導体は、側鎖末端の陽イオン交換基においてHをNa、K、Li、Cs又はテトラブチルアンモニウムに置換してもよい。前記側鎖末端の陽イオン交換基においてHをNaに置換する場合には、炭素構造体組成物の製造時にNaOHを、テトラブチルアンモニウムに置換する場合にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを使って置換し、K、Li又はCsも適切な化合物を使って置換することができる。前記置換方法は当該分野に広く知られた内容であるので、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0072】
前記陽イオン伝導体は、単一物又は混合物の形態で使用可能であり、また、選択的にイオン交換膜との接着力をより向上させる目的で非伝導性化合物と共に使用されてもよい。その使用量は使用目的に合わせて調節して使用することが好ましい。
【0073】
前記非伝導性化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフリオロ-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(PVdF-HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸及びソルビトール(sorbitol)からなる群から選ばれる1種以上のものを使用することができる。
【0074】
前記陰イオン伝導体としては、一般に、金属水酸化物がドープされたポリマーを使用することができ、具体的に、金属水酸化物がドープされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンズイミダゾール)又はポリ(エチレングリコール)などを使用することができる。
【0075】
また、前記イオノマーの商用化された例には、ナフィオン、アクイヴィオンなどを挙げることができる。
【0076】
前記イオノマーは、前記電極全重量に対して20~45重量%で含まれてよく、具体的に25~38重量%で含まれてよい。前記イオノマーの含有量が20重量%未満の場合には燃料電池の性能が低下することがあり、45重量%を超える場合にはイオノマーの過剰によってイオノマー間凝集部分が発生することがある。
【0077】
前記電極の製造方法は、前記触媒及び前記イオノマーを含む電極形成用組成物を製造する段階、そして前記電極形成用組成物をコーティングして電極を製造する段階を含む。
【0078】
まず、前記触媒及び前記イオノマーを含む電極形成用組成物を製造する。
【0079】
前記電極形成用組成物は、前記触媒及び前記イオノマーを溶媒に添加した後、超音波分散、撹拌、3ロールミル、遊星撹拌、高圧分散及びこれらの混合法から選ばれるいずれか一つの分散法を用いて製造することができる。
【0080】
また、前記触媒は、浸漬溶液に分散させた後に前記イオノマーと混合してもよく、固形分の状態で前記イオノマーに添加してもよい。
【0081】
前記溶媒は、水、親水性溶媒、有機溶媒及びこれらの一つ以上の混合物からなる群から選ばれる溶媒であってよい。
【0082】
前記親水性溶媒は、炭素数1~12の直鎖状、分枝状の飽和又は不飽和炭化水素を主鎖として含むアルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル及びアミドから構成された群から選ばれる一つ以上の官能基を有するものであってよく、これらは、脂環式又は芳香族環式化合物を主鎖の少なくとも一部として含むことができる。具体的な例として、アルコールにはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エトキシエタノール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール、1,2-プロパンジオール、1-ペンタノール、1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオールなど;ケトンにはヘプタノン、オクタノンなど;アルデヒドにはベンズアルデヒド、ドルアルデヒドなど;エステルにはメチルペンタノエート 、エチル-2-ヒドロキシプロパノエートなど;カルボン酸にはペンタン酸、ヘプタノ酸など;エーテルにはメトキシベンゼン、ジメトキシプロパンなど;アミドにはプロパンアミド、ブチルアミド、ジメチルアセトアミドなどがある。
【0083】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物から選択することができる。
【0084】
前記溶媒は、前記電極形成用組成物の全重量に対して80重量%~95重量%で含まれてよく、80重量%未満であると、固形分の含有量が高すぎ、電極コーティング時に亀裂及び高粘度による分散問題があり得、95重量%を超えると、電極活性に不利であり得る。
【0085】
次に、前記電極形成用組成物をコーティングして電極を製造する。
【0086】
前記電極を製造する段階は、具体的な一例示として、前記電極形成用組成物を離型フィルムにコーティングして電極を製造し、前記電極をイオン交換膜に転写する段階をさらに含むことができる。
【0087】
前記電極形成用組成物を前記離型フィルム上にコーティングする時には、前記活物質が分散された電極形成用組成物を、連続的又は間欠的にコーター(coater)に移送させた後、離型フィルム上に1μm~200μmの乾燥厚に均一に塗布することが好ましい。
【0088】
より詳細には、前記電極形成用組成物の粘性に応じてポンプから連続してダイ(die)、グラビア(gravure)、バー(bar)、コンマコータ(comma coater)などのコーターに移送した後、スロットダイコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、ブラシなどの方法を用いて、デカールフィルム上に電極層の乾燥厚が1μm~200μm、より好ましくは3μm~20μmとなるように均一に塗布し、一定の温度で維持された乾燥炉を通過させながら溶媒を揮発させる。
【0089】
前記電極形成用組成物を1μm未満の厚さにコーティングする場合、触媒含有量が小さいため活性が落ちることがあり、200μmを超える厚さにコーティングする場合には、イオン及び電子の移動距離が増加して抵抗が増加することがある。
【0090】
前記乾燥工程は、25℃~90℃で12時間以上乾燥させることであってよい。前記乾燥温度が25℃未満であり、乾燥時間が12時間未満である場合には、十分に乾燥した電極を形成できない問題が発生することがあり、90℃を超える温度で乾燥させると、電極の亀裂などが発生することがある。
【0091】
ただし、前記電極形成用組成物を塗布及び乾燥する方法は、上記に限定されない。
【0092】
選択的に、前記電極形成用組成物を乾燥させて電極を製造する段階後には、乾燥した電極及び離型フィルムを必要なサイズにカットしてイオン交換膜に接合する段階をさらに含むことができる。
【0093】
前記イオン交換膜はイオン伝導体を含む。前記イオン伝導体は、プロトンのような陽イオンを伝達できる作用基を有する陽イオン伝導体であってもよく、又はヒドロキシイオン、カーボネート又はバイカーボネートのような陰イオンを伝達できる作用基を有する陰イオン伝導体であってもよい。前記陽イオン伝導体及び前記陰イオン伝導体に関する説明は、前記イオノマーにおける説明と同一であり、反復説明は省略する。
【0094】
一方、前記イオン交換膜は、e-PTFEのようなフッ素系多孔性支持体又は電気放射などによって製造された多孔性ナノウェブ支持体などの孔隙を前記イオン伝導体が埋めている強化膜の形態であってもよい。
【0095】
前記電極と前記イオン交換膜を接合する方法は、一例として転写方法を用いることができ、前記転写方法は、金属プレス単独、又は金属プレスにシリコンゴム材などのようなゴム材の軟質板を重ねて熱と圧力を加えるホットプレッシング(hot pressing)方法で行われてよい。
【0096】
前記転写方法は、80℃~150℃及び50kgf/cm~200kgf/cmの条件で行われてよい。80℃、50kgf/cm2未満の条件でホットプレッシングする場合、離型フィルム上の前記電極の転写が適切に行われないことがあり、150℃を超える場合には、前記イオン交換膜の高分子が燃えながら前記電極の構造変性が起きる恐れがあり、200kgf/cmを超える条件でホットプレッシングする場合、前記電極の転写効果よりも前記電極を圧着する効果が大きくなり、転写が適切に行われないことがある。
【0097】
本発明の膜-電極アセンブリーは、アノード;カソード;及び前記アノードと前記カソードとの間に位置する前記イオン交換膜を含み、前記アノード及び前記カソードの少なくとも一方は、前述した本発明に係る電極である。
【0098】
前記電極、該電極の製造方法に関する説明、及び前記イオン交換膜に対する説明は、前述した通りであり、反復説明は省略する。
【0099】
図2は、本発明の一実施例に係る膜-電極アセンブリーを示す概略断面図である。図2を参照して説明すると、前記膜-電極アセンブリー100は、前記イオン交換膜50、及び該イオン交換膜50の両面にそれぞれ配置される前記電極20,20’を含む。前記電極20,20’は、電極基材40,40’と、該電極基材40,40’の表面に形成された触媒層30,30’を含み、前記電極基材40,40’と前記触媒層30,30’との間に、前記電極基材40,40’における物質拡散を容易にするために、炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0100】
前記膜-電極アセンブリー100において、前記イオン交換膜50の一面に配置され、前記電極基材40を通って前記触媒層30に伝達された燃料から水素イオンと電子を生成させる酸化反応を起こす電極20をアノードとし、前記イオン交換膜50の他面に配置され、前記イオン交換膜50を通って供給された水素イオンと、電極基材40’を通って前記触媒層30’に伝達された酸化剤とから水を生成させる還元反応を起こす電極20’をカソードとする。
【0101】
前記アノード20の触媒層30と前記カソード20’の触媒層30’の少なくとも一方は、前記説明した本発明の一実施例に係る触媒を含む。
【0102】
前記電極基材40,40’には、水素又は酸素が円滑に供給されるような多孔性の導電性基材を使用することができる。その代表例として、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)又は金属布(繊維状態の金属布で構成された多孔性のフィルム又は高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう。)が使用できるが、これに限定されるものではない。また、前記電極基材40,40’は、フッ素系樹脂で撥水処理したものを使用することが、燃料電池の駆動時に発生する水によって反応物拡散効率が低下することを防止することができ、好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリペルフルオロスルホニルフルオリドアルコキシビニルエーテル、フッ素化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレン又はそれらのコポリマーを使用することができる。
【0103】
前記膜-電極アセンブリー100は、前記アノード20及び/又はカソード20’として本発明の一実施例に係る電極を使用する以外は、通常の膜-電極アセンブリーの製造方法によって製造することができる。
【0104】
本発明の燃料電池は、前述した本発明の膜-電極アセンブリーを含む。
【0105】
図3は、本発明の一実施例に係る燃料電池の全体的な構成を示す模式図である。図3を参照すると、前記燃料電池200は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して、水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的な反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、及び酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を含む。
【0106】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤との酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備える。
【0107】
それぞれの単位セルは電気を発生させる単位のセルを意味し、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる前記膜-電極アセンブリーと、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜-電極アセンブリーに供給するための分離板(又は、バイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下、‘分離板’と称する。)を含む。前記分離板は、前記膜-電極アセンブリーを挟んでその両側に配置される。このとき、前記スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を、特にエンドプレートと称することもある。
【0108】
前記分離板のうち、一つのエンドプレートには、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ形状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ形状の第2供給管232が備えられ、他のエンドプレートには、複数の単位セルで最終的に無反応で残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出させるための第1排出管233と、上述の単位セルで最終的に無反応で残った酸化剤を外部に排出させるための第2排出管234が備えられる。
【0109】
前記電極は、上述の燃料電池用膜-電極アセンブリーの他にも、二次電池又はキャパシタなどの様々な分野に適用可能である。
【0110】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記する実施例は本発明を具体的に例示又は説明するためのものに過ぎず、それらによって本発明が制限されるものではない。また、ここに記載されていない内容は、当該技術の分野における熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであり、その説明を省略する。
【0111】
1.製造例:触媒の後処理
【0112】
(1)実施例1
【0113】
未加工触媒である商用Pt/C触媒を反応容器に入れ、蒸留水で分散させた。
【0114】
次に、前記未加工触媒が分散されている前記蒸留水に、金属前駆体であるHPtCl溶液と、弱還元剤であるヘキサメチレンテトラミンを入れて混合させた。このとき、前記未加工触媒、金属前駆体及び弱還元剤の重量比は1:1:6程度となるようにした。
【0115】
このようにして得られた混合物を130℃で8時間水熱処理した。
【0116】
次に、前記水熱処理された触媒を乾燥及び回収した。
【0117】
(2)実施例2
【0118】
未加工触媒である商用Pt/C触媒を反応容器に入れ、蒸留水で分散させた。
【0119】
次に、前記未加工触媒が分散されている前記蒸留水に、金属前駆体であるHPtCl溶液、NaOH水溶液、及び弱還元剤であるヘキサメチレンテトラミンを入れて混合させた。このとき、前記未加工触媒、金属前駆体、NaOH水溶液及び弱還元剤の重量比は1:1.5:1:5程度となるようにした。
【0120】
このようにして得られた混合物を150℃で12時間水熱処理した。
【0121】
次に、前記水熱処理された触媒を乾燥及び回収した。
【0122】
(3)実施例3
【0123】
未加工触媒である商用Pt/C触媒を反応容器に入れ、蒸留水で分散させた。
【0124】
次に、前記未加工触媒が分散されている前記蒸留水に、金属前駆体であるHPtCl溶液と弱還元剤であるヘキサメチレンテトラミンを入れて混合させた。このとき、前記未加工触媒、金属前駆体及び弱還元剤の重量比は1:1:3程度となるようにした。
【0125】
このようにして得られた混合物を100℃で12時間水熱処理した。
【0126】
次に、前記水熱処理された触媒を乾燥及び回収した。
【0127】
(4)実施例4
【0128】
未加工触媒である商用Pt/C触媒を反応容器に入れ、蒸留水で分散させた。
【0129】
次に、前記未加工触媒が分散されている前記蒸留水に、金属前駆体であるHPtCl溶液と弱還元剤であるヘキサメチレンテトラミンを入れて混合させた。このとき、前記未加工触媒、金属前駆体及び弱還元剤の重量比は1:2:6程度となるようにした。
【0130】
このようにして得られた混合物を100℃で15時間水熱処理した。
【0131】
次に、前記水熱処理された触媒を乾燥及び回収した。
【0132】
(5)比較例1
【0133】
未加工触媒である商用Pt/C触媒を反応容器に入れ、蒸留水で分散させた。
【0134】
次に、前記未加工触媒が分散されている前記蒸留水に、金属前駆体であるHPtCl溶液、NaOH水溶液及び強還元剤であるNaBH水溶液を入れて混合させた。このとき、前記未加工触媒、金属前駆体、NaOH水溶液及び強還元剤の重量比は1:1:1:10程度となるようにした。
【0135】
このようにして得られた混合物を20℃の常温で6時間水熱処理した。
【0136】
次に、前記水熱処理された触媒を乾燥及び回収した。
【0137】
(6)比較例2
【0138】
商用Vulcan炭素担体を反応容器に入れ、蒸留水で分散させた。
【0139】
次に、担体が分散されている前記蒸留水に、金属前駆体であるHPtCl溶液と弱還元剤であるヘキサメチレンテトラミンを入れて混合させた。このとき、前記担体、金属前駆体及び弱還元剤の重量比は1:5:15程度となるようにした。
【0140】
このようにして得られた混合物を100℃で12時間水熱処理することによって触媒を製造した。
【0141】
次に、前記製造された触媒を乾燥及び回収した。
【0142】
2.実験例1:触媒の透過電子顕微鏡観察
【0143】
図4は、後処理前の未加工触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図5図8は、それぞれ、実施例1~実施例4によって後処理された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図9は、比較例1によって後処理された触媒の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0144】
図4図9を参照すると、後処理前の金属粒子は球の形態を示すが、実施例1では、バディング(budding)構造の金属粒子を多く含んでいることが観察され、実施例2では、コア-シェル構造の金属粒子を多く含んでいることが観察された。
【0145】
また、実施例3では、棒構造の金属粒子を多く含んでいることが観察され、実施例4では、著しく多い棒構造の金属粒子が観察された。
【0146】
一方、比較例1は、強還元剤を使用して水熱処理したものであり、金属粒子の凝集が観察された。
【0147】
3.実験例2:触媒のXRD分析結果
【0148】
図10は、後処理前の未加工触媒のXRD分析結果を示すグラフであり、図11図14は、それぞれ、実施例1~実施例4によって後処理された触媒のXRD分析結果を示すグラフであり、図15は、比較例1によって後処理された触媒のXRD分析結果を示すグラフである。
【0149】
図10図15を参照すると、未加工触媒のメイン粒子に比べて実施例1~実施例4の金属粒子がより大きいということがXRD上からも確認でき、結晶性も増加した傾向を示した。また、特定活性面の比率が増加した傾向を示した。
【0150】
また、比較例1でも、実施例と同様に、大きい結晶から導かれるXRD結果を示した。
【0151】
4.実験例3:CV(Cyclovoltammetry)評価
【0152】
イオノマーとイソプロパノールを混合して製造された溶液に、前記実施例3の方法で後処理された触媒と、後処理前の未加工触媒をそれぞれ添加し、超音波処理して電極形成用組成物をそれぞれ製造した。
【0153】
次に、前記電極形成用組成物をグラッシーカーボン素材の回転ディスク電極に塗布した後に乾燥させて作業電極(活性面積0.196cm)を製造した。
【0154】
前記作業電極、基準電極としてAg/AgCl電極、及び相対電極として白金線を用いた電気化学測定装置を用いて、1MのHClO電解質溶液でCV(cyclovoltammetry)活性を測定した。
【0155】
図16は、後処理前の未加工触媒と実施例3で後処理された触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性測定結果を示すグラフである。
【0156】
図16を参照すると、実施例3の触媒を含む電極では、電気化学的活性面積(ECSA)が、未加工触媒を含む電極に比べて約18%程度増加したことが確認された。これは、本発明の後処理によってイオノマーと触媒とがよりよく結合したことを示唆する。
【0157】
図17は、本発明の実施例3によって後処理された触媒、比較例1の強還元剤を用いて後処理された触媒、比較例2によって製造された触媒をそれぞれ含む電極のCV(Cyclovoltammetry)活性を測定した結果を示すグラフである。
【0158】
図17を参照すると、本発明の実施例3による触媒を含む電極が、比較例1及び2の触媒をそれぞれ含む電極に比べてより大きい電気化学的活性面積(ECSA)を有することが確認できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17