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特許7402234カチオン硬化型組成物及び前記組成物を使用した基材の接合、キャスティング及びコーティングのための方法
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  • 特許-カチオン硬化型組成物及び前記組成物を使用した基材の接合、キャスティング及びコーティングのための方法 図1
  • 特許-カチオン硬化型組成物及び前記組成物を使用した基材の接合、キャスティング及びコーティングのための方法 図2
  • 特許-カチオン硬化型組成物及び前記組成物を使用した基材の接合、キャスティング及びコーティングのための方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】カチオン硬化型組成物及び前記組成物を使用した基材の接合、キャスティング及びコーティングのための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20231213BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20231213BHJP
   C08G 65/12 20060101ALI20231213BHJP
   C08G 65/18 20060101ALI20231213BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20231213BHJP
   C09J 171/00 20060101ALI20231213BHJP
   C08J 3/28 20060101ALI20231213BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20231213BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20231213BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20231213BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C08G59/68
C08G59/40
C08G65/12
C08G65/18
C09J163/00
C09J171/00
C08J3/28
C08K5/41
C08K5/56
C09D163/00
C09D171/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021533332
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2019082833
(87)【国際公開番号】W WO2020120144
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】102018131513.9
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521251903
【氏名又は名称】デロ・インドゥストリー・クレープシュトッフェ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】DELO Industrie Klebstoffe GmbH & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】ウール,ゲラルト
(72)【発明者】
【氏名】アンゼルメント,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ツィンク,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クロイル,キリアン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-273529(JP,A)
【文献】特開2017-171807(JP,A)
【文献】国際公開第2017/184974(WO,A1)
【文献】特表2019-518126(JP,A)
【文献】国際公開第2017/178028(WO,A1)
【文献】特開2006-117950(JP,A)
【文献】国際公開第2018/102198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 5/
C08G 59/
C08G 65/
C09D163/
C09D171/
C09J163/
C09J171/
C08J 3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのカチオン重合性成分;
b)第1の波長λの化学線で照射したとき酸を放出する第1の光開始剤;
c)第2の波長λの化学線で照射したとき酸を放出する第2の光開始剤であって、前記第2の光開始剤はアリールスルホニウム塩を含む第2の光開始剤、
を含むカチオン硬化型組成物であって、
第2の波長λは第1の波長λより短く、
前記第1の及び前記第2の光開始剤は前記第1の光開始剤が前記第2の光開始剤同時に活性化されることなく、460nmの第1の波長λで活性化され得るよう選択され、
前記第1の光開始剤活性化した後、365nmの波長λでの前記第2の光開始剤の吸収バンドが前記第1の光開始剤及び活性化の後に形成された分解生成物の吸収を上回りそのことで、第1の波長λの化学線での前記組成物照射した後、前記第2の光開始剤が前記組成物中において前記第2の光開始剤を活性化させて前記組成物を凝固させるのに十分な第2の波長λ の化学線の吸収を示し、
前記組成物中において皮膜形成が生じる、
カチオン硬化型組成物。
【請求項2】
前記カチオン重合性成分が、要すれば反応性軟化剤としてのポリオールと一緒に、エポキシ含有化合物、オキセタン含有化合物及びビニルエーテル並びにその組み合わせからなる群から選択される化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の光開始剤がメタロセニウム化合物、好ましくはフェロセニウム塩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が前記組成物の硬化のための促進剤として過酸化物を更に含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づき、50wt%までの割合で、(メタ)アクリレートに基づく、1つ以上のラジカル重合性化合物、及びラジカル光開始剤を更に含み、前記ラジカル光開始剤は波長λであるが、波長λでない化学線での照射により活性化することできることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、各々前記組成物の総重量に基づく、次の成分:
a)5~99.98wt%の割合の少なくとも1つのカチオン重合性成分(A)であって、前記カチオン重合性成分(A)は、要すれば0~80wt%の割合の反応性軟化剤(A4)としてのアルコールと一緒に、好ましくはエポキシ含有化合物(A1)、オキセタン含有化合物(A2)、ビニルエーテル(A3)及びその組み合わせからなる群から選択される、カチオン重合性成分(A);
b)0.01~5wt%の割合の前記第1の光開始剤(B1)、好ましくはフェロセニウム塩;
c)0.01~5wt%の割合の前記第2の光開始剤(B2)、好ましくはアリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩及びその組み合わせ;
d)0~5wt%の割合の前記第2の光開始剤(B2)のための増感剤(C1);
e)0~5wt%の割合の前記組成物の硬化のための促進剤(C2)としての過酸化物;
f)0~50wt%、好ましくは5~50wt%の割合の、より好ましくは(メタ)アクリレートに基づく、少なくとも1つのラジカル重合性化合物(D);
g)0~5wt%、好ましくは0.01~5wt%の割合のラジカル光開始剤(E);及び
h)0~70wt%の割合の更なる添加剤(C)、フィラー、着色剤、顔料、抗エイジング剤、蛍光剤、安定剤、促進剤、接着促進剤、乾燥剤、架橋剤、フロー改良剤、湿潤剤、チキソトロピー剤、希釈剤、非反応性軟化剤、非反応性高分子増粘剤、難燃剤、腐食阻害剤、可塑剤及びタッキファイヤの群由来の更なる添加剤
からなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物
【請求項7】
カチオン硬化型組成物を使用する基材の接合、キャスティング、成形、封止及びコーティングのための方法であって、前記方法は次の工程:
a)請求項1~6のいずれか一項に記載のカチオン硬化型組成物を提供する工程;
b)第1の基材上に前記組成物を投与する工程;
c)第1の波長λの化学線での照射により前記組成物を活性化する工程;
d)要すれば前記第1の基材上の活性化された組成物に第2の基材を供し、したがって基材複合材料を形成する工程、及び、さらに、要すれば両基材を互いに配置する工程;
e)第2の波長λの化学線での照射により前記活性化された組成物を凝固させる工程;及び
f)要すれば前記第1の基材上の又は前記基材複合材料中の前記凝固された組成物を加熱する工程
を含み、
前記カチオン硬化型組成物は、少なくとも1つのカチオン重合性成分及び第1の波長λの化学線で照射したとき酸を放出する第1の光開始剤、並びに第2の波長λの化学線で照射したとき酸を放出する第2の光開始剤を含み、
第2の波長λは第1の波長λよりも短く、
前記第1の及び前記第2の光開始剤は、前記第1の光開始剤が前記第2の光開始剤同時に活性化されることなく、460mの第1の波長λで活性化され得るよう選択され、
前記第1の光開始剤活性化した後、365nmの波長λでの前記第2の光開始剤の吸収バンドが前記第1の光開始剤及び前記活性化の後に形成された分解生成物の吸収を上回りそのことで、前記第2の光開始剤が、工程c)にて前記組成物活性化した後、前記組成物中において、工程e)にて前記第2の光開始剤を活性化させるのに十分な第2の波長λの化学線の吸収を示
皮膜形成が前記組成物中において生じる
ことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記組成物が、工程c)において、400~600nmに及ぶ、好ましくは460±20nmの波長λの化学線で、好ましくは単一の放出ピークを有する放射源を使用することにより、活性化されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、工程e)において、200~400nmに及ぶ、好ましくは365±20nmの波長λの化学線での照射により、好ましくは単一の放出ピークを有する放射源を使用することにより、凝固されることを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の及び/又は前記第2の基材が光電子部品、好ましくはカメラモジュールであることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が400~600nmに及ぶ第1の波長λの化学線での照射により活性化させることができ、200~400nmに及ぶ第2の波長λの化学線での次の照射により凝固させることができ、第2の波長λは第1の波長λよりも短い、基材の接合、キャスティング、成形、封止及び/又はコーティングのための請求項1~のいずれか一項に記載のカチオン硬化型組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学線での照射により活性化することができるカチオン硬化型組成物、及び前記組成物を使用した基材の接合、キャスティング及びコーティングのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホニウム及びヨードニウム塩に基づく光開始剤を用いたカチオン重合性化合物は、長年技術水準の一部であった。好適な光開始剤の概観は、『Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints』,2nd ed.,J. Wiley and Sons/SITA Technology (London),1998の『Photoinitiators for Free Radical, Cationic & Anionic Photopolymerisation』, Vol. IIIのJ.V. Crivello and K. Dietlikerの刊行物に見出すことができる.
【0003】
HSO 、PF 、SbF、AsF 、Cl、Br、I、ClO 、PO 、SOCF 、トシラート又はホウ酸アニオン、例えばBF 及びB(C は、スルホニウム又はヨードニウム塩のためのアニオンとして使用することができる。欧州特許出願公開第3184569号又は国際公開第2017035551号に開示されているアルミン酸アニオンまた好適である。
【0004】
独国特許出願公開第4340949号には、化学線によりあらかじめ活性化でき、更にエネルギーを供給することなく、室温で24時間以内に硬化することができるカチオン硬化型組成物が開示されている。前記公知の組成物の欠点は、塩基の遅延剤の付加により、強度の増加が遅くのみ起こり、接合後の取り扱い強さがしばしば不十分であることである。これらの組成物の手段により接合された部分は、したがって、次の工程において更に処理することができるようになるまで、より長い待ち時間又は定着助剤を必要とする。
【0005】
かかる組成物を使用した接合法は、欧州特許出願公開第0388775号から公知である。この方法において、カチオン重合性組成物は、前記組成物の照射が完結した後、30秒より多くの時間、組成物が制限なく適用可能であるよう、十分な時間、400~600nmの波長の光により活性化される。
【0006】
中国特許出願公開第105273167号には、ヨードニウム塩に基づく光開始を用いたカチオン硬化型組成物の光重合のための増感剤として、フェロセニウム塩の使用が記載されている。前記フェロセニウム塩は、副化学量論的に使用され、可視光での照射下、ヨードニウム開始剤による重合を開始させる。しかしながら、異なる波長での続く照射は提案されていない。
【0007】
Designed Monomers and Polymers 2007, Vol. 10, No. 4, Pages 327-345からのKostanskiらによる科学論文、『Cationic polymerisation using mixed cationic photoinitiator systems』において、スルホニウム又はヨードニウム塩とフェロセニウム塩との混合物が記載されている。ここで、フェロセニウム塩は、スルホニウム又はヨードニウム塩に基づく光開始剤のための増感剤として、また機能する。高圧水銀灯が照射のために使用される。しかしながら、前記種々の光開始剤は、特定波長で連続的に活性化されない。
【0008】
RSC Adv., 2015, 5, 33171からのChenらによる科学論文、『A synergistic effect of a ferrocenium salt on the diaryliodonium salt-induced visible-light curing of bisphenol-A epoxy resin』は、ヨードニウム塩及びフェロセニウム塩の相乗効果について、また記載している。また、ヨードニウム塩に基づく前記光開始剤は、過剰に使用されている。著者らは、フェロセニウム塩の添加による、より高いターンオーバー率について言及している。しかしながら、照射は、ヨードニウム塩及びフェロセニウム塩の同時活性化とともに、ハロゲンランプを使用して行われている。
【0009】
米国特許出願公開第4849320号は、2つの光開始剤及びラジカル及びカチオン重合性成分のブレンドを含む組成物を使用する、フォトグラフィー法について記載している。第1に、前記組成物は、ラジカル光開始剤を活性化して最初に組成物を硬化させるために好適な波長で照射される。それから、前記固化した組成物は、前記カチオン性光開始剤を活性化して規定の領域に構造を生じさせるために好適な波長の化学線で照射される。続く洗浄工程において、前記ラジカル重合のみによる前記第1の工程において部分的に硬化されたこれらの領域の外側に存在する組成物は、除かれる。前記光開始剤は、それらの吸収領域が重ならず、異なる波長により選択的に活性化することができるよう選択される。
【0010】
米国特許出願第5707780号には、異なる波長でのアルゴンレーザーでの照射により同時に活性化することができる、ラジカル及びカチオン重合性成分のブレンド含む組成物がまた記載されている。前記組成物は、ラジカル及びカチオン性光開始剤の吸光係数の比を互いに設定することにより達成することができる硬化の後の、高い初期強度を特徴とする。記載されている組成物は、添加剤の製造において、使用することができる。連続曝露は、開示されていない。
【0011】
ラジカル及びカチオン重合性モノマーとは別に、有機金属塩及び熱分解性エステルを含む、少なくとも1つの触媒システムを含む組成物が、米国特許出願第5252694号から公知である。要すれば、前記組成物は、ラジカル重合のための光開始剤及び促進剤として過酸化物をまた含む。前記組成物は、好ましくはコーティングアプリケーションのために使用される。前記組成物の連続曝露は、与えられていない。
【0012】
米国特許出願第6866899号には、ラジカル硬化性成分のみを含む接着性組成物の製造が記載されている。前記組成物は、異なる波長で連続的に照射される。第1の照射工程は、第2の照射工程において使用される波長よりも常に長い波長が使用されるよう行われる。前記組成物に含まれる光開始剤は、各異なる波長で吸収するよう選択される。使用される照射源のスペクトルの重なりは、できる限り小さいものであるべきである。
【0013】
米国特許出願第7964248号には、光開始剤のうちの1つがフルオロリン酸アニオンを有するスルホニウム塩である、少なくとも2つの光開始剤を含む、カチオン重合のための光開始剤システムが開示されている。互いに異なる2つの光開始剤を組み合わせることにより、前記組成物の貯蔵安定性及び、同時に、硬化された組成物の機械的特性が両方とも向上する。異なる波長での組成物の連続照射は開示されていない。さらに、フルオロリン酸アニオンに基づく光開始剤を使用しては、十分に迅速な強度の増加は不可能である。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、前記技術水準の方法及び組成物の不利益を回避すること及び工業的な接合及びキャスティングプロセスにおいて様々に使用することができるカチオン硬化型組成物を提供することである。
【0015】
特に、前記カチオン硬化型組成物は、組成物における強度の増加を特別に制御するのに使用することができる方法の提供を可能とすることを目的としている。
【0016】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載のカチオン硬化型組成物及び請求項11に記載の方法により達成される。
【0017】
本発明の更なる実施形態は、要すれば互いに組み合わせることができるサブクレームに記載される。
【0018】
本発明によるカチオン硬化型組成物は、
a)少なくとも1つのカチオン重合性成分;
b)第1の波長λ1の化学線で照射したとき酸を放出する第1の光開始剤;及び
c)第2の波長λ2の化学線で照射したとき酸を放出する第2の光開始剤;
を含み、第2の波長λは第1の波長λより短く、前記第2の光開始剤は、第1の波長λの化学線での前記組成物の照射の後、前記組成物中において、前記第2の光開始剤を活性化して前記組成物を硬化するのに十分な、第2の波長λの化学線の吸収を示す。
【0019】
前記カチオン硬化型組成物は、したがって、カチオン重合性成分(A)、第1の光開始剤(B1)及び前記第1の光開始剤(B1)とは異なるカチオン重合のための第2の光開始剤(B2)を含む。それとは別に、前記組成物は、更なる添加剤(C)、ラジカル重合性成分(D)及び要すればラジカル重合のための別の光開始剤(E)を含むことができる。
【0020】
本発明によれば、前記カチオン硬化型組成物は、基材の接合、キャスティング又はコーティングのための方法において使用され、前記方法は次の工程:
a)前記カチオン硬化型組成物を提供する工程;
b)第1の基材上に前記組成物を投与する工程;
c)第1の波長λの化学線での照射により前記組成物を活性化する工程;
d)要すれば前記第1の基材上の活性化された組成物に第2に基材を供し、したがって、基材複合材料を形成し、及び、さらに、要すれば両基材を互いに配置する工程;
e)第2の波長λの化学での照射により、前記活性化された組成物を凝固させる工程;及び
f)要すれば前記第1の基材上の又は前記基材複合材料中の凝固した組成物を加熱する工程
を含む。
【0021】
本発明による方法は、第2の波長λが第1の波長λよりも短く、前記第2の光開始剤が、工程c)における前記組成物の活性化の後、前記組成物中において、工程e)において前記第2の光開始剤を活性化するのに十分な、第2の波長λの化学線の吸収を示すことに特徴がある。
【0022】
本発明による方法において、前記組成物のカチオン重合は、前記第1の照射工程により開始することができる。しかしながら、第1の波長λの化学線の照射での前記第1の光開始剤の活性化の後、前記組成物はなお十分に長い時間処理可能である。特に、接合される基材は、この期間に互いに正確に配置することができる。これは、光電子部品、例えばカメラモジュール、の製造のための接合工程において、特に重要である。前記第2の照射工程により、前記活性化された組成物は、次元的に安定な状態に移る。
【0023】
さらに、本発明による方法により、更に熱を加えることなく、室温で前記活性化された組成物の確実な硬化を達成することが可能となる。しかしながら、これは、前記凝固した組成物の加熱による硬化の可能性を排除するものではない。
【0024】
本発明による方法の意味において、『凝固する(fixing)』は、強度の増加により前記組成物の流出がもはや生じることができない、又は強度の程度により、接着ボンドが破壊されることなく、次のプロセスにおいて、接合部分を扱うことができる、強度の増加を意味する。
【0025】
本発明の別の目的は、前記組成物が400~600nmに及ぶ第1の波長λの化学線での照射により活性化することができ、200~400nmに及ぶ第2の波長λの化学線での照射により凝固させることができ、第2の波長λは第1の波長λよりも短いもので、基材の接合、キャスティング、成形、封止及びコーティングのための方法における、本発明による前記カチオン硬化型組成物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
同封の図において、
図1図1は、DELOLUX 20/365 LED照射ランプの発光スペクトルを示す。
図2図2は、第1の波長λでの前記ブレンドの照射による前記第1の光開始剤の活性化前後の、実施例1による光開始剤ブレンドのUV/VISスペクトルを示す;及び
図3図3は、第1の波長λでの前記ブレンドの照射による前記第1の光開始剤の活性化前後の、実施例7による光開始剤ブレンドのUV/VISスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、詳細に以降に、しかしながら限定として解すべきではない好ましい実施形態を使用する実施例を通じて、説明される。
【0028】
本発明の意味において、『ワンパック』又は『ワンパック組成物』は、前記組成物の前記成分がパッケージングユニットにおいて一緒に含まれていることを意味する。
【0029】
本発明の意味において、『液体』は、粘度を測定することにより決定される損失弾性率G’’が各組成物の貯蔵弾性率G’よりも大きいことを意味する。
【0030】
不定冠詞『a』又は『an』が使用される限り、これは、明示的に除外されない限り、複数形『1つ以上の』をまた含む。
【0031】
『少なくとも二官能性』は、分子当たり、名前の付いた各官能基の2つ以上の単位が含まれることを意味する。
【0032】
下記に設定されたすべての重量割合は、別段記載されていなければ、組成物の総重量に関する。
【0033】
以降における当量は、各ケースにおいて、1当量の官能基をいい、互いに対して与えられる。
【0034】
本発明による方法を実行するために、第1の好ましい実施形態において、前記組成物は、カチオン重合性成分(A)、互いに異なるカチオン重合のための少なくとも2つの光開始剤(B)、及び、要すれば、更なる添加剤(C)を含む。好ましくは、前記第1の実施形態の組成物は、前記成分(A)、(B)及び(C)からなる。
【0035】
本発明による方法を実行するために、第2の好ましい実施形態において、前記組成物は、前記成分(A)、(B)及び(C)とは別に、更なるラジカル重合性成分(D)及び、要すれば、ラジカル重合のための別の光開始剤(E)を含む。好ましくは、前記第2の実施形態の組成物は、前記成分(A)~(E)からなる。
【0036】
本発明による方法における使用のためのカチオン重合性組成物の成分は、以降に詳細に説明される。
【0037】
成分(A):カチオン重合性成
【0038】
カチオン重合性成分は、その化学的根拠の点において、更に制限されない。好ましくは、前記カチオン重合性成分は、エポキシ含有化合物(A1)、オキセタン含有化合物(A2)、ビニルエーテル(A3)及びその組み合わせからなる群から選択される。要すれば、前記カチオン重合性成分は、反応性軟化剤として、1つ以上のアルコール(A4)を更に含むことができる。好ましい実施形態において、前記組成物は、少なくとも1つのエポキシ含有化合物(A1)を含む。
【0039】
本発明による組成物におけるエポキシ含有化合物(A1)は、好ましくは1つ以上の少なくとも二官能性のエポキシ含有化合物を含む。少なくとも『二官能性』とは、少なくとも2つのエポキシ基を含むエポキシ含有化合物を意味する。成分(A1)は、例えば、脂環式エポキシド、芳香族及び脂肪族グリシジルエーテル、グリシジルエステル又はグリシジルアミン及びその混合物を含むことができる。
【0040】
二官能性脂環式エポキシ樹脂は、技術分野においてよく知られており、脂環式基及び少なくとも2つのオキシラン環をいずれも有する化合物を含む。例示的な代表例は、3-シクロヘキセニルメチル-3-シクロヘキシルカルボキシラートジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシラート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジピン酸エステル、ジシクロペンタジエンジオキシド及び1,2-エポキシ-6-(2,3-エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ-4,7-メタンインダン及びその混合物である。
【0041】
芳香族エポキシ樹脂を本発明による組成物において、また使用することができる。芳香族エポキシ樹脂の例は、ビスフェノール-Aエポキシ樹脂、ビスフェノール-Fエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、4,4’-ビフェニルエポキシ樹脂、ジビニルベンゼンジオキシド、2-グリシジルフェニルグリシジルエーテル、ナフタレンジオールジグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのグリシジルエーテル及びトリス(ヒドロキシフェニル)エタンのグリシジルエーテル並びにその混合物である。さらに、芳香族エポキシ樹脂のすべて完全に又は部分的に水素化された類縁体が使用できる。
【0042】
イソシアヌレート及びエポキシ含有基で置換された他の複素環式化合物が、本発明による組成物において、また使用することができる。例としては、トリグリシジルイソシアヌレート及びモノアリルジグリシジルイソシアヌレートである。
【0043】
さらに、前記すべての樹脂グループの多官能性エポキシ樹脂、粘塑性エポキシ樹脂及び異なるエポキシ樹脂のブレンドを本発明による組成物において、使用することができる。
【0044】
その少なくとも1つは二官能性又は多官能性である、いくつかのエポキシ含有化合物の組み合わせは、また本発明の意味にある。
【0045】
前記少なくとも二官能性のエポキシ含有化合物に加え、一官能性エポキシドをまた反応性希釈剤として使用することができる。
【0046】
市販のエポキシ含有化合物の例は、商品名Daicel Corporation, Japanにより、CELLOXIDETM 2021P、CELLOXIDETM 8000、 Momentive Specialty Chemicals B.V., Netherlandsにより、EPIKOTETM RESIN 828 LVEL、EPIKOTETM RESIN 166、EPIKOTETM RESIN 169、Leuna Harze, Germanyにより、製品シリーズA、T及びAFからのEpiloxTM樹脂、又はDIC K.K., Japan,により、EPICLONTM 840、840-S、850、850-S、EXA850CRP、850-LC、IGM Resins B.V.により、Omnilane 1005及びOmnilane 2005、Synasia Inc.により、Syna Epoxy 21及びSyna Epoxy 06、Jiangsu Tetra New Material Technology Co. Ltd により、TTA21、TTA26、TTA60及びTTA128入手可能な製品である。
【0047】
前記エポキシ含有化合物(A1)の代わりに又は前記エポキシ含有化合物(A1)に加えて、オキセタン含有化合物(A2)は、前記組成物中において、カチオン硬化型成分(A)として使用することができる。オキセタンの製造方法は、特に米国特許出願公開第2017/0198093号からわかる。
【0048】
市販のオキセタンの例は、ビス(1-エチル-3-オキセタニル-メチル)エーテル(DOX)、3-アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン(AQX)、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン(POX)、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(XDO)、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン(EHOX)である。前記オキセタンは、TOAGOSEICO.,LTDにより市販されている。
【0049】
成分(A1)及び(A2)の代わりに又は成分(A1)及び(A2)に加えて、ビニルエーテル(A3)を前記組成物中におけるカチオン硬化型成分として使用することができる。好適なビニルエーテルは、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル及び環状ビニルエーテル並びにその混合物である。さらに、多官能性アルコールのビニルエーテルを使用することができる。
【0050】
最終的に、前記カチオン重合性成分は、要すれば反応性軟化剤として使用される1つ以上のアルコール(A4)をまた含むことができる。特に高分子量のポリオールは、カチオン性組成物を軟化するのに使用することができる。例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート又は(水素化)ポリブタジエンジオールに基づく、好適なポリオールが利用可能である。
【0051】
市販の高分子量のポリオールの例は、商品名、UBE Industries Ltd.により、ETERNACOLL UM-90 (1/1)、Eternacoll UHC50-200、Perstorp により、CapaTM 2200、CapaTM 3091、Petroflex により、Liquiflex H、HOBUM Oleochemicals により、Merginol 901、Daicel Corporation により、Placcel 305、Placcel CD 205 PL、Croda により、Priplast 3172、Priplast 3196、Kuraray Co., Ltd.により、Kuraray Polyol F-3010、Kuraray Polyol P-6010、Cray Valley により、Krasol LBH-2000、Krasol HLBH-P3000又はSynthesia Internacional SLU により、Hoopol S-1015-35又はHoopol S-1063-35で入手可能な製品である。
【0052】
カチオン重合性成分(A)の前記一覧は、最終的なものではなく、例示的なものとみなすべきである。前記カチオン重合性成分(A1)~(A4)の混合物もまた本発明の意味にある。
【0053】
本発明による前記組成物において、前記カチオン重合性成分(A)は、前記組成物の総重量に基づき、好ましくは5~99wt%の割合で、特に好ましくは10~95wt%の割合で、存在している。
【0054】
好ましい実施形態によれば、前記カチオン重合性成分(A)は、前記エポキシ含有成分(A1)及び、要すれば、反応性軟化剤としての少なくとも1つのアルコール(A4)からなる。
【0055】
別の実施形態において、前記エポキシ含有化合物は、オキセタン含有化合物により完全に又は部分的に置換されることができる。
【0056】
さらに、前記エポキシ含有成分(A1)及び/又は前記オキセタン含有化合物(A2)に加えて、前記カチオン重合性成分は1つ以上のビニルエーテルを含むことができる。この場合において、前記ビニルエーテルは、0~20wt%の割合で、好ましくは0~15wt%の割合で存在しており、各々前記組成物の総重量に基づく。
【0057】
本発明による方法における使用のための組成物において、成分(A4)は、0~80wt%の割合で、好ましくは0~60wt%の割合で、特に好ましくは1~50wt%の割合で、存在しており、各々前記組成物の総重量に基づく。
【0058】
成分(B):カチオン重合のための光開始
【0059】
成分(A)とは別に、本発明による方法における使用のための前記組成物は、光酸発生剤の群から選択される、カチオン重合のための少なくとも2つの光開始剤(B1)及び(B2)を含む。これは、所定の波長の化学線で照射したとき、前記光開始剤(B1)及び(B2)が活性化され、酸を放出することを意味する。前記酸は、ルイス酸又はブレンステッド酸を使用することができる。前記光開始剤(B1)及び(B2)は互いに異なり、異なる波長での照射により活性化することができる。
【0060】
単色レーザ光が、前記光開始剤(B1)及び(B2)を照射するのに使用することができる。しかしながら、所定の波長での単独の放出極大を有する照射源の使用が好ましい。照射源は、好ましくは市販のLED硬化ランプである。
【0061】
成分(B1):メタロセニウム系光開始
【0062】
本発明による前記組成物は、カチオン重合のための光開始剤(B1)として、メタロセニウム化合物に基づく、少なくとも1つの光潜在性酸発生剤を好ましくは含む。種々のメタロセニウム塩の概説は、欧州特許第0542716号に開示されている。前記メタロセニウム塩の種々のアニオンの例は、HSO 、PF 、SbF 、AsF 、Cl、Br、I、ClO 、PO 、SOCF 、トシラート、アルミン酸又はホウ酸アニオン、例えばBF 及びB(C4-である。
【0063】
好ましくは、メタロセニウム化合物に基づく光開始剤は、前記フェロセニウム塩の群から選択される。
【0064】
好適なフェロセニウム塩の例は、クメニルシクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロリン酸塩(Irgacure261);ナフタレニルシクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロリン酸塩、ベンジルシクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロリン酸塩及びシクロペンタジエニルカルバゾール鉄(II)ヘキサフルオロリン酸塩である。
【0065】
前記光開始剤(B1)は、電磁気的スペクトルの可視領域において、好ましくは吸収する。これは、前記光開始剤(B1)が380nm以上の第1の波長λで好ましくは活性化できることを意味する。好ましくは、前記光開始剤(B1)は、400nm以上の、好ましくは460nm以上の波長の照射により、活性化することができる。特に好ましくは、前記活性波長λは400~750nmの範囲にある。
【0066】
前記組成物の総重量に基づき、前記光開始剤(B1)は、0.01~5wt%の割合であるが、好ましくは0.3~3wt%の割合で、含まれる。
【0067】
(B2):オニウム化合物に基づく光開始
【0068】
前記メタロセニウム系光酸発生剤(B1)とは別に、本発明による方法を行う前記組成物は、カチオン重合のための光開始剤(B2)として、オニウム化合物に基づく少なくとも1つの第2の光酸発生剤を含む。アリールスルホニウム塩及びアリールヨードニウム塩並びにその組み合わせの群由来のオニウム化合物が、好ましい。
【0069】
光潜在性の酸(B2)として好適な芳香族アリールスルホニウム塩が、例えば、国際公開第2003/072567号又は国際公開第2003/008404号に記載されている。好適なアリールヨードニウム塩が、国際公開第1998/002493号又は米国特許第6306555号に開示されている。
【0070】
さらに、光潜在性の酸(B2)として好適なオニウム塩が、『Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints』, 2nd ed., J. Wiley and Sons/SITA Technology (London), 1998の『Photoinitiators for Free Radical, Cationic & Anionic Photopolymerisation』Vol. IIIにJ.V.Crivello及びK. Dietlikerにより記載されている。
【0071】
例えば、HSO、PF 、SbF 、AsF 、Cl、Br、I、ClO 、PO 、SOCF 、トシラート、アルミン酸又はホウ酸アニオン、例えばBF 及びB(C は、スルホニウム又はヨードニウム塩のアニオンとして、機能することができる。高い重合率のために、かろうじて求核性の錯体アニオンが好ましい。特に好ましくは、アリールスルホニウム及びアリールヨードニウム塩が、前記光開始剤(B2)として、特にカウンターイオンとしてのヘキサフルオロアンチモン酸とともに、使用される。
【0072】
欧州特許出願公開第3184569号又は国際公開第2017035551号に開示されているアルミン酸アニオンを有するオニウム塩に基づく光潜在性の酸が、また好適である。
【0073】
光潜在性の酸として市販されているトリアリールスルホニウムに基づく光開始剤は、商品名、Chitech により、Chivacure 1176、Chivacure 1190、BASF により、Irgacure 290、Irgacure 270、Irgacure GSID 26-1、Lambson により、Speedcure 976及びSpeedcure 992、Jiangsu Tetra New Material Technology Co., Ltd.により、TTA UV-692、TTA UV-694 又はDow Chemical Co.により、UVI-6976及びUVI-6974で入手可能である。
【0074】
光潜在性の酸として市販されているジアリールヨードニウムに基づく光開始剤は、例えば、商標、Deuteronにより、UV1242又はUV2257及びBluestarによるり、Bluesil 2074で入手可能である。
【0075】
本発明による前記組成物に使用される光開始剤(B2)は、好ましくは200~400nmの波長λ、特に好ましくは250~365nmの波長λの化学線での照射により、活性することができる。要すれば、前記光開始剤(B2)は好適な増感剤と組み合わせることができる。
【0076】
上記一覧は前記光開始剤(B)のための例示とみなすべきであり、決して限定とみなすべきではない。
【0077】
前記組成物の総重量に基づき、前記光開始剤(B2)は、0.01~5wt%の割合で、しかし好ましくは0.3~3wt%の割合で、含まれる。
【0078】
前記組成物の総重量に基づき、前記光開始剤(B1)及び(B2)の割合は0.02~10wt%、好ましくは0.6~6wt%である。
【0079】
前記第1の光開始剤(B1)を照射して活性化するのに使用される第1の波長λと前記第2の光開始剤(B2)を照射して活性化するのに使用される波長λ間の差は、好ましくは少なくとも20nm、好ましくは少なくとも50nmである。同じことが、照射のために使用される放射線源の放出極大に当てはまる。好ましくは、波長λ及びλ間の差は、照射源の発光スペクトル間に重なりがないよう選択される。
【0080】
成分(C):添加剤
【0081】
さらに、前記組成物は、添加剤(C)として任意選択の成分を含むことができる。添加剤(C)は、好ましくはフィラー、着色剤、顔料、アンチエイジング剤、蛍光剤、安定剤、促進剤、接着促進剤、乾燥剤、架橋剤、フロー改良剤、湿潤剤、チキソトロピー剤、希釈剤、非反応性軟化剤、非反応性高分子増粘剤、難燃剤、腐食阻害剤、可塑剤及びタッキファイヤの群から選択される。
【0082】
成分(C)として有用な前記添加剤のいくつかを以降、詳細に説明する。
【0083】
増感剤(C1)
【0084】
要すれば、本発明による方法を行う前記組成物は、好適な増感剤を含むことができる。特に、前記増感剤(C1)は、前記波長λで前記光開始剤(B2)を活性化させるために使用することができる。したがって、前記増感剤(C1)は、前記波長λでの照射が前記光可視剤(B2)をすでに活性化しないよう選択されるべきである。
【0085】
好適な増感剤(C1)の例は、アントラセン、ペリレン、フェノチアジン、キサントン、チオキサントン、ベンゾフェノン、エチル-4-ジメチルアミノ安息香酸又は立体的に混雑したアミンである。
【0086】
特に、Lambsonにより市販されている、チオキサントン誘導体、例えば2、4-ジエチルチオキサントン(DETX)、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン(CPTX)及びイソプロピルチオキサントン(ITX)を使用することができる。Sigma-Aldrichにより入手可能な、アントラセン誘導体、例えば2-エチル-9、10-ジメトキシアントラセン(EDMA)、9-ヒドロキシメチルアントラセン(HMA)、9、10-ジブトキシアントラセンをまた使用することができる。
【0087】
上記一覧は、最終的なものではなく、例示的なものとみなすべきである。
【0088】
前記組成物において、前記増感剤(C1)は、好ましくは0~5wt%の割合で、より好ましくは0~3wt%の割合で、及び特に好ましくは0~1wt%の割合で、含まれており、各々、前記組成物の総重量に基づく。
【0089】
促進剤(C2)
【0090】
カチオン重合による前記組成物の硬化のための促進剤として、特にペルエステル、ジアシルペルエステル、ジアシルペルオキシド及びぺルオキシジカルボナート型及び/又は過酸化水素のぺルオキシ化合物を使用することができる。過酸化水素の使用が、好ましい。特に好ましい促進剤として、クメンヒドロペルオキシドが、およそ70-90%クメン溶液の形態で使用される。
【0091】
ペルオキシドを使用することにより、第1の波長λでの前記第1の光開始剤(B1)の照射及び活性化に続く組成物中における皮膜形成が加速される。ペルオキシドの割合は、本発明による方法において、接合のための及び要すれば第2の基材を配置するための、十分な開放時間が残されるよう選択される。必要とされる開放時間の期間は、行われる各加工手順による。
【0092】
前記組成物の総重量に基づき、前記ペルオキシド(C2)は、好ましくは0~5wt%の割合で含まれる。
【0093】
前記第1の光開始剤(B1)、例えばフェロセニウムヘキサフルオロアンチモン酸、及び前記ペルオキシド(C2)、例えばクメンヒドロペルオキシド、間の質量比は、幅広い制限内で変更することができる。好ましくは、1:0.1~1:6、及び特に好ましくは1:2~1:4の比が使用される。
【0094】
成分(D):ラジカル重合性化合物
【0095】
要すれば、本発明による方法において使用するための組成物は、成分(A)~(C)とは別に、ラジカル重合性化合物を更に含む。前記ラジカル重合性化合物は、好ましくは放射線硬化性化合物である。(メタ)アクリレートに基づく放射線硬化性化合物の使用が、特に好ましい。それらは、その化学構造の観点において、更に制限されない。例えば、脂肪族及び芳香族(メタ)アクリレートがいずれも使用することができる。ここで及び以降において、アクリル酸の誘導体及びメタクリル酸の誘導体の両方並びにその組み合わせ及び混合物を(メタ)アクリレートという。
【0096】
前記ラジカル重合性化合物(D)は、第2の波長λでの前記組成物の照射により達成される光凝固強度を増加させるのに使用することができる。
【0097】
好ましくは、前記放射線硬化性化合物は、少なくとも二官能性である。例えば、次の放射線硬化性化合物が、好適である:イソボルニルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、ベヘニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート及び他のモノ―又はポリアルコキシル化アルキルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチルアクリルアミド、4ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、モノマー、オリゴマー又はポリマージオール及びポリオールのジウレタンアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)及びジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)並びにその組み合わせ。多分岐又はデンドリマー状アルコール由来の高次の官能基のアクリレートが、有利に使用することができる。
【0098】
メタクリレート類縁体もまた本発明の意味にある。
【0099】
さらに、アリル基を有する放射線硬化性化合物、例えばTAICROS(登録商標)として市販されている1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオンがまた好適である。自由な二重結合を有する水素化されていないポリブタジエン、例えばpoly BD(登録商標)タイプ、を放射線硬化性化合物(C)として、また使用することができる。
【0100】
ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートジオール及び/又は(水素化)ポリブタジエンジオールに基づくウレタンアクリレートが、成分(C)のための高分子量の放射線硬化性化合物として、使用することができる。
【0101】
好ましくは、ラジカル硬化性基及びカチオン硬化型エポキシ基いずれも有する放射線硬化性化合物が、使用される。
【0102】
ラジカル硬化性基及びカチオン硬化型エポキシ基いずれも有する市販品の例は、Jiangsu Tetra New Material Technology Co., Ltd.による3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(TTA15)、UCBによるUVACURE 1561、Melrob LtdによるSolmer SE 1605及び Miwon Europe GmbH によるMirame PE210HAを含む。
【0103】
いくつかの放射線硬化性化合物の組み合わせは、本発明の意味にある。
【0104】
本発明による前記組成物において、前記ラジカル重合性化合物は、好ましくは50wt%までの割合で、特に好ましくは5~50wt%の割合で、存在しており、各々前記組成物の総重量に基づく。
【0105】
成分(E):ラジカル重合のための光開始剤
【0106】
成分(A)~(D)とは別に、本発明による方法における使用のための前記組成物は、要すればラジカル重合を活性化するための光開始剤(E)を含む。光開始剤として、一般的な市販の化合物、例えばα-ヒドロキシケトン、ベンゾフェノン、α,α’-ジエトキシアセトフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-イソプロピルフェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドを使用することができ、前記光開始剤は単独で又は前記化合物の2つ以上を組み合わせて、使用することができる。
【0107】
例えば、BASF SEによるIRGACURETM型、例えばIRGACURE 184、 IRGACURE 500、IRGACURE 1179、IRGACURE 2959、IRGACURE 745、IRGACURE 651、IRGACURE 369、IRGACURE 907、IRGACURE 1300、IRGACURE 819、IRGACURE 819DW、IRGACURE 2022、IRGACURE 2100、IRGACURE 784、IRGACURE 250、IRGACURE TPO、IRGACURE TPO-L型が、UV光開始剤として使用することができる。さらに、BASF SEによる DAROCURTM 型、例えばDAROCUR MBF、DAROCUR 1173、DAROCUR TPO及びDAROCUR 4265型が、使用することができる。
【0108】
成分(E)として本発明による前記組成物において使用される前記光開始剤は、好ましくは200~400nm、特に好ましくは250~365nmの波長の化学線により、活性化することができる。前記ラジカル光開始剤(E)は、前記組成物が第1の波長λで照射されるとき、まだ活性化されないよう好ましくは選択される。特に好ましくは、本発明による方法において、前記光開始剤(E)は、第2の波長λで前記組成物を照射することにより、第2の光開始剤(B2)とともに活性化される。
【0109】
本発明による前記組成物において、前記光開始剤(E)は、前記組成物の総重量に基づき、好ましくは0.01~5wt%の割合で存在する。
【0110】
前記カチオン重合性組成物の処方
【0111】
本発明による方法における使用のための前記組成物の処方は、少なくとも前記成分(A)、(B1)及び(B2)を含む。
【0112】
好ましくは、前記組成物は、次の成分からなり、各々、前記組成物の総重量に基づく。
a)5~99.98wt%の割合の少なくとも1つのカチオン重合性成分(A)であって、前記カチオン重合性化合物(A)は、要すれば反応性軟化剤(A4)としての0~80wt%の割合のアルコールと一緒に、好ましくはエポキシ含有化合物(A1)、オキセタン含有化合物(A2)、ビニルエーテル(A3)及びその組み合わせからなる群から選択される、カチオン重合性成分(A);
b)0.01~5wt%の割合の前記第1の光開始剤(B1)、好ましくはフェロセニウム塩;
c)0.01~5wt%の割合の前記第2の光開始剤(B2)、好ましくはアリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩及びその組み合わせ;
d)0~5wt%の割合の前記第2の光開始剤(B2)のための増感剤(C1);
e)0~5wt%の割合の前記組成物の硬化のための促進剤(C2)としての過酸化物;
f)0~50wt%、好ましくは5~50wt%の割合の、より好ましくは(メタ)アクリレートに基づく、少なくとも1つのラジカル重合性化合物(D);
g)0~5wt%の割合の、好ましくは0.01~5wt%のラジカル光開始剤(E);及び
h)0~70wt%の割合の更なる添加剤(C)、好ましくはフィラー、着色剤、顔料、アンチエイジング剤、蛍光剤、安定剤、促進剤、接着促進剤、乾燥剤、架橋剤、フロー改良剤、湿潤剤、チキソトロピー剤、希釈剤、非反応性軟化剤、非反応性高分子増粘剤、難燃剤、腐食阻害剤、可塑剤及びタッキファイヤの群由来の更なる添加剤。
【0113】
前記カチオン重合性成分(A)は、好ましくは前記エポキシ含有成分(A1)及び要すれば反応性軟化剤としての少なくとも1つのアルコール(A4)からなる。代わりに、前記エポキシ含有化合物(A1)は、オキセタン含有化合物(A2)で完全に又は部分的に置換することができる。
【0114】
第1の実施形態によれば、前記組成物は、好ましくは次の成分を含む又はからなり、各々、前記組成物の総重量に基づく:
0-99.8wt%、好ましくは5~99wt%の前記エポキシ含有化合物(A1);
0-99.8wt%の前記オキセタン含有化合物(A2);
0-80wt%の前記ポリオール系反応性軟化剤(A4);
フェロセニウム塩に基づく、カチオン重合のための0.01-5wt%の前記第1の光開始剤(B1);
スルホニウム又はヨードニウム塩に基づく、カチオン重合のための0.01-5wt%の前記第2の光開始剤(B2);
0-5wt%の増感剤(C1);及び
0-70wt%の更なる添加剤(C)。
前記エポキシ含有化合物(A1)及び前記オキセタン含有化合物(A2)は、単独で又は一緒に、少なくとも5wt%の割合で、前記組成物中において存在している。
【0115】
第2の実施形態において、前記組成物は、好ましくは次の成分を含む又はからなり、各々、前記組成物の総重量に基づく。
0-95wt%、好ましくは5~95wt%の前記エポキシ含有化合物(A1);
0-95wt%の前記オキセタン含有化合物(A2);
0-80wt%の前記ポリオール系反応性軟化剤(A4);
フェロセニウム塩に基づく、カチオン重合のための0.01-5wt%の前記第1の光開始剤(B1);
スルホニウム又はヨードニウム塩に基づく、0.01-5wt%の前記第2の光開始剤(B2);
0-5wt%の増感剤(C1);
5-50wt%の前記(メタ)アクリレートの群由来の少なくとも1つのラジカル重合性化合物(D);
0.01-5wt%のラジカル重合のための光開始剤(E);及び
0-70wt%の更なる添加剤(C)。
前記エポキシ含有化合物(A1)及び前記オキセタン含有化合物(A2)は、単独で又は一緒に、少なくとも5wt%の割合で、前記組成物中において存在している。
【0116】
本発明による前記カチオン重合性組成物は、好ましくはワンパック組成物として提供される。
【0117】
光開始剤(B1)及び(B2)についての選択規則
【0118】
本発明によれば、前記カチオン重合性組成物は、前記組成物が400~600nmに及ぶ第1の波長λの化学線での照射により第1に活性化され、200~400nmに及ぶ第2の波長λの化学線での次の照射により凝固される方法において使用され、第2の波長λは第1の波長λよりも短い。さらに、前記第2の光開始剤(B2)は、第1の波長λの化学線での照射による前記組成物の活性化の後、次の照射工程において、前記組成物中において、前記第2の光開始剤(B2)を活性化するのに十分な、第2の波長の化学線の吸収を示すことが必要とされる。
【0119】
本発明による方法において使用される前記カチオン重合性組成物を処方するために使用される光開始剤(B1)及び(B2)は、下記規則に従って選択することができる。
【0120】
前記第1の及び第2のカチオン重合のための光開始剤を選択するとき、前記組成物中に含まれる前記第2の光開始剤(B2)を同時に活性化することなく、初めに第1の波長λで前記第1の光開始剤(B1)を活性化することができるということが重要である。さらに、前記第1の光開始剤(B1)は、波長λでの照射による前記光開始剤(B1)の活性化の後、前記組成物中において形成された分解生成物が、波長λでの照射により、前記組成物中において前記第2の光開始剤(B2)の好ましくは限定されない活性化を可能とさせるよう選択される。
【0121】
これは、光開始剤の選択、好適な増感剤の使用及び前記光開始剤(B1)及び(B2)の互いに対する濃度比により設定することができる。さらに、前記組成物の他の成分(A)、(C)、(D)及び(E)による吸収は、第2の波長λでの前記第2の光開始剤(B2)の吸収挙動に対して、重要な役割を果たす。
【0122】
好適な光開始剤(B)を選択するために、前記光開始剤(B1)、(B2)及び要すれば使用される増感剤(C1)の好適な溶媒中のUV/VISスペクトルは、記録することができる。第1に、化学線の導入前の前記光開始剤(B1)及び(B2)のブレンドの吸収挙動は、UV/VISスペクトルを記録することにより検討される。本発明の意味において、前記光開始剤(B1)は、所定の波長λでの化学線の吸収により、前記第2の光開始剤(B2)が同時に活性化されることなく、カチオン重合が開始される場合、十分に活性化可能とみなされる。波長λは、好ましくは前記光開始剤(B1)の励起極大に対応し、前記光開始剤(B2)の励起領域の外側にある。
【0123】
次に、前記光開始剤(B1)及び(B2)のブレンドの吸収挙動は、前記波長λ1の化学線での照射の後、波長λでの照射により活性化されるためのその適合性について、前記光開始剤(B2)を評価するためにUV/VISスペクトルを測定することにより、また検討される。本発明の意味において、前記光開始剤(B2)は、所定の波長λでの化学線の吸収により、前記光開始剤(B2)が活性化され、前記組成物中において皮膜が形成される場合、十分に活性化可能とみなされる。この目的のために、波長λでの前記光開始剤(B2)の吸収バンドは、(B1)及び前記光開始剤(B1)の活性化の後に形成される分解生成物(B1’)の吸収を上回るものでなければならない。前記波長λは、好ましくは前記第2の光開始剤(B2)の励起極大に相当する。
【0124】
前記光開始剤(B1)及び(B2)の吸収が前記組成物中に含まれる成分、例えばフィラー、顔料又は波長λ及びλで使用される樹脂成分により制限されるとき、前記光開始剤(B1)及び(B2)は、成分(A)、(C)及び要すれば同様の手順を使用する(D)及び(E)を含む前記処方された組成物のUV/VISスペクトルを記録すること及び評価することにより、選択することができる。
【0125】
本発明による方法の使用
【0126】
本発明による方法は、基材の接合、キャスティング、成形、封止及びコーティングに好適である。特に迅速な初期強度及び、同時に、好ましくは更に熱を加えることなく、信頼できる最終的な硬化が必要とされる製造方法に、本発明による方法は有利に使用することができる。
【0127】
本発明による方法は、次の工程を含む:
a)前記説明によるカチオン硬化型組成物を提供する工程;
b)第1の基材上に前記組成物を投与する工程;
c)第1の波長λの化学線での照射により前記組成物を活性化する工程;
d)要すれば前記第1の基材上の活性化された組成物に第2の基材を供し、したがって基材複合材料を形成する工程、及び、さらに、要すれば両基材を互いに配置する工程;
e)第2の波長λの化学線での照射により前記活性化された組成物を凝固させる工程;及び
f)要すれば前記第1の基材上の又は前記基材複合材料における凝固した組成物を加熱する工程。
【0128】
前記方法は、第2の波長λが第1の波長λよりも短く、前記第2の光開始剤が、工程c)における前記組成物の活性化の後、前記組成物中において、工程e)において前記第2の光開始剤を活性化するのに十分な第2の波長λの化学線の吸収を示すことを特徴とする。
【0129】
活性化のために、前記組成物は、好ましくは400~600nmに及ぶ波長λ、好ましくは460±20nmの波長の化学線で照射される。
【0130】
工程e)において、前記組成物は、好ましくは200~400nmに及ぶ、好ましくは365±20nmの波長λの化学線で照射される。
【0131】
照射は、好ましくは波長λの単一の放出ピークを有する放射スペクトルを有する放射線源で行われる。ハロゲンランプ又はある種の広域幅の放射源は、本発明の目的のために好ましくない。連続照射スペクトルを放出する又は波長バンドにわたって分布したいくつかの放出極大を有するランプでの照射とは異なり、単一の放出ピークを有する放射線源の使用により、前記カチオン性硬化型組成物に含まれる前記光開始剤(B1)及び(B2)の標的とした励起が可能となる。好ましくは、前記照射源は、LED照射ランプである。
【0132】
いわゆるフロー装置を使用するとき、前記活性化工程c)は投与工程b)に先立ち行うことができる。照射による前記組成物のフロー活性化のための好適な投与装置は、独国特許第3702999号及び独国特許第102007017842号に記載されている。
【0133】
工程d)における第2の基材の供給及び工程e)における第2の波長での照射は、いずれも、そうでなければ前記第2の基材への前記組成物の制限のない流出及び/又は前記第2の光開始剤(B2)の制限のない活性化はもはや保証することができないので、前記活性化された組成物の開放時間内に行われる。
【0134】
本発明による方法の好ましいアプリケーションは、特にスイッチ類、プラグ類及び/又はリレー類のキャスティングを含む。
【0135】
本発明による方法の使用は、光電子装置、例えばカメラモジュール、の製造において、また好ましい。前記方法は、特に米国特許第8542451号に記載されている、いわゆる活性配置プロセスのために使用することができる。技術水準を上回る利点は、前記組成物が第1の波長λでの照射により活性化することができること、及び開放時間内に第2の基材と制限なく接触させることができることである。例えば、コンポーネント、例えば鏡筒は、前記組成物を投与し、第1の波長λでの照射によりあらかじめ活性化させた後、イメージセンサー又は対応する保持装置に対して配置することができる。光電子装置は、典型的には光学測定信号を評価し、極微操作装置又はロボット装置の助けを借りて、鏡筒の位置又は、又は、センサーの位置を適合させる、オンになっているセンサーと共に種々の平面に配置される。十分に高品質の測定信号が達成されてすぐに、前記波長λの化学線での照射及び前記光開始剤(B2)の活性化により、対応する位置を凝固させることができる。前記波長λで照射した直後、前記カメラのセットアップは十分な取り扱い強さを有し、更なる加工工程に渡すことができる。最終的な硬化は、更に熱を加えることなく、多くとも7日以内に室温で起こる。これは、高価でなくエネルギーが強くない加熱装置が必要とされるとき、特に有利である。
【0136】
前記第2の照射工程の後の目立った凝固強度とは別に、本発明による方法のために使用される組成物は、カチオン性組成物からわかる完全な硬化の後の高信頼性及び安定性に更に特徴がある。
【0137】
本発明による前記組成物の硬化
【0138】
前記第2の光開始剤の活性化の直後、本発明による前記組成物は、製造された部分の更なる加工のために十分な室温での取り扱い強さ(『生強度』)を達成する。特に接合プロセスにおいて、好ましくは1MPa以上のせん断強度に達した場合、十分な取り扱い強さが達成されているものとみなされる。
【0139】
最終的な硬化は、多くとも7日以内、好ましくは5日以内、及び特に好ましくは3日以内に室温で起こる。硬化反応は、加熱により加速することができる。
【0140】
60°Cの温度では、前記組成物は4時間以内に、好ましくは2時間以内に、完全に硬化することができる。80°Cの温度では、硬化は典型的には2時間以内、好ましくは1時間以内に完結することができる。
【0141】
温度段階的な硬化プロファイルもまた本発明の意味にある。
【0142】
熱は、例えば、対流炉、サーモード、IRラジエータ、レーザ又はインダクションの手段により導入することができる。
【0143】
使用した測定方法及び定義
【0144】
照射
【0145】
前記光開始剤(B1)の活性化のために、本発明による塊をDELO Industrie Klebstoffe GmbH & Co. KGaAからのDELOLUX 20 / 460 LEDランプを使用して30秒間、460nmでの放出極大で及び200±20mW/cmの強度で照射した。続く前記光開始剤(B2)及び、要すれば、前記ラジカル光開始剤(E)の活性化のために、本発明による前記組成物をDELO Industrie Klebstoffe GmbH & Co. KGaAからのDELOLUX 20 / 365 LEDランプで、30秒間、365nmでの放出極大で及び200±20mW/cm の強度で照射した。DELOLUX 20 / 365 LEDランプの発光スペクトルを図1に例として示す。
【0146】
硬化
【0147】
『架橋』又は『硬化』は、ゲル化点を超えた、重合又は付加反応として定義される。ゲル化点は、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G’’と等しくなる点である。試料の硬化は、7日間、室温で起こる。
【0148】
室温
【0149】
室温は、23±2°Cと定義する。
【0150】
光凝固の評価
【0151】
前記光凝固を評価するために(固体対液体)、前記組成物は光学評価を受ける。要すれば、触覚テストはプラスチックスパチュラを使用して行う。
【0152】
開放時間
【0153】
開放時間は、照射による前記組成物の活性化と皮膜が形成し始める時点間の期間である。皮膜形成は、スパチュラで接着性の活性化されたドロップを触ることで試験する。糸をひかないとき、皮膜が形成されているとみなされる。前記組成物の開放時間は、特に温度及び照射投与量による。
【0154】
UV/VIS透過率
【0155】
前記組成物の透過率は、Analytik Jenaより入手可能な、SPECORD 50 PLUS型のUV/VIS分光計で決定した。測定は、DIN 5036-3に従って行った。
【0156】
硬化性組成物の製造
【0157】
以降の実施例において使用されるカチオン硬化型組成物を製造するために、液体成分を混合し、均一な組成物が形成されるまで、フィラー及び、要すれば、更なる固体を研究室用の撹拌機、研究室用の溶解機又はスピードミキサー(Hauschild)といった手段により、含ませる。したがって、光開始剤を含み、可視光に敏感な組成物は、光開始剤又は増感剤の励起波長の外側の光を使用して、製造されなければならない。
【0158】
前記硬化性組成物の製造のために使用されるすべての化合物及びそれらの略語を下に列記する。
【0159】
成分(A):カチオン重合性成分
【0160】
(A1)エポキシ含有化合物
【0161】
(a1-1):3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、Daicelにより商品名Celloxide 2021で入手可能。
【0162】
(A2)オキセタン含有化合物
【0163】
(a2-1):OXT-221=ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル;Toagoseiにより入手可能。
【0164】
(a2-2):OXT-101=3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン;Toagoseiにより入手可能。
【0165】
(A4)ポリオール
【0166】
(a4-1):Eternacoll UM90=脂肪族ポリカーボネートジオール、UBE Industries Ltdにより入手可能。
【0167】
成分(B):カチオン重合のための光開始剤
【0168】
(B1)メタロセニウム系光開始剤
【0169】
(b1-1):R-gen262=(η-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1,2,3,4,5,6-η)-(1-メチルエチル)ベンゼン]-鉄(I)-ヘキサフルオロアンチモン酸;50%炭酸プロピレン溶液;Chitecにより入手可能。
【0170】
(B2)オニウム系光開始剤
【0171】
(b2-1):Chivacure 1176=ジフェニル(4-フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸及び(チオジ-4,1-フェニレン)ビス(ジフェニルスルホニウム)ジヘキサフルオロアンチモン酸、炭酸プロピレン溶液;Chitecにより入手可能。
【0172】
(b2-2):Bluesil 2074=(トルイルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸、Bluestarにより入手可能。
【0173】
(b2-3):UVI-6976=PhS-(C)-SPh SbF 及びPh-(C)S(C)-SPh(SbF の混合物、50%炭酸プロピレン溶液;Dow Chemicalsにより入手可能。
【0174】
(b2-4):Esacure 1064=PhS-(C)-S-Ph PF 及びPh-(C)-S-(C)-SPh(PF の混合物、50%炭酸プロピレン溶液;Lambertiにより入手可能。
【0175】
成分(C):添加剤
【0176】
(C1)増感剤
【0177】
(c1-1):Speedcure 2-ITX=2-イソプロピルチオキサントン、Lambson Ltdにより入手可能。
【0178】
実施形態
【0179】
本発明による方法を実行するために、以降の実施例において述べる第1の硬化性カチオン性組成物を、下記表に示す成分(A)~(E)の割合で処方した。
【0180】
特性を評価するために、実施例から50mgの各組成物を使用した。
【0181】
以降の実施例において、λは460nmに相当し、λは365nmに相当する。
【0182】
別段記載されていなければ、照射は30秒間、200mW/cmの強度で、異なる波長で行った。
【0183】
前記組成物の最終的な硬化は、室温で7日間保存した後、評価した。
【0184】
光開始剤選択のためのUV/VISスペクトルの記録
【0185】
本発明による方法における使用のための光開始剤ブレンドの安定性は、460nmの波長λでの光開始剤のブレンドの照射前後で、溶媒としての炭酸プロピレン(50wt%)中でのブレンドのUV/VIS透過率を測定することにより、決定した。前記化合物b1-1及びb2-1を光開始剤として使用した。化合物b2-1[mmol]及びb1-1[mmol]の物質量比は、下記実施例1において記載されているように第1のブレンドにおいて、1.5:0.5であり、下記実施例7において記載されているように、第2のブレンドにおいて、0.5:0.5であった。
【0186】
したがって、得たUV/VISスペクトルを、図2及び図3に示す。
【0187】
図2のスペクトルは、実施例1の光開始剤ブレンドを制限なく、本発明による方法において使用することができることを示す。波長λでのブレンドの照射の後でさえ、波長λ(365nm)の化学線での光開始剤(B2)の活性化による組成物の凝固は、制限なく可能である。
【0188】
対照的に、実施例7の光開始剤ブレンドは、本発明による方法における使用に適したカチオン硬化型組成物を処方するのに適さない。例えば、実施例7の組成物は、波長λ(460nm)の化学線での照射により活性化することができるが、ブレンドの吸収挙動は、λ(365nm)での照射による前記第2の光開始剤(B2)の活性化がもはや不可能であるよう活性化した後、前記光開始剤(B1)の分解のために変化する。したがって、前記組成物は、λでの照射の直後、液体状態のままである。










【0189】
【表1】




















【0190】
【表2】
【0191】
実施例1~5の組成物により本発明による方法を行うことが可能となる。前記組成物は、各々波長λ(460nm)の化学線での照射により活性化することができ、始めは液体状態のままである。7日以内に、λでの照射により活性化された組成物は、更に熱を加えることなく、室温で確実に硬化する。
【0192】
実施例1~5の組成物は、λでの活性化の後、皮膜を形成する間、それらは波長λ(365nm)の化学線での照射により次元的に安定な状態に移ることができることに特徴がある。例えば、前記組成物は、前記第1の基材上に投与した後、波長λの光での照射により、活性化することができる。この開放時間内に、第2の基材は前記活性化された組成物に供することができ、要すれば前記第1の基材に対して配置することができる。波長λでの次の照射により、前記組成物を凝固させることができ、したがって、また両基材を互いに凝固させることができる。最終的な硬化は、7日までの期間をかけて室温で生じ、要すれば加熱により加速させることができる。対照的に、30秒間、λ(365nm)での専らの曝露は、第2の基材の接合を不可能とさせる、組成物中の直接の皮膜形成を生じさせる。
【0193】
実施例6~9の組成物は、本発明による方法における使用に好適でない比較例である。比較例6からの組成物では、λで活性化することができる光開始剤(B1)を使用しない。λでの照射は前記組成物を硬化させるが、前記カチオン硬化型組成物は本発明による方法の工程c)に従って、あらかじめ活性化することができない。
【0194】
比較例7の組成物は、λで活性化することができる。しかしながら、λでの照射は、前記波長λでの前記第2の光開始剤(B2)の吸収が、前記方法の工程e)においてもはや十分に活性化されていないよう、前記第1の光開始剤(B1)の分解をもたらす。対照的に、前記第1の光開始剤(B1)と比較して、高い割合の前記第2の光開始剤(B2)を有し、したがって異なる吸収挙動を示す実施例1の比較となる組成物は、本発明による方法における使用において制限なく好適である。
【0195】
比較例8の組成物は、2つの光開始剤(B1)及び(B2)の等モルの割合を有する。ちょうど実施例7におけるもののように、本発明による方法の意味にある連続照射は、この組成物で行うことはできない。λ又はλでの照射により前記組成物は硬化に至るが、本発明による方法の工程c)における活性化の後、前記第1の光開始剤(B1)の変化した吸収は、前記第2の光開始剤(B2)の制限されない活性化を不可能とする。
【0196】
比較例9の組成物は、米国特許第796,4248号の実施例8の処方に相当し、本発明による方法を行うのに好適でない。異なるカウンターアニオンを有するスルホニウム塩に基づく2つの異なる光開始剤が使用される。本発明による方法に従う連続照射を行うとき、波長λで照射したとき、前記組成物は活性化されない。λでの照射は前記組成物を硬化させるが、前記光開始剤(B1)が活性化されていないとき、接合プロセスの間、非透明領域においては完全に硬化していない。
図1
図2
図3