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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】低雑音発振器振幅調整器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
H03B5/32 C
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022026948
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2020010980の分割
【原出願日】2016-05-13
(65)【公開番号】P2022084626
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】14/731,487
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルガード, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】サンドストエム, ラーズ
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0266011(US,A1)
【文献】特開2007-043705(JP,A)
【文献】特開2011-023797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0035684(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/00-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数生成回路であって、
発振器出力、第1の制御入力及び第2の制御入力を有する発振器と、
前記発振器出力の振幅を検出するように構成される検出器と、
前記第1の制御入力へ前記検出器を動作可能に接続する第1の帰還パスであって、前記第1の制御入力に第1の制御信号を継続的に適用することによって、前記検出された振幅に応答して前記発振器出力の前記振幅を制御するように構成される前記第1の帰還パスと、
前記検出器を前記第2の制御入力に動作可能に接続する第2の帰還パスであって、前記検出された振幅に応じて、前記第2の制御入力への第2の制御信号を適用することによって、前記発振器の1つ以上の振幅調整パラメータを制御するように構成された制御回路であって、
前記発振器の電源がオンになった際に前記発振器の1つ以上の振幅調整パラメータの変更を防ぎ、
前記発振器の電源がオンになり、安定した後、前記検出した振幅に応答して前記発振器の前記1つ以上の振幅調整パラメータの変更を許可し、
前記発振器が無線通信に使用されている場合に前記1つ以上の振幅調整パラメータの変更を防ぐ、
ようにさらに構成された制御回路を備える前記第2の帰還パスと、
を有することを特徴とする周波数生成回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第2の制御信号を制御して、次回のランダムアクセスチャネル送信イベント、次回の無線送信イベント、および/または次回の無線受信イベントに応答して前記1つ以上の振幅調整パラメータを変更するようにさらに構成されることを特徴とする請求項1に記載の周波数生成回路。
【請求項3】
前記第1の帰還パスは、前記検出された振幅に応じて、前記発振器のゲインを継続的に制御することによって、前記発振器出力の前記振幅を制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の周波数生成回路。
【請求項4】
前記1つ以上の振幅調整パラメータは、
発振器バイアス電流、
発振器gmセルの数、
1つ以上の前記発振器gmセルのバイアス点、及び、
前記発振器のコアと並列に接続される可変抵抗
の、少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の周波数生成回路。
【請求項5】
発振器出力、第1の制御入力及び第2の制御入力を有する発振器を制御する方法であって、
前記発振器出力の振幅を検出することと、
前記第1の制御入力に第1の制御信号を継続的に適用することによって、前記検出された振幅に応答して前記発振器出力の前記振幅を制御することと、
前記検出された振幅に応じて、前記第2の制御入力への第2の制御信号を適用することによって、前記発振器の1つ以上の振幅調整パラメータを制御することであって
前記発振器の電源がオンになった際に前記発振器の前記1つ以上の振幅調整パラメータへの変更を防ぎ、
前記発振器の電源がオンになり、安定した後、前記検出した振幅に応じて前記発振器の前記1つ以上の振幅調整パラメータの変更を許可し、
前記発振器が無線通信に使用されている場合に前記1つ以上の振幅調整パラメータの変更を防ぐ、
制御することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記第2の制御信号を制御することは、前記第2の制御信号を制御して、次回のランダムアクセスチャネル送信イベント、次回の無線送信イベント、および/または次回の無線受信イベントに応答して前記1つ以上の振幅調整パラメータを変更するように構成されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記発振器出力の前記振幅を制御することは、前記検出された振幅に応答して前記発振器のゲインを継続的に制御することを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の振幅調整パラメータは、
発振器バイアス電流、
発振器gmセルの数、
1つ以上の前記発振器gmセルのバイアス点、及び、
前記発振器のコアと並列に接続される可変抵抗
の、少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
周波数生成回路を備える無線通信機器であって、前記周波数生成回路は、
発振器出力、第1の制御入力及び第2の制御入力を有する発振器と、
前記発振器出力の振幅を検出するように構成される検出器と、
前記第1の制御入力へ前記検出器を動作可能に接続する第1の帰還パスであって、前記第1の制御入力に第1の制御信号を適用することによって、前記検出された振幅に応答して前記発振器出力の前記振幅を制御するように構成される前記第1の帰還パスと、
前記検出器を前記第2の制御入力に動作可能に接続する第2の帰還パスであって、前記検出された振幅に応じて、前記第2の制御入力への第2の制御信号を適用することによって、前記発振器の1つ以上の振幅調整パラメータを制御するように構成された制御回路であって、
前記発振器の電源がオンになった際に前記発振器の1つ以上の振幅調整パラメータの変更を防ぎ、
前記発振器の電源がオンになり、安定した後、前記検出した振幅に応答して前記発振器の前記1つ以上の振幅調整パラメータの変更を許可し、
前記発振器が無線通信に使用されている場合に前記1つ以上の振幅調整パラメータの変更を防ぐ、
ようにさらに構成された制御回路を備える前記第2の帰還パスと、
を備えることを特徴とする無線通信機器。
【請求項10】
前記制御回路は、前記第2の制御信号を制御して、次回のランダムアクセスチャネル送信イベント、次回の無線送信イベント、および/または次回の無線受信イベントに応答して前記1つ以上の振幅調整パラメータを変更するようにさらに構成されることを特徴とする請求項9に記載の無線通信機器。
【請求項11】
前記第1の帰還パスは、前記検出された振幅に応じて、前記発振器のゲインを継続的に制御することによって、前記発振器出力の前記振幅を制御するように構成されることを特徴とする請求項9に記載の無線通信機器。
【請求項12】
前記1つ以上の振幅調整パラメータは、
発振器バイアス電流、
発振器gmセルの数、
1つ以上の前記発振器gmセルのバイアス点、及び、
前記発振器のコアと並列に接続される可変抵抗
の、少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の無線通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで提示される解決策は、一般に周波数生成に関し、より具体的には、高周波生成回路の位相雑音及び電力消費の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器において、例えば、基準クロック、電気通信信号等のための混合周波数を提供するために、発振器が広く用いられている。負性抵抗に基づく発振器は、無線通信機器において用いられるような、高周波信号の生成に典型的に用いられる1つのタイプの発振器アーキテクチャを表す。負性抵抗に基づく発振器の例は、水晶発振器、表面弾性派(SAW)に基づく発振器などを含むが、これらに限定されない。負性抵抗に基づく発振器は、負性抵抗回路に動作可能に接続される共振回路を有した発振器コアを含む。共振回路は所望の共振周波数で発振し、負性抵抗回路は共振回路の抵抗損失をキャンセルする。事実上、負性抵抗回路は、共振回路の自然減衰を取り除き、したがって、発振器コアが所望の共振周波数で途切れることなく発振することを可能とする。
【0003】
このような発振器を含んだ電子機器の良好な動作には、正確で信頼できる振幅制御が要求される。具体的には、例えば異なる共振回路の、異なるQ値、及び、任意の1つの発振器に対する異なるPVT(処理、電圧、及び温度)条件が、大きい振幅変動を引き起こしうることに起因して、振幅制御が必要である。例えば、高いQの共振回路を有する発振器は、低いQの共振回路を有する発振器より、高い振幅の揺れを有する。さらに、線形モードで動作する発振器は、発振器振幅が、急峻にゼロに落ちること、または、発振器の非線形効果(例えば電圧クリッピング)により制限されるレベルに増えること、を防ぐように、振幅の連続的な調整を要求する。このような電圧クリッピングは、発振器の性能を大幅に劣化させ、寄生振動のリスクを増やし、(回路トポロジによって)電流消費を増やし、概して発振器の振る舞いをより予測できなくしうる。正確で信頼できる振幅制御は、広い範囲のQ値及びPVT条件にわたる振幅の変動を等化すると共に良好な雑音性能を確保し、低い電流消費を提供し、寄生振動を避け、場合によっては、能動及び受動コンポーネントに対するダメージを防ぐ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負帰還ループは、発振器出力の振幅を制御するための1つの方法を与え、ここで、負帰還ループは、発振器出力の振幅を検知して、発振器コアの動作店を制御することによりその振幅を調整する。例えば、発振器コアのアクティブなトランジスタ機器を通じて電流を制御することが、負性抵抗を制御するように発振器コアのトランスコンダクタンスgmを制御し、この結果、発振器振幅を制御する。しかしながら、このような負帰還ループは、特に負帰還ループが高いゲインを有する場合に、発振器コア内に雑音を引き起こしうる。さらに、発振器コアの非線形特性が、入力雑音を、AM(振幅変調)雑音及びPM(位相変調)雑音の両方へ変換する。負帰還ループのループゲインを増やすことがAM雑音を減らす一方で、このようなループゲインの増加は、電力消費を増やすのみならずPM雑音を減らさない。負帰還ループの帯域幅を減らすこともノイズを減らすが、このような帯域幅の低減は、発振器の起動時間を増やし、発振器入力信号をフィルタリングするのに必要な任意のフィルタのサイズ(消費されるチップ領域)を不必要に増やす可能性がある。したがって、このような帯域幅の低減もまた望ましくない。
【0005】
上述のように、負性抵抗に基づく発振器は、高周波用途に特に有用であり、mmW(ミリ波)通信に特に重要でありうる。また、特に、例えば水晶またはSAW共振器に基づく基準発振器に対して、さらに高い周波数、今日の数十MHzから数百MHz及び場合によってはGHzの範囲に近づくさらなる周波数、の使用が予測される。このようなより高い周波数の生成は、一般に、より高い電力消費をもたらす。さらに、このような高い周波数の使用は、また、共振器の公差の増加、雑音の増加、コンポーネントサイズの増加、起動時間の長期化、および/または回路及び関連するパッケージの寄生素子からの影響が大きくなることに起因して、設計の課題を提起する。このように、より高い電力消費、より高い雑音、および/または、より長い起動時間を生じさせない、改善された、より高い周波数生成回路に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで提示される解決策は、2つの帰還パスを用いて発振器振幅を制御することにより、電力消費が低く雑音が小さい高周波数信号を生成する。第1の帰還パスは、発振器出力において検出される振幅に応答して発振器振幅の継続制御を提供する。第2の帰還パスは、検出された発振器振幅に応答して、発振器の振幅調整パラメータの離散制御を提供する。第2の帰還パスが振幅調整パラメータの調整を可能とするため、第2の帰還パスは、第1の帰還パスにおける増幅器が、発振器の性能を脅かすことなく、低減されたゲインで、したがってまた低減された電力及び低減された雑音で、動作することを可能とする。
【0007】
1つの例示の実施形態は、発振器、検出器、第1の帰還パス、及び第2の帰還パスを有する周波数生成回路を含む。発振器は、発振器出力、第1の制御入力、第2の制御入力を有する。検出器は、発振器出力の振幅を検出するように構成される。第1の帰還パスは、検出器を第1の制御入力に動作可能に接続し、その検出された振幅に応答して、第1の制御入力に適用される第1の制御信号を継続的に制御することによって発振器出力の振幅の時間連続制御を提供するように構成される。第2の帰還パスは、検出器を第2の制御入力に動作可能に接続し、検出された振幅に応答して、第2の制御入力に適用される第2の制御信号の時間離散制御を提供することにより、発振器の1つ以上の振幅調整パラメータの時間離散制御を提供するように構成される。
【0008】
別の例示の実施形態は、発振器出力、第1の制御入力、及び第2の制御入力を備えた発振器を制御する方法を含む。方法は、発振器出力の振幅を検出することと、検出された振幅に応答して、第1の制御入力に適用される第1の制御信号を継続的に制御することによって発振器出力の振幅の時間連続制御を提供することを含む。方法は、検出された振幅に応答して、第2の制御入力に適用される第2の制御信号の時間離散制御を提供することによって発振器の1つ以上の振幅調整パラメータの時間離散制御を提供することをさらに含む。
【0009】
別の例示の実施形態は、周波数生成回路の発振器を制御する非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータプログラムプロダクトを含む。発振器は、発振器出力、第1の制御入力、及び、第2の制御入力を有する。コンピュータプログラムプロダクトは、周波数生成回路において実行されるときに、その周波数生成回路に、発振器出力の振幅を検出させ、検出された振幅に応答して、第1の制御入力に適用される第1の制御信号を継続的に制御することによって発振器出力の振幅の時間連続制御を提供させるソフトウェア命令を含む。ソフトウェア命令は、周波数生成回路で実行されるときに、周波数生成回路に、さらに、第2の制御入力に適用される第2の制御信号の時間離散制御を提供することによって、発振器の1つ以上の振幅調整パラメータの時間離散制御を提供させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】1つの例示の実施形態による周波数生成回路のブロック図である。
図2】1つの例示の実施形態による振幅制御方法を示す図である。
図3】1つの例示の実施形態による図1の周波数生成回路の第1の帰還パスのブロック図である。
図4】1つの例示の実施形態による図1の周波数生成回路の第2の帰還パスのブロック図である。
図5】1つの例示の実施形態による別の振幅制御方法を示す図である。
図6】高いゲインを有する第1の帰還パスのみを用いて達成可能なシミュレーション結果を示す図である。
図7】低いゲインを有する第1の帰還パスのみを用いて達成可能なシミュレーション結果を示す図である。
図8】ここで提示される解決策を用いて達成可能な例示のシミュレーション結果を示す図である。
図9】第1の帰還パスが様々なゲインを有する場合の例示のシミュレーション結果を示す図である。
図10】ここで提示される解決策を用いて達成可能な雑音の改善の例示のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、1つの例示の実施形態による周波数生成回路100のブロック図を示している。簡単にするため、図1は、ここで提供される説明を促進するのに必要な周波数生成回路100の要素のみを示している。周波数生成回路100が図1に示されていない追加のコンポーネントおよび/または信号接続を含んでもよいことが当業者には理解されるだろう。
【0012】
周波数生成回路100は、発振器出力の振幅を制御する制御回路115に接続された発振器110を含む。発振器110は、第1の制御入力(CTRL1)、第2の制御入力(CTRL2)、及び出力(OUT)を含む。発振器110は、水晶発振器または負性抵抗回路114に動作可能に接続される共振回路112を有する他の負性抵抗に基づく発振器を含んでもよい。1つの例示の実施形態において、共振回路112は水晶を有してもよく、負性抵抗回路114は増幅器(不図示)を有してもよい。それぞれ第1及び第2の制御入力に適用される第1及び第2の制御信号(S1及びS2)は、発振器110の出力における信号の振幅S0を制御する。特に、後にさらに説明するように、第1の制御信号S1はS0の振幅の時間連続制御を提供する一方で、第2の制御信号S2は発振器110の1つ以上の振幅調整パラメータの時間離散の制御を提供する。例示の振幅調整パラメータは、発振器バイアス電流、アクティブな発振器gmセルの数、1つ以上の発振器gmセルのバイアス点、および/または、発振器110のコアと並列に接続される可変抵抗を含むが、これに限られない。第2の制御信号S2が発振器110の設定を制御するため、S2は、第1の制御信号S1によって提供される時間連続の振幅制御へのその他の点での要求の緩和を可能とする。
【0013】
制御回路115は、図2の例示の方法200により、発振器出力信号S0に応答して、第1及び第2の制御信号S1、S2を生成する。より具体的には、制御回路115は、検出器120、第1の帰還パス130、及び第2の帰還パス140を有する。発振器出力と第1の帰還パス130及び第2の帰還パス140の入力との間に接続される検出器120は、発振器出力信号S0の振幅Aを検出する(ブロック210)。第1の帰還パス130は、検出された振幅Aに応答して第1の制御信号S1を継続的に制御することによって、発振器出力信号S0の振幅の時間連続制御を提供する(ブロック220)。第2の帰還パス140は、検出された振幅Aに応答して、離散時間で、第2の制御信号S2を制御することにより、発振器110の1つ以上の振幅調整パラメータの時間離散制御を提供する(ブロック230)。例えば、第2の制御信号は、負性抵抗回路114の動作を制御するパラメータの時間離散制御を与えうる。発振器110の振幅調整パラメータを制御することにより、第2の帰還パス140は、第1の帰還パス130がより低いゲインで、したがって、より低い電力で、そしてより小さい雑音を伴って、動作することを可能とする。
【0014】
図3は、1つの例示の実施形態による第1の帰還パス130のブロック図を示している。この実施形態において、第1の帰還パス130は、増幅器132及びフィルタ134を含む。検出された振幅A、及び、基準振幅Arefが、増幅器132に入力される。増幅器132は、検出された振幅Aと基準振幅Arefとの間の差から形成される振幅誤差Aerrを増幅し、フィルタ134は、第1の制御信号S1を生成するために増幅された信号をローパスフィルタリングすることによって、発振器110への雑音の入力を減らすのに役立つ。第1の制御信号S1は、負性抵抗回路114のゲインを制御することによって、発振器コアのゲインを制御する。その際、第1の制御信号S1は、発振器出力信号S0の振幅を制御する。
【0015】
増幅器132は第1の帰還パス130のゲインを規定する。可変の環境条件、発振器特性、および/または発振器110の寿命が、発振器出力信号S0の振幅を十分に制御するための第1の制御信号S1の特性に影響を与えうるため、従来のシステムは、いくつかのより極限の状態が非常に稀であっても、広範な条件を考慮するように、増幅器132のゲインを設定する傾向がある。例えば、より高い温度が、通常の動作温度での同一の入力制御信号を用いて得られるだろうものと比較して、発振器コアのゲインを低減しうる。従来の解決策は、発振器出力S0の振幅を所望のレベルを下回るまで落とすことなく、発振器コアが極限の温度条件さえも取り扱うことを可能とするのに増幅器132のゲインが十分高くなることを確実にすることによって、この問題を対処する。しかしながら、このような高いゲインの条件は、増幅器132に、より多くの電力を消費させ、多くの動作条件に対してその他必要となるだろうよりも多くの雑音を発振器コアに加えさせる。
【0016】
ここで提供される解決策は、発振器110の振幅調整パラメータを制御するために、制御回路115に、第2の帰還パス140を組み込み、第1の帰還パス130がより低いゲインのために設計され構成されることを可能とする。第1の帰還パス130におけるこのようなゲインの低減は、より低い電力で周波数生成回路100が動作することを可能とし、発振器110へ入力される雑音レベルを低減する。そのために、第2の帰還パス140は、発振器出力信号S0の検出された振幅Aに応答して、1つ以上の振幅調整パラメータを制御する。例えば、検出された振幅Aが、第1の制御信号が発振器振幅を十分に増幅できないことを示す非常に低くまで落ちた場合、第2の帰還パス140は、例えば、バイアス電流を増やすこと、アクティブな発振器gmセルの数を増やすこと、および/またはアクティブなgmセルのバイアス点を増加することによって、振幅調整パラメータを調整しうる。代わりに、または追加的に、第2の帰還パス140は、例えば発振器110の様々な出力にわたって接続される可変抵抗116を用いて、発振器コアと並列に接続された可変抵抗のレジスタンスを増加することによって、振幅調整パラメータを調整してもよい。別の例では、検出された振幅Aが、発振器出力信号S0の振幅が非常に高いことを示す非常に高くまで増大する場合、第2の帰還パス140は、バイアス電流を減らし、アクティブな発振器gmセルの数を減らし、アクティブなgmセルの1つ以上のバイアス点を下げ、および/または、発振器110のコアと並列に接続された可変抵抗116のレジスタンスを下げうる。いずれにしても、第2の帰還パス140は、第1の帰還パス130が高いゲインを有することを要求することなく、発振器110が出力において所望の振幅を維持することを可能とするように、検出された振幅Aによって示されるような現在の動作状態に対して、振幅調整パラメータを調整する。
【0017】
増幅器132のゲインがほとんどの動作条件に対処するように設計されるため、第2の帰還パス140によって提供される制御は、時間離散の方法で実行されうる。例えば、第2の帰還パス140は、図4に示すように、制御回路142を含みうる。制御回路142は、検出された振幅Aが、1つ以上の所定の条件、例えば閾値条件を満たす場合に、振幅調整パラメータを制御するのみによる時間離散の方法で、発振器の振幅調整パラメータを制御しうる。例えば、制御回路142は、検出された振幅Aが高い方の閾値TUを超える又は低い方の閾値TLより低い場合にのみ、振幅調整パラメータを制御するために、第2の制御信号S2を制御しうる。さらに、制御回路142は、ある動作条件の下でおよび/またはイベントトリガに応答してのみ、振幅調整パラメータを制御するために、第2の制御信号S2を制御してもよい。例えば、制御回路142は、発振器110が電源をオンとした場合および/または発振器110がある通信イベントトリガに応答して動作している場合に振幅調整パラメータが変化することを許容するように、第2の制御信号S2を制御してもよい。しかしながら、例えばアクティブな通信の間の振幅調整パラメータを変更することが発振器110の位相および/または周波数が途絶しうるため、制御回路142は、この途絶を防ぐべき期間の間、振幅調整パラメータが変化することを防ぐように、第2の制御信号S2を制御してもよい。したがって、制御回路142は、閾値条件に加えて、電源オン/オフイベントと通信イベントトリガとの少なくともいずれかを、発振器の振幅調整パラメータの追加の時間離散制御を提供するために使用しうる。イベントトリガは、次回の無線通信を示す通信イベントに関するトリガを含んでもよく、当該通信イベントは、次回のランダムアクセスチャネル送信イベント、次回の無線送信イベント、または次回の無線受信イベントを含んでもよい。
【0018】
図5の例示の方法250は、起動時に発振器110を制御するためのより詳細なアプローチを与える。この例示の方法250において、発振器110の電源がオンとされ(ブロック202)、処理は、発振器110が安定するまで待機する(ブロック204)。発振器110が安定する(ブロック204)と、検出器120は、発振器出力信号S0の振幅Aを検出する(ブロック210)。検出された振幅Aが高い方の閾値TUを超える(ブロック232)または低い方の閾値TLより低い(ブロック234)場合、第2の帰還パス140における制御回路142は、現在の設定を用いて所望の振幅を維持することができないと判定する。したがって、それに応じて、制御回路142は、発振器110の1つ以上の振幅調整パラメータを変える(ブロック236)。発振器110が再度安定する(ブロック204)と、ブロック210、232、及び234が繰り返されうる。この繰り返しは、無限であってもよいし、ある所定の最大繰り返し数の後に終了してもよい。
【0019】
図6図10は、ここで提示される解決策の利点を説明するためのシミュレーション結果を示している。まず、図6及び図7は、制御回路115が第2の帰還パス140を含まない場合に達成可能な発振振幅を示している。この場合、発振器110の振幅調整パラメータが固定され、第1の帰還パス130が振幅制御のみを提供する。図6は、第1の帰還パス130における増幅器132が、例えば10より大きい相対的に高いループゲインをもたらす高いゲインで動作するように構成される場合の結果を、例えば5より小さい相対的に低いループゲインをもたらすより低いゲインで増幅器132が動作する場合の図7の結果と対比して、与えている。図6が示すように、ループゲインの高い実装は、非常に小さい振幅変動、例えば最高の状態の50~55%を提供する。しかしながら、この小さい振幅変動を達成するのに必要な高いゲインは、高い電力消費と高い雑音レベルをもたらす。低いループゲインの実装は、低い電力消費と雑音レベルを可能とするが、図7に示すように、この低いループゲインの実装は、相対的に高い振幅の変動、例えば最高の状態の48~68%を有する。
【0020】
図8は、発振器110の振幅調整パラメータの時間離散調整を可能とするための制御回路115を伴って第2の帰還パス140が含まれる場合の結果を示している。このシミュレーションでは、第1の帰還パス130が低いゲインを有し、第2の帰還パス140が、図8における3つの曲線により示されるように、2つの追加の振幅調整パラメータ、例えば発振器コアにおけるバイアステール電流および/またはgmセルの数を制御するのに用いられる。図8が示すように、ここで提示される解決策は、以前は第1の帰還パス130が低いループゲインを有する場合に達成できなかった、小さい振幅変動(52~60%)をもたらす。このように、ここで提示される解決策は、高いループゲインの実装に関連してより一般的に振幅制御の利点を提供しながら、低いループゲインの実装と関連してより一般的に低い雑音及び電力消費を提供する。
【0021】
図9は、増幅器132のゲインがどのように振幅制御と雑音/電力低減との間の所望のトレードオフを達成するために選択されうるかを説明するシミュレーション結果を示している。図9の結果は、例えば「高ループゲイン」、「低ループゲイン」、「第2の帰還パスを含んだ低ループゲイン」など、各点において定性的に特定された6つのシナリオに対する、発振器振幅性能を説明している。最初の4つのシナリオは、第2の帰還パス140が含まれない場合の高い/低いループゲイン及び高い/低いQのシナリオに対する振幅性能を示している。最後の2つのシナリオは、第2の帰還パス140が含められる場合の低いループゲイン及び高い/低いQのシナリオに対する振幅性能を示している。
【0022】
図10は、図9のものと同じ6つのシナリオに対する雑音性能を説明し、したがって、ここで提示される解決策によって与えられる雑音の改善を説明する、シミュレーション結果である。具体的には、上の2つのプロットが、振幅調整パラメータが固定され、第1の帰還パス130のループゲインが高い場合の周波数生成回路100の動作を示す。最下部のプロットは、第1の帰還パス130のループゲインが低い場合に発振器コアのバイアス電流とgmセルを変更するのに第2の帰還パス140が用いられる場合の結果を示している。したがって、ここで提示される解決策は、高ゲインの負帰還に関連する振幅制御の利点と低ゲインの負帰還と関連する電力及び雑音の利点とを有する周波数生成回路を提供している。
【0023】
本発明は、当然ながら、本発明の本質的な特徴から離れることなく、ここで特に説明されたもの以外の方法で実行されてもよい。本実施形態は、あらゆる点で説明のためであって制限するものではないと見なされるべきであって、添付の特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内のすべての変更がその中に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10