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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】半導体装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20231213BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20231213BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
G02F1/1368
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
H01L29/78 616V
H01L29/78 617M
H01L29/78 613Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022077619
(22)【出願日】2022-05-10
(62)【分割の表示】P 2020080910の分割
【原出願日】2014-05-19
(65)【公開番号】P2022122874
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2013106681
(32)【優先日】2013-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013126895
(32)【優先日】2013-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013153362
(32)【優先日】2013-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】初見 亮
(72)【発明者】
【氏名】深井 修次
(72)【発明者】
【氏名】久保田 大介
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/086513(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0141203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/136-1/1368
G09F 9/30
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、容量素子と、を有する画素を有し、
前記トランジスタのゲート電極として機能する領域を有する第1の導電膜を有し、
前記第1の導電膜上に位置し、且つ前記トランジスタのゲート絶縁膜として機能する領域を有する第1の絶縁膜を有し、
前記第1の絶縁膜上に位置し、且つ前記トランジスタのチャネル形成領域を有する第1の酸化物半導体膜を有し、
前記第1の酸化物半導体膜の上面と接する領域を有し、且つ前記トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方として機能する領域を有する第2の導電膜を有し、
前記第1の酸化物半導体膜の上面と接する領域を有し、且つ前記トランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方として機能する領域を有する第3の導電膜を有し、
前記第1の酸化物半導体膜の上面と接する領域と、前記第2の導電膜の上面および前記第3の導電膜の上面と接する領域と、を有し、かつ酸化シリコン膜を有する第2の絶縁膜を有し、
前記酸化シリコン膜の上面と接する領域を有する第3の絶縁膜を有し、
前記第3の絶縁膜の上面と接する領域を有し、前記第2の導電膜の上面と接する領域を有し、且つ画素電極として機能する第4の導電膜を有し、
前記容量素子の第1の電極として機能する領域を有する第2の酸化物半導体膜を有し、
前記第2の酸化物半導体膜上に位置する前記第3の絶縁膜を有し、
前記第3の絶縁膜を介して前記第2の酸化物半導体膜と重なる領域を有し、且つ前記容量素子の第2の電極として機能する領域を有する前記第4の導電膜を有し、
平面視において、前記第2の酸化物半導体膜は、前記第1の酸化物半導体膜よりも面積が大きく、
前記第1の酸化物半導体膜および前記第2の酸化物半導体膜は、前記第1の絶縁膜の上面と接する領域を有し、
前記酸化シリコン膜は、前記第1の絶縁膜と接する領域を有し、
前記酸化シリコン膜は、前記第2の酸化物半導体膜の上面と接する領域と、前記第2の酸化物半導体膜の側面と接する領域と、を有し、
前記第1の導電膜は、銅、チタンおよびモリブデンの少なくとも一を有し、
前記第2の導電膜および前記第3の導電膜は、銅、チタンおよびモリブデンの少なくとも一を有し、
前記第1の酸化物半導体膜および前記第2の酸化物半導体膜は、Inと、Gaと、Znと、を有する半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体装置、表示装置、発光装置、それらの駆動方法、または、そ
れらの製造方法に関する。特に、本発明は、例えば、アクティブマトリクス型の液晶表示
装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンを始めとした携帯情報端末の急速な普及に伴い、端末自体の高性
能化も急速に進んでいる。画面は大型化、高精細化の一途を辿り、画面の精細度の向上と
合わせて、表示装置の消費電力が重要視されてきている。表示装置としては、例えば液晶
素子を用いた液晶表示装置が代表的である。
【0003】
液晶表示装置の表示方式としては、例えば、負の誘電率異方性を有する液晶分子を基板
面に対して垂直配向させた垂直配向(VA)モードや、正または負の誘電率異方性を有す
る液晶分子を基板面に対して水平配向させて液晶層に対し横電界を印加する面内スイッチ
ング(IPS)モード及び縞状電界スイッチング(FFS)モード等が挙げられる。
【0004】
例えば、上述したFFS駆動方式の液晶表示装置として、第1の共通電極層を有する第
1の基板と、第1の基板及び第2の基板との間に挟まれた液晶と、高速な入力データ転送
速度に対する高速応答性及び見る人にとって広視野角をもたらすために、第1の基板にあ
る第1の共通電極層と、第2の基板にあるピクセル電極及び第2の共通電極層との両方の
間に電界を発生させる手段と、を含む高速応答性及び広視野角を有する表示装置が開示さ
れている(特許文献1参照)
【0005】
また、FFS駆動方式の液晶表示装置として、2対の電極を用いて液晶を駆動させ高速
応答が可能な液晶表示装置が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2006-523850号公報
【文献】国際公開第2013/001979号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された液晶駆動装置においては、広視野角化及び高速応答化を実現す
るために、3つの電極を用い液晶分子を制御している。しかしながら、高速応答化が達成
できたとしても、上記3つの電極を別々に駆動させる必要があるため、表示装置の消費電
力が増加してしまう。
【0008】
また、特許文献2に開示された液晶駆動装置においては、2対の電極、別言すると4つ
の電極によって液晶を駆動させる必要があるため、少なくとも4つの電源線が必要となり
、電源線が増加してしまうといった課題がある。また、電源線の増加に伴い、液晶に印加
する電圧の駆動方法または制御方法が複雑になり、さらに電源線の増加に伴い消費電力が
増加するといった課題がある。
【0009】
上述したような技術的背景のもと、本発明の一態様は、消費電力の低減を実現すること
ができる液晶表示装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、
透過率の変動の低減を実現することができる液晶表示装置を提供することを課題の一つと
する。または、本発明の一態様は、表示輝度の変動の低減を実現することができる液晶表
示装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、表示のちらつき
の低減を実現することができる液晶表示装置を提供することを課題の一つとする。または
、本発明の一態様は、目にやさしい表示を実現することができる液晶表示装置を提供する
ことを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、目の疲労に対する影響の低減を実
現することができる液晶表示装置を提供することを課題の一つとする。
【0010】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課
題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、
図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る液晶表示装置では、画像信号の画素部への書き込みが停止した後
も、画素部における画像の表示を維持するために、オフ電流が極めて小さい絶縁ゲート電
界効果型トランジスタ(以下、単にトランジスタとする。)を、画素に設ける。上記トラ
ンジスタを、画素が有する液晶素子への電圧の供給を制御するための素子として用いるこ
とで、液晶素子への電圧の供給が維持される期間を長く確保することができる。よって、
静止画のように、連続する幾つかのフレーム期間に渡って、画素部に同じ画像情報を有す
る画像信号が繰り返し書き込まれる場合などは、画像信号の画素部への書き込みを一時的
に停止することで、駆動周波数を低くする、言い換えると一定期間内における画像信号の
書き込み回数を少なくしても、画像の表示を維持することができる。
【0012】
さらに、本発明の一態様に係る液晶表示装置では、液晶素子が画素電極、第1の共通電
極、及び第2の共通電極の3つの電極により電界が加えられる液晶層を有する。また、該
液晶層が、ネガ型の液晶材料を用い、該液晶材料の固有抵抗率が1.0×1013Ω・c
m以上1.0×1016Ω・cm以下である。このような構成とすることによって、一定
期間内における画像信号の書き込み回数を少なくしても、透過率の変動が少なく、液晶表
示装置の視認者にとって、画像のちらつきが抑制された液晶表示装置とすることができる
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様により、消費電力の低減を実現することができる液晶表示装置を提供す
ることができる。また、本発明の一態様により、透過率の変動の低減を実現することがで
きる液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様の液晶表示装置の画素構成を説明する回路図及び断面図。
図2】ポジ型の液晶材料とネガ型の液晶材料を用いた場合の極性による透過率を説明する図。
図3】本発明の一態様の液晶表示装置のパネルの構成例を説明するブロック図。
図4】本発明の一態様の液晶表示装置の構成を説明するブロック図。
図5】本発明の一態様の液晶表示装置の画素を説明する上面図。
図6】本発明の一態様の液晶表示装置の画素を説明する断面図。
図7】本発明の一態様の液晶表示装置の画素の作製方法を説明する断面図。
図8】本発明の一態様の液晶表示装置の画素の作製方法を説明する断面図。
図9】本発明の一態様の液晶表示装置に用いることのできるトランジスタの断面図及び酸化物半導体のエネルギーバンドを説明する図。
図10】本発明の一態様の液晶表示装置の画素を説明する上面図。
図11】本発明の一態様の液晶表示装置の画素を説明する断面図。
図12】本発明の一態様の液晶表示装置の画素の作製方法を説明する断面図。
図13】本発明の一態様の液晶表示装置の画素の作製方法を説明する断面図。
図14】本発明の一態様の液晶表示装置を用いることのできる電子機器を説明する図。
図15】実施例の試料構造を説明する断面図。
図16】実施例の試料の透過率を説明する図。
図17】実施例の試料の透過率を説明する図。
図18】実施例の試料の透過率を説明する図。
図19】実施例の試料の透過率を説明する図。
図20】実施例の試料の透過率を説明する図。
図21】実施例の試料の透過率を説明する図。
図22】実施例の計算に用いた液晶表示装置の構成を説明する断面図。
図23】実施例の透過率の計算結果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発
明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
なお、本明細書において液晶表示装置とは、液晶素子が各画素に形成されたパネルと、
駆動回路またはコントローラを含むIC等を当該パネルに実装した状態にあるモジュール
とを、その範疇に含む。さらに、本発明の一態様に係る液晶表示装置は、当該液晶表示装
置を作製する過程における、液晶素子が完成する前の一形態に相当する素子基板をその範
疇に含む。
【0017】
また、本発明の一態様に係る液晶表示装置には、指またはスタイラスなどが指し示した
位置を検出し、その位置情報を含む信号を生成することができる位置入力装置であるタッ
チパネルが、構成要素に含まれていても良い。
【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態においては、本発明の一態様の液晶表示装置の画素の構成例について、図
1を用いて説明を行う。
【0019】
〈画素の構成例〉
図1(A)に、本発明の一態様に係る液晶表示装置の、画素の構成例を示す。図1(A
)に示す画素100は、液晶素子111と、液晶素子111への画像信号の供給を制御す
るトランジスタ112と、容量素子113と、を有する。
【0020】
液晶素子111は、画素電極と、第1の共通電極と、第2の共通電極と、画素電極、第
1の共通電極、及び第2の共通電極の間に電圧が印加される液晶材料を含んだ液晶層と、
を有している。
【0021】
また、図1(A)において、液晶素子111は、画素電極と第1の共通電極の間に電圧
が印加される領域を液晶素子111aとして、画素電極と第2の共通電極の間に電圧が印
加される領域を液晶素子111bとして、第1の共通電極と第2の共通電極の間に電圧が
印加される領域を液晶素子111cとして、それぞれ図示している。
【0022】
また、図1(A)では、液晶素子111がFFS(Fringe Field Swi
tching)モードである場合を例示しており、画素電極と第1の共通電極とが絶縁膜
を挟んで重なる領域を有している。該領域は、画素電極と第1の共通電極の間に印加され
る電圧VLCを保持するための容量としての機能を有する。図1(A)において、該領域
の容量を容量素子113として、図示している。
【0023】
トランジスタ112は、配線SLに入力される画像信号の電位を、液晶素子111の画
素電極に与えるか否かを制御する。液晶素子111の第1の共通電極には、所定の基準電
位VCOM1が与えられる。
【0024】
以下、液晶素子111と、トランジスタ112と、容量素子113との、具体的な接続
関係について説明する。
【0025】
なお、本明細書において接続とは電気的な接続を意味しており、電流、電圧または電位
が、供給可能、或いは伝送可能な状態に相当する。従って、接続している状態とは、直接
接続している状態を必ずしも指すわけではなく、電流、電圧または電位が、供給可能、或
いは伝送可能であるように、配線、抵抗、ダイオード、トランジスタなどの回路素子を介
して間接的に接続している状態も、その範疇に含む。
【0026】
また、回路図上は独立している構成要素どうしが接続されている場合であっても、実際
には、例えば配線の一部が電極として機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素
の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において接続とは、このような、一の導電
膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0027】
また、トランジスタが有するソースとドレインは、トランジスタのチャネル型及び各端
子に与えられる電位の高低によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、nチャネル型
トランジスタでは、低い電位が与えられる端子がソースと呼ばれ、高い電位が与えられる
端子がドレインと呼ばれる。また、pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられ
る端子がドレインと呼ばれ、高い電位が与えられる端子がソースと呼ばれる。本明細書で
は、便宜上、ソースとドレインとが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続
関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係に従ってソースとドレインの呼び
方が入れ替わる。
【0028】
また、トランジスタのソースとは、活性層として機能する半導体膜の一部であるソース
領域、或いは上記半導体膜に接続されたソース電極を意味する。同様に、トランジスタの
ドレインとは、上記半導体膜の一部であるドレイン領域、或いは上記半導体膜に接続され
たドレイン電極を意味する。また、ゲートはゲート電極を意味する。
【0029】
図1(A)に示す画素100では、トランジスタ112のゲートが配線GLに電気的に
接続されている。トランジスタ112のソース及びドレインの一方は、配線SLに接続さ
れ、トランジスタ112のソース及びドレインの他方は、液晶素子111の画素電極に接
続されている。そして、容量素子113は一対の電極を有しており、一方の電極は液晶素
子111の画素電極に電気的に接続されており、他方の電極には所定の電位VCOM1
与えられる。また、図1(A)に示す画素100では、液晶素子111の第2の共通電極
は、配線CLに接続されており、配線CLには、VCOM2が与えられている。
【0030】
図1(A)では、画素100において、画像信号の画素100への入力を制御するスイ
ッチとして、1つのトランジスタ112を用いる場合を例示している。しかし、画素10
0において、複数のトランジスタを1つのスイッチとして機能させても良い。
【0031】
そして、本発明の一態様では、トランジスタ112のオフ電流が極めて小さいものとす
る。上記構成により、液晶素子111に与えられる電圧が保持される期間を長く確保する
ことができる。そのため、静止画のように、連続する幾つかのフレーム期間に渡って、画
素100に同じ画像情報を有する画像信号が書き込まれる場合などは、駆動周波数を低く
する、言い換えると一定期間内における画素100への画像信号の書き込み回数を少なく
しても、階調の表示を維持することができる。例えば、高純度化された酸化物半導体をチ
ャネル形成領域に含むトランジスタ112を用いることで、画像信号の書き込みの間隔を
10秒以上、好ましくは30秒以上、さらに好ましくは1分以上にすることができる。そ
して、画像信号が書き込まれる間隔を長くすればするほど、消費電力をより低減すること
ができる。
【0032】
トランジスタ112に、シリコンまたはゲルマニウムよりもバンドギャップが大きく、
真性キャリア密度が低い酸化物半導体などの半導体を用いることで、トランジスタ112
の耐圧性を高め、オフ電流を著しく小さくすることができる。よって、通常のシリコンや
ゲルマニウムなどの半導体で形成されたトランジスタを用いた場合に比べて、トランジス
タ112の劣化を防ぎ、液晶素子111に保持されている電圧を維持することができる。
【0033】
なお、トランジスタ112を介してリークする電荷の量が少なくても、幾つかの要因に
より、画像信号の書き込みが終了した後に、液晶層にかかる電界が変化することがある。
【0034】
例えば、液晶層にかかる電界を変化させる一因として、配向膜へのイオン性の不純物の
吸着が挙げられる。液晶材料の中にはイオン性の不純物が含まれるが、当該不純物が配向
膜に吸着すると、残留DCと呼ばれる電界が発生する場合がある。不純物の吸着に起因す
る残留DCが発生すると、液晶層にかかる電界が変化するので、液晶素子111の透過率
も変化してしまう。そして、直流の電圧が液晶素子に印加される時間が長いほど残留DC
は強くなるので、本発明の一態様のように、画像信号の書き込みの間隔が長い駆動方法の
場合、フレーム周波数が60Hz程度の通常の駆動方法に比べて、透過率の変化が大きく
なりやすい。
【0035】
また、液晶層にかかる電界を変化させる別の一因として、液晶素子111に流れるリー
ク電流が挙げられる。液晶素子111に電圧が印加されているとき、画素電極と第1の共
通電極の間の液晶層を介して、または画素電極と第2の共通電極の間の液晶層を介して、
僅かにリーク電流が流れるため、時間の経過に伴い、液晶素子111に印加される電圧の
絶対値が小さくなる。よって、本発明の一態様のように、画像信号の書き込みの間隔が長
い駆動方法の場合、例えば、フレーム周波数が60Hz程度の通常の駆動方法に比べて、
透過率の変化が大きくなりやすい。
【0036】
しかしながら、本発明の一態様の液晶表示装置は、液晶素子111に用いる液晶層が、
ネガ型の液晶材料を用い、該液晶材料の固有抵抗率が1.0×1013Ω・cm以上1.
0×1016Ω・cm以下である。さらに好ましくは、該液晶材料の固有抵抗率が1.0
×1014Ω・cm以上1.0×1016Ω・cm以下である。なお、本明細書等におけ
る液晶材料の固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0037】
液晶素子111に用いる液晶層にネガ型の液晶材料を用いることによって、液晶素子1
11の透過率の変動を抑制することができる。また、該液晶材料の固有抵抗率を上記範囲
とすることによって、液晶素子111に流れるリーク電流を低減することができる。
【0038】
液晶素子111は、液晶層に印加される極性(正(+)の極性または負(-)の極性)
によって透過率の差が生じる。例えば、液晶素子111が有する液晶層の材料として、ポ
ジ型の液晶材料と、ネガ型の液晶材料を用いた場合において、極性による透過率に差が生
じうる。ここで、ポジ型の液晶材料とネガ型の液晶材料を用いた場合の極性による透過率
について、図2を用いて説明を行う。なお、ポジ型の液晶材料は正の誘電異方性を持つ液
晶材料であり、ネガ型の液晶材料は負の誘電異方性を持つ液晶材料である。
【0039】
図2(A)は、ポジ型の液晶材料(メルク株式会社製:MLC-7030)を用いた場
合の電圧-透過率特性を、図2(B)は、ネガ型の液晶材料(メルク株式会社製:MLC
-3006)を用いた場合の電圧-透過率特性を、それぞれ示している。また、図2(A
)に示すポジ型の液晶材料の物性値としては、誘電率の異方性Δεが3.8であり、且つ
抵抗率ρが4.9×1014Ω・cmである。また、図2(B)に示すネガ型の液晶材料
の物性値としては、誘電率の異方性Δεが-3.0であり、且つ抵抗率ρが1.8×10
13Ω・cmである。なお、図2(A)、(B)に示す電圧-透過率特性において、横軸
は電圧(V)を、縦軸は透過率(%)を、それぞれ表している。また、図2(A)、(B
)に示す電圧-透過率特性において、実線は正(+)の極性を印加した場合の透過率を、
破線は負(-)の極性を印加した場合の透過率を、それぞれ表している。
【0040】
図2(A)、(B)より、ネガ型の液晶材料を用いる場合の方が、液晶層に印加される
極性による透過率の差が小さいことがわかる。これは、フレクソエレクトリック効果に起
因すると考えられる。フレクソエレクトリック効果とは、主に分子形状に起因し、配向歪
みにより分極が発生する現象である。
【0041】
例えば、ネマチック液晶にsplayやbendの配向歪みを与えることで自発分極が
発生する。本来、液晶分子そのものにとって印加された電圧の極性の区別はないが、自発
分極は電界の極性により反対の挙動を示そうとする。このため、極性による透過率変動が
生じると考えられる。フレクソエレクトリック効果により発生するフレクソエレクトリッ
ク分極Pは以下の数式(1)で表される。
【0042】
【数1】
【0043】
ここでeは主に分子形状に起因したフレクソ係数、nは液晶のダイレクターであり、分
極はフレクソ係数と配向歪みの積として表現される。
【0044】
このことから分極の発生を抑え、ちらつきを減少するためにはフレクソ係数または配向
歪みを小さくすることが好ましい。
【0045】
図2(A)、(B)より、ネガ型の液晶材料を用いることによって、上述したフレクソ
エレクトリック効果に起因する配向歪みを小さくできる。
【0046】
また、本発明の一態様の液晶表示装置は、画素電極と、第1の共通電極と、第2の共通
電極と、を用い液晶素子111の駆動を制御する。液晶素子111の駆動方法として、図
1(B)を用いて、以下説明を行う。
【0047】
図1(B)は、本発明の一態様の液晶表示装置の液晶素子111の一例を示す断面図に
相当する。
【0048】
液晶素子111は、基板120上の第1の共通電極122と、第1の共通電極122上
の絶縁層124と、絶縁層124上の画素電極126と、絶縁層124及び画素電極12
6上の液晶層134と、液晶層134上の第2の共通電極132と、第2の共通電極13
2上の基板130と、を有する。また、図1(B)に示すように、画素電極126は絶縁
層124と接し、絶縁層124は、第1の共通電極122と接している。なお、第1の共
通電極122、絶縁層124、及び画素電極126は、基板120上に形成され、第2の
共通電極132は、基板130の下方に形成される。すなわち、液晶層134は、基板1
20と基板130に挟持されている。また、画素電極126は、絶縁層124上に開口部
(スリット)が形成されているため、図1(B)においては、画素電極126が複数図示
されている。
【0049】
また、図1(B)に示す断面図において、液晶素子111aは、第1の共通電極122
と、画素電極126と、液晶層134と、により形成されている。第1の共通電極122
と画素電極126間に電圧を印加することによって、液晶層134の配向状態を制御する
ことができる。また、液晶素子111bは、第2の共通電極132と、画素電極126と
、液晶層134と、により形成されている。第2の共通電極132と画素電極126間に
電圧を印加することによって、液晶層134の配向状態を制御することができる。また、
液晶素子111cは、第1の共通電極122と第2の共通電極132間に電圧を印加する
ことによって、液晶層134の配向状態を制御することができる。また、図1(A)に示
す容量素子113は、第1の共通電極122と、絶縁層124と、画素電極126と、に
より形成されている。絶縁層124は、容量素子113の誘電体層としての機能を有する
【0050】
また、図1(B)に示す断面図において、液晶層134に印加される電圧は、矢印で模
式的に表している。
【0051】
例えば、画素電極126には5.5Vを、第1の共通電極122には0Vを、第2の共
通電極132には0.8Vを、それぞれ印加することで、図1(B)に示す液晶素子11
1を駆動させることができる。この場合、第1の共通電極122と第2の共通電極132
間の電位差は、0.8Vであるため、図1(B)に示す液晶素子111cの電界の影響は
小さい。一方で、第1の共通電極122と画素電極126間には、5.5Vの電位差があ
り、画素電極126と第2の共通電極132間には、4.7Vの電位差がある。よって、
主に液晶層134の液晶の配向方向は、第1の共通電極122と画素電極126間の電位
差によって制御され、さらに、第2の共通電極132に印加される電位により、第1の共
通電極122と画素電極126による液晶素子111の配向制御をアシストすることがで
きる。したがって、第1の共通電極122と第2の共通電極132は、各々独立した電源
線に接続し、各々独立した電位で制御できると好ましい。
【0052】
このように、第1の共通電極122と画素電極126との電位差より、第1の共通電極
122と第2の共通電極132との電位差を小さくすることで、液晶層134の透過率の
変化を小さく抑えることができる。
【0053】
また、液晶素子111が有する液晶層134には、ネガ型の液晶材料を用い、且つ抵抗
率が1.0×1013Ω・cm以上1.0×1016Ω・cm以下とすると好ましい。
【0054】
このように、液晶層134を第1の共通電極122、画素電極126、及び第2の共通
電極132の3つの電極により制御するとともに、ネガ型の液晶を用いることによって、
液晶層134の透過率の変化を小さく抑えることができ、フリッカが視認されるのを防ぐ
ことができる。これは、本発明の一態様でしかなし得ない優れた効果である。
【0055】
また、本発明の一態様に係る液晶表示装置では、液晶素子111の電圧VLC1を保持
する機能は、容量素子113で賄うことができるため、容量素子113の面積を小さく抑
えることができる。すなわち、容量素子113の面積を小さく抑えつつ、フリッカが視認
されるのを抑制することができる。そのため、画素の高精細化を図ることができ、なおか
つ、画素に画像信号が書き込まれる間隔を長くすることができるので、目の疲労が軽減さ
れる、目に優しい液晶表示装置を実現することができる。
【0056】
〈パネルの構成例〉
次いで、液晶表示装置の一形態に相当する、パネルの構成例について説明する。
【0057】
図3に示すパネル230には、画素部231に、複数の画素100と、画素100を行
毎に選択するための、配線GL1乃至配線GLy(yは自然数)で示される配線GLと、
選択された画素100に画像信号を供給するための、配線SL1乃至配線SLx(xは自
然数)で示される配線SLとが、設けられている。配線GLへの信号の入力は、駆動回路
232により制御されている。配線SLへの画像信号の入力は、駆動回路233により制
御されている。複数の画素100は、配線GLの少なくとも一つと、配線SLの少なくと
も一つとに、それぞれ接続されている。
【0058】
なお、画素部231に設けられる配線の種類及びその数は、画素100の構成、数及び
配置によって決めることができる。具体的に、図3に示す画素部231の場合、x列×y
行の画素100がマトリクス状に配置されており、配線SL1乃至配線SLx、配線GL
1乃至配線GLyが、画素部231内に配置されている場合を例示している。
【0059】
本発明の一態様では、間欠的に駆動回路232及び駆動回路233を動作状態とするこ
とで、画像の表示を維持しつつ、画像信号の画素部231への書き込み回数を大幅に削減
することができる。例えば、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に含むトラ
ンジスタ112を用いる場合、フレーム期間の長さを10秒以上、好ましくは30秒以上
、さらに好ましくは1分以上にすることができる。よって、駆動回路232及び駆動回路
233の駆動周波数を大幅に低減することができ、液晶表示装置の消費電力を低減するこ
とができる。
【0060】
なお、本発明の一態様では、駆動回路233から配線SL1乃至配線SLxに、画像信
号を順に入力する点順次駆動を用いていても良いし、駆動回路233から配線SL1乃至
配線SLxに一斉に画像信号を入力する線順次駆動を用いていても良い。或いは、本発明
の一態様に係る液晶表示装置は、複数の配線SLごとに順に、画像信号を入力する駆動方
法を用いていても良い。
【0061】
また、配線GLの選択は、プログレッシブ方式を用いても良いし、インターレース方式
を用いても良い。
【0062】
なお、液晶は、電圧が印加されてからその透過率が収束するまでの応答時間が、一般的
に十数msec程度である。よって、液晶の応答の遅さが動画のぼやけとして視認されや
すい。そこで、本発明の一態様では、液晶素子111に印加する電圧を一時的に大きくし
て液晶の配向を速く変化させるオーバードライブ駆動を用いるようにしても良い。オーバ
ードライブ駆動を用いることで、液晶の応答速度を上げ、動画のぼやけを防ぎ、動画の画
質を改善することができる。
【0063】
また、トランジスタ112が非導通状態になった後においても、液晶素子111の透過
率が収束せずに変化し続けると、液晶の比誘電率が変化するため、液晶素子111の保持
する電圧が変化しやすい。特に、本発明の一態様のように、液晶素子111に接続される
容量素子113の容量値が小さい場合、上述した液晶素子111の保持する電圧の変化は
顕著に起こりやすい。しかし、上記オーバードライブ駆動を用いることで、応答時間を短
くすることができるので、トランジスタ112が非導通状態になった後における液晶素子
111の透過率の変化を小さくすることができる。したがって、液晶素子111に並列で
接続される容量素子113の容量値が小さい場合でも、トランジスタ112が非導通状態
になった後に、液晶素子111の保持する電圧が変化するのを防ぐことができる。
【0064】
さらに液晶素子111に用いる液晶材料が、ネガ型の液晶材料且つ抵抗率が1.0×1
13Ω・cm以上1.0×1016Ω・cm以下であるため、トランジスタ112が非
導通状態になった後に、液晶素子111の保持する電圧が変化するのを防ぐことができる
【0065】
〈液晶表示装置の構成例〉
次いで、本発明の一態様に係る液晶表示装置の構成例について説明する。
【0066】
図4に、本発明の一態様に係る液晶表示装置の構成を、一例としてブロック図で示す。
図4に示す液晶表示装置240は、画素100を画素部231に複数有するパネル230
と、コントローラ241と、電源回路247とを有する。さらに、図4に示す液晶表示装
置240は、入力装置242と、CPU243と、画像処理回路244と、画像メモリ2
45とを有する。また、図4に示す液晶表示装置240は、パネル230に、駆動回路2
32と、駆動回路233とを有する。
【0067】
なお、コントローラ241は、駆動回路232や駆動回路233などの動作を制御する
各種の駆動信号を、パネル230に供給する機能を有する。駆動信号には、駆動回路23
3の動作を制御する駆動回路233用のスタートパルス信号、駆動回路233用のクロッ
ク信号、駆動回路232の動作を制御する駆動回路232用のスタートパルス信号、駆動
回路232用のクロック信号などが含まれる。
【0068】
入力装置242は、液晶表示装置240が有するCPU243に、情報や命令を与える
機能を有する。例えば、入力装置242から、パネル230を動作状態から停止状態に移
行させるための命令、或いは、画素部231を停止状態から動作状態に移行させるための
命令を、CPU243に与えることができる。入力装置242として、キーボード、マウ
ス、タッチパネルなどを用いることができる。
【0069】
CPU243は、入力装置242から入力された命令をデコードし、液晶表示装置24
0が有する各種回路の動作を統括的に制御することで、当該命令を実行する機能を有する
【0070】
例えば、入力装置242から、画素部231を動作状態から停止状態に移行させる命令
が送られてきた場合、CPU243は、電源回路247から画素部231への電源電圧V
pの供給を停止させ、なおかつ、パネル230への駆動信号の供給を停止させるように、
コントローラ241に命令を出す。
【0071】
或いは、入力装置242から、画素部231を停止状態から動作状態に移行させる命令
が送られてきた場合、CPU243は、電源回路247から画素部231への電源電圧V
pの供給を再開させるように、なおかつ、パネル230への駆動信号の供給を再開させる
ように、コントローラ241に命令を出す。
【0072】
画像メモリ245は、液晶表示装置240に入力された画像情報を有するデータ246
を、記憶する機能を有する。なお、図4では、画像メモリ245を1つだけ液晶表示装置
240に設ける場合を例示しているが、複数の画像メモリ245が液晶表示装置240に
設けられていても良い。例えば、赤、青、緑などの色相にそれぞれ対応する3つのデータ
246により、画素部231にフルカラーの画像が表示される場合、各色相のデータ24
6に対応した画像メモリ245を、それぞれ設けるようにしても良い。
【0073】
画像メモリ245には、例えばDRAM(Dynamic Random Acces
s Memory)、SRAM(Static Random Access Memo
ry)等の記憶回路を用いることができる。或いは、画像メモリ245に、VRAM(V
ideo RAM)を用いても良い。
【0074】
画像処理回路244は、コントローラ241からの命令に従い、データ246の画像メ
モリ245への書き込みと、データ246の画像メモリ245からの読み出しを行い、デ
ータ246から画像信号を生成する機能を有する。
【0075】
電源回路247は、電源電圧Vpをパネル230に供給する機能の他に、電位VCOM
1及び電位VCOM2を画素100に供給する機能を有する。
【0076】
〈画素の上面図〉
次いで、図1(A)に示す画素100の上面図の一例を図5に示す。なお、図5では、
画素100の上面図を明確にするために、ゲート絶縁膜などの構成要素の一部を省略して
図示している。また、図5に示す一点鎖線A1-A2間、及び一点鎖線A3-A4間の切
断面に相当する断面図を図6に示す。
【0077】
図5及び図6に示す画素100は、絶縁表面を有する基板302上に、トランジスタ1
12のゲートとしての機能と、配線GLとしての機能を有する導電膜304が設けられて
いる。また、基板302上には、容量素子113の電極としての機能と、第1の共通電極
としての機能とを有する第1の共通電極318が設けられている。すなわち、第1の共通
電極318には、電位VCOM1が供給される。
【0078】
また、導電膜304を覆うように、基板302上には絶縁膜306が設けられている。
そして、絶縁膜306を間に挟んで導電膜304と重なる位置に、トランジスタ112の
チャネル形成領域として機能する酸化物半導体膜308が設けられている。酸化物半導体
膜308上には、導電膜310、312が設けられている。また、導電膜310、312
と同一工程で形成された導電膜313が絶縁膜306上に設けられている。導電膜310
は、配線SLとしての機能と、トランジスタ112のソースまたはドレインとしての機能
とを有する。導電膜312は、トランジスタ112のソースまたはドレインとしての機能
を有する。また、導電膜313は、容量線としての機能を有する。
【0079】
また、絶縁膜306、酸化物半導体膜308、及び導電膜310、312、313上に
は、絶縁膜314が設けられている。そして、絶縁膜314上には、平坦化膜としての機
能を有する絶縁膜316が設けられている。また、絶縁膜314、316には、導電膜3
12に達する開口部360が設けられている。また絶縁膜314、316には、導電膜3
13に達する開口部362が設けられている。
【0080】
絶縁膜316上には、第1の共通電極318が設けられている。第1の共通電極318
は、開口部362を介して、導電膜313と接続されている。また、絶縁膜316及び第
1の共通電極318上には、絶縁膜320が設けられており、絶縁膜320上において第
1の共通電極318と重なる位置には画素電極322が設けられている。絶縁膜320に
は、開口部360と重なる位置に開口部364を有しており、開口部360、364を介
して導電膜312と画素電極322が接続されている。なお、画素電極322は、図5
上面図に示すように、開口部(スリット)を有している。また、絶縁膜320及び画素電
極322上には配向膜324が設けられている。
【0081】
また、基板302と対峙するように、基板330が設けられている。基板330の下方
には、可視光を遮る機能を有する遮光膜332と、特定の波長範囲の可視光を透過する有
色膜334と、遮光膜332及び有色膜334に接する絶縁膜336と、絶縁膜336に
接する第2の共通電極338と、第2の共通電極338に接する配向膜340と、が設け
られている。絶縁膜336は、遮光膜332及び有色膜334の表面の形状が、第2の共
通電極338または配向膜340の平坦性を損なうのを抑制する機能を有する。なお、絶
縁膜336は設けない構成としてもよい。
【0082】
そして、基板302と基板330の間には、配向膜324と配向膜340に挟まれるよ
うに、液晶材料を含む液晶層350が設けられている。液晶素子111は、少なくとも第
1の共通電極318、絶縁膜320、画素電極322、第2の共通電極338、及び液晶
層350を有する。なお、液晶層350は、ネガ型の液晶材料を用い、液晶材料の固有抵
抗率が1.0×1013Ω・cm以上1.0×1016Ω・cm以下である。
【0083】
〈作製方法〉
次いで、図6に示す画素の作製方法の一例について、図7及び図8を用いて説明を行う
【0084】
図7(A)に示すように、基板302上に導電膜を形成した後、上記導電膜をエッチン
グ等により形状を加工することで、導電膜304を形成する。次に、導電膜304上に絶
縁膜306を形成する。次に、絶縁膜306上に酸化物半導体膜を形成した後、該酸化物
半導体膜をエッチング等により形状を加工し、導電膜304と重なる位置に島状に分離さ
れた酸化物半導体膜308を形成する。
【0085】
基板302としては、後の作製工程において耐えうる程度の耐熱性を有する基板が望ま
しく、例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等が用いられる
【0086】
導電膜304としては、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イ
ットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタル及びタングステンを
一種以上含む導電性材料でなる膜を1層または2層以上積層させて用いるとよい。例えば
、導電膜304として、窒化タングステン膜上に銅膜を積層した導電膜や、単層のタング
ステン膜を用いることができる。
【0087】
絶縁膜306としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒
化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化
イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム及び酸
化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層させて用いればよい。
【0088】
例えば、2層構造の絶縁膜306とする場合、1層目を窒化シリコン膜とし、2層目を
酸化シリコン膜とした多層膜とすればよい。2層目の酸化シリコン膜は酸化窒化シリコン
膜にすることができる。また、1層目の窒化シリコン膜を窒化酸化シリコン膜とすること
ができる。
【0089】
酸化シリコン膜は、欠陥密度の小さい酸化シリコン膜を用いると好ましい。具体的には
、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)にてg
値が2.001の信号に由来するスピンのスピン密度が3×1017spins/cm
以下、好ましくは5×1016spins/cm以下である酸化シリコン膜を用いる。
酸化シリコン膜は、過剰に酸素を有する酸化シリコン膜を用いると好ましい。窒化シリコ
ン膜は水素及びアンモニアの放出量が少ない窒化シリコン膜を用いる。水素、アンモニア
の放出量は、TDS(Thermal Desorption Spectroscop
y:昇温脱離ガス分光法)分析にて測定すればよい。
【0090】
酸化物半導体膜308に用いることのできる材料については、実施の形態2に詳細に記
載する。また、酸化物半導体膜308として用いる酸化物半導体膜に水素が多量に含まれ
ると、酸化物半導体と水素が結合することによって、水素の一部がドナーとなり、キャリ
アである電子を生じてしまう。これにより、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向
にシフトしてしまう。そのため、酸化物半導体膜の形成後において、脱水化処理(脱水素
化処理)を行い酸化物半導体膜から、水素、又は水分を除去して不純物が極力含まれない
ようにすることが好ましい。
【0091】
なお、酸化物半導体膜への脱水化処理(脱水素化処理)によって、酸化物半導体膜から
酸素が減少してしまうことがある。よって、酸化物半導体膜への脱水化処理(脱水素化処
理)によって増加した酸素欠損を補填するため酸素を酸化物半導体膜に加える処理を行う
ことが好ましい。
【0092】
このように、酸化物半導体膜は、脱水化処理(脱水素化処理)により、水素または水分
が除去され、加酸素化処理により酸素欠損を補填することによって、i型(真性)化また
はi型に限りなく近く実質的にi型(真性)である酸化物半導体膜とすることができる。
【0093】
次に、図7(B)に示すように、絶縁膜306及び酸化物半導体膜308上に導電膜を
形成した後、当該導電膜の形状をエッチング等により加工することにより、酸化物半導体
膜308に接する導電膜310、312を形成する。また、導電膜310、312の形成
の工程と同じ工程で絶縁膜306上に導電膜313を形成する。
【0094】
導電膜310、312、313としては、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、ニ
ッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングス
テンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として
用いることができる。例えば、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タング
ステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に
銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタ
ン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化
チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン
膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上
にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジ
ウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。また、導電膜は、例え
ば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0095】
次に、図7(C)に示すように、絶縁膜306、酸化物半導体膜308、及び導電膜3
10、312、313上に絶縁膜314を形成する。
【0096】
絶縁膜314としては、例えば、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置
された基板を180℃以上400℃以下、さらに好ましくは200℃以上370℃以下に
保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を30Pa以上250Pa以
下、さらに好ましくは40Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高
周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0097】
絶縁膜314の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いる
ことが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリ
シラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二
酸化窒素等がある。
【0098】
本実施の形態では、絶縁膜314として、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜の積層構造とす
る。例えば、第1の絶縁膜として、流量20sccmのシラン及び流量3000sccm
の一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を40Pa、基板温度を220℃とし、2
7.12MHzの高周波電源を用いて100Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプ
ラズマCVD法により、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。なお、プラズマ
CVD装置は電極面積が6000cmである平行平板型のプラズマCVD装置であり、
供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると1.6×10-2W/c
である。当該条件により、酸素を透過する酸化窒化シリコン膜を形成することができ
る。
【0099】
第2の絶縁膜は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を1
80℃以上260℃以下、さらに好ましくは180℃以上230℃以下に保持し、処理室
に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、さらに好
ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/
cm以上0.5W/cm以下、さらに好ましくは0.25W/cm以上0.35W
/cm以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコ
ン膜を形成する。
【0100】
第2の絶縁膜の成膜条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周波電
力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し
、原料ガスの酸化が進むため、第2の絶縁膜中における酸素含有量が化学量論的組成より
も多くなる。しかしながら、基板温度が、上記温度であると、シリコンと酸素の結合力が
弱いため、加熱により酸素の一部が脱離する。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よ
りも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を形成することがで
きる。
【0101】
本実施の形態では、第2の絶縁膜として、流量160sccmのシラン及び流量400
0sccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を22
0℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1500Wの高周波電力を平行平板電
極に供給したプラズマCVD法により、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成する
。なお、プラズマCVD装置は電極面積が6000cmである平行平板型のプラズマC
VD装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると2.5
×10-1W/cmである。
【0102】
次いで、少なくとも絶縁膜314を形成した後に加熱処理を行い、絶縁膜314に含ま
れる酸素を酸化物半導体膜308に移動させ、酸化物半導体膜308の酸素欠損を補填す
ることが好ましい。
【0103】
次に、図7(D)に示すように、絶縁膜314の所望の領域を加工し、導電膜312に
達する開口部360と、導電膜313に達する開口部362を形成する。
【0104】
開口部360、362の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法またはウエッ
トエッチング法を用いる。また、ドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わ
せて開口部360、362を形成してもよい。
【0105】
次に、図8(A)に示すように、開口部を有する絶縁膜316を形成する。絶縁膜31
6は、開口部360、362に対応する位置に開口部を有する。絶縁膜316は、第1の
共通電極318の下地となる膜であり、トランジスタや導電膜等により、第1の共通電極
318に凹凸が形成されるのを防ぐ機能を有する。すなわち、平坦化膜としての機能を有
する。絶縁膜316には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂等を用いることができる。
【0106】
次に、図8(B)に示すように、絶縁膜316上に第1の共通電極318を形成する。
その後、絶縁膜316及び第1の共通電極318を覆うように絶縁膜320を形成する。
第1の共通電極318は、開口部362を介して、導電膜313と接続される。
【0107】
第1の共通電極318としては、例えば、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、
酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸
化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化
シリコンを添加したインジウム錫酸化物等を含む導電膜を用いることができる。また、第
1の共通電極318は、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0108】
絶縁膜320としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化
酸化シリコン膜などを用いることができる。とくに、絶縁膜320は、容量素子の誘電体
としての機能と、トランジスタの保護膜としての機能も有するため、絶縁膜としては、窒
化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜が好ましい。
【0109】
絶縁膜320としては、例えば、厚さ50nm以上400nm以下の窒化シリコン膜、
又は窒化酸化シリコン膜等を用いることができる。本実施の形態においては、絶縁膜32
0として、厚さ100nmの窒化シリコン膜を用いる。
【0110】
また、上記窒化シリコン膜は、ブロック性を高めるために、高温で成膜されることが好
ましく、例えば基板温度100℃以上基板の歪み点以下、より好ましくは300℃以上4
00℃以下の温度で加熱して成膜することが好ましい。但し、高温で成膜する場合は、酸
化物半導体膜308から酸素が脱離し、キャリア濃度が上昇する現象が発生することがあ
るため、このような現象が発生しない温度とする。
【0111】
次に、図8(C)に示すように、絶縁膜320に開口部364を形成する。開口部36
4は、絶縁膜316に形成された開口部360に位置する領域に形成される。なお、開口
部364は、導電膜312が露出するように形成する。開口部364の形成方法としては
、開口部360、362に記載の方法を援用することで形成することができる。
【0112】
次に、図8(D)に示すように、絶縁膜320上に画素電極322を形成する。なお、
画素電極322は、開口部360、364を介して導電膜312と接続される。
【0113】
画素電極322は、絶縁膜320上に透明導電膜を形成し、エッチング等により当該透
明導電膜の形状を加工することで形成される。
【0114】
なお、画素電極322としては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タン
グステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタン
を含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコン
を添加したインジウム錫酸化物等を含む導電膜を用いることができる。
【0115】
次に、絶縁膜320及び画素電極322上に配向膜324を形成する(図示しない)。
配向膜324は、ラビング法、光配向法等を用いて形成することができる。
【0116】
以上の工程で基板302上に形成される構造を形成することができる。
【0117】
次に、基板302に対峙して設けられる基板330の下方に形成される構造の作製方法
について、以下説明を行う。
【0118】
まず、基板330を準備する。基板330としては、基板302に示す材料を援用する
ことができる。次に、基板330に接する遮光膜332及び有色膜334を形成する。遮
光膜332及び有色膜334は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、フォ
トリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
【0119】
次に、遮光膜332及び有色膜334に接する絶縁膜336を形成する。絶縁膜336
としては、例えば、アクリル系樹脂等の有機絶縁膜を用いることができる。絶縁膜336
を形成することによって、例えば、有色膜334中に含まれる不純物等を液晶層350側
に拡散することを抑制することができる。
【0120】
次に、絶縁膜336に接する第2の共通電極338を形成する。第2の共通電極338
に用いることのできる導電膜としては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化
タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チ
タンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジ
ウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電
性材料を用いることができる。また、第2の共通電極338に用いることのできる導電層
としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0121】
次に、第2の共通電極338に接する配向膜340を形成する。配向膜340の形成方
法は、配向膜324の形成方法を援用することで形成できる。
【0122】
以上の工程で基板330の下方に形成される構造を形成することができる。
【0123】
その後、基板302と、基板330との間に液晶層350を形成する。液晶層350の
形成方法としては、ディスペンサ法(滴下法)や、基板302と基板330とを貼り合わ
せてから毛細管現象を用いて液晶を注入する注入法を用いることができる。
【0124】
以上の工程で、図6に示す画素を作製することができる。
【0125】
以上、本実施の形態で示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0126】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、本発明の一態様の液晶表示装置に用いることのできる酸化物
半導体膜について説明を行う。
【0127】
電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物が低減され、なおかつ酸素欠
損が低減されることにより高純度化された酸化物半導体(purified OS)は、
i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い。そのため、高純度化された酸化物半導体膜
にチャネル形成領域を有するトランジスタは、オフ電流が著しく小さく、信頼性が高い。
【0128】
具体的に、高純度化された酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタの
オフ電流が小さいことは、いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×
10μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電
圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータア
ナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる
。この場合、トランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電流は、100zA/μm以下
であることが分かる。また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入また
は容量素子から流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測
定を行った。当該測定では、高純度化された酸化物半導体膜を上記トランジスタのチャネ
ル形成領域に用い、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオ
フ電流を測定した。その結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3V
の場合に、数十yA/μmという、さらに小さいオフ電流が得られることが分かった。従
って、高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、オフ
電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく小さい。
【0129】
なお、特に断りがない限り、本明細書でオフ電流とは、nチャネル型トランジスタにお
いては、ドレインをソースとゲートよりも高い電位とした状態において、ソースの電位を
基準としたときのゲートの電位が0以下であるときに、ソースとドレインの間に流れる電
流のことを意味する。或いは、本明細書でオフ電流とは、pチャネル型トランジスタにお
いては、ドレインをソースとゲートよりも低い電位とした状態において、ソースの電位を
基準としたときのゲートの電位が0以上であるときに、ソースとドレインの間に流れる電
流のことを意味する。
【0130】
なお、酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を
含むことが好ましい。また、トランジスタの電気的特性のばらつきを減らすためのスタビ
ライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタ
ビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハ
フニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(
Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を含
むことが好ましい。
【0131】
酸化物半導体の中でもIn-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Zn系酸化物などは、
炭化シリコン、窒化ガリウム、または酸化ガリウムとは異なり、スパッタリング法や湿式
法により電気的特性の優れたトランジスタを作製することが可能であり、量産性に優れる
といった利点がある。また、炭化シリコン、窒化ガリウム、または酸化ガリウムとは異な
り、上記In-Ga-Zn系酸化物は、ガラス基板上に、電気的特性の優れたトランジス
タを作製することが可能である。また、基板の大型化にも対応が可能である。
【0132】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム
(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウ
ム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホ
ルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、
ルテチウム(Lu)のいずれか一種または複数種を含んでいてもよい。
【0133】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、
In-Zn系酸化物、Sn-Zn系酸化物、Al-Zn系酸化物、Zn-Mg系酸化物、
Sn-Mg系酸化物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、In-Ga-Zn系酸
化物(IGZOとも表記する)、In-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Zn系酸化物
、Sn-Ga-Zn系酸化物、Al-Ga-Zn系酸化物、Sn-Al-Zn系酸化物、
In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、I
n-Nd-Zn系酸化物、In-Sm-Zn系酸化物、In-Eu-Zn系酸化物、In
-Gd-Zn系酸化物、In-Tb-Zn系酸化物、In-Dy-Zn系酸化物、In-
Ho-Zn系酸化物、In-Er-Zn系酸化物、In-Tm-Zn系酸化物、In-Y
b-Zn系酸化物、In-Lu-Zn系酸化物、In-Sn-Ga-Zn系酸化物、In
-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Al-Z
n系酸化物、In-Sn-Hf-Zn系酸化物、In-Hf-Al-Zn系酸化物を用い
ることができる。
【0134】
なお、例えば、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを含む酸化物という
意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元
素を含んでいてもよい。In-Ga-Zn系酸化物は、無電界時の抵抗が十分に高くオフ
電流を十分に小さくすることが可能であり、また、移動度も高い。
【0135】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:1.2(5:5
:6)、In:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=3:1:2などの原子数比
のIn-Ga-Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは
、In:Sn:Zn=1:1:1、In:Sn:Zn=2:1:3あるいはIn:Sn:
Zn=2:1:5の原子数比のIn-Sn-Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用
いるとよい。
【0136】
例えば、In-Sn-Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしな
がら、In-Ga-Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を
上げることができる。
【0137】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。
非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC-OS(C Axis Aligned Cry
stalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体
膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
【0138】
ここでは、CAAC-OS膜について説明する。
【0139】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの
結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-
OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体
内に収まる大きさの場合も含まれる。
【0140】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち
結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、C
AAC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0141】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0142】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0143】
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度
で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「
垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。
従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0144】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0145】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS
膜のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピーク
が現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属され
ることから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0146】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。InGaZnOの単結晶酸
化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)
として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面
に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを
56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0147】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0148】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を
行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面ま
たは上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の
形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成
面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0149】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS
膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上
面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部
分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0150】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane
法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現
れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、ZnGaの結晶の(311)面に
帰属されることから、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜中の一部に、Z
nGaの結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近
傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0151】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素
、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリ
コンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸
化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させ
る要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半
径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜
の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不
純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0152】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化
物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによっ
てキャリア発生源となることがある。
【0153】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性また
は実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体
膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当
該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノ
ーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度
真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体
膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる
。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する
時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高
く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定とな
る場合がある。
【0154】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特
性の変動が小さい。
【0155】
CAAC-OS膜は、例えば、多結晶である金属酸化物ターゲットを用い、スパッタリ
ング法によって成膜する。当該ターゲットにイオンが衝突すると、ターゲットに含まれる
結晶領域がa-b面から劈開し、a-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状の
スパッタリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状又はペレット状の
スパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC-OS
膜を成膜することができる。
【0156】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0157】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、処理室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素、及び窒素など)
を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点
が-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0158】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイ
グレーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好まし
くは200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、
平板状又はペレット状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレー
ションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0159】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100
体積%とする。
【0160】
また、酸化物半導体層は、積層構造としてもよい。
【0161】
ここで、図6に示すトランジスタ112に用いる酸化物半導体膜308を、酸化物半導
体膜307及び酸化物半導体膜309の積層構造にした一例について、図9を用いて説明
を行う。
【0162】
また、図9(A)は、トランジスタ112に用いる酸化物半導体膜を、酸化物半導体膜
307及び酸化物半導体膜309の積層構造にした断面構造である。したがって、その他
の構成は、図6に示すトランジスタ112と同じであり、先の説明を参酌することができ
る。
【0163】
酸化物半導体膜307と酸化物半導体膜309は、少なくとも一の同じ構成元素を有す
る金属酸化物を用いることが好ましい。または、酸化物半導体膜307と酸化物半導体膜
309の構成元素を同一とし、両者の組成を異ならせてもよい。
【0164】
酸化物半導体膜307がIn-M-Zn酸化物(MはAl、Ga、Ge、Y、Zr、S
n、La、CeまたはHf)の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパ
ッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ま
しい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Z
n=1:1:1、In:M:Zn=5:5:6(1:1:1.2)、In:M:Zn=3
:1:2が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体膜307の原子数比はそれぞれ、誤
差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナ
ス20%の変動を含む。
【0165】
なお、酸化物半導体膜307がIn-M-Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除い
てのInとMの原子数比率は、好ましくはInが25atomic%以上、Mが75at
omic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomi
c%未満とする。
【0166】
酸化物半導体膜307は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以
上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半
導体を用いることで、トランジスタ112のオフ電流を低減することができる。
【0167】
酸化物半導体膜307の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上1
00nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0168】
酸化物半導体膜309は、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-
M-Zn酸化物(MはAl、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf)であ
り、且つ酸化物半導体膜307よりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近く、代表
的には、酸化物半導体膜309の伝導帯の下端のエネルギーと、酸化物半導体膜307の
伝導帯の下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV
以上、または0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または
0.4eV以下である。即ち、酸化物半導体膜309の電子親和力と、酸化物半導体膜3
07の電子親和力との差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、ま
たは0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4e
V以下である。
【0169】
酸化物半導体膜309が前述の元素MをInより高い原子数比で有することで、以下の
効果を有する場合がある。(1)酸化物半導体膜309のエネルギーギャップを大きくす
る。(2)酸化物半導体膜309の電子親和力を小さくする。(3)外部からの不純物を
遮蔽する。(4)酸化物半導体膜307と比較して、絶縁性が高くなる。また、元素Mは
酸素との結合力が強い金属元素であるため、MをInより高い原子数比で有することで、
酸素欠損が生じにくくなる。
【0170】
酸化物半導体膜309がIn-M-Zn酸化物であるとき、ZnおよびOを除いてのI
nとMの原子数比率は、好ましくは、Inが50atomic%未満、Mが50atom
ic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未満、Mが75atomic
%以上とする。
【0171】
また、酸化物半導体膜307、及び酸化物半導体膜309がIn-M-Zn酸化物(M
はAl、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf)の場合、酸化物半導体膜
307と比較して、酸化物半導体膜309に含まれるMの原子数比が大きく、代表的には
、酸化物半導体膜307に含まれる上記原子と比較して、1.5倍以上、好ましくは2倍
以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子数比である。
【0172】
また、酸化物半導体膜309をIn:M:Zn=x:y:z[原子数比]、酸化
物半導体膜307をIn:M:Zn=x:y:z[原子数比]とすると、y/x
がy/xよりも大きく、好ましくは、y/xがy/xよりも1.5倍以上
である。さらに好ましくは、y/xがy/xよりも2倍以上大きく、より好まし
くは、y/xがy/xよりも3倍以上大きい。このとき、酸化物半導体膜におい
て、yがx以上であると、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタ102に安定し
た電気特性を付与できるため好ましい。ただし、yがxの3倍以上になると、当該酸
化物半導体膜を用いたトランジスタ102の電界効果移動度が低下してしまうため、y
はxの3倍未満であると好ましい。
【0173】
酸化物半導体膜309がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜す
るために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、M>In、更にはZ
n≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子
数比として、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:3、In:G
a:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:3:5、In:Ga:Zn=1:3:6
、In:Ga:Zn=1:3:7、In:Ga:Zn=1:3:8、In:Ga:Zn=
1:3:9、In:Ga:Zn=1:3:10、In:Ga:Zn=1:6:4、In:
Ga:Zn=1:6:5、In:Ga:Zn=1:6:6、In:Ga:Zn=1:6:
7、In:Ga:Zn=1:6:8、In:Ga:Zn=1:6:9、In:Ga:Zn
=1:6:10が好ましい。なお、上記スパッタリングターゲットを用いて成膜された酸
化物半導体膜307、及び酸化物半導体膜309に含まれる金属元素の原子数比はそれぞ
れ、誤差として上記スパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマ
イナス20%の変動を含む。
【0174】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜307のキャリア密度や不純
物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとする
ことが好ましい。
【0175】
酸化物半導体膜309は、後に形成する絶縁膜314を形成する際の、酸化物半導体膜
307へのダメージ緩和膜としても機能する。酸化物半導体膜309の厚さは、3nm以
上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0176】
トランジスタ112に含まれる酸化物半導体膜307において、第14族元素の一つで
あるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体膜307において酸素欠損が増加し、n
型化してしまう。このため、酸化物半導体膜307におけるシリコンや炭素の濃度、また
は酸化物半導体膜309と、酸化物半導体膜307との界面近傍のシリコンや炭素の濃度
(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下
、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0177】
また、酸化物半導体膜307において、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ
金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましく
は2×1016atoms/cm以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、
酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増
大してしまうことがある。このため、酸化物半導体膜307のアルカリ金属またはアルカ
リ土類金属の濃度を低減することが好ましい。
【0178】
また、酸化物半導体膜307に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キ
ャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用
いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜にお
いて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、二次イオン質量分析法
により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm以下にすることが好ましい
【0179】
なお、図9(A)に示すトランジスタ112では、ゲートとして機能する導電膜304
側に位置し、キャリアの主な移動経路となる酸化物半導体膜307と絶縁膜314との間
に、酸化物半導体膜309が設けられている。これにより、酸化物半導体膜309と絶縁
膜314の間において、不純物及び欠陥によりトラップ準位が形成されても、当該トラッ
プ準位と酸化物半導体膜307との間には隔たりがある。この結果、酸化物半導体膜30
7を流れる電子がトラップ準位に捕獲されにくく、トランジスタ112のオン電流を増大
させることが可能であると共に、電界効果移動度を高めることができる。また、トラップ
準位に電子が捕獲されると、該電子がマイナスの固定電荷となってしまう。この結果、ト
ランジスタ112のしきい値電圧が変動してしまう。しかしながら、酸化物半導体膜30
7とトラップ準位との間に隔たりがあるため、トラップ準位における電子の捕獲を低減す
ることが可能であり、しきい値電圧の変動を低減することができる。
【0180】
なお、酸化物半導体膜307及び酸化物半導体膜309は、各層を単に積層するのでは
なく連続接合(ここでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化する構
造)が形成されるように作製する。すなわち、各膜の界面にトラップ中心や再結合中心の
ような欠陥準位を形成するような不純物が存在しないように積層構造を形成する。仮に、
積層された酸化物半導体膜307及び酸化物半導体膜309の間に不純物が混在している
と、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結
合して、消滅してしまう。
【0181】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装
置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層するこ
とが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体膜にとって
不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポン
プを用いて高真空排気(5×10-7Pa~1×10-4Pa程度まで)することが好ま
しい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバ
ー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好ましい
【0182】
ここで、トランジスタ112に含まれる積層構造のバンド構造について、図9(B)を
用いて説明する。
【0183】
図9(B)は、トランジスタ112に含まれるバンド構造の一部を模式的に示している
。ここでは、絶縁膜306及び絶縁膜314として酸化シリコン層を設けた場合について
説明する。なお、図9(B)に表すEcI1は絶縁膜306として用いる酸化シリコン層
の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体膜307の伝導帯下端のエネ
ルギーを示し、EcS2は酸化物半導体膜309の伝導帯下端のエネルギーを示し、Ec
I2は絶縁膜314として用いる酸化シリコン層の伝導帯下端のエネルギーを示す。
【0184】
図9(B)に示すように、酸化物半導体膜307及び酸化物半導体膜309において、
伝導帯下端のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化す
るともいうことができる。これは、酸化物半導体膜307と酸化物半導体膜309が共通
の元素を含み、酸化物半導体膜307及び酸化物半導体膜309の間で、酸素が相互に移
動することで混合層が形成されるためであるということができる。
【0185】
図9(B)より、酸化物半導体膜308において酸化物半導体膜307がウェル(井戸
)となり、酸化物半導体膜308を用いたトランジスタにおいて、チャネル形成領域が酸
化物半導体膜307に形成されることがわかる。なお、酸化物半導体膜308は、伝導帯
下端のエネルギーが連続的に変化しているため、酸化物半導体膜307と酸化物半導体膜
309とが連続接合している、ともいえる。
【0186】
なお、図9(B)に示すように、酸化物半導体膜309と、絶縁膜314との界面近傍
には、絶縁膜314の構成元素であるシリコンまたは炭素等の不純物や欠陥に起因したト
ラップ準位が形成され得るものの、酸化物半導体膜309が設けられることにより、酸化
物半導体膜307と該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、EcS1とEc
S2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜307の電子が該エネルギー差を越
えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲されることで、絶縁膜
界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトし
てしまう。したがって、EcS1とEcS2とのエネルギー差を、0.1eV以上、好ま
しくは0.15eV以上とすると、トランジスタのしきい値電圧の変動が低減され、安定
した電気特性となるため好適である。
【0187】
上記説明した酸化物半導体を本発明の一態様における液晶表示装置のトランジスタに用
いることで、画像信号の画素部への書き込みが停止した後も、画素部における画像の表示
を維持することができる。また、該トランジスタを、画素が有する液晶素子への電圧の供
給を制御するための素子として用いることで、液晶素子への電圧の供給が維持される期間
を長く確保することができる。
【0188】
以上、本実施の形態で示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0189】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、本発明の一態様の液晶表示装置の画素の構成例について、実
施の形態1の図5及び図6に示す画素100の上面図及び断面図と異なる一例について、
図10及び図11を用いて説明を行う。
【0190】
図1(A)に示す画素100の上面図の一例を図10に示す。なお、図10では、画素
100の上面図を明確にするために、ゲート絶縁膜などの構成要素の一部を省略して図示
している。また、図10に示す一点鎖線A1-A2間、及び一点鎖線A3-A4間の切断
面に相当する断面図を図11に示す。
【0191】
図10及び図11に示す画素100は、絶縁表面を有する基板302上に、トランジス
タ112のゲートとしての機能と、配線GLとしての機能を有する導電膜304が設けら
れている。また、基板302上には、容量素子113の電極としての機能と、第1の共通
電極としての機能とを有する電極354が設けられている。
【0192】
また、導電膜304を覆うように、基板302上には絶縁膜306が設けられている。
そして、絶縁膜306を間に挟んで導電膜304と重なる位置に、トランジスタ112の
チャネル形成領域として機能する酸化物半導体膜308が設けられている。酸化物半導体
膜308上には、導電膜310、312が設けられている。また、導電膜310、312
と同一工程で形成された導電膜313が電極354及び絶縁膜306上に設けられている

導電膜310は、配線SLとしての機能と、トランジスタ112のソースまたはドレイン
としての機能とを有する。導電膜312は、トランジスタ112のソースまたはドレイン
としての機能を有する。導電膜313は、容量線としての機能を有する。
【0193】
なお、電極354は、酸化物半導体膜308と同一工程で形成される。また、電極35
4は、酸化物半導体膜308よりも導電率が高い、導電性の酸化物半導体である。電極3
54は、絶縁膜321と接して設けられており、絶縁膜321中に含まれる水素が電極3
54に拡散することによって、導電性が高くなる。また、電極354の導電膜313と接
する領域は、絶縁膜314と接していないため、酸化物半導体中の酸素欠損が補填されな
いため、導電性が高くなる。したがって、電極354は、酸化物半導体膜308と同一工
程で形成された酸化物半導体膜であっても電極としての機能を有する。
【0194】
また、酸化物半導体膜308、及び導電膜310、312を覆うように絶縁膜314が
設けられている。また、絶縁膜314は、電極354の一方の端部、及び導電膜313の
一方の端部を覆うように設けられている。また、絶縁膜314は、電極354の一部及び
導電膜313の一部が露出する開口部364を有する。
【0195】
また、絶縁膜314、電極354、及び導電膜313上には、絶縁膜321が設けられ
ている。また、絶縁膜314、321には、導電膜312に達する開口部366が設けら
れている。また、絶縁膜321上には、画素電極322が設けられており、画素電極32
2は、開口部366を介して導電膜312と接続される。また、画素電極322は、第1
の共通電極として機能する電極354と重なる位置に設けられ、図10の上面図に示すよ
うに、開口部(スリット)を有している。また、絶縁膜321及び画素電極322上には
配向膜324が設けられている。
【0196】
また、基板302と対峙するように、基板330が設けられている。基板330の下方
には、可視光を遮る機能を有する遮光膜332と、特定の波長範囲の可視光を透過する有
色膜334と、遮光膜332及び有色膜334に接する絶縁膜336と、絶縁膜336に
接する第2の共通電極338と、第2の共通電極338に接する配向膜340と、が設け
られている。
【0197】
そして、基板302と基板330の間には、配向膜324と配向膜340に挟まれるよ
うに、液晶材料を含む液晶層350が設けられている。また、液晶層350、第1の共通
電極として機能する電極354、絶縁膜321、画素電極322、及び第2の共通電極3
38によって、液晶素子111が構成されている。なお、液晶層350は、ネガ型の液晶
材料を用い、液晶材料の固有抵抗率が1.0×1013Ω・cm以上1.0×1016Ω
・cm以下である。
【0198】
本実施の形態に示す画素100の構成においては、平坦化膜として機能する絶縁膜を用
いない点と、第1の共通電極として機能する電極354を酸化物半導体膜308と同一工
程で形成する設ける点と、容量線として機能する導電膜313を電極354に接して設け
る点とが先の実施の形態1の図5及び図6に示す構成と大きく異なる。
【0199】
このように、平坦化膜を用いないことで、該平坦化膜中に含まれる不純物(例えば、水
など)が酸化物半導体膜308に入り込むのを抑制することができる。したがって、酸化
物半導体膜308を用いるトランジスタ112の信頼性が向上するため、表示品位の高い
液晶表示装置とすることができる。
【0200】
次いで、図11に示す画素の作製方法の一例について、図12及び図13を用いて説明
を行う。
【0201】
図12(A)に示すように、基板302上に導電膜を形成した後、該導電膜をエッチン
グ等により形状を加工することで、導電膜304を形成する。次に、導電膜304上に絶
縁膜306を形成する。次に、絶縁膜306上に酸化物半導体膜を形成した後、該酸化物
半導体膜をエッチング等により形状を加工し、導電膜304と重なる位置に島状に分離さ
れた酸化物半導体膜308と、酸化物半導体膜308と分離された酸化物半導体膜352
を形成する。
【0202】
基板302、導電膜304、絶縁膜306、及び酸化物半導体膜308としては、それ
ぞれ実施の形態1に記載の基板302、導電膜304、絶縁膜306、及び酸化物半導体
膜308に用いることのできる材料、及び作製方法を援用することで形成することができ
る。また、酸化物半導体膜352は、酸化物半導体膜308と同様の材料及び作製方法に
より形成することができる。
【0203】
次に、図12(B)に示すように、絶縁膜306及び酸化物半導体膜308、352上
に導電膜を形成した後、当該導電膜の形状をエッチング等により加工することにより、酸
化物半導体膜308に接する導電膜310、312と、酸化物半導体膜352に接する導
電膜313を形成する。
【0204】
導電膜310、312、313としては、実施の形態1に記載の導電膜310、312
、313に用いることのできる材料及び作製方法を援用することで形成することができる
【0205】
次に、図12(C)に示すように、絶縁膜306、酸化物半導体膜308、352、及
び導電膜310、312、313上に絶縁膜314を形成する。
【0206】
絶縁膜314としては、実施の形態1に記載の絶縁膜314に用いることのできる材料
、及び作製方法を援用することで形成することができる。
【0207】
次に、図12(D)に示すように、絶縁膜314をエッチング等により形状を加工し、
酸化物半導体膜352の一部と、導電膜313の一部が露出するように開口部364を形
成する。なお、開口部364は、少なくとも酸化物半導体膜352が露出していればよく
、導電膜313の表面を露出させなくてもよい。
【0208】
開口部364の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法またはウエットエッチ
ング法を用いる。また、ドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせて開口
部364を形成してもよい。
【0209】
次に、図13(A)に示すように、絶縁膜314、及び開口部364を覆うように絶縁
膜321を形成する。
【0210】
絶縁膜321は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等
が、酸化物半導体へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、更には水素を含む。こ
のため、絶縁膜321の水素が酸化物半導体膜352に拡散すると、酸化物半導体膜35
2において水素は酸素と結合する、または水素は酸素欠損と結合しキャリアである電子が
生成される。この結果、酸化物半導体膜352は、酸化物半導体膜308よりも導電性が
高くなり、第1の共通電極として機能する電極354となる。
【0211】
絶縁膜321としては、例えば、厚さ50nm以上400nm以下の窒化シリコン膜、
又は窒化酸化シリコン膜等を用いることができる。本実施の形態においては、絶縁膜32
1として、厚さ100nmの窒化シリコン膜を用いる。
【0212】
また、上記窒化シリコン膜は、ブロック性を高めるために、高温で成膜されることが好
ましく、例えば基板温度100℃以上基板の歪み点以下、より好ましくは300℃以上4
00℃以下の温度で加熱して成膜することが好ましい。但し、高温で成膜する場合は、酸
化物半導体膜308から酸素が脱離し、キャリア濃度が上昇する現象が発生することがあ
るため、このような現象が発生しない温度とする。
【0213】
また、図11及び図13において、図示していないが、絶縁膜321を形成したのち、
さらに絶縁膜を形成してもよい。該絶縁膜としては、例えば、有機シランガスを用いたP
E-CVD法により形成した酸化シリコン膜を用いることができる。当該酸化シリコン膜
は300nm以上600nm以下で設けることができる。有機シランガスとしては、珪酸
エチル(TEOS:化学式Si(OC)、テトラメチルシラン(TMS:化学
式Si(CH)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメ
チルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ト
リエトキシシラン(SiH(OC)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(
N(CH)などのシリコン含有化合物を用いることができる。また、上記酸化
シリコン膜は、例えば、有機シランガスと酸素を用い、基板温度を200℃以上550℃
以下、好ましくは220℃以上500℃以下、より好ましくは300℃以上450℃以下
としたPE-CVD法により形成することができる。
【0214】
絶縁膜321上にさらに上述した絶縁膜を形成することによって、トランジスタ等に起
因する凹凸を平坦化することが可能となる。また、上述した絶縁膜は無機材料により形成
されるため、有機材料を用いる平坦化樹脂膜等と比較し、酸化物半導体膜に影響を与える
不純物が少ない。
【0215】
次に、少なくとも絶縁膜314を形成した後に加熱処理を行い、絶縁膜314に含まれ
る酸素を酸化物半導体膜308に移動させ、酸化物半導体膜308の酸素欠損を補填する
ことが好ましい。
【0216】
次に、図13(B)に示すように、絶縁膜314、321の所望の領域を除去すること
で、導電膜312に達する開口部366を形成する。
【0217】
開口部366の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法またはウエットエッチ
ング法を用いる。また、ドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせて開口
部366を形成してもよい。
【0218】
次に、図13(C)に示すように、絶縁膜321上に画素電極322を形成する。なお
、画素電極322は、開口部366を介して導電膜312と接続される。
【0219】
画素電極322は、絶縁膜321上に透明導電膜を形成し、エッチング等により当該透
明導電膜の形状を加工することで形成される。
【0220】
画素電極322としては、実施の形態1に記載の画素電極322に用いることのできる
材料、及び作製方法を援用することで形成することができる。
【0221】
次に、絶縁膜321及び画素電極322上に配向膜324を形成する(図示しない)。
配向膜324は、ラビング法、光配向法等を用いて形成することができる。
【0222】
以上の工程で基板302上に形成される構造を形成することができる。
【0223】
基板302に対峙して設けられる基板330、及び液晶素子111等は、実施の形態1
の記載を援用することで形成することができる。
【0224】
以上、本実施の形態で示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【0225】
(実施の形態4)
本実施の形態においては、本発明の一態様における液晶表示装置を用いた電子機器の一
例について、図14を用いて説明を行う。
【0226】
本発明の一態様に係る液晶表示装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体
を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Di
sc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いる
ことができる。その他に、本発明の一態様に係る液晶表示装置を用いることができる電子
機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ
、デジタルスチルカメラなどのカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディス
プレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディ
オプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預
け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図1
4に示す。
【0227】
図14(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体5001、筐体5002、表示部5003
、表示部5004、マイクロホン5005、スピーカー5006、操作キー5007、ス
タイラス5008等を有する。表示部5003または表示部5004に、本発明の一態様
に係る液晶表示装置を用いることができる。なお、図14(A)に示した携帯型ゲーム機
は、2つの表示部5003と表示部5004とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する
表示部の数は、これに限定されない。
【0228】
図14(B)は表示機器であり、筐体5201、表示部5202、支持台5203等を
有する。表示部5202に、本発明の一態様に係る液晶表示装置を用いることができる。
なお、表示機器には、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全
ての情報表示用表示機器が含まれる。
【0229】
図14(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体5401、表示部540
2、キーボード5403、ポインティングデバイス5404等を有する。表示部5402
に、本発明の一態様に係る液晶表示装置を用いることができる。
【0230】
図14(D)は携帯情報端末であり、第1筐体5601、第2筐体5602、第1表示
部5603、第2表示部5604、接続部5605、操作キー5606等を有する。第1
表示部5603は第1筐体5601に設けられており、第2表示部5604は第2筐体5
602に設けられている。そして、第1筐体5601と第2筐体5602とは、接続部5
605により接続されており、第1筐体5601と第2筐体5602の間の角度は、接続
部5605により変更が可能となっている。第1表示部5603における映像を、接続部
5605における第1筐体5601と第2筐体5602の間の角度に従って、切り替える
構成としても良い。第1表示部5603または第2表示部5604に、本発明の一態様に
係る液晶表示装置を用いることができる。なお、第1表示部5603及び第2表示部56
04の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された液晶表示装置を用いる
ようにしても良い。なお、位置入力装置としての機能は、液晶表示装置にタッチパネルを
設けることで付加することができる。或いは、位置入力装置としての機能は、フォトセン
サとも呼ばれる光電変換素子を液晶表示装置の画素部に設けることでも、付加することが
できる。
【0231】
図14(E)はビデオカメラであり、第1筐体5801、第2筐体5802、表示部5
803、操作キー5804、レンズ5805、接続部5806等を有する。操作キー58
04及びレンズ5805は第1筐体5801に設けられており、表示部5803は第2筐
体5802に設けられている。そして、第1筐体5801と第2筐体5802とは、接続
部5806により接続されており、第1筐体5801と第2筐体5802の間の角度は、
接続部5806により変更が可能となっている。表示部5803における映像の切り替え
を、接続部5806における第1筐体5801と第2筐体5802の間の角度に従って行
う構成としても良い。表示部5803に、本発明の一態様に係る液晶表示装置を用いるこ
とができる。
【0232】
図14(F)は携帯電話であり、筐体5901に、表示部5902、マイク5907、
スピーカー5904、カメラ5903、外部接続部5906、操作用のボタン5905が
設けられている。携帯電話が有する回路に、本発明の一態様に係る液晶表示装置を用いる
ことできる。また、本発明の一態様に係る液晶表示装置を、可撓性を有する基板に形成し
た場合、図14(F)に示すような曲面を有する表示部5902に当該液晶表示装置を適
用することが可能である。
【0233】
以上、本実施の形態で示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと
適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0234】
本実施例においては、本発明の一態様である液晶表示装置の透過率について、測定を行
った。図15を用いて本実施例で用いた液晶表示装置について、以下説明を行う。
【0235】
図15(A)に示す液晶表示装置720は、本発明の一態様の液晶表示装置の一例であ
る。
【0236】
図15(A)に示す液晶表示装置720は、基板602と、基板602上のトランジス
タのゲートとして機能する導電膜604と、基板602及び導電膜604上の絶縁膜60
6と、絶縁膜606と、絶縁膜606上の導電膜604と重畳する位置に形成された酸化
物半導体膜608と、酸化物半導体膜608に接続する導電膜610、612と、絶縁膜
606、酸化物半導体膜608、及び導電膜610、612上に形成された絶縁膜614
と、絶縁膜614上の絶縁膜616と、絶縁膜616上の第1の共通電極618と、絶縁
膜614及び第1の共通電極618上の絶縁膜620と、絶縁膜620上の画素電極62
2と、絶縁膜620及び画素電極622上の配向膜624と、配向膜624上の液晶層6
50と、液晶層650上の配向膜640と、配向膜640上の第2の共通電極638と、
第2の共通電極638上の絶縁膜636と、絶縁膜636上の遮光膜632及び有色膜6
34と、遮光膜632及び有色膜634上の基板630と、を有する。
【0237】
なお、導電膜604と、絶縁膜606と、酸化物半導体膜608と、導電膜610、6
12によって、トランジスタ712が構成されている。また、トランジスタ712が有す
る導電膜612は、絶縁膜616、絶縁膜620に設けられた開口部を介して画素電極6
22と接続されている。
【0238】
次に、図15(B)に示す比較用の液晶表示装置730について、説明を行う。
【0239】
図15(B)に示す液晶表示装置730は、基板602と、基板602上のトランジス
タのゲートとして機能する導電膜604と、基板602及び導電膜604上の絶縁膜60
6と、絶縁膜606と、絶縁膜606上の導電膜604と重畳する位置に形成された酸化
物半導体膜608と、酸化物半導体膜608に接続する導電膜610、612と、絶縁膜
606、酸化物半導体膜608、及び導電膜610、612上に形成された絶縁膜614
と、絶縁膜614上の絶縁膜616と、絶縁膜616上の第1の共通電極618と、絶縁
膜614及び第1の共通電極618上の絶縁膜620と、絶縁膜620上の画素電極62
2と、絶縁膜620及び画素電極622上の配向膜624と、配向膜624上の液晶層6
50と、液晶層650上の配向膜640と、配向膜640上の絶縁膜636と、絶縁膜6
36上の遮光膜632及び有色膜634と、遮光膜632及び有色膜634上の基板63
0と、基板630上の電極642と、を有する。
【0240】
なお、導電膜604と、絶縁膜606と、酸化物半導体膜608と、導電膜610、6
12によって、トランジスタ712が構成されている。また、トランジスタ712が有す
る導電膜612は、絶縁膜616、絶縁膜620に設けられた開口部を介して画素電極6
22と接続されている。
【0241】
また、図15(A)に示す本発明の一態様の液晶表示装置720と、図15(B)に示
す比較用の液晶表示装置730との違いとしては、第2の共通電極638と、電極642
である。より具体的には、液晶表示装置720には、基板630の下方に第2の共通電極
638が設けられており、液晶表示装置730には、基板630の上方に電極642が設
けられている。
【0242】
図15(A)に示す構成においては、第2の共通電極638によって、配向膜640を
介して液晶層650に電圧を印加することができる。一方で、図15(B)に示す構成に
おいては、電極642は、基板630の上方に設けられているため、電極642によって
、液晶層650に電圧を印加するのが困難である。
【0243】
図15(A)、(B)に示す液晶表示装置720、730の作製方法について、以下説
明を行う。なお、液晶表示装置720と液晶表示装置730とでは、第2の共通電極63
8及び電極642以外の構成は同じである。まずは、共通する構成の作製方法について、
以下説明する。
【0244】
基板602としては、ガラス基板を用いた。その後、基板602上に導電膜604を形
成した。導電膜604としては、スパッタリング法によりタングステン膜を200nm形
成した。その後、基板602及び導電膜604上に絶縁膜606を形成した。絶縁膜60
6としては、厚さ400nmの窒化シリコン膜と、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を
積層して形成した。
【0245】
なお、窒化シリコン膜は、第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び第3の
窒化シリコン膜の3層積層構造とした。
【0246】
第1の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccm
の窒素、及び流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてプラズマCVD装置
の処理室に供給し、処理室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電
源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成した。第2の
窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccmの窒素、
及び流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてプラズマCVD装置の処理
室に供給し、処理室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用
いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成した。第3の窒化
シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、及び流量5000sccmの窒素を
原料ガスとしてプラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を100Paに制
御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50
nmとなるように形成した。なお、第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び
第3の窒化シリコン膜形成時の基板温度は350℃とした。
【0247】
酸化窒化シリコン膜としては、流量20sccmのシラン、流量3000sccmの一
酸化二窒素を原料ガスとしてプラズマCVD装置の処理室に供給し、処理室内の圧力を4
0Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて100Wの電力を供給して、酸
化窒化シリコン膜を形成した。なお、酸化窒化シリコン膜形成時の基板温度は350℃と
した。
【0248】
次に、絶縁膜606を介して導電膜604に重なる位置に酸化物半導体膜608を形成
した。ここでは、絶縁膜614上に厚さ35nmの酸化物半導体膜をスパッタリング法で
形成した。
【0249】
酸化物半導体膜は、スパッタリングターゲットをIn:Ga:Zn=1:1:1(原子
数比)のターゲットとし、流量30sccmの酸素及び流量270sccmのアルゴンを
スパッタリングガスとしてスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0
.6Paに制御し、5kWの直流電力を供給して形成した。なお、酸化物半導体膜を形成
する際の基板温度を170℃とした。
【0250】
次に、酸化物半導体膜608に接する導電膜610、612を形成した。
【0251】
導電膜610、612として、厚さ50nmのタングステン膜上に厚さ400nmのア
ルミニウム膜を形成し、該アルミニウム膜上に厚さ100nmのチタン膜を形成した。
【0252】
次に、減圧された処理室に基板を移動し、350℃で加熱した後、処理室に設けられる
上部電極に27.12MHzの高周波電源を用いて150Wの高周波電力を供給して、一
酸化二窒素雰囲気で発生させた酸素プラズマに酸化物半導体膜608を曝した。
【0253】
次に、酸化物半導体膜608及び導電膜610、612上に絶縁膜614を形成した。
ここでは、絶縁膜614として、第1の酸化物絶縁膜、第2の酸化物絶縁膜、及び窒化物
絶縁膜の3層の積層構造を形成した。
【0254】
まず、上記酸素プラズマ処理の後、大気に曝すことなく、連続的に第1の酸化物絶縁膜
及び第2の酸化物絶縁膜を形成した。第1の酸化物絶縁膜として厚さ50nmの酸化窒化
シリコン膜を形成し、第2の酸化物絶縁膜として厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を
形成した。
【0255】
第1の酸化物絶縁膜は、流量20sccmのシラン及び流量3000sccmの一酸化
二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を350℃とし、100W
の高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。
【0256】
第2の酸化物絶縁膜は、流量160sccmのシラン及び流量4000sccmの一酸
化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃とし、150
0Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。当該条件
により、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が
脱離する酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0257】
次に、加熱処理を行い、第1の酸化物絶縁膜及び第2の酸化物絶縁膜から水、窒素、水
素等を脱離させると共に、第2の酸化物絶縁膜に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜6
08へ供給した。ここでは、窒素及び酸素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行っ
た。
【0258】
次に、第2の酸化物絶縁膜上に厚さ100nmの窒化物絶縁膜を形成した。窒化物絶縁
膜は、流量50sccmのシラン、流量5000sccmの窒素、及び流量100scc
mのアンモニアガスを原料ガスとし、処理室の圧力を100Pa、基板温度を350℃と
し、1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した
【0259】
次に、絶縁膜614に導電膜612に達する開口部を形成した。該開口部は、ドライエ
ッチング法により形成した。
【0260】
次に、絶縁膜614上に開口部を有する絶縁膜616を形成した。絶縁膜616として
は、有機樹脂材料であるアクリル系樹脂を用いた。該アクリル系樹脂の膜厚は2μmとし
た。
【0261】
次に、絶縁膜616上に第1の共通電極618を形成した。第1の共通電極618とし
ては、スパッタリング法により厚さ100nmの酸化インジウム-酸化スズ化合物(IT
O-SiO)の導電膜を形成した。なお、該導電膜に用いたターゲットの組成は、In
:SnO:SiO=85:10:5[重量%]とした。
【0262】
次に、絶縁膜616及び第1の共通電極618上に絶縁膜620を形成した。絶縁膜6
20としては、厚さ300nmの窒化物絶縁膜を形成した。窒化物絶縁膜は、流量50s
ccmのシラン、流量5000sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアガ
スを原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃とし、1000Wの
高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。
【0263】
次に、絶縁膜620上に画素電極622を形成した。画素電極622としては、スパッ
タリング法により厚さ80nmの酸化インジウム-酸化スズ化合物(ITO-SiO
の導電膜を形成した。なお、該導電膜に用いたターゲットの組成は、第1の共通電極61
8と同様とした。この後、窒素雰囲気で、250℃、1時間の加熱処理を行った。
【0264】
次に、絶縁膜620及び画素電極622上に配向膜624を形成した。配向膜624と
しては、厚さ60nmのポリイミド膜を用いた。なお、配向膜624として用いた該ポリ
イミド膜の抵抗率は4.0×1015Ω・cmであった。
【0265】
以上の工程により、基板602上に形成される構造を作製した。
【0266】
次に、基板602と対峙して設けられる基板630に形成される構造の作製方法につい
て、説明する。なお、基板630に形成される構造については、図15(A)に示す液晶
表示装置720と、図15(B)に示す液晶表示装置730とで異なる。したがって、以
下の説明において、液晶表示装置720と、液晶表示装置730で、作製方法を分けて説
明する。また、液晶表示装置720を試料1として、液晶表示装置730を試料2として
、それぞれ説明を行う。
【0267】
図15(A)に示す基板630に形成される構造の作製方法>
基板630としては、ガラス基板を用いた。次に、基板630に接して所望の領域に遮
光膜632を形成した。遮光膜632としては、スピンコート法により、厚さ600nm
の黒色顔料を含んだ有機樹脂膜を用いた。
【0268】
次に、基板630に接して有色膜634を形成した。有色膜634としては、スピンコ
ート法により、顔料を含んだ厚さ1.4μmの有機樹脂膜を用いた。
【0269】
次に、遮光膜632及び有色膜634に接して絶縁膜636を形成した。絶縁膜636
は、厚さ1.5μmのアクリル系樹脂を用いた。
【0270】
次に、絶縁膜636と接して第2の共通電極638を形成した。第2の共通電極638
は、スパッタリング法により厚さ100nmの酸化インジウム-酸化スズ化合物(ITO
-SiO)の導電膜を形成した。なお、該導電膜に用いたターゲットの組成は、第1の
共通電極618と同様とした。
【0271】
次に、第2の共通電極638と接して、配向膜640を形成した。配向膜640として
は、配向膜624と同様の材料を用いた。
【0272】
次に、上記作製した基板630と、先に記載した基板602を貼り合わせ、滴下封止法
を用いて液晶層650として機能する液晶材料を注入した。
【0273】
液晶層650としては、セルギャップ(配向膜624と配向膜640との距離)が3.
5μmとなるように調整し、ネガ型の液晶材料(メルク株式会社製:MLC-3006)
を用いた。
【0274】
以上の工程で、図15(A)に示す本発明の一態様の液晶表示装置である試料1を作製
した。
【0275】
図15(B)に示す基板630に形成される構造の作製方法>
基板630としては、ガラス基板を用いた。次に、基板630に接して所望の領域に遮
光膜632を形成した。遮光膜632としては、スピンコート法により、厚さ600nm
の黒色顔料を含んだ有機樹脂膜を用いた。
【0276】
次に、基板630に接して有色膜634を形成した。有色膜634としては、スピンコ
ート法により、顔料を含んだ厚さ1.4μmの有機樹脂膜を用いた。
【0277】
次に、遮光膜632及び有色膜634に接して絶縁膜636を形成した。絶縁膜636
は、厚さ1.5μmのアクリル系樹脂を用いた。
【0278】
次に、絶縁膜636が形成されていない面の基板630に接して、電極642を形成し
た。電極642としては、スパッタリング法により厚さ100nmの酸化インジウム-酸
化スズ化合物(ITO-SiO)の導電膜を形成した。なお、該導電膜に用いたターゲ
ットの組成は、第1の共通電極618と同様とした。
【0279】
次に、絶縁膜636と接して、配向膜640を形成した。配向膜640としては、配向
膜624と同様の材料を用いた。
【0280】
次に、上記作製した基板630と、先に記載した基板602を貼り合わせ、滴下封止法
を用いて液晶層650として機能する液晶材料を注入した。
【0281】
液晶層650としては、セルギャップ(配向膜624と配向膜640との距離)が3.
5μmとなるように調整し、ネガ型の液晶材料(メルク株式会社製:MLC-3006)
を用いた。
【0282】
以上の工程で、図15(B)に示す比較用の液晶表示装置である試料2を作製した。
【0283】
次に、上記作製した試料1及び試料2の透過率の測定を行った。試料1の透過率測定時
において、第1の共通電極618に0Vを、画素電極622に5.5Vを、第2の共通電
極638に0.8Vを、それぞれ印加した。また、画素電極622、第2の共通電極63
8、及び第2の共通電極638に印加する電圧は、間欠的に行われ、電圧が印加される毎
にデータの書き換えが行われる。また、試料2の透過率測定時において、第1の共通電極
618に0Vを、画素電極622に5.5Vを、電極642に0.8Vを、それぞれ印加
した。また、画素電極622、第2の共通電極638、及び電極642に印加する電圧は
、間欠的に行われ、電圧が印加される毎にデータの書き換えが行われる。なお、試料1及
び試料2のデータの書き換えの制御は、液晶表示装置に形成されたトランジスタ712に
よって行われる。
【0284】
図16乃至図20に試料1及び試料2の時間-透過率特性の結果を示す。なお、図16
乃至図20において、横軸は時間(s)を、縦軸は透過率(%)を、それぞれ表す。また
図16乃至図20においては、最大の階調となるようにした場合(透過率100%とな
るようにした場合)の時間-透過率特性の結果である。また、図21に試料1の時間-透
過率特性の結果を示す。なお、図21において、横軸は時間(s)を、縦軸は透過率(%
)を、それぞれ表す。また、図21においては、中間の階調となるようにした場合(透過
率50%となるようにした場合)の時間-透過率特性の結果である。なお、中間の階調と
した場合、最大の階調とした場合と時間-透過率特性の結果が異なる場合がある。
【0285】
なお、図16(A)、図17(A)、図18(A)、図19(A)、及び図20(A)
に示す時間-透過率特性は、本発明の一態様である試料1の結果であり、図16(B)、
図17(B)、図18(B)、図19(B)、及び図20(B)は、比較用の試料2の結
果である。
【0286】
また、図16(A)、(B)に示す時間-透過率特性においては、1secに1回のデ
ータの書き換えを行っており、図17(A)、(B)に示す時間-透過率特性においては
、5secに1回のデータの書き換えを行っており、図18(A)、(B)に示す時間-
透過率特性においては、15secに1回のデータの書き換えを行っており、図19(A
)、(B)に示す時間-透過率特性においては、30secに1回のデータの書き換えを
行っており、図20(A)、(B)に示す時間-透過率特性においては、60secに1
回のデータの書き換えを行っている。なお、データの書き換え間隔が同じグラフにおいて
、データの書き換えのタイミングは異なる時刻に行われる。したがって、図16乃至図2
0に示す時間-透過率特性において、書き換えのタイミングが同一の時刻ではない。
【0287】
また、図21(A)に示す時間-透過率特性においては、1secに1回のデータの書
き換えを行っており、図21(B)に示す時間-透過率特性においては、5secに1回
のデータの書き換えを行っており、図21(C)に示す時間-透過率特性においては、6
0secに1回のデータの書き換えを行っている。
【0288】
図16乃至図20の結果から、本発明の一態様である試料1は、時間経過における透過
率の変動が少ないことがわかる。一方で、比較用の試料2は、時間経過における透過率の
変動が多い。とくに、データの書き換え間隔が長い場合、例えば、図20(B)に示す6
0secに1回のデータの書き換えの場合、3%以上の透過率の変動が確認される。これ
は、本発明の一態様である試料1は第2の共通電極638に電圧を印加することで、液晶
層650の透過率の変動を抑制できる結果を示唆するものである。一方で比較用の試料2
は第2の共通電極638が設けられず、基板630の上方に位置する電極642に第2の
共通電極638と同様の電位が与えられている。したがって、電極642から液晶層65
0に電位が与えられず、液晶層650の変動を抑制できていない。
【0289】
また、図21に示す結果から、本発明の一態様である試料1は、5secに1回のデー
タの書き換えで約2%の透過率の変動がある。これは、表示画像によっては、ちらつきと
して認識される場合があるため、5sec未満でデータの書き換えを行った方がよい結果
を示唆している。
【実施例2】
【0290】
本実施例においては、本発明の一態様である液晶表示装置の透過率について、計算を行
った。図22を用いて本実施例の計算で用いた液晶表示装置の構成について、以下説明を
行う。
【0291】
図22(A)に示す計算に用いた液晶表示装置は、基板802と、基板802上の電極
804a、804b、854a、854bと、電極804a、804bを覆い、且つ電極
854a、854bの端部を覆う絶縁膜814と、絶縁膜814及び電極854a、85
4b上の絶縁膜821と、絶縁膜821上の絶縁膜856と、絶縁膜821、856を介
して電極854aと重畳する位置に設けられた画素電極822aと、絶縁膜821、85
6を介して電極854bと重畳する位置に設けられた画素電極822bと、絶縁膜856
及び画素電極822a、822b上の液晶層850と、液晶層850上の電極838と、
電極838上の基板830と、を有する構成である。
【0292】
なお、図22(A)に示す計算に用いた液晶表示装置の構成は、図10及び図11に示
す本発明の一態様の液晶表示装置の画素を簡易的にして、計算を簡便に行うために用いた
構成である。具体的には、基板802は図11に示す基板302に相当し、電極804a
、804bは図11に示す導電膜304に相当し、電極854a、854bは図11に示
す電極354に相当し、絶縁膜814は図11に示す絶縁膜314に相当し、絶縁膜82
1は図11に示す絶縁膜321に相当し、画素電極822a、822bは図11に示す画
素電極322に相当し、液晶層850は図11に示す液晶層350に相当し、電極838
図11に示す第2の共通電極338に相当し、基板830は図11に示す基板330に
相当する。なお、図22(A)に示す絶縁膜856は、図11においては図示されていな
い。
【0293】
また、図22(B)に示す計算に用いた液晶表示装置は、図22(A)に示す計算に用
いた液晶表示装置の構成から液晶層850上の電極838を設けない構成であり、それ以
外の構成は図22(A)と同様の構成である。
【0294】
なお、図22(A)、(B)に示す計算に用いた液晶表示装置の構成において、画素2
つ分の断面構造を表しており、図中の左側、より具体的には電極804a、電極854a
、画素電極822aを含む側を一方の画素として表し、図中の右側、より具体的には電極
804b、電極854b、画素電極822bを含む側を他方の画素として表している。ま
た、図22(A)、(B)において、画素電極822a、822bは、それぞれ分離され
た3つ電極を1つの電極として表している。
【0295】
また、図22(A)に示す計算に用いた液晶表示装置の構成を試料3とし、図22(B
)に示す計算に用いた液晶表示装置の構成を試料4とした。なお、試料3は本発明の一態
様の液晶表示装置の構成であり、試料4は比較用の一態様の液晶表示装置の構成である。
【0296】
また、図22(A)、(B)に示す電極804a、804bは厚さ=200nm、幅=
2μmと設定し、電極854a、854bは厚さ=200nm、幅=20μmと設定し、
絶縁膜814は厚さ=500nmと設定し、絶縁膜821は厚さ=100nmと設定し、
絶縁膜856は厚さ=400nmと設定し、画素電極822a、822bは厚さ=100
nm、幅=2μmと設定し、液晶層850は厚さ=4μm、ネガ型の液晶材料(メルク株
式会社製:MLC-3006)と設定した。また、図22(A)に示す電極838は厚さ
=100nmと設定した。
【0297】
また、図22(A)に示す計算に用いた液晶表示装置の構成に対して、電極804aに
0V、電極804bに6V、電極854a、854bに0V、画素電極822aに0V、
画素電極822bに6V、電極838に0Vをそれぞれ印加した場合について、液晶層8
50の透過率の計算を行った。
【0298】
また、図22(B)に示す計算に用いた液晶表示装置の構成に対して、電極804aに
0V、電極804bに6V、電極854a、854bに0V、画素電極822aに0V、
画素電極822bに6Vをそれぞれ印加した場合について、液晶層850の透過率の計算
を行った。なお、上記の各電極に印加した場合の設定は、図22(A)、(B)ともに、
図中の左側の画素が黒表示を想定し、図中の右側の画素が白表示を想定した場合の印加電
圧としている。
【0299】
図23に透過率の計算結果を示す。なお、透過率の計算には、計算ソフトとしてLCD
Master(Shintech社製)を用いた。
【0300】
図23において、横軸が位置(μm)を、縦軸が透過率(%)を、それぞれ表している
。また、図23において、実線が試料3を、破線が試料4を、それぞれ表している。また
図23において、図22(A)、(B)に示す電極804a、804b、854a、8
54bの位置を表すために、灰色の実線で電極804a、804b、854a、854b
の形状を模式的に表している。
【0301】
図23に示す計算結果より、本発明の一態様の構成である試料3は、位置20~30μ
m付近の透過率が低いことが分かる。一方で比較用の一態様の試料4は、位置20~30
μ付近の透過率が高いことが分かる。これは、試料3は試料4と比較し液晶層850の上
方に電極838を有するため、電極838に印加される電圧(本実施例においては、0V
)によって、位置20~30μ付近の透過率の上昇を抑制することを示唆している。また
、位置40~50μm付近においては、試料3の透過率が試料4の透過率よりも高いこと
が確認できる。なお、図23において、位置0~25μmで表す左側の画素では、各電極
の電圧を0Vとしているため、黒表示、すなわち透過率が低いことが望ましい。また、位
置26μ~55μmで表す右側の画素では、電極804bと電極854bに、それぞれ6
V印加しているため、白表示、すなわち透過率が高いことが望ましい。したがって、本発
明の一態様の構成である試料3は、比較用の一態様の試料4と比べて、液晶層850の上
方に電極838を有する構成であるため、優れた透過率特性であることが計算により確認
できた。
【0302】
以上のように、本発明の一態様の構成の液晶表示装置は、隣接する画素において、白表
示と黒表示のコントラストが優れた液晶表示装置とすることができる結果を示唆している
【0303】
本実施例に示す構成は、他の実施の形態に示す構成、または他の実施例に示す構成と適
宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0304】
100 画素
102 トランジスタ
111 液晶素子
111a 液晶素子
111b 液晶素子
111c 液晶素子
112 トランジスタ
113 容量素子
120 基板
122 共通電極
124 絶縁層
126 画素電極
130 基板
132 共通電極
134 液晶層
230 パネル
231 画素部
232 駆動回路
233 駆動回路
240 液晶表示装置
241 コントローラ
242 入力装置
243 CPU
244 画像処理回路
245 画像メモリ
246 データ
247 電源回路
302 基板
304 導電膜
306 絶縁膜
307 酸化物半導体膜
308 酸化物半導体膜
309 酸化物半導体膜
310 導電膜
312 導電膜
313 導電膜
314 絶縁膜
316 絶縁膜
318 共通電極
320 絶縁膜
321 絶縁膜
322 画素電極
324 配向膜
330 基板
332 遮光膜
334 有色膜
336 絶縁膜
338 共通電極
340 配向膜
350 液晶層
352 酸化物半導体膜
354 電極
360 開口部
362 開口部
364 開口部
366 開口部
602 基板
604 導電膜
606 絶縁膜
608 酸化物半導体膜
610 導電膜
612 導電膜
614 絶縁膜
616 絶縁膜
618 共通電極
620 絶縁膜
622 画素電極
624 配向膜
630 基板
632 遮光膜
634 有色膜
636 絶縁膜
638 共通電極
640 配向膜
642 電極
650 液晶層
712 トランジスタ
720 液晶表示装置
730 液晶表示装置
802 基板
804a 電極
804b 電極
814 絶縁膜
821 絶縁膜
822a 画素電極
822b 画素電極
830 基板
838 電極
850 液晶層
854a 電極
854b 電極
856 絶縁膜
5001 筐体
5002 筐体
5003 表示部
5004 表示部
5005 マイクロホン
5006 スピーカー
5007 操作キー
5008 スタイラス
5201 筐体
5202 表示部
5203 支持台
5401 筐体
5402 表示部
5403 キーボード
5404 ポインティングデバイス
5601 筐体
5602 筐体
5603 表示部
5604 表示部
5605 接続部
5606 操作キー
5801 筐体
5802 筐体
5803 表示部
5804 操作キー
5805 レンズ
5806 接続部
5901 筐体
5902 表示部
5903 カメラ
5904 スピーカー
5905 ボタン
5906 外部接続部
5907 マイク
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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