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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】消去部材を備えた筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/02 20060101AFI20231213BHJP
   B43K 25/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B43K29/02 F
B43K25/02 180
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022129745
(22)【出願日】2022-08-16
(62)【分割の表示】P 2020018006の分割
【原出願日】2012-09-18
(65)【公開番号】P2022163197
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友義
(72)【発明者】
【氏名】森谷 直彦
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-143082(JP,A)
【文献】特開2004-74446(JP,A)
【文献】特開平8-332798(JP,A)
【文献】特開平10-181282(JP,A)
【文献】特開2011-88397(JP,A)
【文献】特開2007-168142(JP,A)
【文献】特開2003-1712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 29/02
B43K 25/00-25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具本体と、熱変色性インクを収容し且つ前記筆記具本体内に収容された筆記リフィールと、前記筆記具本体の後端に配置され且つクリップを備えたクリップ固定体と、該クリップ固定体の後方の収納部に配置された第1消去部材と、前記クリップ固定体の後端に嵌合する天冠部とを具備し、
前記天冠部が前記第1消去部材の後端面を覆い、前記天冠部には前記第1消去部材よりも小さい貫通孔が形成され、
前記天冠部と前記第1消去部材との間に空間が形成され、
前記第1消去部材が、擦過した際に生じる摩擦熱によって前記熱変色性インクの筆跡を熱変色可能なゴム弾性材料からなり、
前記クリップが、クリップ基部とクリップ本体とを有し、前記クリップ本体の先端部には貫通孔が形成されており、前記貫通孔には第2消去部材が取り付けられることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記第2消去部材は、消去部と係止フランジ部と前記消去部及び前記係止フランジ部間を接続する接続軸とを有し、前記クリップ本体の外表面側から前記貫通孔内に前記係止フランジ部を圧入することによって、前記クリップ本体に取り付けられ、前記接続軸の軸方向長さは、前記クリップ本体の厚みと同等に設定されることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消去部材を備えた筆記具、特に熱変色インクによる筆跡を擦過して消色する消去部材を備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
消しゴム付き鉛筆のように、筆記具によって紙面等に描かれた筆跡をその筆記具に備わる消去部材によって消去可能とする構成が周知である。特に、熱変色性インクを収容する熱変色性筆記具においては、消去部材として、筆跡を擦過し摩擦熱を生じさせる摩擦体を備えた構成が公知である(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1に記載の熱変色性筆記具は、クリップ形状の摩擦体を有し、摩擦体に設けられた取付孔の内面を筆記具本体の後部外面に嵌合させることで、摩擦体が筆記具本体に対して着脱可能となっている。
【0004】
特許文献2に記載の熱変色性筆記具は、クリップの先端部分に別体で設けられた摩擦体を有し、クリップ自体が筆記具本体に対して着脱可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-230448号公報
【文献】特開2012-096388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の熱変色性筆記具の摩擦体は、筆記具本体に対して取り付けられた状態では筆記具本体の側面に位置することから、筆記具本体自体の長さが、擦過時にその動作を阻害する虞がある。すなわち、擦過時に、摩擦体をユーザの所望の位置に配置できない虞がある。
【0007】
また、特許文献1に記載のクリップ形状の摩擦体又は特許文献2に記載のクリップに設けられた摩擦体は、筆記具本体に対して容易に着脱可能となっていることから、意図せず外れて紛失する可能性がある。その結果、筆跡を消去することができないだけでなく、クリップの機能も果たせないことから、筆記具をポケットや手帳等に狭持することができず、利便性が著しく低下する虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、消去部材の紛失を防止すると共に消去動作時の消去部材の位置を容易に調整可能な消去部材を備えた筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、筆記具本体と、熱変色性インクを収容し且つ前記筆記具本体内に収容された複数の筆記リフィールと、前記筆記具本体の後端に配置された第1消去部材と、前記筆記具本体の後端に配置された天冠部とを具備し、前記天冠部が前記第1消去部材の後端面を覆い、前記天冠部には前記第1消去部材よりも小さい貫通孔が形成され、前記筆記具本体の中心軸線に対して垂直な軸線周りに回転可能なクリップと、該クリップの外表面に設けられた第2消去部材と、をさらに具備し、前記第2消去部材が前記クリップの物品を把持する先端側と前記クリップの後端側とに係合して設けられ、前記クリップの回転軸がその後端側に配置されていることを特徴とする回転繰り出し式の筆記具が提供される。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記天冠部が前記筆記具本体の後端に嵌合すると共に、前記天冠部と前記第1消去部材との間に空間が形成されていることを特徴とする筆記具が提供される。
【0011】
また、請求項3に記載の発明によれば請求項1又は2に記載の発明において、前記第2消去部材が、前記クリップに対して着脱可能であることを特徴とする筆記具が提供される。
【0012】
すなわち、請求項1又は3に記載の発明では、消去部材の紛失が防止されると共に消去動作時の消去部材の位置が容易に調整可能になる。また、消去部材が使用によって摩耗した場合に、新しいものと交換することができる。さらに、クリップを回転させた際、消去部材は筆記具の把持部から最も離れた場所に位置することになるので、ユーザの持ち手と消去部材とが接触することなく快適に筆記することができ且つ消去時にはクリップを把持しながら容易に消去することができる。
【0013】
なお、前記第1消去部材又は前記第2消去部材が、擦過した際に生じる摩擦熱によって前記熱変色性インクの筆跡を熱変色可能なゴム弾性材料からなるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
各請求項に記載の発明によれば、消去部材の紛失が防止されると共に消去動作時の消去部材の位置が容易に調整可能になるという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による消去部材を備えた筆記具の正面図である。
図2図1の線A-Aにおける断面図である。
図3】(a)はクリップ基部の背面図であり、(b)は(a)の線B-Bにおけるクリップ基部の断面図である。
図4】(a)はクリップ固定体の正面図であり、(b)は(a)の線C-Cにおけるクリップ固定体の断面図である。
図5】(a)は板バネの正面図であり、(b)は(a)の線D-Dにおける板バネの断面図である。
図6図1に示された筆記具のクリップを90度回転させた状態を示す図である。
図7図1に示された筆記具のクリップを180度回転させた状態を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態による消去部材を備えた筆記具の正面図である。
図9図8の線E-Eにおける断面図である。
図10図8に示された消去部材の斜視図である。
図11】本発明の第3実施形態による消去部材を備えた筆記具の正面図である。
図12図11の線F-Fにおける断面図である。
図13図11に示された消去部材の斜視図である。
図14】本発明の第4実施形態による消去部材を備えた筆記具の正面図である。
図15図14の線G-Gにおける断面図である。
図16】(a)は図11に示された消去部材の斜視図であり、(b)は図11に示された消去部材の底面図である。
図17図11に示された筆記具のクリップ本体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態による消去部材50を備えた筆記具1の正面図であり、図2は、図1の線A-Aにおける断面図である。
【0018】
筆記具1は、クリップ10と、クリップ固定体20と、板バネ30と、筆記具本体40とを有する。筆記具本体40は、先口41と、先口41を先端に備える先軸42と、後軸43と、後軸43の後端に嵌合する天冠部44とを有する。筆記具1は、先軸42と後軸43とを相対的に回転させて筆記具本体40内に収容された筆記リフィール(図示せず)を先口41先端に設けられた開口部、すなわち筆記先端部41aから繰り出す回転繰り出し式の筆記具である。
【0019】
また、筆記具本体40内には複数の筆記リフィールを収容することもできる。筆記リフィールは、熱変色インクを収容したボールペン、熱変色芯を収容したシャープペンシル、鉛筆ホルダー等が挙げられる。なお、本明細書中では、筆記具1の軸線方向において、筆記先端部41a側を「前」側と規定し、筆記先端部とは反対側を「後」側と規定する。
【0020】
クリップ10は、クリップ基部11とクリップ本体12とを有する。クリップ基部11とクリップ本体12とは、ピン13によって枢動可能に連結され、ピン13による連結部より後方のクリップ基部11及びクリップ本体12間には、コイルバネ14が配置される。コイルバネ14は、クリップ本体12をクリップ基部11から離間する方向に付勢している。その結果、クリップ本体12はピン13周りに枢動し、クリップ本体12の前端はクリップ基部11に対して付勢される。従って、クリップ基部11及びクリップ本体12間に紙等の物品を挟持することが可能となる。
【0021】
なお、本実施形態におけるクリップ10は、クリップ基部11、クリップ本体12及びコイルバネ14等の複数の部材から構成されるが、弾性を有する部材を用いて物品を挟持するような全体として前方に開いた略U字形状の一部品として形成してもよい。
【0022】
本実施形態では、クリップ本体12の先端部分に二色成形によって消去部材50が設けられている。消去部材50は、二色成形以外に接着等で一体に形成してもよく、クリップ本体12の外表面に設けられる限りにおいて、先端のみならずクリップ本体12の半分又は全部を消去部材50で形成してもよい。同様に、クリップ本体12の後端部分に消去部材50を設けてもよい。
【0023】
筆記具1は、クリップ10が筆記具本体40の中心軸線に対して垂直な回転軸線R周りに回転可能に構成されている。この回転機構について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0024】
図3は、(a)はクリップ基部11の背面図であり、(b)は(a)の線B-Bにおけるクリップ基部11の断面図である。クリップ基部11の背面、すなわち筆記具本体40に対向する面の後方には、クリップ基部11の背面に対して垂直に突出する挿通軸17が形成されている。この挿通軸17の先端部には、フランジ部16が形成されている。フランジ部16の径は、挿通軸17の径よりも大きく形成される。さらに、挿通軸17の根本であって、クリップ基部11の背面には、後述するクリップ固定体20に設けられた凹部23と嵌合する径方向に延びる複数の凸部18が形成されている。この凸部18は、90度間隔で周方向に均等に形成されている。
【0025】
図4は、(a)はクリップ固定体20の正面図であり、(b)は(a)の線C-Cにおけるクリップ固定体20の断面図である。クリップ固定体20は、後軸43の外径寸法を内径寸法とすることで後軸43に取り付けられるリング形状の部材である。クリップ基部11がクリップ固定体20に対して回転可能に連結され、それによって、クリップ10が筆記具本体40に対して回転可能に連結される。
【0026】
クリップ固定体20の一側面には、クリップ支持箱21が形成されている。クリップ支持箱21内には板バネ受入空間21aが形成され、クリップ支持箱21の外表面には、挿通孔22と、凹部23と、ストッパー部24とが形成されている。後述するように、板バネ受入空間21a内には板バネ30が挿入され、挿通孔22には、クリップ基部11の挿通軸17及びフランジ部16が挿入される。
【0027】
詳細に説明すると、挿通孔22の周囲に径方向に延びる複数の凹部23が設けられており、この凹部23は45度間隔で周方向に均等に形成されている。隣接する凹部23間は凸状となっており、クリップ10の回転時には、クリップ本体12に設けられた凸部18が、嵌合する凹部23から外れて隣接する凸状部分に乗り上げる。このとき、クリップ本体12の前後方向の動きは、凹部23の前後方向に設けられたストッパー部24により規制される。なお、このストッパー部24は前後のいずれか一方であってもよい。
【0028】
クリップ固定体20の内方には、後軸受入空間21bが形成され、この空間内に後軸43との嵌合部25が形成されている。嵌合部25が後軸43の後部と嵌合することで、クリップ固定体20が後軸43に対して固定される。
【0029】
クリップ10に設けられた消去部材50に加え、さらなる消去部材60をクリップ固定体20の後方の収納部26に配置してもよい。
【0030】
図5は、(a)は板バネ30の正面図であり、(b)は(a)の線D-Dにおける板バネ30の断面図である。弾性部材からなる板バネ30は、その中心に一端が開放された開放部35が形成された板バネスリット31が形成されている。また、板バネスリット31方向に沿って凹面34と凸面33とが形成されている。凹面34は凸面33の両側に形成されている。さらに、開放部35とは反対位置に抜け止め部32が形成されている。抜け止め部32の後端面を他の部材に当接させることによって、板バネ30の抜けを防止することができる。本実施形態においては、図2示されるように後軸43に対して当接させることで、板バネ30の抜けを防止している。
【0031】
次に、筆記具1の組立方法について説明する。まず、クリップ10のクリップ基部11背面に設けられたフランジ部16と挿通軸17とを、クリップ固定体20の挿通孔22に挿通させる。次いで、板バネ30の凸面33側をフランジ部16側に向けながら、板バネ30をフランジ部16とクリップ固定体20との間、すなわち板バネ受入空間21a内に挿入する。このとき、板バネ30の板バネスリット31の開放部35側から挿通軸17を、板バネスリット31内に通す。この状態で、板バネ30の抜け止め部32と後軸43とが当接するため、板バネ30の抜けが防止される。
【0032】
さらに、板バネ30は、凸面33及び凹面34形状を有するため、クリップ10がクリップ固定体20から抜ける方向の力に抗する付勢力を生じさせる。すなわち、クリップ10に対してクリップ固定体20から抜ける方向の力が作用すると、板バネ30の凸面33及び凹面34の凹凸が無くなるように変形するが、それを戻そうとする弾発力が発生する。この弾発力は、板バネスリット31を通して板バネ30を貫通するフランジ部16に対して作用し、結果として、クリップ10がクリップ固定体20から抜ける方向の力に抗する付勢力を生じる。
【0033】
上述のように組み立てられた筆記具1は、筆記具本体40に対してクリップ10を回転させることができる。クリップ10の回転は、クリップ基部11の挿通軸17の軸線周り、すなわち筆記具本体40の中心軸線に対して垂直な回転軸線R周りに行われる。クリップ10を回転させると、上述のように、板バネ30の付勢力に抗してクリップ基部11背面に形成された凸部18とクリップ固定体20に形成された凹部23との嵌合が外れ、自由に回転できるようになる。クリップ基部11の凸部18は、クリップ10が所定の角度だけ回転すると、板バネ30の付勢力によって異なる凹部23に嵌合し、クリップの回転が停止する。
【0034】
図6は、図1に示された筆記具1のクリップを90度回転させた状態を示す図であり、図7は、図1に示された筆記具1のクリップを180度回転させた状態を示す図である。当然のことながら、クリップ基部11の複数の凸部18及びクリップ支持箱21の複数の凹部23の周方向の配置間隔は、上述した実施形態と異なる間隔であってもよい。
【0035】
本実施形態における筆記具1の筆記リフィールは、熱変色性インクを収容する。熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。従って実施形態では、描線が筆記された紙面等に対して摩擦体としての消去部材50によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0036】
摩擦体としての消去部材50を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材質やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物、市販されている消しゴム等が挙げられる。
【0037】
クリップ基部11とクリップ本体12とクリップ固定体20とを形成する材料として、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0038】
なお、本発明における「消去」とは、上記熱変色性インクを用いた場合以外にも、筆記した描線、文字等を消しゴム等の消去部材50で吸着又は削ぎ落とすことをいう。従って、本発明の上記実施形態及び以下の実施形態は、筆記した描線を、消去部材50を用いて消去する任意の筆記具にも適用可能である。
【0039】
本実施形態の筆記具1によれば、クリップ本体12と消去部材50とが一体となっており、また、クリップ本体12がピン13によってクリップ基部11に連結されていることから、消去部材50の紛失が防止されるという利点がある。また、クリップ10が筆記具本体40に対して回転可能であることから、消去動作時の消去部材50の位置を容易に調整可能となるという利点がある。さらに、クリップ10を回転させた際、消去部材50は筆記具の把持部から最も離れた場所に位置することになるので、ユーザの持ち手と消去部材50とが接触することなく快適に筆記することができ且つ消去時にはクリップ10を把持しながら容易に消去することができる。
【0040】
図8は、本発明の第2実施形態による消去部材150を備えた筆記具100の正面図であり、図9は、図8の線E-Eにおける断面図であり、図10は、図8に示された消去部材150の斜視図である。筆記具100は、クリップ110と、クリップ固定体20と、板バネ30と、筆記具本体40とを有する。筆記具100は、第1実施形態による消去部材50を備えた筆記具1と、クリップ本体の形状及び消去部材の形状においてのみ異なり、その他の点について両者は同一である。
【0041】
クリップ110は、クリップ基部11とクリップ本体112とを有する。クリップ本体112の先端部には貫通孔112aが形成されており、貫通孔112aには消去部材150が取り付けられる。
【0042】
消去部材150は、消去部151と係止フランジ部152と消去部151及び係止フランジ部152間を接続する接続軸153とを有し、これらは一体に形成されている。消去部材150は、クリップ本体112の外表面側から貫通孔112a内に係止フランジ部152を圧入することによって、クリップ本体112に取り付けられる。接続軸153の軸方向長さは、クリップ本体112の厚みと同等に設定され、従って、消去部材150は、緩むことなくクリップ本体112に取り付けられる。
【0043】
消去部材150及びクリップ本体112の材質については、第1実施形態による消去部材50及びクリップ本体12とそれぞれ同様である。本実施形態による消去部材150の消去部151は半球状であるが、その他任意の形状であってもよい。また、消去部151と係止フランジ部152と接続軸153とは、別部材に形成してもよい。
【0044】
本実施形態の筆記具100によれば、上述した第1実施形態の筆記具1によって得られる利点に加え、消去部材150が使用によって摩耗した場合に、新しいものと交換することができるというさらなる利点がある。
【0045】
図11は、本発明の第3実施形態による消去部材250を備えた筆記具200の正面図であり、図12は、図11の線F-Fにおける断面図であり、図13は、図11に示された消去部材250の斜視図である。筆記具200は、クリップ210と、クリップ固定体20と、板バネ30と、筆記具本体40とを有する。筆記具200は、第1実施形態による消去部材50を備えた筆記具1と、クリップ本体の形状及び消去部材の形状においてのみ異なり、その他の点について両者は同一である。
【0046】
クリップ210は、クリップ基部11とクリップ本体212とを有する。クリップ本体212の外表面にはその全体を覆う別体の消去部材250が取り付けられる。消去部材250は、両端に第1係止爪部250aと第2係止爪部250bとを有する細長い形状の部材である。消去部材250は、第1係止爪部250aと第2係止爪部250bとを、クリップ本体212の前後の端部に係合させることによって、クリップ本体212に取り付けられる。
【0047】
消去部材250及びクリップ本体212の材質については、第1実施形態による消去部材50及びクリップ本体12とそれぞれ同様である。本実施形態による消去部材250の全体形状は矩形であるが、曲線状等その他の形状で形成してもよい。
【0048】
本実施形態の筆記具200によれば、上述した第1実施形態の筆記具1によって得られる利点に加え、消去部材250が使用によって摩耗した場合に、新しいものと交換することができるというさらなる利点がある。
【0049】
図14は、本発明の第4実施形態による消去部材350を備えた筆記具300の正面図であり、図15は、図14の線G-Gにおける断面図であり、図16は、(a)は図11に示された消去部材350の斜視図であり、(b)は図11に示された消去部材350の底面図であり、図17は、図11に示された筆記具300のクリップ本体312の正面図である。
【0050】
筆記具300は、クリップ310と、クリップ固定体20と、板バネ30と、筆記具本体40とを有する。筆記具300は、第1実施形態による消去部材50を備えた筆記具1と、クリップ本体の形状及び消去部材の形状においてのみ異なり、その他の点について両者は同一である。
【0051】
クリップ310は、クリップ基部11とクリップ本体312とを有する。クリップ本体312には鍵状貫通孔312aが形成されており、鍵状貫通孔312aには消去部材350が取り付けられる。鍵状貫通孔312aは、後述するように、消去部材350が所定の姿勢で取り付ける場合にのみ、係止フランジ部352及び接続軸353の通過を可能とするような軸非対称形状とされている。
【0052】
消去部材350は、消去部351と係止フランジ部352と消去部351及び係止フランジ部352間を接続する接続軸353とを有し、これらは一体に形成されている。消去部351は、平坦な頂部351aと対向して配置される凸状の側面である2つの曲面部351bと曲面部351b間を滑らかに接続する稜線部351cとを有する。
【0053】
接続軸353は円形の横断面形状を有するのに対し、係止フランジ部352は略長方形の横断面形状を有する。係止フランジ部352の長辺の長さは、接続軸353の径よりも大きく形成されている。消去部材350の係止フランジ部352及び接続軸353における接続軸353の軸線方向に投影された形状及び大きさは、クリップ本体312の鍵状貫通孔312aに内包されるように決定される。また、係止フランジ部352は、その長手方向が消去部材350の長手方向に対して垂直となるように配置される。
【0054】
消去部材350は、消去部351の長手方向がクリップ本体312の長手方向に対して垂直となる状態で押圧することによって、鍵状貫通孔312a内に係止フランジ部352及び接続軸353を挿入することができ、クリップ本体312に取り付けられる。次いで、消去部材350を90度回転させることで取り付けが完了する。接続軸353の軸方向長さは、クリップ本体312の厚みと同等に設定され、従って、消去部材350は、緩むことなくクリップ本体312に取り付けられる。当然のことながら鍵状貫通孔312aと対向する係止フランジ部352及び接続軸353の横断面形状は、同様の目的を達成できる限りにおいて異なる形状であってもよい。
【0055】
消去部材350及びクリップ本体312の材質については、第1実施形態による消去部材50及びクリップ本体12とそれぞれ同様である。本実施形態による消去部材350の消去部351は、その他任意の形状であってもよい。また、消去部351と係止フランジ部352と接続軸353とは、別部材に形成してもよい。
【0056】
本実施形態の筆記具300によれば、上述した第1実施形態の筆記具1によって得られる利点に加え、消去部材350が使用によって摩耗した場合に、新しいものと交換することができるというさらなる利点がある。また、クリップ本体312が鍵状貫通孔312aを有することによって、消去部材350が容易に抜けにくいという利点もある。さらに、消去部材350が、頂部351aと曲面部351bと稜線部351cとを有することから、消去したい面積及び形状に応じて擦過する部位をユーザが自由に選択することが可能となるという利点もある。
【符号の説明】
【0057】
1 筆記具
10 クリップ
20 クリップ固定体
30 板バネ
40 筆記具本体
50 消去部材
R 回転軸線
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