(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】NotchシグナリングのエンハンサーならびにNotchのアップレギュレーションにより治療可能ながんおよび悪性腫瘍の治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20231213BHJP
A61K 31/235 20060101ALI20231213BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20231213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231213BHJP
C07C 63/331 20060101ALN20231213BHJP
C07C 63/49 20060101ALN20231213BHJP
C07C 69/92 20060101ALN20231213BHJP
C07D 213/80 20060101ALN20231213BHJP
C07D 213/82 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/235
A61K31/455
A61P35/00
C07C63/331
C07C63/49
C07C69/92
C07D213/80
C07D213/82
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022193285
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2018549173の分割
【原出願日】2017-03-17
【審査請求日】2022-12-15
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】319001651
【氏名又は名称】ゼニオプロ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ラインミュラー ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ジュー ジェピン
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-518935(JP,A)
【文献】国際公開第1993/024442(WO,A1)
【文献】特開2012-56851(JP,A)
【文献】米国特許第3113849(US,A)
【文献】国際公開第1993/003012(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第2380193(GB,A)
【文献】Journal of Materials Chemistry C,英国,2013年,Vol. 1, No. 34,pp. 5315-5321
【文献】REGISTRY(STN)[online],[検索日 2020.11.11],2009年02月01日,CAS登録番号 1099155-64-2
【文献】REGISTRY(STN)[online],[検索日 2020.11.11],2010年04月04日,CAS登録番号 1216118-86-3, 1041551-78-3, 1040017-39-7, 1039970-54-1, 938356-51-5, 900015-10-3
【文献】REGISTRY(STN)[online],2007年06月22日,[検索日 2020.11.11],CAS登録番号 938255-93-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00- 33/44
A61P 1/00- 43/00
C07C 1/00-409/44
C07D201/00-521/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)を示す化合物および/またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって:
式中、
Xはフェニレン環C
6H
4から選択される芳香族環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;またはXは1つまたは2つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;
ここで、Xがフェニレン環である場合、R
1が直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
16アルキル;直鎖および分岐、置換および非置換のC
4-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
8アルキニル;置換および非置換のC
4-C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
Xが1つまたは2つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環である場合、R
1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
16アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルキニル;置換および非置換のC
3-C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
2~R
5は互いに独立に、H、F、Cl、Br、I;直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニルおよびC
2-C
4アルキニル、シクロプロピルならびにシクロブチルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロプロピルおよびシクロブチルと表記された基の置換基はF、Cl、BrおよびIから選択され;
YはOまたはSであり;
ZはF、Cl、Br、直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルキニル、シクロプロピルならびにシクロブチルから選択され、アルキル、アルキニル、シクロプロピルおよびシクロブチルと表記された基の置換基はF、Cl、BrおよびIから選択され;
R
6はOR
7、NR
8R
9、NHOHから選択され;
R
7はHならびに直鎖および分岐のC
1-C
6アルキルから選択され;
R
8およびR
9は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC
1-C
6アルキルから選択される、
扁平上皮癌、皮膚および肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌腫瘍、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍、甲状腺癌の群より選択される、個体における疾患の治療のための、
医薬組成物。
【請求項2】
Xがフェニレン環である場合、フェニレン環Xは、エーテル基に対して2位および6位においてF、Cl、またはBr(置換基Z)により置換されていない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
Xが1つまたは2つのN原子を含有するヘテロ環である場合:
R
1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
12アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルキニル;置換および非置換のC
3-C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
2~R
5は互いに独立に、H、F、Cl、Br、I;非置換および置換のC
1-C
2アルキル、C
2アルケニル、C
2アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり;
ZはF、Cl、Br;非置換および置換のC
1-C
2アルキル、C
2アルキニルから選択され、アルキル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり;
R
6はOR
7、NR
8R
9、NHOHから選択され;
R
7はHならびに直鎖および分岐のC
1-C
4アルキルから選択され;
R
8およびR
9 は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC
1-C
4アルキルから選択される、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
Xがフェニレン環である場合、R
1は直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
8アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
6アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
6アルキニル;置換および非置換のC
4-C
6シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
6シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
Xが1つまたは2つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環である場合、R
1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
8アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
6アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
6アルキニル;置換および非置換のC
3-C
6シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
6シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
2~R
5は互いに独立に、H、F、Cl、Br、I;非置換および置換のC
1-C
2アルキル、C
2アルケニル、およびC
2アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
Xはピリジンであり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;
R
1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
6アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
6アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
6アルキニル;置換および非置換のC
3-C
6シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
6シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基はFであり、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよい、
請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
Xがフェニレン環である場合、R
1は直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
6アルキル;置換および非置換のC
4-C
6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基はFであり、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
Xが1つまたは2つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環である場合、R
1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
6アルキル;置換および非置換のC
3-C
6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基はFであり、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
2~R
5は互いに独立に、H;F;非置換および置換のC
1-C
2アルキルから選択され、アルキルと表記された基の置換基はFであり;
YはOであり;
ZはF、Cl、Br;非置換および置換のC
1-C
2アルキルから選択され、アルキルと表記された基の置換基はFであり;
R
6はOR
7、NR
8R
9から選択される、
請求項1、2、4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1、2、4、5のいずれか一項に定義される化合物および/またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
R
6はOR
7、NR
8R
9、NHOHから選択され、R
7は直鎖および分岐のC
1-C
6アルキルから選択され、
扁平上皮癌、皮膚および肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌腫瘍、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍、甲状腺癌の群より選択される、個体における疾患の治療のための、
医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に定義される化合物および/またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
ここで、Xがフェニレン環である場合、フェニレン環Xは、エーテル基に対して2位および6位においてF、Cl、またはBr(置換基Z)により置換されておらず、R
1が直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
16アルキル;直鎖および分岐、置換および非置換のC
4-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
8アルキニル;置換および非置換のC
4シクロアルキル、C
5シクロアルキル、C
7シクロアルキル、C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
Xが1つまたは2つのN原子を含有するヘテロ環である場合、R
1は直鎖および分岐、非置換および置換のC
2アルキル、C
3アルキル、C
4アルキル、C
5アルキル、C
6アルキル、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル、C
12アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルキニル;置換および非置換のC
3-C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
2~R
5は互いに独立に、H、F、Cl、Br、I;非置換および置換のC
1-C
2アルキル、C
2-アルケニルおよびC
2-アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり;
ZはF、Cl、Br、非置換および置換のC
1-C
2アルキル、C
2-アルキニルから選択され、アルキルおよびアルキニルと表記された基の置換基はFであり;
R
6はOR
7、NR
8R
9、NHOHから選択され;
R
7はHならびに直鎖および分岐のC
1-C
4アルキルから選択され;
R
8およびR
9は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC
1-C
4アルキルから選択され、
扁平上皮癌、皮膚および肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌腫瘍、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍、甲状腺癌の群より選択される、個体における疾患の治療のための、
医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に定義される化合物、および/またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
R
1は直鎖および分岐、非置換および置換のC
6アルキル、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキル、C
16アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
8アルキニル;置換および非置換のC
4-C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
6はOR
7、NR
8R
9、NHOHから選択され;
R
7は直鎖および分岐のC
2アルキル、C
3アルキル、C
4アルキル、C
5アルキル、C
6アルキルから選択され、
扁平上皮癌、皮膚および肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌腫瘍、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍、甲状腺癌の群より選択される、個体における疾患の治療のための、
医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に定義される化合物、および/またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
ここで、Xがフェニレン環である場合、フェニレン環Xは、Cl(置換基Z)により置換されておらず、R
1が分岐、非置換および置換のC
6アルキル、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキル、C
16アルキル;直鎖および分岐、置換および非置換のC
4-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
8アルキニル;置換および非置換のC
4シクロアルキル、C
5シクロアルキル、C
7シクロアルキル、C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
Xがピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンから選択されるヘテロ環である場合、R
1は直鎖および分岐、非置換および置換のC
6アルキル、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル、C
12アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルキニル;置換および非置換のC
3-C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
2~R
5は互いに独立に、H、F、Cl、Br、I;非置換および置換のC
1-C
2アルキル、C
2-アルケニルおよびC
2-アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり;
ZはF、Cl、Br、非置換および置換のC
1-C
2アルキル、C
2-アルキニルから選択され、アルキルおよびアルキニルと表記された基の置換基はFであり;
R
7はHおよび直鎖および分岐のC
1-C
4アルキルから選択され;
R
8およびR
9は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC
1-C
4アルキルから選択され、
扁平上皮癌、皮膚および肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌腫瘍、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍、甲状腺癌の群より選択される、個体における疾患の治療のための、
医薬組成物。
【請求項11】
不活性担体と混合された、請求項1、2、4、5のいずれか一項に定義される化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、医薬組成物であって、
R
6はOR
7、NR
8R
9、NHOHから選択され、R
7は直鎖および分岐のC
1-C
6アルキルから選択され、
扁平上皮癌、皮膚および肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌腫瘍、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍、甲状腺癌の群より選択される、個体における疾患の治療のための、
医薬組成物。
【請求項12】
請求項1において定義される化合物、および/またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
R
1が直鎖および分岐、非置換および置換のC
6アルキル、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル、C
12アルキル、C
13アルキル、C
14アルキル、C
15アルキル、C
16アルキル;直鎖および分岐、置換および非置換のC
4-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
4-C
8アルキニル;置換および非置換のC
4-C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され;アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
2、R
3、R
4、およびR
5の1つまたは2つはHではない、
扁平上皮癌、皮膚および肺の扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌腫瘍、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍、甲状腺癌の群より選択される、個体における疾患の治療のための、
医薬組成物。
【請求項13】
前記個体はヒトを含む哺乳動物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記疾患が、Notchシグナリング活性の低減に関連する、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Notchシグナリングのエンハンサーであり、かつがんなどのNotch関連悪性腫瘍、変性筋疾患、乾癬およびアトピー性皮膚炎のような皮膚疾患、および免疫学的障害の治療、ならびにがんの免疫療法における使用のために役立つ化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Notchシグナリングは、胚発生および成体組織のホメオスタシスにおいて決定的な役割を果たす近距離細胞間シグナリング経路である。細胞文脈に応じて、Notchシグナリングは細胞運命の決定、分化、アポトーシスおよび増殖の制御だけではなく、幹細胞の維持にも関与している。細胞の枠組み内でのNotchシグナリングの存在と強度は時間空間的に厳密にコントロールされている。その結果、Notch活性の異常はさまざまな疾患状態を引き起こす。Notchは歴史的にはがん遺伝子として同定されたが、最近の10年以内の研究によりNotchシグナリングの腫瘍抑制作用も示されている(Koch and Radtke, 2010) (South et al., 2012)。特に、皮膚および神経内分泌器官のようなNotchシグナリングが分化を誘導する組織においては、Notchは腫瘍抑制因子として機能する。よって、皮膚および肺の扁平上皮癌(Wang et al., 2011)、頭頸部がん(Agrawal et al., 2011; Stransky et al., 2011)、甲状腺癌(Yu et al., 2013)または神経内分泌小細胞癌(Sriuranpong et al., 2001)およびカルチノイド腫瘍(Greenblatt et al., 2007)などの神経内分泌腫瘍を含むがそれらに限定されないがんにおけるNotchシグナリングの活性化または増加は、分化を誘導しがん細胞の増殖をブロックする。
【0003】
したがって、Notchシグナリングをコントロールするためのツールの開発が非常に望まれる。本発明は、本明細書に開示される、Notchシグナリングを増強することができ、応用の可能性につながる小分子のファミリーの使用を含む。応用はヒトの医学および獣医学の両方において実施可能である。
【0004】
技術水準
WO 2013/093885は、がんの治療用および/または予防用の、Notchシグナリング経路阻害性を有する6-(4-tert-ブチルフェノキシ)ピリジン-3-アミンおよびその誘導体を開示しており、該がんはNotch依存性がんであり、該Notch依存性がんは、好ましくは、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、黒色腫、脳腫瘍、腫瘍血管新生、および結腸直腸がんを含む群より選択されるものである。
【0005】
Notchシグナリングを活性化することを特徴とする小分子は、限られた数だけが文献に報告されている。それには、バルプロ酸(D.Y. Greenblatt, The Oncologist 2007, 12, 942-951; Mohammed et al., The Oncologist, 2011, 16, 835-843)、レスベラトロール(S.N. Pinchot, Cancer 2011, 117, 7, 1386-1398)、フェネチルイソチオシアネート(S.-H. Kim, PLoS One 2011, 6, 10)、およびクリシン(X.M. Yu, Cancer 2013, 119, 4)またはヘスペレチン(P.N. Patel, Ann Surg Oncol 2014)などのいくつかのフラボノイドが含まれる。しかしながら、これらの分子のうちいくつかはNotch増強性を高濃度でしか示さなかった。ここに挙げた化合物の多くは既に治験中であり数種類の腫瘍タイプの抗がん剤として調査されている。
【0006】
Notchシグナリングをアップレギュレーションするための別のアプローチは、JAG-1タンパク質ペプチド断片などのNotchリガンド模倣ペプチドの使用を含む(B.J. Nickoloff, Cell Death and Differentiation 2002, 9, 842-855)。それにもかかわらず、このNotchシグナリングを誘発するツールはなおも開発中のものであり、未だ研究目的にしか利用可能ではない。
【0007】
Notch関連疾患、好ましくは皮膚科学的疾患、免疫学的障害、筋ジストロフィーおよび傷害後の再生能力の低下などの筋疾患、ならびに扁平上皮癌、神経内分泌腫瘍、甲状腺癌などのがんを治療および予防するために、ならびにがんに対する免疫療法のために使用可能な強力なNotchシグナリングエンハンサーの必要性がある。
【0008】
以下の特許出願および科学的出版物は本出願の文脈において興味深いかもしれない:
WO 98/42328、PCT/US98/06037:
「Di-aryl ethers and their derivatives as anti-cancer agents」
WO 93/24442、PCT/JP93/00710::
「Medicine containing benzoic acid derivative as testosterone 5-reductase inhibitor and novel benzoic acid derivative」この出願は、テストステロン5-レダクターゼ阻害剤として役立ちかつとりわけ前立腺がん(前立腺癌)の治療に使用可能ないくつかの安息香酸誘導体を開示している。
WO 94/05153、PCT/US93/08096:
「Herbicidal benzene compounds」
US 5438033、PCT/US92/04644、WO 92/22203:
「Substituted pyridine herbicides」
特定の分子構造を開示するさらなる特許出願および特許はNotchレポーターアッセイにおいて試験された構造という節に挙げられている。
Chemical and Pharmaceutical Bulletin 1999, 47, 8, 1073-1080, S. Igarashi et al:
「A novel class of inhibitors for human steroid 5-reductase: phenoxybenzoic acid derivatives. I」
Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 2011, 21, 4215-4219, C. De Savi et al.:「Selective non zinc binding inhibitors of MMP13」
Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 2012, 22, 1788-1792, T. Nakamura et al.:「Discovery of CS-2100, a potent, orally active and S1P3-sparing S1P3 agonist」
【0009】
しかしながら、Notchシグナリングのエンハンサーとして使用されかつそれに関連する疾患を治療するこれまでに公知の化合物はすべて前述の欠点を有する。
【0010】
したがって、本発明の目的の一つはNotchシグナリングのエンハンサーとして作用する化合物であって、Notchシグナリングの阻害剤によっては治療できないがんおよびその他の疾患の治療に使用可能な化合物を提供すること、または各疾患について、Notchシグナリングの阻害剤の代わりとなる治療法を可能にする化合物を提供することである。前記疾患およびがんは、特にWO 2013/093885に記載されるがんである。
本発明のさらなる目的は、Notchシグナリングのエンハンサーとして作用する化合物であって、上記の疾患を治療することができかつ好ましくは公知の化合物の欠点を示さない化合物を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、Notch1により駆動されるルシフェラーゼアッセイにおけるNotchシグナリング増強活性を示す。
【
図2-1】
図2-1は
図2-2および
図2-3とともに、ルシフェラーゼレポーターアッセイの範囲内で、異なるセッティングにおいてV126を用いた研究を示す。
【
図2-2】
図2-2は
図2-1および
図2-3とともに、ルシフェラーゼレポーターアッセイの範囲内で、異なるセッティングにおいてV126を用いた研究を示す。
【
図2-3】
図2-3は
図2-1および
図2-2とともに、ルシフェラーゼレポーターアッセイの範囲内で、異なるセッティングにおいてV126を用いた研究を示す。
【
図3】
図3は、タンパク質レベルでのインボルクリン発現の上昇を示す。
【
図4-1】
図4-1は
図4-2とともに、V126はMZBの数を対照と比較して2倍にできたがFoBの数には影響を与えなかったことを示す。
【
図4-2】
図4-2は
図4-1とともに、V126はMZBの数を対照と比較して2倍にできたがFoBの数には影響を与えなかったことを示す。
【
図5-1】
図5-1は
図5-2とともに、V126はインビトロでIFNγ産生および分泌の増加を誘導することを示す。
【
図5-2】
図5-2は
図5-1とともに、V126はインビトロでIFNγ産生および分泌の増加を誘導することを示す。
【発明の概要】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、一般式(I)を示す化合物および/またはその医薬的に許容される塩もしくはエステルの、個体内でのNotchシグナリングを増強するための使用に関わる:
式中、
Xはフェニレン環C
6H
4から選択される芳香族環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;またはXは1つまたは2つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;
R
1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
16アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC
2-C
8アルキニル;置換および非置換のC
3-C
8シクロアルキル;置換および非置換のC
5-C
8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N
3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく;
R
2~R
5は互いに独立に、H、F、Cl、Br、I;直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニルおよびC
2-C
4アルキニル、シクロプロピルならびにシクロブチルから選択され、かつアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロプロピルおよびシクロブチルと表記された基の置換基はF、Cl、BrおよびIから選択され;
YはOまたはSであり;
ZはF、Cl、Br、I、直鎖および分岐、非置換および置換のC
1-C
4アルキル、C
2-C
4アルケニル、C
2-C
4アルキニル、シクロプロピルならびにシクロブチルから選択され、かつアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロプロピルおよびシクロブチルと表記された基の置換基はF、Cl、BrおよびIから選択され得;
R
6はOR
7、NR
8R
9、NHOHから選択され;
R
7はHならびに直鎖および分岐のC
1-C
6アルキルから選択され;
R
8およびR
9は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC
1-C
6アルキルから選択される。
【0013】
本明細書において使用される用語「置換」は部分置換と全置換との両方を含む。
【0014】
上に定義された本発明の最も一般的な態様の範囲内において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Aが好ましい:
R1は直鎖および分岐、非置換および置換のC4-C16アルキル;直鎖および分岐、置換および非置換のC4-C8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC4-C8アルキニル;置換および非置換のC4-C8シクロアルキル;置換および非置換のC5-C8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよい。
【0015】
上に定義された最も一般的な態様の範囲内のさらなる態様において、式Iaに示されるようにXがフェニレン環である場合、以下の態様Bが好ましい:
B1:フェニレン環Xは置換されていないかまたは一置換されている(すなわち、H以外に0または1つの置換基Zを含有する);かつ/または
B2:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B3:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてBr(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B4:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B5:フェニレン環XはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環XはF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつまたは
B6:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH
3(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B7:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH
3、-C
2H
5、C
3H
7、および/もしくはC
4H
9(置換基Z)により置換されていない;
B8:フェニレン環Xは-CH
3、-C
2H
5、C
3H
7、および/もしくはC
4H
9により置換されていない。
【0016】
最も一般的な態様の範囲内の上記の好ましい態様は、態様Aと態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、およびB8それぞれとの組み合わせも含む。
【0017】
Xがフェニレン環である場合、R1がC4以上の高級非環式または環式脂肪族基であれば、すなわちR1が態様Aに前記された基から選択された基であれば有利であることが判明している。
【0018】
当業者に公知なように、「アルキル」という用語は、メチル(C1アルキル)、エチル(C2アルキル)、n-プロピル、イソプロピル(C3アルキル)、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチル(C4アルキル)、n-ペンチル(アミル)、2-ペンチル(sec-ペンチル)、3-ペンチル;2-メチルブチル、3-メチルブチル(イソペンチルまたはイソアミル)、3-メチルブト-2-イル、 2-メチルブト-2-イル;2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル) (C5アルキル)、すべての異性体を含むヘキシル基(C6アルキル)、すべての異性体を含むヘプチル基(C7アルキル)、すべての異性体を含むオクチル基(C8アルキル)、すべての異性体を含むノニル基(C9アルキル)、すべての異性体を含むデシル基(C10アルキル)、すべての異性体を含むウンデシル基(C11アルキル)、すべての異性体を含むドデシル基(C12アルキル)、すべての異性体を含むトリデシル基(C13アルキル)、すべての異性体を含むテトラデシル基(C14アルキル)、すべての異性体を含むペンタデシル基(C15アルキル)、ならびにすべての異性体を含むヘキサデシル基(C16アルキル)を含む、脂肪族飽和炭化水素基を指す。
【0019】
当業者に公知なように、「アルケニル」という用語は、エテニル(C2アルケニル)、n-プロペニル、イソプロペニル(C3アルケニル)、n-ブテニル、イソブテニル、sec-ブテニル、およびtert-ブテニル(C4アルケニル)、すべての異性体を含むペンテニル基(C5アルケニル)、すべての異性体を含むヘキセニル基(C6アルケニル)、すべての異性体を含むヘプテニル基(C7アルケニル)、すべての異性体を含むオクテニル基(C8アルケニル)を含む、脂肪族不飽和炭化水素基を指す。
【0020】
「アルキニル」という用語は、二重結合ではなく三重結合を有する上記のC2-C8基を指し、当業者に公知である。例として、エチニル(C2アルキニル)、n-プロピニルおよびイソプロピニル(C3アルキニル)、ブチニルの種々の異性体(C4アルキニル)、ペンチニルの種々の異性体(C5アルキニル)、ヘキシニルの種々の異性体(C6アルキニル)、ヘプチニルの種々の異性体(C7アルキニル)、ならびにオクチニルの種々の異性体(C8アルキニル)が挙げられる。
【0021】
「シクロアルキル」または「シクロアルキル環」は脂肪族環式飽和アルキル基、例えば、シクロプロピル(C3シクロアルキル)、シクロブチル(C4シクロアルキル)、シクロペンチル(C5シクロアルキル)、シクロヘキシル(C6シクロアルキル)、シクロヘプチル(C7シクロアルキル)、シクロオクチル(C8シクロアルキル)を意味する。シクロアルキルの炭素上の各水素は置換基によって置換されていてもよい。
【0022】
「シクロアルケニル」または「シクロアルケニル環」は環式不飽和(1つまたは複数の二重炭素-炭素結合)脂肪族基または芳香族基、例えば、シクロプロペニル(C3シクロアルケニル)、シクロブテニル(C4シクロアルケニル)、シクロペンテニル(C5シクロアルケニル)、シクロヘキセニル(C6シクロアルケニル)、シクロへプテニル(C7シクロアルケニル)、シクロオクテニル(C8シクロアルケニル)を意味する。シクロアルキルの炭素上の各水素は置換基によって置換されていてもよい。
【0023】
置換基R2、R3、R4、およびR5は、それらがHでない場合に、エーテル基に対して2、3、5、および6位にあり得る。好ましくは、R2、R3、R4、およびR5はすべてHであるか、またはR2、R3、R4、およびR5のうち1つもしくは2つはHではなく上に定義された置換基から選択される。本発明の文脈において、本出願を通じて使用される「R2~R5は互いに独立に、~から選択され」との文言は、R2、R3、R4、およびR5のうち1つ、2つ、3つまたは4つがH以外であり、かつR2、R3、R4、およびR5のそれぞれが各態様について定義されたいずれをも意味し得ることを意味する。
【0024】
芳香族環に連結するカルボニル誘導基-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して2位、3位、または4位にあり得、好ましくは4位にあり得る。このことは、好ましい態様において、C(Y)R6基がエーテルブリッジに対して4位(p位)にあるフェノキシ安息香酸誘導体である式(Ia)についても適用される。
【0025】
置換基Zはエーテル基に対して2位、3位、4位、5位、および6位にあり得る。
【0026】
「1つまたは2つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環」という用語は、1つのN原子または2つのN原子のいずれかを含有するヘテロ環を指す。このヘテロ環はピリジン、ピリダジン、ピリミジン、およびピラジンから選択される。式(I)の化合物において、芳香族ヘテロ環はエーテルブリッジにおいて化学結合を介してOに連結し、かつヘテロ環の別の位置でカルボニル誘導基に連結していることから、該芳香族ヘテロ環の少なくとも2つのH原子が化学結合により置換されていることが示されている。さらなるH原子、例えば1つ、2つ、3つ、または4つ、好ましくは1つのH原子がZ基により置換されていてもよい。
【0027】
本発明の態様において、Notchシグナリングを増強する化合物はフェノキシ安息香酸およびフェノキシニコチン酸ならびにそれらの誘導体のファミリーに属する。当業者は適当な誘導体を知っている。公知の例としてエステルおよびアミドが挙げられる。
【0028】
本発明のさらなる態様において、本発明は、Notchシグナリング活性の低減に関連する疾患の治療のための、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてを含む、式(I)に関連して定義された化合物および/またはその医薬的に許容される塩もしくはエステルに関する。
【0029】
本発明の好ましい態様において、R1~R9、X、Y、およびZという記号は以下の意味を有する:
Xはフェニレン環C6H4から選択される芳香族環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;またはXは1つまたは2つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;
R1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC1-C12アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC2-C8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC2-C8アルキニル;置換および非置換のC3-C8シクロアルキル;置換および非置換のC5-C8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく(すなわち、該表記された基が置換されている場合、それらは該表記された置換基を1つ、2つ、またはいくつか保持している);
R2~R5は互いに独立に、H、F、Cl、Br、I;非置換および置換のC1-C2アルキル、C2アルケニル、C2アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基はFにより置換されていてもよく(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである);
YはOまたはSであり;
ZはF、Cl、Br、I;非置換および置換のC1-C2アルキル、C2アルケニル、C2アルキニルから選択され、かつアルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである);
R6はOR7、NR8R9、NHOHから選択され;
R7はHならびに直鎖および分岐のC1-C4アルキルから選択され;
かつここで、R1、R2~R5、およびZのうち少なくとも1つはH以外の置換基であり、
R8およびR9は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC1-C4アルキルから選択される。
【0030】
上に定義された本発明の好ましい態様の範囲内において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Aが好ましい:
R1は直鎖および分岐、非置換および置換のC4-C12アルキル;直鎖および分岐、置換および非置換のC4-C8アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC4-C8アルキニル;置換および非置換のC4-C8シクロアルキル;置換および非置換のC5-C8シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよい。
【0031】
上に定義された好ましい態様の範囲内のさらなる態様において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Bが好ましい:
B1:フェニレン環Xは置換されていないかまたは一置換されている(すなわち、H以外に0または1つの置換基Zを含有する);かつ/または
B2:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B3:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてBr(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B4:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B5:フェニレン環XはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環XはF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH3(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B7:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH3、-C2H5、C3H7、および/もしくはC4H9(置換基Z)により置換されていない;
B8:フェニレン環Xは-CH3、-C2H5、C3H7、および/もしくはC4H9により置換されていない。
【0032】
上に定義された好ましい態様の範囲内の上記の好ましい態様は、態様Aと態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、およびB8それぞれとの組み合わせも含む。
【0033】
Xがフェニレン環である場合、R1がC4以上の高級非環式または環式脂肪族基であれば、すなわちR1が態様Aに前記された基から選択された基であれば有利であることが判明している。
【0034】
本発明のより好ましい態様において、R1~R9、X、Y、およびZという記号は以下の意味を有する:
Xはフェニレン環C6H4から選択される芳香族環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;またはXは1つまたは2つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;
R1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC1-C8アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC2-C6アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC2-C6アルキニル;置換および非置換のC3-C6シクロアルキル;置換および非置換のC5-C6シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく(すなわち、該表記された基が置換されている場合、それらは該表記された置換基を1つ、2つ、またはいくつか保持している);
R2~R5は互いに独立に、H、F、Cl、Br、I;非置換および置換のC1-C2アルキル、C2アルケニル、およびC2アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである);
YはOまたはSであり;
ZはF、Cl、Br、I;非置換および置換のC1-C2アルキル、C2アルケニル、およびC2アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである);
R6はOR7、NR8R9、NHOHから選択され;
R7はHならびに直鎖および分岐のC1-C4アルキルから選択され;
R8およびR9は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC1-C4アルキルから選択される。
【0035】
上に定義された本発明のより好ましい態様の範囲内において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Aが好ましい:
R1は直鎖および分岐、非置換および置換のC4-C8アルキル;直鎖および分岐、置換および非置換のC4-C6アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC4-C6アルキニル;置換および非置換のC4-C6シクロアルキル;置換および非置換のC5-C6シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよい(すなわち、該表記された基が置換されている場合、それらは該表記された置換基を1つ、2つ、またはいくつか保持している)。
【0036】
上に定義された本発明のより好ましい態様の範囲内のさらなる態様において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Bが好ましい:
B1:フェニレン環Xは置換されていないかまたは一置換されている(すなわち、H以外に0または1つの置換基Zを含有する);かつ/または
B2:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B3:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてBr(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B4:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B5:フェニレン環XはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環XはF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH3(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B7:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH3、-C2H5、C3H7、および/もしくはC4H9(置換基Z)により置換されていない;
B8:フェニレン環Xは-CH3、-C2H5、C3H7、および/もしくはC4H9により置換されていない。
【0037】
前記より好ましい態様の範囲内の上記の好ましい態様は、態様Aと態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、およびB8それぞれとの組み合わせも含む。
【0038】
Xがフェニレン環である場合、R1がC4以上の高級非環式または環式脂肪族基であれば、すなわちR1が態様Aに前記された基から選択された基であれば有利であることが判明している。
【0039】
本発明の更により好ましい態様において、R1~R9、X、Y、およびZという記号は以下の意味を有する:
Xはフェニレン環C6H4から選択される芳香族環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;またはXは1つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;
R1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC1-C6アルキル;直鎖および分岐、非置換および置換のC2-C6アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC2-C6アルキニル;置換および非置換のC3-C6シクロアルキル;置換および非置換のC5-C6シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基はFにより置換されていてもよく(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく(すなわち、該表記された基が置換されている場合、それらは1つ、2つ、またはそれ以上のFを保持している);
R2~R5は互いに独立に、H;F、Cl、Br、I;非置換および置換のC1-C2アルキル、C2アルケニル、およびC2アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである);
YはOまたはSであり;
ZはF、Cl、Br、I;非置換および置換のC1-C2アルキル、C2アルケニル、およびC2アルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、およびアルキニルと表記された基の置換基はFであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである);
R6はOR7、NR8R9、NHOHから選択され;
R7はHならびに直鎖および分岐のC1-C4アルキルから選択され;
R8およびR9は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC1-C4アルキルから選択される。
【0040】
上記の本発明の更により好ましい態様の範囲内において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Aが好ましい:
R1は直鎖および分岐、非置換および置換のC4、C5、およびC6アルキル;直鎖および分岐、置換および非置換のC4、C5、およびC6アルケニル;直鎖および分岐、非置換および置換のC4、C5、およびC6アルキニル;置換および非置換のC4、C5、およびC6シクロアルキル;置換および非置換のC5およびC6シクロアルケニル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、F、Cl、Br、I、-CN、-NCO、-NCS、N3の群より選択され、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよい(すなわち、該表記された基が置換されている場合、それらは該表記された置換基を1つ、2つ、またはいくつか保持している)。
【0041】
上に定義された更により好ましい態様の範囲内のさらなる態様において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Bが好ましい:
B1:フェニレン環Xは置換されていないかまたは一置換されている(すなわち、H以外に0または1つの置換基Zを含有する);かつ/または
B2:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B3:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてBr(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B4:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B5:フェニレン環XはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環XはF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH3(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B7:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH3、-C2H5、C3H7、および/もしくはC4H9(置換基Z)により置換されていない;
B8:フェニレン環Xは-CH3、-C2H5、C3H7、および/もしくはC4H9により置換されていない。
【0042】
前記更により好ましい態様の範囲内の上記の好ましい態様は、態様Aと態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、およびB8それぞれとの組み合わせも含む。
【0043】
Xがフェニレン環である場合、R1がC4以上の高級非環式または環式脂肪族基であれば、すなわちR1が態様Aに前記された基から選択された基であれば有利であることが判明している。
【0044】
本発明の一番好ましい態様において、R1~R9、X、Y、およびZという記号は以下の意味を有する:
Xはフェニレン環C6H4から選択される芳香族環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;またはXは1つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;
R1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC1-C6アルキル;置換および非置換のC3-C6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、Fであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく(すなわち、該表記された基が置換されている場合、それらは1つ、2つ、またはいくつかのFを保持している);
R2~R5は互いに独立に、H;F;非置換および置換のC1-C2アルキルから選択され、かつアルキルと表記された基の置換基はFであり得(すなわち、アルキルと表記された基が置換されている場合、置換基はFである);
YはOであり;
ZはF、Cl、Br、I;非置換および置換のC1-C2アルキルから選択され、かつアルキルと表記された基はFにより置換されていてもよく(すなわち、アルキルと表記された基が置換されている場合、置換基はFである);
R6はOR7、NR8R9から選択され;
R7はHならびに直鎖および分岐のC1-C4アルキルから選択され;
R8およびR9は互いに独立に、Hならびに直鎖および分岐のC1-C4アルキルから選択される。
【0045】
二番目に好ましい態様において、置換基X、R2~R5、Y、Z、およびR6~R9は一番好ましい態様について定義したのと同じ意味を有し、かつ
R1は直鎖および分岐、非置換および置換のC1-C6アルキル;置換および非置換のC3-C6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、Fであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよい(すなわち、該表記された基が置換されている場合、それらは1つ、2つ、またはいくつかのFを保持している)。
【0046】
上に定義された本発明の一番および二番目に好ましい態様の範囲内において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Aが好ましい:
R1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC4、C5、およびC6アルキル;置換および非置換のC4、C5、およびC6シクロアルキル;アダマンチルおよびノルボルニルから選択され、アルキル、シクロアルキル、アダマンチルならびにノルボルニルと表記された基の置換基は、Fであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよい、すなわち、該表記された基は1つ、2つ、またはいくつかのFを保持し得る(一番好ましい態様)か;または
R1は直鎖および分岐、非置換および置換のC4、C5、およびC6アルキル;置換および非置換のC4、C5、およびC6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、Fであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよい(すなわち、該表記された基は1つ、2つ、またはいくつかのFを保持し得る) (二番目に好ましい態様)。
【0047】
上に定義された一番および二番目に好ましい態様の範囲内のさらなる態様において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Bが好ましい:
上に定義された最も一般的な態様の範囲内のさらなる態様において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Bが好ましい:
B1:フェニレン環Xは置換されていないかまたは一置換されている(すなわち、H以外に0または1つの置換基Zを含有する);かつ/または
B2:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B3:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてBr(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B4:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位においてF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B5:フェニレン環XはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環XはF、Cl、Br、もしくはI(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B6:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH3(置換基Z)により置換されていない;かつ/または
B7:フェニレン環Xはエーテル基(位置oおよびo’)に対して2位および6位において-CH3、-C2H5、C3H7、および/もしくはC4H9(置換基Z)により置換されていない;
B8:フェニレン環Xは-CH3、-C2H5、C3H7、および/もしくはC4H9により置換されていない。
【0048】
一番および二番目に好ましい態様の範囲内の上記の好ましい態様は、態様Aと態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、およびB8それぞれとの組み合わせも含む。
【0049】
Xがフェニレン環である場合、R1がC4以上の高級非環式または環式脂肪族基であれば、すなわちR1が態様Aに前記された基から選択された基であれば有利であることが判明している。
【0050】
本発明のもう一つの好ましい態様において、R1はH;直鎖および分岐、非置換および置換のC1-C6アルキル、好ましくは直鎖および分岐、置換および非置換のC1-C5アルキル;置換および非置換のC3-C6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基はFにより置換されていてもよく(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく(すなわち、該表記された基は1つ、2つ、またはいくつかのFを保持し得る)、かつR2~R5、X、Y、Z、R6、R7、ならびにR8およびR9は、前記一般的な、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様において定義されている意味を有する。
【0051】
上に定義された本発明の好ましい態様の範囲内において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Aが好ましい:
R1はH、直鎖および分岐、非置換および置換のC4、C5、およびC6アルキル;置換および非置換のC4、C5、およびC6シクロアルキル、好ましくはC5およびC6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、Fであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく(すなわち、該表記された基は1つ、2つ、またはいくつかのFを保持し得る);かつR2~R5、X、Y、Z、R6、R7、ならびにR8およびR9は、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様において定義されている意味を有し;フェニレン環Xの置換基および置換パターンは、態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、およびB7に記載のとおりである。
【0052】
上記の前記好ましい態様は、態様Aと態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、およびB8それぞれとの組み合わせも含む。
【0053】
Xがフェニレン環である場合、R1がC4以上の高級非環式または環式脂肪族基であれば、すなわちR1が態様Aに前記された基から選択された基であれば有利であることが判明している。
【0054】
本発明のもう一つの好ましい態様において、R1は直鎖および分岐、非置換および置換のC1-C6アルキル、好ましくは直鎖および分岐、置換および非置換のC1-C5アルキル;置換および非置換のC3-C6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基はFにより置換されていてもよく(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく(すなわち、該表記された基1つ、2つ、またはいくつかのFを保持し得る)、かつR2~R5、X、Y、Z、R6、R7、ならびにR8およびR9は、前記一般的な、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様において定義されている意味を有する。
【0055】
上に定義された本発明の好ましい態様の範囲内において、Xがフェニレン環である場合、以下の態様Aが好ましい:
R1は直鎖および分岐、非置換および置換のC4、C5、およびC6アルキル;置換および非置換のC4、C5、およびC6シクロアルキル、好ましくはC5およびC6シクロアルキル;アダマンチルならびにノルボルニルから選択され、アルキル、シクロアルキル、アダマンチルおよびノルボルニルと表記された基の置換基は、Fであり得(すなわち、該表記された基が置換されている場合、置換基はFである)、かつ該表記された基は単置換または多置換されていてもよく(すなわち、該表記された基は1つ、2つ、またはいくつかのFを保持し得る);かつR2~R5、X、Y、Z、R6、R7、ならびにR8およびR9は、前記一般的な、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様において定義されている意味を有し;フェニレン環Xの置換基および置換パターンは、態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、およびB7に記載のとおりである。
【0056】
上記の前記好ましい態様は、態様Aと態様B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、およびB8それぞれとの組み合わせも含む。
【0057】
Xがフェニレン環である場合、R1がC4以上の高級非環式または環式脂肪族基であれば、すなわちR1が態様Aに前記された基から選択された基であれば有利であることが判明している。
【0058】
本発明のもう一つの好ましい態様において、R1は-C(CH3)3、-C(CH3)2C2H5、シクロヘキシル、およびアダマンタニルから選択される基であり、かつR2~R5、X、Y、Z、R6、R7、ならびにR8およびR9は、Xが置換または無置換フェニレン基である場合についての定義を含め、前記一般的な、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様において定義されている意味を有する。
【0059】
本発明のもう一つの好ましい態様において、芳香族環に連結するカルボニル誘導基-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、かつR1、R2~R5、X、Y、Z、R6、R7、ならびにR8およびR9は、Xが置換または無置換フェニレン基である場合についての定義を含め、前記一般的な、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様において定義されている意味を有する。
【0060】
本発明のもう一つの好ましい態様において、Xはフェニレン環C6H4から選択される芳香族環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;またはXは1つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;かつR1、R2~R5、X、Y、Z、R6、R7、ならびにR8およびR9は、Xが置換または無置換フェニレン基である場合についての定義を含め、前記一般的な、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様において定義されている意味を有する。
【0061】
本発明のもう一つの好ましい態様において、Xはフェニレン環C6H4から選択される芳香族環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;またはXはエーテルブリッジに対して2位に1つのN原子を含有する6員芳香族ヘテロ環であり、ここで1つまたは複数のH原子は1つまたは複数の置換基Zにより独立に置換されていてもよく;かつR1、R2~R5、X、Y、Z、R6、R7、ならびにR8およびR9は、Xが置換または無置換フェニレン基である場合についての定義を含め、前記一般的な、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様において定義されている意味を有する。
【0062】
本発明のさらに好ましい態様において、R1がHまたはCH3である場合、Xがフェニレン基ならば、R2~R5およびZのうち少なくとも1つはH以外の置換基である。これは、本発明の前記一般的な、前記好ましい、前記より好ましい、前記更により好ましい、前記一番好ましい、または前記二番目に好ましい態様に適用される。
【0063】
本出願の文脈において用いられる「個体」という用語は、いかなる種類の動物、好ましくは哺乳動物、更により好ましくはヒトをも包含する。
【0064】
Notchシグナリングを増強する活性を示す本発明の好ましい化合物が以下に図示される。場合により、化合物はそれぞれ一般式Iに関連して定義される本発明の一般的な化合物の群、または、前もって定義された好ましい化合物、より好ましい化合物、更により好ましい化合物、一番好ましい化合物、もしくは二番目に好ましい化合物の群に分類され得る。
・Journal of Materials Chemistry C: Materials for Optical and Electronic Devices (2013), 1 (34), 5315-5321, Hachisuga et al.:「Flying-seed-like liquid crystals 3: new guideline for the induction of mesomorphism by using bulky groups instead of long alkyl chains.」
・Jpn. Kokai Tokkyo Koho (2012), JP 2012056851 A 20120322, Ito et al.:「Photochemical preparation of aromatic carboxylic acids from aromatic compounds using anthraquinone compounds.」
・WO 93/24442, PCT/JP93/00710:「Medicine containing benzoic acid derivative as testosterone 5-reductase inhibitor and novel benzoic acid derivative.」
【0065】
本発明はまた、個体内でのNotchシグナリングを増強するための、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてにおける、一般式(I)を示す化合物および/またはその医薬的に許容される塩もしくはエステル、ならびに上に図示された個々の化合物である化合物に関する。
【0066】
本発明のさらなる態様において、本発明は、Notchシグナリング活性の低減に関連する疾患の治療のための、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてを含む、式(I)に関連して定義された化合物および/またはその医薬的に許容される塩もしくはエステル、ならびに上に図示された個々の化合物である化合物に関する。
【0067】
本発明は、一般的な、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてにおける、一般式(I)を示す化合物および/またはその医薬的に許容される塩もしくはエステル、ならびに上に図示された個々の化合物である化合物を個体に投与する工程を含む、個体の疾患を治療する方法も含む。
【0068】
本発明の化合物によって治療可能な疾患は、アトピー性皮膚炎、乾癬を含む皮膚科学的障害;免疫関連障害;皮膚および肺の扁平上皮癌などの扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍などの神経内分泌腫瘍、甲状腺癌を含むがそれらに限定されないがん;ならびに筋ジストロフィーおよび傷害後の再生能力の低下を含む筋障害の群より選択される疾患を含み;かつ本発明の化合物はがんの免疫療法において使用可能である。
【0069】
本出願の文脈において、「傷害後の再生能力の低下」という文言は、好ましくは、筋ジストロフィーなどの疾患;ヒピバカイン(hypivacaine)またはリドカインなどのミオトキシン剤への曝露;穴または挫傷などの鋭的外傷または鈍的外傷;虚血;高温または低温への曝露;特に伸張性運動後の運動誘導性筋損傷および再生などにおける筋肉自身の収縮:によって生じる筋傷害に関する。
【0070】
本発明の化合物によって好ましく治療される疾患としては、アトピー性皮膚炎、乾癬、皮膚および肺の扁平上皮癌などの扁平上皮癌、非黒色腫皮膚がん、頭頸部がん、基底細胞癌および日光角化症が挙げられる。
【0071】
本発明の化合物によって最も好ましく治療される疾患としては、免疫関連障害が挙げられる。
【0072】
本発明のさらに最も好ましい態様において、前記化合物はがんの免疫療法において使用される。
【0073】
本発明の教示の範囲内において、一般的な、好ましい、最も好ましい態様において上述された疾患は、Notchシグナリングが低いことに起因するため、本発明の化合物を投与することによって治療可能である。
【0074】
好ましくは、本発明の化合物は、特にXがフェニレン環である場合、前立腺がん(前立腺癌)の治療には用いられない。
【0075】
本発明のさらなる態様において、本発明は、アトピー性皮膚炎、乾癬を含む皮膚科学的障害;免疫関連障害;皮膚および肺の扁平上皮癌などの扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍などの神経内分泌腫瘍、ならびに甲状腺癌を含むがそれらに限定されないがん;筋ジストロフィーおよび傷害後の再生能力の低下を含む筋障害の群より選択される疾患の治療のため、ならびにがんの免疫療法における使用のための、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてを含む、式(I)に関連して定義された化合物および/またはその医薬的に許容される塩もしくはエステル、ならびに上に図示された個々の化合物である化合物に関する。好ましくは、特にXがフェニレン環である場合、前立腺がん(前立腺癌)の治療の目的では、本発明は記載の化合物には関しない。
【0076】
本発明の化合物によって好ましく治療される疾患としては、アトピー性皮膚炎、乾癬、皮膚および肺の扁平上皮癌などの扁平上皮癌、非黒色腫皮膚がん、頭頸部がん、基底細胞癌および日光角化症が挙げられる。
【0077】
本発明の化合物によって最も好ましく治療される疾患としては、免疫関連障害が挙げられる。
【0078】
本発明のさらに最も好ましい態様において、前記化合物はがんの免疫療法において使用される。
【0079】
本発明は、薬物として使用され得ることが公知である(医薬活性が公知である)化合物を除いて、薬物として使用するための、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてを含む、式(I)に関連して定義された化合物および/またはその医薬的に許容される塩もしくはエステル、ならびに上に図示された個々の化合物である化合物にも関する。
【0080】
当技術分野において生理活性を有すると記載されている化合物は、式(Ia)の化合物であって、式中、R2~R5はすべてHであり、フェニレン環はZにより置換されておらず、-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、YはOであり、R6はOR7であり、R7はHであり、かつR1はHまたはCH3である、化合物である。これらの化合物は、いくつかのがん疾患を含むPin-1関連疾患の治療という文脈でUS 2004/0180889に開示されている。本出願においてはこれらの化合物の生理活性について示されていない。
【0081】
医薬活性を有することが公知であるさらなる式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物であって、式中、R2~R5はすべてHであり、フェニレン環はZにより置換されておらず、-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、YはOであり、R6はOR7であり、R7はHであり、かつR1はイソプロピルまたはシクロヘキシルである、化合物;および式(Ia)の化合物であって、式中、R2~R5はすべてHであり、フェニレン環はエーテルブリッジに対して2位でCl (置換基Z)により置換され、-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、YはOであり、R6はOR7であり、R7はHであり、かつR1はH、イソプロピルまたはノルボルニルである、化合物;および式(Ia)の化合物であって、式中、R2~R5はすべてHであり、フェニレン環はエーテルブリッジに対して2位でF (置換基Z)により置換され、-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、YはOであり、R6はOR7であり、R7はHであり、かつR1はメチルである、化合物である。上記化合物(本出願において言及されている化合物V169を含む)は、テストステロン5-レダクターゼ阻害剤としてWO 93/24442において記載されており、特に前立腺がん(前立腺癌)の治療のために使用可能である。
【0082】
それにもかかわらず、本発明は、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてを含む、式(I)に関連してそのように定義された化合物にも関する。そのように公知である化合物は本発明の態様ではない。
【0083】
そのように公知である化合物は、化合物V058、V119、V124、V126、V128、V134、V142、V151、およびV169である。
【0084】
なおさらなるそのように公知である式(I)の化合物は式(Ia)の化合物であって、式中、R2~R5はすべてHであり、フェニレン環はZにより置換されておらず、-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、YはOであり、R6はOR7であり、R7はHであり、かつR1はイソプロピルまたはシクロヘキシルである、化合物;および式(Ia)の化合物であって、式中、R2~R5はすべてHであり、フェニレン環はエーテルブリッジに対して2位でCl (置換基Z)により置換され、-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、YはOであり、R6はOR7であり、R7はHであり、かつR1はH、イソプロピルまたはノルボルニルである、化合物;および式(Ia)の化合物であって、式中、R2~R5はすべてHであり、フェニレン環はエーテルブリッジに対して2位でF (置換基Z)により置換され、-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、YはOであり、R6はOR7であり、R7はHであり、かつR1はメチルである、化合物である。上記化合物(本出願において言及されている化合物V169を含む)は、WO 93/24442において記載されている。
【0085】
当技術分野においてそのように記載されているさらなる化合物は式(Ia)の化合物であって、式中、R2~R5はすべてHであり、フェニレン環はZにより置換されておらず、-C(Y)R6はエーテルブリッジに対して4位にあり、YはOであり、R6はOR7であり、R7はHであり、かつR1はHまたはCH3である、化合物である。これらの化合物は、US 2004/0180889に開示されている。
【0086】
本発明は、併用療法において薬物として使用するための、一般的な、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてを含む、式(I)に関連して定義された化合物および/またはその医薬的に許容される塩もしくはエステル、ならびに上に図示された個々の化合物である化合物であって、手術、放射線療法、化学療法、標的療法、および免疫療法を含むがそれらに限定されないもう一つの治療法と組み合わせて投与される、化合物にも関する。本発明は、アトピー性皮膚炎、乾癬を含む皮膚科学的障害;免疫関連障害;皮膚および肺の扁平上皮癌などの扁平上皮癌、頭頸部がん、非黒色腫皮膚がん、基底細胞癌および日光角化症、神経内分泌小細胞癌およびカルチノイド腫瘍などの神経内分泌腫瘍、ならびに甲状腺癌を含むがそれらに限定されないがん;筋ジストロフィーおよび傷害後の再生能力の低下を含む筋障害の群より選択される疾患の治療のため、ならびにがんの免疫療法における使用のための併用療法において上に定義された化合物を使用することも含む。好ましくは、特にXがフェニレン環である場合、前立腺がん(前立腺癌)の治療の目的では、本発明は記載の化合物には関しない。
【0087】
「併用療法」という用語は、治療の逐次的な組み合わせおよび同時の組み合わせの両方を包含する。
【0088】
前記化合物は以下に記載するようにNotchシグナリングを増強するために用いられ得る。
【0089】
Notch受容体は300 kDaの前駆体として合成され、トランスゴルジコンパートメントにおいてフリン様コンバターゼにより切断される。得られる細胞外/管腔内N末端断片および膜貫通ドメイン/細胞内ドメインC末端断片が、非共有結合により成熟ヘテロダイマー受容体に組み立てられる。Notchの細胞外/管腔内部分はNotchの合成および分泌の間、大規模なN結合型およびO結合型グリコシル化を受けるが、これは前記受容体の適切なフォールディングおよびその後の前記受容体とリガンドとの相互作用にとって重要である。細胞表面への輸送後、Notchシグナル伝達はリガンド結合およびエンドサイトーシスによって開始され、それによりNotchのC末端断片の細胞外部分の、さもなければ到達しがたいADAM10/TACE/Kuz/SUP-17切断部位を露出するのに必要な力が発生する。この部位での切断により、活性化し膜にアンカーされたNotchの型である、Notch細胞外トランケーション(Notch extracellular truncation; NEXT)が産生される。NEXTは次いで膜内のアスパルチルプロテアーゼ複合体であるγ-セクレターゼにより切断され、Notch細胞内シグナル伝達断片である、Notch細胞内ドメイン(Notch intracellular domain; NICD)が放出される。この切断は細胞表面でおよびエンドソーム輸送経路内で起こり得る。NICDがないときは、Notchの標的遺伝子の多くは、CSL転写因子およびさまざまなコリプレッサー(CoRep)を含む転写複合体の形成を通じて能動的に抑圧された状態に維持される。NICDが核に移行すると、CSLと結合していたコリプレッサーは外れ、CSL、NICD、マスターマインド(Mastermind; Mam), およびコアクチベーター(CoAct)からなる転写的に活性な複合体が組み立てられ、Notch標的遺伝子の活性化がもたらされる。
【0090】
この概要により、Notchの合成およびシグナリングの主要な保存された特徴の簡易的な概観が提示される。関与する生化学メカニズムの詳細は分かりやすさのために省略され、Notchに関する略図の位置はさまざまな膜コンパートメント内でのNotchのトポロジーを正確に描写することを意図せず、かつグリコシル化の記号および転写複合体の略図は例示的なものであり特定のグリコシル化部位の場所またはタンパク質-タンパク質相互作用を示唆しない。
【0091】
この説に縛られることは望まないが、Notchシグナリングを増強する特性を有する本発明の化合物は、CSL-NICD複合体を安定化してNotch標的遺伝子の活性化をもたらすと考えられる。
【0092】
病理的状況下で(すなわち、個体が本明細書において定義される疾患に罹患している場合)、本発明のNotchシグナリング増強化合物の投与によりNotch標的遺伝子のレベルの正常化(健康な個体で見られるものと同様)、または更に健康な個体で見られるものより高いレベルのいずれかがもたらされる。
【0093】
本明細書において用いられるように、「Notchシグナリングを増強する」という文言は、それにより本発明の化合物のNotchシグナリングを増強する特性が決定される、Notchにより駆動される細胞内ルシフェラーゼレポーターアッセイに対する効果を指す。Notchにより駆動されるルシフェラーゼレポーターアッセイは、Notch1全長受容体を発現するように操作され、かつCSLにより駆動されるホタルルシフェラーゼ発現コンストラクトおよび正規化のためのNotch非依存性のウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼコンストラクトをもつように操作されたHeLa細胞からなる。このような細胞が、NotchリガンドDll4を発現する操作されたHeLa細胞と共培養されてNotchシグナリングが誘導され、それによりホタルルシフェラーゼ酵素の発現が誘導される。ルシフェラーゼによるレポーターシグナルの強度がNotchシグナリングの尺度とみなされる。
【0094】
化合物は、該化合物がDMSOと比較して、表記のNotch依存性ルシフェラーゼレポーターアッセイの枠組み内でのルシフェラーゼによるレポーターシグナルの、≧1.5倍の増加、好ましくは≧2.0倍の増加、より好ましくは≧2.5倍の増加、および最も好ましくは≧3.0倍の増加をもたらす際に、Notchシグナリングを増強する効果を有するとみなされる。
【0095】
Notchは歴史的にはがん遺伝子として同定されたが、最近の10年以内の研究によりNotchシグナリングの腫瘍抑制作用も示されている(Koch and Radtke, 2010) (South et al., 2012)。特に、皮膚や神経内分泌器官のようなNotchシグナリングが分化を誘導する組織においては、Notchは腫瘍抑制因子として機能する。皮膚および肺の扁平上皮癌(Wang et al., 2011)、頭頸部がん(Agrawal et al., 2011; Stransky et al., 2011)、甲状腺癌(Yu et al., 2013)または神経内分泌小細胞癌(Sriuranpong et al., 2001)およびカルチノイド腫瘍(Greenblatt et al., 2007)などの神経内分泌腫瘍を含むがそれらに限定されないがんにおけるNotchシグナリングの活性化または増加は、分化を誘導しがん細胞の増殖をブロックする。
【0096】
本発明の化合物および/またはその塩もしくはエステルのいくつかは、異なる立体異性型で存在する。これらの型すべてが本発明の対象である。
【0097】
以下に本明細書において包含される本発明の化合物の例示的な塩を記載する。以下に記載する異なる塩のリストは完全かつ限定的であることを意図しない。
【0098】
一つまたは複数の酸性基を含有する本発明の化合物は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としてまたはアンモニウム塩として、本発明に従って使用可能である。そのような塩のより正確な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、あるいはアンモニアまたはエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンもしくはアミノ酸などの有機アミンとの塩が挙げられる。
【0099】
一つまたは複数の塩基性基、すなわちプロトン化可能な基を含有する本発明の化合物は存在し得、かつその無機酸付加塩または有機酸付加塩の形態で本発明に従って使用可能である。
【0100】
カルボン酸基またはチオカルボン酸基を含有する本発明の化合物は、それぞれのエステルの形態で、本発明に従って使用可能である。エステルは式(I)のもので、式中、カルボキシ基またはチオカルボキシ基のHは有機残基により置換されている。適切な有機残基は当業者に公知である。好ましい有機残基は以下を含む:
非置換または少なくとも一置換のアルキル、好ましくはC1-C10アルキル、アルケニル、好ましくはC2-C10アルケニル、アルキニル、好ましくはC3-C10アルキニル、および3~6個のC原子を有する、非置換または少なくとも一置換の、飽和または不飽和の、非芳香族または芳香族環であって、環にN、S、またはOの群からの一つまたは複数のヘテロ原子を含有していてもよく、かつ複数のヘテロ原子が存在する際はヘテロ原子は同じであっても異なっていてもよい、環。さらに置換されていてもよい、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、N、S、O、カルボキシ、スルホニルなどからなる群より選択される前記置換基。
【0101】
この芳香族基の例としては、フェニル基などのアリール基およびヘテロアリール基が挙げられるが、アリール基およびヘテロアリール基は、好ましくは上記の置換基によって、置換されていてもよい。
【0102】
「C1-C4アルキル」という用語は、メチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルを指す。
【0103】
「C3-7シクロアルキル」または「C3-7シクロアルキル環」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどの3~7個の炭素原子を有する環状のアルキル鎖を意味する。シクロアルキル炭素上の各水素は置換基によって置換されていてもよい。
【0104】
「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環」は、二重結合を上限数まで含有してもよいシクロペンタン環、シクロヘキサン環またはシクロヘプタン環(完全に飽和した、部分的に飽和した、または不飽和の芳香族環または非芳香族環)を意味し、少なくとも1つから4つまでの炭素原子が硫黄(-S(O)-、-S(O)2-を含む)、酸素、および窒素(=N(O)-を含む)からなる群より選択されるヘテロ原子によって置換されており、かつ該環は分子の残りの部分とは炭素原子または窒素原子を介して連結している。ヘテロ環の例として、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、イソキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、スルホラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、テトラゾール、トリアゾール、トリアゾリジン、テトラゾリジン、アゼピンまたはホモピペラジンが挙げられるがそれらに限定されない。「ヘテロ環」はアゼチジンも意味する。
【0105】
適切な塩の例としては、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸(napthalenedisulfonic acid)、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、および当業者に公知である他の酸が挙げられる。
【0106】
「医薬的に許容される」という文言は、動物好ましくはヒトにおける使用について、EMEA (ヨーロッパ)および/またはFDA (米国)および/または他のいずれかの国の規制当局などの規制当局によって認可されていることを意味する。
【0107】
いくつかの塩基性基を含有する本発明の化合物は、同時に異なる塩を生じる。
【0108】
本発明の化合物が分子内に酸性基および塩基性基を同時に含有している場合は、本発明は、言及された塩形態に加えて、分子内塩またはベタインも包含する。
【0109】
本発明の化合物のそれぞれの塩は、当業者に公知の通例の方法、例えば該化合物を有機もしくは無機の酸もしくは塩基と溶媒もしくは分散媒中で接触させること、または他の塩との陰イオン交換もしくは陽イオン交換によって得ることができる。
【0110】
さらに、本発明は、生理学的適合性が低いために医薬における使用に直ぐ適切ではなくても、例えば医薬的に許容可能な塩の調製のための化学反応の中間体として使用可能であるか、または、適切なインビトロアッセイなどのいずれかの適切な方法において、本発明の化合物のNotchシグナリング活性を研究するのに適切であり得る、本発明の化合物のすべての塩を包含する。
【0111】
本発明は、さらに、本発明の化合物のすべての溶媒和化合物および互変異性体を包含する。
【0112】
本発明は、さらに、生理学的に許容され切断可能な基を含有し、かつ動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおいて本発明の化合物に代謝される本発明の化合物の誘導体/プロドラッグ(その塩を含む)をさらに包含する。
【0113】
本発明は、さらに、本発明の化合物の代謝産物を包含する。
【0114】
「代謝産物」という用語は、細胞または生体、好ましくは哺乳動物において本発明の化合物のいずれかから誘導されるすべての分子を指す。
【0115】
好ましくは、前記用語は生理学的条件下でそのような細胞または生体のいずれに存在するいかなる分子とも異なる分子に関する。
【0116】
本発明の化合物の代謝産物の構造は、さまざまな適当な方法を用いることで、すべての当業者に明らかになると考えられる。
【0117】
一般式(I)の化合物は、文献に発表された方法またはそれぞれ類似の方法に従って調製可能である。
【0118】
前記化合物の合成方法は、例えば、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie (Methods of Organic Chemistry), Thieme-Verlag, StuttgartまたはOrganic Reactions, John Wiley & Sons, New Yorkに記載されている。
【0119】
個々の場合の状況に応じて、一般式(I)の化合物の合成の間の副反応を避けるために、保護基を導入することにより官能基を一時的にブロックして合成の後の段階においてそれらを脱保護すること、または後の段階において望ましい官能基に変換される前駆体基の形態で官能基を導入することが必要または有利であり得る。そのような合成戦略ならびに個々の場合において適切な保護基および前駆体基は当業者に公知である。
【0120】
望ましい場合、式(I)の化合物は、再結晶化またはクロマトグラフィーによるような通例の精製手順によって精製され得る。式(I)の化合物の調製の出発化合物は市販されているかまたは文献の手順に従ってもしくは文献の手順と類似的に調製可能である。
【0121】
本発明の化合物の調製のための詳細なプロトコルは後述される。
【0122】
本発明は、不活性担体と混合された、好ましい、より好ましい、更により好ましい、一番好ましい、および二番目に好ましい態様のすべてを含む、式(I)に関連して定義された化合物を含む医薬組成物にも関する。該不活性担体は医薬担体である。
【0123】
「担体」という用語は、薬とともに施与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は水および油などの無菌の液体であり得る。油としては、石油、動物、植物、または合成由来のものが挙げられ、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などが含まれるが、それらに限定されない。医薬組成物が経口投与される場合は、水が好ましい担体である。医薬組成物が静脈内投与される場合は、生理食塩水および水性デキストロースが好ましい担体である。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセリン溶液は注射用溶液のための液体担体として好ましく用いられる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。望ましい場合、組成物は少量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤も含有し得る。これらの組成物は溶剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態を取り得る。組成物は、従前の結合剤および担体、例えばトリグリセリドとともに坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含み得る。適切な医薬担体の例はE. W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者への適正な投与のための形態を提供するために適切な量の担体と共に、好ましくは精製された形態の治療的に有効な量の薬を含有する。製剤は投与様式に適合しているべきである。
【0124】
さらに、本発明は、置換されたフェノールと電子不足の芳香族(ヘテロ芳香族)ハロゲン化物とを、好ましくはSNArカップリングを介して、カップリングする工程を含む、本発明の化合物を調整するための方法に関する。その様に合成されたビアリールエーテルは、加水分解、エステル化、およびアミド化を含む手順によって、さらに誘導体化される。化合物は、酸塩基抽出によって、またはシリカゲルカラムクロマトグラフィー、もしくは沈殿/再結晶化によって、または分取薄層クロマトグラフィー(TLC)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)など当業者に公知の他の精製方法によって精製され得る。
【0125】
本発明の化合物およびその医薬的に許容可能な塩は、任意に、Notchシグナリングを増強するおよび/または上記の疾患を治療もしくは予防するのに適切な他の医薬的に活性な化合物と組み合わせて、あるいはNotchシグナリングを増強するおよび/またはそれらの疾患を治療もしくは予防するのに適切な当業者に公知の他の薬物と組み合わせて、それら自身のみで医薬として、お互い混合して、または医薬製剤の形態で、動物、好ましくは哺乳動物、特にはヒトに投与することができる。
【0126】
リポソーム、マイクロ粒子、およびマイクロカプセルへのカプセル化など、さまざまな送達系が公知であり、Notchシグナリングを増強するためおよび/または記載の疾患を治療するために本発明の化合物を投与するのに用いることができる。
【0127】
中枢神経系に直接送達されないとしても、医薬化合物が血液脳関門を越えられるように投与方法を選択および/または改変するのが有利である。
【0128】
導入方法としては皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の経路が挙げられるが、それらに限定されない。
【0129】
化合物は、注入による、ボーラス注射による、上皮の内層または皮膚粘膜の内層(mucocutaneous lining)からの吸収によるなど、いずれかの好都合な経路により投与されてよく、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与されてもよい。
【0130】
投与は全身投与または局所投与でよい。加えて、本発明の医薬組成物を、脳室内および髄腔内注射などのいずれかの適切な経路により中枢神経系に導入することが望ましい場合もある。脳室内注射は、例えばオンマイヤーレザバー(Ommaya reservoir)などのレザバーに取り付けられた、脳室内カテーテルにより容易になると考えられる。吸入器または噴霧器の使用およびエアロゾル化剤との製剤化などにより、肺投与もまた用いられ得る。
【0131】
もう一つの態様において、薬はベシクル内で、特にリポソーム内で送達可能である(Langer (1990) Science 249: 1527-1533; Treat et al. (1989) Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler, eds., Liss, New York, 353-365; Lopez-Berestein, ibid., 317-327)。
【0132】
さらにもう一つの態様において、薬は徐放系により送達可能である。一つの態様において、ポンプを使用してもよい(Sefton (1987) CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201-240; Buchwald et al. (1980) Surgery 88: 507-516; Saudek et al. (1989) N. Engl. J. Med. 321: 574-579)。もう一つの態様において、高分子材料を使用してもよい(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise, eds., CRC Press, Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball, eds., Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas (1983) Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23: 61; Levy et al. (1985) Science 228: 190-192; During et al. (1989) Ann. Neurol. 25: 351-356; Howard et al. (1989) J. Neurosurg. 71: 858-863)。さらにもう一つの態様において、徐放系は治療対象すなわち脳に近接して置かれてもよく、したがって全身投与量(systemic dose)のごく一部分しか要しない(例えば、Goodson, 1984, In: Medical Applications of Controlled Release、上記、Vol. 2, 115-138)。その他の徐放系については、Langerによる総説(1990, Science 249: 1527-1533)において論じられている。
【0133】
適当な投与法を選択するために、当業者は、Notchシグナリングを増強するかまたは上記の疾患を治療するために用いられる他の公知の薬物について選択された投与経路についても考慮する。
【0134】
例えば、経口的に摂取される薬物は、錠剤/液剤の両方としておよび静注液として発売された。
【0135】
適当な用量を選択するために、当業者は、前臨床試験および/もしくは臨床試験において毒性でないと示されかつ事前に与えられた値に従い得るか、またはそこからばらつき得る用量を選択する。
【0136】
製剤中に用いられる正確な投与量は、投与経路および疾患または障害の重篤度にも依存し、医者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。しかしながら、静脈内投与の適切な用量範囲は通常、体重1キログラム当たり約20~500マイクログラムの活性化合物である。鼻腔内投与の適切な用量範囲は通常、体重1キログラム当たり約0.01 mgから1 mgである。有効量はインビトロまたは動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から外挿され得る。
【0137】
実験結果
一般的な手順A
式中、HalはFおよびClから選択される。
【0138】
適当な溶媒、好ましくは極性非プロトン溶媒、最も好ましくはDMSO中の、各フェノールおよび安息香酸誘導体または、それぞれ、式(I)に関連して定義された、N原子を1つまたは2つ有する芳香族6員ヘテロ環のカルボン酸誘導体、またはそれらの置換誘導体の溶液は、好ましくは無水K2CO3の添加のもと、限界反応物質が完全に変換されるまで、基質により異なるが80℃と120℃との間の温度で撹拌された。反応は水の添加によりクエンチされ、有機溶媒(好ましくは、基質により異なるがEt2O、EtOAcおよびDCM)によって抽出した。有機層を合わせて飽和水性NaCl溶液により洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、かつ減圧下で乾燥した。粗生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、所望のビアリールエーテルを得た。
【0139】
一般的な手順B
式中、R
6はアルコキシ基、好ましくはOC
2H
5である。
【0140】
エステルの加水分解:EtOH/0.5 M NaOH中の各エステル、好ましくはエチルエステルの溶液は、出発材料が完全に消費されるまで、基質により異なるが40℃と120℃との間の温度、好ましくは80℃で撹拌された。反応混合物は室温まで冷却され、次いで減圧下で濃縮された。残渣は水に溶解され、酸性化され、適当な有機溶媒(好ましくはEtOACまたはDCM)によって抽出された。有機層を合わせて飽和水性NaCl溶液により洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、かつ減圧下で乾燥した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーまたは再結晶化により精製し、所望のカルボン酸を得た。
【0141】
一般的な手順C
式中、R
6はアルコキシ基、好ましくはOC
2H
5である。
【0142】
エステルのアミド化:密閉チューブに各エステル、好ましくはエチルエステルの溶液、および好ましくは適当な溶媒、好ましくはMeOH中の塩化カルシウム、および適当な溶媒、好ましくはMeOH中のNH3溶液を添加した。前記混合物は、反応が完了するまで、基質により異なるが40℃と120℃との間の温度、好ましくは80℃で撹拌された。反応混合物は室温まで冷却され、減圧下で濃縮された。残渣はEtOAcおよび飽和水性NH4Cl溶液に溶解された。水層はEtOAcによって抽出された。有機層を合わせて飽和水性NaCl溶液により洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、かつ減圧下で乾燥した。粗生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、所望のアミドを得た。
【0143】
6-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)ニコチン酸エチル(V042)
一般的な手順A:6-クロロニコチン酸エチル(840 mg、4.53 mmol、1.00当量)、4-(tert-ブチル)フェノール(875 mg、5.82 mmol、1.29当量)、およびK
2CO
3 (958 mg、6.93 mmol、1.53当量)をDMSO (5 mL)中で24時間100℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1/15)による精製から所望の生成物を無色固体として得た(1.23 g、4.10 mmol、90%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
18H
22NO
3
+ [M+H]
+ 300.1594, 実測値: 300.1589;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.88-8.79 (m, 1H), 8.26 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 7.46-7.39 (m, 2H), 7.13-7.04 (m, 2H), 6.91 (dd, J = 8.6, 0.6 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.34 (s, 9H)。
【0144】
6-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)ニコチン酸(V058)
一般的な手順B:6-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)ニコチン酸エチル(V042) (1.22 g、4.08 mmol、1.00当量)をEtOH (12 mL)および0.5 M NaOH (12 mL)の混合物中で2時間80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をDCMを用いて綿ろ過し、さらなる精製無しで無色固体として純粋な所望の生成物を得た(1.10 g、4.05 mmol、99%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
16H
16NO
3
- [M-H]
- 270.1136, 実測値: 270.1134;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 11.38 (s, 1H), 8.84 (m, 1H), 8.33-8.30 (m, 1H), 7.45 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.10 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 1.35 (s, 9H)。
【0145】
6-(4-(tert-ペンチル)フェノキシ)ニコチン酸エチル(V111)
一般的な手順A:6-クロロニコチン酸エチル(205 mg、1.10 mmol、1.00当量)、4-(tert-ペンチル)フェノール(238 mg、1.45 mmol、1.31当量)、およびK
2CO
3 (240 mg、1.73 mmol、1.57当量)をDMSO (2 mL)中で4日間80℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1:20)による精製から所望の生成物を無色油として得た(332 mg、1.06 mmol、96%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
19H
24NO
3
+ [M+H]
+ 314.1751, 実測値: 314.1753;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.85 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.25 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.07 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.89 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.36 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.65 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.37 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.29 (s, 6H), 0.71 (t, J = 7.4 Hz, 3H)。
【0146】
6-(4-シクロヘキシルフェノキシ)ニコチン酸エチル(V112)
一般的な手順A:6-クロロニコチン酸エチル(206 mg、1.11 mmol、1.00当量)、4-シクロヘキシルフェノール(252 mg、1.43 mmol、1.29当量)、およびK
2CO
3 (243 mg、1.76 mmol、1.58当量)をDMSO (2 mL)中で4日間80℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1/20)による精製から所望の生成物を無色固体として得た(333 mg、1.02 mmol、92%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
20H
24NO
3
+ [M+H]
+ 326.1751, 実測値: 326.1757;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.89 (s, 1H), 8.29 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.10 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.93 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.41 (q, J = 6.7 Hz, 2H), 2.59-2.54 (m, 1H), 1.96-1.88 (m, 4H), 1.81-1.77 (m, 1H), 1.51-1.39 (m, 7H), 1.33-1.23 (m, 1H)。
【0147】
6-(4-シクロヘキシルフェノキシ)ニコチン酸(V117)
一般的な手順B:6-(4-シクロヘキシルフェノキシ)ニコチン酸エチル(V112) (172 mg、0.53 mmol、1.00当量)をEtOH (15 mL)および0.5 M NaOH (12 mL)の混合物中で6.5時間80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をDCMからの再結晶化により精製し、無色固体として所望の生成物を得た(72 mg、0.24 mmol、46%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
18H
20NO
3
+ [M+H]
+ 298.1438, 実測値: 298.1441;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.92 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.31 (dd, J = 8.7, 2.3 Hz, 1H), 7.26 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.08 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.94 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 2.61-2.47 (m, 1H), 1.9-1.85 (m, 4H), 1.77-1.74 (m, 1H), 1.44-1.35 (m, 4H), 1.32-1.20 (m, 1H)。
【0148】
6-(4-(tert-ペンチル)フェノキシ)ニコチン酸(V119)
一般的な手順B:6-(4-(tert-ペンチル)フェノキシ)ニコチン酸エチル(V111) (203 mg、0.65 mmol、1.00当量)をEtOH (2 mL)および0.5 M NaOH (2 mL)の混合物中で30分間80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をEtOAcを用いて綿ろ過し、さらなる精製無しで無色固体として純粋な所望の生成物を得た(185 mg、0.65 mmol、100%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
17H
20NO
3
+ [M+H]
+ 286.1438, 実測値: 286.1448;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.64 (m, 1H), 8.17-8.06 (m, 1H), 7.22 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.66 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 1.51 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.15 (s, 6H), 0.57 (t, J = 7.4 Hz, 3H)。
【0149】
4-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)安息香酸エチル(V122)
一般的な手順A:4-フルオロ安息香酸エチル(808 mg、4.80 mmol、1.00当量)、4-(tert-ブチル)フェノール(935 mg、6.22 mmol、1.30当量)、およびK
2CO
3 (2.22 g、16.05 mmol、3.34当量)をDMSO (5 mL)中で10日間100℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1:20)による精製から所望の生成物を無色油として得た(1.01 g、3.39 mmol、71%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
19H
23O
3
+ [M+H]
+ 299.1642, 実測値: 299.1648;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.00 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 4.36 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.34 (s, 9H)。
【0150】
6-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)ニコチンアミド(V124)
一般的な手順C:MeOH (0.5 mL)中の塩化カルシウム六水和物(82 mg、0.37 mmol、1.11当量)および6-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)ニコチン酸エチル(V042) (101 mg、0.34 mmol、1.00当量)をMeOH中の7 M NH
3 (0.5 mL、3.50 mmol、10当量)と共に21時間80℃で撹拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 4%)による精製から所望の生成物を無色固体として得た(64 mg、0.24 mmol、70%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
16H
19N
2O
2
+ [M+H]
+ 271.1441, 実測値: 271.1456;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.61 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 8.14 (dd, J = 8.6, 2.3 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.06 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.32 (s, 2H), 1.33 (s, 9H)。
【0151】
4-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)安息香酸(V126)
一般的な手順B:4-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)安息香酸エチル(V122) (727 mg、2.44 mmol、1.00当量)をEtOH (7.5 mL)および0.5 M NaOH (7.5 mL)の混合物中で1時間80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をDCMを用いて綿ろ過し、さらなる精製無しで無色固体として純粋な所望の生成物を得た(614 mg、2.27 mmol、93%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
17H
19O
3
+ [M+H]
+ 271.1329, 実測値: 271.1330;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.07 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.01 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.01 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 1.35 (s, 9H)。
【0152】
6-(p-トリルオキシ)ニコチン酸エチル(V128)
一般的な手順A:6-クロロニコチン酸エチル(207 mg、1.12 mmol、1.00当量)、p-クレゾール(164 mg、1.52 mmol、1.36当量)、およびK
2CO
3 (235 mg、1.70 mmol、1.53当量)をDMSO (1.5 mL)中で4日間80℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1:10)による精製から所望の生成物を無色固体として得た(271 mg、1.05 mmol、94%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
15H
16NO
3
+ [M+H]
+ 258.1125, 実測値: 258.1131;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.82 (m, 1H), 8.25 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.03 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.90 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.37 (s, 3H), 1.37 (t, J = 7.1 Hz, 3H)。
【0153】
6-(4-(tert-ブチル)-2-メチルフェノキシ)ニコチン酸エチル(V131)
一般的な手順A:6-クロロニコチン酸エチル(210 mg、1.13 mmol、1.00当量)、4-(tert-ブチル)-2-メチルフェノール(245 mg、1.49 mmol、1.32当量)、およびK
2CO
3 (247 mg、1.79 mmol、1.58当量)をDMSO (2 mL)中で3日間80℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1:20)による精製から所望の生成物を無色油として得た(259 mg、0.83 mmol、73%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
19H
24NO
3
+ [M+H]
+ 314.1751, 実測値: 314.1759;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.92-8.78 (m, 1H), 8.25 (dd, J = 8.7, 2.4 Hz, 1H), 7.28 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.27-7.23 (m, 1H), 6.99 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.87 (dd, J = 8.7, 0.6 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.15 (s, 3H), 1.37 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.34 (s, 9H)。
【0154】
6-(4-(tert-ブチル)-2-メチルフェノキシ)ニコチン酸(V134)
一般的な手順B:6-(4-(tert-ブチル)-2-メチルフェノキシ)ニコチン酸エチル(V131) (160 mg、0.51 mmol、1.00当量)をEtOH (4 mL)および0.5 M NaOH (2 mL)の混合物中で1.5時間80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をDCMを用いて綿ろ過し、さらなる精製無しで無色固体として純粋な所望の生成物を得た(146 mg、0.51 mmol、100%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
17H
20NO
3
+ [M+H]
+ 286.1438, 実測値: 286.1435;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 9.76 (s, 1H), 8.93 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.31 (dd, J = 8.7, 2.4 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.29-7.25 (m, 1H), 7.01 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 2.16 (s, 3H), 1.34 (s, 9H)。
【0155】
4-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)-3-フルオロ安息香酸エチル(V138)
一般的な手順A:3,4-ジフルオロ安息香酸エチル(348 mg、1.87 mmol、1.00当量)、4-(tert-ブチル)フェノール(336 mg、2.24 mmol、1.20当量)、およびK
2CO
3 (388 mg、2.80 mmol、1.50当量)をDMSO (2 mL)中で22時間100℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1/40)による精製から所望の生成物を無色油として得た(451 mg、1.43 mmol、76%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
19H
22O
3F
+ [M+H]
+ 317.1547, 実測値: 317.1549;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 7.85 (dd, J = 11.2, 2.0 Hz, 1H), 7.80-7.73 (m, 1H), 7.42-7.35 (m, 2H), 7.02-6.94 (m, 3H), 4.37 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.39 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.33 (s, 9H)。
【0156】
4-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)-3-フルオロ安息香酸(V142)
一般的な手順B:4-(4-(tert-ブチル)フェノキシ)-3-フルオロ安息香酸エチル(V138) (341 mg、1.08 mmol、1.00当量)をEtOH (3 mL)および0.5 M NaOH (2 mL)の混合物中で1.5時間80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 5%)により精製し、無色固体として所望の生成物を得た(207 mg、0.72 mmol、67%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
17H
16O
3F
- [M-H]
- 287.1089, 実測値: 287.1084;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 7.91 (dd, J = 11.0, 2.0 Hz, 1H), 7.86-7.79 (m, 1H), 7.47-7.37 (m, 2H), 7.05-6.99 (m, 2H), 6.96 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 1.34 (s, 9H)。
【0157】
4-(4-(tert-ペンチル)フェノキシ)安息香酸エチル(V149)
一般的な手順A:4-フルオロ安息香酸エチル(308 mg、1.83 mmol、1.00当量)、4-(tert-ペンチル)フェノール(380 mg、2.32 mmol、1.26当量)、およびK
2CO
3 (383 mg、2.77 mmol、1.51当量)をDMSO (4 mL)中で1日80℃で、次いで2日間120℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1:20)による精製から所望の生成物を無色油として得た(476 mg、1.52 mmol、83%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
20H
25O
3
+ [M+H]
+ 313.1798, 実測値: 313.1808;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.06-7.98 (m, 2H), 7.37-7.30 (m, 2H), 7.02-6.99 (m, 2H), 6.99-6.96 (m, 2H), 4.36 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.65 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.38 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.30 (s, 9H), 0.71 (t, J = 7.4 Hz, 3H)。
【0158】
4-(4-((3r,5r,7r)-アダマンタン-1-イル)フェノキシ)安息香酸エチル(V150)
一般的な手順A:4-フルオロ安息香酸エチル(311 mg、1.85 mmol、1.00当量)、4-(3r,5r,7r)-アダマンタン-1-イル)フェノール(522mg、2.29 mmol、1.24当量)、およびK
2CO
3 (394 mg、2.85 mmol、1.54当量)をDMSO (4 mL)中で1日80℃で、次いで2日間120℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1:20)による精製から所望の生成物を無色固体として得た(551 mg、1.46 mmol、79%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
25H
29O
3
+
[M+H]
+ 377.2111, 実測値: 377.2122;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.06-7.98 (m, 2H), 7.40-7.33 (m, 2H), 7.03-6.99 (m, 2H), 7.00-6.96 (m, 2H), 4.37 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.12 (m, 3H), 1.93 (m, 6H), 1.83-1.75 (m, 6H), 1.39 (t, J = 7.1 Hz, 3H)。
【0159】
4-(4-(tert-ペンチル)フェノキシ)安息香酸(V151)
一般的な手順B:4-(4-(tert-ペンチル)フェノキシ)安息香酸エチル(V149) (265 mg、0.85 mmol、1.00当量)をEtOH (2.5 mL)および0.5 M NaOH (2.5 mL)の混合物中で9時間80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をEtOAcからの再結晶化により精製し、無色固体として所望の生成物を得た(210 mg、0.74 mmol、87%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
18H
19O
3
- [M-H]
- 283.1340, 実測値: 283.1343;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.12-8.01 (m, 2H), 7.39-7.31 (m, 2H), 7.03-7.01 (m, 2H), 7.01-6.98 (m, 2H), 1.66 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.31 (s, 9H), 0.71 (t, J = 7.4 Hz, 3H)。
【0160】
4-(4-((3r,5r,7r)-アダマンタン-1-イル)フェノキシ)安息香酸(V152)
一般的な手順B:4-(4-((3r,5r,7r)-アダマンタン-1-イル)フェノキシ)安息香酸エチル(V150) (314 mg、0.83 mmol、1.00当量)をEtOH (2.5 mL)および0.5 M NaOH (2.5 mL)の混合物中で1日80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をEtOAcからの再結晶化により精製し、無色固体として所望の生成物を得た(227 mg、0.65 mmol、78%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
23H
23O
3
- [M-H]
- 347.1653, 実測値: 347.1648;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.06-8.03 (m, 2H), 7.40-7.36 (m, 2H), 7.04-7.01 (m, 2H), 7.01-6.98 (m, 2H), 2.11 (m, 3H), 1.93 (m, 6H), 1.78 (m, 6H)。
【0161】
4-(4-シクロヘキシルフェノキシ)安息香酸エチル(V168)
一般的な手順A:4-フルオロ安息香酸エチル(316 mg、1.88 mmol、1.00当量)、4-シクロヘキシルフェノール(412 mg、2.34 mmol、1.24当量)、およびK
2CO
3 (418 mg、3.03 mmol、1.61当量)をDMSO (4 mL)中で2日間120℃で撹拌した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/石油エーテル 1/20)による精製から所望の生成物を無色油として得た(483 mg、1.49 mmol、79%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
21H
25O
3
+ [M+H]
+ 325.1798, 実測値: 325.1801;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.07-7.96 (m, 2H), 7.23-7.20 (m, 2H), 7.00-6.96 (m, 4H), 4.36 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.54-2.49 (m, 1H), 1.96-1.80 (m, 4H), 1.80-1.72 (m, 1H), 1.47-1.37 (m, 4H), 1.38 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.31-1.21 (m, 1H)。
【0162】
4-(4-シクロヘキシルフェノキシ)安息香酸(V169)
一般的な手順B:4-(4-シクロヘキシルフェノキシ)安息香酸エチル(V168) (236 mg、0.73 mmol、1.00当量)をEtOH (3 mL)および0.5 M NaOH (3 mL)の混合物中で5時間80℃で撹拌した。酸性化された粗生成物をEtOAcからの再結晶化により精製し、無色固体として所望の生成物を得た(158 mg、0.53 mmol、73%)。HRMS (ESI) m/z calcd. for C
19H
19O
3
- [Μ-Η]
- 295.1340, 実測値: 295.1339;
1H NMR (400 MHz, 重水素化クロロホルム) δ 8.06 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.24-6.98 (m, 4H), 2.55-2.49 (m, 1H), 1.91-1.85 (m, 4H), 1.78-1.75 (m, 1H), 1.47-1.35 (m, 4H), 1.31-1.21 (m, 1H)。
【0163】
生物学的活性
Notch1により駆動されるルシフェラーゼアッセイにおける、上に図示した好ましい分子それぞれのNotchシグナリング増強活性は
図1に示されている。このNotchレポーターアッセイの簡単な説明が
図1のキャプションにある。V126という誘導体がさらなる実験において代表的な化合物として試験された。
【0164】
図2は、ルシフェラーゼレポーターアッセイの範囲内で、異なるセッティングにおいてV126を用いた研究を示す。V126は1←→Mの濃度で既にNotchシグナリングを強力に増強したが、一方、既に報告されたNotchエンハンサーであるバルプロ酸はスクリーニングされた濃度(最大40←→M)の枠内では効果を示さなかった(
図2a)。V126が直接ルシフェラーゼ酵素の活性を増強していることを除外するために、読み出しの直前にV126処置を施すことにより、Notchレポーターアッセイを検証した。短時間の処置はDMSO対照レベルの範囲内の値を生じ、一方、対応するV126による20時間の処置は全く同じ読み出しにおいてルシフェラーゼ値について予期されたアップレギュレーションをもたらした(
図2b)。このことから、ルシフェラーゼ値の上昇が、本当にレポーター遺伝子の発現増強に由来するということが強く示唆される。さらに、V126のNotch増強活性がγ-セクレターゼ阻害剤DAPTまたはNotch阻害剤CB103との等モル組み合わせ処置それぞれにより部分的におよび完全にレスキューされ得ることから、V126がNotchシグナリングをアップレギュレーションする能力がさらに確認された(
図2c)。Notch2受容体アイソフォーム(N2FL、Notch2全長受容体)または切断構成的活性型のNotch1受容体(N1ICD、Notch1細胞内ドメイン)により駆動されるルシフェラーゼアッセイにおけるV126の試験により、V126が異なるNotch受容体アイソフォームに由来するシグナリングを増強することができるだけではなく、Notchシグナリングのリガンドによる活性化の下流で起こるシグナリングカスケードを増強することもできることが示された(
図2dおよびe)。
【0165】
皮膚におけるNotchの活性化はケラチノサイトの分化を駆動し、インボルクリンなどの分化マーカーの誘導をもたらすことが公知である(C. Nowell, Cold Spring Harb Perspect Med. 2013, 3, 12)、(G. P. Dotto, Oncogene 2008, 27, 5115-5123)。したがって、V126は10←→Mの濃度でヒト扁平上皮癌細胞株SCC13を処置することによりさらに精査された。タンパク質レベルでのインボルクリン発現の上昇が、48時間V126とインキュベーションしたところ検出され(
図3)、V126がNotchシグナリングをアップレギュレーションすることによりこのがん細胞株において分化を促進していることが示唆された。
【0166】
脾臓において、辺縁帯B細胞(MZB)および濾胞性B細胞(FoB)は、成熟B細胞の2つの主要な型であり、両方とも同じ前駆細胞、すなわち移行期B細胞(TB)から発生する。Notch2シグナリングはMZBの発生において決定的な役割を果たすことが報告されており(S. Pillai, Nat. Rev. I mmunol. 2009, 9, 767-777)、脾臓におけるNotch2シグナリングの上昇はMZBコンパートメントの拡大を招く(F. Hampel, Blood 2011, 118, 24, 6321-6331)。対照的に、FoBの発生はNotchシグナリングに依存しない。インビボでV126の効果を評価するため、C57BL/6Nマウスに一週間、1日1回、25 mg/kgのV126を腹腔内注射した。このマウスにおける異なるB細胞のコンパートメントに対するV126の影響を脾細胞のフローサイトメトリーによって分析し、V126はMZBの数を対照と比較して2倍にできたがFoBの数には影響を与えなかったことが示された(
図4)。
【0167】
結論として、これらの結果は、V126がインビトロおよびインビボでNotchシグナリングを増強することを示す。