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7402339非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス
<図1>
  • -非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス 図1
  • -非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス 図2A
  • -非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス 図2B
  • -非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス 図3A
  • -非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス 図3B
  • -非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス 図4A
  • -非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】非外科的方法で歯周を治療するためのコラーゲン-ヒドロキシアパタイトデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/24 20060101AFI20231213BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20231213BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/12
A61L27/54
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022533197
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 IB2019060449
(87)【国際公開番号】W WO2021111172
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】520370027
【氏名又は名称】デイタム デンタル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ズベリー、ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドラスト、アリー
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー、トーマス
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/115792(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/216438(WO,A1)
【文献】特開平07-179361(JP,A)
【文献】特表2019-528274(JP,A)
【文献】特開2007-007452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0125872(US,A1)
【文献】J Clin Periodontol.,1997年,24,pp.372-383
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯周炎の治療に使用するための物品であって、
前記物品は、歯周ポケットへ投与されるように適合され、前記物品は、圧縮された材料から形成され、前記材料は架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含み、
前記架橋コラーゲンは、糖により架橋されたコラーゲンである、物品。
【請求項2】
前記物品は、40~50%の多孔率を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記歯周ポケットが感染している、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記歯周ポケットが感染していない、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記歯周炎の治療は、前記歯周ポケットの深さを低減させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の物品。
【請求項6】
前記歯周炎の治療は、追加の薬学的活性剤の投与を行わない、請求項1~4のいずれか1項に記載の物品。
【請求項7】
前記歯周炎の治療は、抗菌剤、抗真菌剤、防腐剤、抗炎症剤、抗生物質、ビタミン及びビタミン剤、並びにそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの薬学的活性剤の投与をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の物品。
【請求項8】
前記薬学的活性剤が前記抗生物質または前記防腐剤であるように構成される、請求項に記載の物品。
【請求項9】
前記歯周炎の治療は、前記物品を前記歯周ポケットへ挿入すること、または押し込むことを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項10】
前記歯周炎の治療は、スケーリング及びルートプレーニングをさらに含み、前記スケーリング及び前記ルートプレーニングが前記物品の投与の前に実行される、請求項1~9のいずれか1項に記載の物品。
【請求項11】
前記コラーゲン対前記ヒドロキシアパタイトの重量比が95:5~20:80であるように構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の物品。
【請求項12】
前記コラーゲン対前記ヒドロキシアパタイトの前記重量比が70:30であるように構成される、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
請求項1に記載の物品の製造方法であって、
架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む組成物から前記材料を作成するステップと、
前記材料に機械的圧力を加えて、前記物品を得るステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周ポケットへの物品(article)の投与を含む、歯周炎を治療するための非外科的方法を提供する。ここで、物品には、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む。本発明はまた、これらの方法で用いられる物品を提供する。
【背景技術】
【0002】
歯周炎は、歯周組織が慢性的に感染し、継続的な後退により歯根表面を口腔環境へ露出させ、感染の恐れのあるポケットをしばしば形成する疾患である。これにより、歯やその支持骨が緩み、最終的に失われる恐れがある。歯周治療は、しばしば、歯根表面のデブリドマンを行い、歯根表面への再付着や、非付着歯肉組織の縮小により、ポケットの深さを低減させることを目的としている。
【0003】
歯周治療は通常、非外科的デブリドマン(スケーリング及びルートプレーニング)から始まり、その後、入念なメンテナンス(専門家及び患者自身の口腔衛生対策)を行う。これが十分でなく、さらなる付着喪失(attachment loss)が発見された場合、疾患の進行を止め、失われた歯周組織を再生させるために、切除または再生外科的処置が行われる。
【0004】
したがって、歯周炎を治療するための他の、低侵襲性で、より安全で、痛みが少なく、実行しやすい方法が依然として求められている。
【0005】
本発明は、歯周ポケットに物品を投与するステップを含む、歯周炎を治療するための非外科的方法を提供する。ここで、物品は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、本発明は、歯周ポケットに物品を投与するステップを含む、歯周炎を治療するための非外科的方法を提供する。ここで、物品は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む。他の実施形態では、この方法は、歯周ポケットの深さを低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分において特に指摘され、明確に主張される。しかしながら、本発明は、その目的、特徴、並びに利点と共に、組織及び操作方法の両方について、添付の図面と共に読まれたときに、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【0008】
図1】本発明で用いられる物品の形状を示す図である。
図2A】架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品で過充填し、OSSIX(登録商標)PLUSで覆った動物1の5mm欠損部分の組織学的分析顕微鏡写真である。ここで、「I」は炎症、「NB」は新骨、「OB」は原骨、「OP」はOSSIX(登録商標)PLUS、「OPB」は架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品を示す。図2Aは2倍に拡大し、架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品と新しく形成された骨との界面領域に着目したものである。
図2B】架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品で過充填し、OSSIX(登録商標)PLUSで覆った動物1の5mm欠損部分の組織学的分析顕微鏡写真であり、ここで、「I」は炎症、「NB」は新骨、「OB」は原骨、「OP」はOSSIX(登録商標)PLUS、「OPB」は架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品を表す。図2Bは5倍に拡大し、架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品と新たに形成された骨との界面領域に着目したものである。
図3A】骨移植試験における動物1のX線分析結果を示す図である。
図3B】骨移植試験における動物2のX線分析結果を示す図である。
図4A】架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品で過充填し、OSSIX(登録商標)PLUSで覆った動物2の10mm欠損部分の組織学的分析顕微鏡写真である。ここで、「F」は線維芽細胞、「NB」は新骨、「OP」はOSSIX(登録商標)PLUS、「OPB」は架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品を示す。図4Aは2倍に拡大して新たに形成された骨、残存欠損部、架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品を含む部位に着目したものである。
図4B】架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品で過充填し、OSSIX(登録商標)PLUSで覆った動物2の10mm欠損部分の組織学的分析顕微鏡写真である。ここで、「F」は線維芽細胞、「NB」は新骨、「OP」はOSSIX(登録商標)PLUS、「OPB」は架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品を示す。図4Bは5倍に拡大して新たに形成された骨、残存欠損部、架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品を含む部位に着目したものである。
【0009】
図を単純かつ明確にするために、図に示す要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。例えば、一部の要素の寸法は、明確にするために、他の要素に比べて誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応するまたは類似する要素を示すために、図の間で参照番号が繰り返し用いられることがある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明では、本発明を完全に理解できるようにするために、多くの特定の詳細を示している。しかしながら、当業者は、本発明が、これらの特定の詳細な説明なしに実施され得ることを理解するであろう。他の例では、周知の方法、手順、及び構成要素は、発明を不明瞭にしないために、詳細には説明されていない。
【0011】
歯周炎を治療するための非外科的方法
【0012】
一態様では、本発明は、歯周ポケットに物品を投与するステップを含む、歯周炎を治療するための非外科的方法を提供する。ここで、物品は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む。一実施形態では、歯周ポケットが感染していることもあれば、または感染していないこともある。他の実施形態では、歯周ポケットが感染している。他の実施形態では、感染は細菌または微生物感染である。別の実施形態では、歯周ポケットは感染していない。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0013】
一実施形態では、本発明の方法は、歯周ポケットの深さを低減させる。いかなるメカニズムまたは理論にも拘束されることなく、コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品は、ポケット領域における骨及び軟組織の成長を刺激し、ポケットの「閉鎖」及びその深さを低減させるものと考えられる。さらに、(物品内)コラーゲンは、ポケット内のコラゲナーゼ酵素の基質として機能し、それ自体、酵素の活性部位を飽和させて、歯肉組織の分解を抑制することができると企図されている。歯周ポケットに塗布されると、物品は、歯肉溝滲出液に吸収され、酵素を吸収してその活性部位を飽和させることにより、コラゲナーゼが媒介する歯肉組織の破壊を遅らせる、水和した柔らかい足場に変わる。さらに、(物品内)ヒドロキシアパタイトは、コラゲナーゼ酵素を吸収及び固定化するための固体樹脂として機能することが企図されている。
【0014】
一実施形態では、本発明の方法は、追加の薬学的活性剤の投与を行わない。
【0015】
追加の一実施形態において、本発明の方法は、抗菌剤、抗真菌剤、防腐剤、抗炎症剤、抗生物質、ビタミン及びビタミン剤、並びに任意の組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つの薬学的活性剤を投与するステップをさらに含む。他の実施形態では、薬学的活性剤は、抗菌剤である。他の実施形態では、薬学的活性剤は、抗真菌剤である。他の実施形態では、薬学的活性剤は、防腐剤である。他の実施形態では、薬学的活性剤は、抗炎症剤である。他の実施形態では、薬学的活性剤は、抗生物質である。他の実施形態では、薬学的活性剤は、ビタミン及び/またはビタミン剤である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0016】
他の実施形態では、抗菌剤の例には、これらには限定されないが、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、トブラマイシン、パロモマイシン、アルベカシン、プラゾマイシン、ストレプトマイシン、アプラマイシン、ゲルダナマシン、ハービマイシン、ロラカルベフ、ファロペネム、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、メロペネム、セファゾリン、セファセトリル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セファトリジン、セファゼドン、セファザフルル、セフラジン、セフロキサジン、セフテゾール、セファクロル、セファマンドール、セフミノックス、セフォニサイド、セフォラニド、セフォチアム、セフプロジル、セフブペラゾン、セフロキシム、セフゾナム、セファマイシン、セフォキシチン、セフォテタン、セフメタゾール、カルバセフェム、セフィキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフカペン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェタメット、セフメノキシム、セフォジジム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフピミゾール、セフピラミド、セフポドキシム、セフスロジン、セフテラム、セフチブテン、セフチオレン、セフチゾキシム、オキサセフェム、セフェピム、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム、セフチオフル、セフォベシン、CXA-101、セフタロリン、セフトビプロル、クリンダマイシン、リンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、ソリスロマイシン、アズトレオナム、フラゾリドン、ニトロフラントイン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、テモシリン、チカルシリン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、レボナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、デラフロキサシン、マフェニド、スルホンアミドクリソイジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、サラゾスルファピリジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、チゲサイクリン、テディゾリド、リネゾリド、ランベゾリド、トレゾリド、ラデゾリド、それらの任意の組み合わせ、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0017】
他の実施形態では、抗真菌剤の例には、これらには限定されないが、テルビナフィン、ナフチフィン、アムホテリシンB、ブテナフィン、クロロキシレノール、シクロピロクス、フルシトシン、カスポファンギン、グリセオフルビン、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、ナイスタチン、ウンデシレン酸、それらの任意の組み合わせ、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0018】
別の実施形態では、防腐剤の例には、これらには限定されないが、ナフチフィン、トルナフタート、メディオシジン、カンジシジン、トリコマイシン、ハマイシン、オーレファンギン、アスコシン、アイファチン、アザコルチン、レボリン、ヘプタマイシン、カンジマイシン、グリセオフルビン、プラジミシン、ベナノミシン、アンビソーム、ニッコマイシンZ、フルシトシン、ペリマイシン、それらの任意の組み合わせ、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0019】
別の実施形態では、抗炎症剤の例には、これらには限定されないが、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ケトロラク、オキサプロジン、サルサレート、スリンダク、それらの任意の組み合わせ、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0020】
他の実施形態では、抗生物質の例には、これらには限定されないが、ペニシリン、セファロスポリン、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、それらの任意の組み合わせ、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0021】
他の実施形態では、ビタミン及びビタミン剤には、これらには限定されないが、ビタミンA、レチノール、レチナール、カロテノイド、ビタミンB1、チアミン、ビタミンB2、リボフラビン、ビタミンB3、ナイアシン、ナイアシンアミド、ニコチンアミド、リボシド、ビタミンB5、パントテン酸、ビタミンB6、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、ビタミンB7、ビオチン、ビタミンB9、葉酸、ビタミンB12、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、アデノシルコバラミン、ビタミンC、アスコルビン酸、ビタミンD、コレカルシフェロール(D3)、エルゴカルシフェロール(D2)、ビタミンE、トコフェロール、トコトリエノール、ビタミンK、フィロキノン、メナキノン、それらの任意の組み合わせ、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0022】
一実施形態では、歯周ポケットへの物品の投与は、ポケットへ物品を挿入するステップまたは押し込むステップを含む。他の実施形態では、挿入するステップまたは押し込むステップは、物品とポケットとの間の少なくとも部分的な接触を可能にするために実行される。他の実施形態では、挿入するステップまたは押し込むステップは、物品とポケットとの間の完全な接触を可能にするために実行される。
【0023】
一実施形態では、本発明の方法は、スケーリング及びルートプレーニングをさらに含み、スケーリング及びルートプレーニングは、物品を投与するステップの前に実行される。他の実施形態では、スケーリング及びルートプレーニングは、本発明の当技術分野で公知の任意の方法により実行される。
【0024】
一実施形態では、本発明の方法は、本発明の物品を架橋コラーゲン膜(例えば、Ossix(登録商標)Plus)で覆うステップをさらに含む。したがって、物品は歯周ポケットに接触し(例えば、その中に挿入され)、その上にコラーゲン膜が露出する状態となる。他の実施形態では、固定縫合糸は、コラーゲン膜の上に配置される。
【0025】
本発明の方法において用いられる物品
【0026】
さらなる一態様では、本発明は、上述した方法で用いるための架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む物品を提供する。一実施形態では、物品は生分解性及び生体適合性である。
【0027】
実施形態によっては、本発明で用いられる物品のコラーゲン対ヒドロキシアパタイトの重量比は、95:5~20:80である。他の実施形態では、重量比は、90:10~25:75である。他の実施形態では、重量比は、85:15~30:70である。他の実施形態では、重量比は、80:20~35:65である。他の実施形態では、重量比は、75:25~40:60である。他の実施形態では、重量比は、70:30~45:55である。他の実施形態では、重量比は、70:30である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0028】
実施形態によっては、本発明で用いられる物品の架橋コラーゲンの濃度は、20~95w/wである。他の実施形態では、濃度は、20~30w/wである。他の実施形態では、濃度は、30~40w/wである。他の実施形態では、濃度は、40~50w/wである。他の実施形態では、濃度は、50~60w/wである。他の実施形態では、濃度は、60~70w/wである。他の実施形態では、濃度は、70~80w/wである。他の実施形態では、濃度は、80~90w/wである。他の実施形態では、濃度は、90~95w/wである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0029】
実施形態によっては、本発明で用いられる物品のヒドロキシアパタイトの濃度は、5~80w/wである。他の実施形態では、濃度は、5~10w/wである。他の実施形態では、濃度は、10~20w/wである。他の実施形態では、濃度は、20~30w/wである。他の実施形態では、濃度は、30~40w/wである。他の実施形態では、濃度は、40~50w/wである。他の実施形態では、濃度は、50~60w/wである。他の実施形態では、濃度は、60~70w/wである。他の実施形態では、濃度は、70~80w/wである。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0030】
実施形態によっては、本発明で用いられる物品は、上述したように、1つの薬学的活性剤をさらに含む。
【0031】
実施形態によっては、上述した薬学的活性剤は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む投与された物品に加えて、並びに/または投与された物品内に投与されてもよい。一実施形態では、本発明の方法が薬学的活性剤を投与するステップをさらに含む場合、投与される物品は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトに加えて、上述したような薬学的活性剤を含むこともあるが、含まないこともある。一実施形態では、本発明の方法が薬学的活性剤を投与するステップを含まない場合、投与される物品は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトに加えて、上述したような薬学的活性剤を含むこともあるが、含まないこともある。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0032】
実施形態によっては、本明細書で使用される「物品」という語は、何らかの形状または形態により提供される、すなわち、そのような物品の2次元または3次元構造を提供するための当技術分野において公知の方法で圧縮、設計、その他の加工、製造または調製されるマトリクスを指す。他の実施形態では、2次元または3次元構造の非限定的な例を図1に示している。他の実施形態では、上述したような物品を提供するために、任意の可能な設計、その他の加工、製造または調整プロセスを適用してもよい。他の実施形態では、マトリクスは、上述したような物品を提供するために設計、圧縮、及び/または成形され、歯周ポケットに適合される。他の実施形態では、物品は、0.005~10トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、0.1~6トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、0.0055~0.2トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、0.005~0.02トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、0.02~0.05トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、0.05~0.1トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、0.1~0.2トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、0.2~1トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、1~2トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、2~5トンの力で圧縮される。他の実施形態では、物品は、5~10トンの力で圧縮される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0033】
実施形態によっては、本明細書で使用される「マトリクス」という語は、固形物(例えば、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイト)のある物理的範囲を指す。他の実施形態では、固形物は乾燥しており、溶媒または液体を含まない。他の実施形態では、固形物は、少なくとも1つの単一の成分を含む。他の実施形態では、成分には、これらには限定されないが、化合物、小分子、金属、合金、複合材料、生体材料、ポリマー、及び有機金属錯体を含む。他の実施形態では、固形物は、前述したリストから選択されるような2つ以上の成分を含む。他の実施形態では、マトリクスは、生体適合性材料または組成物を含む。他の実施形態では、マトリクスは生体高分子またはタンパク質である。他の実施形態では、マトリクスの物理的属性は、当技術分野で公知のように、その設計、成形、切り出し(carving out)、またはその他の加工により所望の形状とすることができる。他の実施形態では、マトリクスの属性には、これらには限定されないが、高密度、多孔性または非多孔性、粘性、剛性、軟質または成形可能等の特性を含む。他の実施形態では、切り出しは、当技術分野で公知の任意の方法により行われる。他の実施形態では、本発明の方法における切り出しは、CNC(コンピュータ数値制御)機、レーザー切断機、ウォータージェットカッター、ドリラーまたは研磨装置により行われる。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。他の実施形態では、マトリクスは、10~90%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、10~20%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、20~30%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、30~40%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、40~50%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、50~60%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、60~70%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、70~80%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、80~90%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、10~30%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、30~50%の多孔率を有する。他の実施形態では、マトリクスは、50~70%の多孔率を有する。別の実施形態では、マトリクスは、70~90%の多孔率を有する。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0034】
実施形態によっては、「コラーゲン」という語は、フィブリルネットワークまたは他の非フィブリル上部構造に組織化された生体高分子を指し、それは、ヒトまたは多数の動物の体内の結合組織の主成分である。多くの種類のコラーゲンが知られており、天然に存在している。非限定的な例には、タイプI~Vが含まれる。実施形態によっては、コラーゲンは、フィブリル(タイプIなど)または非フィブリル構造を有する。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0035】
一実施形態では、本発明で用いられるコラーゲンは、天然コラーゲン、フィブリルコラーゲン、フィブリルアテロペプチドコラーゲン、凍結乾燥コラーゲン、動物由来のコラーゲン、ヒトコラーゲン、組換えコラーゲン、ペプシン化コラーゲン、再構成コラーゲン、及びそれらの任意の組み合わせを指す。他の実施形態では、コラーゲンは、単分子アテロペプチドコラーゲンから再構成されたフィブリルコラーゲンを含む。他の実施形態では、コラーゲンは、天然コラーゲンのタンパク質分解によって得られた単分子アテロペプチドコラーゲンを再構成することにより得られるアテロペプチドフィブリルコラーゲンである。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0036】
実施形態によっては、「架橋コラーゲン」という語は、架橋剤と共有結合及び分子間接続されたコラーゲンの生体高分子鎖を含む共有結合ネットワークを指す。
【0037】
実施形態によっては、「架橋剤」という語は、ポリマー/オリゴマー鎖を共有結合することにより、これらの鎖を架橋することができる少なくとも2つの末端基を含む小分子またはポリマーを指す。
【0038】
実施形態によっては、コラーゲンは糖により架橋されている。他の実施形態では、糖は、グリセロース(グリセルアルデヒド)、スレオース、エリトロース、リキソース、キシロース、アラビノース、リボース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。他の実施形態では、糖はグリセロース(グリセルアルデヒド)である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0039】
他の実施形態では、糖は二糖である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0040】
別の実施形態では、二糖は、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ツラノース、トレハロース、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0041】
他の実施形態では、架橋剤は、当技術分野で公知の任意の架橋剤であってもよい。他の実施形態では、架橋剤は糖である。他の実施形態では、糖は、以下の式(I)または(II)の少なくとも1つによって表される化合物である。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、Rは、H、アルキル、またはアルケニル、アミノ酸部分、ペプチド部分、糖部分、プリンもしくはピリミジン部分、リン酸化プリンもしくはピリミジン部分である。nは2~9の整数である。pとqとはそれぞれ独立した0~8の整数であり、pとqとの合計は2以上8以下である。
【0044】
他の実施形態では、「アルキル」基という語は、直鎖または分枝鎖を含む飽和脂肪族炭化水素を指す。一実施形態では、アルキル基は直鎖または分枝である。他の実施形態では、アルキル基は、任意選択で置換された直鎖または分枝鎖である。一実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素を有する。一実施形態では、アルキル基は、1~10個の炭素を有する。一実施形態では、アルキル基は、2~10個の炭素を有する。一実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素を有する。一実施形態では、アルキル基は、2~8個の炭素を有する。他の実施形態では、アルキル基は、これらには限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、ブチル、ペンチル、3-ペンチル、ヘキシルヘプチル、オクチル及びヘキサデシルを含む。他の実施形態において、アルキル基は、必要に応じて、1つ以上のハロゲン、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸、リン酸塩、ホスホネート、スルホン酸塩、スルホン酸塩アミデート、シアネート、及びニトロ基によって置換される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0045】
他の実施形態では、「アルケニル」基という語は、直鎖及び分枝鎖を含む、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、本明細書に記載のアルキル基を指す。一実施形態では、アルケンは1つの二重結合を有する。他の実施形態では、アルケンは2以上の二重結合を有する。他の実施形態では、アルケンは2~6の二重結合を有し、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。一実施形態では、アルケンは2~20の炭素を有する。非限定的な例では、エチレニル、プロピレニル、2-メチルプロピル-1-エニル及びブテニルが含まれ、それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0046】
他の実施形態では、「アミノ酸」という語は、アミン(-NH)及びカルボキシル(-COOH)官能基を、各アミノ酸に特異的な側鎖と共に含む有機化合物を指す。他の実施形態では、当技術分野公知の任意のアミノ酸を利用してもよい。他の実施形態では、アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンである。
【0047】
他の実施形態では、「ペプチド」という語は、アミド(ペプチド、-C(0)-N(H)-)結合を介して共有結合されたアミノ酸の短鎖を指す。他の実施形態では、ペプチドは、2~20のアミノ酸を含む。他の実施形態では、ペプチドはジペプチドである。他の実施形態では、ペプチドはトリペプチドである。他の実施形態では、ペプチドはテトラペプチドである。他の実施形態では、ペプチドはペンタペプチドである。他の実施形態では、ペプチドはヘキサペプチドである。
【0048】
他の実施形態では、「糖」という語は、本明細書に記載の糖、セルロース及びデンプンを含む群を指す。
【0049】
他の実施形態では、「プリン」という語は、イミダゾール環を融合したピリミジン環を含む複素環式芳香族有機化合物を指す。プリンの例には、これらには限定されないが、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、テオブロミン、カフェイン、尿酸、及びイソグアニンが含まれる。
【0050】
他の実施形態では、「ピリミジン」という語は、ピリジンに類似する複素環式芳香族有機化合物を指すが、芳香環内に追加の窒素を有するため、窒素は環の1、3位に見出される。プリンの非限定的な例には、シトシン、チミン、及びウラシルが含まれる。
【0051】
他の実施形態では、「リン酸化プリンまたはピリミジン」という語は、本明細書に記載のプリンまたはピリミジンを指し、プリンまたはピリミジンは、ホスホリル基(化学物質P0 x-、「x」は、任意の可能なプロトン化状態を示す)に結合されている。
【0052】
他の実施形態では、糖は、天然に存在する還元糖である。
【0053】
他の実施形態では、糖は、ジオース、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、セプトース、オクトース、ナノース、またはデコースである。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0054】
別の実施形態では、糖は、グリセロース(グリセルアルデヒド)、スレオース、エリトロース、リキソース、キシロース、アラビノース、リボース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0055】
他の実施形態では、糖は二糖である。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0056】
他の実施形態において、二糖は、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ツラノース、トレハロース、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0057】
実施形態によっては、「ヒドロキシアパタイト」という語は、Ca(PO(OH)またはCa10(P0(OH)の式を有する天然に存在するカルシウム鉱物を指す。他の実施形態において、ヒドロキシアパタイトは、当技術分野における任意の既知の方法により調製され、または得られてもよい。他の実施形態では、バルクまたはナノ粒子ヒドロキシアパタイトが利用及び/または調製される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0058】
実施形態によっては、「ナノ粒子物質」(例えば、ヒドロキシアパタイト)という語は、少なくとも1つの物理的ナノメートルの寸法を有する物質を指す。他の実施形態では、ナノ粒子物質は、ナノ粒子、ナノスフェア、ナノキューブ、ナノプレート、ナノリボン、ナノワイヤ、ナノロッド、または当技術分野で公知の他の任意のナノメートル形状をしている。
【0059】
本発明の物品を調製する方法
【0060】
さらなる一態様では、本発明は、歯周炎を治療するための非外科的方法で用いる物品を調製する方法を提供し、ここで、物品は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含み、並びに、本方法は、以下を含む。(a)架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含むマトリクスを提供するステップ。並びに、(b)マトリクスを成形することにより、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む物品を得るステップ。
【0061】
一実施形態では、本発明は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含むマトリクスを調製する方法を提供し、この方法は、以下を含む。(i)コラーゲンがフィブリル化されている間に、コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを溶液中で混合するステップ。(ii)コラーゲンを架橋剤で架橋することにより、架橋スラリーを得るステップ。(iii)架橋スラリーを濃縮することにより、濃縮スラリーを得るステップ。(iv)濃縮スラリーを凍結乾燥することにより、乾燥ケーキを得るステップ。(v)乾燥ケーキを粉砕することにより、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含むマトリクスを得るステップ。
【0062】
一実施形態では、本発明は、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含むマトリクスを調製する方法を提供し、この方法は、以下を含む。(i)コラーゲンの酸性溶液を提供し、次いで、ヒドロキシアパタイトを含む中和溶液で溶液を中和するステップ。(ii)ステップ(i)の溶液を濃縮するステップ。(iii)ステップ(ii)の濃縮混合物を凍結乾燥することにより、乾燥コラーゲン組成物を得るステップ。(iv)組成物を、架橋剤及び第1の溶媒と共にインキュベートするステップ。(v)ステップ(iv)でインキュベートした組成物を、第2の溶媒で洗浄するステップ。(vi)ステップ(v)で洗浄した組成物を凍結乾燥することにより、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含むマトリクスを得るステップ。
【0063】
一実施形態では、本発明は、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、及び薬学的活性剤を含むマトリクスを調製する方法を提供し、この方法は、以下を含む。(i)コラーゲンの酸性溶液を提供し、次いで、ヒドロキシアパタイトを含む中和溶液で溶液を中和するステップ。(ii)ステップ(i)の溶液を濃縮するステップ。(iii)ステップ(ii)の濃縮混合物を凍結乾燥することにより、乾燥コラーゲン組成物を得るステップ。(iv)組成物を、架橋剤及び第1の溶媒と共にインキュベートし、次いで、薬学的活性剤を添加するステップ。(v)ステップ(iv)でインキュベートした組成物を第2の溶媒で洗浄するステップ。(vi)ステップ(v)で洗浄した組成物を凍結乾燥することにより、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、及び薬学的活性剤を含むマトリクスを得るステップ。
【0064】
実施形態によっては、圧縮ステップ(特殊な装置を用いて機械的圧力を加える)が、凍結乾燥ステップに加えて、またはその代わりに行われる。
【0065】
型を用いて本発明の物品を調製する方法
【0066】
さらなる一態様では、本発明は、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイトを含む物品を調製する方法を提供し、本方法は、以下を含む。(i)コラーゲンの酸性溶液を提供し、次いで、ヒドロキシアパタイトを含む中和溶液で溶液を中和するステップ。(ii)ステップ(i)の溶液を濃縮し、次いで、事前に設計されたマトリクス形状の型に該溶液を流し込むステップ。(iii)ステップ(ii)の濃縮混合物を凍結乾燥することにより、コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む乾燥組成物を得るステップ。(iv)組成物を、架橋剤及び第1の溶媒と共にインキュベートするステップ。(v)ステップ(iv)でインキュベートした組成物を第2の溶媒で洗浄するステップ。(vi)ステップ(v)で洗浄した組成物を凍結乾燥することにより、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む物品を得るステップ。
【0067】
一実施形態では、本発明は、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、及び薬学的活性剤を含む物品を調製する方法を提供し、本方法は、以下を含む。(i)コラーゲン及び架橋剤の酸性溶液を提供し、次いで、ヒドロキシアパタイトを含む中和溶液で溶液を中和するステップ。(ii)ステップ(i)の溶液を濃縮し、次いで、事前に設計されたマトリクス形状の型に流し込むステップ。(iii)ステップ(ii)の濃縮混合物を凍結乾燥することにより、コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む乾燥組成物を得るステップ。(iv)組成物を、架橋剤、第1の溶媒、及び薬学的活性剤と共にインキュベートするステップ。(v)ステップ(iv)でインキュベートした組成物を、第2の溶媒で洗浄するステップ。(vi)ステップ(v)で洗浄した組成物を凍結乾燥することにより、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、及び薬学的活性剤を含む物品を得るステップ。
【0068】
実施形態によっては、圧縮ステップ(特殊な装置を使用して機械的圧力を加える)が、凍結乾燥ステップに加えて、またはその代わりに行われる。
【0069】
実施形態によっては、型は、凍結乾燥工程(iii)の前に、-10~-190℃の凍結温度で冷却される。他の実施形態では、型は、0.5~24時間、-10~-80℃の凍結温度で冷却され、次いで、凍結乾燥ステップ(iii)が続く。別の実施形態では、冷却は、0.5~24時間実施される。別の実施形態では、冷却は、0.5~1時間実施される。別の実施形態では、冷却は、1~2時間実施される。別の実施形態では、冷却は、2~5時間実施される。別の実施形態では、冷却は、5~10時間実施される。別の実施形態では、冷却は、10~24時間実施される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0070】
他の実施形態では、型は、3D印刷、型成形、またはそれらの任意の組み合わせを含む方法を用いて、所望のマトリクス形状をもたらすように成形される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0071】
顆粒(granulates)を用いて本発明の物品を調製する方法
【0072】
さらなる一態様では、本発明は、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイトを含む物品を調製する方法を提供し、本方法は、以下を含む。(i)コラーゲンの酸性溶液を提供し、次いで、ヒドロキシアパタイトを含む中和溶液で溶液を中和するステップ。(ii)ステップ(i)の溶液を濃縮させるステップ。(iii)組成物を、架橋剤及び第1の溶媒と共にインキュベートするステップ。(iv)ステップ(iv)でインキュベートした組成物を、第2の溶媒で洗浄するステップ。(v)組成物を均質化し、次いで、成形し、次いで、粉砕することにより、架橋コラーゲンの顆粒を得るステップ。(vi)ステップ(v)の顆粒を第1または第2の溶媒で湿らせ、次いで、切り出すことにより、架橋コラーゲン及びヒドロキシアパタイトを含む物品を得るステップ。
【0073】
一実施形態において、本発明は、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、及び薬学的活性剤を含む物品を調製する方法を提供し、本方法は、以下を含む。(i)コラーゲンの酸性溶液を提供し、次いで、ヒドロキシアパタイトを含む中和溶液で溶液を中和するステップ。(ii)ステップ(i)の溶液を濃縮するステップ。(iii)組成物を架橋剤、第1の溶媒と共にインキュベートし、薬学的活性剤を添加するステップ。(iv)ステップ(iv)でインキュベートした組成物を、第2の溶媒で洗浄するステップ。(v)組成物を均質化し、次いで、成形し、次いで、粉砕することにより、架橋コラーゲンの顆粒を得るステップ。(vi)ステップ(v)の顆粒を第1または第2の溶媒で湿らせ、次いで、切り出すことにより、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、及び薬学的活性剤を含む物品を得るステップ。
【0074】
実施形態によっては、本発明の方法によって得られたマトリクスは、粉砕により顆粒を形成し、次いで、第1または第2の溶媒によって湿潤し、次いで、切り出すことにより物品を得る。他の実施形態では、顆粒のサイズは1~2000μmの間である。
【0075】
実施形態によっては、上述した方法により調製された物品は、当技術分野で公知の任意の方法で(例えば、エチレンオキサイドガス(EtO)により)滅菌される。
【0076】
実施形態によっては、工程「(i)」の溶液内で本発明の方法において用いられるコラーゲンは、天然コラーゲン、フィブリルコラーゲン、フィブリルアテロペプチドコラーゲン、凍結乾燥コラーゲン、動物由来のコラーゲン、ヒトコラーゲン、組換えコラーゲン、ペプシン化コラーゲン、再構成コラーゲン、及びそれらの任意の組み合わせを含む。他の実施形態では、コラーゲンは、単分子アテロペプチドコラーゲンから再構成されたフィブリルコラーゲンを含む。他の実施形態では、コラーゲンは、天然コラーゲンのタンパク質分解によって得られた単分子アテロペプチドコラーゲンを再構成することにより得られたアテロペプチドフィブリルコラーゲンである。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0077】
実施形態によっては、本発明の方法で使用される中和溶液は、塩基または緩衝液を含む。他の実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水、NaHCO/NaCO緩衝液、トリス緩衝液もしくはトリシン緩衝液、または中性pHを維持する任意の他の緩衝液から選択される。他の実施形態では、酸性溶液は、HCl、酢酸、硝酸、クエン酸、硫酸、リン酸、または当技術分野で知られている他の任意の酸を含む。別の実施形態では、塩基性溶液は、NaOH、KOH、NaHCO、NaCO、NaHPO、または当技術分野で公知の他の任意の塩基を含む。
【0078】
実施形態によっては、「中性pH」という語は、生体及び/またはシステムにおける生理学的pHに類似するpHの範囲を指す。そしてそれは、6.5~7.5であると定められている。他の実施形態によっては、中性pHは6.5~6.7である。他の実施形態によっては、中性pHは6.7~6.9である。他の実施形態によっては、中性pHは6.9~7.1である。他の実施形態によっては、中性pHは7.1~7.3である。他の実施形態によっては、中性pHは7.3~7.5である。他の実施形態によっては、中性pHは7.1~7.2である。他の実施形態によっては、中性pHは7.2~7.3である。他の実施形態によっては、中性pHは7.3~7.4である。他の実施形態によっては、中性pHは7.4~7.5である。
【0079】
実施形態によっては、本発明の方法で使用される濃縮ステップは、遠心分離によって行われる。他の実施形態では、遠心分離は、50~20,000r/minの速度で実施される。他の実施形態では、遠心分離は、50~100r/minの速度で実施される。他の実施形態では、遠心分離は、100~1,000r/minの速度で実施される。他の実施形態では、遠心分離は、1,000~5,000r/minの速度で実施される。他の実施形態では、遠心分離は、5,000~10,000r/minの速度で実施される。他の実施形態では、遠心分離は、10,000~20,000r/minの速度で実施される。他の実施形態では、遠心分離は、1~120分間実施される。他の実施形態では、遠心分離は、1~5分間実施される。他の実施形態では、遠心分離は、5~10分間実施される。他の実施形態では、遠心分離は、10~20分間実施される。他の実施形態では、遠心分離は、20~50分間実施される。他の実施形態では、遠心分離は、50~100分間実施される。他の実施形態では、遠心分離は、100~120分間実施される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0080】
他の実施形態において、工程(iii)の凍結乾燥は、1~48時間実施される。他の実施形態において、工程(iii)の凍結乾燥は、1~2時間実施される。他の実施形態において、工程(iii)の凍結乾燥は、2~5時間実施される。他の実施形態において、工程(iii)の凍結乾燥は、5~10時間実施される。他の実施形態において、工程(iii)の凍結乾燥は、10~24時間実施される。他の実施形態において、工程(iii)の凍結乾燥は、24~48時間実施される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0081】
凍結乾燥の後、本発明の乾燥コラーゲン-ヒドロキシアパタイト組成物が得られる。乾燥した組成物を、架橋剤、第1の溶媒、及び任意選択の薬学的活性剤と共にインキュベートする。インキュベートした組成物を、第2の溶媒でさらに洗浄し、次いで、凍結乾燥することにより、架橋コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、及び任意選択の薬学的活性剤を含むマトリクスが得られる。
【0082】
他の実施形態において、第1及び第2の溶媒は、同一のものまたは異なるものであり、当技術分野で公知の任意の溶媒から選択される。他の実施形態では、溶媒は、水、エタノール、生理食塩水、メタノール、リン酸緩衝生理食塩水、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0083】
他の実施形態において、工程(vi)の凍結乾燥は、24~72時間実施される。他の実施形態において、工程(vi)の凍結乾燥は、24~36時間実施される。他の実施形態において、工程(vi)の凍結乾燥は、36~48時間実施される。他の実施形態において、工程(vi)の凍結乾燥は、48~72時間実施される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0084】
他の実施形態によっては、型の設計及び切り出しは、本発明の分野で公知のコンピュータ支援設計(CAD)及び/またはコンピュータ支援製造(CAM)方法及びソフトウェアを用いて計画、設計、並びに/またはその他の加工がなされる。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0085】
他の実施形態では、本発明の方法内で実施される切り出しは、当技術分野で公知の任意の方法により行われる。他の実施形態では、本発明の方法の切り出しは、CNC(コンピュータ数値制御)機器、レーザー切断機、ウォータージェットカッター、ドリラー、または研磨装置により行われる。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を示す。
【0086】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をさらに詳しく説明するために提示されている。しかしながら、それらは決して、本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0087】
【0088】
例1
【0089】
コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品の調製
【0090】
30w/w%ヒドロキシアパタイト(CAS(登録商標)番号12167-74-7、Plasma Biotal Limited(UK))及び70w/w%コラーゲン(ブタの腱から精製)成分を、コラーゲンのフィブリル化の間、共に混合した。次いで、このスラリーを糖(グリセルアルデヒド)により架橋させた。架橋スラリーを遠心分離により濃縮し、凍結乾燥した。得られた中間生成物である乾燥ケーキを粉砕し、次いで、凝縮することにより、円形、長方形、または台形の形状の断片にした。粉砕した中間生成物を凝縮するために加えた圧縮力は、0.005~0.2トン間で変化させた。凝縮物の滅菌は、EtO(エチレンオキサイドガス)により行った。
【0091】
例2
【0092】
ラットモデルにおける架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品の骨移植研究
【0093】
目的
【0094】
この研究の目的は、次の(1)及び(2)の観点から、骨移植片としての架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品(例1のように調製したもの)の性能や安全性を事前に評価することであった。(1)頭蓋冠骨欠損モデルにおける骨の再生及び/または増強、(2)組織学的分析によって評価された異物及び炎症反応。
【0095】
外科的処置
【0096】
麻酔後、耳と耳との間の軸線よりも後方で切開を行った。全層歯肉弁を持ち上げ、頭蓋冠骨を露出させた。軟組織及び骨膜を骨から目の前方の領域まで分離し、次いで、5mmのトレフィンを用いて、硬膜に穴を開けることなく頭蓋冠骨に欠損部分を生成した。この研究では2匹の動物を用いた。最初の例では、直径5mmの欠損部分を生成し、2番目の例では、それぞれ5mmの欠損部分を2か所生成し、約10×5mmの欠損部分を生成した。欠損部分を、架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品で充填し、次いで、架橋コラーゲン膜(OSSIX(登録商標)Plus)で覆った。吸収性のバイクリル5-0縫合糸を用いた固定縫合糸を、OSSIX(登録商標)Plusの上に配置し、側頭筋の両側に固定した。
【0097】
組織学的評価
【0098】
移植後9週間で、動物をサクリファイスした。頭蓋冠を覆っている皮膚を取り除き、次いで、10%緩衝ホルマリン溶液に投入した。脱灰後,標本を切り出し,ヘマトキシリン-エオジン(H&E)染色を行った。評価は光学顕微鏡で行った。
【0099】
結果
【0100】
臨床観察
【0101】
動物は、体重と摂餌量により判断した結果、2つの試験を通じて臨床的に正常に見えた。
【0102】
顕微鏡観察
【0103】
図2A~2Bは、架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品で過充填し、OSSIX(登録商標)PLUSで覆った動物1の5mm欠損部分の顕微鏡写真である。スライドは、欠損部分の長さがわずか約2mm程度の中心から外れた場所から撮影した。顕微鏡写真は、移植材料の下部の完全に閉じた骨構造を示す。新しく形成された骨構造は、原骨に隣接する上部に位置している。この動物はまた、手術中に大量出血を伴ったが、手術後の縫合糸の開口部は、デバイスに起因しないことに注意されたい。これは炎症の兆候を示した。
【0104】
図3AのX線の不透明度は、欠損部分の閉鎖を示唆しているが、原骨よりも薄い骨層がある。
【0105】
図4A~4Bは、架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品で過充填し、OSSIX(登録商標)PLUSで覆った動物2の10mm欠損部分の概観顕微鏡写真である。スライドは、欠損部分の長さが約6.5mmの中心から外れた場所から撮影した。架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品は、軟組織または骨化によるリモデリングの証拠を示した。顕微鏡写真は、新しく形成された骨による骨欠損部分の90%の閉鎖を示す。新しい骨構造は、架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品内において、原骨に隣接する上部に位置している。結合組織へのリモデリングは、新しく形成された骨の上部の線維芽細胞が浸潤することにより証明される。
【0106】
移植後9週間後の欠損部分のX線不透明度(図3B)は、原骨の厚さと同様の厚さの骨層で欠損部分がほぼ完全に閉鎖されていることを示す。
【0107】
結論
【0108】
架橋コラーゲン-ヒドロキシアパタイト物品骨移植材(バリア膜としての歯科用膜(OSSIX(登録商標)PLUS)との組み合わせ)は、原骨の寸法を超えるような骨の再建及び伸長を促進することが可能である。
【0109】
本発明のある特徴を本明細書で例示し説明したが、多くの修正、置換、変更、及び等価物が、当業者にとって生じるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内にあるような、全てのそのような修正及び変更をカバーすることを意図していることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B