(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】HFC-23のリサイクルにおける触媒安定性を向上する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 38/12 20060101AFI20231213BHJP
B01J 27/132 20060101ALI20231213BHJP
B01J 27/32 20060101ALI20231213BHJP
B01J 38/04 20060101ALI20231213BHJP
B01J 38/42 20060101ALI20231213BHJP
C07C 17/20 20060101ALI20231213BHJP
C07C 19/10 20060101ALI20231213BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
B01J38/12 B ZAB
B01J27/132 Z
B01J27/32 Z
B01J38/04 Z
B01J38/42
C07C17/20
C07C19/10
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022535668
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(86)【国際出願番号】 CN2020076372
(87)【国際公開番号】W WO2021114481
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】201911281818.4
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520217629
【氏名又は名称】浙江省化工研究院有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520217618
【氏名又は名称】浙江▲藍▼天▲環▼保高科技股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】513016127
【氏名又は名称】中化藍天集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】SINOCHEM LANTIAN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.96, Jiangnan Avenue, Binjiang District, Hangzhou 310051, Zhejiang, China
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ウカン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ウェンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュウチェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ フェイシァン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516551(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02172441(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第104628513(CN,A)
【文献】特開平10-306046(JP,A)
【文献】特開平11-000559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 19/10
C07C 17/20
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法であって、
前記HFC-23のリサイクルは、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのフッ素-塩素交換反応によって実現され、前記フッ素-塩素交換反応の触媒は触媒本体と金属酸化物とを含み、前記金属酸化物はK、Na、Fe、Co、Cu、Ni、ZnまたはTiのうちの少なくとも一つの金属の酸化物から選択され、その添加量は0.1~5重量%であ
り、
前記フッ素-塩素交換反応中、HCFC-22の選択性をモニタリングして、HCFC-22の選択性が46%~48%まで下がったときに、炭素除去ガスを導入してHCFC-22の選択性を50%~54%に維持する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記金属酸化物は、Fe、Co、Ni、Znの金属酸化物から選択され、その添加量は0.5~2重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法。
【請求項3】
前記炭素除去ガスは、HFC-23およびハロゲン化炭化水素と混合ガスを形成してから導入され、HCFC-22の選択性が46%~48%まで下がったときに、前記混合ガスの体積に占める含有量が0.5n%の炭素除去ガスを導入し、持続時間を10n時間とし、nは再生回数であり、且つn≦6である、ことを特徴とする請求項
1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法。
【請求項4】
再生回数がn>6である場合、連続的に前記混合ガスの体積に占める含有量が1%~3%の炭素除去ガスを導入する、ことを特徴とする請求項
3に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法。
【請求項5】
前記炭素除去ガスは空気、Cl
2、CO
2またはO
2のうちの少なくとも一つとN
2との混合ガスである、ことを特徴とする請求項
1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化炭化水素は、クロロフォルム、またはクロロフォルムを含有する混合物である、ことを特徴とする請求項
1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法。
【請求項7】
前記触媒本体はクロム、アルミニウムもしくはマグネシウム系触媒、またはクロム、アルミニウムもしくはマグネシウムを活性炭/黒鉛上に支持させた触媒である、ことを特徴とする請求項
6に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法。
【請求項8】
前記フッ素-塩素交換反応の条件は、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのモル比を1:1~3とし、反応温度を250~400℃とし、反応圧力を0.1~3barとし、保持時間を4~50秒とする、ことを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法。
【請求項9】
前記フッ素-塩素交換反応の条件は、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのモル比を1:1.2~2.2とし、反応温度を300~360℃とし、反応圧力を1~2barとし、保持時間を4~12秒とする、ことを特徴とする請求項
8に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はHFC-23のリサイクルに関し、特にHFC-23のリサイクルにおける触媒安定性を向上すると同時に、副産物CFC-12の選択性を抑える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HFC-23(CHF3、トリフルオロメタン、R23)はHFC-22(HCFC-22、クロロジフルオロメタン、R22またはCHClF2)の工業生産において避けられない副産物であり、強い温室効果があり、その地球温暖化係数(GWP,Global Warming Potential)はCO2の14800倍である。統計によれば、2013年、中国のHFC-23の排出量は、全世界排出量の68%も占め、産出量は2万トン以上にも達し、CO2の年間排出量に換算すれば2.96億トンにも相当する。そのため、HFC-23のリサイクルは省エネルギー化と排出削減とを実現する上で重要な課題となっている。
【0003】
目下、産業上ではHCFC-22の生産中に生じる副産物HFC-23に対して、一般的に直接排出するか、1200℃の高温で燃焼させる方法によって処分しているものの、直接排出は環境汚染をもたらし、1200℃の高温で燃焼させる方法は操業と設備のコストが高くなり、HCFC-22の生産コストを上昇させてしまう。そのため、従来技術ではHFC-23のリサイクルにおいて、以下の技術手段を使用している。
【0004】
米国特許US3009966Aには700~1090℃でトリフルオロメタンの熱分解によってTFEとヘキサフルオロプロパン(HFP)を作製する方法が開示されているが、この方法では副産物であるパーフルオロイソブチレン(PFIB)が多く生じ、収率を下げることを代価として低い温度にて行っても、無視できない量のPFIBが生じる。PFIBは極めて強い毒性を有し、その処理もかなり煩雑である。
【0005】
WO96/29296AにはHCFC-22とHFC-23の共熱分解によって高分子フルオロアルカンを形成する方法が開示されているが、この方法によるHCFC-22の転化率は100%に達するものの、産物であるペンタフルオロエタンの収率は僅か60%しかなく、且つ余分の処理または廃棄が必要となる低価値の副産物も生成する。
【0006】
米国特許US2003/0166981には金を触媒として、690~775℃温度の下で、HFC-23とHCFC-22の熱分解によって、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、TFEおよびHFPの混合物を作製する方法が開示されている。しかし、この方法は熱分解温度が高く、反応条件もかなり厳しい。
【0007】
中国特許CN104628514Aにはメタントリフルオロメタンを一定の比で触媒が入っている反応装置に通すと同時に、O2を添加して、比較的高い温度の条件下で反応させてフッ化ビニリデン(VDF)を生成させる方法が開示されている。しかし、この方法も熱分解に属し、熱分解温度が高く、反応条件もかなり厳しい。
【0008】
中国特許CN104628513Aにはトリフルオロメタンとクロロフォルムを原料とし、ルイス酸の触媒作用の下でHCFC-22に転化させる方法が開示されている。この方法は、分子間のフッ素-塩素交換を通じて、比較的低い温度(400℃以下)でトリフルオロメタンの転化を実現する。しかし、この方法は比較的強いルイス酸触媒を使用するため、触媒の安定性が良くなく、炭素堆積と焼結によって失活し易い。
【0009】
中国特許CN109748775AではMgF2、Al2O3、部分フッ素化酸化アルミニウムまたはAlF3触媒が存在する下で、トリフルオロメタンとジクロロメタンの反応によって価値のもっと高いジフルオロメタンに転化させると同時に、反応段階にCl2、CCl4、H2、O2、CO2、O3と窒素酸化物促進ガスを連続的に導入することによって、触媒効率と触媒安定性を向上させている。しかし、この方法においては、副産物のCFC-12の選択性が著しく増加して2%~8%にも達し、また産物の選択性が比較的低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の技術課題を解決するために、触媒の安定性と耐用期間を向上させると同時に、副産物CFC-12の含有量を制御する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、HFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上する方法であって、前記リサイクルが、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのフッ素-塩素交換反応によって実現される方法によって達成される。
【0012】
【0013】
上記フッ素-塩素交換の産物はジフルオロクロロメタン(HCFC-22)とジクロロフルオロメタン(HCFC-21)を含む。本発明者は、両者が触媒の表面にて不均化反応を起こし易いことを発見した。その反応式は以下のとおりである。
2CHClF2 → CHF3+CHFCl2
2CHCl2F → CHCl3+CHClF2
【0014】
産物のHCFC-22とHCFC-21の触媒表面での迅速な脱離を実現し、触媒表面での炭素堆積を低減し、触媒の安定性と耐用期間とを向上するために、次の解決手段が適用される。前記触媒は触媒本体と金属酸化物を含み、前記金属酸化物はK、Na、Fe、Co、Cu、Ni、ZnまたはTiのうちの少なくとも一つの金属酸化物から選択され、その添加量は0.1~5重量%である。添加方法は既存の触媒作製のための通常の方法を使用すればよく、例えば、触媒本体との物理的研磨、または金属塩溶液前駆体を湿式混合法または浸漬法で添加させてから焼成する。好ましくは、前記金属酸化物はFe、Co、NiまたはZnの金属酸化物から選択され、その添加量は0.5~2重量%である。
【0015】
前記触媒本体はクロム、アルミニウムもしくはマグネシウム系触媒、またはクロム、アルミニウムもしくはマグネシウムを活性炭/黒鉛上に支持させた触媒であり、好ましくは、前記触媒本体はCr2O3、Cr2O3/Al2O3、Cr2O3/AlF3、Cr2O3/C、MgO、MgO/Al2O3、MgO/AlF3、MgO/AlF3、Al2O3またはAlF3のうちの少なくとも一つから選択される。
【0016】
上記フッ素-塩素交換反応におけるハロゲン化炭化水素はクロロフォルム、またはクロロフォルムを含有する混合物である。フッ素-塩素交換反応条件は、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのモル比を1:1~3とし、反応温度を250~400℃とし、反応圧力を0.1~3barとし、保持時間を4~50秒とする。好ましくは、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのモル比を1:1.2~2.2とし、反応温度を300~360℃とし、反応圧力を1~2barとし、保持時間を4~12秒とする。
【0017】
触媒の安定性をより一層向上し、副産物CFC-12の含有量を抑えるために、フッ素-塩素交換反応におけるHCFC-22の選択性をモニタリングして、HCFC-22の選択性が46%~48%まで下がったときに、炭素除去ガスを導入してHCFC-22の選択性を50%~55%に維持する。
【0018】
前記炭素除去ガスは触媒床層に導入され、触媒表面上に堆積された炭素と反応してガス状物質を生成して、触媒上の炭素堆積を除去する目的と、触媒の安定性と耐用期間を向上する目的とを達成する。前記炭素除去ガスは空気、Cl2、CO2またはO2のうちの少なくとも一つとN2との混合ガスである。
【0019】
さらに、前記炭素除去ガスは、HFC-23およびハロゲン化炭化水素と混合ガスを形成してから導入され、HCFC-22の選択性が46%~48%まで下がったときに、前記混合ガスの体積に占める含有量が0.5n%の炭素除去ガスを導入し、持続時間を10n時間とし、nは再生回数であり、且つn≦6である。
【0020】
具体的には、HCFC-22の選択性が46%~48%まで下がると、0.5%の炭素除去ガスを導入し、10時間持続させて、HCFC-22の選択性を50%~55%まで徐々に回復させる。HCFC-22の選択性が2回目に下がると、1%の炭素除去ガスを導入し、20時間持続させて、HCFC-22の選択性を徐々に回復させる。HCFC-22の選択性が3回目に下がると、1.5%の炭素除去ガスを導入し、30時間持続させて、選択性を徐々に回復させる。同じように、n=6まで再生する。再生回数がn≦6までは、炭素除去効果が比較的理想的であり、HCFC-22の選択性を基本的に50%~55%に維持することができ、副産物CFC-12の選択性が1%未満であり、触媒が優れた安定性を維持することができる。再生回数がn>6となる場合、HCFC-22の選択性が下がる傾向を見せるが、この時に、前記混合ガスの体積に占める含有量が1%~3%の炭素除去ガスを連続的に導入することによって、触媒の優れた安定性を維持する。
【0021】
断続的または連続的に炭素除去ガスを導入する間は、原料HFC-23およびハロゲン化炭化水素を正常に供給する。
【発明の効果】
【0022】
(1)本発明は触媒中に金属酸化物を添加することによって、産物HCFC-22とHCFC-21の触媒表面上での脱離を加速し、これよって、それらによって触媒表面にて発生する不均化反応を抑制し、副反応によって生じる炭素堆積を減らし、触媒の安定性と耐用期間とを向上することができる。
【0023】
(2)本発明はHCFC-22の選択性をモニタリングすることによって、炭素除去ガスを導入する時期を調整し、触媒の安定性を向上すると同時に、副産物CFC-12の選択性を1%未満に制御するだけでなく、産物の選択性を向上することができ、工業生産に適している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施例と共に本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態に限定されるものではない。当業者は、本発明は、特許請求の範囲内に含まれる可能性のあるすべての予備技術手段や改進手段および等価手段を包含するということを理解すべきである。
【0025】
実施例1
触媒の作製:三酸化二クロムと三酸化二コバルト粉末を研磨して混合し、Coの質量含有量を1.0%として、1.0%のCo/Cr2O3触媒前駆体を得た。この1.0%のCo/Cr2O3触媒前駆体に対して次の2段階のフッ化処理を行った。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃でフッ化処理を5時間行う。フッ化処理後、触媒が得られ、これを触媒1とした。
【0026】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタンとクロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒1を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は26.6%、HCFC-22の選択性は44.8%、HCFC-21の選択性は54.7%、副産物CFC-12の選択性は0.5%であった。973時間経った後、触媒は著しく失活していた。
【0027】
実施例2
触媒の作製:三酸化二クロムと三酸化二鉄粉末を研磨して混合し、Feの質量含有量を1.0%として、1.0%のFe/Cr2O3触媒前駆体を得た。この1.0%のFe/Cr2O3触媒前駆体に対して次の2段階のフッ化処理を行った。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃でフッ化処理を5時間行う。フッ化処理後、触媒が得られ、これを触媒2とした。
【0028】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタンとクロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒2を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は26.3%、HCFC-22の選択性は44.9%、HCFC-21の選択性は54.5%、副産物CFC-12の選択性は0.6%であった。861時間経った後、触媒は著しく失活していた。
【0029】
実施例3
触媒の作製:三酸化二クロムと三酸化二ニッケル粉末を研磨して混合し、Niの質量含有量を1.0%として、1.0%のNi/Cr2O3触媒前駆体を得た。この1.0%のNi/Cr2O3触媒前駆体に対して次の2段階のフッ化処理を行った。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃でフッ化処理を5時間行う。フッ化処理後、触媒が得られ、これを触媒3とした。
【0030】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタンとクロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒3を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は25.3%、HCFC-22の選択性は43.8%、HCFC-21の選択性は55.5%、副産物CFC-12の選択性は0.7%であった。758時間経った後、触媒は著しく失活していた。
【0031】
実施例4
本実施例の操作は実施例1と同様であって、違う点は、HFC-23のリサイクル中に断続的に炭素除去ガスを導入して炭素焼却操作を増やしたことである。断続的に炭素焼却ガスを導入する時期:551時間反応後、ジフルオロクロロメタンの選択性が46.0%まで下がり、原料導入を止め、0.5重量%(トリフルオロメタンとクロロフォルム総フローとの和)のO2を導入して1回目の炭素焼却を10時間行った。引き続き原料を導入して一定の期間反応させてR22の選択性が54.1%まで徐々に回復したが、反応が952時間経つとR22の選択性が46.0%まで下がり、直ちに反応を止めて、1.0重量%のO2を導入して2回目の炭素焼却を20時間行った。炭素焼却が終わってから原料を導入して反応させて、R22の選択性が53.2%まで徐々に回復した。1304時間経つと、また46.0%まで下がった。直ちに反応を止めて、1.5重量%のO2を導入して3回目の炭素焼却を30時間行い、引き続き原料を導入して反応させて、R22の選択性が52.6%まで徐々に回復した。1605時間経つと、また46.0%まで下がった。直ちに反応を止めて、2.0重量%のO2を導入して4回目の炭素焼却を40時間行い、引き続き原料を導入して反応させて、R22の選択性が51.9%まで徐々に回復した。1856時間経つと、また46.0%まで下がった。直ちに反応を止めて、2.5重量%のO2を導入して5回目の炭素焼却を50時間行い、引き続き原料を導入して反応させて、R22の選択性が51.1%まで徐々に回復した。2057時間経つと、また46.0%まで下がった。直ちに反応を止めて、3.0重量%のO2を導入して6回目の炭素焼却を60時間行い、引き続き原料を導入して反応させて、R22の選択性が50.6%まで徐々に回復した。2210時間経つと、また46.0%まで下がった。原料中に3.0重量%のO2を混入させて持続的に反応させ、2507時間経つと、トリフルオロメタンの転化率が16.6%まで下がり、ジフルオロクロロメタンの選択性が27.2%まで下がった。触媒は反応が2507時間行われると失活し、トリフルオロメタンの転化率は25.1%、HCFC-22の選択性は43.3%、HCFC-21の選択性は55.4%、副産物CFC-12の選択性は0.9%であり、排ガスには微量のCH4などのガスが残っていた。
【0032】
実験結果が示すように、適当な時期に、断続的に適切な量のO2を導入して、所定の時間炭素焼却処理を行い、炭素焼却回数が6回を超えてから、連続的にO2を導入して炭素焼却処理を行った結果、触媒の安定性と耐用期間とが著しく向上し、且つ副産物CFC-12の選択性が1.0%未満となることを確認できた。
【0033】
実施例5
本実施例の操作は実施例2と同様であって、違う点は、触媒反応が411時間経つと、R22の選択性が46.0%まで下がり、その後6回の断続的炭素焼却と連続的な炭素焼却ガス導入の後、触媒を引き続き1945時間まで反応させると、触媒が失活状態になったことである。この時、トリフルオロメタンの転化率は24.9%、HCFC-22の選択性は43.6%、HCFC-21の選択性は55.5%、副産物CFC-12の選択性は0.9%であり、排ガスには微量のCH4などのガスが残っていた。
【0034】
実施例6
本実施例の操作は実施例3と同様であって、違う点は、触媒反応が386時間経つと、R22の選択性が46.0%まで下がり、その後6回の断続的炭素焼却と連続的な炭素焼却ガス導入の後、触媒を引き続き1623時間まで反応させると、触媒が失活状態になったことである。この時、トリフルオロメタンの転化率は24.7%、HCFC-22の選択性は42.8%、HCFC-21の選択性は55.9%、副産物CFC-12の選択性は1.0%であり、排ガスには微量のCH4などのガスが残っていた。
【0035】
実施例7
本実施例の操作は実施例1と同様であって、違う点は、Co質量含有量を1.0%から0.5%まで下げたことである。作製された触媒に対してフッ素-塩素交換反応を行ったが、反応後のトリフルオロメタンの転化率は26.5%、HCFC-22の選択性は44.6%、HCFC-21の選択性は54.8%、副産物CFC-12の選択性は0.6%であり、654時間経つと、触媒は著しく失活していた。
【0036】
実施例8
本実施例の操作は実施例1と同様であって、違う点は、Co質量含有量が1.0%から2.0%まで上げたことである。作製された触媒に対してフッ素-塩素交換反応を行ったが、反応後のトリフルオロメタンの転化率は26.7%、HCFC-22の選択性は44.5%、HCFC-21の選択性は54.8%、副産物CFC-12の選択性は0.5%であり、756時間経つと、触媒は著しく失活していた。
【0037】
実施例9
本実施例の操作は実施例1と同様であって、違う点は、トリフルオロメタンとクロロフォルムとのモル比を1:1.5から1:1に変えたことである。反応後のトリフルオロメタンの転化率は24.7%、HCFC-22の選択性は43.6%、HCFC-21の選択性は55.6%、副産物CFC-12の選択性は0.7%であり、507時間経つと、触媒は著しく失活していた。
【0038】
実施例10
本実施例の操作は実施例1と同様であって、違う点は、実施例1中のトリフルオロメタンとクロロフォルムとのモル比を1:1.5から1:2に変えたことである。反応後のトリフルオロメタンの転化率は25.5%、HCFC-22の選択性は43.3%、HCFC-21の選択性は55.8%、副産物CFC-12の選択性は0.9%であり、486時間経つと、触媒は著しく失活していた。
【0039】
比較例1
触媒の作製:三酸化二クロム触媒に対して次の2段階のフッ化処理を行った。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃でフッ化処理を5時間行う。フッ化処理後、触媒が得られ、これを触媒D1とした。
【0040】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタンとクロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒D1を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は25.6%、HCFC-22の選択性は44.4%、HCFC-21の選択性は54.2%、副産物CFC-12の選択性は1.4%であった。340時間経った後、触媒は著しく失活していた。触媒を取り出して見ると著しく黒くなっており、かなりの炭素堆積が発生していた。
【0041】
比較例2
触媒の作製:三酸化二クロムと酸化カルシウム粉末を研磨して混合し、Caの質量含有量を1.0%として、1.0%のCa/Cr2O3触媒前駆体を得た。この1.0%のCa/Cr2O3触媒前駆体に対して次の2段階のフッ化処理を行った。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃でフッ化処理を5時間行う。フッ化処理後、触媒が得られ、これを触媒D2とした。
【0042】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタンとクロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒D2を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は26.6%、HCFC-22の選択性は44.3%、HCFC-21の選択性は54.7%、副産物CFC-12の選択性は1%であった。345時間経った後、触媒は著しく失活していた。Ca元素の添加は触媒の耐用期間を延ばすことができなかった。
【0043】
比較例3
本実施例の操作は比較例2と同様であって、違う点は、原料ガスに連続的に3.0重量%のO2を混ぜ入れて床層に導入して反応を行ったことである。トリフルオロメタンの転化率は26.3%、HCFC-22の選択性は41.5%、HCFC-21の選択性は55.0%、副産物CFC-12の選択性は3.5%であり、排ガス中には微量のCH4などのガスが残っていた。341時間経った後、触媒は著しく失活していた。原料中に連続的に3.0重量%のO2を導入することによって、副産物CFC-12の選択性を向上することができた。