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特許7402345改善されたCO/HC転化率及びNO酸化のための層状ゾーンコーティングされたディーゼル酸化触媒
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  • 特許-改善されたCO/HC転化率及びNO酸化のための層状ゾーンコーティングされたディーゼル酸化触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】改善されたCO/HC転化率及びNO酸化のための層状ゾーンコーティングされたディーゼル酸化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/78 20060101AFI20231213BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231213BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20231213BHJP
   F01N 3/021 20060101ALI20231213BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20231213BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231213BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20231213BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231213BHJP
   B01J 23/656 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
B01J29/78 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/04 301J
B01J35/04 301L
F01N3/021
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/20 D
F01N3/28 301P
F01N3/28 301Q
B01J23/656 A ZAB
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022542769
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 GB2021050793
(87)【国際公開番号】W WO2021198680
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/001,775
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】シフィー、アンドリュー フランシス
(72)【発明者】
【氏名】コール、キーラン
(72)【発明者】
【氏名】デュロー、アメリ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールディン、カミラ
(72)【発明者】
【氏名】モロー、フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン、マシュー
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516643(JP,A)
【文献】特表2020-517456(JP,A)
【文献】特表2017-508606(JP,A)
【文献】特表2017-501031(JP,A)
【文献】特表2018-511475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造を有し、前部ゾーン及び後部ゾーンを備えるフロースルーモノリス基材を含む、ディーゼルエンジンからの排気ガス排出を処理するための層状ディーゼル酸化触媒であって、前記基材の前記前部ゾーンが、1つの層が別の層の上部に重なり、層A、B、及びCのうちの2つ以上を含む、層の組み合わせを含み、前記後部ゾーンが、層Dを含み、
i.層Aが、モレキュラーシーブ上の白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせを含み、
ii.層Bが、1)耐火金属酸化物担体上の白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせと、2)アルカリ土類金属、好ましくはバリウム、ストロンチウム、又はそれらの組み合わせと、を含み、
iii.層Cが、1)耐火金属酸化物担体上の白金、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせである、白金族金属と、2)ビスマスである、助触媒金属と、を含み、層Cが、前記基材上にコーティングされた下層である、
Dが、1)耐火金属酸化物担体上の白金、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせと、2)マンガン(Mn)と、を含み、
前記前部ゾーン内の前記層の組み合わせが、(I)層A及び層Cを含み、(II)層B及び層Cを含み、または(III)層A、層B、及び層Cを含む、層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項2】
前記前部ゾーン内の前記層の組み合わせが、(I)または(III)を含む場合、層Aが、中間層及び/又は下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた上層である、請求項に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項3】
前記前部ゾーン内の前記層の組み合わせが、(II)または(III)を含む場合、層Bが、中間層及び/又は下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた上層である、請求項に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項4】
層C中の白金対パラジウム重量が、1:0≧15:1である、請求項1~のいずれか一項に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項5】
層Cが、モレキュラーシーブを含まない、請求項1~のいずれか一項に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項6】
層Bが、4:1≧0.5:1の重量比で白金及びパラジウムを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項7】
層Bが、モレキュラーシーブを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項8】
層A及び/又は層Bの前記モレキュラーシーブが、MFI、FAU、又はBEA、好ましくはBEAを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項9】
前記基材が、軸方向長さを有し、前記前部ゾーンが、前記基材の前記軸方向長さの20~80%であり、前記後部ゾーンが、前記基材の前記軸方向長さの80~20%である、請求項1~のいずれか一項に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
【請求項10】
炭化水素、一酸化炭素、及び他の排気ガス成分を含む、ディーゼルエンジン排気流を処理するためのシステムであって、排出処理システムが、
a.排気ガスマニホールドを介して前記ディーゼルエンジンと流体連通している、排気ガス導管と、
b.請求項1~のいずれか一項に記載の層状ディーゼル酸化触媒であって、前記前部ゾーンが、上流側に配向されている、層状ディーゼル酸化触媒と、
c.前記層状ディーゼル酸化触媒と流体連通している、以下:煤フィルタ、選択的触媒還元(SCR)触媒、選択的触媒還元フィルタ触媒、及びNOx吸蔵還元触媒のうちの1つ以上と、を含む、システム。
【請求項11】
要素cが、前記層状ディーゼル酸化触媒の下流に位置するSCR触媒又は選択的触媒還元フィルタ触媒を含む、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン用の酸化触媒、及び酸化触媒を含むディーゼルエンジン用の排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、世界中の政府間組織によって規制されている少なくとも4種類の汚染物質、すなわち、一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)、及び微小粒子状物質(particulate matter、PM)を概して含有する、排ガスを生成する。据え置き型か可動型(例えば、車両用ディーゼルエンジン)かによらず、ディーゼルエンジンについての排出基準が徐々に厳しくなっている。これらの基準を満たすことができる、費用効果の高い改良された触媒及び排気システムを提供する必要がある。
【0003】
ディーゼルエンジンの場合、酸化触媒(ディーゼル酸化触媒(diesel oxidation catalyst、DOC)として知られている)は、典型的には、そのようなエンジンによって生成された排気ガスを処理するために使用される。ディーゼル酸化触媒は、全般的に、(1)一酸化炭素(CO)から二酸化炭素(CO)への、(2)HCから二酸化炭素(CO)と水(HO)への酸化に触媒作用を及ぼす。ディーゼルエンジン、特に軽量ディーゼル車両の排ガス温度は比較的低いため(例えば、約400℃)、「ライトオフ」温度が低い耐久性のある触媒処方を開発することが1つの課題である。
【0004】
DOCなどの酸化触媒の活性は、触媒が特定の触媒反応を開始する、若しくはその反応をあるレベルまで実行する温度である「ライトオフ」温度に関して測定されることが多い。通常、「ライトオフ」温度は、一酸化炭素の転化などの反応物の特定のレベルの転化に関して与えられる。したがって、T50の温度は、触媒が50%の効率で反応物の転化に触媒作用を及ぼす最低温度を表すため、多くの場合、「ライトオフ」温度として引用される。
【0005】
ディーゼルエンジンのための排気システムは、いくつかの排出制御デバイスを含み得る。各排出制御デバイスは、特殊な機能を有し、排気ガス中の汚染物質の1つ以上のクラスを処理することを担う。上流の排出制御デバイスの性能は、下流の排出制御デバイスの性能に影響を及ぼし得る。これは、上流の排出制御デバイスの出口からの排気ガスが、下流の排出制御デバイスの入口内に送られるためである。排気システム内の各排出制御デバイス間の相互作用は、システムの全体的な効率にとって重要である。
【0006】
ディーゼル酸化触媒(DOC)などの酸化触媒は、典型的には、ディーゼルエンジンによって生成される排気ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化する。ディーゼル酸化触媒はまた、排気ガス中に存在する一酸化窒素(NO)の一部を二酸化窒素(NO)に酸化することもできる。二酸化窒素(NO)自体は汚染物質ではあるが、NOのNOへの転化は有益であり得る。生成されたNOは、例えば、下流のディーゼル粒子フィルタ(diesel particulate filter、DPF)又は下流の触媒化煤フィルタ(catalyzed soot filter、CSF)により捕捉された粒子状物質を再生するために使用できる。概して、酸化触媒によって生成されたNOは、入口における排気ガスと比較した酸化触媒の出口からの排気ガス中のNOである、NOの比率を上昇させる。この上昇した比率は、下流の選択的触媒還元(selective catalystic reduction、SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルタ(selective catalytic reduction filter、SCRF(商標))触媒を含む排気システムにとって有利であり得る。ディーゼルエンジンによって直接生成される排気ガス中のNOである、NOの比率は、最適なSCR又はSCRF(商標)触媒性能には低すぎる場合がある。
【0007】
概して、排気システムにおいて良好なNOの生成活性を有するDOCなどの酸化触媒を含むことが有利であるが、この方法での酸化触媒の使用は、下流の排出制御デバイス(例えば、SCR又はSCRF(商標)触媒)から最適な性能を得ることを求める場合に問題となり得る。所与の排気ガス温度において酸化触媒によって生成されるNOの(平均)平均量は、その寿命にわたって大幅に変化し得る。このため、活性SCRを行うための窒素還元剤の投与の較正が難しくなり得る。
【0008】
更に、自動車排出ガス基準についての諮問グループ(Advisory Group on Vehicle Emission Standards、AGVES)の勧告に取り組むことを任務とする欧州委員会CLOVEコンソーシアムの軽量及び重量ディーゼル車両に対するEuro 7排出規制の可能性について、2020年10月27日に提示された予備調査結果は、NOを強力な「温室効果ガス」として規制するよう勧告している。
【0009】
排出規制がより厳しくなるため、例えば、ライトオフ性能及び最適化されたNOの生成などの、改善された性能を提供するディーゼル酸化触媒(DOC)システムを開発することが、継続的な目標である。その結果、本発明は、HC及びCOのライトオフ及びNO酸化に対する驚くべき改善を提供する配合及び構成を有するディーゼル酸化触媒を対象としている。また、そのような新しい触媒設計が、NOの生成を制限又は抑制することを考慮に含んでいる場合も、望ましいであろう。
【0010】
出願人の国際公開第2015/110818(A1)号は、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための酸化触媒、及び酸化触媒を含む排気システムが説明されていることを開示している。酸化触媒は、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化するための第1のウォッシュコート領域であって、第1の白金族金属(platinum group metal、PGM)と、第1の支持材料と、を含む、第1のウォッシュコート領域と、酸化窒素(NO)を酸化するための第2のウォッシュコート領域であって、白金(Pt)と、マンガン(Mn)と、第2の支持材料と、を含む、第2のウォッシュコート領域と、吸入端及び吐出端を有する基材と、を含み、第2のウォッシュコート領域は、排気ガスが第1のウォッシュコート領域と接触した後に、排気ガスと基材の吐出端で接触するように配置される。
【0011】
出願人の国際公開第2015/110819(A1)号は、ディーゼルエンジンからの排気ガスを処理するための酸化触媒を開示し、この酸化触媒は、白金(Pt)、マンガン(Mn)、及び第1の担体材料を含む第1のウォッシュコート領域と、白金族金属(PGM)及び第2の担体材料を含む第2のウォッシュコート領域と、入口端部及び出口端部を有する基材と、を含み、第2のウォッシュコート領域は、排気ガスが第1のウォッシュコート領域と接触した後に、排気ガスと基材の吐出端で接触するように配置される。
【0012】
出願人の国際公開第2017/064498(A1)号は、触媒領域及び基材を含むディーゼルエンジンによって生成された排気ガスを処理するための酸化触媒を開示し、触媒領域は、ビスマス(Bi)又はその酸化物を含む触媒材料と、(i)白金(Pt)、(ii)パラジウム(Pd)、及び(iii)白金(Pt)とパラジウム(Pd)からなる群から選択される白金族金属(PGM)と;耐火酸化物である担体材料と、を含み、白金族金属(PGM)が、担体材料上に担持され、ビスマス(Bi)又はその酸化物が、担体材料上に担持され、かつ/又は耐火酸化物が、ビスマス又はその酸化物を含む。
【0013】
国際公開第2011/082357(A2)号は、ビスマス、マンガン、又はビスマス及びマンガンでドープされた排出制御触媒を開示している。ドープされた触媒は、パラジウム-金触媒又は白金系触媒、又はその両方であり得る。ドープされたパラジウム-金触媒及びドープされた白金系触媒は、単一のウォッシュコート層、又はマルチブリック排出制御システム、マルチゾーン化排出制御システム、若しくは多層排出制御システムの異なるウォッシュコート層に含有され得る。全ての実施形態では、ゼオライトは、炭化水素吸収成分として添加され得る。
【0014】
商品としての白金族金属は、銅などの工業的卑金属に対して経済的価値が高い、比較的希少な、天然に存在する金属化学元素である。本明細書の出願日の少し前に、ロンドン金属取引所における銅のスポット価格はUS$8,750/トンであったのに対し、白金のロンドン貴金属市場協会のスポット価格は42,011,334/トンに相当するUS$1,191/オンス(1メートルトンは35,274オンス)であった。しかしながら、対応するパラジウムのスポット価格は、US$2,752/オンスであった。すなわち、重量基準で、現在パラジウムは白金のコストの2倍を超えている。したがって、ディーゼル酸化触媒中のパラジウムの量を白金に対して低減し、可能であれば、低コストの金属元素を用いる好適な促進によって、ディーゼル酸化触媒中の白金族金属の量を低減させることに、概括的な関心が存在する。
【発明の概要】
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、ディーゼルエンジンからの排気ガス排出を処理するための層状ディーゼル酸化触媒であって、
a.ハニカム構造を有し、前部ゾーン及び後部ゾーンを備えるフロースルーモノリス基材であって、基材の前部ゾーンが、1つの層が別の層の上部に重なり、層A、B、及びCのうちの2つ以上を含む層の組み合わせを含み、後部ゾーンが、層Dを含む、フロースルーモノリス基材を含み、
i.層Aが、モレキュラーシーブ上の白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせを含み、
ii.層Bが、1)耐火金属酸化物担体上の白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせと、2)アルカリ土類金属、好ましくはバリウム、ストロンチウム、又はそれらの組み合わせと、を含み、
iii.層Cが、1)耐火金属酸化物担体上の白金、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせである白金族金属と、2)マンガン及び/又はビスマスである助触媒金属と、を含み、
iv.層Dが、1)耐火金属酸化物担体上の白金、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせと、2)マンガン(Mn)と、を含む、層状ディーゼル酸化触媒を提供する。
【0016】
本発明による層状ディーゼル酸化触媒は、ディーゼルエンジンからの排出ガス排出を処理するためのものであり、このため、好ましくは、触媒成分、例えば、ガソリン排気ガス排出を処理するための三元触媒に典型的に含まれるロジウムを含まない。
【0017】
更に、本発明による層状ディーゼル酸化触媒は、アルミナなどの耐火金属酸化物成分へのドーパントとして、又は耐火金属酸化物担体材料として、例えば、微粒子セリア(CeO)、若しくは酸素貯蔵成分(OSC)としても知られているセリウム-ジルコニウム酸化物などの微粒子セリウム酸化物を含有する混合酸化物などのセリウムの酸化物を含むことはない。
【0018】
いくつかの態様では、層の組み合わせは、層A及び層C、層B及び層C、又は層A、層B、及び層Cを含む。
【0019】
いくつかの態様では、層Bは、約0.5:1~約3:1の重量比で、好ましくは、約2:1の重量比で白金及びパラジウムを含む。
【0020】
1)担体上の白金族金属と、2)遷移金属とを含む層Dでは、白金族金属は、白金、すなわち白金のみを含むことができる。担体は、モレキュラーシーブ又は耐火金属酸化物、好ましくは、耐火金属酸化物、最も好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0021】
層Cは、基材上にコーティングされた下層であり得る。層Bは、下層の少なくとも一部分の上にコーティングされ得るが、好ましくは、下層と実質的に同じ軸方向長さである。層Aは、中間層及び/又は下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた上層であり得るが、好ましくは中間層及び/又は下層と実質的に同じ軸方向長さである。
【0022】
層A及び/又は層Cは、好ましくは、実質的にバリウムを含まない。層B及び/又は層Cのアルミナは、好ましくはシリカ-アルミナ(「シリカ-アルミナ」の定義については以下を参照)を含む。
【0023】
概して、層Aは、炭化水素を酸化するように配合されている。層Aのモレキュラーシーブは、例えば、MFI、FAU、又はBEA、好ましくは、BEAを含み得る。層Aの白金族金属は、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせ、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせを含む。
【0024】
概して、層Bは、CO及び炭化水素を酸化するように配合されている。層Bの白金族金属は、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせを含む。層Bの耐火金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、チタニア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、ジルコニア-シリカ、チタニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせ(以下、「シリカ-アルミナ」の定義を参照)を含み得る。
【0025】
層Bのアルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、ストロンチウム、バリウム、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくはバリウムを含み得る。層Bは、約0.5:1~約4:1、例えば約0.5:1~約3:1の重量比、好ましくは、約2:1の重量比で白金及びパラジウムを含み得る。あるいは、層BにおけるPt:Pd重量比は、10:1≧1:1、例えば、6:1≧1.5:1である。
【0026】
層Bにおけるアルカリ土類金属、特にバリウムの充填量は、典型的には、30~250g ft-3、例えば50~200g ft-3である。
【0027】
層Bはまた、特に層Bが前部ゾーン内の2つの層のみのうちの1つであるモレキュラーシーブを含み得る。
【0028】
概して、層Cは、COを酸化するように配合されている。層Cの白金族金属は、耐火金属酸化物担体上の白金、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせである。
【0029】
層C内の助触媒金属がビスマスである場合、白金対パラジウムの重量比は、好ましくは1:0≧15:1であり、これは、本出願人の国際公開第2017/064498(A1)号に開示されている結果が、より高いPt:Pd重量比-又はPtのみ-が、ビスマスが助触媒であるCO及びHCの酸化に有益であることを示すためである(国際公開第’498(A1)号の実施例3~6及び表3、並びに関連する説明を参照)。更に、以下の実施例に見られるように(表6及び表7、並びに関連する説明を参照)、ゼオライトがビスマス含有層中に存在する場合、CO酸化に悪影響を及ぼし、NOの生成が増加する可能性がある。したがって、層Cは、モレキュラーシーブを実質的に含まない。
【0030】
ビスマス含有層C中のビスマス充填量は、好ましくは5:1~1:2、より好ましくは4:1~3:5(例えば、5:2~3:5)であり、例えば2:1~1:1である。PGM、特にビスマスに対するPtの相対割合は、触媒物質の炭化水素への酸化活性に影響を及ぼし得ることが見出された。追加的に、又は代替的に、ビスマス含有層Cが、10~100g ft-3、より好ましくは25~75g ft-3のビスマスの総充填量を含むことが好ましい。これは、より高いビスマス充填量がCO及びHC酸化活性に悪影響を及ぼす可能性があるためである(国際公開’498A1における実施例7~10及び表3、並びに関連する説明を参照)。
【0031】
ビスマス含有酸化触媒の更なる利点は、パラジウムが非常に高価である現状において、より費用効果が高いことである。すなわち、ビスマスディーゼル酸化触媒は、低パラジウム含有量で活性である。例えば、以下の実施例では、Ptのみの層Dを含むビスマス含有触媒が、13:1及び7.1:1のPt:Pd重量比を有することが例示されている。この理由から、ディーゼル酸化全体における白金及びパラジウムの合計の重量比が、20:1~2:1、特に20:1~5:1、例えば20:1~7:1、より好ましくは17.5:1~2.5:1、特に15:1~5:1、更に好ましくは12.5:1~7.5:1であることが、特に好ましい。
【0032】
本出願人の国際公開第2015/110819(A1)号に開示されている結果のため、層C中の助触媒金属がマンガンである場合、白金対パラジウムの重量比は、好ましくは1:0≧1:1である。本発明者らは、驚くべきことに、(i)マンガンと(ii)白金との組み合わせが触媒配合物に含まれる場合に、有利な活性を有する酸化触媒を得ることができることを見出した。そのような触媒は、優れた低温CO酸化活性を有することが見出されている。触媒は、特に250℃を下回る温度において、圧縮点火機関によって生成された排気ガス中の比較的高レベルのCOを転化するのに特に効果的である。触媒はまた、HCに対する良好な酸化活性を示し得る。触媒の比較的低い温度酸化活性は、排気システム内の他の排出制御デバイスと組み合わせて使用するのに特に適している。
【0033】
助触媒金属がマンガンである場合、典型的には、層Cにおけるマンガン総充填量は10~250g ft-3(例えば75~175g ft-3)、より好ましくは15~200g ft-3(例えば50~150g ft-3)、なおより好ましくは20~150g ft-3である。
【0034】
典型的には、層Cは、≦5:1、より好ましくは5:1未満のMn:Pt重量比を有し得る。
【0035】
概して、層Cは、≧0.2:1(例えば、≧0.5:1)、より好ましくは>0.2:1(例えば、>0.5:1)のMn:Pt重量比を含み得る。
【0036】
層Cは、マンガン(Mn)対白金の総重量比を、5:1~0.2:1、例えば、5:1~0.5:1(例えば、5:1~2:3又は5:1~1:2)、好ましくは4.5:1~1:1(例えば、4:1~1.1:1)、より好ましくは4:1~1.5:1で含んでもよい。
【0037】
層A及び/又は層Bのモレキュラーシーブは、好ましくはMFI、FAU、又はBEA、好ましくは、BEAを含む。
【0038】
触媒全体におけるPGM総充填量は、典型的には、50~300g ft-3、例えば60~250g ft-3(例えば、75~175g ft-3)、より好ましくは85~160g ft-3である。
【0039】
触媒全体のPt:Pd総重量比は、典型的には>1:1、特に≧2:1、例えば、10:1≧3:1などの20:1≧2:1である。そのような比率は、層Cに存在する助触媒金属に依存し得ることが理解されよう。
【0040】
層C中の助触媒がマンガンである場合、層Cは、実質的にモレキュラーシーブを含まないことが好ましい。本発明者らは、モレキュラーシーブが酸化活性に悪影響を及ぼす可能性があるためであると考えている。
【0041】
基材が、軸方向長さを有し、前部ゾーンが、基材の軸方向長さの20~80%であり、後部ゾーンが、基材の軸方向長さの80~20%である、いずれかの先行請求項に記載の層状ディーゼル酸化触媒である。前部ゾーン及び後部ゾーンの軸方向の長さは、概して100%であるが、製造中に、最後にコーティングされた前部層又は後部層が、最初にコーティングされた層と重なるので、意図しない小さな重複を得ることが典型的である。小さい意図しない重複は、典型的には、<9%、<8%、<7%、<6%、<5%、<4%、<3%、<2%、又は<1%などの基材軸長の<10%である。前部ゾーンは、基材の長さの25~45%、更により好ましくは25~65%(例えば、35~50%)など、30~65%の軸方向長さを有し得る(後部ゾーンは65~30%)。好ましくは、前部ゾーンは、50%の基材軸長を有し、後部ゾーンは、50%の基材軸長を有する。
【0042】
好ましくは、前部ゾーン上の全ての層は、実質的に同じ軸方向長さを有する。
【0043】
層Cの耐火金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、チタニア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、ジルコニア-シリカ、チタニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0044】
層状ディーゼル酸化触媒は、1)担体上の白金族金属、及び2)マンガンを含む層Dを更に含み得る。白金族金属は、例えば、白金を含み得る。担体は、耐火金属酸化物、好ましくは、耐火金属酸化物、最も好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0045】
本発明者らはまた、ディーゼルエンジンからの排気ガス中の一酸化窒素(NO)の酸化に対する優れた活性が、特に耐火金属酸化物がシリカ-アルミナである場合、定義されるように、この層Dを使用するときに得られ得ることを見出した。白金は、高価であり、しばしば、とりわけNOに対するその酸化活性のために、比較的多い量で酸化触媒に含まれる。白金(Pt)と組み合わせてマンガン(Mn)を含めることにより、NO酸化活性の向上をもたらし得るか、又は所与のレベルのNO酸化を達成するためのPtの使用量を低減させることを可能にし得る。
【0046】
第2の態様によれば、本発明は、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排気ガス成分を含む、ディーゼルエンジン排気流を処理するためのシステムであって、(a)排気ガスマニホールドを介してディーゼルエンジンと流体連通している、排気ガス導管と、(b)先行請求項のいずれか一項に記載の層状ディーゼル酸化触媒であって、前部ゾーンが、上流側に配向されている、層状ディーゼル酸化触媒と、(c)層状ディーゼル酸化触媒と流体連通している、以下:煤フィルタ、選択的触媒還元(SCR)触媒又はSCR触媒フィルタ、及びNOx吸蔵還元触媒のうちの1つ以上と、を含み得る、システムを提供する。好ましくは、要素(c)は、層状ディーゼル酸化触媒の下流に位置するSCR触媒又はSCRフィルタ触媒を含む。
【0047】
本明細書に記載されるように、「シリカ-アルミナ」は、シリカでドープされたアルミナを意味する。ドーパントでドープされたアルミナは、当技術分野で既知の方法を使用して、又は例えば米国特許第5,045,519号に記載されている方法によって調製することができる。
【0048】
シリカでドープされたアルミナでは、アルミナは、総量2.5~30重量%(すなわち、アルミナの重量%)のシリカ、特に3.5~25重量%のシリカ、例えば4.5~20重量%のシリカ、5~20重量%のシリカ、又は好ましくは3.5~15重量%のシリカでドープされる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明による、ディーゼル酸化触媒構成を示す。代替の実施形態(図示せず)では、前部ゾーンは、2つの重ね合わされた層、及び基材上に担持された後部ゾーンの1つの層からなる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の態様の触媒、方法、及びシステムは、HC及びCOのライトオフ及びNO酸化に対する驚くべき改善を提供するように配合及び構成された層状ディーゼル酸化触媒(DOC)に関する。本発明のディーゼル酸化触媒は、ゾーン内に配置された層の組み合わせを含み、各層及び/又はゾーンは、異なる触媒活性を提供するように配合され、層及び/又はゾーンが組み合わされると、それらはともに機能して、所望の反応に触媒作用を及ぼすためのより広い活性温度ウィンドウを有する層状DOCを提供することができる。
【0051】
概括的なDOC
概括的に、DOC触媒は、担体上に配設又は担持された金属を含み得る。各層の配合は、後続のセクションで更に詳細に説明され得る。
【0052】
本発明で使用するための担体物質は、耐火金属酸化物を含むか、又は本質的にそれからなり得る。ディーゼルエンジン用の酸化触媒の触媒成分としての使用に好適な耐火金属酸化物は、当該技術分野において周知である。
【0053】
耐火金属酸化物は、典型的には、アルミナ、シリカ、チタニア、又はジルコニアからなる群から選択される。例えば、耐火金属酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ-アルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、チタニア-シリカ、ジルコニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、及びアルミナ-酸化マグネシウムからなる群から選択されてもよい。
【0054】
耐火金属酸化物は、任意選択で、(例えば、ドーパントで)ドープされてもよい。ドーパントは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)、及びこれらの酸化物からなる群から選択され得る。ドーパントを含めることにより、耐火金属酸化物又は担体物質を熱的に安定させることができる。この文脈において「ドープされた」への任意の言及は、耐火金属酸化物のバルク又はホスト格子が、ドーパントによって置換ドープされた、又は格子間ドープされた材料を指すことを理解されたい。場合によっては、少量のドーパントが耐火金属酸化物の表面に存在してもよい。しかしながら、ドーパントの大部分は、概して、耐火金属酸化物の主要部に存在する。耐火金属酸化物の化学的及び/又は物理的特性は、多くの場合、ドーパントの存在によって影響を受ける。
【0055】
耐火金属酸化物がドープされる場合、ドーパントの総量は、約0.25~5重量%、好ましくは約0.5~3重量%(例えば、約1重量%)であり得る(シリカ-アルミナの定義は、上記の定義とは別個のものであり、シリカ-アルミナの定義については、本明細書の上記及び下記を参照)。
【0056】
いくつかの態様では、好ましい耐火金属酸化物は、ドーパントでドープされたアルミナを含むか、又は本質的にそれからなる。アルミナは、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、チタン(Ti)、若しくはジルコニウム(Zr)、又はそれらの2種以上の組み合わせを含むドーパントによってドープされてもよい。ドーパントは、シリコンの酸化物、マグネシウムの酸化物、バリウムの酸化物、ランタンの酸化物、セリウムの酸化物、チタンの酸化物、又はジルコニウムの酸化物を含むか、又はそれから本質的になってもよい。好ましくは、ドーパントは、シリコン、マグネシウム、バリウム又はその酸化物、特にシリコン、又はセリウム、又はその酸化物を含むか、又はそれから本質的になる。より好ましくは、ドーパントは、シリコン、マグネシウム、バリウム、又はその酸化物、特にシリコン、マグネシウム、又はその酸化物、特にシリコン、又はその酸化物を含むか、又はそれから本質的になる。
【0057】
ドーパントでドープされたアルミナの例としては、シリカでドープされたアルミナ、酸化マグネシウムでドープされたアルミナ、バリウム若しくは酸化バリウムでドープされたアルミナ、酸化ランタンでドープされたアルミナ、又はセリアでドープされたアルミナ、特にシリカでドープされたアルミナ、又は酸化ランタンでドープされたアルミナが挙げられる。ドーパントでドープされたアルミナは、シリカでドープされたアルミナ、バリウム若しくは酸化バリウムでドープされたアルミナ、又は酸化マグネシウムでドープされたアルミナであることが好ましい。より好ましくは、ドーパントでドープされたアルミナは、シリカでドープされたアルミナ、又は酸化マグネシウムでドープされたアルミナである。更により好ましくは、ドーパントでドープされたアルミナは、シリカでドープされたアルミナである。ドーパントでドープされたアルミナは、当技術分野で既知の方法を使用して、又は例えば米国特許第5,045,519号に記載されている方法によって調製することができる。
【0058】
アルミナが、シリカでドープされたアルミナである場合、アルミナは、総量0.5~45重量%(すなわち、アルミナの重量%)、好ましくは1~40重量%、より好ましくは1.5~30重量%(例えば、1.5~10重量%)、具体的には2.5~25重量%、より具体的には3.5~20重量%(例えば、5~20重量)、更により好ましくは4.5~15重量%のシリカでドープされ得る。
【0059】
代替的に、又は追加的に、耐火金属酸化物は、アルカリ土類金属アルミン酸塩を含むか、又は本質的にそれからなることができる。「アルカリ土類金属アルミン酸塩」という用語は、全般的に、式MAlの化合物を指し、式中、「M」はMg、Ca、Sr、又はBaなどのアルカリ土類金属を表す。かかる化合物は、概して、スピネル構造を備える。これらの化合物は、当技術分野でよく知られている従来の方法を使用して、又は欧州特許第0945165号、米国特許第6,217,837号、又は米国特許第6,517,795号に記載されている方法を使用することによって調製することができる。
【0060】
典型的には、アルカリ土類金属アルミン酸塩は、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、アルミン酸カルシウム(CaAl)、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)、若しくはアルミン酸バリウム(BaAl)、又はそれらの2種以上の混合物である。好ましくは、アルカリ土類金属アルミン酸塩は、アルミン酸マグネシウム(MgAl)である。
【0061】
概して、耐火金属酸化物がアルミナの混合若しくは複合酸化物(例えば、シリカ-アルミナ若しくはアルミナ-マグネシウム酸化物)を含むか、又はそれから本質的になる場合、好ましくはアルミナの混合若しくは複合酸化物は、少なくとも50~99重量%のアルミナ、より好ましくは70~95重量%のアルミナ、更により好ましくは75~90重量%のアルミナを含む。
【0062】
いくつかの態様では、担体は、モレキュラーシーブを含み得る。モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩骨格(例えば、アルミノケイ酸塩ゼオライト)又はシリコアルミノリン酸塩骨格(例えば、SAPO)を有し得る。
【0063】
モレキュラーシーブがアルミノケイ酸塩骨格(例えば、モレキュラーシーブはゼオライトである)を有する場合、典型的には、モレキュラーシーブは、5~200(例えば10~200)、10~100(例えば、10~30又は20~80)、10~50、10~30、12~40、15~30、5~20、5~15、8~15、8~13、10~15、10~20、10~40、10~60、10~80、10~100、10~150、<30、<20、<15、又は<13のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。好適なモレキュラーシーブは、>200、>600、又は>1200のSARであり得る。例えば、モレキュラーシーブは、約1500~約2100のSARを有し得る。
【0064】
モレキュラーシーブは、微多孔性であり得る。微多孔性のモレキュラーシーブは、2nm未満の直径の細孔を有する(例えば、「微多孔性」のIUPAC定義に従う[Pure&Appl.Chem.,66(8),(1994),1739-1758)を参照])。
【0065】
あるいは、モレキュラーシーブは、メソ多孔性であり得る。メソ多孔性モレキュラーシーブは、2~50nmの直径を有する細孔を有する(例えば、「メソ多孔性」のIUPAC定義に従う)。
【0066】
モレキュラーシーブは、小細孔モレキュラーシーブ(例えば、8個の四面体原子による最大環サイズを有するモレキュラーシーブ)、中細孔モレキュラーシーブ(例えば、10個の四面体原子による最大環サイズを有するモレキュラーシーブ)又は大細孔モレキュラーシーブ(例えば、12個の四面体原子による最大環サイズを有するモレキュラーシーブ)、又はこれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0067】
モレキュラーシーブが小細孔モレキュラーシーブである場合、小細孔モレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、LTA、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、又はこれらの2つ以上の混合物及び/若しくは組み合わせ及びに/若しくはインターグロースからなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有することができる。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、LTA、SFW、KFI、DDR及びITEからなる群から選択される骨格構造を有し得る。小細孔モレキュラーシーブは、CHA、AEI、及びAFXからなる群から選択される骨格構造を有し得る。小細孔モレキュラーシーブは、CHA及びAEIからなる群から選択される骨格構造を有することができる。小細孔モレキュラーシーブは、CHA骨格構造を有し得る。小細孔モレキュラーシーブは、AEI骨格構造を有し得る。
【0068】
モレキュラーシーブが中細孔モレキュラーシーブである場合、中細孔モレキュラーシーブは、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN、又はこれらの2つ以上の混合物及び/若しくはインターグロースからなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有することができる。中細孔モレキュラーシーブは、好ましくは、FER、MEL、MFI、及びSTTからなる群から選択される骨格構造を有する。好ましくは、中細孔モレキュラーシーブは、FER及びMFI、特にMFIからなる群から選択される骨格構造を有する。中細孔モレキュラーシーブがゼオライトであり、FER又はMFI骨格を有する場合、ゼオライトはフェリエライト、シリカライト、又はZSM-5であり得る。
【0069】
モレキュラーシーブが大細孔モレキュラーシーブである場合、大細孔モレキュラーシーブは、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY及びVET、又はこれらの2つ以上の混合物及び/若しくはインターグロースからなる群から選択される骨格型コード(FTC)によって表される骨格構造を有することができる。大細孔モレキュラーシーブは、AFI、BEA、MAZ、MOR、及びOFFからなる群から選択される骨格構造を有する。好ましくは、大細孔モレキュラーシーブは、BEA、MOR、及びFAUからなる群から選択される骨格構造を有する。大細孔モレキュラーシーブがゼオライトであり、BEA、FAU又はMOR骨格を有する場合、ゼオライトは、βゼオライト、フォージャサイト、ゼオライトY、ゼオライトX、又はモルデナイトであってもよい。
【0070】
好適なモレキュラーシーブは、小細孔骨格と大細孔骨格との組み合わせを含む。この種類の好適なモレキュラーシーブには、ZSM-34(ERI+OFF)が含まれる。
【0071】
担体材料は、典型的には、その上に配設又は担持された白金族金属を有する。
【0072】
最も好ましくは、本発明の層状ディーゼル酸化触媒のモレキュラーシーブ、ゼオライト、又はシリカアルミノリン酸塩は、銅を実質的に含まない。好ましくは、本発明の層状ディーゼル酸化触媒は、銅を実質的に含まない。
【0073】
層配合物
層状DOCは、各々が異なる触媒活性を提供するように配合された層を含み得るので、それらが組み合わされたとき、所望の反応に触媒作用を及ぼすためのより広い活性温度ウィンドウを有する層状DOCを提供するように協働することができる。本発明の層状DOCは、以下に記載される層の全て又はいくつかの組み合わせを含み得る。
【0074】
層A-炭化水素の酸化
本発明の層状DOCは、モレキュラーシーブ上に配設又は担持された白金族金属を含む層Aを含み得る。層Aは、主に炭化水素を酸化するように配合することができる。
【0075】
層Aの白金族金属は、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせを含む。層Aは、約0.2重量%~約6重量%、又は好ましくは、0.5重量%~約3重量%の量の白金族金属を含み得る。
【0076】
層Aのモレキュラーシーブは、MFI、FAU、BEA、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくは、BEAを含む。
【0077】
層Aは、BEAモレキュラーシーブ上のパラジウムを含み得る。層Aは、アルカリ土類金属を含まないか、本質的に又は実質的に含まない場合があり、例えば、層Aは、バリウムを含まないか、本質的に又は実質的に含まない場合がある。
【0078】
層B-CO及び炭化水素の酸化
本発明の層状DOCは、1)耐火金属酸化物担体上の白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせ、及び2)アルカリ土類金属を含む層Bを含み得る。層Bは、主にCO及び炭化水素を酸化するように配合することができる。
【0079】
層Bは、約0.5:1~約4:1の重量比、好ましくは、約2:1の重量比で白金及びパラジウムを含み得る。
【0080】
層Bの耐火金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、チタニア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、ジルコニア-シリカ、チタニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0081】
層Bのアルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、マグネシウム、バリウム、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくは、バリウムを含む。層Bは、約0.5重量%~約12重量%、又は好ましくは、約1重量%~約6重量%の量でアルカリ土類金属を含み得る。
【0082】
層Bは、1)アルミナ上の白金及びパラジウム、及び2)バリウムを含み得る。
【0083】
層C-COの酸化
本発明の層状DOCが、1)耐火金属酸化物担体上の白金、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせである白金族金属と、2)ビスマス又はマンガンである助触媒金属と、を含む層Cを含み得る。層Cは、主にCOを酸化するように配合され得る。
【0084】
層Cの耐火金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、チタニア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、ジルコニア-シリカ、チタニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0085】
層Cは、約0.5重量%~約16重量%、又は好ましくは、約1重量%~約8重量%の量で助触媒金属を含み得る。
【0086】
層Cは、シリカ-アルミナなどのアルミナ上の白金、及び2)ビスマス、又は1)シリカ-アルミナなどのアルミナ上の白金、及び2)マンガン、又は1)シリカ-アルミナなどのアルミナ上の白金、並びに2)ビスマス及びマンガンを含むことができる。層Cは、好ましくはアルカリ土類金属を含まないか、若しくは本質的に又は実質的に含まず、例えば、層Cは、バリウムを含まないか、本質的に又は実質的に含まない。
【0087】
層D-NOの酸化
本発明の層状DOCが、1)耐火金属酸化物担体上の白金、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせと、2)マンガンと、を含む層Dを含み得る。層Dは、主にNOを酸化するように配合することができる。
【0088】
層Dの担体は、モレキュラーシーブ又は耐火金属酸化物、好ましくは、耐火金属酸化物、最も好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含む。
【0089】
層Dは、約0.5重量%~約16重量%、又は好ましくは、約1重量%~約8重量%の量でマンガンを含み得る。
【0090】
層Dは、1)シリカ-アルミナなどのアルミナ上の白金、及び2)Mnを含み得る。
【0091】
基材
本発明の層状DOCは、基材を含む。基材は、フロースルー基材である。1つ以上のディーゼル酸化触媒組成物は、層内で基材上に配設又は担持されている(すなわち、ディーゼル酸化触媒は、ウォッシュコーティング法によって基材上に適用される)。ディーゼル酸化触媒は、所望に応じて、基材を完全に又は部分的にコーティングしてもよい。いくつかの実施形態では、押出触媒は、1つ以上の追加の触媒でコーティングされ、かかる触媒は、例えば、ディーゼル酸化触媒を含み得る。
【0092】
基材は、ディーゼル酸化触媒を、約0.5~約8.5g in、約1~約7.5g in、約1.5~約6.5g in、約4~約5.5g in、約0.5~約4.0g in、約1.0~約3.0g in、又は約1.2~約2.5g/inの総充填濃度で含み得る。
【0093】
フロースルー基材は、触媒成分を担持可能な基材である。基材は、好ましくはセラミック基材又は金属基材である。セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩、メタロアルミノケイ酸塩(コーディエライト及びスポジュメン(spudomene)など)、又はこれらの任意の2つ以上の混合物若しくは混合酸化物を含んでもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0094】
金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びにその他の微量金属に加えて鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを含有するフェライト合金で作製されていてもよい。Euro7排出標準に好適な特に好ましい金属基材では、金属基材は、金属箔基材と、そのために電気接点を含む電気的に加熱可能なディスクと、を含む。電気的に加熱可能なディスク及び金属箔基材の両方は、金属製円筒形マンテル内に収容される。電気的に加熱可能なディスクは、必要に応じて上流側又は下流側に配向することができる。
【0095】
フロースルー基材は、好ましくは、基材を通って軸方向に連続しており、かつ基材の入口又は出口から全体にわたって延びている、多くの小さな平行薄壁チャネルを有するハニカム構造を有するフロースルーモノリスである。基材のチャネル断面は、任意の形状であってもよいが、好ましくは正方形、正弦波形、三角形、矩形、六角形、台形、円形、又は楕円形である。フロースルー基材はまた、触媒を基材壁に浸透させる高多孔性のものであってもよい。
【0096】
選択的触媒還元フィルタ触媒のフィルタ基材(以下を参照)は、好ましくは、ウォールフローモノリスフィルタである。ウォールフローフィルタのチャネルは、交互に遮断される。このことにより、排気ガス流が入口からチャネルに入り、その後、チャネル壁を通って流れ、出口につながる異なるチャネルからフィルタを出ることができる。したがって、排気ガス流中の粒子状物質は、フィルタ内に捕捉される。
【0097】
触媒組成物は、ウォッシュコート手順などの任意の公知の手段によって、フロースルー基材又はフィルタ基材に添加されてもよい。
【0098】
触媒物品が選択的触媒還元フィルタである場合、フィルタ基材は、好ましくはウォールフローフィルタ基材のモノリスであってもよい。ウォールフローフィルタ基材のモノリス(例えば、SCR-DPF)は、典型的には、60~400セル/平方インチ(cpsi)のセル密度を有する。ウォールフローフィルタ基材のモノリスは、100~350cpsi、より好ましくは200~300cpsiのセル密度を有することが好ましい。
【0099】
ウォールフローフィルタ基材のモノリスは、0.20~0.50mm、好ましくは0.25~0.35mm(例えば、約0.30mm)の壁厚(例えば、平均内部壁厚)を有することができる。
【0100】
概ね、コーティングされていないウォールフローフィルタ基材のモノリスは、40~80%、好ましくは45~75%、より好ましくは50~70%の多孔率を有する。
【0101】
コーティングされていないウォールフローフィルタ基材のモノリスは、典型的には、少なくとも5μmの平均細孔径を有する。平均細孔径は、8~40μm、例えば10~35μm、より好ましくは15~30μmであることが好ましい。
【0102】
ウォールフローフィルタ基材は、対称セル設計を有しても、非対称セル設計を有してもよい。
【0103】
選択的触媒還元フィルタの場合、概して、触媒組成物は、ウォールフローフィルタ基材のモノリスの壁内に配設されている。加えて、触媒組成物は、入口チャネルの壁上に、及び/又は出口チャネルの壁上に配置されてもよい。
【0104】
本発明の態様の触媒組成物は、好適なモノリス基材上にコーティングされてもよい。モノリス基材上にコーティングするため又は押出型基材モノリスを製造するための本発明の触媒組成物を含有するウォッシュコート組成物は、アルミナ、シリカ、(非ゼオライト)シリカ-アルミナ、天然の粘土、TiO、ZrO、及びSnOからなる群から選択される結合剤を含み得る。概して、所望の充填濃度で触媒組成物を含む触媒物品は、ウォッシュコーティング、押出、又は当該技術分野において公知の他の方法によって調製することができる。
【0105】
構成
本発明のディーゼル酸化触媒は、層の組み合わせ、及びある態様ではゾーンを含むことができ、各層及び/又はゾーンは、異なる触媒活性を提供するように配合され、層及び/又はゾーンが組み合わされると、それらはともに機能して、所望の反応に触媒作用を及ぼすためのより広い活性温度ウィンドウを有する層状DOCを提供することができる。
【0106】
本発明によれば、層A、B、C、及びDのいくつか又は全ての組み合わせは、所望の結果を達成するために任意の好適な順序で配置され得る。実施形態では、本発明によるディーゼル酸化触媒は、層Aを含む。層Aは、中間層及び/又は下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた上層であり得る。あるいは、層Aは、下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた中間層であり得るか、又は層Aは、基材上又は基材内にコーティングされた下層であり得る。
【0107】
実施形態では、本発明によるディーゼル酸化触媒は、層Bを含む。層Bは、中間層及び/又は下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた上層であり得る。あるいは、層Bは、下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた中間層であり得るか、又は層Bは、基材上又は基材内にコーティングされた下層であり得る。
【0108】
実施形態では、本発明によるディーゼル酸化触媒は、層Cを含む。層Cは、中間層及び/又は下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた上層であり得る。あるいは、層Cは、下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた中間層であり得るか、又は層Cは、基材上又は基材内にコーティングされた下層であり得る。
【0109】
一実施形態では、ディーゼル酸化触媒は、層A、層B、及び層Cを含む。特定の実施形態では、ディーゼル酸化触媒は、層A、層B、及び層Cを含み、層Aは上層であり、層Bは中間層であり、層Cは下層である。別の実施形態では、ディーゼル酸化触媒は、層B及び層Cを含む。別の実施形態では、ディーゼル酸化触媒は、層A及び層Cを含む。
【0110】
本発明による層状ディーゼル酸化触媒の基材は、前部ゾーン及び後部ゾーンを含む。いくつかの実施形態では、前部ゾーンは、2つの層を含む。他の実施形態では、前部ゾーンは、層A、B、及びCの3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、前部ゾーンは、層A及び層Cを含む。いくつかの実施形態では、前部ゾーンは、層B及び層Cを含む。
【0111】
特定の実施形態が、図1に示されており、層状ディーゼル酸化触媒は、前部ゾーン12及び後部ゾーン14を有する基材10を含み、前部ゾーン12は、上層16としての層A、中間層18としての層B、及び下層20としての層Cを含み、後部ゾーン14は層D22を含む。
【0112】
方法及びシステム
本発明の方法は、ディーゼルエンジンの気体流を処理することに関し、排気流は、本明細書に記載のディーゼル酸化触媒の存在下で、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排気ガス成分を含む。このようにして、本発明の層状触媒は、ディーゼル酸化触媒として機能し得る。
【0113】
層Aは、主に排気ガス中の炭化水素を酸化し得、層Bは、CO及び炭化水素の両方を酸化し得、層Cは主にCOを酸化し得る。層Dは、主にNOを酸化し得る。層A、B、Cの一部又は全部が前部ゾーンに、層Dが後部ゾーンにあり、まずCOと炭化水素が酸化され得、続いてNOが酸化され得、NOが生成される。NOは、選択的触媒還元触媒などの下流の触媒に有用であり得る。
【0114】
本発明の層状DOCは、概して、約100℃~約500℃の温度範囲を通して有効である。
【0115】
いくつかの態様では、本発明のシステムは、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排気ガス成分を含むディーゼルエンジン排気流の処理に有用であり得、排出処理システムは、(a)排気ガスマニホールドを介してディーゼルエンジンと流体連通している排気ガス導管と、(b)本明細書に記載の層状ディーゼル酸化触媒であって、前部ゾーンが、上流側に配向されている、層状ディーゼル酸化触媒と、(c)層状ディーゼル酸化触媒と流体連通している、以下:煤フィルタ、選択的触媒還元(SCR)触媒、及びNOx吸蔵還元触媒のうちの1つ以上と、を含む。好ましくは、要素(c)は、層状ディーゼル酸化触媒の下流に位置するSCR触媒を含む。
【0116】
本発明はまた、2020年3月30日に出願された出願人の米国優先権出願第63/001,775号の以下の定義のうちの1つ以上に従って定義され得る。
1.ディーゼルエンジンからの排気ガス排出を処理するための層状ディーゼル酸化触媒であって、
a.基材と、
b.層の組み合わせであって、以下の層:
i.BEAモレキュラーシーブ上のパラジウムを含む、層A、
ii.1)アルミナ上の白金及びアルミナと、2)バリウムと、を含む、層B、
iii.1)アルミナ上の白金と、2)助触媒金属と、を含む、層C、のうちの2つ以上を含む、層の組み合わせと、を含む、層状ディーゼル酸化触媒。
2.層の組み合わせが、層A及び層Bを含む、1に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
3.層の組み合わせが、層A及び層Cを含む、1に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
4.層の組み合わせが、層B及び層Cを含む、1に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
5.層の組み合わせが、層A、層B、及び層Cを含む、1に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
6.層Bが、約0.5:1~約3:1の重量比、好ましくは、約2:1の重量比で、白金及びパラジウムを含む、1に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
7.層Dを更に含み、層Dが、1)担体上の白金族金属と、2)遷移金属と、を含む、1~6のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
8.白金族金属が、白金を含む、7に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
9.担体が、モレキュラーシーブ又は耐火金属酸化物、好ましくは、耐火金属酸化物、最も好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含む、7又は8に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
10.遷移金属が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、Mn、Fe、Cu、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくは、Mnを含む、7、8、又は9に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
11.基材が、前部ゾーン及び後部ゾーンを含み、前部ゾーンが、層A、層B、及び/又は層Cのうちの2つ以上を含む、1~10のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
12.後部ゾーンが、層Dを含む、11に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
13.層Cが、基材上にコーティングされた下層である、1~12のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
14.層Bが、下層の少なくとも一部分の上にコーティングされている、1~13のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
15.層Aが、上層であり、中間層及び/又は下層の少なくとも一部分の上にコーティングされている、1~14のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
16.層Aが、実質的にバリウムを含まない、1~15のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
17.層Cが、実質的にバリウムを含まない、1~16のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
18.助触媒金属が、ビスマス、マンガン、又はそれらの組み合わせを含む、1~17のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
19.層Bのアルミナが、シリカ-アルミナを含む、1~18のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
20.層Cのアルミナが、シリカ-アルミナを含む、1~19のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
21.ディーゼルエンジンからの排気ガス排出を処理するための層状ディーゼル酸化触媒であって、
a.基材と、
b.層の組み合わせであって、以下の層:
i.モレキュラーシーブ上の白金族金属を含む、層A、
ii.1)耐火金属酸化物上の白金族金属と、2)アルカリ土類金属と、を含む、層B、
iii.1)耐火金属酸化物上の白金族金属と、2)助触媒金属と、を含む、層C、のうちの2つ以上を含む、層の組み合わせと、を含む、層状ディーゼル酸化触媒。
22.層Aが、炭化水素を酸化するように配合されている、21に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
23.層Bが、CO及び炭化水素を酸化するように配合されている、21に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
24.層Cが、COを酸化するように配合されている、21に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
25.層Aのモレキュラーシーブが、MFI、FAU、又はBEA、好ましくは、BEAを含む、21に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
26.層Aの白金族金属が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくは、白金を含む、21~25のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
27.層Bの白金族金属が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくは、白金及びパラジウムを含む、21~26のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
28.層Bの耐火金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、チタニア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジム-アルミナ、ジルコニア-シリカ、チタニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含む、21~27のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
29.層Bのアルカリ土類金属が、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、マグネシウム、バリウム、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくは、バリウムを含む、21~28のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
30.層Cの白金族金属が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくは、白金を含む、21~29のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
31.層Cの耐火金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、チタニア-アルミナ、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジム-アルミナ、ジルコニア-シリカ、チタニア-シリカ、ジルコニア-チタニア、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含む、21~30のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
32.助触媒金属が、ビスマス、マンガン、又はそれらの組み合わせを含む、21~31のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
33.層Bが、約0.5:1~約4:1の重量比で、好ましくは、約2:1の重量比で、白金及びパラジウムを含む、21~32のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
34.層Dを更に含み、層Dが、1)担体上の白金族金属と、2)遷移金属と、を含む、21~33のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
35.白金族金属が、白金を含む、34に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
36.担体が、モレキュラーシーブ又は耐火金属酸化物、好ましくは、耐火金属酸化物、最も好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、又はそれらの組み合わせを含む、34又は35に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
37.遷移金属が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、又はそれらの組み合わせ、好ましくは、Mn、Fe、Cu、又はそれらの組み合わせ、又は最も好ましくは、Mnを含む、34、35、又は36に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
38.基材が、前部ゾーン及び後部ゾーンを含み、前部ゾーンが、層A、層B、及び/又は層Cのうちの2つ以上を含む、21~37のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
39.後部ゾーンが、層Dを含む、38に記載の層状ディーゼル酸化触媒。
40.層Cが、基材上にコーティングされた下層である、21~39のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
41.層Bが、下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた中間層である、21~40のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
42.層Aが、中間層及び/又は下層の少なくとも一部分の上にコーティングされた上層である、21~41のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
43.層Aが、実質的にバリウムを含まない、21~42のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
44.層Cが、実質的にバリウムを含まない、21~43のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒。
45.炭化水素、一酸化炭素、及び他の排気ガス成分を含む、ディーゼルエンジン排気流を処理するためのシステムであって、排出処理システムが、
a.排気ガスマニホールドを介してディーゼルエンジンと流体連通している、排気ガス導管と、
b.1~44のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒と、
c.層状ディーゼル酸化触媒と流体連通している、以下:煤フィルタ、選択的触媒還元(SCR)触媒、及びNOx吸蔵還元触媒のうちの1つ以上と、を含む、システム。
46.要素Cが、層状ディーゼル酸化触媒の下流に位置するSCR触媒を含む、45に記載のシステム。
47.ディーゼルエンジンの気体排気流を処理する方法であって、排気流が、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排気ガス成分を含み、排気流を、1~44のいずれか1つに記載の層状ディーゼル酸化触媒と接触させることを含む、方法。
【0117】
用語
本開示では、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に明示しない限り、複数の参照含み、特定の数値への参照は、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「材料」への言及は、そのような材料及び当業者に周知であるその均等物のうちの少なくとも1つへの言及である。
【0118】
値が記述語「約(about)」を使用することにより近似値として表現される場合、その特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。概して、用語「約」の使用は、開示された主題により得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈において解釈されるべきである。当業者は、これを日常的に行うこととして解釈できるであろう。場合によっては、特定の値に使用される有効数字の数が、単語「約」の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合、一連の値で使用される段階的な変化を使用して、各値について用語「約」に利用可能な意図された範囲を決定できる。存在する場合、全範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。すなわち、範囲内で提示されている値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。
【0119】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記載される本発明の特定の特色はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。すなわち、明らかに互換性がないか又は具体的に除外されない限り、個々の実施形態はそれぞれ、任意の他の実施形態と組み合わせることが可能であるとみなされ、そのような組み合わせは別の実施形態であると考えられる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特色はまた、個別に、又は任意の部分的な組み合わせで提供されてもよい。最後に、実施形態は、一連の工程の一部、又はより全般的な構造の一部として記載され得るが、その各工程はまた、それ自体が独立した実施形態であり、他の工程と組み合わせることができるとみなされ得る。
【0120】
移行語(transitional term)「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting)」は、それらの特許専門用語において概ね認められた意味を内包することを意図しており、すなわち、(i)「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「特徴づけられる(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであって、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。(ii)「からなる(consisting of)」は請求項で指定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外し、(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の範囲を、指定された材料又は工程、及び特許請求された発明の「基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えないもの」に限定する。語句「含む(comprising)」(又はその等価物)という用語で記載された実施形態はまた、実施形態として、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で独立して記載される実施形態を提供する。「から本質的になる」という観点から提供されるそれらの実施形態では、基本的及び新規の特性(複数可)は、モレキュラーシーブを実質的に含まず、白金又は白金及びパラジウム、基材の前部ゾーンの下層にコーティングされたマンガン及び/又はビスマス助触媒を含む層Cと、下層Cの上部にコーティングされ、かつモレキュラーシーブ及び白金、パラジウム、又は白金及びパラジウムの両方、及び任意選択でアルカリ土類金属を含む層Bと、CO、未燃炭化水素及び窒素の酸化物の酸化のための白金及びマンガンを含む層Dの後部ゾーンと、の組み合わせである。このような動作性を損なわない材料又は工程は、このような実施形態の範囲内とみなされる。
【0121】
リストが提示される場合、別途記載のない限り、そのリストの各個別要素、及びそのリストの全ての組み合わせは、別個の実施形態であることを理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」、又は「A、B、若しくはC」を含むものと解釈されるべきである。
【0122】
関連技術の当業者により理解されるように、本明細書全体を通して、単語は、それらの通常の意味を与えられるべきである。しかし、誤解を避けるために、特定の用語の意味は具体的に定義又は明確化される。
【0123】
「任意選択の(optional)」又は「任意選択で(optionally)」は、その後に記載する状況が発生する場合としない場合があることを意味する。そのため、その記載には、その状況が発生する事例と発生しない事例が含まれる。同様に、成分又は工程を「任意選択で存在する(optionally present)」と称する実施形態は、それらの実施形態は、工程又は成分が存在する又は存在しない別個の独立した実施形態を含む。「任意選択の(optional)」という記載は、任意による条件の発生を可能とするが、必須ではない。
【実施例
【0124】
これらの実施例における全ての触媒をコーティングするために使用された「確立されたコーティング技術」は、国際公開第99/47260(A1)号に開示された方法及び装置、すなわち、モノリシック担体をコーティングする方法であって、(a)担体の上部に格納手段を位置させるステップと、(b)(a)から(b)又は(b)から(a)の順序で、上述の格納手段に予め定められた量の液体成分を投入するステップと、(c)真空を適用させることによって、前述の量の液体成分の全体を担体の少なくとも一部分に引き込んで、リサイクルすることなく、前述の量のほとんど全てを担体の中に保持するステップと、を含む、方法であった。
【0125】
実施例1~4までの各触媒についてのPGM総充填量は、5.30g/L(150g/ft)であった。
【0126】
参照例1-ゾーンコーティングされた単層入口触媒
第1のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。酢酸Ba、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加し、次いで、このスラリーが、77質量%のシリカドープアルミナ、23質量%のゼオライトを含むようにベータゼオライトを添加した。混合物を撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、1平方センチメートル当たり62セル(1平方インチ当たり400セル)を有する1.4リットル体積のコーディエライトフロースルー(ハニカム)モノリス基材の入口チャネルの50%の軸方向長さに、確立したコーティング技術で適用した。コーティングされた部分は、乾燥させた。入口コーティングは、42.4g/L(120g ft-3)のPGM総充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有し、バリウム充填量は4.41g/L(125g/ft-3)であった。
【0127】
第2のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を取り、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。可溶性白金塩を添加し、続いて硝酸マンガンを添加した。次いで、スラリーを撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、確立されたコーティング技術を使用して、フロースルーモノリス基材の50%の軸方向長さまで出口チャネルに適用した。第1及び第2のスラリーウォッシュコートコーティングの両方でコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。出口コーティングは、2.12g/L(60g ft-3)のPt総充填量、及び3.53g/Lのマンガン充填量(100g ft-3)を有していた。
【0128】
全体としての基材のPGM総充填量は、3.6:1のPt:Pd重量比で3.18g/L(90g ft-3)であった。
【0129】
実施例2-ゾーンコーティングされたマンガン含有3層入口触媒
第1のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。硝酸マンガン、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、1平方センチメートル当たり62セル(1平方インチ当たり400セル)を有する1.4リットル体積のコーディエライトフロースルー(ハニカム)モノリス基材の入口チャネルの50%の軸方向長さに、確立したコーティング技術で適用した。コーティングされた部分は、乾燥させた。この第1のスラリーウォッシュコートコーティングは、1.77g/L(50g ft-3)のPGM充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有していた。マンガン充填量は、7.06g/L(200g ft-3)であった。
【0130】
第2のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水中でd90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。酢酸Ba、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。その結果得られたウォッシュコートを、フロースルーモノリス基材の50%の軸方向長さにすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、第2のスラリーは、第1のスラリーから形成された下部層の上部にコーティングされた上部ウォッシュコート層を形成した。第1の2つのスラリーウォッシュコートコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。この第2のウォッシュコートスラリーコーティングは、1.77g/L(50g ft-3)のPGM充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有していた。バリウム充填量は、参照例1としてのものであった。
【0131】
第3のスラリーは、ベータゼオライトを水に添加することによって調製した。硝酸Pdを添加した後、ゼオライト充填量の質量20%でベーマイト結合剤を添加した。この混合物を撹拌して均質化し、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、入口軸方向50%ゾーンコーティング長さは、3層の「スタック」を構成し、第3のスラリーは、第2のウォッシュコートスラリーから形成した中間層の上部にコーティングされたトップウォッシュコートスラリー層を形成し、次に、第2のウォッシュコートスラリー層が、第1のウォッシュコートスラリーから形成した下層の上部にコーティングされた。第1の3つのスラリーウォッシュコートコーティングでコーティングされた部分を乾燥させた。この第3のスラリーウォッシュコートコーティングのPd充填量は、0.71g/L(20g ft-3)であった。
【0132】
50%軸触媒入口ゾーン上のPGM総充填量は、4.24g/L(120g ft-3)であった。
【0133】
最後に、第4のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を取り、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。可溶性白金塩を添加し、続いて硝酸マンガンを添加した。次いで、スラリーを撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、確立されたコーティング技術を使用して、フロースルー(ハニカム)モノリス基材の出口チャネルの50%の軸方向長さに適用した。4つ全てのウォッシュコートスラリーコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。出口コーティングは、2.12g/L(60g ft-3)のPt総充填量、及び3.53g/Lのマンガン充填量(100g ft-3)を有していた。
【0134】
全体としての基材のPGM総充填量は、2.38:1のPt:Pd重量比で3.18g/L(90g ft-3)であった。
【0135】
実施例3-ゾーンコーティングされたビスマス含有3層入口触媒
第1のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。この硝酸ビスマス、及び可溶性白金塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、1平方センチメートル当たり62セル(1平方インチ当たり400セル)を有する1.4リットル体積のコーディエライトフロースルー(ハニカム)モノリス基材の入口チャネルの50%の軸方向長さに、確立したコーティング技術で適用した。コーティングされた部分は、乾燥させた。この第1のスラリーウォッシュコートコーティングは、1.77g/L(50g ft-3)のPt充填量を有し、ビスマス充填量は、1.77g/L(50g ft-3)であった。
【0136】
第2のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水中でd90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。酢酸Ba、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。その結果得られたウォッシュコートを、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、第2のスラリーは、第1のスラリーから形成された下部層の上部にコーティングされた上部ウォッシュコート層を形成した。第1の2つのスラリーウォッシュコートコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。この第2のスラリーウォッシュコートコーティングは、1.77g/L(50g ft-3)のPGM充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有していた。バリウム充填量は、参照例1としてのものであった。
【0137】
第3のスラリーは、ベータゼオライトを水に添加することによって調製した。硝酸Pdを添加した後、ゼオライト充填量の質量20%でベーマイト結合剤を添加した。この混合物を撹拌して均質化し、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、入口軸方向50%ゾーンコーティング長さは、3層の「スタック」を構成し、第3のスラリーは、第2のウォッシュコートスラリーから形成した中間層の上部にコーティングされたトップウォッシュコートスラリー層を形成し、次に、第2のウォッシュコートスラリー層が、第1のウォッシュコートスラリーから形成した下層の上部にコーティングされた。第1の3つのスラリーウォッシュコートコーティングでコーティングされた部分を乾燥させた。この第3のスラリーウォッシュコートコーティングのPd充填量は、0.71g/L(20g ft-3)であった。
【0138】
最後に、第4のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を取り、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。可溶性白金塩を添加し、続いて硝酸マンガンを添加した。次いで、スラリーを撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、確立されたコーティング技術を使用して、フロースルー(ハニカム)モノリス基材の出口チャネルの50%の軸方向長さに適用した。4つ全てのウォッシュコートスラリーコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。出口コーティングは、2.12g/L(60g ft-3)のPt総充填量、及び3.53g/Lのマンガン充填量(100g ft-3)を有していた。
【0139】
50%軸方向触媒入口ゾーン上のPGM総充填量は、4.24g/L(120g ft-3)であった。
【0140】
全体としての基材のPGM総充填量は、3.92:1のPt:Pd重量比で3.18g/L(90g ft-3)であった。
【0141】
試験
参照例1及び実施例2及び3の触媒の各々におけるPGM充填量が、同一であったことに留意されたい。
【0142】
参照触媒1及び実施例2及び3の触媒の各々を、1.5リットルのターボ過給ディーゼル実験台用エンジンの排気システム内に取り付けた。触媒活性は、排気ガス温度を上昇させるために、エンジン上の負荷を段階的に増加させることによって試験した。排気ガス汚染物質の濃度は、前触媒及び後触媒の両方を測定した。CO及びHCの酸化活性は、ライトオフ温度で決まり、それにより、COの酸化では50%転化(T50)、HCの酸化では70%転化(T70)が達成される。CO及びHCの結果を表1に示す。
【0143】
結果
【0144】
【表1】
【0145】
表2の結果は、実施例2及び3の両方が、実施例1よりも低いCO及びHCライトオフを有し、250℃でより高いNO酸化活性を有することを示す。改善されたCO及びHC酸化活性は、触媒抑制効果を低減し、結果としてNO酸化を改善することができる。
【0146】
参照例4-ゾーンコーティングされた単層入口触媒
参照触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、3:1のPt:Pd重量比で4.59g/L(130g ft-3)であることを除いて、上述の参照例1の説明と同様に調製された(入口端コーティングにおける2Pt:Pdの総充填量は、6.36g/L(180g ft-3)であり、出口端コーティングのPt充填量は、2.83g/L(80g ft-3Pt)である)。
【0147】
実施例5-ゾーンコーティングされたマンガン含有2層入口触媒
第1のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、それをd90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。硝酸マンガン、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、1平方センチメートル当たり62セル(1平方インチ当たり400セル)を有する1.4リットル体積のコーディエライトフロースルー(ハニカム)モノリス基材の入口チャネルの50%の軸方向長さに、確立したコーティング技術で適用した。コーティングされた部分は、乾燥させた。第1のスラリーウォッシュコートコーティングは、5.65g/L(160g ft-3)のPGM充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有していた。マンガン充填量は、7.06g/L(200g ft-3)であった。
【0148】
第2のスラリーは、ベータゼオライトを水に添加することによって調製した。硝酸Pdを添加した後、ゼオライト充填量の質量20%でベーマイト結合剤を添加した。混合物を撹拌して均質化し、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、第2のスラリーは、第1のスラリーから形成された下部層の上部にコーティングされた上部ウォッシュコート層を形成した。第1及び第2のスラリーウォッシュコートコーティングの両方を含む部分を乾燥させ、500℃で焼成した。第2のウォッシュコートコーティングのPd充填量は、0.71g/L(20g ft-3)であった。
【0149】
触媒50%の軸方向入口ゾーン上のPGM総充填量は、6.36g/L(180g ft-3)であった。
【0150】
最後に、第3のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を取り、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。可溶性白金塩を添加し、続いて硝酸マンガンを添加した。次いで、スラリーを撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、確立されたコーティング技術を使用して、フロースルー(ハニカム)モノリス基材の50%の軸方向長さまで出口チャネルに適用した。3つ全てのスラリーコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。出口コーティングは、2.83g/L(80g ft-3)のPt総充填量、及び3.53g/Lのマンガン充填量(100g ft-3)を有していた。
【0151】
全体としての基材のPGM総充填量は、2.54:1のPt:Pd重量比で4.59g/L(130g ft-3)であった。
【0152】
実施例6-ゾーンコーティングされたマンガン含有2層入口触媒
第1のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、それをd90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。硝酸マンガン、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、1平方センチメートル当たり62セル(1平方インチ当たり400セル)を有する1.4リットル体積のコーディエライトフロースルー(ハニカム)モノリス基材の入口チャネルの50%の軸方向長さに、確立したコーティング技術で適用した。コーティングされた部分は、乾燥させた。第1のスラリーウォッシュコートコーティングは、3.53g/L(100g ft-3)のPGM充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有していた。マンガン充填量は、7.1g/L(200g ft-3)であった。
【0153】
第2のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。酢酸Ba、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加し、次いで、このスラリーが、71質量%のシリカドープアルミナ、29質量%のゼオライトを含むようにベータゼオライトを添加する。混合物を撹拌して均質化した。混合物を撹拌して均質化し、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、第2のスラリーは、第1のスラリーから形成された下部層の上部にコーティングされた上部ウォッシュコート層を形成した。第1及び第2のスラリーウォッシュコートコーティングの両方を含む部分を乾燥させ、500℃で焼成した。第2のスラリーウォッシュコートコーティングは、2.83g/L(80g ft-3)のPGM総充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有しており、バリウム充填量は、1.77g/L(50g ft-3)であった。
【0154】
触媒50%の軸方向入口ゾーン上のPGM総充填量は、6.36g/L(180g ft-3)であった。
【0155】
最後に、第3のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を取り、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。可溶性白金塩を添加し、続いて硝酸マンガンを添加した。次いで、スラリーを撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、確立されたコーティング技術を使用して、フロースルー(ハニカム)モノリス基材の50%の軸方向長さまで出口チャネルに適用した。3つ全てのスラリーコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。出口コーティングは、2.83g/L(80g ft-3)のPt総充填量、及び3.53g/Lのマンガン充填量(100g ft-3)を有していた。
【0156】
全体としての基材のPGM総充填量は、3.3:1のPt:Pd重量比で4.59g/L(130g ft-3)であった。
【0157】
実施例7-ゾーンコーティングされたマンガン含有3層入口触媒
第1のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。硝酸マンガン、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、1平方センチメートル当たり62セル(1平方インチ当たり400セル)を有する1.4リットル体積のコーディエライトフロースルー(ハニカム)モノリス基材の入口チャネルの50%の軸方向長さに、確立したコーティング技術で適用した。第1のスラリーウォッシュコートコーティングでコーティングされた部分を乾燥させた。この第1のスラリーウォッシュコートコーティングは、2.83g/L(80g ft-3)のPGM充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有していた。マンガン充填量は、7.06g/L(200g ft-3)であった。
【0158】
第2のスラリーは、ベータゼオライトを水に添加することによって調製した。可溶性の白金塩及びパラジウム塩をスラリーに添加した後、ゼオライト充填量の質量20%でベーマイト結合剤を添加した。混合物を撹拌して均質化し、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、第2のスラリーは、第1のスラリーから形成された下部層の上部にコーティングされた上部ウォッシュコート層を形成した。第1及び第2のスラリーウォッシュコートコーティングの両方を含む部分を乾燥させ、500℃で焼成した。この第2のスラリーウォッシュコートコーティングのPGM充填量は、2:1のPt:Pd重量比で0.71g/L(20g ft-3)であった。
【0159】
第3のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水中でd90<20ミクロンに粉砕することによって調製した(ゼオライトなし)。Ba酢酸、及び可溶性の白金塩及びパラジウム塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。この混合物を撹拌して均質化し、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、入口軸方向50%ゾーンコーティング長さは、3層の「スタック」を構成し、第3のスラリーは、第2のウォッシュコートスラリーから形成した中間層の上部にコーティングされたトップウォッシュコートスラリー層を形成し、次に、第2のウォッシュコートスラリー層が、第1のウォッシュコートスラリーから形成した下層の上部にコーティングされた。第1の3つのスラリーウォッシュコートコーティングでコーティングされた部分を乾燥させた。この第3のウォッシュコートスラリーコーティングは、2.83g/L(80g ft-3)のPGM充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有していた。バリウム充填量は、実施例6としてのものであった。
【0160】
50%軸方向触媒入口ゾーン上のPGM総充填量は、6.36g/L(180g ft-3)であった。
【0161】
最後に、第4のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を取り、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。可溶性白金塩を添加し、続いて硝酸マンガンを添加した。次いで、スラリーを撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、確立されたコーティング技術を使用して、フロースルー(ハニカム)モノリス基材の出口チャネルの50%の軸方向長さに適用した。4つ全てのウォッシュコートスラリーコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。出口コーティングは、2.83g/L(80g ft-3)のPt総充填量、及び3.53g/Lのマンガン充填量(100g ft-3)を有していた。
【0162】
全体としての基材のPGM総充填量は、2.55:1のPt:Pd重量比で4.59g/L(130g ft-3)であった。
【0163】
実施例8-実施例4~7の実験室活性試験
実施例4~7の触媒からコア試料を採取した。コアを、オーブンボックスにおいて800℃でオーブン内で16時間熱水的にエージングした。それぞれ質量流量コントローラ及び液体流量コントローラによって制御される圧縮空気/10%水の常に補給される気体混合物(20%Oに相当)が、1分当たり6リットルの流量でオーブンボックス内にポンプで送られた。ハニカム基材のコアは、チャネルが垂直方向に延びるようにオーブンボックス内に配置され、流動する気体混合物は、オーブンボックス内に配設された各コアのチャネルにその下端から入るように押し出された。
【0164】
参照例4及び実施例5~7の触媒の各々におけるPGM充填量が、同一であったことに留意されたい。
【0165】
全てのコアの触媒活性を、合成ガス実験室触媒活性試験(synthetic catalytic activity test、SCAT)を使用して決定した。エージングしたコアを、表2に示す模擬排気ガス混合物内で試験し、入口端、すなわち2層又は3層の触媒を有するチャネルが、最初に流入ガスと接触した。いずれの場合にも、バランスは窒素であった。各活性評価の前に、各エージングした触媒コアは、まずSCAT装置内で、各コア試料を55,000hr-1の空間速度で、4%のCO、4%のHO、14%のO及びNのバランスからなる気体混合物中で80℃の触媒入口温度に平衡化する「浸漬」を行い、続いて気体混合物を以下の表2に示す気体混合物に切り替え、1分当たり100℃の昇温速度で80℃~400℃の「急速ランプ」を行って、「事前調整」させた。「急速ランプ」の事前調整に続いて、触媒コア試料を55,000hr-1の空間速度で、4%のCO、4%のHO、14%のO、及びNのバランスからなる気体混合物中で80℃の「浸漬」温度まで冷却した後、2回の連続ランプ試験を実施した。
【0166】
各ランプ試験は、排気ガス混合物を表2に記載の混合物に切り替え、1分当たり20℃で80℃~400℃の温度ランプを実施することによって行った。各ランプ試験の間に、触媒コア試料を冷却し、上記の「浸漬ガス」組成物を用いて80℃で「浸漬」した後、ランプ試験を2回繰り返した。
【0167】
【表2】
【0168】
炭化水素(HC)成分は、4つの個々の炭化水素である、メタン(CH)、短鎖不飽和炭化水素プロペン(C)、長鎖飽和炭化水素デカン(C1022)、芳香族炭化水素トルエン(CCH)の混合物であった。ディーゼル燃料は、数千の炭化水素化合物の混合物であり、その大部分は、10~22の炭素数を有する。ディーゼル燃料中の化合物の大部分は、パラフィン系(例えば、デカン)、ナフテン系、又は芳香族クラスの炭化水素である。試験では、トルエンを代表的な芳香族として使用するが、概してディーゼル燃料の成分ではない。
【0169】
CO及びHCのSCAT酸化活性は、50%転化が達成されるライトオフ温度(T50)で報告され(低温ほど触媒の活性が高くなる)、SCAT結果を表3に示す。更に、200℃での%HC転化率、200℃と250℃での窒素の総酸化物(NO)の%NOも報告されている(%の値が高いほど、その温度での触媒の活性が高い)。
【0170】
【表3】
【0171】
表3に提示される結果は、実施例5の触媒が、参照触媒4に対して、より低いCO値及びHC T50値によって示されるように、優れたCO及びHCライトオフ活性を示すことを示す。しかしながら、実施例5の触媒についての200℃でのNO/NOの活性は、参照に対して低下している。出願人の発明者らは、実施例5の触媒の結果を、実施例5の触媒の初期の良好なHCライトオフ性能が、プロペンの酸化からのものであり、一方、デカン及びトルエンは、ゼオライト入口側上層に吸着されると解釈する。排気ガス温度が上昇するにつれて、吸着されたデカン及びトルエンは、約180℃超で放出され、正味の%NO/NOに影響を与える。これは、デカン及びトルエンの一方又は両方、並びに下流の単層出口端コーティングの酸化触媒部位について競合するNO、及び/又はPtなどの担持PGM触媒の上で還元剤として炭化水素を使用して、NOを含む、還元NOの「リーンNO触媒」反応により触媒上に生成されたデカン及びトルエン還元NOによって引き起こされ得る(HC+NO+O→CO+HO+N又はNOへの部分還元)。これらの反応の正味の効果は、基準に対して、200℃での%HC転化率及び%NO/NO活性の低下から見ることができる。したがって、実施例5の触媒は、優れたHC及びCO酸化触媒であり、SCR触媒などの下流デバイスのNO酸化活性を促進することができ、出願人の結果は、NO酸化活性がこの触媒設計において影響を受けることを示す。
【0172】
実施例6の触媒は、実施例5の入口端上の第1のウォッシュコート層中に存在するPGMのいくつかを上部ゼオライト含有層に導入した、実施例5の設計の変形である。理論上、約180℃超でゼオライトから放出された吸着炭化水素は、ゼオライト層中に存在するPGMによって酸化され得る。表3に示される結果は、このアプローチが完全に成功しなかったことを示唆しているが、250℃での%NO/NOは実施例5よりも改善されたものの、200℃での%NO/NOは実施例5と同様であったが、HC及びCO T50のライトオフは実施例5ほどではないが、それでもリファレンスより著しく良好であった。
【0173】
実施例7の触媒設計は、PGM/ゼオライト層の上部の新しい第3の層中の実施例5の触媒中の第1のウォッシュコートスラリー層からのPGMを含むことによって、この理解を基に構築された。実施例7の触媒の結果から、CO及びHC T50のライトオフはいずれも実施例6に対して改善され、この点で実施例5の触媒の活性に近づいていることがわかる。本発明者らは、この改善は、実施例6の触媒設計のゼオライトHC吸着剤成分から、トルエン及びデカンの酸化に活性な酸化成分(すなわち、HC酸化成分)を入口ゾーンの上部層から除去し、そのHC酸化成分を、3層入口ゾーン構築のゼオライトHC吸着剤を含む層の上部に重ねることに起因すると考えている。機能的には、温度が上昇して入口ゾーンの中間層内のゼオライトに吸着していたHCが脱着すると、HCが、触媒層構造から出るためには、HC酸化成分を含む層を通過しなければならず、放出されたHCの酸化が改善されることを示す。これは、200℃でのより良好な%HC転化率から見ることができる。
【0174】
実施例7の設計の追加の利点は、入口ゾーンにおけるHC酸化を改善することによって、単層出口ゾーン触媒におけるNO酸化についての競合が少なくなるため、NO酸化も実施例5又は6触媒に対して改善されるようになる(200℃及び250℃での%NO/NO転化率を参照)。
【0175】
しかしながら、3層入口触媒設計は、入口端部ゾーン内に2つの層のみを有する、実施例5及び6の触媒設計に対する入口における第3のウォッシュコート層の追加の適用を必要とするため、プロセス及び製造コストを増加させることが認識されている。
【0176】
参照例9-ゾーンコーティングされた単層入口触媒
参照触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、5:1のPt:Pd重量比で4.24g/L(120g ft-3)であることを除いて、上述の参照例1の説明と同様に調製された(入口端コーティングにおける2Pt:Pdの総充填量は、4.24g/L(120g ft-3)であり、出口端コーティングのPt充填量は、4.24g/L(120g ft-3Pt)であり、第2のスラリーは、硝酸マンガンの代わりに3.53g/L(100g ft-3)の同等のマンガン充填量に「予備形成された」3.2重量%のマンガン/5重量%のシリカドープアルミナを含む)。
【0177】
実施例10-ゾーンコーティングされたマンガン含有2層入口触媒
触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、3:1のPt:Pd重量比で4.24g/L(120g ft-3)であることを除いて、上述の参照例5の説明と同様に調製された(第1のスラリー層のPGM総充填量は、5.65g/L(160g ft-3)であり、出口端コーティングのPt充填量は、4.24g/L(120g ft-3Pt)である)。
【0178】
実施例11-ゾーンコーティングされたマンガン含有2層入口触媒
触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、5:1のPt:Pd重量比で4.24g/L(120g ft-3)であることを除いて、上述の参照例6の説明と同様に調製された(第1のスラリー層のPGM総充填量は、2.42g/L(68.6g ft-3)であり、第2のスラリー層のPGM総充填量は、1.82g/L(51.4g ft-3)であり、出口端コーティング中のPt充填量は、4.24g/L(120g ft-3Pt)であり、第3のスラリーは、硝酸マンガンの代わりに3.53g/L(100g ft-3)の同等のマンガン充填量に「予備形成された」3.2重量%のマンガン/5重量%のシリカドープアルミナを含む)。
【0179】
実施例12-ゾーンコーティングされたビスマス含有2層入口触媒
第1のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、それをd90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。硝酸ビスマス及び可溶性白金塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、1平方センチメートル当たり62セル(1平方インチ当たり400セル)を有する1.4リットル体積のコーディエライトフロースルー(ハニカム)モノリス基材の入口チャネルの50%の軸方向長さに、確立したコーティング技術で適用した。コーティングされた部分は、乾燥させた。第1のスラリーウォッシュコートコーティングは、2.42g/L(68.6g ft-3)のPt充填量を有していた。ビスマス充填量は、2.12g/L(60g ft-3)であった。
【0180】
第2のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。酢酸Ba、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加し、次いで、このスラリーが、71質量%のシリカドープアルミナ、29質量%のゼオライトを含むようにベータゼオライトを添加する。混合物を撹拌して均質化した。混合物を撹拌して均質化し、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、第2のスラリーは、第1のスラリーから形成された下部層の上部にコーティングされた上部ウォッシュコート層を形成した。第1及び第2のスラリーウォッシュコートコーティングの両方を含む部分を乾燥させ、500℃で焼成した。第2のスラリーウォッシュコートコーティングは、1.82g/L(51.4g ft-3)のPGM総充填量、及び2:1のPt:Pd重量比を有しており、バリウム充填量は、1.77g/L(50g ft-3)であった。
【0181】
触媒50%の軸方向入口ゾーン上のPGM総充填量は、120g/L(4.24g/ft-3)であった。
【0182】
最後に、第3のスラリーを採取することによって調製し、第3のスラリーは、「予備形成された」3.2重量%のマンガン/5重量%のシリカドープアルミナを含み、d90<20ミクロンに粉砕されている。可溶性白金塩を添加した。次いで、スラリーを撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、確立されたコーティング技術を使用して、フロースルー(ハニカム)モノリス基材の50%の軸方向長さまで出口チャネルに適用した。3つ全てのスラリーコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。出口コーティングは、4.24g/L(120g ft-3)のPt総充填量、及び3.53g/L(100g ft-3)に相当するマンガン充填量を有していた。
【0183】
全体としての基材のPGM総充填量は、13:1のPt:Pd重量比で4.24g/L(120g ft-3)であった。
【0184】
実施例13-実施例9~12の実験室活性試験
参照例9及び実施例10~12の触媒の各々におけるPGM充填量が、同一であったことに留意されたい。
【0185】
実施例8に記載の手順を繰り返し、参照例9及び実施例10~12の比較試験の結果を以下の表4に示す。CO及び炭化水素の60%が転化された温度(T60)は、上記の表3に報告されたT50の代わりに報告され、200℃及び250℃での転化率の代わりに、225℃での%NO/NO転化率のみが報告されることに留意されたい。更に、700℃でエージングした触媒試料コアを表5に報告するが、それ以外の全ての条件は実施例8に記載したものと同じである。
【0186】
【表4】
【表5】
【0187】
表4及び表5に示される結果の比較から、実施例10の触媒は、実施例10~12のいずれかのCO及びHC酸化について、700℃において最良のものを実施することが理解できる(表5参照)。しかしながら、より高いエージング温度(表4参照)では、実施例12のビスマス含有触媒は、比較の優れたCO酸化触媒になる。すなわち、ビスマス含有触媒は、実施例10又は11の触媒のいずれよりも熱的に耐久性が高いように思われる。
【0188】
参照例14-ゾーンコーティングされた単層入口触媒
参照触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、3:1のPt:Pd重量比で4.59g/L(112g ft-3)であることを除いて、上述の参照例1の説明と同様に調製された(入口端コーティングにおける2Pt:Pdの総充填量は、5.98g/L(169.2g ft-3)であり、出口端コーティングのPt充填量は、1.99g/L(56.4g ft-3Pt)であり、第2のスラリーは、硝酸マンガンの代わりに3.53g/L(100g ft-3)の同等のマンガン充填量に「予備形成された」3.2重量%のマンガン/5重量%のシリカドープアルミナを含む)。
【0189】
実施例15-ゾーンコーティングされたビスマス含有単層入口触媒
第1のスラリーウォッシュコート/入口端コーティング中に存在するPGMが5.98g/L(169.2g ft-3)のPt総充填量で白金のみ(パラジウムなし)であったことを除いて、上記の参照例14の説明と同様に触媒を調製し、第1のスラリーウォッシュコート/入口端コーティング中のバリウムの代わりに、助触媒は、2.12g/L(60g ft-3)の入口端コーティングの充填量でビスマス(硝酸ビスマス由来)であり、入口端コーティングのためのスラリーにベータゼオライトは含まれなかった。
【0190】
実施例16-ゾーンコーティングされたビスマス含有単層入口触媒
ビスマスに加えて、第1のスラリーウォッシュコート/入口端コーティングが、スラリーが質量比で77%のシリカドープアルミナ及び23%のゼオライトを含むように、ベータゼオライトを含有することを除いて、上述の実施例15についての説明と同様に触媒を調製した。言い換えれば、配合は、参照例14であり、バリウムは、2.12g/L(60g ft-3)の入口端コーティングの充填量でビスマス(硝酸ビスマスから)と交換された。
【0191】
実施例17-ゾーンコーティングされたビスマス含有2層入口触媒
第1のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、それをd90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。硝酸ビスマス及び可溶性白金塩をスラリーに添加した。混合物を撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、1平方センチメートル当たり62セル(1平方インチ当たり400セル)を有する1.4リットル体積のコーディエライトフロースルー(ハニカム)モノリス基材の入口チャネルの50%の軸方向長さに、確立したコーティング技術で適用した。コーティングされた部分は、乾燥させた。第1のスラリーウォッシュコートコーティングは、2.20g/L(62.4g ft-3)のPt充填量を有していた。ビスマス充填量は、1.77g/L(50g ft-3)であった。
【0192】
第2のスラリーは、シリカ-アルミナ粉末(5重量%のシリカでドープされたアルミナ)を水に加え、d90<20ミクロンに粉砕することによって調製した。酢酸Ba、及び可溶性の白金塩とパラジウム塩をスラリーに添加し、次いで、このスラリーが、77質量%のシリカドープアルミナ、23質量%のゼオライトを含むようにベータゼオライトを添加した。混合物を撹拌して均質化した。混合物を撹拌して均質化し、フロースルーモノリス基材のすでにコーティングされた入口チャネルの50%の軸方向長さに適用し、すなわち、第2のスラリーは、第1のスラリーから形成された下部層の上部にコーティングされた上部ウォッシュコート層を形成した。第1及び第2のスラリーウォッシュコートコーティングの両方を含む部分を乾燥させ、500℃で焼成した。第2のスラリーウォッシュコートコーティングは、3.77g/L(106.8g ft-3)のPGM総充填量、及び2.8:1のPt:Pd重量比を有しており、バリウム充填量は、4.41g/L(125g/ft-3)であった。
【0193】
触媒50%の軸方向入口ゾーン上のPGM総充填量は、5.98g/L(169.2g/ft-3)であった。
【0194】
最後に、第3のスラリーを採取することによって調製し、第3のスラリーは、「予備形成された」3.2重量%のマンガン/5重量%のシリカドープアルミナを含み、d90<20ミクロンに粉砕されている。可溶性白金塩を添加した。次いで、スラリーを撹拌して均質化した。得られたウォッシュコートを、確立されたコーティング技術を使用して、フロースルー(ハニカム)モノリス基材の50%の軸方向長さまで出口チャネルに適用した。3つ全てのスラリーコーティングでコーティングされた部分を乾燥させ、500℃で焼成した。出口コーティングは、1.99g/L(56.4g ft-3)のPt総充填量、及び3.53g/L(100g ft-3)に相当するマンガン充填量を有していた。
【0195】
全体としての基材のPGM総充填量は、7.1:1のPt:Pd重量比で3.98g/L(112.8g ft-3)であった。
【0196】
実施例18-実施例14~17の実験室活性試験
参照例14及び実施例15~17の触媒の各々におけるPGM充填量が、同一であったことに留意されたい。
【0197】
実施例8に記載の手順を繰り返し、参照例14及び実施例15~17の比較試験の結果を以下の表6に示す。炭化水素の60%が転化された温度(T60)が、上記の表3に報告されているT50の代わりに報告され、250℃での%NO/NO転化率のみが報告されることに留意されたい。更に、80~400℃の試験ランプにわたって出口排出ガス中に検出されたNOの全データ点の単純累積和を、フーリエ変換赤外分光法(ppm)で識別されるように報告する。これは、検出された絶対的なppmの値とは異なり、検出値を積算し、ガスの質量や触媒の体積等と相関させる必要がある。しかし、この値は、触媒がNOの形成を抑制する能力を代表するものであり、有益である。発明者らは、報告されたNOの相対量は、絶対ppmの完全統合分析に反映され、示された傾向が繰り返されると予想されることを期待している。
【0198】
【表6】
【0199】
表6に示す結果を検討すると、ビスマス含有入口端ゾーンにベータゼオライトを添加すると、CO性能に弊害がもたらされ、またNOの著しい増加が引き起こされることがわかる(実施例15と16の結果を比較)。しかしながら、全てのビスマス含有触媒は、参照よりもNO酸化に対してより活性である。
【0200】
入口端における被覆層に対して実施例16の入口端コーティングからベータゼオライトを除去することによって、CO酸化は実施例15の単層触媒の性能に戻るが、HC及びNO酸化活性は改善される。
【0201】
更に、表4及び表6に示した実施例12及び17の結果を比較すると、実施例12では13:1のPt:Pd重量比でPGM総充填量が(4.24g/L(120g ft-3)、実施例17では7.1:1のPt:Pd重量比で3.98g/L(112.8g ft-3)と若干異なるものの、実施例12の出口ゾーンから白金の一部を除去し、それを入口端ゾーン上の上層に再位置決めすることによって、CO及びHC酸化性能を高め、NO酸化を抑制してディーゼル酸化触媒の異なる用途ニーズに対応できることを示している。
【0202】
参照例19-ゾーンコーティングされた単層入口触媒
参照触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、4:1のPt:Pd重量比で5.30g/L(150g ft-3)であることを除いて、上述の参照例9の説明と同様に調製された(入口端コーティングにおける2Pt:Pdの総充填量は、6.78g/L(192g ft-3)であり、出口端コーティングのPt充填量は、3.81g/L(108g ft-3Pt)である)。
【0203】
実施例20-ゾーンコーティングされたビスマス含有3層入口触媒(底部入口ゾーン層内のビスマス)
触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、4.4:1のPt:Pd重量比で5.30g/L(150g ft-3)であることを除いて、上述の参考例3の説明と同様に調製され、第1のスラリーウォッシュコートコーティングは、3.74g/L(106g ft-3)の白金(パラジウムなし)充填量を有し、第2のスラリーウォッシュコートコーティングは、2:1のPt:Pd重量比で、3.74g/L(106g ft-3)のPGM総充填量を有し、第3のスラリーウォッシュコートコーティングは、実施例3に記載されているとおりであり、第4のスラリーウォッシュコートコーティングは、2.44g/L(69g ft-3)の白金(パラジウムなし)充填量を有していた。
【0204】
触媒50%の軸方向入口ゾーン上のPGM総充填量は、8.19g/L(232g/ft-3)であった。
【0205】
実施例21-ゾーンコーティングされたビスマス含有3層入口触媒(中央入口ゾーン層内のビスマス)
第1のスラリーウォッシュコートコーティング及び第2のスラリーウォッシュコートコーティングへのコーティング順序を逆にした以外は、上述の実施例20の説明と同様に触媒を調製した。すなわち、(実施例3及び20のように)ビスマス含有層が基材上に直接コーティングされて、3層入口ゾーンの下層を形成し、かつ2:1Pt/Pd及びバリウム含有層が底部ビスマス層の上部にコーティングされて、3層入口ゾーンの中間層を形成する代わりに、実施例21の触媒では、2:1Pt/Pd及びバリウム含有層が基材上に直接コーティングされ、かつビスマス含有層がバリウム含有層の上にコーティングされて、中間層を形成した。
【0206】
実施例22-ゾーンコーティングされたビスマス含有2層入口触媒
触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、6.78:1のPt:Pd重量比で5.30g/L(150g ft-3)であることを除いて、上述の参照例17の説明と同様に調製された(第1のスラリー層のPGM総充填量は、4.10g/L(116g ft-3)であり、第2のスラリー層のPGM総充填量は、2:1のPt:Pd重量比で4.10g/L(116g ft-3)であり、第3のスラリー中のPt総充填量は、2.44g/L(69g ft-3であった)。更に、第3のスラリー中の「予備形成された」3.2重量%マンガン/5重量%シリカドープアルミナの代わりに、第3のスラリーは、5重量%シリカと硝酸マンガンでドープされたアルミナを含み、3.53g/L(100g ft-3)の第3のウォッシュコートスラリーコーティング中のマンガン充填量を生成し(例えば、参考例1の説明を参照)、第2のスラリーウォッシュコートは、63%のシリカドープアルミナ及び37質量%のゼオライトを含んでいた)。
【0207】
実施例23-ゾーンコーティングされたビスマス含有2層入口触媒
ビスマス(硝酸ビスマス由来)を第1のスラリー中のマンガンに交換したこと、及び第1のスラリーが可溶性白金塩のみ(パラジウムなし)を含有することを除いて、上述の実施例5の説明と同様に触媒を調製した。全体としての基材のPGM総充填量は、11.1:1のPt:Pd重量比で5.30g/L(150g ft-3)であった(第1のスラリー層のPt総充填量は、7.27g/L(206g ft-3)であり、第2のスラリー層のPd総充填量は、0.88g/L(25g ft-3)であり、第3のスラリー中のPt総充填量は、2.44g/L(69g ft-3であった)。
【0208】
実施例24-ゾーンコーティングされたビスマス含有2層入口触媒(ビスマス層中のゼオライト)
触媒は、全体としての基材のPGM総充填量が、6.78:1のPt:Pd重量比で5.30g/L(150g ft-3)であることを除いて、上述の参考例17の説明と同様に調製された(第1のスラリー層のPGM総充填量は、4.10g/L(116g ft-3)であり、第2のスラリー層のPGM総充填量は、2:1のPt:Pd重量比で4.10g/L(116g ft-3)であり、第3のスラリー中のPt総充填量は、2.44g/L(69g ft-3であった)。更に、第3のスラリー中の「予備形成された」3.2重量%マンガン/5重量%シリカドープアルミナの代わりに、第3のスラリーは、5重量%シリカと硝酸マンガンでドープされたアルミナを含み、3.53g/L(100g ft-3)の第3のウォッシュコートスラリーコーティング中のマンガン充填量を生成し(例えば、参考例1の説明を参照)、ビスマスを含有する第1のスラリーウォッシュコートは、77質量%のシリカドープアルミナ及び23質量%のゼオライトを含んでいた)。
【0209】
実施例25-実施例19~24の実験室活性試験
参考例19及び実施例20~24の触媒の各々におけるPGM充填量が、同一であったことに留意されたい。
【0210】
エージング条件が850℃で16時間であることを除いて、実施例18に記載の手順を繰り返した。参考例19と実施例20~24の比較試験の結果は、以下の表7に示される。NO酸化のためのT50ライトオフ温度のみが報告されていることに留意されたい。COとNOのT50、及びHCのT60が低いほど、酸化触媒の活性が高いことに留意されたい
【0211】
【表7】
【0212】
表7に示す結果を検討すると、実施例20及び21の3層触媒の結果を比較すると、ビスマス含有ウォッシュコート層を3層入口ゾーンの下層に位置させる方が、CO、HC及びNOの酸化に有効であることがわかる。
【0213】
各々が2層入口ゾーンを含む実施例22、23、及び24では、ビスマス含有層の白金量を減らすとCO酸化及びNO活性が低下するように見えるが、白金の一部をビスマス含有層から上層に移し、上層にバリウムを添加すると、HC酸化活性が向上する(比較例22と23の結果と比較する)。
【0214】
実施例22と24を比較すると、ビスマス含有入口端ゾーンにベータゼオライトを添加すると、NO酸化は改善されるが、CO性能に弊害がもたらされることがわかる。
【0215】
いずれの誤解も回避するために、本明細書に引用される全ての文書及び全ての文書の内容全体が、参照により本出願に組み込まれる。

図1