(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】接着性樹脂組成物および易剥離性フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 123/08 20060101AFI20231213BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231213BHJP
C09J 131/04 20060101ALI20231213BHJP
C09J 123/06 20060101ALI20231213BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20231213BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231213BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C09J123/08
C09J11/08
C09J131/04
C09J123/06
C09J7/35
B32B27/00 L
B32B27/28 101
(21)【出願番号】P 2022551915
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033886
(87)【国際公開番号】W WO2022065151
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020160522
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀則
(72)【発明者】
【氏名】緒方 拓也
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/128320(WO,A1)
【文献】特開2003-238920(JP,A)
【文献】特開昭49-111944(JP,A)
【文献】特開2017-008191(JP,A)
【文献】特開2009-035645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、
メルトマスフローレート(MFR、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重)が0.01g/10分以上20g/10分以下である直鎖状低密度ポリエチレン(B)と、
粘着付与樹脂(C)と、
を含む接着性樹脂組成物であって、
当該接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の含有量が75質量%を超えて95質量%以下であり、
前記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量が0質量%を超えて15質量%未満である接着性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の接着性樹脂組成物において、
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)全量に対する前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率が3質量%以上15質量%以下である接着性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接着性樹脂組成物において、
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)のメルトマスフローレート(MFR、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重)が1g/10分以上100g/10分以下である接着性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物において、
前記接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、
前記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量が3質量%以上12質量%未満である接着性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物において、
前記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の密度が900kg/m
3を超える接着性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物において、
前記接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、
前記粘着付与樹脂(C)の含有量が0質量%を超えて15質量%未満である接着性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物において、
前記接着性樹脂組成物全量に対する前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率が1質量%以上12質量%以下である接着性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物において、
前記接着性樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重)が1g/10分以上50g/10分以下である接着性樹脂組成物。
【請求項9】
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられたヒートシール性層と、を含む易剥離性フィルムであって、
前記ヒートシール性層が、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の接着性樹脂組成物からなる易剥離性フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載の易剥離性フィルムにおいて、
前記ヒートシール性層が、最外層である易剥離性フィルム。
【請求項11】
請求項9または10に記載の易剥離性フィルムにおいて、
紙基材に対する接着に用いられる易剥離性フィルム。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の易剥離性フィルムにおいて、
紙キャリアテープ用カバーテープとして用いられる易剥離性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性樹脂組成物および易剥離性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装用材料として、マイクロチップ等の電子部品を輸送するまたは保管するために用いられるキャリアテープが知られている。このキャリアテープを用いれば、あまりに小さいサイズのために取り扱いが困難な電子部品等を、キャリアテープに設けられた凹部に1個ずつ収容することで保管し、運搬することができる。
【0003】
キャリアテープは、電子部品等を収容できる凹部を有し、この凹部をカバーテープによって塞ぐことで、パッケージ化される。
【0004】
また、カップ麺やゼリー、ヨーグルト等の飲食品、医薬品等の包装用材料として、易剥離性の蓋材を備えたプラスチックス容器または紙容器が知られている。
【0005】
上記のようなカバーテープまたは蓋材としては、適度な接着性を有しながら、剥離時にはスムーズに剥離することができる易剥離性フィルムが求められている。
【0006】
このような易剥離性フィルムに用いられる、易剥離型の接着性樹脂組成物として、例えば、特許文献1、および特許文献2に記載のものが挙げられる。
【0007】
特許文献1には、JIS K 6924-1で測定した酢酸ビニル含有率が3~18重量%の範囲であり、JIS K 6924-1で測定したメルトマスフローレートが5~40g/10分の範囲であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対し、粘着付与樹脂(B)5~20重量部、ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50~1,000mPa・sである低分子量エチレン-酢酸ビニル共重合体(C)3~10重量部からなる接着剤と基材フィルムとを積層してなる易剥離性フィルムが記載されている。
【0008】
特許文献2には、(A)エチレン残基単位93~97重量%、酢酸ビニル残基単位3~7重量%からなり、JIS K 6924-1で測定したメルトマスフローレートが8~30g/10分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体39~84.9重量%、(B)エチレン残基単位80~90重量%、酢酸ビニル残基単位10~20重量%からなるエチレン-酢酸ビニル共重合体5~20重量%、(C)低密度ポリエチレン5~20重量%、(D)粘着付与剤樹脂5~20重量%、及び(E)帯電防止剤(E)0.1~1重量%の成分を含んでなる接着性樹脂組成物、およびこれを用いた易剥離性フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-35645号公報
【文献】特開2014-25047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者らは、従来のエチレン・酢酸ビニル共重合体と粘着付与樹脂とを含む接着性樹脂組成物を用いた易剥離性フィルムは、被着体との剥離時に過剰な力が発生してしまう場合があり、これにより内容物が飛散する等の問題が生じることに着目した。そして、本発明者らはかかる問題について鋭意検討を行ったところ、従来の易剥離性フィルムは、被着体に対する接着強度にばらつきがあることを判明した。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制できる易剥離性フィルムを実現できる接着性樹脂組成物およびそれを用いた易剥離性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体と、特定の粘度を有する直鎖状低密度ポリエチレンと、粘着付与樹脂とを含み、これらの含有量を制御することで、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制できる易剥離性フィルムを実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明によれば、以下に示す接着性樹脂組成物および易剥離性フィルムが提供される。
【0014】
[1]
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、
メルトマスフローレート(MFR、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重)が0.01g/10分以上20g/10分以下である直鎖状低密度ポリエチレン(B)と、
粘着付与樹脂(C)と、
を含む接着性樹脂組成物であって、
当該接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の含有量が75質量%を超えて95質量%以下であり、
上記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量が0質量%を超えて15質量%未満である接着性樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の接着性樹脂組成物において、
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)全量に対する上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率が3質量%以上15質量%以下である接着性樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載の接着性樹脂組成物において、
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)のメルトマスフローレート(MFR、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重)が1g/10分以上100g/10分以下である接着性樹脂組成物。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の接着性樹脂組成物において、
上記接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、
上記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量が3質量%以上12質量%未満である接着性樹脂組成物。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の接着性樹脂組成物において、
前記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の密度が900kg/m3を超える接着性樹脂組成物。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の接着性樹脂組成物において、
上記接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、
上記粘着付与樹脂(C)の含有量が0質量%を超えて15質量%未満である接着性樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の接着性樹脂組成物において、
上記接着性樹脂組成物全量に対する上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率が1質量%以上12質量%以下である接着性樹脂組成物。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の接着性樹脂組成物において、
上記接着性樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重)が1g/10分以上50g/10分以下である接着性樹脂組成物。
[9]
基材層と、上記基材層の一方の面に設けられたヒートシール性層と、を含む易剥離性フィルムであって、
上記ヒートシール性層が、上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の接着性樹脂組成物からなる易剥離性フィルム。
[10]
上記[9]に記載の易剥離性フィルムにおいて、
上記ヒートシール性層が、最外層である易剥離性フィルム。
[11]
上記[9]または[10]に記載の易剥離性フィルムにおいて、
紙基材に対する接着に用いられる易剥離性フィルム。
[12]
上記[9]乃至[11]のいずれか一つに記載の易剥離性フィルムにおいて、
紙キャリアテープ用カバーテープとして用いられる易剥離性フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制できる接着性樹脂組成物およびそれを用いた易剥離性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る実施形態の易剥離性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0019】
1.接着性樹脂組成物について
本実施形態の接着性樹脂組成物は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、メルトマスフローレート(MFR、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重)が0.01g/10分以上20g/10分以下である直鎖状低密度ポリエチレン(B)と、粘着付与樹脂(C)と、を含むものであって、当該接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の含有量が75質量%を超えて95質量%以下であり、直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量が0質量%を超えて15質量%未満である。
【0020】
本実施形態に係る接着性樹脂組成物によれば、上記成分を含有することで、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制できる。
なかでも、本実施形態の接着性樹脂組成物は、被着体として紙を用いた場合に好適に用いられる。具体的には、紙を基材とした紙キャリアテープ用カバーテープ、および紙容器用の蓋材等として用いられる場合が挙げられる。紙を被着体とした場合、適度な接着性(すなわち、紙基材に対して必要な接着性を有しながら、剥離する際には容易に剥離することができる程度の接着性)を有するとともに、接着性のばらつきがないこと、紙基材から剥離するときに紙剥けがないこと(すなわち、紙基材の紙が剥けて毛羽立たないこと)が求められているが、本実施形態の接着性樹脂組成物によれば、紙を被着体とした場合であっても、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、接着強度のばらつきを効果的に抑制できる。
【0021】
[メルトマスフローレート]
本実施形態の接着性樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重)は、0.1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。
上記メルトマスフローレートの下限値は、接着性と剥離性のバランスを保持し、接着強度のばらつきを効果的に抑制する観点から、より一層好ましくは、1g/10分以上、3g/10分以上、5g/10分以上、10g/10分以上、17g/10分以上、および20g/10分以上の順に挙げられる。
上記メルトマスフローレートの上限値は、接着性と剥離性のバランスを向上し、均一な接着強度を得る観点から、より一層好ましくは、50g/10分以下、40g/10分以下、35g/10分以下、30g/10分以下、28g/10分以下、27g/10分以下の順に挙げられる。
【0022】
[酢酸ビニル含有量]
本実施形態の接着性樹脂組成物において、接着性樹脂組成物全量に対するエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率は、1質量%以上12質量%以下であることが好ましい。
上記接着性樹脂組成物中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率の下限値は、接着性と剥離性のバランスを保持し、接着強度のばらつきを効果的に抑制する観点から、より一層好ましくは、1.5質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、および4.2質量%以上の順に挙げられる。
上記接着性樹脂組成物中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率の上限値は、接着性と剥離性のバランスを向上し、均一な接着強度を得る観点から、より一層好ましくは、11質量%以下、9質量%以下、7質量%以下、および5質量%以下の順に挙げられる。
【0023】
なお、接着性樹脂組成物の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量(質量%)と、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の含有量(但し接着性樹脂組成物全量を1とする)との積により算出される。
【0024】
以下、本実施形態に係る接着性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0025】
<エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)>
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の含有量は、接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、75質量%を超えて95質量%以下である。
上記のエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の含有量の下限は、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制する観点から、76質量%以上がより好ましく、77質量%以上がさらに好ましい。
一方、上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の含有量の上限は、接着性および剥離性のバランスを良好にする観点から、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
【0026】
また、本実施形態に係るエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制する観点から、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)全量に対して、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率が3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
また、上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率の下限は、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制する観点から、3.5質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましい。
一方、上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率の上限は、接着性および剥離性のバランスを良好にする観点から、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率は、JIS K 7192:1999に準拠してエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)を電気炉で500℃以上に加熱して分解し、得られた酢酸ビニルに由来する酢酸を中和滴定によって求めることができる。
【0028】
また、本実施形態に係るエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制する観点から、JIS K 7210:1999に準拠して温度190℃、荷重2160gで測定したメルトマスフローレート(a)が1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。
また、上記メルトマスフローレート(a)の下限は、接着性および剥離性のバランスを保持しつつ、接着性のばらつきを抑制する観点から、3g/10分以上がより好ましく、5g/10分以上がさらに好ましく、7g/10分以上がことさらに好ましい。
上記メルトマスフローレート(a)の上限は、接着性のばらつきを効果的に抑制し、良好な加工安定性を得る観点から、50g/10分以下がより好ましく、40g/10分以下がさらに好ましく、30g/10分以下がことさらに好ましい。
【0029】
本実施形態に係るエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温、高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は市販されているものを用いてもよい。
【0030】
<直鎖状低密度ポリエチレン(B)>
本実施形態の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(B)は、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体であり、好ましくはランダム共重合体である。
α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンなど炭素数3~10のα-オレフィンが好ましい。
本実施形態において直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、α-オレフィンが異なるLLDPEを複数混合して使用してもよく、あるいは1種類のLLDPEを単独で使用してもよい。
【0031】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量は、接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0質量%を超えて15質量%未満である。直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量が、接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、15質量%以上であると、接着性および剥離性のバランスがとることが困難であり、好ましくない。
上記の直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量の下限は、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制する観点から、3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。
一方、上記直鎖状低密度ポリエチレン(B)の含有量の上限は、接着性および剥離性のバランスを良好にする観点から、13質量%以下が好ましく、12質量%未満がより好ましく、11質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
本実施形態の直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制する観点から、JIS K 7210:1999に準拠して温度190℃、荷重2160gで測定したメルトマスフローレート(b)が0.01g/10分以上20g/10分以下である。
また、上記メルトマスフローレート(b)の下限は、接着性および剥離性のバランスを保持しつつ、接着性のばらつきを抑制する観点から、0.1g/10分以上が好ましく、1g/10分以上がより好ましく、2g/10分以上がさらに好ましい。
上記メルトマスフローレート(b)の上限は、接着性のばらつきを効果的に抑制し、良好な加工安定性を得る観点から、15g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましく、7g/10分以下がさらに好ましい。
【0033】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の密度の下限は、880kg/m3以上が好ましく、890kg/m3以上がより好ましく、895kg/m3以上がさらに好ましく、900kg/m3以上がことさらに好ましく、900kg/m3を超えることがより一層好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の密度の上限は、930kg/m3以下が好ましく、920kg/m3以下がより好ましく、910kg/m3以下がさらに好ましく、905kg/m3以下がことさらに好ましく、905kg/m3未満がより一層好ましい。
【0034】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の融点は、70℃以上140℃以下であることが好ましく、80℃以上135℃以下であることがより好ましく、95℃以上130℃以下であることが特に好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン(B)の融点は、JIS K 7121(2012年)に準拠して、示唆走査熱量計(DSC)で測定した融解温度である。
なお、DSC測定において、複数の融点が示される場合は、本実施形態においては、最大の融点をもって融点とみなす。
【0035】
なお、一般に、低密度ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレン(HPLDPE)と、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)とに分類され、高圧法低密度ポリエチレン(HPLDPE)は、エチレンの単独重合体である。また、本実施形態では、高圧法低密度ポリエチレン(HPLDPE)を使用すると、接着強度のばらつきを効果的に抑制することができず、好ましくない。
【0036】
本実施形態の直鎖状低密度ポリエチレン(B)の重合方法は、エチレンとα-オレフィンを公知のチーグラー触媒やメタロセン触媒により溶液法、スラリー法、気相法など用いて重合する方法が挙げられる。また、例えば、チーグラー型触媒を代表例とするマルチサイト触媒を用いた方法や、メタロセン触媒を代表例とするシングルサイト触媒を用いた方法が挙げられる。チーグラー型触媒としては、高活性チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる組み合わせ触媒を例示することができる。またメタロセン触媒としては、メタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物とからなる組み合わせ触媒を例示することができる。
【0037】
<粘着付与樹脂(C)>
粘着付与樹脂(C)は、樹脂に粘着性を付与する機能を有するため、接着性樹脂組成物の接着強度の調整を容易にすることができる。
粘着付与樹脂(C)としては、粘着性を付与する機能を有する樹脂から選択される。粘着付与樹脂(C)としては、例えば、芳香族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、およびクマロン・インデン樹脂等が挙げられる。
【0038】
芳香族系炭化水素樹脂としては、例えば、ビニルトルエン、インデン、α-メチルスチレン等の炭素数8~10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種含有する留分を重合して得られる樹脂、これらの留分と脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂等が挙げられる。
脂環族系炭化水素樹脂としては、例えば、スペントC4~C5留分中のジエン成分を環化二量化後、重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエン等の環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂(例えば、水素化石油樹脂等)等が挙げられる。
脂肪族系炭化水素樹脂としては、例えば、1-ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5のモノ又はジオレフィンの少なくとも1種以上を含む留分を重合して得られる樹脂が挙げられる。
テルペン系樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α-ピネン・フェノール共重合体、これらの水素添加物等が挙げられる。
ロジン類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油等のロジン及びその変性物等であり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化等の変性を施したものが挙げられる。
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、イソプロピルトルエン等のスチレン系単量体を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体が挙げられる。
【0039】
粘着付与樹脂(C)は、軟化点が85℃~130℃の樹脂が好ましく、100~125℃がより好ましく、110~120℃がさらに好ましい。軟化点は、一般的に85℃以上であると耐熱性に優れた効果を発揮する傾向があり、130℃以下であると粘着性付与に優れた効果を発揮する傾向がある。
粘着付与樹脂(C)の軟化点は、JIS K 2207(2006年)に準拠して、軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値を用いることができる。
【0040】
粘着付与樹脂(C)の含有量は、接着性樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0質量%を超えて15質量%未満であることが好ましい。
上記粘着付与樹脂(C)の含有量の下限は、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制する観点から、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上がことさらに好ましい。
一方、上記粘着付与樹脂(C)の含有量の上限は、接着性および剥離性のバランスを良好にする観点から、14質量%以下がより好ましく、13質量%以下がさらに好ましく、12質量%未満がことさらに好ましい。
【0041】
粘着付与樹脂(C)としては、市販品を用いてもよく、例えば、アルコンP140(荒川化学社製、軟化点140℃)、アルコンP125(荒川化学社製、軟化点125℃)、アルコンP115(荒川化学社製、軟化点115℃)、アルコンP100(荒川化学社製、軟化点100℃)、アルコンP90(荒川化学社製、軟化点90℃)などの水素化された脂環族系樹脂などが挙げられる。
【0042】
<その他の成分>
本実施形態に係る接着性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を含有させることができる。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、離ロール剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、顔料、染料等を挙げることができる。その他の成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
帯電防止剤としては、例えば、導電性ポリマー、非イオン性界面活性剤、および陰イオン性界面活性剤等が挙げられる。
アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、アルミノ珪酸塩(ゼオライト等)が挙げられる。
スリップ剤としては、例えば、リエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;水素添加ひまし油等が挙げられる。スリップ剤の含有量は、接着性樹脂組成物全量に対して、1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
離ロール剤としては、上記のスリップ剤と共通する材料もあるが、具体的には、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミトアミド、ステアリルパルミトアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、およびエチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類;シリカ、およびタルクなどの無機質添加剤等が挙げられる。離ロール剤の含有量は、接着性樹脂組成物全量に対して、1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
[用途]
本実施形態に係る接着性樹脂組成物は、紙基材に対する接着に好適に用いられる。例えば、帯封、ラベルなど、紙に対して接着し、使用時又は使用後に剥がされるフィルムとして好適に用いられる。特に、本実施形態に係る接着性樹脂組成物は、電子部品搬送用の紙製容器である紙キャリアテープのマイクロチップ等が収容される収容部を閉塞するカバーテープに好適に用いられる。
上記紙キャリアテープとしては、例えば、長さ方向に一定間隔に複数の打ち抜き穴を形成した収納台紙の片面(下面)にボトムカバーテープを熱シールし、上記各打ち抜き穴を電子部品を収納可能な凹部として用いるもの;収納台紙にエンボス加工が施されて、電子部品を収納可能な凹部が収納台紙の長手方向に沿って一定間隔で複数形成されたもの;等が挙げられる。
該キャリアテープの上にカバーテープを重ねてヒートシール等により接着することで、例えばICチップのようなマイクロチップを収容した凹部を閉塞して保管、運搬が可能である。
【0045】
本実施形態に係る接着性樹脂組成物は、飲食品、医薬品等の紙以外の包装容器の蓋材にも好適に用いられる。
【0046】
<接着性樹脂組成物の調製方法>
本実施形態の接着性樹脂組成物の調製方法としては特に限定されないが、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、直鎖状低密度ポリエチレン(B)と、粘着付与樹脂(C)と、必要に応じて帯電防止剤と、その他の成分と、をドライブレンドして混合することにより調製する方法;エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、直鎖状低密度ポリエチレン(B)と、粘着付与樹脂(C)と、必要に応じてその他の成分と、を押出機で溶融混練することにより調製する方法;等を適用することができる。
【0047】
2.易剥離性フィルム
図1は、本発明に係る実施形態の易剥離性フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る易剥離性フィルム50は、基材層10と、基材層10の一方の面に設けられたヒートシール性層20と、を含む易剥離性フィルムであって、ヒートシール性層20が、本実施形態に係る接着性樹脂組成物からなる。
【0048】
本実施形態の易剥離性フィルムは、電子部品搬送用の紙製容器である紙キャリアテープ用のカバーテープに用いられることが好ましい。
【0049】
<基材層>
基材層10は、易剥離性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10としては、例えば、紙、アルミニウム、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステル等からなる板状材(シートまたはフィルム)等が挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレートからなるシートまたはフィルムが好ましい。これらの基材層10は、単層構造のみならず、2層以上の積層構造であってもよい。
【0050】
基材層10の厚みは、機械的強度および作業性の観点から、例えば5μm以上100μm以下、好ましくは10μm以上50μm以下である。
基材層10は、ヒートシール性層20と接着(又は積層)される側の表面に、ヒートシール性層20との接着強度を高めるためにコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、オゾン処理等の物理的な処理がなされていてもよい。また、基材層10に公知のアンカーコート処理を施してもよい。
【0051】
<ヒートシール性層>
ヒートシール性層20は、易剥離性フィルム50にヒートシール性を付与するための層であり、本実施形態に係る接着性樹脂組成物からなる。
ヒートシール性層20の厚さは、例えば1μm以上300μm以下であり、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上150μm以下である。
ヒートシール性層20は、易剥離性フィルム50の最外層にあることが好ましい。
【0052】
<中間層>
本実施形態に係る易剥離性フィルム50は、基材層10とヒートシール性層20との間に、ポリエチレン等の中間層が設けられていてもよい。上記中間層は、基材層10とヒートシール性層20との間の接着性を高めたり、ヒートシール性層20を形成する際の加工性を高めたりするために設けられる層である。
【0053】
3.易剥離性フィルムの製造方法
本実施形態に係る易剥離性フィルム50の製造方法は特に限定されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法を適用することができる。例えば、T-ダイ押出機あるいはインフレーション成形機等を用いる公知の方法によって行うことができる。
例えば、本実施形態に係る接着性樹脂組成物をT-ダイ押出機のホッパーから供給してTダイ先端から基材層10上にフィルム状に押出成形することにより得ることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る易剥離性フィルム50の製造方法において、一般に使用されている多層フィルムの成形法を適用することができる。例えば、多層T-ダイ押出機あるいは多層インフレーション成形機等を用いる公知の方法によって行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
接着性樹脂組成物の調製に用いた成分の詳細は以下の通りである。
また、以下の「MFR」は、JIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重とした。
【0058】
<エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)>
・EVA-1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR24g/10分、エチレン含量94.5質量%、酢酸ビニル(VA)含量5.5質量%)
・EVA-2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR9g/10分、エチレン含量90質量%、酢酸ビニル(VA)含量10質量%)
【0059】
<直鎖状低密度ポリエチレン(B)>
・LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン(MFR3.8g/10分)、密度903kg/m3、融点98℃)
【0060】
<粘着付与樹脂(C)>
・粘着付与樹脂:脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物(荒川化学工業株式会社製、アルコンP-115、軟化点115℃)
【0061】
<その他の重合体>
・HPLDPE:高圧法低密度ポリエチレン(MFR3.7g/10min、密度923kg/m3)
【0062】
<添加剤>
・離ロール剤:エルカ酸アミド(ELA、日油株式会社製)
・スリップ剤:ポリエチレングリコール(PEG、日本精化株式会社製)
【0063】
[実施例1~7、比較例1~2]
<評価サンプルの作製>
(1)接着性樹脂組成物の調製
表1に示す配合割合で各成分を単軸押出機(65mmφ、L/D=28、先端ダルメージフライトスクリュー)にて170℃で溶融混練し、接着性樹脂組成物をそれぞれ得た。得られた接着性樹脂組成物は、ペレット状にカッティングして評価用積層フィルムの作製に供した。
【0064】
(2)評価用積層フィルムの作製
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラー、東レ株式会社製、厚さ25μm)を準備した。前記PETフィルム上に、押出機(65mmφ、L/D=28)、スクリュー(3ステージ型、溝深さ比4.78)、及びダイ(900mm幅、インナーディケル型)を用いて、エアギャップ110mm、加工速度80m/分、ダイ下樹脂温度320℃の条件で、厚さ15μmの低密度ポリエチレン(密度923kg/m3、MFR(JIS K 7210:1999に準拠、温度190℃、荷重2160g)3.7g/10分、融点111℃)の層を、アンカーコート剤(以下、acと略記する。セイカダイン2710A(大日精化工業株式会社製)2質量%、セイカダイン2710C(大日精化工業株式会社製)4質量%、および酢酸エチル31質量%、固形濃度7質量%)を介して積層し、積層体(PETフィルム(25μm)/ac・LDPE(15μm)の順に積層)を作製した。
次いで、上記低密度ポリエチレンの層の上に、上記押出機、スクリュー、及びダイを用いて、エアギャップ110mm、加工速度80m/分、ダイ下樹脂温度240℃の条件で、表1に示す各接着性樹脂組成物からなる層(厚さ15μm)を積層し、評価用積層フィルム(PETフィルム(25μm)/ac・LDPE(15μm)/接着性樹脂層(15μm)の順に積層)をそれぞれ作製した。
得られた評価用積層フィルムについて、以下の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0065】
[接着性および剥離性評価]
以下の条件で、上記の評価用積層フィルムを紙キャリアテープ用カバーテープとして用いたときの接着性、接着性のばらつきおよび剥離性を評価した。
<試料>
・紙キャリアテープ(被着体):大王製紙株式会社製、厚み0.42mm
<シール条件>
・テーピングマシン:株式会社バンガードシステムズ社製VS-120
・シールコテ:2列、幅0.4mm、長さ16mm
・シール温度:200℃
・シール時間:0.1秒
・シール回数:2回
<剥離条件(シール強度測定)>
・装置:株式会社バンガードシステムズ社製VG-35
・剥離速度:300mm/分
・剥離角度:165~180°
・剥離距離:10mm
【0066】
(接着性評価)
シール強度は4回測定し、各々の測定値の平均値の平均値を平均シール強度とした。
・判定基準:
C(高強度):平均シール強度が40gを超える
A(最適):平均シール強度が25g以上40g以下
B(好適):平均シール強度が15g以上25g未満
C(低強度):平均シール強度が15g未満
【0067】
(接着性のばらつき評価)
シール強度は4回測定し、各々の測定値の「最大値と最小値の差」の平均値をシール強度のばらつきとした。
・判定基準:
A:シール強度のばらつきが10g以下
C:シール強度のばらつきが10gを超える
【0068】
(剥離性評価)
・手順:前記条件で剥離(シール強度測定)した後のサンプルのシール面の毛羽立ち状態を顕微鏡で観察した。
・判定基準:
A:紙繊維の付着がほとんど無い、あるいは、紙繊維の付着が全くない
B:紙繊維の付着がわずかにある
C:紙繊維の付着が多い
【0069】
【0070】
表1から明らかなように、実施例1~7の接着性樹脂組成物を用いた積層フィルムは、接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制できていた。これに対し、比較例1~2の接着性樹脂組成物を用いた積層フィルムは、接着性と剥離性のバランスに劣っているか、接着性と剥離性のバランスに優れていた場合であっても、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制できていなかった。
以上から、本実施形態に係る接着性樹脂組成物によれば、被着体への接着性と剥離性のバランスに優れるとともに、被着体に対する接着強度のばらつきを抑制可能な積層フィルムを実現できることが確認できた。
【0071】
この出願は、2020年9月25日に出願された日本出願特願2020-160522号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0072】
10 基材層
20 ヒートシール性層
50 易剥離性フィルム