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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】燃料電池駆動システムのマウント構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 8/00 20060101AFI20231213BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20231213BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231213BHJP
   B60L 50/71 20190101ALI20231213BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20231213BHJP
【FI】
B60K8/00
B60K1/00
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
B60L50/71
H01M8/2475
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023069695
(22)【出願日】2023-04-21
(62)【分割の表示】P 2021039555の分割
【原出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2023114458
(43)【公開日】2023-08-17
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】内藤 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】角田 航平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩義
(72)【発明者】
【氏名】服部 和史
(72)【発明者】
【氏名】横田 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】西山 隆之
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222176(JP,A)
【文献】特開2017-081209(JP,A)
【文献】特開2020-121608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0375282(US,A1)
【文献】中国実用新案第211809849(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102014210924(DE,A1)
【文献】特開2020-29190(JP,A)
【文献】特開2017-87849(JP,A)
【文献】特開2020-87527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 8/00
B60K 1/00
H01M 8/00
H01M 8/04
B60L 50/71
H01M 8/2475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックを収納するスタックケースを含む燃料電池システムと、車両を駆動させるための駆動ユニットと、を有する燃料電池駆動システムと、
前記燃料電池駆動システムを車体フレームに固定するためのマウント部材と、を備えた燃料電池駆動システムのマウント構造であって、
前記駆動ユニットは、前記燃料電池システムの下方に位置し、
前記マウント部材は、
前記燃料電池システムの車幅方向の一端部に位置する第1端部を前記車体フレームの第1フレーム部に接続する第1マウント部と、
前記燃料電池システムの前記車幅方向の他端部に位置する第2端部を前記車体フレームの第2フレーム部に接続する第2マウント部と、を有し、
前記燃料電池駆動システムは、
前記燃料電池システムと前記駆動ユニットとを互いに接続する接続部材を有し、
前記第1マウント部は、前記駆動ユニットに接続されている、燃料電池駆動システムのマウント構造。
【請求項2】
燃料電池スタックを収納するスタックケースを含む燃料電池システムと、車両を駆動させるための駆動ユニットと、を有する燃料電池駆動システムと、
前記燃料電池駆動システムを車体フレームに固定するためのマウント部材と、を備えた燃料電池駆動システムのマウント構造であって、
前記駆動ユニットは、前記燃料電池システムの下方に位置し、
前記マウント部材は、
前記燃料電池システムの車幅方向の一端部に位置する第1端部を前記車体フレームの第1フレーム部に接続する第1マウント部と、
前記燃料電池システムの前記車幅方向の他端部に位置する第2端部を前記車体フレームの第2フレーム部に接続する第2マウント部と、を有し、
前記燃料電池システムは、前記燃料電池システムと前記駆動ユニットとを互いに接続する第1接続部材及び第2接続部材を有し、
前記第1接続部材は、前記燃料電池システムの前記第1端部側に位置し、
前記第2接続部材は、前記燃料電池システムの前記第2端部側に位置し、
前記燃料電池駆動システムは、前記燃料電池システムの前記車幅方向の中間部と前記駆動ユニットの前記車幅方向の中間部とを互いに接続する第3接続部材を有する、燃料電池駆動システムのマウント構造。
【請求項3】
燃料電池スタックを収納するスタックケースを含む燃料電池システムと、車両を駆動させるための駆動ユニットと、を有する燃料電池駆動システムと、
前記燃料電池駆動システムを車体フレームに固定するためのマウント部材と、を備えた燃料電池駆動システムのマウント構造であって、
前記駆動ユニットは、前記燃料電池システムの下方に位置し、
前記マウント部材は、
前記燃料電池システムの車幅方向の一端部に位置する第1端部を前記車体フレームの第1フレーム部に接続する第1マウント部と、
前記燃料電池システムの前記車幅方向の他端部に位置する第2端部を前記車体フレームの第2フレーム部に接続する第2マウント部と、を有し、
前記燃料電池駆動システムは、前記燃料電池システムと前記駆動ユニットとを互いに接続する第1接続部材及び第2接続部材を有し、
前記燃料電池駆動システムの重心は、車両上方から見て、前記第1マウント部の前記燃料電池駆動システムを支持する第1支点と前記第2マウント部の前記燃料電池駆動システムを支持する第2支点とを結ぶ線分上に位置する、燃料電池駆動システムのマウント構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池駆動システムのマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車体フレームに駆動ユニット(モータ及び減速機)を搭載し、駆動ユニットの上方に燃料電池システムが位置するように複数のブラケットにより駆動ユニットと燃料電池システムとを互いに接続した燃料電池駆動システムのマウント構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-133249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のようなマウント構造は、燃料電池システムを車体フレームに接続するマウント部を備えていない。この場合、駆動ユニットを支持する車体フレームには、燃料電池システムと駆動ユニットとの合計の荷重が集中することになる。そのため、駆動ユニットを支持する車体フレームを強固にする必要があり車体フレームの重量が増大するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、車体フレームの軽量化を図ることができるとともに小型化を図ることができる燃料電池駆動システムのマウント構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、燃料電池スタックを収納するスタックケースを含む燃料電池システムと、車両を駆動させるための駆動ユニットと、を有する燃料電池駆動システムと、前記燃料電池駆動システムを車体フレームに固定するためのマウント部材と、を備えた燃料電池駆動システムのマウント構造であって、前記駆動ユニットは、前記燃料電池システムの下方に位置し、前記マウント部材は、前記燃料電池システムの車幅方向の一端部に位置する第1端部を前記車体フレームの第1フレーム部に接続する第1マウント部と、前記燃料電池システムの前記車幅方向の他端部に位置する第2端部を前記車体フレームの第2フレーム部に接続する第2マウント部と、を有し、前記燃料電池駆動システムは、前記燃料電池システムと前記駆動ユニットとを互いに接続する接続部材を有し、前記第1マウント部は、前記駆動ユニットに接続されている、燃料電池駆動システムのマウント構造である。
【0007】
本発明の第2の態様は、燃料電池スタックを収納するスタックケースを含む燃料電池システムと、車両を駆動させるための駆動ユニットと、を有する燃料電池駆動システムと、前記燃料電池駆動システムを車体フレームに固定するためのマウント部材と、を備えた燃料電池駆動システムのマウント構造であって、前記駆動ユニットは、前記燃料電池システムの下方に位置し、前記マウント部材は、前記燃料電池システムの車幅方向の一端部に位置する第1端部を前記車体フレームの第1フレーム部に接続する第1マウント部と、前記燃料電池システムの前記車幅方向の他端部に位置する第2端部を前記車体フレームの第2フレーム部に接続する第2マウント部と、を有し、前記燃料電池システムは、前記燃料電池システムと前記駆動ユニットとを互いに接続する第1接続部材及び第2接続部材を有し、前記第1接続部材は、前記燃料電池システムの前記第1端部側に位置し、前記第2接続部材は、前記燃料電池システムの前記第2端部側に位置し、前記燃料電池駆動システムは、前記燃料電池システムの前記車幅方向の中間部と前記駆動ユニットの前記車幅方向の中間部とを互いに接続する第3接続部材を有する、燃料電池駆動システムのマウント構造である。
【0008】
本発明の第3の態様は、燃料電池スタックを収納するスタックケースを含む燃料電池システムと、車両を駆動させるための駆動ユニットと、を有する燃料電池駆動システムと、前記燃料電池駆動システムを車体フレームに固定するためのマウント部材と、を備えた燃料電池駆動システムのマウント構造であって、前記駆動ユニットは、前記燃料電池システムの下方に位置し、前記マウント部材は、前記燃料電池システムの車幅方向の一端部に位置する第1端部を前記車体フレームの第1フレーム部に接続する第1マウント部と、前記燃料電池システムの前記車幅方向の他端部に位置する第2端部を前記車体フレームの第2フレーム部に接続する第2マウント部と、を有し、前記燃料電池駆動システムは、前記燃料電池システムと前記駆動ユニットとを互いに接続する第1接続部材及び第2接続部材を有し、前記燃料電池駆動システムの重心は、車両上方から見て、前記第1マウント部の前記燃料電池駆動システムを支持する第1支点と前記第2マウント部の前記燃料電池駆動システムを支持する第2支点とを結ぶ線分上に位置する、燃料電池駆動システムのマウント構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車体フレームの軽量化を図ることができるとともに小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池駆動システムのマウント構造の車両前方からの斜視図である。
図2】前記マウント構造の車両後方からの斜視図である。
図3】前記マウント構造の車両前方からの正面図である。
図4】前記マウント構造の車両後方からの背面図である。
図5図3のV-V線に沿った断面図である。
図6】前記マウント構造の右側面図である。
図7】前記マウント構造の左側面図である。
図8】前記マウント構造の底面図である。
図9図2のIX-IX線に沿った断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る燃料電池駆動システムのマウント構造の車両後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る燃料電池駆動システムのマウント構造について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図6及び図7に示すように、本発明の第1実施形態に係る燃料電池駆動システム22のマウント構造10A(以下、単に「マウント構造10A」ということがある)は、車両12(燃料電池車両)のモータルーム14(フロントボックス)に設けられている。モータルーム14は、ダッシュボード16により車室18から隔離されて設けられる。モータルーム14は、左右の前輪20の間に位置する。
【0013】
各図において、車両12を基準に、運転者側から見て車両左側を矢印「L」で示し、車両右側を矢印「R」で示し、車両前方を矢印「Fr」で示し、車両後方を矢印「Rr」で示し、車両上方を矢印「U」で示し、車両下方を矢印「D」で示す。
【0014】
図1及び図2に示すように、マウント構造10Aは、燃料電池駆動システム22と、燃料電池駆動システム22を車体フレーム24に固定するためのマウント部材26とを備えている。
【0015】
車体フレーム24は、第1フレーム部28、第2フレーム部30及び第3フレーム部32を有する。第1フレーム部28は、燃料電池駆動システム22の車両右側(矢印R方向)に位置するとともに車両前後方向(車長方向)に沿って延在している。第2フレーム部30は、燃料電池駆動システム22の車両左側(矢印L方向)に位置するとともに車両前後方向に延在している。第3フレーム部32は、燃料電池駆動システム22の下方(矢印D方向)に位置している。第3フレーム部32は、車幅方向(矢印W方向)に延在するメインフレーム34と、メインフレーム34の両端部から車両前方(矢印Fr方向)に延在した左右一対のサブフレーム36とを含む。
【0016】
燃料電池駆動システム22は、燃料電池システム38と、燃料電池システム38の下方に位置する駆動ユニット40と、燃料電池システム38と駆動ユニット40とを互いに接続する第1~第3接続部材42、44、46とを有する。
【0017】
図5において、燃料電池システム38は、燃料電池システム本体48と、燃料電池システム本体48に接続された補機部材50とを含む。燃料電池システム本体48は、燃料電池スタック52と、燃料電池スタック52を収納するスタックケース54とを備える。燃料電池スタック52は、複数の発電セル56が互いに積層されてなるセル積層体58を有する。複数の発電セル56の積層方向は、車幅方向(矢印W方向)を向いている。
【0018】
セル積層体58の積層方向の一端(矢印R方向の端)には、第1ターミナルプレート60a及び第1絶縁プレート62aが外方(矢印R方向)に向かって順次配設されている。セル積層体58の積層方向の他端(矢印L方向の端)には、第2ターミナルプレート60b及び第2絶縁プレート62bが順次配設されている。燃料電池スタック52は、第1ターミナルプレート60a、第1絶縁プレート62a、第2ターミナルプレート60b及び第2絶縁プレート62bを含む。
【0019】
第1ターミナルプレート60a及び第2ターミナルプレート60bの各々は、導電性を有する材料(例えば、銅やアルミニウム等の金属材料)により構成されている。第1絶縁プレート62a及び第2絶縁プレート62bの各々は、例えば、電気絶縁性を有する樹脂材料により形成されている。
【0020】
発電セル56は、燃料ガス(例えば、水素含有ガス)と酸化剤ガス(例えば、酸素含有ガス)との電気化学反応により発電する。詳細な図示は省略するが、発電セル56は、MEA(電解質膜・電極構造体)をアノードセパレータとカソードセパレータとで挟持して形成される。
【0021】
MEAは、電解質膜と、電解質膜の一方の面に配設されたアノード電極と、電解質膜の他方の面に配設されたカソード電極とを有する。アノードセパレータには、燃料ガスをアノード電極に供給するための燃料ガス流路が形成され、カソードセパレータには、酸化剤ガスをカソード電極に供給するための酸化剤ガス流路が形成される。
【0022】
スタックケース54は燃料電池スタック52を収納するスタック収納空間S1を形成する。スタックケース54は、上下方向(矢印U方向及び矢印D方向)及び車両前後方向(矢印Fr方向及び矢印Rr方向)から見て矩形状であり、その長辺が車幅方向(矢印W方向)に沿って延在している。
【0023】
スタックケース54は、燃料電池スタック52の外周面を覆う四角筒状の周壁ケース64と、周壁ケース64の一端(矢印R方向の端)に配設された第1エンドプレート66と、周壁ケース64の他端(矢印L方向の端)に配設された第2エンドプレート68とを含む。スタック収納空間S1は、周壁ケース64、第1エンドプレート66及び第2エンドプレート68によって形成される。
【0024】
第1エンドプレート66は、周壁ケース64の一端側(矢印R方向)の開口部を閉塞するように周壁ケース64に図示しないボルトにより接合される。第2エンドプレート68は、周壁ケース64の他端側(矢印L方向)の開口部を閉塞するように周壁ケース64に図示しないボルトにより接合される。
【0025】
補機部材50は、燃料電池用補機70と、燃料電池用補機70を収納する補機ケース72とを有する。詳細な図示は省略するが、燃料電池用補機70は、例えば、燃料電池スタック52に燃料ガスを供給するアノード系補機と、燃料電池スタック52に酸化剤ガスを供給するカソード系補機と、燃料電池スタック52に冷却媒体を供給する冷却媒体補機とを有する。
【0026】
補機ケース72は、燃料電池用補機70を収容する補機収納空間S2を形成する。スタックケース54と補機ケース72とは、車幅方向(矢印W方向)に並んでいる。補機ケース72は、補機収納空間S2に収納された燃料電池用補機70を保護するための保護ケースである。
【0027】
補機ケース72は、矢印L方向が開口した箱型の第1ケース部材74と、矢印R方向が開口した箱型の第2ケース部材76とを図示しないボルトにより互いに接合することにより形成される。第1ケース部材74は、上述した第2エンドプレート68を含む。第2エンドプレート68は、スタックケース54の壁部と補機ケース72の壁部の両方を兼ねている。換言すると、第2エンドプレート68は、スタック収納空間S1と補機収納空間S2との隔壁である。
【0028】
図1図3図5において、補機ケース72の車両左側(矢印L方向)の外面72lには、外方(矢印L方向)に突出した取付突出部80が一体的に設けられている。取付突出部80は、第2ケース部材76の幅方向(車両前後方向)の略中央に位置している(図5参照)。
【0029】
図5に示すように、このような燃料電池システム38は、燃料電池システム38の車幅方向の一端部に位置する第1端部38aと、燃料電池システム38の車幅方向の他端部に位置する第2端部38bとを有する。燃料電池システム38の第1端部38aは、スタックケース54の端部(第1エンドプレート66)を形成する。燃料電池システム38の第2端部38bは、補機ケース72の端部(第2ケース部材76)を形成する。
【0030】
図1図4において、駆動ユニット40は、スタックケース54の下方に位置するモータ82と、補機ケース72の下方に位置するとともにモータ82に対して連結された減速機84とを備える。モータ82と減速機84とは、車幅方向に並んでいる。換言すれば、モータ82は、減速機84の車両右側に位置している。図1図2及び図5において、モータ82は、車両上方から見てスタックケース54の投影面積内に収まるように配置されている。換言すれば、モータ82は、車両上方から見てスタックケース54よりも外方にはみ出していない。
【0031】
図3において、モータ82は、モータ本体86と、モータ本体86を収納するモータケース88とを有する。モータ本体86は、燃料電池スタック52又は図示しないバッテリから供給された電力により回転駆動する。モータケース88は、車幅方向(矢印W方向)に延在している。
【0032】
減速機84は、モータ82の回転駆動力を所定の回転速度に減速した状態で図示しない車軸に伝達するための減速機本体90と、減速機本体90を収納する減速機ケース92とを有する。減速機本体90は、図示しない複数の歯車(ギヤ)を含む。
【0033】
減速機ケース92は、モータケース88の後面88bよりも車両後方(矢印Rr方向)に延出した延出部94を有している(図2及び図4参照)。図1図4において、減速機ケース92は、矢印L方向が開口した箱型の第1ギヤケース96と、矢印R方向が開口した箱型の第2ギヤケース98とを図示しないボルトにより互いに接合することにより形成される。
【0034】
図1図3及び図4に示すように、第1ギヤケース96は、モータケース88の矢印L方向の端部に図示しないボルトにより接合されている。減速機ケース92の矢印L方向の外面92lには、モータケース88とは反対方向(矢印L方向)に突出した取付フランジ100が一体的に設けられている。
【0035】
燃料電池駆動システム22に関し、第1~第3接続部材42、44、46の詳細な説明については後述する。
【0036】
図1及び図2に示すように、マウント部材26は、第1マウント部102、第2マウント部104及び第3マウント部106を備える。
【0037】
図2図5において、第1マウント部102は、燃料電池システム38の第1端部38a(第1エンドプレート66)を第1フレーム部28に固定する。第1マウント部102は、スタックケース54の矢印R方向の端面54rとモータケース88の矢印R方向の端面88rとを互いに接続する接続フレーム108と、接続フレーム108に設けられた第1連結部材110と、第1連結部材110を第1フレーム部28に固定するための第1固定部材112とを有する。
【0038】
接続フレーム108は、車両前後方向に幅広なプレート部材である(図2及び図5参照)。図2図4において、接続フレーム108は、スタックケース54の端面54rに対向配置された第1接続プレート114と、モータケース88の端面88rに対向配置された第2接続プレート116と、第1接続プレート114の下端と第2接続プレート116の上端とを互いに繋ぐ中間プレート118とを含む。
【0039】
第1接続プレート114は、スタックケース54の端面54rに対して車両右側(矢印R方向)から複数のボルト120aによって接合されている。第2接続プレート116は、モータケース88の端面88rに対して車両右側(矢印R方向)から複数のボルト120bによって接合されている。これらボルト120a、120bは、車幅方向(矢印W方向)に延在している。中間プレート118は、第1接続プレート114の下端から車両下方に向かって矢印L方向に傾斜するように延在している。第1接続プレート114の外面(矢印R方向の面)には、外方(矢印R方向)に突出した取付凸部122が一体的に設けられている。
【0040】
図2及び図5に示すように、第1連結部材110は、車両前後方向に延在した第1取付板部124と、第1取付板部124から車両右側(矢印R方向)に突出した第1突出部126とを含む。第1取付板部124は、取付凸部122の上面に対して上方から複数のボルト120cによって接合されている。ボルト120cは、上下方向に延在している。
【0041】
図2及び図6において、第1固定部材112は、第1突出部126が挿入される第1挿入口128が形成された第1固定部本体130と、第1固定部本体130の車両前後方向の両側に設けられた一対の第1脚部132とを含む。第1挿入口128は、第1固定部本体130を車幅方向に貫通している。第1突出部126は、第1挿入口128に挿入された状態で第1固定部本体130に対して上方からボルト120dによって接合されている。各第1脚部132は、第1フレーム部28の上面に対して上方からボルト120eによって接合されている。ボルト120d、120eは、上下方向に延在している。
【0042】
第1マウント部102において、接続フレーム108、第1連結部材110及び第1固定部材112の形状及び大きさは、適宜設定可能である。また、第1マウント部102において、ボルト120a~120eの形状、大きさ、位置及び数は、適宜設定可能である。
【0043】
図1図3図5において、第2マウント部104は、燃料電池システム38の第2端部38b(第2ケース部材76)を第2フレーム部30に固定する。具体的に、第2マウント部104は、補機ケース72の取付突出部80に設けられた第2連結部材134と、第2連結部材134を第2フレーム部30に固定するための第2固定部材136とを有する。
【0044】
図1及び図5に示すように、第2連結部材134は、車両前後方向に延在した第2取付板部138と、第2取付板部138から車両左側(矢印L方向)に突出した第2突出部140とを含む。第2取付板部138は、取付突出部80の上面に対して上方から複数のボルト142aによって接合されている。ボルト142aは、上下方向に延在している。
【0045】
図1及び図7において、第2固定部材136は、第2突出部140が挿入される第2挿入口144が形成された第2固定部本体146と、第2固定部本体146の車両前後方向の両側に設けられた一対の第2脚部148とを含む。第2挿入口144は、第2固定部本体146を車幅方向に貫通している。第2突出部140は、第2挿入口144に挿入された状態で第2固定部本体146に対して車両上方からボルト142bによって接合されている。第2脚部148は、第2フレーム部30の上面に対して車両上方からボルト142cによって接合されている。ボルト142b、142cは、上下方向に延在している。
【0046】
第2マウント部104において、第2連結部材134及び第2固定部材136の形状及び大きさは、適宜設定可能である。また、第2マウント部104において、ボルト142a~142cの形状、大きさ、位置及び数は、適宜設定可能である。
【0047】
図5に示すように、燃料電池駆動システム22の重心Gは、車両上方から見て、第1マウント部102の燃料電池駆動システム22を支持する第1支点P1と第2マウント部104の燃料電池駆動システム22を支持する第2支点P2とを結ぶ線分La上に位置する。これにより、燃料電池駆動システム22の荷重が第1マウント部102及び第2マウント部104に対して鉛直下方に作用する。すなわち、第1マウント部102及び第2マウント部104にモーメントが作用することを抑えることができる。
【0048】
図2図9に示すように、第3マウント部106は、駆動ユニット40を第3フレーム部32のメインフレーム34に固定する。第3マウント部106は、燃料電池駆動システム22に作用するモーメントを受ける。換言すれば、第3マウント部106は、燃料電池駆動システム22の車体フレーム24に対する回転を規制する回り止めとして機能する。第3マウント部106は、燃料電池駆動システム22の重力方向の荷重をほとんど受けない。
【0049】
図2図8及び図9において、第3マウント部106は、トルクロッド150とブラケット152とを有する。トルクロッド150は、車両前後方向に延在したアーム部154と、アーム部154の一端部(車両後方の端部)に設けられた第1取付端部156と、アーム部154の他端部(車両前方の端部)に設けられた第2取付端部158とを有する。
【0050】
第1取付端部156は、上下方向に貫通した第1内孔160aが形成された第1環状部160と、第1内孔160aに配設された環状の第1弾性リング162とを含む。第1取付端部156は、メインフレーム34の上面の車幅方向の中央部分に対して上下方向(例えば、車両下方)からボルト164によって接合されている。ボルト164は、第1弾性リング162の内孔に挿通されている。
【0051】
第2取付端部158は、車幅方向に貫通した第2内孔166aが形成された第2環状部166と、第2内孔166aに配設された第2弾性リング168とを含む。第1弾性リング162及び第2弾性リング168は、駆動ユニット40から車体フレーム24への振動の伝達を抑える。
【0052】
ブラケット152は、減速機ケース92の延出部94の車両右側の面94rの下端部に車両右側からボルト170によって接合されている。ブラケット152は、U字状に形成された支持部172を含む。支持部172のうち互いに対向する一対の壁部174の間には、第2取付端部158が挿入されている。そして、第2取付端部158は、一対の壁部174に対して車幅方向(例えば、車両左側)からボルト176によって接合されている。ボルト176は、第2弾性リング168の内孔に挿通している。
【0053】
第3マウント部106において、ボルト170、176の形状、大きさ、位置及び数は、適宜設定可能である。
【0054】
図2図4及び図6に示すように、第1接続部材42は、スタックケース54の車両右側の端部とモータケース88の車両右側の端部とを互いに接続する。第1接続部材42は、スタックケース54に接続される第1上側接続部178と、モータケース88に接続される第1下側接続部180とを有する。
【0055】
第1上側接続部178は、例えば、車両前後方向に延在している。第1上側接続部178は、スタックケース54の下面54dにおける矢印R方向及び矢印Rr方向の角部に対して下方から複数のボルト182aによって接合されている。つまり、第1上側接続部178は、スタックケース54の下面54dの車両右側の端部に位置するとともにスタックケース54の下面54dにおける車両後方の端部に位置している。ボルト182aは、上下方向に延在している。
【0056】
第1下側接続部180は、第1上側接続部178の車両前方(矢印Fr方向)の端部から車両下方に延出している。図2及び図4において、第1下側接続部180は、モータケース88の後面88bにおける車両右側の端部に対して車両後方からボルト182bによって接合されている。また、第1下側接続部180は、第1マウント部102の接続フレーム108の側面(車両後方の面)に対して車両後方からボルト182cによって接合されている。つまり、第1接続部材42は、モータケース88と第1マウント部102の両方に対して固定されている。
【0057】
図1図3図4及び図7に示すように、第2接続部材44は、補機ケース72の車両左側の端部と減速機ケース92の車両左側の端部とを互いに接続する。第2接続部材44は、補機ケース72に接続される第2上側接続部184と、減速機ケース92に接続される第2下側接続部186とを有する。
【0058】
第2上側接続部184は、例えば、車両前後方向に延在している。第2上側接続部184は、補機ケース72の下面72dにおける矢印Fr方向及び矢印L方向の角部に対して下方からボルト188aによって接合されている。つまり、第2上側接続部184は、補機ケース72の下面72dの車両左側の端部に位置するとともに補機ケース72の下面72dの車両前方の端部に位置している。ボルト188aは、上下方向に延在している。
【0059】
第2下側接続部186は、第2上側接続部184から車両下方に延出している。第2下側接続部186は、減速機ケース92の上方に一体で形成された取付フランジ100の上面に対して車両下方からボルト188bによって接合されている。ボルト188bは、上下方向に延在している。
【0060】
図1図3及び図7に示すように、第3接続部材46は、燃料電池システム38の車幅方向の中間部と駆動ユニット40の車幅方向の中間部とを互いに接続する。第3接続部材46は、スタックケース54に接続される第3上側接続部190と、モータケース88に接続された第3下側接続部192と、第3上側接続部190と第3下側接続部192とを互いに繋ぐ中間部194とを有する。
【0061】
第3上側接続部190は、上下方向に延在している。第3上側接続部190は、スタックケース54の前面54fに対して車両前方から複数のボルト196aによって接合されている。第3下側接続部192は、上下方向に延在している。第3下側接続部192は、モータケース88の前面88fに対して車両前方から複数のボルト196bによって接合されている。中間部194は、第3上側接続部190の下端部から車両後方(矢印Rr方向)に延出している。中間部194の車両後方の端部は、第3下側接続部192の上端部に連結されている。
【0062】
第1接続部材42、第2接続部材44及び第3接続部材46の形状及び大きさは、適宜設定可能である。また、第1~第3接続部材42、44、46において、ボルト182a、182b、182c、188a、188b、196a、196bの形状、大きさ、位置及び数は、適宜設定可能である。
【0063】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0064】
本実施形態によれば、スタックケース54とモータ82とが第1接続部材42で接続され、補機ケース72と減速機84とが第2接続部材44で接続されている。そして、燃料電池システム38の第1端部38aが第1マウント部102により第1フレーム部28に接続され、燃料電池システム38の第2端部38bが第2マウント部104により第2フレーム部30に接続されている。そのため、燃料電池駆動システム22の荷重を第1フレーム部28及び第2フレーム部30で支持することができる。つまり、燃料電池駆動システム22の全体の荷重は、車体フレーム24の一部に集中することなく第1フレーム部28と第2フレーム部30とに分散される。これにより、車体フレーム24の軽量化を図ることができる。
【0065】
また、スタックケース54と第1フレーム部28とを第1マウント部102で接続しているため、スタックケース54が燃料電池スタック52を支持するスタック支持部材としても機能する。そのため、スタック支持部材を別途設ける必要がない。さらに、補機ケース72と第2フレーム部30とを第2マウント部104で接続しているため、補機ケース72が燃料電池用補機70を支持する補機支持部材としても機能する。そのため、補機支持部材を別途設ける必要がない。従って、燃料電池駆動システム22の小型化を図ることができる。
【0066】
マウント部材26は、駆動ユニット40を車体フレーム24の第3フレーム部32に接続して燃料電池駆動システム22に作用したモーメントを受けるための第3マウント部106を有する。
【0067】
このような構成によれば、燃料電池駆動システム22に作用したモーメントを第3マウント部106で効率的に受けることができるため、当該モーメントが第1マウント部102及び第2マウント部104に作用することを抑えることができる。
【0068】
第1マウント部102は、モータ82の端部に接続されている。
【0069】
このような構成によれば、モータ82の荷重を第1マウント部102で効率的に支持することができる。
【0070】
第1接続部材42は、燃料電池システム38の第1端部38a側に位置している。第2接続部材44は、燃料電池システム38の第2端部38b側に位置している。燃料電池駆動システム22は、燃料電池システム38の車幅方向の中間部と駆動ユニット40の車幅方向の中間部とを互いに接続する第3接続部材46を有する。
【0071】
このような構成によれば、第1接続部材42、第2接続部材44及び第3接続部材46によって燃料電池システム38と駆動ユニット40とを確実に一体化することができる。
【0072】
燃料電池駆動システム22の重心Gは、車両上方から見て、第1マウント部102の燃料電池駆動システム22を支持する第1支点P1と第2マウント部104の燃料電池駆動システム22を支持する第2支点P2とを結ぶ線分La上に位置する。
【0073】
このような構成によれば、第1マウント部102及び第2マウント部104にモーメントが作用することを抑えることができる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る燃料電池駆動システム22のマウント構造10B(以下、単に「マウント構造10B」ということがある)について説明する。なお、第2実施形態に係るマウント構造10Bにおいて、上述したマウント構造10Aと同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0075】
図10に示すように、マウント構造10Bのマウント部材26aは、上述した第1マウント部102に代えて第1マウント部102aを有する。第1マウント部102aは、第1連結部材110及び第1固定部材112を有する。つまり、第1マウント部102aは、上述した接続フレーム108を有しない。第1連結部材110は、スタックケース54の端面54rから車両右側(矢印R方向)に突出した取付凸部122に対して車両上方(矢印U方向)から複数のボルト120cによって接合されている。なお、第1接続部材42の第1下側接続部180は、ボルト182bによりモータケース88にのみ接合されている。
【0076】
本実施形態に係るマウント構造10Bにおいて、上述したマウント構造10Aと同様の構成については同様の作用効果を奏する。
【0077】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0078】
上記実施形態は、燃料電池スタック(52)を収納するスタックケース(54)と当該スタックケースに連結されて燃料電池用補機(70)を収納する補機ケース(72)とを含む燃料電池システム(38)と、車両(12)を駆動させるための駆動ユニット(40)と、を有する燃料電池駆動システム(22)と、前記スタックケースと前記補機ケースとが車幅方向に並ぶように前記燃料電池駆動システムを車体フレーム(24)に固定するためのマウント部材(26、26a)と、を備えた燃料電池駆動システムのマウント構造(10A、10B)であって、前記駆動ユニットは、前記スタックケースの下方に位置するモータ(82)と、前記補機ケースの下方に位置するとともに前記モータに対して前記車幅方向に連結された減速機(84)と、を有し、前記マウント部材は、前記燃料電池システムの前記車幅方向の一端部に位置して前記スタックケースの端部を形成する第1端部(38a)を前記車体フレームの第1フレーム部(28)に接続する第1マウント部(102)と、前記燃料電池システムの前記車幅方向の他端部に位置して前記補機ケースの端部を形成する第2端部(38b)を前記車体フレームの第2フレーム部(30)に接続する第2マウント部(104)と、を有し、前記燃料電池駆動システムは、前記スタックケースと前記モータとを互いに接続する第1接続部材(42)と、前記補機ケースと前記減速機とを互いに接続する第2接続部材(44)と、を有する、燃料電池駆動システムのマウント構造を開示している。
【0079】
上記の燃料電池駆動システムのマウント構造において、前記マウント部材は、前記駆動ユニットを前記車体フレームの第3フレーム部(32)に接続して前記燃料電池駆動システムに作用したモーメントを受けるための第3マウント部(106)を有してもよい。
【0080】
上記の燃料電池駆動システムのマウント構造において、前記第1マウント部は、前記モータの端部に接続されてもよい。
【0081】
上記の燃料電池駆動システムのマウント構造において、前記第1接続部材は、前記燃料電池システムの前記第1端部側に位置し、前記第2接続部材は、前記燃料電池システムの前記第2端部側に位置し、前記燃料電池駆動システムは、前記燃料電池システムの前記車幅方向の中間部と前記駆動ユニットの前記車幅方向の中間部とを互いに接続する第3接続部材(46)を有してもよい。
【0082】
上記の燃料電池駆動システムのマウント構造において、前記燃料電池駆動システムの重心(G)は、車両上方から見て、前記第1マウント部の前記燃料電池駆動システムを支持する第1支点(P1)と前記第2マウント部の前記燃料電池駆動システムを支持する第2支点(P2)とを結ぶ線分(La)上に位置してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10A、10B…マウント構造 12…車両
22…燃料電池駆動システム 24…車体フレーム
26、26a…マウント部材 28…第1フレーム部
30…第2フレーム部 32…第3フレーム部
38…燃料電池システム 38a…第1端部
38b…第2端部 40…駆動ユニット
46…第3接続部材 52…燃料電池スタック
54…スタックケース 70…燃料電池用補機
72…補機ケース 82…モータ
84…減速機 102…第1マウント部
104…第2マウント部 106…第3マウント部
G…重心 La…線分
P1…第1支点 P2…第2支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10