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特許7402382液晶表示素子用シール剤及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20231213BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20231213BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20231213BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 B
C09K3/10 L
C09K3/10 E
C08G59/24
C08G59/17
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023527764
(86)(22)【出願日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2023009893
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022044027
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田村 友樹
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/029893(WO,A1)
【文献】特開2011-221168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、重合開始剤及び熱硬化剤の少なくともいずれかとを含有する液晶表示素子用シール剤であって、
前記硬化性樹脂は、ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物、該エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物、及び、該エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【請求項2】
前記ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物は、下記式(1-1)、(1-2)、又は、(1-3)で表される化合物である請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。
【化1】
式(1-1)~(1-3)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フェニル基、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジニル基、ビフェニル基、又は、シクロヘキシル基であり、R、Rは、グリシジルオキシ基である。
【請求項3】
前記ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物は、上記式(1-2)で表される化合物である請求項2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
前記ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物は、上記式(1-3)で表される化合物である請求項2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項5】
前記硬化性樹脂全体100重量部中における前記ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物、該エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物、及び、該エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物の含有量が10重量部以上90重量部以下である請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項6】
前記硬化性樹脂は、更に、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、及び、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項7】
前記硬化性樹脂は、更に、2官能エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した重量平均分子量が850以上の化合物、及び、2官能エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した重量平均分子量が850以上の化合物の少なくともいずれかを含む請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項8】
更に、無機充填剤を含有し、
液晶表示素子用シール剤100重量部中における前記無機充填剤の含有量が5重量部以上50重量部以下である請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項9】
請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤の硬化物を含む液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向膜に対する接着性及び透湿防止性に優れ、かつ、信頼性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、シール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方に、ディスペンスにより枠状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシール枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせ、シール剤の硬化を行い、液晶表示素子を作製する。現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。小型化の手法として、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、「狭額縁設計」ともいう)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
狭額縁設計に伴い、液晶表示素子において、画素領域からシール剤までの距離が近くなっており、シール剤によって液晶が汚染されることによる表示むらが生じやすくなっていることに加え、シール剤が配向膜上に配置されることが多くなっているため、シール剤には、低液晶汚染性及び配向膜に対する接着性に優れることが求められている。
また、タブレット端末や携帯端末の普及に伴い、液晶表示素子には高温高湿環境下での駆動等における耐湿信頼性がますます要求されており、シール剤には外部からの水の浸入を防止する性能が一層求められている。そのため、シール剤の透湿防止性を向上させる必要があるが、狭額縁設計に伴って塗布されるシール剤の線幅が細くなっており、細線化した場合でも透湿防止性に優れるシール剤を得ることは困難であった。
本発明は、配向膜に対する接着性及び透湿防止性に優れ、かつ、信頼性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示1は、硬化性樹脂と、重合開始剤及び熱硬化剤の少なくともいずれかとを含有する液晶表示素子用シール剤であって、上記硬化性樹脂は、ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物、該エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物、及び、該エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む液晶表示素子用シール剤である。
本開示2は、上記ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物は、下記式(1-1)、(1-2)、又は、(1-3)で表される化合物である本開示1の液晶表示素子用シール剤である。
本開示3は、上記ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物は、下記式(1-2)で表される化合物である本開示2の液晶表示素子用シール剤である。
本開示4は、上記ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物は、下記式(1-3)で表される化合物である本開示2の液晶表示素子用シール剤である。
本開示5は、上記硬化性樹脂全体100重量部中における上記ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物、該エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物、及び、該エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物の含有量が10重量部以上90重量部以下である本開示1、2、3又は4の液晶表示素子用シール剤である。
本開示6は、上記硬化性樹脂は、更に、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、及び、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む本開示1、2、3、4又は5の液晶表示素子用シール剤である。
本開示7は、上記硬化性樹脂は、更に、2官能エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した重量平均分子量が850以上の化合物、及び、2官能エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した重量平均分子量が850以上の化合物の少なくともいずれかを含む本開示1、2、3、4、5又は6の液晶表示素子用シール剤である。
本開示8は、更に、無機充填剤を含有し、液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記無機充填剤の含有量が5重量部以上50重量部以下である本開示1、2、3、4、5、6又は7の液晶表示素子用シール剤である。
本開示9は、本開示1、2、3、4、5、6、7又は8の液晶表示素子用シール剤の硬化物を含む液晶表示素子である。
【0007】
【化1】
【0008】
式(1-1)~(1-3)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、フェニル基、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジニル基、ビフェニル基、又は、シクロヘキシル基であり、R、Rは、グリシジルオキシ基である。
【0009】
以下に本発明を詳述する。
従来、シール剤の配向膜に対する接着性を向上させるためにシール剤の極性を調整することが行われていたが、近年の液晶表示素子に用いられる配向膜では、高抵抗化に対応するため水素結合可能部位の少ない材料が用いられており、極性に基づかない分子間相互作用によってシール剤の配向膜に対する接着性を向上させる必要があった。
本発明者らは、硬化性樹脂として、ハンセン溶解度パラメータの分散項及びオクタノール/水分配係数がそれぞれ特定の範囲であるエポキシ化合物や、該エポキシ化合物の一部又は全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物を用いることを検討した。その結果、配向膜に対する接着性及び透湿防止性に優れ、かつ、信頼性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、ハンセン溶解度パラメータの分散項(以下、「dD」ともいう)が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数(以下、「LogKow」ともいう)が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物(以下、「本発明にかかるエポキシ化合物」ともいう)、該エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物(以下、「本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物」ともいう)、及び、該エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物(以下、「本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレート」ともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、配向膜に対する接着性、透湿防止性、及び、低液晶汚染性に優れるものとなる。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。また、上記「部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物」は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させて得られる、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味する。更に、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを意味する。
【0011】
本発明にかかるエポキシ化合物は、上記dDの下限が19.0MPa0.5、上限が21.9MPa0.5である。上記dDが19.0MPa0.5以上であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、配向膜に対する接着性に優れるものとなる。上記dDが21.9MPa0.5以下であることにより、本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートがその他の硬化性樹脂との相溶性に優れるものとなるため、本発明の液晶表示素子用シール剤のディスペンス時の線幅安定性が向上することで接着性や作製された液晶表示素子の信頼性に優れるものとなる。本発明にかかるエポキシ化合物の上記dDの好ましい下限は19.5MPa0.5、より好ましい下限は20.1MPa0.5であり、好ましい上限は21.0MPa0.5、より好ましい上限は20.4MPa0.5である。
なお、上記「ハンセン溶解度パラメータの分散項(dD)」は、構造式からHSPソフトを用いて計算することにより導出することができる。上記HSPソフトとしては、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)を用いることができる。
【0012】
本発明にかかるエポキシ化合物は、上記LogKowの下限が3.0、上限が9.0である。上記LogKowが3.0以上であることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、配向膜に対する接着性及び透湿防止性に優れるものとなる。上記LogKowが9.0以下であることにより、本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートがその他の硬化性樹脂との相溶性に優れるものとなるため、本発明の液晶表示素子用シール剤がディスペンス時の線幅安定性に優れるものとなる。本発明にかかるエポキシ化合物の上記LogKowの好ましい下限は3.2であり、好ましい上限は5.9である。
なお、上記「オクタノール/水分配係数(LogKow)」は、構造式からHSPソフトを用いて計算することにより導出することができる。上記HSPソフトとしては、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)を用いることができる。
【0013】
本発明にかかるエポキシ化合物は、被着体との密着性の観点から、上記式(1-1)、(1-2)、又は、(1-3)で表される化合物であることが好ましい。また、柔軟性の観点からは、本発明にかかるエポキシ化合物は、上記式(1-2)で表される化合物であることがより好ましく、耐熱性の観点からは、本発明にかかるエポキシ化合物は、上記式(1-3)で表される化合物であることがより好ましい。
【0014】
上記式(1-1)~(1-3)中のR~Rの少なくともいずれかが、フェニル基、ビフェニル基、又は、シクロヘキシル基である場合、該フェニル基、該ビフェニル基、及び、該シクロヘキシル基は、水素原子が置換されていてもよい。該フェニル基、該ビフェニル基、及び、該シクロヘキシル基が置換されている場合の置換基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基等が挙げられる。
【0015】
本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートとしては、具体的には、下記式(2)~(23)で表される化合物が好ましい。なかでも、下記式(3)~(5)で表される化合物がより好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
【化7】
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
【化12】
【0027】
【化13】
【0028】
【化14】
【0029】
【化15】
【0030】
【化16】
【0031】
【化17】
【0032】
【化18】
【0033】
【化19】
【0034】
【化20】
【0035】
【化21】
【0036】
【化22】
【0037】
【化23】
【0038】
上記硬化性樹脂は、更に、本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレート以外のその他の硬化性樹脂を含んでいてもよい。
上記その他の硬化性樹脂を含む場合、上記硬化性樹脂100重量部中における本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートの含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は90重量部である。本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートの含有量が10重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が透湿防止性により優れるものとなる。本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートの含有量が90重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が信頼性により優れるものとなる。本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートの含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は50重量部である。
なお、上記「本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートの含有量」は、上記硬化性樹脂が、本発明にかかるエポキシ化合物、本発明にかかる部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物、及び、本発明にかかるエポキシ(メタ)アクリレートのうち、1種の化合物を単独で含有する場合はその化合物の含有量を意味し、2種以上の化合物を組み合わせて含有する場合はその合計の含有量を意味する。
【0039】
上記硬化性樹脂は、上記その他の硬化性樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、及び、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種(以下、「その他の硬化性樹脂A」ともいう)を含むことが好ましい。上記その他の硬化性樹脂Aを含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性により優れるものとなる。
【0040】
上記その他の硬化性樹脂Aは、柔軟骨格を有することが好ましい。
上記柔軟骨格としては、例えば、ラクトンの開環構造、ポリアルキレンオキサイド構造、共役ジエンに由来するゴム構造、ポリシロキサン構造等が挙げられる。
上記ラクトンとしては、例えば、γ-ウンデカラクトン、ε-カプロラクトン、γ-デカラクトン、σ-ドデカラクトン、γ-ノナノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、γ-バレロラクトン、σ-バレロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、σ-ヘキサノラクトン、7-ブチル-2-オキセパノン等が挙げられる。
【0041】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記その他の硬化性樹脂Aの含有量の好ましい下限は30重量部、好ましい上限は70重量部である。上記その他の硬化性樹脂Aの含有量が30重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が硬化性により優れるものとなる。上記その他の硬化性樹脂Aの含有量が70重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなる。
【0042】
また、上記硬化性樹脂は、上記その他の硬化性樹脂として、2官能エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した重量平均分子量が850以上の化合物、及び、2官能エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した重量平均分子量が850以上の化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「その他の硬化性樹脂B」ともいう)を含むことが好ましい。上記その他の硬化性樹脂Bを含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、低液晶汚染性により優れるものとなる。
上記その他の硬化性樹脂Bの重量平均分子量の好ましい下限は1000、より好ましい下限は1300である。
また、上記その他の硬化性樹脂Bの重量平均分子量の好ましい上限は特にないが実質的な上限は6000である。
なお、本明細書において上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定温度25℃にて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
また、上記部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、上記部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールF型エポキシ化合物、上記ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、又は、上記ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレートであっても、重量平均分子量が850以上である化合物は上記その他の硬化性樹脂Bとして扱う。
【0043】
上記その他の硬化性樹脂Bとしては、具体的には例えば、EBECRYL 3701、EBECRYL 3703、EBECRYL 3708(いずれもダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。他にも、例えば、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1004、jER1007、jER1009(いずれも三菱ケミカル社製)、デナコールEX-931、デナコールEX-991L(いずれもナガセケムテックス社製)、EPICLON 1050、EPICLON 1055、EPICLON 3050、EPICLON 4050、EPICLON 7050、EPICLON AM-030-P、EPICLON AM-040-P、EPICLON HM-091(いずれもDIC社製)等の一部又は全部を(メタ)アクリル変性した化合物等が挙げられる。
【0044】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記その他の硬化性樹脂Bの含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は20重量部である。上記その他の硬化性樹脂Bの含有量が5重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなる。上記その他の硬化性樹脂Bの含有量が20重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が透湿防止性により優れるものとなる。上記その他の硬化性樹脂Bの含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は15重量部である。
【0045】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、重合開始剤及び熱硬化剤の少なくともいずれかを含有する。
【0046】
上記重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0047】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-((4-メチルフェニル)メチル)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0048】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や有機過酸化物等で構成されるものが挙げられる。なかでも、液晶汚染を抑制する観点から、アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましく、高分子アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)がより好ましい。
上記熱ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0049】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶への悪影響を防止しつつ、硬化性樹脂へ容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定温度25℃にて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0050】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ開始剤としては、例えば、V-65、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0051】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0052】
上記重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0053】
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
上記熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH、MDH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J等が挙げられる。
【0055】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性や保存安定性等を悪化させることなく、熱硬化性により優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、無機充填剤を含有することが好ましい。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましい。
上記無機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0057】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記無機充填剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記無機充填剤の含有量が5重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が透湿防止性により優れるものとなる。上記無機充填剤の含有量が50重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が塗布性により優れるものとなる。上記無機充填剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0058】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、有機充填剤を含有してもよい。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
上記有機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0059】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0060】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらは、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
上記シランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0061】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0062】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0063】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0064】
上記チタンブラックは、波長300nm以上800nm以下の光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370nm以上450nm以下の光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。従って、上記光ラジカル重合開始剤として、上記チタンブラックの透過率の高くなる波長(370nm以上450nm以下)の光によって反応を開始可能なものを用いることで、本発明の液晶表示素子用シール剤の光硬化性をより増大させることができる。また一方で、本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
上記チタンブラックは、1μmあたりの光学濃度(OD値)が、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。上記チタンブラックの遮光性は高ければ高いほどよく、上記チタンブラックのOD値に好ましい上限は特にないが、通常は5以下となる。
【0065】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを配合した本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0066】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、三菱マテリアル社製のチタンブラック、赤穂化成社製のチタンブラック等が挙げられる。
上記三菱マテリアル社製のチタンブラックとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N、14M-C等が挙げられる。
上記赤穂化成社製のチタンブラックとしては、例えば、ティラックD等が挙げられる。
【0067】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0068】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0069】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の接着性、硬化後の強度、及び、描画性を大きく低下させることなく、より優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0070】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0071】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、重合開始剤及び熱硬化剤の少なくともいずれかと、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0072】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。
【0073】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0074】
本発明の液晶表示素子用シール剤の硬化物を含む液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0075】
また、本発明の液晶表示素子としては、狭額縁設計の液晶表示素子が好ましい。具体的には、液晶表示部の周囲の枠部分の幅が2mm以下であることが好ましい。
更に、本発明の液晶表示素子を製造する際の本発明の液晶表示素子用シール剤の塗布幅は1mm以下であることが好ましい。
【0076】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、液晶滴下工法による液晶表示素子の製造に好適に用いることができる。液晶滴下工法によって本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
まず、基板に本発明の液晶表示素子用シール剤をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布し、枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、本発明の液晶表示素子用シール剤等が未硬化の状態で液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、すぐに別の基板を重ね合わせる工程を行う。その後、シールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0077】
本発明によれば、配向膜に対する接着性及び透湿防止性に優れ、かつ、信頼性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0079】
(式(2)で表される化合物の作製)
温度計、冷却管、ディーン・スターク・トラップ、滴下ロート、及び、撹拌機を備えた200mL容の三口丸底フラスコを用意した。該三口丸底フラスコに、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン(東京化成工業社製)38g、エピクロロヒドリン(東京化成工業社製)174g、及び、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業社製)3.8gを入れた。次いで、得られた混合物を、50トール(torr)の減圧下で撹拌しながら約50℃に加熱し、48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)28.2gを3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら撹拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり撹拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、トルエン90g及びメチルイソブチルケトン30gを加えて150mLの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の上記式(2)で表される化合物38gを得た。
得られた式(2)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0080】
(式(3)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル26gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(3)で表される化合物26gを得た。
得られた式(3)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0081】
(式(4)で表される化合物の作製)
式(3)で表される化合物26gに対して、トリフェニルホスフィン1.3g、ヒドロキノン0.1g、及び、アクリル酸18gを加えて、100℃で8時間加熱撹拌した後、100mLの水で3回洗浄し、黄色透明粘稠物の式(4)で表される化合物15gを得た。
得られた式(4)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0082】
(式(5)で表される化合物の作製)
式(3)で表される化合物26gに対して、トリフェニルホスフィン1.3g、ヒドロキノン0.1g、及び、アクリル酸7.2gを加えて、100℃で8時間加熱撹拌した後、100mLの水で3回洗浄し、黄色透明粘稠物の式(5)で表される化合物15gを得た。
得られた式(5)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0083】
(式(6)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-ジヒドロキシ-m-ターフェニル26gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(6)で表される化合物26gを得た。
得られた式(6)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0084】
(式(7)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-ジヒドロキシ-3-メチル-p-ターフェニル28gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(7)で表される化合物28gを得た。
得られた式(7)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0085】
(式(8)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-ジヒドロキシ-3,5-ジメチル-p-ターフェニル29gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(8)で表される化合物29gを得た。
得られた式(8)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0086】
(式(9)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-(2-フリル-メチレン)ビス(2,6-ジメチルフェノール)32gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(9)で表される化合物32gを得た。
得られた式(9)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0087】
(式(10)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-(フェニルメチレン)ビスフェノール28gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(10)で表される化合物28gを得た。
得られた式(10)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0088】
(式(11)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-(4-メチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール28gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(11)で表される化合物28gを得た。
得られた式(11)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0089】
(式(12)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて3,3’-メチレンビス(1,1’-ビフェニル-4-オール)35gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(12)で表される化合物35gを得た。
得られた式(12)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0090】
(式(13)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール29gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(13)で表される化合物29gを得た。
得られた式(13)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0091】
(式(14)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-ジヒドロキシ-3-イソプロピル-p-ターフェニル30gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(14)で表される化合物30gを得た。
得られた式(14)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0092】
(式(15)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビス(2-メチルフェノール)28gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(15)で表される化合物32gを得た。
得られた式(15)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0093】
(式(16)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-ジヒドロキシ3-ter-ブチル-p-ターフェニル28gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(16)で表される化合物32gを得た。
得られた式(16)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0094】
(式(17)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-(3,4-ジメトキシフェニルメチレン)ビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール)53gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(17)で表される化合物53gを得た。
得られた式(17)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0095】
(式(18)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-(4-メチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール28gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(18)で表される化合物28gを得た。
得られた式(18)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0096】
(式(19)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-ジヒドロキシテトラフェニルメタン35gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(19)で表される化合物35gを得た。
得られた式(19)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0097】
(式(20)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて5,5’-(1-フェニルエチリデン)ビス((1,1’-ビフェニル)-2-オール)44gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(20)で表される化合物44gを得た。
得られた式(20)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0098】
(式(21)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて4,4’-(4-メトキシ-フェニルメチレンビス(2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール))50gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(21)で表される化合物50gを得た。
得られた式(21)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0099】
(式(22)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて5,5’-(4-(1,1’-ビフェニル)メチレン)ビス((1,1’-ビフェニル)-2-オール)50gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(22)で表される化合物50gを得た。
得られた式(22)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0100】
(式(23)で表される化合物の作製)
2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン38gに代えて5,5’-(1,1-シクロヘキシリデン)ビス-(1,1’-(ビフェニル)-2-オール)42gを用いたこと以外は、上記「(式(2)で表される化合物の作製)」と同様にして上記式(23)で表される化合物42gを得た。
得られた式(23)で表される化合物の構造は、H-NMR、13C-NMR、及び、FT-IRにより確認した。
【0101】
(実施例1~28、比較例1~3)
表1~4に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌装置(シンキー社製、「あわとり練太郎」)にて撹拌した後、セラミック3本ロールにて均一に混合して実施例1~28、比較例1~3の液晶表示素子用シール剤を得た。比較例3に用いた9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレンは特開2012-102228号公報の合成例1に準じて合成した。
【0102】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1~4に示した。
【0103】
(配向膜に対する接着性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部にスペーサー微粒子1重量部を分散させた。スペーサー微粒子としては、ミクロパールSI-H050(積水化学工業社製)を用いた。次いで、スペーサー粒子を分散させた液晶表示素子用シール剤を、2枚のTN用配向膜SE7492(日産化学社製)付きガラス基板(長さ60mm、幅30mm)のうちの一方に微小滴下した。これにもう一方のTN用配向膜SE7492付きガラス基板を十字状に貼り合わせ、メタルハライドランプにて3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で60分加熱することによって接着性試験片を得た。作製した接着試験片における基板の端部を半径5mmの金属円柱を使って5mm/minの速度で押し込んだときに、パネル剥がれが起こる際の強度を測定した。
得られた測定値(kgf)をシール直径(cm)で除した値が、3.0kgf/cmを超えた場合を「◎」、2.5kgf/cmを超え3.0kgf/cm以下であった場合を「○」、2.0kgf/cmを超え2.5kgf/cm以下であった場合を「△」、2.0kgf/cm以下であった場合を「×」として接着性を評価した。
また、TN用配向膜SE7492付きガラス基板に代えてVA用配向膜JALS2021(JSR社製)付きガラス基板を用いて同様にして接着性を評価した。
【0104】
(透湿防止性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤を、平滑な離型フィルム上にコーターを用いて厚さ200~300μmとなるように塗布した。次いで、メタルハライドランプを用いて3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させ、透湿度測定用フィルムを得た。JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じた方法で透湿度試験用カップを作製し、得られた透湿度測定用フィルムを取り付け、80℃、90%RHの恒温恒湿オーブンに投入して透湿度を測定した。
得られた透湿度の値が、50g/m・24hr未満であった場合を「◎」、50g/m・24hr以上75g/m・24hr未満であった場合を「○」、75g/m・24hr以上100g/m・24hr未満であった場合を「△」、100g/m・24hr以上であった場合を「×」として透湿防止性を評価した。
【0105】
(液晶表示素子の信頼性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部にスペーサー微粒子1重量部を分散させた。スペーサー微粒子としては、ミクロパールSI-H050(積水化学工業社製)を用いた。スペーサー粒子を分散させたシール剤をディスペンス用のシリンジに充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサーにて2枚のラビング処理したTN用配向膜SE7492及びITO薄膜付きの透明基板の一方の配向膜上に長方形の枠を描く様に塗布した。シリンジとしてはPSY-10E(武蔵エンジニアリング社製)を用い、ディスペンサーとしてはSHOTMASTER300(武蔵エンジニアリング社製)を用いた。続いて液晶の微小滴をシール剤の枠内全面に滴下塗布し、すぐにもう一方の基板を貼り合わせた。液晶としては、JC-5004LA(チッソ社製)を用いた。続いて、メタルハライドランプを用いて3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で1時間加熱して液晶表示素子用シール剤を硬化させることにより、液晶表示素子を得た。
得られた液晶表示素子について、25℃、50%RHの環境下で4Vの電圧を印加し、液晶表示素子の液晶配向乱れ(表示むら)を目視にて確認した。
電圧を印加してから500時間以上経過しても表示むらが確認されなかった場合を「◎」、250時間以上500時間未満の間に表示むらが確認された場合を「○」、24時間以上250時間未満の間に表示むらが確認された場合を「△」、24時間未満で表示むらが確認された場合を「×」として液晶表示素子の信頼性を評価した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、配向膜に対する接着性及び透湿防止性に優れ、かつ、信頼性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる液晶表示素子を提供することができる。
【要約】
本発明は、配向膜に対する接着性及び透湿防止性に優れ、かつ、信頼性に優れる液晶表示素子を得ることができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる液晶表示素子を提供することを目的とする。
本発明は、硬化性樹脂と、重合開始剤及び熱硬化剤の少なくともいずれかとを含有する液晶表示素子用シール剤であって、前記硬化性樹脂は、ハンセン溶解度パラメータの分散項が19.0MPa0.5以上21.9MPa0.5以下であり、かつ、オクタノール/水分配係数が3.0以上9.0以下であるエポキシ化合物、該エポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物、及び、該エポキシ化合物の全部のエポキシ基を(メタ)アクリル変性した化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む液晶表示素子用シール剤である。