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特許7402386船倉内の積荷の品質を推定するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】船倉内の積荷の品質を推定するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   B63B 79/15 20200101AFI20231213BHJP
   B63J 2/08 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B63B79/15
B63J2/08 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023549077
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2022034140
【審査請求日】2023-08-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232818
【氏名又は名称】日本郵船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513327702
【氏名又は名称】NYKバルク・プロジェクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 芳夫
(72)【発明者】
【氏名】北山 祐太
(72)【発明者】
【氏名】濱田 徳一郎
(72)【発明者】
【氏名】増山 克己
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-2922(JP,A)
【文献】特開2020-129160(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158936(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0103885(US,A1)
【文献】特開2010-112605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00-85/00
B63C 1/00-15/00
B63G 1/00-13/02
B63H 1/00-25/52
B63J 1/00-99/00
B65G 1/00-69/34
G06Q10/08,50/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航行スケジュールに従い航行する船舶が有する船倉の将来の位置及び時期の組み合わせに応じた外部の環境パラメータの予測値である船倉外環境パラメータ予測値を取得する取得手段と、
前記船倉外環境パラメータ予測値に基づき、前記船倉の内部の将来の環境パラメータの推定値である船倉内環境パラメータ推定値を生成する第1推定手段と、
前記船倉内環境パラメータ推定値に基づき、前記船倉に収容される積荷の将来の品質の推定値である積荷品質推定値を生成する第2推定手段と
備えるシステム。
【請求項2】
前記船倉外環境パラメータ予測値は、海水温度の予測値を含む
請求項1に記載のシステム
【請求項3】
前記取得手段は、複数の航行スケジュールの各々に応じた船倉外環境パラメータ予測値を取得し、
前記第1推定手段は、前記複数の航行スケジュールの各々に応じた前記船倉内環境パラメータ推定値を生成し、
前記第2推定手段は、前記複数の航行スケジュールの各々に応じた前記積荷品質推定値を生成する
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の航行スケジュールの各々に関し、当該航行スケジュールに応じた前記積荷品質推定値と、当該航行スケジュールに従い航行する前記船舶の当該航行に伴う費用とに基づき、金銭的評価値を生成する評価手段
を備える請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記取得手段は、複数の航行ルートの各々に応じた船倉外環境パラメータ予測値を取得し、
前記第1推定手段は、前記複数の航行ルートの各々に応じた前記船倉内環境パラメータ推定値を生成し、
前記第2推定手段は、前記複数の航行ルートの各々に応じた前記積荷品質推定値を生成する
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の航行ルートの各々に関し、当該航行ルートに応じた前記積荷品質推定値と、当該航行ルートに従い航行する前記船舶の当該航行に伴う費用とに基づき、金銭的評価値を生成する評価手段
を備える請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1推定手段は、前記船倉の換気スケジュールに基づき前記船倉内環境パラメータ推定値を生成する
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記船倉外環境パラメータ予測値と前記船倉内環境パラメータ推定値とに基づき、前記換気スケジュールを生成する生成手段
を備える請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1推定手段は、前記船倉内の環境パラメータの値を強制的に変更する装置の運転スケジュールに基づき前記船倉内環境パラメータ推定値を生成する
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記船倉外環境パラメータ予測値と前記船倉内環境パラメータ推定値とに基づき、前記運転スケジュールを生成する生成手段
を備える請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記積荷品質推定値と、前記運転スケジュールに従い運転する前記装置の当該運転に伴う費用とに基づき、金銭的評価値を生成する評価手段
を備える請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記取得手段は、前記船倉の外部の環境パラメータの実測値である船倉外環境パラメータ実測値を取得し、
前記第1推定手段は、前記船倉外環境パラメータ実測値に基づき前記船倉内環境パラメータ推定値を生成する
請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記取得手段は、前記船倉の内部の環境パラメータの実測値である船倉内環境パラメータ実測値を取得し、
前記第2推定手段は、前記船倉内環境パラメータ実測値に基づき前記積荷品質推定値を生成する
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記取得手段は、前記船倉の外部の環境パラメータの実測値である船倉外環境パラメータ実測値と、前記船倉の内部の環境パラメータの実測値である船倉内環境パラメータ実測値とを取得し、
前記船倉外環境パラメータ実測値と前記船倉内環境パラメータ実測値とに基づき、前記第1推定手段が前記船倉内環境パラメータ推定値を生成するために用いるパラメータを更新する更新手段を備える
請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記取得手段は、前記船倉の内部の環境パラメータの実測値である船倉内環境パラメータ実測値と、前記積荷の品質の実測値である積荷品質実測値とを取得し、
前記船倉内環境パラメータ実測値と前記積荷品質実測値とに基づき、前記第2推定手段が前記積荷品質推定値を生成するために用いるパラメータを更新する更新手段を備える
請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記船倉内環境パラメータ推定値が所定条件を満たす場合にユーザに対する通知を行う通知手段
を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記積荷品質推定値が所定条件を満たす場合にユーザに対する通知を行う通知手段
を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
コンピュータに、
航行スケジュールに従い航行する船舶が有する船倉の将来の位置及び時期の組み合わせに応じた外部の環境パラメータの予測値である船倉外環境パラメータ予測値を取得する取得する処理と、
前記船倉外環境パラメータ予測値に基づき、前記船倉の内部の将来の環境パラメータの推定値である船倉内環境パラメータ推定値を生成する処理と、
前記船倉内環境パラメータ推定値に基づき、前記船倉に収容される積荷の将来の品質の推定値である積荷品質推定値を生成する処理と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船倉内の積荷の品質を推定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶が積荷を輸送する間、船倉内の積荷の品質が変化する場合がある。例えば、積荷がスチールコイル等の錆びやすい製品である場合、船倉内で結露が生じ、水滴が製品に付着すると、製品に錆が生じてその品質が低下する。
【0003】
例えば、特許文献1には、船倉内における結露の発生を防止するための装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、船倉内の温度及び湿度を測定し、測定した温度と湿度に基づき除湿器やヒータの運転の開始及び停止を行い、船倉内の温度及び湿度を所定範囲内に維持することによって、船倉内における結露の発生を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-307336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置によれば、船倉内の環境を所定範囲内に維持することで、積荷の品質が維持される。しかしながら、特許文献1に記載の装置の運転には除湿や加熱が伴い、コストがかかる。
【0006】
除湿や加熱を行うことなく船倉内の湿度や温度を変化させる方法として、船倉の換気がある。例えば、船倉内の空気よりも外気の絶対湿度が低いときに船倉の換気窓を開き、十分に船倉内の換気を行った後に換気窓を閉めることで、船倉内の空気の絶対湿度を下げることができる。その結果、船倉内において結露が発生する確率が低下する。一般的に、換気窓の開閉に伴うコストは、除湿や加熱に伴うコストよりも安価である。
【0007】
将来の船倉外の湿度と温度、ならびに船倉内の湿度と温度が推定でき、それらの湿度と温度によって船倉内に結露が生じる時期が推定できれば、船員はリスクを把握したうえで計画的な換気を行い、結露の発生を防止できる。
【0008】
なお、積荷がスチールコイル等の錆びやすい製品である場合は、結露の発生により錆が生じ、その品質が低下する。一方、例えば積荷が木材であれば、船倉内の相対湿度が低ければ木材が乾燥し、一般的にその品質が上昇する。乾燥している木材の方が、水分を多く含む木材よりも、一般的に価値が高いためである。従って、どのような環境パラメータ(積荷の周囲の物理属性)がどのように積荷の品質に影響を与えるかは、積荷の種類によって異なる。
【0009】
従って、船舶の航行中に、変化する船倉内の環境パラメータの影響を受けて、船倉内の積荷の品質がどのように変化するか、を予め知ることができれば、積荷の品質の低下を防止したり、積荷の品質を向上させたりするためのアクションを行うことができる。
【0010】
上記の背景に鑑み、本発明は、船倉に収容される積荷の将来の品質を推定する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、航行スケジュールに従い航行する船舶が有する船倉の将来の位置及び時期の組み合わせに応じた外部の環境パラメータの予測値である船倉外環境パラメータ予測値を取得する取得手段と、前記船倉外環境パラメータ予測値に基づき、前記船倉の内部の将来の環境パラメータの推定値である船倉内環境パラメータ推定値を生成する第1推定手段と、前記船倉内環境パラメータ推定値に基づき、前記船倉に収容される積荷の将来の品質の推定値である積荷品質推定値を生成する第2推定手段と備えるシステムを提供する。
【0012】
また、本発明は、コンピュータに、航行スケジュールに従い航行する船舶が有する船倉の将来の位置及び時期の組み合わせに応じた外部の環境パラメータの予測値である船倉外環境パラメータ予測値を取得する取得する処理と、前記船倉外環境パラメータ予測値に基づき、前記船倉の内部の将来の環境パラメータの推定値である船倉内環境パラメータ推定値を生成する処理と、前記船倉内環境パラメータ推定値に基づき、前記船倉に収容される積荷の将来の品質の推定値である積荷品質推定値を生成する処理と
を実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、船倉に収容される積荷の将来の品質が推定される。その結果、例えば船員は、積荷の品質の低下の防止や品質の向上のためのアクションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかるシステムの全体構成を示した図。
図2】本発明の一実施形態にかかる管理装置のハードウェアとして用いられるコンピュータの構成を示した図。
図3】本発明の一実施形態にかかる管理装置の機能構成を示した図。
図4】本発明の一実施形態にかかる候補航行ルートデータを説明するための図。
図5】本発明の一実施形態にかかる航行スケジュールデータの構成を示した図。
図6】本発明の一実施形態にかかる気象予測値テーブルのデータ構成を示した図。
図7】本発明の一実施形態にかかる船倉内モニタリングスケジュールデータの構成を示した図。
図8A】本発明の一実施形態にかかる船倉内温度推定値テーブルのデータ構成を示した図。
図8B】本発明の一実施形態にかかる飽和水蒸気量推定値テーブルのデータ構成を示した図。
図9】本発明の一実施形態にかかる船倉内湿度推定値テーブルのデータ構成を示した図。
図10】本発明の一実施形態にかかる積荷品質推定値テーブルのデータ構成を示した図。
図11】本発明の一実施形態にかかる管理装置が換気期間を決定する方法を説明するためのグラフ。
図12】本発明の一実施形態にかかる換気スケジュールデータの構成を示した図。
図13】本発明の一実施形態にかかる管理装置が除湿期間を決定する方法を説明するためのグラフ。
図14】本発明の一実施形態にかかる除湿スケジュールデータの構成を示した図。
図15】本発明の一実施形態にかかる管理装置が行う処理のフローを示した図。
図16】本発明の一実施形態にかかる管理装置が行う処理のフローを示した図。
図17】本発明の一実施形態にかかる管理装置が行う処理のフローを示した図。
図18】本発明の一実施形態にかかる管理装置が行う処理のフローを示した図。
図19】本発明の一実施形態にかかる管理装置が行う処理のフローを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかるシステム1の全体構成を示した図である。システム1は、船舶により輸送される積荷の品質低下の防止又は品質向上の観点から望ましい、船舶の航行ルート、航行スケジュール、船倉の換気スケジュール、及び、船倉内の環境パラメータの値を強制的に変更する装置の運転スケジュールを提案するシステムである。
【0016】
システム1が用いられる船舶により輸送される積荷の種類は限定されない。ただし、以下の説明においては例として、船舶により輸送される積荷(以下、「積荷L」という)の種類はスチールコイルであるものとする。なお、スチールコイルは、主に船倉内の結露による水の付着により錆を生じることで品質が低下する。そのため、以下に説明するシステム1は、船倉内における推定結露発生時間を可能な限り低減する航行ルート等を提案する。
【0017】
システム1は、船舶9の船橋に配置された管理装置11と、船倉91の外部と内部に配置された複数の温度計12と、船倉91の外部と内部に配置された複数の湿度計13と、船倉91内の空気から除湿を行う除湿機14を備える。
【0018】
本願において、船倉の外部とは、船倉を構成する構造物の外側表面及び船倉の外側の空間を意味する。また、本願において、船倉の内部とは、船倉を構成する構造物の内側表面及び船倉の内側の空間を意味する。
【0019】
以下の説明においては、説明を簡単にするために、船舶9が船倉91を1つのみ備えるものとする。ただし、一般的には船舶9は複数の船倉91を備える。その場合、システム1は、それら複数の船倉91の各々に応じた温度計12(温度計12B~12G)、湿度計13(湿度計13B~13G)、除湿機14を備える。
【0020】
管理装置11は、システム1の中核を担う装置であり、本実施形態にかかるプログラムを実行することにより、以下に説明する航行ルート等の提案を行うコンピュータである。
【0021】
図2は、管理装置11のハードウェアとして用いられるコンピュータ10の構成の一例を示した図である。コンピュータ10は、コンピュータ本体101と、コンピュータ本体101に接続されたディスプレイ102及び入力デバイス103(キーボード、マウス等)を備える。
【0022】
コンピュータ本体101は、プログラムを含む各種データを記憶するメモリ1011、プログラムに従い各種データ処理を行うプロセッサ1012、外部の装置との間でネットワークを介さずにデータの入出力を行うインタフェースである入出力IF1013、外部の装置との間でネットワークを介したデータ通信を行うインタフェースである通信IF1014を備える。
【0023】
ディスプレイ102及び入力デバイス103は入出力IF1013に接続されている。通信IF1014は温度計12、湿度計13、除湿機14、気象情報配信サーバ装置8との間でデータ通信を行う。
【0024】
温度計12は温度を測定する装置である。温度計12は通信機能を備え、継続的に測定した温度を示す温度実測値データを順次、管理装置11に送信する。温度計12は、船倉91の外部に1以上と、船倉91の内部に1以上、配置されている。本実施形態においては、例として、システム1は、船倉91の外部に配置された温度計12Aと、船倉91の内部に配置された温度計12B~12Gを備えるものとする。
【0025】
温度計12A~12Gが測定する温度は以下のとおりである。
温度計12A:船倉91の外側の空間内の空気(外気)の温度を測定する。
温度計12B:船倉91の内側の空間内の空気(内気)の温度を測定する。
温度計12C:船倉91のハッチカバー部分の内側表面の温度を測定する。
温度計12D:船倉91のクロスデッキ部分の内側表面の温度を測定する。
温度計12E:船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面の温度を測定する。
温度計12F:船倉91のサイドウォール部分の内側表面の温度を測定する。
温度計12G:積荷Lの表面の温度を測定する。
【0026】
湿度計13は空気の絶対湿度を測定する装置である。以下、単に「湿度」という場合、絶対湿度を意味するものとする。
【0027】
湿度計13は通信機能を備え、継続的に測定した湿度を示す湿度実測値データを順次、管理装置11に送信する。
【0028】
湿度計13は、船倉91の外部に1以上と、船倉91の内部に1以上、配置されている。本実施形態においては、例として、システム1は、船倉91の外部に配置された湿度計13Aと、船倉91の内部に配置された湿度計13B~13Gを備えるものとする。
【0029】
湿度計13A~13Gが測定する湿度は以下のとおりである。
湿度計13A:船倉91の外側の空間内の空気(外気)の湿度を測定する。
湿度計13B:船倉91の内側の空間内の空気(内気)の湿度を測定する。
湿度計13C:船倉91のハッチカバー部分の内側表面に接する空気の湿度を測定する。
湿度計13D:船倉91のクロスデッキ部分の内側表面に接する空気の湿度を測定する。
湿度計13E:船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面に接する空気の湿度を測定する。
湿度計13F:船倉91のサイドウォール部分の内側表面に接する空気の湿度を測定する。
湿度計13G:積荷Lの表面に接する空気の湿度を測定する。
【0030】
除湿機14は、船倉91内の空気から除湿を行う装置である。除湿機14は、例えば、空気を本体内に取り込み、取り込んだ空気を冷却して空気中の水蒸気を凝結させ、凝結により生じる水をタンクに貯水することで、空気の湿度を低下させる。
【0031】
除湿機14は通信機能を備え、管理装置11から送信されてくる制御データに従い、運転の開始又は終了を行う。
【0032】
システム1が備える管理装置11は、気象情報配信サーバ装置8との間でデータ通信を行う。船舶9が航行中は、管理装置11は、例えば衛星通信ネットワークを介して気象情報配信サーバ装置8との間でデータ通信を行い、船舶9が港に停泊中は、管理装置11は、例えば停泊中の港に設置されたWiFi(登録商標)等の通信規格に従った無線通信アクセスポイントを介して気象情報配信サーバ装置8との間でデータ通信を行う。
【0033】
気象情報配信サーバ装置8は、外部の装置からの要求に応じて、気温等の気象パラメータの予測値を示すデータ(以下、「気象予測値データ」という)を送信する装置である。管理装置11は、気象情報配信サーバ装置8に対し、船舶9が航行中に通過または到着する地球上の位置(緯度経度)及びその位置を通過する日時を含む要求を送信し、その要求に応じて気象情報配信サーバ装置8から送信されてくる、要求に含まれる位置及び日時における気象パラメータの予測値を示す気象予測値データを受信する。本実施形態においては、例として、管理装置11が気象情報配信サーバ装置8から受信する気象予測値データは、気温(空気の温度)の予測値を示す気温予測値データ、空気の湿度の予測値を示す湿度予測値データ、海水の温度の予測値を示す海水温度予測値データ、風向の予測値を示す風向予測値データ、風速の予測値を示す風速予測値データ、潮向の予測値を示す潮向予測値データ、潮速の予測値を示す潮速予測値データであるものとする。
【0034】
なお、本実施形態における温度と湿度は、本発明における環境パラメータの例である。また、本実施形態における気温予測値データ及び海水温度予測値データが示す温度の予測値と、湿度予測値データが示す湿度の予測値は、船倉の外部の将来の環境パラメータの予測値である船倉外環境パラメータ予測値の例である。
【0035】
図3は、管理装置11の機能構成を示した図である。コンピュータ10のプロセッサ1012が、本実施形態にかかるプログラムに従い各種データ処理を行うと、図3に示す構成部を備える装置として機能する。以下に図3に示す管理装置11の構成部の各々の役割を説明する。
【0036】
記憶手段1101は、各種データを記憶する。
【0037】
取得手段1102は、外部の装置から各種データを取得する。取得手段1102が取得したデータは、記憶手段1101に記憶される。取得手段1102が取得するデータには、以下が含まれる。
【0038】
(1)管理装置11のユーザの操作に応じて入力デバイス103から入力される制約条件データ。
(2)気象情報配信サーバ装置8に対し送信した要求に応じて気象情報配信サーバ装置8から送信されてくる気象予測値データ。
(3)温度計12の各々から順次送信されてくる温度実測値データ。
(4)湿度計13の各々から順次送信されてくる湿度実測値データ
【0039】
本実施形態においては、例として、以下の制約があるものとする。
(A)荷積みする港(以下、「荷積港」という)と、船舶9が荷積港を出港する日時(以下、「荷積港出港日時」という)はユーザにより指定される。それらは管理装置11によって変更されない。
(B)荷揚げする港(以下、「荷揚港」という)と、船舶9が荷揚港に入港する日時(以下、「荷揚港入港日時」という)はユーザにより指定される。それらは管理装置11によって変更されない。
【0040】
上記(1)の制約条件データは、上記の制約(A)及び(B)に関する制約条件、すなわち、荷積港、荷積港出港日時、荷揚港、荷揚港入港日時、を示すデータである。
【0041】
航行ルート生成手段1103は、制約条件データが示す荷積港から荷揚港に至る複数の航行ルートの候補(以下、「候補航行ルート」という)を示す候補航行ルートデータを生成する。
【0042】
図4は、航行ルート生成手段1103により生成される候補航行ルートデータを説明するための図である。図4において、港Xが荷積港であり、港Yが荷揚港である。図4には、港Xから港Yに至る航行ルートの候補として、ポイントAとポイントBを経由ポイントとする航行ルートR1と、ポイントCとポイントDを経由ポイントとする航行ルートR2が例示されている。航行ルートR1は、航行距離が最短の航行ルートであり、航行ルートR2は、航行距離が2番目に短い航行ルートである。なお、経由ポイントの選択は、船舶9が無給油で航行可能な距離等により決定される。航行ルート生成手段1103は、航行ルートR1を第1候補航行ルートとし、航行ルートR2を第2候補航行ルートとして示す候補航行ルートデータを生成する。なお、図4の例では候補航行ルートは2つであるものとしたが、候補航行ルートの数は3以上であってもよい。
【0043】
航行スケジュール生成手段1104(図3)は、航行ルート生成手段1103により生成された候補航行ルートデータが示す複数の候補航行ルートの中から、その順位に従い選択した1つの候補航行ルートに従い航行する船舶9の航行スケジュールを示す航行スケジュールデータを生成する。
【0044】
本実施形態において、航行スケジュールの管理は、航行ルートを所定距離毎に複数に区分した各々の区間(以下、「レグ」という)を単位として行われる。本実施形態において、1つのレグの長さは、船舶9が数分から十数分程度で航行できる程度の長さであるものとする。図5は、航行スケジュールデータの構成を示した図である。航行スケジュールデータは、複数のレコードで構成されるテーブルであり、各レコードはレグに関するデータを格納する。航行スケジュールデータの各レコードは、以下のフィールドで構成される。
【0045】
「レグ番号」フィールド:レグの順番を示すデータを格納する。
「始点位置」フィールド:レグの始点の緯度経度を示すデータを格納する。
「始点出発日時」フィールド:船舶9がレグの始点を出発する日時を示すデータを格納する。
「対地航行速度」フィールド:船舶9がレグを航行する対地航行速度を示すデータを格納する。
「対水航行速度」フィールド:船舶9がレグを航行する対水航行速度を示すデータを格納する。
「終点位置」フィールド:レグの終点の緯度経度を示すデータを格納する。
「終点到着日時」フィールド:船舶9がレグの終点に到着する日時を示すデータを格納する。
【0046】
なお、各レコードの「始点位置」フィールドに格納されるデータと、そのレコードの1つ前のレコードの「終点位置」フィールドに格納されるデータは同じものとなる。
【0047】
航行スケジュール生成手段1104は、まず、船舶9が荷積港出港日時に荷積港を出港し、航行ルートに従い一定の対地航行速度で航行し、荷揚港入港日時に荷揚港に入港する暫定的な航行スケジュール(以下、「暫定航行スケジュール」という)を生成する。
【0048】
ところで、船舶9は航行ルート上を航行する途中で、経由ポイント等にて給油等のために停泊する場合がある。船舶9が停泊中の船倉91内の温度等を管理するために、本実施形態においては、ダミーレグと呼ぶ特殊なレグが用いられる。ダミーレグは始点位置と終点位置がともに船舶9の停泊する同じ位置を示し、対地航行速度及び対水航行速度がともに0(knot)(又は空欄)であり、始点出発日時から終点到着日時までの時間が所定時間(例えば、10分間)であるレグである。航行スケジュールデータに含まれる1以上の連続するダミーレグは、それらのダミーレグの最初のレコードの始点出発日時から最後のレコードの終点到着時刻までの期間、それらのダミーレグの始点位置(または終点位置)が示す位置に、船舶9が停泊することを示す。
【0049】
続いて、航行スケジュール生成手段1104は、暫定航行スケジュールが示す各レグの始点位置及び始点出発日時を示すデータを含む要求を取得手段1102経由で気象情報配信サーバ装置8に送信し、その応答として気象情報配信サーバ装置8から送信されてくる気象予測値データを取得手段1102経由で取得する。航行スケジュール生成手段1104は、気象情報配信サーバ装置8から取得した気象予測値データが示す風向、風速、潮向、潮速等に基づき、暫定航行スケジュールが示す各レグ(ダミーレグを除く)の対地航行速度で船舶9が航行を行った場合の対水航行速度を特定する。
【0050】
続いて、航行スケジュール生成手段1104は、特定した対水航行速度がダミーレグを除く全てのレグに関し一定の値に近づくように、暫定航行スケジュールの対地航行速度を変更する。その変更に伴い、航行スケジュール生成手段1104は、暫定航行スケジュールの各レグの始点出発日時及び終点到着日時も変更する。
【0051】
航行スケジュール生成手段1104は、各レグの対水航行速度のばらつきが閾値以下となるまで、上述した、風向等の予測値を気象情報配信サーバ装置8から取得する処理と、取得したそれらの予測値に基づき暫定航行スケジュールを変更する処理とを繰り返す。航行スケジュール生成手段1104は、各レグ(ダミーレグを除く)の対水航行速度のばらつきが閾値以下となった暫定航行スケジュールを、ユーザに提案する航行スケジュールとして決定し、その航行スケジュールを示す航行スケジュールデータ(図5)を生成する。
【0052】
航行スケジュール生成手段1104は、上述の航行スケジュールデータの生成の処理に加えて、結露発生防止のために航行スケジュールを調整する処理や、船舶9が航行中に順次得られる情報に基づき残航の航行スケジュールを調整する処理を行う。それらの処理については後述する。なお、航行スケジュールデータは、それらの調整の処理において順次、更新される。
【0053】
取得手段1102が気象情報配信サーバ装置8から受信した気象予測値データは、レグに対応付けて記憶手段1101に記憶される。図6は、記憶手段1101に記憶される気象予測値データを格納するテーブルである気象予測値テーブルのデータ構成を示した図である。気象予測値テーブルは、レグに対応するレコードの集まりである。気象予測値テーブルの各レコードは、以下のフィールドで構成される。
【0054】
「レグ番号」フィールド:レグの順番を示すデータを格納する。
「気温」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における外気の温度の予測値を示す気温予測値データを格納する。
「湿度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における外気の湿度の予測値を示す湿度予測値データを格納する。
「海水温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における海水の温度の予測値を示す海水温度予測値データを格納する。
「風向」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における風向の予測値を示す風向予測値データを格納する。
「風速」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における風速の予測値を示す風速予測値データを格納する。
「潮向」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における潮向の予測値を示す潮向予測値データを格納する。
「潮速」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における潮速の予測値を示す潮速予測値データを格納する。
【0055】
気象予測値テーブルに格納されるデータは、航行スケジュールの変更、新たな気象予測値データの取得等に応じて順次、更新される。
【0056】
船倉内モニタリングスケジュール生成手段1105(図3)は、船舶9が航行スケジュールに従い航行ルート上を航行している間に、船員が船倉91内に入室し、積荷Lの状態等を目視等で観察(モニタリング)する期間(以下、「船倉内モニタリング期間」という)を決定し、決定した船倉内モニタリング期間を示す船倉内モニタリングスケジュールデータを生成する。一般的に、積荷Lの荷主と船舶の運航会社との間の取り決めにより、船倉内モニタリングの頻度等が定められている。船倉内モニタリングスケジュール生成手段1105は、その取り決めの内容に従い、船倉内モニタリングスケジュールを決定する。船倉内モニタリングスケジュール生成手段1105が生成した船倉内モニタリングスケジュールデータは記憶手段1101に記憶される。
【0057】
図7は、船倉内モニタリングスケジュールデータの構成を示した図である。船倉内モニタリングは、例えば8時間毎(1日3回の場合)に1時間(実際に船員が船倉91内に入室する前の換気の時間を含む)のような条件に従いスケジュールされる。本実施形態においては、他のパラメータ(例えば、航行スケジュールデータ(図5)に含まれる対地航行速度等、気象予測値データ(図6)に含まれる温度等)との時間軸上での対応を取るために、レグ単位で、そのようにスケジュールされる船倉内モニタリングの有無が管理される。そのため、船倉内モニタリングスケジュールデータは、レグ番号で識別されるレコードの集まりで構成され、各レコードには「船倉内モニタリング有無」フィールドが設けられている。「船倉内モニタリング有無」フィールドには、そのレグを航行中の期間が船倉内モニタリング期間に含まれていれば「Yes」、含まれていなければ「No」が格納される。すなわち、「船倉内モニタリング有無」フィールドに「Yes」が格納されている複数の連続するレコードに対応するレグを船舶9が航行している期間が船倉内モニタリング期間である。
【0058】
なお、船倉内モニタリング期間は、積荷Lの状態を観察するために船倉91に船員が出入りするためのアクセスドアが開放されている期間を意味する。船倉91内の積荷等が二酸化炭素等のガスを発したり、酸素を吸収したりする結果、船倉91内の酸素が不足する場合がある。そのため、一般的に、船倉91に船員が入室する前に、換気のためにアクセスドアは所定時間以上、開放される。本実施形態における船倉内モニタリング期間は、実際に船員が船倉91に入室している期間に加え、それに先行するアクセスドアの開放による換気の期間を含む。
【0059】
第1推定手段1106(図3)は、気象予測値データが示す温度の予測値と湿度の予測値に基づき、船倉91の内部の将来の温度及び湿度の推定値を生成する。第1推定手段1106が生成する温度の推定値及び湿度の推定値は、本発明における船倉内環境パラメータ推定値の例である。
【0060】
より具体的には、第1推定手段1106は、気象予測値テーブル(図6)と船倉内モニタリングスケジュールデータ(図7)に基づき、例えば既知の物理モデルを用いたシミュレーションにより、各レグの始点出発日時における船倉91の内部の温度を推定し、推定した温度の値を示す温度推定値データを生成する。
【0061】
本実施形態において、第1推定手段1106が推定する船倉91の内部の温度は、温度計12B~12Gが測定する温度に対応している。すなわち、第1推定手段1106は、船倉91の内側の空間内の空気(内気)の温度、船倉91のハッチカバー部分の内側表面の温度、船倉91のクロスデッキ部分の内側表面の温度、船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面の温度、船倉91のサイドウォール部分の内側表面の温度、積荷Lの表面の温度を推定する。
【0062】
第1推定手段1106が物理モデルを用いて行う船倉91の内気の温度のシミュレーションにおいては、船倉91を構成する壁体(ハッチカバー部分、クロスデッキ部分等)の熱伝導率等が用いられる。
【0063】
また、第1推定手段1106が行う船倉91の内気の温度のシミュレーションにおいては、船倉内モニタリングスケジュールに従い船倉91のアクセスドアが開放される直前のアクセスドアの外側の空気の温度と、アクセスドアの内側(すなわち、船倉91の内側)の空気の温度に基づき、アクセスドアの開放期間中にアクセスドアを通じた空気の移動の方向及び量が推定されて、推定された空気の移動に伴い時々刻々と変化する船倉91の内側の空気の温度が推定される。
【0064】
また、第1推定手段1106は、気象予測値テーブル(図6)と船倉内モニタリングスケジュールデータ(図7)に基づき、例えば既知の物理モデルを用いたシミュレーションにより、各レグの始点出発日時における船倉91の内部の湿度を推定し、推定した湿度の値を示す湿度推定値データを生成する。
【0065】
本実施形態において、第1推定手段1106が推定する船倉91の内部の湿度は、湿度計13B~13Gが測定する湿度に対応している。すなわち、第1推定手段1106は、船倉91の内側の空間内の空気(内気)の湿度、船倉91のハッチカバー部分の内側表面に接する空気の湿度、船倉91のクロスデッキ部分の内側表面に接する空気の湿度、船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面に接する空気の湿度、船倉91のサイドウォール部分の内側表面に接する空気の湿度、積荷Lの表面に接する空気の湿度を推定する。
【0066】
第1推定手段1106が物理モデルを用いて行う船倉91の内部の湿度のシミュレーションにおいては、船倉内モニタリングスケジュールに従い船倉91のアクセスドアが開放される直前のアクセスドアの外側の空気の湿度と、アクセスドアの内側(すなわち、船倉91の内側)の空気の湿度に基づき、前述のように推定されたアクセスドアを通じた空気の移動の方向及び量が推定されて、推定された空気の移動に伴い時々刻々と変化する船倉91の内部の各測定位置における空気の湿度が推定される。
【0067】
第1推定手段1106が生成した温度推定値データと湿度推定値データは、記憶手段1101に記憶される。図8Aは、温度推定値データを格納するために用いられる船倉内温度推定値テーブルのデータ構成を示した図である。船倉内温度推定値テーブルは、レグに対応するレコードの集まりである。
【0068】
船倉内温度推定値テーブルの各レコードは、以下のフィールドで構成される。
「レグ番号」フィールド:レグの順番を示すデータを格納する。
「内気温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における内気の温度の推定値を示す温度推定値データを格納する。
「ハッチカバー温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のハッチカバー部分の内側表面の温度の推定値を示す温度推定値データを格納する。
「クロスデッキ温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のクロスデッキ部分の内側表面の温度の推定値を示す温度推定値データを格納する。
「アッパーサイドウォール温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面の温度の推定値を示す温度推定値データを格納する。
「サイドウォール温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のサイドウォール部分の内側表面の温度の推定値を示す温度推定値データを格納する。
「積荷温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における積荷Lの表面の温度の推定値を示す温度推定値データを格納する。
【0069】
図8Bは、船倉内温度推定値テーブル(図8A)に格納される温度推定値データが示すハッチカバー等の温度(推定値)に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データを格納するために用いられる飽和水蒸気量推定値テーブルのデータ構成を示した図である。飽和水蒸気量推定値テーブルは、レグに対応するレコードの集まりである。
【0070】
飽和水蒸気量推定値テーブルの各レコードは、以下のフィールドで構成される。
「レグ番号」フィールド:レグの順番を示すデータを格納する。
「内気飽和水蒸気量」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における内気の温度(推定値)に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データを格納する。
「ハッチカバー飽和水蒸気量」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のハッチカバー部分の内側表面の温度(推定値)に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データを格納する。
「クロスデッキ温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のクロスデッキ部分の内側表面の温度(推定値)に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データを格納する。
「アッパーサイドウォール温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面の温度(推定値)に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データを格納する。
「サイドウォール温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のサイドウォール部分の内側表面の温度(推定値)に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データを格納する。
「積荷温度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における積荷Lの表面の温度(推定値)に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データを格納する。
【0071】
なお、飽和水蒸気量推定値テーブルに格納される飽和水蒸気量推定値データは、船倉内温度推定値テーブルに格納される対応する温度推定値データに基づき、例えば第1推定手段1106によって、既知の算出式又は換算表に従い特定されたものである。
【0072】
図9は、記憶手段1101が湿度推定値データを格納するために用いる船倉内湿度推定値テーブルのデータ構成を示した図である。船倉内湿度推定値テーブルは、レグに対応するレコードの集まりである。船倉内湿度推定値テーブルの各レコードは、以下のフィールドで構成される。
【0073】
「レグ番号」フィールド:レグの順番を示すデータを格納する。
「内気湿度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における内気の湿度の推定値を示す湿度推定値データを格納する。
「ハッチカバー周辺湿度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のハッチカバー部分の内側表面に接する空気の湿度の推定値を示す湿度推定値データを格納する。
「クロスデッキ周辺湿度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のクロスデッキ部分の内側表面に接する空気の湿度の推定値を示す湿度推定値データを格納する。
「アッパーサイドウォール周辺湿度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面に接する空気の湿度の推定値を示す湿度推定値データを格納する。
「サイドウォール周辺湿度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における船倉91のサイドウォール部分の内側表面に接する空気の湿度の推定値を示す湿度推定値データを格納する。
「積荷周辺湿度」フィールド:レグの始点位置及び始点出発日時における積荷Lの表面に接する空気の湿度の推定値を示す湿度推定値データを格納する。
【0074】
第1推定手段1106は、後述の換気スケジュール生成手段1108による換気スケジュールの生成や、後述の除湿機運転スケジュール生成手段1109による除湿スケジュールの生成に応じて、それらのスケジュールが示す換気や除湿の結果を反映した内気の温度及び湿度を再推定し、船倉内温度推定値テーブル(図8A)、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)及び船倉内湿度推定値テーブル(図9)を更新する。また、第1推定手段1106は、船舶9が航行中に、取得手段1102が温度計12から取得する温度実測値データ、湿度計13から取得する湿度実測値データ、気象情報配信サーバ装置8から取得する気象推定値データ等に基づいて、残航に関し内気の温度及び湿度を再推定し、船倉内温度推定値テーブル(図8A)、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)及び船倉内湿度推定値テーブル(図9)を更新する。
【0075】
第2推定手段1107(図3)は、第1推定手段1106により推定された船倉91の内部の将来の飽和水蒸気量と湿度の値(船倉内環境パラメータ推定値)、すなわち、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)に格納されている飽和水蒸気量推定値データ及び船倉内湿度推定値テーブル(図9)に格納されている湿度推定値データが示す値に基づき、船倉91に収容される積荷Lの将来の品質の推定値を生成する。第2推定手段1107が生成する積荷Lの将来の品質の推定値は、本発明における積荷品質推定値の例である。
【0076】
本実施形態における積荷Lであるスチールコイルの品質は、主に錆の発生により低下する。そして、錆の発生確率に最も大きな影響を与えるのは、船倉91内における結露の発生状況(例えば、結露の発生期間の長さ、結露により生じる水滴の量等)である。そのため、本実施形態において、第2推定手段1107は、船倉91内における結露の発生状況をレグ毎に推定し、推定した発生状況が以下のレベル1~3のいずれに該当するかを特定する。そのように特定されるレベル(以下、「結露発生レベル」という)の数値は、積荷Lの品質の低下リスクの多少を示す指標値となる。この場合、結露発生レベルの数値は、大きい程、積荷Lの品質の低下リスクが高い(すなわち、積荷Lの品質が低い)ことを示す。
【0077】
結露発生レベルは、例えば以下のように定義される。
レベル1:結露が生じないと推定される。
レベル2:ハッチカバー、クロスデッキ、アッパーサイドウォール及びサイドウォールのいずれか1つにおいて結露が生じると推定される。
レベル3:ハッチカバー、クロスデッキ、アッパーサイドウォール及びサイドウォールのいずれか2つ以上において結露が生じると推定される。
【0078】
図10は、第2推定手段1107が結露発生レベル(積荷Lの品質の指標値)及び結露発生レベルを特定するために用いるデータを格納するテーブルである積荷品質推定値テーブルのデータ構成を示した図である。積荷品質推定値テーブルは、レグに対応するレコードの集まりである。積荷品質推定値テーブルの各レコードは、以下のフィールドで構成される。
【0079】
「レグ番号」フィールド:レグの順番を示すデータを格納する。
「ハッチカバー結露発生有無」フィールド:船倉91のハッチカバー部分の内側表面において結露が発生するか否かを示すフラグデータを格納する。なお、フラグデータは、例えば、発生する場合は「Yes」、発生しない場合は「No」である。
「クロスデッキ結露発生有無」フィールド:船倉91のクロスデッキ部分の内側表面において結露が発生するか否かを示すフラグデータを格納する。
「アッパーサイドウォール結露発生有無」フィールド:船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面において結露が発生するか否かを示すフラグデータを格納する。
「サイドウォール結露発生有無」フィールド:船倉91のサイドウォール部分の内側表面において結露が発生するか否かを示すフラグデータを格納する。
「積荷結露発生有無」フィールド:積荷Lの表面において結露が発生するか否かを示すフラグデータを格納する。
「結露発生レベル」フィールド:「ハッチカバー結露発生有無」フィールド~「積荷結露発生有無」フィールドに格納されているフラグデータに基づき特定される結露発生レベルを格納する。
【0080】
第2推定手段1107は、船倉91のハッチカバー部分の内側表面、船倉91のクロスデッキ部分の内側表面、船倉91のアッパーサイドウォール部分の内側表面、船倉91のサイドウォール部分の内側表面、積荷Lの表面、の各々に関し、船倉内湿度推定値テーブル(図9)に格納されているそれらに対応した湿度推定値データが示す絶対湿度が、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)に格納されているそれらに対応した飽和水蒸気量推定値データが示す飽和水蒸気量以上であれば、結露が発生すると判定し、積荷品質推定値テーブル(図10)の対応するフィールド(「ハッチカバー結露発生有無」フィールド等)に、フラグデータ:「Yes」を格納する。一方、絶対湿度が飽和水蒸気量未満であれば、第2推定手段1107は、結露が発生しないと判定し、積荷品質推定値テーブルの対応するフィールド(「ハッチカバー結露発生有無」フィールド等)に、フラグデータ:「No」を格納する。
【0081】
続いて、第2推定手段1107は、上記のように「ハッチカバー結露発生有無」フィールド~「積荷結露発生有無」フィールドに格納したフラグデータが示す「Yes」の数に基づき、そのレグの結露発生レベルを特定し、積荷品質推定値テーブルの「結露発生レベル」フィールドに特定した結露発生レベルを示す数値(1~3のいずれか)を格納する。
【0082】
第2推定手段1107は、後述の換気スケジュール生成手段1108による換気スケジュールの生成や、後述の除湿機運転スケジュール生成手段1109による除湿スケジュールの生成に応じて、第1推定手段1106により船倉内温度推定値テーブル(図8A)、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)又は船倉内湿度推定値テーブル(図9)が更新された場合、更新後の飽和水蒸気量推定値テーブル及び更新後の船倉内湿度推定値テーブルのデータを用いて積荷品質推定値テーブル(図10)の各項目に応じた結露発生有無を再判定し、積荷品質推定値テーブルを更新する。また、第2推定手段1107は、船舶9が航行中に、取得手段1102が温度計12から取得する温度実測値データ、湿度計13から取得する湿度実測値データ、気象情報配信サーバ装置8から取得する気象推定値データ等に基づいて、第1推定手段1106により残航に関する船倉内温度推定値テーブル(図8A)、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)又は船倉内湿度推定値テーブル(図9)が更新された場合、更新後の飽和水蒸気量推定値テーブル及び更新後の船倉内湿度推定値テーブルのデータを用いて、残航に関し積荷品質推定値テーブル(図10)の各項目に応じた結露発生有無等を再判定し、積荷品質推定値テーブルを更新する。
【0083】
換気スケジュール生成手段1108(図3)は、船舶9が航行スケジュールに従い航行ルート上を航行する際に、航行期間中に結露が発生すると推定される場合に、その結露の発生を防止するために、船倉91に設けられた換気窓を開放する期間(以下、「換気期間」という)を決定し、決定した換気期間を示す換気スケジュールデータを生成する。
【0084】
本実施形態において、換気スケジュール生成手段1108は、例えば、気象予測値テーブル(図6)の「湿度」フィールドに格納されている湿度予測値データが示す外気の湿度の予測値と、船倉内湿度推定値テーブル(図9)の「内気湿度」フィールドに格納されている湿度推定値データが示す内気の湿度の推定値とに基づき、換気期間を決定する。
【0085】
図11は、換気スケジュール生成手段1108が換気期間を決定する方法の例を説明するためのグラフである。図11の横軸は日時を示し、縦軸は湿度を示す。グラフG1は外気の湿度の予測値の経時変化を示し、グラフG2は内気の湿度の推定値の経時変化を示す。
【0086】
なお、図11に示すグラフは、船倉内モニタリングスケジュールに従うアクセスドアの開放がない期間に関し例示したものであり、船倉91は密閉されているため、グラフG2が示す内気の湿度は概ね一定である。ただし、これは本実施形態において、積荷Lが水分の蒸発、吸収をほとんど行わないスチールコイルであるためである。例えば、積荷Lが木材のように、水分の蒸発、吸収を行う種類のものであれば、船倉91が密閉されている期間中においても、内気の湿度は大きく変化し得る。
【0087】
換気スケジュール生成手段1108は、まず、以下の条件を満たす期間を特定する。
(1)グラフG1が示す外気の湿度が、グラフG2が示す内気の湿度よりも低い状態が所定の時間長(例えば、2時間)以上継続する。
(2)(1)の期間内において、グラフG1が示す湿度とグラフG2が示す湿度の差の最大値が所定の閾値(例えば、10%)以上である。
(3)上記の(1)及び(2)を満たす期間が2以上ある場合は、それらのうちの時期が最も早いものである。
【0088】
換気スケジュール生成手段1108は、例えば図11に示すグラフの横軸に対応する期間内において、上記の(1)~(3)の条件を満たす期間として、期間T1を特定する。
【0089】
続いて、換気スケジュール生成手段1108は、上記のように特定した期間に関し、グラフG1が示す湿度とグラフG2が示す湿度の差が最大を示す日時を時間軸上の中央とする所定の時間長(例えば1時間)の期間(例えば、図11に示す期間T2)を、換気期間として決定する。換気スケジュール生成手段1108が生成した換気スケジュールデータは記憶手段1101に記憶される。
【0090】
図12は、換気スケジュールデータの構成を示した図である。換気スケジュールデータは、レグ番号で識別されるレコードの集まりで構成され、各レコードには「換気有無」フィールドが設けられている。「換気有無」フィールドには、そのレグを航行中に換気が行われれば「Yes」、換気が行われなければ「No」が格納される。すなわち、「換気有無」フィールドに「Yes」が格納されている複数の連続するレコードに対応するレグを船舶9が航行している期間が換気期間である。
【0091】
本実施形態においては、上記のように決定される換気期間に、船員により換気窓の開放が行われるものとする。これに代えて、システム1が、例えば管理装置11から送信される制御データに従い換気窓を開閉する開閉装置を備え、換気スケジュールに従い管理装置11が送信する制御データに従い、開閉装置が換気窓を開閉してもよい。
【0092】
上記のように、換気スケジュール生成手段1108により換気スケジュールデータが生成されると、第1推定手段1106は、生成された換気スケジュールデータが示す換気スケジュールに従い換気が行われた場合の内気の温度、飽和水蒸気量及び湿度を再推定し、船倉内温度推定値テーブル(図8A)、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)及び船倉内湿度推定値テーブル(図9)を更新する。
【0093】
なお、換気スケジュール生成手段1108により特定された換気期間に換気が行われてもなお、航行期間中に船倉91内において結露が発生すると推定される場合には、航行期間のうち、既に換気スケジュール生成手段1108により特定されている換気期間(複数ある場合はその最も時期が遅いもの)より後の期間内から、新たな換気期間の特定が行われる。その場合、換気スケジュール生成手段1108は、既に特定済みの換気期間に加え、新たに特定した換気期間を示すように換気スケジュールデータ(図12)を更新する。また、第1推定手段1106は、そのように更新された換気スケジュールデータが示す換気スケジュールに従い換気が行われた場合の内気の温度及び湿度を再推定し、船倉内温度推定値テーブル(図8A)、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)及び船倉内湿度推定値テーブル(図9)を更新する。
【0094】
除湿機運転スケジュール生成手段1109(図3)は、船舶9が航行スケジュールに従い航行ルート上を航行する際に、航行期間中に結露が発生すると推定される場合に、その結露の発生を防止するために、除湿機14を運転する期間(以下、「除湿期間」という)を決定し、決定した除湿期間を示す除湿スケジュールデータを生成する。
【0095】
図13は、除湿機運転スケジュール生成手段1109が除湿期間を決定する方法の例を説明するためのグラフである。図13のグラフの横軸は日時、縦軸は水蒸気量を示す。図13に示されるグラフG3は、例えば、船倉内湿度推定値テーブル(図9)の「クロスデッキ周辺湿度」フィールドに格納されている湿度推定値データが示すクロスデッキ部分の内側表面に接する空気の湿度(絶対湿度)、すなわち、クロスデッキ部分の内側表面に接する空気(単位空気あたり)に含まれる水蒸気量の経時変化を示すグラフである。
【0096】
図13に示されるグラフG4は、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)の「クロスデッキ飽和水蒸気量」フィールドに格納されている飽和水蒸気量推定値データが示す、船倉91のクロスデッキ部分の内側表面に接する空気の飽和水蒸気量の経時変化を示すグラフである。
【0097】
図13のグラフは、日時t1から日時t2までの期間T3において、船倉91のクロスデッキ部分の内側表面において結露の発生が推定されることを示している。また、図13のグラフは、この結露の発生を防止するためには、クロスデッキ部分の内側表面に接する空気から、H1で示される量の水蒸気が除湿される必要があることを示している。
【0098】
除湿機運転スケジュール生成手段1109は、クロスデッキに関し上述した方法と同様の方法で、ハッチカバー、アッパーサイドウォール、サイドウォール、積荷の各々に関し、結露の発生する期間と、除湿されるべき水蒸気量とを推定する。
【0099】
除湿機運転スケジュール生成手段1109は、例えば、ハッチカバー、クロスデッキ、アッパーサイドウォール、サイドウォール、積荷の各々に関し推定した結露の発生する期間のうち最も早いものより前に、推定した除湿されるべき水蒸気量のうち最大のものが空気から除湿されるように、除湿機14を運転すべき期間を除湿期間として特定する。なお、除湿機運転スケジュール生成手段1109は、除湿期間の特定にあたり、その時期における船倉91の内部の空気の温度及び湿度を考慮する。除湿機運転スケジュール生成手段1109が生成した除湿スケジュールデータは記憶手段1101に記憶される。
【0100】
図14は、除湿スケジュールデータの構成を示した図である。除湿スケジュールデータは、レグ番号で識別されるレコードの集まりで構成され、各レコードには「除湿有無」フィールドが設けられている。「除湿有無」フィールドには、そのレグを航行中に除湿が行われれば「Yes」、除湿が行われなければ「No」が格納される。すなわち、「除湿有無」フィールドに「Yes」が格納されている複数の連続するレコードに対応するレグを船舶9が航行している期間が除湿期間である。
【0101】
上記のように、除湿機運転スケジュール生成手段1109により除湿スケジュールデータが生成されると、第1推定手段1106は、生成された除湿スケジュールデータが示す除湿スケジュールに従い除湿が行われた場合の内気の温度、飽和水蒸気量及び湿度を再推定し、船倉内温度推定値テーブル(図8A)、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)及び船倉内湿度推定値テーブル(図9)を更新する。
【0102】
なお、除湿機運転スケジュール生成手段1109により特定された除湿期間に除湿が行われてもなお、航行期間中に船倉91内において結露が発生すると推定される場合には、航行期間のうち、既に除湿機運転スケジュール生成手段1109により特定されている除湿期間(複数ある場合はその最も時期が遅いもの)より後の期間内から、新たな除湿期間の特定が行われる。その場合、除湿機運転スケジュール生成手段1109は、既に特定済みの除湿期間に加え、新たに特定した除湿期間を示すように除湿スケジュールデータ(図14)を更新する。また、第1推定手段1106は、そのように更新された除湿スケジュールデータが示す換気スケジュールに従い除湿が行われた場合の内気の温度、飽和水蒸気量及び湿度を再推定し、船倉内温度推定値テーブル(図8A)、飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)及び船倉内湿度推定値テーブル(図9)を更新する。
【0103】
評価手段1110(図3)は、航行ルート、航行スケジュール、除湿スケジュールの組み合わせの各々に関し、船倉91が、航行ルートの上を航行スケジュールに従い航行し、その航行中に除湿スケジュールに従う除湿を行う場合に、その航行に関する金銭的評価値を生成する。
【0104】
評価手段1110が生成する金銭的評価値は、航行ルート、航行スケジュール、除湿スケジュールが変化した場合に、その航行に伴う費用がどれだけ増減するかを示す値である。評価手段1110は、例えば、船舶9の航行に要する燃料費用、換気作業(船倉91の換気窓の開閉作業)に伴う船員の人件費の増加分、除湿機14の運転に要する燃料費用、積荷品質の低下に伴う積荷価格の減少分の合計値を金銭的評価値として特定する。
【0105】
通知手段1111は、管理装置11のユーザに対し各種情報を通知する。本実施形態において、ユーザに対する通知はディスプレイ102による情報の表示により行われるものとする。すなわち、通知手段1111は、ディスプレイ102に対し情報の表示を指示することによって、船員に対する情報の通知を行う。
【0106】
例えば、通知手段1111は、船倉内環境パラメータ推定値が所定条件を満たす場合に、ユーザに対し通知を行う。具体的には、通知手段1111は、例えば、船倉内湿度推定値テーブル(図9)の更新に伴い、船倉内湿度推定値テーブルの各レコードに格納されているデータが示す湿度推定値が閾値以上に増加した場合、ユーザに対し通知を行う。
【0107】
また、通知手段1111は、積荷品質推定値が所定条件を満たす場合に、ユーザに対し通知を行う。具体的には、通知手段1111は、例えば、積荷品質推定値テーブル(図10)の更新に伴い、積荷品質推定値テーブルの最後のレコード(最後のレグに関するレコード)の「結露発生レベル」フィールドに格納されている数値が1つ前のレコードの数値から増加した場合や、積荷品質推定値テーブルの最後から所定数のレコードの「結露発生レベル」が全て「2」又は「3」である場合(すなわち、所定時間長に渡り継続して結露が発生すると推定される場合)等に、ユーザに対し通知を行う。
【0108】
以上が、図3に示す管理装置11の構成部の各々の役割の説明である。
【0109】
続いて、管理装置11が行う処理を説明する。管理装置11は、船舶9が航行を開始する前に、航行ルート及び航行スケジュールを提案するための処理を行う。図15はその処理のフローを示した図である。
【0110】
まず、取得手段1102は、荷積港、荷積港出港日時、荷揚港、荷揚港入港日時、を示す制約条件データを取得する(ステップS101)。
【0111】
続いて、航行ルート生成手段1103は、ステップS101において取得された制約条件データが示す制約条件を満たし、航行距離が最短となる航行ルートを示す航行ルートデータを生成する(ステップS102)。
【0112】
続いて、航行スケジュール生成手段1104は、ステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートの上を一定の対水航行速度で航行する航行スケジュールを示す航行スケジュールデータを生成する(ステップS103)。記憶手段1101は、ステップS102において生成された航行ルートデータを記憶する(図5)。
【0113】
なお、ステップS103の処理において、取得手段1102は航行スケジュール生成手段1104が航行スケジュールデータを生成するために必要とする気象予測値データを気象情報配信サーバ装置8から取得する。記憶手段1101は、取得手段1102により取得された気象予測値データを気象予測値テーブル(図6)に記憶する。
【0114】
続いて、船倉内モニタリングスケジュール生成手段1105は、ステップS103において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールに応じた船倉内モニタリングスケジュールを示す船倉内モニタリングスケジュールデータを生成する(ステップS104)。記憶手段1101は、ステップS104において生成された船倉内モニタリングスケジュールデータを記憶する(図7)。
【0115】
続いて、第1推定手段1106は、ステップS103において生成された航行スケジュールデータと、ステップS103において取得された気象予測値データと、ステップS104において生成された船倉内モニタリングスケジュールデータに基づき、船倉91内の温度及び湿度を推定し、推定した温度を示す温度推定値データと、その温度に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データと、推定した湿度を示す湿度推定値データを生成する(ステップS105)。記憶手段1101は、ステップS105において生成された温度推定値データを船倉内温度湿度推定値テーブル(図8A)に、ステップS105において生成された飽和水蒸気量推定値データを飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)に、また、ステップS105において生成された湿度推定値データを船倉内湿度推定値テーブル(図9)に、記憶する。
【0116】
続いて、第2推定手段1107は、ステップS105において生成された飽和水蒸気量推定値データと湿度推定値データに基づき積荷Lの品質を推定し、推定した積荷Lの品質(積荷品質推定値)を示す積荷品質推定値データを生成する(ステップS106)。より具体的には、第2推定手段1107は、各レグに関し、ハッチカバー等の各々における結露発生の有無を判定し、結露が発生すると判定した数に基づき、積荷Lの品質の指標値である結露発生レベル(積荷品質推定値データの一例)を特定する。記憶手段1101は、ステップS106において生成されたデータを積荷品質推定値テーブル(図10)に記憶する。
【0117】
続いて、第2推定手段1107は、積荷品質推定値テーブル(図10)のいずれかのレグの「結露発生レベル」フィールドに「2」又は「3」が格納されているか否か、すなわち、結露が発生するか否かを判定する(ステップS107)。
【0118】
ステップS107において、結露は発生しないと判定された場合(ステップS107;No)、ステップS102において生成された航行ルート、ステップS103において生成された航行スケジュール、ステップS104において生成された船倉内モニタリングスケジュールに従う場合、積荷Lの品質の観点から特に問題はないため、本実施形態においては、他の代替的なスケジュールの生成は行われず、それらのスケジュールと、それらのスケジュールに従い航行が行われた場合の金銭的評価値がユーザに提示されるものとする。そのため、評価手段1110は、船舶9が、ステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートの上を、ステップS103において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールに従い航行する場合の金銭的評価値を算出する(ステップS108)。続いて、通知手段1111は、ステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートと、ステップS103において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールと、ステップS108において算出された金銭的評価値の表示をディスプレイ102に指示することにより、それらの情報をユーザに通知する(ステップS109)。その後、管理装置11は処理を終了する。
【0119】
ステップS107において、結露が発生すると判定された場合(ステップS107;Yes)、管理装置11は代替航行計画の提案のための処理を実行する(ステップS110)。
【0120】
本実施形態において、代替航行計画は以下のいずれかを意味する。
(1)航行距離が最短の航行ルートと、対水航行速度が一定の航行スケジュールと、結露の発生を防止するための換気スケジュールを提案する航行計画(以下、「換気付航行計画」という)。
(2)航行距離が最短の航行ルートと、対水航行速度が一定の航行スケジュールと、結露を防止するための除湿スケジュールを提案する航行計画(以下、「除湿付航行計画」という)。
(3)航行距離が最短の航行ルートと、結露を防止するために対水航行速度を調整した航行スケジュールを提案する航行計画(以下、「船速調整航行計画」という)。
(4)航行距離が最短ではない航行ルートと、対水航行速度が一定の航行スケジュールを提案する航行計画(以下、「代替ルート航行計画」という)。
【0121】
図16は、管理装置11が換気付航行計画を提案するために行う処理のフローを示した図である。
【0122】
まず、換気スケジュール生成手段1108は、気象予測値テーブル(図6)の「湿度」フィールドのデータ、及び、船倉内湿度推定値テーブル(図9)の「内気湿度」フィールドのデータに基づき、航行期間の始期から終期に向かう時間方向に、換気期間を探索する(ステップS201)。
【0123】
ステップS201において換気期間が発見された場合(ステップS202;Yes)、換気スケジュール生成手段1108はステップS202において発見した換気期間を示す換気スケジュールデータ(図12)を生成する(ステップS203)。なお、ステップS201の処理が、後述するステップS206における判定の結果に応じて繰り返し行われ、既に発見されている換気期間に加え、新たな換気期間が発見された場合、換気スケジュール生成手段1108は、ステップS203において、既に発見されている換気期間と新たに発見された換気期間を示すように、既存の換気スケジュールデータを更新する。
【0124】
続いて、第1推定手段1106は、図15のステップS103において生成された航行スケジュールデータと、図15のステップS103において取得された気象予測値データと、図15のステップS104において生成された船倉内モニタリングスケジュールデータと、ステップS203において生成又は更新された換気スケジュールデータに基づき、船倉91内の温度及び湿度を推定し、推定した温度を示す温度推定値データと、推定した温度に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データと、推定した湿度を示す湿度推定値データを生成する(ステップS204)。記憶手段1101は、ステップS204において生成された温度推定値データを船倉内温度推定値テーブル(図8A)に、ステップS204において生成された飽和水蒸気量推定値データを飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)に、また、ステップS204において生成された湿度推定値データを船倉内湿度推定値テーブル(図9)に、記憶する。
【0125】
続いて、第2推定手段1107は、ステップS204において生成された飽和水蒸気量推定値データと湿度推定値データに基づき、図5のステップS106と同様に積荷Lの品質を推定し、推定した積荷Lの品質(積荷品質推定値)を示す積荷品質推定値データを生成する(ステップS205)。記憶手段1101は、ステップS205において生成されたデータを積荷品質推定値テーブル(図10)に記憶する。
【0126】
続いて、第2推定手段1107は、いずれかのレグの結露発生レベルが「2」又は「3」であるか否か、すなわち、結露が発生するか否かを判定する(ステップS206)。
【0127】
ステップS206において、結露が発生しないと判定された場合(ステップS206;No)、評価手段1110は、船舶9が、図15のステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートの上を、図15のステップS103において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールに従い航行し、船員が、ステップS203において生成又は更新された換気スケジュールデータが示す換気期間に換気を行う場合の金銭的評価値を算出する(ステップS207)。続いて、通知手段1111は、図15のステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートと、図15のステップS103において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールと、ステップS203において生成又は更新された換気スケジュールデータが示す換気スケジュールと、ステップS207において算出された金銭的評価値の表示をディスプレイ102に指示することにより、それらの情報をユーザに通知する(ステップS208)。その後、管理装置11は処理を終了する。
【0128】
ステップS206において、結露が発生すると判定された場合(ステップS206;Yes)、管理装置11はステップS201以降の処理を繰り返す。なお、2回目以降のステップS201の処理において、換気スケジュール生成手段1108は、既に発見している最後の換気期間より後の航行期間から換気期間を探索する。
【0129】
ステップS202において換気期間が発見されなかった場合(ステップS202;No)、管理装置11はステップS207以降の処理を行う。ただし、最初に実行されるステップS202において換気期間が発見されなかった場合、ステップS203は実行されず、換気スケジュールデータは生成されない。従って、ステップS208において、通知手段1111がディスプレイ102に表示を指示する情報には換気スケジュールが含まれない。
【0130】
また、ステップS202において換気期間が発見されなかった場合(ステップS202;No)、それは換気によっては積荷Lの品質低下を十分に抑制できないことを意味する。従って、その場合、通知手段1111は、ステップS208において、ディスプレイ102に、航行ルート等に加え、航行中に積荷Lの品質が低下する可能性が高い旨の警告メッセージを表示させる。
【0131】
図17は、管理装置11が除湿付航行計画を提案するために行う処理のフローを示した図である。
【0132】
まず、除湿機運転スケジュール生成手段1109は、図15のステップS106において生成された積荷品質推定値テーブル(図10)のデータに基づき、結露発生レベルが「2」又は「3」である期間(以下、「結露発生期間」という)のうち最も早いものを特定し、その結露発生期間における結露の発生を防止するための除湿期間を特定し、その除湿期間を示す除湿スケジュールデータ(図14)を生成する(ステップS301)。なお、ステップS301の処理が、後述するステップS304における判定の結果に応じて繰り返し行われ、既に特定されている除湿期間に加え、新たな除湿期間が特定された場合、除湿機運転スケジュール生成手段1109は、ステップS301において、既に特定されている除湿期間と新たに特定された除湿期間を示すように、既存の除湿スケジュールデータを更新する。
【0133】
続いて、第1推定手段1106は、図15のステップS103において生成された航行スケジュールデータと、図15のステップS103において取得された気象予測値データと、図15のステップS104において生成された船倉内モニタリングスケジュールデータと、ステップS301において生成又は更新された除湿スケジュールデータに基づき、船倉91内の温度及び湿度を推定し、推定した温度を示す温度推定値データと、推定した温度に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データと、推定した湿度を示す湿度推定値データを生成する(ステップS302)。記憶手段1101は、ステップS302において生成された温度推定値データを船倉内温度推定値テーブル(図8A)に、ステップS302において生成された飽和水蒸気量推定値データを飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)に、また、ステップS302において生成された湿度推定値データを船倉内湿度推定値テーブル(図9)に、記憶する。
【0134】
続いて、第2推定手段1107は、ステップS302において生成された飽和水蒸気量推定値データと湿度推定値データに基づき、図5のステップS106と同様に積荷Lの品質を推定し、推定した積荷Lの品質(積荷品質推定値)を示す積荷品質推定値データを生成する(ステップS303)。記憶手段1101は、ステップS303において生成されたデータを積荷品質推定値テーブル(図10)に記憶する。
【0135】
続いて、第2推定手段1107は、いずれかのレグの結露発生レベルが「2」又は「3」であるか否か、すなわち、結露が発生するか否かを判定する(ステップS304)。
【0136】
ステップS304において、結露は発生しないと判定された場合(ステップS304;No)、評価手段1110は、船舶9が、図15のステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートの上を、図15のステップS103において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールに従い航行し、除湿機14が、ステップS301において生成又は更新された除湿スケジュールデータが示す除湿期間に除湿を行う場合の金銭的評価値を算出する(ステップS305)。続いて、通知手段1111は、図15のステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートと、図15のステップS103において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールと、ステップS301において生成又は更新された除湿スケジュールデータが示す除湿スケジュールと、ステップS305において算出された金銭的評価値の表示をディスプレイ102に指示することにより、それらの情報をユーザに通知する(ステップS306)。その後、管理装置11は処理を終了する。
【0137】
ステップS304において、結露が発生すると判定された場合(ステップS304;Yes)、管理装置11はステップS301以降の処理を繰り返す。
【0138】
図18は、管理装置11が船速調整航行計画を提案するために行う処理のフローを示した図である。
【0139】
まず、航行スケジュール生成手段1104は、図15のステップS106において生成された積荷品質推定値テーブル(図10)のデータに基づき、図15のステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートのうち、結露発生期間に応じたレグを含む航行区間(以下、「結露発生航行区間」という)を特定する(ステップS401)。なお、本実施形態において、航行区間とは、航行ルート上の港又は経由ポイントのうち、隣接する2つの間の区間を意味するものとする。
【0140】
続いて、航行スケジュール生成手段1104は、取得手段1102を介して、ステップS401において特定した結露発生航行区間上の様々な位置と、図15のステップS103において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールに従いその結露発生航行区間を航行する場合の航行期間内の様々な日時との組み合わせに関する気象予測値データを取得する(ステップS402)。
【0141】
続いて、航行スケジュール生成手段1104は、ステップS402において取得した気象予測値データに基づき、結露発生航行区間を航行する航行期間の始期と終期は変更せずに、結露発生航行区間のうち外気の温度が低いレグの航行速度が相対的に速くなり、外気の温度が高いレグの航行速度が相対的に遅くなるように、航行速度の調整を行い、調整後の航行速度を示すように、記憶手段1101に記憶されている航行スケジュールデータを更新する(ステップS403)。
【0142】
続いて、第1推定手段1106は、ステップS403において更新された航行スケジュールデータと、ステップS402において取得された気象予測値データと、図15のステップS104において生成された船倉内モニタリングスケジュールデータに基づき、船倉91内の温度及び湿度を推定し、推定した温度を示す温度推定値データと、推定した温度に対応する飽和水蒸気量を示す飽和水蒸気量推定値データと、推定した湿度を示す湿度推定値データを生成する(ステップS404)。記憶手段1101は、ステップS404において生成された温度推定値データを船倉内温度推定値テーブル(図8A)に、ステップS404において生成された飽和水蒸気量推定値データを飽和水蒸気量推定値テーブル(図8B)に、また、ステップS404において生成された湿度推定値データを船倉内湿度推定値テーブル(図9)に、記憶する。
【0143】
続いて、第2推定手段1107は、ステップS404において生成された飽和水蒸気量推定値データと湿度推定値データに基づき、図5のステップS106と同様に積荷Lの品質を推定し、推定した積荷Lの品質(積荷品質推定値)を示す積荷品質推定値データを生成する(ステップS405)。記憶手段1101は、ステップS405において生成されたデータを積荷品質推定値テーブル(図10)に記憶する。
【0144】
続いて、評価手段1110は、船舶9が、図15のステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートの上を、ステップS403において更新された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールに従い航行した場合の金銭的評価値を算出する(ステップS406)。
【0145】
続いて、通知手段1111は、図15のステップS102において生成された航行ルートデータが示す航行ルートと、ステップS403において更新された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールと、ステップS406において算出された金銭的評価値の表示をディスプレイ102に指示することにより、それらの情報をユーザに通知する(ステップS407)。また、いずれかのレグの結露発生レベルが「2」又は「3」である(すなわち、結露が発生する)場合、通知手段1111は、ステップS407において、ディスプレイ102に、航行ルート等に加え、航行中に積荷Lの品質が低下する可能性が高い旨の警告メッセージを表示させる。その後、管理装置11は処理を終了する。
【0146】
図19は、管理装置11が代替ルート航行計画を提案するために行う処理のフローを示した図である。
【0147】
まず、航行ルート生成手段1103は、図15のステップS101において取得された制約条件データが示す制約条件を満たし、航行距離が2番目に短い航行ルート(以下、「代替航行ルート」という)を示す航行ルートデータを生成する(ステップS501)。
【0148】
続いて、管理装置11は、図15のステップS103~S106、S108と同様の処理を、ステップS501において生成した航行ルートデータが示す代替航行ルートに関し行う(ステップS502~S506)。
【0149】
続いて、通知手段1111は、ステップS501において生成された航行ルートデータが示す代替航行ルートと、ステップS502において生成された航行スケジュールデータが示す航行スケジュールと、ステップS506において算出された金銭的評価値の表示をディスプレイ102に指示することにより、それらの情報をユーザに通知する(ステップS507)。また、いずれかのレグの結露発生レベルが「2」又は「3」である(すなわち、結露が発生する)場合、通知手段1111は、ステップS507において、ディスプレイ102に、航行ルート等に加え、航行中に積荷Lの品質が低下する可能性が高い旨の警告メッセージを表示させる。その後、管理装置11は処理を終了する。
【0150】
以上が、船舶9の航行が開始される前に管理装置11が行う処理の説明である。ユーザは、ディスプレイ102に表示される情報に基づき、採用する航行計画(航行ルート、航行スケジュール、換気スケジュール、除湿スケジュール)を決定する。ユーザにより採用された航行計画は、管理装置11に登録される。
【0151】
その後、ユーザにより採用された航行計画に従い、船舶9による航行が開始される。船舶9の航行中、管理装置11は、例えば所定時間の経過毎に、温度計12から送信されてくる温度実測値データと、湿度計13から送信されてくる湿度実測値データを取得する。管理装置11は、それらの温度実測値データと湿度実測値データを記憶する。
【0152】
また、船舶9の航行中、管理装置11は、例えば所定時間の経過毎に、気象情報配信サーバ装置8から、残航に関する気象予測値データを取得する。管理装置11は、取得した気象予測値データによって、気象予測値テーブル(図6)を更新する。
【0153】
そして、船舶9の航行中、管理装置11は、例えば所定時間の経過毎に、最新の温度実測値データ、最新の湿度実測値データ、気象予測値テーブル(図6)に格納されている最新の気象予測値データに基づき、残航に関し、図15のステップS105以降の処理を行う。ただし、本実施形態においては、船舶9が航行を開始した後、航行ルートは変更されないものとする。従って、この場合、ステップS110において実行される処理は、換気付航行計画の提案のための処理(図16)、除湿付航行計画の提案のための処理(図17)、船速調整航行計画の提案のための処理(図18)に限られ、代替ルート航行計画の提案のための処理(図19)は実行されない。
【0154】
なお、残航に関し、図15のステップS105以降の処理が行われる際、第1推定手段1106は、将来の温度及び湿度を推定するために用いる現在の温度及び湿度(温度及び湿度の初期値)として、気象情報配信サーバ装置8から受信する予測値に代えて、温度計12及び湿度計13により測定された実測値を用いる。
【0155】
また、残航に関し、図15のステップS105以降の処理が行われる際、管理装置11が提案する航行計画が、その時点で採用されている航行計画と同じであるか否かがユーザに通知される。例えば、残航に関し現在の航行計画に従い航行を継続することが望ましい場合、通知手段1111はディスプレイ102に現在の航行計画を青字で表示させる。一方、残航に関し現在の航行計画より望ましい代替的な航行計画がある場合、通知手段1111はディスプレイ102に現在の航行計画を青字で、また、代替的な航行計画を赤字で、ユーザが容易に比較可能な態様で(例えば、同じ画面に同時に)表示させるとともに、残航に関し採用する航行計画の選択操作を受け付けるボタン等を表示させる。
【0156】
ユーザは、船舶9の航行中、ディスプレイ102に表示される情報に基づき、残航に関し、航行計画(航行スケジュール、換気スケジュール、除湿スケジュール)を変更すべきか否かを判断する。ユーザが、残航に関し航行計画を変更すべきであると判断し、採用する航行計画の選択操作を行うと、選択された残航に関する航行計画が管理装置11に登録される。そのように登録された航行計画は、その後の残航に関する航行計画の表示において青字で表示される。
【0157】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態および以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0158】
(1)上述した実施形態において、管理装置11は1つの装置で構成されるシステムであるものとしたが、管理装置11が連係動作する複数の装置で構成されるシステムであってもよい。
【0159】
(2)上述した実施形態において、管理装置11は船舶9に配置されるものとしたが、管理装置11が船舶9以外の場所に配置されてもよい。また、管理装置11が複数の装置で構成されるシステムである場合、それらの複数の装置の一部が船舶9に配置され、他の一部が船舶9以外の場所に配置されてもよい。
【0160】
例えば、管理装置11が、船舶9の船員により使用される船上端末装置と、船舶9の運航管理会社の職員(船員ではない)により使用される陸上端末装置と、船舶9又は船舶9以外の場所に配置されるサーバ装置により構成されてもよい。この場合、例えば航行の開始前に、運航管理会社の職員が陸上端末装置を用いてサーバ装置にアクセスし、サーバ装置から提示される情報に基づき採用する航行計画を決定し、船員が船上端末装置を用いてサーバ装置にアクセスし、運航管理会社の職員により採用された航行計画の内容を確認してもよい。また、例えば航行中に、船員が船上端末装置を用いてサーバ装置にアクセスし、サーバ装置から提示される情報に基づき残航に関し採用する航行計画を決定し、運航管理会社の職員が陸上端末装置を用いてサーバ装置にアクセスし、船員により採用された残航に関する航行計画の内容を確認してもよい。
【0161】
(3)上述した実施形態において、管理装置11により提案される航行計画に従う船舶9の航行は、船員の操縦により行われるものとしたが、船舶9が自律航行可能な船舶であれば、船舶9が管理装置11から提案される航行計画に従い自律航行を行ってもよい。
【0162】
(4)上述した実施形態において、積荷Lの種類はスチールコイルであるものとしたが、積荷Lの種類はこれに限られない。
【0163】
例えば、積荷Lが木材である場合、船倉91内の相対湿度により積荷L(木材)の含水率が変化する。すなわち、船倉91内の相対湿度が積荷L(木材)の含水率に対し低ければ、積荷L(木材)は乾燥し、積荷L(木材)から放出される水蒸気により船倉91内の空気(内気)の絶対湿度が上昇する。一方、船倉91内の相対湿度が積荷L(木材)の含水率に対し高ければ、積荷L(木材)は空気中の水分を吸収し、船倉内の空気(内気)の絶対湿度が低下する。従って、この場合、第1推定手段は、温度及び湿度の推定において、積荷Lの含水率を考慮することが望ましい。
【0164】
また、例えば木材は、含水率が低い程、その価値が高まることが多い。そのような場合、第2推定手段は、船倉91内の温度及び湿度に基づき、木材の含水率を推定することにより、積荷Lの将来の品質を推定することが望ましい。
【0165】
(5)上述した実施形態において、管理装置11はディスプレイ102に情報を表示することによって、ユーザに通知を行うものとしたが、管理装置11がユーザに通知を行う方法は表示に限られない。例えば、管理装置11がスピーカを備え、スピーカから音を発することでユーザに通知を行ってもよい。
【0166】
(6)上述した実施形態において、第1推定手段1106が船倉91の内部の環境パラメータ(温度と湿度)を推定するために用いるパラメータの種類は、上述した実施形態において例示したものに限られない。例えば、アッパーサイドウォールやダウンサイドウォールの外側にバラスト水等のタンクが配置されている場合、それらのタンクの収容物(バラスト水等)の温度等が、第1推定手段1106による推定に用いられてもよい。また、海水の温度の実測値が、第1推定手段1106による推定に用いられてもよい。また、例えばサイドウォールの温度は、外側に接する海水の有無によって大きく異なる。そして、サイドウォールのどの部分が海水に接するかは、船舶9の喫水の大小により変化する。従って、船舶9の喫水が第1推定手段1106による推定に用いられてもよい。
【0167】
(7)上述した実施形態において、金銭的評価値には積荷品質の低下に伴う積荷価格の減少分が加算されるものとしたが、これに代えて、積荷品質の向上に伴う積荷価格の増加分が減算されてもよい。例えば、積荷Lが木材である場合、輸送中に木材の乾燥が進むと、一般的にその木材の価格が上昇する。この場合、木材の価格の上昇分を燃料費用等のコストから減額した金銭的評価値がユーザに提示されることで、ユーザはいずれの航行計画が金銭的な観点からメリットが大きいかを容易に判断できる。
【0168】
(8)上述した実施形態においては、船倉91内の環境パラメータの値を強制的に変更する装置として除湿機14が用いられるものとしたが、船倉91内の環境パラメータの値を強制的に変更する装置の種類は除湿機に限られない。例えば、船舶9が除湿機14に加えて、もしくは代えて、例えばクロスデッキの温度を上昇させるヒータを備え、そのヒータの運転により船倉91内(この場合、クロスデッキの内側表面及びそれに接する空気)の温度が強制的に変更されてもよい。また、船舶9が除湿機14に加えて、もしくは代えて、船倉91内の空気に加熱する温風機等の除湿機以外の空調装置を備え、その空調装置の運転により船倉91内の温度が強制的に変更されてもよい。
【0169】
また、船舶9が、船倉91内の環境パラメータの値を強制的に変更する装置を1つも備えなくてもよい。
【0170】
(9)上述した実施形態において、積荷Lの品質に影響を与える環境パラメータとして、温度と湿度が用いられるものとしたが、環境パラメータの種類は温度と湿度に限られない。例えば、積荷Lの品質が船倉91内の酸素濃度や二酸化炭素濃度により影響を受ける場合は、船倉91内の酸素濃度や二酸化炭素濃度が環境パラメータとして用いられてもよい。その場合、システム1は、温度計12及び湿度計13に代えて、酸素濃度計や二酸化炭素濃度計を備えることになる。
【0171】
(10)上述した実施形態において、第1推定手段1106は、船倉外環境パラメータ予測値に基づき船倉内環境パラメータを推定するために、物理モデルを用いるものとしたが、第1推定手段1106が船倉外環境パラメータ予測値に基づき船倉内環境パラメータを推定する方法はこれに限られない。
【0172】
例えば、第1推定手段1106が、物理モデルに代えて、もしくは加えて、船倉91の外部の環境パラメータの値を説明変数とし、船倉91の内部の環境パラメータの値を目的変数とする重回帰式等による推定式や、機械学習モデル等の人工知能を用いて、船倉内環境パラメータを推定してもよい。例えば、第1推定手段1106が、物理モデルにより推定した船倉91の内部の環境パラメータの値を、機械学習モデル等の人工知能により補正する構成が採用されてもよい。
【0173】
(11)上述した実施形態において、第2推定手段1107は、ハッチカバー、クロスデッキ、アッパーサイドウォール、サイドウォール及び積荷(以下、「結露発生場所種別」という)のうち、結露が発生すると推定されるものの数に基づき結露の発生状況が3段階の結露発生レベルのいずれに該当するかを特定し、積荷Lの将来の品質を推定するものとした。第2推定手段1107が船倉内環境パラメータ推定値に基づき積荷Lの将来の品質を推定する方法はこれに限られない。
【0174】
例えば、スチールコイルに錆を生じさせる要因として、水滴の量、水滴が生じている時間長、水滴が生じている期間における積荷Lに接する空気又は積荷Lの表面の温度、船倉91内の空気中に含まれる埃の量や種類、船倉91内の空気中の酸素濃度、等が考えられる。従って、これらの要因の実測値又は推定値を用いて、第2推定手段1107による積荷Lの将来の品質の推定が行われてもよい。
【0175】
また、例えば、第2推定手段1107が、上述した船倉91の内部の環境パラメータの値(水滴の量、水滴が発生している時間長、温度等)を説明変数とし、積荷Lの品質の値(例えば、結露発生レベルの値)を目的変数とする重回帰式等による推定式や、機械学習モデル等の人工知能を用いて、積荷Lの将来の品質を推定してもよい。
【0176】
(12)管理装置11が、機能構成として更新手段を備え、更新手段が、第1推定手段1106が用いるパラメータ(例えば、物理モデルや人工知能等のパラメータ)を、船倉91の外部の環境パラメータの実測値である船倉外環境パラメータ実測値(例えば、温度計12Aが測定する温度、湿度計13Aが測定する湿度)と、船倉91の内部の環境パラメータの実測値である船倉内環境パラメータ実測値(例えば、温度計12B~12Gが測定する温度、湿度計13B~13Gが測定する湿度)とに基づき、更新してもよい。例えば、第1推定手段1106が機械学習モデルを用いる場合、更新手段が、船倉外環境パラメータ実測値を説明変数とし、船倉内環境パラメータ実測値を目的変数とする教師データを用いて、機械学習モデルを更新してもよい。
【0177】
また、更新手段が、第2推定手段1107が用いるパラメータ(例えば、物理モデルや人工知能等のパラメータ)を、船倉91の内部の環境パラメータの実測値である船倉内環境パラメータ実測値(例えば、温度計12B~12Gが測定する温度、湿度計13B~13Gが測定する湿度)と、積荷Lの品質の実測値である積荷品質実測値とに基づき、更新してもよい。
【0178】
この場合、取得手段1102は、例えば、船倉内モニタリングスケジュールに従い船倉91内に入った船員が目視等により判定した積荷Lの品質を示す値を、積荷品質実測値として取得してもよい。もしくは、取得手段1102は、船倉91内に設置されているカメラが撮影する積荷Lの画像に基づき積荷Lの品質を特定し、そのように特定した積荷Lの品質を示す値を、積荷品質実測値として取得してもよい。
【0179】
そして、例えば、第2推定手段1107が機械学習モデルを用いる場合、更新手段が、船倉内環境パラメータ実測値(例えば、温度計12B~12Gが測定する温度、湿度計13B~13Gが測定する湿度)を説明変数とし、積荷品質実測値を目的変数とする教師データを用いて、機械学習モデルを更新してもよい。
【0180】
(13)上述した実施形態において、管理装置11は、換気スケジュールの追加、除湿スケジュールの追加、対水航行速度の調整、代替航行ルートの採用、のいずれか1つにより代替航行計画を生成するものとしたが、管理装置11が、これらの2以上の組み合わせにより代替航行計画を生成してもよい。例えば、換気のみによっては積荷Lの品質低下が生じる可能性が高い場合、換気スケジュールに加えて、除湿スケジュールがユーザに提示されてもよい。
【0181】
(14)上述した実施形態において、航行スケジュール等の管理は、航行ルートを所定距離毎に複数に区分した各々の区間であるレグを単位として行われるものとしたが、航行スケジュール等の管理が、レグ以外の単位で行われてもよい。例えば、航行期間を所定時間長毎に複数に区分した各々の期間であるタイムスロットを単位として、航行スケジュール等の管理が行われてもよい。
【0182】
(15)上述した実施形態において、管理装置11は、環境パラメータの予測値の全てを気象情報配信サーバ装置8から取得するものとした。これに代えて、管理装置11が、環境パラメータの予測値の全て又は一部を生成することにより取得してもよい。例えば、管理装置11が、過去の様々な時期及び様々なエリアにおける各種環境パラメータの実測値を記憶しておき、それらの実測値を統計処理し、統計処理により得られる値(統計値)を環境パラメータの予測値として取得し用いてもよい。
【0183】
また、管理装置11が、現在から所定時間長の直近の将来(例えば、現在から1週間後までの期間)に関しては、気象情報配信サーバ装置8から受信する環境パラメータの予測値を用い、それより先の将来に関しては、上述した統計値を用いてもよい。
【0184】
(16)上述した実施形態においては、以下の制約があるものとした。
ユーザは、荷積港出港日時と荷揚港入港日時をピンポイントで指定し、管理装置11は指定された荷積港出港日時と荷揚港入港日時を変更できない。
航行中に航行ルートは変更できない。
航行中に経由ポイントへの到着日時及び経由ポイントからの出発日時は変更できない。
船倉内モニタリングの時期は、指定された時間間隔及び指定された時間長に従い自動的に決定され、変更されない。
【0185】
上記の制約は一例であって、様々に変更されてよい。例えば、ユーザが、荷積港出港日時及び荷揚港入港日時の少なくとも一方を、時間長のある期間(例えば、1週間程度の期間)で指定し、管理装置11は指定された期間内で荷積港出港日時及び荷揚港入港日時の少なくとも一方を様々に変更させて複数の航行スケジュールデータを生成し、生成した複数の航行スケジュールのうち、例えば金銭的評価値が最も良好なもの(例えば、金銭的評価値がコストを示す値である場合、金銭的評価値が最小のもの)をユーザに提示する、という構成が採用されてもよい。
【0186】
上記の場合、航行スケジュールによって航行期間の長さが異なる場合がある。従って、金銭的評価値の算出において、航行期間が長くなることにより生じる船舶9や船員等のリソースの機会損失が考慮されてもよい。
【0187】
また、航行中に航行ルートが、例えば所定の距離の範囲内で変更可能とされてもよい。その場合、管理装置11は、残航に関する航行ルートを、より柔軟に生成できる。
【0188】
また、航行中に経由ポイントへの到着日時及び経由ポイントからの出発日時の少なくとも一方が、例えば所定の時間長の範囲内で変更可能とされてもよい。その場合、管理装置11は、残航に関する航行スケジュールを、より柔軟に生成できる。
【0189】
また、船倉内モニタリングの時期が、例えば所定の時間長の範囲内で変更可能とされてもよい。その場合、管理装置11は、船倉内モニタリングスケジュールを、より柔軟に生成できる。
【0190】
(17)上述した実施形態においては、管理装置11が航行スケジュールを生成する際、対水航行速度を一定とする場合の対地航行速度を特定するために用いる環境パラメータは風向、風速、潮向、潮速であるものとした。管理装置11が船舶9の対水航行速度から対地航行速度を特定、もしくは、対地航行速度から対水航行速度を特定するために用いる環境パラメータの種類は、これらに限られない。例えば、管理装置11が航行スケジュールを生成する際、対水航行速度を一定とする場合の対地航行速度を特定するために、風向、風速、潮向、潮速に加えて、波向、波高を用いてもよい。
【0191】
(18)上述した実施形態においては、各レグに応じた各種パラメータの値は、そのレグの始点位置及び始点出発日時における値であるものとしたが、これに限られない。例えば、各レグに応じた各種パラメータの値として、そのレグの中間位置(始点位置と終点位置の空間的な中間点の位置)と中間位置を船舶9が通過する日時における値が用いられてもよい。また、各レグに応じた各種パラメータの値として、そのレグの中間日時(始点出発日時と終点到着日時の時間軸上の中間点の日時)と中間日時に船舶9がいる位置における値が用いられてもよい。
【0192】
(19)航行中に積荷Lの品質の低下が生じなくても、荷揚港において積荷Lの荷揚のためにハッチカバーを開いたときに、積荷Lの品質が低下する場合がある。例えば、船舶9が荷揚港に到着したときの積荷Lの表面の温度が低く、荷揚港の外気の温度及び湿度が高い場合、ハッチカバーが開かれ、温度と湿度が高い外気が船倉91内に流れ込み、積荷Lの表面で冷却されて結露を生じる可能性がある。
【0193】
上述した実施形態においては、管理装置11が生成する航行スケジュールは荷揚港に到着するまでをカバーするものとした。その場合、上述したように、荷揚港においてハッチカバーが開かれたときに、積荷Lの品質低下が起こる場合がある。従って、管理装置11が、荷揚港に到着した後の期間(例えば、荷揚港に到着した後、荷揚が完了するまでの期間)を含む航行スケジュールを生成し、荷揚港に到着した後の期間における積荷Lの品質低下の可能性も低減されるように、航行計画の生成を行うようにしてもよい。
【0194】
その場合、管理装置11は、荷揚港の外気の絶対湿度が低い日時に荷揚港に到着する航行スケジュールを生成したり、外気の絶対湿度が同じであれば、外気の温度が高い時期に換気を行うように換気スケジュールを生成したりすることで、ハッチカバーが開かれたときに結露が生じにくい航行計画を生成することになる。
【0195】
(20)上述した実施形態において、湿度計13は絶対湿度を測定するものとした。これに代えて、湿度計13が相対湿度を測定してもよい。湿度計13が相対湿度を測定する場合、例えば管理装置11によって、温度計12により測定された空気の温度と湿度計13により測定された空気の相対湿度に基づき、その空気の絶対湿度が算出されればよい。
【0196】
また、上述した実施形態において、管理装置11が気象情報配信サーバ装置8から取得する湿度予測値データは絶対湿度を示すものとしたが、これに代えて、管理装置11が気象情報配信サーバ装置8から相対湿度を示す湿度予測値データを取得してもよい。湿度予測値データが相対湿度を示す場合、例えば管理装置11によって、気象情報配信サーバ装置8から取得する同時期同エリアに関する温度予測値データが示す空気の温度に基づき、湿度予測値データが示す相対湿度から、その空気の絶対湿度が算出されればよい。
【0197】
(21)上述した実施形態において、管理装置11は、結露が発生しないような船舶の航行ルート、航行スケジュール、船倉の換気スケジュール、及び、船倉内の環境パラメータの値を強制的に変更する装置の運転スケジュールを策定する。これに代えて、管理装置11が、金銭的価値を最大化するような船舶の航行ルート、航行スケジュール、船倉の換気スケジュール、及び、船倉内の環境パラメータの値を強制的に変更する装置の運転スケジュールの策定を行ってもよい。
【0198】
(22)上述した実施形態において、絶対湿度が飽和水蒸気量以上であるか否かにより、結露の発生の有無が判定されるものとした。これに代えて、ハッチカバー等の温度が、露天温度以下であるか否かにより、結露の発生の有無が判定されてもよい。その場合、飽和水蒸気量推定値データ(図8B参照)に代えて、船倉内湿度推定値テーブル(図9)に格納される湿度推定値データが示す湿度(絶対湿度)に対応する露点温度が既知の算出式又は換算表に従い特定され、特定されたそれらの露点温度を示す露点温度推定値データが用いられる。
【0199】
(23)本発明は、管理装置11に例示される装置又はシステムとして、また、管理装置11を構成するコンピュータ10に対し管理装置11が行う処理を実行させるためのプログラムとして把握され得る。また、本発明にかかるプログラムは、記録媒体に記録された状態で提供され、記録媒体からコンピュータに読み取られてもよいし、通信ネットワークを介してコンピュータにダウンロードされてもよい。
【符号の説明】
【0200】
1…システム、8…気象情報配信サーバ装置、9…船舶、10…コンピュータ、11…管理装置、12…温度計、13…湿度計、14…除湿機、91…船倉、101…コンピュータ本体、102…ディスプレイ、103…入力デバイス、1011…メモリ、1012…プロセッサ、1013…入出力IF、1014…通信IF、1101…記憶手段、1102…取得手段、1103…航行ルート生成手段、1104…航行スケジュール生成手段、1105…船倉内モニタリングスケジュール生成手段、1106…第1推定手段、1107…第2推定手段、1108…換気スケジュール生成手段、1109…除湿機運転スケジュール生成手段、1110…評価手段、1111…通知手段。
【要約】
本発明は、船倉に収容される積荷の将来の品質を推定する手段を提供する。
本発明の一実施形態にかかる管理装置11の取得手段1102は、気象情報配信サーバ装置8から、所定の航行ルートの上を所定の航行スケジュールに従い航行する船舶が遭遇する外気の温度と湿度の予測値を取得する。第1推定手段1106は、取得手段1102が取得した外気の温度と湿度の予測値に基づき、航行期間中の船倉の内部の温度と湿度を推定する。第2推定手段1107は、第1推定手段1106が推定した船倉の内部の温度と湿度に基づき、船倉に収容される積荷の将来の品質を推定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19