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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】金属溶湯濾過ユニット用吊り治具
(51)【国際特許分類】
   C22B 9/02 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C22B9/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023560190
(86)(22)【出願日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 JP2023017065
【審査請求日】2023-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 諭
(72)【発明者】
【氏名】高岡 稔
(72)【発明者】
【氏名】中本 健介
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021164(JP,A)
【文献】特開平04-165027(JP,A)
【文献】特開平04-165028(JP,A)
【文献】特開平04-161205(JP,A)
【文献】特開平04-193917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 9/02
C22B 21/06
B01D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯濾過ユニットを保持して、所定位置に移動するための金属溶湯濾過ユニット用吊り治具であって、
前記金属溶湯濾過ユニットは、互いに略平行に配設された一対の扁平板状の側板であって、その上方において他方の側板に穿設された係合孔と略水平面上に穿設された係合孔を有する側板を含むものであり、
前記吊り治具は、
(1)一対のフレーム、
(2)前記一対のフレームを連結する架橋部、ならびに
(3)操作ハンドル及びこの操作ハンドルに接続された回転軸を有する調整部、
を含み、
前記一対のフレームは、前記架橋部の中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称であり、
前記一対のフレームの各々は、下端近傍に突条部を有し、
前記突条部は、前記金属溶湯濾過ユニットの各側板の係合孔に適合する位置にて配されており、各突条部は、その突条部が属するフレームと架橋部を経て接続された他方のフレームの突条部とを結ぶ直線上にて、当該他方の突条部の方向と略反対方向に延設されており、
前記架橋部は、前記一対のフレームとの連結部において、枢動軸を有し、
前記操作ハンドルに接続された前記回転軸は、前記架橋部よりも上方において、前記一対のフレームの各々と螺嵌しており、
前記操作ハンドルを回転させることで、前記一対のフレームの各々と前記回転軸との螺嵌部間の距離を変動させ、前記枢動軸を支点とした枢動によって前記一対のフレームの前記突条部間の距離を調整可能な機構を備え、
前記架橋部が略水平面を維持したまま前記吊り治具を吊り上げ可能な宙吊り部を備える、
金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項2】
前記一対のフレームの各々が、少なくとも回転軸支持部及び前記枢動軸によって、一対の線条部材が連結した構造からなり、
前記一対の線条部材は、前記回転軸支持部の中心及び前記枢動軸の中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称であり、
前記操作ハンドルに接続された前記回転軸は、前記一対のフレームにおける前記回転軸支持部の各々と螺嵌している、
請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項3】
前記一対のフレームの各々が、上方から順に、胴部、第一脚部、及び第二脚部からなり、
前記胴部は、前記架橋部より上方の部材であり、
前記第一脚部は、前記架橋部を経て接続された他方のフレームとの距離が下方ほど大きくなるように延びる部材であり、
前記第二脚部は、前記第一脚部がその下端でその第一脚部の属するフレームと前記架橋部を経て接続された他方のフレームの方向に屈曲し、その屈曲した箇所から下方に延びる部材であり、
前記第二脚部が鉛直方向に延びる場合において、前記第一脚部と鉛直方向とのなす角が13~24°である、
請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項4】
前記一対のフレームの各々が、上方から順に、胴部、第一脚部、及び第二脚部からなり、
前記胴部は、前記架橋部より上方の部材であり、
前記第一脚部は、前記架橋部を経て接続された他方のフレームとの距離が下方ほど大きくなるように延びる部材であり、
前記第二脚部は、前記第一脚部がその下端でその第一脚部の属するフレームと前記架橋部を経て接続された他方のフレームの方向に屈曲し、その屈曲した箇所から下方に延びる部材であり、
前記第二脚部が鉛直方向に延びる場合において、前記胴部と鉛直方向とのなす角が0~10°である、
請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項5】
前記第一脚部の長さに対する前記第二脚部の長さの比が、0.8~1.2である、請求項3又は4に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項6】
前記第一脚部の長さに対する前記胴部の長さの比が、0.8~1.2である、請求項3又は4に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項7】
前記突条部の延設方向を水平方向とした場合において、前記突条部の鉛直方向の最大長さに対する、水平方向における前記突条部の延設部分の長さの比が、1~3である、請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項8】
前記突条部の延設部分が先細り形状であり、かつ、前記突条部の延設方向を水平方向とした場合において、水平方向視における延設部分を含む前記突条部の上部外縁が略同一水平線上にある、請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項9】
補強部及び/又は補強板が前記一対のフレームのいずれか一方または両方に結合している、請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項10】
前記補強板が前記一対のフレームのいずれか一方のフレームのみに結合している、請求項9に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項11】
前記操作ハンドルが、前記吊り治具の鉛直方向視において、前記フレームの最外端により囲まれる範囲よりも外側に配置される、請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項12】
前記操作ハンドルに接続された前記回転軸の螺嵌部が雄ねじ・雌ねじ構造である、請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【請求項13】
前記操作ハンドルに接続された前記回転軸に、前記一対のフレームの各々と前記回転軸との螺嵌部間の距離を過度に大きくすること又は小さくすることを防止するための規制ねじを有する、請求項1に記載の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム等の金属溶湯を濾過する金属溶湯濾過ユニット用の吊り治具に関する。より具体的には、金属溶湯濾過ユニットを濾過室に出し入れする際に金属溶湯濾過ユニットを吊り上げ及び移動させるための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物の製造に用いられるアルミニウム等の金属溶湯には、通常、不純物として水素や酸化物等の非金属の介在物が含まれる。例えば、金属溶湯中の溶存水素は鋳物中にポロシティーと呼ばれる鋳巣を形成し、また酸化物等は鋳物中の介在物となり得る。これらの鋳巣や介在物は、いずれも鋳物の破壊起点となり得るため好ましくない。そこで、金属溶湯を濾過し、当該金属溶湯に含まれる介在物等の不純物を除去するための濾過装置が開発されてきた。
【0003】
この目的を達するため、典型的には、金属溶湯から不純物を濾過するための複数のセラミックス製の濾過チューブを有する金属溶湯濾過ユニットが、入湯口及び出湯口が設けられた濾過室内に戴置された金属溶湯濾過装置が用いられている(特許文献1参照)。このような金属溶湯濾過装置においては、使用の前後において金属溶湯濾過ユニットを濾過室内から出し入れする必要がある。
【0004】
一般的に、金属溶湯濾過ユニットは、複数のセラミックス製濾過チューブ、及び、この複数の濾過チューブの長手方向の両端にて互いに略平行に配設された一対の側板から構成されている。側板には、その上方において他方の側板に穿設された係合孔と略水平面上に穿設された係合孔が設けられている。金属溶湯濾過ユニットを濾過室内から出し入れするに際して、当該係合孔にピンを係合させる吊り治具を介してクレーン等で金属溶湯濾過ユニットを吊り上げる手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-161205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具は、複数の部品を連結させた構造を有し、手動操作ハンドルに連動する可動箇所が多いため当該可動箇所に負荷がかかり、部品の歪みや故障リスクが高く、操作時に力を要するものであった。また、手動操作ハンドルによって調整可能な左右ピンの距離の調整幅が短く、係合孔とピンとの係合が不十分となり、金属溶湯濾過ユニットの吊り上げの際に金属溶湯濾過ユニットが落下する危険があった。
【0007】
したがって、本発明が解決すべき課題は、上記不都合が解消された、すなわち、構成部品が少ない簡潔な構造により、部品の歪みや故障リスクを軽減した金属溶湯濾過ユニット用吊り治具を提供することである。また、より小さい力で操作可能な金属溶湯濾過ユニット用吊り治具を提供することである。さらには、より安定した金属溶湯濾過ユニットの保持が可能な金属溶湯濾過ユニット用吊り治具を提供することである。なお、本明細書の全体において「金属溶湯濾過ユニット」を単に「濾過ユニット」と称することもある。また、本明細書の全体において「金属溶湯濾過ユニット用吊り治具」を単に「吊り治具」または「治具」と称することもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究した結果、少なくとも、一対のフレーム、一対のフレームを連結する架橋部、ならびに操作ハンドル及びこの操作ハンドルに接続された回転軸を有する調整部を構成要素として吊り治具を構成することにより、上記課題が解決され得ることを見出した。すなわち、本発明者らは、吊り治具の構成を上記のものとすることで、吊り治具の部品数を減らすことができると共に、より小さい力で操作ハンドルの操作が可能であり、濾過ユニットの係合孔に対して左右ピンの距離の調整が容易であり、濾過ユニットの保持性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
このような本発明の典型的な一態様は、以下のとおりである。
金属溶湯濾過ユニットを保持して、所定位置に移動するための金属溶湯濾過ユニット用吊り治具であって、
前記金属溶湯濾過ユニットは、互いに略平行に配設された一対の扁平板状の側板であって、その上方において他方の側板に穿設された係合孔と略水平面上に穿設された係合孔を有する側板を含むものであり、
前記吊り治具は、
(1)一対のフレーム、
(2)前記一対のフレームを連結する架橋部、ならびに
(3)操作ハンドル及びこの操作ハンドルに接続された回転軸を有する調整部、
を含み、
前記一対のフレームは、前記架橋部の中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称であり、
前記一対のフレームの各々は、下端近傍に突条部を有し、
前記突条部は、前記金属溶湯濾過ユニットの各側板の係合孔に適合する位置にて配されており、各突条部は、その突条部が属するフレームと架橋部を経て接続された他方のフレームの突条部とを結ぶ直線上にて、当該他方の突条部の方向と略反対方向に延設されており、
前記架橋部は、前記一対のフレームとの連結部において、枢動軸を有し、
前記操作ハンドルに接続された前記回転軸は、前記架橋部よりも上方において、前記一対のフレームの各々と螺嵌しており、
前記操作ハンドルを回転させることで、前記一対のフレームの各々と前記回転軸との螺嵌部間の距離を変動させ、前記枢動軸を支点とした枢動によって前記一対のフレームの前記突条部間の距離を調整可能な機構を備え、
前記架橋部が略水平面を維持したまま前記吊り治具を吊り上げ可能な宙吊り部を備える、
金属溶湯濾過ユニット用吊り治具。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吊り治具は、少なくとも、一対のフレーム、一対のフレームを連結する架橋部、ならびに操作ハンドル及びこの操作ハンドルに接続された回転軸を有する調整部から構成される吊り治具である。当該構成の吊り治具により、吊り治具の構成部品を少なくすることができ、操作ハンドルの操作が容易になる。また、構成部品が少ないことにより部品の歪みや故障リスクを抑えることができ、濾過ユニットの保持力が向上するという、従来の吊り治具の構造から予見することができない優れた利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る吊り治具の正面図を示す。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る吊り治具の側面図を示す。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る吊り治具の調整部の概略図を示す。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る吊り治具により、吊り上げる濾過ユニットの一例を示す。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る吊り治具のフレームにおける線条部材の構造の概略図を示す。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る吊り治具のフレームにおける線条部材の構造の概略図を示す。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る吊り治具の下端近傍に設けられた突条部の形状の概略図を示す。図7(a)は突条部を水平方向から観察した場合の概略図であり、図7(b)は突条部を鉛直方向上側から観察した場合の概略図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る吊り治具の使用状態の概略図を示す。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る吊り治具の使用状態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の吊り治具は、濾過ユニットを保持して、当該吊り治具を介してクレーン等で濾過ユニットを吊り上げ、所定位置に移動するために使用されるものである。
【0013】
後に詳述する吊り治具の構成及び機能の理解を容易にするため、先ず、このような濾過ユニットの典型例の概略について図4を参照して説明する。
【0014】
図4に示すように、本発明の吊り治具で保持、移動の対象となる濾過ユニット60は、典型的には、複数の濾過チューブの長手方向の両端にて互いに略平行に配設された一対の扁平板状の側板61a及び側板61bを含む。側板61aは、その上方において他方の側板61bに穿設された係合孔62b及び62dと略水平面上に穿設された係合孔62a及び62cを有する。同様に、側板61bは、その上方において他方の側板61aに穿設された係合孔62a及び62cと略水平面上に穿設された係合孔62b及び62dを有する。これらの係合孔の各々は、吊り治具の突条部と係合することにより、濾過ユニットの保持に用いられるところ、吊り治具の突条部と係合し、他方の側板に穿設された係合孔と略水平面上に穿設されたものであれば、その形状及び数に特に制限はない。濾過ユニットを吊り上げた際に安定して保持する観点から、係合孔62a及び62cと、62b及び62dは、それぞれ、側板61a及び61bの各々の上部に、側板の幅方向中央を通過する鉛直方向線に対して線対称な位置及び形状で穿設されることが好ましい。例えば、側板61aに、係合孔62a及び62cが繋がったような1つの長方形の係合孔を穿設してもよいし、図4に示すように2つ以上の円形の係合孔を穿設してもよい。また、少なくとも一方の側板に対して3つまたは4つ以上の係合孔を設ける場合でも、上記同様に、これらの係合孔が側板の幅方向中央を通過する鉛直方向線に対して線対称な位置及び形状で穿設されることが好ましい。
【0015】
なお、本発明の吊り治具で保持、移動の対象となる濾過ユニットは、一対の扁平板状の側板であって、その上方において他方の側板に穿設された係合孔と略水平面上に穿設された係合孔を有する側板を含むものであれば、その構造は特に限定されるものではない。また、吊り治具の突条部と係合することにより、濾過ユニットの保持が可能である限りは、濾過ユニットの濾過機構は特に限定されない。すなわち、約500℃以上から約800℃程度までに加熱された非金属介在物を含むアルミニウム等の金属溶湯から非金属介在物等の不純物を濾過することができれば、濾過チューブの構造やその数は特に限定されない。
【0016】
本発明の一実施形態に係る吊り治具を、図面を用いて説明する。図1は、治具10を水平面に配置した状態、かつ吊り治具10の第二脚部27a及び27bが直立した状態(以下において「静置状態」と称することがある)で、架橋部30が正面に見える方向から観察した図である。図2は、図1の左側面図であり、吊り治具10のフレーム20aを枢動軸23a及び回転軸支持部24aが正面に見える方向から観察した図である。図3は、調整部40の概略図である。図5及び図6は、本発明の一実施形態に係る吊り治具10のフレーム20bにおける線条部材21bの形状を示す概略図である。図7(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る吊り治具10の下端近傍に設けられた突条部22bの形状を示す概略図である。図8は、本発明の一実施形態に係る吊り治具10の使用時の開閉の様子を示す概略図である。図9は、本発明の一実施形態に係る吊り治具10の使用状態の一例を示す斜視図である。
【0017】
図1図2図3図5、及び図6において、20a及び20bはフレーム(構成部材の集合体である枠体)を示し、21a、21b、及び21cはフレーム20a又は20bを構成する線条部材、22a、22b、22cはフレーム20a又は20bに設けられた突条部、23a及び23bはフレーム20a又は20bを構成する枢動軸、24a及び24bはフレーム20a又は20bを構成する回転軸支持部、25a及び25bは線条部材21a又は21bの一部である胴部、26a及び26bは線条部材21a又は21bの一部である第一脚部、27a及び27bは線条部材21a又は21bの一部である第二脚部、28a及び28bはフレーム20a又は20bを構成する補強部、29はフレーム20aを構成する補強板を示す。30は架橋部を示す。40は調整部を示し、41は調整部40の操作ハンドル、42は調整部40の回転軸を示す。50a及び50bは宙吊り部を示す。図面は本発明の一実施形態に係る吊り治具を示すものであり、各部の形状及び位置は、図面に示される形状及び位置に限定されるものではない。
【0018】
図1に示すように、本発明の吊り治具10は、一対のフレーム20a及び20b、一対のフレーム20a及び20bを連結する架橋部30、ならびに操作ハンドル41及びこの操作ハンドル41に接続された回転軸42を有する調整部40を含むものである。フレーム20a及び20bは、架橋部30を介して連結されており、その連結部は枢動軸23a及び23bで枢動可能になっている。フレーム20a及び20bは、架橋部30の中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称である。フレーム20a及び20bは、主に線条部材21a及び21bにより構成され、線条部材21a及び21bの形状は、直線状の形状であってもよく、図1のように屈曲した形状であってもよい。
【0019】
図1に示すように、フレーム20a及び20bは、その下端近傍に突条部22a及び22bを有する。突条部22a及び22bは、濾過ユニット60の各側板61a及び61bの係合孔62a及び62bに適合する位置にて配されており、突条部22a及び22bは、その突条部22a(又は22b)が属するフレーム20a(又は20b)と架橋部30を経て接続された他方のフレーム20b(又は20a)の突条部22b(又は22a)とを結ぶ直線上にて、当該他方の突条部22b(又は22a)の方向と略反対方向に延設されている。ここでの「延設」は、突条部22a又は22bが、第二脚部27a又は27bの下端近傍において、他方の第二脚部に対して反対の方向に、第二脚部27a又は27bの外縁部から突出していることを指す。「延設方向」とは突条部22a又は22bが突出する方向を指す。後述する突条部の説明においては、明記される場合を除き、突条部の延設方向が水平方向と一致する状態を説明する。また、後述の「延設部分」は、第二脚部27a又は27bの下端近傍において、他方の第二脚部に対して反対の方向に、突条部22a又は22bが第二脚部27a又は27bの外縁部から突出している部分を指す。
【0020】
突条部22a及び22bは、吊り治具10による濾過ユニット60の保持のため突条部22a及び22b、ならびに図1に示されていない他の突条部がある場合は当該他の突条部の全てが濾過ユニット60の係合孔62a、62b、62c、及び62dに係合するときに、これらの突条部の長手方向が略水平面をなすように設定されていることが好ましい。すなわち、突条部22a及び22bは、図1のように紙面の左右反対方向に延設されており、突条部22a及び22bが略水平面上にあることが好ましい。
【0021】
突条部22a及び22bの断面形状は、濾過ユニット60の側板61a及び61bに設けられた係合孔62a、62b、62c、及び62dと係合する形状であれば、特に制限はない。例えば、係合孔が、図4における係合孔62a及び62cが繋がったような1つの長方形の形状である場合、図2における突条部22a及び22cが接続され、一体となった1つの突条部としてもよい。また、突条部の断面形状は、図2に示される突条部22a及び22cのように略円形であってもよく、略矩形であってもよい。また、係合孔との係合の補助の観点、濾過ユニットの吊り上げ及び移動の際に濾過ユニットの横滑りを防止の観点から、突条部の表面に溝(凹凸)を設けてもよい。
【0022】
突条部間の距離Dは、一方のフレーム20a(又は20b)から突条部22a(又は22b)が延設されている根本の部分と他方のフレーム20b(又は20a)から突条部22b(又は22a)が延設されている根本の部分との水平方向の距離である。本発明の一実施形態に係る吊り治具10においては、図1に示される静置状態での突条部間の距離Dが、濾過ユニットの濾過チューブの長手方向の長さと同程度であることが好ましい。突条部間の距離Dと濾過ユニットの濾過チューブの長手方向の長さとが同程度であることで、突条部と係合孔とが係合した際、フレーム及び突条部に想定外の負荷がかかることを防ぐことができるため、濾過ユニット用吊り治具の歪みや破損を防ぐことができる。
【0023】
調整部40は、操作ハンドル41及び回転軸42からなり、回転軸42は、架橋部30よりも上方において、一対のフレーム20a及び20bと螺嵌している。フレーム20a及び20bと調整部40の回転軸42との螺嵌は、フレーム20a及び20bに回転軸を直接螺嵌できるように螺嵌用の孔を設けてもよく、あるいは図示されるように中心に螺嵌用の孔を設けた回転軸支持部24a及び24bをフレームの一部として設けてもよい。
【0024】
上述のようにフレーム20a及び20b、架橋部30、ならびに調整部40から吊り治具10を構成することで、操作ハンドル41を回転させると、枢動軸を支点とした枢動によって、一対のフレームの各々と回転軸との螺嵌部間の距離が変動し、それに伴い、一対のフレームの突条部間の距離Dを調整可能となる。すなわち、一対のフレームの各々と回転軸との螺嵌部間の距離を短くするよう調整ハンドルを回転させることで、突条部間の距離Dを長くする(当該操作を「吊り治具を開く」と称することがある)ことができる。それとは逆に、一対のフレームの各々と回転軸との螺嵌部間の距離を長くするよう調整ハンドルを回転させることで、突条部間の距離Dを短くする(当該操作を「吊り治具を閉じる」と称することがある)ことができる(図8参照)。
【0025】
本発明の吊り治具10は、架橋部30が略水平面を維持したまま吊り治具10を吊り上げ可能な宙吊り部50a及び50bを備える。宙吊り部50a及び50bは、図1に示されるようにフレーム20a及び20bの上端近傍に備えてもよく、架橋部30に備えてもよく、回転軸支持部24a及び24bに備えてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10は、前述のように、一対のフレーム20a及び20b、架橋部30、及び調整部40を含むものである。また、濾過ユニット60を濾過室内から出し入れする際には、架橋部30ならびにフレーム20a及び20bが連結する2箇所の枢動軸23a及び23bを支点とした吊り治具10の開閉動作のみにより濾過ユニット60を保持することが可能である。したがって、従来の吊り治具と比較して、構成部品数の減少及び動作の単純化を達成することができ、吊り治具の構成部品の歪みや故障リスクを低減することができる。
【0027】
本発明の吊り治具のフレーム20a及び20bは、架橋部30の中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称であり、下端近傍に突条部22a及び22bを有し、架橋部30と枢動軸23a及び23bにより連結し、架橋部30よりも上方において、調整部40の回転軸42と螺嵌するものであれば、その形状に特に制限はない。例えば、フレームを1本の線条部材で構成し、下端を二股に分岐させ、分岐した下端近傍に突条部を備えた逆T字状や逆Y字状のフレームを用いてもよいし、1本の線条部材の両端に突条部を設け、その線条部材を折り曲げた逆U字状や略Π字状のフレームを用いてもよい。2本以上の線条部材を軸や補強用の部材で結合したものをフレームとして用いてもよい。
【0028】
本発明の吊り治具の構成部品の素材は、濾過ユニットを吊り上げ、保持することができる程度の強度を有するものであれば特に制限はなく、各種鋼材を用いることができる。強度及び加工性の観点から、本発明の吊り治具の構成部品は、SS材を用いることが好ましい。
【0029】
以下に、本発明の一実施形態に係る吊り治具10のフレーム20a及び20bの好ましい構成及び形状を説明する。但し、本発明の吊り治具10のフレーム20a及び20bの構成及び形状は、以下の記載及び図面に限定されるものではない。
【0030】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、一対のフレーム20a及び20bは、前述のとおり、架橋部30の中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称の形状である。したがって、以下のフレームの構成及び形状の説明においては、図1のフレーム20aの構成及び形状のみを述べるが、フレーム20bも略同様の構成及び形状を有するものである。図1に示される吊り治具10の左側面図である図2において、調整部40の操作ハンドル41は紙面奥側に配置され、破線で描かれる。また、回転軸42は操作ハンドル41から、紙面奥から手前方向に延びている。
【0031】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10のフレーム20aは、少なくとも回転軸支持部24a及び枢動軸23aによって、一対の線条部材21a及び21cが連結した構造からなっていてよい。一対の線条部材21a及び21cは、回転軸支持部24aの中心及び枢動軸23aの中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称であることが好ましい。この実施形態において、フレーム20aの回転軸支持部24aは、調整部40の回転軸42と螺嵌している。
【0032】
図2に示されるように、フレーム20aにおいては、その構成部品として略直線状の部材を用いることができる。フレーム20aの構成部品を略直線状の部材とすることで、構成部品の加工が容易であるだけではなく、1本の線条部材からフレームを構成する場合に比べ、濾過ユニット60を吊り上げた際の負荷を分散でき、ひいては吊り治具の構成部品の歪みや故障リスクを低減することができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10における、フレームの構造例を、図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6においては、代表的に、図1のフレーム20bの線条部材21bを示す。前述のとおり、本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、一対のフレーム20a及び20bは、架橋部30の中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称の形状であり、フレーム20aを構成する一対の線条部材21a及び21cは、回転軸支持部24aの中心及び枢動軸23aの中心を垂直に通過し、鉛直である平面に対して略面対称である。そのため、線条部材21a、21c、及び図示されていない他の線条部材も、図5図6に示した線条部材21bと略同様の構造を有する。
【0034】
図5及び図6に示されるように、フレーム20bの線条部材21bは、線条部材21bの上方から順に、胴部25b、第一脚部26、及び第二脚部27bからなる。胴部25bは、架橋部(図示せず)より上方の部材であり、すなわち、枢動軸23bよりも上方の部分を指す。第一脚部26bは、架橋部(図示せず)を経て接続された他方のフレーム20a(図示せず)との距離が下方ほど大きくなるように延びる部材である。第二脚部27bは、第一脚部26bの下端でそれが属するフレーム20bと架橋部30を経て接続された他方のフレーム20aの方向に屈曲し、下方に延びる部材である。
【0035】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、フレーム20bの線条部材21bの構造は、第二脚部27bが鉛直方向に延びる場合、図5の角度Aで示される第一脚部26bと鉛直方向とのなす角度(「第一脚部の開き角度」と称する場合がある)は13~24°であることが好ましい。第一脚部の開き角度は、より好ましくは15~22°であり、さらに好ましくは17~20°であり、特に好ましくは約18.5°である。
第一脚部の開き角度が、上記範囲にあることにより、図8における突条部間の距離Dを確保しやすくなるため、濾過ユニットの吊り上げ及び移動の安定性が向上し得る。
【0036】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、フレーム20bの線条部材21bの構造は、第二脚部27bが鉛直方向に延びる場合において、図5の角度Bで示される胴部25bと鉛直方向とのなす角度(「胴部の開き角度」と称する場合がある)は0~10°であることが好ましい。胴部の開き角度は、より好ましくは2~8°であり、さらに好ましくは4~6°であり、特に好ましくは約5°である。
【0037】
例えば、図5のように胴部25bの上端近傍に宙吊り部50bを設けた場合、胴部の開き角度が、上記範囲にあることにより、図1における一方の胴部25a(又は25b)に設けられた宙吊り部50a(又は50b)と他方の胴部25b(又は25a)に設けられた宙吊り部50b(又は50a)との距離を長くすることができる。そのため、宙吊り部50a及び50bにワイヤー等を通してクレーンにより吊り治具10を吊り上げた際、吊り治具10が傾くことを防止し得る。
【0038】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、フレーム20bの線条部材21bの構造は、第一脚部26bの長さLbに対する第二脚部27bの長さLcの比(Lc/Lb)が、0.8~1.2であることが好ましい。第一脚部26bの長さLbに対する第二脚部27bの長さLcの比(Lc/Lb)は、より好ましくは0.8~1.0であり、さらに好ましくは0.8~0.9であり、特に好ましくは約0.875である。
【0039】
図6に示すように、第一脚部26bの長さLbは、枢動軸23bの中心と線条部材21bの屈曲部(第一脚部26bと第二脚部27bの接続部)の中心との間の長さを指す。また、図6に示すように、第二脚部27bの長さLcは、線条部材21bの屈曲部の中心から吊り治具の下端までの長さを指す。第一脚部26bの長さLbに対する第二脚部27bの長さLcの比(Lc/Lb)が、上記範囲にあることにより、第一脚部26b及び第二脚部27bを適切な長さバランスとすることができるため、吊り治具の操作性や濾過ユニットの吊り上げ時の安定性を向上することができる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る吊り治具において、フレーム20bの線条部材21bの構造は、図6に示すように、第一脚部26bの長さLbに対する胴部25bの長さLaの比(La/Lb)が、0.8~1.2であることが好ましい。第一脚部26bの長さLbに対する胴部25bの長さLaの比(La/Lb)は、より好ましくは0.8~1.0であり、さらに好ましくは0.8~0.9であり、特に好ましくは約0.893である。
【0041】
図6に示すように、胴部25bの長さLaは、枢動軸23bの中心から吊り治具上端までの長さを指す。第一脚部26bの長さLbに対する胴部25bの長さLaの比(La/Lb)が、上記範囲にあることにより、調整部40の位置(すなわち、吊り治具の下端から操作ハンドル41までの高さ)を適切なものにできるため、吊り治具10の操作性を向上することができる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、突条部22bは、図7(a)に示されるように、前記突条部の延設方向を水平方向とした場合において、突条部22bの鉛直方向の最大長さLe(以下、「突条部の高さ」と称する場合がある)に対する、水平方向における突条部22bの延設部分の長さLdの比(Ld/Le)が、1~3であることが好ましい。当該部分の長さの比(Ld/Le)は、より好ましくは1~2であり、さらに好ましくは約1.3である。突条部の高さLeに対する突条部の延設部分の長さLdの比(Ld/Le)が、上記範囲にあることにより、濾過ユニットの吊り上げに対して十分な強度を有することができる。また、突条部22bの延設部分の長さLdを適切に確保することができるため、濾過ユニットの保持を確実に行うことができる。
【0043】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、強度の観点から、突条部22bの高さLeは、少なくとも20mm以上であることが好ましい。濾過ユニットに設けられる係合孔の設計上の寸法から、突条部22bの高さLeは、一般的には20~60mmであり、好適には25~40mmである。したがって、突条部22bの延設部分の長さLdは、20~180mmであり、好ましくは25~120mm、さらに好ましくは30~80mmである。
【0044】
突条部22bの延設部分の長さLdは、上記の下限以上とすることにより、濾過ユニットの吊り上げ時に濾過ユニットが落下するリスクを抑制することができる。また、突条部22bの延設部分の長さLdは、上記の上限以下とすることにより、濾過ユニットの係合孔17に対して突条部22bを係合させる際の操作性が良好に保たれ、濾過ユニットの吊り上げ時に濾過ユニットの重量による破損等のリスクが防止され得る。したがって、突条部22bの延設部分の長さLdが上記範囲にあることにより、濾過ユニット60の係合孔62bと突条部22bとを適切に係合させることができるため、濾過ユニットを保持する際の安定性が向上し得る。また、これにより濾過ユニットの吊り上げに耐えうる程度の耐久性を得ることができる。
【0045】
前述のとおり、突条部22bの断面形状は、濾過ユニットの側板に設けられた係合孔と係合する形状であれば、特に制限はなく、略円形であってもよく、略矩形であってもよい。また、本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、突条部22bの形状は、図7(a)に示されるように、その断面積が延設部分の先端ほど小さくなるような先細り形状であることが好ましい。突条部22bが先細り形状であることにより、突条部を、濾過ユニットの係合孔に係合させやすくなる。
【0046】
また、一実施形態に係る吊り治具の突条部22bの形状は、図7(a)に示されるように、突条部22bの延設部分が先細り形状であり、かつ、前記突条部の延設方向を水平方向とした場合において、水平方向視における延設部分を含む突条部22bの上部外縁が略同一水平線上にあることが好ましい。このような構造により、濾過ユニットの係合孔の奥まで突条部22bを容易に挿入することができ、濾過ユニット保持状態において突条部22bの上部が係合孔の内壁と密着することにより保持力を十分に発揮することができる。
【0047】
この場合において、図7(a)及び(b)に示されるように、突条部22bの延設部分の底面及び両側面に傾斜を設けることが好ましい。以下、突条部22bの延設部分に設けられた傾斜の度合いを示す角度を「傾斜角度」とも称する。ここで図7(a)における傾斜角度Cは、突条部22bの底面に設けられた傾斜の角度を指し、水平方向視において、突条部の接地点を通過する水平面と、突条部の延設部分の最下点及び突条部の底部の屈曲点を結ぶ直線とのなす角である。傾斜角度Cは10~30°とすることが好ましい。また、傾斜角度Cは、より好ましくは10~20°であり、さらに好ましくは約12.5°である。図7(b)における傾斜角度C’及び傾斜角度C’’は突条部の両側面に設けられた傾斜の角度を指し、鉛直方向視において、突条部の側面の最外縁に接する鉛直面と、突条部の延設部分の先端及び突条部の側面の屈曲点を結ぶ直線とのなす角である。傾斜角度C’及び傾斜角度C’’は、略同程度の大きさであることが好ましい。傾斜角度C’及び傾斜角度C’’は、好ましくは5~15°であり、より好ましくは5~10°であり、さらに好ましくは約6.3°である。
【0048】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10において、図1及び図2に示すように、補強部28a及び/又は補強板29が、一対のフレーム20a及び20bのいずれか一方又は両方に結合していることが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る吊り治具10におけるフレーム20a及び20bは、図1に示すように、補強部28a及び28bを有することが好ましい。また、本発明の一実施形態に係る吊り治具10におけるフレーム20a及び20bは、図1に示すように、補強板29を有することが好ましい。
【0049】
図2に示すように、補強部28aはフレーム20aを構成する線条部材21a及び21cを結合するものであり、補強部28aを有することにより、フレームの歪み等を防ぐことができる。補強部28aを設ける位置は、特に制限はないが、吊り治具10全体の強度の観点から、第一脚部26a若しくは第二脚部27a、又は第一脚部26aと第二脚部27aの結合部である屈曲部のいずれかに設けることは好ましい。また、一方のフレームにおいて設ける補強部の数は、特に制限はないが、1つ以上が好ましい。補強部は、ねじ止め等により連結されていてもよく、溶接等により接合されていてもよい。
【0050】
また、図2に示すように、補強板29は、補強部28aと同様にフレーム20aを構成する線条部材21a及び21cを結合するものであり、フレームの歪み等を防ぐことができる。補強板29を設ける位置にも、特に制限はないが、吊り治具全体の強度の観点から、第一脚部26a又は第二脚部27aのいずれかに設けることは好ましい。補強板29は、金属板の両端を略直角に折り曲げたものを線条部材21a及び21cとねじ止め等により連結されていてもよく、溶接等により線条部材21a及び21cと接合されていてもよい。
【0051】
本実施形態に係る吊り治具10においては、補強板29が一対のフレーム20a及び20bのいずれか一方のフレーム20a又は20bのみに結合していることが好ましい。例えば、図1において、補強板29は、フレーム20aのみに設けられ、フレーム20bには設けられていない。いずれか一方のフレームのみに補強板を設けることで、吊り治具の強度を保ちつつ、補強板により視界を遮られることを防ぐことができる。したがって、濾過ユニットの係合孔と突条部との係合を目視により確認することができるため、吊り治具の操作性を向上することができる。
【0052】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10は、調整部40の操作ハンドル41をねじが締まる方向に回転させることにより、一対のフレーム20a及び20bの各々と回転軸42との螺嵌部間の距離を短くすることができる。各フレーム20a及び20bは架橋部30と枢動軸23a及び23bにより、枢動可能なように連結していることから、上記の操作ハンドル41の操作により、枢動軸23a及び23bを支点として、一対のフレームの突条部間の距離Dを長くする(すなわち、吊り治具を開く)ことできる。一方、操作ハンドル41を逆方向に回転させることにより、一対のフレーム20a及び20bの各々と回転軸42との螺嵌部間の距離を長くすることができ、枢動軸23a及び23bを支点として、一対のフレームの突条部間の距離Dを短くする(すなわち、吊り治具を閉じる)ことできる。このようにして調整部40を操作することにより、図8のように吊り治具10を開閉し、濾過ユニットの係合孔に突条部を係合させることができる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10においては、調整部40の操作ハンドル41が、吊り治具10の鉛直方向視において、フレーム20a及び20bの最外端により囲まれる範囲よりも外側に配置されることが好ましい。すなわち、図1において、操作ハンドル41は、吊り治具10の開閉によらず、常にフレーム20bの外側(紙面右側)に配置されていることが好ましい。このように操作ハンドル41が配置されることにより、濾過ユニットを濾過室内から出し入れする場合において、操作ハンドル41の操作を濾過ユニット上で行うことを避けることができるため、操作者の安全面及び操作性の観点から好適である。
【0054】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10においては、調整部40の操作ハンドル41に接続された回転軸42の螺嵌部が雄ねじ・雌ねじ構造であることが好ましい。当該構造により、操作ハンドル41を操作することで、スムーズに吊り治具を開閉することができる。
【0055】
本発明の一実施形態に係る吊り治具10においては、操作ハンドル41に接続された回転軸42に、一対のフレーム20a及び20bの各々と回転軸42との螺嵌部間の距離を過度に大きくすること又は小さくすることを防止するための規制ねじを有することが好ましい。前記規制ねじを有することにより、吊り治具の過度な開閉を防ぐことができる。そのため、吊り治具に想定外の負荷がかかることを防止し、吊り治具の歪みや破損を防ぐことができる。
【0056】
以下に本発明の一実施形態に係る吊り治具の使用例を図8及び図9を用いて説明する。
1)吊り治具10を、宙吊り部を介してワイヤー70を用いてクレーン(図示せず)で吊り上げる。吊り治具10が閉じる(突条部間の距離Dが短くなる)ように吊り治具10の操作ハンドルを回転させる(図8)。
2)クレーン(図示せず)により、吊り治具10を濾過ユニット60の略直上に移動させ、吊り治具10の突条部と濾過ユニット60の係合孔の高さが略同じになるよう吊り上げ高さを調整する。
3)吊り治具10が開く(突条部間の距離Dが長くなる)ように吊り治具10の操作ハンドルを回転させ、吊り治具10の突条部の先端が、濾過ユニット60の側板に接する程度まで吊り治具10を開く(図8)。
4)クレーン(図示せず)により、吊り治具10を略水平に移動させ、吊り治具10の突条部の先端と濾過ユニット60の係合孔との位置が合致するよう、吊り治具10の位置を調整する。
5)吊り治具10が開く(突条部間の距離Dが長くなる)ように吊り治具10の操作ハンドルを回転させ、吊り治具10の突条部が、濾過ユニット60の係合孔に係合するよう吊り治具10を開く(図8)。
6)クレーン(図示せず)により、吊り治具10とともに濾過ユニット60を吊り上げ、所定の位置まで移動させる(図9)。所定の位置にて濾過ユニット60を静置した後、吊り治具10が閉じる(突条部間の距離Dが短くなる)ように吊り治具10の操作ハンドルを回転させ(図8)、濾過ユニット60の係合孔から吊り治具10の突条部を外す。
【0057】
以上のように、本発明の一実施形態に係る吊り治具を用いることで、濾過ユニットを吊り上げ、移動させることができる。
【0058】
ここまで、本発明に係る金属溶湯濾過ユニット用吊り治具を特定の実施形態によって説明したが、これらの実施形態に限定されることを意図していない。特に、本発明の金属溶湯濾過ユニット用吊り治具は、少なくとも一方の端部に扁平な略直方体形状の側板を含んで構成された金属溶湯濾過ユニットであって、当該側板に係合孔を有するものであれば、いかなる金属溶湯濾過ユニットに対しても適用され得ることに留意されたい。本発明の吊り治具が適用され得る濾過ユニットは、上述の特定の実施形態に例説された濾過ユニットに限定されない。本発明に包含され得る主題の範囲は、添付の請求の範囲によって定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の吊り治具によれば、構成部品が少ない簡潔な構造により、部品の歪みや故障リスクを軽減することが可能である。また、本発明の吊り治具は、より小さい力で操作可能であり、さらには、より安定した濾過ユニットの保持を可能とする。したがって、アルミニウム等の金属溶湯から不純物を濾過する場合の作業効率を向上させるものであり、そのような濾過作業が要求される金属工業や鋼鉄業等の様々な産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10:金属溶湯濾過ユニット用吊り治具
20a、20b:フレーム
21a、21b、21c:フレームを構成する線条部材
22a、22b、22c:突条部
23a、23b:枢動軸
24a、24b:回転軸支持部
25a、25b:胴部
26a、26b:第一脚部
27a、27b:第二脚部
28a、28b:補強部
29:補強板
30:架橋部
40:調整部
41:操作ハンドル
42:回転軸
50a、50b:宙吊り部
60:金属溶湯濾過ユニット
61a、61b:側板
62a、62b、62c、62d:係合孔
La:胴部の長さ
Lb:第一脚部の長さ
Lc:第二脚部の長さ
Ld:突条部の延設部分の長さ
Le:突条部の高さ
A:第一脚部の開き角度
B:胴部の開き角度
C、C’、C’’:傾斜角度
【要約】
部品の歪みや故障リスクを軽減し、より小さい力で操作可能な、又はより安定した金属溶湯濾過ユニットの保持が可能な金属溶湯濾過ユニット用吊り治具を提供することを課題とする。当該課題は、(1)一対のフレーム、(2)前記一対のフレームを連結する架橋部、ならびに(3)操作ハンドル及びこの操作ハンドルに接続された回転軸を有する調整部を含み、一対のフレームの各々は、下端近傍に突条部を有し、操作ハンドルを回転させることで、一対のフレームの各々と回転軸との螺嵌部間の距離を変動させ、架橋部と一対のフレームとの連結部の枢動軸を支点とした枢動によって一対のフレームの突条部間の距離を調整可能な機構を備える、金属溶湯濾過ユニット用吊り治具によって解決される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9