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特許7402389資材運用計画装置及び資材運用計画プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】資材運用計画装置及び資材運用計画プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20231214BHJP
   G06Q 10/087 20230101ALI20231214BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/087
H02J3/00 170
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019105935
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020201549
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】521436681
【氏名又は名称】株式会社ALGO ARTIS
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門脇 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 和樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 慧
(72)【発明者】
【氏名】小西 貴也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 英明
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-343630(JP,A)
【文献】特許第4669583(JP,B2)
【文献】特開2004-199324(JP,A)
【文献】ゲームAIで石炭火力発電所のプロセス属人化を解消。DeNAと関西電力が2020年までのシステム外販に向け協業,[online],2019年02月06日,[令和5年3月22日検索],インターネット<URL:https://ledge.ai/dena-kansai-electric/>
【文献】関西電力とDeNA、火力発電の燃料運用をAIで最適化--舞鶴発電所を取材,[online],2019年04月16日,[令和5年3月22日検索],インターネット<URL:https://japan.cnet.com/article/35135625/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
期間毎の、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件、資材の消費施設における消費量に関する条件及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件を含む前提条件と、前期間における前記運搬手段による資材の搬入量、前記貯蔵施設における資材の貯蔵量及び前記消費施設における資材の消費量の組み合わせからなる前期間の資材運用計画と、に基づいて、前記前期間よりも将来の期間における前記運搬手段による資材の搬入量、前記貯蔵施設における資材の貯蔵量及び前記消費施設における資材の消費量の組み合わせからなる次期間の資材運用計画を複数算出する資材運用計画算出手段と、
前記次期間における複数の資材運用計画毎に評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記次期間における複数の資材運用計画から有効な資材運用計画を選択する資材運用計画選択手段と、
を備え、
資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件は、前記貯蔵施設の使用可能性、前記貯蔵施設の貯蔵可能量を含み、
資材の消費施設における消費量に関する条件は、前記消費施設の稼働率、前記消費施設での資材の使用量を含み、
資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件は、前記運搬手段における資材の積載量、前記運搬手段から前記貯蔵施設への資材の搬入量を含み、
前記資材運用計画算出手段は、前記資材運用計画選択手段において選択された資材運用計画を新たな前期間における資材運用計画として、さらに次期間の資材運用計画を複数算出することを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項2】
請求項に記載の資材運用計画装置であって、
前記評価値は、運搬手段の状態、貯蔵施設における資材の貯蔵量、消費施設における資材の使用割合の少なくとも1つに応じて算出されることを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の資材運用計画装置であって、
前記資材運用計画選択手段は、前記次期間における複数の資材運用計画の状態について同じ状態の候補が重複して選択されることを避けるような処理を適用することを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の資材運用計画装置であって、
前記資材は、石炭であり、前記貯蔵施設は、サイロであり、前記消費施設は、ボイラであり、前記運搬手段は、船舶であり、
資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件は、サイロ毎の使用可能性、サイロ毎の石炭の貯蔵可能量であり、
資材の消費施設における消費量に関する条件は、ボイラ毎の稼働率、ボイラ毎において使用される石炭種及び使用量であり、
資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件は、船舶に積載された石炭種及び積載量、船舶からサイロへの石炭の搬入量である、
ことを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項5】
請求項に記載の資材運用計画装置であって、
前記評価値は、船舶に積載されている石炭種及び積載量、サイロにおける石炭の残量及び石炭の貯蔵できる残存猶予、ボイラで使用する石炭割合切替率、使用する石炭種及び使用量に基づいてCO2,NOxの排出量の少なくとも1つに応じて算出されることを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項6】
請求項に記載の資材運用計画装置であって、
前記船舶の停泊日数が長いほど前記評価値を下げる、サイロの残量が少なくなるほど評価値を下げる、サイロで貯蔵できる残存猶予が少なくなるほど評価値を下げる、ボイラでの燃焼における石炭割合切替率が高いほど評価値を下げる、CO2,NOxの排出量が高いほど評価値を下げる、ことを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の資材運用計画装置であって、
前記資材運用計画選択手段は、サイロに貯蔵されている石炭種の組み合わせが同じである状態を所定数以上は選択しないことを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項8】
請求項に記載の資材運用計画装置であって、
前記資材運用計画選択手段は、サイロに貯蔵されている石炭種の組み合わせが同じである状態であって石炭の貯蔵量の差が所定値以上である状態を選択することを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の資材運用計画装置であって、
前記資材運用計画選択手段は、バースに停泊している船舶の組み合わせが等しい状態を所定数以上は選択しないことを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項10】
請求項に記載の資材運用計画装置であって、
前記資材運用計画選択手段は、バースに停泊している船舶の組み合わせが等しい状態であって石炭の積載量の差が所定値以上である状態を選択することを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の資材運用計画装置であって、
前記資材運用計画選択手段は、バースに停泊している船舶及び当該船舶に積載されている石炭種の組み合わせが等しい状態を所定数以上は選択しないことを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の資材運用計画装置であって、
予め定められた将来の期間における条件に基づいて次期間において満たすべき状態を逆算し、前記資材運用計画算出手段において求められた次期間の状態のうち当該満たすべき状態を満たしている状態を選択する先読み選択手段をさらに備えることを特徴とする資材運用計画装置。
【請求項13】
コンピュータを、
期間毎の、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件、資材の消費施設における消費量に関する条件及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件を含む前提条件と、前期間における前記運搬手段による資材の搬入量、前記貯蔵施設における資材の貯蔵量及び前記消費施設における資材の消費量の組み合わせからなる前期間の資材運用計画と、に基づいて、前記前期間よりも将来の期間における前記運搬手段による資材の搬入量、前記貯蔵施設における資材の貯蔵量及び前記消費施設における資材の消費量の組み合わせからなる次期間の資材運用計画を複数算出する資材運用計画算出手段と、
前記次期間における複数の資材運用計画毎に評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記次期間における複数の資材運用計画から有効な資材運用計画を選択する資材運用計画選択手段と、
として機能させ、
資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件は、前記貯蔵施設の使用可能性、前記貯蔵施設の貯蔵可能量を含み、
資材の消費施設における消費量に関する条件は、前記消費施設の稼働率、前記消費施設での資材の使用量を含み、
資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件は、前記運搬手段における資材の積載量、前記運搬手段から前記貯蔵施設への資材の搬入量を含み、
前記資材運用計画算出手段は、前記資材運用計画選択手段において選択された資材運用計画を新たな前期間における資材運用計画として、さらに次期間の資材運用計画を複数算出することを特徴とする資材運用計画プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資材運用計画装置及び資材運用計画プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等のプラントでは様々な種類の燃料が使用されており、異なる特性をもつ多用な燃料を運搬船から受け入れてから複数の貯蔵施設を経由してプラントで使用されるまでを安全、確実かつ効率良くスケジューリングする技術が求められている。
【0003】
発電機の起動や停止を計画する技術が開示されている(特許文献1)。当該技術では、系統規模の拡大に伴う計算時間の増加に対して、高速に解を得ることのできる優先リスト法を導入している。得られた優先リスト法による解を基にして、さらに複数個の初期解を生成し、この解の中で良くなる見込みのある解だけに短時間で良質な解を生成するいくつかのヒューリスティック手法を適用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-064901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料等の資材の運用はプラントの使用状況等に応じて、その都度、見直す必要がある。このような資材の運用計画は、検討すべき要素が多く、それらが複雑に関係しているため、熟練の担当者が行っているのが現状である。しかしながら、非常に高い熟練度を必要し、計画の作成に長い時間が掛かるという問題がある。また、少数の熟練技術者のノウハウにプラントの運用計画が強く依存することになっている。
【0006】
一方、このような資材運用計画をコンピュータを用いて作成する場合、取り得る状態を全探索する際に莫大な計算リソースを使用することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、期間毎の、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件、資材の消費施設における消費量に関する条件及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件を含む前提条件と、前期間における前記運搬手段による資材の搬入量、前記貯蔵施設における資材の貯蔵量及び前記消費施設における資材の消費量の組み合わせからなる前期間の資材運用計画と、に基づいて、前記前期間よりも将来の期間における前記運搬手段による資材の搬入量、前記貯蔵施設における資材の貯蔵量及び前記消費施設における資材の消費量の組み合わせからなる次期間の資材運用計画を複数算出する資材運用計画算出手段と、前記次期間における複数の資材運用計画毎に評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記次期間における複数の資材運用計画から有効な資材運用計画を選択する資材運用計画選択手段と、を備え、前記資材運用計画算出手段は、前記資材運用計画選択手段において選択された資材運用計画を新たな前期間における資材運用計画として、さらに次期間の資材運用計画を複数算出することを特徴とする資材運用計画装置である。
【0008】
本発明の別の態様は、コンピュータを、期間毎の、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件、資材の消費施設における消費量に関する条件及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件を含む前提条件と、前期間における前記運搬手段による資材の搬入量、前記貯蔵施設における資材の貯蔵量及び前記消費施設における資材の消費量の組み合わせからなる前期間の資材運用計画と、に基づいて、前記前期間よりも将来の期間における前記運搬手段による資材の搬入量、前記貯蔵施設における資材の貯蔵量及び前記消費施設における資材の消費量の組み合わせからなる次期間の資材運用計画を複数算出する資材運用計画算出手段と、前記次期間における複数の資材運用計画毎に評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記次期間における複数の資材運用計画から有効な資材運用計画を選択する資材運用計画選択手段と、として機能させ、前記資材運用計画算出手段は、前記資材運用計画選択手段において選択された資材運用計画を新たな前期間における資材運用計画として、さらに次期間の資材運用計画を複数算出することを特徴とする資材運用計画プログラムである。
【0009】
ここで、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件は、前記貯蔵施設の使用可能性、前記貯蔵施設の貯蔵可能量を含み、資材の消費施設における消費量に関する条件は、前記消費施設の稼働率、前記消費施設での資材の使用量を含み、資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件は、前記運搬手段における資材の積載量、前記運搬手段から前記貯蔵施設への資材の搬入量を含む、ことが好適である。
【0010】
また、前記評価値は、運搬手段の状態、貯蔵施設における資材の貯蔵量、消費施設における資材の使用割合の少なくとも1つに応じて算出されることが好適である。
【0011】
また、前記資材運用計画選択手段は、前記次期間における複数の資材運用計画の状態について同じような状態の候補が重複して選択されることを避けるような処理を適用することが好適である。
【0012】
また、前記資材は、石炭であり、前記貯蔵施設は、サイロであり、前記消費施設は、ボイラであり、前記運搬手段は、船舶であり、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件は、サイロ毎の使用可能性、サイロ毎の石炭の貯蔵可能量であり、資材の消費施設における消費量に関する条件は、ボイラ毎の稼働率、ボイラ毎において使用される石炭種及び使用量であり、資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件は、船舶に積載された石炭種及び積載量、船舶からサイロへの石炭の搬入量である、ことが好適である。
【0013】
また、前記評価値は、船舶に積載されている石炭種及び積載量、サイロにおける石炭の残量及び石炭の貯蔵できる残存猶予、ボイラで使用する石炭割合切替率、使用する石炭種及び使用量に基づいてCO,NOの排出量の少なくとも1つに応じて算出されることが好適である。
【0014】
また、前記船舶の停泊日数が長いほど前記評価値を下げる、サイロの残量が少なくなるほど評価値を下げる、サイロで貯蔵できる残存猶予が少なくなるほど評価値を下げる、ボイラでの燃焼における石炭割合切替率が高いほど評価値を下げる、CO,NOの排出量が高いほど評価値を下げる、ことが好適である。
【0015】
また、前記資材運用計画選択手段は、サイロに貯蔵されている石炭種の組み合わせが同じである状態を所定数以上は選択しないことが好適である。
【0016】
また、前記資材運用計画選択手段は、サイロに貯蔵されている石炭種の組み合わせが同じである状態であって石炭の貯蔵量の差が所定値以上である状態を選択することが好適である。
【0017】
また、前記資材運用計画選択手段は、バースに停泊している船舶の組み合わせが等しい状態を所定数以上は選択しないことが好適である。
【0018】
また、前記資材運用計画選択手段は、バースに停泊している船舶の組み合わせが等しい状態であって石炭の積載量の差が所定値以上である状態を選択することが好適である。
【0019】
また、前記資材運用計画選択手段は、バースに停泊している船舶及び当該船舶に積載されている石炭種の組み合わせが等しい状態を所定数以上は選択しないことが好適である。
【0020】
また、予め定められた将来の期間における条件に基づいて次期間において満たすべき状態を逆算し、前記資材運用計画算出手段において求められた次期間の状態のうち当該満たすべき状態を満たしている状態を選択する先読み選択手段をさらに備えることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、与えられた条件に応じて短時間で効率化された資材運用計画を作成する資材運用計画装置及び資材運用計画プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態における資材運用計画装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における資材運用計画処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態における入力データの例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における入力データの例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における入力データの例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における資材運用経過の算出処理の例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における資材運用経過の算出処理の例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における資材運用経過の状態の絞り込みを説明する図である。
図9】本発明の実施の形態における資材運用経過の状態の絞り込みを説明する図である。
図10】本発明の変形例1における資材運用計画処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の変形例1における先読み処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態における資材運用計画装置100は、図1に示すように、処理部10、記憶部12、入力部14、出力部16及び通信部18を含んで構成される。処理部10は、CPU等の演算処理を行う手段を含む。処理部10は、記憶部12に記憶されている資材運用計画プログラムを実行することによって、資材の搬送・搬入、貯蔵、使用等を行うための資材運用計画を作成する機能を実現する。記憶部12は、半導体メモリやメモリカード等の記憶手段を含む。記憶部12は、処理部10とアクセス可能に接続され、資材運用計画プログラム、その処理に必要な情報を記憶する。入力部14は、情報を入力する手段を含む。入力部14は、例えば、資材運用計画の担当者からの情報の入力を受けるキーボード、タッチパネル、ボタン等を備える。出力部16は、担当者から入力情報を受け付けるためのユーザインターフェース画面(UI)等の処理結果を出力する手段を含む。出力部16は、例えば、画像を呈示するディスプレイを備える。通信部18は、ネットワーク102を介して、外部端末や船舶等との情報の通信を行うインターフェースを含んで構成される。通信部18による通信は有線及び無線を問わない。
【0024】
本実施の形態では、火力発電所における石炭の搬送・搬入、貯蔵及び使用(燃焼)について資材運用計画を作成する例について説明する。ただし、本発明の適用範囲は、これに限定されるものではなく、資材を使用するプラントや工場等における様々な資材の搬送・搬入、貯蔵及び使用についての資材運用計画の作成に適用することができる。
【0025】
以下、図2のフローチャートに沿って、本実施の形態における資材運用計画処理について説明する。
【0026】
ステップS10では、前提条件の設定処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、資材運用計画装置100は前提条件設定手段として機能する。資材運用計画装置100における資材の運用計画の作成では、資材の搬送・搬入、貯蔵、使用等に関する設備の要件や運用上の制限を示す前提条件が設定される。
【0027】
前提条件は、資材の貯蔵施設における資材の貯蔵量に関する条件、資材の消費施設における資材の消費量に関する条件、及び資材を搬入する運搬手段による資材の搬入量に関する条件を含む。
【0028】
本実施の形態では、火力発電所におけるミル毎のサイロ数、ボイラ数、船舶が停泊するためのバース(港)数が前提条件として設定される。また、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する条件として、火力発電所を運用する期間(日時)毎におけるサイロ毎の使用可能性及びサイロ毎の貯蔵可能量が設定される。また、資材の消費施設における消費量に関する条件として、ボイラ毎の稼働率、ボイラで使用されている石炭種及び使用時の割合が設定される。また、資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する条件として、船舶毎の積載されている石炭種及び積載量が設定される。さらに、各施設間の石炭の搬送速度や石炭の最小搬送単位等が前提条件として設定される。
【0029】
資材運用計画を作成する期間は、例えば、半日毎(毎日の午前・午後)、1時間毎等の所定の定められた期間とすることができる。期間毎に前提条件が異なる場合、当該定められた期間毎に前提条件を設定してもよい。
【0030】
ただし、前提条件は、これらの条件に限定されるものではなく、資材運用計画装置100における資材運用計画の作成に必要となる条件であればよい。
【0031】
ステップS12では、入力データの取得処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、資材運用計画装置100はデータ取得手段として機能する。資材運用計画装置100における資材の運用計画の作成では、入力データとして、初期状態又は前期間における資材管理に関する状態を示すデータを取得する。
【0032】
本実施の形態では、入力データは、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関するデータ、資材の消費施設における消費量に関するデータ、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関するデータを含む。資材の貯蔵施設における貯蔵量に関するデータは、貯蔵設備であるサイロ毎の石炭種及び貯蔵量を含むデータとする。ここで、1つのサイロに複数種の石炭を貯蔵させる場合、例えば、サイロの上部領域に貯蔵させる石炭種と下部領域に貯蔵させる石炭種とを分けてデータを取得してもよい。また、資材の消費施設における消費量に関するデータは、石炭を燃焼させるボイラ毎の使用石炭種及び使用量を含むデータとする。また、1つのボイラで複数の石炭を混ぜて燃焼させる場合、主となる石炭種、副となる石炭種及びその混合率のデータを取得してもよい。また、資材を搬入する運搬手段により搬入量に関するデータは、バース毎の停泊船舶、当該船舶に積載されている石炭種及び積載量、バースに停泊していない待機中の船舶、当該船舶に積載されている石炭種及び積載量を含むデータとする。
【0033】
ただし、入力データは、これらに限定されるものではなく、資材運用計画装置100における資材運用計画の作成に必要なデータであればよい。
【0034】
また、入力データは、資材運用の一状態を表わすデータに限定されるものではなく、複数の状態を表わすデータであってもよい。例えば、後述するステップS14において算出され、ステップS16において選択された資材運用計画の状態を示すデータを前期間の資材運用の状態を示す入力データとして取得する場合、入力データは複数の状態を示すデータとなる。
【0035】
図3図5は、入力データの例を示す。図3は、資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する入力データの例を示す。各バース(バース1,2)に停泊している船舶の船舶ID、当該船舶が積載している石炭種及び搭載量、バースに停泊せずに待機している船舶の船舶ID、当該船舶が積載している石炭種及び搭載量が入力データとされている。図4は、資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する入力データの例を示す。各サイロ(サイロ1~3)に貯蔵されている石炭種及び貯蔵量が入力データとされている。ここでは、各サイロにおいて上・下に異なる石炭種が貯蔵されている例を示している。図5は、資材の消費施設における消費量に関する入力データの例を示す。各ボイラ(ボイラ1,2)において消費される石炭種(主・副)及び使用量が入力データとされている。なお、本例では、2019/5/1AMの入力データが初期状態における資材管理に関する状態を示すデータとして使用される。また、2019/5/1PM以降のデータは、各期間に対して最終的に設定された1つの状態を資材運用計画として示しているが、後述するステップS18において資材運用計画とする状態の候補が複数選択された場合、入力データは複数の状態を示すデータとなる。
【0036】
ステップS14では、将来の期間における資材運用計画の算出処理が行われる。当該ステップにおける処理によって、資材運用計画装置100は資材運用計画算出手段として機能する。処理部10は、ステップS10において設定された前提条件及びステップS12において設定された入力データに基づいて、将来の期間における資材の運用について各施設の取り得る状態を探索する。
【0037】
具体的には、ステップS12において入力された資材の貯蔵施設における貯蔵量に関するデータ、資材の消費施設における消費量に関するデータ、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関するデータを前期間における資材運用の基礎データとして、ステップS10において設定された前提条件を満たすように次期間における資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する状態、資材の消費施設における消費量に関する状態、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する状態を求める。すなわち、前提条件として設定された次期間のボイラ毎の稼働率、ボイラで使用されている石炭種及び使用時の割合、各施設間の石炭の搬送速度に基づいて、貯蔵設備であるサイロ毎の石炭種及び貯蔵量からどのサイロからどのボイラへどれぐらいの量の石炭を搬送すればよいかを求める。このとき、1つのボイラで複数の石炭を混ぜて燃焼させる場合、主となる石炭種、副となる石炭種及びその混合率のデータを用いて、異なる種類の石炭を貯蔵している複数のサイロから1つのボイラへ石炭を搬送することを考慮してもよい。
【0038】
また、前提条件として設定されたサイロ毎の使用可能性及びサイロ毎の貯蔵可能量並びに船舶毎の積載されている石炭種及び積載量に基づいて、どのバース(港)にどの船舶を停泊させて、停泊させたどの船舶からどれぐらいの量の石炭をどのサイロに搬送すればよいかを求める。このとき、1つのサイロに複数種の石炭を貯蔵させることになっている場合、サイロの上部領域に貯蔵させる石炭種と下部領域に貯蔵させる石炭種とを積み重ねて貯蔵することを考慮してもよい。これによって、前期間における資材の貯蔵施設における貯蔵量に関するデータ、資材の消費施設における消費量に関するデータ、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関するデータに基づいて、次期間における資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する状態、資材の消費施設における消費量に関する状態、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する状態が算出される。
【0039】
すなわち、次期間において、どのバース(港)にどの船舶を停泊させるか、バース(港)に停泊しているどの船舶からどのサイロにどの程度の量の石炭を搬送するか、どのサイロからどのボイラにどの程度の量の石炭を搬送するか、どのボイラでどの程度の量の石炭を燃焼させて消費するか、を定める。そして、そのような船舶の動き、石炭の搬送、石炭の消費を行った後のバースへの船舶の停泊の状態(停泊日数等)、船舶に積載された石炭の量、各サイロに残留する石炭の量、各ボイラに残留する石炭の量、各ボイラにおける石炭の割合切替率、使用石炭・量に基づくCO,NOの排出量を算出する。
【0040】
これによって、次期間での資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する状態、資材の消費施設における消費量に関する状態、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する状態が求められる。
【0041】
ここで、前提条件及び入力データに基づいて算出される次期間のおける資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する状態、資材の消費施設における消費量に関する状態、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する状態の組み合わせは1つに定められない。そこで、処理部10は、次期間における資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する状態、資材の消費施設における消費量に関する状態、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する状態として取り得る組み合わせを次期間の状態の候補として複数求める。例えば、前期間の各施設の状態を示す入力データが100通りであった場合、前提条件を満たすような次期間の各施設が取り得る状態の候補は10000通り以上になる場合がある。
【0042】
図6及び図7は、各期間における各バースに停泊している船舶の船舶ID、当該船舶から各サイロに搬送される石炭種及び搬送量、各サイロから各ボイラに搬送される石炭種及び搬送量の例を示す。当該、石炭の搬送及び使用に対応して次期間における各船舶に残留する石炭の積載量、各サイロに残留する石炭の貯蔵量、各ボイラで使用される石炭の使用量等を算出することができる。図6及び図7では一例として各期間について資材運用計画として最終的に設定された値のみを示しているが、上記の通り、実際には前提条件を満たすような石炭の搬送量や次期間の船舶、サイロ及びボイラの状態等は様々な組み合わせが可能であるので当該ステップでは前提条件を満たす様々な組み合わせを算出する。
【0043】
ステップS16では、次期間に対して求められた複数の状態の候補に対して各々の評価値を算出する。当該ステップにおける処理によって、資材運用計画装置100は、評価値算出手段として機能する。処理部10は、ステップS14において算出された次期間での資材の貯蔵施設における貯蔵量に関する状態、資材の消費施設における消費量に関する状態、及び資材を搬入する運搬手段により搬入量に関する状態の組み合わせである状態の候補毎に評価値を算出する。評価値は、資材運用計画において評価するべき内容に応じて算出する。
【0044】
本実施の形態では、各バースにおける船舶の停泊日数、各サイロにおける石炭の残量及び石炭の貯蔵できる残存猶予、各ボイラで使用する石炭割合切替率に基づいて評価値を算出する。すなわち、各バースにおける船舶の停泊日数が長くなるほど停泊費用が嵩むことになるので、船舶の停泊日数が長くなるほど低い評価値となるようにする。また、各サイロにおける石炭の残量が所定値(例えば、満貯蔵値に対して10%)以下になると石炭の不足が懸念されることになるので、石炭の残量が当該所定値以下である場合には残量が少なくなるほど低い評価値となるようにする。また、各サイロにおいて石炭の貯蔵量が所定値(例えば、石炭を貯蔵できる満貯蔵量の90%)以上になるとさらに貯蔵量を増加させる残存猶予の不足が懸念されることになるので、石炭の貯蔵量が当該所定値以上である場合には貯蔵量が多くなるほど低い評価値となるようにする。複数の条件に対する評価値を組み合わせる場合、各条件について重み付けをして加算して総合的な評価値を算出したり、各条件に対する評価値を予め定められた関数に代入して総合的な評価値を算出したりしてもよい。
【0045】
また、評価値を求める際に評価する内容はこれらに限定されるものではない。例えば、使用する石炭種及び使用量に基づいてCO,NOの排出量を算出し、当該排出量が御多いほど評価値が低くなるようにしてもよい。
【0046】
ステップS18では、評価値に基づいて次期間における資材管理計画の候補の絞り込みを行う。当該ステップにおける処理によって、資材運用計画装置100は、資材管理計画選択手段として機能する。処理部10は、いわゆるビームサーチを適用して、ステップS16において算出された評価値に基づいて次期間の資材管理計画の候補となる状態の絞り込みを行う。具体的には、図8に示すように、ステップS14において求められた複数の次期間の状態の候補からステップS16において算出された評価値が高い順に状態を選択する。例えば、ステップS14において10000通り求められた次期間の状態の候補から評価値が高い順に100通りの状態を選択する。
【0047】
当該状態の絞り込み処理において、同じような状態の候補が重複して選択されることを避けるような処理を適用してもよい。例えば、ステップS14において求められた複数の次期間の状態において各バースに停泊している船舶の相違、各サイロに貯蔵されている石炭種の相違等の資材の数量以外の状況に基づいて、資材の数量以外が同じような状態が重複して選択されることを避けるような処理を行うことが好適である。
【0048】
例えば、ステップS14において求められた次期間の状態において各サイロに貯蔵されている石炭種に着目して、各サイロに貯蔵されている石炭種の組み合わせが等しい状態が所定数以上選択されないような処理とする。
【0049】
図9は、ステップS14において求められた次期間においてサイロ1~3に貯蔵されている石炭種及び貯蔵量の組み合わせの例を示す。状態1と状態3では、サイロ1には石炭A(上積)及び石炭B(下積)、サイロ2には石炭C(下積)、サイロ3には石炭D(下積)が貯蔵されており、互いに貯蔵されている石炭の種類は同じである。一方、状態1ではサイロ1の石炭Aの貯蔵量は10000であり、石炭Bの貯蔵量は3000であるのに対して、状態3ではそれぞれ40000及び10000であり、石炭の貯蔵量は互いに異なっている。また、状態1ではサイロ1には石炭A(上積)及び石炭B(下積)が貯蔵されているのに対して、状態2ではサイロ1には石炭D(上積)及び石炭B(下積)が貯蔵されており、貯蔵されている石炭種が異なっている。このような場合、各サイロの貯蔵されている石炭種の組み合わせが同じである状態1と状態3とが重複して選択され難くする処理を行う。
【0050】
具体的には、各サイロの貯蔵されている石炭種の組み合わせについてハッシュ値を算出する。また、同じハッシュ値の状態については貯蔵されている石炭量の差を表わす状態間の距離を算出する。例えば、図9の例では、状態1と状態3のそれぞれの石炭の貯蔵量の差の絶対値の和を状態1と状態3との距離として算出する。具体的には、石炭Aの貯蔵量の差の絶対値abs(10000-40000)+石炭Bの貯蔵量の差の絶対値abs(30000-10000)=50000を状態1と状態2との距離とする。そして、状態の候補から評価値の高い順に状態を選択する際に、同じハッシュ値の状態が選択されていなければその状態を選択する。また、同じハッシュ値の状態がすでに所定数(例えばK個)以上選択されていれば、その状態は選択しないこととする。一方、同じハッシュ値の状態が選択されているが、すでに選択されている数が所定数(例えばK個)未満である場合、すでに選択されている同じハッシュ値の状態との距離が所定の閾値(例えば、閾値M)以上であればその状態を選択する。閾値Mは、すでに選択された同じハッシュ値の状態の数に応じて変更するようにしてもよい。例えば、閾値Mの初期値TI、既に選択された同じハッシュ値の状態数n、閾値Mの増加値TSとして、閾値M=初期値TI+(状態数n-1)×増加値TSとすることが好適である。このように、すでに選択された同じハッシュ値の状態の数が増加するほど状態間の距離に対する閾値Mを大きくすることによって、すでに選択されている同じハッシュ値の状態の数が多いほど距離が離れていることを要求するようにすることができる。このような選択処理を、選択された状態が所定数(例えばN個)に到達するまで繰り返す。
【0051】
このような状態の選択処理とすることで、同じような状態の候補が次期間の状態として重複して選択されることを避けることができ、資材運用計画のバリエーションの幅を拡げることができる。
【0052】
なお、同様に、各バースに停泊している船舶に着目して、各バースに停泊している船舶の組み合わせが等しい状態が所定数以上選択されないような処理としてもよい。具体的には、各バースに停泊している船舶の組み合わせについてハッシュ値を算出し、同じハッシュ値の状態がすでに所定数(例えばK個)以上選択されていれば、その状態は選択しないようにすればよい。さらに、各バースに停泊している船舶及び当該船舶に積載されている石炭種に着目して、各バースに停泊している船舶及び当該船舶に積載されている石炭種の組み合わせが等しい状態が所定数以上選択されないような処理としてもよい。具体的には、各バースに停泊している船舶及び当該船舶に積載されている石炭種の組み合わせについてハッシュ値を算出し、同じハッシュ値の状態がすでに所定数(例えばK個)以上選択されていれば、その状態は選択しないようにすればよい。このとき、上記と同様に、石炭の積載量の差を状態の差として算出して、同じハッシュ値の状態については状態の差が所定値以上離れている状態のみを選択するようにしてもよい。
【0053】
また、複数の状態を組み合わせてハッシュ値を求めるようにしてもよい。例えば、各サイロの貯蔵されている石炭種及び各バースに停泊している船舶の組み合わせについてハッシュ値を算出し、同じハッシュ値の状態がすでに所定数(例えばK個)以上選択されていれば、その状態は選択しないようにしてもよい。
【0054】
なお、着目する状態については、これらに限定されるものではなく、選択される状態のバリエーションを増やしたい状態について適用すればよい。
【0055】
また、状態を選択する際に、ステップS14において求められた状態に資材運用において許されていない状態が含まれている場合には当該状態は選択されないようにする。状態の選択を制約する条件は、各ボイラにおいて燃焼させる石炭種の組み合わせ(混焼割合)、船舶やサイロにおいて積載又は貯蔵できる石炭種の組み合わせ、サイロに貯蔵できる石炭量(サイロ容量)、船舶を停泊させるバースの使用可能性、サイロの使用可能性、ボイラの使用可能性(燃焼試験を行う期間におけるボイラの使用可能性やコンパネ養生を行う期間の使用可能性等)とすることができる。各ボイラにおいて燃焼させる石炭種の組み合わせ(混焼割合)は、各ボイラで燃焼させることができる石炭種の組み合わせ及びその混合割合を混焼マトリクスとして記憶部12に予め記憶させておけばよい。また、船舶やサイロにおいて積載又は貯蔵できる石炭種の組み合わせは、船舶やサイロにおいて積載又は貯蔵できる石炭種の組み合わせを記憶部12に予め記憶させておけばよい。その他の制約条件についても、記憶部12に予め記憶させておけばよい。そして、ステップS14において求められた状態に満たすべき制約条件を満たさない状態が含まれている場合には選択対象から予め除外するようにしてもよい。
【0056】
ステップS20では、必要な期間について資材管理計画の状態が選択されたか否かが判定される。当該ステップにおける処理によって、資材運用計画装置100は、判定手段として機能する。もし、資材管理計画において必要な全期間に亘って状態が選択された場合にはステップS22に処理を移行させ、そうでない場合にはステップS12に処理を戻す。
【0057】
ステップS12に処理を戻した場合、ステップS18において選択された次期間の状態を前期間の状態を示す新たな入力データとして、ステップS14~S18においてさらに次の期間についての状態を求める処理を繰り返す。
【0058】
このとき、ステップS18において複数の状態が選択されている場合には、それぞれの状態を前期間の状態として各々の状態に対してさらに次の期間における状態を複数求めることになる。そして、ステップS18において再度選択処理を行う際に、さらに次の期間に対して求められたすべての状態から評価値に基づいて所定数の状態を選択する。このようなビームサーチを適用することによって、各期間において選択される状態の数を一定に保つことができ、ステップが進むにつれて求めなければならない次期間の状態の候補の数が発散してしまうことを防ぐことができる。
【0059】
ステップS22では、最終的な資材管理計画を設定する。当該ステップにおける処理によって、資材運用計画装置100は、資材運用計画決定手段として機能する。処理部10は、最後にステップS16において算出された評価値に基づいて、最も評価値が高かった状態を選択する。そして、当該選択された状態から当該状態に至るまでの過去の期間における状態を初期状態まで遡り、それらを最終的な資材運用計画として決定する。
【0060】
以上のように、本実施の形態における資材運用計画装置100によれば、与えられた条件に応じて短時間で効率化された資材運用計画を作成する資材運用計画装置及び資材運用計画プログラムを提供することができる。特に、同じような状態の候補が重複して選択されないようにすることによって、繰り返し算出されたる資材運用計画のバリエーションの幅を拡げることができ、より適切な資材運用計画を策定することができる。
【0061】
[変形例1]
上記実施の形態では、資材運用計画を作成するための各期間における状態を求める際に将来の状況について判断することなく処理を行う態様としたが、将来において要求される条件を満たすことができないことを予め判断し、そのような状態を探索の対象外とするようにしてもよい。
【0062】
具体的には、図10のフローチャートに示すように、ステップS18における状態の絞り込み処理の前に新たにステップS24における先読み選択処理を行う。当該変形例1における処理は、上記実施の形態に対してステップS24における処理のみ異なるので当該ステップにおける処理についてのみ説明する。
【0063】
ステップS24では、ステップS14において求められた次期間の状態について、さらに将来の期間において満たすべき条件を満たすことができるか否かを判定する。当該ステップにおける処理によって、資材運用計画装置100は先読み選択手段として機能する。処理部10は、予め定められた将来の期間における条件に基づいて、ステップS14において求められた次期間の状態の各々が当該条件を満たすことができるものであるか否かを判定する。具体的には、資材の搬送・搬入、貯蔵、使用等に関する設備の要件や運用上の制限を示す前提条件に基づいて、予め定められた将来の期間における条件からステップS14において対象となっている次期間において満たすべき状態を逆算し、当該状態をステップS14において求められた次期間の状態が満たしているかを判定する。
【0064】
例えば、所望の石炭種の石炭を用いてボイラでの燃焼試験を行う場合、燃焼試験を行うべき期間において所定のボイラに所望の石炭種の石炭を供給できるか否かを先読み判定する。具体的には、将来の試験を考慮したときに船舶から供給される石炭を考慮したうえでもその時点において保有しておかなければならない石炭の量を下回った場合について判定を行う。
【0065】
図11は、燃焼試験において所定の期間に所定のサイロに保有しておかなければならない石炭の量を逆算にて算出する方法の例を示す。ターン4及び5における燃焼試験で10000の石炭を使用する場合、少なくともターン5の前に10000の石炭の貯蔵が必要であり、ターン4の前に20000の石炭の貯蔵が必要となる。そこで、バースへ停泊できる船舶に積載されている石炭の積載量(すなわち、船舶から供給可能な石炭量)及び船舶からサイロに搬送できる石炭量を考慮して現時点のターン1まで貯蔵が必要な石炭量を逆算する。このように逆算された必要な石炭貯蔵量を基準として、ステップS14において求められた状態において当該石炭貯蔵量を満たしているか否かを判定する。そして、当該石炭貯蔵量を満たしていない状態を除外して、ステップS18における状態の絞り込み処理を行う。
【0066】
このように、将来に満たすべき条件に基づいて現時点において必要な状態が満たされているか否かを判断することによって、ステップS18において絞り込みの対象となる状態の数を減らすことができる。
【0067】
なお、先読み処理の適用範囲は、燃焼試験における石炭量に限定されるものでなく、他の状態について適用してもよい。例えば、将来の試験の対象となる石炭種に対して他の石炭種が先に消費できる貯蔵量以上にサイロに下積されているか否かをボイラでの石炭の消費可能量に基づいて逆算して、現時点の貯蔵量が条件を満足しているか否かを判定するようにしてもよい。また、例えば、将来において空にしておく必要があるサイロに消費できない量の石炭が貯蔵されているか否かをボイラでの石炭の消費可能量に基づいて逆算して、現時点の貯蔵量が条件を満足しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態及び変形例1では、火力発電所における石炭の搬送・搬入、貯蔵、使用等を行うための資材運用計画を作成する例について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、天然ガスや他の資源の搬送・搬入、貯蔵、使用等を行うプラントにおける資材運用計画を作成する状況にも適用可能である。さらに、装置製造工場において部品の搬送・搬入、倉庫での部品の保管、工場での部品の使用等を行う際の資材運用計画を作成する状況にも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 処理部、12 記憶部、14 入力部、16 出力部、18 通信部、100 資材運用計画装置、102 ネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11