(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】付加製造のための生体適合性ポリマー粉末
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20231214BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20231214BHJP
B29C 64/214 20170101ALI20231214BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20231214BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231214BHJP
【FI】
B29C64/153
B33Y70/10
B29C64/214
B29C64/218
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2020512681
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018073424
(87)【国際公開番号】W WO2019043137
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-27
(32)【優先日】2017-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル ゲンチュ
(72)【発明者】
【氏名】モハンマド ニコウカル
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン アクレマン
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュ パテル
(72)【発明者】
【氏名】ミリン シャー
(72)【発明者】
【氏名】トム タイス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス カーラウ
(72)【発明者】
【氏名】ロザリオ リツィオ
(72)【発明者】
【氏名】チエン-フォン チャン
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0018942(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104441668(CN,A)
【文献】国際公開第2017/063352(WO,A1)
【文献】特表2002-527144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312037(US,A1)
【文献】特表2007-515392(JP,A)
【文献】特開2007-277546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~150μmの範囲のD50を有する極低温粉砕されたポリマー粒子および流動助剤を含む、三次元印刷用の易流動生体適合性ポリマー粉末であって、
ここで、前記流動助剤が、0.1~10μmの範囲のD50を有する球状の易流動生体適合性ポリマー粒子を含む、前記ポリマー粉末。
【請求項2】
前記粒子が、20~100μmの範囲のD50を有し、前記粒子が、≦60μmの範囲のD90~D10を有する、請求項1記載のポリマー粉末。
【請求項3】
前記粉末が、微量の界面活性剤を含有する、請求項1記載のポリマー粉末。
【請求項4】
前記粉末が、微量の塩および界面活性剤を含有する、請求項1記載のポリマー粉末。
【請求項5】
前記粒子が、ブレード系またはロール系の粉末系3D印刷機で加工される、請求項1記載のポリマー粉末。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリアリールケトン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー
、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレートまたはポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)を含有するコポリマーおよびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載のポリマー粉末。
【請求項7】
前記ポリマーが、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー
、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ酸無水物、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタンおよびそのコポリマーならびにそれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1記載のポリマー粉末。
【請求項8】
さらに、カプセル化バイオセラミックス、生体分子または生物活性剤を含む、請求項1記載のポリマー粉末。
【請求項9】
前記流動助剤が、0.5~10重量%の範囲の濃度を有する、請求項1記載のポリマー粉末。
【請求項10】
(a)1~150μmの範囲のD50を有する極低温粉砕されたポリマー粉末粒子と、
(b)0.1~10μmの範囲のD50を有する球状の易流動生体適合性ポリマー粉末粒子を含む流動助剤とを含み、
(a)の前記ポリマー粉末粒子は、生体適合性ポリマーまたは生分解性ポリマーを含む、
粉末加工技術における使用のための、改善された流動性を有する組成物。
【請求項11】
前記流動助剤が、(a)の前記ポリマー粉末粒子とは異なるポリマー粉末粒子である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
(a)の前記ポリマー粉末粒子が、ポリアリールケトン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー
、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレートまたはポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)を含有するコポリマーおよびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせを含む、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
(a)の前記ポリマー粉末粒子が、ポリカプロラクトンまたはポリジオキサノンを含む、請求項10記載の組成物。
【請求項14】
(a)の前記ポリマー粉末粒子の平均粒径が、500μm以下である、請求項10記載の組成物。
【請求項15】
前記流動助剤が、非晶質カルシウム塩を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項16】
前記流動助剤の平均粒径が、250μm以下である、請求項10記載の組成物。
【請求項17】
前記流動助剤が、β-リン酸三カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよびヒドロキシアパタイトの群から選択される少なくとも1種の材料を含む、請求項10記載の組成物。
【請求項18】
前記流動助剤が、非晶質の非焼結リン酸カルシウムを含む、請求項10記載の組成物。
【請求項19】
前記流動助剤が、X線回折により測定された場合、90%以下の結晶化度を有する、請求項10記載の組成物。
【請求項20】
前記流動助剤が、10m
2/g以上の表面積を有する、請求項10記載の組成物。
【請求項21】
前記流動助剤の添加により、前記組成物のなだれエネルギーが、120kJ/kg以下に低下する、請求項10記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が(a)の前記ポリマー粉末粒子のみを含有する場合と比較して、前記組成物が前記組成物全体の30重量%以下で前記流動助剤を含有する場合に
、なだれエネルギーがより低い、請求項10記載の組成物。
【請求項23】
前記流動助剤の添加により、前記組成物の破壊エネルギーが、200kJ/kg以下に低下する、請求項10記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が(a)の前記ポリマー粉末粒子のみを含有する場合と比較して、前記組成物が前記組成物全体の30重量%以下で前記流動助剤を含有する場合に、前記組成物が、より小さい破壊エネルギーを有する、請求項10記載の組成物。
【請求項25】
前記流動助剤により、粒子間摩擦が減少し、前記粉末の流動特性が改善される、請求項10記載の組成物。
【請求項26】
前記流動助剤が、前記ポリマー粉末粒子の表面上に水分バリアを形成する、請求項10記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、医療用インプラントまたは足場等の付加製造物体における使用のための生分解性ポリマー粉末の製造に関する。この粉末は、医療用途に適した生体適合性ポリマーおよび生分解性骨伝導性流動助剤を有する。これらの粉末の組成により、選択的レーザー焼結等の付加製造の通常の条件での容易な加工が可能となり、適正な機械部品性能が確保される。本発明は、例えば、患者固有で多孔性の幾何学的形状を意味する、可撓性で複雑な設計を有する3D印刷ポリマー埋込み型医療装置を可能にする。
【0002】
発明の背景
現在、大部分の埋込み型医療装置は、従来の製造プロセス、特に、ポリマー空間を使用して依然として製造されている。装置の用途に応じて、それらは、成形(例えば、射出成形、圧縮成形)され、押出成形され、発泡成形されるかまたは複数の工程、例えば、機械加工もしくはレーザー切断と組み合わせた押出成形を有する。しかしながら、医療分野では、例えば、外傷またはガン除去後の骨の喪失後に、患者のCTスキャンに特化させることができる高度に制御された構造を設計するための、3D印刷に対する新たなトレンドがある(D. J. Bonda et al, Neurosurgery 77:814-824, 2015)。
【0003】
3D印刷または場合により付加製造もしくは迅速製造と呼ばれるものは、コンピュータ支援設計ソフトウェアを使用する3D物体の層ごとの構築を共通に有する製造クラスである。種々の材料形態、例えば、粉末、液体および長繊維を使用することができ、これらは、米国特許第005518680号明細書において医療用装置について記載されているように、種々の付加製造技術に関連する。本発明の焦点は、粉末系3D印刷、例えば、選択的レーザー焼結(SLS)または溶融にある。このような系の利点は、支持構造を必要とせず、異なる幾何学的形状を有する複数の製品を製造することができることである。典型的には、粉末床は、融点近くまで加熱される。大部分のポリアミド12(PA12)は、SLSに使用され、医療分野においても種々の用途に使用されるが、埋込み型装置には使用されない。この系では、典型的には、流動助剤は、酸化ケイ素である。これらは、加工条件において適切な流れを確保するのに添加されている。しかしながら、酸化ケイ素ナノスコピック構造および化学は、その毒物学的懸念のために、埋込み型セットアップに適していない。したがって、種々のグループが、純粋なポリマー系またはリン酸カルシウムを添加する系を調査している。リン酸カルシウムは、特に、整形外科分野において生体適合性であることが公知である。
【0004】
生体適合性ポリマー空間において、種々のグループが、合成吸収性粉末、例えば、ポリラクチド酸(PLA、融点約180℃)およびポリカプロラクトン(PCL、融点約60℃)のためのSLSのための粉末製造について、研究を開始している。しかしながら、これらのグループのほとんどが、粉砕粒子経路を使用している。例えば、中国特許出願公開第104441668号明細書では、PCLが、110+/-20μmまで極低温粉砕された。ついで、このPCLが、サイズが40+/-10nmの10~30%のヒドロキシアパタイト粒子と1時間混合された。ついで、それが、49℃の床温度で処理された。Wiria et al.(Acta Biomaterialia 3 (2007) 1-12)では、同じ濃度でHAと混合されたが、サイズが5μmの高度に結晶性のHAを使用した粉砕Capa6501が使用されている。使用された床温度は、40℃であった。加えて、純粋な非医療グレードのPCL、例えば、Capa6501粉末が、100μm未満の99%粉末と共に使用され、46°および48℃で処理された(S. J. Hollister et al, J Manufacturing Sci & Eng, 2006, 128, 531)。加えて、Shishkovsky et al(Physics Procedia 39 (2012) 491-499)では、PCL、ポリカーボネート(PC)およびポリエーテルエーテルケトンも調査されたが、セラミックス充填剤の高いドーピングが使用され、選択的レーザー焼結の際にポリマーの着色が生じた。同様に、Partec et al(Mater. Res. Soc. Symp. Proc. Vol. 845, 2005, Materials Research Society)においても、PCL中で45μmの粒径を有するTCP添加剤の高充填が使用された。いくつかのグループ、例えば、Tan et al(Bio-Medical Materials and Engineering 15 (2005) 113-124)でも、90重量%が60μm未満のHA粉末が添加された粉砕PLLAが使用された。粉末床温度は、60℃に保持された。
【0005】
多成分系に関して、中国特許出願公開第103709737号明細書でも、ナノスケールの流動助剤、半導体材料、例えば、エルビウムドープイットリウムまたは有機酸化防止剤を使用する異なる添加剤が提案されている。
【0006】
粉砕に加えて、微粒子を製造するためのエマルジョン経路が追求された。Du et al(Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 135 (2015) 81-89)では、20%のHA濃縮PCL粉末が使用された。この場合、無機物が包含されるため、流動助剤としては作用しない。中国特許出願公開第101138651号明細書では、PLLAミクロスフェアも、エマルジョンを使用し、2:1の比での30~100μmのNaCl粉末(30~100μm)とブレンドして合成された。また、10%のTCPも、同じ特許における別の実施例において微粒子に包含された。
【0007】
他の丸い球状の経路は、特許第4846425号公報に記載されているような溶融相中の分散液を使用している。この場合、マトリックスが除去されている。また、この場合、ナノスケールサイズの助剤が使用され、このような系の流動性が改善された。
【0008】
全体として、グループは、融点よりはるかに低い温度で加工される粉末を使用しており、これは、熱応力が蓄積するであろうため、部品の性能を制限してしまう。加えて、一部の構造体では、非常に多孔質の構造を示した。この場合、粉末は、完全には融合しなかった。これは、機械的に困難な用途には適していないであろう。また、これは、一部のグループが使用した、0.3μmまでのかなり異常な層厚さとも関係があるかもしれない。一部のグループは、ナノスコピック添加剤も使用する。しかしながら、医学界は、このような添加剤が粉末を取り扱う際に有する毒物学的影響に関する懸念を有する(Yu et al, J Nanopart Res (2009) 11:15-24)。非生体適合性レーザー吸収剤、酸化防止剤、軟化剤または流動助剤を含む材料系についても同様である。加えて、流動性データはほとんどが、その融点に近い流動特性を表さない室温で生成されている。さらに、一部の部品は、流動性が乏しいため、良好な表面仕上げを有しており、これは主に、ブレード懸架系の代わりにロールを使用するためであり、流動性が乏しい場合に、より耐久性であった。
【0009】
特に生体吸収性分野における工業的用途のためのPA12と同様の通常の条件下で加工することができる、生体適合性粉末が依然として必要とされている。
【0010】
発明の概要
本発明の目的は、良好な流動特性を有する生体適合性ポリマー粉末を提供することである。加えて、これらの粉末は、加工およびその結果得られる部品に関して良好な三次元印刷(3D印刷)特性を有する。これらの粉末は、生体適合性ポリマー粉末から構成され、流動性が十分でない一部の場合には、生体適合性流動助剤からも構成される。
【0011】
3D印刷方法は、粉末系技術、例えば、選択的レーザー焼結(SLS)であることができるが、他の方法、例えば、バインダー噴射、選択的吸収焼結(SAS)またはそれらのハイブリッド法であることもできる。
【0012】
このような印刷法では、粒子同士を適切に焼結するため、従来の製造(例えば、射出成形)と比較して、任意の内部および外部構造ならびに適切な機械的特性を有する、異なる種類の医療用インプラントを製造することができる。
【0013】
本発明の一態様の利点は、驚くべきことに、狭いサイズ分布を有するような球状粉末を、流動助剤を何ら必要とせずに、通常の条件下で加工することができることである。通常、グループは、温度を低下させて、融点からさらに離れた適切な流れを可能にする。これは、粉末床における熱勾配を高める。これにより、特に、より厚い物体について、最終部品におけるカール挙動または張力をもたらすことができる。双方とも、端部の品質を低下させてしまう。他の戦略は、特に、R&Dグループが不十分な流れのために部品の均質性を犠牲にし、ブレード系システムの場合のようにロール系分配システムに限定されることである。このような試みは、構築の失敗につながるであろう。これは、明らかに、特定の負荷を支持しなければならない体内の部品に対するその適用を制限する主要な欠点または現在のシステムでもある。
【0014】
本発明の別の態様は、不規則な形状の粒子およびいくらか丸い形状の粉末において使用される流動助剤の性質に対処する。背景技術のセクションで言及されたように、種々のデータが、HAおよびTCP(生体適合性リン酸カルシウムである)等の添加剤を使用して示されている。加えて、グループは、典型的には、10重量%以上の高充填量またはナノサイズ版においても、ポリマー対応物と同様のサイズを使用しており、これらは共に凝集する傾向がありまたは毒物学的観点から懸念される。したがって、これらの懸念を軽減するために、適切な粒径分布を有するサブミクロンサイズを有する流動助剤を選択した。さらに、驚くべきことに、未焼成または部分的に非晶質状態を使用するこのような添加剤が、比較研究を通して流動特性の点で、一般的に使用される結晶版より顕著に優れているであろうことが示された。これは、特に印刷条件(すなわち、ポリマーの融点に近い温度)により近い場合に当てはまる。これは、特に、ポリラクチド粉末について背景技術のセクションに記載されているように、グループが、より低い床温度を使用した別の理由である。融点より相当低い温度を使用することは、上記されたように、加工または部品の性能において欠点を有するであろう。
【0015】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、添付の図面と併せて、下記詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1-未焼成添加剤とのPCL粉末ブレンドの流れの結果。
【
図2】
図2-未焼成添加剤とのPDO粉末ブレンドの流れの結果。
【
図3】
図3-未焼成添加剤とのPLA粉末ブレンドの流れの結果。
【
図4】
図4-未焼成および焼成添加剤の使用によるPDO粉末流動に及ぼす影響。
【
図5】
図5-未焼成および焼成添加剤の使用によるPCL粉末流動に及ぼす影響。
【0017】
発明の詳細な説明
本粉末および方法を開示し、説明する前に、本明細書に記載された態様は、特定の方法、化合物、合成方法、物品、装置または使用に限定されず、したがって当然、変更することができると理解されたい。本明細書で使用された用語は、特定の態様のみを説明する目的のためのものであり、本明細書で特に定義されない限り、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0018】
本明細書において、改善された粉末性能、例えば、流動性および3D印刷特性を示す生体適合性ポリマー粉末が開示される。これらにより、整形外科(例えば、頭蓋顎顔面、四肢、外傷、脊椎、整形生物学等)、心臓血管、歯科、形成外科、呼吸器外科、胸部外科、再生医療等の多くの分野において、医療用インプラントの容易な付加製造が可能となるであろう。
【0019】
用語の定義
特に断らない限り、明細書で使用された全ての技術用語および科学用語は、当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含めて、本文書が優先されるであろう。好ましい方法および材料が以下に記載されるが、本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができる。本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書に開示された材料、方法および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0020】
本明細書で使用する場合、「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contains(s))」という用語およびその変形例は、追加の行為または構造の可能性を排除しない、オープンエンドの移行句、用語または語句であると意図される。単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が沿わないことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。また、本開示では、明示的に説明されているか否かにかかわらず、本明細書で提示された実施形態または構成要素を「含む(comprising)」、これら「からなる(consisting of)」およびこれら「から実質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態も企図される。
【0021】
「または」という結合語は、この結合語により関連付けられた1つ以上の列記された構成要素の任意の組み合わせおよび全ての組み合わせを含む。例えば、「AまたはBを含む装置」という表現は、Bが存在しないAを含む装置、Aが存在しないBを含む装置またはAおよびBの双方が存在する装置を指すことができる。「A、B、...およびNのうちの少なくとも1つ」または「A、B、...およびNのうちの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせ」という表現は、A、B、...およびNを含む群から選択される1つ以上の構成要素を意味するように、最も広い意味で定義される。すなわち、構成要素A、B、...またはNのうちの1つ以上の任意の組み合わせであり、任意の1つの構成要素を単独でまたは列記されていない追加の構成要素を組み合わせて含むこともできる1つ以上の他の構成要素と組み合わせて含む。
【0022】
量に関連して使用される「約」という修飾語は、記述された値を含み、文脈により指示される意味を有する(例えば、少なくとも特定の量の測定に関連する誤差の程度を含む)。「約」という修飾語は、2つの終点の絶対値により定義された範囲を開示するとも考えられるべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の範囲も開示する。「約」という用語は、指示された数のプラスまたはマイナス10%を指すことができる。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を示し、「約1」は、0.9~1.1を意味することができる。「約」の他の意味は、四捨五入のように文脈から明らかであることができるため、例えば、「約1」は、0.5~1.4を意味することもできる。
【0023】
「wt%」という用語は、重量%を意味する。
【0024】
本明細書において、「マイクロカプセル化」および「カプセル化」という用語は、形状または設計にかかわらず、任意の種類の長時間作用型配合物または技術に包含される生物活性剤を一般的に指すように使用されるため、「マイクロカプセル化」または「カプセル化」生物活性剤は、粒子または微粒子等に包含される生物活性剤を含むことができ、または固体インプラント等に包含される生物活性剤を含むことができる。
【0025】
本明細書において、「生物活性剤」という用語は、ある形態の治療効果を提供するかまたはある種の生物学的応答もしくは活性を誘発するために、医薬または医薬目的で使用される医薬製剤または投薬形態中または上に含まれる目的の化合物を含むように使用される。「生物活性剤」は、単一のこのような薬剤を含み、また、例えば、2つ以上の生物活性剤の組み合わせを含む、複数の生物活性剤を含むことも意図される。
【0026】
本明細書で使用する場合、「生体適合性」という用語は、一般的には、レシピエントに対して無毒性であり、対象に対して著しく望ましくない作用を何ら有さず、さらに、材料の任意の代謝産物または分解産物が対象に対して無毒性である材料を指す。典型的には、「生体適合性」である物質は、生きている組織に対する、臨床的に関連する組織刺激、損傷、毒性反応または免疫学的反応を引き起こさない。
【0027】
本明細書で使用する場合、「生分解性」という用語は、可溶性種に侵食され、または生理学的条件下で、それ自体が対象に対して無毒性(生体適合性)であり、対象により代謝、除去または排泄可能である、より小さな単位または化学種に分解されるであろう材料を指す。
【0028】
本明細書で使用する場合、「非凝集性」という用語は、粉末が水分の存在または粉末の充填により生成される材料の大きな塊を生成しない場合の粉末を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「改善された流動性」という用語は、落下からの衝撃力、動的粉末流動分析および特に、加工中のブレード、ローラまたは供給機構による広がりを含む、様々な刺激により生じる移動による粉末粒子の流動化を指す。改善された流動性は、ベース粉末が流動助剤で処理された後の破壊エネルギーまたはなだれエネルギーの低下に対する基準である。
【0030】
本明細書で使用する場合、「粉末加工技術」という用語は、SLS 3D印刷、粉末流動化、粉末配合、粉末供給等の技術を指すが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用する場合、「なだれエネルギー」という用語は、なだれ中の粉末の力変化を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「破壊エネルギー」という用語は、粉末がなだれるエネルギーを指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「粒子間摩擦」という用語は、2つの接触するポリマー粒子表面間に存在する摩擦力を指す。添加剤は、接触する表面積を減少させ、これにより、粒子間の摩擦量を減少させ、より流動化された粉末またはより流動性の粉末がもたらされるであろう。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ハウスナー比」という用語は、粉末の嵩密度とタップ密度との間の比を指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、「圧縮性指数」という用語は、粉末がタップ密度測定中にどれだけ圧縮するかの割合表現を指す。
【0036】
ポリマー粉末は、任意の生体適合性ポリマーであることができる。生体適合性ポリマーは、ポリアリールケトン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレン-アルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレートまたはポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)を含有するコポリマーおよびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0037】
ラクチド系ポリマーは、ラクチドの全てのラセミ体および立体特異的形態を含む任意のラクチド残基を含むことができる。同残基は、L-ラクチド、D-ラクチドおよびD,L-ラクチドまたはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。ラクチドを含む有用なポリマーは、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド)およびポリ(DL-ラクチド);ならびにポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(D-ラクチド-co-グリコリド)およびポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)を含むポリ(ラクチド-co-グリコリド);またはそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせもしくはブレンドを含むが、これらに限定されない。ラクチド/グリコリドポリマーは、ラクチドおよびグリコリドモノマーの開環による溶融重合により適宜製造することができる。さらに、ラセミ体DL-ラクチド、L-ラクチド、およびD-ラクチドポリマーが市販されている。L-ポリマーは、DLポリマーより結晶性が高く、吸収が遅い。グリコリドおよびDL-ラクチドまたはL-ラクチドを含むコポリマーに加えて、L-ラクチドおよびDL-ラクチドのコポリマーが市販されている。ラクチドまたはグリコリドのホモポリマーも市販されている。
【0038】
特定の態様では、生分解性ポリマーが、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)または任意の他のコポリマー(上記)またはポリ(ラクチド)およびポリ(グリコリド)の混合物である場合、ポリマー中のラクチドおよびグリコリドの量を変化させることができる。さらなる態様では、生分解性ポリマーは、0~100モル%、40~100モル%、50~100モル%、60~100モル%、70~100モル%または80~100モル%のラクチドと、0~100モル%、0~60モル%、10~40モル%、20~40モル%または30~40モル%のグリコリドとを含有する。この場合、ラクチドおよびグリコリドの量は、100モル%である。さらなる態様では、生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、95:5のポリ(ラクチド-co-グリコリド)、85:15のポリ(ラクチド-co-グリコリド)、75:25のポリ(ラクチド-co-グリコリド)、65:35のポリ(ラクチド-co-グリコリド)または50:50のポリ(ラクチド-co-グリコリド)であることができる。この場合、比は、モル比である。
【0039】
別の態様では、ポリマーは、ポリ(カプロラクトン)またはポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)であることができる。一態様では、ポリマーは、ポリ(ラクチド-カプロラクトン)であることができる。同ポリマーは、種々の態様では、95:5のポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、85:15のポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、75:25のポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、65:35のポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)または50:50のポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)であることができる。この場合、比は、モル比である。
【0040】
一態様では、溶媒プロセスは、米国特許出願公開第2010/0069602号明細書および同第2007/0207211号明細書に記載されている丸形粉末を生じさせるのに使用されている。簡潔に、溶解ポリマーを有する分散剤相を、エマルジョン系技術を使用する粉末製造のための層流条件下で、ポリマーとの溶解性を有さない連続相を含む充填床装置に通す。少なくとも1種の塩が、このプロセスに添加され、好ましくは、連続相に添加されて、最終粉末の流動性を改善するために、第2の溶媒中の第1の溶媒の溶解度を低下させる。この塩は、流動助剤ではなく、むしろ、エマルジョンプロセス中の加工助剤である。
【0041】
加えて、別の実施形態に示されたように、薬剤、生体分子またはバイオセラミックス等の生体活性分子のような、機能性をポリマーマトリックス中に埋め込むまたはカプセル化するために、充填剤を、このプロセスに添加することができる。これらの充填剤は、ポリマー材料に物理的に結合しており、自由流動性ではない。
【0042】
流動助剤およびバイオセラミックスは、リン酸カルシウムおよびそのドープ変異体(例えば、ストロンチウム、亜鉛、マグネシウム、フッ化物、炭酸塩)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、生体適合性ガラス、例えば、バイオガラス等を含むが、これらに限定されない。リン酸カルシウムは、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、カルシウム欠乏炭酸塩含有ヒドロキシアパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸二カルシウム、二相性リン酸カルシウムまたはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0043】
一態様では、極低温粉砕ポリマー粉末が、ベース粉末として使用されている。流動挙動を改善するために、流動助剤、例えば、バイオセラミックスを添加する必要があった。興味深いことに、特に有効な流動助剤は、一般的には、低結晶性(未焼成)形態のバイオセラミックスを有すると考えられる。この特徴により、相当均一な混合挙動および良好な流動特性が可能となる。ポリマー粉末との混合は、タンブラーミキサーまたは高せん断ミキサーで行うことができる。これらのミキサーは、Somakonおよび他の企業から市販されている。
【0044】
このような流動助剤は、典型的には、0.1~10μmの範囲のサイズである。このようなポリマー系粉末の典型的な濃度は、0.1~10重量%の流動助剤の範囲である。また、異なる流動助剤の混合物を使用することもできる。
【0045】
このような流動助剤は、異なる種類の粒子形状に使用することができる。このような形状は、不規則な形状のポリマー粉末および球状のポリマー粉末には限定されない。
【0046】
多種多様な生物活性剤を、本明細書に記載された方法に使用することができる。一態様では、生物活性剤は、放出型生物活性剤、すなわち、制御放出系から対象の隣接する組織または流体中に放出されることができる生物活性剤であることができる。特定の態様では、生物活性剤は、制御放出系中または上に存在することができる。
【0047】
制御放出系から隣接する組織または流体中に放出可能な、種々の形態の生物活性剤を使用することができる。その目的のために、液体または固体の生物活性剤を、本明細書に記載された制御放出系に包含させることができる。生物活性剤は、少なくとも非常にわずかに水溶性であり、好ましくは、中程度に水溶性である。生物活性剤は、活性成分の塩を含むことができる。また、生物活性剤は、酸性、塩基性または両性塩であることができる。それらは、非イオン性分子、極性分子または水素結合可能な分子複合体であることができる。生物活性剤は、有効な生物学的または生理学的活性を提供するために、例えば、非荷電分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド、ポリマー薬剤コンジュゲートの形態または他の形態で組成物中に含ませることができる。
【0048】
本明細書において、系に包含される生物活性剤の例は、ペプチド、タンパク質、例えば、ホルモン、酵素、抗体等、核酸、例えば、アプタマー、iRNA、DNA、RNA、アンチセンス核酸等、アンチセンス核酸アナログ等、低分子量化合物または高分子量化合物を含むが、これらに限定されない。開示された埋込み型複合体における使用が企図される生物活性剤は、同化剤、制酸剤、抗喘息剤、抗コレステロール剤および抗脂質剤、抗凝固剤、抗痙攣剤、抗下痢剤、制吐剤、抗菌剤および抗微生物剤を含む抗感染剤、抗炎症剤、抗躁剤、代謝拮抗剤、制吐剤、抗新生物剤、抗肥満剤、解熱剤および鎮痛剤、抗痙攣剤、抗血栓剤、鎮咳剤、抗尿酸血症剤、抗狭心症剤、抗ヒスタミン剤(例えば、テルフェナジン)、食欲抑制剤、生物学的製剤、大脳拡張剤、冠動脈拡張剤、気管支拡張剤、細胞傷害剤、うっ血除去剤、利尿促進剤、診断剤、赤血球生成剤、去痰剤、消化管鎮静剤、高血糖剤、催眠剤、低血糖剤、免疫調節剤、イオン交換樹脂、下剤、ミネラルサプリメント、粘液溶解薬、神経筋肉剤、末梢血管拡張薬、向精神剤、鎮静剤、興奮剤、甲状腺剤および抗甲状腺剤、組織増殖剤、子宮弛緩剤、ビタミンまたは抗原物質を含むが、これらに限定されない。
【0049】
他の生物活性剤は、アンドロゲン阻害剤、多糖類、成長因子(例えば、血管内皮成長因子-VEGF)、ホルモン、抗血管新生因子、デキストロメトルファン、デキストロメトルファンヒドロブロミド、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、クロルフェジアノール塩酸塩、マレイン酸クロルフェニルアミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリルアミン、コハク酸ドキシルアミン、クエン酸フェニルトロキサミン、フェニルエフリン塩酸塩、フェニルプロパノールアミン塩酸塩、シュードエフェドリン塩酸塩、エフェドリン、リン酸コデイン、硫酸コデイン、モルヒネ、ミネラルサプリメント、コレスチラミン、N-アセチルプロカインアミド、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、フェニルプロパノールアミン塩酸塩、カフェイン、グアイフェネシン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、インターフェロン、サイトカインおよびワクチンを含む。
【0050】
生物活性剤として使用することができる代表的な薬剤は、ペプチド薬剤、タンパク質薬剤、減感作物質、抗原、抗感染剤、例えば、抗生物質、抗微生物剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤、抗真菌物質およびそれらの組み合わせ、抗アレルギー剤、アンドロゲン性ステロイド、うっ血除去剤、催眠剤、ステロイド性抗炎症剤、抗コリン剤、交感神経作動剤、鎮静薬、縮瞳剤、精神賦活剤、トランキライザー、ワクチン、エストロゲン、プロゲステロン作用剤、体液性薬剤、プロスタグランジン、鎮痛剤、鎮痙剤、抗マラリア剤、抗ヒスタミン剤、心臓作用剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗パーキンソン剤、抗高血圧剤、β-アドレナリン遮断剤、栄養剤およびベンゾフェナントリジンアルカロイドを含むが、これらに限定されない。この薬剤は、さらに、刺激剤、鎮静剤、催眠剤、鎮痛剤、抗痙攣剤等として作用可能な物質であることができる。
【0051】
他の生物活性剤は、鎮痛剤、例えば、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸等;麻酔剤、例えば、リドカイン、キシロカイン等;食欲抑制剤、例えば、デキサドリン、酒石酸フェンジメトラジン等;抗関節炎剤、例えば、メチルプレドニゾロン、イブプロフェン等;抗喘息剤、例えば、硫酸テルブタリン、テオフィリン、エフェドリン等;抗生物質、例えば、スルフィソキサゾール、ペニシリンG、アンピシリン、セファロスポリン、アミカシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クリンダマイシン、イソニアジド、リファンピン等;抗真菌剤、例えば、アムホテリシンB、ニスタチン、ケトコナゾール等;抗ウイルス剤、例えば、アシクロビル、アマンタジン等;抗ガン剤、例えば、シクロホスファミド、メトトレキサート、エトレチネート等;抗凝固剤、例えば、ヘパリン、ワルファリン等;抗痙攣剤、例えば、フェニロインナトリウム、ジアゼパム等;抗うつ剤、例えば、イソカルボキサジド、アモキサピン等;抗ヒスタミン剤、例えば、ジフェンヒドラミンHCl、マレイン酸クロルフェニラミン等;ホルモン、例えば、インスリン、プロゲスチン、17-アルファ-ヒドロキシ-プレゲステロンカプロエート、イソ-アロ-プレグナノロンテストステロン、プレニゾロン、プレドニゾン、デキサメタゾンエストロゲン(例えば、エストラジオール)、コルチコイド、グルココルチコイド、アンドロゲン等;精神安定剤、例えば、トリアジン、ジアゼパム、クロルプロマジンHCl、レセルピン、クロルジアゼポキシドHCl等;鎮痙剤、例えば、ベラドンナアルカロイド、ジシクロミン塩酸塩等;ビタミンおよびミネラル、例えば、必須アミノ酸、カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛、ビタミンB12等;心血管剤、例えば、プラゾシンHCl、ニトログリセリン、プロプラノロールHCl、ヒドラジンHCl、パンクレリパーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ等;ペプチドおよびタンパク質、例えば、LHRH、ソマトスタチン、カルシトニン、成長ホルモン、グルカゴン様ペプチド、成長ホルモン放出因子、アンギオテンシン、FSH、EGF、骨形成タンパク質(BMP)、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン、インターロイキン、コラーゲン、フィブリノーゲン、インスリン、第VIII因子、第IX因子、ENBREL(登録商標)、RITUXAM(登録商標)、HERCEPTIN(登録商標)、アルファ-グルコシダーゼ、セラザイム/CEREDOSE(登録商標)、バソプレッシン、ACTH、ヒト血清アルブミン、ガンマグロブリン、構造タンパク質、血液製剤タンパク質、複合タンパク質、酵素、抗体、モノクローナル抗体等;プロスタグランジン;核酸;炭水化物;脂肪;麻薬、例えば、モルヒネ、コデイン等;精神療法剤;抗マラリア剤、L-ドーパ、利尿剤、例えば、フロセミド、スピロノラクトン等;抗潰瘍剤、例えば、ラニチジンHCl、シメチジンHCl等およびカルシウムチャネル拮抗剤、例えば、ニモジピン等、ルメファントリン、シレンギチド、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A還元酵素阻害剤、例えば、ロバスタチン等を含むが、これらに限定されない。
【0052】
生体分子は、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲンおよびヒアルロン酸を含むが、これらに限定されない。
【0053】
異なる粉末の特性決定を、粒径測定のための標準的な試験装置、例えば、レーザー散乱装置(Beckmann coulter社またはMalvern社から市販されている)で行った。DSCを、TA機器装置を使用して、10°/分の加熱速度および20°/分の冷却速度で行った。SEMを、卓上装置(Hitachi社から市販されている)で行った。XRD測定値は、Himedより提供された。BET測定を、マイクロメリティックス機器で行った。
【0054】
選択的レーザー焼結(SLS)を、ブレード系(例えば、EOS Pシリーズ)およびロール系装置で行った。これらの装置は、流動性および加工に関して異なる感度を有する同様の傾向を示す。この技術により、各種の微細粉末の選択的凝固により物理的部品が製造される。SLSは、レーザービームが各層の断面積を横切って粉末を走査するときに選択的に結合される粉末を使用して、層ごとに部品を構築する。典型的なレーザーエネルギー密度は、7J/m2~60J/m2のいずれかであり、SLSにより、逆回転ローラまたはブレードを使用して、構築領域全体に広げられた粉末の薄層(典型的には、約0.1mm厚)が融合される。部品構築は、粉末材料の酸化および分解を最小限にするために、不活性ガス、好ましくは、窒素ガスで満たされた密閉チャンバ内で行われる。構築プラットフォーム内の粉末は、粉末材料の融点(半結晶性ポリマーのみの場合)直下の高温に維持される。
【0055】
粉末の流動性を特徴付けるのに使用される定量法は、カメラにより粉末粒子の移動を特徴付ける、ガラス壁を有する回転円筒ドラムからなる流動性試験装置(水銀機器)の使用を含んだ。この装置は、なだれが発生する前の粉末パイルの最大高さを測定する。粉末の重量によりなだれが生じる前に、より高い粉末が構築され、ついで、粉末粒子を流動させるのに必要なエネルギーがより多くなる。この値は、破壊エネルギーと呼ばれ、粉末粒子を流動させるのに必要な最小エネルギーの指標である。特に断らない限り、試験を、周囲条件(rt、湿度レベル約40%)で行う。
【0056】
粒径の測定を、United States Pharmacopeia 36(USP)chapter<429>およびEuropean Pharmacopeia 7.0(EP)chapter 2.9.31に従って行った。粒径分布を、レーザー散乱装置(例えば、Fa. Sympatec GmbH、RODOS乾燥分散ユニットを備えたHELOS型)を利用して測定した。レーザー回折法は、粒子が粒径により決まる強度パターンで、全ての方向に光を散乱させる現象に基づいている。適切な液体または気体中に適切な濃度で分散された代表的なサンプルに、通常、レーザーからの単色光源のビームを通過させる。種々の角度で粒子により散乱された光を、多素子検出器により測定し、ついで、散乱パターンに関連する数値を、その後の分析のために記録する。ついで、適切な光学モデルおよび数学的手法を使用して、散乱数値を変換して、体積粒径分布を形成する離散的な数の粒径クラスに対する総体積の割合を得る(例えば、d50は、累積的なアンダーサイズ分布の50%に対応する粒径を表す)。
【0057】
実施例
下記実施例は、本明細書において特許請求される化合物、組成物、物品、装置および/または方法がどのように製造され、評価されるかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために記載され、本発明の純粋な例示であることを意図し、本発明者らが自身の発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。数字(例えば、量、温度等)に関して、正確さを保証する努力がなされているが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。特に断らない限り、部は、重量部であり、温度は、℃または周囲温度であり、圧力は、大気圧またはその近傍である。
【0058】
実施例1
球状ポリ乳酸(PLLA、Evonikから市販されているRESOMER(登録商標)L206S)微粒子を、溶媒系エマルジョンプロセスを使用して製造した。ポリ10%w/wの乳酸を含有する第1の相を、20gのポリ乳酸を180gのジクロロメタンに溶解させることにより調製した。第2の相を、6gのポリ(ビニルアルコール)(PVA)を10.8gのジクロロメタンおよび594gの水に溶解させることにより調製した。第2の相を、充填床装置(6mmステンレス鋼管、長さ150mm、650μmのガラスビーズを充填)を通して20mL/分の速度でポンプ輸送した。第1の相を、同じ充填床装置を通して、5mL/分の流速で同時にポンプ輸送した。エマルジョンを、過剰量の水中に集め、粒子を、溶媒を除去することにより硬化させた。米国特許第8,916,196号明細書に記載されているように、カラムに充填し、相をポンプ輸送し、エマルジョンを収集し、溶媒を除去して、微粒子を形成した。粉末を、加工助剤として塩(NaCl)を使用する場合、および比較対照のために塩(NaCl)を使用しない場合の双方で製造した。
【0059】
第2のバッチを、上記されたものと同じ方法を使用して調製した。加えて、連続相を、2MのNaClで飽和させ、エマルジョンプロセスに使用した。連続相を塩で飽和させる方法を、米国特許出願公開第2010/0069602号明細書に記載されているように行った。微粒子製造の収率は、加工助剤として塩を使用して、82.5%から92.1%に向上した。
【0060】
微粒子を製造するこのエマルジョンプロセスを従来の製品(粉砕製品)と比較するために、PLLA材料を極低温粉砕した。乳化PLLA粉末の嵩密度は、0.6g/mLであった。
【0061】
粉末の粒径を、レーザー散乱を使用して決定した。粒径を、表1に示す。塩を含んで製造された球状PLLA微粒子は、76μmのd50および55~97μmのd10~d90範囲を有する。一方、塩を含まずに製造された球状PLLA微粒子は、73μmのd50および51~109μmのd10~d90範囲を有する。粉砕PLLA粉末は、54μmのd50および23~103μmのd10~d90範囲を有する。
【0062】
【0063】
球状PLLAエマルジョン微粒子および粉砕PLLA微粒子の熱特性を、示差走査熱量測定(DSC)を使用して評価した。DSCデータから、プロセスが異なるが、2つの異なるタイプの材料は、顆粒形態からの加工中に大きな熱変化を受けなかったことが確認される。見られる最大の相違は、エマルジョンPLLA微粒子がポリマーの顆粒および粉砕形態と比較して、結晶化度の低下を受けることである。球状、粉砕および顆粒PLLAについてのDSCデータを、表2に見ることができる。
【0064】
【0065】
初期流動性を、市販のSLS機内で定性的ブレード法を使用して評価した。ブレード試験からの「良好」な結果は、ブレードが粉末の滑らかで平坦な表面を生じさせる場合である。これは、緻密で寸法的に正確な印刷物を生成するのに印刷プロセスにとって重要である。初期流動特性は、塩を使用せずに製造された球状PLLA微粒子では不良であった。加工助剤として塩を使用して製造された球状PLLA微粒子は、流動添加剤または追加の処理を必要とせずに、ブレード試験からの良好な流動を示した。ブレード試験から、SLS印刷用途に利用することができる平坦な表面が生成された。
【0066】
塩を含ませて製造された球状PLLA微粒子は、優れた流動性を示した。粉砕PLLAポリマー微粒子を、対照として使用した。粉砕粉末は、良好なブレード結果を有した。いくらかのなだれが観察された。これは、不均一な表面上に落下する過剰な材料により引き起こされる。なだれは、粉末表面のシフトとして定義することができる。粉末の滑らかな表面は、層が100μm付近であろうため、印刷プロセス中の流れの主な指標である。
【0067】
球状PLLA粉末の製造後、流れを、定量的流動分析を使用して評価した。なだれエネルギーおよび破壊エネルギーを、表3に示されたように測定した。なだれエネルギーは、なだれ中の粉末の力変化を表し、破壊エネルギーは、粉末がなだれるエネルギーを表す。球状粉末を、同じベース樹脂から上記されたように製造された粉砕対照と比較した。粉砕粉末についてのなだれエネルギーは、40kJ/kgである。一方、粉砕粉末についての破壊エネルギーは、131kJ/kgである。球状粉末についてのなだれエネルギーは、52kJ/kgである。一方、粉砕粉末についての破壊エネルギーは、75kJ/kgである。破壊エネルギーの結果から、球状粉末がなだれを生じさせるのに必要なエネルギーが少なく、大きななだれエネルギーが粉末表面のより大きなシフトを示すことが表される。結果として、球状粉末は、より良好な流れを有することが示される。また、流れの改善も、粒子間摩擦の減少として参照することができる。粒子間摩擦は、2つの接触するポリマー粒子表面間に存在する摩擦力である。粒子間のより大きな表面積接触は、流れるために克服すべきより高い摩擦力をもたらす。
【0068】
【0069】
実施例2
球状ポリカプロラクトン(PCL、Evonikから市販されているEvonik RESOMER(登録商標)C209)微粒子を、実施例1と同じNaClを含む溶媒プロセスを使用することにより製造した。第1の相は、25gのポリ乳酸ポリカプロラクトン(PCL、Evonik RESOMER C209)を142gのジクロロメタンに溶解させることにより、15%w/wのポリカプロラクトン(PCL、Evonikから市販されているEvonik RESOMER(登録商標)C209)を含有する。第2の相を、6gのポリ(ビニルアルコール)(PVA)および10.8gのジクロロメタンを594gの水に溶解させることにより調製した。加えて、連続相を、2MのNaClで飽和させ、エマルジョンプロセスに使用した。第2の相を、本発明の充填床装置(6mmステンレス鋼管、長さ150mm、650μmのガラスビーズを充填)を通して20mL/分でポンプ輸送した。第1の相を、5mL/分の流速で、同じ充填床装置に同時にポンプで通した。エマルジョンを、過剰量の水中に集め、粒子を、溶媒を除去することにより硬化させた。米国特許第8,916,196号明細書に記載されているように、カラムに充填し、相をポンプ輸送し、エマルジョンを収集し、溶媒を除去して、微粒子を形成した。連続相に塩を添加する方法を、米国特許出願公開第2010/0069602号明細書に記載されているように行った。
【0070】
微粒子を製造するこのエマルジョンプロセスを従来の製品(粉砕製品)と比較するために、PCL材料を、極低温粉砕した。エマルジョンおよび粉砕PCL粉末の粒径分布を分析した。球状エマルジョンPCL微粒子は、51μmの狭い範囲を有した。一方、粉砕PCL微粒子は、69μmの範囲を有した。粉砕PCL微粒子は、81μmを有する球状エマルジョンPCL微粒子と比較して、49μmというより小さいd50値を有する。PCLエマルジョン微粒子は、PLLAについて実施例1に示されたように、粉砕粉末より小さい粒径分布であった。エマルジョンについての粒径を、充填床装置法を使用して他の粒径範囲に容易に調整することができる。粉砕および球状エマルジョンPCL微粒子についての全ての粒径データを、表4に見ることができる。乳化PCL粉末の嵩密度は、0.54g/mLであった。
【0071】
【0072】
球状PCLエマルジョン微粒子および粉砕PCL微粒子についての熱特性を、示差走査熱量測定(DSC)を使用して評価した。粉砕および球状エマルジョンPCL微粒子は、熱プロファイルが類似していた。両粉末とも、表5に示されたように、加工後の結晶化温度(Tc)の向上により、顆粒形態から変化した。
【0073】
【0074】
初期流動性を、市販のSLS機内で定性的ブレード法を使用して評価した。ブレード試験からの「良好」な結果は、ブレードが粉末の滑らかで平坦な表面を生じさせる場合である。これは、緻密で寸法的に正確な印刷物を生成するのに印刷プロセスにとって重要である。「不十分」なブレード試験結果は、単一の平坦で均一な表面が生じなかったことを示す。この場合、表面は、種々のピッティングを示すかまたは大量の凝集を示すであろう。粉砕PCL微粒子は、不十分なブレード試験結果を有した。生じた表面は、ピッティングおよび種々の観察可能な凝集体を有した。球状エマルジョンPCL微粒子は、良好なブレード試験結果を有した。
【0075】
球状PCL微粒子および粉砕PCL微粒子の流動性を、破壊エネルギー(kJ/kg)を測定することにより評価した。球状エマルジョンPCL微粒子は、良好なブレード試験結果を示した。一方、粉砕材料は示さなかった。また、これは、破壊エネルギー測定からも見ることができる。球状エマルジョンPCL微粒子は、粉砕PCL微粒子についての126kJ/kgの結果と比較して、119kJ/kgの破壊エネルギーを有した。粉砕粉末についてのなだれエネルギーは、31kJ/kgであり、球状粉末についてのなだれエネルギーは、63.21kJ/kgである。この結果から、ブレード試験評価および成功した印刷操作と組み合わせて、球状エマルジョンPCL微粒子が同じポリマーの純粋な粉砕形態と比較して、優れた印刷粉末であることが示される。流れの破壊エネルギーの定量結果を、表6に見ることができる。これは、球状粉末がなだれを生じさせるのに必要なエネルギーが少なく、大きななだれエネルギーが粉末表面のより大きなシフトを示すことを表す。結果として、球状粉末は、より良好な流れを有することが示される。
【0076】
【0077】
球状PCL粒子の良好な流動性は、ポリマーのTmに近い高温でも観察された。これは、室温での実験を確認した。加えて、何らカールすることなく、粉末の容易な加工が観察された。市販のSLS機を使用して、球状PCL粉末から幾つかの引張標本を印刷した。良好な表面仕上げおよび部品精度が達成され、これは、医療用途に重要である。
【0078】
実施例3
ポリカプロラクトン(PCL、RESOMER(登録商標)C209)粉砕粉末を、ミルを使用して顆粒形態を極低温粉砕することにより製造した。粉砕プロトコルでは、機械ロータが最速15000rpmの速度に達し、ドアロータが11000rpmの速度に達する、2サイクル粉砕プロセスを利用した。このプロセスを通して、94%の粉砕PCL材料を、要求される仕様範囲内で製造することができた。粉砕PCLについてのd50粒径は、55μmであり、粒径分布は、実施例2に示される。
【0079】
Hitemco Medical Application,Inc.により製造された未焼成ヒドロキシアパタイト(HA)添加剤(dba Himed、d50=0.8~0.9μm)と粉砕ポリカプロラクトン(PCL)ポリマー粉末とのブレンドを製造した。Hitemco Medical Application,Inc.により製造された未焼成ベータ-リン酸三カルシウム(TCP)添加剤(dba Himed、d50=0.8~0.9μm)と粉砕ポリカプロラクトン(PCL)ポリマー粉末とのブレンドを製造した。対照として、同じ供給業者からの焼成ヒドロキシアパタイト(HA)(dba Himed、d50=0.5~0.75μm)と粉砕PCLとのブレンドを製造した。対照として、同じ供給業者からの焼成TCP(dba Himed、d50=0.5~0.75μm)と粉砕PCLとのブレンドを製造した。全ての添加剤を、表面積についてBETで測定した。焼成HA(6.8m2/g)および焼結TCP(6.1m2/g)は、未焼成版(HA:57.5m2/g、TCP:52.4m2/g)より相当小さい表面積を有した。複数の濃度の焼成および未焼成HAを評価した。ブレンドを、タンブル混合および高せん断混合機により混合した。粉砕PCL粉末に添加剤を添加することにより、嵩密度は、純粋な粉砕粉末(0.25g/mL)と比較して向上した。また、未焼成TCP(0.47g/mL)およびHA(0.50g/mL)を使用した値は、焼成TCP(0.40g/mL)およびHA(0.37g/mL)より高かった。
【0080】
粉末の熱プロファイルを、示差走査熱量測定(DSC)を使用して分析した。材料の熱プロファイルは、結晶化度および結晶化温度(Tc)の向上により、顆粒から粉砕形態にわずかに変化した。また、溶融温度(Tm)の4℃の低下が観察された。HAを含有する粉末ブレンドは、Tcの向上が見られたが、溶融温度および結晶化温度は、明らかな変化を示さなかった。DSCデータを、表7に見ることができる。HA添加剤からのX線回折データは、粉末をブレンドとして試験した場合、DSCが結晶化度について誤った値を与えている可能性があることを示している。X線回折データを、
図7に見ることができる。
【0081】
【0082】
市販のSLS機内での粉末流動の定性試験を、3つの全ての粉末を使用して行った。ブレード試験からの「良好」な結果は、ブレードが粉末の滑らかで平坦な表面を生じさせる場合である。これは、緻密で寸法的に正確な印刷物を生成するのに印刷プロセスにとって重要である。焼成HAおよび純粋な粉砕PCL混合物の双方とも、不十分なブレード試験結果を有した。ピッティングおよび凝集体が、粉末表面内に観察された。未焼成HA/粉砕PCL微粒子粉末混合物は、良好なブレード試験結果を有した。
【0083】
粉末流動性の定量的特性決定は、純粋な粒子、5重量%の未焼成HAを含む粒子および5重量%の焼成HAを含む粒子について、表8に示されたように、破壊エネルギーを測定することにより行った。粉砕PCL微粒子は、126kJ/kgの破壊エネルギーを有した。この破壊エネルギー値は、未焼成HAを添加することにより改善されたが、焼成HAを添加することによっては改善されなかった。未焼成HAにより、粉砕PCL粉末の破壊エネルギーが、98kJ/kgに低下した。一方、焼成HAにより、破壊エネルギーが、153kJ/kgに向上した。また、粉砕PCLと未焼成TCPとのブレンドによっても、粉末破壊エネルギーが、92kJ/kgに低下し、一方、焼成TCPにより、破壊エネルギーが、136kJ/kgに向上した。双方の添加剤について、未焼成添加剤により、破壊エネルギーが低下した粉末が生成され、一方、焼成添加剤により、破壊エネルギーが向上した粉末が生成された。結果として、未焼成添加剤により、粉砕材料の流れが向上する。
【0084】
未焼成HAおよび粉砕PCLブレンドを、市販のSLSプリンタで評価した。印刷チャンバは、粉末の溶融温度に近い温度に達し、粉末は、依然として、プリンタ内で良好な流れを示した。この粉末を使用して、種々の試験標本を印刷した。
【0085】
【0086】
未焼成HAとブレンドされた粉砕PCL微粒子を、市販のSLSプリンタ内で使用した。印刷チャンバは、Tmに近い温度に達し、粉末は、依然として、プリンタ内で良好な流れを示した。この粉末を使用して、種々の試験標本を印刷した。現像された印刷パラメータで印刷された現像立方体を、
図9に見ることができる。また、これらの粉末を、なだれエネルギーについても定量的に特性決定した。純粋な粉砕PCL粉末のなだれエネルギーは、31kJ/kgであった。粉砕PCLおよび未焼成HAブレンドは、なだれエネルギーが16kJ/kgに低下した。一方、粉砕PCLおよび焼成HAブレンドは、なだれエネルギーが60kJ/kgに向上した。粉砕PCLおよび未焼成TCPブレンドは、なだれエネルギーが15kJ/kgに低下した。一方、焼成TCPブレンドは、なだれエネルギーが38kJ/kgに向上した。未焼成添加剤を含有するブレンドのなだれエネルギーは、なだれエネルギーの低下を示した。一方、焼成添加剤を含有するブレンドは、なだれエネルギーの向上を示した。結果として、未焼成添加剤は、粉末の流れに有益であった。
【0087】
実施例4
PLLA(RESOMER(登録商標)L206S)粉砕粉末を、ミルを使用して顆粒形態を極低温粉砕することにより開発した。粉砕プロトコルでは、機械ロータが最速12000rpmの速度に達し、ドアロータが11000rpmの速度に達する、粉砕プロセスを利用した。このプロセスを通して、90%の不規則な形状の粉砕PLLA材料を、100μm未満で製造することができた。粉砕PLLAについてのd50粒径は、54μmである。粒径範囲および形状は、実施例1に示された。
【0088】
実施例3と同様に、異なる粉末混合物を、焼成HAおよびTCPならびに未焼成版のHAおよびTCP(全て、Himedから市販されている添加剤)を使用して調製した。嵩密度は、純粋な粉砕PLLA粉末(0.41g/mL)と比較して向上した。未焼成TCP(0.45g/mL)および未焼成HA(0.45g/mL)を使用した値は、焼成TCP(0.43g/mL)および焼成HA(0.41g/mL)より高かった。
【0089】
純粋なポリマーに対するHAとのポリマーブレンドの熱特性から、先の実施例におけるように、純粋なポリマーとポリマーブレンドとの熱特性の間に顕著な差がないことが示された。
【0090】
純粋なポリマー粉末は、実施例1に示されたような添加剤を必要とせずに、室温で良好なブレード試験結果を証明した。さらに、高温では、この粉末は、印刷プロセス中に凝集し始めた。ブレード系SLSで同じ実験を実行すると、流動性が悪いために構築が失敗した。
【0091】
流動添加剤を、粉末流動に対する任意の利点を評価するために調べた。PLLA粉砕微粒子および添加剤の複数のブレンドを製造した。これらのブレンドは、添加量の未焼成HA、焼成HA、未焼成TCPおよび/または焼成TCPを含むPLLAである。製造された材料は、市販のSLS機内での使用を意図したものであった。HAを、この機械内の粉末流動性を改善するために添加した。ブレンドを、タンブル混合および高せん断混合機械により混合した。SEMイメージングを使用して、添加剤の分布および粉砕PCL粉末の形態を観察した。
【0092】
SEM画像から、添加剤が粉砕PLLA微粒子の表面に付着していることおよび添加剤とのブレンドが均一な分布を有することが示される。このブレンドを調製した後、定性的ブレード試験を行った。表9および表10に見られる定量データから、HAブレンドは、TCPブレンドと比較して良好に機能した。未焼成HAおよび未焼成TCPを含む粉砕PLLAブレンドにより、流れにおける最大の改善が示された。焼成HAおよび未焼成HAを含む粉砕PLLAブレンドを、高温で定量的に分析した。高温では、未焼成HAにより、純粋な材料と比較して、粉砕PLLA粉末の流れが45%まで改善される。また、焼成HAは、13%の破壊エネルギーの低下により流れにも有益である。
【0093】
【0094】
【0095】
粉末の流動性も、ロール系SLS機を使用してチェックした。PLLA+未焼成HAの改善された流動性は、市販のSLS機内において高温で犠牲にならなかった。また、未焼成HAブレンドも、複数の試験標本を製造した。
【0096】
試験後、複数の標本を破壊して、印刷された部品間の添加剤分散を観察した。未焼成HAブレンドは、はるかに均一な印刷を示した。
【0097】
実施例5
実施例2と同じ方法を使用して、本実施例で使用された球状エマルジョン系PCL微粒子を製造した。球状PCLエマルジョン微粒子と焼成状態および未焼成状態にあるHA添加剤とを、タンブル混合および/または高せん断混合機械を使用してブレンドした。
【0098】
両エマルジョン系粉末混合物は、定性的ブレード試験を使用して良好に広がった。同様に、球状PCLエマルジョン系粉末の定量評価では、焼成HA添加剤および未焼成HA添加剤の双方により、純粋な材料の破壊エネルギーが、43~41%低下した。添加剤を含む球状PCLエマルジョン粒子の流れデータを、表11にまとめる。
【0099】
【0100】
実施例6
球状ポリ乳酸(PLLA、RESOMER(登録商標)L207S、Evonikから市販)微粒子を、焼成HA(Sigma Aldrichから市販)および炭酸カルシウム(Schaefer Kalkから市販)である2種の無機充填材を含むことを除いて、実施例1と同様の溶剤系エマルジョンプロセスを使用して製造した。35gのPLLAを、301gのジクロロメタンに溶解させ、続けて、同じポリマー溶液に7.8gの炭酸カルシウムおよびヒドロキシアパタイトをそれぞれ添加した。この混合物を、ホモジナイザーを使用して15000rpmで6分間にわたって混合しながら、水中の3%w/wのPVA(4.6リットル)を有する連続相にゆっくり添加した。ついで、得られたエマルジョンを、充填床カラムに44分間にわたって通した。エマルジョンを、過剰量の水中に集め、溶媒を除去することにより、粒子を硬化させた。無機物とポリマーとの間の比は、30/70重量%であり、これは、TGA測定により、約27重量%の無機物であることが確認された。
【0101】
流動性の結果は、安息角20.6°および破壊エネルギー約38kJ/kgの良好な流れを示した。
【0102】
実施例7
ポリカプロラクトン粉末(PCL、RESOMER(登録商標)C212)、ポリ乳酸粉末(PLA、RESOMER(登録商標)L206S)およびポリジオキサノン粉末(PDO、RESOMER(登録商標)X206S)を、ミルによる極低温粉砕プロセスを使用して製造した。この粉末の粒径分布を、表13に見ることができる。
【0103】
【0104】
3つの粉末を全て、未焼成HA(UHA Nano、D50=0.8~0.9μm)、未焼成TCP(UTCP Nano、D50=0.8~0.9μm)およびマイクロ未焼成HA(Micro UHA、d50=3μm)と、高せん断ミキサーを使用して、粉末に対して1、3、5、7、10重量%の添加剤の重量割合でブレンドした。得られた粉末を、それらの流動特性について定量分析した。データのグラフ表示を、
図1、
図2および
図3に見ることができる。
【0105】
全ての未焼成添加剤により、PDOの1重量%のMicro UHAブレンドを除いて、元のポリマー粉末と比較して、ブレンドのなだれエネルギーおよび破壊エネルギーが低下した。結果として、未焼成添加剤を含むほとんどの粉末ブレンドは、流れの改善を示した。
【0106】
実施例8
ポリカプロラクトン粉末(PCL、RESOMER(登録商標)C212)を、実施例3に記載された極低温ミル粉砕法を使用して作製した。この粉末を、未焼成HA(UHA Nano、D50=0.8~0.9μm)、未焼成TCP(UTCP Nano、D50=0.8~0.9μm)およびマイクロ未焼成HA(Micro UHA、d50=3μm)と、高せん断ミキサーを使用して、粉末に対して1、3、5、7、10重量%の添加剤の重量割合でブレンドした。得られた粉末ブレンドを、タップ密度評価を使用して評価し、各粉末のハウスナー比および圧縮性指数を決定した。ハウスナー比は、粉末の嵩密度とタップ密度との比である。圧縮性指数は、タップ密度測定中に粉末がどれだけ圧縮するかの%表示である。結果を、表14に見ることができる。
【0107】
【0108】
表14から、粉末ブレンドにより、未焼成添加剤を含む全ての粉末ブレンドについて、ハウスナー比および圧縮性指数が低下したことが示される。
【0109】
実施例9
ポリカプロラクトン(PCL、RESOMER(登録商標)C209)およびポリジオキサノン(PDO、RESOMER(登録商標)X206S)ポリマーを、実施例3に記載された極低温粉砕法を使用して粉砕した。両ポリマー粉末を、5重量%の焼成HA(SHA)、焼成(STCP)、未焼成TCP(UTCP Nano)および未焼成HA(UHA Nano)と、高せん断ミキサーを使用してブレンドした。動的流動分析を使用して、全ての粉末を、なだれエネルギーおよび破壊エネルギーについて定量評価した。動的流動分析についての結果を、
図4および
図5に見ることができる。
【0110】
全ての粉末ブレンドについて、ポリマー組成にかかわらず、未焼成添加剤により、元のポリマー粉末の破壊エネルギーおよびなだれエネルギーが低下した。焼成添加剤は、粉末の破壊エネルギーおよびなだれエネルギーの顕著ではない変化または顕著な向上により示すことができるように、粉末の流れには有益ではなかった。結果として、未焼成添加剤は、粉末の流れに有益であるが、焼成添加剤は有益ではない。
【0111】
<1> 1~150μmの範囲のD50を有するポリマー粒子を含む、
三次元印刷用の易流動生体適合性ポリマー粉末。
【0112】
<2> 該粒子が、20~100μmの範囲のD50を有し、該粒子が、≦60μmの範囲のD90~D10を有する、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0113】
<3> 該粉末が、500g/mL以上の嵩密度を有する、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0114】
<4> 該粉末が、微量の界面活性剤を含有する、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0115】
<5> 該粉末が、微量の塩および界面活性剤を含有する、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0116】
<6> 該粒子が、ブレード系またはロール系の粉末系3D印刷機で加工される、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0117】
<7> 該ポリマーが、ポリアリールケトン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレートまたはポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)を含有するコポリマーおよびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせからなる群から選択される、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0118】
<8> 該ポリマーが、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ酸無水物、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタンおよびそのコポリマーならびにそれらのブレンドからなる群から選択される、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0119】
<9> さらに、カプセル化バイオセラミックス、生体分子または生物活性剤を含む、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0120】
<10> さらに、流動助剤を含む、態様<1>記載のポリマー粉末。
【0121】
<11> 該流動助剤が、0.5~10重量%の範囲の濃度を有する、態様<10>記載のポリマー粉末。
【0122】
<12> 該流動助剤が、バイオセラミックスである、態様<10>記載のポリマー粉末。
【0123】
<13> 該流動助剤が、0.1~10μmの範囲のD50を有するポリマー粒子を含む、球状の易流動生体適合性ポリマー粉末である、態様<10>記載のポリマー粉末。
【0124】
<14> 粉末は、さらに、流動助剤を含み、該流動助剤は、バイオセラミックスであり、該バイオセラミックスは、部分的に非晶質の生体適合性形態にある、
粉砕された性質または丸い形状の性質のポリマー粉末。
【0125】
<15> 該バイオセラミックスが、50%未満の結晶化度レベルを有する、態様<14>記載のポリマー粉末。
【0126】
<16> 該バイオセラミックスが、0.5~10重量%の範囲の濃度を有する、態様<14>記載のポリマー粉末。
【0127】
<17> 該バイオセラミックスが、30m2/g超のBET表面積を有する、態様<14>記載のポリマー粉末。
【0128】
<18> 該バイオセラミックスが、リン酸カルシウムおよびそのドープ変異体(例えば、ストロンチウム、亜鉛、マグネシウム、フッ化物、炭酸塩等)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、生体適合性ガラス、例えば、バイオガラス等である、態様<14>記載のポリマー粉末。
【0129】
<19> リン酸カルシウムが、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、カルシウム欠乏炭酸塩含有ヒドロキシアパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸二カルシウム、二相性リン酸カルシウムまたはそれらの混合物である、態様<18>記載のポリマー粉末。
【0130】
<20> 該ポリマー粉末の破壊エネルギー値が、流動助剤を含まない純粋なポリマー粉末の破壊エネルギー値の5%未満である、態様<14>記載のポリマー粉末。
【0131】
<21> 該ポリマー粉末の嵩密度が、純粋なポリマーの嵩密度より少なくとも8%大きい、態様<14>記載のポリマー粉末。
【0132】
<22> 該粒子が、ブレード系またはロール系の粉末系3D印刷機で加工される、態様<14>記載のポリマー粉末。
【0133】
<23> 0.1~10μmの範囲のD50を有するポリマー粒子を含む、三次元印刷のための、態様<14>記載の球状の易流動生体適合性ポリマー粉末の使用。
【0134】
<24> 該ポリマーが、ポリアリールケトン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレートまたはポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)を含有するコポリマーおよびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、態様<23>記載の使用。
【0135】
<25> 該ポリマーが、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ酸無水物、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタンおよびそのコポリマーならびにそれらのブレンドからなる群から選択されることを特徴とする、態様<23>記載の使用。
【0136】
<26> 該粉末が、球状または不規則な形状のポリマー粒子のための流動助剤として使用される、態様<14>記載のポリマー粉末。
【0137】
<27> (a)生体適合性ポリマーを提供することと、
(b)該生体適合性ポリマーをポリマー溶液に添加することにより、該生体適合性ポリマーと該ポリマー溶液との混合物を生成することと、
(c)該混合物をホモジナイズして、分散相を形成することと、
(d)該分散相を、連続プロセス媒体を含む連続相と混合することにより、エマルジョンを形成することと、
(e)微粒子を形成し、抽出することとを含む、
態様<1>記載の易流動生体適合性ポリマー粉末を製造するための方法。
【0138】
<28> 該生体適合性ポリマーが、ポリアリールケトン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレートまたはポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)を含有するコポリマーおよびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせからなる群から選択される、態様<27>記載の方法。
【0139】
<29> 該生体適合性ポリマーが、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ酸無水物、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタンおよびそのコポリマーならびにそれらのブレンドからなる群から選択される、態様<27>記載の方法。
【0140】
<30> 工程(d)の該混合工程が、前記連続相および前記分散相を層流条件下で充填床装置に通すことを含む、態様<27>から<29>までのいずれか記載の方法。
【0141】
<31> 該充填材料が、20~1000μmの範囲のサイズの球状ビーズである、態様<27>記載の方法。
【0142】
<32> (a)生体適合性ポリマーを提供することと、
(b)該生体適合性ポリマーをポリマー溶液に添加することにより、該生体適合性ポリマーと該ポリマー溶液との混合物を生成することと、
(c)該混合物をホモジナイズして、分散相を形成することと、
(d)該分散相を、連続プロセス媒体を含む連続相と混合することにより、エマルジョンを形成することであって、該連続プロセス媒体が、少なくとも1種の塩および少なくとも1種の第2の溶媒を含み、該第2の溶媒が、該連続プロセス媒体中の該第1の溶媒の溶解度を低下させる、形成と、
(e)微粒子を形成し、抽出することとを含む、
態様<1>記載の易流動生体適合性ポリマー粉末を製造するための方法。
【0143】
<33> 該生体適合性ポリマーが、ポリアリールケトン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレートまたはポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)を含有するコポリマーおよびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせからなる群から選択される、態様<32>記載の方法。
【0144】
<34> 該生体適合性ポリマーが、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリエステルアミド、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ酸無水物、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタンおよびそのコポリマーならびにそれらのブレンドからなる群から選択される、態様<32>記載の方法。
【0145】
<35> 工程(d)の該混合工程が、前記連続相および前記分散相を層流条件下で充填床装置に通すことを含む、態様<32>から<34>までのいずれか記載の方法。
【0146】
<36> 該充填材料が、20~1000μmの範囲のサイズの球状ビーズである、態様<35>記載の方法。
【0147】
<37> 該第2の溶媒が、該連続プロセス媒体中で飽和量またはほぼ飽和量にある、態様<32>記載の方法。
【0148】
<38> 該塩が、塩化ナトリウムを含む、態様<32>記載の方法。
【0149】
<39> 該第1および第2の溶媒が、有機溶媒を含む、態様<32>記載の方法。
【0150】
<40> (a)ポリマー粉末粒子と、
(b)流動助剤とを含み、
該ポリマー粉末粒子は、生体適合性ポリマーまたは生分解性ポリマーを含む、
粉末加工技術における使用のための、改善された流動性を有する組成物。
【0151】
<41> 該流動助剤が、(a)の該ポリマー粉末粒子とは異なるポリマー粉末粒子である、態様<40>記載の組成物。
【0152】
<42> 該ポリマー粉末粒子が、ポリアリールケトン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリトリメチルカーボネート、ポリグリコリド、ポリ(アミノ酸)および各モノマーのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-co-トリメチルカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-ポリエチレン-グリコール)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)を含有するコポリマー、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレートまたはポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)を含有するコポリマーおよびそれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせを含む、態様<40>記載の組成物。
【0153】
<43> 該ポリマー粉末粒子が、ポリカプロラクトンまたはポリジオキサノンを含む、態様<40>記載の組成物。
【0154】
<44> 該ポリマー粉末粒子の平均粒径が、500μm以下である、態様<40>記載の組成物。
【0155】
<45> 該流動助剤が、非晶質カルシウム塩を含む、態様<40>記載の組成物。
【0156】
<46> 該流動助剤の平均粒径が、250μm以下である、態様<40>記載の組成物。
【0157】
<47> 該流動助剤が、バイオセラミックスである、態様<40>記載の組成物。
【0158】
<48> 該流動助剤が、β-リン酸三カルシウム、二相性リン酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよびヒドロキシアパタイトの群から選択される少なくとも1種の材料を含む、態様<40>記載の組成物。
【0159】
<49> 該流動助剤が、非晶質の非焼結リン酸カルシウムを含む、態様<40>記載の組成物。
【0160】
<50> 該流動助剤が、X線回折により測定された場合、90%以下の結晶化度を有する、態様<40>記載の組成物。
【0161】
<51> 該流動助剤が、10m2/g以上の表面積を有する、態様<40>記載の組成物。
【0162】
<52> 該流動助剤が、球状または粉砕された幾何学的形状を有する、態様<40>記載の組成物。
【0163】
<53> 該流動助剤が、被覆、表面結合添加剤または組成物の内部成分として、ポリマー粉末粒子に包含される、態様<47>から<52>までのいずれか記載の組成物。
【0164】
<54> 該流動助剤の添加により、該組成物のなだれエネルギーが、120kJ/kg以下に低下する、態様<40>記載の組成物。
【0165】
<55> 該組成物がポリマー粉末粒子のみを含有する場合と比較して、該組成物が該組成物全体の30重量%以下で流動助剤を含有する場合に、該なだれエネルギーがより低い、態様<40>記載の組成物。
【0166】
<56> 該流動助剤の添加により、該組成物の破壊エネルギーが、200kJ/kg以下に低下する、態様<40>記載の組成物。
【0167】
<57> 該組成物がポリマー粉末粒子のみを含有する場合と比較して、該組成物が該組成物全体の30重量%以下で流動助剤を含有する場合に、該組成物が、より小さい破壊エネルギーを有する、態様<40>記載の組成物。
【0168】
<58> 該流動助剤により、粒子間摩擦が減少し、該粉末の流動特性が改善される、態様<40>記載の組成物。
【0169】
<59> 該流動助剤が、該ポリマー粉末粒子の表面上に水分バリアを形成する、態様<40>記載の組成物。
【0170】
<60> 2種以上のバイオセラミックス流動助剤が存在し、該バイオセラミックス流動助剤が、粉末添加剤である、態様<47>記載の組成物。
【0171】
<61> 該粉末が、1.6以下かつ0.5以上のハウスナー比を有する、態様<40>記載の組成物。
【0172】
<62> 該粉末が、50%未満の圧縮指数を有する、態様<40>記載の組成物。