(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】歪み計測装置、歪み計測プログラム及び歪み計測方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G01C15/00 102C
(21)【出願番号】P 2019238499
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】520462481
【氏名又は名称】一般社団法人防災減災技術開発機構
(72)【発明者】
【氏名】藤縄 幸雄
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075810(JP,A)
【文献】特開2007-256036(JP,A)
【文献】特開2008-175676(JP,A)
【文献】特開2011-102736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の各頂点に対応する各GNSS観測点において所定の観測周期で観測された各時点の観測データに基づいて、前記四角形の4つの辺及び2つの対角線にそれぞれ対応する各観測基線に対する前記各時点の歪み量を算出する歪み量算出部と、
前記各観測基線に対する前記各時点の前記歪み量を、前記四角形を正方形に近似した仮想正方形の4つの辺及び2つの対角線にそれぞれ対応する各仮想基線に対する前記各時点の歪み量に変換する歪み量変換部と、
前記各仮想基線に対する前記各時点の前記歪み量に基づいて、前記仮想正方形において互いに直交する2つの辺にそれぞれ平行な辺方向に対する前記各時点の第1及び第2の歪み成分と、前記仮想正方形の2つの対角線にそれぞれ平行な対角方向に対する前記各時点の第3及び第4の歪み成分とを算出する歪み成分算出部とを備える、
ことを特徴とする歪み計測装置。
【請求項2】
コンピュータを、請求項1に記載の歪み計測装置として機能させる、
ことを特徴とする歪み計測プログラム。
【請求項3】
四角形の各頂点に対応する各GNSS観測点において所定の観測周期で観測された各時点の観測データに基づいて、前記四角形の4つの辺及び2つの対角線にそれぞれ対応する各観測基線に対する前記各時点の歪み量を算出する歪み量算出工程と、
前記各観測基線に対する前記各時点の前記歪み量を、前記四角形を正方形に近似した仮想正方形の4つの辺及び2つの対角線にそれぞれ対応する各仮想基線に対する前記各時点の歪み量に変換する歪み量変換工程と、
前記各仮想基線に対する前記各時点の前記歪み量に基づいて、前記仮想正方形において互いに直交する2つの辺にそれぞれ平行な辺方向に対する前記各時点の第1及び第2の歪み成分と、前記仮想正方形の2つの対角線にそれぞれ平行な対角方向に対する前記各時点の第3及び第4の歪み成分とを算出する歪み成分算出工程とを含む、
ことを特徴とする歪み計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪み計測装置、歪み計測プログラム及び歪み計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地殻の歪みを様々な装置や方法で計測することにより、地震、火山噴火、地滑り等の災害の発生を予測する研究が盛んに行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、歪みの計測対象となる計測位置に光ファイバを配設し、その光ファイバの透過光量の増減に応じて地殻の歪みを検知する歪みセンサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された歪みセンサでは、計測位置に光ファイバを敷設しなければならないため、光ファイバを敷設するための作業や費用が必要となる。そして、計測位置の状況によっては、例えば、地形等が原因で光ファイバの敷設が困難な場合もあり得る。
【0006】
また、特許文献1に開示された歪みセンサでは、光ファイバが敷設された方向に沿ってしか地殻の歪みを計測することができない。そのため、2次元的な地殻の歪みを計測するためには、複数の方向に沿って光ファイバを敷設しなければならず、光ファイバを敷設するための作業や費用がさらに必要となる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、装置を設置するための作業や費用を軽減しながら、2次元的な地殻の歪みを計測可能な歪み計測装置、歪み計測プログラム及び歪み計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る歪み計測装置は、
四角形の各頂点に対応する各GNSS観測点において所定の観測周期で観測された各時点の観測データに基づいて、前記四角形の4つの辺及び2つの対角線にそれぞれ対応する各観測基線に対する前記各時点の歪み量を算出する歪み量算出部と、
前記各観測基線に対する前記各時点の前記歪み量を、前記四角形を正方形に近似した仮想正方形の4つの辺及び2つの対角線にそれぞれ対応する各仮想基線に対する前記各時点の歪み量に変換する歪み量変換部と、
前記各仮想基線に対する前記各時点の前記歪み量に基づいて、前記仮想正方形において互いに直交する2つの辺にそれぞれ平行な辺方向に対する前記各時点の第1及び第2の歪み成分と、前記仮想正方形の2つの対角線にそれぞれ平行な対角方向に対する前記各時点の第3及び第4の歪み成分とを算出する歪み成分算出部とを備える。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る歪み計測プログラムは、
コンピュータを、上記歪み計測装置として機能させる。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る歪み計測方法は、
四角形の各頂点に対応する各GNSS観測点において所定の観測周期で観測された各時点の観測データに基づいて、前記四角形の4つの辺及び2つの対角線にそれぞれ対応する各観測基線に対する前記各時点の歪み量を算出する歪み量算出工程と、
前記各観測基線に対する前記各時点の前記歪み量を、前記四角形を正方形に近似した仮想正方形の4つの辺及び2つの対角線にそれぞれ対応する各仮想基線に対する前記各時点の歪み量に変換する歪み量変換工程と、
前記各仮想基線に対する前記各時点の前記歪み量に基づいて、前記仮想正方形において互いに直交する2つの辺にそれぞれ平行な辺方向に対する前記各時点の第1及び第2の歪み成分と、前記仮想正方形の2つの対角線にそれぞれ平行な対角方向に対する前記各時点の第3及び第4の歪み成分とを算出する歪み成分算出工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係る歪み計測装置によれば、歪み量算出部が、四角形の各頂点に対応する各GNSS観測点により観測された観測データに基づいて、四角形の各観測基線に対する歪み量を算出し、歪み量変換部が、四角形の各観測基線に対する歪み量を、仮想正方形の各仮想基線に対する歪み量に変換し、歪み成分算出部が、各仮想基線に対する歪み量に基づいて、辺方向に対する第1及び第2の歪み成分と、対角方向に対する第3及び第4の歪み成分とを算出する。
【0012】
そのため、歪み計測装置は、四角形の各頂点に対応する4つのGNSS観測点における観測データから、45度ずつ異なる4方向に対する歪み成分として、第1乃至第4の歪み成分を算出することにより、4方向に対して地殻の歪みを計測する疑似的な歪み計として機能する。したがって、歪み計測装置は、例えば、既設のGNSS観測点による観測データを利用することにより、装置を設置するための作業や費用を軽減しながら、2次元的な地殻の歪みを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る歪み計測システム100の一例を示す全体構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る歪み計測システム100の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る歪み計測装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】各GNSS観測点2A~2Dを結ぶ四角形20と、各観測基線に対する歪み量とを示す説明図である。
【
図5】仮想正方形21と、各仮想基線に対する歪み量及び第1乃至第4の歪み成分とを示す説明図である。
【
図6】第1乃至第4の歪み成分の経時変化の一例を示すグラフである。
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る歪み計測装置について、添付図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る歪み計測システム100の一例を示す全体構成図である。
図2は、本発明の実施形態に係る歪み計測システム100の一例を示すブロック図である。
【0016】
歪み計測システム100は、所定の間隔で配置された複数のGNSS観測点2と、複数のGNSS観測点2で観測された観測データの収集及び配信を行う観測データ管理装置3と、観測データ管理装置3により配信された観測データに基づいて、地殻の歪みを計測する歪み計測装置1とを備える。
【0017】
複数のGNSS観測点2は、例えば、数Km~数十kmの間隔を空けるようにして分散して配置されている。複数のGNSS観測点2の各々は、GNSS衛星からの衛星測位信号を所定の観測周期I(例えば、30秒間隔)で受信し、各時点t(例えば、30秒間隔)におけるGNSS観測点2の位置情報等を含む観測データd(t)を取得する。
【0018】
複数のGNSS観測点2は、例えば、日本全国の約1300か所に設置された既設の電子基準点を利用したものである。なお、複数のGNSS観測点2の一部は、既設の電子基準点が設置されていない位置に対して新たに設置されたGNSS観測装置でもよい。
【0019】
観測データ管理装置3は、例えば、汎用のコンピュータで構成されており、観測データd(t)を記憶するデータベース30を備える。
【0020】
観測データ管理装置3は、複数のGNSS観測点2において所定の観測周期Iで観測された各時点tの観測データd(t)を収集し、データベース30に記憶する。また、観測データ管理装置3は、データベース30に記憶された各GNSS観測点2における各時点tの観測データd(t)を配信する。
【0021】
その際、観測データ管理装置3は、観測データd(t)を定期的に配信することにより、リアルタイムの観測データd(t)を随時配信してもよいし、過去に観測された、例えば、過去1か月分の観測データd(t)を配信してもよい。
【0022】
歪み計測装置1は、例えば、汎用のコンピュータで構成されている。歪み計測装置1は、観測データ管理装置3から観測データd(t)を受信し、その観測データd(t)に対して各種演算を行うことにより地殻の歪みを計測し、その計測結果を出力する。
【0023】
観測データd(t)がリアルタイムの観測データd(t)である場合には、歪み計測装置1による計測結果は、地震、火山噴火、地滑り等の災害に結び付くような地殻変動の発生状況を即時に観測したり、監視(モニタリング)したりすることに使用できる。また、観測データd(t)が過去の観測データd(t)である場合には、歪み計測装置1による計測結果は、過去に災害が発生したときの地殻変動の発生状況や発生原因等を検証することに使用できる。
【0024】
歪み計測装置1は、その具体的な構成として、
図2に示すように、HDD、メモリ等により構成される記憶部11と、CPU等のプロセッサにより構成される制御部12と、外部機器(観測データ管理装置3を含む)との間の有線又は無線による通信インターフェースとして機能する通信部13と、キーボード、タッチパネル等により構成される操作部14と、ディスプレイ等により構成される表示部15とを備える。
【0025】
記憶部11には、歪み計測プログラム110が記憶されている。なお、記憶部11には、観測データ管理装置3から受信した観測データd(t)が記憶されていてもよい。
【0026】
制御部12は、記憶部11に記憶された歪み計測プログラム110を実行することにより、データ入力部120、計測処理部121、及び、出力処理部122として機能する。
【0027】
データ入力部120は、各GNSS観測点2において所定の観測周期Iで観測された所定の観測期間P1に含まれる各時点tの観測データd(t)が入力される。なお、データ入力部120は、例えば、記憶部11やUSBメモリ、DVD等の記録媒体に観測データd(t)が記憶されている場合には、記憶部11や記録媒体から観測データd(t)を読み出すことにより、観測データd(t)が入力されてもよい。
【0028】
計測処理部121は、データ入力部120に入力された観測データd(t)に基づいて、地殻の歪みを計測する歪み計測処理を行う。計測処理部121は、観測点選択部121a、歪み量算出部121b、歪み量変換部121c、歪み成分算出部121dを備える。なお、歪み計測処理及び計測処理部121の各部121a~121dの詳細は後述する。
【0029】
出力処理部122は、計測処理部121による計測結果を、例えば、表示部15の表示画面として出力する出力処理を行う。なお、出力処理部122は、出力処理として、計測結果をデータとして記憶部11に記憶してもよいし、歪み計測装置1とは別の装置(例えば、携帯端末、建物や施設の管理端末等)に計測結果を通知してもよいし、画像形成装置(プリンタ、複合機等)を介して紙媒体等に計測結果を出力してもよい。
【0030】
次に、歪み計測装置1の動作とともに、歪み計測処理及び計測処理部121の各部121a~121dの詳細について説明する。
【0031】
図3は、本発明の実施形態に係る歪み計測装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図4は、各GNSS観測点2A~2Dを結ぶ四角形20と、各観測基線に対する歪み量とを示す説明図である。
図5は、仮想正方形21と、各仮想基線に対する歪み量及び第1乃至第4の歪み成分とを示す説明図である。
【0032】
まず、データ入力工程(ステップS1)において、各GNSS観測点2において所定の観測周期Iで観測された所定の観測期間P1に含まれる各時点tの観測データd(t)が、データ入力部120に入力される。本実施形態では、所定の観測周期Iは30秒、所定の観測期間P1は24時間とすることで、各時点tの観測データd(t)は、30秒間隔24時間分の観測データd(t)が入力されるものとして説明する。
【0033】
次に、観測点選択工程(ステップS2)において、観測点選択部121aは、複数のGNSS観測点2の中から、所定の選択基準に基づいて、
図4に示すように、4つのGNSS観測点2A~2Dを選択する。観測点選択部121aは、所定の選択基準として、例えば、地殻の歪みを計測する対象となる計測対象領域に配置された4つのGNSS観測点2A~2Dであり、4つのGNSS観測点2A~2Dを結ぶことにより生成される四角形20が正方形により近くなるように、4つのGNSS観測点2A~2Dを選択する。
【0034】
なお、観測点選択工程(ステップS2)において、観測点選択部121aは、ユーザが4つのGNSS観測点2A~2Dを選択する選択操作を、操作部14を介して受け付けるようにしてもよい。また、観測点選択部121aによる観測点選択工程(ステップS2)は、省略可能であり、観測点選択工程(ステップS2)を省略した場合には、データ入力工程(ステップS1)において、例えば、ユーザが予め選択した4つのGNSS観測点2A~2Dにおける観測データd(t)が、データ入力部120に入力されるようにすればよい。
【0035】
次に、歪み量算出工程(ステップS3)において、歪み量算出部121bは、
図4に示すように、四角形20の各頂点200A~200Dに対応する各GNSS観測点2A~2Dにおいて所定の観測周期Iで観測された所定の観測期間P1に含まれる各時点t(30秒間隔24時間分)の観測データd(t)に基づいて、四角形20の4つの辺201A~201D及び2つの対角線202A、202Bにそれぞれ対応する各観測基線NS1、NS2、EW1、EW2、NW、NEに対する各時点tの歪み量ε
NS1(t)、ε
NS2(t)、ε
EW1(t)、ε
EW2(t)、ε
NW(t)、ε
NE(t)を算出する。
【0036】
その際、歪み量εNS1(t)、εNS2(t)、εEW1(t)、εEW2(t)、εNW(t)、εNE(t)は、以下の式(1)により算出される。
【0037】
【0038】
次に、歪み量変換工程(ステップS4)において、歪み量変換部121cは、
図5に示すように、各観測基線NS1、NS2、EW1、EW2、NW、NEに対する各時点t(30秒間隔24時間分)の歪み量ε
NS1(t)、ε
NS2(t)、ε
EW1(t)、ε
EW2(t)、ε
NW(t)、ε
NE(t)を、四角形20を正方形に近似した仮想正方形21の4つの辺211A~211D及び2つの対角線212A、212Bにそれぞれ対応する各仮想基線NS1′、NS2′、EW1′、EW2′、NW′、NE′に対する各時点t(30秒間隔24時間分)の歪み量ε′
NS1(t)、ε′
NS2(t)、ε′
EW1(t)、ε′
EW2(t)、ε′
NW(t)、ε′
NE(t)に変換する。
【0039】
仮想正方形21は、四角形20が正方形に近似されたものであり、
図5に示す仮想正方形21は、仮想正方形21の一辺211A(仮想基線EW1′)を四角形20の一辺201A(観測基線EW1)に一致させるようにして近似されたものである。そして、歪み量変換部121cは、例えば、テンソルを用いた幾何学的な座標変換を行うことにより、四角形20の各観測基線NS1、NS2、EW1、EW2、NW、NEに対する歪み量ε
NS1(t)、ε
NS2(t)、ε
EW1(t)、ε
EW2(t)、ε
NW(t)、ε
NE(t)を、仮想正方形21の各仮想基線NS1′、NS2′、EW1′、EW2′、NW′、NE′に対する歪み量ε′
NS1(t)、ε′
NS2(t)、ε′
EW1(t)、ε′
EW2(t)、ε′
NW(t)、ε′
NE(t)に変換する。
【0040】
次に、歪み成分算出工程(ステップS5)において、歪み成分算出部121dは、各仮想基線NS1′、NS2′、EW1′、EW2′、NW′、NE′に対する各時点t(30秒間隔24時間分)の歪み量ε′NS1(t)、ε′NS2(t)、ε′EW1(t)、ε′EW2(t)、ε′NW(t)、ε′NE(t)に基づいて、仮想正方形21において互いに直交する2つの辺(例えば、辺211A、211C)にそれぞれ平行な辺方向(NS方向、EW方向)に対する各時点t(30秒間隔24時間分)の第1及び第2の歪み成分ENS(t)、EEW(t)と、仮想正方形21の2つの対角線212A、212Bにそれぞれ平行な対角方向(NW方向、NE方向)に対する各時点t(30秒間隔24時間分)の第3及び第4の歪み成分ENW(t)、ENE(t)とを算出する(ステップS5)。
【0041】
その際、第1乃至第4の歪み成分E
NS(t)、E
EW(t)、E
NW(t)、E
NE(t)は、以下の式(2)により算出される。そのため、第1乃至第4の歪み成分E
NS(t)、E
EW(t)、E
NW(t)、E
NE(t)は、
図5に示すように、45度ずつ異なる4方向に対する地殻の歪みとみなすことができる。
【0042】
【0043】
図6は、第1乃至第4の歪み成分E
NS(t)、E
EW(t)、E
NW(t)、E
NE(t)の経時変化の一例を示すグラフである。横軸は、時間の経過、縦軸は歪み成分の大きさである。
【0044】
次に、出力処理工程(ステップS6)において、出力処理部122は、計測処理部121の計測結果として、例えば、各時点t(30秒間隔)の第1乃至第4の歪み成分E
NS(t)、E
EW(t)、E
NW(t)、E
NE(t)を時系列でそれぞれ示すグラフ(
図6参照)を、表示部15の表示画面として出力する出力処理を行う。
【0045】
以上のようにして、歪み計測装置1は、観測データd(t)に基づいて、地殻の歪みとして、第1乃至第4の歪み成分ENS(t)、EEW(t)、ENW(t)、ENE(t)を計測し、出力する。
【0046】
本発明の一実施形態に係る歪み計測装置1によれば、歪み量算出部121bが、四角形20の各頂点200A~200Dに対応する各GNSS観測点2A~2Dにより観測された観測データd(t)に基づいて、四角形20の各観測基線NS1、NS2、EW1、EW2、NW、NEに対する歪み量εNS1(t)、εNS2(t)、εEW1(t)、εEW2(t)、εNW(t)、εNE(t)を算出し、歪み量変換部121cが、四角形20の各観測基線NS1、NS2、EW1、EW2、NW、NEに対する歪み量εNS1(t)、εNS2(t)、εEW1(t)、εEW2(t)、εNW(t)、εNE(t)を、仮想正方形21の各仮想基線NS1′、NS2′、EW1′、EW2′、NW′、NE′に対する歪み量ε′NS1(t)、ε′NS2(t)、ε′EW1(t)、ε′EW2(t)、ε′NW(t)、ε′NE(t)に変換し、歪み成分算出部121dが、各仮想基線NS1′、NS2′、EW1′、EW2′、NW′、NE′に対する歪み量ε′NS1(t)、ε′NS2(t)、ε′EW1(t)、ε′EW2(t)、ε′NW(t)、ε′NE(t)に基づいて、辺方向に対する第1及び第2の歪み成分ENS(t)、EEW(t)と、対角方向に対する第3及び第4の歪み成分ENW(t)、ENE(t)とを算出する。
【0047】
そのため、歪み計測装置1は、四角形20の各頂点200A~200Dに対応する4つのGNSS観測点2A~2Dにおける観測データd(t)から、45度ずつ異なる4方向に対する歪み成分として、第1乃至第4の歪み成分ENS(t)、EEW(t)、ENW(t)、ENE(t)を算出することにより、4方向に対して地殻の歪みを計測する疑似的な歪み計として機能する。したがって、歪み計測装置1は、例えば、既設のGNSS観測点2による観測データd(t)を利用することにより、装置を設置するための作業や費用を軽減しながら、2次元的な地殻の歪みを計測することができる。
【0048】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、仮想正方形21は、
図5に示すように、仮想正方形21の一辺211A(仮想基線EW1′)を四角形20の一辺201A(観測基線EW1)に一致させるようにして近似されるものとして説明したが、四角形20を仮想正方形21に近似する手法は適宜変更してもよい。さらに、仮想正方形21は、4つの辺211A~211Dが4方位に対してそれぞれ平行になるように近似されたものであるが、これに限られず、例えば、4つの各頂点210A~210Dが4方位にそれぞれ配置されるように近似されるものでもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、データ入力部120には、各時点tの観測データd(t)として、30秒間隔24時間分の観測データd(t)が入力されるものとして説明したが、各時点tの観測データd(t)が、観測周期I毎にリアルタイムで入力されるようにしてもよい。その場合には、歪み計測装置1は、例えば、
図3に示すステップS3~S6を観測周期I毎に繰り返し実行するようにすればよい。
【0051】
また、上記実施形態では、歪み計測プログラム110は、記憶部11に記憶されたものとして説明したが、USBメモリ、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで記録されて提供されてもよいし、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…歪み計測装置、100…歪み計測システム
11…記憶部、110…歪み計測プログラム
12…制御部、
120…データ入力部
121…計測処理部
121a…観測点選択部、121b…歪み量算出部、
121c…歪み量変換部、121d…歪み成分算出部、
122…出力処理部
13…通信部、14…操作部、15…表示部
2、2A~2D…観測点、
20…四角形
200A~200D…頂点、201A~201D…辺、202A、202B…対角線
21…仮想正方形
210A~210D…頂点、211A~211D…辺、212A、212B…対角線
3…観測データ管理装置、30…データベース