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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231214BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20231214BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20231214BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
C23C14/50 A
C23C16/458
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019166044
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2020072262
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2018203755
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】白石 純
(72)【発明者】
【氏名】西願 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 達哉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 仁弘
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/046969(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/213714(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157571(WO,A1)
【文献】特開2017-218352(JP,A)
【文献】特開昭62-094307(JP,A)
【文献】特開2005-347400(JP,A)
【文献】特開2003-041368(JP,A)
【文献】特開2018-056237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
C23C 14/50
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持し、ガス導入路を有するベースプレートと、
前記ベースプレートと、前記セラミック誘電体基板の前記第1主面と、の間であって、前記ガス導入路と対向する位置に設けられた第1多孔質部と、
を備え、
前記第1多孔質部は、それぞれが複数の孔を有し、互いに離隔して設けられた複数の疎部分を有し、
前記複数の疎部分のそれぞれは、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう第1方向に対して所定の角度傾いた方向に延びていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記複数の孔は、前記ガス導入路から導入されたガスが流通可能となっていることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第1方向と、前記疎部分が延びる方向との間の角度は、5°以上、30°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第1多孔質部は、前記複数の疎部分同士の間に位置し、前記疎部分の密度よりも高い密度を有する密部分をさらに有し、
前記疎部分は、前記孔と、前記孔との間に設けられた壁部を有し、
前記第1方向に対して所定の角度傾いた方向に略直交する方向において、前記壁部の寸法の最小値は、前記密部分の寸法の最小値よりも小さいことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項5】
前記セラミック誘電体基板は、前記第1主面と、前記第1多孔質部との間に位置する第1孔部を有し、
前記セラミック誘電体基板および前記第1多孔質部の少なくともいずれかは、前記第1孔部と、前記第1多孔質部との間に位置する第2孔部を有し、
前記第1方向と略直交する第2方向において、前記第2孔部の寸法は、前記第1多孔質部の寸法よりも小さく、前記第1孔部の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項6】
前記第1多孔質部と前記ガス導入路との間に設けられ、複数の孔を有する第2多孔質部をさらに備え、
前記第2多孔質部に設けられた複数の孔は、前記第1多孔質部に設けられた複数の孔よりも3次元的に分散し、
前記第1方向に貫通する孔の割合は、前記第2多孔質部よりも前記第1多孔質部の方が多いことを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項7】
前記第2多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値は、前記第1多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値よりも大きいことを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項8】
前記第2多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値は、前記第1多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値よりも小さい請求項1~6のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項9】
前記第1多孔質部と前記ガス導入路との間に設けられ、複数の孔を有する第2多孔質部をさらに備え、
前記第多孔質部に設けられた前記複数の孔の径の平均値は、前記第多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値よりも大きいことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項10】
前記第1多孔質部および前記セラミック誘電体基板は、酸化アルミニウムを主成分として含み、
前記セラミック誘電体基板の前記酸化アルミニウムの純度は、前記第1多孔質部の前記酸化アルミニウムの純度よりも高いことを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項11】
前記第1多孔質部と前記ガス導入路との間に設けられた第2多孔質部をさらに備え、
前記セラミック誘電体基板は、前記第1主面と、前記第1多孔質部との間に位置する第1孔部を有し、
前記第2多孔質部は、
複数の孔を有するセラミック多孔体と、
前記セラミック多孔体よりも緻密な緻密部と、を有し、
前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう第1方向に対して垂直な平面に投影したときに、前記緻密部と前記第1孔部とは重なり、前記第2の多孔部と前記第1孔部とは重ならないように構成される、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項12】
前記セラミック多孔体は、複数の孔を有する複数の疎部分と、前記疎部分の密度よりも高い密度を有する密部分と、を有し、
前記セラミック多孔体において、
前記複数の疎部分のそれぞれは、前記第1方向に延び、前記密部分は、前記複数の疎部分同士の間に位置し、
前記疎部分は、前記孔同士の間に設けられた壁部を有し、
前記第2方向において、前記壁部の寸法の最小値は、前記密部分の寸法の最小値よりも小さい、ことを特徴とする請求項11記載の静電チャック。
【請求項13】
前記第1方向に略直交する方向を第2方向としたときに、
前記第1多孔質部は、前記第2方向において前記セラミック誘電体基板側に位置する第1領域を有し、
前記セラミック誘電体基板は、前記第2方向において前記第1領域側に位置する第1基板領域を有し、
前記第1領域と前記第1基板領域とは接して設けられ、
前記第1領域における平均粒子径は、前記第1基板領域における平均粒子径と異なることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項14】
前記第1基板領域における前記平均粒子径は、前記第1領域における前記平均粒子径よりも小さいことを特徴とする請求13載の静電チャック。
【請求項15】
前記セラミック誘電体基板は、第2基板領域を含み、
前記第1基板領域は、前記第2基板領域と前記第1多孔質部との間に位置し、
前記第1基板領域における前記平均粒子径は、前記第2基板領域における前記平均粒子径よりも小さいことを特徴とする請求項12~14のいずれか1つに記載の静電チャック。
【請求項16】
前記第1領域における前記平均粒子径は、前記第2基板領域における前記平均粒子径よりも小さいことを特徴とする請求項15記載の静電チャック。
【請求項17】
前記第1領域における前記平均粒子径は、前記第1基板領域における前記平均粒子径よりも小さいことを特徴とする請求項12、13、15、16のいずれか1つに記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ等のセラミック誘電体基板のあいだに電極を挟み込み、焼成することで作製されるセラミック製の静電チャックは、内蔵する電極に静電吸着用電力を印加し、シリコンウェーハ等の基板を静電力によって吸着するものである。このような静電チャックにおいては、セラミック誘電体基板の表面と、吸着対象物である基板の裏面と、の間にヘリウム(He)等の不活性ガスを流し、吸着対象物である基板の温度をコントロールしている。
【0003】
例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、スパッタリング装置、イオン注入装置、エッチング装置など、基板に対する処理を行う装置において、処理中に基板の温度上昇を伴うものがある。このような装置に用いられる静電チャックでは、セラミック誘電体基板と吸着対象物である基板との間にHe等の不活性ガスを流し、基板に不活性ガスを接触させることで基板の温度上昇を抑制している。
【0004】
He等の不活性ガスによる基板温度の制御を行う静電チャックにおいては、セラミック誘電体基板及びセラミック誘電体基板を支持するベースプレートに、He等の不活性ガスを導入するための穴(ガス導入路)が設けられる。また、セラミック誘電体基板には、ベースプレートのガス導入路と連通する貫通孔が設けられる。これにより、ベースプレートのガス導入路から導入された不活性ガスは、セラミック誘電体基板の貫通孔を通って、基板の裏面へ導かれる。
【0005】
ここで、装置内で基板を処理する際、装置内のプラズマから金属製のベースプレートに向かう放電(アーク放電)が発生することがある。ベースプレートのガス導入路やセラミック誘電体基板の貫通孔は、放電の経路となりやすいことがある。そこで、ベースプレートのガス導入路やセラミック誘電体基板の貫通孔に、多孔質部を設けることで、アーク放電に対する耐性(絶縁耐圧等)を向上させる技術がある。例えば、特許文献1には、ガス導入路内にセラミック焼結多孔体を設け、セラミック焼結多孔体の構造及び膜孔をガス流路にすることで、ガス導入路内での絶縁性を向上させた静電チャックが開示されている。また、特許文献2には、ガス拡散用空隙内に、セラミックス多孔体からなり放電を防止するための処理ガス流路用の放電防止部材を設けた静電チャックが開示されている。また、特許文献3には、アルミナのような多孔質誘電体として誘電体インサートを設け、アーク放電を低減する静電チャックが開示されている。このような多孔質部を有する静電チャックにおいて、アーク放電の発生をさらに抑制することができる静電チャックの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-123712号公報
【文献】特開2003-338492号公報
【文献】特開平10-50813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、多孔質部が設けられた静電チャックにおいて、アーク放電の発生を効果的に抑制することができる静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、吸着の対象物を載置する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持し、ガス導入路を有するベースプレートと、前記ベースプレートと、前記セラミック誘電体基板の前記第1主面と、の間であって、前記ガス導入路と対向する位置に設けられた第1多孔質部と、を備え、前記第1多孔質部は、それぞれが複数の孔を有し、互いに離隔して設けられた複数の疎部分を有し、前記複数の疎部分のそれぞれは、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう第1方向に対して所定の角度傾いた方向に延びていることを特徴とする静電チャックである。
【0009】
この静電チャックによれば、第1多孔質部に、それぞれが複数の孔を有し、互いに離隔して設けられた複数の疎部分が設けられているので、アーク放電に対する耐性と流れるガスの流量とを確保することができる。またさらに、複数の疎部分のそれぞれが、ベースプレートからセラミック誘電体基板へ向かう第1方向に対して所定の角度傾いた方向に延びているので、疎部分に設けられた孔の内部を電流が流れる際に、電子が加速されにくくなると考えられる。そのため、アーク放電の発生を効果的に抑制することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記複数の孔は、前記ガス導入路から導入されたガスが流通可能となっていることを特徴とする静電チャックである。
【0011】
この静電チャックによれば、ガス導入路から導入されたガスをセラミック誘電体基板の第1主面側に導くことができる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1方向と、前記疎部分が延びる方向との間の角度は、5°以上、30°以下であることを特徴とする静電チャックである。
【0013】
この静電チャックによれば、アーク放電の発生を抑制するのが容易となる。
【0014】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記第1多孔質部は、前記複数の疎部分同士の間に位置し、前記疎部分の密度よりも高い密度を有する密部分をさらに有し、前記疎部分は、前記孔と、前記孔との間に設けられた壁部を有し、前記第1方向に対して所定の角度傾いた方向に略直交する方向において、前記壁部の寸法の最小値は、前記密部分の寸法の最小値よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0015】
この静電チャックによれば、第1多孔質部に疎部分と密部分とが設けられているので、アーク放電に対する耐性とガス流量とを確保しつつ、第1多孔質部の機械的な強度(剛性)を向上させることができる。
【0016】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記セラミック誘電体基板は、前記第1主面と、前記第1多孔質部との間に位置する第1孔部を有し、前記セラミック誘電体基板および前記第1多孔質部の少なくともいずれかは、前記第1孔部と、前記第1多孔質部との間に位置する第2孔部を有し、前記第1方向と略直交する第2方向において、前記第2孔部の寸法は、前記第1多孔質部の寸法よりも小さく、前記第1孔部の寸法よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
【0017】
この静電チャックによれば、ガス導入路と対向する位置に設けられた第1多孔質部により、第1孔部に流れるガスの流量を確保しつつ、アーク放電に対する耐性を向上させることができる。また、所定の寸法を有する第2孔部が設けられているので、寸法の大きな第1多孔質部に導入されたガスの大部分を、第2孔部を介して寸法の小さな第1孔部に導入することができる。すなわち、アーク放電の低減とガスの流れの円滑化を図ることができる。
【0018】
第6の発明は、第1~第5のいずれか1つの発明において、前記第1多孔質部と前記ガス導入路との間に設けられ、複数の孔を有する第2多孔質部をさらに備え、前記第2多孔質部に設けられた複数の孔は、前記第1多孔質部に設けられた複数の孔よりも3次元的に分散し、前記第1方向に貫通する孔の割合は、前記第2多孔質部よりも前記第1多孔質部の方が多いことを特徴とする静電チャックである。
【0019】
この静電チャックによれば、3次元的に分散した複数の孔を有する第2多孔質部を設けることでより高い絶縁耐圧を得ることができるので、アーク放電の発生をより効果的に抑制できる。また、第1方向に貫通する孔の割合が多い第1多孔質部を設けることで、ガスの流れの円滑化を図ることができる。
【0020】
第7の発明は、第1~第6のいずれか1つの発明において、前記第2多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値は、前記第1多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
【0021】
この静電チャックによれば、孔の径が大きい第2多孔質部が設けられているので、ガスの流れの円滑化を図ることができる。また、孔の径が小さい第1多孔質部が吸着の対象物側に設けられているので、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。
【0022】
第8の発明は、第1~第6のいずれか1つの発明において、前記第2多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値は、前記第1多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0023】
この静電チャックによれば、孔の径が小さい第2多孔質部が設けられているので、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。
【0024】
第9の発明は、第1~第8のいずれか1つの発明において、前記第1多孔質部と前記ガス導入路との間に設けられ、複数の孔を有する第2多孔質部をさらに備え、前記第多孔質部に設けられた前記複数の孔の径の平均値は、前記第多孔質部に設けられた複数の孔の径の平均値よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
【0025】
孔の径が大きい第2多孔質部が設けられているので、ガスの流れの円滑化を図ることができる。また、孔の径が小さい第1多孔質部が吸着の対象物側に設けられているので、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。
【0026】
第10の発明は、第1~第9のいずれか1つの発明において、前記第1多孔質部および前記セラミック誘電体基板は、酸化アルミニウムを主成分として含み、前記セラミック誘電体基板の前記酸化アルミニウムの純度は、前記第1多孔質部の前記酸化アルミニウムの純度よりも高いことを特徴とする静電チャックである。
【0027】
この静電チャックによれば、静電チャックの耐プラズマ性等の性能を確保し、かつ、第1多孔質部の機械的強度を確保することができる。一例としては、第1多孔質部に微量の添加物を含有させることにより、第1多孔質部の焼結が促進され、気孔の制御や機械的強度の確保が可能となる。
【0028】
第11の発明は、第1~第10のいずれか1つの発明において、前記第1多孔質部と前記ガス導入路との間に設けられた第2多孔質部をさらに備え、前記セラミック誘電体基板は、前記第1主面と、前記第1多孔質部との間に位置する第1孔部を有し、前記第2多孔質部は、複数の孔を有するセラミック多孔体と、前記セラミック多孔体よりも緻密な緻密部と、を有し、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板へ向かう第1方向に対して垂直な平面に投影したときに、前記緻密部と前記第1孔部とは重なり、前記第2の多孔部と前記第1孔部とは重ならないように構成される、ことを特徴とする静電チャックである。
【0029】
この静電チャックには、緻密部と第1孔部とが重なるように構成されているので、発生した電流が緻密部を迂回して流れようとする。そのため、電流が流れる距離(導電パス)を長くすることができるので、電子が加速されにくくなり、ひいてはアーク放電の発生を抑制することができる。この静電チャックによれば、ガス流を確保しつつアーク放電の発生を効果的に抑制することができる。
【0030】
第12の発明は、第11の発明において、前記セラミック多孔体は、複数の孔を有する複数の疎部分と、前記疎部分の密度よりも高い密度を有する密部分と、を有し、前記セラミック多孔体において、前記複数の疎部分のそれぞれは、前記第1方向に延び、前記密部分は、前記複数の疎部分同士の間に位置し、前記疎部分は、前記孔同士の間に設けられた壁部を有し、前記第2方向において、前記壁部の寸法の最小値は、前記密部分の寸法の最小値よりも小さい、ことを特徴とする静電チャックである。
【0031】
この静電チャックによれば、セラミック多孔体に第1方向に延びる疎部分と密部分とが設けられているので、アーク放電に対する耐性とガス流量とを確保しつつ、第2多孔質部の機械的な強度(剛性)を向上させることができる。
【0032】
第13の発明は、第1~第12のいずれか1つの発明において、前記第1方向に略直交する方向を第2方向としたときに、前記第1多孔質部は、前記第2方向において前記セラミック誘電体基板側に位置する第1領域を有し、前記セラミック誘電体基板は、前記第2方向において前記第1領域側に位置する第1基板領域を有し、前記第1領域と前記第1基板領域とは接して設けられ、前記第1領域における平均粒子径は、前記第1基板領域における平均粒子径と異なることを特徴とする静電チャックである。
【0033】
この静電チャックによれば、第1領域における平均粒子径と第1基板領域における平均粒子径とが異なることにより、第1多孔質部とセラミック誘電体基板との界面において、第1多孔質部と、セラミック誘電体基板と、の結合強度を向上させることができる。
【0034】
第14の発明は、13の発明において、前記第1基板領域における前記平均粒子径は、前記第1領域における前記平均粒子径よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0035】
この静電チャックによれば、第1多孔質部とセラミック誘電体基板との界面において、第1多孔質部と、セラミック誘電体基板と、の結合強度を向上させることができる。また、第1基板領域における粒子径が小さいことでセラミック誘電体基板の強度を高め、製作時やプロセス時に発生する応力によるクラック等のリスクを抑えることができる。
【0036】
第15の発明は、第12~第14のいずれか1つの発明において、前記セラミック誘電体基板は、第2基板領域を含み、前記第1基板領域は、前記第2基板領域と前記第1多孔質部との間に位置し、前記第1基板領域における前記平均粒子径は、前記第2基板領域における前記平均粒子径よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0037】
第1領域と接して設けられる第1基板領域では、例えば製造工程における焼結時に、第1領域との間における拡散等の相互作用により第1領域との間の界面強度を高くすることが好ましい。一方、第2基板領域では、セラミック誘電体基板の材料本来の特性が発現されることが好ましい。この静電チャックによれば、第1基板領域における平均粒子径を第2基板領域における平均粒子径よりも小さくしているため、第1基板領域における界面強度の担保と、第2基板領域におけるセラミック誘電体基板の特性とを両立させることができる。
【0038】
第16の発明は、第15の発明において、前記第1領域における前記平均粒子径は、前記第2基板領域における前記平均粒子径よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0039】
この静電チャックによれば、第1領域における平均粒子径は、第2基板領域における平均粒子径よりも小さいことで、第1領域における機械的な強度を向上させることができる。
【0040】
第17の発明は、第12、13、15、16のいずれか1つの発明において、前記第1領域における前記平均粒子径は、前記第1基板領域における前記平均粒子径よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0041】
この静電チャックによれば、第1多孔質部とセラミック誘電体基板との界面において、第1多孔質部と、セラミック誘電体基板と、の結合強度を向上させることができる。また、第1領域における平均粒子径が小さいことで、第1多孔質部の強度が高くなるため、プロセス時の粒子の脱落を抑制でき、パーティクルを低減できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の態様によれば、多孔質部が設けられた静電チャックにおいて、アーク放電の発生を効果的に抑制することができる静電チャックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第1の実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1多孔質部を例示する模式図である。
図4】実施形態に係る静電チャックの第1多孔質部を例示する模式的平面図である。
図5】実施形態に係る静電チャックの第1多孔質部を例示する模式的平面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1多孔質部を例示する模式的平面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、実施形態に係る別の第1多孔質部を例示する模式図である。
図8】実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図10】実施形態に係る静電チャックの第2多孔質部を例示する模式的断面図である。
図11】実施形態に係る別の静電チャックを例示する模式的断面図である。
図12】実施形態に係る別の静電チャックを例示する模式的断面図である。
図13】(a)は、第2の実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。(b)は、第2多孔質部を例示する平面図である。
図14】第2の実施形態に係る静電チャックの変形例を例示する模式的断面図である。
図15】第2多孔質部を例示する模式図である。
図16】Z方向に沿って見た第2多孔質部の一部を示す拡大図である。
図17】Z方向に沿って見た第2多孔質部の一部を示す拡大図である。
図18】Z方向に沿って見た1つの疎部分内の孔を示す拡大図である。
図19】第2の実施形態に係る別の静電チャックを例示する模式的断面図である。
図20】第2の実施形態に係る別の静電チャックを例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0045】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る静電チャック110は、セラミック誘電体基板11と、ベースプレート50と、第1多孔質部90と、を備える。
【0046】
セラミック誘電体基板11は、例えば焼結セラミックによる平板状の基材である。例えば、セラミック誘電体基板11は、酸化アルミニウム(Al)を含む。例えば、セラミック誘電体基板11は、高純度の酸化アルミニウムで形成される。セラミック誘電体基板11における酸化アルミニウムの濃度は、例えば、99原子パーセント(atоmic%)以上100atоmic%以下である。高純度の酸化アルミニウムを用いることで、セラミック誘電体基板11の耐プラズマ性を向上させることができる。セラミック誘電体基板11は、吸着の対象物Wが載置される第1主面11aと、第1主面11aとは反対側の第2主面11bと、を有する。吸着の対象物Wは、例えばシリコンウェーハなどの半導体基板である。
【0047】
セラミック誘電体基板11には、電極12が設けられる。電極12は、セラミック誘電体基板11の第1主面11aと、第2主面11bと、の間に設けられる。電極12は、セラミック誘電体基板11の中に挿入されるように形成されている。静電チャック110は、電極12に吸着保持用電圧80を印加することによって、電極12の第1主面11a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物Wを吸着保持する。
【0048】
ここで、本実施形態の説明においては、ベースプレート50からセラミック誘電体基板11へ向かう方向をZ方向(第1方向の一例に相当する)、Z方向と略直交する方向の1つをY方向(第2方向の一例に相当する)、Z方向及びY方向に略直交する方向をX方向(第2方向の一例に相当する)ということにする。
【0049】
電極12の形状は、セラミック誘電体基板11の第1主面11a及び第2主面11bに沿った薄膜状である。電極12は、対象物Wを吸着保持するための吸着電極である。電極12は、単極型でも双極型でもよい。図1に表した電極12は双極型であり、同一面上に2極の電極12が設けられている。
【0050】
電極12には、セラミック誘電体基板11の第2主面11b側に延びる接続部20が設けられている。接続部20は、例えば、電極12と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)である。接続部20は、ロウ付けなどの適切な方法によって接続された金属端子でもよい。
【0051】
ベースプレート50は、セラミック誘電体基板11を支持する部材である。セラミック誘電体基板11は、図2(a)に表した接着部60によってベースプレート50の上に固定される。接着部60は、例えば、シリコーン接着剤が硬化したものとすることができる。
【0052】
ベースプレート50は、例えば金属製である。ベースプレート50は、例えば、アルミニウム製の上部50aと下部50bとに分けられており、上部50aと下部50bとの間に連通路55が設けられている。連通路55の一端側は、入力路51に接続され、連通路55の他端側は、出力路52に接続される。
【0053】
ベースプレート50は、静電チャック110の温度調整を行う役目も果たす。例えば、静電チャック110を冷却する場合には、入力路51から冷却媒体を流入し、連通路55を通過させ、出力路52から流出させる。これにより、冷却媒体によってベースプレート50の熱を吸収し、その上に取り付けられたセラミック誘電体基板11を冷却することができる。一方、静電チャック110を保温する場合には、連通路55内に保温媒体を入れることも可能である。セラミック誘電体基板11やベースプレート50に発熱体を内蔵させることも可能である。ベースプレート50やセラミック誘電体基板11の温度を調整することで、静電チャック110によって吸着保持される対象物Wの温度を調整することができる。
【0054】
また、セラミック誘電体基板11の第1主面11a側には、必要に応じてドット13が設けられており、ドット13の間に溝14が設けられている。すなわち、第1主面11aは凹凸面であり、凹部と凸部とを有する。第1主面11aの凸部がドット13に相当し、第1主面11aの凹部が溝14に相当する。溝14は、XY平面内において連続して延びている。静電チャック110に載置された対象物Wの裏面と溝14を含む第1主面11aとの間に空間が形成される。
【0055】
セラミック誘電体基板11は、溝14と接続された貫通孔15を有する。貫通孔15は、第2主面11bから第1主面11aにかけて設けられる。すなわち、貫通孔15は、第2主面11bから第1主面11aまでZ方向に延び、セラミック誘電体基板11を貫通する。
【0056】
ドット13の高さ(溝14の深さ)、ドット13及び溝14の面積比率、形状等を適宜選択することで、対象物Wの温度や対象物Wに付着するパーティクルを好ましい状態にコントロールすることができる。
【0057】
ベースプレート50には、ガス導入路53が設けられる。ガス導入路53は、ベースプレート50を例えば貫通するように設けられる。ガス導入路53は、ベースプレート50を貫通せず、他のガス導入路53の途中から分岐してセラミック誘電体基板11側まで設けられていてもよい。また、ガス導入路53は、ベースプレート50の複数箇所に設けられてもよい。
【0058】
ガス導入路53は、貫通孔15と連通する。すなわち、ガス導入路53に流入したガス(ヘリウム(He)等)は、ガス導入路53を通過した後に、貫通孔15に流入する。
【0059】
貫通孔15に流入したガスは、貫通孔15を通過した後に、対象物Wと溝14を含む第1主面11aとの間に設けられた空間に流入する。これにより、対象物Wをガスによって直接冷却することができる。
【0060】
第1多孔質部90は、例えば、Z方向においてベースプレート50と、セラミック誘電体基板11の第1主面11aと、の間であって、ガス導入路53と対向する位置に設けることができる。例えば、第1多孔質部90は、セラミック誘電体基板11の貫通孔15に設けられる。例えば、第1多孔質部90は、貫通孔15に挿入されている。
【0061】
図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式図である。図2(a)は、第1多孔質部90の周辺を例示する。図2(a)は、図1に示す領域Aの拡大図に相当する。図2(b)は、図2(a)における第1多孔質部90のC-C線断面図である。
なお、煩雑となるのを避けるために、図2(a)においてはドット13(例えば、図1を参照)を省いて描いている。
【0062】
この例では、貫通孔15は、孔部15aと、孔部15b(第1孔部の一例に相当する)と、を有する。孔部15aの一端は、セラミック誘電体基板11の第2主面11bに位置する。
【0063】
また、セラミック誘電体基板11は、Z方向において第1主面11aと第1多孔質部90との間に位置する孔部15bを有することができる。孔部15bは、孔部15aと連通し、セラミック誘電体基板11の第1主面11aまで延びる。すなわち、孔部15bの一端は、第1主面11a(溝14)に位置する。孔部15bは、第1多孔質部90と溝14とを連結する連結孔である。孔部15bの径(X方向に沿った長さ)は、孔部15aの径(X方向に沿った長さ)よりも小さい。径の小さい孔部15bを設けることにより、セラミック誘電体基板11と対象物Wとの間に形成される空間(例えば溝14を含む第1主面11a)のデザインの自由度を高めることができる。例えば、図2(a)のように、溝14の幅(X方向に沿った長さ)を第1多孔質部90の幅(X方向に沿った長さ)よりも短くすることができる。これにより、例えば、セラミック誘電体基板11と対象物Wとの間に形成される空間における放電を抑制することができる。
【0064】
孔部15bの径は、例えば0.05ミリメートル(mm)以上0.5mm以下である。孔部15aの径は、例えば1mm以上5mm以下である。なお、孔部15bは、孔部15aと間接的に連通していてもよい。すなわち、孔部15aと孔部15bとを接続する孔部15c(第2孔部の一例に相当する)が設けられてもよい。図2(a)に表したように、孔部15cは、セラミック誘電体基板11に設けることができる。孔部15cは、第1多孔質部90に設けることもできる。孔部15cは、セラミック誘電体基板11および第1多孔質部90に設けることもできる。すなわち、セラミック誘電体基板11および第1多孔質部90の少なくともいずれかは、孔部15bと第1多孔質部90との間に位置する孔部15cを有することができる。この場合、孔部15cがセラミック誘電体基板11に設けられていれば、孔部15cの周囲における強度を高くすることができ、孔部15cの周辺におけるチッピングなどの発生を抑制できる。そのため、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。孔部15cが第1多孔質部90に設けられていれば、孔部15cと第1多孔質部90との位置合わせが容易となる。そのため、アーク放電の低減とガスの流れの円滑化との両立がより容易となる。孔部15a、孔部15b及び孔部15cのそれぞれは、例えば、Z方向に延びる円筒状である。
【0065】
この場合、X方向またはY方向において、孔部15cの寸法は、第1多孔質部90の寸法よりも小さく、孔部bの寸法よりも大きくすることができる。本実施形態に係る静電チャック110によれば、ガス導入路53と対向する位置に設けられた第1多孔質部90により、孔部15bに流れるガスの流量を確保しつつ、アーク放電に対する耐性を向上させることができる。また、孔部15cのX方向またはY方向における寸法を、孔部15bの該寸法よりも大きくしているので、寸法の大きな第1多孔質部90に導入されたガスの大部分を、孔部15cを介して寸法の小さな孔部15bに導入することができる。すなわち、アーク放電の低減とガスの流れの円滑化を図ることができる。
【0066】
前述したように、セラミック誘電体基板11は、第1主面11aに開口し、第1孔部15と連通する少なくとも1つの溝14を有している。Z方向において、孔部15cの寸法は、溝14の寸法よりも小さくすることができる。この様にすれば、第1主面11a側に溝14を介してガスを供給することができる。そのため、第1主面11aのより広い範囲にガスを供給することが容易となる。また、孔部15cのX方向またはY方向における寸法を、溝14の寸法よりも小さくしているので、ガスが孔部15cを通過する時間を短くすることができる。すなわち、ガスの流れの円滑化を図りつつ、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。
【0067】
前述したように、セラミック誘電体基板11と、ベースプレート50との間には接着部60を設けることができる。Z方向において、孔部15cの寸法は、接着部60の寸法よりも小さくすることができる。この様にすれば、セラミック誘電体基板11とベースプレート50との接合強度を向上させることができる。また、Z方向における孔部15cの寸法を、接着部60の寸法よりも小さくしているので、ガスの流れの円滑化を図りつつ、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。
【0068】
この例では、第1多孔質部90は、孔部15aに設けられている。このため、第1多孔質部90の上面90Uは、第1主面11aに露出していない。すなわち、第1多孔質部90の上面90Uは、第1主面11aと第2主面11bとの間に位置する。一方、第1多孔質部90の下面90Lは、第2主面11bに露出している。
【0069】
第1多孔質部90は、複数の孔を有する多孔領域91と、多孔領域91よりも緻密な緻密領域93と、を有する。緻密領域93は、多孔領域91に比べて孔が少ない領域、または、実質的に孔を有さない領域である。緻密領域93の気孔率(パーセント:%)は、多孔領域91の気孔率(%)よりも低い。そのため、緻密領域93の密度(グラム/立方センチメートル:g/cm)は、多孔領域91の密度(g/cm)よりも高い。緻密領域93が多孔領域91に比べて緻密であることにより、例えば、緻密領域93の剛性(機械的な強度)は、多孔領域91の剛性よりも高い。
【0070】
緻密領域93の気孔率は、例えば、緻密領域93の全体積に占める、緻密領域93に含まれる空間(孔)の体積の割合である。多孔領域91の気孔率は、例えば、多孔領域91の全体積に占める、多孔領域91に含まれる空間(孔)の体積の割合である。例えば、多孔領域91の気孔率は、5%以上40%以下、好ましくは10%以上30%以下であり、緻密領域93の気孔率は、0%以上5%以下である。
【0071】
第1多孔質部90は、柱状(例えば円柱状)である。また、多孔領域91は、柱状(例えば円柱状)である。緻密領域93は、多孔領域91と接している、または、多孔領域91と連続している。図2(b)に示すように、Z方向に沿って見たときに、緻密領域93は、多孔領域91の外周を囲む。緻密領域93は、多孔領域91の側面91sを囲む筒状(例えば円筒状)である。言い換えれば、多孔領域91は、緻密領域93をZ方向に貫通するように設けられている。ガス導入路53から貫通孔15へ流入したガスは、多孔領域91に設けられた複数の孔を通り、溝14に供給される。
【0072】
このような多孔領域91を有する第1多孔質部90を設けることにより、貫通孔15に流れるガスの流量を確保しつつ、アーク放電に対する耐性を向上させることができる。また、第1多孔質部90が緻密領域93を有することにより、第1多孔質部90の剛性(機械的な強度)を向上させることができる。
【0073】
例えば、第1多孔質部90は、セラミック誘電体基板11と一体化している。2つの部材が一体化している状態とは、2つの部材が例えば焼結などにより化学的に結合している状態である。2つの部材の間には、一方の部材を他方の部材に対して固定するための材料(例えば接着剤)が設けられない。すなわち、第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11との間には、接着剤などの他の部材が設けられておらず、第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11とが一体化している。
【0074】
より具体的には、第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11とが一体化している状態においては、第1多孔質部90の側面(緻密領域93の側面93s)が、貫通孔15の内壁15wと接しており、第1多孔質部90は、第1多孔質部90が接する内壁15wにより支持され、セラミック誘電体基板11に対して固定されている。
【0075】
例えば、セラミック誘電体基板11となる焼結前の基材に貫通孔を設け、その貫通孔に第1多孔質部90を嵌め込む。この状態でセラミック誘電体基板11(及び嵌合された第1多孔質部90)を焼結することで、第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11とを一体化させることができる。
【0076】
このように、第1多孔質部90は、セラミック誘電体基板11と一体化することで、セラミック誘電体基板11に対して固定されている。これにより、第1多孔質部90を接着剤などによってセラミック誘電体基板11に固定する場合に比べて、静電チャック110の強度を向上させることができる。例えば、接着剤の腐食やエロージョン等による静電チャックの劣化が生じない。
【0077】
第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11とを一体化させる場合、第1多孔質部90の外周の側面には、セラミック誘電体基板11から力が掛かる。一方、ガスの流量を確保するため、第1多孔質部90に複数の孔を設けた場合、第1多孔質部90の機械的強度が低下する。このため、第1多孔質部をセラミック誘電体基板11と一体化するときに、セラミック誘電体基板11から第1多孔質部90に加えられる力によって、第1多孔質部90が破損する恐れがある。
【0078】
これに対して、第1多孔質部90が緻密領域93を有することにより、第1多孔質部90の剛性(機械的な強度)を向上させることができ、第1多孔質部90をセラミック誘電体基板11と一体化させることができる。
【0079】
なお、実施形態において、第1多孔質部90は、セラミック誘電体基板11と必ずしも一体化していなくてもよい。例えば、図12に示すように、接着剤を用いて、第1多孔質部90をセラミック誘電体基板に取り付けてもよい。
【0080】
また、緻密領域93は、貫通孔15を形成するセラミック誘電体基板11の内壁15wと、多孔領域91と、の間に位置する。すなわち、第1多孔質部90の内側に多孔領域91が設けられ、外側に緻密領域93が設けられている。第1多孔質部90の外側に緻密領域93が設けられることにより、セラミック誘電体基板11から第1多孔質部90に加えられる力に対する剛性を向上させることができる。これにより、第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11とを一体化させやすくすることができる。また、例えば、第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11との間に接着部材61(図12参照)が設けられる場合、第1多孔質部90内を通過するガスが接着部材61に触れることを緻密領域93によって抑制することができる。これにより、接着部材61の劣化を抑制することができる。また、第1多孔質部90の内側に多孔領域91が設けられることにより、セラミック誘電体基板11の貫通孔15が緻密領域93で塞がれることを抑え、ガスの流量を確保することができる。
【0081】
緻密領域93の厚さ(多孔領域91の側面91sと、緻密領域93の側面93sと、の間の長さL0)は、例えば、100μm以上1000μm以下である。
【0082】
第1多孔質部90の材料には、絶縁性を有するセラミックが用いられる。第1多孔質部90(多孔領域91及び緻密領域93のそれぞれ)は、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)及び酸化イットリウム(Y)の少なくともいずれかを含む。これにより、第1多孔質部90の高い絶縁耐圧と高い剛性とを得ることができる。
【0083】
例えば、第1多孔質部90は、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び酸化イットリウムのいずれかを主成分とする。
この場合、セラミック誘電体基板11の酸化アルミニウムの純度は、第1多孔質部90の酸化アルミニウムの純度よりも高くすることができる。この様にすれば、静電チャック110の耐プラズマ性等の性能を確保し、かつ、第1多孔質部90の機械的強度を確保することができる。一例としては、第1多孔質部90に微量の添加物を含有させることにより、第1多孔質部90の焼結が促進され、気孔の制御や機械的強度の確保が可能となる。
【0084】
本明細書において、セラミック誘電体基板11の酸化アルミニウムなどのセラミックス純度は、蛍光X線分析、ICP-AES法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry:高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)などにより測定することができる。
【0085】
例えば、多孔領域91の材料と緻密領域93の材料とは、同じである。ただし、多孔領域91の材料は緻密領域93の材料と異なっていてもよい。多孔領域91の材料の組成は、緻密領域93の材料の組成と異なっていてもよい。
【0086】
また、図2(a)に示すように、多孔領域91(後述する複数の疎部分94が設けられた領域)と電極12との間のX方向またはY方向の距離D1は、第1主面11aと電極12との間のZ方向の距離D2よりも長い。第1多孔質部90に設けられた多孔領域91と電極12との間のX方向またはY方向における距離D1をより長くすることにより、第1多孔質部90での放電を抑制することができる。また、第1主面11aと電極12との間のZ方向における距離D2をより短くすることにより、第1主面11aに載置される対象物Wを吸着する力を大きくすることができる。
【0087】
図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1多孔質部を例示する模式図である。
図3(a)は、図3(b)における第1多孔質部90のD-D線断面図である。図3(b)は、第1多孔質部90のZY平面における断面図である。
【0088】
図3(a)及び図3(b)に示すように、この例では、多孔領域91は、複数の疎部分94と、密部分95と、を有する。複数の疎部分94のそれぞれは、複数の孔を有する。密部分95は、疎部分94よりも緻密である。すなわち、密部分95は、疎部分94に比べて孔が少ない部分、または、実質的に孔を有さない部分である。密部分95の気孔率は、疎部分94の気孔率よりも低い。そのため、密部分95の密度は、疎部分94の密度よりも高い。密部分95の気孔率は、緻密領域93の気孔率と同じであってもよい。密部分95が疎部分94に比べて緻密であることにより、密部分95の剛性は、疎部分94の剛性よりも高い。
【0089】
1つの疎部分94の気孔率は、例えば、その疎部分94の全体積に占める、その疎部分94に含まれる空間(孔)の体積の割合である。密部分95の気孔率は、例えば、密部分95の全体積に占める、密部分95に含まれる空間(孔)の体積の割合である。例えば、疎部分94の気孔率は、20%以上60%以下、好ましくは30%以上50%以下であり、密部分95の気孔率は、0%以上5%以下である。
【0090】
すなわち、第1多孔質部90は、それぞれが複数の孔を有し、互いに離隔して設けられた複数の疎部分94を有している。疎部分94に設けられた複数の孔は、ガス導入路53から導入されたガスが流通可能となっている。複数の疎部分94のそれぞれは、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に延びている。例えば、複数の疎部分94のそれぞれは、柱状(円柱状又は多角柱状)であり、多孔領域91をZ方向に対して所定の角度θ傾いた状態で貫通するように設けられている。密部分95は、複数の疎部分94同士の間に位置する。密部分95は、互いに隣接する疎部分94を仕切る壁状である。図3(a)に示すように、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、密部分95は、複数の疎部分94のそれぞれの外周を囲むように設けられている。密部分95は、多孔領域91の外周において、緻密領域93と連続している。
【0091】
多孔領域91内に設けられる疎部分94の数は、例えば50個以上1000個以下である。図3(a)に示すように、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、複数の疎部分94同士は、互いに略同じ大きさである。例えば、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、複数の疎部分94は、多孔領域91内において等方的に均一に分散されている。例えば、隣接する疎部分94同士の距離(すなわち密部分95の厚さ)は、略一定である。
【0092】
例えば、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、緻密領域93の側面93sと、複数の疎部分94のうち最も側面93sに近い疎部分94と、の間の距離L11は、100μm以上1000μm以下である。
【0093】
このように、多孔領域91に複数の疎部分94と、疎部分94よりも緻密な密部分95と、を設けることにより、多孔領域内において3次元的にランダムに複数の孔が分散された場合に比べて、アーク放電に対する耐性と貫通孔15に流れるガスの流量とを確保しつつ、第1多孔質部90の剛性を向上させることができる。
例えば、多孔領域の気孔率が大きくなると、ガスの流量が大きくなる一方、アーク放電に対する耐性及び剛性が低下する。これに対して、密部分95を設けることにより、気孔率を大きくした場合でも、アーク放電に対する耐性及び剛性の低下を抑制することができる。
【0094】
また、アーク放電は、孔部15bの内部を、セラミック誘電体基板11側からベースプレート50側に向けて電流が流れることで発生する場合が多い。そのため、複数の疎部分94のそれぞれがZ方向に対して所定の角度θ傾いていれば、疎部分94に設けられた孔の内部を電流が流れる際に、電子が加速されにくくなると考えられる。そのため、アーク放電の発生を抑制することができる。
本発明者らの得た知見によれば、Z方向と、疎部分94が延びる方向との間の角度θは5°以上、30°以下とすることが好ましい。この様にすれば、アーク放電の発生を抑制するのが容易となる。またさらに、角度θが5°以上、15°以下となるようにすれば、疎部分94に設けられた孔の径を小さくすることなく、アーク放電の発生を抑制することができる。また、孔の径を大きくすることなく、必要となるガスの流量を確保することができる。
【0095】
表1は、角度θと、DC破壊電圧およびHeの流量と、の関係を示すものである。
なお、DC破壊電圧およびHeの流量は、30Torrの場合である。
また、評価においては、DC破壊電圧が2.5kV以上、且つ、Heの流量が4.9sccm以上となった場合を合格としている。なお、表1においては、合格を「○」で表し、不合格を「×」で表している。
【表1】

ここで、疎部分94に設けられた孔の径を小さくすればアーク放電の発生を抑制するのが容易となる。ところが、孔の径を小さくすればガスの流量を十分に確保できなくなるおそれがある。
この場合、表1から分かるように、角度θを大きくすればDC破壊電圧を大きくすることができる。そのため、角度θを大きくすれば、孔の径を小さくすることなく、アーク放電の発生を抑制することができる。
ところが、表1から分かるように、角度θを大きくすれば、孔における管路抵抗が大きくなるのでHeの流量が小さくなる。この場合、孔の径を大きくすればHeの流量を大きくすることができるが、孔の径を大きくすればDC破壊電圧が小さくなる。
表1から分かるように、角度θが5°以上、15°以下となるようにすれば、疎部分94に設けられた孔の径を小さくすることなく、アーク放電の発生を抑制することができる。また、孔の径を大きくすることなく、必要となるガスの流量を確保することができる。
【0096】
なお、例えば、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、複数の疎部分94のすべてを含む最小の円、楕円、又は多角形を想定する。その円、楕円、又は多角形の内側を多孔領域91とし、その円、楕円、又は多角形の外側を緻密領域93と考えることができる。
【0097】
以上に説明したように、第1多孔質部90は、第1孔および第2孔を含む複数の孔96を有する複数の疎部分94と、疎部分94の密度よりも高い密度を有する密部分95と、を有することができる。複数の疎部分94のそれぞれは、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に延びている。密部分95は、複数の疎部分94同士の間に位置している。疎部分94は、孔96(第1孔)と孔96(第2孔)との間に設けられた壁部97を有している。Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に略直交する方向において、壁部97の寸法の最小値は、密部分95の寸法の最小値よりも小さくすることができる。この様にすれば、第1多孔質部90にZ方向に対して所定の角度θ傾いた方向に延びる疎部分94と密部分95とが設けられているので、アーク放電に対する耐性とガス流量とを確保しつつ、第1多孔質部90の機械的な強度(剛性)を向上させることができる。
また、複数の疎部分94のそれぞれがZ方向に対して所定の角度θ傾いていれば、疎部分94に設けられた孔の内部を電流が流れる際に、電子が加速されにくくなると考えられる。そのため、アーク放電の発生を抑制することができる。
【0098】
Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に略直交する方向において、複数の疎部分94のそれぞれに設けられた複数の孔96の寸法は、密部分95の寸法よりも小さくすることができる。この様にすれば、複数の孔96の寸法を十分に小さくできるため、アーク放電に対する耐性をさらに向上させることができる。
【0099】
また、複数の疎部分94のそれぞれに設けられた複数の孔96の縦横比(アスペクト比)は、30以上10000以下とすることができる。この様にすれば、アーク放電に対する耐性をさらに向上させることができる。より好ましくは、複数の孔96の縦横比(アスペクト比)の下限は100以上であり、上限は1600以下である。
【0100】
また、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に略直交する方向において、複数の疎部分94のそれぞれに設けられた複数の孔96の寸法は、1マイクロメートル以上20マイクロメートル以下とすることができる。この様にすれば、孔の寸法が1~20マイクロメートルの1方向に延びる孔を配列させることができるので、ばらつきを抑えつつ、且つ、アーク放電に対する高い耐性を実現することができる。
【0101】
また、後述する図6(a)、(b)に表したように、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、第1孔96aは疎部分94の中心部に位置し、複数の孔96のうち第1孔96aと隣接し第1孔96aを囲む孔96b~96gの数は、6とすることができる。この様にすれば、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、高い等方性かつ高い密度で複数の孔を配置することが可能となる。これにより、アーク放電に対する耐性と流れるガスの流量とを確保しつつ、第1多孔質部90の剛性を向上させることができる。
【0102】
図4は、実施形態に係る静電チャックの第1多孔質部を例示する模式的平面図である。
図4は、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見た第1多孔質部90の一部を示し、図3(a)の拡大図に相当する。
Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、複数の疎部分94のそれぞれは、略六角形(略正六角形)である。Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、複数の疎部分94は、多孔領域91の中心部に位置する第1疎部分94aと、第1疎部分94aを囲む6つの疎部分94(第2~第7疎部分94b~94g)を有する。
【0103】
第2~第7疎部分94b~94gは、第1疎部分94aと隣接している。第2~第7疎部分94b~94gは、複数の疎部分94のうち、第1疎部分94aに最近接する疎部分94である。
【0104】
第2疎部分94b及び第3疎部分94cは、第1疎部分94aと、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に略直交する方向において並ぶ。すなわち、第1疎部分94aは、第2疎部分94bと第3疎部分94cとの間に位置する。
【0105】
Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に略直交する方向において、第1疎部分94aの長さL1(第1疎部分94aの径)は、第1疎部分94aと第2疎部分94bとの間の長さL2よりも長く、第1疎部分94aと第3疎部分94cとの間の長さL3よりも長い。
【0106】
なお、長さL2及び長さL3のそれぞれは、密部分95の厚さに相当する。すなわち、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に略直交する方向において、長さL2は、第1疎部分94aと第2疎部分94bとの間の密部分95の長さである。長さL3は、第1疎部分94aと第3疎部分94cとの間の密部分95の長さである。長さL2と長さL3とは、略同じである。例えば、長さL2は、長さL3の0.5倍以上2.0倍以下である。
【0107】
また、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に略直交する方向において、長さL1は、第2疎部分94bの長さL4(第2疎部分94bの径)と略同じであり、第3疎部分94cの長さL5(第3疎部分95cの径)と略同じである。例えば、長さL4及び長さL5のそれぞれは、長さL1の0.5倍以上2.0倍以下である。
【0108】
このように、第1疎部分94aは、複数の疎部分94のうちの6つの疎部分94に隣接し囲まれている。すなわち、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、多孔領域91の中心部において、1つの疎部分94と隣接する疎部分94の数は、6である。これにより、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、高い等方性かつ高い密度で複数の疎部分94を配置することが可能である。これにより、アーク放電に対する耐性と貫通孔15に流れるガスの流量とを確保しつつ、第1多孔質部90の剛性を向上させることができる。また、アーク放電に対する耐性のばらつき、貫通孔15に流れるガスの流量のばらつき、及び第1多孔質部90の剛性のばらつきを抑制することができる。
【0109】
疎部分94の径(長さL1、L4、またはL5など)は、例えば、50μm以上500μm以下である。密部分95の厚さ(長さL2またはL3など)は、例えば、10μm以上100μm以下である。疎部分94の径は、密部分95の厚さよりも大きい。また、密部分95の厚さは、緻密領域93の厚さよりも薄い。
【0110】
図5は、実施形態に係る静電チャックの第1多孔質部を例示する模式的平面図である。 図5は、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見た第1多孔質部90の一部を示す。図5は、1つの疎部分94の周辺の拡大図である。
図5に示すように、この例では、疎部分94は、複数の孔96と、複数の孔96同士の間に設けられた壁部97と、を有する。
【0111】
複数の孔96のそれぞれは、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に延びる。複数の孔96のそれぞれは、1方向に延びるキャピラリ状(1次元キャピラリ構造)であり、疎部分94を、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に貫通している。壁部97は、互いに隣接する孔96を仕切る壁状である。図5に示すように、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、壁部97は、複数の孔96のそれぞれの外周を囲むように設けられる。壁部97は、疎部分94の外周において、密部分95と連続している。
【0112】
1つの疎部分94内に設けられる孔96の数は、例えば50個以上1000個以下である。図5に示すように、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、複数の孔96同士は、互いに略同じ大きさである。例えば、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、複数の孔96は、疎部分94内において等方的に均一に分散されている。例えば、隣接する孔96同士の距離(すなわち壁部97の厚さ)は、略一定である。
【0113】
このように、1方向に延びる孔96が疎部分94内に配列されることで、疎部分内において3次元的にランダムに複数の孔が分散された場合に比べて、アーク放電に対する高い耐性を少ないばらつきで実現することができる。
【0114】
ここで、複数の孔96の「キャピラリ状構造」についてさらに説明する。
近年、半導体の高集積化を目的とした回路線幅の細線化、回路ピッチの微細化がさらに進行している。静電チャックには更なるハイパワーが印加され、より高いレベルでの吸着対象物の温度コントロールが求められている。こうした背景より、ハイパワー環境下においてもアーク放電を確実に抑制しつつ、ガス流量を十分に確保するとともに、その流量を高精度に制御することが求められている。本実施の形態に係る静電チャック110では、ヘリウム供給孔(ガス導入路53)でのアーク放電防止のために従来から設けられているセラミックプラグ(第1多孔質部90)において、その孔径(孔96の径)を例えば数~十数μmのレベルにまで小さくしている(孔96の径の詳細については後述)。径がこのレベルにまで小さくなると、ガスの流量制御が困難となる恐れがある。そこで、本発明においては、例えば、孔96を、Z方向に沿うようにその形状をさらに工夫している。具体的には、従来は比較的大きな孔で流量を確保し、かつ、その形状を3次元的に複雑にすることでアーク放電防止を達成していた。一方、本発明では、孔96を例えばその径が数~十数μmのレベルにまで微細にすることでアーク放電防止を達成し、逆にその形状を単純化することにより流量を確保している。つまり、従来とは全く異なる思想に基づき本発明に想到したものである。
【0115】
なお、疎部分94の形状は、六角形に限らず、円(又は楕円)やその他の多角形であってもよい。例えば、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、10μm以下の間隔で並ぶ複数の孔96のすべてを含む最小の円、楕円、又は多角形を想定する。その円、楕円、又は多角形の内側を疎部分94とし、その円、楕円、又は多角形の外側を密部分95と考えることができる。
【0116】
図6(a)及び図6(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1多孔質部を例示する模式的平面図である。
図6(a)及び図6(b)は、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見た第1多孔質部90の一部を示し、1つの疎部分94内の孔96を示す拡大図である。
【0117】
図6(a)に示すように、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、複数の孔96は、疎部分94の中心部に位置する第1孔96aと、第1孔96aを囲む6つの孔96(第2~第7孔96b~96g)を有する。第2~第7孔96b~96gは、第1孔96aと隣接している。第2~第7孔96b~96gは、複数の孔96のうち、第1孔96aに最近接する孔96である。
【0118】
Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向と直交する方向において、第2孔96b及び第3孔96cは、第1孔96aと並ぶ。すなわち、第1孔96aは、第2孔96bと第3孔96cとの間に位置する。
【0119】
Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向と直交する方向において、例えば、第1孔96aの長さL6(第1孔96aの径)は、第1孔96aと第2孔96bとの間の長さL7よりも長く、第1孔96aと第3孔96cとの間の長さL8よりも長い。
【0120】
なお、長さL7及び長さL8のそれぞれは、壁部97の厚さに相当する。すなわち、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向と直交する方向において、長さL7は、第1孔96aと第2孔96bとの間の壁部97の長さである。長さL8は、第1孔96aと第3孔96cとの間の壁部97の長さである。長さL7と長さL8とは、略同じである。例えば、長さL7は、長さL8の0.5以上2.0倍以下である。
【0121】
また、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向と直交する方向において、長さL6は、第2孔96bの長さL9(第2孔96bの径)と略同じであり、第3孔96cの長さL10(第3孔96cの径)と略同じである。例えば、長さL9及び長さL10のそれぞれは、長さL6の0.5倍以上2.0倍以下である。
【0122】
例えば、孔の径が小さいと、アーク放電に対する耐性や剛性が向上する。一方、孔の径が大きいと、ガスの流量を大きくすることができる。孔96の径(長さL6、L9、またはL10など)は、例えば、1マイクロメートル(μm)以上20μm以下である。径が1~20μmの1方向に延びる孔が配列されることで、アーク放電に対する高い耐性を少ないばらつきで実現することができる。より好ましくは孔96の径は、3μm以上10μm以下である。
【0123】
ここで、孔96の径の測定方法について説明する。走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ、S-3000)を用い、1000倍以上の倍率で画像を取得する。市販の画像解析ソフトを用い、孔96について100個分の円相当径を算出し、その平均値を孔96の径とする。
複数の孔96の径のばらつきを抑制することがさらに好ましい。径のばらつきを小さくすることで、流れるガスの流量および絶縁耐圧をより精密に制御することが可能となる。複数の孔96の径のばらつきとして、上記孔96の径の算出において取得した100個分の円相当径の累積分布を利用することができる。具体的には、粒度分布測定に一般に用いられる、累積分布50vol%のときの粒子径D50(メジアン径)及び累積分布90vol%のときの粒子径D90の概念を適用し、横軸を孔径(μm)、縦軸を相対孔量(%)とした孔96の累積分布グラフを用い、その孔径の累積分布50vol%のときの孔径(D50径に相当)および累積分布90vol%のときの孔径(D90径に相当)を求める。複数の孔96の径のばらつきが、D50:D90≦1:2の関係を満たす程度に抑制されることが好ましい。
【0124】
壁部97の厚さ(長さL7、L8など)は、例えば、1μm以上10μm以下である。壁部97の厚さは、密部分95の厚さよりも薄い。
【0125】
このように、第1孔96aは、複数の孔96のうちの6つの孔96に隣接し囲まれている。すなわち、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、疎部分94の中心部において、1つの孔96と隣接する孔96の数は、6である。これにより、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、高い等方性かつ高い密度で複数の孔96を配置することが可能である。これにより、アーク放電に対する耐性と貫通孔15に流れるガスの流量とを確保しつつ、第1多孔質部90の剛性を向上させることができる。また、アーク放電に対する耐性のばらつき、貫通孔15に流れるガスの流量のばらつき、及び第1多孔質部90の剛性のばらつきを抑制することができる。
【0126】
図6(b)は、疎部分94内における複数の孔96の配置の別の例を示す。図6(b)に示すように、この例では、複数の孔96は、第1孔96aを中心に同心円状に配置される。これにより、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見たときに、高い等方性かつ高い密度で複数の孔を配置することが可能である。
【0127】
なお、以上説明したような構造の第1多孔質部90は、例えば、押出成形を用いることで製造することができる。また、長さL0~L10のそれぞれは、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡を用いた観察により測定することができる。
【0128】
本明細書における気孔率の評価について説明する。ここでは、第1多孔質部90における気孔率の評価を例にとって説明する。
図3(a)の平面図のような画像を取得し、画像解析により、多孔領域91に占める複数の疎部分94の割合R1を算出する。画像の取得には、走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ、S-3000)を用いる。加速電圧を15kV、倍率を30倍としてBSE像を取得する。例えば、画像サイズは、1280×960画素であり、画像階調は256階調である。
【0129】
多孔領域91に占める複数の疎部分94の割合R1の算出には、画像解析ソフトウェア(例えばWin-ROOFVer6.5(三谷商事))を用いる。
Win-ROOFVer6.5を用いた割合R1の算出は以下のようにすることができる。
評価範囲ROI1(図3(a)を参照)を、全ての疎部分94を含む最小の円(又は楕円)とする。
単一閾値(例えば0)による二値化処理を行い、評価範囲ROI1の面積S1を算出する。
2つの閾値(例えば0及び136)による二値化処理を行い、評価範囲ROI1内の複数の疎部分94の合計の面積S2を算出する。この際、疎部分94内の穴埋め処理、及び、ノイズと考えられる小さい面積の領域の削除(閾値:0.002以下)を行う。また、2つの閾値は、画像の明るさやコントラストによって適宜調整する。
面積S1に対する、面積S2の割合として、割合R1を算出する。すなわち、割合R1(%)=(面積S2)/(面積S1)×100である。
【0130】
実施形態において、多孔領域91に占める複数の疎部分94の割合R1は、例えば、40%以上70%以下、好ましくは50%以上70%以下である。割合R1は、例えば60%程度である。
【0131】
図5の平面図のような画像を取得し、画像解析により、疎部分94に占める複数の孔96の割合R2を算出する。割合R2は、例えば、疎部分94の気孔率に相当する。画像の取得には、走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ、S-3000)を用いる。加速電圧を15kV、倍率を600倍としてBSE像を取得する。例えば、画像サイズは、1280×960画素であり、画像階調は256階調である。
【0132】
疎部分94に占める複数の孔96の割合R2の算出には、画像解析ソフトウェア(例えばWin-ROOFVer6.5(三谷商事))を用いる。
Win-ROOFVer6.5を用いた割合R1の算出は以下のようにすることができる。
評価範囲ROI2(図5を参照)を、疎部分94の形状を近似する六角形とする。評価範囲ROI2内に1つの疎部分94に設けられたすべての孔96が含まれる。
単一閾値(例えば0)による二値化処理を行い、評価範囲ROI2の面積S3を算出する。
2つの閾値(例えば0及び96)による二値化処理を行い、評価範囲ROI2内の複数の孔96の合計の面積S4を算出する。この際、孔96内の穴埋め処理、及び、ノイズと考えられる小さい面積の領域の削除(閾値:1以下)を行う。また、2つの閾値は、画像の明るさやコントラストによって適宜調整する。
面積S3に対する面積S4の割合として、割合R2を算出する。すなわち、割合R2(%)=(面積S4)/(面積S3)×100である。
【0133】
実施形態において、疎部分94に占める複数の孔96の割合R2(疎部分94の気孔率)は、例えば、20%以上60%以下、好ましくは30%以上50%以下である。割合R2は、例えば40%程度である。
【0134】
多孔領域91の気孔率は、例えば、多孔領域91に占める複数の疎部分94の割合R1と、疎部分94に占める複数の孔96の割合R2と、の積に相当する。例えば、割合R1が60%であり、割合R2が40%の場合、多孔領域91の気孔率は、24%程度と算出できる。
【0135】
このような気孔率の多孔領域91を有する第1多孔質部90を用いることで、貫通孔15に流れるガスの流量を確保しつつ、絶縁耐圧を向上させることができる。
【0136】
同様にして、セラミック誘電体基板、第2多孔質部70の気孔率を算出することができる。なお、走査型電子顕微鏡の倍率は、観察対象に応じて、例えば数十倍~数千倍の範囲において適宜選択することが好ましい。
【0137】
図7(a)及び図7(b)は、実施形態に係る別の第1多孔質部を例示する模式図である。
図7(a)は、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に沿って見た第1多孔質部90の平面図であり、図7(b)は、図7(a)の一部の拡大図に相当する。
図7(a)及び図7(b)に示すように、この例では、疎部分94の平面形状は、円形である。このように、疎部分94の平面形状は、六角形でなくてもよい。
【0138】
図8は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図8は、図2に示す領域Bの拡大図に相当する。すなわち、図8は、第1多孔質部90(緻密領域93)とセラミック誘電体基板11との界面F1の近傍を示す。なお、この例では、第1多孔質部90及びセラミック誘電体基板11の材料には、酸化アルミニウムが用いられている。
【0139】
図8に示すように、第1多孔質部90は、X方向またはY方向においてセラミック誘電体基板11側に位置する第1領域90pと、第1領域90pとX方向またはY方向において連続した第2領域90qと、を有する。第1領域90p及び第2領域90qは、第1多孔質部90の緻密領域93の一部である。
【0140】
第1領域90pは、X方向またはY方向において第2領域90qとセラミック誘電体基板11との間に位置する。第1領域90pは、界面F1からX方向またはY方向に40~60μm程度の領域である。すなわち、第1領域90pのX方向またはY方向に沿う幅W1(界面F1に対して垂直な方向における第1領域90pの長さ)は、例えば、40μm以上60μm以下である。
【0141】
また、セラミック誘電体基板11は、X方向またはY方向において第1多孔質部90(第1領域90p)側に位置する第1基板領域11pと、第1基板領域11pとX方向またはY方向において連続した第2基板領域11qと、を有する。第1領域90pと第1基板領域11pとは接して設けられる。第1基板領域11pは、X方向またはY方向において第2基板領域11qと第1多孔質部90との間に位置する。第1基板領域11pは、界面F1からX方向またはY方向に40~60μm程度の領域である。すなわち、第1基板領域11pのX方向またはY方向に沿う幅W2(界面F1に対して垂直な方向における第1基板領域11pの長さ)は、例えば、40μm以上60μm以下である。
【0142】
図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図9(a)は、図8に示した第1領域90pの一部の拡大図である。図9(b)は、図8に示した第1基板領域11pの一部の拡大図である。
【0143】
図9(a)に示すように、第1領域90pは、複数の粒子g1(結晶粒)を含む。また、図9(b)に示すように、第1基板領域11pは、複数の粒子g2(結晶粒)を含む。
【0144】
第1領域90pにおける平均粒子径(複数の粒子g1の径の平均値)は、第1基板領域11pにおける平均粒子径(複数の粒子g2の径の平均値)と異なる。
【0145】
第1領域90pにおける平均粒子径と第1基板領域11pにおける平均粒子径とが異なることにより、界面F1において、第1多孔質部90の結晶粒と、セラミック誘電体基板11の結晶粒と、の結合強度(界面強度)を向上させることができる。例えば、第1多孔質部90のセラミック誘電体基板11からの剥離や、結晶粒の脱粒を抑制することができる。
【0146】
なお、平均粒子径には、図9(a)及び図9(b)のような断面の画像における、結晶粒の円相当直径の平均値を用いることができる。円相当直径とは、対象とする平面形状の面積と同じ面積を有する円の直径である。
【0147】
セラミック誘電体基板11と、第1多孔質部90は、一体化されていることも好ましい。第1多孔質部90はセラミック誘電体基板11と一体化していることで、セラミック誘電体基板11に固定されている。これにより、第1多孔質部90を接着剤などによってセラミック誘電体基板11に固定する場合に比べて、静電チャックの強度を向上させることができる。例えば、接着剤の腐食やエロージョン等による静電チャックの劣化を抑制することができる。
【0148】
この例では、第1基板領域11pにおける平均粒子径は、第1領域90pにおける平均粒子径よりも小さい。第1基板領域11pにおける粒子径が小さいことにより、第1多孔質部とセラミック誘電体基板との界面において、第1多孔質部と、セラミック誘電体基板と、の結合強度を向上させることができる。また、第1基板領域における粒子径が小さいことでセラミック誘電体基板11の強度を高め、製作時やプロセス時に発生する応力によるクラック等のリスクを抑えることができる。例えば、第1領域90pにおける平均粒子径は、3μm以上5μm以下である。例えば、第1基板領域11pにおける平均粒子径は、0.5μm以上2μm以下である。第1基板領域11pにおける平均粒子径は、第1領域90pにおける平均粒子径の1.1倍以上5倍以下である。
【0149】
また、例えば、第1基板領域11pにおける平均粒子径は、第2基板領域11qにおける平均粒子径よりも小さい。第1領域90pと接して設けられる第1基板領域11pでは、例えば製造工程における焼結時に、第1領域90pとの間における拡散等の相互作用により第1領域90pとの間の界面強度を高くすることが好ましい。一方、第2基板領域11qでは、セラミック誘電体基板11の材料本来の特性が発現されることが好ましい。第1基板領域11pにおける平均粒子径を第2基板領域11qにおける平均粒子径よりも小さくすることで、第1基板領域11pにおける界面強度の担保と、第2基板領域11qにおけるセラミック誘電体基板11の特性とを両立させることができる。
【0150】
第1領域90pにおける平均粒子径は、第1基板領域11pにおける平均粒子径より小さくてもよい。これによって第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11との界面において、第1多孔質部90と、セラミック誘電体基板11と、の結合強度を向上させることができる。また、第1領域90pにおける平均粒子径が小さいことで、第1多孔質部90の強度が高くなるため、プロセス時の粒子の脱落を抑制でき、パーティクルを低減できる。
【0151】
例えば、第1多孔質部90及びセラミック誘電体基板11のそれぞれにおいて、材料の組成や、温度などの焼結条件を調整することにより、平均粒子径を調整することができる。例えば、セラミック材料の焼結において加えられる焼結助剤の量や濃度を調整する。例えば、焼結助剤として用いられる酸化マグネシウム(MgO)は、結晶粒の異常成長を抑制する。
【0152】
また、前述したものと同様にして、第1領域90pにおける平均粒子径が、第2基板領域11qにおける平均粒子径よりも小さくなるようにすることもできる。この様にすれば、第1領域90pにおける機械的な強度を向上させることができる。
【0153】
図2(a)を再び参照して、静電チャック110の構造について説明を続ける。静電チャック110は、第2多孔質部70をさらに有していてもよい。第2多孔質部70は、Z方向において第1多孔質部90とガス導入路53との間に設けることができる。例えば、第2多孔質部70は、ベースプレート50の、セラミック誘電体基板11側に嵌め込まれる。図2(a)に表したように、例えば、ベースプレート50のセラミック誘電体基板11側には、座ぐり部53aが設けられる。座ぐり部53aは、筒状に設けられる。座ぐり部53aの内径を適切に設計することで、第2多孔質部70は、座ぐり部53aに嵌合される。
【0154】
第2多孔質部70の上面70Uは、ベースプレート50の上面50Uに露出している。第2多孔質部70の上面70Uは、第1多孔質部90の下面90Lと対向している。この例では、第2多孔質部70の上面70Uと第1多孔質部90の下面90Lとの間は、空間SPとなっている。空間SPは、第2多孔質部70及び第1多孔質部90の少なくともいずれかによって埋められていてもよい。すなわち、第2多孔質部70と第1多孔質部90とは接していてもよい。
【0155】
第2多孔質部70は、複数の孔を有するセラミック多孔体71と、セラミック絶縁膜72と、を有する。セラミック多孔体71は、筒状(例えば、円筒形)に設けられ、座ぐり部53aに嵌合される。第2多孔質部70の形状は、円筒形が望ましいが、円筒形に限定されるものではない。セラミック多孔体71には、絶縁性を有する材料が用いられる。セラミック多孔体71の材料は、例えばAlやY、ZrO、MgO、SiC、AlN、Siである。セラミック多孔体71の材料は、SiOなどのガラスでもよい。セラミック多孔体71の材料は、Al-TiOやAl-MgO、Al-SiO、Al13Si、YAG、ZrSiOなどでもよい。
【0156】
セラミック多孔体71の気孔率は、例えば20%以上60%以下である。セラミック多孔体71の密度は、例えば1.5g/cm以上3.0g/cm以下である。ガス導入路53を流れてきたHe等のガスは、セラミック多孔体71の複数の孔を通過し、セラミック誘電体基板11に設けられた貫通孔15から溝14へ送られる。
【0157】
セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71とガス導入路53との間に設けられる。セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71よりも緻密である。セラミック絶縁膜72の気孔率は、例えば10%以下である。セラミック絶縁膜72の密度は、例えば3.0g/cm以上4.0g/cm以下である。セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71の側面に設けられる。
【0158】
セラミック絶縁膜72の材料には、例えばAl、Y、ZrO、MgOなどが用いられる。セラミック絶縁膜72の材料には、Al-TiO、Al-MgO、Al-SiO、Al13Si、YAG、ZrSiOなどが用いられてもよい。
【0159】
セラミック絶縁膜72は、セラミック多孔体71の側面に溶射によって形成される。溶射とは、コーティング材料を、加熱により溶融または軟化させ、微粒子状にして加速し、セラミック多孔体71の側面に衝突させて、偏平に潰れた粒子を凝固・堆積させることにより皮膜を形成する方法のことをいう。セラミック絶縁膜72は、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)やCVD、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法などで作製されても良い。セラミック絶縁膜72として、セラミックを溶射によって形成する場合、膜厚は例えば0.05mm以上0.5mm以下である。
【0160】
セラミック誘電体基板11の気孔率は、例えば1%以下である。セラミック誘電体基板11の密度は、例えば4.2g/cmである。
【0161】
セラミック誘電体基板11及び第2多孔質部70における気孔率は、前述のとおり、走査型電子顕微鏡により測定される。密度は、JIS C 2141 5.4.3に基づいて測定される。
【0162】
第2多孔質部70がガス導入路53の座ぐり部53aに嵌合されると、セラミック絶縁膜72とベースプレート50とが接する状態になる。すなわち、He等のガスを溝14に導く貫通孔15と、金属製のベースプレート50との間に、絶縁性の高いセラミック多孔体71及びセラミック絶縁膜72が介在することになる。このような第2多孔質部70を用いることで、セラミック多孔体71のみをガス導入路53に設ける場合に比べて、高い絶縁性を発揮できるようになる。
【0163】
また、X方向またはY方向において、第2多孔質部70の寸法は、第1多孔質部90の寸法よりも大きくすることができる。この様な第2多孔質部70を設けることでより高い絶縁耐圧を得ることができるので、アーク放電の発生をより効果的に抑制できる。
【0164】
また、第2多孔質部70に設けられた複数の孔は、第1多孔質部90に設けられた複数の孔よりも3次元的に分散し、Z方向に貫通する孔の割合は、第2多孔質部70よりも第1多孔質部90の方が多くなるようにすることができる。3次元的に分散した複数の孔を有する第2多孔質部70を設けることでより高い絶縁耐圧を得ることができるので、アーク放電の発生をより効果的に抑制できる。また、Z方向に対して所定の角度θ傾いた方向に貫通する孔の割合が多い第1多孔質部90を設けることで、ガスの流れの円滑化を図ることができる。
【0165】
また、Z方向において、第2多孔質部70の寸法は、第1多孔質部90の寸法よりも大きくすることができる。この様にすれば、より高い絶縁耐圧を得ることができるので、アーク放電の発生をより効果的に抑制できる。
【0166】
また、第2多孔質部70に設けられた複数の孔の径の平均値は、第1多孔質部90に設けられた複数の孔の径の平均値よりも大きくすることができる。この様にすれば、孔の径が大きい第2多孔質部70が設けられているので、ガスの流れの円滑化を図ることができる。また、孔の径が小さい第1多孔質部90が吸着の対象物側に設けられているので、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。
また、複数の孔の径のばらつきを小さくすることができるので、アーク放電のより効果的な抑制を図ることができる。
【0167】
図10は、実施形態に係る静電チャックの第2多孔質部70を例示する模式的断面図である。
図10は、セラミック多孔体71の断面の一部の拡大図である。
セラミック多孔体71に設けられた複数の孔71pは、セラミック多孔体71の内部において、X方向、Y方向及びZ方向に3次元的に分散されている。言い換えれば、セラミック多孔体71は、X方向、Y方向及びZ方向に広がる3次元的な網状構造である。複数の孔71pは、セラミック多孔体71において例えばランダムに分散されている。
【0168】
複数の孔71pは、3次元的に分散されているため、複数の孔71pの一部は、セラミック多孔体71の表面にも露出している。そのため、セラミック多孔体71の表面には細かい凹凸が形成されている。つまり、セラミック多孔体71の表面は粗い。セラミック多孔体71の表面粗さによって、セラミック多孔体71の表面に、溶射膜であるセラミック絶縁膜72を形成しやすくすることができる。例えば、溶射膜とセラミック多孔体71との接触が向上する。また、セラミック絶縁膜72の剥離を抑制することができる。
【0169】
セラミック多孔体71に設けられた複数の孔71pの径の平均値は、多孔領域91に設けられた複数の孔96の径の平均値よりも大きい。孔71pの径は、例えば10μm以上50μm以下である。孔の径が小さい多孔領域91によって、貫通孔15に流れるガスの流量を制御(制限)することができる。これにより、セラミック多孔体71に起因したガス流量のばらつきを抑制することができる。孔71pの径及び孔96の径は、前述のとおり、走査型電子顕微鏡により求めることができる。
【0170】
また、セラミック多孔体71に設けられた複数の孔71pの径の平均値は、多孔領域91に設けられた複数の孔96の径の平均値よりも小さくすることもできる。これにより、電流が流れにくくなるので、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。
複数の孔71pの径の平均値は、必要となるガスの流量とアーク放電の抑制とを考慮して適宜決定すればよい。
【0171】
図11は、第1の実施形態に係る別の静電チャックを例示する模式的断面図である。
図11は、図2(a)と同様に、第1多孔質部90の周辺を例示する。
この例では、セラミック誘電体基板11に設けられた貫通孔15には、孔部15b(第1多孔質部90と溝14とを連結する連結孔)が設けられていない。例えば、貫通孔15の径(X方向に沿った長さ)は、Z方向において変化せず、略一定である。
【0172】
図11に示すように、第1多孔質部90の上面90Uの少なくとも一部は、セラミック誘電体基板11の第1主面11a側へ露出している。例えば、第1多孔質部90の上面90UのZ方向における位置は、溝14の底のZ方向における位置と同じである。
【0173】
このように、第1多孔質部90を貫通孔15の略全体に配置してもよい。貫通孔15に径が小さい連結孔が設けられないため、貫通孔15に流れるガスの流量を大きくすることができる。また、貫通孔15の大部分に絶縁性の高い第1多孔質部90を配置することができ、アーク放電に対する高い耐性を得ることができる。
【0174】
図12は、第1の実施形態に係る別の静電チャックを例示する模式的断面図である。
図12は、図2(a)と同様に、第1多孔質部90の周辺を例示する。
この例では、第1多孔質部90は、セラミック誘電体基板11と一体化されていない。
【0175】
第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11との間には接着部材61(接着剤)が設けられている。第1多孔質部90は、セラミック誘電体基板11に接着部材61で接着されている。例えば、接着部材61は、第1多孔質部90の側面(緻密領域93の側面93s)と、貫通孔15の内壁15wと、の間に設けられる。第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11は、接していなくてもよい。
【0176】
接着部材61には、例えば、シリコーン接着剤が用いられる。接着部材61は、例えば弾性を有する弾性部材である。接着部材61の弾性率は、例えば、第1多孔質部90の緻密領域93の弾性率よりも低く、セラミック誘電体基板11の弾性率よりも低い。
【0177】
接着部材61によって第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11とが接着される構造においては、接着部材61を、第1多孔質部90の熱収縮とセラミック誘電体基板11の熱収縮との差に対する緩衝材とすることができる。
【0178】
(第2の実施形態)
図13(a)は、第2の実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。 図13(b)は、第2多孔質部70aを例示する平面図である。
図14は、第2の実施形態に係る静電チャックの変形例を例示する模式的断面図である。
【0179】
前述した第1の実施形態に係る静電チャックの場合には、第2多孔質部70は、セラミック多孔体71とセラミック絶縁膜72とを有していた。これに対して、第2の実施形態に係る静電チャックの場合には、第2多孔質部70aは、セラミック多孔体73、緻密部74、および緻密部75を有することができる。その他の構成要素は、第1の実施形態に係る静電チャックの場合と同様とすることができる。
セラミック多孔体73は、例えば、前述したセラミック多孔体71と同様とすることができる。
【0180】
緻密部75は、例えば、前述した緻密領域93と同様とすることができる。
緻密部75は、セラミック多孔体73と接している、または、セラミック多孔体73と連続している(一体に形成されている)。図13(b)に示すように、Z方向に沿って見たときに、緻密部75は、セラミック多孔体73の外周を囲む。緻密部75は、セラミック多孔体73の側面73sを囲む筒状(例えば円筒状)である。言い換えれば、セラミック多孔体73は、緻密部75をZ方向に貫通するように設けられている。ガス導入路53から第2多孔質部70aへ流入したガスは、セラミック多孔体73に設けられた複数の孔を通り、第1多孔質部90に供給される。
【0181】
このようなセラミック多孔体73を有する第2多孔質部70aを設けることにより、貫通孔15に流れるガスの流量を確保しつつ、アーク放電に対する耐性を向上させることができる。また、第2多孔質部70aが緻密部75を有することにより、第2多孔質部70aの剛性(機械的な強度)を向上させることができる。また、第2多孔質部70aが緻密部74を有することにより、アーク放電の発生をさらに抑制することができる。
【0182】
緻密部74は、セラミック多孔体73よりも緻密である。ベースプレート50からセラミック誘電体基板11へ向かう第1方向(Z方向)に対して垂直な平面(XY平面)に投影したときに、緻密部74と第1孔部15bとは重なり、セラミック多孔体73と第1孔部15bとは重ならないように構成されている。このような構成によれば、発生した電流が緻密部74を迂回して流れようとする。そのため、電流が流れる距離(導電パス)を長くすることができるので、電子が加速されにくくなり、ひいてはアーク放電の発生を抑制することができる。この静電チャックによれば、ガス流を確保しつつアーク放電の発生を効果的に抑制することができる。
【0183】
この例では、Z方向に対して垂直な平面に投影したときに、緻密部74の周囲にセラミック多孔体73が設けられている。第1孔部15bと対向する位置には緻密部74を配置してアーク放電に対する耐性を高めつつ、その周囲にセラミック多孔体73を設けているので十分なガス流を確保することができる。つまり、アーク放電の低減とガスの流れの円滑化を両立させることができる。
【0184】
図13(a)に示すように、緻密部74のZ方向に沿う長さを、第2多孔質部70aのZ方向に沿う長さよりも小さくしてもよい。Z方向において、緻密部74とベースプレート50との間にセラミック多孔体73を設けてもよい。これらの構成によれば、アーク放電の発生を抑制しつつ、ガス流の円滑化を図ることができる。
【0185】
また、図14に示すように、緻密部74のZ方向に沿う長さが、第2多孔質部70aのZ方向に沿う長さと略同じであってもよい。緻密部74の長さ十分に長くすることで、アーク放電の発生をより効果的に抑制することができる。
【0186】
緻密部74は、実質的に孔を有さない緻密体で構成してもよいし、セラミック多孔体73よりも緻密であれば、複数の孔を有するように構成してもよい。緻密部74が複数の孔を有する場合には、その孔の径をセラミック多孔体73が有する孔の径よりも小さくすることが好ましい。
緻密部74の気孔率(パーセント:%)は、セラミック多孔体73の気孔率(%)よりも低くすることができる。そのため、緻密部74の密度(グラム/立方センチメートル:g/cm)は、セラミック多孔体73の密度(g/cm)よりも高くすることができる。
【0187】
ここで、アーク放電は、孔部15bの内部を、セラミック誘電体基板11側からベースプレート50側に向けて電流が流れることで発生する場合が多い。そのため、低い気孔率を有する緻密部74が設けられていれば、図13(a)、図14に示すように、電流200は緻密部74を迂回して流れようとする。そのため、電流200が流れる距離(導電パス)を長くすることができるので、電子が加速されにくくなり、ひいてはアーク放電の発生を抑制することができる。
【0188】
緻密部74の気孔率は、例えば、緻密部74の全体積に占める、緻密部74に含まれる空間(孔)の体積の割合である。セラミック多孔体73の気孔率は、例えば、セラミック多孔体73の全体積に占める、セラミック多孔体73に含まれる空間(孔)の体積の割合である。例えば、セラミック多孔体73の気孔率は、5%以上40%以下、好ましくは10%以上30%以下であり、緻密部74の気孔率は、0%以上5%以下である。この場合、緻密部74の気孔率は、セラミック多孔体73の気孔率の50%以下とすることが好ましい。
すなわち、緻密部74は、セラミック多孔体73に設けられている。緻密部74は、孔部15bと対向している。緻密部74の気孔率はセラミック多孔体73の気孔率の50%以下である。
【0189】
また、緻密部74が有する孔の径が、セラミック多孔体73が有する孔の径の80%以下となるようにしてもよい。
またさらに、緻密部74は孔を有さないものとすることもできる。
緻密部74が有する孔の径が、セラミック多孔体73が有する孔の径の80%以下となっていたり、緻密部74が孔を有さないものとなっていたりしても、前述した気孔率を有する場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、これらの様にしても、電流200が流れる距離(導電パス)を長くすることができるので、電子が加速されにくくなり、ひいてはアーク放電の発生を抑制することができる。
【0190】
Z方向において、緻密部74のガス導入路53側の面は、セラミック多孔体73の内部に設けられていてもよいし、セラミック多孔体73のガス導入路53側の面から露出していてもよい。緻密部74の孔部15b側の面は、セラミック多孔体73の内部に設けられていてもよいし、セラミック多孔体73の孔部15b側の面から露出していてもよい。緻密部74の孔部15b側の面がセラミック多孔体73の孔部15b側の面から露出していれば、絶縁距離を長くすることができるので、孔部15bが放電の経路となるのを抑制することができる。緻密部74のガス導入路53側の面がセラミック多孔体73のガス導入路53側の面から露出していれば、絶縁距離を長くすることができるので、孔部15bが放電の経路となるのを抑制することができる。例えば、図14に表したように、緻密部74は、セラミック多孔体73のガス導入路53側の面から、セラミック多孔体73の孔部15b側の面までZ方向に延びていることが好ましい。この様にすれば、アーク放電の発生をさらに抑制することができる。
【0191】
また、Z方向に沿って見たときに、孔部15bが緻密部74と重なるようにすることが好ましい。この様にすれば、孔部15bの内部を、セラミック誘電体基板11側からベースプレート50側に向けて流れる電流を、緻密部74により確実に迂回させることができる。そのため、絶縁距離を長くすることができるので、孔部15bが放電の経路となるのを抑制することができる。
【0192】
図15は、第2多孔質部70aを例示する模式図である。図15は、Z方向に沿って見た第2多孔質部70aの平面図である。
図15に示すように、セラミック多孔体73は、複数の疎部分76と、密部分77と、を有する。複数の疎部分76のそれぞれは、複数の孔を有する。密部分77は、疎部分76よりも緻密である。すなわち、密部分77は、疎部分76に比べて孔が少ない部分、または、実質的に孔を有さない部分である。なお、第2多孔質部70aの構成は、前述した第1多孔質部90の構成と同様とすることができる。この場合、セラミック多孔体73は多孔領域91に対応し、疎部分76は疎部分94に対応し、密部分77は密部分95に対応するものとすることができる。そのため、これらの詳細な説明は省略する。
この例において、第1多孔質部90aを、セラミック誘電体基板11と一体化し、かつ、第2多孔質部70aの構成を、前述した第1多孔質部90の構成と同様とした場合において、第1多孔質部90aの複数の孔の平均値を第2多孔質部70aの複数の孔の平均値よりも大きくすると、第1多孔質部90の機械的な強度をより高めることができ、高いアーキング耐性と強度とを両立させることができる。
【0193】
また、Z方向に沿って見たときに、緻密部75の側面75sと、複数の疎部分76のうち最も側面75sに近い疎部分76と、の間の距離L21は、100μm以上1000μm以下とすることができる。
【0194】
図16は、Z方向に沿って見た第2多孔質部70aの一部を示し、図15の拡大図に相当する。
Z方向に沿って見たときに、複数の疎部分76のそれぞれは、略六角形(略正六角形)である。Z方向に沿って見たときに、複数の疎部分76は、第1疎部分76aと、第1疎部分76aを囲む6つの疎部分76(第2~第7疎部分76b~76g)を有する。この場合、疎部分76a~76gは疎部分94a~94gに対応するものとすることができる。また、長さL21~L25は、長さL1~L5に対応するものとすることができる。そのため、これらの詳細な説明は省略する。
【0195】
図17は、Z方向に沿って見た第2多孔質部70aの一部を示す。図17は、1つの疎部分76の周辺の拡大図である。
図17に示すように、この例では、疎部分76は、複数の孔78と、複数の孔78同士の間に設けられた壁部79と、を有する。この場合、疎部分76は疎部分94に対応し、密部分77は密部分95に対応し、孔78は孔96に対応し、壁部79は壁部97に対応するものとすることができる。そのため、これらの詳細な説明は省略する。
【0196】
図18は、Z方向に沿って見た第2多孔質部70aの一部を示し、1つの疎部分76内の孔78を示す拡大図である。
図18に示すように、複数の孔78は、疎部分76の中心部に位置する第1孔78aと、第1孔78aを囲む6つの孔78(第2~第7孔78b~78g)を有する。第2~第7孔78b~78gは、第1孔78aと隣接している。第2~第7孔78b~78gは、複数の孔78のうち、第1孔78aに最近接する孔78である。この場合、第1孔78aは第1孔96aに対応し、第2孔78bは第2孔96bに対応し、第3孔78cは第3孔96cに対応し、第4孔78dは第4孔96dに対応し、第5孔78eは第5孔96eに対応し、第6孔78fは第6孔96fに対応し、第7孔78gは第7孔96gに対応するものとすることができる。そのため、これらの詳細な説明は省略する。
【0197】
図19は、第2の実施形態に係る別の静電チャックを例示する模式的断面図である。
図19は、図13(a)と同様に、第2多孔質部70aの周辺を例示する。
この例では、セラミック誘電体基板11に設けられた貫通孔15には、孔部15b(第1多孔質部90と溝14とを連結する連結孔)が設けられていない。例えば、貫通孔15の径(X方向に沿った長さ)は、Z方向において変化せず、略一定である。
【0198】
図19に示すように、第1多孔質部90の上面90Uの少なくとも一部は、セラミック誘電体基板11の第1主面11a側へ露出している。例えば、第1多孔質部90の上面90UのZ方向における位置は、溝14の底のZ方向における位置と同じである。
【0199】
このように、第1多孔質部90を貫通孔15の略全体に配置してもよい。貫通孔15に径が小さい連結孔が設けられないため、貫通孔15に流れるガスの流量を大きくすることができる。また、貫通孔15の大部分に絶縁性の高い第1多孔質部90を配置することができ、アーク放電に対する高い耐性を得ることができる。
【0200】
図20は、第2の実施形態に係る別の静電チャックを例示する模式的断面図である。
図20は、図13(a)と同様に、第1多孔質部90の周辺を例示する。
この例では、第1多孔質部90は、セラミック誘電体基板11と一体化されていない。
【0201】
第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11との間には接着部材61(接着剤)が設けられている。第1多孔質部90は、セラミック誘電体基板11に接着部材61で接着されている。例えば、接着部材61は、第1多孔質部90の側面(緻密領域93の側面93s)と、貫通孔15の内壁15wと、の間に設けられる。第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11は、接していなくてもよい。
【0202】
接着部材61には、例えば、シリコーン接着剤が用いられる。接着部材61は、例えば弾性を有する弾性部材である。接着部材61の弾性率は、例えば、第1多孔質部90の緻密領域93の弾性率よりも低く、セラミック誘電体基板11の弾性率よりも低い。
【0203】
接着部材61によって第1多孔質部90とセラミック誘電体基板11とが接着される構造においては、接着部材61を、第1多孔質部90の熱収縮とセラミック誘電体基板11の熱収縮との差に対する緩衝材とすることができる。
【0204】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。例えば、静電チャック110として、クーロン力を用いる構成を例示したが、ジョンソン・ラーベック力を用いる構成であっても適用可能である。また、前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0205】
11 セラミック誘電体基板、 11a 第1主面、 11b 第2主面、 11p 第1基板領域、 12 電極、 13 ドット、 14 溝、 15 貫通孔、 15a 孔部、 15b 孔部(第1孔部)、 15c 孔部(第2孔部)、 15w 内壁、 20 接続部、 50 ベースプレート、 50U 上面、 50a 上部、 50b 下部、 51 入力路、 52 出力路、 53 ガス導入路、 55 連通路、 60 接着部、 70 第2多孔質部、 70a 第2多孔質部、 70U 上面、 71 セミック多孔体、 71p 孔、 72 セラミック絶縁膜、73 セラミック多孔体、74 緻密部、75 緻密部、76 疎部分、 76a~76g 第1~第7疎部分、 77 密部分、 78 孔、 78a~78g 第1~第7孔、 79 壁部、 80 吸着保持用電圧、 90 第1多孔質部、 90L 下面、 90U 上面、 90p 第1領域、 91 多孔領域、 91s 側面、 93 緻密領域、 93s 側面、 94 疎部分、 94a~94g 第1~第7疎部分、 95 密部分、 96 孔、 96a~96g 第1~第7孔、 97 壁部、 110 静電チャック、 W 対象物、 SP 空間、 ROI1 評価範囲、 ROI2 評価範囲
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