(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ゴム組成物、導電性ローラおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
F16C 13/00 20060101AFI20231214BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231214BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20231214BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20231214BHJP
C08K 5/378 20060101ALI20231214BHJP
C08K 5/23 20060101ALI20231214BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20231214BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231214BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20231214BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20231214BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F16C13/00 A
C08L9/00
C08L23/16
C08K3/06
C08K5/378
C08K5/23
C08L15/00
G03G15/00 551
G03G15/16 103
G03G15/08 235
G03G21/00 312
(21)【出願番号】P 2020015167
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 勇祐
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158917(JP,A)
【文献】特開2008-216462(JP,A)
【文献】特開平01-066676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 13/00 - 15/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
G03G 13/00
13/02
13/08
13/095
13/14 -13/16
15/00
15/02
15/095
15/14 -15/16
21/16 -21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ローラのローラ本体を形成するためのゴム組成物であって、ジエン系ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、およびイオン導電性ゴムを含むゴム、ならびに前記ゴムを架橋させるための架橋成分を含み、
前記エチレンプロピレン系ゴムの割合は、ゴムの総量100質量部中の1質量部以上30質量部以下であり、
前記イオン導電性ゴムの割合は、ゴムの総量100質量部中の5質量部以上35質量部以下であり、
前記架橋成分は、前記ゴムの総量100質量部あたり0.8質量部以上、1.2質量部以下の硫黄、および前記ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上、1質量部以下の4,4′-ジチオジモルホリンを含むゴム組成物。
【請求項2】
さらに、発泡剤としてのアゾジカルボンアミドを、前記ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上、5質量部以下の割合で含む請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムは、アクリロニトリルブタジエンゴム、およびスチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記エチレンプロピレン系ゴムは、エチレンプロピレンジエンゴムである
請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記イオン導電性ゴムは、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体である
請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記硫黄は、オイル処理硫黄である
請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記
請求項1に記載のゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含む導電性ローラ。
【請求項8】
前記ローラ本体は、前記架橋物の多孔質体からなる請求項7に記載の導電性ローラ。
【請求項9】
前記請求項7または8に記載の導電性ローラを含む画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、当該ゴム組成物を用いて形成したローラ本体を含む導電性ローラ、および当該導電性ローラを含む画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用した画像形成装置には、導電性を有するゴム組成物を発泡、架橋させて形成したローラ本体を含む導電性ローラを用いる場合がある(特許文献1、2等参照)。しかし従来の導電性ローラは、ローラ抵抗値の放置変動が大きいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-034878号公報
【文献】特開2014-119546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ローラ抵抗値の放置変動が小さい導電性ローラのローラ本体を形成できるゴム組成物を提供することにある。
また本発明の目的は、上記ゴム組成物を用いて形成したローラ本体を含む導電性ローラと、当該導電性ローラを含む画像形成装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、導電性ローラのローラ本体を形成するためのゴム組成物であって、ジエン系ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、およびイオン導電性ゴムを含むゴム、ならびに前記ゴムを架橋させるための架橋成分を含み、前記架橋成分は、前記ゴムの総量100質量部あたり0.8質量部以上、1.2質量部以下の硫黄、および前記ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上、1質量部以下の4,4′-ジチオジモルホリンを含むゴム組成物である。
【0006】
また本発明は、かかる本発明のゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含む導電性ローラである。
さらに本発明は、上記本発明の導電性ローラを含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ローラ抵抗値の放置変動が小さい導電性ローラのローラ本体を形成できるゴム組成物を提供することができる。
また本発明によれば、上記ゴム組成物を用いて形成したローラ本体を含む導電性ローラと、当該導電性ローラを含む画像形成装置とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【
図2】導電性ローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述したように、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、およびイオン導電性ゴムを含むゴム、ならびにゴムを架橋させるための架橋成分を含み、当該架橋成分は、ゴムの総量100質量部あたり0.8質量部以上、1.2質量部以下の硫黄、およびゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上、1質量部以下の4,4′-ジチオジモルホリンを含むことを特徴とするものである。
【0010】
また本発明の導電性ローラは、上記ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を含むことを特徴とするものである。
前述した従来の導電性ローラを製造後、使用せずに比較的長期間に亘ってストック(放置)すると、酸化劣化等の経年劣化を生じて、ローラ抵抗値が上昇する現象がみられる。
この現象をローラ抵抗値の放置変動と呼び、放置変動によってローラ抵抗値が導電性ローラの規格値の上限を超えると、当該導電性ローラを組み込んだ画像形成装置によって形成される画像に不良を生じる場合がある。
【0011】
とくに近年、画像形成装置にはさらなる長寿命化が求められつつあることから、交換用としてストックされる導電性ローラには、画像形成装置の製品寿命を延ばすためにも、ローラ抵抗値の放置変動が小さいことが求められる。
ローラ抵抗値の放置変動を小さくするための一般的な対策としては、ゴム組成物に老化防止剤を配合したり、酸化劣化しにくいゴムの割合を多くしたりすることが考えられる。
【0012】
しかしこれらの対策を施すと、ゴム組成物の材料選択の自由度が制限されるという課題がある。
これに対し本発明によれば、ゴムに対して上記所定の割合で、架橋剤としての硫黄と4,4′-ジチオジモルホリンとを併用することにより、ゴム組成物の材料選択の自由度を低下させることなしに、ローラ抵抗値の放置変動を小さくすることができる。
このことは、後述する実施例、比較例の結果からも明らかである。
【0013】
《ゴム組成物》
〔ゴム〕
ゴムとしては、前述したようにジエン系ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、およびイオン導電性ゴムを、少なくとも併用する。
【0014】
〈ジエン系ゴム〉
ジエン系ゴムは、ローラ本体にゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性を付与するために機能する。
ジエン系ゴムとしては、主鎖中に二重結合を含み、硫黄架橋性を有するため、前述したように硫黄と4,4′-ジチオジモルホリンとの併用系によって架橋させることができる種々のジエン系ゴムを用いることができる。
【0015】
ジエン系ゴムとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
中でもジエン系ゴムとしては、NBRとSBRの2種を併用するのが好ましい。
【0016】
(NBR)
NBRとしては、アクリロニトリル含量が24%以下である低ニトリルNBR、25~30%である中ニトリルNBR、31~35%である中高ニトリルNBR、36~42%である高ニトリルNBR、43%以上である極高ニトリルNBRが、いずれも使用可能である。
また、NBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、感光体等の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのNBRを用いるのが好ましい。
これらNBRの1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
(SBR)
SBRとしては、スチレンと1,3-ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRが、いずれも使用可能である。
また、SBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがあるが、このいずれも使用可能である。
さらにSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、やはり感光体等の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのSBRを用いるのが好ましい。
これらSBRの1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
〈エチレンプロピレン系ゴム〉
エチレンプロピレン系ゴムは、それ自体が耐オゾン性や耐候性に優れているため、当該エチレンプロピレ系ゴムを併用することでローラ本体の酸化劣化を抑制して、ローラ抵抗値の放置変動をさらに小さくすることができる。
【0019】
エチレンプロピレン系ゴムとしては、エチレンとプロピレンの共重合体であるエチレンプロピレンゴム(EPM)、およびエチレンとプロピレンとジエンの共重合体であるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
とくに硫黄架橋性を有し、硫黄と4,4′-ジチオジモルホリンとの併用系によって架橋させることができるEPDMが好ましい。
【0020】
EPDMとしては、エチレン、プロピレン、およびジエンを共重合させた種々の共重合体を用いることができる。
ジエンとしては、エチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)等が挙げられる。
またEPDMとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、やはり感光体等の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのEPDMを用いるのが好ましい。
これらEPDMの1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
〈イオン導電性ゴム〉
イオン導電性ゴムは、ゴム組成物に適度のイオン導電性を付与して、当該ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えた導電性ゴムのローラ抵抗値を、画像形成装置に組み込むのに適した範囲に調整するために機能する。
なお本発明の導電性ローラは、画像形成装置に、たとえば転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラ、クリーニングローラ等として組み込んで用いることができる。
【0022】
イオン導電性ゴムとしては、たとえば、エピクロルヒドリンゴム、ポリエーテルゴム等が挙げられる。
このうちエピクロルヒドリンゴムとしては、たとえば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル四元共重合体等が挙げられる。
【0023】
またポリエーテルゴムとしては、たとえば、エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体等が挙げられる。
中でもエチレンオキサイドを含む共重合体、とくに硫黄架橋性を有し、硫黄と4,4′-ジチオジモルホリンとの併用系によって架橋させることができるGECOが好ましい。
【0024】
GECOにおけるエチレンオキサイド含量は、30モル%以上、とくに50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは、前述したように、ゴム組成物にイオン導電性を付与して、当該ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えた導電性ローラのローラ抵抗値を下げる働きをする。
【0025】
しかし、エチレンオキサイド含量がこの範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できない場合がある。
一方、エチレンオキサイド含量が上記の範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり、分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、却ってローラ抵抗値が上昇する傾向がある。
【0026】
また、架橋後のローラ本体が硬くなりすぎたり、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇して、当該ゴム組成物の加工性や発泡性が低下したりする場合もある。
GECOにおけるアリルグリシジルエーテル含量は、0.5モル%以上、とくに2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、とくに5モル%以下であるのが好ましい。
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として、自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して、ローラ抵抗値を低下させる働きをする。
【0027】
しかし、アリルグリシジルエーテル含量がこの範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できない場合がある。
一方、アリルグリシジルエーテルは、GECOの架橋時に架橋点として機能する。
そのため、アリルグリシジルエーテル含量が上記の範囲を超える場合には、GECOの架橋密度が高くなりすぎることによって分子鎖のセグメント運動が妨げられて、却ってローラ抵抗値が上昇する傾向がある。
【0028】
GECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。
すなわち、エピクロルヒドリン含量は10モル%以上、とくに19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、とくに60モル%以下であるのが好ましい。
なおGECOとしては、先に説明した3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体の他に、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られている。
本発明では、このいずれのGECOも使用可能である。
これらイオン導電性ゴムの1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
〈その他のゴム〉
ゴムとしては、さらに極性を有するゴムを併用して、導電性ローラのローラ抵抗値を微調整することもできる。
極性を有するゴムとしては、アクリルゴム(ACM)や、前述したジエン系ゴムのうちCR等が挙げられる。
また、上記のうちACMは高い耐熱性を有するため、当該ACMを併用することで、ローラ本体の酸化劣化をさらに有効に抑制して、ローラ抵抗値の放置変動を、より一層小さくすることもできる。
【0030】
(ACM)
ACMとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステルを主成分とし、さらにアクリロニトリル、2-クロロエチルビニルエーテル等の含ハロゲン系モノマーやグリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチリデンノルボルネン等を共重合させて合成される種々のACMが使用可能である。
これらACMの1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
(CR)
CRは、クロロプレンを乳化重合させて合成されるもので、その際に用いる分子量調整剤の種類によって、硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプとに分類される。
このうち硫黄変性タイプのCRは、クロロプレンと、分子量調整剤としての硫黄とを共重合させたポリマを、チウラムジスルフィド等で可塑化して所定の粘度に調整することで合成される。
【0032】
また非硫黄変性タイプのCRは、たとえば、メルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ等に分類される。
このうちメルカプタン変性タイプのCRは、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調整剤として使用すること以外は、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
【0033】
さらにキサントゲン変性タイプのCRは、アルキルキサントゲン化合物を分子量調整剤として使用すること以外は、やはり硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
またCRは、その結晶化速度に基づいて、結晶化速度が遅いタイプ、中庸であるタイプ、および速いタイプに分類される。
本発明ではいずれのタイプのCRを用いてもよいが、中でも非硫黄変性タイプで、かつ結晶化速度が遅いタイプのCRが好ましい。
【0034】
またCRとしては、クロロプレンと他の共重合成分との共重合体を用いてもよい。
他の共重合成分としては、たとえば、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステル等の1種または2種以上が挙げられる。
さらにCRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では、やはり感光体の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのCRを用いるのが好ましい。
これらCRの1種または2種以上を用いることができる。
【0035】
〈ゴムの割合〉
イオン導電性ゴムの割合は、ゴムの総量100質量部中の5質量部以上、中でも10質量部以上、とくに15質量部以上であるのが好ましく、35質量部以下、中でも30質量部以下、とくに25質量部以下であるのが好ましい。
イオン導電性ゴムの割合がこの範囲未満、またはこの範囲を超える場合には、いずれにおいても、導電性ローラのローラ抵抗値を、画像形成装置に組み込むのに適した範囲に調整できない場合がある。
また、イオン導電性ゴムの割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にジエン系ゴムやエチレンプロピレン系ゴムの割合が少なくなって、これらのゴムを併用することによる、前述した効果が十分に得られない場合もある。
【0036】
これに対し、イオン導電性ゴムの割合を上記の範囲とすることにより、導電性ローラのローラ抵抗値を、画像形成装置に組み込むのに適した範囲に調整することができる。
また、ジエン系ゴムやエチレンプロピレン系ゴムを併用することによる効果を十分に発現させることもできる。
エチレンプロピレン系ゴムの割合は、ゴムの総量100質量部中の1質量部以上、中でも5質量部以上、とくに10質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下、中でも25質量部以下、とくに20質量部以下であるのが好ましい。
【0037】
エチレンプロピレン系ゴムの割合がこの範囲未満では、当該エチレンプロピレン系ゴムを配合することによる、ローラ本体の酸化劣化を抑制して、ローラ抵抗値の放置変動をさらに小さくする効果が十分に得られない場合がある。
一方、エチレンプロピレン系ゴムの割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にイオン導電性ゴムやジエン系ゴムの割合が少なくなって、これらのゴムを併用することによる前述した効果が十分に得られない場合もある。
【0038】
これに対し、エチレンプロピレン系ゴムの割合を上記の範囲とすることにより、ローラ本体の酸化劣化を抑制して、当該ローラ抵抗値の放置変動をさらに小さくすることができる。
また、イオン導電性ゴムやジエン系ゴムを併用することによる効果を十分に発現させることもできる。
【0039】
ACMやCR等の他のゴムの割合は、ゴムの総量100質量部中の10質量部以下、とくに5質量部以下であるのが好ましい。
また、かかる他のゴムは配合しない、すなわち他のゴムの割合は0質量部であってもよい。
ジエン系ゴムとしてのNBRおよび/またはSBRの割合は、イオン導電性ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、および他のゴムの残量である。
すなわち、イオン導電性ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、および他のゴムの割合を、それぞれ上記範囲の所定値に設定した際にゴムの総量が100質量部となるように、NBRおよび/またはSBRの割合を設定すればよい。
【0040】
〔架橋成分〕
〈架橋剤〉
架橋成分としては、ゴムを架橋させるための架橋剤として、前述したように硫黄と4,4′-ジチオジモルホリンとを併用する。
このうち硫黄の割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.8質量部以上、1.2質量部以下に限定される。
また4,4′-ジチオジモルホリンの割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上、1質量部以下に限定される。
これらの理由は、先に説明したとおりである。
【0041】
すなわち硫黄、および4,4′-ジチオジモルホリンの割合が、いずれか一方でも上記の範囲を外れる場合には、両架橋剤を併用することによる効果が得られず、ローラ抵抗値の放置変動が大きくなってしまう。
これに対し、上記2種の架橋剤を、いずれも上述した所定の割合で併用することにより、たとえ配合するゴムの割合を任意に変更したりしても、ローラ抵抗値の放置変動を小さくすることができる。
つまり、ゴム組成物の材料選択の自由度を低下させることなしに、ローラ抵抗値の放置変動の小さい導電性ローラのローラ本体を形成することができる。
【0042】
(硫黄)
硫黄としては、ゴムの架橋剤として機能し得る種々の硫黄が挙げられる。
かかる硫黄としては、たとえば、ゴム用硫黄の一般的な形態である粉末硫黄、当該粉末硫黄を分散性向上、飛散防止などを目的としてオイルで処理したオイル処理硫黄、分散性向上などを目的として有機分散剤や無機分散剤で処理した分散性硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄等の1種または2種以上を用いることができる。
【0043】
とくに、ゴムに対する分散性を向上して、ゴム組成物、並びに導電性ローラの加工性、生産性等を向上することを考慮すると、硫黄としてはオイル処理硫黄が好ましい。
またオイル処理硫黄としては、オイルの含有量に応じて種々のグレードのものが知られているが、このいずれも使用可能である。
オイルの含有量の異なるオイル処理硫黄であっても、有効成分としての硫黄の量に換算して上記の範囲となるように、当該オイル処理硫黄の全体での量を規定することで、本発明の効果を奏することができる。
【0044】
(4,4′-ジチオジモルホリン)
4,4′-ジチオジモルホリンの具体例としては、たとえば、大内新興化学(株)製のバルノック(登録商標)R等が挙げられる。
〈架橋促進剤〉
架橋成分としては、上記2種の架橋剤とともに、当該2種の架橋剤によるゴムの架橋反応を調整する機能を有する、いわゆる架橋促進剤を併用してもよい。
架橋促進剤としては、たとえば、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
このうち、チアゾール系促進剤とチウラム系促進剤とを併用するのが好ましい。
【0045】
(チアゾール系促進剤)
チアゾール系促進剤としては、たとえば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(4′-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の1種または2種以上が挙げられ、とくにジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0046】
(チウラム系促進剤)
チウラム系促進剤としては、たとえば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の1種または2種以上が挙げられ、とくにテトラメチルチウラムモノスルフィドが好ましい。
【0047】
〈架橋促進剤の割合〉
先述した2種の架橋剤によるゴムの架橋反応を調整する機能を十分に発現させることを考慮すると、チウラム系促進剤の割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
またチアゾール系促進剤の割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
【0048】
〔発泡成分〕
ローラ本体は、非多孔質構造、多孔質構造のいずれの構造としてもよく、ローラ本体を多孔質構造とするためには、ゴム組成物に発泡成分を配合して、ゴムを、架橋と前後して発泡させるのが好ましい。
発泡成分としては、加熱によって分解してガスを発生する種々の発泡剤を用いることができる。
また、発泡剤の分解温度を引き下げて、その分解を促進する働きをする発泡助剤を組み合わせてもよい。
【0049】
〈発泡剤〉
発泡剤としては、たとえば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4′-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等の1種または2種以上が挙げられる。
とくに、発泡剤としてはADCAが好ましい。
ADCAの割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
【0050】
〈発泡助剤〉
発泡助剤としては、上述したように、組み合わせる発泡剤の分解温度を引き下げて、その分解を促進する働きをする種々の発泡助剤を用いることができ、たとえばADCAと組み合わせる発泡助剤としては、尿素(H2NCONH2)系発泡助剤が挙げられる。
発泡助剤の割合は、組み合わせる発泡剤の種類等に応じて任意に設定できるが、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
【0051】
〔その他〕
ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、たとえば、受酸剤や無機系の充填剤等が挙げられる。
このうち受酸剤は、架橋時にエピクロルヒドリンゴムやCRから発生した塩素系ガス中の塩素を捕捉して、塩素系ガスが遊離状態でローラ本体内に残留したり、それによって架橋阻害や感光体の汚染等が生じたりするのを抑制するために機能する。
受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、中でも分散性に優れたハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、とくにハイドロタルサイト類が好ましい。
【0052】
また、ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用すると、より高い受酸効果を得ることができ、感光体等の汚染をより一層確実に防止することができる。
受酸剤の割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
【0053】
無機系の充填剤は、ローラ本体の機械的強度等を向上したり、ローラ本体の特性に影響を生じることなくゴム配合の配合単価を引き下げたりするために機能する。
無機系の充填剤としては、たとえば、酸化亜鉛、シリカ、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、クレー、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0054】
とくに、ローラ本体の特性に影響を生じることなくゴム配合の配合単価を引き下げるためには、タルク、炭酸カルシウム、クレー、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上を用いるのが好ましい。
無機系の充填剤の割合は、ゴムの総量100質量部あたり15質量部以上であるのが好ましく、25質量部以下であるのが好ましい。
【0055】
また、充填剤として導電性カーボンブラックを用いることで、ローラ本体に電子導電性を付与することもできる。
導電性カーボンブラックとしてはHAFが好ましい。
HAFは、ゴム組成物中に均一に分散できるため、ローラ本体にできるだけ均一な電子導電性を付与することができる。
【0056】
導電性カーボンブラックの割合は、ゴムの総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、15質量部以下であるのが好ましい。
さらに、添加剤としては架橋助剤、劣化防止剤、スコーチ防止剤、可塑剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等の各種添加剤を、任意の割合で配合してもよい。
【0057】
以上で説明した各成分を含む本発明のゴム組成物は、従来同様に調製することができる。
まず、ゴムを所定の割合で配合して素練りし、次いで発泡成分、架橋成分以外の各種添加剤を加えて混練した後、最後に発泡成分、架橋成分を加えて混練することでゴム組成物が得られる。
混錬には、たとえばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
【0058】
《導電性ローラ》
図1は、本発明の導電性ローラ1の、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の導電性ローラ1は、上記各成分を含むゴム組成物の架橋物でかつ発泡体からなる、多孔質でかつ単層の筒状に形成されたローラ本体2を備えるとともに、ローラ本体2の中心の通孔3にシャフト4が挿通されて固定されたものである。
【0059】
シャフト4は、良導電性の材料、たとえば、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属などによって一体に形成されている。
シャフト4は、たとえば、導電性を有する接着剤を介してローラ本体2と電気的に接合され、かつ機械的に固定されるか、あるいは通孔3の内径よりも外径の大きいものを通孔3に圧入することで、ローラ本体2と電気的に接合され、かつ機械的に固定される。
また、この両法を併用して、シャフト4を、ローラ本体2と電気的に接合し、かつ機械的に固定してもよい。
【0060】
〈ローラ抵抗値の測定〉
図2は、導電性ローラ1のローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
図1、
図2を参照して、この測定方法では、一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム6を用意し、用意したアルミニウムドラム6の外周面7に、上方から、ローラ抵抗値を測定する導電性ローラ1の、ローラ本体2の外周面5を接触させる。
【0061】
また、導電性ローラ1のシャフト4とアルミニウムドラム6との間に直流電源8、および抵抗9を直列に接続して計測回路10を構成する。
直流電源8は、(-)側をシャフト4、(+)側を抵抗9と接続する。
抵抗9の抵抗値rは100Ωとする。
次いで、シャフト4の両端部にそれぞれ4.9N(≒500gf)の荷重Fをかけてローラ本体2をアルミニウムドラム6に圧接させた状態で、アルミニウムドラム6を30rpmで回転させる。
【0062】
そして回転を続けながら、導電性ローラ1とアルミニウムドラム6との間に、直流電源8から直流1000Vの印加電圧Eを印加して30秒後に、抵抗9にかかる検出電圧Vを計測する。
計測した検出電圧Vと印加電圧E(=1000V)とから、導電性ローラ1のローラ抵抗値Rは、基本的に式(i′):
R=r×E/V-r (i′)
によって求められる。
ただし式(i′)中の-rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(i):
R=r×E/V (i)
によって求めた値でもって、導電性ローラ1のローラ抵抗値とする。
測定は、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下で実施することとする。
【0063】
〈導電性ローラ1の製造〉
本発明の導電性ローラ1を製造するには、まず前述した各成分からなるゴム組成物を、押出成形機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして、加硫缶内で加圧水蒸気によって加圧、加熱して発泡、および架橋させる。
【0064】
次いで発泡、架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させたのち冷却し、さらに所定の外径となるように研磨してローラ本体2を形成する。
シャフト4は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で通孔3に挿通して固定できる。
ただし、カット後、まず通孔3にシャフト4を挿通した状態で二次架橋および研磨をするのが好ましい。
【0065】
これにより、二次架橋時の膨張収縮による筒状体の反りや変形等を抑制できる。
また、シャフト4を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面5のフレを抑制できる。
シャフト4は、先に説明したように、導電性を有する接着剤、特に導電性の熱硬化性接着剤を介して二次架橋前の筒状体の通孔3に挿通したのち二次架橋させるか、あるいは通孔3の内径より外径の大きいものを通孔3に圧入すればよい。
【0066】
前者の場合は、オーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト4がローラ本体2に電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
また後者の場合は、圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
また、前述したように、この両法を併用して、シャフト4を、ローラ本体2と電気的に接合し、かつ機械的に固定してもよい。
【0067】
《画像形成装置》
本発明の画像形成装置は、上記本発明の導電性ローラを、たとえば転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラ、クリーニングローラ等として組み込んだことを特徴とするものである。
かかる本発明の画像形成装置としては、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下に、本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(ゴム組成物)
ゴムとしてはNBR〔JSR(株)製のJSR(登録商標)N250SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量20%、非油展〕40質量部、SBR〔住友化学(株)製の住友SBR1502、スチレン含量23.5%、非油展〕30質量部、EPDM〔住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)EPDM 505A、エチレン含量:50%、ジエン含量:9.5%、非油展〕10質量部、およびGECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN(登録商標)T3108〕20質量部を配合した。
【0069】
そして各ゴムの総量100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、まず下記表1に示す各成分を加えて混練した。
【0070】
【0071】
表1中の各成分は下記のとおり。なお表1中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
充填剤I:カーボンブラックHAF〔導電性カーボンブラック、東海カーボン(株)製のシースト(登録商標)3〕
充填剤II:重質炭酸カルシウム〔白石カルシウム(株)製のホワイトン(登録商標)BF-100〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT-4A(登録商標)-2〕
次いで、表2に示す発泡成分および架橋成分を加えてさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0072】
【0073】
表2中の各成分は下記のとおり。なお表2中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
オイル処理硫黄:オイル含有量5質量%、有効成分としての硫黄の含有量95質量%
4,4′-ジチオジモルホリン:大内新興化学(株)製のバルノックR
架橋促進剤DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド〔Shandong Shanxian Chemical Co. Ltd.製の商品名SUNSINE MBTS〕
架橋促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)TS〕
発泡剤:ADCA〔永和化成工業(株)製の商品名ビニホールAC#3〕
発泡助剤:尿素系発泡助剤〔永和化成工業(株)製の商品名セルペースト101〕
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は0.95質量部であった。
【0074】
(導電性ローラ)
調製したゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ10mm、内径φ3.0mmの筒状に押出成形した後、所定の長さにカットして外径φ2.2mmの架橋用の仮のシャフトに装着した。
次いで加硫缶内で、加圧水蒸気によって120℃×10分間、次いで160℃×20分間の加圧、加熱をして、筒状体を、発泡剤の分解によって発生したガスによって発泡させるとともにゴムを架橋させた。
【0075】
次いでこの筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ5mmのシャフト4に装着し直して、オーブン中で160℃×60分間加熱して二次架橋させるとともに、熱硬化性接着剤を硬化させてシャフト4と電気的に接合し、かつ機械的に固定した。
そして筒状体の両端を整形したのち、その外周面5を、円筒研削盤を用いてトラバース研削することで外径をφ12.5mm(公差±0.1mm)に仕上げてローラ本体2を形成し、導電性ローラ1を製造した。
【0076】
〈実施例2〉
4,4′-ジチオジモルホリンの量を0.8質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は0.95質量部であった。
【0077】
〈実施例3〉
オイル処理硫黄の量を1.2質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は1.14質量部であった。
【0078】
〈実施例4〉
オイル処理硫黄の量を1.2質量部、4,4′-ジチオジモルホリンの量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は1.14質量部であった。
【0079】
〈実施例5〉
ゴムとしてのNBRの量を30質量部、SBRの量を40質量部、オイル処理硫黄の量を1.2質量部、4,4′-ジチオジモルホリンの量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は1.14質量部であった。
【0080】
〈実施例6〉
ゴムとしてのNBRの量を30質量部、EPDMの量を20質量部、オイル処理硫黄の量を1.2質量部、4,4′-ジチオジモルホリンの量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は1.14質量部であった。
【0081】
〈比較例1〉
オイル処理硫黄の量を0.5質量部、4,4′-ジチオジモルホリンの量を3質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は0.48質量部であった。
【0082】
〈比較例2〉
4,4′-ジチオジモルホリンの量を0.3質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は0.95質量部であった。
【0083】
〈比較例3〉
オイル処理硫黄の量を1.3質量部、4,4′-ジチオジモルホリンの量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は1.24質量部であった。
【0084】
〈比較例4〉
4,4′-ジチオジモルホリンの量を2質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は0.95質量部であった。
【0085】
〈比較例5〉
オイル処理硫黄の量を0.8質量部、4,4′-ジチオジモルホリンの量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は0.76質量部であった。
【0086】
〈比較例6〉
オイル処理硫黄の量を0.32質量部、4,4′-ジチオジモルホリンの量を0.4質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は0.3質量部であった。
【0087】
〈比較例7〉
オイル処理硫黄の量を2.1質量部、4,4′-ジチオジモルホリンの量を0.3質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラ1を製造した。
ゴムの総量100質量部あたりの、有効成分としての硫黄の量は2質量部であった。
【0088】
〈ローラ抵抗値の放置変動評価〉
実施例、比較例で製造した導電性ローラ1の、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下でのローラ抵抗値R(Ω)を、先に説明した測定方法に則って測定して、ローラ抵抗値の初期値R0とした。
次いで導電性ローラ1を、温度60℃、相対湿度85%の高温高湿環境下で3日間に亘って静置したのち再度、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下でローラ抵抗値を測定して、放置後のローラ抵抗値R1とした。
【0089】
そして、ローラ抵抗値の初期値の常用対数値logR0と、放置後のローラ抵抗値の常用対数値logR1との差を、ローラ抵抗値の放置変動値ΔlogRとして求めて、下記の基準で、放置変動の大小を評価した。
○:ΔlogRは0.1以下であった。
×:ΔlogRは0.1を超えていた。
以上の結果を表3、表4に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
表3、表4の実施例1~6、比較例1~7の結果より、架橋剤として、ゴムの総量100質量部あたり、0.8~1.2質量部の硫黄と、0.5~1質量部の4,4′-ジチオジモルホリンとを併用することにより、ローラ本体を形成するゴム組成物の材料選択の自由度を低下させることなしに、当該ローラ本体を含む導電性ローラの、ローラ抵抗値の放置変動を小さくできることが判った。
【符号の説明】
【0093】
1 導電性ローラ
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
5 外周面
6 アルミニウムドラム
7 外周面
8 直流電源
9 抵抗
10 計測回路
F 荷重
V 検出電圧