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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両用冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20231214BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20231214BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20231214BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20231214BHJP
【FI】
F01P7/16 504A
F01P3/18 G
F01P3/20 L
F16H57/04 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020054598
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156181
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】引谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】城 侑生
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-340161(JP,A)
【文献】特開2008-274900(JP,A)
【文献】特開2017-155672(JP,A)
【文献】特開2018-087577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/18
F01P 3/20
F01P 7/16
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGR装置、過給器、および、吸気ガスを冷却するためのインタークーラを有するエンジンと、
上記エンジンのインタークーラに流通し上記吸気ガスを冷却する冷却水が流れる冷却水流路と、
変速機内を潤滑するオイルが流れるオイル流路と、
上記冷却水流路の冷却水と上記オイル流路のオイルとの間で熱交換を行う熱交換器と、
上記オイル流路に設けられ、そのオイル流路を流れるオイルの流量を調整可能なオイル流量調整装置と、を備え
さらに、上記オイル流量調整装置を制御する制御装置を備え、
上記制御装置は、上記オイル流路のオイルの温度が上記冷却水流路の冷却水の温度よりも高い場合、上記オイル流路のオイルの温度が上記冷却水流路の冷却水の温度よりも低い場合よりも、上記熱交換器を流通するオイルの流量が少なくなるように上記オイル流量調整装置を制御する、ことを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項2】
上記制御装置は、上記オイル流路のオイルの温度が上記冷却水流路の冷却水の温度よりも低い場合、上記オイル流路のオイルの温度が上記冷却水流路の冷却水の温度よりも高い場合よりも、上記熱交換器を流通するオイルの流量が多くなるように上記オイル流量調整装置を制御する、請求項に記載の車両用冷却装置。
【請求項3】
上記冷却水流路において、上記インタークーラの上流側に上記冷却水流路の冷却水の流量を調整可能な冷却水流量調整装置が設けられている、請求項1または請求項2に記載の車両用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却装置に係わり、特に、EGR装置、過給器およびインタークーラを有するエンジンを備える車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過給器(ターボチャージャーや機械的過給器など)およびインタークーラを備えるエンジンでは、エンジンの出力を向上させるために、吸気(新気)およびEGRガスを含む吸気ガスを冷却させて、エンジンへの充填効率を高めるようにしている。
【0003】
ここで、車両の動力源としてのエンジンを冷却するための冷却水が流れる流路と、変速機内を潤滑するためのオイルが流れる流路と、を備え、このうち、エンジンを冷却する冷却水と、変速機内を潤滑するオイルとで熱交換する回路が知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-001301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、過給器およびインタークーラ付きのエンジンでは、インタークーラにより吸気ガスを冷却する際、EGRガスを含む吸気ガスを過度に冷却し、吸気ガスの温度を下げすぎると、EGRガスに含まれる水分の凝縮水が発生してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、過給器およびインタークーラ付きのエンジンにおいて、インタークーラ内を流通する、EGRガスを含む吸気ガスの過度の冷却を抑制し、凝縮水の発生を抑制することができる車両用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、EGR装置、過給器、および、吸気ガスを冷却するためのインタークーラを有するエンジンと、エンジンのインタークーラに流通し吸気ガスを冷却する冷却水が流れる冷却水流路と、変速機内を潤滑するオイルが流れるオイル流路と、冷却水流路の冷却水とオイル流路のオイルとの間で熱交換を行う熱交換器と、オイル流路に設けられ、そのオイル流路を流れるオイルの流量を調整可能なオイル流量調整装置と、を備え、さらに、オイル流量調整装置を制御する制御装置を備え、制御装置は、オイル流路のオイルの温度が冷却水流路の冷却水の温度よりも高い場合、オイル流路のオイルの温度が冷却水流路の冷却水の温度よりも低い場合よりも、熱交換器を流通するオイルの流量が少なくなるようにオイル流量調整装置を制御する、ことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、オイル流路には、オイル流路を流れるオイルの流量を調整可能なオイル流量調整装置が設けられているので、オイル流量調整装置により、冷却水温度およびオイル温度に応じて、オイルの流量を調整することにより、熱交換器における熱交換率を調整することができ、これにより、インタークーラを流通し、冷却水により冷却される、EGRガスを含む吸気ガスの過度の冷却を抑制し、凝縮水の発生を抑制することができる。
また、このように構成された本発明によれば、オイル流路のオイルの温度が冷却水流路の冷却水の温度よりも高い場合、オイル流路のオイルの温度が冷却水流路の冷却水の温度よりも低い場合よりも、熱交換器を流通するオイルの流量が少なくなるように、オイル流路のオイル流量調整装置を制御するので、相対的に冷却水温度が低くオイル温度が高い場合、熱交換器において、冷却水のオイルからの受熱量を少なくして、冷却水が過度に冷却されないようにすることができる。したがって、インタークーラを流通し、冷却水により冷却される、EGRガスを含む吸気ガスの過度の冷却を抑制し、凝縮水の発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、制御装置は、オイル流路のオイルの温度が冷却水流路の冷却水の温度よりも低い場合、オイル流路のオイルの温度が冷却水流路の冷却水の温度よりも高い場合よりも、熱交換器を流通するオイルの流量が多くなるようにオイル流量調整装置を制御する。
このように構成された本発明によれば、オイル流路のオイルの温度が冷却水流路の冷却水の温度よりも低い場合、オイル流路のオイルの温度が冷却水流路の冷却水の温度よりも高い場合よりも、熱交換器を流通するオイルの流量が多くなるように、オイル流路のオイル流量調整装置を制御するので、相対的に冷却水温度が高くオイル温度が低い場合、熱交換器において、オイルの冷却水からの受熱量を増大させることで、冷却水を冷却することができ、これにより、インタークーラを流通し、冷却水により冷却される、EGRガスを含む吸気ガスを効果的に冷却し、吸気ガスのエンジンへの充填効率を高めることができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、インタークーラの上流側に冷却水流路の冷却水の流量を調整可能な冷却水流量調整装置が設けられている。
このように構成された本発明によれば、極冷間時(外気温が非常に低い場合など)において、インタークーラを流通する冷却水の流量を絞ることで、インタークーラの過冷却を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用冷却装置によれば、過給器およびインタークーラ付きのエンジンにおいて、インタークーラ内を流通する、EGRガスを含む吸気ガスの過度の冷却を抑制し、凝縮水の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態による車両用冷却装置が適用される車両の動力源および動力伝達装置の概略構成を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の冷却水およびオイルの熱交換用回路の概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の制御装置の制御ブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の制御装置で実行される制御処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の制御装置により制御されるオイル流量の時間変化と、冷却水温度およびオイル温度の時間変化との関係を示すタイムチャートである。
図6】本発明の第2実施形態による車両用冷却装置が適用される車両の動力源および動力伝達装置の概略構成を示す平面図である。
図7】本発明の第2実施形態による車両用冷却装置の冷却水およびオイルの熱交換用回路の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両用冷却装置について説明する。
【0015】
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置が適用される車両の動力伝達系の概略構成を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置が適用される車両の動力源および動力伝達装置の概略構成を示す平面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置1が適用される車両の動力伝達系2は、動力源であるエンジン4およびモータ6と、動力伝達装置である変速機(トランスミッション)8とを備える。本実施形態において、エンジン4は6気筒の縦置き多気筒エンジンであるが、4気筒など他の気筒数のエンジンであってもよい。
【0017】
本実施形態による車両は、エンジン4と変速機8との間にモータ6が設けられた後輪駆動車(FR)であり、変速機8は、モータ6の車両後方側に設けられた縦置きトランスミッションである。変速機8には、エンジン4および/またはモータ6の動力が伝達され、プロペラシャフトやデファレンシャル装置(図示せず)などを介して後輪(図示せず)に動力を伝達する。変速機8は、自動変速機であるが、手動変速機でもよい。なお、本発明の実施形態による車両用冷却装置1は、変形例として、図示しない横置きのエンジンや横置きのトランスミッションの動力伝達系を有する前輪駆動車にも適用可能である。
【0018】
次に、図1に示すように、本実施形態による動力伝達系2のエンジン4は、過給器(ターボチャージャー)10、吸気(新気)およびEGRガスを含む吸気ガスを冷却するためのインタークーラ12、および、排気ガスを吸気側に循環させるEGR装置14を備える。本実施形態において、過給器10は、排気圧を利用したターボチャージャーであるが、電動ターボチャージャーや機械式過給器であってもよい。
【0019】
また、本実施形態による動力伝達系2のモータ6には、モータ6を作動させるための高電圧部品であるDCDCコンバータ(電圧変換器/変圧器)16およびインバータ18が接続され、モータ6および高電圧部品16、18でモータ駆動装置が構成される。
【0020】
エンジン4およびモータ6の車両前方側には、エンジン4を流通し、エンジン4を冷却する冷却水を走行風で冷却する高温冷却水用空冷ラジエータ(HTラジエータ)(以下、第1ラジエータという)20と、この第1ラジエータ20の車両前方側に設けられ、DCDCコンバータ16、インバータ18およびモータ6と、インタークーラ12とをそれぞれ流通し、それらを冷却する冷却水を走行風で冷却する低温冷却水用空冷ラジエータ(LTラジエータ)(以下、第2ラジエータという)22と、が設けられている。各ラジエータ20、22は、走行風と冷却水との間で熱交換する熱交換器である。
【0021】
また、図1に示すように、エンジン4には、後述するエンジン冷却水と変速機オイルとの間で熱交換する第1熱交換器24(Automatic Transmission Fluid/Warmer-Cooler)が取り付けられ、モータ6には、後述するモータ駆動装置冷却水と変速機オイルとの間で熱交換する第2熱交換器(Automatic Transmission Fluid/Warmer-Cooler)29が、それぞれ取り付けられている。
【0022】
次に、図2および図3により、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の冷却水流路、オイル流路および熱交換器を含む、冷却水とオイルとの熱交換用回路の概略構成を説明する。図2は、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の冷却水およびオイルの熱交換用回路の概略構成を示す模式図であり、図3は、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置のオイル流量調整装置によるオイル流量の調整の概念の一例を示す線図である。
まず、図2に示すように、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置1は、エンジン用冷却水流路(以下、第1冷却水流路という)30、モータ駆動装置用冷却水流路(以下、第2冷却水流路という)32、および、変速機用オイル流路(以下、オイル流路という)34の主に3つの流路/回路を備える。
【0023】
第1冷却水流路30は、エンジン(Engine)4と、エンジン4内のエンジンオイルを冷却するオイルクーラ(OC)28とをそれぞれ流通し、それらを冷却する冷却水が流れる流路である。
第2冷却水流路32は、DCDCコンバータ(DCDC)16、インバータ(INV)18およびモータ(Motor)6と、インタークーラ(I/C)12とをそれぞれ流通し、それらを冷却する冷却水が流れる流路である。
オイル流路34は、変速機(TM)8内を潤滑する変速機用オイルが流れる流路である。
【0024】
第1冷却水流路30についてより詳細に説明する。
第1冷却水流路30には、第1冷却水流路30内で冷却水を循環させるためのウォータポンプ40が設けられている。
第1冷却水流路30は、分岐した2つの流路を有する。第1冷却水流路30は、まず、ウォータポンプ40、エンジン4、第1ラジエータ20、冷却水の温度調節器としてのサーモスタット(T/S)42の順に冷却水を流通させる第1流路30aを有する。サーモスタット42は、エンジン4を流通する冷却水がラジエータ20で冷却しなければならないほど高温の場合に開き、冷却水がラジエータ20を流通するようにするバルブである。
【0025】
第1冷却水流路30は、さらに、ウォータポンプ40、第1熱交換器24、オイルクーラ28、エンジン4の順に冷却水を流通させる第2流路30bを有する。第1熱交換器24は、この第2流路30bを流れる冷却水と、オイル流路34を流れるオイル(変速機オイル)との間で熱交換するものである。
【0026】
次に、第2冷却水流路32についてより詳細に説明する。
第2冷却水流路32には、第2冷却水流路32内で冷却水を循環させるためのウォータポンプ46が設けられている。また、第2冷却水流路30の第2ラジエータ22の下流側かつウォータポンプ46の上流側には、第2冷却水流路30を流れる冷却水の温度(水温)を検出する冷却水温度センサ47が設けられている。この冷却水温度センサ47は、冷却水自体の温度を検出可能であれば、第2冷却水流路32内のどの位置に設けられていてもよい。
【0027】
第2冷却水流路32は、分岐した2つの流路を有する。第2冷却水流路32は、まず、ウォータポンプ46、DCDCコンバータ16、インバータ18、モータ6の順に冷却水を流通させる第1流路32aを有する。
【0028】
第2冷却水流路32は、さらに、第1流路32aから分岐し、冷却水の流量を調整する流量調整弁/クーラントソレノイドバルブ(Coolant Solenoid Valve)48、インタークーラ12、第2熱交換器29の順に冷却水を流通させ、モータ6の下流側で第1流路32aに合流する第2流路32bを有する。第2熱交換器29は、この第2流路32bを流れる冷却水と、オイル流路34の第2流路34bを流れるオイルとの間で熱交換するものである。
【0029】
次に、オイル流路34についてより詳細に説明する。
変速機8には、変速機8内およびオイル流路34内でオイルを循環させるためのオイルポンプ(図示せず)が設けられている。図示しないオイルポンプは、変速機8内の動力伝達用部品(ギヤやクラッチなど)に潤滑油/作動油としての変速機オイルを供給する公知のオイルポンプである。
【0030】
オイル流路34は、分岐した2つの流路を有する。オイル流路34は、まず、変速機8と第1熱交換器24との間で循環する第1流路34aを有する。この第1流路34aは、第2熱交換器29をバイパスする流路でもある。
オイル流路34は、さらに、第1流路34aから分岐部34cで分岐し、変速機8および第1熱交換器24を流通したオイルを、第2熱交換器29へと循環させ、この第2熱交換器29から変速機8へと循環させる第2流路34bを有する。
【0031】
また、オイル流路34には、オイルの温度を検出するオイル温度センサ(SN)50が設けられている。このオイル温度センサ50は、オイル自体の温度を検出可能であれば、オイル流路34内のどの位置に設けられていてもよい。
【0032】
さらに、オイル流路34の第2流路34bには、第2熱交換器29へと流れるオイルの流量を調整するソレノイドバルブ装置(SV)52が設けられている。このソレノイドバルブ装置52は、電磁式ソレノイドバルブであり、On-Off制御によりDuty比を変えてバルブの開度を調整可能なものである。
本実施形態のソレノイドバルブ装置52は、そのバルブ開度を調整して、第1熱交換器24を流通するオイル流量(第1オイル流量)および第2熱交換器29を流通するオイル流量(第2オイル流量)を調整可能に構成されている。
【0033】
次に、図3乃至図5により、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置におけるオイル流量調整装置52の制御内容を説明する。図3は、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の制御装置の制御ブロック図であり、図4は、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の制御装置で実行される制御処理を示すフローチャートであり、図5は、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置の制御装置により制御されるオイル流量の時間変化と、冷却水温度およびオイル温度の時間変化との関係を示すタイムチャートである。
【0034】
まず、図3により、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置1が備える制御システムの制御ブロックを説明する。
図3に示すように、本実施形態による車両用冷却装置1の制御システム60は、流量調整弁48などを制御するECU(制御装置)62を有する。
本実施形態では、ECU62には、上述したように第2冷却水流路30の第2ラジエータ22の下流側に設けられた冷却水温度センサ47、SW5からの冷却水温度に関する出力信号、および、上述したようにオイル流路34において変速機8の下流側に設けられたオイル温度センサ50、SW10からのオイル流路34のオイルの温度に関する出力信号がそれぞれ入力される。ECU62は、これらの冷却水温度センサ47、SW5およびオイル温度センサ50、SW10からの出力信号に基づいて、後述するように、ソレノイドバルブ(オイル流量調整弁)52の開度を制御し、オイル流路34の第2流路34bのオイル流量を制御することにより、第2熱交換器29を流通するオイルの流量を制御するようになっている。
【0035】
なお、ECU62には、エンジン始動の指令を意味するイグニッション出力信号(SW1)、エンジン4の吸気通路に設けられたエアフローセンサSW2からの吸気量に関する出力信号、吸気通路に設けられた吸気温度センサSW3からの吸気温度に関する出力信号、吸気通路に設けられた吸気圧センサSW4からの吸気圧に関する出力信号、エンジン4のクランク軸(4a)に設けられたクランク角センサSW6からのクランク角に関する出力信号、アクセル開度センサSW7からのアクセルペダルの開度に関する出力信号、吸気カムシャフト(図示せず)に設けられた吸気カム角センサSW8からの吸気側のカム角に関する出力信号、排気カムシャフト(図示せず)に設けられた排気カム角センサSW9からの排気側のカム角に関する出力信号がそれぞれ入力される。ECU62は、イグニッション信号SW1、および、各種センサSW2~SW9からの出力信号に基づいて、エンジン4のインジェクタ70を制御することにより燃料噴射タイミングを制御し、点火プラグ72および副室点火プラグ(PCP)74を制御することにより点火タイミングを制御し、スロットルバルブ80、吸気側の可変バルブリフト機構(吸気電動S-VT)16および/またはインジェクタ70を制御することにより空燃比を制御し、排気側の可変バルブリフト機構(排気電動S-VT)78およびEGRバルブ82を制御することにより、エンジン4の吸気側に環流されるEGRガスの流量を制御するようになっている。
【0036】
次に、図4および図5により、本発明の第1実施形態による車両用冷却装置1の制御装置(ECU)で実行される制御処理の内容を説明する。
図4に示すように、ECU62は、まず、S1において、各種センサの出力信号(センサ値)を読み込む。本実施形態では、冷却水温度センサ47、SW5からの第2冷却水流路32の冷却水温度に関する出力信号、および、オイル温度センサ50、SW10からのオイル流路34のオイル温度に関する出力信号が入力される。
【0037】
次に、S2に進み、S1で読み込んだオイル流路34のオイル温度が、第2冷却水流路32の冷却水温度よりも低いか否かを判定する。S2において、オイル温度が冷却水温度よりも低いと判定された場合(S2でYES)は、S3に進み、オイル流路34の第2流路34bのオイル流量が増大する(多くなる)よう、ソレノイドバルブ(オイル流量調整弁)52の開度を制御する。すなわち、この場合、ソレノイドバルブ52のOn-Off制御によりDuty比を変えてバルブの開度が大となるように調整する。本実施形態では、このような制御により、第2熱交換器29において、オイルの冷却水からの受熱量を増大させることで冷却水を冷却して、インタークーラ12を流通し、冷却水により冷却される、EGRガスを含む吸気ガスを冷却し、吸気ガスのエンジン4への充填効率を高めるようにしている。
【0038】
一方、S2において、オイル温度が冷却水温度よりも高いと判定された場合(S2でNO)は、S4に進み、第2流路34bのオイル流量が絞られる(少なくなる)よう、ソレノイドバルブ52の開度を制御する。すなわち、この場合、ソレノイドバルブ52のOn-Off制御によりDuty比を変えてバルブの開度が小となるように調整する。本実施形態では、このような制御により、第2熱交換器29において、冷却水のオイルからの受熱量を少なくして、冷却水が過度に冷却されないようにするようにしている。これにより、インタークーラ12を流通し、冷却水により冷却される、EGRガスを含む吸気ガスの過度の冷却を抑制し、凝縮水の発生を抑制するようにしている。
【0039】
図5にタイムチャートを示すように、オイル温度(油温)が冷却水温度(水温)より低いような場合(時間A以降)は、第2流路32bのオイル流量を増大させることにより、冷却水のオイルからの受熱量が多くするようにしている。一方、オイル温度(油温)が冷却水温度(水温)より低い場合(時間A以前)は、第2流路32bのオイル流量を絞ることにより、冷却水のオイルからの受熱量が少なくなるようにしている。
【0040】
次に、図6および図7により、本発明の第2実施形態による車両用冷却装置について説明する。図6は、本発明の第2実施形態による車両用冷却装置が適用される車両の動力源および動力伝達装置の概略構成を示す平面図であり、図7は、本発明の第2実施形態による車両用冷却装置の冷却水およびオイルの熱交換用回路の概略構成を示す模式図である。
以下では、主に第1実施形態と異なる構成を説明する。第2実施形態の各構成について、配置関係の違いを除き、同一構成については同一の符号を付す。
【0041】
まず、図6に示すように、本発明の第2実施形態による車両用冷却装置100が適用される車両の動力伝達系102は、上述した第1実施形態と同様に、動力源であるエンジン4およびモータ6と、変速機8と、過給器10と、インタークーラ12と、EGR装置14と、DCDCコンバータ16と、インバータ18と、高温冷却水用空冷ラジエータ(第1ラジエータ)20と、低温冷却水用空冷ラジエータ(第2ラジエータ)22と、第1熱交換器24と、第2熱交換器29とを備える。
【0042】
この第2実施形態では、図6に示すように、モータ6は、エンジン4と変速機8との間に配置されておらず、車幅方向にエンジン4と並列して配置されている。この第2実施形態では、モータの出力軸6aに設けられたモータプーリ6bと、エンジン4のクランクシャフト4aに設けられたクランクプーリ4bとを接続する動力伝達ベルト5が設けられ、モータ6の駆動力は、このベルト5を介して、エンジン4のクランクシャフト4aに伝達されるようになっている。変速機8には、エンジン4および/またはモータ6の動力が変速機8に伝達される。
【0043】
次に、図7に示すように、本発明の第2実施形態による車両用冷却装置100は、上述した第1実施形態と同様に、エンジン4と、オイルクーラ28とをそれぞれ流通し、それらを冷却する冷却水が流れるエンジン用冷却水流路(第1冷却水流路)30と、DCDCコンバータ16、インバータ18およびモータ6と、インタークーラ12とをそれぞれ流通し、それらを冷却する冷却水が流れるモータ駆動装置用冷却水流路(第2冷却水流路)32と、変速機8内を潤滑する変速機用オイルが流れる変速機用オイル流路(オイル流路)34の主に3つの流路/回路を備える。
【0044】
第1冷却水流路30は、上述した第1実施形態と同様に構成されている。すなわち、第1冷却水流路30には、ウォータポンプ40が設けられ、分岐した2つの流路を有する。第1冷却水流路30の第1流路30aは、ウォータポンプ40、エンジン4、第1ラジエータ20、サーモスタット42の順に冷却水を流通させる流路であり、第1冷却水流路30の第2流路30bは、ウォータポンプ40、第1熱交換器24、オイルクーラ28、エンジン4の順に冷却水を流通させる流路である。
【0045】
第2冷却水流路32は、上述した第1実施形態と同様に構成されている。すなわち、第2冷却水流路32には、ウォータポンプ46が設けられ、分岐した2つの流路を有する。第2冷却水流路32の第1流路32aは、ウォータポンプ46、DCDCコンバータ16、インバータ18、モータ6の順に冷却水を流通させる流路であり、第2流路32bは、第1流路32aから分岐し、冷却水の流量を調整する流量調整弁48、インタークーラ12、第2熱交換器29の順に冷却水を流通させ、モータ6の下流側で第1流路32aに合流する流路である。
【0046】
第2実施形態によるオイル流路34は、上述した第1実施形態と同様に、変速機8に設けられた図示しないオイルポンプにより、変速機8と第1熱交換器24との間で循環する第1流路34aと、この第1流路34aから分岐し、変速機8および第1熱交換器24を流通したオイルを、第2熱交換器29へと循環させる第2流路34bと、を有する。
【0047】
第2実施形態によるオイル流路34には、第1実施形態のソレノイドバルブ装置52に代えて、2WAYバルブ(2Way-V)54が設けられている。
より詳細には、オイル流路34には、さらに、第2流路34bが第1流路34aから分岐する分岐部34cに、第1流路34aを流れるオイルと第2流路34bを流れるオイルとを完全に分けるための2WAYバルブ(2Way-V)54が設けられている。この第2実施形態の2WAYバルブ54は、いわゆるサーモスタットであり、オイル流路34のオイル温度に応じて開閉して、第1熱交換器24を流通するオイル流量(第1オイル流量)および第2熱交換器29を流通するオイル流量(第2オイル流量)を調整可能に構成されている。
【0048】
たとえば、オイル温度が所定温度(たとえば80℃)以下のときは、第1熱交換器24にのみオイルが流通するように2WAYバルブ54が閉じられ、一方、オイル温度が、その所定温度を超えるときは、第1熱交換器24および第2熱交換器29の両方にオイルが流通するように2WAYバルブ54が開かれる。所定温度は、オイルを早期に昇温させて変速機8の駆動抵抗を低減させると共に過度なオイル温度の上昇を抑制可能な温度に設定される。
【0049】
なお、この第2実施形態の車両の動力伝達系(102)を、上述した第1実施形態の車両の動力伝達系2とし、この動力伝達系2において、上述したように2Wayバルブ54を含む第2の実施形態の回路としてもよい。同様に、上述した第1実施形態の車両の動力伝達系(2)を、第2実施形態の車両の動力伝達系102とし、この動力伝達系102において、上述したようにソレノイドバルブ52を含む第1実施形態の回路を構成してもよい。
【0050】
次に、本発明の実施形態による車両用冷却装置の主な作用効果を説明する。
まず、本発明の第1実施形態および第2実施形態による車両用冷却装置1、100では、オイル流路34には、オイル流路34を流れるオイルの流量を調整可能なオイル流量調整装置52、54が設けられているので、オイル流量調整装置52、54により、冷却水温度およびオイル温度に応じて、オイルの流量を調整することにより、第2熱交換器29における熱交換率を調整することができ、これにより、インタークーラ12を流通し、冷却水により冷却される、EGRガスを含む吸気ガスの過度の冷却を抑制し、凝縮水の発生を抑制することができる。
【0051】
また、第1および第2実施形態によれば、インタークーラ12の上流側に冷却水流路32の冷却水の流量を調整可能な冷却水流量調整装置48が設けられているので、極冷間時(外気温が非常に低い場合など)において、インタークーラ12を流通する冷却水の流量を絞ることで、インタークーラ12の過冷却を抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態によれば、オイル流路34のオイルの温度が冷却水流路32の冷却水の温度よりも高い場合、オイル流路34のオイルの温度が冷却水流路32の冷却水の温度よりも低い場合よりも、第2熱交換器29を流通するオイルの流量が少なくなるように、オイル流路34のソレノイドバルブ52を制御するので、相対的に冷却水温度が低くオイル温度が高い場合、第2熱交換器29において、冷却水のオイルからの受熱量を少なくして、冷却水が過度に冷却されないようにすることができる。したがって、インタークーラ12を流通し、冷却水により冷却される、EGRガスを含む吸気ガスの過度の冷却を抑制し、凝縮水の発生を抑制することができる。
【0053】
また、第1実施形態によれば、オイル流路34のオイルの温度が冷却水流路32の冷却水の温度よりも低い場合、オイル流路34のオイルの温度が冷却水流路32の冷却水の温度よりも高い場合よりも、第2熱交換器29を流通するオイルの流量が多くなるように、オイル流路34のソレノイドバルブ52を制御するので、相対的に冷却水温度が高くオイル温度が低い場合、第2熱交換器29において、オイルの冷却水からの受熱量を増大させることで、冷却水を冷却することができ、これにより、インタークーラ12を流通し、冷却水により冷却される、EGRガスを含む吸気ガスを効果的に冷却し、吸気ガスのエンジン4への充填効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1、100 車両用冷却装置
2、102 動力伝達系
4 エンジン
6 モータ(モータ駆動装置)
8 変速機
10 過給器
12 インタークーラ
14 EGR装置
16 DCDCコンバータ(高電圧部品、モータ駆動装置)
18 インバータ(高電圧部品、モータ駆動装置)
20 エンジン冷却水用ラジエータ(第1ラジエータ)
22 モータ駆動装置用ラジエータ(第2ラジエータ)
24 第1熱交換器
29 第2熱交換器
30 エンジン用冷却水流路
30a エンジン用冷却水流路の第1流路
30b エンジン用冷却水流路の第2流路
32 モータ駆動装置用冷却水流路
32a モータ駆動装置用冷却水流路の第1流路
32b モータ駆動装置用冷却水流路の第1流路
34 変速機用オイル流路
34a 変速機用オイル流路の第1流路
34b 変速機用オイル流路の第2流路
47 冷却水温度センサ/水温センサ
48 流量調整弁/クーラントソレノイドバルブ
50 オイル温度センサ
52 ソレノイドバルブ(オイル流量調整装置)
54 2WAYバルブ(オイル流量調整装置)
62 ECU(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7