(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両のエアガイド構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20231214BHJP
B60R 19/18 20060101ALI20231214BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60K11/04 K
B60R19/18 P
B60R19/48 P
(21)【出願番号】P 2019149981
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】橋場 優
(72)【発明者】
【氏名】濱 大五郎
(72)【発明者】
【氏名】影山 良達
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-144125(JP,A)
【文献】特開2008-49935(JP,A)
【文献】特開2013-56604(JP,A)
【文献】特開2015-182593(JP,A)
【文献】特開2010-254116(JP,A)
【文献】特開2007-131245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0001325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00- 15/10
B60R 19/00- 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパの空気取り入れ口の後方であって、該フロントバンパに配設される車両のエアガイド構造において、
車両前後方向で、前記フロントバンパの後方側には、熱交換器が配置され、前記フロントバンパと前記熱交換器との間には、エアガイドが配置されており、
前記エアガイドは、
前記エアガイドの前部に位置するエアガイド本体部と、
前記エアガイド本体部から前記熱交換器に向かって延出する延出壁部と、を有し、
前記延出壁部は、
前記熱交換器に対向し、前記熱交換器に当接可能な当接部と、
前記当接部を支持する当接支持部と、
前
記当接支持部の前部に設けられ、車両上下方向に延びる縦壁部と、
前記縦壁部と前記当接支持部とを連結している湾曲部と、を有し、
前記縦壁部、及び、前記湾曲部によって、荷重吸収部が形成されており、
前記荷重吸収部の車両前方側には、前記縦壁部から前記車両前方に延出される前壁部が設けられていることを特徴とする車両のエアガイド構造。
【請求項2】
前記当接支持部は、前記当接部の上下位置のそれぞれから、車両斜め前方に向けて延出されて設けられ、
前記上下位置のそれぞれの前記当接支持部の前端は、前記湾曲部を介して、前記縦壁部に連結されている、請求項1に記載の車両のエアガイド構造。
【請求項3】
前記上下位置のそれぞれの前記湾曲部のうち、下部側の湾曲部の上下方向の長さを上部側の湾曲部より長く形成し、下部側の前記荷重吸収部を、上部側の前記荷重吸収部よりも脆弱に構成してなる請求項2に記載の車両のエアガイド構造。
【請求項4】
前記エアガイドは、複数の切欠孔を有し、
前記複数の切欠孔のうちの少なくとも1つは、前記湾曲部に設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両のエアガイド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパの背面側に取り付けられ、フロントバンパの空気取り入れ口から取り入れられた冷却風を熱交換器等に案内する車両のエアガイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時に、エアガイドとラジエータサポートサイドとの固定を外すことにより、エアガイドが剛体として作用するのを防止できる車両用のエアガイド構造がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術文献によると、上記構造ではラジエータサポートサイドに対するエアガイドの固定解除により、剛体として作用するのを抑止するため、エアガイドの剛性は維持されたままとなる。ラジエータサポートサイドに対する固定解除が作用しなかった場合にはエアガイドが熱交換器と衝突した際、故障の原因となる。また、ラジエータサポートの固定部には熱交換器を固定しており、衝撃が入力された場合に、熱交換器と固定部が衝突し、熱交換器が破損することも考えられる。
【0005】
本発明は、エアガイド構造を利用した衝撃吸収構造により、車両後方にある熱交換器の破損を防止できる車両のエアガイド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、フロントバンパの空気取り入れ口の後方であって、該フロントバンパに配設される車両のエアガイド構造において、車両前後方向で、前記フロントバンパの後方側には、熱交換器が配置され、前記フロントバンパと前記熱交換器との間には、エアガイドが配置されており、前記エアガイドは、前記エアガイドの前部に位置するエアガイド本体部と、前記エアガイド本体部から前記熱交換器に向かって延出する延出壁部と、を有し、前記延出壁部は、前記熱交換器に対向し、前記熱交換器に当接可能な当接部と、前記当接部を支持する当接支持部と、前記当接支持部の前部に設けられ、車両上下方向に延びる縦壁部と、前記縦壁部と前記当接支持部とを連結している湾曲部と、を有し、前記縦壁部、及び、前記湾曲部によって、荷重吸収部が形成されており、前記荷重吸収部の車両前方側には、前記縦壁部から前記車両前方に延出される前壁部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
延出壁部に車両前後方向の荷重が入力された場合に、延出壁部基部には荷重吸収部が設けられているので、荷重吸収部に荷重が集中する。荷重吸収部に荷重が集中すると延出壁部が前後方向に沈み込むように変位し、荷重吸収部からの荷重を吸収する。これによって、熱交換器ほかの機器の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態による車両のエアガイド構造を示し、フロントバンパの背面側に設けられたエアガイドを示す斜視図である。
【
図2】
図1のエアガイド構造を示すエアガイドの部分拡大図である。
【
図3】
図2のエアガイド構造部分を拡大して示す拡大図である。
【
図4】
図3の下部側湾曲部を車体前方側から見た図である。
【
図5】
図3の下部側湾曲部を側面から見た側面図である。
【
図6】
図3の上部側湾曲部を車体正面側下方から見た斜視図である。
【
図7】
図3の上部側湾曲部を側面下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1ないし
図9は本発明の実施の形態による車両のエアガイド構造を示したもので、
図1ないし
図3はフロントバンパの背面側に設けられたエアガイドを示したものである。
図4ないし
図9は、エアガイドの各部分を拡大して示した図である。
【0010】
図1ないし
図3において、フロントバンパ1の背面側にはグリル等の空気取り入れ口1aに対応する位置にエアガイド2が設けられている。このエアガイド2は、フロントバンパ1と、
図9に示すようにフロントバンパ1の車体後方側に配置されたラジエータ等の熱交換器3との間に配置されている。エアガイド2はフロントバンパ1にねじ等を介して取り付けるための取付部が設けられた上下、左右の枠部材2a、2b、2c、2dと、枠部材2a、2b、2c、2dを縦横に仕切って複数の切欠孔20を形成するための複数の仕切り壁2e,2fが設けられている。
【0011】
エアガイド2は、フロントバンパ1の空気取り入れ口1aに対応するように車幅方向に沿って設けられた、熱交換器3等に冷却風を送るための前記切欠孔20を中央部に形成したエアガイド本体部21と、エアガイド本体部21の上部側に、上下方向に一定の間隔を置いて、後方に突出して設けられた一対の仕切り壁2fと、これら一対の仕切り壁2f相互間に設けられ、車体後方に向けて突出して設けられた延出壁部22とで構成されている。
前記一対の仕切り壁2fは、
図2に示すようにエアガイド本体部21の上部側の位置に、上下方向に一定の間隔で対向するように、後方に突出して設けられた上段部仕切り壁2f1と、中段部仕切り壁2f2とで構成されている。
前記延出壁部22は、上段部仕切り壁2f1と、中段部仕切り壁2f2との間に、これら仕切り壁2f1、2f2に支持されて、前記熱交換器3が配置された車両後方に向かって熱交換器3に対向するように延出して構成されている。前記延出壁部22が設けられたエアガイド本体部21には、前記延出壁部22の前方側に空気取り入れ口としての切欠孔20aが形成されている。延出壁部基部は、上段部仕切り壁2f1または中段部仕切り壁2f2と連結される湾曲部23cおよび縦壁部24cからなる連結部材で形成される。
【0012】
前記延出壁部22は、
図3に示すように、フロントバンパ1の車体後方側のエンジンルームに配置されている熱交換器3に向かって延出されており、熱交換器3に対向する後端には上下方向に延びる帯状の当接面部22aが側壁面22bの後端縁部に設けられている。前記当接面部22aの上端には、
図6および
図7に示すように前記側壁面22bの上端縁部に沿って車体前方に向けて延出された帯状の上壁面22cが設けられ、上壁面22cは途中から二股に分離され、前記側壁面22bに沿った縁部22c1と、前記側壁面22bから離れるように延出された上部側の当接面支持部22c2が設けられている。前記縁部22c1と当接面支持部22c2の間には、切欠孔20a1が形成されている。なお、ここでいう当接面とは、衝撃が入力された際に熱交換機と当接可能に配置される部位のことである。
前記側壁面22bに沿った縁部22c1は前端部が上方に向けて湾曲した湾曲部23c1を介して上方に向けて立ち上がる縦壁部24c1に連結されて仕切り壁2f1下面に連結されている。前記側壁面22bから離れるように延出された上部側の当接面支持部22c2は前端部が上方に向けて湾曲した湾曲部23c2を介して上方に向けて立ち上がる縦壁部24c2に連結されて仕切り壁2f1下面に連結されている。
すなわち、上部側の当接面支持部22c2には、当接面支持部22c2から、湾曲部23c2および縦壁部24c2と続く荷重吸収部A1を有する延出壁部基部が設けられている。
【0013】
前記縦壁部24c2の前方側上端部には、
図7に示すように車体前方に向けて延出された補強用のビード状の前壁部25c2が設けられている。この前壁部25c2は仕切り壁2f1の下面に縦壁部24c2の前端部の位置から車体前方に向けて徐々に高さが低くなるように(高さH2が小さくなるように)前上がりに傾斜して延出されている。
【0014】
また、前記当接面部22aの下端には、
図4に示すように前記側壁面22bの下端縁部に沿って車体前方に向けて延出された帯状の下壁面22dが設けられ、下壁面22dは途中から二股に分離され、前記側壁面22bに沿った縁部22d1と、前記側壁面22bから離れるように延出された下部側の当接面支持部22d2が設けられている。
前記側壁面22bに沿った縁部22d1は前端部が下方に向けて湾曲した湾曲部23d1を介して下方から上方に向けて立ち上がる縦壁部24d1上端部に連結されて仕切り壁2f1の上面に連結されている。前記側壁面22bから離れるように延出された下部側の当接面支持部22d2は前端部が下方に向けて湾曲した湾曲部23d2を介して下方から上方に向けて立ち上がる縦壁部24d2上端部に連結されて仕切り壁2f2上面に連結されている。縁部22d1と当接面支持部22d2との間には、切欠孔20a2が形成されている。
【0015】
前記下部側の当接面支持部22d2は、
図4および
図5に示すように湾曲した湾曲部23d2を介して縦壁部24d2上端部に連結されている。この縦壁部24d2は上部側の当接面支持部22c2が連結される縦壁部24c2の長さに比較して長く形成されている。これは、下部側の当接面支持部22d2は、当接面部22aからの荷重を吸収するため、下部側の当接面支持部22d2と、湾曲部23d2と、縦壁部24d2を脆弱に構成して折れの起点となるように設計されており、荷重を効果的に吸収するように構成されている。すなわち、下部側の当接面支持部22d2の基端部では、当接面支持部22d2から、湾曲部23d2および縦壁部24d2と続く荷重吸収部A2が設けられている。
【0016】
前記縦壁部24d2の前方側下端部には、
図5に示すように車体前方に向けて延出された補強用のビード状の前壁部25d2が設けられている。この前壁部25d2は仕切り壁2f2の上面に沿って、縦壁部24d2の下部前端部の位置から車体前方に向けて徐々に高さが低くなるように(高さH1が小さくなるように)傾斜して延出されている。
【0017】
次に上記実施の形態の作用を、
図9を参照しながら説明する。
図9は、フロントバンパ1の背面側を示したもので、エンジン部品などの熱源Eからの熱が矢印のように熱交換器3の前方に回り込む事をエアガイド2の側壁面22bが防いでいる。一方、フロントバンパ1の空気取り入れ口からエンジンルームに入り込む冷気Cはエアガイド2の側壁面22bにより、熱源Eと混ざることなく冷気状態を維持したまま熱交換器3に当たり、熱交換器3の冷却を行う。
このとき、例えば、車体前方より荷重が加わって、フロントバンパ1が後方に押されて移動した場合、フロントバンパ1の背面に取り付けられているエアガイド2も車体後方に移動する。そして、エアガイド2に車体後方に向けて突出して設けられた延出壁部22も車体後方に移動する。このとき、延出壁部22に設けられた当接面部22aが熱交換器3の前面部に当接して係止され、フロントバンパ1およびエアガイド2の車体後方への移動を阻止される。
そして、車体前方からの荷重が必要以上に大きい場合には、当接面部22aの当たりによって熱交換器3が損傷する恐れが生じる。このとき、延出壁部22は、下部側の縦壁部24d2を上部側の縦壁部24c2より長く形成して脆弱に構成しているので、当接面支持部22d2、湾曲部23d2、縦壁部24d2と続く荷重吸収部A2が設けられていることから、下部側の当接面支持部22d2では、湾曲部23d2および縦壁部24d2が折れの起点となり、車体前方からの荷重を吸収する。
【0018】
このように延出壁部22に車両前後方向の荷重が入力された場合に、延出壁部22基部には荷重吸収部A(A1,A2)が設けられているので、荷重吸収部Aに荷重が集中する。荷重吸収部Aに荷重が集中すると延出壁部22が前後方向に沈み込むように変位し、荷重吸収部Aによって荷重を吸収する。これによって、熱交換器3ほかの機器の損傷を防ぐことができる。
【0019】
前記エアガイド2の延出壁部22には、車体後方に向けて対向する当接面部22aと、該当接面部22aを支持する当接面支持部22d2とを設けている。該当接面支持部22d2と前記エアガイド本体部21の間には、前記エアガイド本体部21に設けられた車両上下方向の縦壁部24d2と、該縦壁部24d2と前記当接面支持部22d2とを連結する湾曲部23d2とからなる前記荷重吸収部A2が設けられている。また、前記縦壁部24d2から車両前方向に延出される前壁部25d2が設けられている。こうして、基部に縦壁部24d2があり、縦壁部24d2から車両前方向に延設される前壁部25d2があることにより、前壁部25d2で前後方向の剛性を向上させることができる。これにより、剛性の低い湾曲部23d2に荷重を集中させ易くなり当接面部22aの荷重吸収効果が向上する。
【0020】
前記当接面支持部22c2,22d2は当接面部22aの上下位置からそれぞれ車両斜め前方に向けて延出されて設けられ、該延出端からそれぞれ上下方向に湾曲部23c2,23d2を介して上下の縦壁部24c2,24d2に連結されてなるので、当接面支持部22c2,22d2が当接面部22aから車両上下方向に配置されることにより、熱交換器3に当接した際に熱交換器3に対して当接面部22aが対向する向きとなることを維持できる。
【0021】
当接面支持部22c2,22d2から上下の縦壁部24c2,24d2に連結される上下の湾曲部23c2,23d2は、下部側の湾曲部23d2の長さを長く形成し、下部側の前記荷重吸収部A2を、上部側の前記荷重吸収部A1よりも脆弱に構成したので、荷重が作用した場合の折れの起点になるように制御することができる。
【0022】
前記延出壁部22の前方側の前記エアガイド本体部21には切欠孔20aが設けられ、前記当接面部22aは前記切欠孔20a側に位置するように設けられ、かつ前記延出壁部22の当接面支持部22c2,22d2側には切欠孔20a1,20a2が設けられているので、湾曲部23c2,23d2および縦壁部24c2,24d2が脆弱部となることから、荷重が集中した時の折れの起点となることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、エアガイド2の延出壁部22はエアガイド本体部21に1箇所のみに設けたが複数個所に設けることもできる。また、エアガイド本体部2としては、樹脂成形により成形してもよく、アルミニウム等の軽量金属等を用いてもよい。荷重吸収部Aとしては、一体成形によって成形してもよく、別体によって成形してもよい。等、その他本発明の技術的範囲を変更しない範囲内で適宜変更して実施しうることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0024】
1 フロントバンパ
2 エアガイド
2a、2b、2c、2d 枠部材
2e,2f 仕切り壁
2f1 上段部仕切り壁
2f2 中段部仕切り壁
20 切欠孔
21 エアガイド本体部
22 延出壁部
22a 当接面部
22b 側壁面
22c 上壁面
22d 下壁面
22c1,22d1 縁部
22c2,22d2 当接面支持部
23c1,23d1 湾曲部
23c2,23d2 湾曲部
24c1,24d1 縦壁部
24c2,24d2 縦壁部
25c2,25d2 前壁部
A,A1,A2 荷重吸収部