(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】蒸着マスク
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20231214BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20231214BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231214BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2019218965
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸司
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H10K 50/10
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着マスクであって、
第1開口列を有する支持体と、
前記支持体に積層され、2つ以上の貫通孔を有するマスク本体と、を備え、
前記支持体は、蒸着時に上方に位置する第1外縁と、前記第1外縁とは反対側であって、蒸着時に下方に位置する第2外縁と、を有し、
前記第1開口列は、前記第1外縁と前記第2外縁との間に位置し、
前記蒸着マスクを水平配置した場合、前記支持体は平面視で矩形状に形成されて、前記第1外縁および前記第2外縁は第1方向に沿って延び、
平面視で、
前記第1方向に沿う前記支持体の長さよりも、前記第1方向に直交する第2方向に沿う前記支持体の長さが短く、
前記第1開口列は、前記第2方向に整列された、各々が平面視で2つ以上の前記貫通孔と重なる2つ以上の支持体開口で構成され、
前記第2方向における前記支持体の中間位置を通る前記第1方向に沿って延びる中間線に対して
前記第1外縁の側の領域を第1領域とし、前記中間線に対して
前記第2外縁の側の領域を第2領域とし、
平面視で、前記第2方向に沿って延びる基準線を前記第1開口列に重ねたときに、前記第1領域において前記基準線のうち前記支持体開口と重なる部分の長さである第1領域開口長さは、前記第2領域において前記基準線のうち前記支持体開口と重なる部分の長さである第2領域開口長さよりも長い、蒸着マスク。
【請求項2】
前記第2方向において隣り合う前記支持体開口の間に、前記第1方向に延びる桟部が介在され、
前記第2領域に前記桟部が位置している、請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記第2方向において2つ以上の前記桟部が配列され、
前記第1領域および前記第2領域の各々に前記桟部が位置しているとき、前記第1領域に位置する前記桟部の前記第2方向の長さは、前記第2領域に位置する前記桟部の前記第2方向の長さよりも短い、請求項2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記第1開口列を構成する2つ以上の前記支持体開口のうち前記第1外縁に最も近くに位置する前記支持体開口が、前記中間線を跨いで前記第2領域に延びている、請求項2に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記支持体は、前記第1方向において前記第1開口列に離間した第2開口列を有し、
前記第2開口列は、前記第2方向に整列された、各々が平面視で2つ以上の前記貫通孔と重なる2つ以上の前記支持体開口で構成され、
平面視で、前記基準線を前記第2開口列に重ねたときに、前記第1領域開口長さは、前記第2領域開口長さよりも長い、請求項1~4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
前記第1開口列の前記支持体開口と、前記第2開口列の前記支持体開口は、前記第1方向において整列されている、請求項5に記載の蒸着マスク。
【請求項7】
前記マスク本体の厚みは、2μm以上50μm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項8】
前記支持体の厚みは、0.05mm以上3mm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項9】
前記支持体は、ニッケルを含む鉄合金、ニッケル及びコバルトを含む鉄合金、又はニッケルで構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項10】
前記マスク本体は、ニッケルを含む鉄合金、ニッケル及びコバルトを含む鉄合金、又はニッケルで構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項11】
前記マスク本体は、前記支持体の側に設けられた金属層と、前記支持体とは反対側に設けられた樹脂層と、を有している、請求項1~9のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸着マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置は、高精細であることが好ましく、例えば画素密度が400ppi以上であることが好ましい。また、持ち運び可能なデバイスにおいても、ウルトラハイディフィニション(UHD)に対応することへの需要が高まっており、この場合、表示装置の画素密度は、例えば800ppi以上であることが好ましい。
【0003】
表示装置の中でも、応答性の良さ、消費電力の低さやコントラストの高さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔が形成された蒸着マスクを用いて、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、まず、有機EL表示装置用の被蒸着基板に蒸着マスクを組み合わせる。続いて、有機材料を含む蒸着材料を、蒸着マスクの貫通孔を介して被蒸着基板に蒸着させる。このことにより、蒸着マスクの貫通孔と同様のパターンで、蒸着材料を含む蒸着層を画素として被蒸着基板上に形成することができる。
【0004】
このような蒸着マスクとして、開口を有する支持体に、複数の貫通孔を有するマスク本体が積層された構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。この蒸着マスクにおいては、平面視で、マスク本体の貫通孔が支持体の開口と重なるように位置しており、蒸着材料は、開口および貫通孔を介して、被蒸着基板に蒸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2019/0074343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、精細度を高めることができる蒸着マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による蒸着マスクは、第1開口列を有する支持体と、支持体に積層され、2つ以上の貫通孔を有するマスク本体と、を備えている。平面視で、第1方向に沿う支持体の長さよりも、第1方向に直交する第2方向に沿う支持体の長さが短くなっている。第1開口列は、第2方向に整列された、各々が平面視で2つ以上の貫通孔と重なる2つ以上の支持体開口で構成されている。第2方向における支持体の中間位置を通る第1方向に沿って延びる中間線に対して一側の領域を第1領域とし、中間線に対して他側の領域を第2領域とする。平面視で、第2方向に沿って延びる基準線を第1開口列に重ねたときに、第1領域において基準線のうち支持体開口と重なる部分の長さである第1領域開口長さは、第2領域において基準線のうち支持体開口と重なる部分の長さである第2領域開口長さよりも長くなっている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、精細度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による蒸着マスクを備えた蒸着装置を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態による蒸着マスクを示す平面図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿った断面を模式的に示す図である。
【
図5】
図2のマスク本体を模式的に示す平面図である。
【
図6A】本開示の実施形態による蒸着マスクの製造方法において、支持基板に形成されたマスク本体を準備する準備工程を示す図である。
【
図6B】本開示の実施形態による蒸着マスクの製造方法において、マスク本体に支持体を積層させる積層工程を示す図である。
【
図6C】本開示の実施形態による蒸着マスクの製造方法において、マスク本体を支持体に接合する接合工程を示す図である。
【
図6D】本開示の実施形態による蒸着マスクの製造方法において、支持基板から蒸着マスクを分離させる分離工程を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態において、蒸着マスクを用いて作製された蒸着基板を示す断面図である。
【
図9】
図2の蒸着マスクの変形例を示す平面図である。
【
図11】
図3のマスク本体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および本図面において、特別な説明が無い限りは、「基板」や「基材」や「板」や「シート」や「フィルム」などのある構成の基礎となる物質を意味する用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
【0011】
本明細書および本図面において、特別な説明が無い限りは、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0012】
本明細書および本図面において、特別な説明が無い限りは、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に」や「下に」、「上側に」や「下側に」、又は「上方に」や「下方に」とする場合、ある構成が他の構成に直接的に接している場合を含む。さらに、ある構成と他の構成との間に別の構成が含まれている場合、つまり間接的に接している場合も含む。また、特別な説明が無い限りは、「上」や「上側」や「上方」、又は、「下」や「下側」や「下方」という語句は、上下方向が逆転してもよい。
【0013】
本明細書および本図面において、特別な説明が無い限りは、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0014】
本明細書および本図面において、特別な説明が無い限りは、矛盾の生じない範囲で、その他の実施形態や変形例と組み合わせられ得る。また、その他の実施形態同士や、その他の実施形態と変形例も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられ得る。また、変形例同士も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられ得る。
【0015】
本明細書および本図面において、特別な説明が無い限りは、製造方法などの方法に関して複数の工程を開示する場合に、開示されている工程の間に、開示されていないその他の工程が実施されてもよい。また、開示されている工程の順序は、矛盾の生じない範囲で任意である。
【0016】
本明細書および本図面において、特別な説明が無い限りは、「~」という記号によって表現される数値範囲は、「~」という符号の前後に置かれた数値を含んでいる。例えば、「34~38質量%」という表現によって画定される数値範囲は、「34質量%以上且つ38質量%以下」という表現によって画定される数値範囲と同一である。
【0017】
本明細書および本図面において、特別な説明が無い限りは、本明細書の一実施形態において、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクやその製造方法に関した例をあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクに対し、本実施形態を適用することができる。
【0018】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態のみに限定して解釈されるものではない。
【0019】
本開示の第1の態様は、
第1開口列を有する支持体と、
前記支持体に積層され、2つ以上の貫通孔を有するマスク本体と、を備え、
平面視で、第1方向に沿う前記支持体の長さよりも、前記第1方向に直交する第2方向に沿う前記支持体の長さが短く、
前記第1開口列は、前記第2方向に整列された、各々が平面視で2つ以上の前記貫通孔と重なる2つ以上の支持体開口で構成され、
前記第2方向における前記支持体の中間位置を通る前記第1方向に沿って延びる中間線に対して一側の領域を第1領域とし、前記中間線に対して他側の領域を第2領域とし、
平面視で、前記第2方向に沿って延びる基準線を前記第1開口列に重ねたときに、前記第1領域において前記基準線のうち前記支持体開口と重なる部分の長さである第1領域開口長さは、前記第2領域において前記基準線のうち前記支持体開口と重なる部分の長さである第2領域開口長さよりも長い、蒸着マスク、
である。
【0020】
本開示の第2の態様として、上述した第1の態様による蒸着マスクにおいて、
前記第2方向において隣り合う前記支持体開口の間に、前記第1方向に延びる桟部が介在され、
前記第2領域に前記桟部が位置している、
ようにしてもよい。
【0021】
本開示の第3の態様として、上述した第2の態様による蒸着マスクにおいて、
前記第2方向において2つ以上の前記桟部が配列され、
前記第1領域および前記第2領域の各々に前記桟部が位置しているとき、前記第1領域に位置する前記桟部の前記第2方向の長さは、前記第2領域に位置する前記桟部の前記第2方向の長さよりも短い、
ようにしてもよい。
【0022】
本開示の第4の態様として、上述した第2の態様による蒸着マスクにおいて、
前記支持体は、前記第1方向に沿って延びる前記第1領域の側に位置する第1外縁と、前記第1方向に沿って延びる前記第2領域の側に位置する第2外縁と、を有し、
前記第1開口列を構成する2つ以上の前記支持体開口のうち前記第1外縁に最も近くに位置する前記支持体開口が、前記中間線を跨いで前記第2領域に延びている、
ようにしてもよい。
【0023】
本開示の第5の態様として、上述した第1の態様から上述した第4の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
前記支持体は、前記第1方向において前記第1開口列に離間した第2開口列を有し、
前記第2開口列は、前記第2方向に整列された、各々が平面視で2つ以上の前記貫通孔と重なる2つ以上の前記支持体開口で構成され、
平面視で、前記基準線を前記第2開口列に重ねたときに、前記第1領域開口長さは、前記第2領域開口長さよりも長い、
ようにしてもよい。
【0024】
本開示の第6の態様として、上述した第5の態様による蒸着マスクにおいて、
前記第1開口列の前記支持体開口と、前記第2開口列の前記支持体開口は、前記第1方向において整列されている、
ようにしてもよい。
【0025】
本開示の第7の態様として、上述した第1の態様から上述した第6の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
前記マスク本体の厚みは、2μm以上50μm以下である、
ようにしてもよい。
【0026】
本開示の第8の態様として、上述した第1の態様から上述した第7の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
前記支持体の厚みは、0.05mm以上3mm以下である、
ようにしてもよい。
【0027】
本開示の第9の態様として、上述した第1態様から上述した第8の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
前記支持体は、ニッケルを含む鉄合金、ニッケル及びコバルトを含む鉄合金、又はニッケルで構成されている、
ようにしてもよい。
【0028】
本開示の第10の態様として、上述した第1態様から上述した第9の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
前記マスク本体は、ニッケルを含む鉄合金、ニッケル及びコバルトを含む鉄合金、又はニッケルで構成されている、
ようにしてもよい。
【0029】
本開示の第11の態様として、上述した第1態様から上述した第9の態様のそれぞれによる蒸着マスクにおいて、
前記マスク本体は、前記支持体の側に設けられた金属層と、前記支持体とは反対側に設けられた樹脂層と、を有している、
ようにしてもよい。
【0030】
以下、本開示の一実施形態による蒸着マスクについて、
図1~
図7を参照して説明する。
【0031】
まず、対象物に蒸着材料を蒸着させる蒸着処理を実施する蒸着装置80について、
図1を参照して説明する。ここでは、後述する被蒸着基板91および蒸着マスク20を鉛直方向に沿うように配置する縦型蒸着装置を例にとって説明する。
【0032】
図1に示すように、蒸着装置80は、筐体81と、筐体81内に設けられた蒸着源82と、を備えていてもよい。蒸着源82は、図示しないヒータを内蔵していてもよい。また、蒸着装置80は、筐体81の内部空間を真空雰囲気にするための排気手段(図示せず)を更に備えていてもよい。蒸着源82は、有機発光材料などの蒸着材料83を収容しており、ヒータで加熱されるように構成されている。筐体81の内部空間を真空雰囲気にして蒸着材料83をヒータで加熱することにより、蒸着材料83が蒸発する。
【0033】
筐体81内に、蒸着源82に対向するように被蒸着基板91が配置される。被蒸着基板91は、蒸着材料83を付着させる蒸着対象物である。被蒸着基板91は、蒸着材料83を付着させる被蒸着面91aが、鉛直方向(
図1における上下方向)に沿うように配置されており、被蒸着面91aは、直立して蒸着源82に対向する。被蒸着基板91の被蒸着面91aに、蒸着マスク20が直立して配置される。蒸着源82から飛来した蒸着材料83は、蒸着マスク20の後述する貫通孔46を通って、被蒸着基板91の被蒸着面91aに付着する。
【0034】
図1に示すように、蒸着装置80は、被蒸着基板91の、被蒸着面91aとは反対側の面91bに配置された磁石85を更に備えていてもよい。この磁石85の磁力によって蒸着マスク20を磁石85の側に引き寄せて、蒸着マスク20を被蒸着基板91に密着させることができる。これにより、蒸着工程においてシャドー(後述)が発生することを抑制することができ、被蒸着基板91に付着した蒸着材料83によって形成される蒸着層92(
図7参照)の形状精度や位置精度を高めることができる。被蒸着基板91と磁石85との間には、蒸着時に被蒸着基板91を冷却する冷却板(図示せず)が介在されていてもよい。
【0035】
次に、本実施形態による蒸着マスク20について、
図2~
図5を参照して説明する。
【0036】
図2および
図3に示すように、本実施形態による蒸着マスク20は、支持体30と、支持体30に積層されたマスク本体40と、を備えていてもよい。本実施形態では、支持体30の後述する第1支持体面30aに、2つ以上のマスク本体40(
図2においては、18個のマスク本体40)が接合されている。本実施形態では、マスク本体40の各々は、1つの貫通孔群45(または1つの有効領域47)を有している。貫通孔群45は、第1方向D11および第2方向D12に2次元的に並列配置された2つ以上の貫通孔46を含んでいる。
【0037】
図2および
図3に示すように、マスク本体40は、例えば溶接によって支持体30に固定されていてもよい。例えば、スポット溶接によって、マスク本体40を支持体30に固定するようにしてもよい。この場合、
図2に示すように、マスク本体40の外周縁に沿う方向に並ぶ複数の点状の溶接痕21が、スポット溶接によって形成されるようにしてもよい。
【0038】
後述するように、マスク本体40がめっき処理で製造されている場合には、マスク本体40は積極的に引っ張ることなく支持体30に支持されていてもよい。この場合、マスク本体40は支持基板50上にめっき処理による金属材料の析出によって形成されるため、支持基板50から分離されるとマスク本体40には張力が残留する。このことにより、マスク本体40は、張力が付与された状態で支持体30に支持されて、撓むことを抑制できる。一方、マスク本体40がエッチング処理で製造されている場合には、マスク本体40は、第1方向D11および第2方向D12に引っ張った状態で支持体30に支持されていてもよい。この場合、図示しない張力付与装置のアームの先端部に粘着層を介してマスク本体40を粘着させることによりマスク本体40に張力を付与することができる。このことにより、マスク本体40は支持体30に張設され、マスク本体40が撓むことを抑制できる。なお、マスク本体40が撓むことを抑制できる場合には、マスク本体40は張設することなく、支持体30に支持されていてもよい。
【0039】
次に、支持体30について説明する。
【0040】
図3に示すように、支持体30は、マスク本体40の側に位置する第1支持体面30aと、第1支持体面30aとは反対側に位置する第2支持体面30bと、を有していてもよい。第1支持体面30aに、マスク本体40が接合されて固定されている。第2支持体面30bには、フレームなどの部材が設けられていなくてもよい。この場合、第2支持体面30bは、
図1に示す蒸着源82に対向して、蒸着源82に向かって露出されている。なお、
図3は、
図2のA-A線断面を模式的に示した図であり、図面を明瞭にするために、支持体開口31およびマスク本体40の個数を少なくしている。
【0041】
支持体30は、平面視で矩形状に形成されていてもよい。より具体的には、支持体30は、第1方向D11および第2方向D12に沿うように、平面視で矩形状に形成されている。支持体30は、第1方向に沿って延びる一対の外縁(第1外縁30cおよび第2外縁30d)を有していてもよい。第1外縁30cは、第1方向D11に沿って延びる後述する第1領域R1の側(
図4における上側)に位置している。第2外縁30dは、第1方向D11に沿って延びる後述する第2領域R2の側(
図4における下側)に位置している。第1外縁30cおよび第2外縁30dは、互いに平行であってもよい。支持体30は、第1外縁30cおよび第2外縁30dに直交する一対の外縁(第3外縁30eおよび第4外縁30f)を更に有していてもよい。第3外縁30eは、第2方向D12に沿って延び、
図4における左側に位置している。第4外縁30fは、第2方向D12に沿って延び、
図4における右側に位置している。第1外縁30c~第4外縁30fによって、矩形状の支持体30が画定されている。
図4に示すように、平面視で、第1方向D11に沿う支持体30の長さTL1よりも第1方向D11に直交する第2方向D12に沿う支持体30の長さTL2が短くなっている。長さTL1は、第1外縁30cの長さまたは第2外縁30dの長さに相当し、長さTL2は、第3外縁30eの長さまたは第4外縁30fの長さに相当している。
【0042】
図2~
図4に示すように、支持体30は、2つ以上の支持体開口31を有していてもよい。支持体開口31は、第1支持体面30aから第2支持体面30bに延びて、支持体30を貫通している。
【0043】
本実施形態においては、支持体開口31は、平面視で矩形状に形成されており、支持体開口31の各々は、同一の形状および同一の大きさを有していてもよい。より具体的には、支持体開口31は、第1方向D11および第2方向D12に沿うように、平面視で矩形状に形成されている。支持体開口31の各々の第1方向D11の長さは、等しくなっている。支持体開口31の各々の第2方向D12の長さも、等しくなっている。ここで、「平面視」とは、蒸着マスク20や支持体30、マスク本体40の厚み方向で見ることを意味する用語であって、例えば、
図2の紙面に垂直な方向で見ることを意味する用語とする。
【0044】
支持体30は、平面視で矩形枠状に形成された枠体部32と、枠体部32の内側に設けられた複数の桟部33、34と、を有していてもよい。桟部33、34は、互いに隣り合う上述の支持体開口31の間に介在されており、枠体部32と複数の桟部33、34とによって、複数の支持体開口31が区画されている。
【0045】
支持体30は、第1開口列35aと第2開口列35bとを有していてもよい。第1開口列35aおよび第2開口列35bは、第2方向D12に整列された2つ以上の支持体開口31でそれぞれ構成されていてもよい。より具体的には、第1開口列35aを構成する支持体開口31の各々は、第2方向D12に延びる一対の側縁が、それぞれ同一直線上に位置しており、第1方向D11において同じ位置に位置している。第2開口列35bを構成する2つ以上の支持体開口31も同様に、第2方向D12に延びる一対の側縁が、それぞれ同一直線上に位置しており、第1方向D11において同じ位置に位置している。
【0046】
第1開口列35aおよび第2開口列35bは、第1方向D11において互いに離間している。第1開口列35aの支持体開口31と、第2開口列35bの支持体開口は、第1方向D11において整列されていてもよい。より具体的には、第1開口列35aの支持体開口31の第1方向D11に延びる一対の側縁と、第2開口列35bの支持体開口31の第1方向D11に延びる一対の側縁とがそれぞれ、同一直線上に位置しており、第2方向D12において同じ位置に位置している。
【0047】
図4に示すように、本実施形態においては、支持体30は、第1開口列35aおよび第2開口列35bと同様な第3開口列35c、第4開口列35d、第5開口列35eおよび第6開口列35fを有していてもよい。この場合、各開口列35a~35fを構成する各支持体開口31が、第1方向D11において整列されていてもよい。より具体的には、第1方向D11において整列された6つの支持体開口31で構成される列が3つ形成される。このようにして、複数の支持体開口31は、並列配列されていてもよい。なお、
図4においては、最も左側に第1開口列35aが配置され、右側に向かって第2開口列35b~第6開口列35fがこの順番に配置されている例を示しているが、開口列の配置および個数は任意である。
【0048】
図2に示すように、1つの支持体開口31に、1つのマスク本体40が割り当てられて重ねられていてもよい。そして、1つの支持体開口31に、対応するマスク本体40の1つの貫通孔群45が平面視で重なっており、当該貫通孔群45が支持体開口31に露出している。この場合、平面視で、各貫通孔群45の周囲に、支持体30の枠体部32または桟部33、34が位置し、各貫通孔群45の周囲が、支持体30で支持される。
【0049】
図4に示すように、複数の桟部33、34は、複数の第1桟部33と、複数の第2桟部34とによって構成されていてもよい。
【0050】
第1桟部33は、第1方向D11に延びており、第2方向D12において隣り合う支持体開口31の間に介在されている。このようにして、第1桟部33が、第2方向D12において支持体開口31を区画している。第2方向D12において、3つ以上の支持体開口31が配列されて、2つ以上の第1桟部33が配列されていてもよい。本実施形態では、第2方向D12において3つの支持体開口31が整列されており、2つの第1桟部33が配列されている。
【0051】
第2桟部34は、第2方向D12に延びており、第1方向D11において隣り合う支持体開口31の間に介在されている。このようにして、第2桟部34が、第1方向D11において支持体開口31を区画している。第1方向D11において、3つ以上の支持体開口31が配列されて、2つ以上の第1桟部33が配列されていてもよい。本実施形態では、第1方向D11において6つの支持体開口31が整列されており、5つの第2桟部34が配列されている。
【0052】
図4に示すように、支持体30の平面領域を、第1領域R1と第2領域R2とに区分けしてもよい。第1領域R1は、第2方向D12における支持体30の中間位置を通る第1方向D11に沿って延びる中間線MLに対して一側(
図4における上側)の領域であってもよい。第2領域R2は、当該中間線MLに対して他側(
図4における下側)の領域であってもよい。言い換えると、
図4のように支持体を見たときに、第2方向D12において上側半分の領域が第1領域R1に相当し、下側半分の領域が第2領域R2に相当している。
【0053】
本実施形態では、第1領域R1に位置する支持体開口31の第2方向D12の長さの合計値が、第2領域R2に位置する支持体開口31の第2方向D12の長さの合計値よりも長くなっていてもよい。
【0054】
より具体的には、
図4に示すように、平面視で、第2方向D12に沿って延びる基準線SLを第1開口列35aに重ねたときに、第1領域開口長さL1が、第2領域開口長さL2よりも長くなっていてもよい。
【0055】
第1領域開口長さL1は、第1領域R1において基準線SLのうち第1開口列35aを構成する支持体開口31と重なる部分の長さである。第1領域R1において基準線SLが2つ以上の支持体開口31と重なる場合、第1領域開口長さL1は、第1領域R1において基準線SLと重なる各支持体開口31の第2方向D12の長さの合計値となる。また、基準線SLと重なる複数の支持体開口31のうちの一の支持体開口31が中間線MLを跨いでいる場合、当該支持体開口31のうち第1領域R1に位置する部分の長さは、第1領域開口長さL1に含まれる。
【0056】
第2領域開口長さL2は、第2領域R2において基準線SLのうち第1開口列35aを構成する支持体開口31と重なる部分の長さである。第2領域R2において基準線SLが2つ以上の支持体開口31と重なる場合、第2領域開口長さL2は、第2領域R2において基準線SLと重なる各支持体開口31の第2方向D12の長さの合計値となる。また、基準線SLと重なる複数の支持体開口31のうちの一の支持体開口31が中間線MLを跨いでいる場合、当該支持体開口31のうち第2領域R2に位置する部分の長さは、第2領域開口長さL2に含まれる。
【0057】
本実施形態では、第1領域開口長さL1は、第1外縁30cに最も近く(
図4における最も上側)に位置する支持体開口31の第2方向D12の長さL11と、中間線MLに跨がっている支持体開口31のうち第1領域R1に位置する部分の第2方向D12の長さL12と、の合計値となる。第2領域開口長さL2は、第2外縁30dに最も近く(
図4における最も下側)に位置する支持体開口31の第2方向D12の長さL21と、中間線MLに跨がっている支持体開口31のうち第2領域R2に位置する部分の第2方向D12の長さL22と、の合計値となる。
【0058】
上述したように、第1開口列35aの支持体開口31と、第2開口列35bの支持体開口は、第1方向D11において整列されているため、平面視で、基準線SLを第2開口列35bに重ねたときにおいても、第1領域開口長さL1が、第2領域開口長さL2よりも長くなっていてもよい。基準線SLを第3開口列35c~第6開口列35fのいずれに重ねたときでも第1領域開口長さL1が、第2領域開口長さL2よりも長くなっていてもよい。第1開口列35aの支持体開口31と第2開口列35bの支持体開口31が第1方向D11において整列されている場合には、第1領域開口長さL1と第2領域開口長さL2の差は、任意の開口列の組み合わせにおいて等しくなってもよい。なお、任意の開口列の組み合わせにおいて、第1領域開口長さL1と第2領域開口長さL2の差は、異なっていてもよい。
【0059】
上述したように、第1開口列35aを構成する2つ以上の支持体開口31が第2方向D12において整列している場合、第1領域R1に位置する支持体開口31の開口面積である第1領域開口面積は、第2領域R2に位置する支持体開口31の開口面積である第2領域開口面積よりも大きくなっていてもよい。
【0060】
ここで、第1領域R1において2つ以上の支持体開口31が位置する場合には、第1領域開口面積は、第1領域R1に位置する2つ以上の支持体開口31の開口面積の合計値となる。また、中間線MLを跨いでいる支持体開口31のうち第1領域R1に位置する部分の開口面積は、第1領域開口面積に含まれる。同様に、第2領域R2において2つ以上の支持体開口31が位置する場合には、第2領域開口面積は、第2領域R2に位置する2つ以上の支持体開口31の開口面積の合計値となる。また、中間線MLを跨いでいる支持体開口31のうち第2領域R2に位置する部分の開口面積は、第2領域開口面積に含まれる。
【0061】
本実施形態では、
図4に示す支持体30における第1領域開口面積は、第1外縁30cに最も近くに位置する6つの支持体開口31の開口面積と、中間線MLに跨がっている6つの支持体開口31のうち第1領域R1に位置する部分の開口面積と、の合計値となる。第2領域開口面積は、第2外縁30dに最も近くに位置する6つの支持体開口31の開口面積と、中間線MLに跨がっている6つの支持体開口31のうち第2領域R2に位置する部分の開口面積と、の合計値となる。
【0062】
上述した第1桟部33は、第2領域R2に位置していてもよい。この場合、第1桟部33は、第1領域R1に位置していなくてもよい。本実施形態では、
図4に示すように、第1桟部33は、第1領域R1および第2領域R2のそれぞれに位置している。この場合、第1領域R1に位置する第1桟部33の第2方向D12の長さCL1は、第2領域R2に位置する第1桟部33の第2方向D12の長さCL2よりも短くてもよい。
【0063】
本実施形態では、
図4に示す支持体30の第1領域R1における第1桟部33の長さCL1は、第1外縁30cの側に位置する第1桟部33の第2方向D12の長さであってもよい。第2領域R2における第1桟部33の長さCL2は、第2外縁30dの側に位置する第1桟部33の第2方向D12の長さであってもよい。
【0064】
支持体30の厚みH1は、例えば、0.05mm以上であってもよく、0.10mm以上であってもよく、0.50mm以上であってもよく、1.00mm以上であってもよい。厚みH1を0.05mm以上とすることにより、蒸着マスク20の剛性を向上させることができる。また、厚みH1は、例えば、1.50mm以下であってもよく、2.00mm以下であってもよく、2.50mm以下であってもよく、3.00mm以下であってもよい。厚みH1を3.00mm以下とすることにより、後述するように支持体30に接合されたマスク本体40から支持基板50を分離させる際に、支持基板50が分離できなくなる不具合が生じることを抑制することができる。厚みH1の範囲は、0.05mm、0.10mm、0.50mm及び1.00mmからなる第1グループ、及び/又は、1.50mm、2.00mm、2.50mm及び3.00mmからなる第2グループによって定められてもよい。厚みH1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。厚みH1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。厚みH1の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、0.05mm以上3.00mm以下であってもよく、0.05mm以上2.50mm以下であってもよく、0.05mm以上2.00mm以下であってもよく、0.05mm以上1.50mm以下であってもよく、0.05mm以上1.00mm以下であってもよく、0.05mm以上0.50mm以下であってもよく、0.05mm以上0.10mm以下であってもよく、0.10mm以上3.00mm以下であってもよく、0.10mm以上2.50mm以下であってもよく、0.10mm以上2.00mm以下であってもよく、0.10mm以上1.50mm以下であってもよく、0.10mm以上1.00mm以下であってもよく、0.10mm以上0.50mm以下であってもよく、0.50mm以上3.00mm以下であってもよく、0.50mm以上2.50mm以下であってもよく、0.50mm以上2.00mm以下であってもよく、0.50mm以上1.50mm以下であってもよく、0.50mm以上1.00mm以下であってもよく、1.00mm以上3.00mm以下であってもよく、1.00mm以上2.50mm以下であってもよく、1.00mm以上2.00mm以下であってもよく、1.00mm以上1.50mm以下であってもよく、1.50mm以上3.00mm以下であってもよく、1.50mm以上2.50mm以下であってもよく、1.50mm以上2.00mm以下であってもよく、2.00mm以上3.00mm以下であってもよく、2.00mm以上2.50mm以下であってもよく、2.50mm以上3.00mm以下であってもよい。
【0065】
次に、マスク本体40について説明する。マスク本体40は、任意の製造方法により製造することができる。例えば、圧延材をエッチングすることにより製造されていてもよく、あるいは、めっき処理で製造されていてもよい。めっき処理で製造される場合には、マスク本体40は、2つ以上の層で構成されていてもよい。この場合、後述する貫通孔46は、これらの層を貫通するように形成される。
【0066】
図3に示すように、マスク本体40は、第1本体面40aと、第2本体面40bとは反対側に位置する第2本体面40bと、を有していてもよい。第1本体面40aは、蒸着時に被蒸着基板91が密着する面であってもよい。第2本体面40bは、上述した支持体30の側の面であってもよい。
【0067】
マスク本体40は、2つ以上の貫通孔46を有していてもよい。マスク本体40は、2つ以上の貫通孔46で構成される貫通孔群45を有していてもよい。本実施形態では、各マスク本体40は、1つのみの貫通孔群45を有している。
【0068】
貫通孔46は、第1本体面40aから第2本体面40bに延びており、マスク本体40を貫通している。
図3においては、図面を簡略化するために、貫通孔46の壁面が、第1本体面40aから第2本体面40bに向かって中心軸線から遠ざかるように中心軸線に対して直線状に傾斜している例が示されている。このように、貫通孔46の壁面は、第1本体面40aにおける開口寸法が、第2本体面40bにおける開口寸法よりも小さくなるように形成されていてもよい。この場合、蒸着装置80の蒸着源82から飛来した蒸着材料83が、貫通孔46の壁面に到達して付着することを抑制できる。このことにより、被蒸着基板91への蒸着材料83の付着が貫通孔46の壁面によって阻害されること(シャドーとも称する)を抑制することができる。このため、被蒸着基板91に付着した蒸着材料83によって形成される蒸着層92(
図7参照)の形状精度や位置精度を向上させることができ、蒸着層92の精細度を高めることができる。なお、貫通孔46の断面形状についてのより詳細な説明はここでは省略するが、マスク本体40の製造方法に応じて、壁面の形状は湾曲状であってもよく、任意とすることができる。
【0069】
図5に示すように、貫通孔46は、平面視において、略矩形形状の輪郭を有していてもよい。この場合、貫通孔46の輪郭のうちの四隅は湾曲していてもよい。なお、輪郭の形状は、画素の形状に応じて任意に定められ得る。例えば、六角形、八角形などのその他の多角形の形状を有していてもよく、円形状を有していてもよい。また、輪郭の形状は、複数の形状の組み合わせであってもよい。また、貫通孔46はそれぞれ、互いに異なる輪郭の形状を有していてもよい。貫通孔46が多角形形状の輪郭を有する場合、貫通孔46の開口寸法は、
図5に示すように、多角形において対向する一対の辺の間隔としてもよい。
【0070】
図5に示すように、貫通孔46は、上述した貫通孔群45をなしていてもよい。貫通孔群45は、上述した支持体30の支持体開口31(
図2および
図3参照)に重なっており、支持体開口31から露出している。1つの支持体開口31が、1つの貫通孔群45を露出させていてもよい。
図5に示すように、貫通孔群45は、2つ以上の貫通孔46が群をなすように構成されていてもよい。貫通孔群45とは、規則的に配列された複数の貫通孔46の集合体を意味する用語として用いている。1つの貫通孔群45を構成する外縁の貫通孔46は、同様に規則的に配列されている複数の貫通孔46のうち最も外側に位置する貫通孔46である。外縁の貫通孔46の外側には、同様に規則的に配列されて蒸着材料83の通過を意図する貫通孔46は存在していなくてもよい。しかしながら、外縁の貫通孔46の外側には、他の用途の貫通孔や凹部(いずれも図示せず)は形成されていてもよい。これらの他の用途の貫通孔や凹部は、貫通孔46の配列の規則性を持たずに形成されていてもよく、貫通孔群45には属していないと考えてもよい。
【0071】
図5に示すように、貫通孔群45において、複数の貫通孔46は、所定の間隔を開けて(所定のピッチで)配列されていてもよい。貫通孔46は、第1方向D11において所定の間隔(
図5に示す符号C3)を開けて配列されると共に、第2方向D12において所定の間隔(
図5に示す符号C4)を開けて配列されていてもよい。貫通孔46の配列ピッチC3、C4は、第1方向D11および第2方向D12で異なっていてもよいが、等しくてもよい。
図5においては、第1方向D11の配列ピッチC3と第2方向D12の配列ピッチC4が等しい例を示している。
図5に示すように、貫通孔46は、並列配列されていてもよい。より具体的には、第1方向D11に沿った一の列を構成する各貫通孔46と、当該列と第2方向D12において隣り合う他の列を構成する各貫通孔46とは、第2方向D12において整列されていてもよい。貫通孔46の配列ピッチC3、C4は、表示装置または投影装置の画素密度に応じて、例えば以下のように定められていてもよい。
・画素密度が600ppi以上の場合:ピッチは42.3μm以下
・画素密度が1200ppi以上の場合:ピッチは21.2μm以下
・画素密度が3000ppi以上の場合:ピッチは8.5μm以下
画素密度が600ppiの表示装置又は投影装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置として用いられてもよい。画素密度が1200ppiの表示装置又は投影装置は、例えば、仮想現実(いわゆるVR)を表現するための画像や映像を表示又は投影するために用いられてもよい。画素密度が3000ppiの表示装置又は投影装置は、例えば、拡張現実(いわゆるAR)を表現するための画像や映像を表示又は投影するために用いられてもよい。
【0072】
なお、貫通孔群45における貫通孔46は、並列配列ではなく、千鳥配列(図示せず)されていてもよい。すなわち、第1方向D11に沿った一の列を構成する各貫通孔46と、当該列と第2方向D12において隣り合う他の列を構成する各貫通孔46とは、第2方向D12において整列されていなくてもよい。一の列を構成する各貫通孔46と、隣り合う他の列を構成する貫通孔46とは、第1方向D11においてずれて配列されていてもよい。そのずれ量は、第1方向における配列ピッチC3の半分になっていてもよいが、ずれ量は任意である。
【0073】
図3および
図5において、マスク本体40の第1本体面40aにおける貫通孔46の開口寸法が、符号S1で示されている。また、マスク本体40の第2本体面40bにおける貫通孔46の開口寸法が、符号S2で示されている。また、符号S3は、第1本体面40aにおける互いに隣り合う貫通孔46同士の間の距離を示している。
図5においては、貫通孔46の平面形状は正方形としているため、第1方向D11における貫通孔46の開口寸法と第2方向D12における貫通孔46の開口寸法は等しくなっている。代表的にD12における貫通孔46の寸法を、符号S1、S2で示している。
【0074】
寸法S1、寸法S2および寸法S3は、表示装置又は投影装置の画素密度に応じて例えば以下の表1のように定められる。
【表1】
【0075】
ところで、貫通孔群45は、有効領域47と称することがある。有効領域47の周囲に位置する領域は周囲領域48と称することがある。本実施形態では、周囲領域48は、1つの有効領域47を囲んでいる。
【0076】
蒸着マスク20を用いて有機EL表示装置などの表示装置を作製する場合、1つの有効領域47は、1つの有機EL表示装置の表示領域に対応する。このため、
図2に示す蒸着マスク20によれば、有機EL表示装置の多面付蒸着が可能である。なお、1つの有効領域47が複数の表示領域に対応する場合もある。
【0077】
有効領域47は、例えば、
図5に示すように、平面視において略矩形状の輪郭を有していてもよい。有効領域47の輪郭は、対応する貫通孔群45のうち最も外側に位置する貫通孔46に外側から接する線によって画定されてもよい。より詳細には、有効領域47の輪郭は、貫通孔46の開口に接する線によって画定されていてもよい。
図5に示す例では、貫通孔46が並列配列されていることから、有効領域47の輪郭は、略矩形状の輪郭となっている。なお、図示はしないが、各有効領域47は、有機EL表示装置の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有することができる。例えば各有効領域47は、円形状の輪郭を有していてもよい。
【0078】
マスク本体40の厚みH2は、例えば、2μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよい。厚みH2を2μm以上とすることにより、マスク本体40の剛性を確保し、ハンドリング性を向上させることができる。また、厚みH2は、例えば、20μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。厚みH2を50μm以下とすることにより、シャドーが発生することを抑制することができる。厚みH2の範囲は、2μm、5μm、10μm及び15μmからなる第1グループ、及び/又は、20μm、30μm、40μm及び50μmからなる第2グループによって定められてもよい。厚みH2の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。厚みH2の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。厚みH2の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、2μm以上50μm以下であってもよく、2μm以上40μm以下であってもよく、2μm以上30μm以下であってもよく、2μm以上20μm以下であってもよく、2μm以上15μm以下であってもよく、2μm以上10μm以下であってもよく、2μm以上5μm以下であってもよく、5μm以上50μm以下であってもよく、5μm以上40μm以下であってもよく、5μm以上30μm以下であってもよく、5μm以上20μm以下であってもよく、5μm以上15μm以下であってもよく、5μm以上10μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であってもよく、10μm以上40μm以下であってもよく、10μm以上30μm以下であってもよく、10μm以上20μm以下であってもよく、10μm以上15μm以下であってもよく、15μm以上50μm以下であってもよく、15μm以上40μm以下であってもよく、15μm以上30μm以下であってもよく、15μm以上20μm以下であってもよく、20μm以上50μm以下であってもよく、20μm以上40μm以下であってもよく、20μm以上30μm以下であってもよく、30μm以上50μm以下であってもよく、30μm以上40μm以下であってもよく、40μm以上50μm以下であってもよい。
【0079】
蒸着マスク20を構成する支持体30およびマスク本体40は、例えば、ニッケルを含む鉄合金で構成されていてもよい。鉄合金は、ニッケルに加えてコバルトを更に含んでいてもよい。例えば、支持体30の材料およびマスク本体40の材料として、ニッケル及びコバルトの含有量が合計で30質量%以上且つ54質量%以下であり、且つコバルトの含有量が0質量%以上且つ6質量%以下である鉄合金を用いることができる。ニッケルを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上且つ38質量%以下のニッケルを含むインバー材、38質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金などを挙げることができる。ニッケル及びコバルトを含む鉄合金の具体例としては、30質量%以上且つ34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材などを挙げることができる。このような鉄合金を用いることにより、支持体30の熱膨張係数およびマスク本体40の熱膨張係数を低くすることができる。例えば、被蒸着基板91としてガラス基板が用いられる場合に、支持体30の熱膨張係数およびマスク本体40の熱膨張係数を、ガラス基板と同等の低い値にすることができる。これにより、蒸着工程の際、被蒸着基板91に形成される蒸着層92の形状精度や位置精度が、蒸着マスク20と被蒸着基板91との間の熱膨張係数の差に起因して低下することを抑制することができる。また、熱膨張係数をガラス基板と同等の低い値にしなくてもよい場合には、支持体30およびマスク本体40は、上述した鉄合金の代わりに、例えば、単体のニッケルで構成されていてもよい。この場合においても、上述した鉄合金と同様に、支持体30およびマスク本体40の熱膨張係数を低くすることができる。支持体30とマスク本体40とは、同一の材料で形成されていてもよいが、互いに異なる材料で形成されていてもよい。
【0080】
次に、このような構成からなる蒸着マスク20の製造方法について、
図6A~
図6Dを参照して説明する。
【0081】
まず、
図6Aに示すように、準備工程として、マスク本体40が形成された支持基板50を準備してもよい。
【0082】
例えば、マスク本体40をめっき処理によって作製する場合には、支持基板50に導電性パターン(図示せず)を形成し、この導電性パターンに、金属材料を析出させるめっき処理を行って、マスク本体40が作製されてもよい。導電性パターンには、めっき処理を行う前に離型剤が塗布されていてもよい。めっき処理によるマスク本体40の製造方法についての詳細な説明は省略する。
【0083】
また、例えば、マスク本体40を圧延材からのエッチング処理によって作製する場合には、圧延材をフォトファブリケーションの手法を用いたエッチング処理によって、貫通孔46が形成されたマスク本体40を予め作製する。作製されたマスク本体40を、支持基板50に、粘着層(図示せず)を介して剥離可能に貼り付ける。この粘着層は、粘着性を有する材料で作製されていてもよい。粘着層の材料は、例えば、紫外線を照射したり、または加熱されたりすることによって粘着性を喪失可能な材料で作製されていてもよい。
【0084】
支持基板50は、光透過性を有するガラスで作製されていてもよい。あるいは、支持基板50は、光透過性を有する樹脂材料(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリイミド等)で作製されていてもよい。
【0085】
準備工程の後、接合工程として、マスク本体40に支持体30が接合される。
【0086】
この場合、まず、
図6Bに示すように、マスク本体40の第2本体面40bに、支持体30の第1支持体面30aが重ね合わされる。支持体30は、任意の製造方法により製造することができる。例えば、上述したマスク本体40と同様に、フォトファブリケーションの手法を用いて圧延材をエッチング処理することにより製造されていてもよい。あるいは、上述したマスク本体40と同様に、支持基板(図示せず)に設けられた導電性パターン(図示せず)に金属材料を析出させるめっき処理を行い、その後に支持基板から分離させることにより製造されていてもよい。
【0087】
続いて、
図6Cに示すように、マスク本体40が支持体30に接合される。例えば、レーザ光LBを用いるスポット溶接によって、マスク本体40が支持体30に接合されて固定されてもよい。支持基板50が光透過性を有している場合、レーザ光LBは、支持基板50を透過させて、マスク本体40の第1本体面40aに照射させるようにしてもよい。レーザ光LBは、マスク本体40の外周縁に沿って、複数箇所で順次照射されてもよい。このことにより、
図2に示す溶接痕21が形成される。
【0088】
接合工程の後、分離工程として、
図6Dに示すように、支持基板50からマスク本体40が分離されてもよい。
【0089】
このようにして、支持体30にマスク本体40が積層された本実施形態による蒸着マスク20が得られる。
【0090】
次に、上述のようにして得られた蒸着マスク20を用いた蒸着基板の製造方法について、
図1および
図7を参照して説明する。
【0091】
蒸着基板の製造方法は、蒸着マスク20を用いて被蒸着基板91に蒸着材料83を付着させて蒸着層92を形成し、
図7に示すような蒸着基板90を得る方法である。蒸着基板90は、主として、被蒸着基板91と、被蒸着基板91に形成された蒸着層92とによって構成されており、有機EL表示装置などで用いられる。本実施形態による蒸着基板の製造方法は、蒸着マスク準備工程と、密着工程と、蒸着工程と、を備えていてもよい。
【0092】
まず、蒸着マスク準備工程として、上述した蒸着マスク20を準備してもよい。
【0093】
蒸着マスク準備工程の後、密着工程として、
図1に示すように、蒸着マスク20のマスク本体40のうち第1本体面40aを、被蒸着基板91に密着させてもよい。
【0094】
より具体的には、被蒸着基板91および蒸着マスク20が、蒸着源82に対向するように蒸着装置80の筐体81内に直立して配置される。被蒸着基板91の蒸着材料83を蒸着させる被蒸着面91aと蒸着マスク20のマスク本体40の第1本体面40aは、互いに接触させ、被蒸着面91aと第1本体面40aが、鉛直方向に沿うように配置される。
【0095】
ここで、被蒸着基板91および蒸着マスク20は、支持体30の第2方向D12に沿う外縁(第3外縁30eおよび第4外縁30f)が、鉛直方向に沿って直立するように配置される。この場合、上述した第1領域R1(および第1外縁30c)が上方に位置し、第2領域R2(および第2外縁30d)が下方に位置する。上述したように、本実施形態では、第1領域開口長さL1が、第2領域開口長さL2よりも長くなっている。このことにより、支持体30の第2領域R2に占める部分の重さよりも、第1領域R1に占める部分の重さを軽くすることができる。このため、蒸着マスク20を上述のように直立させた場合に、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことを抑制することができる。すなわち、第1領域R1の部分が重い場合には、当該部分が自重による座屈の現象で撓み、支持体30が全体として鉛直面から外れて湾曲する傾向にある。この場合、各貫通孔46の位置が下方に変位し、位置ずれを生じるという問題が考えられる。これに対して本実施形態では、上述したように、第1領域R1の部分の重さを軽くすることができることにより、当該部分が自重で撓むことを抑制することができる。このため、支持体30が全体として撓むことを抑制することができ、直立状態での蒸着マスク20の貫通孔46の位置精度を向上させることができる。
【0096】
被蒸着基板91および蒸着マスク20を直立させた後、被蒸着基板91の蒸着マスク20とは反対側の面に磁石85が配置されてもよい。この場合、蒸着マスク20と磁石85との間に被蒸着基板91が介在されて、磁石85の磁力で蒸着マスク20を被蒸着基板91に引き寄せてもよい。このことにより、被蒸着基板91の被蒸着面91aに、マスク本体40の第1本体面40aが密着することができる。すなわち、上述したように、磁石85により蒸着マスク20を引き寄せる前の直立状態で支持体30が撓むことを抑制して貫通孔46の位置精度を向上させている。このことにより、支持体30が撓んで貫通孔46の位置ずれが生じている状態で蒸着マスク20が被蒸着基板91に密着してしまうことを抑制できる。このため、蒸着マスク20が被蒸着基板91に密着した状態においても、貫通孔46の位置精度を向上させることができる。
【0097】
密着工程の後、蒸着工程として、蒸着マスク20の貫通孔46を通して蒸着材料83を被蒸着基板91に蒸着させてもよい。このことにより、被蒸着基板91に蒸着層92が形成された蒸着基板90が得られる。より具体的には、蒸着装置80の内部空間を真空雰囲気にし、蒸着材料83を加熱して蒸発させる。蒸発した蒸着材料83は、蒸着源82から被蒸着基板91に向かって側方に飛来する。飛来した蒸着材料83は、蒸着マスク20の支持体30の各支持体開口31および各貫通孔46を通って被蒸着基板91の被蒸着面91aに到達して付着する。このようにして、被蒸着基板91に、貫通孔46のパターンに対応したパターンで形成された蒸着層92を備えた蒸着基板90が得られる。
【0098】
上述したように、本実施形態では、貫通孔46が各有効領域47において所定のパターンで配置されている。複数の色によるカラー表示を行いたい場合には、各色に対応する蒸着マスク20を準備し、各蒸着マスク20で被蒸着基板91に各色の蒸着材料83を順次付着させる。これにより、例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を一の被蒸着基板91にそれぞれ蒸着させることができる。
【0099】
このようにして、被蒸着基板91に、各色の蒸着層92が形成された蒸着基板90が得られる。
【0100】
このように本実施形態によれば、支持体30の第1領域R1において基準線SLのうち支持体開口31と重なる部分の長さである第1領域開口長さL1が、第2領域R2において基準線SLのうち支持体開口31と重なる部分の長さである第2領域開口長さL2よりも長くなっている。このことにより、蒸着マスク20を、支持体30の第1外縁30cが上部に位置するように直立させた場合、支持体30のうち下方に位置する第2領域R2における部分の重さよりも、上方に位置する第1領域R1における部分の重さを軽くすることができる。このため、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことを抑制することができる。この場合、直立状態での蒸着マスク20の貫通孔46の位置精度を向上させることができる。この結果、被蒸着基板91に形成される蒸着層92の形状精度および位置精度を向上させることができ、蒸着層92の精細度を高めることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、第2方向D12において隣り合う支持体開口31の間に、第1方向D11に延びる第1桟部33が介在され、第1桟部33が、第2領域R2に位置している。このことにより、第1桟部33によって支持体30の機械的強度を高めることができる。また、蒸着マスク20を、支持体30の第1外縁30cが上部に位置するように直立させた場合、第1桟部33は第2領域R2に位置しているため、支持体30のうち上方に位置する第1領域R1における部分の重さが重くなることを抑制することができる。このため、支持体30の機械的強度を高めつつ、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことを抑制することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、第1領域R1に位置する第1桟部33の第2方向の長さが、第2領域R2に位置する第1桟部33の第2方向D12の長さよりも短くなっている。このことにより、蒸着マスク20を、支持体30の第1外縁30cが上部に位置するように直立させた場合、支持体30のうち上方に位置する第1領域R1における第1桟部33の重さを、下方に位置する第2領域R2における第1桟部33の重さよりも軽くすることができる。また、第1領域R1および第2領域R2の各々に第1桟部33を設けることにより、支持体30の機械的強度を第1領域R1および第2領域R2の各々で高めることができる。このため、支持体30の機械的強度をより一層高めつつ、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことを抑制することができる。
【0103】
また、本実施形態によれば、第1方向D11において第1開口列35aに離間した第2開口列35bに基準線SLを重ねたときに、第1領域開口長さL1が、第2領域開口長さL2よりも長くなっている。このことにより、蒸着マスク20を、支持体30の第1外縁30cが上部に位置するように直立させた場合、支持体30のうち下方に位置する第2領域R2における部分の重さよりも、上方に位置する第1領域R1における部分の重さをより一層軽くすることができる。このため、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことをより一層抑制することができる。
【0104】
また、本実施形態によれば、第1開口列35aの支持体開口31と、第2開口列35bの支持体開口31は、第1方向D11において整列されている。このことにより、各開口列に基準線SLを重ねても、第1領域開口長さL1を、第2領域開口長さL2よりも長くすることができる。このため、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことをより一層抑制することができる。
【0105】
なお、上述した本実施形態においては、第1開口列35a~第6開口列35fを構成する各支持体開口31が、第1方向D11において整列されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1変形例として
図8に示すように、各開口列35a~35fを構成する各支持体開口31は、第1方向D11において整列されていなくてもよい。
図8に示す例では、最も左側に位置する開口列を第5開口列35eとし、最も右側に位置する開口列を第6開口列35fとし、残りの4つの開口列を左側から右側に向かって第1開口列35a~第4開口列35dがこの順番に配置されている例を示している。
【0106】
例えば、
図8に示すように、第1開口列35a~第4開口列35dを構成する各支持体開口31が第1方向D11において整列されるが、第5開口列35eを構成する各支持体開口31が、第1開口列35a~第4開口列35dを構成する各支持体開口31と、第1方向D11において整列されていなくてもよい。第6開口列35fを構成する各支持体開口31が、第1開口列35a~第4開口列35dを構成する各支持体開口31と、第1方向D11において整列されていなくてもよい。第5開口列35eを構成する支持体開口31と第6開口列35fを構成する支持体開口31とは、第1方向D11において整列されていてもよい。
【0107】
図8に示す第1変形例では、平面視で、基準線SLを第1開口列35aに重ねたときに、第1領域開口長さL1が、第2領域開口長さL2よりも長くなっていてもよい。基準線SLを第2開口列35b~第4開口列35dのいずれに重ねたときでも同様である。また、第1領域開口長さL1と第2領域開口長さL2との差は、第1開口列35a~第4開口列35dの任意の組み合わせにおいて等しくなっていてもよいが、異なっていてもよい。なお、基準線SLを第5開口列35eおよび第6開口列35fに重ねたときには、第1領域開口長さL1と、第2領域開口長さL2は、等しくなっていてもよい。
【0108】
なお、第1領域開口長さL1が第2領域開口長さL2よりも長くなる開口列は、第1開口列35a~第4開口列35dに限られることはなく、任意である。例えば、第1領域開口長さL1が第2領域開口長さL2よりも長くなる開口列は、第1開口列35a~第6開口列35fのうちの少なくとも1つの任意の開口列であってもよい。
【0109】
このように
図8に示す第1変形例によれば、基準線SLを第1開口列35aに重ねたときに、第1領域開口長さL1が、第2領域開口長さL2よりも長くなっている。このことにより、蒸着マスク20を、支持体30の第1外縁30cが上部に位置するように直立させた場合、支持体30のうち下方に位置する第2領域R2における部分の重さよりも、上方に位置する第1領域R1における部分の重さを軽くすることができる。このため、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことを抑制することができる。この場合、直立状態での蒸着マスク20の貫通孔46の位置精度を向上させることができる。この結果、被蒸着基板91に形成される蒸着層92の形状精度および位置精度を向上させることができ、蒸着層92の精細度を高めることができる。
【0110】
また、上述した本実施形態においては、1つの支持体開口31に、1つの貫通孔群45が平面視で重なっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。第2変形例として
図9および
図10に示すように、1つの支持体開口31に、2つ以上の貫通孔群45が平面視で重なっていてもよい。
【0111】
例えば、
図9に示すように、支持体30は、4つの支持体開口31を有していてもよい。4つの支持体開口31は、2つの第1支持体開口61と、2つの第2支持体開口62と、で構成されていてもよい。
図9に示す例では、第1開口列35aおよび第2開口列35bがそれぞれ、第2方向D12において整列された第1支持体開口61および第2支持体開口62によって構成されている。
【0112】
第1支持体開口61は、第1領域R1の側に位置するとともに、第1外縁30cに最も近くに位置していてもよい。第2支持体開口62は、第2領域R2の側に位置するとともに、第2外縁30dに最も近くに位置していてもよい。第1支持体開口61および第2支持体開口62はいずれも、平面視で矩形状に形成されているが、第1支持体開口61の開口面積は、第2支持体開口62の開口面積よりも大きくなっていてもよい。
【0113】
第1支持体開口61は、対応する第2支持体開口62と、第2方向D12で整列されていてもよい。より具体的には、第1支持体開口61の第1方向D11の長さと、第2支持体開口62の第1方向D11の長さは等しくなっている。そして、第1支持体開口61の第2方向D12に延びる一対の側縁と、対応する(当該第1支持体開口61と第2方向D12で整列された)第2支持体開口62の第2方向D12に延びる一対の側縁とが、同一直線上に位置しており、第1方向D11において同じ位置に位置している。
【0114】
2つの第1支持体開口61は、第1方向D11に整列されていてもよい。より具体的には、第1支持体開口61の各々の第2方向D12の長さは、等しくなっている。そして、各第1支持体開口61の第1方向D11に延びる一対の側縁が、同一直線上に位置しており、第2方向D12において同じ位置に位置している。
【0115】
同様に、第2支持体開口62は、第1方向D11に整列されていてもよい。より具体的には、第2支持体開口62の各々の第2方向D12の長さは、等しくなっている。そして、各第2支持体開口62の第1方向D11に延びる一対の側縁が、同一直線上に位置しており、第2方向D12において同じ位置に位置している。
【0116】
第2方向D12において整列した第1支持体開口61と第2支持体開口62との間に、第1桟部33が介在されている。第1桟部33は、第2領域R2に位置している。第1領域R1には、第1桟部33は存在していない。このことにより、蒸着マスク20を、支持体30の第1外縁30cが上部に位置するように直立させた場合、支持体30の第1領域R1における部分の重さが重くなることを抑制することができる。
【0117】
第1支持体開口61は、中間線MLを跨いで第2領域R2に延びている。言い換えると、第1支持体開口61の一部は、第1領域R1に位置しているが、残りの一部は、第2領域R2に位置している。第2支持体開口62は、全体として第2領域R2に位置している。
【0118】
図10に示す支持体30においても、第1領域R1に位置する支持体開口31の高さの合計値が、第2領域R2に位置する支持体開口31の高さの合計値よりも大きくなっていてもよい。
【0119】
より具体的には、
図10に示すように、平面視で、基準線SLを第1開口列35aに重ねたときに、第1領域開口長さL1が、第2領域開口長さL2よりも長くなっていてもよい。上述したように、第2方向D12において第1支持体開口61と対応する第2支持体開口62とが整列している場合、第1領域開口面積は、第2領域開口面積よりも大きくなる。
【0120】
図10に示す第2変形例においては、第1領域開口長さL1は、上側に位置するとともに中間線MLに跨がっている第1支持体開口61のうち第1領域R1に位置する部分の第2方向D12の長さL13となる。第2領域開口長さL2は、第1支持体開口61のうち第2領域R2に位置する部分の第2方向D12の長さL23と、下側に位置する第2支持体開口62の第2方向D12の長さL24と、の合計値になる。
【0121】
マスク本体40は、2つ以上の貫通孔群45を有していてもよい。
図9に示す第2変形例においては、蒸着マスク20は、4つのマスク本体40を備えている。4つのマスク本体40は、2つの第1マスク本体71と、2つの第2マスク本体72と、で構成されていてもよい。
【0122】
第1マスク本体71は、2つ以上の貫通孔群45を有していてもよい。
図9に示す例では、第1マスク本体71は、6つの貫通孔群45を有している。第1マスク本体71の各貫通孔群45は、第1支持体開口61に重なっており、6つの貫通孔群45が第1支持体開口61から露出している。
【0123】
同様に、第2マスク本体72は、2つ以上の貫通孔群45を有していてもよい。
図9に示す例では、第2マスク本体72は、3つの貫通孔群45を有している。第2マスク本体72の各貫通孔群45は、第2支持体開口62に重なっており、3つの貫通孔群45が第2支持体開口62から露出している。
【0124】
このように
図9および
図10に示す第2変形例によれば、第1領域R1において基準線SLのうち支持体開口31と重なる部分の長さである第1領域開口長さL1が、第2領域R2において基準線SLのうち支持体開口31と重なる部分の長さである第2領域開口長さL2よりも長くなっている。このことにより、蒸着マスク20を、支持体30の第1外縁30cが上部に位置するように直立させた場合、支持体30のうち下方に位置する第2領域R2における部分の重さよりも、上方に位置する第1領域R1における部分の重さを軽くすることができる。このため、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことを抑制することができる。この場合、直立状態での蒸着マスク20の貫通孔46の位置精度を向上させることができる。この結果、被蒸着基板91に形成される蒸着層92の形状精度および位置精度を向上させることができ、蒸着層92の精細度を高めることができる。
【0125】
また、
図9および
図10に示す第2変形例によれば、支持体30の第1外縁30cに最も近くに位置する第1支持体開口61が、中間線MLを跨いで第2領域R2に延びている。このことにより、第1領域R1に第1桟部33を設けることを回避でき、支持体30のうち下方に位置する第2領域R2における部分の重さよりも、上方に位置する第1領域R1における部分の重さを軽くすることができる。このため、支持体30のうち第1領域R1の部分が自重で撓むことを抑制することができる。
【0126】
また、上述した本実施の形態においては、支持体30の第2支持体面30bに、フレームなどの部材が設けられない例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、支持体30の第2支持体面30bに、図示しないフレームが設けられていてもよい。フレームは、例えばスポット溶接によって支持体30に接合されていてもよい。フレームは、例えば、平面視で矩形枠状に形成されていてもよい。この場合、フレームは、フレーム開口を有し、フレーム開口に、全ての貫通孔群45が平面視で重ね合わされて露出されるようにしてもよい。被蒸着基板91に蒸着材料83を蒸着させる蒸着工程においては、蒸着源82からフレーム開口、支持体開口31および貫通孔46を通って被蒸着基板91の被蒸着面91aに蒸着材料83が飛来する。
【0127】
また、上述した本実施の形態においては、マスク本体40が、エッチング処理またはめっき処理で製造される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。
【0128】
例えば、
図11に示すように、マスク本体40は、支持体30の側に設けられた金属層41と、支持体30とは反対側に設けられた樹脂層42と、を有していてもよい。この場合、金属層41は、第2本体面40bの側に位置する。樹脂層42は、第1本体面40aの側に位置し、金属層41に積層される。貫通孔46は、金属層41および樹脂層42を貫通している。すなわち、貫通孔46は、金属層41を貫通する金属層貫通孔43と、樹脂層42を貫通する樹脂層貫通孔44と、を含んでいる。金属層貫通孔43は、樹脂層貫通孔44毎に設けられて、対応する一の樹脂層貫通孔44に連通して当該樹脂層貫通孔44に平面視で重なるように位置していてもよい。図示しないが、複数の金属層貫通孔43が一体に形成されて、樹脂層貫通孔44よりも大きな平面面積を有する開口を形成するようにしてもよい。金属層41は、上述したマスク本体40と同様の材料で構成されていてもよい。樹脂層42は、例えば、ポリイミドで構成されていてもよい。
【0129】
図11に示すマスク本体40を作製する場合、まず、例えば、支持基板上にポリイミドワニス等の樹脂溶液を塗布して加熱、乾燥させて樹脂層42を形成し、その樹脂層42上に、金属層貫通孔43に対応するようにパターン状のシード層を形成してシード層上にめっき処理によって金属材料を析出させて金属層41を形成してもよい。樹脂層貫通孔44は、レーザ光を樹脂層42に照射することにより形成することができる。この場合、貫通孔46の形状精度および位置精度を向上させることができる。
【0130】
また、上述した本実施の形態においては、蒸着マスク20を鉛直方向に沿うように配置した縦型蒸着装置に適用する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、蒸着マスク20を水平方向に沿うように配置した横型蒸着装置に適用してもよい。