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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/18 20060101AFI20231214BHJP
   H01R 13/04 20060101ALI20231214BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01R13/18 Z
H01R13/04 A
H01R13/11 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020206268
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093148
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160768(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1933425(EP,A1)
【文献】国際公開第2013/073118(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/167599(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2779314(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3336967(EP,A1)
【文献】米国特許第8920201(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/00-13/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向配置される第1周壁部と第2周壁部を含んで構成されて、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、
前記第1周壁部と前記第2周壁部の相互に対向する一対の周端部から、相互に離隔して前記筒状接続部の径方向外方に突出して相互に接近する方向で撓み変形可能な一対の先端側板部と、
前記一対の先端側板部を相互に接近する方向に付勢して、前記第1周壁部と前記第2周壁部に対して相互に接近する接近方向への付勢力を及ぼす弾性部材と、
前記一対の先端側板部の一対の対向面の少なくとも一方に設けられて、他方の前記対向面に向かって突出するストッパ部と、を有し、
前記ストッパ部は、前記一対の先端側板部の先端部よりも前記筒状接続部に近い位置に設けられており、他方の前記対向面に当接することで、前記一対の先端側板部の前記接近方向の変位を制限して前記一対の先端側板部の先端部同士を離隔状態に維持し、
前記一対の先端側板部同士および前記第1周壁部と前記第2周壁部が、前記弾性部材の付勢力に抗して前記接近方向と反対方向に離隔変位することにより、前記雄端子の前記柱状接続部の前記筒状接続部への挿入が許容される、
雌端子。
【請求項2】
前記ストッパ部は、前記一対の先端側板部への前記弾性部材の前記付勢力の付与部位よりも前記筒状接続部側に設けられている、請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方が、径方向内方に突出する接点部を有し、
前記筒状接続部において、前記雄端子の前記柱状接続部の前記筒状接続部への挿入方向の手前側の端部では、内径寸法が前記柱状接続部の径寸法よりも大きく、前記接点部の形成部位では、内径寸法が前記柱状接続部の径寸法よりも小さい、請求項1または請求項2に記載の雌端子。
【請求項4】
前記第1周壁部と前記第2周壁部の両方が断面円弧形状の内面を有し、前記第1周壁部と前記第2周壁部の一方の前記内面に、該内面の周方向に延出する円弧状突部が設けられており、前記円弧状突部により前記接点部が構成されている、請求項3に記載の雌端子。
【請求項5】
前記第1周壁部と前記第2周壁部の他方の前記内面に、前記筒状接続部の軸方向に延出する線状接触部が、周方向に離隔した複数箇所に設けられており、前記線状接触部により前記接点部が構成されている、請求項4に記載の雌端子。
【請求項6】
前記弾性部材が、連結板と、前記連結板の両端部から前記連結板の板厚方向の一方側に突出して互いに接近する方向に傾斜する一対の押え片と、を有し、
前記弾性部材は、前記一対の押え片の間に前記一対の先端側板部の先端部を挟んだ状態で、前記一対の先端側板部に組み付けられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雌端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、略円柱状の柱状接続部を有する雄端子が接続される、略円筒状の筒状接続部を有する雌端子が開示されている。特許文献1に記載の雌端子では、筒状接続部の内部に、先端開口部から後方に折り返された弾性接触片が設けられている。この弾性接触片の弾性復帰力により、弾性接触片の端部が雄端子の柱状接続部に押圧されて、雄端子と雌端子が接触状態に保持されて電気的接続が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-24901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来構造の雌端子においては、弾性接触片の端部が雄端子の柱状
接続部に押圧されることにより、雄端子と雌端子が接触状態に保持される。そのため、弾性接触片のばね力のみでは、雌雄端子間の接圧を向上させるには限界があった。さらに、弾性接触片の経年変化により雌雄端子間の接圧を安定して保持し難いおそれもあった。
【0005】
そこで、雄端子の柱状接続部への雌端子の筒状接続部の接圧の向上を図り、雌雄端子間の接圧の減少を抑制できる、新規な構造の雌端子を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の雌端子は、相互に対向配置される第1周壁部と第2周壁部を含んで構成されて、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、前記第1周壁部と前記第2周壁部の相互に対向する一対の周端部から、相互に離隔して前記筒状接続部の径方向外方に突出して相互に接近する方向で撓み変形可能な一対の先端側板部と、前記一対の先端側板部を相互に接近する方向に付勢して、前記第1周壁部と前記第2周壁部に対して相互に接近する接近方向への付勢力を及ぼす弾性部材と、前記一対の先端側板部の一対の対向面の少なくとも一方に設けられて、他方の前記対向面に向かって突出するストッパ部と、を有し、前記ストッパ部は、前記一対の先端側板部の先端部よりも前記筒状接続部に近い位置に設けられており、他方の前記対向面に当接することで、前記一対の先端側板部の前記接近方向の変位を制限して前記一対の先端側板部の先端部同士を離隔状態に維持し、前記一対の先端側板部同士および前記第1周壁部と前記第2周壁部が、前記弾性部材の付勢力に抗して前記接近方向と反対方向に離隔変位することにより、前記雄端子の前記柱状接続部の前記筒状接続部への挿入が許容される、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の雌端子によれば、雄端子の柱状接続部への雌端子の筒状接続部の接圧の向上を図り、雌雄端子間の接圧の減少を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る雌端子を、雄端子の挿入状態で示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された雌端子の分解斜視図である。
図3図3は、図1に示された雌端子の別の角度からの分解斜視図である。
図4図4は、図1に示された雌端子の更に別の角度からの分解斜視図である。
図5図5は、図1におけるV-V断面図である。
図6図6は、図5におけるVI-VI断面図である。
図7A図7Aは、雌端子金具に弾性部材を装着する状態をモデル的に説明するための説明図である。
図7B図7Bは、雌端子金具に弾性部材を装着した雌端子の初期状態をモデル的に説明するための説明図である。
図7C図7Cは、雌端子に雄端子を挿入した状態をモデル的に説明するための説明図である。
図7D図7Dは、経時変化により応力緩和して雌端子金具の先端が相互に接近した状態をモデル的に説明するための説明図である。
図8A図8Aは、雌端子に対して雄端子を挿入する際の状態をモデル的に説明するための説明図であって、雌端子および雄端子を図5におけるVIIIA-VIIIA断面で示す図である。
図8B図8Bは、雌端子に対して雄端子を挿入した直後の状態をモデル的に説明するための説明図であって、雌端子および雄端子を図8Aと同じ断面で示す図である。
図8C図8Cは、雌端子に対する雄端子の挿入途中の状態をモデル的に説明するための説明図であって、雌端子および雄端子を図8Aと同じ断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の雌端子は、
(1)相互に対向配置される第1周壁部と第2周壁部を含んで構成されて、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、前記第1周壁部と前記第2周壁部の相互に対向する一対の周端部から、相互に離隔して前記筒状接続部の径方向外方に突出して相互に接近する方向で撓み変形可能な一対の先端側板部と、前記一対の先端側板部を相互に接近する方向に付勢して、前記第1周壁部と前記第2周壁部に対して相互に接近する接近方向への付勢力を及ぼす弾性部材と、前記一対の先端側板部の一対の対向面の少なくとも一方に設けられて、他方の前記対向面に向かって突出するストッパ部と、を有し、前記ストッパ部は、前記一対の先端側板部の先端部よりも前記筒状接続部に近い位置に設けられており、他方の前記対向面に当接することで、前記一対の先端側板部の前記接近方向の変位を制限して前記一対の先端側板部の先端部同士を離隔状態に維持し、前記一対の先端側板部同士および前記第1周壁部と前記第2周壁部が、前記弾性部材の付勢力に抗して前記接近方向と反対方向に離隔変位することにより、前記雄端子の前記柱状接続部の前記筒状接続部への挿入が許容される、ものである。
【0010】
本開示の雌端子によれば、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部が、相互に対向配置される第1周壁部と第2周壁部を含んで構成されている。第1周壁部と前記第2周壁部の各周端部から径方向外方に突出する一対の先端側板部は、相互に離隔している。一対の先端側板部は、弾性部材により相互に接近する方向に付勢されている。これにより、第1周壁部と第2周壁部に対して相互に接近する接近方向への付勢力を及ぼすことができる。このように、一対の先端側板部同士を、別体の弾性部材により相互に接近する方向に付勢することにより、雌端子の筒状接続部に縮径方向の付勢力を及ぼすことができる。そして、一対の先端側板部同士および第1周壁部と第2周壁部が、弾性部材の付勢力に抗して接近方向と反対方向に離隔変位することにより、雄端子の柱状接続部の筒状接続部への挿入が許容される。それゆえ、雄端子の柱状接続部への雌端子の筒状接続部の接圧を別途一対の先端側板部に装着される弾性部材により得ることができ、従来の筒状接続部内に設けられた弾性接触片による場合に比して、雄端子の柱状接続部への雌端子の筒状接続部の接圧の向上を図ることができる。
【0011】
加えて、先端側板部には、先端部よりも筒状接続部側に位置してストッパ部が設けられており、弾性部材の付勢力による一対の先端側板部の接近方向の変位が制限されて、一対の先端側板部の先端部同士が離隔状態に維持されている。それゆえ、一対の先端側板部の先端部同士が離隔している分、雄端子の柱状接続部が挿入される前の筒状接続部の第1周壁部と第2周壁部の対向隙間を比較的大きく確保することができ、雄端子の柱状接続部の雌端子の筒状接続部への挿入抵抗の低減を図ることもできる。加えて、ストッパ部により、雄端子の柱状接続部が挿入される前において、一対の先端側板部の先端部同士が離隔していることから、雄端子の柱状接続部の挿入後における一対の先端側板部の先端部同士の離隔距離もその分大きく確保できる。その結果、一対の先端側板部の材料の経年による応力緩和等により一対の先端側板部の先端部同士が接触することを抑制することができる。その結果、弾性部材の付勢力が一対の先端側板部の先端側に分散されて、筒状接続部の柱状接続部への接圧が減少する不具合も抑制または防止できる。さらに、ストッパ部は、先端側板部の先端部よりも筒状接続部側に設けられている。それゆえ、先端部よりも一対の先端側板部の材料の経年による応力緩和の影響を受けにくく、一対の先端側板部の応力緩和によりストッパ部同士が当接することも抑制できる。
【0012】
(2)前記ストッパ部は、前記一対の先端側板部への前記弾性部材の前記付勢力の付与部位よりも前記筒状接続部側に設けられている、ことが好ましい。ストッパ部が、一対の先端側板部への弾性部材の付勢力の付与部位よりも筒状接続部に近いことから、雌端子の材料の応力緩和による変位の影響をより受けにくい。そのため、ストッパ部同士の当接も有利に抑制することができ、ストッパ部の加工寸法公差を小さく設定して筒状接続部の内径をより大きく確保することも可能となる。
【0013】
(3)前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方が、径方向内方に突出する接点部を有し、前記筒状接続部において、前記雄端子の前記柱状接続部の前記筒状接続部への挿入方向の手前側の端部では、内径寸法が前記柱状接続部の径寸法よりも大きく、前記接点部の形成部位では、内径寸法が前記柱状接続部の径寸法よりも小さい、ことが好ましい。
【0014】
ストッパ部により先端側板部の接近方向の変位を制限して一対の先端側板部の先端部同士を離隔状態に安定して維持できる。それゆえ、一対の先端側板部の先端部同士の離隔距離を大きくするために、一対の先端側板部をそれぞれの先端部に向かうにつれて対向隙間が大きくなるよう径方向外方に突出させる必要性が低くなる。その結果、第1周壁部と第2周壁部の径方向の対向距離である筒状接続部の内径寸法を、大きく確保しつつ、一対の先端側板部の先端部同士を離隔状態に維持できる。これにより、筒状接続部の内径寸法を、接点部の形成部位では、柱状接続部の径寸法よりも小さくして、柱状接続部と筒状接続部の接圧を確保しつつ、柱状接続部の筒状接続部への挿入方向の手前側の端部では、筒状接続部の内径寸法を柱状接続部の径寸法よりも大きくすることが可能となる。それゆえ、雄端子の柱状接続部が接点部に当接するまでは、筒状接続部に柱状接続部を圧入する必要がなく、雄端子の雌端子への挿入力の低減を図ることができる。
【0015】
(4)上記(3)において、前記第1周壁部と前記第2周壁部の両方が断面円弧形状の内面を有し、前記第1周壁部と前記第2周壁部の一方の前記内面に、該内面の周方向に延出する円弧状突部が設けられており、前記円弧状突部により前記接点部が構成されている、ことが好ましい。第1周壁部と第2周壁部の両方が断面円弧状の内面を有し、一方の内面には、該内面の周方向に延出する円弧状突部が設けられている。それゆえ、雌端子の筒状接続部に圧入された雄端子の柱状接続部の外周面の広い範囲に高い接圧で円弧状突部を圧接させることができ、雌雄端子間の接触面積を広く安定して確保することができる。
【0016】
(5)上記(4)において、前記第1周壁部と前記第2周壁部の他方の前記内面に、前記筒状接続部の軸方向に延出する線状接触部が、周方向に離隔した複数箇所に設けられており、前記線状接触部により前記接点部が構成されている、ことが好ましい。第1周壁部と第2周壁部の他方の内面には、筒状接続部の軸方向に延出する線状接触部が、周方向に離隔した複数箇所に設けられている。これにより、電線から雄端子に揺動が伝達された場合でも、雄端子の揺動変位を、複数の線状接触部への雄端子の当接により阻止することができる。それゆえ、第1周壁部と第2周壁部の一方の円弧状突部により、雄端子の柱状接続部の外周面の広い範囲に高い接圧で圧接しつつ、第1周壁部と第2周壁部の他方の複数の線状接触部により雄端子の揺動変位を阻止することができ、雄端子への接触面積の増大と雄端子の安定した保持とを両立して達成することができる。
【0017】
(6)前記弾性部材が、連結板と、前記連結板の両端部から前記連結板の板厚方向の一方側に突出して互いに接近する方向に傾斜する一対の押え片と、を有し、前記弾性部材は、前記一対の押え片の間に前記一対の先端側板部の先端部を挟んだ状態で、前記一対の先端側板部に組み付けられている、ことが好ましい。弾性部材を簡単な構造で製造することができ、雌雄端子を接続状態に安定して保持することができる。しかも、弾性部材は、一対の押え片の間に一対の先端側板部の先端部を挟んだ状態で、一対の先端側板部に組み付けられることから、雌端子の大型化を招くことなく弾性部材を設けることができる。
【0018】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の雌端子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1の雌端子10について、図1から図8Cを用いて説明する。雌端子10は、雄端子12の柱状接続部14と導通接続される筒状接続部16を備えている。そして、雌端子10の筒状接続部16に雄端子12の柱状接続部14が挿入されて、筒状接続部16の内面と柱状接続部14の外面とが相互に接触することで、雌端子10と雄端子12とが電気的に接続されるようになっている。なお、雄端子12は柱状接続部14を備えていれば限定されるものではなく、雄端子12における柱状接続部14と反対側の端部は、例えばボルト等で機器の端子部に固定されてもよいし、電線に固着されてもよい。以下の説明において、前方とは図5中の左方をいい、後方とは図5中の右方をいう。上方とは図5中の上方をいい、下方とは図5中の下方をいう。左方とは図6中の左方をいい、右方とは図6中の右方をいう。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0020】
<雌端子10>
雌端子10は、雌端子金具17に後述する弾性部材としてのクリップばね66が組み付けられることで構成されている。雌端子金具17は、全体として略帯状とされた金属平板を所定の形状にプレス加工することで形成されている。金属平板を構成する金属としては、電気抵抗の低い銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を採用することができる。雌端子金具17は、前述の筒状接続部16を備えている。
【0021】
<筒状接続部16>
筒状接続部16は、全体として略円筒形状であり、左右方向両側に開口している。すなわち、筒状接続部16の軸方向は左右方向である。筒状接続部16は、上下方向で相互に対向配置される第1周壁部18と第2周壁部20を含んで構成されている。実施形態1では、第1周壁部18が上側に位置しているとともに、第2周壁部20が下側に位置している。第1周壁部18と第2周壁部20は、それぞれ略半割の筒状体であり、図5に示される雌端子10の縦断面において、それぞれ断面円弧形状の内面22,24を有している。したがって、図5にも示されるように、雌端子10の筒状接続部16に雄端子12の柱状接続部14が挿入された際には、柱状接続部14の外面と、第1および第2周壁部18,20の内面22,24とが相互に接触するようになっている。
【0022】
第1周壁部18は、軸方向(左右方向)の全長に亘って、一定の断面形状を有している。第1周壁部18の内面22は、略一定の曲率の湾曲面とされてもよいが、実施形態1では、第1周壁部18の内面22は、周方向で部分的に曲率が異ならされている。具体的には、内面22において、周方向中央部分よりも周方向両端側に離隔した2箇所において、周方向中央部分よりも曲率が小さくされた部分が設けられている。これにより、図5に示される雌端子10の縦断面において、内面22の周方向中央部分が略一定の曲率を有する円弧形状であるとともに、その円弧の周方向両端には、略直線状に延びる部分が接続されている。要するに、内面22が略一定の曲率の湾曲面とされる場合に比べて、周方向中央部分よりも周方向両端側に離隔した2箇所は、径方向内方に突出している。
【0023】
それゆえ、筒状接続部16に柱状接続部14が挿入された際には、内面22における周方向中央部分よりも周方向両端側に離隔した2箇所で、第1周壁部18の内面22と柱状接続部14の外面とが接触する。第1周壁部18は、一定の断面形状をもって軸方向に延びていることから、第1周壁部18と柱状接続部14とは、周方向中央部分よりも周方向両端側に離隔した2箇所で、線接触の態様で接触している。実施形態1では、第1周壁部18において、内面22の曲率が小さくされて柱状接続部14の挿入時に柱状接続部14の外面と接触する部分が線状接触部26であって、この線状接触部26により柱状接続部14との上側の接点部が構成される。すなわち、他方の内面としての第1周壁部18の内面22には、筒状接続部16の軸方向に延出しつつ径方向内方に突出する接点部としての線状接触部26が、周方向に離隔した複数箇所(2箇所)に設けられている。したがって、実施形態1では、筒状接続部16に柱状接続部14を挿入した際に、内面22の周方向中央部分と柱状接続部14の外面とは、接触しないようになっている。
【0024】
一方の内面としての第2周壁部20の内面24には、軸方向(左右方向)の中央部分において、内面24の周方向に延出しつつ径方向内方に突出する円弧状突部28が設けられている。この円弧状突部28は、内面24の周方向中央部分において、所定の幅方向寸法(左右方向寸法)と所定の周方向寸法をもって形成されている。実施形態1では、円弧状突部28が、第2周壁部20にプレス加工を施すことにより形成されており、第2周壁部20の外面において、円弧状突部28と対応する位置には、外方(下方)に開口する凹部30が形成されている。したがって、筒状接続部16に柱状接続部14が挿入された際には、円弧状突部28と柱状接続部14の外面とが接触することとなり、円弧状突部28により柱状接続部14との下側の接点部が構成される。実施形態1では、図5において、円弧状突部28の内面の曲率が柱状接続部14の外面の曲率よりも小さくされており、特に円弧状突部28の内面の周方向中央が柱状接続部14との下側の接点部である。
【0025】
また、図6にも示されるように、円弧状突部28は、左右方向中央において最も径方向内方に突出しており、柱状接続部14を筒状接続部16に挿入した際には、円弧状突部28の左右方向中央と柱状接続部14の外面とが相互に接触する。したがって、円弧状突部28の内面のうち、特に左右方向中央が柱状接続部14との下側の接点部である。そして、円弧状突部28の内面において、左右方向中央を挟んだ両側は、左右方向内方になるにつれて筒状接続部16の径方向内方に次第に湾曲して突出する湾曲面31,31である。
【0026】
なお、後述するように、雌端子金具17にクリップばね66が装着された雌端子10の初期状態において、筒状接続部16の内径寸法φα(図7B図8A参照)は、雄端子12における柱状接続部14の外径寸法φγ(図8A参照)と略等しいか僅かに大きくされている。また、雌端子金具17にクリップばね66が装着された雌端子10の初期状態において、筒状接続部16の接点部における内径寸法φβ(図7B図8A参照)は、雄端子12における柱状接続部14の外径寸法φγよりも僅かに小さくされている。すなわち、筒状接続部16において、柱状接続部14の筒状接続部16への挿入方向(右方から左方への方向)の手前側(右側)の端部では、内径寸法φαが、柱状接続部14の外径寸法φγと略等しいか僅かに大きくされている。また、筒状接続部16において、接点部の形成部位では、内径寸法φβが、柱状接続部14の外径寸法φγよりも僅かに小さくされている。
【0027】
上記のような形状とされた第1周壁部18と第2周壁部20の後端部において、上下方向で相互に対向する周方向端部が、それぞれ第1周端部32,32である。これら一対の第1周端部32,32は、上下方向で所定の離隔距離を隔てて、相互に対向している。また、第1周壁部18と第2周壁部20の前端部において、上下方向で相互に対向する周方向端部が、それぞれ周端部としての第2周端部34,34である。これら一対の第2周端部34,34は、上下方向で所定の離隔距離を隔てて、相互に対向している。
【0028】
<基端側板部36>
そして、一対の第1周端部32,32には、それぞれ筒状接続部16の径方向外方(後方)に突出する一対の基端側板部36,36が設けられている。前述のように、雌端子金具17は、略帯状とされた金属平板をプレス加工することによって形成されており、一対の基端側板部36,36は、基端側板部36,36の後方部分で相互に連結されている。一対の基端側板部36,36は、それぞれ上下方向視において略矩形状である。上下の基端側板部36,36は、後端部において、左方に設けられた連結部38により相互に連結されているとともに、上側の基端側板部36の後端部には、右方に突出するかしめ片40が設けられている。これにより、金属平板をプレス加工して雌端子金具17を形成する際に、かしめ片40が折り曲げられることで、図4に示されるように、下側の基端側板部36が、上側の基端側板部36に対してかしめ固定されるようになっている。この結果、プレス加工によって形成された雌端子金具17において上下の基端側板部36,36が、相互に離隔する方向に変位しないようになっている。
【0029】
基端側板部36,36よりも後方の部分には、電線42が圧着される電線圧着部44が設けられている。電線42は被覆電線であり、芯線46が絶縁被覆48により覆われている。そして、電線42の端部において絶縁被覆48が剥がされることにより露出された芯線46が、雌端子10(雌端子金具17)の後端部に設けられた電線圧着部44に圧着されている。なお、芯線46を雌端子10(雌端子金具17)に固着する方法は圧着に限定されるものではなく、例えば接着や溶着等であってもよい。なお、雌端子10は、電線42に代えて、機器の端子部にボルト等で固定されるようになっていてもよい。
【0030】
<先端側板部50>
一対の第2周端部34,34には、それぞれ筒状接続部16の径方向外方(前方)に突出する一対の先端側板部50,50が設けられている。一対の先端側板部50,50は、それぞれ上下方向視において略矩形状であり、上下方向で相互に離隔している。すなわち、雌端子10においては、第1周壁部18と第2周壁部20に対して前後方向の一方側で基端側板部36,36が相互に連結されており、第1周壁部18と第2周壁部20に対して前後方向の他方側で先端側板部50,50が相互に離隔して片持ち梁状に突出した自由端を構成している。その結果、先端側板部50,50は、相互に接近する方向に撓み変形可能である。それぞれの先端側板部50,50の前端部において、左右方向両側には、前方に突出する位置決め突部52,52が設けられている。換言すれば、先端側板部50,50の前端部において、左右方向中間部分は、位置決め突部52,52よりも後方に位置している。この先端側板部50,50の前端部における左右方向中間部分において、後述するクリップばね66が装着されるクリップばね装着部54が構成されている。
【0031】
先端側板部50,50の上下方向外面において、幅方向中央部分には、上下方向外方に突出する凸部56,56が設けられている。各凸部56は、左右方向視において略三角形状または略台形状であり、各凸部56の後面が、略上下方向に広がる鉛直面58であるとともに、各凸部56の前面が、前方になるにつれて上下方向外方への突出高さが小さくなるように傾斜する傾斜面60である。
【0032】
<ストッパ部64>
一対の先端側板部50,50の一対の対向面(すなわち、上下方向内面)62,62のうち、少なくとも一方の対向面62には、他方の対向面62に向かって突出するストッパ部64が設けられている。実施形態1では、一対の対向面62,62の両方における幅方向中央部分にストッパ部64,64が設けられており、それぞれ上下方向内方に突出して、相互に対向している。各ストッパ部64は、一対の先端側板部50,50の先端部よりも筒状接続部16に近い位置に設けられている。特に、実施形態1では、各ストッパ部64が、先端側板部50の外面に設けられた凸部56よりも後方(筒状接続部16側)に設けられている。これらストッパ部64,64は、先端側板部50,50に対してプレス加工を施すことにより形成されており、先端側板部50,50の外面においてストッパ部64,64と対応する位置には、上下方向外方に開口する凹部65,65が形成されている。
【0033】
また、実施形態1では、各ストッパ部64が、外径寸法よりも高さ寸法(上下方向寸法)の方が小さくされた扁平な略円柱形状である。これら各ストッパ部64の突出高さ寸法は、対向面62,62の対向距離の1/2よりも小さくされている。これにより、後述する図7Aに示されるように、クリップばね66が装着される前の雌端子金具17において、両ストッパ部64,64が相互に接触しないようになっている。さらに、後述する図7Bに示されるように、雌端子金具17にクリップばね66が装着された際には、ストッパ部64が対向する先端側板部50の対向面62に当接することで、一対の先端側板部50,50の接近方向の変位を制限して、一対の先端側板部50,50の先端部同士は、離隔状態に維持される。実施形態1では、一対の先端側板部50,50の一対の対向面62,62の両方にストッパ部64,64が設けられていることから、雌端子金具17にクリップばね66が装着された際には、ストッパ部64,64同士が当接して、一方のストッパ部64が、対向する先端側板部50に対して間接的に当接するようになっている。
【0034】
<クリップばね66>
先端側板部50,50の前端部には、これら先端側板部50,50を相互に接近する方向に付勢して、先端側板部50,50の後方に連結された第1周壁部18と第2周壁部20に対して相互に接近する接近方向への付勢力を及ぼす弾性部材としてのクリップばね66が装着されている。クリップばね66は、プレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えばばね鋼やステンレス鋼,黄銅,リン青銅,ベリリウム銅等の帯板を用いて形成される。
【0035】
クリップばね66は、前後方向視において略矩形状の連結板68と、連結板68の両端部から連結板68の板厚方向の一方の側(図5中の後方)に突出して互いに接近する方向に傾斜する一対の押え片70,70を有している。押え片70,70の長さ方向中間部分には屈曲部73,73が設けられており、押え片70,70の突出先端部分は、屈曲部73,73から相互に離隔する方向に延び出している。したがって、押え片70,70の対向距離は、長さ方向中間部分に設けられた屈曲部73,73において最も小さくされており、これら屈曲部73,73の間の隙間が、クリップばね66に対して雌端子金具17を挿し込むための挿込口72である。後述する図7Aに示すように、雌端子金具17に装着する前の単品状態におけるクリップばね66の挿込口72の最小開口寸法Aは、単品状態における雌端子金具17の上下方向寸法Bよりも小さくされている。また、一対の押え片70,70の屈曲部73,73における幅方向中央には、押え片70を板厚方向に貫通する略矩形状の係止凹部74が形成されている。
【0036】
以上の形状とされたクリップばね66が、一対の先端側板部50,50の前方から組み付けられている。すなわち、クリップばね66における挿込口72に対して雌端子金具17における先端側板部50,50を挿し込んで、雌端子金具17に対してクリップばね66を後方にスライド変位させる。これにより、クリップばね66における一対の押え片70,70が、雌端子金具17の先端側板部50,50を上下方向外方から挟み込むようになっている。そして、先端側板部50,50から上下方向外方に突出する各凸部56が、クリップばね66における各係止凹部74に係止される。これにより、クリップばね66が、一対の押え片70,70の間に一対の先端側板部50,50の先端部(前端部)を挟んだ状態で、一対の先端側板部50,50に組み付けられている。
【0037】
特に、各凸部56における前面が傾斜面60であるとともに、押え片70,70の突出先端部分が相互に離隔する方向に傾斜していることから、押え片70,70の突出先端部分が各凸部56を容易に乗り越えることができる。また、各凸部56の後面である鉛直面58により、各係止凹部74が安定して係止されるようになっている。
【0038】
なお、前述のように、雌端子金具17の前端部における左右方向中間部分にはクリップばね装着部54が設けられている。これにより、クリップばね装着部54にクリップばね66が装着された際には、図1図5にも示されるように、連結板68の左右方向両側に、先端側板部50,50に設けられた位置決め突部52,52が位置するようになっている。この結果、雌端子金具17とクリップばね66との組付状態において、雌端子金具17に対してクリップばね66が左右方向で位置ずれすることが防止される。
【0039】
ここで、クリップばね66の一対の押え片70,70には、クリップばね66の挿込口72の最小開口寸法Aを規定する屈曲部73,73が設けられている。そして、屈曲部73,73の対向隙間である挿込口72の最小開口寸法Aは、雌端子金具17(先端側板部50,50)の上下方向寸法Bよりも小さくされている。そのため、クリップばね66が先端側板部50,50の前端部に装着される際には、先端側板部50,50が雌端子金具17の挿込口72を上下方向外方に押し広げて、押え片70,70が相互に離隔する方向に弾性変形する。これにより、クリップばね66が、先端側板部50,50の前端部に組み付けられる。これら押え片70,70の弾性的な復元力が、先端側板部50,50の前端部に対して、相互に接近する方向への付勢力として及ぼされる。すなわち、先端側板部50,50においてクリップばね66における各押え片70の屈曲部73と当接する部分が、クリップばね66による付勢力の付与部位である。実施形態1では、クリップばね66の押え片70,70において屈曲部73,73に係止凹部74,74が設けられていることから、先端側板部50,50において係止凹部74,74が係止される凸部56,56の形成部位が、クリップばね66による付勢力の付与部位である。
【0040】
また、先端側板部50,50に対して相互に接近する方向への付勢力が及ぼされることで、先端側板部50,50の後方に連結された第1周壁部18および第2周壁部20における第2周端部34,34が、相互に接近する方向に付勢される。そして、先端側板部50,50や第1および第2周壁部18,20に対して上下方向外方への外力が及ぼされることで、押え片70,70の付勢力に抗して、先端側板部50,50や第1および第2周壁部18,20が相互に離隔する方向に変位するようになっている。
【0041】
<雄端子12と雌端子10の接続>
上記のような形状とされた雌端子10の筒状接続部16に対して雄端子12の柱状接続部14を挿入して、雄端子12と雌端子10とを接続する方法を、図7Aから図8Cを示してモデル的に説明する。
【0042】
先ず、図7Aに示されるように、雌端子金具17の先端側板部50,50に対して、前方からクリップばね66を組み付ける。これにより、図7Bに示されるように、雌端子10が完成する。雌端子金具17に対してクリップばね66を装着することで、前述のように、クリップばね66により、先端側板部50,50および第2周端部34,34に対して相互に接近する方向の付勢力が及ぼされる。この付勢力に従って、先端側板部50,50は相互に接近する方向に変位して、先端側板部50,50の対向面62,62に設けられたストッパ部64,64が相互に当接する。図7Bに示される両ストッパ部64,64の当接状態において、先端側板部50,50の先端部同士は、所定の離隔距離Cをもって離隔している。したがって、ストッパ部64,64は、相互に当接することで、一対の先端側板部50,50の接近方向の変位を制限して、一対の先端側板部50,50の先端部同士を離隔状態に維持するようになっている。
【0043】
また、第1周壁部18と第2周壁部20における第2周端部34,34が相互に接近する方向に変位することで、図7Bに示される状態(雄端子12の挿入前における雌端子10の初期状態)の筒状接続部16の内径寸法は、図7Aに示される状態における筒状接続部16の内径寸法よりも僅かに小さくされる。ここで、図7Bに示される状態において、筒状接続部16の内径寸法(第1および第2周壁部18,20の内面22,24に接触する仮想的な円の内径寸法)はφαである。また、筒状接続部16に設けられた接点部(線状接触部26,26および円弧状突部28)における内径寸法(線状接触部26,26および円弧状突部28に接触する仮想的な円の内径寸法)はφβである。そして、図8Aに示されるように、図7Bに示される状態における筒状接続部16の内径寸法φαは、雄端子12における柱状接続部14の外径寸法φγと略等しいか僅かに大きくされている。また、図7Bに示される状態において、筒状接続部16の接点部における内径寸法φβは、雄端子12における柱状接続部14の外径寸法φγよりも僅かに小さくされている。
【0044】
上記のような形状とされた雌端子10の筒状接続部16に対して、雄端子12の柱状接続部14を挿入する。図8Bに示されるように、筒状接続部16の接点部における内径寸法φβは、柱状接続部14の外径寸法φγよりも僅かに小さくされている。それゆえ、柱状接続部14を筒状接続部16に挿入した直後には、挿入方向(右方から左方への方向)の手前側(右側)において、筒状接続部16における接点部(線状接触部26,26および円弧状突部28)と柱状接続部14の外面とが接触する。
【0045】
そして、更に筒状接続部16に対して柱状接続部14を挿入することで、柱状接続部14の外面により筒状接続部16の内面が押し広げられて、第1周壁部18と第2周壁部20に対して上下方向外方への外力が及ぼされる。これにより、第1周壁部18と第2周壁部20が、クリップばね66の押え片70,70による付勢力に抗して、相互に接近する方向と反対方向に離隔変位する。この結果、図7Cおよび図8Cに示されるように、筒状接続部16に対して柱状接続部14を圧入状態で挿入することができる。そして、柱状接続部14の長さ方向中間部分に対して筒状接続部16における接点部(線状接触部26,26および円弧状突部28)が当接することで、筒状接続部16に柱状接続部14が保持されて、雄端子12と雌端子10とが電気的に接続される。
【0046】
このように筒状接続部16に柱状接続部14が挿入された状態では、第1周壁部18および第2周壁部20に対してクリップばね66の押え片70,70による付勢力が及ぼされる。それゆえ、筒状接続部16(第1周壁部18および第2周壁部20)による柱状接続部14への接圧が十分に確保される。
【0047】
また、図7Cに示されるように、筒状接続部16に柱状接続部14が挿入されることで、先端側板部50,50と第1および第2周壁部18,20が相互に離隔する方向に変位する。これにより、両ストッパ部64,64が、相互に隙間を隔てて対向するとともに、先端側板部50,50の先端部における離隔距離Dが、図7Bの状態における先端側板部50,50の先端部における離隔距離Cよりも大きくされる。図7Cの状態では、先端側板部50,50に設けられたストッパ部64,64同士も接触しないようになっている。この結果、クリップばね66の押え片70,70による付勢力が、安定して第1および第2周壁部18,20に及ぼされる。
【0048】
上記のような雄端子12と雌端子10との接続状態が長期間継続すると、応力緩和により先端側板部50,50の先端部が相互に接近する方向に変位する。本開示の雌端子10によれば、ストッパ部64,64を採用したことにより、上記図7Cにおいて、先端側板部50,50の先端部における離隔距離Dを大きく確保することができる。そのため、先端側板部50,50の先端部が相互に接近する方向に変位したとしても、図7Dに示されるように、先端側板部50,50の先端部同士が接触することを有利に回避できる。
【0049】
実施形態1の雌端子10において、柱状接続部14を筒状接続部16に挿入する際には、クリップばね66の押え片70,70により第1周壁部18および第2周壁部20に上下方向内方への付勢力が及ぼされて、柱状接続部14が圧入状態で筒状接続部16に挿入される。この結果、筒状接続部16と柱状接続部14との接圧の向上を図ることができる。
【0050】
雌端子10では、上下方向で相互に対向する先端側板部50,50において、相互に対向するストッパ部64,64を設けている。これにより、図7Bに示されるように、雌端子10の初期状態(雌端子金具17にクリップばね66を装着した状態)では、両ストッパ部64,64が相互に当接する。この結果、先端側板部50,50および第2周端部34,34の対向方向内方への変位が制限されて、例えばストッパ部が設けられずクリップばねの装着時に先端側板部の先端部同士が相互に当接する場合に比べて、筒状接続部16における内径寸法φα,φβが必要以上に小さくなることが回避される。それゆえ、筒状接続部16に柱状接続部14を圧入状態で挿入する際にも、挿入抵抗力を小さく抑えることができる。
【0051】
また、先端側板部50,50にストッパ部64,64を設けることで、図7Bに示される雌端子10の初期状態において、先端側板部50,50の先端部同士を所定の離隔距離Cをもって離隔させることができる。この結果、図7Cに示される雄端子12の雌端子10への挿入状態では、先端側板部50,50の先端部同士を、更に大きな離隔距離Dをもって離隔させることができる。それゆえ、図7Dに示されるように、経時変化によって応力緩和が生じたとしても、先端側板部50,50の先端部同士は接触することがなく、クリップばね66の押え片70,70による付勢力が安定して第1周壁部18および第2周壁部20に及ぼされる。これにより、雄端子12と雌端子10の接続状態が長期間継続しても、雄端子12と雌端子10の接続状態が安定して維持される。
【0052】
なお、例えば応力緩和による先端側板部50,50の先端部同士の接触を避けるために、ストッパ部64,64を設けることなく、先端側板部50,50の対向隙間が先端部に向かって次第に大きくなるように、先端側板部50,50の径方向外方への突出角度を変更することも考えられる。しかしながら、その場合、筒状接続部16の内径寸法φα,φβが、実施形態1の場合に比べて小さくなってしまう。その結果、筒状接続部16に雄端子12の柱状接続部14を挿入する際の挿入抵抗力が大きくなり、好ましくない。それに対して、実施形態1ではストッパ部64,64を設けていることから、図7Bに示されるクリップばね66の装着時に先端側板部50,50の先端部同士の離隔距離Cを0より大きくすることができる。それゆえ、応力緩和に際しての雄端子12と雌端子10との接続状態の維持と、雌端子10への雄端子12の挿入抵抗低減の効果を両立して達成することができる。
【0053】
ストッパ部64,64は、先端側板部50,50において、クリップばね66による付勢力の付与部位(凸部56,56の形成部位)よりも筒状接続部16側に設けられている。これにより、例えば応力緩和により先端側板部50,50の先端部が相互に接近する場合にも、先端部に比べて、ストッパ部64,64の形成部位における先端側板部50,50の変位量は小さくされる。また、例えばストッパ部64が先端側板部50の先端部に設けられる場合に比べて、雌端子金具17を構成する略帯状の金属平板に曲げ加工を施して第1周壁部18および第2周壁部20を形成すること等による加工寸法精度の影響を受けにくい。これらのことにより、ストッパ部64における公差を小さくすることができる。その結果、応力緩和が生じた際の先端側板部50,50の先端部同士の当接の回避をより確実に達成できる。これにより、クリップばね66の付勢力が、ストッパ部64,64同士の当接に伴って分散されることがなく、第1周壁部18および第2周壁部20に安定して及ぼされる。それゆえ、雄端子12と雌端子10との接続状態が安定して維持される。
【0054】
図7Bに示される雌端子10の初期状態において、雄端子12の挿入方向における手前側では、筒状接続部16の内径寸法φβが、柱状接続部14の外径寸法φCと略等しいか僅かに大きくされている。また、筒状接続部16の接点部における内径寸法φαが、柱状接続部14の外径寸法φCよりも僅かに小さくされている。これにより、例えば柱状接続部14を筒状接続部16に挿入する際に、柱状接続部の外面と筒状周壁部の内面とが略全面に亘って当接することがなく、筒状接続部16の接点部と接触するまでは圧入状態となることが回避されて、挿入抵抗を小さく抑えることができる。この結果、雄端子12や雌端子10に設けられためっきが削れたりすることも抑制される。
【0055】
筒状接続部16の接点部として、第2周壁部20の内面24には、周方向に延びる円弧状突部28が設けられている。これにより、柱状接続部14の外面と第2周壁部20の内面24とを、比較的大きな接触面積をもって接触させることもできる。また、筒状接続部16の他の接点部として、第1周壁部18の内面22には、筒状接続部16の軸方向に延びる線状接触部26,26が設けられている。これにより、筒状接続部16に対して柱状接続部14が揺動や捻回する場合にも、柱状接続部14と第1周壁部18との接触状態が維持される。
【0056】
特に、筒状接続部16において、下側の接点部が、第2周壁部20の内面24の周方向中央部分に設けられているとともに、上側の接点部が、第1周壁部18の内面22の周方向中央部分から周方向両端側に離隔した2箇所に設けられている。これにより、柱状接続部14を筒状接続部16の内面における周上の3点で支持することができて、雄端子12と雌端子10の接続状態が安定して維持される。特に、筒状接続部16において下側の接点部である円弧状突部28は、雄端子12の挿入方向手前側(右側)の面が湾曲面31である。それゆえ、雄端子12を雌端子10に挿入する際の挿入抵抗を低減することができて、めっき削れ防止の効果をより発揮することができる。
【0057】
先端側板部50,50の先端部へ相互に接近する方向の付勢力を及ぼす弾性部材が、連結板68と押え片70,70を有するクリップばね66によって構成されている。これにより、簡単な構造をもって弾性部材を構成することができる。
【0058】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0059】
(1)前記実施形態では、一対の先端側板部50,50の一対の対向面62,62の両方にストッパ部64,64が設けられていたが、ストッパ部は、一方の先端側板部の対向面に設けられて、他方の先端側板部の対向面に向かって突出していてもよい。その場合、ストッパ部は、雌端子金具にクリップばねを装着する際に他方の先端側板部に当接するとともに、雄端子の挿入時および応力緩和時に他方の先端側板部に当接しないようになっていればよい。
【0060】
(2)前記実施形態では、ストッパ部64,64が、先端側板部50,50においてクリップばね66による付勢力の付与部位(凸部56,56の形成部位)よりも筒状接続部16側に位置しており、雌端子10の材料の応力緩和による変位の影響を受けにくい部位にストッパ部64,64が設けられていたが、この態様に限定されない。ストッパ部は、雌端子金具にクリップばねを装着する際に対向する先端側板部またはストッパ部に当接するとともに、雄端子の挿入時および応力緩和時に対向する先端側板部またはストッパ部に当接しないようになって、且つ先端部よりも筒状接続部側であれば、先端側板部におけるストッパ部の配設位置は限定されるものではない。
【0061】
(3)筒状接続部において、柱状接続部の外面への接点部の形状は、前記実施形態に記載のものに限定されない。例えば、筒状接続部を構成する第1周壁部と第2周壁部の両方の内面うち、一方の内面に、径方向内方に突出する接点部が設けられてもよい。第1周壁部と第2周壁部の両方の内面に径方向内方に突出する接点部を設ける場合であっても、両方の内面に線状接触部を設けてもよいし、第1周壁部と第2周壁部の両方の内面に円弧状突部を設けてもよい。また、線状接触部は、第1周壁部または第2周壁部の内面において、周上の1箇所に設けられてもよいし、周上の3以上の箇所において周方向で相互に離隔して設けられてもよい。なお、本開示において、線状接触部や円弧状突部は必須なものではない。
【0062】
(4)前記実施形態では、雌端子10の筒状接続部16に対して雄端子12の柱状接続部14が右方から左方に向かって挿入されていたが、左方から右方に向かって挿入されてもよい。
【0063】
(5)前記実施形態では、ストッパ部64,64がそれぞれ扁平な略円柱形状であり、両ストッパ部が当接する際には、それぞれの突出先端面が面接触の態様で当接していたが、ストッパ部の形状は前記実施形態に記載のものに限定されない。ストッパ部は、例えば半球形状や上下方向の投影において長円形状とされてもよく、点接触や線接触の態様で対向する先端側板部やストッパ部に当接してもよい。ストッパ部の当接を、例えば点接触の態様とすることで、ストッパ部と、対向する先端側板部やストッパ部との当接および当接の回避をより精度よく行うことができて、雌端子の設計、寸法管理等を行い易くすることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 雌端子
12 雄端子
14 柱状接続部
16 筒状接続部
17 雌端子金具
18 第1周壁部
20 第2周壁部
22 (第1周壁部の)内面
24 (第2周壁部の)内面
26 線状接触部(接点部)
28 円弧状突部(接点部)
30 凹部
31 湾曲面
32 第1周端部
34 第2周端部(周端部)
36 基端側板部
38 連結部
40 かしめ片
42 電線
44 電線圧着部
46 芯線
48 絶縁被覆
50 先端側板部
52 位置決め突部
54 クリップばね装着部
56 凸部
58 鉛直面
60 傾斜面
62 対向面
64 ストッパ部
65 凹部
66 クリップばね(弾性部材)
68 連結板
70 押え片
72 挿込口
73 屈曲部
74 係止凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C