(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9728 20170101AFI20231214BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231214BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61K8/9728
A61Q19/00
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2019037869
(22)【出願日】2019-03-01
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】595134504
【氏名又は名称】株式会社テクノーブル
(73)【特許権者】
【識別番号】591040236
【氏名又は名称】石川県
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂豊
(72)【発明者】
【氏名】愛水 哲史
(72)【発明者】
【氏名】小椋 将岐
(72)【発明者】
【氏名】井上 智実
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕也
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-179642(JP,A)
【文献】特開2002-265326(JP,A)
【文献】特開昭63-096107(JP,A)
【文献】特開2017-165727(JP,A)
【文献】石川県産酵母を用いたパンの開発,平成28年度研究報告VOL.66,2016年,Vol.66,pp.43-46
【文献】花から分離した酵母を用いたオリジナル清酒の開発,平成29年度研究報告VOL.67,2017年,Vol.67,pp.27-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤエザクラの花由来の酵母(Saccharomyces cerevisiae KEN24-15株)の抽出物
の加水分解物或いは
前記加水分解物の濃縮物又は乾燥粉末を有効成分とする皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚(頭皮も含む)外用剤に配合可能な酵母又はその加工物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚外用剤に配合する有効成分として天然物由来の成分が研究開発されている。しかし、それらの天然物由来の成分は、皮膚外用剤の有効成分として利用する場合に、有効性や安定性等の点で課題があった。
【0003】
従来、酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ)を皮膚外用剤の有効成分として使用することは、例えば、特許文献1,2により知られていた。また、ヤエザクラの花由来の酵母(Saccharomyces cerevisiae KEN24-15株)が清酒やパン等の製造に利用されることは非特許文献1~3により知られていた。しかし、ヤエザクラの花由来の酵母(Saccharomyces cerevisiae KEN24-15株)が、皮膚のターンオーバー改善効果、保湿効果、及びキメを整える効果等を有し、皮膚外用剤の有効成分として使用することは知られていなかった。
【文献】特開平08-163983号
【文献】特開2009-179642号
【文献】井上智実、山崎裕也、[online]、石川県工業試験場 平成28年度研究報告VOL.66、[平成31年2月21日検索]、インターネット<http://www.irii.jp/randd/theme/h28/pdf/study011.pdf>
【文献】井上智実、松田章、[online]、石川県工業試験場 平成29年度研究報告VOL.67、[平成31年2月21日検索]、インターネット<http://www.irii.jp/randd/theme/h29/pdf/study007.pdf>
【文献】井上智実、松田章、[online]、石川県工業試験場 平成26年度技術移転促進セミナー要旨集、[平成31年2月21日検索]、インターネット<http://www.irii.jp/randd/theme/2014/pdf/study15.pdf >
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明者らは、ヤエザクラの花由来の酵母(Saccharomyces cerevisiae KEN24-15株)が、皮膚のターンオーバー改善効果、保湿効果、及びキメを整える効果等を有し、皮膚外用剤の有効成分として有用であることを新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ヤエザクラの花由来の酵母(Saccharomyces cerevisiae KEN24-15株)の抽出物、或いはその濃縮物又は乾燥粉末を有効成分とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ヤエザクラの花由来の酵母(Saccharomyces cerevisiae KEN24-15株)の抽出物、或いはその濃縮物又は乾燥粉末を有効成分とする皮膚外用剤であって、本発明によれば、有効成分である酵母抽出物、或いはその濃縮物又は乾燥粉末を有効成分により、皮膚のターンオーバー改善効果、保湿効果、及びキメを整える効果を発揮する皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明で用いる酵母は、ヤエザクラの花由来の酵母(Saccharomyces cerevisiae KEN24-15株)である。本酵母は、上述の非特許文献1~3に記載されたとおり、石川県工業試験場(石川県金沢市鞍月2丁目1番地)にて採取、分離、保存及び選抜された酵母である。
【0008】
酵母抽出物、或いはその濃縮物又は乾燥物は、以下のようにして調製することができる。例えば、酵母抽出物の製造方法は、酵母を培養液で培養する方法、培養した酵母を酸やアルカリで菌体成分を可溶化する加水分解法、酵母菌体内にあるタンパク質分解酵素などを利用する自己消化法、タンパク質分解酵素等の酵素剤を利用する酵素法、これらを組み合わせた方法により得ることができる。
【0009】
酵母を培養する際の炭素源は、特に限定はなく、炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、ラクトース、ラフィノース等が挙げられる。また、炭素源に加えて、窒素源を添加することでも良く、例えば、窒素源としては、アミノ酸やペプトン等が挙げられる。
【0010】
酵母の培養温度は、25℃~40℃の範囲で、好ましくは28℃~35℃の範囲である。また、pHは、3.0~8.5の範囲で、好ましくは、3.5~7.5の範囲である。
【0011】
酵母抽出物の濃縮物は、酵母の培養液、或いは加水分解方法、酵母の自己消化法又は酵素法にて得られる液を、減圧濃縮器等で濃縮することで得ることが出来る。
【0012】
また、酵母抽出物の乾燥物は、酵母の培養液又はその濃縮液を、真空乾燥法、スプレードライ法などにより乾燥することで得ることができる。
【0013】
また、酵母抽出物乾燥物は、化学安定性、低吸湿性を目的として、賦形剤を加えた乾燥物としても良い。賦形剤は、澱粉、ブドウ糖、結晶セルロース、乳糖、デキストリン等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、等の糖アルコールなどを用いることができるが、酵母抽出物と混合して乾燥粉末化できるものであればいずれの物質でもよい。
【0014】
本発明に係る酵母抽出物或いはその濃縮物又は乾燥物は、皮膚外用剤(化粧料、医薬部外品、外用医薬品)に配合することができる。皮膚外用剤としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、口紅、ファンデーション、リクイドファンデーション、メイクアッププレスパウダー、ほほ紅、白粉、洗顔料、ボディシャンプー、頭皮,頭髪用シャンプー、頭髪用コンディショナー、育毛,養毛用のシャンプー又はトニック、石けん等の清浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明に係る酵母抽出物或いはその濃縮物又は乾燥物の配合量は、その固形分として、基礎化粧料の場合は、0.002~5.0重量%(固形分重量%、以下同じ)の範囲、メイクアップ化粧料の場合は、0.002~5.0重量%の範囲、又清浄用化粧料の場合は、0.002~20.0重量%の範囲である。また、毛髪用化粧料の場合は、固形分量として、0.0001~10.0重量%の範囲である。
【0016】
本発明に係る酵母抽出物或いはその濃縮物又は乾燥物を皮膚外用剤に利用する場合、皮膚外用剤に配合可能な成分、例えば油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、乳化剤、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、消泡剤、粉体成分、抗酸化剤、キレート剤、pH調整剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。また、本発明に係る酵母抽出物或いはその濃縮物又は乾燥物の有効性、特長を損なわない限り、他の生理活性成分と組み合わせて配合することも何ら差し支えない。
【0017】
ここで、油性成分としては、例えばハス油、オリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米糠油、米胚芽油、ヤシ油、カミツレ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、ベルガモット油、ローズヒップ油、アラビアコーヒーノキ種子油、ランベンダー油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、バニラ油、植物由来スクワラン等の植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油等の動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン等の炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エイコセン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、イソオクタン酸セチル、2-エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)等の合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0018】
また、界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等のアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩等のカチオン界面活性剤;N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′,N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン等の両性界面活性剤等を使用することができる。
【0019】
また、乳化剤又は乳化助剤としては、酵素処理ステビア等のステビア誘導体、サポニン又はその誘導体、カゼイン又はその塩(ナトリウム等)、糖と蛋白質の複合体、ショ糖又はそのエステル、ラクトース、大豆由来の水溶性多糖、大豆由来蛋白質と多糖の複合体、ラノリン又はその誘導体、コレステロール、ステビア誘導体(ステビア酵素処理物等)、ケイ酸塩(アルミニウム、マグネシウム等)、炭酸塩(カルシウム、ナトリウム等)、サポニン及びその誘導体、レシチン及びその誘導体(水素添加レシチン、水酸化レシチン等)、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀等)等を配合することもできる。
【0020】
また、保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液等があり、さらにトレハロース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体等)、チューベロース多糖体、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、スフィンゴモナス培養物、スフィンゴ糖脂質、セラミド(ヒト型セラミド、ユズセラミド等)、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、シラン根(白及)抽出物、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0021】
また、増粘剤としては、例えば、アルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;シラン根(白及)抽出物;ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体、アルカリゲネス産生多糖体等の多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、ローストビーンガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、マスチック樹脂、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0022】
また、防腐・殺菌剤としては、例えば、尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、ポリリン酸、プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物、大根発酵液、サトウキビ等の植物由来のエタノール又は1,3-ブチレングリコール等がある。
【0023】
また、粉体成分としては、例えば、セリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビ等)のパウダー、豆類(大豆、小豆等)のパウダー等がある。
【0024】
また、紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-ターシャリーブチル-4-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0025】
また、消泡剤とは、例えば、エタノール、イソプロパノール、ジシロキサン、ジメチルポリシクロサン、ジメチコンケイ酸シリカ、トリシロキサン、シリル化シリカ、ジメチコン、トリメチルシロキシケイ酸、DPGイソボルニルエーテル等がある。
【0026】
また、抗酸化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスタキサンチン、ムラサキシキブの抽出物、シラン根の抽出物、シャクヤク抽出物、ビタミンE及びその誘導体(例えば、ビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等)等がある。
【0027】
また、キレート剤としては、例えば、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、エデト酸又はその塩類、グルコン酸、フィチン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム等がある。
【0028】
また、pH調整剤としては、例えば、クエン酸又はその塩類、乳酸又はその塩類、グリコール酸、コハク酸、塩酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等がある。
【0029】
また、美白剤としては、t-シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン又はその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン(5,5'-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール)、ヒドロキシ安息香酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、α-ヒドロキシ酸、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)が挙げられ、これらを単独で配合しても、複数を組み合わせて配合しても良い。
【0030】
また、上記のコウジ酸誘導体としては、例えばコウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸ジブチレート等のコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシド等のコウジ酸糖誘導体等が、アスコルビン酸誘導体としては、例えばL-アスコルビン酸-2-リン酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルマグネシウム等のアスコルビン酸エステル塩類、L-アスコルビン酸-2-グルコシド、L-アスコルビン酸-5-グルコシド、アスコルビルトコフェリルマレイン酸、アスコルビルトコフェリルリン酸K、ミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸、カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸糖誘導体、それらアスコルビン酸糖誘導体の6位アシル化物(アシル基は、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基等)、L-アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸テトララウリン酸エステル等のL-アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル類、3-O-エチルアスコルビン酸、L-アスコルビン酸-2-リン酸-6-O-パルミテートナトリウム、グリセリルアスコルビン酸又はそのアシル化誘導体、ビスグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸グルセリン誘導体、L-アスコルビン酸リン酸アミノプロピル、L-アスコルビン酸のヒアルロン酸誘導体、3-O-Dラクトース-L-アスコルビン酸、イソステアリルアスコルビルリン酸塩等が、ハイドロキノン誘導体としては、アルブチン(ハイドロキノン-β-D-グルコピラノシド)、α-アルブチン(ハイドロキノン-α-D-グルコピラノシド)等が、トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸エステル(例えば、トラネキサム酸ラウリルエステル、トラネキサム酸ヘキサデシルエステル、トラネキサム酸セチルエステル又はその塩)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トラネキサム酸メチルアミド)等が挙げられ、レゾルシノール誘導体としては、例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、4-イソアミルレゾルシノール等が、2,5-ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2,5-ジアセトキシ安息香酸、2-アセトキシ-5-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-5-プロピオニルオキシ安息香酸等が、ニコチン酸誘導体としては、例えばニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等が、α-ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α-ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0031】
また、生理活性成分としては、例えば、胎盤抽出液、FK706、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸等)、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t-シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、ゲンチアナ抽出物、甘草抽出物等がある。
【0032】
次に、製造例、試験例及び実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、また、%はすべて重量%を意味する。
【0033】
製造例1.酵母抽出物の調製(1)
滅菌したGP液体培地2700gに、予め同培地で培養しておいた酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)の前培養液300gを添加し、30℃で通気攪拌しながら20時間培養した。加熱殺菌した後、水酸化ナトリウム水溶液でpH8.5に調整し、3時間、攪拌しながら 90℃で加熱処理した。この液をpH調整した後、濾過し1501gの酵母培養液抽出物を得た(固形分濃度1.12%)。
【0034】
試験例1.表皮細胞賦活効果試験
ヒト表皮細胞NHEKを、HuMedia KG2培地(クラボウ社製)を入れた96穴マイクロプレートに8×103個/穴播種し、37℃,5.0%CO2の条件下に1日間プレ培養した後、培地をHuMedia KB2に交換した。製造例1の試料溶液を含むPBS(-)を添加し、同条件でさらに2日間培養した。培地除去後、Hoechst33342を添加しDNA染色を行い、蛍光ブレートリーダー(フルオロスキャンアセント、Thermo Fisher Scientific社製)でEx=355nm、Em=460nmの測定を行った。測定後、0.06%のMTTを添加して37℃に1時間保持した後、生成したホルマザンをイソプロパノールで抽出し、マイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社製)を用いて波長570-630nmでMTT値を測定した。試料溶液に代えてPBS(-)を添加した試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたMTT値をDNA量で割ることで、表皮細胞当たりのMTT活性とした。得られた表皮細胞当たりのMTT活性は、コントロールを100とした時の相対値で示した。また、試験系が正常に機能しているかを確認するために、試料溶液の代わりに陽性対照として100mMのグルコースを添加した場合についても、同様の試験を行った。
【0035】
【0036】
表1に示すように、本発明に係る酵母抽出物は、格段にすぐれた表皮細胞賦活効果を有することを確認した。これにより、本発明に係る酵母抽出物は、キメの整った潤いあるお肌へと導く効果が示唆される。
【0037】
試験例2.細胞増殖様物質確認試験
製造例1に係る酵母抽出物中に含まれる増殖因子様物質は、抗体アレイキット(RayBiotech社製)を用いて測定した。キット付属のメンブランにblocking bufferで30分間処理してブロッキングを行った後、製造例1の抽出物を添加し4℃で一晩反応させた。翌日、メンブランを洗浄後、一次抗体溶液を2時間室温静置で反応後、wash bufferで洗浄し、二次抗体溶液を加え2時間室温静置した。反応後、wash bufferで洗浄し、メンブランにDetection bufferを塗布し、冷却CCDカメラ装置(ATTO社製)で化学発光画像を撮影し、得られた画像を輝度から数値を算出した。同時に、比較試料(GP液体培地)も同様の操作で評価を行い、比較試料から検出された各数値を100とした時の相対値で算出した。
【0038】
試験例2において、確認した増殖因子様物質は、以下の通りである。
(1)REG(amphiregulin:アンフィレギュリン)
ヒト線維芽細胞及び表皮細胞を増殖促進し、また、各種のがん細胞に対しては増殖を抑制する効果がある因子である。通常、EGFレセプターと結合するが、細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカンとも結合し、生理活性を示すことが知られている。
(2)bFGF(fibroblast growth factor 2:線維芽細胞増殖因子2)
線維芽細胞、血管内皮細胞等の上皮細胞の増殖を促進する因子である。
(3)EGF(epidermal growth factor:上皮増殖因子)
表皮細胞角化促進、上皮細胞分裂促進、創傷治癒効果等を因子であり、多様な生理活性を示すことが知られている。
(4)HB-EGF(heparin-binding EGF-like growth factor:ヘパリン結合性EGF様増殖因子)
ヒト表皮細胞の増殖を促進する因子である。通常、EGFレセプターと結合するが、細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカンとも結合し、生理活性を示すことが知られている。
(5)HGF(hepatocyte growth factor:肝細胞増殖因子)
上皮系細胞(表皮細胞、血管内皮細胞、造血系幹細胞等)の増殖や機能を制御する。
(6)IGF(insulin-like growth factor:インスリン様増殖因子)
インスリン様作用を持ち、有糸分裂(細胞分裂の1工程)を促進させる因子である。
(7)PDGF(platelet-derived growth factor:血小板由来増殖因子)
血小板中に存在し、主として間葉系細胞に対して遊走・増殖刺激活性を有する因子である。
【0039】
【0040】
表2に示すように、格段にすぐれた細胞増殖を促進する効果を有することを確認した。これにより、本発明に係る酵母抽出物は、様々な細胞増殖を促進する効果が期待できる。これにより、キメが整い、細胞外マトリックス成分の合成を促し、潤いとハリのある若々しいお肌に導く事が示唆される。
【0041】
処方例1.化粧水
[成分] 部
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
メチルパラベン 0.1
製造例1の酵母抽出物 2.0
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
クエン酸ナトリウム 0.2
精製水 全量が100部となる量
【0042】
処方例2.乳液
[成分] 部
スクワラン 5.0
ヘキサラン 3.0
ホホバ油 1.0
ツバキ油 1.5
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.0
親油型ステアリン酸グリセリル 1.0
水添大豆レシチン 1.5
製造例1の酵母抽出物 3.0
L-アスコルビン酸-2-グルコシド 2.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
キサンタンガム 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 全量が100部となる量
【0043】
処方例3.クリーム
[成分] 部
オリーブ油 5.0
ホホバ油 5.0
スクワラン 5.0
ベヘニルアルコール 2.0
パルミチン酸 2.5
製造例1の酵母抽出物 2.0
水素添加レシチン 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.3
アルギン酸ナトリウム 0.2
海藻抽出物 2.0
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
精製水 全量が100部となる量
【0044】
処方例4.シャンプー
[成分] 部
N-ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0
ポリオキシエチレン(3)アルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
メチルパラベン 0.1
クエン酸 0.1
製造例1の酵母抽出物 2.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量