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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20231214BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231214BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231214BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20231214BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20231214BHJP
   C08L 31/00 20060101ALI20231214BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20231214BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20231214BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20231214BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20231214BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C08L101/12
C08F2/44 Z
C08K3/22
C08K5/3475
C08K5/3492
C08L31/00
G02B1/04
G02B3/00 Z
G02C7/00
G02C7/02
G02C7/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019156318
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021031650
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 準作
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷 仁
(72)【発明者】
【氏名】来田 文夫
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-191076(JP,A)
【文献】特開平05-025436(JP,A)
【文献】特開2014-177436(JP,A)
【文献】特表2017-515822(JP,A)
【文献】特表平08-500371(JP,A)
【文献】特表2002-533516(JP,A)
【文献】特開2019-015922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08F
G02B
G02C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の熱硬化性樹脂に対して、分散剤を用いてイカ墨、赤外線カット剤及び紫外線カット剤が分散された樹脂組成物の製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂のモノマーに対して前記赤外線カット剤及び前記紫外線カット剤のうち一方の粉末状の材料を投入し、攪拌及び脱気する第1の工程と、
前記モノマーに対して前記分散剤をさらに投入し、攪拌及び脱気する第2の工程と、
前記モノマーに対して前記赤外線カット剤及び前記紫外線カット剤のうち他方の液体状の材料をさらに投入し、攪拌及び脱気する第3の工程と、
前記モノマーに対して前記イカ墨をさらに投入し、攪拌及び脱気する第4の工程と、
前記モノマーに対して重合開始剤をさらに投入し、攪拌及び脱気する第5の工程とを含む、
ことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程又は前記第3の工程では、
前記モノマー100質量部に対して、前記赤外線カット剤を1.12~3.36質量部の範囲内で投入するとともに、前記紫外線カット剤を0.28~3.36質量部の範囲内で投入し、
前記第2の工程は、
前記モノマー100質量部に対して、前記分散剤を5.6~11.2質量部の範囲内で投入し、
前記第4の工程は、
前記モノマー100質量部に対して、前記イカ墨を1.34質量部以上投入する、
ことを特徴とする請求項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の樹脂組成物の製造方法により製造された前記樹脂組成物を熱硬化させる第6の工程を含む、
ことを特徴とする遮光レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び遮光レンズ並びに樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接作業や溶断作業等の火気作業を行う際に、高温の熱源から放射される赤外線、紫外線及び強烈な可視光線から作業者の眼を保護するために、遮光保護具が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、偏向フィルム1の表裏に透明な合成樹脂製の薄板を貼り付けた三層構造のサングラスレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-226789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたサングラスレンズは、三層構造であるため、製造工程が増加するとともに、例えば、曲げ加工等のように、製造工程が複雑化するという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、環境に優しい材料を用いて所定の遮光性能を満たすとともに、製造工程の簡素化を可能とする樹脂組成物及び遮光レンズ並びに樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、
透光性の熱硬化性樹脂に対して、分散剤を用いてイカ墨、赤外線カット剤及び紫外線カット剤が分散された樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂のモノマー100質量部に対して、
前記イカ墨の含有量は、1.34質量部以上であり、
前記赤外線カット剤の含有量は、1.12~3.36質量部の範囲内であり、
前記紫外線カット剤の含有量は、0.28~3.36質量部の範囲内であり、
前記分散剤の含有量は、5.6~11.2質量部の範囲内である、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る遮光レンズは、
上記樹脂組成物により形成された、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、
透光性の熱硬化性樹脂に対して、分散剤を用いてイカ墨、赤外線カット剤及び紫外線カット剤が分散された樹脂組成物の製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂のモノマーに対して前記赤外線カット剤及び前記紫外線カット剤のうち一方の粉末状の材料を投入し、攪拌及び脱気する第1の工程と、
前記モノマーに対して前記分散剤をさらに投入し、攪拌及び脱気する第2の工程と、
前記モノマーに対して前記赤外線カット剤及び前記紫外線カット剤のうち他方の液体状の材料をさらに投入し、攪拌及び脱気する第3の工程と、
前記モノマーに対して前記イカ墨をさらに投入し、攪拌及び脱気する第4の工程と、
前記モノマーに対して重合開始剤をさらに投入し、攪拌及び脱気する第5の工程とを含む、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る遮光レンズの製造方法は、
上記樹脂組成物の製造方法により製造された前記樹脂組成物を熱硬化させる第6の工程を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物及び遮光レンズ並びに樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法によれば、分散剤を用いて、熱硬化性樹脂に、天然資源由来のイカ墨とともに、赤外線カット剤及び紫外線カット剤を分散させるので、環境に優しい材料を用いて所定の遮光性能を満たすとともに、製造工程の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る遮光レンズを形成する樹脂組成物の調合比率を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図3】赤外線カット剤の含有量を変更した場合の波長領域(400nm~2000nm)における透過率を示すグラフである。
図4】分散剤の含有量を変更した場合の透過率を示す図である。
図5】イカ墨の含有量を変更した場合の透過率を示す図である。
図6】イカ墨の含有量を変更した場合の波長領域(400~2000nm)における透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物及び遮光レンズ、並びに、樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態に係る遮光レンズは、基材としての透光性の熱硬化性樹脂に、分散剤を用いて、イカ墨、赤外線カット剤及び紫外線カット剤が分散された樹脂組成物により形成されている。
【0015】
遮光レンズは、例えば、溶接作業や溶断作業等の火気作業、アーク灯、水銀灯、赤外線灯等を用いた作業、原子力発電施設、高炉や加熱炉等での作業を行う場合に、当該作業において発生する赤外線、紫外線及び強烈な可視光線等から作業者の眼を保護するために使用される。なお、遮光レンズは、これらの作業以外でも使用されてもよく、例えば、日常生活において直射日光を避けるためのサングラスとして使用されてもよい。
【0016】
熱硬化性樹脂は、それ自体が透明又は半透明であって、透光性を有する。熱硬化性樹脂は、例えば、CR39(アリルジグリコールカーボネート)、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂等である。
【0017】
イカ墨は、イカから得られた黒褐色系の色素粒子を含む単分散顔料である。イカ墨は、可視領域における光を良好に遮蔽する(透過率の低い状態とする)。イカ墨は、アカイカ類や甲イカ類等から得た原料墨汁を精製することにより、平均粒径が約300nmで、粒径範囲が約100~500nmの単分散球形子として、色素含有量10~20wt%(重量パーセント)程度の濃縮液として得られたものである。なお、イカ墨は、濃縮されていなくてもよい。また、イカ墨は、最終的な遮光レンズにおいて、その濃度が10ppm以上となるようにするのが好ましい。
【0018】
赤外線カット剤は、赤外領域(780nm~2mm)の波長の光を遮蔽する材料として、例えば、スズ酸化インジウム(ITO)系材料、アンチモン酸化スズ(ATO)系材料、シアニン系材料、ジイモニウム系材料等が用いられる。赤外線カット剤は、粉末状の材料を用いてもよいし、液体状の材料を用いてもよい。
【0019】
紫外線カット剤は、紫外領域(100nm~400nm)の波長の光を遮蔽する材料として、例えば、ベンゾトリアゾール系材料、ベンゾフェノン系材料、トリアジン系材料等が用いられる。紫外線カット剤は、粉末状の材料を用いてもよいし、液体状の材料を用いてもよい。
【0020】
イカ墨は、難水溶性(不溶性)であり、色素の粒径が微小であることから、熱硬化性樹脂のモノマーに対して分散し難い特性を有する。また、赤外線カット剤及び紫外線カット剤として、液体状の材料を用いる場合には、イカ墨と同様に、熱硬化性樹脂のモノマーに対して分散し難い特性を有する。そのため、熱硬化性樹脂のモノマーに対して分散剤を混合した状態で、イカ墨や、液体状の赤外線カット剤及び紫外線カット剤を投入することが好ましい。
【0021】
分散剤としては、高分子系顔料分散剤(例えば、味の素ファインテクノ株式会社製アジスパー)や、これを溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))に溶解したもの等が用いられる。分散剤を用いることで、遮光レンズの透明基材中で、イカ墨の色素が凝集したり沈殿したりすることを抑制し、均一な黒色で、一定の透過率を有する遮光レンズを製造することできる。また、分散剤を用いることで、熱硬化性樹脂のモノマーに対して液体状の赤外線カット剤及び紫外線カット剤を均一に分散させることができる。
【0022】
重合開始剤は、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート系の過酸化物である。
【0023】
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂のモノマーに対して、イカ墨、赤外線カット剤、紫外線カット剤、分散剤及び重合開始剤等を調合することにより生成される。そして、樹脂組成物が、型枠となるモールドに注入され、熱硬化されることにより、遮光レンズが製造される。モールドの内部形状が、遮光レンズの最終形状に一致する場合には、モールドから離脱させることにより遮光レンズが完成し、そうでない場合には、さらに曲げ加工、切削加工、研磨加工等が付加的に行われることにより遮光レンズが完成する。なお、遮光レンズの製造方法の詳細については後述する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る遮光レンズを形成する樹脂組成物の調合比率を示す図である。なお、以下では、熱硬化性樹脂の一例として、CR39を用いる場合について説明する。
【0025】
樹脂組成物の調合比率は、CR39モノマー、イカ墨、赤外線カット剤、紫外線カット剤及び分散剤の合計含有量を100%(質量%)としたとき、各材料の調合比率は、図1に示すように、CR39モノマー89.2%、イカ墨1.3%、赤外線カット剤1.0%、紫外線カット剤0.5%、分散剤8.0%であることが好ましい。
【0026】
樹脂組成物の質量が合計150gになるように、上記の調合比率により調合したとき、各材料の含有量は、CR39モノマー133.8g、イカ墨1.95g、赤外線カット剤1.5g、紫外線カット剤0.75g、分散剤12gである。なお、重合開始剤は、18.9gである。各材料の含有量の好ましい範囲としては、例えば、イカ墨は1.8g以上、赤外線カット剤は1.5~4.5gの範囲内、紫外線カット剤は0.375~4.5gの範囲内、分散剤7.5~15gの範囲内である。
【0027】
また、CR39モノマー100g(質量部)に対して、各材料の含有量は、イカ墨1.45g、赤外線カット剤1.12g、紫外線カット剤0.56g、分散剤8.9gである。なお、重合開始剤は、14.1gである。また、各材料の含有量の好ましい範囲としては、例えば、CR39モノマー100g(質量部)に対して、イカ墨は1.34g以上、赤外線カット剤は1.12~3.36gの範囲内、紫外線カット剤は0.28~3.36gの範囲内、分散剤は5.6~11.2gの範囲内であることが好ましい。
【0028】
(遮光レンズの製造方法)
次に、樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法について説明する。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【0030】
まず、第1の工程(ステップS1)にて、CR39モノマーに対して、赤外線カット剤及び紫外線カット剤のうち粉末状の材料を投入し、攪拌及び脱気する。ここでは、紫外線カット剤が粉末状の材料であるものとして、CR39モノマー100g当たり、紫外線カット剤0.56gを計量し、投入する。
【0031】
このとき、攪拌は、攪拌装置を用いて、攪拌装置の回転子を、回転数1000rpm(回/分)、攪拌時間400秒という攪拌条件で行う。また、脱気は、脱気装置(撹拌しながら脱気する攪拌脱気装置も含む。)を用いて、脱気時間10秒という脱気条件で行う。
【0032】
第1の工程(ステップS1)では、後述する第2の工程(ステップS2)にて分散剤が投入される前に、粉末状の紫外線カット剤を投入し、攪拌することにより、粉末状の紫外線カット剤をCR39モノマーに確実に溶解させることができる。
【0033】
次に、第2の工程(ステップS2)にて、CR39モノマー100g当たり、分散剤8.9gをさらに投入し、攪拌及び脱気する。ここでは、溶剤に溶解させた状態の分散剤を投入する。このときの攪拌条件は、回転数1000rpm、攪拌時間200秒であり、脱気条件は、脱気時間500秒である。
【0034】
次に、第3の工程(ステップS3)にて、CR39モノマーに対して赤外線カット剤及び紫外線カット剤のうち液体状の材料をさらに投入し、攪拌及び脱気する。ここでは、赤外線カット剤が粉末状の材料であるものとして、CR39モノマー100g当たり、赤外線カット剤1.12gを計量し、投入する。このときの攪拌条件は、回転数1000rpm、攪拌時間200秒であり、脱気条件は、脱気時間500秒である。
【0035】
第3の工程(ステップS3)では、第2の工程(ステップS2)にて分散剤が投入された後に、液体状の赤外線カット剤を投入し、攪拌することにより、CR39モノマーに対して液体状の赤外線カット剤を均一に混合させることができる。また、第3の工程(ステップS3)では、後述する第4の工程(ステップS4)にてイカ墨が投入されて、CR39モノマーがイカ墨で黒褐色に着色されることでCR39モノマーの視認性が悪化する前に、液体状の赤外線カット剤を投入し、攪拌するので、CR39モノマーに対する液体状の赤外線カット剤の混合状態を目視で確実に視認することができる。
【0036】
次に、第4の工程(ステップS4)にて、CR39モノマー100g当たり、イカ墨1.45gをさらに投入し、攪拌及び脱気する。このときの攪拌条件は、回転数1000rpm、攪拌時間200秒であり、脱気条件は、脱気時間1200秒である。第4の工程(ステップS4)では、第2の工程(ステップS2)にて分散剤が投入された後に、イカ墨を投入し、攪拌することにより、CR39モノマーに対してイカ墨を均一に混合させることができる。
【0037】
次に、第5の工程(ステップS5)にて、CR39モノマー100当たり、重合開始剤14.1gをさらに投入し、攪拌及び脱気することにより、重合する。このときの攪拌条件は、回転数1000rpm、攪拌時間100秒であり、脱気条件は、脱気時間600秒である。
【0038】
第1乃至第5の工程(ステップS1~S5)では、調合物を攪拌するだけでなく脱気することにより、調合物に存在する気体を抜くことができる。なお、第1乃至第5の工程(ステップS1~S5)における撹拌条件及び脱気条件は適宜変更してもよい。
【0039】
そして、第6の工程(ステップS6)にて、第1乃至第5の工程(ステップS1~S5)により得られた樹脂組成物を、遮光レンズのモールドに注入し、熱硬化させることにより、遮光レンズが製造される。なお、遮光レンズは、必要に応じて、曲げ加工、切削加工、研磨加工等が付加的に行われる。また、遮光レンズは、反射防止膜やミラー膜等の誘電体多層膜や、ハードコート膜等により被覆するようにしてもよい。
【0040】
(遮光レンズの評価結果)
図3は、赤外線カット剤の含有量を変更した場合の波長領域(400nm~2000nm)における透過率を示すグラフである。
【0041】
図3に示す例では、CR39モノマー100g当たりに対して、赤外線カット剤の含有量として、0.11g~3.36gの範囲で7段階(0.11g、0.33g、0.56g、0.89g、1.12g、2.24g、3.36g)に変更し、可視光線及び赤外線を含む波長領域(400nm~2000nm)にて透過率を測定した。なお、赤外線カット剤以外の材料の含有量は、図1に示す含有量で固定した。
【0042】
赤外線カット剤の含有量が、CR39モノマー100g当たり、1.12g、2.24g、3.36gである場合には、赤外線の波長領域(780nm以上)に対する透過率が、10%未満で推移することが分かった。
【0043】
図4は、分散剤の含有量を変更した場合の透過率を示す図である。
【0044】
図4に示す例では、CR39モノマー100g当たりに対して、分散剤の含有量として、3.36~11.2gの範囲で4段階(3.36g、5.6g、8.9g、11.2g)に変更し、可視光線の波長525nmにて透過率を測定した。なお、分散剤以外の材料の含有量は、図1に示す含有量で固定した。
【0045】
分散剤の含有量が、CR39モノマー100g当たりに対して、5.6g、8.9g、11.2gである場合には、遮光レンズが白く曇るようなヘイズ不良が発生することなく、透過率が良好であることが分かった。
【0046】
図5は、イカ墨の含有量を変更した場合の透過率を示す図である。図6は、イカ墨の含有量を変更した場合の波長領域(400~2000nm)における透過率を示すグラフである。
【0047】
図5及び図6に示す例では、CR39モノマー100g当たりに対して、イカ墨の含有量として、1.12~1.45gの範囲で3段階(1.12g、1.34g、1.45g)に変更し、透過率を測定した。図5では、透過率の測定値と、JIS T8141(遮光保護具)で示す遮光度5の規格値とを比較し、図6では、可視光線及び赤外線を含む波長領域(400~2000nm)にて測定した透過率を比較した。なお、イカ墨以外の材料の含有量は、図1に示す含有量で固定した。
【0048】
イカ墨の含有量が、CR39モノマー100g当たりに対して、1.34g、1.45g%である場合には、図5に示すように、遮光度5の規格値を満たすことが分かった。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る樹脂組成物及び遮光レンズ並びに樹脂組成物及び遮光レンズの製造方法によれば、分散剤を用いて、熱硬化性樹脂に、天然資源由来のイカ墨とともに、赤外線カット剤及び紫外線カット剤を分散させるので、環境に優しい材料を用いて所定の遮光性能を満たすとともに、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明の一実施形態として、上記実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6