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特許7402457遺言用シート、鑑定用シート、遺言用キット及び遺言に係る鑑定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】遺言用シート、鑑定用シート、遺言用キット及び遺言に係る鑑定方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 15/00 20060101AFI20231214BHJP
   G06Q 50/18 20120101ALI20231214BHJP
【FI】
B42D15/00 331J
G06Q50/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023005942
(22)【出願日】2023-01-18
【審査請求日】2023-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501379247
【氏名又は名称】日本ソフトウェアマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈須 永典
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113820(JP,A)
【文献】特開2006-224353(JP,A)
【文献】実開昭61-170575(JP,U)
【文献】実開平06-029876(JP,U)
【文献】特開2016-199027(JP,A)
【文献】登録実用新案第3226536(JP,U)
【文献】特開2000-326690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00-15/00
15/04-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺言に用いられる遺言用シートであって、
遺言書となる本体と、
前記本体に添付される、血縁関係の鑑定対象物を格納するための鑑定用シートと、を備え、
前記鑑定用シートは、前記本体に付着されて一体化され、
前記鑑定用シートは、
鑑定対象物を保持するための保持シートと、
鑑定対象物を密封するための密封シートと、を備える
ことを特徴とする、遺言用シート。
【請求項2】
前記本体は、紙面に前記鑑定用シートを付着することを示す付着表示を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の遺言用シート。
【請求項3】
前記本体に、付着順が表示されている前記鑑定用シートが複数添付され、
前記本体は、前記付着順に並ぶ前記付着表示を複数有する
ことを特徴とする、請求項2に記載の遺言用シート。
【請求項4】
前記密封シートは、透視不能に構成される
ことを特徴とする、請求項1に記載の遺言用シート。
【請求項5】
前記鑑定用シートは、前記本体に付着するための連結シートを備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の遺言用シート。
【請求項6】
前記連結シートは、前記本体に付着する側の面である背面に接着剤が設けられ、反対側の面である正面に背面方向に凹入する格納部であって前記保持シートを収容するための格納部を有する
ことを特徴とする、請求項5に記載の遺言用シート。
【請求項7】
前記鑑定用シートを2つ備え、
遺言書となる前記本体に一の前記鑑定用シートが付着されて一体化され、
前記遺言書の副本に一の前記鑑定用シートが付着されて一体化される
ことを特徴とする、請求項1に記載の遺言用シート。
【請求項8】
鑑定用シートを用いる遺言に係る鑑定方法であって、
前記鑑定用シートは、
鑑定対象物を保持するための保持シートと、
鑑定対象物を密封するための密封シートと、を備え、
前記鑑定方法は、
遺言者からの鑑定対象物を前記鑑定用シートに格納するステップと、
前記鑑定対象物を格納した前記鑑定用シートを遺言書に一体に付着させるステップと、を含む
ことを特徴とする、遺言に係る鑑定方法。
【請求項9】
鑑定用シートを用いる遺言に係る鑑定方法であって、
前記鑑定用シートは、
鑑定対象物を保持するための保持シートと、
鑑定対象物を密封するための密封シートと、を備え、
前記鑑定方法は、
遺言効力発生後、遺言書に一体に付着された鑑定用シートから鑑定対象物を取り出すステップと、
取り出された前記鑑定対象物と、比較対象の鑑定対象物とを用いて血縁関係の鑑定を行うステップと、を含む
ことを特徴とする、遺言に係る鑑定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺言に用いられる遺言用シート、鑑定用シート及び遺言用キット、並びに遺言に係る鑑定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺言は、遺言者による法律行為であるが、遺言者の死後に効力が発生することから、遺言者の真意を明確にし、偽りを防止すべく、民法により方式が定められている。
【0003】
遺言者による遺言を支援するものとして、例えば、「相続人を設定する設定入力を受け付ける受付部と、遺言者が保有する相続財産に関する財産情報を取得する取得部と、複数の前記相続人に配分する前記相続財産の分割案を生成する第1生成部と、前記分割案に基づき、遺言書の見本文書を生成する第2生成部と、生成した前記見本文書を出力する出力部とを備えることを特徴とする情報処理装置。」が提案されている(特許文献1の請求項1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-212233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遺言をする際に、遺言書に子を認知したい旨を記すことがある。例えば、遺言者である夫が、妻以外の女性との間に隠し子(非嫡出子)がある場合、非嫡出子の認知は遺言によってもできることから、非嫡出子にも財産を残したいと考え、遺言による認知を選択することがある。しかし、子その他の利害関係人は、認知に対して無効を主張することができるので、非嫡出子は、遺言者の死後に故人との血縁上の親子関係を証明しなければならないことがある。この証明には現在DNA鑑定が採用されており、非嫡出子は故人の検体(鑑定対象物)を提出しなければならないが、故人と接触の少ない非嫡出子が自ら入手することは難しく、無効を主張する利害関係人の協力も望めない。
【0006】
遺言を巡るこのような血縁関係の鑑定は、遺言者が生前に認知した場合も起こり得る。例えば、遺言者が非嫡出子を認知したことを家族が知らなかった場合等でも、認知の無効を主張された非嫡出子は、遺言者の死後に血縁上の親子関係を証明する羽目になる。さらに、遺言に係る血縁関係の鑑定は、認知以外のことでも起こり得る。
【0007】
上記情報処理装置は、このような問題は考慮されておらず、遺言に係る血縁関係の鑑定の観点から遺言(行為)を支援するものではない。
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するためのものであり、遺言に係る血縁関係の鑑定の観点から遺言を支援する、遺言用シート、鑑定用シート、遺言用キット及び遺遺言に係る鑑定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、遺言に用いられる遺言用シートであって、遺言書となる本体と、前記本体に添付される、血縁関係の鑑定対象物を格納するための鑑定用シートと、を備え、前記鑑定用シートは、前記本体に付着されて一体化される。
【0010】
上記遺言用シートにおいて、前記鑑定用シートは、鑑定対象物を保持するための保持シートと、鑑定対象物を密封するための密封シートと、を備えてもよい。
【0011】
上記遺言用シートにおいて、前記本体は、紙面に前記鑑定用シートを付着することを示す付着表示を有してもよい。
【0012】
上記遺言用シートにおいて、前記本体に、付着順が表示されている前記鑑定用シートが複数添付され、前記本体は、前記付着順に並ぶ前記付着表示を複数有してもよい。
【0013】
上記遺言用シートにおいて、前記密封シートは、透視不能に構成されてもよい。
【0014】
上記遺言用シートにおいて、前記鑑定用シートは、前記本体に付着するための連結シートを備えてもよい。
【0015】
上記遺言用シートにおいて、前記連結シートは、前記本体に付着する側の面である背面に接着剤が設けられ、反対側の面である正面に背面方向に凹入する格納部を有してもよい。
【0016】
上記遺言用シートにおいて、前記鑑定用シートを2つ備え、遺言書となる前記本体に一の前記鑑定用シートが付着されて一体化され、前記遺言書の副本に一の前記鑑定用シートが付着されて一体化されてもよい。
【0017】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、遺言に用いられる、血縁関係の鑑定対象物を格納するための鑑定用シートであって、遺言書となる本体に添付され、前記本体に付着されて一体化される。
【0018】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、遺言に用いられる、血縁関係の鑑定対象物を格納するための鑑定用シートであって、遺言書となる本体に添付され、遺言書の副本に付着されて一体化される。
【0019】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、遺言に用いられる遺言用キットであって、遺言書となる本体と、前記本体に添付される、血縁関係の鑑定対象物を格納するための鑑定用シートと、遺言に係る血縁関係の鑑定を支援するための鑑定支援シートと、を備え、前記鑑定用シートは、前記本体に付着されて一体化され、前記鑑定支援シートは、遺言に係る血縁関係の鑑定を支援する。
【0020】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、鑑定用シートを用いる遺言に係る鑑定方法であって、遺言者からの鑑定対象物を前記鑑定用シートに格納するステップと、前記鑑定対象物を格納した前記鑑定用シートを遺言書に一体に付着させるステップと、を含む。
【0021】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、鑑定用シートを用いる遺言に係る鑑定方法であって、遺言効力発生後、遺言書に一体に付着された鑑定用シートから鑑定対象物を取り出すステップと、取り出された前記鑑定対象物と、比較対象の鑑定対象物とを用いて血縁関係の鑑定を行うステップと、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、遺言に係る血縁関係の鑑定の観点から遺言を支援する、遺言用シート、鑑定用シート、遺言用キット及び遺言に係る鑑定方法を提供することができる。
【0023】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係る遺言用シートの使用状態の一例を示す概要図である。
図2】本発明の実施形態1に係る遺言用シートの一例を示す概要図である。
図3図1のAA線断面図で鑑定用シートの使用状態を示す図である。
図4】保持シートへの鑑定対象物の保持の一例を示す図である。
図5】鑑定用シートへの鑑定対象物の格納及び本体への付着を断面で示す図である。
図6】鑑定用シートの他の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態1の変形例1に係る遺言用シートの一例を示す概要図である。
図8】本発明の実施形態1の変形例2に係る遺言用シートの一例を示す概要図である。
図9】本発明の実施形態1の変形例3に係る遺言用シートの一例を示す概要図である。
図10】本発明の実施形態2に係る遺言用キットの一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の例について、図面を参照して説明する。なお、下記実施形態において共通する構成要素については、前出の符号と同様な符号を付し説明を省略することがある。また、構成要素等の形状、位置関係等に言及する場合は、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0026】
<実施形態1(遺言用シート、鑑定用シート)>
図1は、本発明の実施形態1に係る遺言用シートの使用状態の一例を示す概要図である。
【0027】
遺言用シート1は、遺言をするのに用いられる。遺言用シート1は、遺言書となる本体2と、本体2に添付される、血縁関係の鑑定対象物Qを格納するための鑑定用シート3と、を備え、鑑定用シート3は、本体2に付着されて一体化される。
【0028】
遺言は、普通の方式として自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言が定められ、特別の方式として危機時遺言、隔絶地遺言が定められている(民法967条~970条、976条~979条)。以下、自筆証書遺言を例に説明する。
【0029】
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法968条)。しかし、遺言者が適切な財産分割案を作成し、正確に文書化することは容易ではない。そのため、上記特許文献1は、相続人の設定入力を受け付け、財産情報を取得して、相続財産の分割案及びこれに基づく遺言書の見本文書を生成し出力して、遺言者を支援する。
【0030】
しかし、遺言者が遺言をするのに必要な支援は、これに留まらない。遺言者は、遺言をするに当たって、血縁関係の鑑定の観点から支援を必要とする場合がある。
【0031】
一例として、遺言者が、遺言の際に遺言書に子を認知したい旨を記すことがある。例えば、遺言者である夫が、妻以外の女性との間に隠し子(非嫡出子)がある場合、非嫡出子の認知は遺言によってもできることから、非嫡出子にも財産を残したいと考え、遺言による認知を選択することがある。非嫡出子は、認知されると、遺言者との間に法律上の親子関係が発生する。しかし、子その他の利害関係人は、この認知に対して無効を主張することができる(民法786条)。そのため、非嫡出子は、遺言者の死後に遺言者との血縁上の親子関係を証明しなければならないことがある。
【0032】
血縁上の親子関係証明は、遺言の方式の遺言者の署名や押印では対処できず、鑑定(現在DNA鑑定が採用されている)が必要となり、鑑定の結果を持って証明しなければならない。しかし、遺言者と接触が少ないであろう非嫡出子が自ら鑑定対象物を入手することは難しく、無効を主張する利害関係者の協力も望めないため、遺言の執行が難航する。
【0033】
遺言を巡るこのような血縁関係の鑑定は、遺言者が生前に認知した場合も起こり得る。例えば、遺言者が非嫡出子を認知したことを家族が知らなかった場合や、家族が知っていたものの遺言書の内容が想定外のものだった場合等でも起こり得る。平成25年の民法改正により、従来は嫡出子の1/2であった非嫡出子の法定相続分が、嫡出子と同等の相続分が認められるようになっており、このような問題が生じる可能性が高くなっている。また、このような遺言に係る血縁関係の鑑定は、非嫡出子の認知以外のことでも起こり得る。
【0034】
本実施形態の遺言用シート1は、このような遺言に係る血縁関係の鑑定という観点から遺言者の遺言を支援するものである。遺言用シート1は、遺言書となる本体2とともに、本体2に添付される、血縁関係の鑑定対象物Qを格納するための鑑定用シート3を備えることで、遺言者に鑑定の必要性を判断させるとともに、遺言書に鑑定対象物Qを添付するよう促す。これにより、遺言の効力発生後、血縁関係の鑑定が必要となった場合、鑑定対象物Qを用いて鑑定を行うことで、遺言が確かに執行できるようになる。
【0035】
鑑定対象物Qは、必ずしも本体2と一緒に保管する必要はないものの、別々に保管されていると、それが遺言者のものであることの証明が難しくなる。また、保管している鑑定対象物Qがすり替えられる危険性がある。本実施形態では、鑑定用シート3を用いて鑑定対象物Qを本体2に一体に付着させることで、遺言者のものであることを保証する。
【0036】
図2は、本発明の実施形態1に係る遺言用シートの一例を示す概要図である。図中のXは横方向(左右方向)、Yは縦方向(上下方向)、Zは厚み方向(奥行方向)を示す(以下、各図において同じ)。以下、遺言用シート1について、より具体的に説明する。
【0037】
遺言用シート1の本体2は、遺言を記すためのもので、例えば、遺言者が遺言を自書するための用紙である。自筆証書遺言で本体2を用いる場合、通常、遺言者により、全文、日付、氏名が自書され、押印がされると、本体2は適式な遺言書となる。
【0038】
本体2は、特に限定されないが、好ましくは、方式要件中の忘れる可能性の高い日付、氏名、押印を促すための方式表示21を備える。方式表示21は、例えば紙面に設けられる横線や、〇記号で構成される。
【0039】
本体2は、特に限定されないが、好ましくは、鑑定用シート3の付着を促すための付着表示22を有する。付着表示22は、紙面に設けられる、鑑定用シート3を付着する位置を示す表示で、例えば、図示のように、破線の枠で構成される。
【0040】
付着表示22は、特に限定されないが、好ましくは、方式表示21の後に配置される。例えば、図示の横書きの紙面の場合は方式表示21の下方に、図示しないが縦書きの紙面の場合は縦線となる方式表示21の左方に配置される。これにより、遺言者は、本体2に遺言を自書し、遺言内容から死後に鑑定が予想される場合は、最後に、鑑定用シート3を用いて鑑定対象物Qを本体2に付着させるようになる。なお、鑑定用シート3の表面は、朱肉の付着が可能な材料により構成することができる。これにより、鑑定用シート3を付着表示22に付着した後、鑑定用シート3と本体2とにまたがって割印を押印することができる。
【0041】
なお、本体2への鑑定用シート3の付着は、全文(本文)を自書する前や途中に行ってもよいが、遺言は、遺言者の最後の意思表示であり、熟慮して途中に考えが変わる場合も考えられるので、付着表示22を方式表示21の後になるようにして、最後に行われるよう誘導する。
【0042】
鑑定用シート3は、本体2に添付されて遺言者に提供される。添付方法は、特に限定されないが、例えば、図示のように、方式表示21に重なるように着脱可能に添付して、鑑定用シート3の必要性について判断するよう促す。
【0043】
図3は、図1のAA線断面図で鑑定用シート3の使用状態を示す図である。図4は、保持シートへの鑑定対象物の保持の一例を示す図である。図5は、鑑定用シートへの鑑定対象物の格納及び本体への付着を断面で示す図である。鑑定用シート3は、鑑定対象物Qを格納するためのものである。以下、鑑定用シート3について、鑑定対象物QとしてDNAを挙げて詳細に説明する。
【0044】
鑑定対象物Qは、本体2に直接付着させることも考えられるが、DNAの場合、直接空気に触れるとDNAが劣化してしまう。そこで、鑑定対象物Qを保持するための保持シート31と、鑑定対象物Qを密封するための密封シート32と、を備えて、鑑定対象物Qを包み込んで間接的に本体2に付着させ、一体化させることで、鑑定対象物Qを保護し、劣化を防止する。
【0045】
図4に示すように、遺言者の組織から抽出されたDNAである鑑定対象物Q1は、器具9(例えば図示ではピペット)を用いて滴下して、保持シート31に吸着させ、保持させる。言い換えれば、本例の保持シート31は、DNAを吸着する吸着シートである。保持シート31のXY平面の大きさやZ方向の厚みは、鑑定対象物Q1を十分な量吸着できるものであればよく、特に限定されない。保持シート31の素材は、DNAの保持に適したものであればよく、公知技術が適宜用いられる。例えば、分析のときに溶けるような特殊なシートでもよいし、ガーゼ等でもよい。
【0046】
鑑定対象物Q1を格納した鑑定用シート3の本体2への付着は、本体2に一体不可分に付着するものであればよく、特に限定されないが、好ましくは、すり替えたりされることを防止できるように構成される。例えば、鑑定用シート3を破壊しないと本体2から取り外せないように構成される。例えば、鑑定用シート3を本体2に貼り付けて付着する場合は、剥がすと剥がし跡が残るように、例えば、剥がすと、貼り付けた部分の紙が一部破れるように構成される。
【0047】
一例として、図5に示すように、鑑定用シート3は、本体2に付着するための連結シート33を備える。
【0048】
連結シート33は、一例として、本体2に付着する側の面である背面に接着剤331が設けられ、反対側の面である正面の略中央に背面方向に凹入する格納部332を有する。連結シート33は、更に、適切なタイミングで付着できるように、接着剤331の背面に重なる剥離紙333を有する。
【0049】
格納部332は、保持シート31を収容するためのもので、保持シート31の収容に適した素材で構成され、保持シート31を収容可能な面積及び深さを有し、好ましくは、保持シート31と対応した形状に形成される。鑑定対象物Q1を保持した保持シート31は、図において矢印で示すように、連結シート33の格納部332に収容される。
【0050】
鑑定対象物Qは、密封シート32により密封される。密封シート32は、特に限定されないが、好ましくは、透視不能に構成される。このように構成することで、すり替え等を抑制できる。
【0051】
密封シート32は、保持シート31より外周が大きく形成され、保持シート31の外周よりも外側になる外周部と、内側になる内周部とを有する。密封シート32は、内周部の底面に接着剤321を備えて、保持シート31に貼着して(張り付けて)、これを直接密封する構成でもよいが、好ましくは、図示のように、外周部の底面に接着剤321を備えて、連結シート33の正面に貼着して、保持シート31を間接的に密封する構成である。これにより、鑑定の際に、保持シート31をより取り出しやすくなる。また、接着剤321が鑑定対象物Q1にかかることを回避できる。密封シート32は、図示しないが、接着剤321の背面に重なる剥離紙を有し、適切なタイミングで貼着できるようになっている。
【0052】
保持シート31を格納した鑑定用シート3は、剥離紙333を除去した状態で本体2に貼着される。このようにして、保持シート31は、密封シート32と連結シート33によりサンドイッチ状に挟み込まれ、包み込まれる。これにより、密着構造が構成され、鑑定対象物Q1の劣化を防止できる。また、このようにすることで、遺言を記した本体2と鑑定対象物Qが一体化して管理できる。
【0053】
図6は、鑑定用シートの他の一例を示す図である。鑑定用シート3は、密封シート32が、図5のように連結シート33と別体に形成されてもよいし、本図のように、密封シート32の本体部320が連結シート33の本体部330と一体に形成されてもよい。
【0054】
本例では、鑑定用シート3は、密封シート32の剥離紙322を除去し、破線で示す部分で折って、密封シート32が連結シート33に貼着するようになっている。鑑定用シート3は、このように構成することで、密封シート32の紛失や貼着忘れを防止でき、より扱いやすいものとなる。また、使用前は、剥離紙322を備えたまま破線で示す部分で折って本のように閉じておけば余分のスペースを取らずに済む。
【0055】
本実施形態の鑑定用シート3は、本体2に添付されて本体2と共にユーザ(遺言者)に提供されてもよいし、単体で提供されてもよい。鑑定用シート3は、鑑定対象物Qを密封保護し、シート状に格納できるため、遺言書への一体的な付着を簡便に行うことができる。
【0056】
<変形例1>
図7は、本発明の実施形態1の変形例1に係る遺言用シートの一例を示す概要図である。
【0057】
本例の遺言用シート1は、本体2に付着順が表示されている鑑定用シート3が複数添付され、本体2はその付着順に並ぶ付着表示22を複数有する。
【0058】
遺言書は、作成後長年保管されることも予想される。そうすると、遺言書作成時に付着された鑑定用シート3中のDNAが劣化する恐れがある。そこで、本例では、このような場合も対応できるように、上記のように構成して、所定年数毎に、DNAの劣化前に、遺言書に新たに抽出したDNAを含む鑑定用シート3を更に付着するよう促す。このようにすることで、長年に亘って遺言書への一体化を維持できる。所定年数は、DNAの劣化が予想される時間に応じて設定され、例えば3年である。
【0059】
<変形例2>
図8は、本発明の実施形態1の変形例2に係る遺言用シートの一例を示す概要図である。
【0060】
本例の遺言用シート1は、鑑定用シート3を2つ備え、遺言書となる本体2に一の鑑定用シート3が付着されて一体化され、遺言書の副本に一の鑑定用シート3が付着されて一体化される。一の鑑定用シート3には、好ましくは、副本に付着することを示す副本表示(例えば文字「副」)が表示される。
【0061】
遺言書は、差し替えられる可能性があるため、副本を用意することがある。本例は、上記のように構成することで、このような場合も対応できるようにする。
【0062】
一例として、遺言書作成後、複写して本人証明として副本を作成することがある。このような副本は、例えば、民間企業や社団法人などの第三者機関に保管を依頼することがある。
【0063】
本例では、2つの鑑定用シート3の保持シート31のそれぞれに、同一検体から抽出したDNAを吸着させた後、密封して、表示のない鑑定用シート3は、遺言書(本体2)に付着させ、副と表示されている鑑定用シート3は、副本4に付着させる。これにより、遺言書がすり替えられても、両鑑定対象物Qを用いて鑑定すれば、本物と偽物の区別ができる。
【0064】
鑑定用シート3は、本体2に1つ添付され、遺言書の副本4にのみ付着されて一体化されてもよい。この場合、鑑定用シート3中のDNAと遺言者の親族のDNAを用いて鑑定することで、鑑定用シート3が付着された副本の内容が正しく、これと異なる内容の遺言書はすり替えられたものであるとの真偽の判断ができ、副本が本人証明の機能を果たすことができる。
【0065】
このように、鑑定用シート3は、遺言書以外に付着されて、本人証明のために用いられてもよい。
【0066】
<変形例3>
図9は、本発明の実施形態1の変形例3に係る遺言用シートの一例を示す概要図である。
【0067】
鑑定対象物Qは、DNAの抽出が可能な遺言者から簡便に採取できる組織であってもよい。一例として、鑑定対象物Qは、遺言者自ら採取可能な組織で、例えば、図9(a)に示すように、鑑定対象物Qは、器具9(例えば図示のピンセット)で採取可能な毛根組織Q2である。例えば、図9(b)に示すように、鑑定対象物Qは、器具9(例えば不図示の爪切り)で採取可能な爪Q3である。
【0068】
本例の場合、保持シート31は、毛根や爪などの組織を保持するのに適したもので構成される。保持シート31は、このような組織を包むためのシートであってもよい。保持シート31は、上記と同様に、連結シート33に格納され、密封シート32により密封され、連結シート33により本体2に付着される。
【0069】
毛根や爪などの組織は劣化しにくく、遺言書と一体化させておけば、証明が必要なときにDNAを抽出して鑑定を行えるので、長期間の保管が予想される場合に好適である。
【0070】
なお、上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わせて適用されてもよい。
【0071】
<実施形態2(遺言用キット)>
図10は、本発明の実施形態2に係る遺言用キットの一例を示す概要図である。
【0072】
遺言用キット10は、遺言書となる本体2と、本体2に添付される、血縁関係の鑑定対象物を格納するための鑑定用シート3と、遺言に係る血縁関係の鑑定を支援するための鑑定支援シート5と、を備える。鑑定用シート3は、本体2に付着されて一体化される。鑑定支援シート5は、遺言に係る血縁関係の鑑定を支援するものである。
【0073】
言い換えれば、遺言用キット10は、上記遺言用シート1と、遺言に係る鑑定を支援するための鑑定支援シート5とを含む。以下、鑑定支援シート5について説明する。
【0074】
鑑定支援シート5は、遺言者による死後に血縁関係の鑑定の可能性の有無の判断を支援する。一例として、鑑定支援シート5には、遺言を巡る血縁関係の鑑定の可能性が予想される場合が記載され、例えば、遺言によって非嫡出子を認知する場合、非嫡出子を認知したことを家族が知らない場合などが記載されている。
【0075】
鑑定支援シート5は、鑑定の可能性がある場合、遺言執行者を指定するよう案内する。とりわけ、遺言によって非嫡出子を認知する場合は、遺言者の死後に、遺言執行者が代わりに認知届書や遺言書の謄本などを市区町村役場に提出する必要があるので、例えば、遺言で遺言執行者を指定しておくと手続がよりスムーズにできることを案内する。遺言執行者として、例えば弁護士等専門家が好ましい旨案内してもよい。
【0076】
鑑定支援シート5は、鑑定の可能性がある場合、鑑定用シート3に鑑定対象物Qを格納するよう案内する。また、好ましくは、鑑定対象物Qの採取方法や、鑑定用シート3の使用方法などが記載されている。また、DNAを鑑定対象物Qとする場合は、どこに依頼すればDNAを抽出可能かが記載されてもよい。遺言執行者を指定する場合は、その遺言執行者に保持シート31への鑑定対象物Qの保持や、本体2への付着を依頼してもよい。
【0077】
なお、遺言用キット10は、遺言者自ら鑑定対象物Qを採取できるように、採取のための器具を含んでもよい。
【0078】
<実施形態3(遺言に係る鑑定方法-遺言書作成段階)>
本実施形態は、鑑定用シート3を用いる遺言に係る鑑定方法であって、遺言者からの鑑定対象物Qを鑑定用シート3に格納するステップと、鑑定対象物Qを格納した鑑定用シート3を遺言書ないし本体2に一体に付着させるステップと、を含む。
【0079】
このように、本方法は、鑑定用シートないし鑑定用シートを含む遺言用シート、遺言用キットを用いて、遺言者による遺言を支援することができる。
【0080】
<実施形態4(遺言に係る鑑定方法-遺言効力発生後)>
本実施形態は、鑑定用シート3を用いる遺言に係る鑑定方法であって、遺言効力発生後、遺言書に一体に付着された鑑定用シート3から鑑定対象物Qを取り出すステップと、取り出された鑑定対象物Qと、比較対象(例えば非嫡出子)の鑑定対象物とを用いて血縁関係の鑑定を行うステップと、を含む。
【0081】
このように、本方法は、鑑定用シートないし鑑定用シートを含む遺言用シート、遺言用キット及び遺言支援システムを用いて、遺言効力発生後の遺言の執行の観点から遺言者を支援することができる。
【0082】
なお、上記では、隠し子(非嫡出子)の例を挙げて説明したが、遺言に係る鑑定が予想される場合は、これに限らない。例えば、遺言に係る家系の証明や遺言書の真偽の争いなども考えられる。また、原則として遺言者の死後3年以内であれば、非嫡出子は認知の訴えを提起できるので、相続人を守り偽隠し子を排除する場合も考えられる。
【0083】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、これらは本発明の一例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。本発明には、以上の各実施形態やその変形例を組み合わせた形態や、さらに様々な変形例が含まれる。請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…遺言用シート、2…本体、21…方式表示、22…付着表示、3…鑑定用シート、31…保持シート、32…密封シート、320…本体部、321…接着剤、322…剥離紙、33…連結シート、330…本体部、331…接着剤、332…格納部、333…剥離紙、4…副本、5…鑑定支援シート、9…器具、10…遺言用キット、Q…鑑定対象物。
【要約】
【課題】 遺言に係る血縁関係の鑑定の観点から遺言を支援する、遺言用シート、鑑定用シート、遺言用キット及び遺言に係る鑑定方法を提供する。
【解決手段】 遺言に用いられる遺言用シートであって、遺言書となる本体と、前記本体に添付される、血縁関係の鑑定対象物を格納するための鑑定用シートと、を備え、前記鑑定用シートは、前記本体に付着されて一体化される、遺言用シート。
【選択図】 図1
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図2
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図8
図9
図10