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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20231214BHJP
   A43B 7/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A43B23/02 101Z
A43B7/06
A43B23/02 103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023123342
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516010700
【氏名又は名称】株式会社フォーナインシューズ
(74)【代理人】
【識別番号】100093115
【弁理士】
【氏名又は名称】佐渡 昇
(72)【発明者】
【氏名】金子義幸
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3199079(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/00-23/30
A43B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を入れる履き口(10)と
この履き口(10)から入れられた足の底部に位置する靴底部(20)と、
この靴底部(20)の左右からそれぞれ立ち上がる内側部(30)および外側部(40)と、
これら内側部(30)と外側部(40)とを連結し、足の甲を覆う甲部(50)と、
足のつま先を覆うつま先部(60)と、
少なくとも甲部(50)を開閉可能とするスライドファスナー(70)と、
を備えた靴であって、
前記スライドファスナー(70)は、
その一端(71)が、前記内側部(30)、外側部(40)のうちの一方と甲部(50)との連結部と前記履き口(10)との交差部(71)に設けられ、
他端(72)が、前記内側部(30)、外側部(40)のうちの他方と甲部(50)との連結部であって、前記履き口(10)の口縁部(11)の近くに設けられ、
前記一端(71)と他端(72)との間の部分(73)は、前記内側部(30)、外側部(40)と甲部(50)との連結部(31,41)に沿いかつ、つま先部(60)の先端部(61)に沿って設けられ、
当該靴における、前記他端(72)と前記履き口(10)の口縁部(11)との間の部位(80)は、当該部位(80)の弾性自体によって、前記スライドファスナー(70)によって開かれた甲部(50)およびつま先部(60)を開かれた状態に維持する開放維持部(80)を構成し、
前記他端(72)は、前記履き口(10)の口縁部(11)よりも靴底部(20)側に向かう下方に設けられ、履き口(10)の口縁部(11)と前記他端(72)との間の部位(80)によって前記開放維持部(80)が構成され、かつ、
前記開放維持部(80)は、甲部(50)およびつま先部(60)を、開放維持部(80)回りに、外側かつ後方にも開く開放維持部であることを特徴とする靴。
【請求項2】
足を入れる履き口(10)と
この履き口(10)から入れられた足の底部に位置する靴底部(20)と、
この靴底部(20)の左右からそれぞれ立ち上がる内側部(30)および外側部(40)と、
これら内側部(30)と外側部(40)とを連結し、足の甲を覆う甲部(50)と、
足のつま先を覆うつま先部(60)と、
少なくとも甲部(50)を開閉可能とするスライドファスナー(70)と、
を備えた靴であって、
前記スライドファスナー(70)は、
その一端(71)が、前記内側部(30)と甲部(50)との連結部(31)と前記履き口(10)との交差部(71)に設けられ、
他端(72)が、前記外側部(40)と甲部(50)との連結部(41)であって、前記履き口(10)の口縁部(11)の近くに設けられ、
前記一端(71)と他端(72)との間の部分(73)は、前記内側部(30)、外側部(40)と甲部50との連結部(31,41)に沿いかつ、つま先部(60)の先端部(61)に沿って設けられ、
当該靴における、前記他端(72)と前記履き口(10)の口縁部(11)との間の部位(80)は、当該部位(80)の弾性自体によって、前記スライドファスナー(70)によって開かれた甲部(50)およびつま先部(60)を開かれた状態に維持する開放維持部(80)を構成し、
前記他端(72)は、前記履き口(10)の口縁部(11)よりも靴底部(20)側に向かう下方に設けられ、履き口(10)の口縁部(11)と前記他端(72)との間の部位(80)によって前記開放維持部(80)が構成され、かつ、
前記開放維持部(80)は、甲部(50)およびつま先部(60)を、開放維持部(80)回りに、外側かつ後方にも開く開放維持部であることを特徴とする靴。
【請求項3】
請求項2において、
前記スライドファスナー(70)の一端(71)は、スライドファスナー(70)を開く際のスライダー(75)のスライド始端部であり、他端(72)は終端部であることを特徴とする靴。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか一項において、
前記靴にはアッパーライニング(1c)が設けられており、このアッパーライニング(1c)は、柔らかい布で構成されるとともに、前記甲部(50)およびつま先部(60)が開かれた状態で前記開放維持部(80)の最外層に位置することを特徴とする靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関するものである。より詳しくは、靴のファスナーを全開にして日中履いた後の汗と臭いを蒸発させること、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けやすいこと、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいこと、洗濯後に乾燥させやすいこと、の全てを可能にする靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1~4に見られるような技術が知られている。
【0003】
<特許文献1>実用新案登録第3038610号公報
特許文献1には、
「足に障害を有する者でも容易に着脱することができ、安価な靴を提供する」ことを課題とし、
「底部と、足甲部分に位置する当該甲被部分が、該部分の外周の一部を中心として回動することによって開閉でき、開かれることによって、該部分が閉じられているときに存在する靴上部の開口よりも大なる開口を提供できるものである、甲被と、そして該外周に沿って所定の箇所に設けられた、該部分を閉じた位置に固定するための手段と、を有する靴」
が記載されている(同文献要約欄)。
【0004】
しかし、この靴は、足甲に接する部分3を開閉可能とするファスナーが、布製ファスナー7b,7aで構成されているため、開口6が布製ファスナー7aで部分的にふさがれた状態となる。
したがって、ファスナーを全開にしても、日中履いた後の汗と臭いを蒸発させることや、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けるのには適していない。また、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいともいえないし、洗濯後に乾燥させやすいともいえない。
【0005】
<特許文献2>実用新案登録第3040271号公報
特許文献2には、
「老人、幼児童、あるいは手足の不自由な身体障害者、一時的に手足が不自由になっている患者、またはこれらの介護者が容易に脱着出来る機能を有しながら、外観デザインにも優れた靴の提供」を課題とし、
「外側部(4) 、内側部(5) 、靴底部(6) から成る靴本体(3) 及び胛部(21)と爪先部(22)から成る靴蓋部(2) を有する靴(1) において、該靴蓋部(2)を別体で形成して前記靴蓋部(2) と前記靴本体(3) の先端部を縫着固定し、前記靴蓋部(2) の両側及び前部と、対応する前記外側部(4) と前記内側部(5) にスライドファスナー(7) を装着する。さらに踵履部(17)を縦割りとして、該縦割り部(19)にスライドファスナー(7) を形成して開放自在とする。以上により、靴蓋部(2) と踵履部(17)を開放すれば靴(1) が平面状に展開された状態となり、靴底内面(15)に足を置いて、外側部(4) 、内側部(5) 、靴蓋部(2) で足を包み込むように靴(1) を履くことができるので、手足が不自由な人や幼児童等あるいはその介護者でも容易に靴の着脱ができる」
靴が記載されている(同文献要約欄)。
【0006】
しかし、この靴は、靴蓋部(2)を別体で形成して靴蓋部(2) と靴本体(3) の先端部を縫着固定する構造であるから、この逢着部が洗いにくし、乾燥しにくい。
また、左右に2つのスライドファスナー(7)が設けられる構造であるから、開閉操作が煩わしい。
【0007】
同文献2の図3図4には、
「外側部(4) 、内側部(5) 、靴底部(6) から成る靴本体(3) と、胛部(21)及び爪先部(22)から成る靴蓋部(2) を有する合成皮革製の靴(1) において、靴蓋部(2) は踝から小指に向かう線上と前端部は爪先に沿った線上で分離しており、該分離線は上面から見て略反J字型である。前記靴蓋部(2) の前部の内面および靴底(6) に固定された立面(13)の外面にはそれぞれ雄面ファスナー(10)、雌面ファスナー(11)を縫着し、前記爪先部(22)の前部が立面(13)を覆うように係着される。」靴が記載されている(同文献0012段落)。
【0008】
しかし、この靴は、「靴蓋部(2) は踝から小指に向かう線上と前端部は爪先に沿った線上で分離しており、該分離線は上面から見て略反J字型である」から靴蓋部(2)と靴本体との連結部分が長い。また、靴蓋部(2)が、開いた状態のまま維持されるかどうかも不明である。
そのため、ファスナーを全開にしても、日中履いた後の汗と臭いを蒸発させることや、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けるのには適していない。また、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいともいえないし、洗濯後に乾燥させやすいともいえない。
【0009】
<特許文献3>実用新案登録第3199079号公報
特許文献3には、
「履き口に足を通すことに困難性を有する老人や身障者にとって脱ぎ履きが極めて容易である靴を提供する」ことを課題とし、
「甲被踵部12の上辺の中央近傍の左右に2の端部を有し左右の側甲被の靴底近辺を通り甲被つま先部15を周回する一連のファスナー4を有し、ファスナーを開放することにより甲被部分が靴底2から分離する。ファスナーは、閉鎖時において2の端部に1ずつ計2のスライダー6を有し、2のスライダーを甲被つま先部近辺まで滑動させることによりファスナーが開き、甲被が甲被つま先部の一部を残して靴底から解放される。この状態で、使用者は靴底上に足を置きファスナーを閉めるだけで靴を履くことができる。また、ファスナーは、閉鎖時において2の端部に位置する2のスライダーのうち1のスライダーのみを甲被つま先部を周回させ他の端部まで滑動させることにより完全に解放され、甲被が靴底から完全に分離する」
靴が記載されている(同文献要約欄)。
【0010】
この靴は、同文献図6にも示されるように、甲被1と靴底2とを完全に分離させることができるので、日中履いた後の汗と臭いを蒸発させること、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けやすいこと、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいこと、洗濯後に乾燥させやすいこと、の全てが可能であると考えられる。
【0011】
しかし、この靴は、甲被1と靴底2とが完全に分離可能であるため、甲被1と靴底2とのいずれか一方を紛失してしまう恐れがある。
【0012】
<特許文献4>特開2017-170191号公報
特許文献4には、
「着用者が足をファスナーに接触させることなく履くことができる靴を提供する」ことを課題とし、
「靴1は、靴底2とアッパー3とファスナー4とを主要な構成として備える。靴底2の周縁にはファスナー4の下側エレメント4Bが設けられ、アッパー4の下縁にはファスナー4の上側エレメント4Aが設けられている。そして、靴底2とアッパー3とがファスナー4によって分離可能に接合されている。また、靴底2は上面に被覆層部を有し、その周縁の全部又は一部に、ファスナー4との接触を回避する凸部が形成されている」
が記載されている(同文献要約欄)。
【0013】
この靴は、靴底2とアッパー3とがファスナー4によって完全に分離可能となっているので、日中履いた後の汗と臭いを蒸発させること、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けやすいこと、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいこと、洗濯後に乾燥させやすいこと、の全てが可能であると考えられる。
【0014】
しかし、この靴は、靴底2とアッパー3とが完全に分離可能となっているので、靴底2とアッパー3とのいずれか一方を紛失してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】実用新案登録第3038610号公報
【文献】実用新案登録第3040271号公報
【文献】実用新案登録第3199079号公報
【文献】特開2017-170191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、ファスナーを全開にして日中履いた後の汗と臭いを蒸発させること、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けやすいこと、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいこと、洗濯後に乾燥させやすいこと、の全てを可能にし、構成部材のいずれかを紛失することもない靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明の靴は、
足を入れる履き口と
この履き口から入れられた足の底部に位置する靴底部と、
この靴底部の左右からそれぞれ立ち上がる内側部および外側部と、
これら内側部と外側部とを連結し、足の甲を覆う甲部と、
足のつま先を覆うつま先部と、
少なくとも甲部を開閉可能とするスライドファスナーと、
を備えた靴であって、
前記スライドファスナーは、
その一端が、前記内側部、外側部のうちの一方と甲部との連結部と前記履き口との交差部に設けられ、
他端が、前記内側部、外側部のうちの他方と甲部との連結部であって、前記履き口の口縁部の近くに設けられ、
前記一端と他端との間の部分は、前記内側部、外側部と甲部との連結部に沿いかつ、つま先部の先端部に沿って設けられ、
当該靴における、前記他端と前記履き口の口縁部との間の部位は、当該部位の弾性自体によって、前記スライドファスナーによって開かれた甲部およびつま先部を開かれた状態に維持する開放維持部を構成することを特徴とする。
【0018】
この靴によれば次のような作用効果が得られる。
足を入れる履き口と
この履き口から入れられた足の底部に位置する靴底部と、
この靴底部の左右からそれぞれ立ち上がる内側部および外側部と、
これら内側部と外側部とを連結し、足の甲を覆う甲部と、
足のつま先を覆うつま先部と、
少なくとも甲部を開閉可能とするスライドファスナーと、
を備えているので、スライドファスナーの操作により、すくなくとも甲部を開閉することができる。
【0019】
そして、スライドファスナーは、
その一端が、前記内側部、外側部のうちの一方と甲部との連結部と前記履き口との交差部に設けられ、
他端が、前記内側部、外側部のうちの他方と甲部との連結部であって、前記履き口の口縁部の近くに設けられ、
前記一端と他端との間の部分は、前記内側部、外側部と甲部との連結部に沿いかつ、つま先部の先端部に沿って設けられているので、前記一端から他端に亘って開くことによって、甲部およびつま先部を大きく開くことができる。
【0020】
しかも、当該靴における、前記他端と前記履き口の口縁部との間の部位は、当該部位の弾性自体によって、前記スライドファスナーによって開かれた甲部およびつま先部を開かれた状態に維持する開放維持部を構成するので、甲部およびつま先部が開かれた状態のままで、汗と臭いを蒸発させることができ、容易に靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けることができ、また、靴の内部を容易に洗濯することができる。さらに、洗濯後も、甲部およびつま先部が開かれた状態のままで乾燥させることができるので、靴内を容易に乾燥させることができる。なお、靴本体と、開かれた甲部およびつま先部とは、前記開放維持部で連結された状態となるので、いずれか一方を紛失してしまうということもない。
【0021】
以上のように、本発明の靴によれば、ファスナーを全開にして日中履いた後の汗と臭いを蒸発させること、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けやすいこと、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいこと、洗濯後に乾燥させやすいこと、の全てを可能にし、構成部材のいずれかを紛失することもないという効果が得られる。
【0022】
また上記課題を解決するために本発明の靴は、
足を入れる履き口と
この履き口から入れられた足の底部に位置する靴底部と、
この靴底部の左右からそれぞれ立ち上がる内側部および外側部と、
これら内側部と外側部とを連結し、足の甲を覆う甲部と、
足のつま先を覆うつま先部と、
少なくとも甲部を開閉可能とするスライドファスナーと、
を備えた靴であって、
前記スライドファスナーは、
その一端が、前記内側部と甲部との連結部と前記履き口との交差部に設けられ、
他端が、前記外側部と甲部との連結部であって、前記履き口の口縁部の近くに設けられ、
前記一端と他端との間の部分は、前記内側部、外側部と甲部との連結部に沿いかつ、つま先部の先端部に沿って設けられ、
当該靴における、前記他端と前記履き口の口縁部との間の部位は、当該部位の弾性自体によって、前記スライドファスナーによって開かれた甲部およびつま先部を開かれた状態に維持する開放維持部を構成することを特徴とする。
【0023】
この靴によれば次のような作用効果が得られる。
足を入れる履き口と
この履き口から入れられた足の底部に位置する靴底部と、
この靴底部の左右からそれぞれ立ち上がる内側部および外側部と、
これら内側部と外側部とを連結し、足の甲を覆う甲部と、
足のつま先を覆うつま先部と、
少なくとも甲部を開閉可能とするスライドファスナーと、
を備えているので、スライドファスナーの操作により、すくなくとも甲部を開閉することができる。
【0024】
そして、スライドファスナーは、
その一端が、前記内側部と甲部との連結部と前記履き口との交差部に設けられ、
他端が、前記外側部と甲部との連結部であって、前記履き口の口縁部の近くに設けられ、
前記一端と他端との間の部分は、前記内側部、外側部と甲部との連結部に沿いかつ、つま先部の先端部に沿って設けられているので、前記一端から他端に亘って開くことによって、甲部およびつま先部を外側(前記外側部側)に大きく開くことができる。
【0025】
しかも、当該靴における、前記他端と前記履き口の口縁部との間の部位は、当該部位の弾性自体によって、前記スライドファスナーによって開かれた甲部およびつま先部を開かれた状態に維持する開放維持部を構成するので、甲部およびつま先部が開かれた状態のままで、汗と臭いを蒸発させることができ、容易に靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けることができ、また、靴の内部を容易に洗濯することができる。さらに、洗濯後も、甲部およびつま先部が外側に開かれた状態のままで乾燥させることができるので、左右の靴を揃えた状態で靴内を容易に乾燥させることができる。なお、靴本体と、開かれた甲部およびつま先部とは、前記開放維持部で連結された状態となるので、いずれか一方を紛失してしまうということもない。
【0026】
以上のように、本発明の靴によれば、ファスナーを全開にして日中履いた後の汗と臭いを蒸発させること、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けやすいこと、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいこと、洗濯後に乾燥させやすいこと、の全てを可能にし、構成部材のいずれかを紛失することもないという効果が得られる。しかも、洗濯後は、左右の靴を揃えた状態で乾燥させることができる。
【0027】
この靴においては、
前記スライドファスナーの一端は、スライドファスナーを開く際のスライダーのスライド始端部であり、他端は終端部である構成とすることができる。
このように構成すると、前記他端と前記履き口の口縁部との間の部位に、開放維持部を容易に構成することができる。
【0028】
前記靴にはアッパーライニングが設けられており、このアッパーライニングは、柔らかい布で構成されるとともに、前記甲部およびつま先部が開かれた状態で前記開放維持部の最外層に位置する構成とすることができる。
このように構成すると、足に対する肌触りをよくすることができると同時に、開放維持部によって甲部およびつま先部を適度に開かれた状態に維持しやすくなる。
【0029】
この靴においては、
前記他端は、前記履き口の口縁部よりも靴底部側に向かう下方に設けられ、履き口の口縁部と前記他端との間の部位によって前記開放維持部を構成することができる。
このように構成すると、開放維持部のいわばねじれ作用によって、甲部およびつま先部をより大きく開くことが可能となる。
【0030】
なお、本願において、他端が設けられる「履き口の口縁部の近く」とは、当該「履き口の口縁部の近く」の位置と口縁部との間の部位によって構成される開放維持部によって、甲部およびつま先部を開いた状態に維持できる程度に、履き口の口縁部に近づけた位置を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る靴の実施の形態を示す図で、(a)は正面図、(b)は斜め右から見た図、(c)は斜め左から見た図。
図2】甲部およびつま先部を開いた状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は斜め右から見た図、(c)は斜め左から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る靴の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。図の向きは符号の向きで見るものとする。
【0033】
図1図2に示すように、この実施の形態の靴1は、
足を入れる履き口10と
この履き口10から入れられた足(図示せず)の底部に位置する靴底部20と、
この靴底部20の左右からそれぞれ立ち上がる内側部30および外側部40と、
これら内側部30と外側部40とを連結し、足の甲を覆う甲部50と、
足のつま先を覆うつま先部60と、
少なくとも甲部50を開閉可能とするスライドファスナー70と、
を備えた靴であって、
スライドファスナー70は、
その一端71が、内側部30と甲部50との連結部31と履き口10との交差部(71)に設けられ、
他端72が、外側部40と甲部50との連結部41であって、履き口10の口縁部11の近くに設けられ、
一端71と他端72との間の部分73は、内側部30、外側部40と甲部50との連結部31,41に沿いかつ、つま先部60の先端部61に沿って設けられ、
当該靴1における、他端72と履き口10の口縁部11との間の部位80は、当該部位80の弾性自体によって、スライドファスナー70によって開かれた甲部50およびつま先部60を開かれた状態に維持する開放維持部80を構成する。
【0034】
この靴1によれば次のような作用効果が得られる。
足を入れる履き口10と
この履き口10から入れられた足の底部に位置する靴底部20と、
この靴底部20の左右からそれぞれ立ち上がる内側部30および外側部40と、
これら内側部30と外側部40とを連結し、足の甲を覆う甲部50と、
足のつま先を覆うつま先部60と、
少なくとも甲部50を開閉可能とするスライドファスナー70と、
を備え、
そして、スライドファスナー70は、
その一端71が、内側部30と甲部50との連結部31と履き口10との交差部(71)に設けられ、
他端72が、外側部40と甲部50との連結部41であって、履き口10の口縁部11の近くに設けられ、
一端71と他端72との間の部分73は、内側部30、外側部40と甲部50との連結部31,41に沿いかつ、つま先部60の先端部61に沿って設けられているので、図2に示すように、一端71から他端72に亘って開くことによって、甲部50およびつま先部60を外側(前記外側部40側(図2(a)において右側))に大きく開くことができる。
【0035】
しかも、当該靴1における、他端72と履き口10の口縁部11との間の部位80は、当該部位80の弾性自体によって、スライドファスナー70によって開かれた甲部50およびつま先部60を開かれた状態に維持する開放維持部80を構成するので、甲部50およびつま先部60が開かれた状態のままで、汗と臭いを蒸発させることができ、容易に靴の内部1bに消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けることができ、また、靴の内部1bを容易に洗濯することができる。さらに、洗濯後も、甲部50およびつま先部60が外側に開かれた状態のままで乾燥させることができるので、左右の靴(図2(a)において右側の靴のみを図示)を揃えた状態で靴内1bを容易に乾燥させることができる。なお、靴本体と、開かれた甲部50およびつま先部60とは、開放維持部80で連結された状態となるので、いずれか一方を紛失してしまうということもない。
【0036】
以上のように、この実施の形態の靴によれば、スライドファスナー70を全開にして日中履いた後の汗と臭いを蒸発させること、靴の内部1bに消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けやすいこと、靴を洗濯するときに内部1bが洗いやすいこと、洗濯後に乾燥させやすいこと、の全てを可能にし、構成部材のいずれかを紛失することもないという効果が得られる。しかも、洗濯後は、左右の靴を揃えた状態で乾燥させることができる。
【0037】
スライドファスナー70の一端71は、スライドファスナー70を開く際のスライダー75のスライド始端部であり、他端72は終端部である。
【0038】
このように構成すると、他端72と履き口10の口縁部11との間の部位80に、開放維持部80を容易に構成することができる。
【0039】
靴1にはアッパーライニング1cが設けられており、このアッパーライニング1cは、柔らかい布で構成されるとともに、甲部50およびつま先部60が開かれた状態で開放維持部80の最外層に位置する。
なお、靴1自体は公知の適宜の素材で構成でき、アッパーライニング1cも公知の素材を採用することができる。
【0040】
このように構成すると、足に対する肌触りをよくすることができると同時に、開放維持部80によって甲部50およびつま先部60を適度に開かれた状態に維持しやすくなる。
【0041】
主として図1(b)に示されるように、他端72は、履き口10の口縁部11よりも靴底部20側に向かう下方に設けられ、履き口10の口縁部11と他端72との間の部位80によって開放維持部80を構成する。
【0042】
このように構成すると、主として図2(a)に示すように、甲部50およびつま先部60を開いた際、開放維持部80のいわばねじれ作用によって、甲部50およびつま先部60をより大きく開くことが可能となる。別言すれば、甲部50およびつま先部60は、開放維持部80回りに、外側に開かれるとともに後方にも開かれるので、靴内部1bと甲部50およびつま先部60が大きく開放されることとなる。
【0043】
履き口10の口縁部11と他端72との間の長さLは、靴の形状や素材に応じて、1cm~4cmの範囲で適宜設定できる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
例えば、
【0045】
上記実施の形態ではスライドファスナー70は、上記の通り、一端71が、内側部30と甲部50との連結部31と履き口10との交差部(71)に設けられ、他端72が、外側部40と甲部50との連結部41であって、履き口10の口縁部11の近くに設けられているが、一端71が、外側部40と甲部50との連結部41と履き口10との交差部に設けられ、他端72が、内側部30と甲部50との連結部31であって、履き口10の口縁部11の近くに設けられてもよい。
【0046】
その場合、平面視でのスライドファスナー70の開き方向は反時計方向回りとなり、開放維持部80は、靴の内側(例えば図1(c)において符号82で示す部位)に形成されることとなり、甲部50およびつま先部60は図2(a)において内側(左側)に開かれることとなる。
【0047】
上記実施の形態では、スニーカータイプの靴に適用した場合を示しているが、他のタイプの靴にも適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1: 靴
10: 履き口
20: 靴底部
30: 内側部
40: 外側部
50: 甲部
60: つま先部
70: スライドファスナー
80: 開放維持部
【要約】
【課題】ファスナーを全開にして日中履いた後の汗と臭いを蒸発させること、靴の内部に消臭剤(消臭スプレー)を吹き付けやすいこと、靴を洗濯するときに内部が洗いやすいこと、洗濯後に乾燥させやすいこと、の全てを可能にし、構成部材のいずれかを紛失することもない靴を提供する。
【解決手段】スライドファスナー70は、一端71が、内側部30と甲部50との連結部31と履き口10との交差部(71)に設けられ、他端72が、外側部40と甲部50との連結部であって、履き口10の口縁部11の近くに設けられ、一端71と他端72との間の部分73は、内側部30、外側部40と甲部50との連結部31,41に沿いかつ、つま先部60の先端部61に沿って設けられ、靴における、他端72と履き口10の口縁部11との間の部位80は、部位80の弾性自体によって、スライドファスナー70によって開かれた甲部50およびつま先部60を開かれた状態に維持する開放維持部80を構成する。
【選択図】図2
図1
図2