(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】プロテオグリカンの製造方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 1/14 20060101AFI20231214BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C07K1/14
C07K14/435
(21)【出願番号】P 2023127199
(22)【出願日】2023-08-03
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2023022139
(32)【優先日】2023-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】田村 純一
(72)【発明者】
【氏名】中島 元夫
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 晃明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達治
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-009164(JP,A)
【文献】特開2019-123692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0341871(US,A1)
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,1997, Vol.1355, pp.20-32
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1992, Vol.267, pp.20435-20443
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,1991, Vol.1074, pp.424-432
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン界面活性剤と動物組織由来のプロテオグリカンとを混合して、エンドトキシンを含む前記非イオン界面活性剤のミセルを形成する形成工程と、
前記非イオン界面活性剤を用いて、
前記動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減する低減工程
とを含み、
前記低減工程は、
前記非イオン界面活性剤と前記動物組織由来のプロテオグリカンとを含む共存系について、前記非イオン界面活性剤の曇点未満の温度から、前記曇点以上の温度に昇温し、前記ミセルから、前記非イオン界面活性剤を含む界面活性剤相を形成して、前記界面活性剤相に前記エンドトキシンを濃縮する濃縮工程と、
前記界面活性剤相と、前記界面活性剤相以外の相とを、分離する分離工程と、
前記分離後の界面活性剤相以外の相を回収することにより、前記エンドトキシンが低減されたプロテオグリカンを回収する回収工程と、
を含む、プロテオグリカンの製造方法。
【請求項2】
前記界面活性剤相以外の相は、水相である、請求項
1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記分離は、遠心分離による分離である、請求項
1または
2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(POEAE)系非イオン界面活性剤である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテルである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記低減工程後のプロテオグリカンのピークトップ分子量は、30万~130万である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記プロテオグリカンの糖鎖は、コンドロイチン硫酸である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記動物は、サケ、ブタ、トリ、カレイ、およびエイからなる群から選択される、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロテオグリカンの製造方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療市場では、シート構造の再生医療用組織が主流である。しかしながら、前記シート構造の組織では、3次元構造を有する組織の再生は困難である。このため、前記3次元構造の組織の誘導が試みられている。前記3次元構造の組織を構築するにあたり、生体内と同様の細胞間クロストークおよび細胞外マトリックスの構造の再現が難しいという課題が存在する。そこで、前記細胞外マトリックスの構造を再現可能な素材の開発が望まれている。
【0003】
また、再生医療用組織では、ヒト等の動物に用いるために、低エンドトキシン(内毒素)化および生物由来原料基準の承認が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】赤木隆美, and 明石満. "細胞操作による三次元組織体構築と創薬研究・再生医療への応用." 薬剤学 76.5 (2016): 294-300.
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、前記細胞外マトリックスには、プロテオグリカンが豊富に存在することから、前記素材として、プロテオグリカンを使用できるのではないかとの着想を得た。そして、本発明者らは、プロテオグリカンを医療用に使用するために、塩基性有機溶媒を用いたエンドトキシン除去方法により、プロテオグリカン中のエンドトキシンの除去を行った。しかしながら、前記エンドトキシンの除去方法では、例えば、エンドトキシンが除去されるだけでなく、所定のプロテオグリカンの分子量を維持できない、という問題が生じた。
【0007】
そこで、本開示は、例えば、エンドトキシンを低減でき、かつ所定のプロテオグリカンの分子量を維持できる、プロテオグリカンの製造方法等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本開示のプロテオグリカンの製造方法(以下、「製造方法」ともいう。)は、非イオン界面活性剤を用いて、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減する低減工程を含む。
【0009】
本開示の組成物は、動物組織由来のプロテオグリカンを含む組成物であって、
前記組成物は、プロテオグリカン及びエンドトキシンを含み、
前記組成物に対するエンドトキシン含有割合が4EU/mg以下である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、例えば、エンドトキシンを低減でき、かつ所定のプロテオグリカンの分子量を維持できる、プロテオグリカンの製造方法等の提供等ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、各コンドロイチン硫酸の主な二糖構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示について、例をあげて具体的に説明する。以下、特に言及しない限り、各開示は、他の開示の説明を援用できる。
【0013】
<定義>
本明細書において、「プロテオグリカン」は、タンパク質(コアタンパク質)とグリコサミノグリカン(GAG、「多糖」または「糖鎖」ともいう。)とが共有結合した分子(糖タンパク質)を意味する。前記プロテオグリカンは、例えば、皮膚、臓器、および軟骨等の細胞外マトリックスとして存在する。前記グリコサミノグリカンは、通常、分岐構造を有さない長鎖構造を有する糖鎖として知られている。前記プロテオグリカンは、例えば、アグリカン(Aggrecan)、バーシカン(Versican)、デコリン(Decorin)、テスティカン(Testican)、ブレビカン(Brevican)、ビグリカン(Biglycan)、セルグリシン(Serglycin)、シンデカン(Syndecan)、パールカン(Perlecan)、ディストログリカン(Dystroglycan)、アグリン(Agrin)、クローストリン(Claustrin)、グリピカン(Glypican)、ルミカン、ケラトカンおよびニューロカン(Neurocan)等があげられる。前記プロテオグリカンは、例えば、前記タンパク質に結合しているGAGの種類によって、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、またはケラタン硫酸プロテオグリカンに分類できる。
【0014】
前記GAGは、例えば、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)、ヘパラン硫酸、ヘパリン、およびケラタン硫酸等があげられる。前記コンドロイチンは、グルクロン酸とアセチルガラクトサミンとの二糖構造を主な二糖構造とするO型糖鎖、およびイズロン酸およびアセチルガラクトサミンとの二糖構造を主な構造とするiO型糖鎖があげられる(以下、それぞれ、「コンドロイチン硫酸O」、および「コンドロイチン硫酸iO)ともいう)。前記コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸およびアセチルガラクトサミンの2糖が反復する糖鎖に硫酸基が付加された構造を有する。前記コンドロイチン硫酸は、例えば、グルクロン酸およびアセチルガラクトサミン4硫酸との二糖構造を主な二糖構造とするコンドロイチン硫酸A(A型)、イズロン酸およびアセチルガラクトサミン4硫酸との二糖構造を主な二糖構造とするコンドロイチン硫酸iA(iA型)、グルクロン酸およびアセチルガラクトサミン6硫酸との二糖構造を主な二糖構造とするコンドロイチン硫酸C(C型)、イズロン酸およびアセチルガラクトサミン6硫酸との二糖構造を主な二糖構造とするコンドロイチン硫酸iC(iC型)等があげられる。各コンドロイチン硫酸は、例えば、
図1に示す二糖構造を主な二糖構造として有する。なお、
図1では、硫酸基(スルホ基)は、水素原子と結合しているが、本開示はこれに限定されず、前記GAGの硫酸基は、例えば、水素原子が脱離し、イオン化していてもよいし、塩を形成していてもよい。
【0015】
本明細書において、「エンドトキシン(内毒素)」は、グラム陰性菌の細胞壁成分のリポ多糖(Lipopolysaccharide:LPS)を由来とする、毒性成分を意味する。前記エンドトキシンは、例えば、前記グラム陰性菌の死滅後、前記グラム陰性菌の細胞壁が破壊され遊離することにより生じる。前記エンドトキシンは、ヒト等の血中に入ると、発熱、敗血症性ショック、および多臓器不全等の生体反応を引き起こすことが知られている。前記エンドトキシンは、O抗原多糖、コア多糖、およびリピドAから構成される。前記エンドトキシンは、親水性部分(O抗原多糖およびコア多糖の糖部)および疎水性部分(リピドA)を有するため、水溶液中で会合し、ミセルを形成できる。
【0016】
本明細書において、「ミセル」は、水等の水性溶媒中において疎水性部分および親水性部分を有する両親媒性の分子が集まり、前記親水基部分を水性溶媒側に向け、疎水部を内側に向けた球体の構造物を意味する。分子分散からミセルを形成する濃度は、その物質の臨界ミセル濃度(Critical micelle concentration:CMC)という。
【0017】
本明細書において、「界面活性剤」は、親水基および疎水基(親油基)を有する化合物を意味する。前記界面活性剤は、前記臨界ミセル濃度以上で、ミセルを形成する。前記界面活性剤は、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、および非イオン界面活性剤があげられる。前記陰イオン界面活性剤は、水溶液中で、陰イオンに解離する界面活性剤を意味する。前記陽イオン界面活性剤は、水溶液中で、陽イオンに解離する界面活性剤を意味する。前記両性イオン界面活性剤は、水溶液中で、水溶液のpHに依存して、陽イオンまたは陰イオンに解離する界面活性剤を意味する。前記非イオン界面活性剤は、水溶液中で、イオンに解離しない界面活性剤を意味する。
【0018】
本明細書において、「曇点(曇り点)」は、非イオン界面活性剤を含む溶液を加熱昇温することによって、白濁が生じ始める温度(相転移温度)を意味する。前記白濁は、前記加熱昇温により、前記非イオン界面活性剤の水溶解度の急激な減少が起こり、前記非イオン界面活性剤がミセルを形成できなくなることによって生じる。前記水溶解度の急激な減少は、前記非イオン界面活性剤の有するポリエーテル鎖が水と水素結合を形成できなくなることによって生じる。前記曇点は、例えば、目視、非イオン界面活性剤の曇点に関する測定規格に沿った測定(ISO 1065:1991)、および特開2006-257395号公報に記載の方法等により測定できる。特開2006-257395号公報に記載の方法は、次の方法である。
・「新・界面活性剤入門」藤本武彦(三洋化成工業)、95頁記載の方法等であり、当該方法は、1質量%水溶液に希釈した非イオン性化合物を試験管に入れ、その中に温度計と撹拌棒を入れ、撹拌棒で静かに撹拌しながらゆっくり昇温させると、一定温度以上になった時に透明だった水溶液が白濁するので、この白濁した時の温度を測定し、この温度を曇点とするものである。
なお、界面活性剤における前記曇点の定義は、例えば、JIS K3211にもあげられている。
【0019】
以下、本開示について例をあげて説明するが、本開示は以下の例等に限定されるものではなく、任意に変更して実施できる。また、本開示および各実施形態における各説明は、特に言及がない限り、互いに援用可能である。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いる。また、本明細書において、「Aおよび/またはB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「AおよびBの双方」が含まれる。
【0020】
<プロテオグリカンの製造方法>
ある態様において、本開示は、プロテオグリカンの製造方法を提供する。本開示の製造方法は、非イオン界面活性剤を用いて、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減する低減工程を含む。本開示の製造方法によれば、所定のプロテオグリカンの分子量を維持したまま、エンドトキシンを低減することができる。
【0021】
本発明者らは、鋭意研究の結果、糖タンパク質であるプロテオグリカンと糖脂質であるエンドトキシンとについて、その疎水性および親水性の程度の違いを利用して、プロテオグリカンとエンドトキシンとを含む組成物から、エンドトキシンを低減できないかとの着想を得た。そして、本発明者らは、さらなる研究の結果、非イオン界面活性剤を用いることで、前記プロテオグリカンと前記エンドトキシンとの混合物から、前記エンドトキシンを抽出できることを見出し、本開示を確立するに至った。なお、本開示は、前記非イオン界面活性剤を用いることにより、以下に説明するようなメカニズムで前記エンドトキシンを低減できると推定される。ただし、本開示は、以下のメカニズムに何ら制限されない。前記プロテオグリカンは、糖およびタンパク質から構成されており、親水性の成分である。他方、前記エンドトキシンは、前述のように、親水性部分と疎水性部分とを有する。このため、前記非イオン界面活性剤が水性溶媒中に分散して存在できる温度条件下において、前記プロテオグリカン、前記エンドトキシン、および前記非イオン界面活性剤を水性溶媒中で共存させると、前記プロテオグリカンと、前記エンドトキシンおよび前記非イオン界面活性剤とは、その親水性および疎水性の違いから、異なる挙動を示す。具体的には、前記プロテオグリカンは、前記水性溶媒中に単独で分散可能である。他方、前記エンドトキシンおよび前記非イオン界面活性剤は、疎水性部分を含むため、前記水性溶媒中に単独での分散が難しく、両者が集まって複合体を形成する。このため、前記水性溶媒中では、前記エンドトキシンおよび前記非イオン界面活性剤が、複合体の形態で存在する。この状態で、前記水性溶媒を加温し、前記非イオン界面活性剤の曇点を超える温度とすると、前記非イオン界面活性剤を含む複合体は、前記水性溶媒での分散状態を維持できずに、前記非イオン界面活性剤の相(界面活性剤相)を形成する。前記エンドトキシンは、前記非イオン界面活性剤と複合体を形成しているため、前記相の形成(相分離)において、前記非イオン界面活性剤の相に濃縮(抽出)される。このため、本開示では、前記プロテオグリカンとエンドトキシンとを含む組成物から、前記エンドトキシンを異なる相に抽出することにより、前記プロテオグリカンを含む組成物における前記エンドトキシンの量を低減できると推定される。
【0022】
前記非イオン界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(POEAE)等のポリエーテル鎖を有する界面活性剤等があげられる。前記ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルは、例えば、ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル(下記式(1))があげられる。下記式(1)において、nはエチレングリコールの重合度を示す。前記nは、例えば、7~10であることが好ましく、さらには、7~8であることが好ましい。前記非イオン界面活性剤は、例えば、温度依存的に、相転移する非イオン界面活性剤である。
【0023】
【0024】
前記動物は、特に制限されず、例えば、ブタ等の哺乳類動物(哺乳類);ニワトリ等の鳥類動物(鳥類);コガネカレイ等のカレイ科魚類、シロサケ、アトランティックサーモン等のサケ科魚類、エイ(例えば、カスべを含む)等の魚類;等があげられる。前記動物は、好ましくは、ブタ、トリ、カレイ、サケ、およびエイ等があげられる。
【0025】
前記動物組織は、例えば、プロテオグリカンを含む組織であり、一例として、皮膚等の上皮組織;軟骨等の軟骨組織;消化器官;循環器官;呼吸器官;および胎盤等があげられる。具体例として、前記動物組織は、例えば、軟骨、ひれ、消化器、循環器、呼吸器、および耳等があげられる。
【0026】
前記プロテオグリカンの糖鎖は、例えば、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)、ヘパラン硫酸、ヘパリン、およびケラタン硫酸等があげられる。前記糖鎖は、好ましくは、コンドロイチン硫酸である。
【0027】
本開示の製造方法では、前述のように、前記低減工程において、前記非イオン界面活性剤を用いて、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減する。具体的には、前記低減工程では、例えば、前述のように、前記非イオン界面活性剤と複合体を形成しているエンドトキシンについて、前記複合体から前記非イオン界面活性剤の相を形成させることにより、前記非イオン界面活性剤の相に濃縮する。このため、本開示の製造方法は、前記低減工程に先立ち、前記非イオン界面活性剤と前記動物組織由来のプロテオグリカンとを接触させて、前記エンドトキシンを含む前記非イオン界面活性剤の複合体を形成する形成工程を含んでもよい。
【0028】
前記形成工程において、前記非イオン界面活性剤と前記プロテオグリカンとの接触は、例えば、前記複合体を効率よく形成できることから、液系(液相)で実施することが好ましい。前記液系は、例えば、水性溶媒等の溶媒の存在下ということもできる。前記液系は、例えば、塩基性有機溶媒等の有機溶媒を実質的に含まないことが好ましい。前記「実質的に含まない」は、例えば、有機溶媒の含有量が検出限界以下となる含有量であることを意味する。前記水性溶媒は、例えば、リン酸緩衝液、カルシウム(Ca)および/またはマグネシウム(Mg)を含まないリン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)等の緩衝液、食塩水、塩化ナトリウム液、またはこれらの混合液等があげられる。前記水性溶媒は、例えば、前記エンドトキシンをより効率よく除去できることから、エタノール等のアルコールを含んでもよい。前記水性溶媒がアルコールを含む場合、前記アルコールは、前記非イオン界面活性剤と前記エンドトキシンとの複合体形成を阻害しない範囲で含有することが好ましい。前記水性溶媒がアルコールを含む場合、前記アルコールの濃度は、例えば、0(v/v)%を超えて2(v/v)%未満が好ましく、約1(v/v)%がより好ましい。
【0029】
前記形成工程において、前記非イオン界面活性剤と前記プロテオグリカンとの接触は、例えば、前記非イオン界面活性剤および前記プロテオグリカンの状態に応じて適宜実施できる。前記接触に供する前記非イオン界面活性剤および前記プロテオグリカンは、例えば、固体でもよいし、液体でもよい。前記非イオン界面活性剤および前記プロテオグリカンが固体である場合、前記非イオン界面活性剤および前記プロテオグリカンは、予め溶媒に分散し、前記接触に供されることが好ましい。前記プロテオグリカンおよび前記非イオン界面活性剤の一方が、固体であり、他方が液体である場合、前記接触は、例えば、公知の固液の接触方法により実施できる。具体的には、前記接触は、前記非イオン界面活性剤と前記動物組織由来のプロテオグリカンとを混合または混和(以下、あわせて「混合」という。)することにより、実施できる。前記非イオン界面活性剤および前記プロテオグリカンが固体の場合、前記接触は、例えば、溶媒に、前記非イオン界面活性剤および前記プロテオグリカンを添加することにより実施できる。これにより、前記形成工程では、前記エンドトキシンと前記非イオン界面活性剤との複合体を含む、前記非イオン界面活性剤と前記プロテオグリカンとの共存系(混合系または混合液)を調製できる。前記共存系において、前記非イオン界面活性剤と前記エンドトキシンとの複合体は、例えば、ミセルを形成していることが好ましい。この場合、前記共存系は、前記非イオン界面活性剤のミセルを含み、前記ミセルがエンドトキシンを含むということもできる。
【0030】
前記形成工程において、前記共存系は、例えば、前記接触後に、さらに混合されることが好ましい。これにより、前記形成工程では、例えば、前記共存系において、前記エンドトキシンと前記非イオン界面活性剤との複合体の形成を促進できる。前記混合は、例えば、ボルテックスミキサー等の撹拌装置を用いてもよいし、転倒混和により行ってもよいし、超音波処理によって行ってもよいが、好ましくは、超音波処理である。
【0031】
前記形成工程において、前記動物組織由来のプロテオグリカンは、前記動物組織から粗精製または精製等の前処理がされたプロテオグリカンでもよいし、前記プロテオグリカンを含む動物組織でもよい。前記前処理は、例えば、前記動物組織の微細化、脱脂、精製等の処理があげられる。前記微細化は、例えば、切断処理、破砕処理、および超音波処理等の処理により実施できる。前記精製(抽出)は、例えば、前記動物組織またはその前処理物と抽出液とを接触させることにより実施できる。前記抽出液は、例えば、グアニジン塩酸塩水溶液、酢酸水溶液、尿素水溶液、および塩化マグネシウム水溶液等があげられる。
【0032】
前記共存系のpHは、特に制限されず、例えば、好ましくはpH5~pH7.4であり、好ましくはpH5.5以上(例えば、pH5.5~pH7.4)、または、pH7以下(例えば、pH5~pH7、またはpH5.5~pH7)、より好ましくは、pH6以上(例えば、pH6~pH7.4またはpH6~pH7)、またはpH6.8以下(例えば、pH5~pH6.8、pH5.5~pH6.8、またはpH6~pH6.8)である。
【0033】
前記形成工程において、前記共存系の温度(温度)は、例えば、前記非イオン界面活性剤の曇点未満の温度である。前記温度は、例えば、前記非イオン界面活性剤の種類および前記共存系における非イオン界面活性剤の濃度に応じて設定できる。前記非イオン界面活性剤がPOEAE系非イオン界面活性剤である場合、前記温度は、例えば、―10℃を超え22℃未満である。
【0034】
前記形成工程において、前記共存系における非イオン界面活性剤および前記プロテオグリカンの含有量は、前記プロテオグリカンに含まれると想定されるエンドトキシンの含有量に応じて設定できる。具体的には、前記プロテオグリカンに含まれる想定されるエンドトキシンの含有量が相対的に多い場合、前記共存系における前記非イオン界面活性剤の含有量は、例えば、相対的に多く設定できる。他方、前記プロテオグリカンに含まれる想定されるエンドトキシンの含有量が相対的に少ない場合、前記共存系における前記非イオン界面活性剤の含有量は、例えば、相対的に少なく設定できる。前記共存系における非イオン界面活性剤および前記プロテオグリカンの含有量は、例えば、前記プロテオグリカンの含有量に応じて設定してもよい。この場合、前記共存系において、前記プロテオグリカン1gあたり、前記非イオン界面活性剤は、例えば、700μg~1400μg(例えば、711μg、736μg)とすることができる。
【0035】
前記プロテオグリカンは、例えば、前記形成工程に先立ち、カルシウム塩を析出させることによりエンドトキシンを低減する前処理を行ってもよい。具体的には、前記前処理は、例えば、前記プロテオグリカンとリン酸緩衝液とを接触または混合し、当該接触または混合後にできるリン酸カルシウム塩および前記エンドトキシンを含む析出物を分離または除去することにより、実施できる。前記リン酸カルシウム塩は、例えば、前記エンドトキシンを吸着する。このため、本開示の製造方法は、例えば、前記前処理を含むことにより、前記エンドトキシンをより効率よく除去できる。また、前記析出物を除去した後の上清は、例えば、前記エンドトキシンが低減されたプロテオグリカンを含む。このため、前記前処理では、例えば、前記上清を回収し、前記形成工程では、回収された上清を、前記プロテオグリカンとして用いてもよい。前記前処理の時間は、例えば、好ましくは、2時間以上であり、より好ましくは、4~36時間、さらに好ましくは8~24時間である。前記前処理の温度は、例えば、好ましくは18~25℃である。
【0036】
つぎに、前記低減工程では、前記非イオン界面活性剤と前記動物組織由来のプロテオグリカンとを含む前記共存系について、前記非イオン界面活性剤の曇点未満の温度から、前記曇点以上の温度に昇温させる。これにより、前記低減工程では、前記非イオン界面活性剤の前記非イオン界面活性剤を含む界面活性剤相を形成させ、前記界面活性剤相に前記エンドトキシンを濃縮できる(濃縮工程)。前述のように、前記エンドトキシンと前記非イオン界面活性剤とは複合体を形成しているため、前記濃縮工程では、前記界面活性剤相の形成時に、前記複合体中のエンドトキシンも前記界面活性剤相に濃縮され、前記界面活性剤相以外の相にプロテオグリカンが含有される。このため、前記低減工程では、例えば、前記動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを、前記界面活性剤相に分離または抽出でき、前記プロテオグリカンを前記界面活性剤相以外の相に分離または抽出できる。前記共存系として水性溶媒を用いる場合、前記界面活性剤相以外の相は、例えば、水相ということもできる。
【0037】
前記曇点は、前記非イオン界面活性剤の種類によって異なる。このため、前記濃縮工程では、前記非イオン界面活性剤の種類に応じて、前記曇点未満の温度および前記曇点以上の温度を適宜調整できる。前記曇点は、例えば、使用予定の共存系中の非イオン界面活性剤の濃度となるように、前記非イオン界面活性剤を含む水溶液を調製し、前述の曇点の測定方法により前記水溶液を測定することで決定してもよいし、前記非イオン界面活性剤の公知の曇点に基づき決定してもよい。前記非イオン界面活性剤が市販品の場合、前記非イオン界面活性剤の曇点は、例えば、添付の説明書に記載の曇点を参照できる。具体例として、前記非イオン界面活性剤がポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル(重合度7~8)である場合、前記曇点は、例えば、約22℃である。このため、前記非イオン界面活性剤として、ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル(重合度7~8)を用いる場合、前記曇点未満の温度は、例えば、-10℃を超え22℃未満、好ましくは、約0℃に設定できる。また、前記曇点以上の温度は、例えば、22℃~50℃、好ましくは、40℃である。
【0038】
前記濃縮工程において、前記昇温は、前記共存系を加熱することにより実施できる。前記共存系への加熱は、例えば、ヒートブロック、恒温器等の温度調整装置を用いて実施できる。
【0039】
前記共存系における前記曇点未満の温度から前記曇点以上の温度への昇温速度(加熱速度)は、特に制限されない。前記昇温(加熱)は、例えば、連続的に行ってもよいし、段階的に行ってもよい。
【0040】
前記濃縮工程では、例えば、前記昇温に先立ち、前記共存系について、前記曇点未満の温度下で、混合することが好ましい。前記混合は、例えば、ボルテックスミキサー等の撹拌装置を用いて行ってもよいし、転倒混和により行ってもよく、好ましくは、転倒混和である。前記曇点未満の温度下での混合時間は、例えば、前記共存系または前記共存系の溶媒の温度が、おおよそ均一になる範囲に設定できる。前記曇点未満の温度下での混和時間は、例えば、1分~10分である。
【0041】
前記濃縮工程において、例えば、前記昇温後、前記曇点以上の温度下で、混和することが好ましい。前記混和は、例えば、ボルテックスミキサー等を用いて行ってもよいし、転倒混和により行ってもよく、好ましくは、転倒混和である。前記曇点以上の温度下での混和時間は、例えば、前記溶媒の温度が、おおよそ均一になる範囲に設定できる。前記曇点以上の温度下での混和時間は、例えば、1分~10分である。
【0042】
前記低減工程は、前記界面活性剤相と、前記界面活性剤相以外の相とを分離する分離工程を含んでもよい。これにより、前記低減工程では、例えば、前記界面活性剤相から形成される層と、前記界面活性剤相以外の相から形成される層とを含む層構造に分離できる。前記低減工程は、前記分離工程を含むことにより、前記共存系における前記界面活性剤相および前記界面活性剤相以外の相の少なくとも一方の回収または除去を容易に実施できる。このため、本開示の製造方法は、例えば、前記プロテオグリカンにおけるエンドトキシンを効率よく低減できる。前記分離工程は、前記濃縮工程後に実施することが好ましい。前記分離方法は、例えば、液体の二相を分離可能な分離方法により実施でき、具体例として、遠心分離等によって実施できる。前記界面活性剤相以外の相は、例えば、水相があげられる。前記分離工程を前記遠心分離により実施する場合、前記遠心分離の条件は、例えば、9500×gである。
【0043】
前記分離工程における時間(分離時間)は、例えば、前記界面活性剤相と、前記界面活性剤相以外の相とを分離することができる範囲で適宜設定できる。前記分離時間は、例えば、1秒~60秒である。
【0044】
前記分離工程における温度(分離温度)は、例えば、前記界面活性剤相を維持可能な温度であり、具体例として、前記曇点以上の温度である。前記非イオン界面活性剤がポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル(重合度7~8)を用いる場合、前記分離温度は、例えば、22℃~40℃である。
【0045】
本開示の製造方法は、前記低減工程において、前記分離後の前記界面活性剤相以外の相を回収することにより、前記エンドトキシンが低減されたプロテオグリカンを回収する回収工程を含んでもよい。前記回収方法は、上清の前記界面活性剤相以外の相である水相を回収でき、かつ所定のプロテオグリカンの分子量を維持したまま回収できる範囲であれば、特に制限されない。前記回収方法は、例えば、スポイト等を用いて実施してもよい。
【0046】
本開示の製造方法は、例えば、前記回収されたプロテオグリカンを、前記動物組織由来のプロテオグリカンとして、前記低減工程を1回以上繰り返し実施してもよい。本開示の製造方法では、例えば、前記低減工程を1回以上繰り返し実施することにより、前記プロテオグリカン中のエンドトキシンの量をさらに低減することができる。
【0047】
本開示の製造方法は、前記低減工程を1回以上繰り返し実施する場合、例えば、繰り返しの低減工程に先立ち、前記形成工程を実施してもよい。この場合、1回目の形成工程において、前記共存系は、例えば、前記水性溶媒を含み、2回目以降の形成工程において、前記共存系は、例えば、前記アルコールを含む水性溶媒を含むことが好ましい。これにより、本開示の製造方法は、例えば、前記エンドトキシンをより効率よく除去できる。
【0048】
本開示の製造方法は、前記低減工程後に、前記回収された水相に含まれるプロテオグリカンのエンドトキシン濃度を測定してもよい。前記エンドトキシン濃度の測定は、カブトガニの血球抽出物から作られるライセート試薬を用いた、ゲル凝固法(LAL試験)、および光学的定量法(比色法)等によって実施できる。
【0049】
前記低減工程後のエンドトキシンの濃度は、例えば、4EU/mg以下、より好ましくは0.4EU/mg以下、更に好ましくは0.04EU/mg以下である。前記低減工程後のエンドトキシンの濃度は、例えば、再生医療等製品で用いる基準として、0.4EU/mg以下であることが好ましい。なお、当該エンドトキシンの濃度の下限は、例えば、0EU/mgが好ましいが、現実的には0EU/mgを超える(検出限界程度である)ことが好ましい。
【0050】
本開示の製造方法は、前記低減工程後に、前記回収された水相に含まれるプロテオグリカンの分子量を測定してもよい。前記プロテオグリカンの分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)法によって測定されるピークトップ分子量を意味する。前記プロテオグリカンの分子量は、GPC法等を用いて実施できる。前記GPC法は、例えば、下記の条件で行い、前記標準試料(分子量マーカー、プルラン)を個別にHPLCシステムに注入し、分子量検量線を得ることで算出できる。
【0051】
(ピークトップ分子量(Mp)の測定条件)
HPLCシステム:LC-20AD(株式会社島津製作所社製)
カラム:TSKgel G5000-PWXL φ7.8mm×300mm(東ソー社製)
溶出液:pH6.8 リン酸緩衝液
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率検出器(RID-20A 株式会社島津製作所社製)
注入量:50μL
分子量マーカー:Shodex STANDARD P-82(プルラン)
【0052】
前記低減工程後のプロテオグリカンのピークトップ分子量は、例えば、30万~130万、40万~120万である。
【0053】
本開示の製造方法は、前記低減工程後に、前記回収された前記界面活性剤相以外の相から、所定のピークトップ分子量を満たすプロテオグリカンを分画する分画工程を含んでもよい。前記分画方法は、所定のプロテオグリカンの分子量を維持したまま分画できる範囲であれば、特に制限されない。前記分画方法は、例えば、分子量に基づき、成分を分画可能な公知の方法により実施でき、具体的には、限外濾過膜(分子量分画膜)、透析膜を用いて実施してもよいし、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー等により実施してもよい。前記分子量分画膜の分画分子量は、例えば、目的の分子量に応じて設定できる。
【0054】
前記分画工程における時間(分画時間)は、例えば、所定のプロテオグリカンの分子量を維持したまま分画できる範囲であれば、特に制限されない。前記分画時間は、例えば、1日~2週間である。
【0055】
本開示の製造方法は、前記分画工程後に、前記分画されたプロテオグリカンを固形化する固形化工程を含んでもよい。前記固形化方法は、所定のプロテオグリカンの分子量を維持したまま固形化できる範囲であれば、特に制限されない。前記固形化工程は、例えば、前記分画後のプロテオグリカンを含む液体から、プロテオグリカンを固形化可能な公知の方法により実施でき、具体的には、凍結乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)等の乾燥処理により実施できる。
【0056】
<組成物>
別の態様において、本開示は、動物組織由来のプロテオグリカンを含む組成物を提供する。本開示の組成物は、プロテオグリカン及びエンドトキシンを含み、前記組成物に対するエンドトキシン含有割合が4EU/mg以下である。
【0057】
本開示の組成物は、例えば、前記本開示のプロテオグリカンの製造方法により得られたプロテオグリカンを含む。本開示の組成物は、例えば、前記本開示のプロテオグリカンの製造方法の説明を援用できる。
【実施例】
【0058】
つぎに、本開示の実施例について説明する。ただし、本開示は、以下の実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。なお、「mol/l」は、「M」と標記することもある。
【0059】
[実施例1]
本開示の製造方法により、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減することができ、かつ前記プロテオグリカンの所定の分子量(分子量が約45万)を維持できた。
【0060】
0.2mol/l NaCl含有リン酸緩衝液(pH6)に、7.8mgのサケ由来のプロテオグリカンを添加した。前記添加後、約23℃で撹拌および超音波処理を行った。その後、5μlのTriton(商標)-X114を添加した。前記添加後、0℃、6分の条件下で、転倒混和を行った。前記転倒混和後、37℃、5分の条件下で、転倒混和を行った。前記転倒混和後、23℃、30秒、10000rpmの条件下で、遠心を行った。前記遠心後、2層に分離していることを確認した。前記確認後、前記プロテオグリカンを含む上層を回収し、分画分子量(MWCO:12000~16000)の透析を行った。前記透析後、前記プロテオグリカンの凍結乾燥を行い、プロテオグリカン固形物を得た。その後、処理前のプロテオグリカンおよび前記プロテオグリカン固形物について、エンドトキシンの濃度をLAL法により、キット(ToxinSensor Chromogenic LAL Endotoxin Assay Kit、GenScript社製)を用いて、測定した。また、処理前のプロテオグリカンおよび前記プロテオグリカン固形物について、以下の測定条件でHPLC分析を行った。
【0061】
(HPLCの測定条件)
HPLCシステム:LC-20AD(株式会社島津製作所社製)
カラム:TSKgel G5000-PWXL Φ7.8mm×300mm(東ソー社製)
溶出液:pH6.8 リン酸緩衝液
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率検出器(RID-10A 株式会社島津製作所社製)
注入量:50μL
分子量マーカー:Shodex STANDARD P-82(プルラン)
前記分子量マーカーのピークトップ分子量(Mp)および重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、下記の通りである。
STD P-800:Mp:739,000、Mw/Mn:1.24
STD P-400:Mp:348,000、Mw/Mn:1.33
STD P-200:Mp:216,000、Mw/Mn:1.22
STD P-100:Mp:107,000、Mw/Mn:1.12
STD P-50:Mp:49,400、Mw/Mn:1.08
STD P-20:Mp:22,000、Mw/Mn:1.08
STD P-10:Mp:9,800、Mw/Mn:1.07
STD P-5:Mp:6,300、Mw/Mn:1.09
【0062】
この結果、処理前のプロテオグリカンでは、エンドトキシンの濃度は400EU/mgであったのに対し、前記プロテオグリカン固形物では、エンドトキシンの濃度は4EU/mgであった。また、処理前のプロテオグリカンでは、ピークトップ分子量は約45万で、前記プロテオグリカン固形物では、ピークトップ分子量は約45万であった。以上の結果から、本開示の方法(実施例1)により、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減することができ、かつ前記プロテオグリカンの所定の分子量を維持できることがわかった。
【0063】
なお、以下の比較例1A~1Cも実施した。
【0064】
[比較例1A]
0.2mol/l NaCl含有リン酸緩衝液(pH6)に代えて、0.001規定の水酸化ナトリウム含有のエタノールを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1Aのサンプルの作製、エンドトキシン濃度の測定、およびHPLC分析を行った。この結果、比較例1Aのサンプルにおいて、プロテオグリカンの所定の分子量(約45万)の維持は確認できたが、エンドトキシンの低減が確認できなかった。
【0065】
[比較例1B]
0.2mol/l NaCl含有リン酸緩衝液(pH6)に代えて、0.01規定の水酸化ナトリウム含有のエタノールを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2のサンプルの作製、エンドトキシン濃度の測定、およびHPLC分析を行った。この結果、比較例1Bのサンプルにおいて、エンドトキシンの濃度は、167.8EU/mgであった。以上の結果から、比較例1Bのサンプルでは、実施例1と比べ、エンドトキシンの低減がされていないことがわかった。
【0066】
[比較例1C]
0.2mol/l NaCl含有リン酸緩衝液(pH6)に代えて、0.025規定の水酸化ナトリウム含有のエタノールを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1Cのサンプルの作製、エンドトキシン濃度の測定、およびHPLC分析を行った。この結果、比較例3のサンプルにおいて、エンドトキシンの濃度は、33.7EU/mgであり、プロテオグリカンの分子量は、所定の分子量(約45万)であった。以上の結果から、比較例1Cのサンプルでは、エンドトキシン濃度が低減されている一方で、所定のプロテオグリカンの分子量が維持されていないことがわかった。
【0067】
[実施例2A]
本開示の製造方法を用いて、動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを低減できることを確認した。
【0068】
0.05mol/l リン酸緩衝液(pH6.0)に、7.8mgのサケ由来のプロテオグリカンを添加した。
【0069】
前記添加後、5μlのTriton(商標)-X114を添加した。前記添加後、攪拌を行い、氷上、10分の条件下で、静置した。前記静置後、40℃、10分の条件下で、静置した。前記静置後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心を行った。前記遠心後、2層に分離していることを確認した。前記確認後、前記プロテオグリカンを含む上層を回収し、3倍量の飽和エタノールを添加し、晶析させた。前記晶析後、飽和エタノールを除去し、再度飽和エタノールを添加した。前記添加後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心分離を行った。前記遠心分離後、飽和エタノールを除去し、真空乾燥を行い、パウダー化したプロテオグリカンを取得した。その後、処理前のプロテオグリカンおよび前記パウダー化したプロテオグリカンについて、前記エンドトキシン濃度をLAL法により測定した。前記LAL法には、キット(ToxinSensor Chromogenic LAL Endotoxin Assay Kit、GenScript社製)を用いた。
【0070】
この結果、処理前のプロテオグリカンでは、エンドトキシンの濃度は250.7EU/mgであったのに対し、前記パウダー化したプロテオグリカンでは、エンドトキシンの濃度は9.2EU/mgであった。以上の結果から、本開示の方法(実施例2A)により、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減できることがわかった。
【0071】
[実施例2B]
本開示の製造方法を用いて、動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを低減できることを確認した。
【0072】
0.05mol/l リン酸緩衝液(pH6.0)に、7.8mgのサケ由来のプロテオグリカンを添加し、前記添加後、23℃、24時間の条件下で、静置した。
【0073】
前記静置後、析出物を除去し、上清を得た。その後、5μlのTriton(商標)-X114を添加した。前記添加後、攪拌を行い、氷上、10分の条件下で、静置した。前記静置後、40℃、10分の条件下で、静置した。前記静置後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心を行った。前記遠心後、2層に分離していることを確認した。前記確認後、前記プロテオグリカンを含む上層を回収し、3倍量の飽和エタノールを添加し、晶析させた。前記晶析後、飽和エタノールを除去し、再度飽和エタノールを添加した。前記添加後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心分離を行った。前記遠心分離後、飽和エタノールを除去し、真空乾燥を行い、パウダー化したプロテオグリカンを取得した。その後、実施例2Aと同様の方法で、前記実施例2Bのパウダー化したプロテオグリカンについて、エンドトキシン濃度の測定を行った。
【0074】
この結果、前記実施例2Bのパウダー化したプロテオグリカンにおいて、エンドトキシンの濃度は、9.2EU/mgであった。以上の結果から、本開示の方法(実施例2B)においても、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減できることがわかった。
【0075】
なお、以下の比較例2も実施した。
【0076】
[比較例2]
0.05mol/l リン酸緩衝液(pH6.0)に、7.8mgのサケ由来のプロテオグリカンを添加し、前記添加後、23℃、24時間静置した。
【0077】
前記静置後、析出物を除去し、上清を得た。前記上清に3倍量の飽和エタノールを添加し、晶析させた。前記晶析後、飽和エタノールを除去し、再度飽和エタノールを添加した。前記添加後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心分離を行った。前記遠心分離後、飽和エタノールを除去し、真空乾燥を行い、パウダー化したプロテオグリカンを取得した。その後、前記実施例2Aと同様の方法で、前記比較例2のパウダー化したプロテオグリカンについて、エンドトキシン濃度の測定を行った。
【0078】
この結果、前記比較例2のパウダー化したプロテオグリカンにおいて、エンドトキシンの濃度は、170.1EU/mgであった。
【0079】
[実施例3A]
本開示の製造方法によって、動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを低減できることを確認した。
【0080】
プロテオグリカン溶液の溶媒にPBS(pH7.2、富士フイルム和光純薬社製、Cat No.: 164-28713)を用いたこと以外、前記実施例2Aと同様の方法で、パウダー化したプロテオグリカンを得た。その後、処理前のプロテオグリカンおよび前記パウダー化したプロテオグリカンについて、前記エンドトキシン濃度をLAL法により測定した。前記LAL法には、キット(ToxinSensor Chromogenic LAL Endotoxin Assay Kit、GenScript社製)を用いた。
【0081】
この結果、処理前のプロテオグリカンでは、エンドトキシンの濃度は304.2EU/mgであったのに対し、前記パウダー化したプロテオグリカンでは、エンドトキシンの濃度は21.4EU/mgであった。以上の結果から、本開示の方法(実施例3A)により、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減できることがわかった。
【0082】
[実施例3B]
本開示の製造方法において低減工程を繰り返し行うことによって、動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを低減できることを確認した。
【0083】
PBS(pH7.2、富士フイルム和光純薬社製、Cat No.: 164-28713)に、サケ由来のプロテオグリカンを添加した。前記添加後、23℃で撹拌および超音波処理を行い、5mg/mlのプロテオグリカン溶液を得た。その後、1(v/v)%のTriton(商標)-X114を添加した。前記添加後、氷上、10分の条件下で、静置した。前記静置後、40℃、10分の条件下で、静置した。前記静置後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心を行った。前記遠心後、2層に分離していることを確認した。前記確認後、下層および上層の境目の溶液を含まないように前記プロテオグリカンを含む上層を回収した。前記回収後、1(v/v)%のTriton(商標)-X114を添加した。前記添加後、氷上、10分の条件下で、静置した。前記静置後、40℃、10分の条件下で、静置した。前記静置後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心を行った。前記遠心後、2層に分離していることを確認した。前記確認後、前記プロテオグリカンを含む上層を回収し、3倍量の飽和エタノールを添加し、晶析させた。前記晶析後、飽和エタノールを除去し、再度飽和エタノールを添加した。前記添加後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心分離を行った。前記遠心分離後、飽和エタノールを除去し、真空乾燥を行い、パウダー化したプロテオグリカンを取得した。その後、実施例3Aと同様の方法で、実施例3Bのパウダー化したプロテオグリカンについて、エンドトキシン濃度の測定を行った。
【0084】
この結果、前記実施例3Bのパウダー化したプロテオグリカンにおいて、エンドトキシンの濃度は、7.8EU/mgであった。また、前記実施例3Bでは、前記実施例3Aと比べて、エンドトキシン濃度が約1/3に低減された。以上の結果から、本開示の製造方法における形成工程および低減工程を繰り返すことにより、プロテオグリカンのエンドトキシン濃度をさらに低減できることがわかった。
【0085】
[実施例4A]
本開示の製造方法によって、動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを低減できることを確認した。
【0086】
プロテオグリカン溶液の溶媒にPBS(pH7.2、富士フイルム和光純薬社製、Cat No.: 164-28713)を用いたこと以外、実施例2Aと同様の方法で、パウダー化したプロテオグリカンを得た。その後、処理前のプロテオグリカンおよび前記パウダー化したプロテオグリカンについて、前記エンドトキシン濃度をLAL法により測定した。前記LAL法には、キット(ToxinSensor Chromogenic LAL Endotoxin Assay Kit、GenScript社製)を用いた。
【0087】
この結果、処理前のプロテオグリカンでは、エンドトキシンの濃度は403.7EU/mgであったのに対し、前記パウダー化したプロテオグリカンでは、エンドトキシンの濃度は14.0EU/mgであった。以上の結果から、本開示のプロテオグリカンの方法(実施例4A)により、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減できることがわかった。
【0088】
[実施例4B]
本開示の製造方法の形成工程の共存系に1(v/v)%のエタノール含有水性溶媒を用いることにより、動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを低減できることを確認した。
【0089】
PBS(pH7.2、富士フイルム和光純薬社製、Cat No.: 164-28713)に、サケ由来のプロテオグリカンを添加した。前記添加後、約23℃で撹拌および超音波処理を行い、5mg/mlのプロテオグリカン溶液を得た。その後、1(v/v)%のエタノールおよび1(v/v)%のTriton(商標)-X114を添加した。前記添加後、氷上、10分の条件下で、静置した。前記静置後、40℃、10分の条件下で、静置した。前記静置後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心を行った。前記遠心後、2層に分離していることを確認した。前記確認後、前記プロテオグリカンを含む上層を回収し、3倍量の飽和エタノールを添加し、晶析させた。前記晶析後、飽和エタノールを除去し、再度飽和エタノールを添加した。前記添加後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心分離を行った。前記遠心分離後、飽和エタノールを除去し、真空乾燥を行い、パウダー化したプロテオグリカンを取得した。その後、前記実施例4Aと同様の方法で、前記実施例4Bのパウダー化したプロテオグリカンについて、エンドトキシン濃度の測定を行った。
【0090】
この結果、実施例4Bのパウダー化したプロテオグリカンにおいて、エンドトキシンの濃度は、13.7EU/mgであった。以上の結果から、本開示の製造方法の形成工程の共存系に1(v/v)%のエタノール含有水性溶媒を用いることにより、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減できることがわかった。
【0091】
[実施例4C]
本開示の製造方法において低減工程を繰り返し行うことによって、動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを低減できることを確認した。
【0092】
プロテオグリカン溶液の溶媒にPBS(pH7.2、富士フイルム和光純薬社製、Cat No.: 164-28713)を用いたこと以外、実施例3Bと同様の方法で、パウダー化したプロテオグリカンを得た。その後、実施例4Aと同様の方法で、実施例4Cのパウダー化したプロテオグリカンについて、前記エンドトキシン濃度をLAL法により測定した。
【0093】
この結果、実施例4Cのパウダー化したプロテオグリカンにおいて、エンドトキシンの濃度は、12.6EU/mgであった。以上の結果から、本開示の製造方法における低減工程を繰り返すことにより、プロテオグリカンのエンドトキシン濃度をさらに低減できることがわかった。
【0094】
[実施例4D]
本開示の製造方法において低減工程を繰り返し行い、かつ2回目の形成工程の共存系に1(v/v)%のエタノール含有水性溶媒を用いることにより、動物組織由来のプロテオグリカンにおけるエンドトキシンを低減できることを確認した。
【0095】
PBS(pH7.2、富士フイルム和光純薬社製、Cat No.: 164-28713)に、サケ由来のプロテオグリカンを添加した。前記添加後、約23℃で撹拌および超音波処理を行い、5mg/mlのプロテオグリカン溶液を得た。その後、1(v/v)%のTriton(商標)-X114を添加した。前記添加後、氷上、10分の条件下で、静置した。前記静置後、40℃、10分の条件下で、静置した。前記静置後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心を行った。前記遠心後、2層に分離していることを確認した。前記確認後、下層および上層の境目の溶液を含まないように前記プロテオグリカンを含む上層を回収した。前記回収後、1%量のエタノールおよび1(v/v)%のTriton(商標)-X114を添加した。前記添加後、氷上、10分の条件下で、静置した。前記静置後、40℃、10分の条件下で、静置した。前記静置後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心を行った。前記遠心後、2層に分離していることを確認した。前記確認後、前記プロテオグリカンを含む上層を回収し、3倍量の飽和エタノールを添加し、晶析させた。前記晶析後、飽和エタノールを除去し、再度飽和エタノールを添加した。前記添加後、23℃、3分、9060×gの条件下で、遠心分離を行った。前記遠心分離後、飽和エタノールを除去し、真空乾燥を行い、パウダー化したプロテオグリカンを得た。その後、前記実施例4Aと同様の方法で、前記実施例4Dのパウダー化したプロテオグリカンについて、前記エンドトキシン濃度をLAL法により測定した。
【0096】
この結果、前記実施例4Dのパウダー化したプロテオグリカンにおいて、エンドトキシンの濃度は、9.7EU/mgであった。以上の結果から、本開示の製造方法において低減工程を繰り返し行い、かつ2回目の形成工程の共存系にアルコール含有水性溶媒を用いることにより、プロテオグリカンのエンドトキシン濃度をさらに低減できることがわかった。
【0097】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0098】
本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用される。
【0099】
この出願は、2023年2月16日に出願された日本出願特願2023-022139を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0100】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
<プロテオグリカンの製造方法>
(付記1)
非イオン界面活性剤を用いて、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減する低減工程を含む、プロテオグリカンの製造方法。
(付記2)
前記低減工程は、
前記非イオン界面活性剤と前記動物組織由来のプロテオグリカンとを含む共存系について、前記非イオン界面活性剤の曇点未満の温度から、前記曇点以上の温度に昇温し、前記非イオン界面活性剤を含む界面活性剤相を形成して、前記界面活性剤相に前記エンドトキシンを濃縮する濃縮工程と、
前記界面活性剤相以外の相を回収することにより、前記エンドトキシンが低減されたプロテオグリカンを回収する回収工程と、
を含む、付記1に記載の製造方法。
(付記3)
前記低減工程は、前記界面活性剤相と、前記界面活性剤相以外の相とを、分離する分離工程を含み、
前記回収工程では、前記分離後の前記界面活性剤相以外の相を回収する、付記2に記載の製造方法。
(付記4)
前記界面活性剤相以外の相は、水相である、付記3に記載の製造方法。
(付記5)
前記分離は、遠心分離による分離である、付記3または4に記載の製造方法。
(付記6)
前記共存系は、前記非イオン界面活性剤のミセルを含み、
前記ミセルは、前記エンドトキシンを含む、
付記2から5のいずれかに記載の製造方法。
(付記7)
前記低減工程に先立ち、前記非イオン界面活性剤と前記動物組織由来のプロテオグリカンとを接触させて、前記エンドトキシンを含む前記非イオン界面活性剤のミセルを形成する形成工程を含み、
前記濃縮工程では、前記ミセルから、前記界面活性剤相を形成して、前記界面活性剤相に前記エンドトキシンを濃縮する、付記2から6のいずれかに記載の製造方法。
(付記8)
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(POEAE)系非イオン界面活性剤である、付記1から7のいずれかに記載の製造方法。
(付記9)
前記非イオン界面活性剤は、ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテルである、付記1から8のいずれかに記載の製造方法。
(付記10)
前記低減工程後のプロテオグリカンのピークトップ分子量は、30万~130万である、付記1から9のいずれかに記載の製造方法。
(付記11)
前記プロテオグリカンの糖鎖は、コンドロイチン硫酸である、付記1から10のいずれかに記載の製造方法。
(付記12)
前記動物は、サケ、ブタ、トリ、カレイ、およびエイからなる群から選択される、付記1から11のいずれかに記載の製造方法。
<組成物>
(付記13)
動物組織由来のプロテオグリカンを含む組成物であって、
前記組成物は、プロテオグリカン及びエンドトキシンを含み、
前記組成物に対するエンドトキシン含有割合が4EU/mg以下である、組成物。
(付記14)
前記プロテオグリカンのピークトップ分子量は、30万~130万である、付記13に記載の組成物。
(付記15)
前記プロテオグリカンの糖鎖は、コンドロイチン硫酸である、付記13または14に記載の組成物。
(付記16)
前記動物は、サケ、ブタ、トリ、カレイ、およびエイからなる群から選択される、付記13から15のいずれかに記載の組成物。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明したように、本開示によれば、エンドトキシンを低減でき、かつ所定のプロテオグリカンの分子量を維持できる、プロテオグリカンの製造方法を提供すること等ができる。このため、本開示は、例えば、医薬分野において、極めて有用といえる。
【要約】
【課題】 エンドトキシンを低減でき、かつ所定のプロテオグリカンの分子量を維持できる、プロテオグリカンの製造方法を提供する。
【解決手段】 本開示のプロテオグリカンの製造方法は、非イオン界面活性剤を用いて、動物組織由来のプロテオグリカンからエンドトキシンを低減する低減工程を含む。
【選択図】 なし