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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】パーキンソン病治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20231214BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/426 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/54 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/382 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20231214BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 213/75 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 277/46 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 333/36 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 231/40 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 335/06 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 279/02 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 215/48 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 333/68 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 513/04 20060101ALI20231214BHJP
   C07D 217/26 20060101ALI20231214BHJP
   C07C 327/46 20060101ALI20231214BHJP
   C07C 235/82 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K31/381
A61K31/4402
A61K31/426
A61K31/415
A61K31/54
A61K31/382
A61K31/47
A61K31/4375
A61K31/472
A61P25/16
C07D213/75 CSP
C07D277/46
C07D333/36
C07D231/40
C07D335/06
C07D279/02
C07D215/48
C07D333/68
C07D513/04
C07D217/26
C07C327/46
C07C235/82
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020568598
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2020003462
(87)【国際公開番号】W WO2020158870
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019014281
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】505210115
【氏名又は名称】国立大学法人旭川医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】増野 匡彦
(72)【発明者】
【氏名】大江 知之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恭子
(72)【発明者】
【氏名】安田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 嘉一
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513617(JP,A)
【文献】特表2008-504291(JP,A)
【文献】特表2010-539185(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第1259415(GB,A)
【文献】国際公開第2019/028456(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
C07D
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)、(2)もしくは(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩を含む、パーキンソン病又はパーキンソン症候群を治療するための医薬組成物。
(式中、
-X-Y-は、-NR3-SO2-、-CR4R5-SO2-、-CR4R5-SO-、-CR4R5-S-、-SO2-CR4R5-、-SO-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、又は-NR3-CR4R5-を表し、
R3は、水素原子又はアルキル基を表し、
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、
Zは、O又はSを表し、
であり、
R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、OH、NH2又はCNを表し、
nは、1~4の整数を表し、
R1は、以下から選択される基を表し、
R9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているアルキル基を表し、
R10は、水素原子又はアルキル基を表し、
mは、1~5の整数を表し、
R2は、水素原子、ハロゲン原子又はOHを表す。)
【請求項2】
式(1)、(2)もしくは(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩を含む、神経細胞を保護するための医薬組成物。
(式中、
-X-Y-は、-NR3-SO2-、-CR4R5-SO2-、-CR4R5-SO-、-CR4R5-S-、-SO2-CR4R5-、-SO-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、又は-NR3-CR4R5-を表し、
R3は、水素原子又はアルキル基を表し、
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、
Zは、O又はSを表し、
であり、
R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、OH、NH2又はCNを表し、
nは、1~4の整数を表し、
R1は、以下から選択される基を表し、
R9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているアルキル基を表し、
R10は、水素原子又はアルキル基を表し、
mは、1~5の整数を表し、
R2は、水素原子、ハロゲン原子又はOHを表す。)
【請求項3】
-X-Y-が、-NR3-SO2-、-CR4R5-SO2-、-SO2-CR4R5-、又は-CR4R5-CR6R7-を表す、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
経口投与で用いられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
以下の構造式から選択される1の化合物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキンソン病等の治療薬に関する。また、本発明は、パーキンソン病等の治療薬として有用な新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病の患者は国内に10万人以上存在すると言われているが、現在の薬物療法は、ドパミン補充療法に代表される対症療法が中心である。パーキンソン病の原因としては、ドパミンを産生する神経細胞の減少によりドパミンが不足することにあると考えられているが、その根本的治療薬として上市されているものは存在しない。そのため、パーキンソン病の根本的治療薬となり得る薬剤の開発が望まれている。また、このようなパーキンソン病の根本的治療薬は、パーキンソン病における症状と同様の症状を呈するパーキンソン症候群の治療においても活用が期待される。
オキシカム系非ステロイド性抗炎症薬であるメロキシカム等は、MPP+誘発神経細胞死抑制効果、MPTP投与パーキンソン病モデルマウスにおける運動障害軽減効果を示すことが報告されている(非特許文献1~3)。そのため、メロキシカムはパーキンソン病治療薬等の候補薬剤になると考えられるものの、問題点も有している。例えば、メロキシカムは強いCOX阻害活性を有し、胃腸障害等の副作用を引き起こすため、パーキンソン病治療薬等として望ましくない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Tasaki et al., Neurosci Lett, 521, 15, 2012
【文献】Tasaki et al., Eur J Pharmacol, 676, 57, 2012
【文献】Tasaki et al., Brain Res, 1344, 25, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施態様では、パーキンソン病の根本的治療薬となり得る新規なパーキンソン病治療薬を提供することを目的とする。このようなパーキンソン病治療薬は、パーキンソン症候群の治療薬、又は神経細胞を保護するための医薬としても有用であり得る。
また、本発明の一実施態様では、パーキンソン病等の治療薬として有用な新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、メロキシカムの基本骨格を含む化学構造を改変することにより、有用な化合物を見出すことに成功した。本発明は、このような新規な知見に基づいて完成されたものである。
本発明は、下記〔1〕~〔5〕に関するものである。
〔1〕式(1)、(2)もしくは(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩を含む、パーキンソン病又はパーキンソン症候群を治療するための医薬組成物。
【化1】
(式中、
-X-Y-は、-NR3-SO2-、-CR4R5-SO2-、-CR4R5-SO-、-CR4R5-S-、-SO2-CR4R5-、-SO-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、又は-NR3-CR4R5-を表し、
R3は、水素原子又はアルキル基を表し、
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、
Zは、O又はSを表し、
【化2】
であり、
R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、OH、NH2又はCNを表し、
nは、1~4の整数を表し、
R1は、以下から選択される基を表し、
【化3】
R9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているアルキル基を表し、
R10は、水素原子又はアルキル基を表し、
mは、1~5の整数を表し、
R2は、水素原子、ハロゲン原子又はOHを表す。)
〔2〕式(1)、(2)もしくは(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩を含む、神経細胞を保護するための医薬組成物。
【化4】
(式中、
-X-Y-は、-NR3-SO2-、-CR4R5-SO2-、-CR4R5-SO-、-CR4R5-S-、-SO2-CR4R5-、-SO-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、又は-NR3-CR4R5-を表し、
R3は、水素原子又はアルキル基を表し、
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、
Zは、O又はSを表し、
【化5】
であり、
R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、OH、NH2又はCNを表し、
nは、1~4の整数を表し、
R1は、以下から選択される基を表し、
【化6】
R9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているアルキル基を表し、
R10は、水素原子又はアルキル基を表し、
mは、1~5の整数を表し、
R2は、水素原子、ハロゲン原子又はOHを表す。)
〔3〕-X-Y-が、-NR3-SO2-、-CR4R5-SO2-、-SO2-CR4R5-、又は-CR4R5-CR6R7-を表す、前記〔1〕又は〔2〕に記載の医薬組成物。
〔4〕経口投与で用いられる、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の医薬組成物。
〔5〕以下の構造式から選択される1の化合物。
【化7】
【化8】
【化9】
【発明の効果】
【0006】
本発明の化合物は、神経細胞保護効果を有し得る。また、本発明の化合物は、パーキンソン病又はパーキンソン症候群における症状、特には運動症状を改善し得る。
本発明の一実施態様によれば、パーキンソン病又はパーキンソン症候群を治療するための医薬組成物が提供され得る。
また、本発明の一実施態様によれば、神経細胞を保護するための医薬組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いたPole testの結果を示すグラフである。コントロール群、MPTP群、MPTP+メロキシカム群の結果が示されている。***:p<0.001
図2】MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いたPole testの結果を示すグラフである。コントロール群、MPTP群、評価化合物群(IY-027を10 mg×2 投与又は20 mg×2 投与)の結果が示されている。***:p<0.001
図3】MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いたPole testの結果を示すグラフである。コントロール群、MPTP群、評価化合物群(IY-065を30 mg×2 投与、又はIY-069を10 mg×2 投与)の結果が示されている。*:p<0.05
図4】MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いたPole testの結果を示すグラフである。コントロール群、MPTP群、評価化合物群(IY-053を10 mg×2 投与、又はIY-060を10 mg×2 もしくは30 mg×2 投与)の結果が示されている。***:p<0.001
図5】MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いたPole testの結果を示すグラフである。コントロール群、MPTP群、評価化合物群(IY-053を10 mg×1 投与又は7.5 mg×2 投与)の結果が示されている。***:p<0.001, **:p<0.01
図6】MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いたPole testの結果を示すグラフである。コントロール群、MPTP群、評価化合物群(IY-067を30 mg×2 投与、又はIY-068を30 mg×2 投与)の結果が示されている。**:p<0.01, *:p<0.05
図7】MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いたPole testの結果を示すグラフである。コントロール群、MPTP群、評価化合物群(IY-093を3 mg×2 投与又は10 mg×2 投与)の結果が示されている。***:p<0.001, **:p<0.01
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、医薬組成物は、以下の式(1)、(2)もしくは(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩(本明細書において、これらを「本発明の化合物」とも言う。)を含む。
【化10】
(式中、
-X-Y-は、-NR3-SO2-、-CR4R5-SO2-、-CR4R5-SO-、-CR4R5-S-、-SO2-CR4R5-、-SO-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、又は-NR3-CR4R5-を表し、
R3は、水素原子又はアルキル基を表し、
R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、
Zは、O又はSを表し、
【化11】
であり、
R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、OH、NH2又はCNを表し、
nは、1~4の整数を表し、
R1は、以下から選択される基を表し、
【化12】
R9は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているアルキル基を表し、
R10は、水素原子又はアルキル基を表し、
mは、1~5の整数を表し、
R2は、水素原子、ハロゲン原子又はOHを表す。)
【0009】
式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物のR2が水素原子である場合は、ケト-エノール互変異性により互いに変換し得る互変異生体の関係となる。各化合物において、ケト型とエノール型のいずれかの存在比率が高くなることはしばしば起こり得るが、互変異生体が完全にケト型とエノール型のどちらかのみの形態で存在することは少ない。従って、本発明の医薬組成物においては、ケト型の化合物とエノール型の化合物が混在して存在し得る。
式(1)、(2)又は(8)中、R8が複数個存在する場合、各R8は同じであっても異なっていてもよい。
式(1)、(2)又は(8)中、R9が複数個存在する場合、各R9は同じであっても異なっていてもよい。
【0010】
本明細書において、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
本明細書において、「アルキル基」は、直鎖又は分岐鎖の、一価の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基としては、例えば、炭素数1~12のC112アルキル基が挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明において、アルキル基は、炭素数1~6のC16アルキル基、又は炭素数1~3のC13アルキル基であり得る。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はヘキシル基等の基が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシ基」は、前記アルキル基が酸素原子に結合した基を意味する。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~12のC112アルコキシ基が挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明において、アルコキシ基は、炭素数1~6のC16アルコキシ基、又は炭素数1~3のC13アルコキシ基であり得る。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基等の基が挙げられる。
本明細書において、「アルキルカルボニル基」は、前記アルキル基がカルボニル基に結合した基を意味する。アルキルカルボニル基中のアルキル基は、例えば、炭素数1~12のC112アルキル基、炭素数1~6のC16アルキル基、又は炭素数1~3のC13アルキル基であり得る。アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、n-ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、又はヘキサノイル基等の基が挙げられる。
本明細書において、「1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているアルキル基」は、前記アルキル基の水素原子が1~3個の前記ハロゲン原子で置換された基を意味する。
【0011】
式(1)又は(2)中、-X-Y-としては、-NR3-SO2-、-CR4R5-SO2-、-SO2-CR4R5-、又は-CR4R5-CR6R7-が好ましい。このような-X-Y-で示される構造を有する化合物は、神経細胞保護効果、低減されたCOX阻害活性、及び/又は脳内移行性の点でより有用であり得る。
中でも、-X-Y-が-NR3-SO2-を表す化合物において、R3は、好ましくはアルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基であり、更に好ましくはC1-3アルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
-X-Y-が-CR4R5-SO2-を表す化合物においては、R4及びR5は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子であり、特に好ましくはいずれも水素原子である。
-X-Y-が-SO2-CR4R5-を表す化合物においては、R4及びR5は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子であり、特に好ましくはいずれも水素原子である。
-X-Y-が-CR4R5-CR6R7-を表す化合物においては、R4及びR5は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はC1-6アルキル基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はC1-3アルキル基であり、より更に好ましくは水素原子、フッ素原子又はメチル基であり、特に好ましくはいずれもフッ素原子であるか、又は水素原子とメチル基の組合せである。また、-X-Y-が-CR4R5-CR6R7-を表す化合物において、R6及びR7は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子であり、特に好ましくはいずれも水素原子である。
【0012】
式(1)、(2)又は(8)中、好ましくは、ZはOを表す。
式(1)、(2)又は(8)中、
【化13】
(以下、Ar環という。)としては、好ましくは、
【化14】
である。
R8は、好ましくは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、C1-3アルキル基又はC1-3アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基又はメトキシ基であり、nは、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。
【0013】
式(1)、(2)又は(8)中、R1としては、好ましくは、
【化15】
である。
中でも、R9は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているアルキル基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているC1-6アルキル基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているC1-3アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基、又はトリフルオロメチル基であり、mは、好ましくは1、2又は3である。
R1
【化16】
の場合、特に好ましくは、R9はメチル基であり、mは1である。
R1
【化17】
の場合、特に好ましくは、R9はメチル基であり、mは1である。
【0014】
式(1)又は(2)中、R2としては、好ましくは水素原子、フッ素原子又はOHであり、より好ましくは水素原子である。
本発明において、式(1)、(2)又は(8)で表される化合物に関する各置換基の好ましい基の組み合わせの態様については、いずれの組み合わせも取り得るものである。
一態様としては、式(1)又は(2)において、-X-Y-が-NR3-SO2-を表す場合、R3は、好ましくはアルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基であり、更に好ましくはC1-3アルキル基であり、特に好ましくはメチル基であり、Ar環は、好ましくは、
【化18】
であり、R8は、好ましくは水素原子であり、R1は、好ましくは、
【化19】
であり、R9は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているアルキル基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているC1-6アルキル基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、又は1~3個のハロゲン原子で水素原子が置換されているC1-3アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基、又はトリフルオロメチル基であり、mは好ましくは1、2又は3であり、R2は、好ましくは水素原子である。
【0015】
一態様としては、式(1)又は(2)において、-X-Y-が-CR4R5-SO2-、-CR4R5-SO-、又は-CR4R5-S-を表す場合、R4及びR5は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子であり、特に好ましくはいずれも水素原子であり、Ar環は、好ましくは、
【化20】
であり、R8は、好ましくは水素原子であり、R1は、好ましくは、
【化21】
であり、R9は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、又はC1-6アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C1-3アルキル基、又はC1-3アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、mは好ましくは1、2又は3であり、R2は、好ましくは水素原子である。
【0016】
一態様としては、式(1)又は(2)において、-X-Y-が-SO2-CR4R5-、又は-SO-CR4R5-を表す場合、R4及びR5は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子であり、特に好ましくはいずれも水素原子であり、Ar環は、好ましくは、
【化22】
であり、R8は、好ましくは水素原子であり、R1は、好ましくは、
【化23】
であり、R9は、好ましくは水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子であり、mは好ましくは1であり、R2は、好ましくは水素原子である。
【0017】
一態様としては、式(1)又は(2)において、-X-Y-が-CR4R5-CR6R7-を表す場合、R4及びR5は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はC1-6アルキル基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はC1-3アルキル基であり、より更に好ましくは水素原子、フッ素原子又はメチル基であり、特に好ましくはいずれもフッ素原子であるか、又は水素原子とメチル基の組合せであり、R6及びR7は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子であり、特に好ましくはいずれも水素原子であり、Ar環は、好ましくは、
【化24】
であり、R8は、好ましくは水素原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、C1-3アルキル基又はC1-3アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基又はメトキシ基であり、nは、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1であり、R1は、好ましくは、
【化25】
であり、R9は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、C1-3アルキル基又はC1-3アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子、メチル基又はメトキシ基であり、mは、好ましくは1又は2であり、R2は、水素原子、ハロゲン原子又はOHであり、好ましくは水素原子、フッ素原子又はOHであり、より好ましくは水素原子である。
【0018】
式(1)、(2)又は(8)で表される化合物は、当業者の技術常識に基づき製造することができるが、例えば、以下の方法に従って製造することができる。
[製法1]
【化26】
(式中、-X-Y-、Ar環、R1及びR2は、式(1)又は(2)で定義されるものと同じである。)
上記反応式において、式(3)で表される化合物は、適切な溶媒中、例えば、m-キシレン等の有機溶媒中で、式(4)で表される化合物と反応させることができる。反応時間及び反応温度等の反応条件は、用いる化合物に応じて適宜選択することができ、還流撹拌して反応を行ってもよい。
式(8)で表される化合物は、下記実施例25で示されるように、製法1において、式(3)で表される化合物中-X-Y-が-NR3-CR4R5-(例えばR4及びR5は水素原子)であるものを用いた場合に、-X-Y-が-NR3-CR4R5-である式(2)で表される化合物とともに製造することができる。
なお、ZがSである式(1)、(2)又は(8)で表される化合物は、式(3)で表される化合物に対応するチオエステルを用いることで得ることができる。また、上記反応式ではケト型が示されているが、エノール型においても同様に製造され得る。
【0019】
式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物は、市販のものを用いてもよく、合成したものを用いてもよい。例えば、式(3)で表される化合物を合成する場合には、以下のように合成してもよい。
【化27】
(式中、-X-Y-、Ar環、R2は、式(1)又は(2)で定義されるものと同じである。)
式(5)で表される化合物を、炭酸ジメチルやシアノギ酸メチルと反応させることで、式(3)で表される化合物を合成することができる。炭酸ジメチルを用いる場合、例えば、水素化ナトリウム等の塩基を用い得る。シアノギ酸メチルを用いる場合、例えば、炭酸カリウム等の塩基、及びアセトン等の溶媒を用い得る。反応時間及び反応温度等の反応条件は、用いる化合物に応じて適宜選択することができる。
【0020】
[製法2]
【化28】
(式中、-X-Y-、Ar環及びR1は、式(1)又は(2)で定義されるものと同じである。)
上記反応式において、式(6)で表される化合物は、適切な溶媒中、例えば、THFやジメチルホルムアミド等の適切な有機溶媒中で、水素化ナトリウムや炭酸カリウム等の塩基の存在下、式(7)で表される化合物と反応させることができる。また、炭酸カリウム等の塩基を用いる場合には、アセトン等の有機溶媒を用いてもよい。反応時間及び反応温度等の反応条件は、用いる化合物に応じて適宜選択することができ、還流撹拌して反応を行ってもよい。
なお、ZがSである式(1)又は(2)で表される化合物は、式(7)で表される化合物に対応するチオイソシアナートを用いることで得ることができる。また、上記反応式ではエノール型が示されているが、ケト型においても同様に製造され得る。
上記製法1や製法2による本発明の化合物の製造において、精製や抽出操作は当業者の技術常識に基づき行うことができる。
【0021】
式(1)、(2)又は(8)で表される化合物は、薬学的に許容される塩の形態を取ることもあり得る。薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸、酒石酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩等の有機酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等の有機スルホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
また、式(1)又は(2)で表される化合物としては、具体的には以下のようなものが挙げられる。
【化29】
【化30】
【化31】
なお、上記構造式中、「Ac」はアセチル基を表し、「Me」はメチル基を表す。
【0023】
本発明の化合物は、神経細胞保護効果を有し、パーキンソン病モデルマウスの運動障害を改善することが確認されている。よって、本発明の化合物は、パーキンソン病の治療に有用であり得る。また、本発明の化合物は、パーキンソン症候群の治療に有用であり得る。
本発明の一実施態様は、パーキンソン病又はパーキンソン症候群を治療するための医薬組成物に関する。
本明細書において、「治療する」とは、対象の症状が改善されること、又は対象における病気の進行が抑制されることを意味する。即ち、パーキンソン病又はパーキンソン症候群を治療するための医薬組成物とは、パーキンソン症状(パーキンソニズム)を改善するものであり得、或いは、パーキンソン病又はパーキンソン症候群の進行を抑制するものであり得る。パーキンソン症状(パーキンソニズム)としては、運動症状と非運動症状があるが、本発明の医薬組成物は、特に運動症状の改善に有用であり得る。
【0024】
本発明の一実施態様は、神経細胞を保護するための医薬組成物に関する。
本明細書において、「神経細胞を保護する」とは、神経細胞の死滅数を減少させることを意味する。例えば、「神経細胞を保護する」とは、神経細胞に対して有害な物質により引き起こされる神経細胞死を抑制することであり得る。神経細胞は、例えば、ドパミンを産生する神経細胞であり得るが、これに限定されるものではない。
具体的には、ドパミンを産生する神経細胞等の神経細胞において、1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP+)により引き起こされる細胞死を抑制することは、神経細胞を保護することの一例である。
【0025】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容され得る担体、希釈剤、賦形剤、安定剤、崩壊剤、結合剤等の医薬に使用し得る添加物を含み得る。医薬的に許容され得る担体、希釈剤、賦形剤、安定剤、崩壊剤、結合剤等の医薬に使用し得る添加物としては、本発明の技術分野において周知のものを使用することができる。
本発明の医薬組成物の投与方法は特に限定されず、本発明の医薬組成物を経口投与でも注射等の非経口投与でも用い得る。注射により投与される場合の具体的な投与経路としては、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与及び筋肉内投与等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の医薬組成物に含まれる化合物は、メロキシカムが有するオキシカム骨格を有しないことから、COX阻害活性を示さないか、又はCOX阻害活性が低減されているものであり得る。そのため、本発明の医薬組成物を経口投与した場合、メロキシカムを経口投与した場合と比べて胃腸障害を引き起こす可能性が低く、服用が容易である点で、本発明の医薬組成物は大きな利点を有する。
本発明の医薬組成物の投与対象は特に限定されず、ヒトであってもヒト以外の哺乳動物であってもよい。
本発明の医薬組成物において、投与量や投与回数は、被験対象の状態及び疾患の程度等に基づき決定し得る。
【0026】
本発明の別の態様としては、パーキンソン病又はパーキンソン症候群を治療する方法が挙げられる。当該治療方法は、有効量の式(1)、式(2)もしくは式(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩、又は有効量の式(1)、式(2)もしくは式(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、パーキンソン病又はパーキンソン症候群の治療を必要とする対象に投与することを含み得る。
本発明のまた別の態様としては、神経細胞を保護する方法、又は神経細胞死を抑制する方法が挙げられる。このような方法は、有効量の式(1)、式(2)もしくは式(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩、又は有効量の式(1)、式(2)もしくは式(8)で表される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を、神経細胞の保護又は神経細胞死の抑制を必要とする対象に投与することを含み得る。
上記方法においても、化合物や医薬組成物に関して上述した事項のいずれを適用してもよい。
本明細書において、「有効量」とは、単回用量として又は一連の投与スケジュールにおける用量の一部として対象に投与される量であって、所望の治療効果、神経細胞保護効果、又は神経細胞死抑制効果をもたらすのに有効である量を意味する。
【実施例
【0027】
以下において、本発明について、具体的な実施例を参照しながら更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定には、Agilent社製400 MHzもしくは500 MHz-NMRを用いた。
【0028】
[製造例]
実施例1;IY-027(N-(5-メチルチアゾール-2-イル)-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-カルボキサミド)の合成
【化32】
2-アミノ-5-メチルチアゾール(8.43 g、73.8 mmol、 3.3当量)をm-キシレン(240 mL)に溶解して室温で1分間撹拌し、1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-カルボン酸メチル(4.53 g、22.2 mmol)を加えて160℃で22時間、還流撹拌した。反応液を室温に戻した後、10%塩酸を加えてpHを3とし、析出した沈殿を吸引濾過し、IY-027(ケト:エノール=63:37、2.62 g、41%)を茶色固体として得た。
ケト体:1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 2.40 (s, 3H), 2.45-2.52 (m, 1H), 2.60-2.68 (m, 1H), 3.03-3.07 (m, 1H), 3.15-3.20 (m, 1H), 3.59 (dd, J=5.1 Hz, 10.4 Hz, 1H), 7.10 (s, 1H), 7.30 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.35 (t, J=7.0 Hz, 1H), 7.54 (t, J=7.8 Hz, 1H), 8.10 (d, J=8.6 Hz, 1H)
エノール体:1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 2.43 (s, 3H), 2.62 (t, J=7.4 Hz, 2H), 2.94 (t, J=7.9 Hz, 2H), 7.10 (s, 1H), 7.20 (d, J=7.1 Hz, 1H), 7.33-7.37 (m, 2H), 7.86 (d, J=7.8 Hz, 1H)
【0029】
実施例2;IY-066 (4-ヒドロキシ-N-(4-フルオロフェニル)-2H-チオクロメン-3-カルボキサミド 1,1-ジオキシド)の合成
【化33】
4-ヒドロキシ-2H-チオクロメン-3-カルボン酸メチル-1,1-ジオキシド(1.04 g, 4.10 mmol) と4-フルオロアニリン (2.35 g、21.1 mmol, 5.1当量) をm-キシレン (50 mL) に溶解して150℃で19.5時間、還流撹拌した。反応液を室温に戻した後、析出した沈殿を吸引濾取してIY-066 (ケト:エノール=2:3、887 mg、64.9%) を黄色粉末として得た。
ケト体: 1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 4.09 (d, J=10.6 Hz, 1H), 4.09 (d, J=6.0 Hz, 1H), 4.46 (dd, J=10.6 Hz, 6.0 Hz, CH, 1H), 7.07-7.12 (m, 2H), 7.54 (dd, J=9.2 Hz, 4.5 Hz, 2H), 7.82 (t, J=7.2 Hz, 1H), 7.91 (t, J=7.2 Hz, 1H), 8.08 (d, J=7.2 Hz, 1H), 8.18 (d, J=7.2 Hz, 1H)
エノール体: 1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 4.16 (s, 2H), 7.07-7.12 (m, 2H), 7.47 (dd, J=9.0 Hz, 4.6 Hz, 2H), 7.71 (t, J=7.7 Hz, 1H), 7.78 (t, J=7.7 Hz, 1H), 8.02 (d, J=7.7 Hz, 1H), 8.16 (d, J=7.7Hz, 1H), 9.11 (brs, 1H)
【0030】
実施例3;IY-068(N-(2,5-ジフルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化34】
窒素雰囲気下、市販の4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (1.42 mmol、300 mg) を無水THF (20 mL) に溶解し、水素化ナトリウム (2.13 mmol、85.4 mg、 1.5当量) を加えて室温で撹拌した。次いで2,5-フルオロフェニルイソシアナート (2.84 mmol、440.7 mg、2.0 当量) を加え80℃で4時間撹拌した。室温に戻した反応液に 2 M HClを加えpHを3とし、酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水、溶媒を減圧下に留去して褐色固体(308.3 mg)を得た。酢酸エチルから再結晶してIY-068 (89.2 mg、収率17%) を薄橙色針状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 3.53 (s, 3H), 6.81-6.85 (m, 1H), 7.00-7.14 (m, 1H), 7.27 (d, J=6.9 Hz, 1H), 7.35 (t, J=7.2 Hz, 1H),7.69 (t, J=7.2 Hz, 1H) 8.10-8.14 (m, 1H), 8.16 (d, J=7.6 Hz, 1H) 9.85 (s, 1H)
【0031】
実施例4;IY-69(N-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化35】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (2.47 mmol, 500 mg) と2,4-フルオロフェニルイソシアナート (4.26 mmol, 660.4 mg, 1.8当量) を縮合して得られる黄色固体(540.4 mg)を酢酸エチルから再結晶し、IY-069 (285.2 mg、収率33%) を無色針状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 3.53 (s, 3H), 6.90-6.97 (m, 2H), 7.27 (d, J=5.3 Hz, 1H), 7.35 (t, J=7.4 Hz, 1H), 7.68 (t, J=7.4 Hz, 1H), 8.14-8.16 (m, 2H), 9.62 (s, 1H)
【0032】
実施例5;IY-075 (4-ヒドロキシ-1-メチル-N-(p-トリル)-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド) の合成
【化36】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (1.42 mmol、300 mg) とp-トリルイソシアナート (2.84 mmol、379.4 mg、2.0当量) を縮合して得られる黄色固体(642.6 mg)を酢酸エチルから再結晶してIY-075 (323.7 mg、収率66%) を黄色板状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 2.35 (s, 3H), 3.52 (s, 3H), 7.19 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.25 (d, J=6.8 Hz, 1H), 7.33 (dt, J=1.0, 6.8 Hz, 1H), 7.44 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.67 (dt, J=1.0, 7.3 Hz, 1H), 8.14 (dd, J=1.4, 7.3 Hz, 1H), 9.36 (s, 1H)
【0033】
実施例6;IY-077 (4-ヒドロキシ-1-メチル-N-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化37】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (1.42 mmol, 300 mg) と2,3,4-フルオロフェニルイソシアナート (2.84 mmol、491.3 mg、2.0当量) の縮合により得られる黄色固体(673.1 mg)を酢酸エチルから再結晶し、IY-077 (311.6 mg、収率57%) を無色針状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 3.54 (s, 3H), 7.00-7.03 (m, 1H), 7.27 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.35 (dt, J=1.0, 7.7 Hz, 1H), 7.90-7.92 (m, 1H), 8.15 (dd, J=1.4, 8.0 Hz, 1H), 9.65 (s, 1H)
【0034】
実施例7;IY-078(4-ヒドロキシ-1-メチル-N-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化38】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (1.42 mmol、300 mg) と2,4,6-フルオロフェニルイソシアナート (2.84 mmol、491.3 mg, 2.0当量) を縮合して得られる黄色固体(675.0 mg)を酢酸エチルから再結晶し、IY-078 (68.9 mg、収率13%) を無色針状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 3.54 (s, 3H), 6.79-6.83 (m, 2H), 7.27 (d, J=6.3 Hz, 1H), 7.35 (dt, J=1.0, 7.8 Hz, 1H), 7.69 (dt, J=1.5, 7.8 Hz, 1H), 8.14 (dd, J=1.5, 8.1 Hz, 1H), 8.86 (s, 1H)
【0035】
実施例8;IY-079 (N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド) の合成
【化39】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (1.42 mmol、300 mg) を無水THF (20 mL) と3-クロロ-4-メチルフェニルイソシアナート (2.84 mmol、474.3 mg、2.0当量) の縮合により得られる黄色固体(669.8 mg)を酢酸エチルから再結晶し、IY-079 (269.1 mg、収率50%) を無色針状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 2.36 (s, 3H), 3.51 (s, 3H), 7.23 (t, J=8.3 Hz, 1H), 7.28 (d, J=8.3 Hz, 1H), 7.31 (dd, J=1.7, 7.9 Hz, 1H), 7.34 (dt, J=1.2, 7.8 Hz, 1H), 7.67 (dt, J=1.7, 7.9 Hz, 1H), 7.70 (d, J=2.2 Hz, 1H), 8.14 (dd, J=1.2, 7.8 Hz), 9.39 (s, 1H)
【0036】
実施例9;IY-080 (N-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド) の合成
【化40】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (1.42 mmol、300 mg) と3-トリフルオロメチル-4-クロロフェニルイソシアナート (2.84 mmol、629.3 mg、2.0当量) の縮合により得られる黄色固体(1.0 g)を酢酸エチルから再結晶して、IY-080 (405.3 mg、収率66%) を無色針状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 3.53 (s, 3H), 7.27 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.36 (dt, J=1.0, 7.8 Hz, 1H), 7.51 (d, J=8.8 Hz, 1H), 7.67 (dt, J=1.5, 7.7 Hz, 1H), 7.80 (dd, J=1.5, 7.8 Hz, 1H), 7.96 (d, J=2.4 Hz, 1H), 8.16 (dd, J=1.5, 7.7 Hz, 1H), 9.59 (s, 1H)
【0037】
実施例10;IY-081 (N-(4-クロロ-3-メチルフェニル)-4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド) の合成
【化41】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ベンゾ[c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (1.42 mmol、300 mg) と3-メチル-4-クロロフェニルイソシアナート (2.84 mmol、474.3 mg、2.0当量) の縮合により得られる黄褐色固体(531.6 mg)から酢酸エチルから再結晶し、IY-081 (285.4 mg、収率53%) を黄色粒状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 2.40 (s, 3H), 3.52 (s, 3H), 7.26 (t, J=8.3 Hz, 1H), 7.33-7.40 (m, 3H), 7.45 (ds, J=2.2, 1H), 7.68 (dt, J=1.6, 7.8 Hz, 1H), 8.14 (dd, J=1.2, 7.8 Hz, 1H), 9.40 (s, 1H)
【0038】
実施例11;IY-082(4-ヒドロキシ-N-フェニル-1H-イソチオクロメン-3-カルボキサミド)の合成
【化42】
窒素雰囲気下、脱水ヘキサンで洗浄した水素化ナトリウム (315 mg、7.88 mmol、1.4 当量) に無水THF (40 mL) に溶解したイソチオクロマン-4-オン (948 mg、5.77 mmol) を加え、室温で5 分間撹拌した。次いで無水THF (5 mL) に溶解したフェニルイソシアナート (1750 mg、14.7 mmol、2.5当量) を加え、80℃で3時間還流撹拌した。反応液に希塩酸を加えてpHを2とし、酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧下に留去して、黒色固体(2600 mg)を得た。粗生成物に不純物を認めたため、メタノール (20 mL) を加えて析出した黄土色固体を吸引濾取により単離してIY-082 (1280 mg、収率78.2%) を得た。
1H-NMR (500 MHz、CDCl3) δ: 3.87 (s, 2H), 7.16-7.21 (m, 2H), 7.36-7.42 (m, 4H) , 7.56 (d,J=7.2 Hz, 2H), 7.90 (dd, J=7.2,1.3 Hz, 1H), 8.17 (brs, 1H)
【0039】
実施例12;IY-72 (4,4-ジフルオロ-1-オキソ-N-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-カルボキサミド)の合成
【化43】
窒素雰囲気下、脱水ヘキサンで洗浄した水素化ナトリウム (115.2 mg、2.88 mmol、1.6 当量)を脱水THF (6.7 mL)に懸濁させ、4,4-ジフルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン (327.7 mg、1.80 mmol)を加え、室温で5分間撹拌した。次いで脱水THF (6.7 mL)に溶解したフェニルイソシアナート(450.2 mg、3.76 mmol、2.1当量)を3回に分けて加えながら、80℃で8.5時間還流撹拌した。反応液に2 M 塩酸を加え、酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去して褐色ペースト(715.9 mg)を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1→酢酸エチル)により精製して得られるIY-072 (287.0 mg)を含む分画をn-ヘキサンと酢酸エチルから再結晶し、IY-072(ケト:エノール=63:37、70.9 mg 、収率13%)を淡橙色針状結晶として得た。
ケト体 : 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 2.85-3.01 (m, 1H), 3.15-3.26 (m, 1H), 3.91 (ddd, J=1.6, 5.5, 12.3 Hz, 1H), 7.13 (t, J=7.4 Hz, 1H), 7.36 (t, J=8.6 Hz, 2H), 7.60 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.67 (t, J=7.8 Hz, 1H), 7.80 (t, J=7.8 Hz, 1H), 7.84 (d, J=7.8 Hz, 1H), 8.13 (d, J=8.3 Hz, 1H), 9.38 (s, 1H)
エノール体 : 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 3.19 (t, J=16.4 Hz, 2H), 7.20 (t, J=7.2 Hz, 1H), 7.39 (t, J=7.6 Hz, 2H), 7.53 (dd, J=1.0, 8.4 Hz, 2H), 7.56-7.63 (m, 2H), 7.55 (d, J=6.8 Hz, 1H), 8.01 (d, J=7.2 Hz, 1H)
【0040】
実施例13;IY-73 (2-フルオロ-1-オキソ-N-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-カルボキサミド)の合成
【化44】
窒素雰囲気下、脱水ヘキサンで洗浄した水素化ナトリウム (214.9 mg、5.37 mmol、1.7当量)を脱水THF (11.5 mL)に懸濁させ、2-フルオロ-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン (505.9 mg、3.08 mmol)を加え、室温で5分間撹拌した。次いで脱水THF (11.5 mL)に溶解したフェニルイソシアナート(803.5 mg、6.75 mmol、2.2当量)を加え、80℃で4時間還流撹拌した。反応液に2M 塩酸を加え、酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去して褐色ペースト1.41 gを得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製して得られるIY-73 (淡橙色粉末、312.2 mg)をn-ヘキサンと酢酸エチルから再結晶し、IY-73(128.4 mg、収率 15%)を白色板状結晶として得た。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 2.53-2.64 (m, 1H), 2.82-2.93 (m, 1H), 3.16 (dt, J=5.5, 17.0 Hz, 1H), 3.49 (ddd, J=5.5, 9.0, 17.0 Hz, 1H), 7.14 (t, J=7.2 Hz, 1H), 7.30-7.39 (m, 4H), 7.55-7.59 (m, 3H), 8.07 (d, J=7.8 Hz, 1H), 8.19 (s, 1H)
【0041】
実施例14;IY-084(N-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化45】
14-1. 4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボン酸メチル 2,2-ジオキシドの合成
イソチオクロマン-4-オン-2,2-ジオキシド (105 mg、0.537 mmol) に、K2CO3 (307 mg、2.22 mmol、4.1当量) 、シアノギ酸メチル (358 mg、4.21 mmol、7.8当量) をアセトン (15 mL) に溶解して室温で27時間撹拌した。反応液に精製水を加え、反応液をジクロロメタンで2回洗浄、水層に希塩酸を加えpHを1とした後、ジクロロメタンで2回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去して4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボン酸メチル 2,2-ジオキシド(112 mg、収率82.1%) を橙色固体として得た。
1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ: 4.03 (s,3H), 4.47 (s, 2H), 7.33 (dd、J=1.1, 7.7 Hz, 1H), 7.54 (dt, J=1.3, 7.7 Hz, 1H), 7.60 (dt, J=1.1, 7.7 Hz, 1H), 8.08 (dd, J=1.3, 7.7Hz, 1H), 13.8 (brs, 1H)
【0042】
14-2. IY-084 (N-(4-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド) の合成
4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボン酸メチル 2,2-ジオキシド(65.2 mg、0.256 mmol) と4-フルオロアニリン (86.5 mg、0.778 mmol、3.0当量) をm-キシレン (10 mL) に溶解し、150℃で2.5時間還流撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去してIY-084 (80.7 mg、収率94.6%) を黄土色固体として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 4.54 (s, 2H), 7.08 (t, J=8.5 Hz, 2H), 7.36 (d, J=7.5 Hz, 1H), 7.51-7.54 (m, 2H), 7.58 (dt, J=1.6, 7.5 Hz, 1H), 7.61 (dt, J=1.6, 7.5, Hz, 1H), 8.13 (d, J=7.5, 1.6 Hz, 1H), 9.68 (brs, 1H)
【0043】
実施例15;IY-085(4-ヒドロキシ-N-フェニル-1H-イソチオクロメン-3-カルボキサミド 2-オキシド)の合成
【化46】
イソチオクロマン-4-オン-2-オキシド (448 mg、2.49 mmol) とK2CO3 (431 mg、3.12 mmol、1.3当量)とフェニルイソシアナート (618 mg、5.19 mmol、2.1当量) をアセトン (30 mL) に溶解し、室温で22時間撹拌した。原料の残存を認めたためフェニルイソシアナート (599 mg、5.03 mmol、2.0 当量)のアセトン(2 mL)溶液を追加し、さらに3時間撹拌した。反応液に希塩酸を加えてpHを5とし、酢酸エチルで3回抽出して試薬の残渣を除去した。水層に希塩酸を加えてpHを1とし、酢酸エチルで2回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去してIY-085 (115 mg、収率15.4%) を黄色固体として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 4.07 (d, J=15.2 Hz, 1H), 4.51 (d, J=15.2 Hz, 1H), 7.21 (t, J=7.4 Hz, 1H), 7.39 (t, J=8.1 Hz, 2H), 7.42 (d, J=7.4 Hz, 1H), 7.52-7.58 (m, 4H), 8.11 (dd, J=1.6, 7.4Hz, 1H), 8.62 (brs, 1H)
【0044】
実施例16;IY-091(N-(4-トリル)-4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化47】
実施例14と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボン酸メチル 2,2-ジオキシド (79.1 mg、0.311 mmol) とp-トルイジン (77.6 mg、0.724 mmol、2.3当量) をm-キシレン (10 mL) に溶解し、150℃で16時間還流撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去してIY-091 (98.4 mg、収率96%) を茶色固体として得た後、酢酸エチルから再結晶した。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 2.35 (s, 3H), 4.54 (s, 2H), 7.18 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.35 (dd, J=7.4, 1.2 Hz, 1H), 7.43 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.56 (dt, J=7.4, 1.7 Hz, 1H), 7.60 (dt, J=7.4, 1.2 Hz, 1H), 8.13 (dd, J=7.4, 1.7 Hz, 1H), 9.63 (brs, 1H)
【0045】
実施例17;IY-092(N-(2,4-ジフルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化48】
実施例14と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボン酸メチル 2,2-ジオキシド (200.0mg、0.785 mmol) と2,4-ジフルオロアニリン (308.0 mg、2.39 mmol、2.3当量) をm-キシレン (15 mL) に溶解し、150℃で3時間還流撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去してIY-092 (189.0 mg、収率96%) を茶色固体として得た後、酢酸エチルから再結晶して黄土色粒状結晶 (54.5 mg、53.2 %) のIY-092を得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 2.35 (s, 3H), 4.54 (s, 2H), 7.18 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.35 (dd, J=7.4 Hz, 1.2 Hz, 1H), 7.43 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.56 (dt, J=7.4, 1.7 Hz, 1H), 7.60 (dt, J=7.4, 1.2 Hz, 1H), 8.13 (dd, J=7.4, 1.7 Hz, 1H), 9.63 (brs, 1H)
【0046】
実施例18;IY-093(N-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化49】
実施例14と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボン酸メチル 2,2-ジオキシド (225.0mg、0.885 mmol) と2,3,4-トリフルオロアニリン (515.0 mg、3.50 mmol、4.0当量) をm-キシレン (20 mL) に溶解し、150℃で3.5時間還流撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去してIY-093 (304.0 mg) を桃色固体として得た後、酢酸エチルから再結晶して薄茶色針状結晶 (195.0 mg、59.8 %) のIY-093を得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 4.56 (s, 2H), 7.02 (ddd, J=17.2, 9.6, 2.3 Hz, 1H), 7.37 (d, J=7.6 Hz, 1H), 7.59 (dt, J=7.6, 1.3 Hz, 1H), 7.63 (dt, J=7.6, 1.5 Hz, 1H), 7.82-7.87 (m, 1H), 8.14 (dd, J=7.6, 1.3 Hz, 1H), 9.92 (brs,1H)
【0047】
実施例19;IY-094(N-(2-メトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化50】
実施例14と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1H-イソチオクロメン-3-カルボン酸メチル 2,2-ジオキシド (220.0 mg、0.866 mmol) と2,-メトキシアニリン (291.0 mg、2.37 mmol、2.7当量) をm-キシレン (10 mL) に溶解し、150℃で3時間還流撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去してIY-094 (279.0 mg) を茶色固体として得た後、酢酸エチルから再結晶して褐色粒状結晶 (186.0 mg、収率62%)のIY-094を得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 3.83 (s, OCH3, 3H), 4.55 (s, CH2, 2H), 6.76 (ddd, J=7.8, 2.4, 0.88 Hz, 1H), 7.09 (d, J=7.7 Hz,1H), 7.22 (t, J=2.4 Hz, 1H), 7.28 (t, J=7.8 Hz,1H), 7.36 (dd, J=7.8 Hz, 0.88 Hz, 1H), 7.57 (dt, J=7.7 Hz, 1.8 Hz, 1H), 7.61 (dt, J=7.7, 1.7 Hz, 1H), 8.14 (dd, J=7.7, 1.8 Hz, 1H), 9.70 (brs, 1H)
【0048】
実施例20;IY-095(4-メチル-1-オキソ-N-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-カルボキサミド)の合成
【化51】
窒素雰囲気下、脱水ヘキサンで洗浄した水素化ナトリウム (304.1 mg、7.61 mmol、1.7 当量) を脱水THF (17 mL) に懸濁し、4-メチル-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン (707.6 mg、4.42 mmol)を加え、室温で5分間撹拌した。次いで脱水THF (17 mL) に溶解したフェニルイソシアナート (1.15 g、9.70 mmol、2.2当量) を加え、80℃で21時間還流撹拌した。反応液に2 M 塩酸を加え、酢酸エチルで3回抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下に溶媒を留去して褐色ペースト(1.79 g)を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン:酢酸エチル=8:1) により精製して黄色油状物質のIY-095 (375.9 mg、収率30%) を得た。1H-NMRでは互変異性体3種(ケト体ジアステレオマー2種とエノール体)を認めたため、特徴的なピークのみ以下に記す。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 1.36 (d, J = 6.8 Hz, -CH3), 1.43 (d, J = 7.0 Hz, -CH3), 1.50 (d, J = 6.8 Hz, -CH3), 3.53 (dd, J = 12.9, 4.7 Hz, -COCH-), 3.72 (dd, J = 8.8, 5.3 Hz, -COCH-)
【0049】
実施例21;IY-101(4-オキソ-N-フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロ[b]チオフェン-3-カルボキサミド)の合成
【化52】
窒素雰囲気下、市販の6,7-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-4(5H)-オン (300.0 mg、1.97 mmol) を無水THF (15 mL) に溶解し、-78℃に冷却してカリウムヘキサメチルジシラジド溶液 (6.0 mL, 2.96 mmol、1.5当量) を加え、30分間撹拌した。次いでフェニルイソシアナート (327.0 mg、2.75 mmol、1.5 当量) の無水THF (3 mL) 溶液を15分かけて滴下した後、緩やかに昇温して室温でsらに8時間攪拌した。反応液に 2 M HClを加えpHを3とし、酢酸エチルで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水、溶媒を減圧下に留去して褐色油状物質(667.0 mg)を得た。n-ヘキサンと酢酸エチルから再結晶してIY-101 (40.0 mg、収率7%) を無色針状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 2.65 (ddd, J=6.2, 6.2, 6.2 Hz, 2H), 3.07 (ddd, J=17.2, 6.2, 6.2 Hz, 1H), 3.36 (ddd, J=17.3, 6.2, 6.2 Hz, 1H), 3.50 (t, J=6.2 Hz, 1H), 7.08-7.12 (m, 2H), 7.32 (t, J=7.6 Hz, 1H), 7.43 (d, J=7.5 Hz, 1H), 7.56 (d, J=7.6, 2.0 Hz, 1H), 8.39 (dd, J=7.7 Hz, 2H), 9.14 (s, 1H)
【0050】
実施例22;IY-102(N-フェニル-4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ピリド[2,3-c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化53】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ピリド[2,3-c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (200.0 mg、0.94 mmol) とフェニルイソシアナート (112 mg、1.88 mmol、2.0当量) の縮合により得られる赤白色固体(272.0 mg)を酢酸エチルから再結晶し、IY-102 (100.0 mg、収率32%) を橙色結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 3.30 (s, 3H), 6.94 (tt, J=7.3, 1.1, ArH, 1H), 7.12 (dd, J=7.6, 4.6, ArH, 1H), 7.26 (m, ArH, 2H), 7.57 (dd, J=8.6, 1.0 Hz, 2H), 8.28 (dd, J=7.6, 2.0 Hz, 1H), 8.39 (dd, J=4.7, 2.0 Hz, 1H), 12.6 (s, 1H)
【0051】
実施例23;IY-103(N-(2.4-ジフルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ピリド[2,3-c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化54】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ピリド[2,3-c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (300 mg、1.42 mmol) と2.4-ジフルオロフェニルイソシアナート (395.0 mg、2.55 mmol、1.8当量) の縮合により得られる乳白色固体(609.0 mg)を酢酸エチルから再結晶し、IY-103 (394.0 mg、収率77%) を白色結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 3.68 (s, 3H), 6.90-6.98 (m, 2H), 7.26 (m, 1H), 8.10-8.17 (m, 1H), 8.24 (dd, J=7.8, 1.7 Hz, 1H), 8.64 (dd, J=4,7, 1.8 Hz, 1H), 12.6 (s, 1H)
【0052】
実施例24;IY-104(N-(4-トリル)-4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ピリド[2,3-c][1,2]チアジン-3-カルボキサミド 2,2-ジオキシド)の合成
【化55】
実施例3と同様の手法で、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-ピリド[2,3-c][1,2]チアジン 2,2-ジオキシド (150.0 mg、0.71 mmol) と4-トリルイソシアナート (186.0 mg、1.40 mmol、2.0当量) の縮合により得られる黄白色固体(337.0 mg)を酢酸エチルから再結晶し、IY-104 (158.0 mg、収率64%) を黄色板状結晶として得た。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 2.36 (s, 3H), 3.68 (s, 3H), 7.19 (d, J=8.2 Hz, 2H), 7.25 (dd, J=7.8, 4.7 Hz, 1H), 7.44 (d, J=8.4 Hz, 2H), 8.41 (dd, J=7.8, 1.8 Hz, 1H), 8.62 (dd, J=4.7, 2.0 Hz, 1H), 9.38 (s, 1H)
【0053】
実施例25;IY-114(1-メチル-4-オキソ-N-(4-トリル)-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-3-カルボキサミド)およびIY-115(1-メチル-4-オキソ-N-(4-トリル)-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド)の合成
【化56】
1-メチル-4-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-3-カルボン酸メチル(100.0 mg、0.46 mmol)とp-トルイジン(147.9 mg、1.38 mmol)をm-キシレン(12 mL)に溶解して150℃で25時間、還流撹拌した。反応液を室温に戻した後、精製水と飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水、溶媒を減圧下に留去して茶色油状物質(190.5 mg)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン:ジクロロメタン=1:10) により精製し、IY-114 (21.0 mg)、IY-115 (5.8 mg) をそれぞれ無色油状物質として得た。
IY-114;1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.30 (s, 3H), 3.27 (dd, J=10.0 Hz, 15.8 Hz, 1H), 3.38 (dd, J=6.3,15.8 Hz, 1H), 3.42 (s, 3H), 3.53 (dd, J=6.3, 10.0 Hz, 1H), 6.99 (d, J=8.0 Hz, 1H), 7.07-7.11 (m, 3H), 7.29 (t, J=5.8 Hz, 2H), 7.44 (d, J=8.0 Hz, 2H), 9.66 (s, 1H)
IY-115;1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ:2.34 (s, 3H), 3.85 (s, 3H), 7.18 (d, J=8.2 Hz, 2H), 7.36 (t, J=7.8 Hz, 1H), 7.46 (d, J=8.5 Hz, 1H), 7.67 (d, J=8.5 Hz, 2H), 7.71 (dt, J=1.5, 8.1 Hz, 1H), 7.81 (dd, J=1.4, 7.8 Hz, 1H), 9.01 (s, 1H), 12.01 (s, 1H)
【0054】
上記実施例1~25に記載の方法と同様にして、下記表1に記載の化合物を製造した。なお、下記表1中のサンプル番号を、本明細書中、簡略化してIY-XXX(3桁の数字)などと表記することがある。例えば、実施例1のIY-027は、下記表1中のサンプル番号:KO-IY-NA-027で表される化合物を意味する。
製造した化合物を評価化合物として、下記のとおり、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害試験、MPP+誘発培養神経細胞死に対する保護効果評価、MPTP誘発パーキンソン病マウスモデルを用いた薬効評価、血漿中及び脳内濃度測定を行った。
【0055】
[試験例]
実施例26;シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害試験
COX Fluorescent Inhibitor Screening Kit (CAYMAN CHEMICAL) を用い、各化合物のCOX-1およびCOX-2に対する阻害活性を評価した。
Tris-HCl buffer (pH 8.0) 、Heme溶液、DMSOに評価化合物を溶解した溶液 (10 μM) を96ウェルプレートに加えた。別途コントロールとして評価化合物溶液の代わりにDMSOを加えたウェルを用意した。各ウェルにCOX-1あるいはCOX-2溶液を加え5分間室温でインキュベートした。全てのウェルにADHP溶液、アラキドン酸溶液を加え2分間室温でインキュベートした。励起波長530 nm、発光波長585 nmの測定を行った。なお、ポジティブコントロールとして、COX-1についてはSC-560、COX-2についてはDuP-697を用いた。比較として、評価化合物の代わりにメロキシカムを用いて同様に評価した。結果を下記表1に示す。
メロキシカムのCOX-2阻害活性は非常に強かったが、評価化合物のCOX-2阻害活性はいずれもメロキシカムよりも低かった。特に、IY-067、IY-068、IY-077、IY-091、IY-092、IY-093、IY-094、IY-095、IY-101、IY-102、IY-103及びIY-104は、COX-2阻害活性がメロキシカムと比較して著しく弱く、IY-091、IY-092、IY-093、IY-094、IY-101、IY-102、IY-103及びIY-104のCOX-2阻害活性は検出されなかった。なお、COX-1阻害活性は、メロキシカムも含めほとんどない化合物が多かった。
【0056】
実施例27;MPP+誘発培養神経細胞死に対する保護効果評価
ヒト神経線維芽細胞SH-SY5Y細胞の培養液にMPP+(1-メチル-4-フェニルピリジニウム)を添加し、細胞の生存率をWST-8法により測定した。具体的には、以下のように試験を行った。
非動化したウシ胎児血清(10%)、ペニシリン(100 U/mL)ストレプトマイシン(100 μg/mL)含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(D5796, SIGMA)で、ヒト神経線維芽細胞SH-SY5Y細胞を1.5×104 cells/cm2の濃度にて96ウェルプレートに播種し37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。24時間後に無血清DMEM(D5921, SIGMA)で2回リンスし、MPP+処理群には5 mM MPP+を含む無血清DMEM 100 μLに評価化合物(0.1% DMSOに溶解、最終濃度0.1 μM、0.3 μM、1 μM、3 μM、又は30 μM)を添加し培地交換した。非処理群には、MPP+を含まない無血清DMEM 100 μLに評価化合物を添加し培地交換した。培地交換後再び37℃、5%CO2インキュベーターで培養し、18時間後、細胞の生存率を評価するためにWST-8試験試薬(DOJINDO)を各ウェルに10 μL添加し、再び37℃、5%CO2インキュベーターに戻し2時間半呈色反応を行った。2時間半後、マイクロプレートリーダー(SunriseR, TECAN)で450 nmの吸光度を測定し細胞の生存率を評価した(参照波長620 nm)。参考として、評価化合物の代わりにメロキシカムを用いて同様に評価した。
得られた結果から、統計ソフト(Prism5, MDF)によりIC50を求めた。結果を下記表1に示す。
いずれの評価化合物も、程度の差はあるものの、MPP+誘発培養神経細胞死を抑制した。評価化合物の中には、メロキシカムよりも高活性な化合物も多数存在した。
【0057】
表1:化合物の神経細胞保護効果とCOX阻害活性
【表1-1】
【0058】
【表1-2】
【0059】
【表1-3】
【0060】
【表1-4】
【0061】
【表1-5】
【0062】
【表1-6】
【0063】
【表1-7】
【0064】
【表1-8】
【0065】
【表1-9】
【0066】
表1中、神経細胞保護効果の欄において「ca.30」と示されているものは、30 μMでおよそ50%の細胞生存率を示したことを意味する。
表1中、神経細胞保護効果の欄において「ca.10」と示されているものは、10 μMでおよそ50%の細胞生存率を示したことを意味する。
【0067】
実施例28;MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いた薬効評価
多くのパーキンソン病治療薬の薬効評価にMPTP (1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)誘導パーキンソン病モデルマウスが使用されている。当該モデルマウスを用いて薬効ドーズの評価、安全性の評価を行うことが出来る。
本試験では、MPTP誘発パーキンソン病モデルマウスを用いて、評価化合物の実験的パーキンソニズムに対する改善作用をPole test法によって評価した。用いたマウス及び試料は以下のとおりである。
・マウス:雄性C57BL/6マウス(SLC, 投与開始時9週齢, 行動評価時は11週齢, 20-25 g)
入荷後7日間馴化した。
・MPTP (Sigma):30 mg/kgでマウスに皮下投与 (Salineに溶解)
・評価化合物:3, 7.5, 10, 20 又は 30 mg/kg でマウスに腹腔内又は経口投与 (0.5% CMCに溶解)
・メロキシカム(参考例):10 mg/kg でマウスに腹腔内投与 (Salineに溶解)
以下のように群分けし投与を行った。
・コントロール群:CMC1日2回腹腔内投与(朝夕) 15日間、Saline 1日1回皮下投与(昼) 最初の5日間
・MPTP群:CMC1日2回腹腔内投与(朝夕) 15日間、MPTP 30 mg/kg 1日1回皮下投与(昼) 最初の5日間
・MPTP+評価化合物群:評価化合物 1日1回又は2回腹腔内又は経口投与(朝1回10 mg投与、又は3, 7.5, 10, 20 又は 30 mgを朝夕1回ずつ投与) 15日間、MPTP 30 mg/kg 1日1回皮下投与(昼) 最初の5日間
・MPTP+メロキシカム群:メロキシカム 1日1回腹腔内投与(昼1回10 mg投与) 15日間、MPTP 30 mg/kg 1日1回皮下投与(昼) 最初の5日間
【0068】
評価化合物としては、神経細胞保護効果の測定結果を考慮し、IY-027、IY-053、IY-060、IY-065、IY-067、IY-068、IY-069、及びIY-093を使用した。IY-027は腹腔内投与、それ以外は経口投与によりマウスに投与した。
Pole testは以下のとおり行った。15日目の投与前に、直径8 mm、高さ55 cmの棒の先端にマウスを上向きにつかまらせ、動き始めてから完全にマウスが下に向くまでの時間をTturnとした。この時間がかかるほど、運動障害の程度が大きいことを示す。それぞれのマウスは1回の馴化を行った後、同様の測定を1匹あたり5回行い、その平均値を用いた。結果を図1~7に示す。
いずれの評価化合物も、MPTP投与により延長されたTturnを、MPTPを投与しないコントロール群と同程度まで短縮した。これにより、いずれの評価化合物についても、運動障害を改善することが示された。
また、MPTP群とMPTP+評価化合物群(IY-027、IY-053、IY-060、IY-093)の間には、0.1%の有意水準において有意差が認められた。MPTP群とMPTP+評価化合物群(IY-067)の間には、1%の有意水準において有意差が認められた。MPTP群とMPTP+評価化合物群(IY-068、IY-069)の間には、5%の有意水準において有意差が認められた。MPTP群と参考例のMPTP+メロキシカム群の間には、0.1%の有意水準において有意差が認められた。IY-065については、今回の実験ではMPTP群との有意差が認められなかったが、これは、MPTP群におけるばらつきが大きく、その影響によるものと考えられた。
なお、いずれの化合物投与でもマウスに顕著な毒性は見られなかった。
【0069】
実施例29;血漿中及び脳内濃度測定
用いたマウス及び試料は以下のとおりである。
・マウス:雄性C57BL/6マウス (自家繁殖, 22-30 g)
・評価化合物:10 mg/kg (0.5% CMCに溶解)
評価化合物の経口又は腹腔内投与1, 4, 8時間後に、マウスを麻酔しヘパリン処理した26G注射針+1 mLシリンジで下大静脈から血液を採取し、4℃に冷やしたマイクロ冷却遠心機(KUBOTA3780)で5000 rpm、5分間遠心分離し、その上清を血漿とした。次に、全脳を取り出し脳重量を測定した。血漿と脳は直ちに-80℃で保存した。
凍結した脳に、脳重量の3倍量の超純水を添加し、さらに直径7 mmビーズを加え、ビーズ破砕機 (ビーズクラッシャーμT-12) (TAITEC)で2800 rpm、 40秒処理し脳を破砕した。ビーズを除去後、脳ホモジネート試料は再度-80℃で保存した。
凍結保存した血漿及び脳ホモジネートの試料を解凍後、それぞれに3倍量のエタノール(内部標準物質を含む)を添加し、ボルテックスミキサーで良く混和した。-20℃で20分静置後、10分間遠心(4℃, 10,000 g)し、その上清を分析用試料とした。
分析にはLC-MS [HPLC : AGILENT 1200, MS : AGILENT 6120, Column : InertSustain C18 (4.6 x 10 mm, 3.0 μm, GL SCIENCES)]を使用した。SIMモードにより各化合物の分子イオンをモニターし、得られたクロマトグラムのピーク面積から相対検量線法を用いて定量した。また、参考として、評価化合物の代わりにメロキシカムを用いて同様に測定を行った。
測定の結果、評価化合物のうち-X-Y-が-CR4R5-CR6R7-を表す化合物は、メロキシカムよりも脳内移行性(脳/血漿濃度比)が高いものの、血漿中濃度は低く、かつ経時的に急速に減少する傾向にあった。また、評価化合物のうち-X-Y-が-CR4R5-SO2-を表す化合物は、高い脳内濃度を示し、メロキシカムよりも脳内移行性(脳/血漿濃度比)が高かった。それ以外の評価化合物は、メロキシカムと同様の挙動を示した。実施例1で製造したIY-027を用いた結果、IY-065を用いた結果、及びIY-093を用いた結果を下記表2に示す。
【0070】
【表2】
表中、濃度の値は、平均値±標準偏差である(n=3)。なお、IY-027の場合血漿中濃度の定量下限は0.003 μM、脳内濃度の定量下限は0.012 nmol/gであり、IY-065の場合血漿中濃度の定量下限は0.01 μM、脳内濃度の定量下限は0.04 nmol/gであり、IY-093の場合血漿中濃度の定量下限は0.1 μM、脳内濃度の定量下限は1.0 nmol/gである。
【0071】
また、実施例28で評価した化合物についての脳内濃度測定の結果を、実施例26及び27で得られた結果と共に示す。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の化合物は、神経細胞保護効果を有し、パーキンソン病モデルマウスの運動障害を改善することから、パーキンソン病治療薬として有用であり得る。本発明の化合物により、パーキンソン病の進行を抑え、その進行を止めることが可能になると考えられる。また、本発明の化合物は、パーキンソン病における症状と同様の症状を呈するパーキンソン症候群の治療においても利用可能と考えられる。既存薬のブロモクリプチン、レボドパ、さらにはドパミン自体にはMPP+誘発神経細胞死への保護効果がないため、パーキンソン病等の治療に関して、本発明の化合物はこれらの既存薬を超える有用性を有し得るものである。
更に、本発明の化合物の経口投与によりパーキンソン病モデルマウスの運動障害が顕著に改善し、マウスに顕著な毒性は見られていないため、服薬も容易で患者のQOL向上に資するものであり得る。
本発明の化合物は、COX阻害活性がメロキシカムと比べて低いことからも、胃腸障害を引き起こす可能性が低く、より有用であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7