(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物およびその調製と使用
(51)【国際特許分類】
C01B 25/163 20060101AFI20231214BHJP
C09K 21/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C01B25/163
C09K21/04
(21)【出願番号】P 2021555362
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 CN2021075177
(87)【国際公開番号】W WO2022077813
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】202011084985.2
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518301235
【氏名又は名称】ジィァンスー リースーデェァ ニュー マテリアル カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.38, Zheda Road, Xihu District Hangzhou, Zhejiang 310027, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ フア
(72)【発明者】
【氏名】リ ジンヂォン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508832(JP,A)
【文献】特表2015-507590(JP,A)
【文献】特表2015-505798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00
C09K 21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)亜リン酸と金属Mの亜リン酸水素塩を反応物として水に溶解し、濃度が85wt%以上の濃リン酸を反応物質量の1%~5%で添加し、均一に攪拌し、80~90℃で反応させる工程において、Mは、Ca、Mg、Al、Zn、Fe、SnまたはTiである、工程と、
(2)工程(1)の反応で得られた材料を、0.3wt%以下の含水率にまで乾燥させ、前記乾燥温度を150℃以下に制御する工程と、
(3)工程(2)で乾燥して得られた生成物に対し、不活性雰囲気または真空条件下で200~300℃で脱水反応を行い、生成物の熱重量損失が2wt%で、対応する温度が400℃を超えると、脱水反応を終了し、室温まで温度を下げて固形物を得る工程と、
(4)工程(3)で得られた固形物を水で洗浄し、洗浄水の導電率が50μS/cm未満になるまで洗浄を終了し、洗浄された生成物を、0.3wt%未満の含水率にまで乾燥させ、ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物を得る工程と、を含み、
前記ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物の構造式が次の式(I)で示され、
【化1】
式中、xは、1~6の整数であり、n、yおよびpは、1~4の整数であり、Mは、Ca、Mg、Al、Zn、Fe、SnまたはTiであることを特徴とするポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物の調製方法。
【請求項2】
Mは、AlまたはCaで、pは、1または2であることを特徴とする請求項1に記載のポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物の調製方法。
【請求項3】
粒径は0.1~1000μmで、水への溶解度は0.01~10g/Lで、かさ密度は80~800g/Lで、含水率は5wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物の調製方法。
【請求項4】
工程(1)では、前記水に対する前記反応物の質量比は20%~50%であり、前記反応の時間は2~3hであり、
工程(3)では、前記脱水反応の時間は1~10hであることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
難燃剤または難燃相乗剤としての、またはそれらの製造のための、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製方法により得られるポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物の使用。
【請求項6】
前記難燃剤または難燃相乗剤は、ワニスまたは発泡コーティングの難燃、または木材またはセルロース含有製品の難燃に使用されるか、または難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、および難燃性ポリマー繊維の調製に使用されることを特徴とする請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維は、原料の総重量を100%とし、原料の組成が、
ポリマーマトリックス55%~99.9%、
ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物0.1%~45%、
充填剤および/または補強材0~44.9%
、を含むことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維は、原料の総重量を100%とし、原料の組成が、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%、
難燃剤システム0.1%~45%、
充填剤および/または補強材 0~44.9%
、を含み、
前記難燃剤システムの総重量を100%とし、前記難燃剤システムが、
ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物0.1%~50%、
難燃剤50%~99.9%を含
み、
前記難燃剤は、ジアルキル次亜リン酸および/またはその塩、メラミンの縮合生成物および/またはメラミンとリン酸の反応生成物および/またはメラミンの縮合生成物とポリリン酸またはそれらの混合物の反応生成物、窒素含有リン酸塩、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコールウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミドおよび/またはグアニジン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化スズ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、ジヒドロタルサイト、ハイドロカルマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、酸化スズ水和物、水酸化マンガン、ホウ酸亜鉛、アルカリ性ケイ酸亜鉛および/またはスズ酸亜鉛、メラム、メレム、メロン、ピロリン酸ジメラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロンおよび/またはポリリン酸メレムおよび/またはそれらの混合塩および/またはリン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよび/またはポリリン酸アンモニウム、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸亜鉛、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸モノフェニルおよびその塩、次亜リン酸ジアルキルおよびその塩と次亜リン酸モノアルキルおよびその塩との混合物、2-カルボキシエチルアルキル次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルメチル次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルアリール次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルフェニル次亜リン酸およびその塩、DOPOおよびその塩およびp-ベンゾキノンへの付加物からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスは、ナイロン、ポリエステル、POKの少なくとも1種であることを特徴とする請求項7または8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新材料の技術分野に関し、具体的にポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物およびその調製と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
亜リン酸はリン含有量が高く、難燃剤や難燃相乗剤として使用できるが、酸性度や水溶性が強いという欠点があり、高分子材料の劣化や機器の腐食、移動と沈殿問題などの原因となり、これらの問題により、難燃剤としての使用が制限され、亜リン酸系塩は、亜リン酸水素塩および亜リン酸塩を含む。亜リン酸水素塩は亜リン酸と同様に、その強い酸性度と水溶性が難燃剤としての使用を制限し、亜リン酸アルミニウムなどの一部の特殊な金属イオンの亜リン酸は、その酸性度と水溶性が大幅に低下され、亜リン酸の欠点を回避し、難燃剤または難燃相乗剤として使用可能であり、例えば、ジエチル亜リン酸アルミニウム(開示番号がCN107936297A、CN107760023Aの特許技術など)との相乗効果でガラス繊維強化ナイロンシステムに使用でき、優れた難燃性を有する。しかし、亜リン酸塩にはまだ欠点があり、つまり、リン含有量が低下し、ある程度の溶解性があり、ある程度の吸水率と酸性度があり、これらの特性は、難燃剤の使用にも影響を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
従来の亜リン酸塩の難燃性の低下、吸水率および酸性度の問題、ならびにこの分野での欠陥に対し、本発明は、より高いリン含有量およびより低い吸水率を有するポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物を提供し、ジエチル次亜リン酸塩の難燃剤と配合することができ、難燃性に優れるとともに、より低い酸性度と吸水率を有し、亜リン酸塩の代わりに、ジエチル次亜リン酸アルミニウムの相乗効果に最適な化合物である。
【0004】
ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物であって、構造式が次の式(I)で示され、
【化1】
式中、xは、1~6の整数であり、n、yおよびpは、1~4の整数であり、Mは、Ca、Mg、Al、Zn、Fe、SnまたはTiである。
【0005】
驚くべきことに、本発明のポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物は、高分子材料の難燃のための相乗剤として使用できることが見出された。該難燃相乗剤は、他の難燃剤と相乗作用して、難燃剤の効率を大幅に向上させることができる。一般に、難燃相乗剤および難燃剤は、他のポリマー添加剤とともに、混練および押出によって難燃処理対象のポリマーと混合されて、難燃性ポリマー複合材料を形成する。この加工プロセスは、ポリマーが溶融状態で存在し、短時間で320℃を大幅に超える可能性がある比較的高温で実行され、難燃相乗剤が分解することなくこの温度に耐えることができなければならない。驚くべきことに、本発明のポリ/一リン酸ジホスファイト化合物は、優れた熱安定性(高い熱分解温度)、低い吸水率、および低い酸性度を有することが見出された。
【0006】
好ましくは、Mは、AlまたはCaであり、pは、1または2である。
【0007】
好ましくは、xは、1または2である。
【0008】
好ましくは、前記ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物は、粒径が0.1~1000μmで、水への溶解度が0.01~10g/L、かさ密度が80~800g/Lであり、含水率が5wt%以下であり、より好ましくは、含水率が0.1wt%~5wt%である。
【0009】
本発明に記載のポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物は、従来の合成方法では得ることができない。
【0010】
本発明は、前記ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物の調製方法を提供し、
(1)亜リン酸と金属Mの亜リン酸水素塩を反応物として水に溶解し、濃度が85wt%以上の濃リン酸(H3PO4)を反応物の1重量%~5重量%で添加し、均一に攪拌して、80~90℃で反応させる工程において、Mは、Ca、Mg、Al、Zn、Fe、SnまたはTiである、工程と、
(2)工程(1)の反応で得られた材料を、0.3wt%以下の含水率にまで乾燥させ、前記乾燥温度を150℃以下に制御する工程と、
(3)工程(2)で乾燥して得られた生成物に対し、不活性雰囲気または真空条件下で200~300℃で脱水反応を行い、生成物の熱重量損失が2wt%で、対応する温度が400℃を超えると、脱水反応を終了し、室温まで温度を下げて固形物を得る工程と、
(4)工程(3)で得られた固形物を水で洗浄し、洗浄水の導電率が50μS/cm未満になるまで洗浄を終了し、洗浄された生成物を、0.3wt%未満の含水率にまで乾燥して、前記ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物を得る工程と、を含む。
【0011】
Mは、Ca、Mg、Al、Zn、Fe、SnまたはTiであり、Mの亜リン酸水素塩は、いずれも水溶性塩である。
【0012】
本発明に記載の調製方法は、以下の基本的な反応に基づいて設計されている。
【0013】
1)亜リン酸には、脱水と自己縮合反応を起こし可能な2つの官能基が含まれている。
【化2】
2)亜リン酸は、亜リン酸水素塩と脱水反応を起こす可能性がある。
【化3】
【0014】
上記の反応メカニズムに基づいて、発明人は次の反応ルートを設計した。
【化4】
【0015】
即ち、特定の条件下で亜リン酸と亜リン酸水素塩を反応させることにより、本発明のポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物を、得ることができる。
【0016】
しかし、亜リン酸と亜リン酸水素塩の固形物を直接混合して高温脱水させ、実際に得られた生成物は、亜リン酸と亜リン酸水素塩の間の脱水生成物ではなく、2つの原料各々の脱水生成物であり、各々の脱水生成物には、水溶性が低い、またはリン含有量が多いという特徴がなく、本発明の目的を達成することができない。そこで、本発明者は、上記の調製方法を創造的に開発し、前記ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物を得ることに成功した。
【0017】
本発明の調製方法は、亜リン酸および亜リン酸水素塩を水に溶解し、次いで、濃リン酸を添加して、80~90℃で反応させ、低温で乾燥し、高温で脱水反応させ、洗浄および乾燥することを含む。
【0018】
工程(1)の反応プロセスでは、反応物間の中間体(または組み合わせ)が生成されるが、脱水反応が発生せず、沈殿物もないが、この工程は高温脱水にとって重要な工程である。好ましくは、工程(1)において、前記反応の時間は2~3hである。
【0019】
好ましくは、工程(1)において、前記水に対する前記反応物の質量比は、20%~50%である。
【0020】
工程(2)において、前記乾燥は、オーブン、乾燥室、および乾燥機などの当技術分野で一般的に使用される乾燥装置を使用することができる。
【0021】
工程(3)において、前記不活性雰囲気は、希ガス、窒素ガスなどの雰囲気であってもよい。
【0022】
好ましくは、工程(3)において、前記脱水反応の時間は、1~10hである。
【0023】
工程(3)で得られた固体物は、未反応の亜リン酸塩、亜リン酸水素塩および副生成物などを含んでもよい。本発明は、水で洗浄することにより、これらの水溶性成分を分離し、洗浄水の導電率を測定することにより洗浄回数、洗浄用水の使用量などを制御する。
【0024】
工程(4)で得られたポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物は、好ましくは、使用中に所望の粒径範囲に前もって粉砕される。
【0025】
本発明はまた、難燃剤または難燃相乗剤としての、またはそれらの製造のための、ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物の使用を提供する。
【0026】
前記難燃剤または難燃相乗剤は、ワニスまたは発泡コーティングの難燃、木材またはセルロース含有製品の難燃に使用されるか、または難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、および難燃性ポリマー繊維の製造に使用できる。
【0027】
前記ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物は、ワニスやフォームコーティングの難燃剤、木材およびその他のセルロース含有製品の難燃剤に使用されるか、ポリマーの非反応剤難燃剤として、難燃性ポリマー成形材料の製造のため、難燃性ポリマー成形品の製造のため、および/または含浸により、ポリエステルとセルロースの純粋な布地および混合布地に難燃性を装備するため、ならびに難燃剤混合物および難燃相乗剤として使用できる。
【0028】
好ましい例では、前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維は、原料の総重量を100%とし、原料の組成が、
ポリマーマトリックス55%~99.9%、
ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物0.1%~45%、
充填剤および/または補強材0~44.9%、
その他の添加剤0~44.9%を含む。
【0029】
好ましくは、上記の原料成分の質量の合計は100%である。
【0030】
前記充填剤および/または補強材はガラス繊維であってもよい。
【0031】
好ましくは、前記ポリマーマトリックスは、ナイロンまたはポリエステルである。
【0032】
別の好ましい例において、前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維は、原料の総重量を100%とし、原料の組成が、
ポリマーマトリックス55%~99.9%、
難燃剤システム0.1%~45%、
充填剤および/または補強材0~44.9%、
その他の添加剤0~44.9%を含み、
前記難燃剤システムの総重量を100%とし、前記難燃剤システムは、
ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物0.1%~50%、
難燃剤50%~99.9%を含む。
【0033】
好ましくは、上記の原料成分の質量の合計は100%である。
【0034】
前記充填剤および/または補強材はガラス繊維であってもよい。
【0035】
好ましくは、前記ポリマーマトリックスは、ナイロン、ポリエステル、POK(ポリケトン)の少なくとも1種である。
【0036】
前記難燃剤は、ジアルキル次亜リン酸および/またはその塩、メラミンの縮合生成物および/またはメラミンとリン酸の反応生成物および/またはメラミンの縮合生成物とポリリン酸またはそれらの混合物の反応生成物、窒素含有リン酸塩、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコールウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミドおよび/またはグアニジン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化スズ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、ジヒドロタルサイト、ハイドロカルマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、酸化スズ水和物、水酸化マンガン、ホウ酸亜鉛、アルカリ性ケイ酸亜鉛および/またはスズ酸亜鉛であってもよい。
【0037】
前記難燃剤はまた、メラム、メレム、メロン、ピロリン酸ジメラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロンおよび/またはポリリン酸メレムおよび/またはそれらの混合塩および/またはリン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよび/またはポリリン酸アンモニウムであってもよい。
【0038】
前記難燃剤はさらに、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸亜鉛、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸モノフェニルおよびその塩、次亜リン酸ジアルキルおよびその塩と次亜リン酸モノアルキルおよびその塩との混合物、2-カルボキシエチルアルキル次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルメチル次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルアリール次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルフェニル次亜リン酸およびその塩、DOPOおよびその塩およびp-ベンゾキノンへの付加物であってもよい。
【0039】
好ましくは、前記ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物とジエチル次亜リン酸アルミニウムは配合され、様々なナイロン、ポリエステル、POK基板などを含むガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックに使用される。
【0040】
ポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物とジエチル次亜リン酸アルミニウムの複合難燃剤システムを、ガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックに使用する場合、二軸押出機で高温溶融し、混合、分散させる必要がある。
【0041】
従来の技術と比較して、本発明の主な利点は以下を含む。本発明のポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物は、高い熱分解温度、高いリン含有量、優れた難燃性を有し、ジエチル次亜リン酸アルミニウムとともに相乗効果を果たし、低吸水率、低酸性度で、高分子材料のハロゲンフリー難燃剤成分として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を、具体的な実施例を参照して以下でさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例では、具体的な条件の操作方法が指定されず、通常、従来の条件に従って、またはメーカーが推奨する条件に従うだけでよい。
【0043】
測定内容と方法:
1.調製した化合物に対し、元素分析を実行して、各元素の比率を決定し、P含有量を取得する。
2.吸水率の測定:材料50gを秤量し、85℃、湿度85%の恒温恒湿器に入れて、7日間保持し、材料の重量増加を測定し、重量増加の比率が、材料の吸水率である。
3.10gの粉末材料を100gの水に分散させ、25℃の一定温度に保ち、2hr保持した後、溶液のpH値を測定するように、調製した化合物の酸性度を測定する。
【0044】
実施例1 モノ亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物の調製
モノ亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物の分子構造は、次の式で示され、
【化5】
調製プロセスは、次のとおりである。亜リン酸82g(1mol)、亜リン酸水素アルミニウム((H2PO3)3Al)540g(2mol)、および濃度が85.1wt%の濃リン酸(H3PO4)12gを秤量し、1500gの水に溶かして均一に攪拌、混合し、85℃で3時間反応させ、-0.08MPaで85℃で回転蒸発すると、50wt%まで水分を蒸発させ、材料をオーブンに移し、130℃まで加熱し、120min乾燥させ、固形物の含水率が0.2wt%になり、乾燥した固形物を高温真空オーブンに入れ、240℃で3時間加熱処理して、室温まで冷却し、取り出して、材料を洗浄および分離し、洗浄水の導電率が50μS/cm未満になるまで、洗浄を終了し、0.08wt%の含水率にまで130℃で乾燥させ、平均粒径D50が40μmにするように、材料を粉砕し、その収率が97.8%であり、関連する試験と応用を行う。
【0045】
表1は、モノ亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物の元素分析結果を示している。
【表1】
表1の各元素の含有量は理論計算量に非常に近く、調製された化合物がモノ亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物であることを示している。吸水率とpH値については、表3を参照してください。
実施例2 二亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物の調製
【0046】
二亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物の分子構造は、次の式で示される。
【化6】
調製プロセスは、次のとおりである。164g(2mol)の亜リン酸、540g(2mol)の亜リン酸水素アルミニウム((H2PO3)3Al)、および濃度が85.1wt%の濃リン酸(H3PO4)14gを秤量し、1600gの水に溶解し、十分に攪拌して、均一に混合し、85℃で3時間反応させ、85℃で-0.08MPaで回転蒸発させ、水を50wt%まで蒸発させ、材料をオーブンに移し、130℃まで加熱し、120min乾燥させ、固形物の含水率が0.2wt%になり、乾燥した固形物を高温真空オーブンに入れ、240℃で3時間加熱処理して、室温まで冷却し、取り出して、材料を洗浄および分離し、洗浄水の導電率が50μS/cm未満になるまで、洗浄を終了し、0.08wt%の含水率にまで材料を130℃で乾燥させ、材料を粉砕して、平均粒径D50が42μmの材料を得、収率が86.5%であり、関連する試験と応用を行う。
【0047】
表2は、二亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物の元素分析結果を示している。
【表2】
表2の各元素の含有量は理論計算量に非常に近く、調製された化合物が二亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物であることを示している。吸水率とpH値については、表3を参照してください。
【0048】
比較例1
実施例1と同じで、反応物を反応のために水に入れず、固体反応物を直接混合し、高温オーブンに入れて脱水させ、材料を取得し、吸水率とpH値を測定する。結果は、表3に示されている。
【0049】
比較例2
2molの亜リン酸水素アルミニウムを2molの亜リン酸に置き換えたことを除いて、実施例1と同じであるが、得られた材料について、その吸水率およびpH値を測定する。結果は、表3に示されている。
比較例3
【0050】
1molの亜リン酸を2molの亜リン酸水素アルミニウムに置き換えたことを除いて、実施例1と同じであるが、得られた材料について、その吸水率およびpH値を測定する。結果は、表3に示されている。
【表3】
表3の結果から、本発明の化合物は、亜リン酸、亜リン酸水素アルミニウム、および亜リン酸アルミニウムと比較して、リン含有量が高く、吸水率が低く、酸性度が弱い。これらの特性は、難燃剤として使用される化合物にとって明らかな利点である。比較例の調製プロセスと比較して、本発明により提供される調製方法は、目的化合物を得ることができ、これは、該調製方法の有効性を示している。該調製プロセスでは、亜リン酸単位の増加、すなわち、xが増加すると、リン含有量が増加し、吸水率および酸性度は低下するが、収率が低下する。好ましくは、1~2個の亜リン酸単位で、使用要件を満たすことができる。
【0051】
<難燃剤の使用>
実施例3
一般規則に従い、50wt%のナイロン66、30wt%のガラス繊維、3.8wt%の実施例1によるモノ亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物および16.2wt%のジエチル次亜リン酸アルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用して、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を製造し、サンプルを用意して、その難燃性を測定したが、材料の難燃性がUL94 V0(0.8mm)に達した。
【0052】
実施例4
一般規則に従い、52wt%のナイロン66、30wt%のガラス繊維、3wt%の実施例2による二亜リン酸と二亜リン酸水素アルミニウムの縮合物および15wt%のジエチル次亜リン酸アルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用して、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を製造し、サンプルを用意して難燃性を測定し、材料の難燃性がUL94 V0(0.8mm)に達した。
【0053】
比較例4
一般規則に従い、50wt%のナイロン66、30wt%のガラス繊維、20wt%のジエチル次亜リン酸アルミニウム(LFR8003、江蘇利思徳新材料有限公司)を使用して、難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、サンプルを用意してその難燃性を測定したが、材料の難燃性がUL94 V2(0.8mm)に達した。(UL94の難燃性分類基準によると、V2グレードの難燃効果はV0グレードより劣っている)。
【0054】
使用結果から、本発明のポリ/モノ亜リン酸と二亜リン酸水素塩の縮合物は、ジエチル次亜リン酸アルミニウムと相乗作用して難燃効果を向上させることができることが分かる。
【0055】
さらに、本発明の上記の説明を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態もまた、本願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内にあることを理解されたい。