IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジキンの特許一覧

<>
  • 特許-開度固定器 図1
  • 特許-開度固定器 図2
  • 特許-開度固定器 図3
  • 特許-開度固定器 図4
  • 特許-開度固定器 図5
  • 特許-開度固定器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】開度固定器
(51)【国際特許分類】
   F16K 35/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
F16K35/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022085557
(22)【出願日】2022-05-25
(65)【公開番号】P2023173362
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(72)【発明者】
【氏名】杉村 瞭
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-190529(JP,A)
【文献】実開平4-127484(JP,U)
【文献】実開平4-82467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に取付部を形成した円筒状のボディと、
該ボディ内の付勢部材によって、前記ボディの一端側に付勢され、ボディを貫通するステム挿通口から先端部の突出量が変動するように取り付けられたステムと、
該ステムの前記ボディ他端側から突出する端部と連結され、前記ボディの他端側を覆う操作キャップと、
前記ステムのボディ一端側から突出する先端が係合する係合部を周面に複数備え、開閉弁の開閉操作時に回動することで弁体を弁座から当接離間させる回転軸に取り付けるリング状のストッパ部材とを備え、
前記ボディの他端側は、ステム挿通口と平行に、直径長さに亘った深さの異なる切欠溝が2箇所に形成され、前記操作キャップの内周面には、前記切欠溝に係合する突出部を備えた開度固定器。
【請求項2】
前記係合部は、前記回転軸の一の回転方向では前記先端と係合する立設面を備え、他の回転方向では前記先端が摺接し、移行を許容する傾斜面を備えている請求項1に記載の開度固定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開度固定器に関し、特に手動でハンドルを回転させることで弁体を弁座から当接離間させるバルブを任意の位置で固定する開度固定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、手動式バルブのハンドルを任意の位置で固定する固定具は種々提案されている。例えば特許文献1に記載のロック機能付き回転バルブでは、軸部の外表面にギヤ状の凹凸部を備えた環状部材を固定し、ハンドルに揺動可能に取り付けた作動部材の先端を凹凸部に干渉させてその回転を固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-059555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のロック機能付き回転バルブでは、バルブの開閉をする際にハンドルを手動で回転させる必要があるが、常時作動部材の先端は環状部材の凹凸部に干渉しており、開閉時にハンドルを持つ手で作動部材を操作し凹凸部との干渉を解除しながら回さなければならず、中途半端に操作部材の先端が凹凸部と干渉すると、環状部材の凹凸部か作動部材の先端が欠損する可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明は、係る点に鑑みてなされたもので、手動でハンドルを操作する時に固定具を操作する必要がなく、任意の位置で回転を固定することができる開度固定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る開度固定器は、
一端側に取付部を形成した円筒状のボディと、
該ボディ内の付勢部材によって、前記ボディの一端側に付勢され、ボディを貫通するステム挿通口から先端部の突出量が変動するように取り付けられたステムと、
該ステムの前記ボディ他端側から突出する端部と連結され、前記ボディの他端側を覆う操作キャップと、
前記ステムのボディ一端側から突出する先端が係合する係合部を周面に複数備え、開閉弁の開閉操作時に回動することで弁体を弁座から当接離間させる回転軸に取り付けるリング状のストッパ部材とを備え、
前記ボディの他端側は、ステム挿通口と平行に、直径長さに亘った深さの異なる切欠溝が2箇所に形成され、前記操作キャップの内周面には、前記切欠溝に係合する突出部を備えている。
【0007】
本発明の開度固定器は、深い切欠溝に突出部が係合するときはステム先端がボディから突出し、浅い切欠溝に突出部が係合するときはステム先端がボディ内に埋没するから、操作キャップを手動で90°回動させる操作で簡単に出没自在のステム先端を、バルブの回転軸に固定されたストッパ部材の係合部に係合させハンドルの回転を固定することができる。
【0008】
この場合において、前記係合部は、前記回転軸の一の回転方向では前記先端と係合する立設面を備え、他の回転方向では前記先端が摺接し、移行を許容する傾斜面を備えることができる。これにより一の回転方向には固定機能が作用し、他の回転方向には自由に回転させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の開度固定器によれば、手動でハンドルを操作する時に固定具を操作する必要がなく、任意の位置で回転を固定することができる開度固定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の開度固定器を取り付けた開閉弁を示す一部切り欠きの正面図である。
図2】同開度固定器を示す一部断面の正面図である。
図3】同開度固定器のボディを示し、(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は(a)のX-X断面図、(d)は(a)のY-Y断面図である。
図4】同開度固定器の操作手順を示し、(a)は回転軸を固定している状態、(b)は操作キャップを持ち上げステム先端を引き上げた状態、(c)は(b)の状態から90°時計回りに回転させ手を放し回転軸の固定を解除した状態を示す。
図5】同開度固定器のストッパ部材を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)はストッパ部材の変形例を示す平面図である。
図6】同開度固定器を取り付けた開閉弁を示し、(a)は斜視図、(b)はハンドルと回転軸とを取り付ける前のバルブボディの斜視図、(c)はハンドルに接続した回転軸にストッパ部材を固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る開度固定器の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。この実施例に記載されている構成部品の形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0012】
<実施形態1>
図1図4に、本発明の第1の実施形態を示す。図1は、本発明の開度固定器1を開閉弁9に取り付けた除隊を示す一部切り欠きの正面図を示し、図2は同開度固定器1の一部切り欠きの正面断面図である。
【0013】
本発明の開度固定器1は、一端側に取付部2aを形成した円筒状のボディ2と、ボディ2内の付勢部材6によって、ボディ2の一端側に付勢され、ボディ2を貫通するステム挿通口20から先端部の突出量が変動するように取り付けられたステム3と、ステム3のボディ2他端側から突出する端部31と連結され、ボディ2の他端側を覆う操作キャップ4と、ステム3のボディ2一端側から突出する先端30が係合する係合部50を周面に複数備え、開閉弁9の開閉操作時に回動することで弁体94を弁座から当接離間させる回転軸90に取り付けるリング状のストッパ部材5とを備え、ボディ2の他端側は、ステム挿通口20と平行に、直径長さに亘った深さの異なる切欠溝21、22が2箇所に形成され、操作キャップ4の内周面には、切欠溝21、22に係合する突出部44、44を備えている。
【0014】
<ボディ>
ボディ2の一端側に形成する取付部2aは、バルブ9のバルブボディ92の固定具取付部93に形成した雌ねじ部に螺合する雄ねじを備えている。そして、取付部2aから他端側に向かって、大径部2c、中径部2d、小径部2bとなっているが、外径差のない円筒状であっても構わない。
【0015】
ボディ2の中心に貫通しているステム挿通口20は、取付部2aが形成される一端側が他端側より大径とし、付勢部材6、例えば巻きバネの一端が当接する段部を形成する。
【0016】
ボディ2の他端側である小径部2bには、ステム挿通口20と平行に、直径長さに亘った深さの異なる切欠溝21、22が2箇所に形成されており、後述する操作キャップ4の内周面から突設する突出部44、44の案内を担い、それぞれの底部21T、22Tに付勢部材6によって付勢されるようになっている。切欠溝21、22はその深さが異なり、切欠溝21は切欠溝22よりも深く、切欠溝21の底部21Tに突出部44、44が付勢されているときステム3の先端30がボディ2の一端側から最大突出量で突出し、切欠溝22の底部22Tに突出部44、44が付勢されているときステム3の先端30がボディ2内に突出量が最小となる。
【0017】
平面視したとき(図3(a)参照)の切欠溝21、22間の端面23、24は、その高さが異なり、端面23が端面24よりも低く、操作キャップ4を持ち上げて回転させる際、突出部44、44は端面23の上を通過して回転させる。後述するステム3の内径を変えることで、物理的に突出部44、44が端面24の上を通過できないように構成している。これにより、操作キャップの左回り右回り共に90°しか回転することができず、回転を固定時か否かの判断が容易に可能となる。
【0018】
<ステム>
ステム3は、先端30がステム挿通口20と略同径でステム挿通口20に摺接する。後端部31は、操作キャップ4に開口した貫通孔40に嵌入し、後端部31に形成した穴部31aに楔部材(本実施形態では鋼球7)を押し込み、当該穴部を拡開して操作キャップ4に固定する。なお、ステム3と操作キャップ4との固定方法は、上述した方法に限られるものではなく、ステム3の後端部31に雄ねじを、貫通孔に雌ねじを形成してステム3を螺合して固定したり、溶接等の固定手段を採用したりすることもできる。
【0019】
ステム3の先端30側には中径部32を形成し、先端30の端面に付勢手段6の他端が当接させるようにしている。またこの中径部は、ステム挿通口20の段部20aに当接し、ステム3及び操作キャップ4の上方への移動を阻止する。これにより、上述したように突出部44、44が端面24の上を通過できないように構成される。
【0020】
<操作キャップ>
操作キャップ4は、蓋部41と蓋部41周縁から立設する周面部42からなる有底筒状で、蓋部41の中心には貫通孔40が開口し、上述した方法等でステム3の後端部31が固定される。
【0021】
操作キャップ4の内部空間は、ステム3の先端30の突出量が最大の時、ボディ2の小径部2b、中径部2dがそれぞれ位置する部分が、小径部2b、中径部2dの内径より若干大なる径の空間となるように構成されており、その小径部が位置する空間には突出部44、44が形成されている。
【0022】
この突出部44、44は、操作キャップ4を金型から製造する場合等の場合、内部空間43に最初に形成しておいたり、切削加工によって削り出しで加工しても構わないが、本実施形態においては、周面部42にネジ穴42aを形成し、外部から例えばイモネジ等を捻じ込んでその先端を内部空間43に突出させて構成するようにしている。
【0023】
<組立>
上記構成において、ステム3に付勢手段6であるスプリングを換装し、先端30の内側に形成される環状の段部30aに載置させ、ボディ2のステム挿通口20へ取付部2a側から挿通し、ステム3の後端部31を操作キャップ4と接合する。その後、突出部44、44であるイモネジをネジ穴44aから取り付け、開度固定具1は完成する。
【0024】
<ストッパ部材>
ストッパ部材5は、開閉弁9の回転軸90に固定されるもので、バルブボディ92に形成される開度固定器1を取り付ける取付孔の中心軸が係合部50の中心となる位置に固定される。
【0025】
ストッパ部材5には上述したように、周面に多数の係合部50が形成されている。この係合部50は、ステム3の先端30の外径より若干大径の穴部となっており、その周面50Aに先端30の外周面が当接し、回転軸90の回動を阻止する。
【0026】
<変形例>
係合部50は、図5(c)に示すように、回転軸90の一の回転方向ではステム3の先端30と係合する立設面50Aを備え、他の回転方向ではステム3の先端30が摺接し、移行を許容する傾斜面50Bを形成するように構成することもできる。これによって、例えば、緊急時は手動で開閉弁9を開放しなければいけない場合、ステム3の先端30が突出している状態でもハンドル91の操作で回転軸90を開方向である反時計回りには回転させることができる。
【0027】
<操作手順>
まず、図4(a)は、突出部44、44が深い方の溝部21の底部21Tに当接し、ステム3の先端30が取付部2aより突出している状態、つまり、ストッパ部材5の係合部50に係合し、回転軸90の回転を固定している状態である。この状態から、開閉弁9をハンドル91で回転操作する場合、操作キャップ4をつまみ、付勢手段6の付勢力に抗って図例上方に持ち上げる。この際、ステム3の先端30の環状の段部30aがステム挿通口20の段部20aに当接するところまで持ち上げる。そして、突出部44、44が端面23、23の上を通過するように時計回りに90°回動させる(図4(b)参照)。
【0028】
回動させた状態で操作キャップ4から手を離すことで、付勢部材6の付勢力によって、操作キャップ4とステム3は取付部2a側に移動するも、突出部44、44は浅い方の溝部22の底部22Tに当接し、ステム3の先端30は取付部2aから突出することなく、ストッパ部材5の係合部50との係合が解除されハンドル91の操作によって回転軸90は自由に回動し、ボールネジ(図示省略)を介して弁体94を弁座に対して当接離間させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る開度固定器は、操作用のハンドルで開閉弁を操作中にストッパ等を操作する必要はなく、全開全閉のみならず任意の位置で操作キャップを回動させるだけで、ハンドルの接続される回転軸を固定でき、開閉弁の開度を任意の位置で固定することができるから、種々の開閉弁の開度固定器として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 開度固定器
2 ボディ
20 ステム挿通口
21 切欠溝
22 切欠溝
2a 取付部
3 ステム
30 先端
31 端部
4 操作キャップ
44 突出部
5 ストッパ部材
50 係合部
50A 立設面
50B 傾斜面
6 付勢部材
9 開閉弁
90 回転軸
91 ハンドル
図1
図2
図3
図4
図5
図6