(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】乾式分離方法、及び乾式分離装置
(51)【国際特許分類】
B07B 4/08 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B07B4/08 B
(21)【出願番号】P 2019080853
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-02-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011155
【氏名又は名称】永田エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】久保 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】図師 竜也
(72)【発明者】
【氏名】中務 真吾
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-305929(JP,A)
【文献】実開昭54-152148(JP,U)
【文献】特開2001-334288(JP,A)
【文献】特開平10-272467(JP,A)
【文献】米国特許第05526938(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層を有する本体へ気体を導入し、前記流動層中の分離対象物を分離する乾式分離方法であって、前記気体の導入を、絞り作用を有する孔
であり、前記孔は、下向きに開口する孔か、又は、上向きに開口する場合、キャップ若しくは逆止弁を有する孔であって、流動化媒体又は前記分離対象物となる粉体が通過可能である孔
を有する中空管を介して行う工程と、前記孔を介して導入された気体であり、前記孔を通過する気体の流速をUor、前記粉体の終末沈降速度をUtとした場合、Uor>Utである気体によって、前記流動化媒体又は前記分離対象物となる粉体を流動化させて前記流動層を形成する工程と、前記流動化によって分離した分離対象物を回収する工程とを、含むことを特徴とする乾式分離方法。
【請求項2】
前記流動層の最小流動化速度Umfにおける気体導入部の圧力損失をΔPiとした場合、ΔPiは、0.1~10kPaの範囲である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記流動化媒体又は分離対象物となる粉体の平均粒子径は、30~600μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記流動層は、粉体を流動化させた固気流動層である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
分離対象物が、自動車シュレダーダスト、家電シュレッダーダスト、これら以外の産業廃棄物、一般廃棄物、鉱石類、石炭、又はレアアースである請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
流動層を有する本体と、分離対象物を投入する分離対象物投入部と、前記分離対象物が前記流動層内の粉体の流動化によって分離し浮揚した浮揚物を回収する第一の回収部と、前記分離対象物が前記流動化によって分離し沈降した沈降物を回収する第二の回収部と、絞り作用を有する孔であり、
前記孔は、下向きに開口する孔か、又は、上向きに開口する場合、キャップ若しくは逆止弁を有する孔であって、流動化媒体又は前記分離対象物となる粉体が通過可能である孔
を有する中空管を備えた気体導入部であり、前記孔を介して気体の導入を行う気体導入部であって、前記孔を通過する気体の流速をUor、前記粉体の終末沈降速度をUtとした場合、Uor>Utである気体の導入を行う気体導入部と、を備えることを特徴とする乾式分離装置。
【請求項7】
さらに、前記本体には、前記粉体が通過可能な多孔板を備える請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記気体導入部は、前記粉体を除去する除去部を有する請求項6
又は7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式分離方法、及び乾式分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の素材から構成される工業製品、鉱物資源、さらには、産業廃棄物等においては、種々の異なる成分を含んでいる。このような成分毎の分離は、鉱物資源の精製、資源のリサイクル等を行う上で必要である。
【0003】
現在までのところ、分離方法としては主として、湿式分離法及び乾式分離法が知られている。
【0004】
例えば、乾式分離法として、流動化媒体となる粉体に気体を吹き込んで流動層を形成し、固気流動層内に石炭粒子を投入して流動層の見かけ密度より小さい密度の石炭粒子を浮揚させ、大きい密度の石炭粒子を沈降させて分離するようにした乾式石炭分離方法が知られている(特許文献1)。その他、流動化媒体を用いなくても、石炭からなる粉体(微粉炭)の層へ気体を吹き込むことによって形成した固気流動層(分離対象物の粉体自体が固気流動層を形成。)において、鉛直方向に生じる石炭の密度偏析現象を利用して石炭を分離するようにした乾式石炭分離方法が知られている。
【0005】
流動化媒体となる粉体に気体を吹き込んで固気流動層を形成する方法や、分離対象物の粉体自体が固気流動層を形成させる方法のいずれの場合においても、当該固気流動層を利用した乾式分離方法において、気体は粉体の層の底部へ設置された気体分散器を介して導入される(
図6)。精度の良い分離を実現するための気体分散器の要件は、流動層内で気体を小さな気泡にして平面方向に均一分散させることが可能な点である。言い換えれば、分離を乱すことのない穏やかな流動層を形成することが可能な気体分散器とする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記乾式分離法を含め、従来技術においては、前記要件を満たす気体分散器として、金属焼結板などの多孔質板や、パンチングメタル及び天然繊維または化学繊維で織られた布との組合せからなる多孔性板、等が用いられている。なお、当該多孔質板や当該多孔性板は、その形状が板状であることから気体分散板と呼ばれることが多い。
【0008】
しかしながら、従来の乾式分離方法における多孔質板や多孔性板等の気体分散器は、細孔に流動層の粉体や気体中の環境粉塵等が入り込む現象、いわゆる目詰まりが生じることがある。特に、流動層へ振動を付加した振動流動層では、振動が促進力となって顕著な目詰まりが生じることがあり、短時間で目詰まりが進行することがある。
【0009】
目詰まりが進行すると、気体分散器の要件である均一分散性が損なれ、分離精度の低下等の問題を引き起こす。また、目詰まりが進行すると気体分散器の圧力損失が増大するため、流動層を形成するためにはより大きな気体圧力が必要となり、送風機等の気体供給装置の吐出圧が不足する事態にも陥る。
【0010】
このため、重度な目詰まりに進行する前に気体分散器を取り替えなければならないが、例えば、平面サイズが長さ7m×幅3mの流動層を有する大型の乾式分離装置においては、気体分散器の取り替え作業は容易ではないし、コストも掛かる。また、例えば数日といった短時間で重度な目詰まりに進行する場合では、その都度、気体分散器の取り換え作業を行うのはコスト・労力的に非現実的である。
【0011】
そこで、本発明は、気体分散器の目詰まりを抑制でき、かつ低コストで、環境に優しい乾式分離方法、及び乾式分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、流動層での挙動について鋭意検討した結果、本発明の乾式分離方法及び乾式分離装置を見出すに至った。
【0013】
すなわち、本発明の乾式分離方法は、流動層を有する本体へ気体を導入し、前記流動層中の分離対象物を分離する乾式分離方法であって、前記気体の導入を、絞り作用を有する孔であり、前記孔は、下向きに開口する孔か、又は、上向きに開口する場合、キャップ若しくは逆止弁を有する孔であって、流動化媒体又は前記分離対象物となる粉体が通過可能である孔を有する中空管を介して行う工程と、前記孔を介して導入された気体であり、前記孔を通過する気体の流速をUor、前記粉体の終末沈降速度をUtとした場合、Uor>Utである気体によって、前記流動化媒体又は前記分離対象物となる粉体を流動化させて前記流動層を形成する工程と、前記流動化によって分離した分離対象物を回収する工程とを、含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記流動層の最小流動化速度Umfにおける気体導入部の圧力損失をΔPiとした場合、ΔPiは、0.1~10kPaの範囲であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記流動化媒体又は分離対象物となる粉体の平均粒子径は、30~600μmであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記流動層は、粉体を流動化させた固気流動層であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、分離対象物が、自動車シュレダーダスト、家電シュレッダーダスト、これら以外の産業廃棄物、一般廃棄物、鉱石類、石炭、又はレアアースであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の乾式分離装置は、流動層を有する本体と、分離対象物を投入する分離対象物投入部と、前記分離対象物が前記流動層内の粉体の流動化によって分離し浮揚した浮揚物を回収する第一の回収部と、前記分離対象物が前記流動化によって分離し沈降した沈降物を回収する第二の回収部と、絞り作用を有する孔であり、前記孔は、下向きに開口する孔か、又は、上向きに開口する場合、キャップ若しくは逆止弁を有する孔であって、流動化媒体又は前記分離対象物となる粉体が通過可能である孔を有する中空管を備えた気体導入部であり、前記孔を介して気体の導入を行う気体導入部であって、前記孔を通過する気体の流速をUor、前記粉体の終末沈降速度をUtとした場合、Uor>Utである気体の導入を行う気体導入部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、さらに、前記本体には、前記粉体が通過可能な多孔板を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体導入部は、前記粉体を除去する除去部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、気体の導入に際して、流動層中の粉体や気体中の環境粉塵等による目詰まりを低減することが可能であるという有利な効果を奏する。また、本発明によれば、いわゆる乾式分離であるため、水資源の少ないところでも利用することができる。また、本発明によれば、高精度、かつ、連続的に、分離対象物を分離可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における概略図を示す。
図2(a)は断面図を示し、
図2(b)は気体導入部を上から見た図である。
【
図3】
図3は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における使用可能な多孔板の例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における使用可能な多孔板の例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における断面図を示す。
【
図6】
図6は、従来の分離対象物を分離する装置を示す図である。
【
図7】
図7は、従来技術における装置を用いた場合の空塔速度1.0cm/sにおける気体分散板の圧力損失ΔPの経時変化を示す。
【
図8】
図8は、従来における空塔速度と、気体分散板の圧力損失ΔPとの関係を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における概略図を示す。
図9(a)は断面図を示し、
図9(b)は気体導入部を上から見た図である。
【
図10】
図10は、時間θと、初期圧力損失比ΔP/ΔP0との関係を示す。
【
図11】
図11は、かさ密度と、規格化層高さとの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の乾式分離方法は、流動層を有する本体へ気体を導入し、前記流動層中の分離対象物を分離する乾式分離方法であって、前記気体の導入を、絞り作用を有する孔を介して行う工程と、前記孔を介して導入された気体によって、流動化媒体又は前記分離対象物となる粉体を流動化させて前記流動層を形成する工程と、前記流動化によって分離した分離対象物を回収する工程とを、含むことを特徴とする。 本発明は、流動化媒体となる粉体の層に気体を吹き込んで流動層を形成し、固気流動層内に分離対象物を投入し、固気流動層の見掛け密度を利用して分離対象物を分離する乾式分離方法、及び流動化媒体を用いなくても、分離対象物からなる粉体の層へ気体を吹き込むことによって形成した固気流動層において、鉛直方向に生じる密度偏析現象を利用して分離対象物を分離する乾式分離方法に関するものとすることができる。
【0026】
本発明の分離の原理について説明すると、以下のようになる。すなわち、粉体を流動化させ、液体系の比重選別と同様な粉体流動化媒体、言い換えれば固気流動層(以下では、単に流動層ともいう。)を利用して分離対象物を主としてその密度によって、分離するものであるか、粉体を用いなくても、気体を流動層へ導入することによって、分離対象物は、密度偏析を生じるため、当該密度偏析現象を利用して、分離対象物を分離しようとするものである。本発明においては、これに加えて、前記気体の導入を、絞り作用を有する孔を介して行うことも特徴の一つである。このように気体の導入に際して、絞り作用を有する孔を介して行うことで、流動層中の粉体や気体中の環境粉塵等による目詰まりを低減することが可能である。絞り作用とは、圧力差を作ることができる作用を意味することができる。絞り作用を有する孔についても、特に限定されない。すなわち、孔径、孔数(孔ピッチ)、及び孔向き等は、流動層の粉体の詰りを生じない孔サイズであれば、任意である。絞り作用を有する孔は、例えば、中空管を用いて気体を導入する場合に、当該中空管に設けれた孔(穴)とすることができ、また、空気室を介して、気体を導入する場合には、当該空気室に設けられた孔(穴)とすることができる。孔は、粉体が入り込むことを極力防止するという観点から、下向きに開口するものとすることができる。上向きに開口する場合には、キャップ、逆止弁等などによって、粉体が管へ入り込みにくくするようにしてもよい。また、本発明において、孔は、粉体の直径よりも大きい直径を有する孔とすることができる。すなわち、粉体は孔を通過可能である。
【0027】
なお、万一、管へ粉体等が入り込んでしまったとしても、従来のように気体分散板を交換するなどの大がかかりな作業は不要であり、後述するように、当該管を清掃するか、当該管にバルブ等の排出除去部を設けて、比較的容易に、粉体を排出することができる。
【0028】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、絞り作用を有する孔(オリフィスともいう。)の気体流速は絞り作用を有する孔へ粉体が入り込むのを防ぐ点で重要であり、このためには粉体粒子の終末沈降速度よりも十分に大きくなるように気体流速を決定すればよい。気体の種類にもよるが、気体流速は絞り作用を有する孔へ粉体が入り込むのを防ぐという観点から、前記孔を通過する気体の流速をUor、前記粉体の終末沈降速度をUtとした場合、Uor>Ut、好ましくは、Uor≧2Utであることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、気体導入部の圧力損失は気体を均一に分散させる点で重要であり、均一化を図るためには圧力損失を大きくすることが好ましいという観点から、前記流動層の最小流動化速度Umfにおける気体導入部の圧力損失をΔPiとした場合、ΔPiは、好ましくは0.1~10kPaの範囲、より好ましくは、0.2~10kPaの範囲、さらに好ましくは、2~10kPaの範囲であることを特徴とする。
【0030】
ΔPiが小さすぎると気体の均一分散が実現困難となる虞がある。その上、ΔPiが小さすぎてUor<Utとなってしまえば、粉体が前記孔へ続けざまに入り込み、管の閉塞に繋がる虞がある。かかる理由から、ΔPiを大きくする必要があるが、一方で過大にすると送風機等の気体供給装置の動力が大きくなり、エネルギー消費効率の観点で好ましくない。これらの点で、適切なΔPiを選択する必要があり、ΔPiを「0.1~10kPa」の範囲で選択することで、エネルギーの消費効率的に無駄の少ない、気体の均一分散が可能となる。
【0031】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、穏やかな流動層を形成して精度の良い分離を行うという観点から、前記流動化媒体又は分離対象物となる粉体の平均粒子径は、30~600μmであることを特徴とする。なお、平均粒子径は、JIS Z 8815 篩い分け試験方法通則に準拠する積算ふるい下曲線から、積算ふるい下百分率が50%となる粒子径として求めた50%粒子径D50(μm)とする。なお、平均粒子径範囲について、数10μmより小さな微粒子は付着が大きいために流動化が困難であり、一方、粗大粒子は流動化に必要な空塔速度が大きくなり流動化が激しすぎるため、30~600μmの範囲とすることができる。
【0032】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記流動層は、粉体を流動化させた固気流動層であることを特徴とする。本発明においては、上述のように固気流動層を利用するものや、密度偏析を利用して、分離対象物自体を流動化させる場合にも適用可能であるが、粉体を流動化させ、液体系の比重選別と同様な粉体流動化媒体、言い換えれば固気流動層を利用して分離対象物を主としてその密度によって、分離するものである場合をこの態様では想定している。
【0033】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、分離対象物が、自動車シュレダーダスト、家電シュレッダーダスト、これら以外の産業廃棄物、一般廃棄物、鉱石類、石炭、又はレアアースであることを特徴とする。
【0034】
また、本発明においては、通気速度(空塔速度)20 (cm3/s)/cm2以下の条件下で、送風を行うことができる。これは、通気速度を制御することにより、浮沈の安定化を図る事ができるからである。分離対象物にもより、特に限定されないが、通気速度を20(cm3/s)/cm2以下、好ましくは、15(cm3/s)/cm2以下、さらに好ましくは、10(cm3/s)/cm2以下とすることができる。このような範囲とすると、分離対象となる粉体を流動化させて分離する場合に、比較的粗大な粒子にも対応させることができる。例えば、平均粒子径600μmで粒子密度が1.5g/cm3の粉体の最小流動化速度Umfは約15cm/sと想定されることから、U0/Umfの余裕を考慮し、20cm/sとすることができる。
【0035】
本発明において、空塔速度をu0として粉体の最小流動化空塔速度をu mfとした場合、u0/umf が分離を制御する1つの要因となる。なぜなら、空塔速度を調節することにより、例えば、2つの非常に近接した密度差を有する成分を容易に除去でき、逆に、密度差の大きい成分の分離には、空塔速度を上げることにより、短時間で分離することができるからである。
【0036】
なお、本発明においては、振動させながら、分離を行うことが可能である。従来においては、振動させた場合には、粉体が目詰まりを起こす問題から、より迅速、かつ精度が高い振動を伴う分離対象物の分離が困難であったが、本発明によれば、目詰まりを心配することなく、より迅速、かつ精度が高い振動を伴う分離対象物の分離も可能である。
【0037】
次に、本発明の乾式分離装置について説明する。すなわち、本発明の乾式分離装置は、流動層を有する本体と、分離対象物を投入する分離対象物投入部と、前記分離対象物が前記流動層内の粉体の流動化によって分離し浮揚した浮揚物を回収する第一の回収部と、前記分離対象物が前記流動化によって分離し沈降した沈降物を回収する第二の回収部と、絞り作用を有する孔を備えた気体導入部と、を備えることを特徴とする。流動層については、上述の本発明の乾式分離方法における説明を参照することができる。分離対象物投入手段は、分離対象物を投入することができれば、特に限定されない。場合によっては、分離対象物を攪拌するために、攪拌機などの攪拌手段を介して、投入してもよい。また、浮揚物を回収する第一の回収手段としても、浮揚物を回収できる限り、特に限定されない。また、沈降物を回収する第二の回収手段についても、沈降物を回収することができる限り、特に限定されない。絞り作用を有する孔を備えた気体導入部については、上述した本発明の乾式分離方法における絞り作用を有する孔についての説明と同様である。
【0038】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、さらに、前記本体には、前記粉体が通過可能な多孔板を備えることを特徴とする。 本発明における多孔板は、従来の上記気体分散板(多孔質板や多孔性板)のように気体を均一に分散させるためのものとは異なる。直接的な気体分散の役割というよりは、本発明の多孔板の役割は、粉体を通過させ、気体分散器ケーシングの内部を粉体で満たし、かつ当該内部の粉体が外部と入れ替わりにくい状態をつくることにある。
【0039】
多孔板は、パンチング板と金網との組み合わせとすることができる。金網の孔のサイズ(目開きまたは通過粒子径を意味する)をDop、流動層の粉体の平均粒子径をDpとした場合に、金網の孔のサイズはDop=1.1Dp~5.0Dpであり、この範囲で可能な限り小さくすることができる。パンチング板は、十分な強度を有し、粉体を通過させることができれば、孔サイズは任意とすることができる。
【0040】
また、多孔板は、パンチング板あるいは金網のどちらか一方のみで使用することもできる。パンチング板あるいは金網の孔のサイズ(打抜き、または目開き、または通過粒子径を意味する)をDop、流動層の粉体の平均粒子径をDpとした場合に、パンチング板あるいは金網の孔のサイズはDop=1.1Dp~5.0Dpであり、この範囲で可能な限り小さくすることができる。
【0041】
なお、絞り作用を有する孔のサイズを、Dorとした場合には、Dor=1.1Dp~20Dpとすることができる。また、 多孔板は、1組・1段でもよいし、気体の一層の均一分散を図るために2組以上を使用して複数段設置することもできる。
【0042】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記絞り作用を有する孔は、逆止弁を有することを特徴とする。上述のように、孔は、粉体が入り込むことを極力防止するという観点から、下向きに開口するものとすることができるが、上向きに開口する場合には、キャップ、逆止弁等などによって、粉体が管へ入り込みにくくするようにしてもよい。
【0043】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記気体導入部は、前記粉体を除去する除去部を有することを特徴とする。前記 気体導入部は、絞り作用を有する孔からわずかに入り込む流動層の粉体の除去可能とする除去部を有することができる。上述のように、除去部はバルブ等とすることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0045】
実施例1
図1は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における概略図を示す。
図1において、1は気体(送風)、2はヘッダー管、3は気体導入管、4は絞り作用を有する孔(ノズル、オリフィス部)、5は気体導入部、6は気体分散器ケーシング、7は分離部ケーシング、8は多孔板、9は気体分散器を、それぞれ示す。
【0046】
また、
図2は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における概略図を示す。
図2(a)は断面図を示し、
図2(b)は気体導入部を上から見た図である。
図2において、1は気体(送風)、2はヘッダー管、3は気体導入管、4は絞り作用を有する孔(ノズル、オリフィス部)、6は気体分散器ケーシング、8は多孔板、10は粉体(流動層)、11はバルブ、12は分離ケーシング(分離域)、13は気体分散器(非分離域)を、それぞれ示す。
【0047】
本発明の一例における乾式分離装置においては、
図1、又は
図2に示すように、流動層を有する本体に相当する分離部ケーシングと、気体導入部に相当する気体分散器で構成されることができる。なお、この例では、説明のために多孔板を用いているが、分離対象物によっては、なくてもよい。本発明においては、絞り作用を有する孔を介して、気体を直接的に、流動層へ導入することができるためである。したがって、従来必須であった、空気室等も特に必要ではない。分離部ケーシングの内部(多孔板よりも上方の空間)で流動層が形成され、この分離部ケーシングの内部の流動層が分離対象物の分離を行う部分である。後述のように気体分散器の内部(多孔板よりも下方の空間)にも粉体が満たされるが、ここは本来分離部ではない。但し、精度の関係で、分離部に用いてもよい。
【0048】
この例においては、当該気体分散器は、気体導入管やノズルなどからなるオリフィスを有した気体導入部、その上方に設けられた多孔板、及び気体分散器ケーシングで構成することができる(
図1及び
図2)。 多孔板は、例えばパンチング板と金網の組合せなどである。多孔板の孔のサイズは、分離部ケーシングに装入された粉体が詰まらずに通過できる大きさである。この条件において、さらに、一度通過した粉体が逆方向へ再度通過することが起こりにくいように、可能な限り孔のサイズを小さくすることが望ましい。従って、気体導入部から気体を導入し、分離部ケーシングに粉体を装入すると、粉体は多孔板を通過し、気体分散器ケーシングの内部が粉体で満たされ、かつ当該内部の粉体が外部と入れ替わりにくい状態になる。
【0049】
この状態になることによって、気体分散器ケーシングの内部の粉体が分散器の一部として機能し、当該気体分散器は性能が発揮される。即ち、分離部ケーシングの内部において気体を小さな気泡にして平面方向に均一分散させることが可能となり、分離に適した穏やかな流動層を形成することができる。
【0050】
なお、通常の分離に適した穏やかな流動層を形成した状態では、流動層の粉体は気体導入部の内部へ入りにくい(オリフィス部の流速が粉体粒子の終末沈降速度よりも十分に大きいため)が、気体供給装置の起動・停止時等において、もしオリフィスから気体導入部へ粉体が入り込んだ場合には、バルブ等の除去手段によりその粉体を除去できる。このため、管の閉塞、目詰まり等は生じない。
【0051】
また、
図3は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における使用可能な多孔板の例を示す図である。多孔板は、従来では必須であったが、本発明においては、なくてもよい。
図3において、20はパンチング板、21は金網をそれぞれ示す。また、
図4は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における使用可能な多孔板の例を示す図である。
図4において、22は一段目の多孔板、23は二段目の多孔板をそれぞれ示す。
【0052】
本発明の一例において使用可能な多孔板は、従来の上記気体分散板(多孔質板や多孔性板)のように気体を均一に分散させるためのものとは異なる。直接的な気体分散の役割というよりは、本発明の多孔板の役割は、粉体を通過させ、気体分散器ケーシングの内部を粉体で満たし、かつ当該内部の粉体が外部と入れ替わりにくい状態をつくることにある。
【0053】
この例において、例えば、多孔板は、パンチング板と金網との組み合わせである。金網の孔のサイズ(目開きまたは通過粒子径を意味する)をDop、流動層の粉体の平均粒子径をDpとした場合に、金網の孔のサイズはDop=1.1Dp~5.0Dpであり、この範囲で可能な限り小さくする。パンチング板は、十分な強度を有し、粉体を通過させることができれば、孔サイズは任意である。
【0054】
また、多孔板は、パンチング板あるいは金網のどちらか一方のみで使用することもできる。パンチング板あるいは金網の孔のサイズ(打抜き、または目開き、または通過粒子径を意味する)をD
op、流動層の粉体の平均粒子径をD
pとした場合に、パンチング板あるいは金網の孔のサイズはD
op=1.1D
p~5.0D
pであり、この範囲で可能な限り小さくする。なお、多孔板は、1組・1段でもよいし、気体の一層の均一分散を図るために2組以上を使用して複数段設置することもできる(
図3、
図4)。
【0055】
図5は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における断面図を示す。
図5において、30は、キャップ付きノズル(オリフィス部)を示す。
【0056】
この例及び上述の例では、気体導入部5としてパイプ型(ノズル型)(
図1)やキャップ型(
図5)等を採用できるが、型式は特に限定されない。気体導入部の仕様を決定する上で重要なのは、気体導入部のオリフィスの気体流速、及び気体導入部の圧力損失である。オリフィスの気体流速はオリフィスへ粉体が入り込むのを防ぐ点で重要であり、このためには粉体粒子の終末沈降速度よりも十分に大きくなるように気体流速を決定すればよい。気体の種類にもよるが、例えば気体が空気(20℃)であれば、固気流動層の最小流動化速度umfにおけるオリフィスの気体流速uor、粉体粒子の終末沈降速度をutとした場合に、uor≧utとするのが好ましく、uor≧2utとするのがより好ましい。
【0057】
気体導入部の圧力損失は気体を均一に分散させる点で重要であり、均一化を図るためには圧力損失を大きくするのが好ましい。気体の種類、粉体の性状(粒子径や密度)、粉体層の圧力損失等にもよるが、例えば、気体が空気であれば、固気流動層の最小流動化速度umfにおける気体導入部の圧力損失をΔPiとした場合に、uor≧2utを満たす条件においてΔPi=0.2~10kPaとなるようにΔPiを任意に決定すればよい。気体導入部のオリフィス部の穴径、穴数(または穴ピッチ)、及び穴向きは、上記オリフィスの気体流速と上記圧力損失の条件を満たし、かつ流動層の粉体の詰りを生じない穴サイズであれば、任意である。
【0058】
実施例2
次に、本発明の乾式分離方法及び乾式分離装置による圧力損失、分離精度等の確認を行った。具体的には、固気流動層の鉛直方向に生じる粉体の密度偏析現象を利用して粉体を分離する乾式分離方法において、流動層へ鉛直方向の振動を付加することができる振動流動層分離装置を用いて試験を実施した。試験の目的は以下の通りである。試験A: 従来の気体分散器(気体分散板)では、分散器への粉体の目詰まりにより、分散器の圧力損失が増加することを確認する。試験B: 本発明の気体分散器では圧力損失が増加しない、即ち、本発明の気体分散器は目詰まりを抑制する効果を持つことを示す。試験C: 本発明の気体分散器においても、従来の気体分散器(気体分散板)と同等の精度で分離可能であることを示す。
【0059】
<試験A:従来の気体分散器(気体分散板)の圧力損失の増加の確認>
1)狙い:密度偏析現象を利用した乾式石炭分離を想定する。微粉炭を流動化させると、時間経過に伴い気体分散板の圧力損失が増加することを示す。
2)粉体:微粉炭(粒径範囲:500-75μm、平均粒子径Dp=210μm)、最小流動化速度:Umf=0.72cm/s。
3)試験装置としては、
図6に示すものを用いた。図示しないが、本発明の効果を示すために、振動を加えた流動層分離装置(鉛直方向へ振動を付加するためのバイブレータ付き)を用いた。(カラム形状:円筒形、気体分散器:パンチング板と化学繊維で織られた布との組合せからなる多孔性板(気体分散板))
4)試験方法
1.気体分散板からの層高が200mmとなるように粉体をカラム内へ装入した。
2.空気室へ空気を送り込み、装置(カラムと空気室の部分)を鉛直方法に振動させて粉体を流動化させた。条件:空塔速度1.0cm/s、振動数12.2Hz、振幅±1.7mm
3.空気室の圧力を圧力計から読み取り、次式から気体分散板の圧力損失ΔPを求めた。
【0060】
ΔP=P-ΔPp
【0061】
ΔP:気体分散板の圧力損失(kPa)
P:空気室の圧力(kPa)
ΔPp:予め測定した粉体の圧力損失(kPa)
【0062】
4.連続して7時間流動化させ、気体分散板の圧力損失ΔPの経時変化を調べた。
【0063】
5)試験結果
空塔速度1.0cm/sにおける気体分散板の圧力損失ΔPの経時変化を
図7に示す。併せて、各時間におけるΔPをθ=0hr.における圧力損失ΔP
0で除した初期圧力損失比ΔP/ΔP
0を示す。θ=0hr.ではΔP=0.37kPaであったが、時間が経過するに連れて増加してθ=7hr.ではΔP=1.11kPaとなった。同様に、初期圧力損失比ΔP/ΔP
0は時間と共に増加してθ=7hr.においてΔP/ΔP
0=3.0となり、比較的短時間で圧力損失が著しく増加することが確認された。
【0064】
以上の試験とは別に、θ=0hr.と7hrにおいて、空塔速度とΔPの関係を調べた。粉体を装入せずに、かつ振動を加えずに、空気の送り込みのみ行った。空塔速度を変化させながら空気室の圧力Pを測定した。ΔPp=0kPaであるので、ΔP=Pとして気体分散板の圧力損失ΔPを求めた。結果を
図8に示す。この結果、空塔速度が大きいほど、7時間の流動化によるΔPの増加は顕著となった。空塔速度を6.2cm/sにまで大きくすると、θ=0hr.ではΔP=4.0kPaであったのに対し、θ=7hr.ではΔP=21.3kPaのかなり高い値にまで増加した。
【0065】
以上のように、従来の気体分散器では粉体の流動化によって目詰まりが生じることを示唆する結果となり、粉体の流動化によって気体分散板の圧力損失は比較的短時間で増加し、さらに空塔速度が大きいほど圧力損失の増加が顕著であることが確認された。
【0066】
<試験B:本発明の気体分散器では圧力損失が増加しないこと(目詰まり抑制効果)の確認>
1)狙い
本発明の気体分散器と従来の気体分散器(気体分散板)において分散器の圧力損失の経時変化を確認し、本発明の気体分散器は目詰まりを抑制する効果を持つことを示す。ここでは、流動化させる粉体としてマグネタイトと珪砂を混合した2成分混合粉体を使用した。
【0067】
2)粉体
珪砂(粒子密度2.64g/cm3、かさ密度1.37g/cm3、Dp=229μm)とマグネタイト(粒子密度4.65g/cm3かさ密度2.63g/cm3、Dp=162μm)を37.5:62.5(体積基準)の比率で混合した2成分混合粉体を使用した。混合粉体の粒子密度:3.90g/cm3、かさ密度:2.16g/cm3、粒径範囲:425-75μm、平均粒子径Dp=174μm、混合粉体の終末沈降速度: Ut=1.84×102cm/s (=1.84m/s)、混合粉体の最小流動化速度:Umf=3.3cm/s、とした。
【0068】
3)試験装置
本発明の一実施態様における気体分散器を備えた装置を用いた(
図9)。
図9は、本発明の分離対象物を分離する装置の一実施態様における概略図を示す。
図9(a)は断面図を示し、
図9(b)は気体導入部を上から見た図である。
図9において、40は気体(送風)、41はカラム、42は従来の気体分散器(気体分散板)、43は圧力計(マノメータ)、44は空気室、50は圧力計B(マノメータ)、51は圧力計A(マノメータ)、52は気体導入部を、それぞれ示す。図示しないが、振動を付与する流動層分離装置(鉛直方向へ振動を付加するためのバイブレータ付き)を用いた。カラム形状:円筒形、気体分散器として、多孔板:パンチング板と平織金網(目開き600μm,Dop=600/174×Dp=3.4Dp)の組合せ、気体導入部:円環となるように曲げた内径φ8mmの管であり、管下部に等間隔で絞り孔(φ2mm、Dor=2000/174×Dp=11.5Dp)を複数設けたものを用いた。また、混合粉体の最小流動化速度Umf=3.3cm/sにおいて測定した気体導入部の圧力損失はΔPi=1.3kPaであった。また、Umf=3.3cm/sにおける絞り孔を通過する気体の風速はUor=23.3m/sであり、混合粉体の終末沈降速度Ut=1.84m/sよりも十分に大きいものとした。
【0069】
圧力計として、圧力計A(気体導入部の圧力の測定に使用)、圧力計B(気体導入部と同じ高さにおける粉体圧の測定に使用)、を用いた。
【0070】
<従来の気体分散器(気体分散板)を備えた試験装置>
上述の試験Aと同じ装置を使用した。
【0071】
4)試験方法
<本発明の気体分散器における試験方法>
1.多孔板からの層高が200mmとなるように粉体をカラム内へ装入した。
2.気体導入部へ空気を送り込み、装置を鉛直方法に振動させて粉体を流動化させた。条件:空塔速度3.3cm/s(=混合粉体のUmf)、振動数19.4Hz、振幅±1.6mm。
3.圧力計Aで気体導入部の圧力P1、圧力計Bで粉体圧P2を読み取り、P1とP2の差を気体分散器の圧力損失と見なした。即ち、次式から気体分散器の圧力損失ΔPを求めた。
【0072】
ΔP=P1-P2
【0073】
ΔP:気体分散器の圧力損失(kPa)
P1:気体導入部の圧力(kPa)
P2:気体導入部の高さにおける粉体圧(kPa)
【0074】
4.連続して7時間流動化させ、気体分散器の圧力損失ΔPの経時変化を調べた。
【0075】
<従来の気体分散器(気体分散板)における試験方法>
以下の条件において、試験Aと同じ方法で実施した。条件:空塔速度3.3cm/s(=Umf)、振動数19.4Hz、振幅±1.6mm。
【0076】
5)試験結果
各時間θにおけるΔPをθ=0hr.における圧力損失ΔP
0で除した初期圧力損失比ΔP/ΔP
0を
図10に示す。従来の気体分散器(気体分散板)では、θ=7hr.でΔP/ΔP
0=2.2となり、時間が経過するに連れて圧力損失は著しく増加する結果となった。一方、本発明における気体分散器では、時間が経過してもΔP/ΔP
0≒1.0で概ね一定であり、圧力損失は増加しない結果となった。これより、本発明の気体分散器は目詰まりを抑制できることが確認された。
【0077】
<試験C:分離精度の確認>
1)狙い
本発明の気体分散器と従来の気体分散器(気体分散板)において、粉体の密度偏析現象を利用した粉体の分離試験を実施し、本発明の気体分散器においても従来の気体分散器(気体分散板)と同等の精度で分離可能であることを示す。
2)粉体
試験Bと同じく珪砂とマグネタイトの2成分混合粉体を使用。
【0078】
3)試験装置
<本発明の気体分散器を備えた試験装置>
試験Bと同じ装置を使用した(
図9)。
<従来の気体分散器(気体分散板)を備えた試験装置>
試験Aと同じ装置を使用した(
図6)。
【0079】
4)試験方法
<本発明の気体分散器における試験方法>
1.多孔板からの層高が200mmとなるように粉体をカラム内へ装入した。
2.粉体へ空気を送り込み、装置を鉛直方法に振動させて粉体を流動化させた。条件:空塔速度3.3cm/s(=混合粉体のUmf)、振動数19.4Hz、振幅±1.6mm。
3.30分経過後に、空気の送り込みと振動を停止した。
4.全ての粉体を所定の高さ毎に区分して回収し、層高さ毎の粉体のかさ密度を測定した。
【0080】
<従来の気体分散器(気体分散板)における試験方法>
1.気体分散板からの層高が200mmとなるように粉体をカラム内へ装入した。
2.以下、前記の本発明の気体分散器のおける試験手順2~4と同じ方法で実施。
【0081】
5)試験結果
30分間流動化させた後の層高さ毎の粉体のかさ密度を
図11に示す。なお、層高さは、層区分の中位高さを全層高さで除した規格化高さで表示した。例えば、従来の気体分散器における分離試験の場合、160-140mmの高さで区分して回収した層は、中位高さが(160+140)/2=150mmであり、全層高さが200mmであるので、規格化層高さは150mm/200mm=0.75となる。従来の気体分散器(気体分散板)での結果を見ると、分離前のかさ密度に対し、規格化層高さ約0.6より上層はかさ密度が低く、約0.6より下層はかさ密度が高くなっており、密度差に応じた分離が可能であることが分かる。中でも、規格化高さ0.8より上層のかさ密度は珪砂のかさ密度と概ね等しく、規格化高さ0.4より下層のかさ密度はマグネタイトのかさ密度と概ね等しくなっており、混合粉体を構成する2成分を分離可能な結果となった。
【0082】
次に、本発明における気体分散器での結果を見ると、従来の気体分散器(気体分散板)での結果と概ね一致し、珪砂とマグネタイトに分離可能であった。従って、本発明の気体分散器においても従来の気体分散器(気体分散板)と同等の良好な精度で分離可能であることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0083】
1 気体(送風)
2 ヘッダー管
3 気体導入管
4 絞り作用を有する孔(ノズル、オリフィス部)
5 気体導入部
6 気体分散器ケーシング
7 分離部ケーシング
8 多孔板
9 気体分散器
10 粉体(流動層)
11 バルブ
12 分離ケーシング(分離域)
13 気体分散器(非分離域)
14 選別槽(ジグ第二槽)
20 パンチング板
21 金網
22 一段目の多孔板
23 二段目の多孔板
30 キャップ付きノズル(オリフィス部)
40 気体(送風)
41 カラム
42 従来の気体分散器(気体分散板)
43 圧力計(マノメータ)
44 空気室
50 圧力計B(マノメータ)
51 圧力計A(マノメータ)
52 気体導入部