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特許7402486噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法
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  • 特許-噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法 図1
  • 特許-噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法 図2
  • 特許-噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法 図3
  • 特許-噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/06 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
F24F6/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019165810
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021042909
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】319010620
【氏名又は名称】株式会社エイワン・ディー
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】川村 義男
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-158142(JP,A)
【文献】特開平10-057456(JP,A)
【文献】登録実用新案第3199107(JP,U)
【文献】登録実用新案第3172527(JP,U)
【文献】特開2007-105085(JP,A)
【文献】特開平11-028326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するためのタンクと、
該タンク内において水平方向に延出している軸芯周りに回転自在に設けられている下ローラと、
該下ローラよりも上方において、該下ローラと平行な軸芯周りに回転自在に設けられている少なくとも一つの上ローラと、
前記下ローラと前記上ローラとに巻き掛けられており、網目の大きさが3mm~7.5mmの網状の無端ベルトと、
前記下ローラを上下方向へ移動可能に軸支していると共に、前記上ローラを軸支している一対の縦枠を有する枠体と、
少なくとも一つの前記上ローラを回転させて前記無端ベルトを周回させるローラ用モータと、
前記無端ベルトに対して風を通して外部空間へ放出させるためのファンと、
該ファンを回転させるファン用モータと
を具備していることを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の噴霧装置の使用方法であって、
焼成した貝殻の粉末が過剰量添加されている液体を、少なくとも前記下ローラの一部が浸漬される高さまで前記タンクに収容させた状態で、前記タンクに収容されている前記液体を撹拌させながら前記無端ベルトに前記液体が付着するように前記ローラ用モータにより前記上ローラを介して前記無端ベルトを周回させると共に、前記ファン用モータにより前記ファンを回転させることを特徴とする噴霧装置の使用方法。
【請求項3】
請求項1に記載の噴霧装置を使用した空調方法であって、
焼成した貝殻の粉末が過剰量添加されている液体を、少なくとも前記下ローラの一部が浸漬される高さまで前記タンクに収容し、該タンクに収容されている前記液体を、前記ローラ用モータにより前記上ローラを介して周回している前記無端ベルトにより撹拌させながら該無端ベルトに付着させると共に、前記ファン用モータによる前記ファンの回転により送られる風によって前記無端ベルトに付着している前記液体を微細な液滴にして風と一緒に部屋内に放出させることを特徴とする噴霧装置を使用した空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な液滴を噴霧するための噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願発明者は、焼成した貝殻の粉末が添加されている液体が、除菌作用や細菌の増殖を抑制する作用を有することに着目し、当該液体を噴霧する手持ちタイプの液体噴霧器を提案している(特許文献1)。特許文献1の技術によれば、除菌や細菌の増殖を抑制したい部位へ手軽に噴霧することができ、噴霧した部位の環境を清浄にすることが可能となる。この液体噴霧器の使用者等からは、当該液体を使用して、手軽に部屋内全体の環境を清浄にしたいという要請があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3172527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、有用な成分を有する液体を部屋内に噴霧するための噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係る噴霧装置は、
「液体を収容するためのタンクと、
該タンク内において水平方向に延出している軸芯周りに回転自在に設けられている下ローラと、
該下ローラよりも上方において、該下ローラと平行な軸芯周りに回転自在に設けられている少なくとも一つの上ローラと、
前記下ローラと前記上ローラとに巻き掛けられており、網目の大きさが3mm~7.5mmの網状の無端ベルトと、
前記下ローラを上下方向へ移動可能に軸支していると共に、前記上ローラを軸支している一対の縦枠を有する枠体と、
少なくとも一つの前記上ローラを回転させて前記無端ベルトを周回させるローラ用モータと、
前記無端ベルトに対して風を通して外部空間へ放出させるためのファンと、
該ファンを回転させるファン用モータと
を具備している」ものである。
【0006】
「液体」としては、焼成した貝殻の粉末が溶媒に添加されている溶液、除菌作用を有する成分を溶媒に溶解させた溶液、抗菌作用を有する成分を溶媒に溶解させた溶液、消臭作用を有する成分を溶媒に溶解させた溶液、芳香作用を有する成分を溶媒に溶解させた溶液、を例示することができる。また、「液体」は、固体分を有する分散液または懸濁液であっても良いし、固体分を有しない溶液であっても良い。
【0007】
「タンク」としては、上端が下ローラと上ローラとの間の高さまでのもの、上端が上ローラよりも高いもの、を例示することができる。
【0008】
本構成の噴霧装置は、以下の噴霧装置の使用方法により使用することができる。すなわち、
「焼成した貝殻の粉末が過剰量添加されている液体を、少なくとも前記下ローラの一部が浸漬される高さまで前記タンクに収容させた状態で、前記タンクに収容されている前記液体を撹拌させながら前記無端ベルトに前記液体が付着するように前記ローラ用モータにより前記上ローラを介して前記無端ベルトを周回させると共に、前記ファン用モータにより前記ファンを回転させる」使用方法である。
【0009】
また、本構成の噴霧装置は、以下の噴霧装置を使用した空調方法に使用することができる。すなわち、
「焼成した貝殻の粉末が過剰量添加されている液体を、少なくとも前記下ローラの一部が浸漬される高さまで前記タンクに収容し、該タンクに収容されている前記液体を、前記ローラ用モータにより前記上ローラを介して周回している前記無端ベルトにより撹拌させながら該無端ベルトに付着させると共に、前記ファン用モータによる前記ファンの回転により送られる風によって前記無端ベルトに付着している前記液体を微細な液滴にして風と一緒に部屋内に放出させる」空調方法である。
【0010】
「貝殻」に使用する貝の種類は特に限定されず、ホタテ貝、カキ、ホッキ貝、ハマグリ、アサリ等を使用可能である。わが国では、産業廃棄物として廃棄対象となる貝殻は、ホタテ貝が最も多く全体の6割以上を占めると言われているため、資源の有効利用の点で、ホタテ貝の貝殻を用いることが望ましい。
【0011】
貝殻の粉末の結晶相をX線回折で同定すると、未焼成の貝殻の主成分は炭酸カルシウムであるが、700℃以上の加熱により酸化カルシウムの回折ピークが認められるようになり、1000℃以上の加熱でほぼ酸化カルシウムの単一相となる。従って、「焼成した貝殻の粉末」の焼成温度は、1000℃以上とすることが望ましい。
【0012】
高温で焼成された貝殻の粉末の主成分である酸化カルシウムは、エタノールと水の混合液や水のような溶媒に溶解させることで、水和して水酸化カルシウムとなり当該液体のpHが上昇する。このpHの上昇に伴い除菌作用や細菌の増殖を抑制する作用(以下では、「抗菌作用」と称する)が増大する。
【0013】
本構成の噴霧装置を使用する際は、少なくとも下ローラの一部が浸漬される高さまでタンクに液体を収容させ、タンク内に設けられている下ローラを水没させる。この下ローラには、上ローラとの間で無端ベルトが巻き掛けられているため、無端ベルトの一部(下部)がタンクに収容されている液体に浸漬される。この状態で、ローラ用モータにより上ローラを回転させて無端ベルトを周回させると、無端ベルトにおける下ローラへ接近する側(往路側)ではタンク内の液体内へ浸入し、下ローラから遠ざかる側(復路側)ではタンク内の液体内から上方へ移動することとなり、液体内を通るように無端ベルトが周回する。これにより、無端ベルトにおける液面よりも上方の部位では、網目における凹凸に液体が付着したり、網目を塞ぐような膜状に液体が付着したりすることとなる。
【0014】
そして、無端ベルトを周回させている状態で、ファン用モータによりファンを回転させると、ファンの回転により発生した風が網状の無端ベルトを通って外部空間へ放出される。この際に、網目の凹凸に付着している液体が飛ばされたり、網目を塞いでいる液膜が弾けたりすることで、無端ベルトに付着している液体が微細な液滴となり、当該微細な液滴を風に乗せて放出させることができる。これにより、タンクに収容されている液体を、微細な液滴にして外部空間(装置外)へ噴霧することができる。従って、有用な成分を有する液体をタンクに収容して使用することにより、当該液体を噴霧することができる。
【0015】
そして、有用な成分を有する液体として、焼成した貝殻の粉末(以下では、「焼成貝殻粉末」とも称する)が過剰量添加されている液体を、本構成の噴霧装置のタンクに収容して使用することで、除菌作用や抗菌作用を有する液体を噴霧することができる。また、本構成の噴霧装置のタンクに焼成貝殻粉末が過剰量添加されている液体を収容して部屋内で使用することによって、除菌作用や抗菌作用を有する液体の噴霧により手軽に部屋内全体の環境を清浄にすることがでる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の効果として、有用な成分を有する液体を部屋内に噴霧するための噴霧装置、噴霧装置の使用方法、及び噴霧装置を使用した空調方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)本発明の第一実施形態の噴霧装置の内部を概略で示す説明図であり、(b)(a)の噴霧装置の正面図であり、(c)(a)の噴霧装置の背面図である。
図2図1の噴霧装置におけるベルト機構を示す正面図である。
図3】本発明の第二実施形態の噴霧装置の内部を概略で示す説明図である。
図4】本発明の第三実施形態の噴霧装置を使用して建物全体を空調する空調システムを概略で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第一実施形態である噴霧装置1について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。図1(a)では、噴霧装置1の内部を側面から示している。噴霧装置1は、上方に開放されており液体Sを収容するためのタンク10と、タンク10内に下部が挿入されているベルト機構20と、タンク10の上方に設けられているファン11と、ファン11を回転させるファン用モータ12と、タンク10、ベルト機構20、ファン11、及びファン用モータ12を内部に収容している箱状のケース13と、ケース13の上部に設けられている操作部14と、ケース13の底壁の下面に取付けられている四つのキャスター15と、を備えている。
【0019】
タンク10は、液体Sを収容した時に外部から壁面を通して収容されている液体Sの量が判るように、透光性を有する素材により形成されている。タンク10は、ケース13内の下端に取付けられている。
【0020】
ベルト機構20は、図2に示すように、水平方向に延出している軸芯周りに回転自在に設けられている下ローラ21と、下ローラ21よりも上方において下ローラ21と平行な軸芯周りに回転自在に設けられている上ローラ22と、下ローラ21と上ローラ22とに巻き掛けられている網状の無端ベルト23と、上ローラ22を回転させて無端ベルト23を周回させるローラ用モータ24と、を有している。
【0021】
また、ベルト機構20は、ローラ用モータ24の回転軸に取付けられている駆動ギア25と、駆動ギア25と噛合しており上ローラ22と一体回転する従動ギア26と、下ローラ21、上ローラ22、及びローラ用モータ24を取付けている枠体27と、を備えている。
【0022】
下ローラ21は、無端ベルト23が巻き掛けられる円柱状のローラ本体21aと、ローラ本体21aの両端に設けられているフランジ部21bと、両端のフランジ部21bよりも外方へ延びている軸部21cと、を有している。下ローラ21のフランジ部21bは、ローラ本体21aに巻き掛けられている無端ベルト23の軸芯方向への移動を阻止している。
【0023】
上ローラ22は、無端ベルト23が巻き掛けられる円柱状のローラ本体22aと、ローラ本体22aの両端に設けられているフランジ部22bと、両端のフランジ部22bよりも外方へ延びている軸部22cと、を有している。上ローラ22のフランジ部22bは、ローラ本体21aに巻き掛けられている無端ベルト23の軸芯方向への移動を阻止している。上ローラ22の一方の軸部22cの先端には、従動ギア26が取付けられている。
【0024】
また、上ローラ22は、ローラ本体22aの中央に、無端ベルト23との摩擦を増大させるための摩擦増大部22dを有している。この摩擦増大部22dにより、軸芯方向への無端ベルト23の移動を更に阻止している。
【0025】
無端ベルト23は、網目の大きさを3mm~7.5mmの範囲内とすることが望ましい。その理由は、網目が3mmよりも小さいと、無端ベルト23を通る風量が少なくなることで充分な風量を得られなくなるおそれがあるためである。一方、網目が7.5mmよりも大きいと、無端ベルト23の網目の交差部など凹凸部分に付着する液体Sの量が少なくなると共に、網目を閉鎖する液膜が形成され難くなることで、必要な量の微細な液滴を噴霧することができなくなるおそれがあるためである。
【0026】
従動ギア26は、傘歯車であり、上ローラ22における一方の軸部22cの先端に取付けられている。駆動ギア25は、傘歯車である。従って、上ローラ22の軸芯とローラ用モータ24の回転軸の軸芯とが直交している。
【0027】
枠体27は、左右に離隔しており上下に長い一対の縦枠27aと、一対の縦枠27a同士を繋いでいる一対の横枠27bと、を有している。一対の横枠27bは、一対の縦枠27aにおいて、上端付近の部位と、下端よりも上方の部位と、を夫々繋いでいる。枠体27は、一対の縦枠27aにおける下側の横枠27bよりも下方の部位で、下ローラ21の両端の軸部21cを上下方向へ所定の範囲内で移動可能に軸支している。これにより、下ローラ21を軸支する上下方向の位置を変更することで、下ローラ21と上ローラ22とに巻き掛けられている無端ベルト23のテンションを調節することができる。
【0028】
また、枠体27は、一対の縦枠27aにおける上側の横枠27bよりも下方の部位で、上ローラ22の両端の軸部22cを軸支している。上ローラ22の一方の軸部22cは、縦枠27aよりも外方へ長く延出しており、その先端に従動ギア26が取付けられている。ローラ用モータ24は、従動ギア26に近い縦枠27aの上端付近に、回転軸を下方へ突出させた状態で取付けられている。
【0029】
ベルト機構20は、噴霧装置1に組立てた時に、下ローラ21がタンク10内の底部付近に位置すると共に、上ローラ22がファン11よりも上方に位置するように形成されている。このベルト機構20は、下ローラ21及び上ローラ22の軸芯方向を正面視において左右方向へ向けた状態で、ケース13内における後端付近に取付けられている。従って、下ローラ21と上ローラ22とに巻き掛けられている無端ベルト23は、その面を前後方向(図2において紙面に垂直な方向)へ向けている。
【0030】
ファン11及びファン用モータ12は、ケース13内におけるベルト機構20の前方(図1(a)では左方)において、回転軸を前後方向へ向けて取付けられている。従って、ファン用モータ12によりファン11を回転させることで、前後方向へ送風することができる。
【0031】
ケース13は、縦長の直方体状に形成されている。ケース13内の下端には、タンク10が後方へスライド可能に取付けられており、タンク10をケース13の後壁よりも後方へ引き出すことができる。ケース13は、前壁におけるタンク10よりも上方の部位において貫通している噴出口13aと、後壁における噴出口13aとは反対側の部位において貫通している吸気口13bと、を有している。
【0032】
また、ケース13は、図示は省略するが、噴出口13aから液体Sを噴霧する方向を変えるためのルーバーが設けられている。
【0033】
操作部14は、電源、風量、タイマー、スイング、運転モード、等のスイッチが設けられている。キャスター15は、ストッパ機能のある自在キャスターである。
【0034】
なお、噴霧装置1に、タンク10に収容されている液体Sの量を検知するセンサを設け、所定量よりも液量が低下すると報知させるようにしても良い。
【0035】
本実施形態の噴霧装置1は、ベルト機構20における下ローラ21のローラ本体21a及び上ローラ22のローラ本体22aがゴムにより形成されていると共に、無端ベルト23が合成樹脂又はゴムにより形成されている。また、ベルト機構20におけるローラ用モータ24を除いた他の部材が合成樹脂により形成されている。これにより、ベルト機構20を錆び難いものとしている。
【0036】
次に、本実施形態の噴霧装置1の使用方法、及び噴霧装置1を使用した空調方法について説明する。まず、噴霧装置1のタンク10を、ケース13から後方へ引き出し、タンク10内に液体Sを収容させた後に、タンク10を前方へスライドさせてケース13内にセットする。このタンク10は、上端が上ローラ22やファン11よりも低いため、液体Sを満杯にしても上ローラ22やファン11が浸漬することはない。液体Sは、溶媒に焼成貝殻粉末Pが溶解しているものであるが、溶媒としては、エタノールと水の混合液または水を好適に使用することができる。
【0037】
焼成貝殻粉末Pとして、本実施形態では、ホタテ貝の貝殻を1100℃以上の温度で焼成し粉砕した粉末を使用している。この粉末の粒子径(直径)は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3300)で測定した結果、体積基準メディアン径として約5~10μmであった。そして、貝殻の主成分である炭酸カルシウムは、1100℃以上の温度で焼成することにより酸化カルシウムとなっているが、酸化カルシウムは水和により水酸化カルシウムとなる。ちなみに、水酸化カルシウムの水に対する溶解度は、20℃で約0.16である。
【0038】
本実施形態に使用する液体Sは、タンク10内に過剰量(タンク10内の溶媒を飽和させる以上の量)の焼成貝殻粉末Pが存在する。そのため、液体Sの濃度は飽和濃度となっており、pH12以上の高アルカリ性を示す。この液体Sは、カンピロバクター、大腸菌(O157、O7、等)、サルモネラ、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、等の細菌に対して除菌作用や抗菌作用を有している。また、液体Sは、アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、等の悪臭成分の濃度を低下させる作用(消臭作用)を有している。
【0039】
タンク10に液体Sを収容させてケース13内にセットした状態では、タンク10内に設けられているベルト機構20の下ローラ21が液体S内に水没している。この下ローラ21には、上ローラ22との間で無端ベルト23が巻き掛けられているため、無端ベルト23の下部がタンク10に収容されている液体Sに浸漬される。
【0040】
この状態で、操作部14を操作して、運転を開始させると、ローラ用モータ24により上ローラ22が回転して無端ベルト23が周回すると共に、ファン用モータ12によりファン11が回転して送風が開始される。無端ベルト23の周回が開始されると、無端ベルト23における下ローラ21へ接近する側(往路側)ではタンク10内の液体S内へ浸入し、下ローラ21から遠ざかる側(復路側)ではタンク10内の液体S内から上方へ移動することとなる。これにより、液体S内を通るように無端ベルト23が周回し、無端ベルト23における液面よりも上方の部位では、網目における凹凸に液体Sが付着したり、網目を塞ぐような膜状に液体Sが付着したりすることとなる。
【0041】
本実施形態では、無端ベルト23を、下ローラ21へ接近する往路側が、下ローラ21及び上ローラ22の前方に位置する側となるように周回させている。つまり、図1(a)の紙面において、無端ベルト23を反時計回りの方向へ周回させている。
【0042】
一方、ファン用モータ12によりファン11を回転させると、ファン11の後方の空気を吸い込むようにして前方へ送風される。これにより、ケース13内におけるファン11の後方が負圧となるため、ケース13の後壁に設けられている吸気口13bを通して外気がケース13内に吸い込まれることとなり、吸気口13bから無端ベルト23を通って噴出口13aへ向かう風の流れが生じる。この風が無端ベルト23の網目を通る際に、網目の凹凸に付着している液体Sが飛ばされたり、網目を塞いでいる液膜が弾けたりすることで、無端ベルト23に付着している液体Sが微細な液滴となり、当該微細な液滴が風に乗って前方へ運ばれ、ケース13前面の噴出口13aから放出されることとなる。
【0043】
これにより、タンク10に収容されている除菌作用や抗菌作用を有する液体Sを、微細な液滴にして装置の外部空間へ噴霧することができる。また、本実施形態の噴霧装置1を部屋R内で使用することによって、除菌作用や抗菌作用を有する液体Sの噴霧により手軽に部屋R内全体の環境を清浄にすることがでる。
【0044】
また、タンク10内の液体S内に一部が浸漬されている無端ベルト23を周回させていることから、無端ベルト23の周回により液体Sが過剰量の焼成貝殻粉末Pと一緒に撹拌されているため、液体Sの飽和濃度を維持し易い。
【0045】
続いて、本発明の第二実施形態の噴霧装置2について、図3を参照して説明する。噴霧装置2は、上方に開放されており液体Sを収容するためのタンク30と、タンク30内において水平方向に延出している軸芯周りに回転自在に設けられている下ローラ31と、下ローラ31よりも上方において下ローラ31と平行な軸芯周りに回転自在に設けられている二つの上ローラ32と、下ローラ31と二つの上ローラ32とに巻き掛けられている網状で無端環の無端ベルト33と、一つの上ローラ32を回転させて無端ベルト33を周回させるローラ用モータ34と、を備えている。
【0046】
また、噴霧装置2は、無端ベルト33に対して風を通して外部へ放出させるためのファン35と、ファン35を回転させるファン用モータ36と、ファン35及びファン用モータ36を収容しておりタンク30を上方から閉鎖しているケース37と、を備えている。更に、噴霧装置2は、図示は省略するが、噴霧装置2を動作させるための操作部を備えている。
【0047】
噴霧装置2のタンク30は、図示は省略するが、側壁における上端に近い部位において貫通している吸気口を有している。この噴霧装置2は、タンク30内に、下ローラ31、上ローラ32、無端ベルト33、及びローラ用モータ34を、設けている。なお、タンク30の下面にキャスターを取付けても良い。
【0048】
下ローラ31は、タンク30内の下端付近の中央に設けられている。二つの上ローラ32は、タンク30内における吸気口よりも高い位置で、水平方向へ離隔して同じ高さに設けられている。図3に示すように、下ローラ31と二つの上ローラ32は、逆三角形の各頂点に位置するように設けられているため、無端ベルト33が逆三角形の辺縁に沿うように巻き掛けられている。
【0049】
ファン35は、無端ベルト33における二つの上ローラ32の間の部位の上方に設けられており、ファン用モータ36によって上方へ送風するように回転させられる。
【0050】
ケース37は、図示は省略するが、タンク30の上端の開口を閉鎖している底壁が、通風性を有するように形成されていると共に、上壁に噴出口が形成されている。ケース37の底壁と上壁との間に、ファン35及びファン用モータ36が取付けられている。
【0051】
次に、本実施形態の噴霧装置2の使用方法、及び噴霧装置2を使用した空調方法について説明する。噴霧装置2を使用する場合は、まず、タンク30内に、下ローラ31とタンク30の側壁に設けられている吸気口との間の高さまで、焼成貝殻粉末Pを添加した液体Sを収容させる。
【0052】
そして、ローラ用モータ34により上ローラ32を回転させて無端ベルト33を周回させると共に、ファン用モータ36によりファン35を回転させる。無端ベルト33は、下部が液体S内に浸漬されているため、周回することで液体Sの液面よりも上方の部位に、網目における凹凸に液体Sが付着したり、網目を塞ぐような膜状に液体Sが付着したりする。
【0053】
ファン35を回転させて上方への送風を開始すると、ファン35と液面との間の部位が負圧となるため、タンク30の側壁に設けられている吸気口を通して、外気が吸い込まれる。吸気口から吸い込まれた空気は、無端ベルト33における下ローラ31と上ローラ32との間の部位を通って中央へ向かった後に、上昇して無端ベルト33における二つの上ローラ32の間の部位を通り、ケース37内のファン35を経て上方の噴出口から装置の外部空間へ放出される。そして、上記のような空気の流れ(風)が無端ベルト33を通ることで、無端ベルト33に付着している液体Sが微細な液滴となり、当該微細な液滴が風に乗ってケース37上面の噴出口から放出されることとなる。
【0054】
このように、本実施形態の噴霧装置2においても、噴霧装置1と同様に、タンク30に収容されている除菌作用や抗菌作用を有する液体Sを、微細な液滴にして外部へ噴霧することができ、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
また、噴霧装置2では、微細な液滴を上方へ噴霧させるようにしているため、水平方向へ噴霧させようにする場合と比較して、より高く飛ばすことができ、部屋Rの空調に使用することで、微細な液滴を部屋R内全体に行き渡らせ易い。
【0056】
続いて、本発明の第三実施形態の噴霧装置3について、図4を参照して説明する。建物B全体を空調するための空調システムAは、焼成貝殻粉末Pが添加されている液体Sを噴霧する噴霧装置3と、噴霧装置3から噴霧された微細な液滴を建物B内の各部屋Rへ送るための空調ダクトDと、を備えている。
【0057】
空調システムAの噴霧装置3は、液体Sを収容するためのタンク40と、タンク40内において水平方向に延出している軸芯周りに回転自在に設けられている下ローラ41と、下ローラ41よりも上方において下ローラ41と平行な軸芯周りに回転自在に設けられている上ローラ42と、下ローラ41と上ローラ42とに巻き掛けられている網状で無端環の無端ベルト43と、上ローラ42を回転させて無端ベルト43を周回させるローラ用モータ44と、を備えている。
【0058】
また、噴霧装置3は、外気を吸引してタンク40へ送る空気吸引機45と、空気吸引機45によりタンク40に送られて無端無端ベルト43を通った空気を空調ダクトDへ送るための送風機46と、を備えている。
【0059】
噴霧装置3のタンク40は、側壁の上部に空気吸引機45と連通している吸気口40aと、吸気口40aとは反対側の側壁の上部に送風機46と連通している排気口40bと、を有している。この噴霧装置3は、タンク40内に、下ローラ41、上ローラ42、及び無端ベルト43を、設けている。
【0060】
下ローラ41は、タンク40内の下端付近に設けられており、上ローラ42は、タンク40内の上端付近に設けられている。下ローラ41及び上ローラ42は、夫々の軸芯の延びる方向を、タンク40における吸気口40aと排気口40bとを結んだ方向に対して直交するように設けられている。従って、下ローラ41と上ローラ42とに巻き掛けられている無端ベルト43の面が、吸気口40a及び排気口40bと対面している。
【0061】
ローラ用モータ44は、タンク40の外部に設けられており、タンク40内に収容されている液体Sが付着することはない。
【0062】
空気吸引機45及び送風機46は、図示は省略するが、夫々にファンと、ファンを回転させるためのファン用モータと、を備えている。また、空気吸引機45は、外気をろ過するためのフィルタが設けられている。
【0063】
次に、本実施形態の噴霧装置3の使用方法、及び噴霧装置3を使用した空調方法について説明する。上記の空調システムAを使用する場合は、まず、噴霧装置3のタンク40内に、下ローラ41と吸気口40a及び排気口40bとの間の高さまで、焼成貝殻粉末Pを添加した液体Sを収容させる。この状態で、ローラ用モータ44により上ローラ42を回転させて無端ベルト43を周回させる。無端ベルト43を周回させることで、上記と同様に、無端ベルト43における液体Sの液面よりも上方の部位に、網目における凹凸に液体Sが付着したり、網目を塞ぐような膜状に液体Sが付着したりする。
【0064】
続いて、空気吸引機45及び送風機46を動作させて、空気吸引機45を介して外気を吸気口40aからタンク40内に送風すると共に、タンク40内の空気を排気口40bから送風機46を介して空調ダクトDに送風する。タンク40内では、吸気口40aから排気口40bへ向かう空気の流れ(風)が生じるため、その風が吸気口40a排気口40bとの間に設けられている無端ベルト43を通ることとなる。
【0065】
これにより、無端ベルト43に付着している液体Sが微細な液滴となり、当該微細な液滴が風に乗って排気口40bから送風機46を介して空調ダクトDへ送られる。そして、空調ダクトDに送られた液体Sの微細な液滴を含む風は、建物Bの各階に設けられている夫々の部屋Rの天井付近から、夫々の部屋R内に放出される。
【0066】
このように、本実施形態の噴霧装置3(空調システムA)によれば、建物Bの各部屋Rに、タンク40に収容されている除菌作用や抗菌作用を有する液体Sを、微細な液滴にして噴霧することができ、上記と同様の作用効果を奏することができると共に、建物Bの各部屋Rを空調することができる。
【0067】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0068】
例えば、上記では、タンク10等に収容する液体Sとして、過剰量の焼成貝殻粉末Pが存在するものを例示したが、これに限定されず、予め溶媒に焼成貝殻粉末を溶解させ、飽和濃度または飽和濃度に近い濃度となった液体のみとしても良い。
【0069】
また、上記では、噴霧装置1等により噴霧させる液体Sとして、焼成貝殻粉末Pが添加されている液体Sを示したが、これに限定されず、除菌作用を有する成分を溶媒に溶解させた液体、抗菌作用を有する成分を溶媒に溶解させた液体、消臭作用を有する成分を溶媒に溶解させた液体、芳香作用を有する成分を溶媒に溶解させた液体、を噴霧させても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 噴霧装置
2 噴霧装置
3 噴霧装置
10 タンク
11 ファン
12 ファン用モータ
13 ケース
20 ベルト機構
21 下ローラ
22 上ローラ
23 無端ベルト
24 ローラ用モータ
27 枠体
30 タンク
31 下ローラ
32 上ローラ
33 無端ベルト
34 ローラ用モータ
35 ファン
36 ファン用モータ
40 タンク
41 下ローラ
42 上ローラ
43 無端ベルト
44 ローラ用モータ
45 空気吸引機
46 送風機
A 空調システム
P 焼成貝殻粉末
R 部屋
S 液体
図1
図2
図3
図4