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  • 特許-敷板および敷板の製造方法 図1
  • 特許-敷板および敷板の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】敷板および敷板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/08 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
E01C9/08 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019183635
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021059865
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】509242484
【氏名又は名称】株式会社名倉ルーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(72)【発明者】
【氏名】名倉 孝次
(72)【発明者】
【氏名】米田 誠
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-052315(JP,A)
【文献】特開2002-294617(JP,A)
【文献】特開2014-077263(JP,A)
【文献】特開2000-336606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場等に敷設される敷板において、
敷板本体の表面に、前記敷板本体より小さい板状部材であり、防滑材を塗布した補助板を複数枚固定し
前記防滑材は、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粒体と、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粉体と、前記粒体と前記粉体とを前記補助板の塗布面に固着させるバインダとからなり、前記粒体及び前記粉体を、前記バインダと混合したもので、前記粒体と前記粉体との合計の重量が、全重量の50%~80%であり、前記粒体の粒径が1mm~4mmで、前記粉体の粒径が1mm未満であり、
前記補助板は、前記敷板本体の表面に、取り外し可能に固定されていることを特徴とする敷板。
【請求項2】
前記補助板が、鉄板または鋼板であり、前記敷板本体が、鉄板または鋼板であり、前記補助板は、前記敷板本体の表面に溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の敷板。
【請求項3】
工事現場等に敷設される敷板の製造方法において、
防滑材を補助板に塗布し、敷板本体より小さい板状部材であり、前記防滑材を塗布した前記補助板を、前記敷板本体の表面に複数枚固定し、
前記防滑材は、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粒体と、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粉体と、前記粒体と前記粉体とを前記補助板の塗布面に固着させるバインダとからなり、前記粒体及び前記粉体を、前記バインダと混合したもので、前記粒体と前記粉体との合計の重量が、全重量の50%~80%であり、前記粒体の粒径が1mm~4mmで、前記粉体の粒径が1mm未満であり、
前記補助板を、前記敷板本体の表面に取り外し可能に固定することを特徴とする敷板の製造方法
【請求項4】
前記補助板が、鉄板または鋼板であり、前記敷板本体が、鉄板または鋼板板であり、前記敷板本体の表面に前記補助板を溶接することを特徴とする請求項に記載の敷板の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場や道路工事等の工事現場等で使用される敷板および敷板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場や道路工事等の工事現場等では、仮設道路を設けたり、資材搬入路や重機械の安定した足場を確保したりするために敷鉄板、例えば、1524×3048×22mm、を地面に敷き並べて用いている。しかし、敷鉄板の表面は平滑であるため、降水等により表面が濡れると、その上を通行する人や車両は滑りやすく危険である。
【0003】
従来より、敷鉄板上で人や車両が滑ることを防止する方法として、さまざまな方法が用いられている。例えば、特許文献1に示すように、鉄板の表面に、平均粒径が3mm以下の陶器瓦の粉砕物が接着剤により固着されていることを特徴とする敷鉄板がある。また、本出願人は、すでに、特許文献2に示すように、構造物に塗布する構造物塗布材を開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3212688号公報
【文献】特許第6037754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
敷鉄板は、リースやレンタルを利用することが多い。リースやレンタルしている敷鉄板は、元の状態に戻してから返却しなければならないため、特許文献1のように鉄板の表面の全面に渡って直接加工を施すことは難しい。しかし、リースやレンタルしている敷鉄板であっても何もしないままでは、滑りやすいという問題を解決することはできない。また、返却する必要がなくても、滑り防止加工が不要になり元に戻したい場合に、全面に接着している粉砕物を除去するには手間がかかる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、必要に応じて、滑り止め機能を設けたり、取り外したりすることができる敷板および敷板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の敷板は、敷板本体の表面に、敷板本体より小さい板状部材であり、防滑材を塗布した補助板を複数枚固定し、防滑材が、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粒体と、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粉体と、粒体と粉体とを補助板の塗布面に固着させるバインダとからなり、粒体及び粉体を、バインダと混合したもので、粒体と粉体との合計の重量が、全重量の50%~80%であり、粒体の粒径が1mm~4mmで、粉体の粒径が1mm未満であり、補助板が、敷板本体の表面に、取り外し可能に固定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の敷板は、補助板が、鉄板または鋼板であり、敷板本体が、鉄板または鋼板であり、補助板は、敷板本体の表面に溶接されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の敷板の製造方法は、防滑材を補助板に塗布し、敷板本体より小さい板状部材であり、防滑材を塗布した補助板を、敷板本体の表面に複数枚固定し、防滑材が、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粒体と、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粉体と、粒体と粉体とを補助板の塗布面に固着させるバインダとからなり、粒体及び粉体を、バインダと混合したもので、粒体と粉体との合計の重量が、全重量の50%~80%であり、粒体の粒径が1mm~4mmで、粉体の粒径が1mm未満であり、補助板を、敷板本体の表面に取り外し可能に固定することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の敷板の製造方法は、補助板が、鉄板または鋼板であり、敷板本体が、鉄板または鋼板であり、敷板本体の表面に補助板を溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願の発明によれば、必要に応じて、滑り止め機能を設けたり、取り外したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る敷板の実施例を示す説明図である。
図2図1に示した本発明に係る敷板の実施例のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明に係る敷板を模式的に示す説明図である。図2は、図1に示した本発明に係る敷板の実施例のA-A線断面図である。
【0018】
本発明に係る敷板1は、工事現場等で、仮設道路を設けたり、資材搬入路や重機械の安定した足場を確保したりするために地面に敷設されて用いられるものである。敷板1は、図1に示すように、敷板本体10の表面に、防滑材22を塗布した補助板20を1枚以上固定したものである。敷板本体10とは、何も加工していない従来の敷板を意味しており、その材質は、任意であり、鉄板や鋼板等の金属板、樹脂板等が考えられる。
【0019】
なお、敷板本体10に補助板20を固定する方法は任意であり、補助板20の材質に応じて、溶接により溶着してもよいし、ネジ止めしてもよいし、接着剤、接着テープ等を用いて接着してもよい。これらの固定方法により、敷板本体10と補助板20とは、必要に応じて、取り外し可能であ。また、敷板本体10の表面上の補助板20の固定位置、形状、個数についても任意であり、人や車両が通過する可能性がある位置に固定され、防滑効果を生じ得る補助板20の形状、個数であればよい。また、補助板20は、敷板本体10より小さい板状部材であり、材質は任意であり、鉄板や鋼板等の金属板、樹脂板等が考えられる。
【0020】
本発明の敷板1は、敷板本体10の表面に、防滑材22を塗布した補助板20を固定したことにより、滑り止め機能を設けることができ、また、必要に応じて、前述した補助板20を取り外すことにより、滑り止め機能を取り外すことができる。
【0021】
また、防滑材22の組成は任意であるが、粒体と粉体とバインダとを混合したものであることが好ましい。例えば、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粒体と、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる粉体と、粒体と粉体とを補助板20の塗布面に固着させるバインダとからなる。また、粒体及び粉体を、バインダと混合したもので、粒体と粉体との合計の重量が、全重量の50%~80%であり、粒体の粒径が1mm~4mmで、粉体の粒径が1mm未満であることが好ましい。特に、好ましい割合としては、粒体と粉体とバインダとの重量比が、等分である。
【0022】
陶磁器や瓦は、例えば、廃瓦や廃陶磁器製便器等の陶磁器の廃材(陶磁器屑)で、練り土成形焼成品を含む。より具体的には、瓦では、いぶし瓦、陶器瓦等である。また、廃陶磁器製便器の他、廃陶磁器製便器タンク、廃陶磁器製シンク又は廃陶磁器製タイルであってもよく、陶磁器や練り土成形焼成品で、その製造途中で生じた廃棄物や、使用された後に廃棄されたものであってもよい。
【0023】
また、廃瓦や陶磁器屑に限らず、本発明における防滑材22のために焼成したものであってもよい。そして、陶磁器や瓦を、粒径が1mm~4mmのものを粒体とし、粒径が1mm未満のものを粉体として用いるようにする。粒径に関しては、陶磁器や瓦を単に分別してもよいし、粉砕した後に分別して把握するようにしてもよい。
【0024】
また、火山灰は、粒径が1mm~4mmのものと1mm未満のものとに分別(ふるい分け)することにより、それぞれ粒体又は粉体として用いるようにする。尚、火山灰の場合、単に分別(ふるい分け)をするだけでも、所定の粒径の粒体及び粉体を得ることはできるが、粒径の大きなもの(火山礫等)を粉砕して、所定の粒径の粒体及び粉体を得るようにしてもよい。
【0025】
バインダは、水系合成樹脂エマルションで、特に、アクリル・スチレン共重合体水性エマルションであることが好ましく、例えば、アクリル・スチレン共重合体、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソプチレート、フタル酸ジ-ノルマル-ブチル、エチレングリコール及び水等から構成されている。
【0026】
また、補助板20は、敷板本体10の表面に、必要に応じて取り外し可能に固定されていることが好ましい。例えば、取り外し可能な程度の仮溶接または接着等が考えられる。
【0027】
補助板20は、金属板、例えば、鉄板または鋼板であることが好ましい。補助板20が、鉄板または鋼板のような金属板であり、敷板本体10も鉄板または鋼板のような金属板である場合、敷板本体10の表面に溶接により固定されることが好ましい。必要な場合には、取り外しが可能であるように仮溶接により固定されていることがより好ましい。このように、本発明は、補助板20として特に金属板に、防滑材22を塗布することが可能である。
【0028】
次に、本発明の敷板1の製造方法を説明する。
本発明の敷板1は、図1、2に示すように、防滑材22を補助板20の表面上に塗布し、防滑材22を塗布した1枚以上の補助板20を、1枚の敷板本体10の表面に固定することにより製造される。
【0029】
防滑材22の組成は任意であるが、粒体と粉体とバインダとを混合したものであることが好ましい。粒体及び粉体が、所定の粒径の陶磁器若しくは瓦又は火山灰からなる場合、必要に応じて洗浄、粉砕、篩に掛けられ、粒体の粒径は1mm~4mm、粉体の粒径は1mm未満であることが特に好ましい。粒体と粉体との合計の重量が、全重量の50%~80%であるように、粒体、粉体、バインダをそれぞれ計量し、それらを混合して防滑材22とする。
【0030】
塗布面である補助板20の表面は、必要であれば、洗浄を行い、次に下地処理としてシーラーを塗布する。なお、シーラーの塗布は、必須ではない。
その上で、補助板20に防滑材22を塗布する。塗布方法は、刷毛塗りでも、スプレーガン等を用いた噴き付けでもよい。塗布する回数は、1回でもかまわないが、2回以上重ね塗りすることで、防滑材22の厚みも増し、滑りにくい表面を形成するという効果も向上する。
【0031】
次に、防滑材22を塗布した補助板20を、図1に示すように、敷板本体10の表面に1枚以上固定する。固定方法は任意であるが、敷板本体10、補助板20の材質に応じて、溶接により溶着してもよいし、ネジ止めしても良いし、接着剤等を用いて接着してもよい。また、必要であれば、敷板本体10から補助板20を取り外し可能に固定してもよい。例えば、取り外し可能な程度の仮溶接または接着等が考えられる。
【0032】
補助板20が、鉄板または鋼板であり、敷板本体10も鉄板または鋼板のような金属板である場合、補助板20は、敷板本体10の表面に溶接により固定されることが好ましい。必要な場合には、取り外しが可能であるように仮溶接により固定されることがより好ましい。例えば、図1、2に示すように、敷板本体10に防滑材22を塗布した補助板20を、1枚の補助板20に対して複数カ所スポット溶接することにより仮溶接を行い、形成された固着部24により補助板20を敷板本体10の表面に固定する。
【0033】
このようにして製造された敷板1は、防滑材22を塗布した補助板20を固定した面を上面にして、工事現場等で地面に敷設されて使用される。そして、敷板1を使用していた現場から撤去する際に、滑り止め機能が不要であれば、現場で、または、撤去後別の場所で、敷板本体10から補助板20を取り外すことができる。
【0034】
本発明の敷板1によれば、使用時には、防滑材22を塗布した補助板20を敷板本体10に固定して、滑りにくい表面を形成し、使用後は、取り外すことが可能になる。また、予め防滑材22を塗布した補助板20を準備しておけば必要に応じて敷板本体10に容易に取り付けることができる。また、敷板本体10の全面に防滑材22を塗布する必要がないため、塗布量も少なくて済み、コスト削減にもつながる。
【0035】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明によれば、敷板本体の表面に、防滑材を塗布した補助板を固定することにより、必要に応じて、滑り止め機能を設けたり、取り外したりすることができる敷板および敷板の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・・・敷板
10・・・・敷板本体
20・・・・補助板
22・・・・防滑材
24・・・・固着部
図1
図2