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  • 特許-固体電解質、二次電池及びキャパシタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】固体電解質、二次電池及びキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/10 20060101AFI20231214BHJP
   H01M 10/0564 20100101ALI20231214BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20231214BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20231214BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20231214BHJP
   C07F 3/02 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
H01B1/10
H01M10/0564
H01M10/054
H01B1/06 A
H01G11/56
C07F3/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020039315
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140997
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守谷 誠
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168371(JP,A)
【文献】特開平06-119807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/10
H01M 10/0564
H01M 10/054
H01B 1/06
H01G 11/56
C07F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される分子結晶を含む固体電解質。
[Mg・・・(1)
(一般式(1)中、aは、1以上の整数を表し、bは、1以上の整数を表し、cは、1以上の整数を表し、nは、1以上の整数を表す。但し、一般式(1)において、b=2aを満たす。Xは、N(SO CF である。Yは、それぞれ独立に2つのニトリル基を2価の連結基を介して結合したニトリル化合物を表す。)
【請求項2】
前記ニトリル化合物は、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ジメチルマロノニトリル又はテトラメチルスクシノニトリルである請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
二次電池又はキャパシタの固体電解質として用いられる請求項1又は請求項2に記載の固体電解質。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質を備える二次電池。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の固体電解質を備えるキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質、二次電池及びキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン伝導性を有する二次電池の開発ではリチウムイオンが先行するが、リチウム資源と比較してマグネシウム資源は地表近くに豊富に存在する点、及び二価のイオンであり、充放電容量が大きくできる点から、マグネシウムイオンも候補物質となりうる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリマーゲル電解質を含むマグネシウムイオン二次電池が提案されている。特許文献1に記載のマグネシウムイオン二次電池では、電解液の液漏れ防止のために、ポリマーを電解液で膨潤させてゲル化した電解質であるポリマーゲル電解質が用いられている。
【0004】
電池の軽量化、電池構造の簡略化等の点から液体である電解液を使用せずに、固体電解質をマグネシウムイオン二次電池等に適用する試みも検討されている。固体電解質としては、セラミックス、ガラス、ポリマー等が有力候補である。例えば、特許文献2には、ポリエチレンカーボネートと電解質塩としてのマグネシウムの有機塩とをそれぞれ所定量含むポリエチレンカーボネート系固体電解質を備えるマグネシウムイオン二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-030959号公報
【文献】特開2016-126928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2にて提案されているように、マグネシウムイオン二次電池においても電解液を使用せずに、固体電解質を電池に適用することが望まれている。しかしながら、二価のマグネシウムイオンは、一価のリチウムイオンに比べて充放電容量を大きくできる一方で、固体電解質中のアニオンとの静電相互作用が大きく、固体電解質中で拡散しにくい。そのため、リチウムイオン伝導性の固体電解質に比べてマグネシウムイオン伝導性の固体電解質は、イオン伝導性が低いという問題がある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、イオン伝導性に優れる固体電解質、並びにこれを含む二次電池及びキャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記一般式(1)で表される分子結晶を含む固体電解質。
[Mg・・・(1)
(一般式(1)中、aは、1以上の整数を表し、bは、1以上の整数を表し、cは、1以上の整数を表し、nは、1以上の整数を表す。但し、一般式(1)において、b=2aを満たす。Xは、それぞれ独立に、1価のアニオンである。Yは、それぞれ独立にアミン化合物、ニトリル化合物、又はチオエーテル化合物を表す。)
<2> Xは、それぞれ独立に、N(SOF) 、N(SOCF 、SCN、N(SO 、N(SOCFCF 、N(SOCF 、N(CN) 、BF -、PF -、又はハロゲン化物イオンである<1>に記載の固体電解質。
<3> Yは、2つのニトリル基を2価の連結基を介して結合したニトリル化合物である<1>又は<2>に記載の固体電解質。
<4> Xは、N(SOCF である<1>~<3>のいずれか1つに記載の固体電解質。
<5> 二次電池又はキャパシタの固体電解質として用いられる<1>~<4>のいずれか1つに記載の固体電解質。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の固体電解質を備える二次電池。
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載の固体電解質を備えるキャパシタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態によれば、イオン伝導性に優れる固体電解質、並びにこれを含む二次電池及びキャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1及び実施例2の固体電解質におけるイオン伝導度の測定結果である。
図2】実施例1の固体電解質の直流分極測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について詳細に説明する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0012】
[固体電解質]
本開示の固体電解質は、下記一般式(1)で表される分子結晶を含む。
[Mg・・・(1)
(一般式(1)中、aは、1以上の整数を表し、bは、1以上の整数を表し、cは、1以上の整数を表し、nは、1以上の整数を表す。但し、一般式(1)において、b=2aを満たす。Xは、それぞれ独立に、1価のアニオンである。Yは、それぞれ独立にアミン化合物、ニトリル化合物、又はチオエーテル化合物を表す。)
本開示の固体電解質は、イオン伝導性に優れる。
【0013】
さらに、本開示の固体電解質では、リチウムイオンではなくマグネシウムイオンが含まれているため、二次電池、キャパシタ等に適用した際に充放電容量を高めることができる。また、マグネシウムは、地殻存在モル比がリチウムの300倍以上であるため、本開示の固体電解質は、リチウムイオンを含む固体電解質と比較して安価で作製し得る。
【0014】
また、リチウムイオン二次電池において、高い体積容量(mAh/cm)を得るためには、リチウムを負極活物質とすることが望ましい。しかし、リチウムを負極活物質とした場合、充放電によりリチウムが樹枝状結晶(デンドライト)を形成し、デンドライトが正極と接触して内部短絡を引き起こす可能性がある。そのため、デンドライトを抑制するため、現状では体積容量の低いグラファイト(777mAh/cm)を使用している。一方、マグネシウムイオン二次電池では、マグネシウムを負極活物質としても充放電によりデンドライトを形成しないため、リチウムイオン二次電池のグラファイトに比べ、約5倍(3832mAh/cm)の体積容量を確保できる。
【0015】
本開示の固体電解質は、例えば、二次電池、キャパシタ、空気電池の固体電解質として用いられてもよく、好ましくは二次電池又はキャパシタの固体電解質として用いられてもよい。
【0016】
(分子結晶)
本開示の固体電解質は、前述の一般式(1)で表される分子結晶を含む。分子結晶は、複数の[Mg]が分子間の相互作用で結びついて形成している結晶である。
【0017】
一般式(1)中のXは、それぞれ独立に、1価のアニオンである。1価のアニオンは特に限定されず、例えば、N(SOF) 、N(SOCF 、SCN、N(SO 、N(SOCFCF 、N(SOCF 、N(CN) 、BF -、PF -、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。中でも、固体電解質のイオン伝導性により優れる点から、N(SOCF が好ましい。
【0018】
一般式(1)中のYである配位子は、それぞれ独立にアミン化合物、ニトリル化合物、又はチオエーテル化合物である。Yとしては、ニトリル化合物が好ましい。
【0019】
配位子がニトリル化合物である場合、HSAB(Hard and Soft Acids and Bases)則にて、硬い酸であるマグネシウムイオンと、柔らかい塩基であるニトリル基を含むニトリル化合物を組み合わせた分子結晶とすることで、マグネシウムイオン周りに働く相互作用が低減される。この相互作用を低減させることにより、イオン拡散を促進させることができるため、イオン伝導性をより高めることができる、と考えられる。
さらに、マグネシウムイオンと、ニトリル化合物との組み合わせにおいて、分子結晶におけるMg-Mg間の最近接距離が比較的小さくなる前述のようなアニオン種を適用することで、ホッピングサイトとMg間の距離が小さくなるため、マグネシウムイオンの伝導性を高めることができる、と推測される。
【0020】
アミン化合物としては、2つ以上のアミノ基を有する化合物が好ましく、ニトリル化合物としては、2つ以上のニトリル基を有する化合物が好ましく、チオエーテル化合物としては、2つ以上のチオアルキル基を有する化合物が好ましい。
【0021】
配位子は、2つのアミノ基、2つのニトリル基、又は2つのチオアルキル基を2価の連結基を介して結合した化合物であることが好ましく、高温時の揮発を抑制する点から、2つのニトリル基を2価の連結基を介して結合した化合物であることがより好ましい。アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基又は3級アミノ基が挙げられる。2価の連結基としては、置換又は無置換の、アルキレン基、フェニレン基等が挙げられる。
【0022】
配位子の具体例としては、特に限定されず、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノブタン、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ジメチルマロノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル、1,1,3,3-プロパンテトラカルボニトリル、1,2,2,3-プロパンテトラカルボニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-シクロヘキサントリカルボニトリル、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン等が挙げられる。中でも、固体電解質のイオン伝導性及び高温時の揮発の抑制の点から、スクシノニトリル(NCCHCHCN)及びグルタロニトリル(NCCHCHCHCN)が好ましい。
例えば、スクシノニトリルの沸点は265℃、グルタロニトリルの沸点は287℃と比較的高いことから、加熱条件下での配位子の揮発を抑制できるため、本開示の固体電解質は、広範囲での利用も期待できる。
【0023】
一般式(1)の配位子の数は、イオン性化合物1分子に対して1つ以上であればよく、1つ~3つであることが好ましい。
【0024】
一般式(1)中にて、aは、1又は2が好ましく、bは、2又は4が好ましい。一般式(1)中にて、cは、1~3が好ましい。
【0025】
本開示の固体電解質は、一般式(1)で表される分子結晶以外の分子結晶を含んでいてもよい。イオン伝導性により優れる点から、本開示の固体電解質における一般式(1)で表される分子結晶の含有量は、分子結晶全量に対して50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
本開示の固体電解質は、分子結晶以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定されず、ゲル電解質、ポリエチレンオキシド等のポリマー電解質、マグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等の有機電解質塩、無機電解質塩、セラミック電解質、無機フィラー、バインダー、導電助剤、正極活物質、負極活物質などが挙げられる。
【0027】
本開示の固体電解質では、分子結晶の含有量は、例えば、15質量%~99質量%であることが好ましく、70質量%~95質量%であることがより好ましく、80質量%~95質量%であることがさらに好ましい。分子結晶の含有量が15質量%以上であることにより、固体電解質の柔軟性に優れる傾向にある。
【0028】
(変形例)
本開示の固体電解質の変形例は、マグネシウムイオンと、1価のアニオンであるXと、アミン化合物、ニトリル化合物、及びチオエーテル化合物の少なくともいずれか1つの化合物であるYと、を含有する結晶を含んでいてもよい。変形例において、X及びYの好ましい態様は、前述の通りである。
【0029】
本開示の二次電池は、前述の本開示の固体電解質を備える。本開示の二次電池は、固体電解質の柔軟性及びイオン伝導性に優れるため、出力特性、低温での作動特性等に優れる傾向にある。
【0030】
本開示の二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた前述の固体電解質と、を備えることが好ましい。
【0031】
正極は、正極集電体及び正極活物質を含む正極合剤層を備える。正極は、例えば、正極活物質を含む組成物を用いて正極集電体上に正極合剤層を形成することで作製できる。正極活物質を含む組成物は、正極活物質の他に有機結着剤、溶剤、導電助剤等を混合したものであってもよい。正極集電体、正極活物質、有機結着剤、溶剤、導電助剤等としては、従来公知の正極を製造する際に用いる材料を適用できる。
【0032】
負極は、負極集電体及び負極活物質を含む負極合剤層を備える。負極は、例えば、負極活物質を含む組成物を用いて負極集電体上に負極合剤層を形成することで作製できる。負極活物質を含む組成物は、負極活物質の他に有機結着剤、溶剤、導電助剤等を混合したものであってもよい。負極集電体、負極活物質、有機結着剤、溶剤、導電助剤等としては、従来公知の負極を製造する際に用いる材料を適用できる。
【0033】
本開示のキャパシタは、前述の本開示の固体電解質を備える。本開示のキャパシタは、固体電解質の柔軟性及びイオン伝導性に優れるため、出力特性、低温での作動特性等に優れる傾向にある。
【0034】
本開示のキャパシタは、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に設けられた前述の固体電解質と、を備えることが好ましい。正極は、正極集電体及び正極活物質層を含み、負極は、負極集電体及び負極活物質層を含む。キャパシタにおける正極活物質及び負極活物質としては、例えば、活性炭等が挙げられる。
【0035】
本開示の二次電池又はキャパシタは、正極と、固体電解質と、負極とを備える構成が複数積層された直列積層構造を有していてもよい。本開示の二次電池又はキャパシタが直列積層構造を有する場合、電解液を用いた二次電池又はキャパシタを直列構造にする場合と比較して容器等を簡素化することができ、システムの質量低減及び体積低減が可能となる。
【0036】
本開示の固体電解質の用途としては、特に限定されず、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、航空機、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源、医療機器等が挙げられる。
【実施例
【0037】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
アルゴン雰囲気下にて、Mg(TFSA)とNCCHCHCN(SN)とをモル比が1:3(Mg(TFSA):NCCHCHCN)の条件で混合した。次に、オイルバスを用いて[Mg(TFSA)(SN)の融点以上の温度で混合物を加熱した。その後、混合物を室温まで放冷することにより、分子結晶である[Mg(TFSA)(SN)を含む固体電解質を作製した。
【0039】
(イオン伝導度の測定)
実施例1にて得られた固体電解質を円盤状に加圧成型した測定用試料を用い、密閉式セル中において金電極を用いた交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定した。また、イオン伝導度の測定は、測定用試料を分子結晶の融点以下の温度域で昇温しながら測定した。結果を図1に示す。
【0040】
(直流分極測定)
実施例1にて得られた固体電解質を用い、以下のようにして直流分極を測定した。
・コイン型セルの作製
得られた固体電解質を、アルゴンガスで充填したグローブボックス内にて粉砕した後、油圧プレスを用いて、円盤状(13φ)に加圧成型した。その後、ポンチを用いて円状に切り抜いたマグネシウム板で試料を挟んだ後、密閉式セル内に試料を導入することにより、セルを作製した。
・複合膜の直流分極測定
インピ-ダンスアナライザ-VMP3(Biologic社製)を用いて、60℃において300mVで11000秒間直流分極測定を行った。
結果を図2に示す。
【0041】
[実施例2]
アルゴン雰囲気下にて、Mg(TFSA)とNCCHCHCHCN(GN)とをモル比が1:3(Mg(TFSA):NCCHCHCHCN)の条件で混合した。次に、オイルバスを用いて融点以上の温度で混合物を加熱した。その後、混合物を室温まで放冷することにより、分子結晶である[Mg(TFSA)(GN)(推定の構造式)を含む固体電解質を作製した。
実施例1と同様にして実施例2の固体電解質のイオン伝導度を測定した。結果を図1に示す。
【0042】
[比較例1]
文献“A novel inorganic solid state ion conductor for rechargeable Mg batteries”(Higashi,S.et al., Chem. Commun., 2014,50, 1320-1322)に記載の無機固体電解質であるMg(BH)(NH)を比較例1の固体電解質とした。
前述の文献では、比較例1の固体電解質について150℃でのイオン伝導度は10-6Scm-1である。
【0043】
比較例1では、イオン伝導性の発現に150℃程度の高温が必要であった。一方、図1に示すように、実施例1の固体電解質では、20℃でのイオン伝導度は3×10-6S/cmであり、実施例2の固体電解質では、20℃でのイオン伝導度は2×10-5S/cmであり、低温であってもイオン伝導性がともに優れていた。
また、図2に結果を示す直流分極測定は、マグネシウムイオンの輸率を簡易的に推測するために行った。初期電流では固体電解質中のカチオン及びアニオンが動き、定常電流ではマグネシウムイオンのみが動くことから、定常電流値/初期電流値によりマグネシウムイオンの輸率は約0.5であり、マグネシウムイオンがイオン伝導の約50%を担っていると推測される。
また、実施例1及び2の固体電解質は、セラミック電解質と異なり適度な柔軟性を有するため、二次電池、キャパシタ等の作製が容易である。
図1
図2