(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】脂肪組織移植片の保存のための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20231214BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20231214BHJP
A01N 1/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12N5/077
A01N1/02
(21)【出願番号】P 2020512408
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018049083
(87)【国際公開番号】W WO2019046713
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-30
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ.ピーター、ルビン
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-526868(JP,A)
【文献】特開2010-150219(JP,A)
【文献】特表2008-507563(JP,A)
【文献】特表2012-533620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0051865(US,A1)
【文献】特開平11-004682(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030665(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0239299(US,A1)
【文献】国際公開第2011/011055(WO,A2)
【文献】Cui X. and Pu L. L. Q.,The search for a useful method for the optimal cryopreservation of adipose aspirates: Part II. In vivo study.,Aesthetic Surgery Journal,2010年,vol.30, no. 3,451-456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-28
C12M
C12Q
A61K
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪細胞または脂肪組織を保持するフィルターで仕切られた内部チャンバーを規定する第1端と第2端とを有し、前記第2端と前記フィルターとの間の容積が少なくとも3mLである容器であって、容器を遠心するように構成された遠心機に適合する寸法である2つの分離可能な部材により形成される連続した環状の外面を有する、連続密閉容器を形成する2つの分離可能な部材を含んでなり、
前記2つの分離可能な部材が前記容器の第2端よりも前記容器の第1端に近接した位置のスリップコネクターまたはスクリューコネクターにより接続されている、容器と;
第1の開口部を規定する前記容器の第1端にあるルアーロックまたはスリップコネクターなどの第1のアダプターまたはコネクターと;
前記容器の第2端にあって、第2の開口部を規定するルアーロックまたはスリップコネクターなどの第2のアダプターまたはコネクターと;
を含んでな
り、
前記容器の2つの分離可能な部材が、
第1のアダプターまたはコネクターと接続するまたは一体である端を含む第1のバレル部分と、反対側の端と、第1のバレル部分の端の間に延伸する内面を有する側壁と、第1のバレル部分の反対側の端から延伸するフィッティング部分とを含む第1の部材(ここで、前記第1のアダプターまたはコネクターの内径は第1のバレル部分の内径よりも小さい)と、
第2のアダプターまたはコネクターと接続するまたは一体である端を含む第2のバレル部分と、反対側の端と、第2のバレル部分の端の間に延伸する内面を有する側壁とを含む第2の部材(ここで、前記第2のアダプターまたはコネクターの内径は第2のバレル部分の内径よりも小さい)とを含んでなり、
前記第1の部材のフィッティング部分が直接的に第2の部材の第2のバレル部分へ挿入され、かつ、第2のバレル部分の内面と係合し、それにより第1のバレル部分および第2バレル部分の内面により規定された内部チャンバーを有する連続密閉容器を形成し、かつ、
前記フィルターが第1のバレル部分に配置され、かつ、第1のバレル部分の内径に一致する直径を有する、細胞または組織の単離、精製、および保存装置。
【請求項2】
例えば、チューブ、ボトル、シリンジなどのコンテナを遠心することができる遠心機に適合する寸法であるか、もしくは1mL~4Lの範囲の容積を有するか、かつ/または少なくとも500g、例えば少なくとも1000g、1200g、または1500gのG力での遠心に耐えるように作製された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記容器の内部チャンバーが5mL~100mLの範囲、例えば、5mL、10mL、15mL、30mL、または50mLの容積を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
1mL~4Lの範囲内の容積を有する、例えば、チューブ、ボトル、またはシリンジなどのコンテナを遠心することができる遠心機に適合する寸法である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記フィルターが前記容器の第1端よりも前記容器の第2端に近接している、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記フィルターが100ミクロン(μ)フィルターである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のアダプターおよび/または前記第2のアダプターがルアーロックアダプターである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
円筒状の横断形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
10mL医療用注射筒の直径を有する請求項1に記載の装置であって、前記2つの分離可能な部材のそれぞれが16.5~18mmの範囲の外径を有し、かつ、前記容器が80mm~90mmの範囲の全長を有し、場合により、前記容器の、フィルターと容器の第1端の間の内部容積が5mL以上、例えば、8mL~10mLの範囲である、装置。
【請求項10】
生脂肪細胞などの生細胞と場合により凍結保護剤を、前記容器の内部チャンバーの、前記容器の第1端と前記フィルターの間に含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の部材が第2の部材に接続された場合に、第1の部材の第1のバレル部分の環状の外面が、第2の部材の第2のバレル部分の環状の外面と同一面を形成し、かつ、第1の部材および第2の部材のぞれぞれの外径が16.5mmから18mmの範囲である、請求項
1に記載の装置。
【請求項12】
2~25の細胞または組織の保存装置(各保存装置は、脂肪細胞または脂肪組織を保持するフィルターで仕切られた内部チャンバーを規定する第1端と第2端とを有し、前記第2端と前記フィルターとの間の容積が少なくとも3mLである容器であって、容器を遠心するように構成された遠心機に適合する寸法である2つの分離可能な部材により形成される連続した環状の外面を有する、連続密閉容器を形成する2つの分離可能な部材を含んでなり、
前記2つの分離可能な部材が前記容器の第2端よりも前記容器の第1端に近接した位置のスリップコネクターまたはスクリューコネクターにより接続されている、容器と;第1の開口部を規定する前記容器の第1端にあるルアーロックまたはスリップコネクターなどの第1のアダプターまたはコネクターと;前記容器の第2端にあって、第2の開口部を規定するルアーロックまたはスリップコネクターなどの第2のアダプターまたはコネクターとを含んでな
り、前記容器の2つの分離可能な部材が、第1のアダプターまたはコネクターと接続するまたは一体である端を含む第1のバレル部分と、反対側の端と、第1のバレル部分の端の間に延伸する内面を有する側壁と、第1のバレル部分の反対の端から延伸するフィッティング部分とを含む第1の部材(ここで、前記第1のアダプターまたはコネクターの内径は第1のバレル部分の内径よりも小さい)と、第2のアダプターまたはコネクターと接続するまたは一体である端を含む第2のバレル部分と、反対側の端と、第2のバレル部分の端の間に延伸する内面を有する側壁とを含む第2の部材(ここで、前記第2のアダプターまたはコネクターの内径は第2のバレル部分の内径よりも小さい)とを含んでなり、前記第1の部材のフィッティング部分が直接的に第2の部材の第2のバレル部分へ挿入され、かつ、第2のバレル部分の内面と係合し、それにより第1のバレル部分および第2バレル部分の内面により規定された内部チャンバーを有する連続密閉容器を形成し、かつ、前記フィルターが第1のバレル部分に配置され、かつ、第1のバレル部分の内径に一致する直径を有する)と;
少なくとも3mLの脂肪移植片などの細胞または組織を凍結保存することができる量の凍結保護剤を含んでなり、場合によりルアーロックまたはスリップコネクターなどのアダプターまたはコネクターを有する、少なくとも1つの容器と;
を含んでなる、脂肪移植片などの細胞の単離および保存において使用するためのキット。
【請求項13】
前記装置が、例えば、チューブ、ボトル、シリンジなどのコンテナを遠心することができる遠心機に適合する寸法であるか、もしくは1mL~4Lの範囲の容積を有するか、かつ/または少なくとも500g、例えば少なくとも1000g、1200g、または1500gのG力での遠心に耐えるように作製された、請求項
12に記載のキット。
【請求項14】
前記容器の内部チャンバーが5mL~100mLの範囲、例えば、5mL、10mL、15mL、30mL、または50mLの容積を有する、請求項
12に記載のキット。
【請求項15】
保存容器および/または保存コンテナに表示を行うためのラベルを場合により含む、前記2~25の細胞または組織の保存装置を保存するように構成された保存コンテナをさらに含んでなる、請求項
12に記載のキット。
【請求項16】
場合により前記保存コンテナに取り付けられてもよい温度ロガー(温度記録計)をさらに含んでなる、請求項
12に記載のキット。
【請求項17】
前記フィルターが前記2~25の容器の1以上の、または総ての第1端よりも前記容器の第2端に近接している、請求項
12に記載のキット。
【請求項18】
前記2~25の容器の1以上の、または総てのフィルターが100ミクロン(μ)フィルターである、請求項
12に記載のキット。
【請求項19】
前記2~25の容器の1以上の、または総ての第1のアダプターおよび/または第2のアダプターがルアーロックアダプターである、請求項
12に記載のキット。
【請求項20】
前記2~25の容器の1以上の、または総てが円筒状の横断形状を有する、請求項
12に記載のキット。
【請求項21】
前記2~25の容器の1以上の、または総てが10mL医療用注射筒の直径を有し、前記2~25の容器の1以上の、または総ての、フィルターと容器の第1端の間の内部容積が5mL以上、例えば、8mL~10mLの範囲であり、前記2~25の容器の1以上、または総ての前記2つの分離可能な部材のそれぞれが5mm~25mmの範囲の外径を有し、かつ、前記2~25の容器の1以上、または総てが70mm~110mmの範囲の全長を有し、前記2~25の容器の1以上、または総てが16.5~18mmの範囲の外径と80mm~90mmの範囲の長さを有し、かつ/または前記2~25の1以上、または総てのバレル長とバレル外径の比が少なくとも4:1、または4:1~6:1である、請求項
12に記載のキット。
【請求項22】
前記凍結保護剤がジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒト血清アルブミン、トレハロース、またはDMSOとhSAの組合せなどの前記のいずれかの2種類以上の組合せ、例えば、5%~10%(v/v)DMSOと2%(w/v)hSAの組合せを含んでなる、請求項
12に記載のキット。
【請求項23】
脂肪組織を請求項1に記載の装置の第2の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入(例えば、注入)すること
;前記脂肪移植片を凍結保存するために有効な量の凍結保護剤を前記装置の第1の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入すること;および前記脂肪組織
を前記凍結保護剤と混合すること;並び
に凍結保護剤が導入される場合には、前記脂肪移植片を0℃未満の温度に冷却することを含んでなる、脂肪移植片を調製する方法。
【請求項24】
凍結保護剤が、前記脂肪移植片が前記装置に導入された後に前記装置に導入され、前記凍結保護剤と脂肪移植片が混合され、前記脂肪移植片が0℃未満の温度に冷却される、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記凍結保護剤がジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒト血清アルブミン(hSA)、トレハロース、またはDMSOとhSAの組合せなどの前記のいずれかの組合せ、例えば、5%~10%(v/v)DMSOと2%(w/v)hSAの組合せを含んでなる、請求項
23に記載の方法。
【請求項26】
前記脂肪移植片を冷却した後、前記脂肪移植片の温度を上げて前記脂肪移植片を解凍することをさらに含んでなる、請求項
23に記載の方法。
【請求項27】
前記脂肪移植片を前記凍結保護剤から分離すること;前記凍結保護剤を前記装置の第1端から抜き取ること;および前記脂肪移植片を洗浄するために有効な量の洗浄溶液を前記装置の第1端に導入し、前記洗浄溶液を前記脂肪移植片と混合し、前記脂肪移植片を前記洗浄溶液から分離し、前記洗浄溶液を前記装置の第1端から抜き取ることにより、前記脂肪移植片を洗浄することをさらに含んでなる、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
解凍された脂肪移植片を含有する前記装置を、前記第1の開口部を下にして遠心して、前記脂肪移植片を前記凍結保護剤から分離すること;前記凍結保護剤を前記装置の第1端から抜き取ること;および前記脂肪移植片を洗浄するために有効な量の洗浄溶液を前記装置の第1端に導入し、前記洗浄溶液を前記脂肪移植片と混合し、前記脂肪移植片を含有する装置を、前記第1の開口部を下にして遠心して、前記脂肪移植片を前記洗浄溶液から分離し、前記洗浄溶液を前記装置の第1端から抜き取ることにより、前記脂肪移植片を洗浄することをさらに含んでなる、請求項
26に記載の方法。
【請求項29】
凍結または解凍中の前記脂肪移植片の温度変化が毎分2℃以下、または毎分1℃以下である、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、2017年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/553,322号の利益を主張するものであり、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。
【背景技術】
【0002】
頭蓋顔面外傷、頭蓋顔面変形、先天性異常、および癌治療に関連する変形の後の軟組織の変形および体積/輪廓の変化は、補正が難しい。注射用ヒアルロン酸充填材は高価であり、小体積が充填できるにすぎず、経時的に分解し、反復処置を要する。シリコーンおよびポリエチレン移植材は永久的異物であり、長期感染および移動のリスクを有する。主要な軟組織フラップ法は複雑であり、高い罹患率を有し、供与部位の著しい変形と供与部位における合併症のリスクがある。自家脂肪移植は、供与部位の罹患を最小限にしつつ早期回復する、軟組織の変形を処置する有効な手段として発展している。脂肪移植片はまた、美容整形にも広範に使用される。本発明者らの臨床試験では、特に頭蓋顔面脂肪移植に関して本療法の強い裏づけが得られている。自家脂肪移植は形成外科および再建外科の手法で広く使用され、米国で2016年に実施された80,000件近くが形成外科によるものであった(American Society of Plastic Surgeons Data, https://www.plasticsurgery.org/news/plastic-surgery-statistics)。
【0003】
脂肪移植に伴う大きな障害は、癒合して長期間存続するのは移植片体積のおよそ63%であることであるが、このことは少なくとも処置を2回行えば最適な結果が得られることを意味する。脂肪採取の侵襲性は最低限であるが、この手法に固有の時間、費用および回復が存在する。さらに、この採取は通常、手術室の設定を要する。患者の不快と回復時間を最小とするためには、費用対効果の良い装置および方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様によれば、細胞または組織の単離、精製、および保存装置が提供される。この装置は、脂肪細胞または脂肪組織を保持するフィルターで仕切られた内部チャンバーを規定する第1端と第2端とを有し、前記第2端と前記フィルターとの間の容積が少なくとも3mLである容器と;第1の開口部を規定する前記容器の第1端にあるルアーロックまたはスリップコネクターなどの第1のアダプターまたはコネクターと;前記容器の第2端にあって、第2の開口部を規定するルアーロックまたはスリップコネクターなどの第2のアダプターまたはコネクターとを含んでなる。
【0005】
本発明の別の態様によれば、脂肪移植片などの細胞の単離および保存において使用するためのキットが提供される。このキットは、2~25の細胞または組織の保存装置(各保存装置は、脂肪細胞または脂肪組織を保持するフィルターで仕切られた内部チャンバーを規定する第1端と第2端とを有し、前記第2端と前記フィルターとの間の容積が少なくとも3mLである容器と;第1の開口部を規定する前記容器の第1端にあるルアーロックまたはスリップコネクターなどの第1のアダプターまたはコネクターと;前記容器の第2端にあって、第2の開口部を規定するルアーロックまたはスリップコネクターなどの第2のアダプターまたはコネクターとを含んでなる)と;
少なくとも3mLの脂肪移植片などの細胞または組織を凍結保存することができる量の凍結保護剤を含んでなり、場合によりルアーロックまたはスリップコネクターなどのアダプターまたはコネクターを有する、少なくとも1つの容器とを含んでなる。
【0006】
本発明のさらに別の態様によれば、脂肪移植片を調製する方法が提供される。この方法は、脂肪組織を前記または本明細書のいずれかの態様による装置の第2の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入(例えば、注入)すること;前記脂肪移植片を凍結保存するために有効な量の凍結保護剤を前記装置の第1の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入すること;前記脂肪組織を前記凍結保護剤と混合すること;および前記脂肪移植片を0℃未満の温度に冷却することを含んでなる。
【0007】
本発明の別の態様では、脂肪移植片を調製する方法が提供される。この方法は、脂肪組織を前記または本明細書のいずれかの態様による装置の第2の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入(例えば、注入)すること;前記脂肪移植片を洗浄するために有効な量の洗浄溶液を前記装置の第1の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入すること;前記脂肪組織を前記洗浄溶液と混合すること;前記脂肪移植片を含有する装置を、前記第1の開口部を下にして遠心して、前記洗浄溶液から前記脂肪移植片を分離すること;および前記洗浄溶液を前記装置の第1端から排出することを含んでなる。
【0008】
本発明の別の態様では、脂肪組織を前記または本明細書のいずれかの態様による装置の第2の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入(例えば、注入)すること;前記脂肪移植片を洗浄するために有効な量の洗浄溶液または前記脂肪移植片を凍結保存するために有効な量の凍結保護剤を前記装置の第1の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入すること;および前記脂肪組織を前記洗浄溶液または前記凍結保護剤と混合すること;および洗浄溶液が導入される場合には、前記脂肪移植片を含有する装置を、前記第1の開口部を下にして遠心して、前記洗浄溶液から前記脂肪移植片を分離し、前記洗浄溶液を前記装置の第1端から排出すること、または凍結保護剤が導入される場合には、前記脂肪移植片を0℃未満の温度に冷却することを含んでなる、脂肪移植片を調製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本明細書に記載の脂肪収集物および保存装置の一態様を、フィルターを示す部分切取図で模式的に示す。
【
図2】
図2は、本明細書に記載の脂肪収集物および保存装置の一態様を、フィルターを示す部分切取図で模式的に示す。
【
図3】
図3Aは、
図3Cとともに、本明細書に記載の脂肪移植片などの組織移植片を保存する方法の一態様を部分的に模式的に示す。
図3Bは、本明細書に記載の方法およびキットにおいて使用するための保存装置の一態様を模式的に示す。
図3Cは、
図3Aとともに、本明細書に記載の脂肪移植片などの組織移植片を保存する方法の一態様を部分的に模式的に示す。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、実施例3に記載されるように、トリパンブルー染色液を用いた生存率に関するASC(脂肪由来幹細胞、
図4A)および脂肪細胞(
図4B)の分析結果を示す。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、実施例4に記載されるように、トリパンブルー染色液を用いたASC(
図5A)および脂肪細胞(
図5B)の生存率の分析結果を示す。
【発明の具体的な説明】
【0010】
本願に特定される種々の範囲における数値の使用は、特に断りのない限り、記載の範囲内の最小値と最大値の両方に「約」という言葉が付くかのような近似として記載される。このように、その範囲内の値と実質的に同じ結果を達成するために、記載の範囲の上下の若干の変動が使用可能である。また、特に断りのない限り、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間の総ての値を含む連続的範囲として意図される。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「右」、「左」、「上」、「下」、およびそれらの派生語は、描かれている図面のその配向通りに本発明に関連付けるべきである。しかしながら、本発明は様々な別の配向を仮定することができ、従って、このような用語は限定とみなされるべきでないと理解されるべきである。また、そうではないことが明示される場合を除き、本発明は様々な別の変形形態および段階の順序を仮定することができると理解されるべきである。また、添付の図面に示され、下記の明細書に記載される特定の装置および工程は例であると理解されるべきである。よって、本明細書に開示される実施形態に関連する特定の寸法およびその他の物理的特徴は、限定とみなされるべきではない。
【0012】
用語「遠位」および「近位」は、本明細書に記載の装置に関する方向を指し、「遠位」は、皮下注射器の鋭利な針先(針の遠位端)に接近する方向など、装置の使用者から遠ざかる方向を指し、「近位」は、シリンジの近位端にある鋭利な針先とは反対の方向の皮下注射器のプランジャーの末端に接近する方向など、装置の使用者へ向かう方法を指す。「遠位」と「近位」、および他の空間的関係の用語は、本明細書に記載の装置の要素の、経皮装置としての典型的な使用においての装置の末端使用に関する、または他の外部基準点に関する相対的な位置、配向、および/または方向に対応するが、これらの記述子は、本明細書に記載の装置の要素の、全体としての装置に関する、また、その要素に関する相対的な位置、配向、および/または方向を表すために提供されるに過ぎず、特に断りのない限り、これらの要素がいずれの時点であれそこに存在する、その位置にある、その配向にある、または末端使用者と何らかの物理的関係にあることを必要としない、または意味しない。図面は、特に断りのない限り、本質的に模式的であり、尺度に合わせて描かれていないが、図面に描かれる装置の種々の要素間の関係を最も良く表すように描かれている。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「含んでなる(“comprising”、“comprise”または“comprised”)」およびその変化形は、オープンエンドであることを意味する。用語「1つの(“a”および“an”)」は、1以上を指すことが意図される。
【0014】
本明細書で使用する場合、ある病態、創傷、または欠損の「治療(“treatment”または“treating”)」は、三尖弁または僧帽弁の修復および/または置換を含む所望の臨床/医療エンドポイントを達成する目的での、組成物、装置または構造の、任意の好適な投与計画、手順および/または投与経路による患者への投与を意味する。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「患者」または「対象」は、限定されるものではないが、ヒトを含む動物界のメンバーを指し、「哺乳動物」は、限定されるものではないが、ヒトを含む総ての哺乳動物を指す。
【0016】
本明細書では、生脂肪細胞または生脂肪組織を保存する簡単で費用対効果の高い方法が提供される。
【0017】
シリンジ、カニューレ、ならびに本明細書に記載の装置およびキットとともに使用するための「流体コネクター」は、例えば、医療分野で広く知られている小口径流体コネクター(例えば、ISO80369)と呼ばれるいずれの好適な流体コネクターであってもよい。一般的なコネクターには、皮下注射器などの医療・実験器具または機器とともに使用するために一般的であるように、スリップ式またはネジ式ルアーコネクターなどのスリップ式またはネジ式コネクターが含まれる。コネクターは、装置の適正な配向および使用を確保するために色または構造によって合わせることができる。
【0018】
「シリンジ」は、本明細書で使用する場合、医療分野で広く知られているように医療用または皮下注射器を指し、ガラス、プラスチック、セラミック、および/または任意の許容される材料から製造することができる。シリンジの構造および機能、ならびにその部品は広く知られている。「カニューレ」は、平滑末端を有する中空管であり、「針」は、本明細書に記載の装置およびキットの目的では、組織、例えば、皮膚、血管、または他の組織を容易に貫通するための鋭利なまたは尖った末端を有する中空管を指す。脂肪の吸引に関しては、刺創の可能性を低減するためにカニューレが好ましいものであり得る。カニューレを使用する場合、針、またはその他の「鋭利な」装置がまず患者の皮膚を貫通するために使用され得る。針およびカニューレは両方とも、広く知られているように、開口部と、針の場合には、鋭利なまたは尖った端部を含んでなる遠位端(患者への挿入のため)とを有する。それらは、シリンジの取り付けのためのルアーコネクターのなどの好適な流体コネクターを含んでなる近位端も有する。脂肪採取用のカニューレは、1以上の開口部がその遠位端と様々なパターンで隣接してカニューレの壁内にある、閉鎖端を含むことができる。このようなカニューレは、とりわけ、Tulip CellFriendly(商標)カニューレおよびカリフォルニア州サンディエゴのTulip Medical Productsまたはバージニア州シャーロッツヴィルのMicroAireから入手可能な採取用カニューレなど、広く入手可能である。
【0019】
「凍結保護剤」は、生細胞に添加して凍結温度、例えば、-20℃または-80℃などの0℃未満の温度への曝露(例えば、凍結保存)から細胞を保護することができ、その結果、細胞が凍結温度を受けた後に細胞の実質的生存率が得られる組成物である。凍結保護剤は一般に、細胞の保存に使用される場合には非毒性である。ヒト細胞の保護のために有用な好適な凍結保護剤には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒト血清アルブミン、トレハロース、および前記のものの任意の有効な組合せを含み、場合により、さらに自己血漿または自己血清も含む。10%v/v DMSOなどの凍結保護剤の有効量が当業者に知られており、凍結保護剤の有効量または最適量は容易に確認される。同様に、脂肪移植片の緩慢な冷却および解凍も採取した組織の良好な生存率を得る上で望まれ得る。脂肪細胞の凍結保存については下記の実施例2を参照。
【0020】
脂肪移植は、中空カニューレを介した皮下組織からの脂肪供与組織の吸引を含む外科的手法である。腹部が一般的な供与部位である。脂肪移植片は注射可能であり、これにより、採取手順と移植手順の両方が最小の侵襲性となる。脂肪移植片は、粘稠な注射可能スラリーを形成するおよそ2~5mm径という小粒子の脂肪組織から構成される。採取前にドナーの皮下組織にエピネフリンを含有する生理食塩水が注入される。この「湿潤溶液」の注入は出血を最小限にするだけでなく、移植前に分離する必要のある採取組織に水性の流体成分を与える。「コールマン法」と呼ばれる採取および移植の標準的技術では、10ccルアーロックシリンジに取り付けた中空採取カニューレを使用する。外科医は小切開部からカニューレを挿入し、プランジャーを後退させて陰圧をかける。カニューレが組織を通過すると、脂肪の小粒子は採取カニューレの開口部に引き込まれ、カニューレの移動で周囲組織から剥離され、注射筒に引き込まれる。水溶液は、湿潤溶液からの脂肪組織ならびに溶解した脂肪細胞からの遊離脂質へ混合されるので、脂肪移植片材料は簡単な卓上血液遠心機での穏やかな遠心分離によって他の画分から分離される。この装置は一般に脂肪移植に適合され、この目的でほとんどの手術室に存在する。濃縮された脂肪移植片は10ccシリンジからレシピエントの組織に注射することもでき、より厳密な注射のためにより小型のシリンジに移すこともできる。
【0021】
注射のためには、採取カニューレによく似た中空カニューレを注射筒に取り付ける。一般的な脂肪移植機器は総て、ルアーコネクターに取り付けられるように設計され、このことは本明細書に記載の装置の一態様の設計においても考慮される。重要なこととして、外科医は、脂肪をそのまま採取用に用いる10ccシリンジに入れて、手術室で遠心工程を実施することになれている。シリンジプランジャーが単に取り外され、10ccの注射筒が遠心機の無菌チューブに適合する。この点は、複数の態様で、記載の装置は標準的な、例えば10ccの注射筒と同じ直径および基本長を有することから、装置設計に直接関連する。よって、脂肪組織保存装置は、コンテナを変える必要なく解凍後の洗浄工程を容易にするように遠心機に適合し得る。保存装置は、脂肪移植を実施する外科医により慣用される現行の器具および方法とシームレスに機能するように作製される。
【0022】
自家脂肪移植の主要な欠陥は、初期癒合の際に脂肪移植片の吸収があり、癒合後に残存するのは移植片の体積のおよそ60%であるということである。従って、多くの場合複数回の処置が必要である。脂肪移植片を得るためのドナー採取法は手術室の設定および脂肪組織を処理するための特殊な器具を要するので、脂肪組織が手術の時点で後の使用のために保存できれば、費用、リスク、不快感が著しく軽減し、医療が改善される。組織は現場において小アリコートで保存することができ、これを結果の精密化のために診療室の設定で損傷部位に注入することができる。組織は現場で保存されるので、元の脂肪採取と元の脂肪処理に最小の費用を追加するだけで複数回の処置が可能となる。
【0023】
複数の態様で、装置は、凍結保存剤、ならびに脂肪移植片を凍結保存剤と混合するため、保存のため、および解凍後の洗浄工程のために使用される特殊な多機能容器を含んでなるキットで提供される。一例では、個々の容器はそれぞれおよそ10ccの移植片材料を保持し、絶えず温度を記録し、継続保存のために他の容器を保存しながらアリコートを個々に取り出すことを可能とする特殊な保存コンテナ内で一緒に保存される。個々の容器を保持する大きな保存コンテナを各キットに含めてもよい。
【0024】
複数の態様で、個々の使い捨て多機能容器は、そのシステムが脂肪移植に使用される標準的なシリンジと接続できるようにルアーロックポートを有する。内蔵フィルターは、脂肪移植片材料を取り出すことなく、凍結保護剤溶液と洗浄溶液の両方の注入および排出を可能とする。脂肪移植片材料を添加する工程、凍結保護剤と混合する工程、冷凍庫で保存する工程、解凍する工程、洗浄する工程、および濾過する工程は総て同じ容器で行う。これはこのシステムの明白な利点である。ルアーロックコネクターに加え、装置は場合により、所望により、またはルアーロックポートの閉塞が起こった場合に脂肪移植片を別の無菌コンテナに注ぐことを可能とするために一端を開口することもできる。上記に示したように、一態様において、多機能容器は、標準的な10ccシリンジと同じ直径であり、ほぼ同じ長さであり、それらは脂肪移植に既に使用されているものと同じ、手術室に一般に見られる卓上遠心機で使用することができる。
【0025】
本明細書に記載の装置、キットおよび方法の利点としては、下記が挙げられる:
組織移植片が現場において極めて簡単な調製かつ低コストで保存できること;
脂肪移植片のアリコートが保存場所から取り出せ、残っているアリコートがその後の使用のために無傷で残されること;
脂肪移植片の混合、保存、および洗浄が総て同じ使い捨て多機能容器で行われること;
多機能容器が慣用される脂肪移植片器具および標準的シリンジとシームレスに機能するように設計されていること;および
この器具の使用が脂肪移植を実施するいずれの外科医にも極めて直感的に理解されるものであること。
【0026】
よって、本明細書では、脂肪細胞および脂肪組織の採取および保存において使用するための装置、キットおよび方法が提供される。一態様において、保存容器が提供される。
図1を参照すると、円筒装置10が描かれている。装置10およびその部品は、生理学的温度(37℃)から凍結保存条件下での保存まで、例えば、-20℃、-80℃、または-196℃(液体窒素)までに及ぶ細胞および組織凍結保存条件に耐えるのに好適な材料、凍結保存分野および遠心分離分野で知られているように、例えば、好適なポリカーボネートまたはポリプロピレン、および好適な金属スクリーンまたはフィルターから製造される。複数の態様では、装置10は、装置(例えば、チューブ、ボトル、またはシリンジ)を遠心することができる典型的な臨床検査遠心機に適合する寸法とし、すなわち、一態様において、この装置は、例えば、典型的な5mL~100mL、例えば、5mL、10mL、15mL、20mL、30mL、もしくは60mL医療用シリンジ、典型的な5mL~50mL、遠心管(例えば、円錐型遠心管)、または典型的な採血管としての寸法とし、すなわち、5mm~25mm、例えば、12mm~25mmの外径、および70mm~110mmの長さ(コネクターを除く胴長)を有する。例えば、10mLシリンジと併用するための保存容器は、16.5mm~18mmの範囲の外径、および80mm~90mmの範囲の胴長を有し得る。一例では、胴長と胴外径の比は、少なくとも4:1、例えば、4:1~6:1である。複数の態様で、装置10はカスタムサイズであるが、遠心機の、カスタムもしくは標準ローターまたはカスタムもしくは標準ローターインサートのいずれかを有するローターに適合し、その容積は3mL~100mLの範囲であるか、またはそれより大きい。「1mL~4Lの範囲の容積を有するチューブ、ボトル、またはシリンジを遠心することができる遠心機」とは、手術室、臨床検査室、外来患者施設、および診療所に一般に見られる遠心機、またはカスタム遠心機であり、10mL管など、1mL~4Lの範囲内にある容積を有する装置を遠心することができるが、必ずしもその範囲の総ての容積を遠心する能力を有していなくてもよい。例えば、「1mL~4Lの範囲の容積を有するチューブ、ボトル、またはシリンジを遠心することができる遠心機」は、3mL~30mL、または10mL~60mLの範囲のチューブのみを遠心することができ、範囲外のチューブは遠心することができなくてもよい。
【0027】
図1を再び参照し、装置10は、壁面と内部チャンバー(すなわち、内部空洞、または内腔)を有する円筒状のバレル20として描かれる容器を含んでなる。この容器はバレルとして描かれるが、円筒状のバレル形状が好ましいが、いずれの好適な形状であってもよい。装置10はまた、第1の流体コネクター22を通ってバレル20の内腔へ延伸する開口部23を含んでなる第1の流体コネクター22を有する第1端と、第2の流体コネクター24を通ってバレル20の内腔へ延伸する開口部25を含んでなる第2の流体コネクター24を有する第2端とを含んでなる。第1の流体コネクター22、バレル20、および第2の流体コネクター24は一緒に、第1の流体コネクター22の開口部と第2の流体コネクター24の開口部との間に閉流路を形成する。フィルター30は、バレル20内に、第1の流体コネクター22に隣接して配置され、第1の流体コネクター22の開口部と第2の流体コネクター24の開口部との間の閉流路を通過する液体を濾過するように構成される。すなわち、フィルター30は、第1の流体コネクター22の開口部と第2の流体コネクター24の開口部との間の閉流路を通過する流体がフィルター30を通過するように、バレルの内腔の全横断面に及んでいる。フィルター30は、例えば、-196℃~37℃の範囲の凍結保存温度に耐え得るいずれの好適な材料、例えば、金属メッシュ、例えば、ステンレス鋼メッシュから製造することができる。このフィルターは、使用中に大部分の脂肪組織がフィルターによって保持されるように、いずれの好適な孔径またはメッシュサイズであってもよく、例えば、50ミクロン(μ)~250μの範囲のフィルター、またはフィルター目的を果たす他の多孔質遮蔽物などであってもよい。バレル20は、その第2端とフィルター30の間の内部容積が3mL~100mLの範囲、例えば、およそ5mL、10mL、15mL、20mL、25mL、30mL、50mL、60mL、または100mLであり、その間の刻みは、例えば、限定されない一例では、10ccシリンジを用いて得られる組織容積を収容するために9mL~15mLである。装置10は場合により、バレル20の内部チャンバーに生細胞または生組織、例えば、生脂肪細胞または生脂肪組織、例えば、脂肪移植片、例えば、ヒト脂肪移植片を含んでなる。
【0028】
この装置は、生存脂肪移植片の洗浄およびペレット化に典型的な遠心条件に耐えるよう、少なくとも500g、例えば少なくとも1000g、1200g、または1500gのG力(地球表面での重力1gの倍数)に耐えるように設計および製造される。生存細胞をもたらす脂肪移植片の調製に使用される一般的な遠心条件およびプロトコールは様々あり、G力は1~5分の典型的回転持続時間で一般に400g~1500gの範囲であり、例えば、以下に示すように、3分間で1200gである。
【0029】
図2は、装置11の第2の態様を示し、第1のバレル部分26とスリップフィッティング29を含む第2のバレル部分28に分かれる分離可能なバレルを有すること以外は
図1に示される装置10と本質的に同一である。バレル部分26と28に分離可能である目的は、万一装置が閉塞した場合に装置11のバレルを開放して内容物を放出することを可能とするためである。装置11は、第1の流体コネクター22からバレル20の内腔へ延伸する開口部23を含んでなる第1の流体コネクター22を有する第1端と、第2の流体コネクター24から第1のバレル部分26と第2のバレル部分28により形成されるバレルの内腔へ延伸する開口部25を含んでなる第2の流体コネクター24を有する第2端とを含んでなる。スリップフィッティング29は、使用中にバレルを効果的に密閉し、バレル部分26と28の分離を防ぐために第1のバレル部分の内面と係合するように構成される。あるいは、使用中にバレル部分26および28の分離を防ぐためには、フィッティング29が、バレル部分26と28がかみ合うように、フィッティングの嵌合山と第1のバレル部分26の内面の谷などの好適な構造要素を含んでもよい。別の態様では、フィッティング29はネジ式であり、かつ、バレル部分が螺合し、第1のバレル部分26を第2のバレル部分28から分離するために互いに対してねじることができるように、第1のバレル部分26の内面はネジ式またはタップ式である。フィッティング29は、第2のバレル部分26と一体として示され、あるいは、逆にすることもでき、すなわち、それは第1のバレル部分29と一体である。
【0030】
本明細書に記載され、
図1の装置10に例示される保存容器を用いて生脂肪細胞または生脂肪組織(脂肪移植片)を処理および保存、例えば、凍結保存するための方法が提供される。
図3A~3Cは、脂肪移植片の保存、例えば、凍結保存に有用な方法およびキットの要素を示す。
図3aを参照し、脂肪移植片113、すなわち、吸引したばかりの脂肪組織および脂肪細胞を、シリンジ112に引き込む。脂肪移植片113を前記シリンジから装置110、例えば、本質的には
図1に示されるような装置10(要素は
図1の装置10に関して特定されるように参照)の第2端(フィルターとは反対の端部)に注入する。前記容器をシリンジ112から取り外し、凍結保護剤114を装置110の第1端(フィルターを有する端部)に注入する142。装置110の第2端に蓋をして144、その後、装置110の第1端に蓋をする146。その後、装置110を振盪して脂肪移植片と凍結保護剤の混合物115を作成する。この工程を所望の回数繰り返し、例えば、患者から1~25本のチューブの脂肪(脂肪移植片)を採取し、その脂肪移植片を凍結保護剤と混合する。次に、脂肪移植片を0℃未満の温度、例えば、-20℃、-80℃で、または液体窒素中で保存する150。本明細書で使用する場合、「混合」は、振盪、倒置、振盪水浴中に置く、ボルテックス混合機での穏やかな混合、または装置内で細胞の生存力に実質的な影響を及ぼさない任意の好適な方法を含む、いずれの方法によってもよい。
【0031】
図3Bは、脂肪移植片を保存するためのキットの一部として流通可能な例示的脂肪保存コンテナ152を示す。コンテナ152は、示されているように、凍結保護剤を混合した脂肪移植片を含有する5本の充填済み保存装置110を収容する。コンテナ152、患者に関する表示を含む個々の患者ラベルを貼付した保存容器が示され、コンテナ152は、安全シールならびに患者情報および脂肪移植片の保存日を含む表示を含む外ラベルも含む。また、脂肪移植片の温度変化を追跡するために温度記録計(例えば、広く知られているように電気温度記録計または温度ロガー)も含まれる。コンテナは好適な数の保存装置110を保持するのに十分ないずれの形状およびサイズとすることもでき、脂肪移植片の保存に伴う温度変化に耐え得るいずれの好適な材料から製造されてもよい。
【0032】
ここで
図3Cを参照し、例えば、組織充填材としての脂肪移植片の使用に関して、脂肪移植片と凍結保護剤の混合物115を含有する保存容器を、例えば、氷上、または冷蔵庫、例えば、4℃などの適当な条件下で解凍し、脂肪移植片113’を凍結保護剤114’から分離するために容器内で遠心し154、次いで、凍結保護剤114’を容器の第1端から抜き取る156。本明細書の目的で、脂肪移植片を、移植片の生存力を保持、最適化、または最大化しつつ、脂肪移植片が分散している液体(例えば、凍結保護剤または洗浄溶液)のほとんどから脂肪移植片を効果的に分離するのに好適なG力を好適な時間生み出すのに好適な速度(RPM)で好適な時間遠心する。脂肪組織は凍結保護剤と洗浄溶液上に浮遊しているので、これらの容器は第1端を下にして遠心する。
【0033】
洗浄溶液115、例えば、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、無血清培地、または任意の好適な洗浄溶液を容器の第1端に導入し158、蓋をして振盪し160、洗浄溶液と脂肪移植片の混合物116を作製する。この容器を上記のように遠心して(図示せず)、細胞から洗浄溶液115’を分離し、洗浄溶液115’を容器から抜き取る162。洗浄工程158、160、および162を、凍結保護剤、遊離脂質、および細胞屑を除去するのに必要とされる回数、例えば、2~6回、例えば、3回繰り返す。遠心後、遊離脂質が存在すれば、脂肪移植片の上層にある。遊離脂質は傾斜法で除去することができる。容器を逆転させ、洗浄された脂肪移植片113’を容器からシリンジへ抜き取り164、患者に注射する準備が整う。場合により、遊離脂質は、洗浄溶液115’の除去後、患者に送達するために脂肪移植片113’’をシリンジに移す164および166前に脂肪移植片から除去される。
【0034】
遠心は特に効果的であり、迅速であるが、細胞または組織はいずれの有用な方法を用いて液体から分離してもよい。例えば、限定されるものではないが、凍結保護剤または洗浄溶液と混合された細胞もしくは組織材料は、例えば、限定されるものではないが、細胞または組織層を液層から分離するのに十分な時間、好適なラック内に装置を配置および保持することにより(分離される液体の一層または複数層の場所によって、その後、液体が装置から抜き取られるか、または傾斜法により除去される)、遠心機を用いずに分離することもできる。細胞または組織が脂肪移植片である場合、脂肪移植片は一般に凍結保護剤または洗浄溶液よりも低比重であり、この場合、分離されたところで、高密度の液体が装置の第1の開口部から抜き取られる。脂肪移植片より低比重の無細胞脂質は、装置の第2の開口部から傾斜法により除去することができる。
【0035】
脂肪移植片を装置110に注入した後、脂肪移植片と凍結保護剤を混合する142前に、脂肪移植片を上記のように(156、158、160、162)、PBSまたは生理食塩水などの好適な洗浄溶液で洗浄することができ、遊離脂質を遠心後に除去、例えば傾斜法により除去することができる。解凍および洗浄後、脂肪移植片を使用前に、移植片をコラゲナーゼで処理し、濾過して構造断片を除去し、場合により、前駆細胞、例えば、脂肪由来幹細胞(ASC)を含んでなる間質血管画分(SVF)を含む他の細胞要素から脂肪細胞を分離するために遠心することにより、例えば、SVFの細胞をプラスチックに接着させることによるなどで、さらに処理することができる。
【0036】
一態様において、脂肪移植片などの移植片の保存において使用するためのキットが提供される。このキットは、上記および本明細書の他所に記載される方法に記載されるように、ボックス、成形コンテナまたはインサート、内容物を識別し、キットの要素の使用方法を概説する好適な表示を含む、キットの要素に好適なパッケージングを含んでなる。少なくとも、このキットは、本明細書に記載されるような、例えば、
図1または
図2に関して記載されるような2以上の保存容器を含んでなる。このキットはまた、場合により、本明細書に記載の凍結保護剤を、キットの容器に引き込まれ得る容積の移植片、例えば、脂肪移植片を凍結保護するのに有効な量で含んでなる1以上の容器を含んでなる。例えば、10mLシリンジに引き込まれる脂肪移植片とともに使用するための2つの10mL保存容器の場合、20mLの脂肪移植片材料の凍結保護に有効であろう量の凍結保護剤が提供される。上記のように、DMSO、ヒト血清アルブミン、またはトレハロース、または前記のいずれかの有効な組合せなど、いずれの好適な凍結保護剤が容器に含まれてもよい。凍結保護剤は、1つの多回使用容器に含むこともできるし、または個々に、単一の容器で吸引組織を処理するのに十分な凍結保護剤だけを含有する単回使用容器に含むこともできる。このキットはまた、好適な洗浄溶液を、キットの容器の数および大きさに適当な量で含んでなる容器を含んでもよい。場合により凍結保護剤または洗浄溶液を含有するこれらの容器は、シリンジと併用するための、ルアーコネクターなどの好適なコネクターを含んでなる。このキットはまた、場合により、患者から脂肪サンプルを得るためのまたは本明細書に記載の移植片を処理するための1以上の無菌シリンジを含んでなる。また、脂肪採取カニューレもキットに含まれてよい。加えて、例えば、
図3Bに関して示され、記載されるように、保存コンテナがキットに含まれてよく、場合により、下記のうち1以上を含む:保存容器用のラベル、保存コンテナ用のラベル、温度ロガー、またはコンテナの内容物に対するいたずらを示すための安全シール。一例では、キットは、好適なパッケージング内に、5、10、15、20、または25の保存容器、凍結保護剤を含んでなる1以上の容器、洗浄溶液を含んでなる1以上の容器、および場合により温度ロガーを含む保存容器を含んでなる。
【実施例】
【0037】
実施例1
本明細書に記載の装置が処理に耐え、液体から脂肪を効果的に分離するか判定するために、
図1、3A、および3Cに示されるような装置および方法を使用し、10mLシリンジ、および示されているように装置の第1端に100μステンレス鋼スクリーンが配置され、相互に溶媒溶着された2本の10mLシリンジの遠位端から作製された、本質的に
図1に示されるような保存容器を用いて、手術から回収した新鮮なヒト脂肪移植片組織廃棄物を処理した。凍結保護剤および洗浄溶液の代わりにいずれも生理食塩水(0.9%生理食塩水)を使用した。本プロトコールを通して、脂肪移植片を1200gで3分間遠心した。最終洗浄の後、患者に移入するために脂肪移植片をシリンジに引き込む前に余分な脂質を傾斜法により除去した。
【0038】
実施例2
組織サンプル
ピッツバーグ大学の整形外科で51歳の女性ドナーから腹部脂肪吸引術を行った。本試験は治験審査委員会により承認された。
【0039】
凍結保存溶液
5%および10%(V/V)濃度のPBS中ジメチルスルホキシドDMSO(Sigma)を細胞内凍結保護剤として使用した。細胞外凍結保存を達成するために、2%ヒトアルブミン(Invitrogen)を単独または0.25Mトレハロース(Sigma)と組み合わせて使用した。下記の4つの組合せの凍結保護剤溶液を、新鮮な非凍結保存脂肪吸引物を用いて比較した。
1-10%DMSO+2%アルブミン
2-10%DMSO+2%アルブミン+0.25Mトレハロース
3-5%DMSO+アルブミン
4-5%DMSO+アルブミン+0.25Mトレハロース
【0040】
凍結および解凍手順
細胞内氷晶の形成を避ける目的で脂肪吸引物を凍結保存するために2種類の異なる凍結条件を用いた:(1)毎分1℃の低下速度で-80℃まで制御凍結;および(2)-80℃の冷凍庫にて発泡スチロールボックスで凍結。脂肪吸引物を、500gで5分間遠心することによりリン酸緩衝生理食塩水PBS(Dulbecco)で2回洗浄した。上の油層と下の液層を取り出す。洗浄後、10mLの脂肪吸引物を50mLファルコンチューブに加え、等容量の氷冷凍結保存剤を加えた。制御凍結サンプルを-80℃の冷凍庫に移した。48時間後、サンプルを37℃の水浴中で解凍した。解凍した組織サンプルをPBSで2回洗浄して凍結保存剤を除去した。
【0041】
脂肪吸引物の消化
新鮮な脂肪吸引物と解凍した脂肪吸引物を、コラゲナーゼ酵素を用いて消化した。簡単に述べれば、10mLの脂肪吸引物を0.8mg/mlのII型コラゲナーゼ(Worthington、NJ)/3%BSA/HBSS(Sigma)中、37℃の振盪水浴内で75分間インキュベートした。消化溶液を無菌ガーゼに通して構造断片を除去し、200gで5分間遠心した。上の脂肪細胞層を別のチューブに回収し、間質血管画分ペレットをACK赤血球溶解バッファーで処理し、70μmセルストレーナーに通し、遠心し(200g、5分)、DMEM、10%FBS培地に再懸濁させた。
【0042】
細胞生存率分析
脂肪細胞およびSVF細胞の生存率を、Countessセルカウンター(Invitrogen)を製造者のプロトコールに従って用いて分析した。
【0043】
細胞培養
間質血管画分細胞を25cm2フラスコのDMEM/10%FCS/ゲンタマイシン培地中に、10000細胞/cm2の割合で播種した。細胞を37℃、5%CO2の存在下でインキュベートした。培地を2日毎に交換し、8日後に細胞を計数した。
【0044】
組織学的研究
脂肪吸引物を10%ホルマリン緩衝生理食塩水(Fisher Scientific)中で48時間固定した。固定組織をパラフィンに包埋し、切断して3~5μmの切片を得た。ヘマトキシリンおよびエオジン染色を行って構造物を可視化した。
【0045】
実施例3-凍結保存試験
方法:脂肪吸引物をPBSで洗浄し、下の液層と上の脂肪層を取り出した。等量の脂肪吸引物(10mL)を制御された温度降下で凍結させ、発泡スチロールボックス内で-80℃にて冷凍した。凍結吸引物を48時間後に37℃で解凍し、PBSで洗浄した。コラゲナーゼで消化した後、ASC(
図4A)および脂肪細胞(
図4B)を、トリパンブルー染色液を用い、生存に関して分析した。新鮮脂肪から単離された生存細胞の%を100%とし、凍結保存後の生存細胞のパーセンテージを計算し、プロットした。Al=アルブミン、Th=トレハロース
【0046】
実施例4-凍結保存試験
方法:脂肪吸引物をPBSで洗浄し、下の液層と上の脂肪層を取り出した。等量の脂肪吸引物(7mL)を液体窒素中で急速凍結させたか、または温度交換を引き下げるためにクライオボックス内で、-20℃その後-80℃で4時間を含む緩慢凍結を行った。両方の凍結条件に関して、下記の凍結保存剤(CPA)設定を用いた:1)CPA無し;2)2%アルブミン;および3)2%アルブミン+5%DMSO。凍結吸引物を48時間後に37℃で解凍し、PBSで洗浄した。コラゲナーゼで消化した後、ASC(
図5A)および脂肪細胞(
図5B)を、トリパンブルー染色液を用い、生存に関して分析した。
【0047】
下記に符番した項は、本発明の種々の限定されない態様を記載する。
【0048】
1.脂肪細胞または脂肪組織を保持するフィルターで仕切られた内部チャンバーを規定する第1端と第2端とを有し、前記第2端と前記フィルターとの間の容積が少なくとも3mLである容器と;第1の開口部を規定する前記容器の第1端にあるルアーロックまたはスリップコネクターなどの第1のアダプターまたはコネクターと;前記容器の第2端にあって、第2の開口部を規定するルアーロックまたはスリップコネクターなどの第2のアダプターまたはコネクターと;
を含んでなる、細胞または組織の単離、精製、および保存装置。
【0049】
2.例えば、チューブ、ボトル、シリンジ、または装置などのコンテナを遠心することができる遠心機に適合する寸法であるか、または1mL~4Lの範囲の容積を有する、第1項に記載の装置。
【0050】
3.少なくとも500g、例えば少なくとも1000g、1200g、または1500gのG力での遠心に耐えるように作製された、第1項または第2項に記載の装置。
【0051】
4.前記容器の内部チャンバーが5mL~100mLの範囲、例えば、5mL、10mL、15mL、30mL、または50mLの容積を有する、第1項~第3項のいずれか一項に記載の装置。
【0052】
5.1mL~4Lの範囲内の容積を有する、例えば、チューブ、ボトル、またはシリンジなどのコンテナを遠心することができる遠心機に適合する寸法である、第1項~第4項のいずれか一項に記載の装置。
【0053】
6.前記フィルターが前記容器の第1端よりも前記容器の第2端に近接している、第1項~第5項のいずれか一項に記載の装置。
【0054】
7.前記容器が連続封止された容器を形成する2つの分離可能な部材を含んでなり、それらの部材は、前記容器の第2端よりも前記容器の第1端に近接した箇所で、場合により、前記容器の第1端に隣接してスリップコネクターまたはスクリューコネクターにより接続されている、第1項~第6項のいずれか一項に記載の装置。
【0055】
8.前記フィルターが100ミクロン(μ)フィルターである、第1項~第7項のいずれか一項に記載の装置。
【0056】
9.前記第1のアダプターおよび/または前記第2のアダプターがルアーロックアダプターである、第1項~第8項のいずれか一項に記載の装置。
【0057】
10.前記第1のアダプターおよび前記第2のアダプターがルアーロックアダプターである、第1項~第9項のいずれか一項に記載の装置。
【0058】
11.円筒状の横断形状を有する、第1項~第10項のいずれか一項に記載の装置。
【0059】
12.10mL医療用注射筒の直径を有する、第1項~第11項のいずれか一項に記載の装置。
【0060】
13.前記容器が16.5~18mmの範囲の外径と80mm~90mmの範囲の長さを有する、第12項に記載の装置。
【0061】
14.前記容器の、フィルターと容器の第1端の間の内部容積が5mL以上、例えば、8mL~10mLの範囲である、第1項~第11項のいずれか一項に記載の装置。
【0062】
15.前記容器が5mm~25mmの範囲の外径と70mm~110mmの範囲の長さを有する、第1項~第11項のいずれか一項に記載の装置。
【0063】
16.前記容器のバレル長とバレル外径の比が少なくとも4:1、または4:1~6:1である、第1項~第15項のいずれか一項に記載の装置。
【0064】
17.生脂肪細胞などの生細胞と場合により凍結保護剤を、前記容器の内部チャンバーの、前記容器の第1端と前記フィルターの間に含んでなる、第1項~第16項のいずれか一項に記載の装置。
【0065】
18.2~25の細胞または組織の保存装置(各保存装置は、脂肪細胞または脂肪組織を保持するフィルターで仕切られた内部チャンバーを規定する第1端と第2端とを有し、前記第2端と前記フィルターとの間の容積が少なくとも3mLである容器と;第1の開口部を規定する前記容器の第1端にあるルアーロックまたはスリップコネクターなどの第1のアダプターまたはコネクターと;前記容器の第2端にあって、第2の開口部を規定するルアーロックまたはスリップコネクターなどの第2のアダプターまたはコネクターとを含んでなる)と;さらに
少なくとも3mLの脂肪移植片などの細胞または組織を凍結保存することができる量の凍結保護剤を含んでなり、場合によりルアーロックまたはスリップコネクターなどのアダプターまたはコネクターを有する、少なくとも1つの容器と;
を含んでなる、脂肪移植片などの細胞の単離および保存において使用するためのキット。
【0066】
19.前記装置が、1mL~4Lの範囲の容積を有する、例えば、チューブ、ボトル、シリンジ、または装置などのコンテナを遠心することができる遠心機に適合する寸法である、第18項に記載のキット。
【0067】
20.前記装置が少なくとも500g、例えば少なくとも1000g、1200g、または1500gのG力での遠心に耐えるように作製された、第18項または第19項に記載のキット。
【0068】
21.前記容器の内部チャンバーが5mL~100mLの範囲、例えば、5mL、10mL、15mL、30mL、または50mLの容積を有する、第18項~第20項のいずれか一項に記載のキット。
【0069】
22.1mL~4Lの範囲の容積を有する、例えば、チューブ、ボトル、またはシリンジなどの遠心コンテナに適合する寸法である、第18項~第21項のいずれか一項に記載の装置。
【0070】
23.保存容器および/または保存コンテナに表示を行うためのラベルを場合により含む、前記2~25の細胞または組織の保存装置を保存するように構成された保存コンテナをさらに含んでなる、第18項~第22項のいずれか一項に記載のキット。
【0071】
24.場合により前記保存コンテナに取り付けられてもよい温度ロガー(温度記録計)をさらに含んでなる、第18項~第23項のいずれか一項に記載のキット。
【0072】
25.前記フィルターが前記2~25の容器の1以上の、または総ての第1端よりも前記容器の第2端に近接している、第18項~第24項のいずれか一項に記載のキット。
【0073】
26.前記2~25の容器の1以上の、または総てが連続封止された容器を形成する2つの分離可能な部材を含んでなり、それらの部材は、前記容器の第2端よりも前記容器の第1端に近接した箇所で、場合により、前記容器の第1端に隣接して、スリップコネクターまたはスクリューコネクターにより接続されている、第18項~第25項のいずれか一項に記載のキット。
【0074】
27.前記2~25の容器の1以上の、または総てのフィルターが100ミクロン(μ)フィルターである、第18項~第26のいずれか一項に記載のキット。
【0075】
28.前記2~25の容器の1以上の、または総ての第1のアダプターおよび/または第2のアダプターがルアーロックアダプターである、第18項~第27項のいずれか一項に記載のキット。
【0076】
29.前記2~25の容器の1以上の、または総ての第1のアダプターおよび第2のアダプターがルアーロックアダプターである、第18項~第27項のいずれか一項に記載のキット。
【0077】
30.前記2~25の容器の1以上の、または総てが円筒状の横断形状を有する、第18項~第29項のいずれか一項に記載のキット。
【0078】
31.前記2~25の容器の1以上の、または総てが10mL医療用注射筒の直径を有する、第18項~第30項のいずれか一項に記載のキット。
【0079】
32.前記2~25の容器の1以上の、または総ての、フィルターと容器の第1端の間の内部容積が5mL以上、例えば、8mL~10mLの範囲である、第18項~第31項のいずれか一項に記載のキット。
【0080】
33.前記2~25の容器の1以上、または総てが5mm~25mmの範囲の外径と70mm~110mmの範囲の長さを有する、第18項~第31項のいずれか一項に記載のキット。
【0081】
34.前記2~25の容器の1以上、または総てが16.5~18mmの範囲の外径と80mm~90mmの範囲の長さを有する、第18項~第31項のいずれか一項に記載のキット。
【0082】
35.前記2~25の1以上、または総てのバレル長とバレル外径の比が少なくとも4:1、または4:1~6:1である、第18項~第31項のいずれか一項に記載のキット。
【0083】
36.前記凍結保護剤がジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒト血清アルブミン、トレハロース、またはDMSOとhSAの組合せなどの前記のいずれかの2種類以上の組合せ、例えば、5%~10%(v/v)DMSOと2%(w/v)hSAの組合せを含んでなる、第18項~第35項のいずれか一項に記載のキット。
【0084】
37.脂肪組織を第1項~第16項のいずれか一項に記載の装置の第2の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入(例えば、注入)すること;前記脂肪移植片を凍結保存するために有効な量の凍結保護剤を前記装置の第1の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入すること;前記脂肪組織を前記凍結保護剤と混合すること;および前記脂肪移植片を0℃未満の温度に冷却することを含んでなる、脂肪移植片を調製する方法。
【0085】
38.前記装置が1mL~4Lの範囲の容積を有する、例えば、チューブ、ボトル、シリンジ、または装置などのコンテナを遠心することができる遠心機に適合する寸法である、第37項に記載の方法。
【0086】
39.前記装置が少なくとも500g、例えば少なくとも1000g、1200g、または1500gのG力での遠心に耐えるように作製された、第37項または第38項に記載の方法。
【0087】
40.前記脂肪移植片を冷却した後、前記脂肪移植片の温度を上げて前記脂肪移植片を解凍することをさらに含んでなる、第37項に記載の方法。
【0088】
41.凍結または解凍中の前記脂肪移植片の温度変化が毎分2℃以下、または毎分1℃以下である、第37項~第40項のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
42.前記脂肪移植片を前記凍結保護剤から分離すること;前記凍結保護剤を前記装置の第1端から抜き取ること;および前記脂肪移植片を洗浄するために有効な量の洗浄溶液を前記装置の第1端に導入し、前記洗浄溶液を前記脂肪移植片と混合し、前記脂肪移植片を前記洗浄溶液から分離し、前記洗浄溶液を前記装置の第1端から抜き取ることにより、前記脂肪移植片を洗浄することをさらに含んでなる、第37項~第41項のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
43.解凍された脂肪移植片を含有する前記装置を、前記第1の開口部を下にして遠心して、前記脂肪移植片を前記凍結保護剤から分離すること;前記凍結保護剤を前記装置の第1端から抜き取ること;および前記脂肪移植片を洗浄するために有効な量の洗浄溶液を前記装置の第1端に導入し、前記洗浄溶液を前記脂肪移植片と混合し、前記脂肪移植片を含有する装置を、前記第1の開口部を下にして遠心して、前記脂肪移植片を前記洗浄溶液から分離し、前記洗浄溶液を前記装置の第1端から抜き取ることにより、前記脂肪移植片を洗浄することをさらに含んでなる、第37項~第41項のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
44.前記脂肪移植片が2~6回洗浄される、第42項または第43項に記載の方法。
【0092】
45.前記洗浄溶液がリン酸緩衝生理食塩水または生理食塩水(例えば、0.9%w/v生理食塩水)である、第42項~第44項のいずれか一項に記載の方法。
【0093】
46.前記凍結保護剤がジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒト血清アルブミン(hSA)、トレハロース、またはDMSOとhSAの組合せなどの前記のいずれかの組合せ、例えば、5%~10%(v/v)DMSOと2%(w/v)hSAの組合せを含んでなる、第37項~第45項のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
47.脂肪組織を第1項~第15項のいずれか一項に記載の装置の第2の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入(例えば、注入)すること;前記脂肪移植片を洗浄するために有効な量の洗浄溶液を前記装置の第1の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入すること;前記脂肪組織を前記洗浄溶液と混合すること;前記脂肪移植片を含有する装置を前記第1の開口部を下にして遠心して、前記脂肪移植片を前記洗浄溶液から分離すること;および前記洗浄溶液を前記装置の第1端から抜き取ることを含んでなる、脂肪移植片を調製する方法。
【0095】
48.脂肪組織を第1項~第15項のいずれか一項に記載の装置の第2の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入(例えば、注入)すること;前記脂肪移植片を洗浄するために有効な量の洗浄溶液または前記脂肪移植片を凍結保存するために有効な量の凍結保護剤を前記装置の第1の開口部から前記装置の内部チャンバーに導入すること;および前記脂肪組織を前記洗浄溶液または前記凍結保護剤と混合すること;および洗浄溶液が導入される場合には、前記脂肪移植片を含有する装置を、前記第1の開口部を下にして遠心して、前記洗浄溶液から前記脂肪移植片を分離し、前記洗浄溶液を前記装置の第1端から抜き取ること、または凍結保護剤が導入される場合には、前記脂肪移植片を0℃未満の温度に冷却することを含んでなる、脂肪移植片を調製する方法。
【0096】
49.洗浄溶液が、前記脂肪移植片が前記装置に導入された後に前記装置に導入され;前記洗浄溶液と前記脂肪移植片が混合され;前記脂肪移植片を含有する装置が前記第1の開口部を下にして遠心されて、前記脂肪移植片が前記洗浄溶液から分離され;前記洗浄溶液が前記装置の第1端から抜き取られる、第48項に記載の方法。
【0097】
50.前記凍結保護剤が、前記脂肪移植片が前記装置に導入された後に前記装置に導入され;前記凍結保護剤と脂肪移植片が混合され、前記脂肪移植片が0℃未満の温度に冷却される、第48項に記載の方法。
【0098】
これらの実施形態は様々な例に関して記載されている。以上の例を読み、理解すれば、他者も修飾および変更に容易に想到するであろう。よって、以上の例は本開示の限定と解釈されるべきでない。