(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電気外科用発生器
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20231214BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/18 100
(21)【出願番号】P 2020538809
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2019055914
(87)【国際公開番号】W WO2019185331
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコム
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ディビス,イラン・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】ダフ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンズ,ジョージ
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0105701(US,A1)
【文献】特表2016-538962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0333109(US,A1)
【文献】特表2009-504346(JP,A)
【文献】国際公開第2010/068795(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科用発生器であって、
無線周波数(RF
)及びマイクロ波エネルギーを生成する電磁信号供給ユニットとを備え、前記電磁信号供給ユニットが、
第1の周波数を有するRF電磁(EM)放射を生成する無線周波数(RF)信号発生器と、
前記第1の周波数より高い第2の周波数を有するマイクロ波EM放射を生成するマイクロ波信号発生器とを含み、
前記R
F及び前記マイクロ波エネルギーをその遠位端から送達するプローブに前記R
F及び前記マイクロ波エネルギーを伝送する同軸伝送線に接続可能であるように構成された出力ポートと、
前記R
F及び前記マイクロ波エネルギーを前記出力ポートへ伝達するフィード構造と、
生体組織の可逆的または不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を引き起こすエレクトロポレーション波形を有するエネルギーを生成するように構成されたエレクトロポレーション波形供給ユニットとを含み
前記エレクトロポレーション波形供給ユニットは、
無線周波数(RF
)及びマイクロ波エネルギーを生成する前記電磁信号供給ユニットとは別個のDC電源と、
前記DC電源に接続され、DC電力の1つ以上のパルスを前記エレクトロポレーション波形として出力するように構成されたパルス発生器と
を含み、
前記エレクトロポレーション波形供給ユニットが前記フィード構造に接続され、前記プローブへ送達するために、前記エレクトロポレーション波形を前記出力ポートに伝送し、
前記フィード構造が、前記エレクトロポレーション波形及び前記R
F及びマイクロ波エネルギーを前記出力ポートに伝送するための共通の信号経路を含
み、
前記フィード構造が、前記出力ポートを前記RF信号発生器に接続するRFチャネルと、前記出力ポートを前記マイクロ波信号発生器に接続するマイクロ波チャネルとを含み、
前記RFチャネル及び前記マイクロ波チャネルは、前記RF信号発生器と前記マイクロ波信号発生器から各々物理的に分離した信号経路を含み、
前記フィード構造は、前記RFチャネルから前記RF・EM放射を受信するように接続された第1の入力と、前記マイクロ波チャネルから前記マイクロ波EM放射を受信するように接続された第2の入力と、前記RF・EM放射と前記マイクロ波EM放射を前記共通の信号経路に送信するために前記第1の入力及び前記第2の入力と通信する出力とを有する結合回路を含む、
前記電気外科用発生器。
【請求項2】
前記エレクトロポレーション波形供給ユニットが、前記RFチャネルを介して前記共通の信号経路に接続可能である、請求項
1に記載の電気外科用発生器。
【請求項3】
前記RFチャネルに接続されたスイッチを含み、
前記RF信号発生器及び前記エレクトロポレーション波形供給ユニットが、前記スイッチによって前記RFチャネルに選択的に接続可能である、請求項
2に記載の電気外科用発生器。
【請求項4】
前記マイクロ波チャネルを前記RF・EM放射から分離するように接続された導波管アイソレータを備える、請求項
1~3のいずれか1項に記載の電気外科用発生器。
【請求項5】
前記パルス発生器に接続され、前記パルス発生器に1つ以上のパルストリガ信号を送信するように構成されたパルス信号モジュールを含み、
前記パルス発生器は、パルストリガ信号を受信するとDC電力のパルスを出力するように構成される、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の電気外科用発生器。
【請求項6】
DC電力の各パルスの持続時間が、前記パルストリガ信号によって設定される、請求項
5に記載の電気外科用発生器。
【請求項7】
前記パルス信号モジュールが、DC電力の各パルスの前記持続時間の調整を可能にするように制御可能である、請求項
6に記載の電気外科用発生器。
【請求項8】
DC電力の各パルスの前記持続時間が1ns~10msの範囲にある、請求項
6または
7に記載の電気外科用発生器。
【請求項9】
前記DC電源が、
調整可能な電圧源と、
前記調整可能な電圧源の電圧をアップコンバートするためのDC-DCコンバータとを含み、
DC電力の各パルスの振幅が、前記調整可能な電圧源を介して制御可能である、請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の電気外科用発生器。
【請求項10】
前記パルス発生器がプッシュ・プル回路を備える、請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の電気外科用発生器。
【請求項11】
DC電力の各パルスの最大振幅が10V~10kVの範囲にある、請求項
9または
10に記載の電気外科用発生器。
【請求項12】
DC電力の各パルスの前記最大振幅が400V以上である、請求項
11に記載の電気外科用発生器。
【請求項13】
前記エレクトロポレーション波形が、50%以下のデューティサイクルを有する複数のパルスを含む、請求項1~請求項1
2のいずれか1項に記載の電気外科用発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーまたは電磁エネルギーを複数のモダリティで送達して、治療部位の生体組織に異なる影響を与えるための電気外科システムに関する。特に、本発明は、共通の給電ケーブルに沿って異なるモダリティでエネルギーを選択的に供給するための電気外科用発生器に関し、これは、外科用スコーピングデバイス(例えば、内視鏡または気管支鏡)の器具チャネルを通して導入して、生体組織を低侵襲性の方法で治療することができ得る。
【背景技術】
【0002】
電気外科用発生器は、開腹及び腹腔鏡手術で使用するために病院の手術室全体に普及しており、また内視鏡検査室にいっそう存在するようになっている。内視鏡処置では、電気外科アクセサリは通常、内視鏡内部の腔部を通して挿入される。腹腔鏡手術の同等のアクセスチャネルに対して検討すると、そのような腔部は比較的ボアが狭く、長さが長い。
【0003】
無線周波数(RF)エネルギーを使用して生体組織を切断することが知られている。RFエネルギーを使用して切断する方法は、電流が組織マトリックス(細胞のイオン含有量と細胞間電解質によって支援される)を通過するときに、組織を横切る電子の流れに対するインピーダンスが熱を生成するという原理を使用して動作する。RF電圧が組織マトリックスに印加されると、細胞内に十分な熱が発生し、組織の水分を蒸発させる。この増加する乾燥の結果として、特に組織の電流経路全体の中で電流密度が最も高い器具(本明細書ではRFブレードと呼ばれる)のRF放射領域に隣接して、RFブレードの切断極に隣接する組織は、ブレードとの直接の的な接触を失う。印加された電圧は、この空隙のほぼ全体に現れ、これは結果としてイオン化して、組織と比較して非常に高い体積抵抗率を持つプラズマを形成する。この区別は、RFブレードの切断極と組織との間の電気回路を完成させたプラズマに、適用されるエネルギーを集中させるため、重要である。ゆっくりとプラズマに入る揮発性物質はすべて気化し、そのため知覚は組織を解剖するプラズマに関するものである。
【0004】
GB 2 486 343は、生体組織を治療するためにRF及びマイクロ波エネルギーの両方を送達する電気外科用装置の制御システムを開示している。プローブに伝達されるRFエネルギーとマイクロ波エネルギーの両方のエネルギー送達プロファイルは、プローブに伝送されるRFエネルギーのサンプリングされた電圧と電流の情報、及びプローブに伝送される、及びプローブから伝送されるマイクロ波エネルギーのサンプリングされた順方向及び反射電力情報に基づいて設定される。
【0005】
GB2 522 533は、生体組織を治療するための無線周波数(RF)エネルギー及びマイクロ波エネルギーを生成するように構成された電気外科用発生器のための絶縁回路を開示している。絶縁回路は、マイクロ波チャネルと信号コンバイナの間の接合部に調整可能な導波管アイソレータを備え、信号コンバイナの接地導体と導波管アイソレータの導電性入力セクションの間に容量性構造を含めることができ、RFエネルギーの結合及びマイクロ波エネルギーの漏洩を阻害する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
最も全体的には、本発明は、生体組織にエレクトロポレーションを引き起こすことができる波形でエネルギーを供給することができる電気外科用発生器を提案する。電気外科用発生器は、治療のためのマイクロ波電磁信号及び無線周波数電磁信号を生成するための手段と統合されたエレクトロポレーション波形供給ユニットを備え得る。電気外科用発生器は、共通のフィードケーブルに沿って異なるタイプのエネルギーを送達するように構成され得る。したがって、単一の発生器を異なる種類の治療のエネルギー源として使用してもよい。これは、治療室で必要な器具を最小限に抑えるという点で有利になり得る。
【0007】
エレクトロポレーション波形は、細胞膜に細孔を開くように構成された1つまたは複数の高電圧エネルギーパルスを含み得る。本発明は、治療剤が治療部位に存在するシナリオで使用してもよく、それにより、細胞膜に孔を開けることで治療剤が細胞に入るのが促進される、または可能になる。言い換えれば、本発明は、従来のエレクトロポレーション手順で使用してもよい。
【0008】
代替的または追加的に、エレクトロポレーションのためのエネルギーは、孔を永続的に開くように構成され得、それにより、細胞膜に不可逆的な破壊を引き起こし、細胞を死滅させる。つまり、この器具は不可逆的エレクトロポレーション(IRE)に使用できる。
【0009】
本発明によれば、電気外科用発生器であって、無線周波数(RF)またはマイクロ波エネルギーを生成するための電磁信号供給ユニット、RFまたはマイクロ波エネルギーをその遠位端から送達するためのプローブに接続可能であるように構成された出力ポート、RFまたはマイクロ波エネルギーを出力ポートに伝送するためのフィード構造、及び生体組織の可逆的または不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を引き起こすためのエレクトロポレーション波形を有するエネルギーを生成するように構成されたエレクトロポレーション波形供給ユニットを含み、エレクトロポレーション波形供給ユニットが、プローブへの送達のためにエレクトロポレーション波形を出力ポートに伝送するためにフィード構造に接続され、フィード構造が、エレクトロポレーション波形及びRFまたはマイクロ波エネルギーを出力ポートに伝送するための共通の信号経路を含む電気外科用発生器が提供される。この構成では、同発生器が例えば、組織の切断、アブレーション、止血または他の効果、ならびに組織にエレクトロポレーションまたはIREを引き起こすためのエレクトロポレーション波形のためRFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを供給できる。IREは、肝臓癌、前立腺癌、及び膵臓癌の治療に使用できる。RF及び/またはマイクロ波エネルギーを一般的な発生器に組み込むことによって、本発明は同プローブがRF及び/またはマイクロ波エネルギーも送達できるようにし得る。このことは、治療の処置の最中に、施術者に、より多くの治療の選択肢を提供し得る。例えば、不可逆的エレクトロポレーションを実施できることは、プローブに、遠位先端に集中する組織治療モダリティを付与し得る。これにより、ひいてはマイクロ波焼灼モダリティを使用して、遠位先端の周りのより大きなボリュームを治療することが可能になる。組み合わせて、器具を制御して、エネルギーが送達される組織の体積を選択することができる。
【0010】
電磁信号供給ユニットは、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーの両方を別々にまたは同時に供給するように構成してもよい。例えば、電磁信号供給ユニットは、第1の周波数を有するRF電磁(EM)放射を生成する無線周波数(RF)信号発生器と、第1の周波数より高い第2の周波数を有するマイクロ波EM放射を生成するマイクロ波信号発生器とを含み得る。
【0011】
RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーは、共通の信号経路に別々に伝送され得る。例えば、フィード構造は、出力ポートをRF信号発生器に接続するためのRFチャネルと、出力ポートをマイクロ波信号発生器に接続するためのマイクロ波チャネルとを含み得る。RFチャネル及びマイクロ波チャネルは、RF信号発生器及びマイクロ波信号発生器からそれぞれ物理的に分離した信号経路を含み得る。フィード構造は、RFチャネルからRF・EM放射を受信するように接続された第1の入力、マイクロ波チャネルからマイクロ波EM放射を受信するように接続された第2の入力、ならびにRF・EM放射とマイクロ波EM放射を共通の信号経路に送信するために第1及び第2の入力と通信する出力を有する結合回路を含み得る。
【0012】
エレクトロポレーション波形供給ユニットが、RFチャネルを介して共通の信号経路に接続可能であり得る。例えば、スイッチは、RF信号発生器及びエレクトロポレーション波形供給ユニットが、スイッチによってRFチャネルに選択的に接続可能である。スイッチは、高周波(例えば、UHF)エネルギー(本明細書で論じられるRFエネルギーに対応する)ならびにエレクトロポレーション波形に関連する高電圧(例えば、最大10kV)パルスを送信することができる任意のスイッチングデバイスであり得る。例えば、高周波リードリレーを使用してもよい。
【0013】
フィード構造は、マイクロ波チャネルをRF・EM放射から分離するように接続された導波管アイソレータを含んでもよい。RFチャネル及びマイクロ波チャネルは、同軸N型コネクタを使用して導波管アイソレータに結合され得る。エレクトロポレーション波形のパルスによって引き起こされるブレークダウンを防ぐために、導波路アイソレータに突き出るN型コネクタの部分は、ブレークダウンを抑制するように選択された厚さのPFTEなどの絶縁材料で囲まれている場合がある。
【0014】
エレクトロポレーション波形は、1つまたは複数の速い高電圧パルスを含み得る。各パルスは、1ns~10msの範囲、好ましくは1ns~100μsの範囲のパルス幅を有し得るが、本発明がこの範囲に限定される必要はない。可逆的エレクトロポレーションには、より短い持続時間のパルス(例えば、10ns以下)が好ましい場合がある。不可逆的エレクトロポレーションの場合、可逆的エレクトロポレーションと比較して、より長い持続時間のパルスまたはより多くのパルスを使用してもよい。
【0015】
好ましくは、各パルスの立ち上がり時間は、パルス持続時間の90%以下、より好ましくはパルス持続時間の50%以下、最も好ましくはパルス持続時間の10%以下である。より短いパルスの場合、立ち上がり時間は100psのオーダーになる場合がある。
【0016】
各パルスは、10V~10kVの範囲、好ましくは1kV~10kVの範囲の振幅を有し得る。各パルスは、接地電位からの正のパルス、または接地電位からの交互の正及び負のパルスのシーケンスであり得る。
【0017】
エレクトロポレーション波形は、単一のパルスまたは複数のパルス、例えばパルスの周期列であり得る。波形のデューティサイクルは50%以下、例えば、0.5%~50%の範囲であり得る。
【0018】
一実施例では、一連の10~100パルスで送達される200ms程度のパルス幅を、不可逆的エレクトロポレーションに使用してもよい。一実施例では、エレクトロポレーション波形は、送達の間に約1分を置いて3回送達される振幅1.5kVの10×300μsのパルスを含み得る。この波形は、肝細胞癌の細胞のアポトーシスまたは死を引き起こす可能性がある。
【0019】
エレクトロポレーション波形は、所望の効果に応じて選択される治療期間中に送達されてもよい。例えば、治療期間は短く、例えば1秒未満、または数秒、または約1分であり得る。あるいは、治療期間はより長くてもよく、例えば1時間までであってもよい。
【0020】
パルス発生器回路は、所望の治療に適合するようにエレクトロポレーション波形を適合または変化させるように制御可能であり得る。したがって、デューティサイクル、パルス幅、及びパルス振幅のいずれも、調整可能に可変であり得る。
【0021】
エレクトロポレーション波形供給ユニットは、例えば高電圧源として動作するように構成されたDC電源と、DC電源に接続され、DC電源の1つ以上のパルスをエレクトロポレーション波形として出力するよう構成されるパルス発生器とを含み得る。DC電源は、発生器の他の電源から独立している場合がある。
【0022】
エレクトロポレーション波形供給ユニットは、パルス発生器に接続され、パルス発生器に1つ以上のパルストリガ信号を送信するように構成されたパルス信号モジュールを含み得、パルス発生器は、パルストリガ信号を受信するとDC電力のパルスを出力するように構成される。一実施例では、パルストリガ信号を使用して、パルス発生器の駆動回路を作動させ、例えば駆動信号をパルス発生器に供給して、DC電源から電力を引き出す。
【0023】
DC電力の各パルスの持続時間(例えば、パルス幅)は、パルストリガ信号によって設定され得る。パルス信号モジュールは、例えばマイクロプロセッサの制御下で、DC電力の各パルスの持続時間の調整を可能にするように制御可能であり得る。パルストリガ信号は、マイクロプロセッサのクロック信号から導出されてもよい。DC電力の各パルスの持続時間は、1ns~10msの範囲であり得る。
【0024】
DC電源は、調整可能な電圧供給と、調整可能な電圧供給の電圧をアップコンバートするように構成されたDC-DCコンバータとを含み得る。例えば、調整可能な電圧源は、1.2V~5Vの範囲で調整可能な出力電圧を有してもよい。DC-DCコンバータは、これを1、2、または3桁大きい最大電圧振幅を有する信号に、例えば10V~10kVの範囲、好ましく400V以上に変換してもよい。DC電力の各パルスの振幅は、調整可能な電圧供給の出力電圧を設定することにより制御可能であり得る。
【0025】
パルス発生器は、例えば、DC電源から電力を引き出すように接続された1対のパワーMOSFETから形成されたプッシュ・プル回路を含み得る。
【0026】
発生器は、例えば、出力ポートから延びる同軸伝送線を介して、プローブに接続され得る。プローブは、外科用スコーピングデバイスの器具チャネルを通して挿入するのに適した電気外科器具を含んでもよい。電気外科器具は、本明細書で論じられるRF、マイクロ波、及びエレクトロポレーションエネルギーのいずれかを出力するように構成された遠位端アセンブリを有し得る。一実施例では、遠位端アセンブリは、内部導体が外部導体の遠位端を越えて突出し、プローブの遠位端で露出する同軸構造を含んでもよい。この構成により、遠位端アセンブリは、RFエネルギーを送達するための双極エネルギー送達構造と、マイクロ波エネルギーを放射するためのマイクロ波アンテナとを形成した。さらに、エレクトロポレーション波形は、内部導体と外部導体の露出した最遠位端の間に瞬間的な電場を設定し得る。露出した導体は、1~3mmの範囲の距離で離してもよい。したがって、印加される場は、300V/mm~10kV/mmの間の好ましい範囲の振幅を有し得る。
【0027】
本明細書において、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を示すために広く使用され得るが、好ましくは、400MHz~60GHzの範囲であり得る。検討されている特定の周波数は、433MHz、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、24GHzである。デバイスは、これらのマイクロ波周波数の複数でエネルギーを送達し得る。「無線周波数」または「RF」という用語は、300kHzと400MHzとの間の周波数を示すために使用され得る。
【0028】
本明細書では、「内側」という用語は、器具チャネルの中心(例えば、軸)に半径方向により近いことを意味する。「外側」という用語は、器具チャネルの中心(軸)から半径方向により遠いことを意味する。
【0029】
本明細書では、「導電性」という用語は、文脈から別段の指示がない限り、電気の伝導性を意味するために使用される。
【0030】
本明細書では、「近位」及び「遠位」という用語は、それぞれ、治療部位からより遠い、及びより近いエネルギー伝送構造の端部を指す。したがって、使用中、近位端はマイクロ波エネルギーを提供するための発生器に近く、一方、遠位端は治療部位、すなわち患者に近い。
【0031】
本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明が適用され得る既知のタイプの電気外科用発生器の概略図である。
【
図2】
図1の電気外科用発生器において使用され得る絶縁回路の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるエレクトロポレーション波形供給ユニットを有する電気外科用発生器の概略図である。
【
図4】
図3の電気外科用発生器を、外科用スコーピングデバイスを通して挿入可能な器具と共に使用する電気外科システムを示す概略図である。
【
図5】本発明での使用に適した電気外科器具の遠位端アセンブリの概略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態であるエレクトロポレーション波形供給ユニットでの使用に適したパルスコントローラの回路図である。
【
図7】本発明の一実施形態であるエレクトロポレーション波形供給ユニットでの使用に適した調節可能な高電圧供給の回路図である。
【
図8】本発明の一実施形態であるエレクトロポレーション波形供給ユニットでの使用に適したパルス発生器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
その他のオプションと設定
背景技術
図1は、本発明を理解するために有用である、GB 2 486 343に開示されているような電気外科用装置400の概略図を示す。この装置は、RFチャネル及びマイクロ波チャネルを含む。RFチャネルは、生体組織の治療(例えば、切断または乾燥)に適した電力レベルでRF周波数電磁信号を生成及び制御するためのコンポーネントを含む。マイクロ波チャネルは、生体組織の治療(例えば、凝固またはアブレーション)に適した電力レベルでマイクロ波周波数電磁信号を生成及び制御するためのコンポーネントを含む。
【0034】
マイクロ波チャネルは、マイクロ波周波数ソース402と、それに続くパワースプリッタ424(例えば、3dBパワースプリッタ)を有し、これは、ソース402からの信号を2つの分岐に分割する。パワースプリッタ424からの1つの分岐は、制御信号V10を介してコントローラ406によって制御される可変減衰器404と、制御信号V11を介してコントローラ406によって制御される信号変調器408と、治療に適した電力レベルでプローブ420から送達するための前方マイクロ波EM放射を生成するための駆動増幅器410及び電力増幅器412を含む増幅器モジュールとを含む電力制御モジュールを有するマイクロ波チャネルを形成する。増幅器モジュールの後、マイクロ波チャネルは、マイクロ波EMエネルギーをソースからプローブにその第1と第2のポートの間のパスに沿って供給するために接続されたサーキュレータ416を含むマイクロ波信号結合モジュール(マイクロ波信号検出器の一部を形成する)、サーキュレータ416の第1のポートにおける順方向カプラ414、及びサーキュレータ416の第3のポートにおける反射カプラ418に続く。反射カプラを通過した後、第3のポートからのマイクロ波EMエネルギーは、パワーダンプ負荷422で吸収される。マイクロ波信号結合モジュールはまた、順方向結合信号または反射結合信号のいずれかを検出のためにヘテロダイン受信機に接続するために制御信号V12を介してコントローラ406によって操作されるスイッチ415を含む。
【0035】
パワースプリッタ424からの他の分岐は、測定チャネルを形成する。測定チャネルは、マイクロ波チャネルの増幅ラインナップをバイパスするため、プローブから低電力信号を送信するように構成されている。制御信号V13を介してコントローラ406によって制御される一次チャネル選択スイッチ426は、マイクロ波チャネルまたは測定チャネルのいずれかからの信号を選択してプローブに送達するように動作可能である。高バンドパスフィルタ427は、一次チャネル選択スイッチ426とプローブ420との間に接続されて、マイクロ波信号発生器を低周波RF信号から保護する。
【0036】
測定チャネルは、プローブから反射された電力の位相と大きさを検出するように構成されたコンポーネントを含み、材料、例えばプローブの遠位端に存在する生体組織に関する情報を生成し得る。測定チャネルは、その第1のポートと第2のポートとの間の経路に沿って、ソース402からプローブにマイクロ波EMエネルギーを送達するように接続されたサーキュレータ428を備える。プローブから返された反射信号は、サーキュレータ428の第3のポートに向けられる。サーキュレータ428は、正確な測定を容易にするために順方向信号と反射信号との間の分離を提供するために使用される。ただし、サーキュレータは第1と第3のポート間の完全な分離を提供しないため、すなわち順方向信号の一部が第3のポートに侵入し、反射信号に干渉する場合があるため、順方向信号(順方向カプラ430から)の一部を(注入カプラ432を介して)第3ポートから出てくる信号に戻すよう注入するキャリアキャンセル回路を使用してもよい。キャリアキャンセル回路は、位相調整器434を含み、注入部分が、相殺するために第1のポートから第3のポートに突入する信号と180°位相がずれていることを保証する。キャリアキャンセル回路はまた、注入された部分の大きさが任意のブレークスルー信号と同じであることを確実にするために信号減衰器436を含む。
【0037】
順方向信号のドリフトを補償するために、順方向カプラ438が測定チャネル上に提供される。順方向カプラ438の結合出力及びサーキュレータ428の第3のポートからの反射信号は、スイッチ440のそれぞれの入力端子に接続され、スイッチ440は、制御信号V14を介してコントローラ406によって操作され、検出のため結合された順方向信号または反射信号をヘテロダイン受信機へ接続する。
【0038】
スイッチ440の出力(すなわち、測定チャネルからの出力)及びスイッチ415の出力(すなわち、マイクロ波チャネルからの出力)は、二次チャネル選択スイッチ442のそれぞれの入力端子に接続され、それは、測定チャネルがプローブにエネルギーを供給しているときに測定チャネルの出力がヘテロダイン受信機に接続されていること、及びマイクロ波チャネルがプローブにエネルギーを供給しているときにマイクロ波チャネルの出力がヘテロダイン受信機に接続されていることを確実にするために、一次チャンネル選択スイッチと連動して制御信号V15を介してコントローラ406により動作可能である。
【0039】
ヘテロダイン受信機は、二次チャネル選択スイッチ442によって出力された信号から位相及び大きさの情報を抽出するために使用される。このシステムでは単一のヘテロダイン受信機を示しているが、信号がコントローラに入る前にソース周波数を2度ミキシングする二重ヘテロダイン受信機(2つの局部オシレータ及びミキサを含む)を必要ならば使用してもよい。ヘテロダイン受信機は、局部発振器444と、二次チャネル選択スイッチ442によって出力された信号をミキシングするためのミキサ448とを備える。局部発振器信号の周波数は、ミキサ448からの出力がコントローラ406で受信されるのに適した中間周波数になるように選択される。バンドパスフィルタ446、450は、局部発振器444及びコントローラ406を高周波マイクロ波信号から保護するために提供される。
【0040】
コントローラ406は、ヘテロダイン受信機の出力を受信し、それから順方向及び/またはマイクロ波または測定チャネルに対する反射信号の位相及び大きさを示す情報を決定(例えば抽出)する。この情報を使用して、マイクロ波チャネルでの高出力マイクロ波EM放射またはRFチャネルでの高出力RF・EM放射の送達を制御できる。上述のように、使用者は、ユーザインターフェース452を介してコントローラ406と相互作用してもよい。
【0041】
図1に示されるRFチャネルは、制御信号V
16を介してコントローラ406によって制御されるゲートドライバ456に接続されたRF周波数源454を備える。ゲートドライバ456は、ハーフブリッジ構成であるRF増幅器458に動作信号を供給する。ハーフブリッジ構成のドレイン電圧は、可変DC電源460を介して制御可能である。出力変圧器462は、生成されたRF信号を、プローブ420への送達のためにラインに転送する。ローパス、バンドパス、バンドストップまたはノッチフィルタ464がそのラインに接続されて、高周波マイクロ波信号からRF信号発生器を保護する。
【0042】
変流器466は、組織負荷に送達される電流を測定するためにRFチャネルに接続される。分圧器468(出力変圧器から取り出し得る)を使用して、電圧を測定する。分圧器468及び変流器466からの出力信号(すなわち、電圧及び電流を示す電圧出力)は、それぞれのバッファ増幅器470、472及び電圧クランプツェナーダイオード474、476、478、480によって調整された後、コントローラ406に直接接続される(
図1の信号B及びCとして示されている)。
【0043】
位相情報を導出するために、電圧及び電流信号(B及びC)はまた、その出力電圧がRC回路484によって積分されて電圧出力(
図1にAとして示される)を生成する位相比較器482(例えば、EXORゲート)に接続される。これは、電圧波形と電流波形の位相差に比例する。この電圧出力(信号A)は、コントローラ406に直接接続される。
【0044】
マイクロ波/測定チャネル及びRFチャネルは、信号コンバイナ114に接続され、信号コンバイナ114は、両方のタイプの信号を別々にまたは同時にケーブルアセンブリ116に沿ってプローブ420に伝達し、そこから患者の生体組織に送達(例えば、放射)される。
【0045】
導波管アイソレータ(図示せず)が、マイクロ波チャネルと信号コンバイナとの間の接合部に提供され得る。導波管アイソレータは、3つの機能を実行するように構成されてもよい。(i)非常に高い(例えば、10Wを超える)マイクロ波電力の通過を可能にする。(ii)RF電力の通過をブロックする。(iii)高耐電圧(例えば、10kVを超える)を提供する。容量性構造(DCブレイクとしても知られている)はまた、導波管アイソレータに(例えば、内部に)または隣接して提供されてもよい。容量性構造の目的は、絶縁バリア全体の容量性結合を低減することである。
【0046】
図2は、本発明を理解するために同様に有用である、GB 2 522 533に開示されているような絶縁回路の概略図である。絶縁回路は、RF信号発生器218からのRF・EM放射及びマイクロ波信号発生器220からのマイクロ波放射をプローブに伝達するためのフィード構造の一部を形成する。プローブ(図示せず)は、ハウジング226に設けられた出力ポート228に接続可能である。絶縁スリーブ229がハウジングの出力ポート228に設けられ、ハウジングの接地されたケーシングを出力ポート228に接続されたフローティング構成要素と接続するための電流経路を防止する。
【0047】
フィード構造は、RF・EM放射を搬送するためのRF信号経路212、214を有するRFチャネルと、マイクロ波EM放射を搬送するためのマイクロ波信号経路210を有するマイクロ波チャネルとを含む。RF・EM放射とマイクロ波放射の信号経路は、物理的に互いに分離されている。RF信号発生器は、変圧器216を介してRF信号経路212、214に接続される。変圧器216の2次コイル(すなわち、構成のプローブ側)は浮動しているので、患者とRF信号発生器218との間に直流電流経路はない。これは、RF信号経路212、214の信号導体212及び接地導体214の両方が浮動していることを意味する。
【0048】
絶縁回路は、必要なレベルのDC絶縁を提供するように絶縁ギャップが構成され、ギャップでのマイクロ波エネルギーの漏れを防ぐためにマイクロ波エネルギーの周波数で十分に低い容量性リアクタンスも有する導波管アイソレータ600を含む。ギャップは、0.6mm以上、例えば0.75mmであってよい。管の直径がRF周波数で各プローブと直列に非常に大きなインダクタンスを生成するため、RFエネルギーはアイソレータの2つの端の間で結合できない。
【0049】
絶縁回路は、導波路アイソレータ600と一体化された結合回路を有する。RF信号を伝える信号導体212及び接地導体214は、RF信号を導波管アイソレータ600に導入する同軸RFコネクタ602(RFフィード)に接続され、そこから、出力ポート232からプローブに伝えられる。
【0050】
分離ギャップ603は、RF信号が入力ポート230に再び結合することを防止するように構成される。マイクロ波エネルギーは、導波管アイソレータ内の内部導電性ロッドを注意深く配置することにより、RFコネクタ602への結合を防止される。
【0051】
構成要素のラインナップのリターンロスを低減するために、同調ユニットが導波管アイソレータ600に組み込まれている。同調ユニットは、キャビティの本体に調節可能に挿入する、例えばねじ込むことができる3つのスタブ231を含む。
【0052】
さらに、RFチャネルは、制御信号C1の制御下で動作可能であり、発生器と共に使用されるケーブルの長さの違いから生じる静電容量の変化に対応する(例えば、補償する)調整可能なリアクタンス217を有する。調整可能なリアクタンス217は、RFチャネルと並列または直列に接続された1つまたは複数のスイッチ式または電子的に調整可能なコンデンサまたはインダクタを含んでもよい。
【0053】
治療能力の強化
本発明は、上述の電気外科用発生器と統合することができるエレクトロポレーション波形供給ユニットを提供する。本明細書では、「エレクトロポレーション波形」という用語は、1つまたは複数の非常に短い高電圧エネルギーパルスを意味するために使用される。
【0054】
例えば、各パルスは、1ナノ秒から10ミリ秒の範囲、好ましくは100ナノ秒から1ミリ秒の範囲の持続時間(すなわち、パルス幅)を有し得る。波形は、複数のパルスを含むことが好ましい。複数のパルスによって形成されるパルス列のデューティサイクルは、50%以下であり得る。一実施例では、パルスは、50Hzの周波数で送達されてもよい。
【0055】
各パルスは、10Vから10kVの範囲、好ましくは100Vから10kVの範囲、より好ましくは400Vから10kVの範囲のピーク電圧(すなわち、最大パルス振幅)を有し得る。
【0056】
エレクトロポレーション波形は、治療部位で生物組織の可逆的または不可逆的なエレクトロポレーション(IRE)を引き起こすように構成され得る。
【0057】
以下で議論されるように、エレクトロポレーション波形供給ユニットは、マイクロ波エネルギー及びRFエネルギーと同じ信号経路を介してエレクトロポレーション波形を送達するように配置され得る。その結果、本発明は、マイクロ波エネルギー、RFエネルギー及びエレクトロポレーション誘導エネルギーのいずれかを単一の器具に選択的に送達することができる発生器を提供し得る。したがって、本発明は、単一の発生器ユニットが広範囲の治療タイプにエネルギーを供給することができるマルチモーダル電気外科システムに寄与し得る。例えば、マイクロ波エネルギー及びRFエネルギーが組織切除または切除及び止血に使用できることが知られている。さらに、器具を介してガスを治療部位に送達し、それにより組織の滅菌またはその他の治療のために熱式プラズマまたは非熱式プラズマを照射するためにRF及び/またはマイクロ波が使用できることも知られている。本発明は、エレクトロポレーション効果を提供することにより、これらの治療法を増強し得る。他の機能性、例えば冷凍切除技術、超音波切断などもシステムに統合してもよい。
【0058】
図3は、本発明の一実施形態であるエレクトロポレーション波形供給ユニット250の概略図である。
図3に示されるように、エレクトロポレーション波形供給ユニット250は、
図1及び
図2に関して上記で検討されたタイプの電気外科用発生器に統合される。
図1及び
図2と共通のコンポーネントは、同じ参照符号が与えられており、再度説明しない。
【0059】
エレクトロポレーション波形供給ユニット250は、例えば、ユーザインターフェース264を介して、特にパルス幅、パルス振幅及びデューティサイクル(例えば、マルチパルス列におけるパルスの周波数)のエレクトロポレーション波形のパラメータを制御するように動作可能なコントローラ252を備える。コントローラ252は、パルストリガ信号をパルス発生器256に送るように動作するパルス信号モジュール254を含む。一実施例では、パルス発生器256は、プッシュ・プルスイッチ回路として構成することができる。パルス発生器256はそれ自体、コントローラの電源とは独立した専用の電源258から動作のための電力を受け取り得る。この配置は、プッシュ・プル回路を駆動するための電力要件がコントローラに必要なものよりも高い場合に必要になる場合がある。例えば、電源258は25Vで動作し得るが、コントローラの電源は5Vで動作し得る。
【0060】
高電圧源262がパルス発生器256の両端に接続されている。高電圧源262は、電圧電源260からの出力電圧をアップコンバートするDC-DCコンバータを含み得る。電圧源260は、例えば出力電圧を設定するために、コントローラ252に接続され、それによって制御可能である。例えば、電圧源260は、出力電圧が1.2Vから5Vの間の範囲で調整可能である、調整可能な電圧源であり得る。電圧源260及び電源258は、例えば、主電源(図示せず)からの変換された(整流された)DC電源である。
【0061】
パルス発生器256は、スイッチ240によって上述のRFチャネルに接続されている伝送線242にエレクトロポレーション波形を出力する。スイッチ240は、最大10kVのDC電圧を送信することができ、RFエネルギーを送信するのに適しているように選択してもよい。例えば、高周波リードリレーを使用してもよい。単極デュアルスロー(SPDT)スイッチは、RF信号とエレクトロポレーション波形の高電圧の単数または複数のパルスとの間の低挿入損失でのスイッチングを可能にするため、このコンポーネントにとって有利になり得る。
【0062】
このスイッチを使用すると、エレクトロポレーション波形がRFチャネルのアイソレータに導入される。アイソレータは、エレクトロポレーション波形供給ユニット250をマイクロ波エネルギーから保護し、マイクロ波チャネルをエレクトロポレーション波形の高電圧パルスから保護するように構成してもよい。
【0063】
高電圧パルスによる絶縁体での絶縁破壊の発生を防止するために、絶縁体の空洞に突き出る導体は、絶縁スリーブ(例えば、PTFEなどから作製される)によって取り囲まれ得る。
【0064】
図2に示されている導波管アイソレータ600は、5.8GHzのマイクロ波信号と400kHzのRF信号を組み合わせるように主に設計され得る一方で、出力ラインがマイクロ波チャネルを通じて接地されないように分離し、RFチャネルの独立した接地を可能にしている。
【0065】
次の考察では、3種類のエレクトロポレーション波形のアイソレータの動作について検討する。
【0066】
(i) 振幅1kV、立ち上がり時間30nsの300nsパルス
(ii) 10kVで10nsパルス
(iii) 10kVで1nsパルス
アイソレータの物理構造は、1~100MHzの信号が完全に送信されるようにしたものになっている。300nsの矩形パルスの場合、周波数スペクトルにはメインローブがあり、最初のヌルは1/300GHz、または3.3MHzである。メインローブ及び周波数スペクトルの次の2つのサイドローブは、マルチプレクサの400kHz側、最大10MHzを通過する。35nsの立ち上がり時間は10MHzの帯域幅に対応すると予想されるため、この波形は実質的に妨げられずにアイソレータを通過する。
【0067】
10nsパルスの場合、最初のヌルは100MHzにあるため、約1nsの立ち上がり時間を得るには300MHzの帯域幅が必要になり得る。1nsパルスの場合、最初のヌルは1GHzにあるため、おそらく3GHzを通過する必要がある(約0.1nsの立ち上がり時間を得るために)。
【0068】
上記のアイソレータのRFポートを介した伝送は、50MHzから1GHzまでのベクターネットワークアナライザーを使用してテストされた。
【0069】
50MHzでの送信は多かれ少なかれ100%、つまり0dBであった。これは、約250または350MHzで徐々に3dBまで低下したが、1GHzで再び約0dBまで上昇した。このテストに基づいて、アイソレータは最大1.5GHzの帯域幅でエレクトロポレーション波形を効果的に送信するように動作可能である。
【0070】
図4は、RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、または上述のエレクトロポレーション波形を侵襲性電気外科器具の遠位端に供給することができる完全な電気外科システム100の概略図である。システム100は、RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、及びエレクトロポレーションまたはIREに適したエレクトロポレーション波形を制御可能に供給するための発生器102を含む。
【0071】
発生器102は、インターフェースケーブル104によってインターフェースジョイント106に接続される。必要に応じて、インターフェースジョイント106は、例えば、1つまたは複数の制御ワイヤまたはプッシュロッド(図示せず)の長手方向(前後)の動きを制御するために、トリガ110をスライドさせることによって動作可能な器具制御機構を収容することができる。複数の制御ワイヤがある場合、完全な制御を提供するために、インターフェースジョイントに複数のスライドトリガがある場合がある。インターフェースジョイント106の機能は、発生器102及び器具制御機構からの入力を、インターフェースジョイント106の遠位端から延びる単一の可撓性シャフト112に結合することである。
【0072】
可撓性シャフト112は、内視鏡、気管支鏡、胃内視鏡などのような外科用スコーピングデバイス114の器具(作業)チャネルの全長を通して挿入可能である。
【0073】
外科用スコーピングデバイス114は、多数の入力ポートと、器具コード120がそこから延びる出力ポートとを有する本体116を備える。器具コード120は、複数の腔部を囲む外側ジャケットを含む。複数の腔部は、本体116から器具コード120の遠位端まで様々なものを運ぶ。複数の腔部の1つは、器具チャネルである。他の腔部は、例えば、遠位端に照明を提供するため、または遠位端から画像を収集するために、光放射を伝達するためのチャネルを含み得る。本体116は、遠位端を見るための接眼レンズ122を含み得る。遠位端に照明を提供するために、光源124(例えば、LEDなど)は、照明入力ポート126によって本体116に接続され得る。
【0074】
可撓性シャフト112は、外科用スコーピングデバイス114の器具チャネルを通過し、その遠位端で(例えば、患者の体内で)突出するように成形された遠位アセンブリ118(
図1では縮尺通りに描かれていない)を有する。遠位端アセンブリは、本明細書で論じられるように、マイクロ波エネルギーを生体組織内に送達するためのアクティブチップを含む。
【0075】
以下で論じる遠位アセンブリ118の構造は、2.0mm以下、例えば1.9mm未満(より好ましくは1.5mm未満)の最大外径を有するように設計してもよく、可撓性シャフトの長さは1.2メートル以上にすることができる。
【0076】
本体116は、可撓性シャフトに接続するための電力入力ポート128を含み、これは、エレクトロポレーションのためにエネルギーを伝えるためのエネルギー伝達手段(例えば、ツイストケーブルペアなど)と共に、マイクロ波エネルギーを発生器102から遠位アセンブリ118に伝達することができる同軸ケーブル(例えば、従来の同軸ケーブル)を含む。外科用スコーピングデバイスの器具チャネルに物理的に取り付けることができる同軸ケーブルは、次の外径で利用できる:1.19mm(0.047インチ)、1.35mm(0.053インチ)、1.40mm(0.055インチ)、1.60mm(0.063インチ)、1.78mm(0.070インチ)。カスタムサイズの同軸ケーブル(すなわちオーダーメイド)も使用できる。
【0077】
上述のように、少なくとも器具コード120の遠位端の位置を制御できることが望ましい。本体116は、器具コード120を通って延びる1つ以上の制御ワイヤ(図示せず)によって器具コード120の遠位端に機械的に結合される制御アクチュエータ130を含み得る。制御ワイヤは、器具のチャネル内または専用のチャネル内を移動し得る。制御アクチュエータ130は、レバーもしくは回転可能なノブ、または他の任意の既知のカテーテル操作デバイスであってよい。器具コード120の操作は、例えばコンピュータ断層撮影(CT)画像から組み立てられた仮想3次元マップを使用して、ソフトウェアで支援され得る。
【0078】
図5は、上述の電気外科システムで使用することができ、利用可能なモダリティ(例えば、マイクロ波、RF及びエレクトロポレーション)のいずれかでエネルギーを送達することができる遠位端アセンブリ118の一実施例を示す。
【0079】
遠位端アセンブリ118は、絶縁誘電材料136によって外部導体132から分離された内部導体134から形成された同軸伝送線を含む。エネルギー伝送構造は、同軸伝送線の最遠位端に形成される。エネルギー送達構造は、外部導体の遠位端を越えて延びるある長さの内部導体を含む。この実施例では、内部導体の突き出た長さは、例えばセラミックまたは他の低損失材料から形成された剛性誘電体キャップ140によって囲まれている。キャップ140は、例えば、ドーム形状などの丸い端部を有し得、その結果、器具は、組織内に鋭い先端を提示しない。
【0080】
エネルギー供給構造では、内部導体と外部導体は、RFエネルギーとエレクトロポレーション波形を放出するアクティブ電極とリターン電極として機能し、マイクロ波エネルギーを放射するアンテナ構造を形成する。
【0081】
放射先端は、生体組織と整合するように選択されたインピーダンスを有し得る。エネルギーが放射先端に効率的に伝達されることを可能にするために、インピーダンス変換器138が、同軸伝送線の間に提供され得る。インピーダンス変換器138は、誘電体材料136とは異なる誘電率を有する誘電体材料を使用して形成された四分の一波長伝送線であり得る。
【0082】
図6は、上述のエレクトロポレーション波形供給ユニットのコントローラで使用するためのパルス信号モジュール254の特定の実施形態を示す回路図である。パルス信号モジュール254は、以下で論じるように、高電圧パルスを生成するためのプッシュ・プル回路のハイサイド及びローサイド用の一対の制御パルス「LS」、「HS」を出力するように構成される。この実施形態では、パルス信号モジュール254は、コントローラ252から、すなわち、発生器の動作を制御するマイクロプロセッサから受信したクロック信号「Clk」を参照してパルス持続時間を設定するように動作可能である。パルス信号モジュール254は、クロック信号に関する基準点を表す一対の閾値電圧「Vth(H)」及び「Vth(L)」を受け取るように構成されたウィンドウコンパレータ回路を備える。第1の閾値電圧Vth(H)は、第2の閾値電圧Vth(L)よりも高い基準点をクロック信号から取るように設定される。ウィンドウコンパレータ回路は、クロック信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジから短いパルスを抽出する。これらのパルスはさらに、固定分圧コンパレータで調整されて、制御パルスLS、HSのペアを生成する。第1の閾値電圧Vth(H)及び第2の閾値電圧Vth(L)は、例えば、コントローラにおいて、パルス持続時間を設定するために調整可能であり得る。
【0083】
図7は、高電圧源262の一実施例を示す回路図である。高電圧源262は、コントローラの制御下で別個のDC電源(図示せず)から入力DC信号「Vin」を受け取るように構成されたDC-DCコンバータを備える。入力DC信号の電圧は、コントローラで調整できてもよい。DC-DCコンバータは、入力DC信号をアップコンバートして、2つの出力端子「-Vout」「+Vout」にわたり高電圧信号を生成する。出力端子間の電圧は、通常は1000:1の比率で電圧D1を抽出することによって測定される(すなわち、D1は-Voutと+Voutの間の電圧の1000分の1である)。測定された電圧は発生器に表示され得る。入力DC信号は、必要に応じて高電圧を設定できるように制御できる。例えば、Vinは、1.2Vと5Vの間で調整可能であり得る。DC-DCコンバータは、1kV以上、例えば10kVまでの電圧を有する信号を出力するように構成され得る。
【0084】
図8は、本発明の実施形態で使用するためのパルス発生器256を示す回路図である。パルス発生器256は、パルス信号モジュール254からの制御パルスLS、HSが駆動電圧(この実施例では25VのDC電源から)を一対のパワーMOSFETのゲートに結合するために使用されるドライバ回路270を備える。これは、プル・プル回路272で構成され、-Voutと+Voutとの間の高い電圧信号の迅速なスイッチングをもたらす。