(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】哺乳動物への応用のための脱免疫化された志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231214BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231214BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231214BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231214BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231214BHJP
C07K 14/245 20060101ALI20231214BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231214BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231214BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231214BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20231214BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231214BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/245
C07K19/00
A61K38/16
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
C12N15/31
C12N15/13
C07K16/00
(21)【出願番号】P 2022127059
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2021102325の分割
【原出願日】2015-01-26
【審査請求日】2022-09-07
(32)【優先日】2014-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515238389
【氏名又は名称】モレキュラー テンプレーツ,インク.
【氏名又は名称原語表記】MOLECULAR TEMPLATES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】ポーマ エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィラート エリン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン ガレット リー
(72)【発明者】
【氏名】ラジャゴパラン サンギータ
(72)【発明者】
【氏名】ブリシュケ ブリジット
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-507389(JP,A)
【文献】特表2012-515551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0213781(US,A1)
【文献】Kari Grant, et al.,Abstract 1380: Engineered toxin bodies with specific activity against EGFR and HER2 expressing cells,Cancer Res 2011;71(8 Suppl):Abstract nr 1380,2011年04月,インターネット<http://cancerres.aacrjournals.org/content/71/8_Supplement/1380>, 検索日:2020-08-07
【文献】Sangeetha Rajagopalan, et al.,CD20-Specific Engineered Toxin Body Demonstrates Direct Cell Kill Of Multiple B-Cell Non-Hodgkin's Lymphoma Types,BLOOD,Volume 122, Issue 21,2013年04月,p. 5152,インターネット<http://www.bloodjournal.org/content/122/21/5152>, 検索日:2020-08-07
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
C12N 15/63
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C07K 14/245
C07K 19/00
A61K 38/16
A61P 31/00
A61P 35/00
A61P 37/02
C12N 15/31
C12N 15/13
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞標的化分子であって、
i)細胞の表面に物理的に結合している細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域であって、前記細胞外標的生体分子がHER2/neu/ErbB2、CD38、CD20、CTLA-4、BCMA又はSLAMF7である、前記結合領域と、
ii)配列番号1のアミノ酸1~251に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む志賀毒素エフェクターポリペプチドであって、前記アミノ酸配列が、配列番号1のS45からIへのアミノ酸置換、配列番号1のR55からLへのアミノ酸置換、配列番号1のI57からFへのアミノ酸置換、配列番号1のP59からFへのアミノ酸置換、配列番号1のE60からTへのアミノ酸置換、配列番号1のE61からLへのアミノ酸置換、配列番号1のG110からAへのアミノ酸置換、配列番号1のR188からAへのアミノ酸置換、配列番号1のC242からSへのアミノ酸置換、配列番号1のR248からAへのアミノ酸置換、及び配列番号1のR251からAへのアミノ酸置換を含み、かつ、前記アミノ酸配列が、
配列番号1の75位に対応するアミノ酸残基でアスパラギン、
配列番号1の77位に対応するアミノ酸残基でチロシン、
配列番号1の114位に対応するアミノ酸残基でチロシン、
配列番号1の167位に対応するアミノ酸残基でグルタメート、
配列番号1の170位に対応するアミノ酸残基でアルギニン、
配列番号1の176位に対応するアミノ酸残基でアルギニン、及び
配列番号1の203位に対応するアミノ酸残基でトリプトファン
を含む、前記志賀毒素エフェクターポリペプチドと
を含む、前記細胞標的化分子。
【請求項2】
志賀毒素エフェクターポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸1~251に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の細胞標的化分子。
【請求項3】
結合領域が、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端に融合され、単一の連続的なポリペプチドを形成する、請求項1又は2に記載の細胞標的化分子。
【請求項4】
結合領域が、免疫グロブリン型結合領域を含む、請求項1~3のいずれかに記載の細胞標的化分子。
【請求項5】
免疫グロブリン型結合領域が、
シングルドメイン抗体断片、一本鎖可変断片、抗体可変断片、相補性決定領域3断片、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド、Fd断片、抗原結合断片、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン、テネイシンIII型ドメイン、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン、リポカリン、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-B結晶由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、ラクダ科動物V
HH断片に由来する重鎖抗体ドメイン、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、V
NAR断片、多量体化scFv断片(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、二価ナノボディ、二重特異性タンデムscFv、及び二重特異性ミニボディ
から選択されるポリペプチドを含む、請求項4に記載の細胞標的化分子。
【請求項6】
リンカーペプチド(GxS)n
(配列番号115)(式中xが1~6であり、nが1~30である)を含む、請求項1~5のいずれかに記載の細胞標的化分子。
【請求項7】
xが4であり、nが1である、請求項6に記載の細胞標的化分子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の細胞標的化分子と、薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の細胞標的化分子をコードするポリヌクレオチド、又はその相補体。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項9に記載のポリヌクレオチド又は請求項10に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載の細胞標的化分子又は請求項8に記載の医薬組成物を含む、患者の疾患、障害又は状態の治療剤。
【請求項13】
疾患、障害又は状態が、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害及び微生物感染から選択される、請求項12に記載の治療剤。
【請求項14】
がんが、骨がん、乳がん、中枢/末梢神経系がん、胃腸がん、胚細胞がん、腺がん、頭頸部がん、血液がん、腎・尿路癌、肝がん、肺/胸膜がん、前立腺がん、肉腫、皮膚がん及び子宮がんから選択される、請求項13に記載の治療剤。
【請求項15】
免疫障害が、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主病、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ様関節炎、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎から選択される疾患に関連する、請求項13に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然に存在する志賀毒素のAサブユニットに由来する脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドに関する。本発明のポリペプチドは、関連免疫応答を低減させることが望ましい哺乳動物への投与に、単独で有用であり、又は分子、例えば治療薬、の成分として有用である。例えば、本発明のポリペプチドは、特異的細胞タイプの標的化殺滅のための特異的標的化分子、例えば免疫毒素及びリガンド-毒素融合体、の成分として使用されうる。本発明のタンパク質は、例えば、がん、腫瘍、免疫障害及び微生物感染を含む様々な疾患、障害及び状態の診断、予後予測及び処置のための治療薬及び診断薬の成分として、使用される。
【背景技術】
【0002】
志賀毒素は、医学的応用のために該毒素の構造、特性及び生物活性の合理的改変による合成的エンジニアリングが施されてきた(例えば、米国特許第7713915号明細書、欧州特許第1051482号明細書、欧州特許第1727827明細書、欧州特許第1945660号明細書、米国特許出願公開第2009/0156417号明細書A1、欧州特許第2228383号明細書B1、欧州特許出願公開第2402367号明細書A1、米国特許出願公開第2013/0196928号A1、国際公開第2014164680号、国際公開第2014164693号、米国特許出願第61/951,110号明細書、米国特許仮出願第61/951,121号を参照されたい(これらの各々が参照により本書に組み込まれている))。志賀毒素Aサブユニットは、切断型の場合又は他のタンパク質ドメインに融合されている場合でも、安定しており、酵素的に活性であり、細胞毒性である(Haddad J et al., J Bacteriol 175: 4970-8(1993)、Al-Jaufy A et al.,Infect Immun 62: 956-60 (1994)、Al-Jaufy A et al., Infect Immun 63: 3073-8 (1995)、LaPointe Pet al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005)、Di R et al.,Toxicon 57: 535-39 (2011))。これらの志賀毒素Aサブユニット由来ポリペプチドは、細胞標的療法用分子を創生するために化学的コンジュゲーション又は組換えタンパク質工学によって免疫グロブリンドメイン又は受容体リガンドに連結又は融合されることがある。そのような分子工学の1つの目的は、1)全身性投与後、生物体内の特異的細胞タイプ又は位置への毒素の送達及び2)真核生物細胞において効果がある強力な細胞毒性メカニズムを用いる特異的細胞への細胞毒性標的化の遂行という二重機能性を有するキメラ分子の設計である。
【0003】
非ヒト源からの合成的エンジニアリングが施されたタンパク質を伴う治療応用の主な制限の1つは免疫原性である。抗原性及び/又は免疫原性は、分子がインビボ投与されたときにその分子の抗原エピトープが抗体及び/又は免疫応答を誘導できることに起因する。ほとんどの治療用タンパク質は、IgMのような低レベル、低親和性及び一過性の抗体の産生から高レベル、高親和性IgG抗体まで多岐にわたる、何らかの免疫応答を誘導すると考えられている(Schellekens H,Clin Ther 24: 1720-30 (2002)、SchellekensH,Nat
Rev Drug Discov 1: 457-62 (2002))。治療製品の望ましくない免疫原性は、有効性の
低下、薬物動態の変化、全身性免疫及び過敏症反応、アナフィラキシー、及びアナフィラキシー様反応などの好ましくない結果をもたらすことがあった(Buttel I et al.,Biologicals 39: 100-9 (2011))。例えば、患者における中和抗体又は抗薬物抗体の産生は、
治療薬の反復投与又は慢性投与の長期有効性を制限しうる。
【0004】
望ましくない免疫応答は、治療薬の有意な安全性及び/又は有効性の問題をもたらしうるので、治療用タンパク質を開発するにあたって抗原性及び/又は免疫原性を最小限に抑えることが望ましいことが多い。残念なことに、目下のところ、広範な実験及び臨床研究
にもかかわらず、新規治療用タンパク質が免疫原性になる程度を患者への投与前に予測することは不可能である(DescotesJ, GouraudA, Expert Opin Drug Metab Toxicol 4: 1537-49(2008))。この主な原因は、脊椎動物の適応免疫系による抗体産生メカニズムに
ついての現在の理解の不足と、そのようなメカニズムの不均一性の両方である。例えば、おそらく、溶媒露出面積が大きい親水性のかさ高いアミノ酸露出のより高い尤度を除いて、一般的エピトープの決定的な構造的特徴は、抗原-抗体複合体の分析によって解明されていない。
【0005】
これらの困難にもかかわらず、タンパク質の免疫原性を低減させるために様々な戦略が現在利用されている(例えば、OndaMet al., ProcNatl Acad Sci USA 105: 11311-6 (2008)、ValleraDet al.,Mol Cancer Ther 9: 1872-83 (2010)を参照されたい)。タンパク質の免疫原性は、適応免疫系によって認識される可能性の高いエピトープを除去又は破壊することにより低減させることができる。エピトープ破壊又は除去は、変異、例えば切断、欠失、又はアミノ酸置換、又はヒト化によって果たすことができる(Nagata S, Pastan
I, Adv Drug Deliv Rev 61: 977-85 (2009)、Baker M et al., Self Nonself 1: 314-22
(2010))。
【0006】
治療用分子の脱免疫化については、親和性成熟のため高親和性抗体を産生する可能性が高いBリンパ球(B細胞)抗原エピトープの同定及び破壊が優先されることが多い。抗原活性化後、B細胞は、形質細胞又は記憶細胞のいずれかに分化することができる。活性化されたB細胞はクラススイッチされて、低親和性IgM及びIgD抗体の発現から、別々の抗原エピトープを認識する単一Igアイソタイプ、IgG、IgE、IgA又はIgD、の発現へと変化する(Klein U et al., Nat Rev Immunol 8: 22-33 (2008))。単一の
Igアイソタイプを発現する活性化されたB細胞は、特異的抗原エピトープに対して高い親和性を有する抗体を産生するB細胞について選択されうる。したがって、治療薬中のエピトープの破壊は、その治療薬が対象に投与されたとき、そのエピトープに特異的に結合する高親和性抗体の産生はもちろん、そのエピトープを標的にする長寿命の記憶B細胞の形成も防止する。
【0007】
現在、ポリペプチド中のB細胞エピトープを正確かつ包括的に予測するための標準技術はない(Sathish Jetal., Nat Rev Drug Discov 12:306-24 (2013))。B細胞エピト
ープは、変異誘発と抗体、免疫処置、又は免疫グロブリンライブラリーのファージディスプレースクリーニングとの組合せを用いる様々な経験的方法によって同定することができる。推定B細胞エピトープは、所与のポリペプチド配列中の予測される直鎖状及び不連続エピトープをスキャンするコンピュータツールを使用して予測することができ、その後、前記エピトープは発現停止を企図して破壊されることもある(Larsen et al., Immunome Res 2: 2 (2006)、El-Manzalawyetal., J Mol Recognit21: 243-55 (2008)、Sollner J
etal., Immunome Res 4: 1 (2008)、Bryson C et al.,BioDrugs24: 1-8 (2010)、Yao B
et al., PLoS One 8: e62249 (2013))。これらのコンピュータによるB細胞エピト
ープ予測はあまり正確ではなく、それ故、実験に基づいて検証しなければならない(Nagata, AdvDrugDeliv Rev 61: 977-85 (2009))。エピトープ破壊は、推定B細胞エピトー
プ内の荷電及び/又は芳香族残基をアラニン残基に変異させることによって試みられることが多い(Onda M etal.,J Immunol 177: 8822-34 (2006)、Lui W et al., ProcNatl Acad Sci USA 109:11782-7 (2012)、Yumura K et al.,Protein Sci 22: 213-21 (2012))
。さらに、可能性のあるすべてのエピトープを正確にマッピングして破壊するが生物治療活性は維持するというのは、より大きいタンパク質の場合、困難な目標でありうる(Brauer F et al., Antimicrob Agents Chemother 57:678-88 (2013))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7713915号明細書
【文献】欧州特許第1051482号明細書
【文献】欧州特許第1727827明細書
【文献】欧州特許第1945660号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0156417号明細書A1
【文献】欧州特許第2228383号明細書B1
【文献】欧州特許出願公開第2402367号明細書A1
【文献】米国特許出願公開第2013/0196928号A1
【文献】米国特許出願公開第2014/023198号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/023231号明細書
【文献】米国特許出願第61/951,110号明細書
【文献】米国特許仮出願第61/951,121号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Haddad J et al., J Bacteriol175:4970-8(1993)
【文献】Al-Jaufy A et al.,Infect Immun 62:956-60(1994)
【文献】Al-Jaufy A et al.,Infect Immun 63:3073-8(1995)
【文献】LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005)
【文献】Di R et al., Toxicon 57: 535-39 (2011)
【文献】Schellekens H, Clin Ther 24: 1720-30 (2002)
【文献】Schellekens H, Nat Rev Drug Discov 1:457-62(2002)
【文献】Buttel I et al., Biologicals 39: 100-9 (2011)
【文献】Descotes J, Gouraud A, Expert OpinDrugMetabToxicol 4: 1537-49 (2008)
【文献】Onda M et al., Proc Natl Acad Sci USA105:11311-6(2008)
【文献】Vallera D et al., Mol Cancer Ther 9:1872-83(2010)
【文献】Nagata S, PastanI, Adv Drug Deliv Rev61:977-85 (2009)
【文献】Baker M et al., Self Nonself1: 314-22(2010)
【文献】Klein U et al., Nat Rev Immunol8:22-33(2008)
【文献】Sathish J et al., Nat Rev DrugDiscov12:306-24 (2013)
【文献】Larsen et al., Immunome Res 2: 2 (2006)
【文献】El-Manzalawy etal., J Mol Recognit21:243-55 (2008)
【文献】Sollner J et al., Immunome Res 4: 1 (2008)
【文献】Bryson C et al., BioDrugs24: 1-8 (2010)
【文献】Yao B et al., PLoSOne 8: e62249 (2013)
【文献】Nagata, Adv Drug DelivRev 61: 977-85 (2009)
【文献】Onda M et al., J Immunol 177: 8822-34 (2006)
【文献】Lui W et al., Proc Natl AcadSci USA109:11782-7 (2012)
【文献】Yumura K et al., Protein Sci 22:213-21(2012)
【文献】Brauer F et al., Antimicrob AgentsChemother57:678-88 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
志賀毒素は、エンジニアリングされて治療及び診断応用のための有用な製品になる見込みがあるが、それらの潜在的免疫原性は、医学的応用での利用の障害になりうる。志賀毒素は、ヒト免疫系にとって非常に異質である細菌タンパク質である。しかし、志賀毒素のAサブユニット内の抗原性及び/又は免疫原性部位は、系統的にマッピングされていない。医学的応用のために十分な志賀毒素エフェクター機能を保持する、抗原性及び/又は免疫原性が低減された、改善された志賀毒素Aサブユニット由来ポリペプチドを、例えば特
異的細胞タイプへの細胞毒性の標的化送達に関わる様々な治療薬の成分として、有することは望ましいことであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、哺乳動物における抗原性及び/又は免疫原性が低減された(本書では「脱免疫化された」と言う)志賀毒素エフェクターポリペプチドを提供する。加えて、本発明は、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、細胞毒性タンパク質及び診断用タンパク質を提供する。志賀毒素Aサブユニットに由来する脱免疫化されたポリペプチドを、特異的細胞外結合相互作用によって細胞標的化を媒介する1又は2以上のポリペプチドに連結させて、細胞内在化及び志賀毒素細胞毒性の細胞特異的標的化のための改善された治療薬のエンジニアリングを可能にすることができる。脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドと検出促進剤の連結は、特異的細胞タイプの存在を検出するための改善された診断用分子のエンジニアリングを可能にする。本発明のポリペプチドは、標的化細胞殺滅に、特異的細胞タイプへの外因性物質の送達に、診断情報の獲得に、並びにがん、免疫障害及び微生物感染を含む様々な疾患、障害及び状態の処置のための治療薬として使用される。
【0012】
本発明のポリペプチドは、志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのAサブユニットのアミノ酸配列に由来するポリペプチドを含む志賀毒素エフェクター領域であって、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能が保持されるような方法で変異によって少なくとも1つの予測B細胞エピトープが除去又は破壊された志賀毒素エフェクター領域を含む。
【0013】
本発明のポリペプチドの特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのAサブユニットのアミノ酸配列に由来するポリペプチドを含む志賀毒素エフェクター領域であって、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能が保持されるような方法での変異によって少なくとも1つの予測B細胞エピトープが除去又は破壊されており、いかなるB細胞エピトープ破壊によっても異所性、MHCクラスI限定、T細胞エピトープが導入されていない志賀毒素エフェクター領域を含む。MHCクラスI限定、T細胞エピトープは公知であり、当業者はそのようなT細胞エピトープを予測することができる。異所性という用語は、脱免疫化される前のポリペプチド、すなわち、1又は2以上のB細胞エピトープが除去及び/又は破壊される前の親ポリペプチド、に自然に存在しないMHCクラスI限定、T細胞エピトープを指す。
【0014】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115;配列番号1又は配列番号2の141~153;配列番号3の140~156;配列番号1又は配列番号2の179~190;配列番号3の179~191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;及び配列番号3の210~218;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域が志賀毒素エフェクター機能を示すことができる、ポリペプチドを提供する。
【0015】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115;配列番号1又は配列番号2の141~153;配列番号3の140~156;配列番号1又は配列番号2の179~190;配列番号3の179~191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;及び配列番号3の210~218;からなる
天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域が有意なレベルの志賀毒素エフェクター機能を示すことができる、ポリペプチドを提供する。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115;配列番号1又は配列番号2の141~153;配列番号3の140~156;配列番号1又は配列番号2の179~190;配列番号3の179~191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;及び配列番号3の210~218;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域に志賀毒素エフェクター機能能力があり、破壊が、単一エピトープ領域の破壊でなく、配列番号1又は配列番号2のS96Y;配列番号1又は配列番号2のY114S;配列番号1又は配列番号2のR179A;配列番号1又は配列番号2のR179H;配列番号1又は配列番号2のL185A;配列番号1又は配列番号2のR188A;配列番号1又は配列番号2のR205A;配列番号1又は配列番号2のR179A/R188A;及び配列番号3のA188V;からなる群から選択されるアミノ酸残基置換のみからならない、ポリペプチドを提供する。
【0017】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115;配列番号1又は配列番号2の141~153;配列番号3の140~156;配列番号1又は配列番号2の179~190;配列番号3の179~191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;及び配列番号3の210~218;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域が有意なレベルの志賀毒素エフェクター機能を示すことができ、破壊が、単一エピトープ領域の破壊でなく、配列番号1又は配列番号2のS96Y;配列番号1又は配列番号2のY114S;配列番号1又は配列番号2のR179A;配列番号1又は配列番号2のR179H;配列番号1又は配列番号2のL185A;配列番号1又は配列番号2のR188A;配列番号1又は配列番号2のR205A;配列番号1又は配列番号2のR179A/R188A;及び配列番号3のA188V;からなる群から選択されるアミノ酸残基置換のみからならない、ポリペプチドを提供する。
【0018】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1又は配列番号2の1~15;配列番号3の3~14;配列番号3の26~37;配列番号1又は配列番号2の27~37;配列番号1又は配列番号2の39~48;配列番号3の42~48;及び配列番号1、配列番号2又は配列番号3の53~66;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域が志賀毒素エフェクター機能を示すことができ、志賀毒素エフェクター領域が、破壊されたエピトープ領域と重複する該志賀毒素エフェクター領域が由来した志賀毒素Aサブユニットの破壊されたエピトープ領域と重複するアミノ末端切断を含まない、ポリペプチドを提供する。
【0019】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであ
って、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1又は配列番号2の1~15;配列番号3の3~14;配列番号3の26~37;配列番号1又は配列番号2の27~37;配列番号1又は配列番号2の39~48;配列番号3の42~48;及び配列番号1、配列番号2又は配列番号3の53~66;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域が有意なレベルの志賀毒素エフェクター機能を示すことができ、志賀毒素エフェクター領域が、破壊されたエピトープ領域と重複する該志賀毒素エフェクター領域が由来した志賀毒素Aサブユニットの破壊されたエピトープ領域と重複するアミノ末端切断を含まない、ポリペプチドを提供する。
【0020】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1又は配列番号2の1~15;配列番号3の3~14;配列番号3の26~37;配列番号1又は配列番号2の27~37;配列番号1又は配列番号2の39~48;配列番号3の42~48;及び配列番号1、配列番号2又は配列番号3の53~66;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域が志賀毒素エフェクター機能を示すことができ、破壊が単一エピトープ領域の破壊ではなく、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸残基置換R63Wのみからならず、志賀毒素エフェクター領域が、破壊されたエピトープ領域と重複する該志賀毒素エフェクター領域が由来した志賀毒素Aサブユニットの破壊されたエピトープ領域と重複するアミノ末端切断を含まない、ポリペプチドを提供する。
【0021】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号3の240~260;配列番号1又は配列番号2の243~257;配列番号1又は配列番号2の254~268;配列番号3の262~278;配列番号3の281~297;及び配列番号1又は配列番号2の285~293;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域が志賀毒素エフェクター機能を示すことができ、志賀毒素エフェクター領域が、破壊されたエピトープ領域と重複する該志賀毒素エフェクター領域が由来した志賀毒素Aサブユニットの破壊されたエピトープ領域と重複するカルボキシ末端切断を含まない、ポリペプチドを提供する。
【0022】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号3の240~260;配列番号1又は配列番号2の243~257;配列番号1又は配列番号2の254~268;配列番号3の262~278;配列番号3の281~297;及び配列番号1又は配列番号2の285~293;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される志賀毒素Aサブユニットアミノ酸配列の少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含み、志賀毒素エフェクター領域が志賀毒素エフェクター機能を示すことができ、破壊が、単一エピトープ領域の破壊でなく、配列番号1又は配列番号2のR248H;配列番号1又は配列番号2のA250V;配列番号1又は配列番号2のR251H;配列番号1又は配列番号2のA253G;配列番号1又は配列番号2のS254T;配列番号1又は配列番号2のC261A;配列番号1又は配列番号2のR289K;配列番号1又は配列番号2のR248H及びR251H;配列番号1又は配列番号2のA253G及びS254T;配列番号1のS247~M252の欠失;配列番号3のS246F;配列番号3のA282V;配列番号3のI291V;並びに配列番号3のS246F/I291V;からなる群から選択されるアミノ酸残
基置換のみからならず、志賀毒素エフェクター領域が、破壊されたエピトープ領域と重複する該志賀毒素エフェクター領域が由来した志賀毒素Aサブユニットの破壊されたエピトープ領域と重複するカルボキシ末端切断を含まない、ポリペプチドを提供する。
【0023】
特定のさらなる実施形態において、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、本書において提供するエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含むエピトープ破壊を含む。特定のさらなる実施形態において、本発明のポリペプチドは、提供するエピトープ領域への少なくとも1つのアミノ酸の挿入を含むエピトープ破壊を含む。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つの反転したアミノ酸が提供するエピトープ領域内にある、アミノ酸の反転又は他の再配列を含む破壊を含む。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、非標準アミノ酸又は側鎖が化学的に修飾されているアミノ酸への単一アミノ酸置換などのアミノ酸残基変異を含むエピトープ破壊を含む。
【0024】
特定の実施形態において、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、本書において提供するエピトープ領域内のアミノ酸残基置換含むエピトープ破壊を含む。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H及びKからなる群から選択されるアミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、DからAへの、DからGへの、DからVへの、DからLへの、DからIへの、DからFへの、DからSへの、DからQへの、EからAへの、EからGへの、EからVへの、EからLへの、EからIへの、EからFへの、EからSへの、EからQへの、EからNへの、EからDへの、EからMへの、EからRへの、GからAへの、HからAへの、HからGへの、HからVへの、HからLへの、HからIへの、HからFへの、HからMへの、KからAへの、KからGへの、KからVへの、KからLへの、KからIへの、KからMへの、KからHへの、LからAへの、LからGへの、NからAへの、NからGへの、NからVへの、NからLへの、NからIへの、NからFへの、PからAへの、PからGへの、PからFへの、RからAへの、RからGへの、RからVへの、RからLへの、RからIへの、RからFへの、RからMへの、RからQへの、RからSへの、RからKへの、RからHへの、SからAへの、SからGへの、SからVへの、SからLへの、SからIへの、SからFへの、SからMへの、TからAへの、TからGへの、TからVへの、TからLへの、TからIへの、TからFへの、TからMへの、TからSへの、YからAへの、YからGへの、YからVへの、YからLへの、YからIへの、YからFへの、及びYからMへの置換からなる群から選択される置換を含む。
【0025】
特定の実施形態において、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、エピトープ領域内のアミノ酸残基置換を含む破壊を含み、置換は、配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112;配列番号1、配列番号2又は配列番号3のSE147;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の18
5;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択される天然位置のアミノ酸で起こる。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、エピトープ領域内のアミノ酸残基置換を含むエピトープ破壊を含み、置換は、任意の非保存アミノ酸への置換であり、配列番号1又は配列番号2の1;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11;配列番号1又は配列番号2の33;配列番号1又は配列番号2の43;配列番号1又は配列番号2の45;配列番号1又は配列番号2の47;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48;配列番号1又は配列番号2の49;配列番号1又は配列番号2の53;配列番号1又は配列番号2の55;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59;配列番号1又は配列番号2の60;配列番号1又は配列番号2の61;配列番号1又は配列番号2の62;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109;配列番号1又は配列番号2の110;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112;配列番号1、配列番号2又は配列番号3のSE147;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179;配列番号1又は配列番号2の180;配列番号1又は配列番号2の181;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184;配列番号1又は配列番号2の185;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186;配列番号1又は配列番号2の187;配列番号1又は配列番号2の188;配列番号1又は配列番号2の189;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205;配列番号1又は配列番号2の247;配列番号3の247;配列番号1又は配列番号2の248;配列番号3の250;配列番号1又は配列番号2の251;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264;配列番号1又は配列番号2の265;及び配列番号1又は配列番号2の286;からなる天然位置のアミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基で起こる。非保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸の、1又は2以上の顕著に異なる生化学的特性を有する別のアミノ酸での置換、例えば、荷電アミノ酸から非荷電アミノ酸への、極性アミノ酸から疎水性アミノ酸への、及びかさ高いアミノ酸から小さいアミノ酸への置換などである。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、エピトープ領域内のアミノ酸残基置換を含むエピトープ破壊を含み、置換は、天然位置のアミノ酸残基で起こり、K1のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、T4のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、S8のA、G、V、I、L、F及びMへの、T9のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、S9のA、G、V、L、I、F及びMへの、K11のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、S33のA、G、V、L、I、F及びMへの、S45のA、G、V、L、I、F及びMへの、T45のA、G、V、L、I、F及びMへの、D47のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、N48のA、G、V、L及びMへの、L49のA又はGへの、D53のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、R55のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D58のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、P59のA、G及びFへの、E60のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、E61のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、G62のAへの、D94のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S96のA、G、V、I、L、F及びMへの、S109のA、G、V、I、L、F及びMへの、T109のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、G110のAへの、S112のA、G、V、L、I、F及びMへの、G147のAへの、R179のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、T180のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、T181のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、D
183のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、D184のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S186のA、G、V、I、L、F及びMへの、G187のAへの、R188のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S189のA、G、V、I、L、F及びMへの、R204のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R205のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S247のA、G、V、I、L、F及びMへの、Y247のA、G、V、L、I、F及びMへの、R248のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R250のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R251のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D264のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、G264のAへの、並びにT286のA、G、V、L、I、F、M及びSへの置換からなる群から選択されるアミノ酸への置換である。
【0026】
特定のさらなる実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸75~251に由来する、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。特定のさらなる実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3のアミノ酸1~251及び/又は配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3のアミノ酸1~261に由来する、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。特定のさらなる実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸1~241に由来する、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。
【0027】
特定の実施形態について、本発明のポリペプチドは、配列番号4~52のいずれか1つを含む、又は配列番号4~52のいずれか1つから本質的になる、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。
【0028】
本発明の特定の実施形態は、1又は2以上の志賀毒素エフェクター機能、例えば細胞毒性活性、を示す脱免疫化された志賀毒素サブユニットA由来領域に連結された細胞標的化のための結合領域を含むタンパク質を提供する。本発明のタンパク質は、本発明のポリペプチドを含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域と、少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる1又は2以上のポリペプチドを含む結合領域とを含む。
【0029】
本発明のタンパク質の特定の実施形態において、結合領域は、相補性決定領域3(CDR3,complementary determining region 3)断片拘束FR3-CDR3-FR4(FR3-CDR3-FR4)ポリペプチド、シングルドメイン抗体(sdAb,single-domain antibody)断片、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VHH断片
)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR,immunoglobulin new antigen receptor)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv
,single-chain variable fragment)、抗体可変断片(Fv,variable fragment)、抗
原結合断片(Fab,antigen-binding fragment)、Fd断片、小モジュラー免疫医薬(SMIP,small modular immunopharmaceutical)ドメイン、フィブロネクションから得られる第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3,fibronection-derived 10thfibronectin typeIII domain)(例えばモノボディ)、テネイシンIII型ドメイン(例え
ばTNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン(ARD,ankyrin repeat motif domain)、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLRのAドメイン又はLDL
R-A,low-density-lipoprotein-receptor-derived A-domain)、リポカリン(アンチ
カリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-B結晶由来ドメイン(アフィリン)、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド、Fyn由来SH2ドメイン(アフィチン)、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、エンジニアリングされた抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操
作された任意の対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。
【0030】
本発明の特定の実施形態において、細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合されている細胞に本発明の脱免疫化された細胞毒性タンパク質を投与すると、細胞毒性タンパク質は、細胞を死滅させることができる。
【0031】
本発明の特定の実施形態において、細胞外標的生体分子の存在について異なる、細胞タイプの2集団に、本発明の脱免疫化された細胞毒性タンパク質を投与すると、細胞毒性タンパク質は、細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合されていない細胞タイプとのCD50の少なくとも3倍の、又はそれよりも低いCD50で、細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合されている細胞タイプを細胞死させることができる。
【0032】
本発明のタンパク質の特定の実施形態において、結合領域は、CD20、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、CDCP1、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF
7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、
アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/メランA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/メランA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、CD38、CD15、CD23、CD52、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305、C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、siglec-8、siglec-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、CD193、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD15、CD33、CD64、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、CD11c、CD123、及び前述のもののいずれかの任意の免疫原性断片からなる群から選択される細胞外標的生体分子と結合するその能力によって設計又は選択される。
【0033】
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体残留/回収シグナルモチーフ(carboxy-terminal endoplasmic reticulum retention/retrieval signalmotif)を含む。特定のさらなる実施形態において、
本発明のタンパク質は、KDEL(配列番号:60)、HDEF(配列番号:61)、HDEL(配列番号:62)、RDEF(配列番号:63)、RDEL(配列番号:64)、WDEL(配列番号:65)、YDEL(配列番号:66)、HEEF(配列番号:67)、HEEL(配列番号:68)、KEEL(配列番号:69)、REEL(配列番号:70)、KAEL(配列番号:71)、KCEL(配列番号:72)、KFEL(配列
番号:73)、KGEL(配列番号:74)、KHEL(配列番号:75)、KLEL(配列番号:76)、KNEL(配列番号:77)、KQEL(配列番号:78)、KREL(配列番号:79)、KSEL(配列番号:80)、KVEL(配列番号:81)、KWEL(配列番号:82)、KYEL(配列番号:83)、KEDL(配列番号:84)、KIEL(配列番号:85)、DKEL(配列番号:86)、FDEL(配列番号:87)、KDEF(配列番号:88)、KKEL(配列番号:89)、HADL(配列番号:90)、HAEL(配列番号:91)、HIEL(配列番号:92)、HNEL(配列番号:93)、HTEL(配列番号:94)、KTEL(配列番号:95)、HVEL(配列番号:96)、NDEL(配列番号:97)、QDEL(配列番号:98)、REDL(配列番号:99)、RNEL(配列番号:100)、RTDL(配列番号:101)、RTEL(配列番号:102)、SDEL(配列番号:103)、TDEL(配列番号:104)及びSKEL(配列番号:105)からなる群から選択される、カルボキシ末端小胞体残留/回収シグナルモチーフを含む。
【0034】
特定の実施形態について、本発明のタンパク質は、結合領域及び脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含み、これらの領域は、結合領域が志賀毒素エフェクター領域のアミノ末端に隣接した位置にないようにタンパク質内で物理的に配向されている。
【0035】
特定の実施形態について、本発明のタンパク質は、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸75~251に由来する志賀毒素エフェクター領域を含む。特定のさらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域が配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3のアミノ酸1~251及び/又は配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3のアミノ酸1~261に由来するタンパク質を提供する。特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のアミノ酸1~241に由来する志賀毒素エフェクター領域を含む。
【0036】
特定の実施形態について、本発明のタンパク質は、配列番号4~52のいずれか1つを含む、又は配列番号4~52のいずれか1つから本質的になる、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。
【0037】
特定の実施形態について、本発明のタンパク質は、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58若しくは配列番号59のアミノ酸を含む、又は配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58若しくは配列番号59のアミノ酸から本質的になる。
【0038】
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットと比較して志賀毒素エフェクター領域の酵素活性を変化させる変異をさらに含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含み、変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失又は置換、例えば、配列番号1、配列番号2又は配列番号3におけるA231E、R75A、Y77S、Y114S、E167D、R170A、R176K及び/又はW203Aなどから選択される。特定のさらなる実施形態において、本発明のタンパク質は、触媒活性を低減させる又は除去するが少なくとも1つの他の志賀毒素エフェクター機能を保持する変異を含む。
【0039】
本発明は、本発明のポリペプチド及び/又はタンパク質と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物、並びに本書の中でさらに説明するような本発明の方法におけるそのようなタンパク質、又はそれを含む組成物の使用も提供する。
【0040】
本発明のポリペプチド、タンパク質及び組成物の他に、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチド又は本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を
含む本発明のタンパク質をコードすることができるポリヌクレオチド、並びに本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び本発明の発現ベクターを含む宿主細胞は、本発明の範囲内である。発現ベクターを含む宿主細胞は、例えば、本発明のポリペプチド及び/若しくはタンパク質又はそれらのポリペプチド成分若しくは断片を組換え発現によって産生する方法において、使用されることがある。
【0041】
加えて、本発明は、細胞を選択的に殺滅する方法であって、細胞を、本発明のタンパク質、又は本発明のそのようなタンパク質を含む医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。特定の実施形態において、細胞を接触させるステップは、インビトロで行われる。特定の実施形態において、細胞を接触させるステップは、インビボで行われる。
【0042】
本発明は、それを必要とする患者において疾患、障害及び/又は状態を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む組成物、ポリペプチド及び/若しくはそれを含むタンパク質、又は前述のもののいずれかを含む組成物(例えば医薬組成物)の治療有効量を投与するステップを含む方法をさらに提供する。特定の実施形態において、本発明のこの方法を用いて治療される疾患、障害又は状態は、がん、腫瘍、免疫障害及び微生物感染から選択される。この方法の特定の実施形態において、治療されるがんは、骨がん、乳がん、中枢/末梢神経系がん、胃腸がん、胚細胞がん、腺がん、頭頸部がん、血液がん、腎・尿路癌、肝がん、肺/胸膜がん、前立腺がん、肉腫、皮膚がん及び子宮がんからなる群から選択される。この方法の特定の実施形態において、治療される免疫障害は、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主病、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ様関節炎、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎及び血管炎からなる群から選択される疾患に関連した免疫障害である。
【0043】
本発明の特定の実施形態には、がん、腫瘍、免疫障害又は微生物感染の治療又は予防のための、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む組成物、ポリペプチド及び/若しくはそれを含むタンパク質、又は前述のもののいずれかを含む組成物がある。本発明の特定の実施形態には、がん、腫瘍、免疫障害又は微生物感染の治療又は予防のための医薬品の製造における、本発明の組成物の使用がある。
【0044】
本発明のタンパク質の特定の実施形態を用いて、本発明のタンパク質の細胞外標的生体分子と物理的に結合されている細胞に1又は2以上のさらなる外因性物質を送達することができる。加えて、本発明は、細胞の内部に外因性物質を送達する方法であって、細胞を本発明のタンパク質、医薬組成物及び/又は診断用組成物とインビトロ又はインビボのいずれかで接触させるステップを含む方法を提供する。本発明は、外因性物質を、それを必要とする患者の細胞の内部に送達する方法であって、患者に本発明のタンパク質を投与するステップを含み、標的細胞が本発明のタンパク質の細胞外標的生体分子と物理的に結合されている、方法をさらに提供する。
【0045】
本発明の特定の実施形態には、疾患、障害又は状態の診断、予後予測又は特性評価における、本発明の化合物(例えばポリペプチド若しくはタンパク質)及び/又は本発明の組成物(例えば医薬組成物又は診断用組成物)の使用がある。
【0046】
本発明の特定の実施形態には、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド、ポリペプチド及び/若しくはそれを含むタンパク質、又は前述のもののいずれかを含む組成物と、細胞タイプ、組織、器官、疾患、障害、状態又は患者についての診断に有用な情報などの情報の収集のための検出促進剤とを含む、診断用組成物がある。
【0047】
本発明の特定の実施形態には、本発明のタンパク質及び/又は診断用組成物を使用して細胞を検出する方法であって、細胞を前記タンパク質及び/又は診断用組成物と接触させるステップと、前記タンパク質及び/又は診断用組成物の存在を検出するステップとを含む方法がある。特定の実施形態において、細胞を接触させるステップは、インビトロで行われる。特定の実施形態において、細胞を接触させるステップは、インビボで行われる。特定の実施形態において、細胞を検出するステップは、インビトロで行われる。特定の実施形態において、細胞を検出するステップは、インビボで行われる。
【0048】
例えば、本発明の診断用組成物を使用して、検出促進剤を含む本発明のタンパク質を含む組成物を哺乳動物対象に投与し、次いで、本発明のタンパク質の存在をインビトロ又はインビボのいずれかで検出することにより、細胞をインビボで検出してもよい。収集される情報は、本発明のタンパク質の結合領域の細胞外標的と物理的に結合されている細胞の存在に関することもあり、又は疾患、障害若しくは状態の診断、予後予測、特性評価及び/若しくは治療に有用であることもある。本発明の特定の化合物(例えばポリペプチド及びタンパク質)、本発明の組成物(例えば医薬組成物及び診断用組成物)、及び本発明の方法を用いて、患者が、本発明の医薬組成物に応答する群に属するかどうかを判定してもよい。
【0049】
本発明のポリペプチドの特定の実施形態を、哺乳動物の免疫治療及び/又はワクチン接種のために免疫原として又は免疫原の成分として利用してもよい。
【0050】
本発明の特定の実施形態には、本発明の組成物を備え、使用説明書、さらなる試薬及び/又は医薬品送達デバイスを備えていてもよいキットがある。
【0051】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び付属の図に関連してよりよく理解されることになる。本発明の上述の要素を個々に組み合わせて又は自由に除去して本発明の他の実施形態を、以降にそのような組合せ又は除去に反対するいかなる記述もなければ、作製することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】例示的な脱免疫化されたポリペプチド及び細胞毒性タンパク質の一般的な配置を示す図である。
【
図2】脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域におけるD58A置換は、pAb2によって認識されるエピトープを変性条件下で効果的に破壊し、志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドの抗原性を低下させたことを示す図である。
【
図3】脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域の多重的なエピトープ領域の破壊を有するバリアントという状況におけるD58A置換は、pAb2によって認識されるエピトープを変性条件下で効果的に破壊し、志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドの抗原性を低下させたことを示す図である。
【
図4】脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域の多重的なエピトープ領域の破壊を有するバリアントは、pAb2及びmAb1によって認識されるエピトープを変性条件下で破壊したことを示す図である。これらの多重的なエピトープ領域の破壊を有するバリアントは、親の野生型志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドと比較して低下した抗原性を有する。
【
図5】脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域の多重的なエピトープ領域の破壊を有するバリアントは、pAb2及び/又はmAb1によって認識されるエピトープを変性条件下で効果的に破壊したことを示す図である。これらの多重的なエピトープ領域の破壊を有するバリアントは、親の野生型志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドと比較して低下した抗原性を有する。
【
図6】多重的なエピトープ領域の破壊を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、ネイティブのタンパク質フォールディング条件下で、mAb1によって認識されるエピトープの極めて有効な破壊をもたらしたことを示す図である。この多重的なエピトープ領域の破壊を有するバリアントは、親の野生型志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドと比較して低下した抗原性を有していた。
【
図7】多重的なエピトープ領域の破壊を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、哺乳動物の免疫系によるインビボでの抗体応答の低下をもたらしたことを示す図である。この多重的なエピトープ領域の破壊を有するバリアントは、親の野生型志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドと比較して低下した免疫原性を有していた。
【発明を実施するための形態】
【0053】
例証となる非限定的実施形態、及び付属の図への参照を用いて、以降、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は多くの異なる形態で実施されることがあり、本発明を、下に示す実施形態に限定されるとみなすべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が行き届いたものになるように、また本発明の範囲を当業者に知らせるために提供するものである。
【0054】
本発明をより容易に理解できるように、特定の用語を下で定義する。さらなる定義は、発明の詳細な説明の中で見つけることができる。
【0055】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いる場合、用語「1つの(a)」、「1
つの(an)」及び「その(the)」は、文脈による別段の明白な指図がない限り、単数及
び複数両方の指示対象を含む。
【0056】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いる場合、2つの種、A及びB、に言及するときの用語「及び/又は」は、A及びBの少なくとも一方を意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いる場合、2つより多くの種、例えばA、B及びC、に言及するときの用語「及び/又は」は、A、B若しくはCの少なくとも1つ、又はA、B若しくはCのいずれかの組合せ(この場合は各々の種に単数の可能性又は複数の可能性がある)の少なくとも1つを意味する。
【0057】
本明細書全体を通して、語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しく
は「含むこと(comprising)」などの語尾変化形は、述べられている整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)群の包含を暗示するが、他のいかなる整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)群の除外も暗示しないと解されるものとする。
【0058】
本明細書を通して、用語「含む(including)」は、「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」を意味するために用いる。「含む(including)」及び「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」は、同義で用いる。
【0059】
用語「アミノ酸残基」又は「アミノ酸」は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに組み込まれているアミノ酸への言及を含む。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸又はアミノ酸残基の任意の重合体を含む。用語「ポリペプチド配列」は、ポリペプチドを物理的に含む一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。「タンパク質」は、1本又は2本以上のポリペプチド鎖を含む高分子である。「ペプチド」は、合計15~20アミノ酸残基より小さいサイズの小さいポリペプチドである。用語「アミノ酸配列」は、その長さに依存してペプチド又はポリペプチドを物理的に含む一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。別段の指示がない限り、本書において開示するポリペプチド及びタンパク質配列は、アミノ末端からカルボキシ末端へのそれらの順序を表すように左から右に記載している。
【0060】
用語「アミノ酸」、「アミノ酸残基」、「アミノ酸配列」又は「ポリペプチド配列」は
、天然に存在するアミノ酸を含み、別段の制限がない限り、天然に存在するアミノ酸と同様に機能することができる公知の天然アミノ酸アナログ、例えば、セレノシステイン、ピロールリジン、N-ホルミルメチオニン、ガンマ-カルボキシグルタメート、ヒドロキシプロリン、ハイプシン、ピログルタミン酸及びセレノメチオニンも含む。本書において言及するアミノ酸は、表A中の以下のような簡略表記名によって記載している:
【0061】
【0062】
ポリペプチドに関しての句「保存的置換」は、ポリペプチド全体の機能及び構造を実質的に改変しない、ポリペプチドのアミノ酸組成の変化を指す(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H.Freeman and Company, New York (2nd ed., 1992)を参照されたい)。
【0063】
本書において用いる場合、用語「発現された」、「発現すること」又は「~発現する」及びその文法上の異形は、ポリヌクレオチド又は核酸のポリペプチド又はタンパク質への翻訳を指す。発現されたポリペプチド又はタンパク質は、細胞内に残存し、細胞表面膜の成分になることもあり、又は細胞外空間に分泌されることもある。
【0064】
本書において用いる場合、記号「α」は、記号の後に続く生体分子と結合することがで
きる免疫グロブリン型結合領域の簡略表記である。記号「α」は、記号の後に続く生体分子と結合するその能力に基づく免疫グロブリン型結合領域の機能的特徴を指すために用いている。
【0065】
記号「::」は、物理的に互いに結合して連続するポリペプチドを形成する前又はした後のポリペプチド領域を意味する。
【0066】
本明細書において用いる場合、2つのアミノ酸残基置換間に位置する記号「/」は、「/」の両側の又は同じ分子に含まれるアミノ酸残基置換を意味する。
【0067】
本発明では、句「~に由来する」は、ポリペプチド領域が、タンパク質中で元来見つけられるアミノ酸配列であって、元の配列と比較して全機能及び構造が実質的に保存されるような付加、欠失、短縮化又は他の改変を今や含むこともあるアミノ酸配列を含むことを意味する。
【0068】
本発明では、用語「エフェクター」は、因子の動員及び/又はアロステリック効果をもたらす、細胞毒性、生体シグナル伝達、酵素的触媒、細胞内経路指定及び/又は分子間結合などの、生物活性を提供することを意味する。
【0069】
本発明の目的に関して、志賀毒素のエフェクター機能は、志賀毒素のAサブユニットに由来するポリペプチド領域によって付与された生物活性である。志賀毒素のエフェクター機能の非限定的な例としては、細胞の内在化、細胞内の経路決定、触媒活性、及び細胞毒性が挙げられる。志賀毒素の触媒活性の非限定的な例としては、リボソーム不活性化、タンパク質合成阻害、N-グリコシダーゼ活性、ポリヌクレオチド:アデノシングリコシダーゼ活性、RNAアーゼ活性、及びDNAアーゼ活性が挙げられる。RIPは、核酸、ポリヌクレオシド、ポリヌクレオチド、rRNA、ssDNA、dsDNA、mRNA(及びポリA)、及びウイルス核酸を脱プリン化することができる(Barbieri L et al., Biochem J 286: 1-4(1992)、Barbieri L et al., Nature 372: 624 (1994)、LingJet al.,
FEBS Lett 345: 143-6 (1994)、Barbieri L etal., Biochem J 319: 507-13(1996)、Roncuzzi L,Gasperi-Campani A, FEBSLett392: 16-20 (1996)、Stirpe Fet al., FEBS Lett
382:309-12 (1996)、Barbieri L et al.,NucleicAcids Res 25:518-22 (1997)、Wang P, TumerN,Nucleic Acids Res 27:1900-5 (1999)、Barbieri L et al.,Biochim Biophys Acta1480: 258-66 (2000)、BarbieriL etal., J Biochem128:883-9 (2000)、Bagga S et al., J BiolChem 278: 4813-20(2003)、Picard D et al., J Biol Chem280: 20069-75 (2005))。いくつかのRIPは、抗ウイルス活性及びスーパーオキシドジスムターゼ活性を示す(Erice A et al., Antimicrob Agents Chemother 37:835-8 (1993)、Au
T et al., FEBS Lett 471: 169-72 (2000)、Parikh B, Tumer N, Mini Rev Med Chem 4: 523-43 (2004)、Sharma Net al.,Plant Physiol134: 171-81 (2004))。
志賀毒素の触媒活性は、インビトロとインビボの両方で観察されている。志賀毒素のエフェクター活性に関するアッセイは、例えば、タンパク質合成阻害活性、脱プリン活性、細胞成長の阻害、細胞毒性、スーパーコイルDNAの弛緩活性、及び/又はヌクレアーゼ活性などの様々な活性を測定することができる。
【0070】
細胞毒性タンパク質の細胞毒性活性に関して、用語「選択的細胞毒性」は、標的細胞タイプの細胞殺滅の優先性を明らかにするための標的細胞集団と非標的バイスタンダー細胞集団間の相対細胞毒性レベルを指し、この相対細胞毒性レベルを標的細胞タイプの半最大細胞毒性濃度(CD50)の非標的細胞タイプのCD50に対する比として表現することができる。
【0071】
本書において用いる場合、志賀毒素エフェクター機能の保持は、再現性のある適切な定
量的アッセイによって測定して、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照に匹敵する志賀毒素機能活性レベルを指す。リボソーム阻害について、志賀毒素エフェクター機能の保持は、10,000pM以下のIC50を示すことになる。標的陽性細胞殺滅アッセイにおける細胞毒性について、志賀毒素エフェクター機能の保持は、適切な細胞外標的生体分子の細胞タイプ及びその発現に依存して、1,000nM以下のCD50を示すことになる。
【0072】
本書で用いる場合、「脱免疫化された」は、哺乳動物への投与後の抗原性及び/又は免疫原性の低減を意味する。これは、1又は2以上新規エピトープの導入にかかわらず抗原性及び/又は免疫原性の低減全般を含む。
【0073】
序論
本発明は、免疫原性が低減された、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する改善されたポリペプチドを提供する。これらの改善された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、様々な組成物、例えば、細胞毒性治療薬、治療送達剤、診断分子及び免疫処置物質に利用されうる。
【0074】
治療薬の成分として志賀毒素を使用することの魅力にもかかわらず、細菌毒素は哺乳動物にとって免疫原性である傾向がある。タンパク質療法において望ましくない免疫原性は、有効性の低下、予測不能な薬物動態、並びに投薬量及び反復投与を制限する望ましくない免疫応答をもたらした。望ましくない免疫応答の回避を助長するための、免疫原性が低減された、脱免疫化された志賀毒素由来ポリペプチドを含む分子が必要とされているが、志賀毒素エフェクター機能を維持しつつ内部のB細胞エピトープをうまく同定し、除去するための予測可能な方法は存在しない。
【0075】
切断によって除去されうる抗原性及び/又は免疫原性エピトープもあるが、志賀毒素ポリペプチドのエフェクタードメイン、例えばその酵素性ドメイン、内でエピトープを発現停止させ、その上、所望の志賀毒素エフェクター機能、例えば、強力なリボソーム阻害、及び細胞内経路指定の指示を保持することは難題である。これらの内部エピトープを変異及び/又は化学的修飾によって消失させることができるが、志賀毒素エフェクター機能を保存しつつそれを行うことは難題である。機能的に制約された残基及び構造を維持しなければならず、特定の位置は、タンパク質構造、安定性及び/又は機能に影響せずに特定のアミノ酸置換を許容しないので、タンパク質機能を保存しつつタンパク質内のアミノ酸置換により抗原性部位を破壊することは、かなり難題である(Cantor J et al., Methods in Enzymology 502: Ch. 12 pp. 291-301(2012)を参照されたい)。
【0076】
志賀毒素由来ポリペプチド領域に関する広範な経験的実験を行って本発明に到達した。実施例においてより詳細に説明するように、予測B細胞エピトープにおいてアミノ酸置換を生じさせ、結果として得たポリペプチドを所望の志賀毒素エフェクター機能について試験した。各エピトープの抗原性及び/又は免疫原性は、もたらされるアミノ酸置換によって低減又は除去されると予想され、そしてまたその低減又は除去が、少なくとも1つのエピトープ破壊がもたらされた一切の組成物の抗原性及び/又は免疫原性全体を低減させる。志賀毒素機能を維持しつつ免疫原性が低減されたと確認された、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、緑膿菌外毒素(Pseudomonas exotoxin)Aなどの遠縁細菌タンパク質の脱免疫化の試みにもかかわらず、演繹的に予測できなかった。
【0077】
本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドは、特異的細胞タイプの標的化殺滅、並びにがん、免疫障害及び微生物感染を含む様々な疾患の処置のために組換え免疫毒素及びリガンド-毒素融合体の成分として使用されうる。加えて、本発明のポリペプチドは、診断情報収集のために検出促進剤などの外因性物質の正確な送達の
ための細胞タイプ特異的内在化分子の成分として使用されうる。さらに、本発明のポリペプチドは、志賀毒素に対する免疫応答を惹起するが特異的エピトープに対する抗体生成を回避するように設計された免疫処置物質において、独立して、又は志賀ホロ毒素の成分として、使用されうる。
【0078】
I.本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びタンパク質の一般構造
本発明は、細胞内在化、細胞内経路指定、触媒活性及び細胞毒性などの、志賀毒素エフェクター機能性を保持するが免疫原性が低減された志賀毒素エフェクター領域を含む、様々なポリペプチドを提供する。本発明のポリペプチドは、本書に記載する少なくとも1つのエピトープ領域の破壊を含む志賀毒素エフェクター領域を含む。本発明のタンパク質は、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域と、少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる1又は2以上のポリペプチドを含む結合領域とを含む。
【0079】
タンパク質毒素の志賀毒素ファミリーは、構造的に及び機能的に関連している様々な天然に存在する毒素、例えば、志賀毒素、志賀様毒素1及び志賀様毒素2で構成されている(Johannes L, Romer W, Nat Rev Microbiol 8:105-16 (2010))。志賀毒素ファミリー
のメンバーは、同じ全体構造及び作用メカニズムを共有する(Engedal, N et al.,MicrobialBiotech 4: 32-46(2011))。例えば、Stx、SLT-1及びSLT-2は、無細
胞系において区別できない酵素活性を提示する(Head S et al., J Biol Chem266:3617-21 (1991)、Tesh V et al., Infect Immun 61: 3392-402(1993)、Brigotti M et al.,Toxicon 35:1431-1437 (1997))。
【0080】
A.脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド
本発明では、句「志賀毒素エフェクター領域」は、少なくとも1つの志賀毒素機能を示すことができる、志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチド領域を指す。志賀毒素機能は、例えば、細胞侵入、脂質膜変形、細胞内経路指定の指示、分解の回避、触媒不活性化リボソーム、細胞毒性の遂行、及び細胞分裂停止作用の遂行を含む。
【0081】
本書において用いる場合、「有意な」志賀毒素エフェクター機能の保持は、再現性のある適切な定量的アッセイによって測定して、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照に匹敵する志賀毒素エフェクター機能活性レベルを指す。インビトロリボソーム阻害について、有意な志賀毒素エフェクター機能は、リボソーム源(例えば、細菌、古細菌又は真核生物(藻類、真菌、植物若しくは動物))に依存して300pM以下のIC50を示すことになる。これは、触媒不活性SLT-1A 1-251二重変異体(Y77S、E167D)についての100,000pMの近似的IC50と比較して有意に大きい阻害である。実験室細胞培養での標的陽性細胞殺滅アッセイにおける毒性について、有意な志賀毒素エフェクター機能は、適切な細胞外標的生体分子の細胞株及びその発現に依存して、100、50又は30nM以下のCD50を示すことになる。これは、細胞標的化結合領域のないSLT-1A(細胞株に依存して100~10,000nMのCD50を有する)と比較して、適切な標的細胞株に対する有意に大きい細胞毒性である。
【0082】
いくつかの試料については、正確な曲線フィッティングに必要なデータ点を収集することができないため、IC50又はCD50のいずれかについての正確な値を得ることができないこともあるだろう。有意な志賀毒素エフェクター機能活性を判定するとき、不正確なIC50及び/又はCD50を考慮すべきでない。例えば実施例において説明するアッセイなどの例示的志賀毒素エフェクター機能アッセイからのデータの分析に関して説明するような曲線への正確なフィッティングに不十分なデータは、実際の志賀毒素エフェクター機能の代表とみなすべきではない。例えば、理論的には、50%より高いリボソーム阻害又は細胞死が所与の試料の濃度系列でそれぞれ起こらない場合、IC50もCD50も
判定できない。
【0083】
志賀毒素エフェクター機能の活性を検出できないことは、細胞侵入、細胞内経路指定及び/又は酵素活性の欠如ではなく、不適切な発現、ポリペプチドフォールディング及び/又はポリペプチド安定性が原因であることもある。志賀毒素エフェクター機能についてのアッセイは、本発明のポリペプチドをさほど必要とせずに有意な量の志賀毒素エフェクター機能活性を測定することができるだろう。エフェクター機能が低い又はないことの根本原因を経験的に判定してタンパク質発現又は安定性と関係づける程度に、当業者は、当技術分野において公知のタンパク質化学及び分子工学技術を用いてそのような因子を補償することができることがあり、その結果、志賀毒素機能性エフェクター活性が回復され、測定されることもある。例として、不適切な細胞ベースの発現は、様々な発現対照配列を使用することによって補償されることがあり、不適切なポリペプチドフォールディング及び/又は安定性は、末端配列の安定化から恩恵を受けることがあり、又はタンパク質の三次元構造を安定させる非エフェクター領域の補償変異から恩恵を受けることなどがある。個々の志賀毒素機能についての新規アッセイが利用できるようになれば、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの活性の1000倍~100倍以下の範囲内であるもの、あるいは機能性ノックアウト志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して3倍~30倍又は31倍以上の活性を示すものなどの、志賀毒素エフェクター機能の任意のレベルについて分析することができるだろう。
【0084】
特定の志賀毒素エフェクター機能、例えば、細胞内経路指定機能は、容易に測定できない。現在、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドが細胞毒性であることができないことが、不適切な細胞内経路指定に起因するかどうかを識別するための通例の定量的アッセイはないが、試験が利用できれば、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを、適切な野生型志賀毒素エフェクター領域と比較して任意の有意な細胞内経路指定レベルについて分析することができるだろう。
【0085】
志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性が野生型と比較して低減されたとしても、実際には、弱毒化された、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用する応用は、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用するもの以上に有効であることがあることに留意されたい。なぜなら、例えばより多い投薬量又はより多くの反復投与を可能にすることなどによる、抗原性及び/又は免疫原性の低減が、細胞毒性の低減を相殺しうるからである。野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドは非常に強力であり、たった1分子が細胞質に達することで、又はおそらく40分子が内在化されることで殺滅することができる。脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクター機能、例えば細胞内経路指定又は細胞毒性などが野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較してかなり低減されていたとしても、標的化細胞殺滅及び/又は特異的細胞検出を伴う実際の応用に十分な作用強度を依然として有することがある。
【0086】
志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)血清型1から単離された真性志賀毒素(Stx,Shiga toxin)、腸管出血性大腸菌(E. coli)の血清型から単離された志賀様毒素1(SLT1,Shiga-like toxin 1、又はStx1、又はSLT-1、又はSlt-I)バリアント、及び腸管出血性大腸菌の血清型から単離された志賀様毒素2(SLT2,Shiga-like toxin 2、又はStx2、又はSLT-2)バリアントを包含する。SLT1は、1残基しかStxと異ならず、両方ともベロ細胞毒素又はベロ毒素(VT,Verotoxin)と言われている(O'Brien,Curr Top Microbiol Immunol180: 65-94 (1992))。SLT1及びSLT2バリアントは、アミノ酸配列レベルでは互いに約53~60%しか類似していないが、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通の酵素活性メカニズム及び細胞毒性メカニズムを共有する(Johannes, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。3
9種を超える様々な志賀毒素、例えば、被定義サブタイプStx1a、Stx1c、Stx1d及びStx2a~gが記載されている(Scheutz F et al.,J Clin Microbiol50:2951-63 (2012))。志賀毒素ファミリーのメンバーは、志賀毒素をコードする遺伝子が
遺伝子水平伝播によって細菌種間で伝播しうるので、本来、いずれの細菌種にも限定されない(Strauch Eetal., Infect Immun 69: 7588-95(2001)、Zhaxybayeva O,Doolittle W, CurrBiol 21: R242-6 (2011))。種間伝播の一例として、志賀毒素は、患者から単離
されたアシネトバクター・ヘモリティカス(A. haemolyticus)の株において発見され
た(Grotiuz G et al., J Clin Microbiol 44: 3838-41(2006))。志賀毒素をコードす
るポリヌクレオチドが新たな亜種又は種に侵入すると、志賀毒素アミノ酸配列は、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通の細胞毒性メカニズムをなお維持しながら、遺伝的浮遊及び/又は選択圧に起因してわずかな配列多様性を発生させることが可能であると推測される(例えば、Scheutz, J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012)を参照されたい)。
【0087】
本発明のポリペプチドは、哺乳動物への投与後の該ポリペプチドの抗原性及び/又は免疫原性を低減させるために少なくとも1つの推定エピトープ領域が破壊されている、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域を含む。用語「破壊された」又は「破壊」は、エピトープ領域に関して本書で用いる場合、エピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸の欠失、反転されたアミノ酸の少なくとも1つがエピトープ領域にある2つ又は3つ以上のアミノ酸の反転、エピトープ領域への少なくとも1つのアミノ酸の挿入、及びエピトープ領域における少なくとも1つのアミノ酸の変異を指す。変異によるエピトープ領域破壊は、非標準アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸でのアミノ酸置換を含む。あるいは、エピトープ領域は、エピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸を隠蔽する共有結合で連結された化学構造の付加によるアミノ酸の修飾を含む変異によって破壊されることもある。例えばPEG化(Zhang C et al., BioDrugs 26: 209-15 (2012)を参照されたい)及び小分子アジュバント(Flower D, Expert Opin Drug Discov 7: 807-17 (2012))を参照されたい。
【0088】
特定のエピトープ領域及び破壊は、配列表で提供するネイティブ志賀毒素Aサブユニットの特異的アミノ酸位置に参照することによって本書において示すが、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットが、約22のアミノ酸のシグナル配列を含有する前駆形態(これらは、成熟志賀毒素Aサブユニットを産生するために除去されるものであり、当業者には認識可能である)を含みうることを特筆しておく。さらに、特定のエピトープ領域破壊は、特異的アミノ酸(例えば、セリン残基についてはS)であって、ネイティブ志賀毒素Aサブユニット内の特異的位置(例えば、アミノ末端からの33位のセリン残基についてはS33)に自然に存在する前記アミノ酸、続いて、論じている特定の変異で残基を置換したアミノ酸(例えば、S33Iは、アミノ末端からのアミノ酸残基33におけるセリンのイソロイシンでのアミノ酸置換を表す)への言及によって本書において示す。
【0089】
本発明の特定の実施形態は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するアミノ酸配列を含む志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、本書において提供する少なくとも1つのエピトープ領域(表1、2又は3を参照されたい)の破壊を含む、ポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、配列番号1又は配列番号2の1~15、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1又は配列番号2の27~37、配列番号1又は配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の53~66、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号3の210~218、配列番号3の240~258、配列番号1又は配列番号2の243~257
、配列番号1又は配列番号2の254~268、配列番号3の262~278、配列番号3の281~297、及び配列番号1又は配列番号2の285~293からなる天然位置のアミノ酸の群から選択されるアミノ酸配列又は保存された志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは非ネイティブ志賀毒素エフェクターポリペプチド配列内の同等の位置のアミノ酸配列の少なくとも1つの破壊を含む完全長志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)若しくはSLT-2A(配列番号3))を含む又はそのような完全長志賀毒素Aサブユニットから本質的になることがある。
【0090】
特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、切断型志賀毒素Aサブユニットを含む又は切断型志賀毒素Aサブユニットから本質的になることがある。志賀毒素Aサブユニットの切断は、毒素エフェクター触媒活性及び細胞毒性に影響を及ぼすことなくエピトープ領域全体の欠失をもたらすこともある。有意な酵素活性を示す最小志賀毒素Aサブユニット断片は、StxAの残基75~247で構成されているポリペプチドである(Al-Jaufy, Infect Immun62: 956-60 (1994))。アミノ酸1~251へのSLT-1A、StxA又はSLT-2Aのカルボキシ末端の切断は、2つの予測B細胞エピトープ領域、2つの予測CD4陽性(CD4+,CD4 positive)T細胞エピトープ、及び予測不連続B細胞エピトープを除去する。75~293へのSLT-1A、StxA又はSLT-2Aのアミノ末端の切断は、少なくとも3つの予測B細胞エピトープ領域及び3つの予測CD4+T細胞エピトープを除去する。75~251へのSLT-1A、StxA又はSLT-2Aのアミノ末端とカルボキシ末端両方の切断は、少なくとも5つの予測B細胞エピトープ領域、4つの予測CD4+T細胞エピトープ、及び1つの予測不連続B細胞エピトープを除去する。
【0091】
特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、提供するエピトープ領域に少なくとも1つの変異、例えば、欠失、挿入、反転若しくは置換がある完全長若しくは切断型志賀毒素Aサブユニットを含む又はそのような志賀毒素Aサブユニットから本質的になることもある。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、エピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含む破壊を含む。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、エピトープ領域内への少なくとも1つのアミノ酸の挿入を含む破壊を含む。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つの反転したアミノ酸がエピトープ領域内にある、アミノ酸の反転を含む破壊を含む。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、非標準アミノ酸又は側鎖が化学的に修飾されているアミノ酸へのアミノ酸置換などの変異を含む破壊を含む。単一アミノ酸置換の非常に多くの例を実施例において提供する。
【0092】
特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、ネイティブ配列と比較して、A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H及びKからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む1又は2以上の変異を有する完全長若しくは切断型志賀毒素Aサブユニットを含む又はそのような志賀毒素Aサブユニットから本質的になることもある。特定のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、ネイティブ配列と比較して単一の変異を有する完全長若しくは切断型志賀毒素Aサブユニットを含む又はそのような志賀毒素Aサブユニットから本質的になることがあり、この場合の置換は、DからAへの、DからGへの、DからVへの、DからLへの、DからIへの、DからFへの、DからSへの、DからQへの、EからAへの、EからGへの、EからVへの、EからLへの、EからIへの、EからFへの、EからSへの、EからQへの、EからNへの、EからDへの、EからMへの、EからRへの、GからAへの、HからAへの、HからGへの、HからVへの、HからLへの、HからIへの、HからFへの、HからMへの、KからAへの、KからGへの、KからVへの、KからLへの、KからIへの、KからMへの、KからHへの、LからAへの、LからGへの、NからAへの、NからGへの
、NからVへの、NからLへの、NからIへの、NからFへの、PからAへの、PからGへの、PからFへの、RからAへの、RからGへの、RからVへの、RからLへの、RからIへの、RからFへの、RからMへの、RからQへの、RからSへの、RからKへの、RからHへの、SからAへの、SからGへの、SからVへの、SからLへの、SからIへの、SからFへの、SからMへの、TからAへの、TからGへの、TからVへの、TからLへの、TからIへの、TからFへの、TからMへの、TからSへの、YからAへの、YからGへの、YからVへの、YからLへの、YからIへの、YからFへの、及びYからMへの置換からなる群から選択される。
【0093】
特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、ネイティブアミノ酸残基配列と比較してエピトープ領域内に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む1つ若しくは2つ以上の変異を有する完全長若しくは切断型志賀毒素Aサブユニットを含み、又はそのような志賀毒素Aサブユニットから本質的になり、この場合の少なくとも1つの置換は、配列番号1又は配列番号2の1、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11、配列番号1又は配列番号2の33、配列番号1又は配列番号2の43、配列番号1又は配列番号2の45、配列番号1又は配列番号2の47、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48、配列番号1又は配列番号2の49、配列番号1又は配列番号2の53、配列番号1又は配列番号2の55、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59、配列番号1又は配列番号2の60、配列番号1又は配列番号2の61、配列番号1又は配列番号2の62、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109、配列番号1又は配列番号2の110、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のSE147、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179、配列番号1又は配列番号2の180、配列番号1又は配列番号2の181、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184、配列番号1又は配列番号2の185、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186、配列番号1又は配列番号2の187、配列番号1又は配列番号2の188、配列番号1又は配列番号2の189、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号1又は配列番号2の247、配列番号3の247、配列番号1又は配列番号2の248、配列番号3の250、配列番号1又は配列番号2の251、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264、配列番号1又は配列番号2の265、及び配列番号1又は配列番号2の286からなる群から選択される天然位置のアミノ酸基で起こる。
【0094】
特定のさらなる実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、エピトープ領域内に少なくとも1つの置換を有する完全長若しくは切断型志賀毒素Aサブユニットを含み、又はそのような志賀毒素Aサブユニットから本質的になり、この場合の少なくとも1つの置換は、以下の天然位置:配列番号1又は配列番号2の1、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11、配列番号1又は配列番号2の33、配列番号1又は配列番号2の43、配列番号1又は配列番号2の45、配列番号1又は配列番号2の47、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48、配列番号1又は配列番号2の49、配列番号1又は配列番号2の53、配列番号1又は配列番号2の55、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59、配列番号1又は配列番号2の60、配列番号1又は配列番号2の61、配列番号1又は配列番号2の62、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109、配列番号1又は配列番号2の110、配列番号1、配列番
号2又は配列番号3の112、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のSE147、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179、配列番号1又は配列番号2の180、配列番号1又は配列番号2の181、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184、配列番号1又は配列番号2の185、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186、配列番号1又は配列番号2の187、配列番号1又は配列番号2の188、配列番号1又は配列番号2の189、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号1又は配列番号2の247、配列番号3の247、配列番号1又は配列番号2の248、配列番号3の250、配列番号1又は配列番号2の251、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264、配列番号1又は配列番号2の265、及び配列番号1又は配列番号2の286の1つに位置する天然に存在するアミノ酸に対する非保存的アミノ酸への置換(例えば、下記の表Bを参照されたい)である。
【0095】
特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、K1のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、T4のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、S8のA、G、V、I、L、F及びMへの、T9のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、S9のA、G、V、L、I、F及びMへの、K11のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、S33のA、G、V、L、I、F及びMへの、S45のA、G、V、L、I、F及びMへの、T45のA、G、V、L、I、F及びMへの、D47のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、N48のA、G、V、L及びMへの、L49のA又はGへの、D53のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、R55のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D58のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、P59のA、G及びFへの、E60のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、E61のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、G62のAへの、D94のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S96のA、G、V、I、L、F及びMへの、S109のA、G、V、I、L、F及びMへの、T109のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、G110のAへの、S112のA、G、V、L、I、F及びMへの、G147のAへの、R179のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、T180のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、T181のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、D183のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、D184のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S186のA、G、V、I、L、F及びMへの、G187のAへの、R188のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S189のA、G、V、I、L、F及びMへの、R204のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R205のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S247のA、G、V、I、L、F及びMへの、Y247のA、G、V、L、I、F及びMへの、R248のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R250のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R251のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D264のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、G264のAへの、並びにT286のA、G、V、L、I、F、M及びSへの置換からなる群から選択される、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する完全長若しくは切断型志賀毒素Aサブユニットを含む、又はそのような志賀毒素Aサブユニットから本質的になる。
【0096】
特定のさらなる実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸置換:K1M、T4I、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、S33I、S45I、T45I、D47G、N48V、N48F、L49A、D53A、D53G、D53N、R55A、R55V、R55L、D58A、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、D94A、S96I、S109V、T109V、G110A、S112V、G147A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184F、L185V、S186A、S186F、G187A、R188A、R18
8L、S189A、R204A、R205A、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、D264A、G264A、T286A及び/又はT286Iの少なくとも1つを有する完全長若しくは切断型志賀毒素Aサブユニットを含む、又はそのような志賀毒素Aサブユニットから本質的になる。これらのエピトープ破壊性置換を組み合わせて、1エピトープ領域当たり複数の置換を有する及び/又は複数のエピトープ領域が破壊されているが、志賀毒素エフェクター機能をなお保持している、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成してもよい。例えば、天然位置の残基K1、T4、S8、T8、T9、S9、K11、K11、S33、S45、T45、D47、N48、L49、D53、R55、D58、P59、E60、E61、G62、D94、S96I、S109、T109、G110、S112、G147、R179、T180、T181I、D183、D184、L185、S186、S186、G187、R188、S189、R204A、R205、S247、Y247、R248、R250、R251、D264、G264、T286及び/又はT286での置換を、可能な場合には、天然位置の残基K1、T4、S8、T8、T9、S9、K11、K11、S33、S45、T45、D47、N48、L49、D53、R55、D58、P59、E60、E61、G62、D94、S96I、S109、T109、G110、S112、G147、R179、T180、T181I、D183、D184、L185、S186、S186、G187、R188、S189、R204A、R205、S247、Y247、R248、R250、R251、D264、G264、T286及び/又はT286での置換と組み合わせて、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを生成してもよい。
【0097】
他の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、完全長志賀毒素Aサブユニットより短い切断型志賀毒素Aサブユニットを含む、又はそのような切断型志賀毒素Aサブユニットから本質的になる。志賀様毒素1Aサブユニット切断物は、触媒活性であり、インビトロでリボソームを触媒的に不活性化することができ、細胞内で発現されたとき細胞毒性である(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。十分な酵素活性を示す最小志賀毒素Aサブユニット断片は、Slt1Aの残基1~239で構成されているポリペプチドである(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。実質的な触媒活性を保持すると報告されている志賀毒素Aサブユニットの最小断片はStxAの残基75~247であった(Al-Jaufy, Infect Immun62: 956-60 (1994))が、真核生物細胞内で新規に発現されたStxA切断物は、サイトゾルに達するために、及びリボソームの触媒的不活性化を発揮するために、残基240までしか必要としない(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
【0098】
本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、一般に完全長Aサブユニットより小さいが、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、アミノ酸位置77~239のポリペプチド領域(SLT-1A(配列番号1)若しくはStxA(配列番号2))、又は志賀毒素ファミリーのメンバーの他のAサブユニット内の同等の領域(例えば(配列番号3)の77~238)を維持することが好ましい。例えば、本発明の特定の実施形態において、SLT-1Aに由来する志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、配列番号1の75~251、配列番号1の1~241、配列番号1の1~251、又は配列番号1のアミノ酸1~261を含む又はそのようなアミノ酸から本質的になることがある。同様に、StxAに由来する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する少なくとも1つの天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、配列番号2の75~251、配列番号2の1~241、配列番号2の1~251、又は配列番号2のアミノ酸1~261を含む又はそのようなアミノ酸から本
質的になることがある。加えて、SLT-2に由来する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する少なくとも1つの天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、配列番号3の75~251、配列番号3の1~241、配列番号3の1~251、又は配列番号3のアミノ酸1~261を含む又はそのようなアミノ酸から本質的になることがある。
【0099】
本発明は、志賀毒素エフェクター領域が、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は41以上だけ又はまでのアミノ酸残基が異なる(しかし、少なくとも85%、90%、95%、99%又は99%を超えるアミノ酸配列同一性を保持するだけしか異ならない)、本発明のポリペプチドのバリアントをさらに提供する。したがって、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、元の配列からの付加、欠失、切断又は他の改変を含むことがあるが、ただし、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットとの少なくとも85%、90%、95%、99%又は99%を超えるアミノ酸配列同一性が維持されること、及び実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する少なくとも1つの天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されていることを条件とする。
【0100】
したがって、特定の実施形態において、志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する少なくとも1つの天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット、例えばSLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)及び/又はSLT-2A(配列番号3)との少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%又は99.7%の全配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又はそのようなアミノ酸配列から本質的になる。
【0101】
志賀毒素Aサブユニットの完全長バージョン又は切断型バージョンは、1又は2以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入又は反転)を含んでいてもよいが、ただし、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する少なくとも1つの天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されていることを条件とする。本発明の特定の実施形態において、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、周知の宿主形質転換、トランスフェクション、感染若しくは導入方法、又は志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドと連結された細胞標的化結合領域により媒介される内在化、いずれかによって、細胞への侵入後に細胞毒性を保持するのに十分な、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットとの配列同一性を有することが好ましい。志賀毒素Aサブユニットにおける酵素活性及び/又は細胞毒性のために最も肝要な残基は、特に次の残基位置:アスパラギン-75、チロシン-77、グルタメート-167、アルギニン-170及びアルギニン-176にマッピングされている(Di, Toxicon 57: 535-39 (2011))。本発明の実施形態
のいずれか1つにおいて、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、細胞毒性活性に概して必要とされる1又は2以上の保存されたアミノ酸位置、例えば、StxA若しくはSLT-1Aにおける位置77、167、170及び176に見られるもの、又は志賀毒素ファミリーの他のメンバーにおける同等の保存された位置を、必然的にではないが好ましくは、維持しうる。細胞死、例えばその細胞毒性、を引き起こす本発明の細胞毒性タンパク質の能力を、当技術分野において周知の多数のアッセイのいずれか1又は2以上を用いて測定してもよい。
【0102】
B.脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むタンパク質
本発明のタンパク質は、細胞外標的生体分子特異的結合領域に連結された本発明のポリペプチドを含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。本発明のタンパク質
の結合領域は、細胞外標的生体分子に選択的かつ特異的に結合することができる1又は2以上のポリペプチドを含む。結合領域は、1又は2以上の様々なポリペプチド部分、例えば、合成リガンドであるか自然に存在するリガンドであるかにかかわらず、リガンド、及びそれらの誘導体;免疫グロブリン由来ドメイン;免疫グロブリンドメインの代替物として合成によりエンジニアリングされた足場などを含むことがある。
【0103】
リガンド、モノクローナル抗体、エンジニアリングされた抗体誘導体、抗体のエンジニアリングされた代替物などの、特異的細胞タイプへのポリペプチドの、それらの結合特性による標的化に有用である非常に多くの結合領域が、当技術分野において公知である。
【0104】
1つの特異的な、しかし非限定的な態様によると、本発明のタンパク質の結合領域は、天然に存在するリガンド、又は細胞外標的生体分子、一般に細胞表面受容体、との結合機能性を保持するリガンドの誘導体を含む。例えば、当技術分野において公知の様々なサイトカイン、成長因子及びホルモンを使用して、コグネートサイトカイン受容体、成長因子受容体又はホルモン受容体を発現する特異的細胞タイプの細胞表面に細胞毒性タンパク質を標的化することができる。リガンドの特定の非限定的な例(別名をカッコ内に示す)は、B細胞活性化因子(BAFF,B-cell activating factor、APRIL)、コロニー刺激因子(CSF,colony stimulating factor)、表皮成長因子(EGF,epidermal growth factor)、線維芽細胞増殖因子(FGF,fibroblast growth factor)、血管内皮増殖因子(VEGF,vascular endothelial growth factor)、インスリン様増殖因子(IGF,insulin-like growth factor)、インターフェロン、インターロイキン(例えばIL-2、IL-6及びIL-23)、神経成長因子(NGF,nerve growth factor)、
血小板由来増殖因子(TGF,platelet derived growth factor)、及び腫瘍壊死因子(TNF,tumor necrosis factor)を含む。
【0105】
特定の他の実施形態によると、結合領域は、細胞外標的生体分子に結合することができる合成リガンドを含む。1つの非限定的な例は、細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA-4,cytotoxic T-lymphocyte antigen 4)に対するアンタゴニストである。
【0106】
1つの特異的な、しかし非限定的な態様によると、結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含むことがある。本書において用いる場合の用語「免疫グロブリン型結合領域」は、抗原又はエピトープなどの1又は2以上の標的生体分子に結合することができるポリペプチド領域を指す。結合領域は、標的と結合するそれらの能力によって定義されることもある。免疫グロブリン型結合領域は、一般に、抗体又は抗体様構造に由来するが、他の源からの代替足場がこの用語の範囲内で考えられる。
【0107】
免疫グロブリン(Ig)タンパク質は、Igドメインとして公知の構造ドメインを有する。Igドメインは、長さが約70~110アミノ酸残基の範囲であり、典型的に7~9本の逆平行ベータ鎖が、サンドイッチ様構造を形成する2つのベータシートになるように並んでいる、特徴的なIgフォールドを有する、Igフォールドは、前記サンドイッチの内面で疎水性アミノ酸相互作用及び前記サンドイッチ内のシステイン残基間の高度に保存されたジスルフィド結合によって安定化される。Igドメインは、可変的なもの(IgV又はIセット)であることもあり、定常的なもの(IgC又はCセット)であることもあり、又は中間のもの(IgI又はIセット)であることもある。一部のIgドメインは、抗体の、それらのエピトープへの結合の特異性にとって重要である、相補性決定領域(CDR,complementarity determining region)と会合していることがある。Ig様ドメインは、非免疫グロブリンタンパク質においても見つけられ、それに基づいてタンパク質のIgスーパーファミリーのメンバーとして分類される。HUGO遺伝子命名法委員会(HGNC,HUGO Gene Nomenclature Committee)は、Ig様ドメイン含有ファミリーのメンバーのリストを提供している。
【0108】
免疫グロブリン型結合領域は、アミノ酸配列が、例えば分子工学によって又はライブラリースクリーニングによる選択によって、ネイティブ抗体のアミノ酸配列又は非免疫グロブリンタンパク質のIg様ドメインのアミノ酸配列から変更された、抗体又はその抗原結合断片のポリペプチド配列である。免疫グロブリン型結合領域の産生における組換えDNA技術及びインビトロライブラリースクリーニングの妥当性のため、抗体を再設計して、より小さいサイズ、細胞侵入又は他の治療上の改善などの所望の特性を得ることができる。可能なバリエーションは多く、1つだけのアミノ酸の変化から、例えば可変領域の、完全再設計まで様々でありうる。典型的に、抗原結合特性を向上させるように、可変領域の安定性を向上させるように、又は免疫原性応答の可能性を低下させるように、可変領域に変更を加えることになる。
【0109】
本発明の成分として企図される非常に多くの免疫グロブリン型結合領域がある。特定の実施形態において、免疫グロブリン型結合領域は、細胞外標的生体分子に結合することができる抗体パラトープなどの、免疫グロブリン結合領域に由来する。特定の他の実施形態において、免疫グロブリン型結合領域は、いずれの免疫グロブリンドメインにも由来しないが、細胞外標的生体分子との高親和性結合をもたらすことによって免疫グロブリン結合領域のように機能する、エンジニアリングされたポリペプチドを含む。このエンジニアリングされたポリペプチドは、本書に記載の免疫グロブリンからの相補性決定領域を含む、又はそのような相補鎖決定領域から本質的になる、ポリペプチド足場を含んでいてもよい。
【0110】
特異的細胞タイプへのポリペプチドの、それらの高親和性結合特性による標的化に有用である、非常に多くの結合領域が、先行技術にもある。特定の実施形態において、本発明の結合領域は、シングルドメイン抗体(sdAb)ドメイン、ナノボディ、ラクダ化動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VHH断片)、二価ナノボディ、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変(scFv)断片、多量体化scFv断片(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、二重特異性タンデムscFv断片、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるジスルフィド安定化抗体結合(Fab)断片、二価F(ab’)2断片、重鎖及びCH1ドメインからなるFd断片、一本鎖Fv-CH3ミニボディ、二重特異性ミニボディ、二量体CH2ドメイン断片(CH2D)、Fc抗原結合ドメイン(Fcab)、単離された相補性決定領域3(CDR3)断片、拘束フレームワーク領域3,CDR3,フレームワーク領域4(FR3-CDR3-FR4)ポリペプチド、小モジュラー免疫医薬(SMIP)ドメイン、並びにそのパラトープ及び結合機能を保持する前述のものの任意の遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(Saerens D et al., Curr.Opin.Pharmacol 8: 600-8 (2008)、Dimitrov D, MAbs 1: 26-8 (2009)、WeinerL,Cell 148:1081-4 (2012)、Ahmad Z et al., ClinDevImmunol2012: 980250 (2012)を参照されたい)。
【0111】
特定の他の実施形態に従って、結合領域は、免疫グロブリンドメインのエンジニアリングされた代替足場であって、標的生体分子の高親和性及び特異的結合などの類似の機能特性を示し、より大きい安定性又は免疫原性の低減などの特性向上のエンジニアリングを可能にする、代替足場を含む。本発明のタンパク質の特定の実施形態について、結合領域は、エンジニアリングされた、第10フィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメイン(モ
ノボディ、AdNectins(商標)、又はAdNexins(商標))、エンジニアリングされた、テ
ネイシン由来、テネイシンIII型ドメイン(Centryns(商標))、エンジニアリングされ
た、アンキリン反復モチーフ含有ポリペプチド(DARPins(商標))、エンジニアリング
された、低密度リポタンパク質受容体由来、Aドメイン(LDLR-A)(Avimers(商
標))、リポカリン(アンチカリン)、エンジニアリングされた、プロテアーゼ阻害剤由
来、Kunitzドメイン、エンジニアリングされた、プロテインA由来、Zドメイン(Affibodies(商標))、エンジニアリングされた、ガンマ-B結晶由来足場又はエンジニアリングされた、ユビキチン由来足場(アフィリン)、Sac7d由来ポリペプチド(Nanoffitins(登録商標)又はアフィチン)、エンジニアリングされた、Fyn由来、SH2ドメ
イン(Fynomers(登録商標))、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、エンジニアリングされた抗体模倣体、及びその結合機能性を保持する前述のものの任意の遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(Worn A, Pluckthun A, J Mol Biol 305:989-1010 (2001)、Xu L et al., Chem Biol 9: 933-42 (2002)、WikmanMet al.,Protein
Eng Des Sel 17: 455-62(2004)、Binz H et al.,NatBiotechnol 23: 1257-68 (2005)
、Hey T et al., Trends Biotechnol23 :514-522 (2005)、Holliger P, Hudson P, Nat Biotechnol 23: 1126-36(2005)、Gill D, Damle N, Curr Opin Biotech 17: 653-8(2006)、Koide A, Koide S, Methods Mol Biol 352: 95-109(2007)、Byla P et al., J BiolChem 285: 12096 (2010)、Zoller F et al., Molecules 16:2467-85 (2011))。
【0112】
上記結合領域のいずれを本発明の成分として使用してもよいが、ただし、その結合領域成分が、細胞外標的生体分子に対して、1リットル当たり10-5~10-12モル、好ましくは200ナノモル(nM)未満の解離定数を有することを条件とする。
【0113】
細胞外標的生体分子
本発明のタンパク質の結合領域は、細胞外標的生体分子と特異的に結合することができる、好ましくは、がん細胞、腫瘍細胞、形質細胞、感染細胞、又は細胞内病原体を内部に持つ宿主細胞などの、目的の細胞タイプの表面に物理的に結合されている、ポリペプチド領域を含む。
【0114】
用語「標的生体分子」は、結合領域によって結合されてタンパク質を生物体内の特定の細胞タイプ又は位置に標的化することができる生体分子、一般にはタンパク質、又はグリコシル化などの翻訳後修飾によって修飾されたタンパク質を指す。細胞外標的生体分子は、未修飾ポリペプチド、生化学的官能基の付加によって修飾されたポリペプチド、及び糖脂質を含む、様々なエピトープを含みうる(例えば、米国特許第5,091,178号明細書、欧州特許第2431743号明細書を参照されたい)。細胞外標的生体分子は、本発明のタンパク質に内因的に内在化される、又は本発明のタンパク質との相互作用によって容易に内在化させられることが望ましい。
【0115】
本発明では、標的生体分子の修飾に関して用語「細胞外」は、その構造の少なくとも一部分が細胞外環境に曝露された生体分子を指す。細胞外標的生体分子は、細胞膜成分、膜貫通タンパク質、細胞膜に係留されている生体分子、細胞表面に結合されている生体分子及び分泌された生体分子を含む。
【0116】
本発明に関して、標的生体分子を記述するために使用するときの句「物理的に結合されている」は、標的生体分子又はその一部分を細胞の外部と結合させる、共有結合性及び/又は非共有結合性両方の分子間相互作用、例えば、単一の相互作用各々のエネルギーがおおよそ約1~5キロカロリーである、標的生体分子と細胞との複数の非共有結合性相互作用(例えば、静電結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水力など)を意味する。全ての不可欠膜タンパク質は、細胞膜と物理的に結合されている状態で見出すことができる。例えば、細胞外標的生体分子は、膜貫通領域、脂質アンカー、糖脂質アンカーを含むことがあり、及び/又は前述のもののいずれか1つを含む因子と(例えば、非特異的疎水性相互作用及び/又は脂質結合相互作用によって)非共有結合的に会合していることもある。
【0117】
本発明のタンパク質の結合領域は、例えば、それらの標的生体分子の細胞特異的発現、
及び/又は特異的細胞タイプに対するそれらの標的生体分子の物理的局在などの、非常に多くの基準に基づいて設計又は選択されうる。例えば、本発明の特定のタンパク質は、1つの細胞タイプのみによって排他的に発現される細胞方面標的を細胞表面と結合させることができる結合ドメインを含む。このことによって、細胞外標的生体分子を発現しない「バイスタンダー」細胞タイプを超える高い優先性(少なくとも3倍の細胞毒性効果)での特異的細胞タイプの標的化細胞殺滅が可能になる。あるいは、結合領域の標的生体分子の発現は、該細胞外標的生体分子が、標的にされることにならないほど少ない量で発現される、又は標的にされることにならない少量で細胞タイプと物理的に結合される場合には、1つの細胞タイプに対して非排他的でありうる。このことによって、有意な量の細胞外標的生体分子を発現しない又は有意な量の細胞外標的生体分子と物理的に結合されていない「バイスタンダー」細胞タイプを超える高い優先性(少なくとも3倍の細胞毒性効果)での特異的細胞タイプの標的化細胞殺滅も可能になる。本発明の細胞毒性タンパク質を使用して、細胞の態様な条件、例えば、エクスビボ条件、インビトロ培養される条件、又はインビボ条件下で、標的細胞(多細胞生物体内のそれらの天然位置にある生体内原位置の細胞を含む)を殺滅することができる。
【0118】
本発明のタンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子は、がん細胞、免疫細胞、及び細胞内病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、プリオン又は原生動物に感染した細胞上にバイオマーカーを不釣り合いなほど多く又は排他的に含みうる。
【0119】
脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域
本発明のタンパク質の特定の実施形態では、1又は2以上のアミノ酸残基を変異、挿入又は欠失させて、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域の酵素活性を増加させることができる。例えば、Stx1Aの残基位置アラニン-231をグルタメートに変異させることによってそのインビトロ酵素活性が増加された(Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9(1998))。
【0120】
本発明のタンパク質の特定の実施形態では、1又は2以上のアミノ酸残基を変異又は欠失させて、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域の触媒活性及び/又は細胞毒性活性を低減させる又は除去することができる。志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの触媒及び/又は細胞毒性活性を変異又は切断によって減少させても又は削除してもよいが、ただし、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する少なくとも1つの天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されることを条件とする。チロシン-77、グルタメート-167、アルギニン-170、チロシン-114及びトリプトファン-203と標識されている位置は、Stx、Stx1及びStx2の触媒活性にとって重要であることが証明されている((Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988)、DeresiewiczR et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992)、Deresiewicz Ret al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993)、Ohmura M etal., Microb Pathog 15:169-76 (1993)、Cao C et al., MicrobiolImmunol 38: 441-7 (1994)、Suhan, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタメート-167とアルギニン-170の両方を変異させることによって、無細胞リボソーム不活性化アッセイにおいてSlt-I A1の酵素活性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体におけるSlt-I A1の新規発現を用いる別のアプローチでは、グルタメート-167とアルギニン-170の両方を変異させることによって、又はSLt-I A1を切断して残基1-239にすることによって、発現レベルでSlt-I A1断片細胞毒性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
【0121】
本発明のタンパク質は、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを各々が含み、該ペプチドは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能を保持するが、細胞毒性親分子から、酵素活性にとって重要な1又は2以上の成分を変異させることによって
非細胞毒性機能、例えば、細胞分裂停止の遂行、外因性物質の送達及び/又は細胞タイプの検出のために細胞毒性が減少又は消失されたタンパク質へと、エンジニアリングされていることがある。この一般構造は、本発明のポリペプチドを本書に記載するような様々な応用のために任意の数の多様な組成物、例えば結合領域及び/又は検出促進剤に連結させることができる点で、モジュラーである。
【0122】
分子の免疫原性(抗体及び/又は細胞媒介免疫応答を誘導する能力)は、脊索動物などの生きている生物への投与後にその分子に対する何らかの免疫応答(抗体及び/又は細胞媒介免疫応答)を観察することによってアッセイすることができる。投与された分子を特異的に標的にする抗体の量及び形成などの特定の免疫応答を経時的に測定することができる。投与された分子に特異的に結合する抗体の存在は、1)投与された分子を認識した1つ若しくは2つ以上の抗体の存在、及び/又は2)投与された分子を認識する1つ若しくは2つ以上の抗体の新規形成の誘導を示す。
【0123】
既に形成されていた抗分子抗体の存在は、投与前の血清をその抗分子抗体の存在について調査することによって判定することができる。新規抗「投与分子」抗体形成の誘導は、投与後の血清を生成された抗分子抗体の量について経時的にモニターすることによって判定することができる。
【0124】
分子(例えば志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド)の投与後に脊索動物において誘導される抗体の量は、投与前の抗分子抗体の量と投与後の抗分子抗体の量とを比較することによって判定することができる。投与後に脊索動物において誘導される抗「投与分子」抗体の量は、一般的な免疫原性を示すとともに、様々な脊索動物において様々な免疫応答を誘導する、例えば、投与後の抗分子抗体産生の増加及び多様化、免疫細胞媒免疫応答、分子中和活性、過敏症反応、アナフィラキシー、アナフィラキシー様反応並びに他の免疫応答を誘導する、分子の能力を示す。
【0125】
別のより免疫原性が高い分子などの基準点なしで免疫原性が弱い分子を計測することは困難でありうる。2つの分子(例えば、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドと脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド)の相対免疫原性は、各分子を異なる生物に個々に投与した後、各分子それぞれに対して産生される抗分子抗体の相対差を観察することによって評定することができる。新規抗「投与分子」抗体形成の相対誘導は、投与後の血清において各分子それぞれに対して経時的に生成される抗分子抗体の量についての相対差を測定することによって判定することができる。
【0126】
異なる分子(例えば、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド)で処置された脊索動物、例えばマウス、において誘導される抗体の量は、標準的なELISAベースのアッセイで測定することができ、異なる分子の相対免疫原性を比較するために使用することができる。
【0127】
KDELファミリーのメンバーの小胞体残留/回収シグナルモチーフ
本発明では、句「小胞体残留/回収シグナルモチーフ」、KDEL型シグナルモチーフ、又はシグナルモチーフは、真核生物細胞内でKDEL受容体による小胞体へのタンパク質の細胞内局在を促進するように機能することができるKDELファミリーの任意のメンバーを指す。
【0128】
カルボキシ末端リジン-アスパラギン-グルタメート-ロイシン(KDEL)配列(配列番号:60)は、真核生物細胞内の可溶性タンパク質のカノニカル小胞体残留及び回収シグナルモチーフであり、KDEL受容体によって認識される(Capitani M, Sallese M, FEBS Lett 583: 3863-71 (2009)を参照されたい)。シグナルモチーフのKDELファミリーは、多くのKDEL様モチーフ、例えば、HDEL(配列番号:62)、RDEL(配列番号:64)、WDEL(配列番号:65)、YDEL(配列番号:66)、HEEL(配列番号:68)、KEEL(配列番号:69)、REEL(配列番号:70)、KFEL(配列番号:73)、KIEL(配列番号:85)、DKEL(配列番号:86)、KKEL(配列番号:89)、HNEL(配列番号:93)、HTEL(配列番号:94)、KTEL(配列番号:95)及びHVEL(配列番号:96)を含み、これらの全てが、系統発生学上の複数の界にわたって小胞体の内腔の常在物であることが公知であるタンパク質のカルボキシ末端において見出される(Munro S, Pelham H, Cell 48: 899-907 (1987)、RaykhelIet al., JCell Biol 179: 1193-204 (2007))。KDELシグナルモチーフファミリーは、合成構築物を使用して証明された少なくとも46のポリペプチドバリアントを含む(Raykhel, J Cell Biol 179: 1193-204(2007))。さらなるKDELシグナルモチーフは、ALEDEL(配列番号:106)、HAEDEL(配列番号:107)、HLEDEL(配列番号:108)、KLEDEL(配列番号:109)、IRSDEL(配列番号:110)、ERSTEL(配列番号:111)、及びRPSTEL(配列番号:112)を含む(Alanen H et al., JMol Biol 409: 291-7 (2011))。大部分のKDELシグナルモチーフを表す一般化コンセンサスモチーフは、[KRHQSA]-[DENQ]-E-L(配列番号:137)と記載されている(Hulo N et al., NucleicAcids Res 34: D227-30(2006))。
【0129】
KDELファミリーシグナルモチーフを含有するタンパク質は、Golgi複合体全体にわ
たって分布しているKDEL受容体によって結合され、小胞体の内腔への放出のために微小管依存性メカニズムによって小胞体に輸送される(Griffiths G et al., J Cell Biol 127: 1557-74 (1994)、Miesenbock G,Rothman J, J Cell Biol 129: 309-19 (1995))。KDEL受容体は、Golgi複合体と小胞体間で動的に循環する(Jackson M et al.,EMBOJ
9: 3153-62 (1990)、Schutze M et al., EMBO J 13:1696-1705(1994))。
【0130】
本発明では、KDELファミリーのメンバーは、真核生物細胞内でKDEL受容体による小胞体へのタンパク質の細胞内局在を促進するように機能することができる合成シグナルモチーフを含む。言い換えると、KDELファミリーの一部のメンバーは、自然界に存在しないことがあり、しかし自然界で観察される必要もなく、当技術分野において公知の方法を用いて構築され、実験により検証されており、又は構築され、実験により検証されうる。例えば、Raykhel I et al.,J Cell Biol 179: 1193-204(2007)を参照されたい。
【0131】
本発明のタンパク質の特定の実施形態の成分として、KDEL型シグナルモチーフは、タンパク質中でカルボキシ末端上に存在するように物理的に位置し、配向され、又は配置される。
【0132】
本発明では、志賀毒素エフェクター領域及び結合領域について、互いとの関連でも、タンパク質全体のN末端及びC末端との関連でも、特定の順序も配向も決められていない(例えば
図1を参照されたい)。本発明のタンパク質中の結合領域と志賀毒素エフェクター領域は、1又は2以上の介在ポリペプチド配列によって、例えば、当技術分野において周知の1又は2以上のリンカーで、互いに直接連結されていることもあり、及び/又は互に適切に連結されていることもある。本発明のタンパク質は、KDEL(配列番号:60)などの、カルボキシ末端内質残留/回収シグナルモチーフをさらに含んでいてもよい。
【0133】
本発明のタンパク質の一般構造は、様々な多様な結合領域を同一の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域とともに使用して、様々な細胞外標的生体分子の多様な標的化をもたらし、かくして細胞毒性、細胞分裂停止、及び/又は様々な多様な細胞タイプへの内因性物質送達の標的化をもたらす点で、モジュラーである。不適切な細胞内経路指定のため
、T細胞エピトープ提示をもたらさず、及び/又は細胞毒性でない、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、細胞に外因性物質を送達するために依然として有用でありうる。
【0134】
II.本発明のポリペプチド成分及び/又はそれらの小成分を結合する連結
本発明の個々のポリペプチド及び/又はタンパク質成分、例えば、結合領域及び(細胞毒性であることもあり、並びに/又は触媒活性及び/若しくは細胞毒性を改変、低減若しくは除去する1つ若しくは2つ以上の変異を内部に持つこともある)志賀毒素エフェクター領域を当技術分野において周知の及び/又は本書に記載する1又は2以上のリンカーによって互いに適切に連結させることができる。結合領域の個々のポリペプチド小成分、例えば、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、CDR、及び/又はABR領域を、当技術分野において周知の及び/又は本書に記載する1又は2以上のリンカーによって互いに適切に連結させることができる(例えば、Weisser N, Hall J, Biotechnol Adv 27:502-20 (2009)、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照され
たい)。本発明のタンパク質成分、例えば、多鎖結合領域は、当技術分野において周知の1又は2以上のリンカーによって互いに又は本発明の他のポリペプチド成分と安定的に連結させることができる。本発明のペプチド成分、例えば、KDELファミリー小胞体残留/回収シグナルモチーフは、当技術分野において周知の1又は2以上のリンカー、例えばタンパク質性リンカー、によって本発明の別の成分に安定的に連結させることができる。
【0135】
好適なリンカーは、一般に、いずれのリンカーも他の成分も用いずに個々に生産されたポリペプチド成分と非常に類似した三次元構造での、本発明の各ポリペプチド成分のフォールディングを可能にするものである。好適なリンカーは、単一のアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、及び上述のもののいずれかを欠くリンカー、例えば、分岐状であるか環状であるかにかかわらず様々な非タンパク質性炭素鎖を含む(例えば、Chen X et al., AdvDrug DelivRev 65: 1357-69 (2013))。
【0136】
好適なリンカーは、タンパク質性であることがあり、1又は2以上のアミノ酸、ペプチド及び/又はポリペプチドを含むことがある。タンパク質性リンカーは、組換え融合タンパク質及び化学的に連結されたコンジュゲートの両方に好適である。タンパク質性リンカーは、例えば約5~約30、又は約6~約25アミノ酸残基などの、約2~約50アミノ酸残基を概して有する。選択されるリンカーの長さは、例えば、所望の特性、又はリンカーを選択している特性などの、様々な因子に依存することとなる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013)を参照されたい)。
【0137】
好適なリンカーは、例えば化学的リンカーなどの、非タンパク質性のものであることもある(例えば、DosioFet al., Toxins 3: 848-83 (2011)、Feld J etal.,Oncotarget
4: 397-412 (2013)を参照されたい)。免疫グロブリン由来ポリペプチドを異種ポリペプ
チドに結合させるために一般に使用されるリンカーなどの、当技術分野において公知の様々な非タンパク質性リンカーを使用して、結合領域を、志賀毒素エフェクター領域に連結させることができる。例えば、ポリペプチドリンカーは、それらのアミノ酸残基及び炭水化物部分の官能性側鎖、例えば、カルボキシ、アミノ、アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、カルボニル、ヒドロキシル及び/又は環式環基などを用いて連結させることができる。例えば、ジスルフィド結合及びチオエーテル結合を用いて、2つ又は3つ以上のポリペプチドを連結させてもよい(例えば、Fitzgerald D et al., Bioconjugate Chem 1: 264-8 (1990)、Pasqualucci L etal., Haematologica 80: 546-56 (1995)を参照されたい
)。加えて、非天然アミノ酸残基を他の官能性側鎖、例えばケトン基と併用してもよい(例えば、Sun Setal., Chembiochem Jul 18 (2014)、Tian F et al., ProcNatlAcad Sci
USA 111: 1766-71 (2014)を参照されたい)。非タンパク質性化学的リンカーの例は、N
-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾエート、S-(N-スクシン
イミジル)チオアセテート(SATA,S-(N-succinimidyl) thioacetate)、N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-cu-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT,N-succinimidyl-oxycarbonyl-cu-methyl-a-(2-pyridyldithio)toluene)、N-
スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)-ペンタノアート(SPP,N-succinimidyl4-(2-pyridyldithio)-pentanoate)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC又はMCC,succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl) cyclohexane carboxylate)、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾエート、4-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン、スルホスクシンイミジル-6-(α-メチル-α-(ピリジルジチオール)-トルアミド)ヘキサノエート、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP,N-succinimidyl-3-(-2-pyridyldithio)-proprionate
)、スクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド)ヘキ
サノエート、スルホスクシンイミジル 6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオ
ンアミド)ヘキサノエート、マレイミドカプロイル(MC,maleimidocaproyl)、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-P-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB,maleimidocaproyl-valine-citrulline-p-aminobenzyloxycarbonyl)、3-
マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS,3-maleimidobenzoic acid N-hydroxysuccinimide ester)、アルファ-アルキル誘導体、スルホNHS-A
TMBA(スルホスクシンイミジルN-[3-(アセチルチオ)-3-メチルブチリル-ベータ-アラニン])、スルホジクロロフェノール、2-イミノチオラン、3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS-(2-チオピリジル)-L-システインを含むが、これらに限定されない(例えば、Thorpe P et al., Eur J Biochem147: 197-206 (1985)、Thorpe P et al., Cancer Res 47:5924-31 (1987)、Thorpe P et al., Cancer Res 48: 6396-403(1988)、Grossbard Met al., Blood 79: 576-85 (1992)、LuiC et al., Proc NatlAcadSci USA 93: 8618-23
(1996)、Doronina S et al., NatBiotechnol 21: 778-84(2003)、Feld J et al., Oncotarget4: 397-412 (2013)を参照されたい)。
【0138】
タンパク質性であるか非タンパク性であるかにかかわらず、好適なリンカーは、例えば、プロテアーゼ感受性、環境酸化還元電位感受性、pH感受性、酸切断性、光切断性及び/又は熱感受性リンカーを含みうる(例えば、Dosio F et al.,Toxins 3: 848-83 (2011)、ChenXet al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69(2013)、Feld Jetal., Oncotarget
4: 397-412 (2013)を参照されたい)。
【0139】
タンパク質性リンカーを本発明の組換え融合タンパク質への組み込みに選択してもよい。本発明の組換え融合タンパク質のためのリンカーは、約2~50アミノ酸残基、好ましくは約5~30アミノ酸残基を概して含む(Argos P, J Mol Biol 211: 943-58 (1990)、WilliamsonM,Biochem J 297: 240-60(1994)、George R, HeringaJ,ProteinEng 15:871-9 (2002)、Kreitman R, AAPS J8:E532-51 (2006))。一般に、タンパク質性リンカー
は、例えばトレオニン、プロリン、グルタミン、グリシン及びアラニンなどの、極性、非荷電及び/又は荷電残基を有するアミノ酸残基の大部分を含む(例えば、Huston J et al.Proc Natl Acad Sci U.S.A.85: 5879-83 (1988)、Pastan I et al., Annu Rev Med 58: 221-37 (2007)、Li Jet al., Cell Immunol 118: 85-99 (1989)、CumberAet al.Bioconj
Chem 3: 397-401 (1992)、Friedman P etal.,CancerRes 53: 334-9 (1993)、Whitlow
M et al.,Protein Engineering 6: 989-95 (1993)、Siegall Cet al.,J Immunol 152: 2377-84(1994)、Newton etal.Biochemistry35: 545-53 (1996)、Ladurner et al.J Mol
Biol 273: 330-7(1997)、Kreitman R et al., Leuk Lymphoma52: 82-6 (2011)、米国特許第4,894,443号明細書を参照されたい)。タンパク質性リンカーの非限定的な例は、アラニン-セリン-グリシン-グリシン-プロリン-グルタメート(ASGGPE(配列番号:113))、バリン-メチオニン(VM)、アラニン-メチオニン(AM)、
AM(G2-4S)xAM(この場合、Gはグリシンであり、Sはセリンであり、xは
1~10の整数である)(配列番号:114)を含む。
【0140】
タンパク質性リンカーを所望の特性に基づいて選択することができる。当業者は、特異的特徴を念頭に置いて、例えば、融合分子のフォールディング、安定性、発現、可溶性、薬物動態特性、薬力学的特性、及び/又は融合構築物に関連して同じドメイン単独での活性と比較した融合ドメインの活性のうちの1又は2以上を最適化するように、タンパク質性を選択することができる。例えば、タンパク質性リンカーは、可動性、剛性及び/又は切断性に基づいて選択されることもある(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013)を参照されたい)。当業者は、リンカーを選択する際にデータベース及びリンカー設計ソフトウェアツールを利用することができる。特定のリンカーが、発現を最適化するために選択されることもある(例えば、Turner D et al., J Immunl Methods 205:43-54 (1997)を参照されたい)。ホモ多量体を形成するために同一のポリペプチ
ド若しくはタンパク質間の又はヘテロ多量体を形成するために異なるポリペプチド若しくはタンパク質間の分子間相互負作用を促進するために、特定のリンカーが選択されることもある。例えば、本発明のタンパク質のポリペプチド成分間の所望の非共有結合性相互作用、例えば、二量体及び他のより高次の多量体の形成に関連した相互作用などを可能にする、タンパク質性リンカーを選択されることもある(例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい)。
【0141】
可動性タンパク質性リンカーは、多くの場合、12アミノ酸残基長より長く、小さい非極性アミノ酸残基、極性アミノ酸残基及び/又は親水性アミノ酸残基、例えばグリシン、セリン及びトレオニンなどに富んでいる(例えば、Bird R et al., Science 242: 423-6 (1988)、FriedmanPet al., Cancer Res 53: 334-9(1993)、Siegall C et al.,JImmunol 152: 2377-84 (1994)を参照されたい)。可動性タンパク質性リンカーは、成分間の空
間的離隔を増すように選択されることもあり、及び/又は成分間の分子間相互作用を可能にするように選択されることもある。例えば、様々な「GS」リンカーが当業者に公知であり、複数のグリシン及び/又は1つ若しくは2つ以上のセリンで構成され、例えば(GxS)n(配列番号:115)、(SxG)n(配列番号:116)、(GGGGS)n(配列番号:117)及び(G)n(配列番号:118)(この場合、xは1~6であり、nは1~30である)などの反復単位で構成されることもある(例えば、国際公開第96/06641号パンフレットを参照されたい)。可動性タンパク質性リンカーの非限定的な例は、GKSSGSGSESKS(配列番号:119)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号:120)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号:121)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号:122)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号:123)、SRSSG(配列番号:124)、及びSGSSC(配列番号:125)を含む。
【0142】
剛性タンパク質性リンカーは、多くの場合、堅いアルファヘリックス構造であり、プロリン残基及び/又は1つ若しくは2つ以上の戦略的に配置されたプロリンに富んでいる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013)を参照されたい)。剛性リンカーは、連結された成分間の分子間相互作用を防止するために選択されることがある。
【0143】
好適なリンカーは、成分のインビボ分離、例えば、切断及び/又は環境特異的不安定性に起因する成分のインビボ分離などを可能にするように、選択されうる(例えば、Dosio F et al.,Toxins 3: 848-83 (2011)、ChenXet al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69(2013)を参照されたい)。インビボ切断性タンパク質性リンカーは、タンパク質プロセッ
シングによって結合解除することができる、及び/又は環境を、多くの場合、生物体内の若しくは特定の細胞タイプの内部の特異的部位の環境を、削減することができる(例えば
、Doronina S et al., Bioconjug Chem 17: 144-24(2006)、Erickson H et al., CancerRes66: 4426-33 (2006)を参照されたい)。インビボ切断性タンパク質性リンカーは、
1又は2以上のシステイン対によって形成されるプロテアーゼ感受性モチーフ及び/又はジスルフィド結合を含むことが多い(例えば、Pietersz G et al.,Cancer Res 48: 4469-76 (1998)、The J et al., J ImmunolMethods 110: 101-9 (1998)を参照されたい;Chen X et al., AdvDrug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。インビボ切断
性タンパク質性リンカーは、生物体内の特定の位置、細胞内の区画、のみに存在する及び/又は特定の生理若しくは病的条件下でのみ活性になるプロテアーゼ(例えば、異常に高レベルのプロテアーゼ、特定の疾患部位で過剰発現されるプロテアーゼ、及び病原性微生物によって特異的に発現されるプロテアーゼなど)に対して感受性であるように設計することができる。例えば、細胞内のみに存在するプロテアーゼ、特異的細胞タイプ内にのみ存在するプロテアーゼ、及びがん若しくは炎症のような病的条件下でのみ存在するプロテアーゼ、例えば、R-x-x-Rモチーフ及びAMGRSGGGCAGNRVGSSLSCGGLNLQAM(配列番号:126)などによって切断されるタンパク質性リンカーは、当技術分野において公知である。
【0144】
本発明のタンパク質の特定の実施形態では、標的細胞内に存在するプロテアーゼによる切断をもたらすために1又は2以上のプロテアーゼ感受性部位を含むリンカーを使用することがある。本発明のタンパク質の特定の実施形態では、脊椎動物生物への投与後の望ましくない毒性を低減させるために切断性でないリンカーを使用することもある。
【0145】
好適なリンカーは、タンパク質性であるか非タンパク性であるかにかかわらず、例えば、プロテアーゼ感受性、環境酸化還元電位感受性、pH感受性、酸切断性、光切断性及び/又は熱感受性リンカーを含みうる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013)を参照されたい)。
【0146】
好適な切断性リンカーは、例えば、Zarling D et al., J Immunol 124:913-20(1980)
、Jung S, Moroi M, Biochem Biophys Acta761:152-62(1983)、Bouizar Z et al., Eur
J Biochem 155:141-7 (1986)、ParkL et al., J Biol Chem261: 205-10(1986)、Browning J, Ribolini A, J Immunol143: 1859-67(1989)、Joshi S, Burrows R, J Biol Chem
265: 14518-25(1990)などの、当技術分野において公知である切断性基を含むリン
カーを含みうる。
【0147】
好適なリンカーは、pH感受性リンカーを含みうる。例えば、特定の好適なリンカーは、標的細胞の細胞内区画内部での解離をもたらすためにより低いpH環境でのそれらの不安定性について選択されることがある。例えば、1又は2以上のトリチル基、誘導体化トリチル基、ビスマレイミドエトキシプロパン基、アジピン酸ジヒドラジド基及び/又は酸不安定性基を含むリンカーは、特異的pH範囲を有する環境で本発明のタンパク質の成分、例えばポリペプチド成分、の放出をもたらすことができる(例えば、Welhoner H et al.,J Biol Chem 266: 4309-14 (1991)、 FattomA et al., Infect Immun 60: 584-9 (1992)を参照されたい)。例えば腫瘍組織のpHが健常組織の場合より低いなどの、組織間
の生理的pH差に対応するpH範囲で切断する特定のリンカーを選択してもよい(例えば、米国特許第5,612,474号明細書を参照されたい)。
【0148】
光切断性リンカーは、可視領域の光などの、特定の波長領域の電磁放射線への曝露に基づいて切断されるリンカーである。(例えば、Goldmacher V etal., Bioconj Chem 3: 104-7 (1992)を参照されたい)。光切断性リンカーを使用して、本発明のタンパク質の成
分、例えばポリペプチド成分、を特定の波長の光への曝露に基づいて放出させることができる。光切断性リンカーの非限定的な例は、システインの光切断性保護基のようなニトロベンジル基、ニトロベンジルオキシカルボニルクロリド架橋剤、ヒドロキシプロピルメタ
クリルアミド共重合体、グリシン共重合体、フルオレセイン共重合体及びメチルローダミン共重合体を含む(Hazum E et al., PeptProc Eur Pept Symp, 16th,Brunfeldt K, ed.,105-110 (1981)、Senter et al.,Photochem Photobiol 42:231-7(1985)、Yen et al.,MakromolChem 190: 69-82(1989)、Goldmacher V et al.,Bioconj Chem 3: 104-7(1992))。光切断性リンカーは、ファイバーオプティクスを使用して光に曝露することができる疾患、障害及び状態を治療するために設計された本発明のタンパク質を形成するための連結成分に、特に使用されうる。
【0149】
本発明のタンパク質の特定の実施形態において、結合領域は、共有結合性連結及び非共有結合性連結の両方を含む当業者に公知の手段を任意の数用いて、志賀毒素エフェクター領域に連結される(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013)、Behrens C, Liu B, MAbs6: 46-53 (2014)を参照されたい)。
【0150】
本発明のタンパク質の特定の実施形態において、タンパク質は、重鎖可変(VH)ドメインと軽鎖可変(VL)ドメインを接続するリンカーを有するscFvである結合領域を含む。例えば15残基(Gly4Ser)3ペプチド(配列番号:127)などの、この目的に好適な非常に多くのリンカーが当技術分野において公知である。非共有結合性多価構造の形成に使用することができる好適なscFvリンカーは、GGS、GGGS(配列番号:128)、GGGGS(配列番号:129)、GGGGSGGG(配列番号:130)、GGSGGGG(配列番号:131)、GSTSGGGSGGGSGGGGSS(配列番号:132)及びGSTSGSGKPGSSEGSTKG(配列番号:133)を含む(Pluckthun A, PackP, Immunotechnology 3: 83-105 (1997)、Atwell J et al., Protein Eng 12: 597-604(1999)、Wu A et al., Protein Eng14: 1025-33 (2001)、YazakiPet al., J Immunol Methods 253: 195-208 (2001)、CarmichaelJet al.,J Mol Biol 326: 341-51 (2003)、Arndt M etal.,FEBS Lett 578: 257-61 (2004)、Bie C et al.,
World JHepatol 2: 185-91 (2010))。
【0151】
本発明のタンパク質の成分の連結に好適な方法は、そのような連結を果たすために当技術分野において現在公知のいずれの方法によるものであってもよいが、ただし、本書に記載するアッセイを含む適切なアッセイによって測定して、その結合が、結合領域の結合能力、タンパク質の細胞内在化、及び/又は志賀毒素エフェクター領域の所望の毒素エフェクター機能を妨げないことを条件とする。
【0152】
本発明では、志賀毒素エフェクター領域及び細胞標的化結合領域について、互いとの関連でも、タンパク質全体との関連でも、特定の順序も配向も決められていない(例えば
図1を参照されたい)。本発明のポリペプチド及びタンパク質の成分をいずれの順序で配置してもよいが、ただし、結合領域及び志賀毒素エフェクター領域の所望の活性が除去されないことを条件とする。本発明のポリペプチド及びタンパク質の上記実施形態において、結合領域、(細胞毒性であることもあり、並びに/又は触媒活性及び/若しくは細胞毒性を低減若しくは除去する1つ若しくは2つ以上変異を内部に持つこともある)志賀毒素エフェクター領域、及び小胞体残留/回収シグナルモチーフは、互いに直接連結されることもあり、並びに/又は1つ若しくは2つ以上の介在ポリペプチド配列によって、例えば、当技術分野において周知の及び/若しくは本書に記載する1つ若しくは2つ以上のリンカーで、互いに適切に連結されることもある。
【0153】
III.脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及びタンパク質の特異的構
造変化の例
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを生成するために、原理上は、提供するエピトープ領域内のいずれのアミノ酸を、例えば側鎖の欠失、挿入、反転、再配列、置換及び化学的修飾などの様々な手段によって、破壊してもよい。しかし、特定の破壊を
用いて特定のアミノ酸及びポリペプチド領域を破壊するほうが、志賀毒素エフェクター機能を保持しつつ抗原性及び/又は免疫原性を首尾よく低減させる可能性が高い。例えば、末端切断及び内部アミノ酸置換は、志賀毒素エフェクター領域の全体的なアミノ酸間隔を維持するため、したがって志賀毒素エフェクター機能を維持する可能性がより高いため、好ましい。
【0154】
本発明の特定の実施形態の中で、ポリペプチドは、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)及び/又はSLT-2A(配列番号3)のアミノ酸75~251を含む、又はそのようなアミノ酸から本質的になる、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。特定の他の実施形態の中には、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)及び/又はSLT-2A(配列番号3)のアミノ酸1~241に由来する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドがある。さらなる実施形態は、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)及び/又はSLT-2A(配列番号3)のアミノ酸1~251に由来する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドである。さらなる実施形態は、実施例(表1、2、3、4及び/又は5)において提供する天然位置のエピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)及び/又はSLT-2A(配列番号3)のアミノ酸1~261に由来する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含むポリペプチドである。
【0155】
本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを生成するために用いることができる非常に多くの、多様な、内部アミノ酸置換がある。
【0156】
エピトープ領域内に用いるための可能な代用アミノ酸のうち、次の代用アミノ酸残基は、エピトープの抗原性/免疫原性を低減させる可能性が最も高いと予測される-G、D、E、S、T、R、K及びH。グリシンを除き、これらの残基はすべて極性及び/又は荷電残基を表す。
【0157】
置換することが可能なアミノ酸のうち、次のアミノ酸A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H及びKは、置換されるアミノ酸に依存して有意な志賀毒素エフェクター機能を保持しつつ抗原性及び/又は免疫原性を低減させる可能性が最も高い。一般には、置換は、極性及び/又は荷電アミノ酸残基を非極性及び非荷電残基に変化させるべきである。加えて、全アミノ酸残基のR基官能性側鎖のサイズ及び/又は長さを低減させるようなエピトープ破壊は有益でありうる。例えば、アラニンは、一般に、いずれのアミノ酸残基にも許容される置換であり、グリシン残基についてはアラニンが好ましい選択肢である。セリンは、一般に、グルタメート残基にのみ許容される置換である。アスパルテートは、一般に、グルタメート残基にのみ許容される置換である。リジンは、一般に、アルギニン残基にのみ許容される置換である。グルタミンは、一般に、グルタメート、リジン又はアスパラギン残基にのみ許容される置換である。ヒスチジンは、一般に、リジン及びアスパラギン残基にのみ許容される置換である。しかし、エピトープ破壊を付与する可能性が最も高い置換のこれらの一般性にもかかわらず、目的は有意な志賀毒素エフェクター機能を保存することであるため、代用アミノ酸は、置換されるアミノ酸に似ている場合、例えば、極性及び/又は荷電残基が置換される同様のサイズの非極性及び/又は非荷電残基などの場合、志賀毒素エフェクター機能を保存する可能性がより高い可能性がある。
【0158】
実施例における経験的証拠に基づいて、志賀毒素のAサブユニット内の特定のアミノ酸位置は、エピトープ破壊を許容し、その上、有意な志賀毒素エフェクター機能を依然として保持すると予測される。例えば、下記の自然に存在する位置は、単独で又は組合せでアミノ酸置換を許容し、その上、細胞毒性などの志賀毒素エフェクター機能を保持した-配列番号1又は配列番号2の1、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11、配列番号1又は配列番号2の33、配列番号1又は配列番号2の43、配列番号1又は配列番号2の45、配列番号1又は配列番号2の47、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48、配列番号1又は配列番号2の49、配列番号1又は配列番号2の53、配列番号1又は配列番号2の55、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59、配列番号1又は配列番号2の60、配列番号1又は配列番号2の61、配列番号1又は配列番号2の62、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109、配列番号1又は配列番号2の110、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のSE147、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179、配列番号1又は配列番号2の180、配列番号1又は配列番号2の181、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184、配列番号1又は配列番号2の185、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186、配列番号1又は配列番号2の187、配列番号1又は配列番号2の188、配列番号1又は配列番号2の189、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号1又は配列番号2の247、配列番号3の247、配列番号1又は配列番号2の248、配列番号3の250、配列番号1又は配列番号2の251、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264、配列番号1又は配列番号2の265、及び配列番号1又は配列番号2の286。
【0159】
実施例の経験的データは、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持しつつ抗原性及び/又は免疫原性を低減させることができる、他のエピトープ破壊性置換及びエピトープ破壊性置換の組合せ、例えば、置換を許容する上述の切断及び位置の新たな組合せ、並びに関連志賀毒素内の同一位置又は保存された位置での新たな置換などを示唆する。
【0160】
保存的官能基のアミノ酸残基への他のアミノ酸置換が、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持しつつ抗原性及び/又は免疫原性を低減させることもあることは、予測することができる。例えば、K1M、T4I、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、S33I、S45I、T45I、D47G、N48V、N48F、L49A、D53A、D53G、D53N、R55A、R55V、R55L、D58A、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、D94A、S96I、S109V、T109V、G110A、S112V、G147A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184F、L185V、S186A、S186F、G187A、R188A、R188L、S189A、R204A、R205A、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、D264A、G264A、T286A及び/又はT286Iのいずれかに類似していることが当業者に公知の他の置換は、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能を維持しつつエピトープを破壊することができるだろう。特定の実施形態において、K1M、T4I、S8I、T8V、T9I、S9I、K11A、K11H、S33I、S45I、T45I、D47G、N48V、N48F、L49A、D53A、D53G、D53N、R55A、R55V、R55L、D58A、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、D94A、S96I、S109V、T109V、G110A、S112V、G147A、R179A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184F、L1
85V、S186A、S186F、G187A、R188A、R188L、S189A、R204A、R205A、S247I、Y247A、R248A、R250A、R251A、D264A、G264A、T286A及び/又はT286Iに類似している保存的アミノ酸置換へのアミノ酸置換には、同じ又は類似の効果があることがある。特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、類似の保存的アミノ酸置換、例えば、K1のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、T4のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、S8のA、G、V、I、L、F及びMへの、T9のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、S9のA、G、V、L、I、F及びMへの、K11のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、S33のA、G、V、L、I、F及びMへの、S45のA、G、V、L、I、F及びMへの、T45のA、G、V、L、I、F及びMへの、D47のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、N48のA、G、V、L及びMへの、L49のA又はGへの、D53のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、R55のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D58のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、P59のA、G及びFへの、E60のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、E61のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、G62のAへの、D94のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S96のA、G、V、I、L、F及びMへの、S109のA、G、V、I、L、F及びMへの、T109のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、G110のAへの、S112のA、G、V、L、I、F及びMへの、G147のAへの、R179のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、T180のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、T181のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、D183のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、D184のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S186のA、G、V、I、L、F及びMへの、G187のAへの、R188のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S189のA、G、V、I、L、F及びMへの、R204のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R205のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S247のA、G、V、I、L、F及びMへの、Y247のA、G、V、L、I、F及びMへの、R248のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R250のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R251のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D264のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、G264のAへの、並びにT286のA、G、V、L、I、F、M及びSへの置換などを含むことがある。
【0161】
同様に、電荷及び極性を除去する並びに/又は側鎖長を低減させるアミノ酸置換は、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能を維持しつつエピトープを破壊することができる。特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、側鎖電荷が除去される、極性が除去される、及び/又は側鎖長が低減されるような置換、例えば、A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H又はKの群から選択される適切なアミノ酸での、配列番号1又は配列番号2の1、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11、配列番号1又は配列番号2の33、配列番号1又は配列番号2の43、配列番号1又は配列番号2の45、配列番号1又は配列番号2の47、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48、配列番号1又は配列番号2の49、配列番号1又は配列番号2の53、配列番号1又は配列番号2の55、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59、配列番号1又は配列番号2の60、配列番号1又は配列番号2の61、配列番号1又は配列番号2の62、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109、配列番号1又は配列番号2の110、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112、配列番号1、配列番号2又は配列番号3のSE147、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179、配列番号1又は配列番号2の180、配列番号1又は配列番号
2の181、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184、配列番号1又は配列番号2の185、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186、配列番号1又は配列番号2の187、配列番号1又は配列番号2の188、配列番号1又は配列番号2の189、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号1又は配列番号2の247、配列番号3の247、配列番号1又は配列番号2の248、配列番号3の250、配列番号1又は配列番号2の251、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264、配列番号1又は配列番号2の265、及び配列番号1又は配列番号2の286の位置のアミノ酸残基の置換などの置換によって破壊された1又は2以上のエピトープを含むことがある。特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、下記のアミノ酸置換:K1のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、T4のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、S8のA、G、V、I、L、F及びMへの、T9のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、S9のA、G、V、L、I、F及びMへの、K11のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、S33のA、G、V、L、I、F及びMへの、S45のA、G、V、L、I、F及びMへの、T45のA、G、V、L、I、F及びMへの、D47のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、N48のA、G、V、L及びMへの、L49のA又はGへの、D53のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、R55のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D58のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、P59のA、G及びFへの、E60のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、E61のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、G62のAへの、D94のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S96のA、G、V、I、L、F及びMへの、S109のA、G、V、I、L、F及びMへの、T109のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、G110のAへの、S112のA、G、V、L、I、F及びMへの、G147のAへの、R179のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、T180のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、T181のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、D183のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、D184のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S186のA、G、V、I、L、F及びMへの、G187のAへの、R188のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S189のA、G、V、I、L、F及びMへの、R204のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R205のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S247のA、G、V、I、L、F及びMへの、Y247のA、G、V、L、I、F及びMへの、R248のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R250のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R251のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D264のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、G264のAへの、並びにT286のA、G、V、L、I、F、M及びSへの置換の1又は2以上を含むことがある。
【0162】
加えて、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持しつつエピトープを破壊する、志賀毒素エフェクターポリペプチドの1つのエピトープ領域における任意のアミノ酸置換は、複数のエピトープ領域が破壊されているが有意な志賀毒素エフェクター機能レベルを依然として保持している脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成するために、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持しつつエピトープを破壊する、同じ又は異なるエピトープ領域における任意の他のアミノ酸置換と組み合わせることができる。特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、次の組合せの1又は2以上を含むことがある:K1MをS8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、S8IをK1M、T9I、K11A、S4
5I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、T9IをK1M、S8I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、S9IをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、K11AをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、S33IをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、S45V又はS45IをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、T45IをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、D53AをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、R55A K1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286I、D58A又はD58FをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、G110A、D94A、S96I、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A
、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、R55AをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、P59AをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、E60RをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、E60I又はE60AをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、E61AをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、G62AをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、D94AをK1M、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、S96IをK1M、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、G110AをK1M、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、G147AをK1M、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A
、S96I、G110A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、T180GをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、T181IをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、D183AをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、D184A又はD184FをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、R204AをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R205A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、R205AをK1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、S247I、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、S247IをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、D264A、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、D264AをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、G264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、G264AをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G265A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、G265AをK1M、S8I、T9
I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A及び/又はT286Iと組み合わせてもよく、及び/又はT286IをK1M、S8I、T9I、K11A、S45I、T45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、T180G、T181I、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、R204A、R205A、S247I、D264A、G264A及び/又はG265Aと組み合わせてもよい。
【0163】
実施例における経験的証拠に基づいて、志賀毒素のAサブユニット内の特定のアミノ酸領域は、エピトープ破壊を許容し、その上、有意な志賀毒素エフェクター機能を依然として保持すると予測される。例えば、1~15、53~66、55~66、94~115及び180~190に天然に位置するエピトープ領域は、志賀毒素酵素活性を失うことなく、及び多くの場合、細胞毒性を失うことなく、同時に複数のアミノ酸置換を許容した(実施例を参照されたい)。
【0164】
細胞標的化結合領域と脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドとの連結によって、哺乳動物、例えばヒト対象、に投与したとき抗原性及び/免疫原性の結果として生じる可能性のある有害作用がより少ない、強力な志賀毒素細胞毒性の細胞タイプ特異的標的化のエンジニアリングが可能になる。本発明のタンパク質は、細胞と物理的に会合している少なくとも1つの細胞外標的生体分子、例えば細胞の表面で発現された標的生体分子、と特異的に結合することができる結合領域に連結された、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。この一般構造は、任意の数の多様な細胞標的化結合領域を本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに連結させることができる点で、モジュラーである。
【0165】
本発明の特定の実施形態の中で、タンパク質は、抗原の発現ががん細胞に限定される、がん細胞の細胞表面の表面抗原との特異的及び高親和性結合のために選択される免疫グロブリン型ポリペプチドに由来する結合領域を含む(Glokler J et al.,Molecules 15: 2478-90 (2010)、Liu Y et al., Lab Chip 9:1033-6 (2009)を参照されたい)。他の実施
形態に従って、結合領域は、抗原が非がん細胞と比較してがん細胞によって過発現される又は優先的に発現されるがん細胞の細胞表面の表面抗原との特異的及び高親和性結合のために選択される。いくつかの代表的標的生体分子は、がん及び/又は特異的免疫細胞タイプと会合する以下の列挙する標的を含むが、これらに限定されない。
【0166】
がん細胞と会合しているエピトープを認識する多くの免疫グロブリン型結合領域、例えば、アネキシンAI、B3黒色腫抗原、B4黒色腫抗原、CD2、CD3、CD4、CD20(Bリンパ球抗原タンパク質CD20)、CD22、CD25(インターロイキン-2受容体IL2R)、CD30(TNFRSF8)、CD38(サイクリックADPリボースヒドラーゼ)、CD40、CD44(ヒアルロナン受容体)、ITGAV(CD51)、CD66、CD71(トランスフェリン受容体)、CD73、CD74(HLA-DR抗原関連インバリアント鎖)、CD79、CD98、エンドグリン(END、CD105)、CD106(VCAM-1)、ケモカイン受容体4型(CDCR-4、フーシン、CD184)、CD200、インスリン様増殖因子1受容体(CD221)ムチン1(MUC1、CD227)、基底細胞接着分子(B-CAM,basal cell adhesion molecule、CD239)、CD248(エンドシアリン、TEM1)、腫瘍壊死因子受容体10b(TNFRSF10B、CD262)、腫瘍壊死因子受容体13B(TNFRSF13B、TACI、CD276)、血管内皮増殖因子受容体2(KDR、CD309)、上皮細
胞接着分子(EpCAM、CD326)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2,human epidermalgrowth factor receptor 2、Neu、ErbB2、CD340)、がん抗原15-3(CA15-3,cancer antigen 15-3)、がん抗原19-9(CA19-9,cancerantigen19-9)、がん抗原125(CA125,cancer antigen 125、MUC16)
、CA242、がん胎児抗原関連細胞接着分子(例えば、CEACAM3(CD66d)及びCEACAM5)、がん胎児抗原(CEA,carcinoembryonic antigen)タンパク質、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSP4,chondroitin sulfate proteoglycan 4、MCSP、NG2)、CTLA4、DLL4、上皮増殖因子受容体(EGFR,epidermal growth factor receptor、ErbB1)、葉酸受容体(FOLR,folate receptor)、G-28、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、HLA-Dr10、
HLA-DRB、ヒト上皮増殖因子受容体1(HER1,human epidermal growth factor receptor 1)、エフリンB型受容体2(EphB2,Ephrin type-Breceptor 2)、上
皮細胞接着分子(EpCAM,epithelial cell adhesion molecule)、線維芽細胞活性
化タンパク質(FAP,fibroblast activation protein/セプラーゼ)、インスリン様
増殖因子1受容体(IGF1R,insulin-like growth factor 1 receptor)、インター
ロイキン2受容体(IL-2R,interleukin 2 receptor)、インターロイキン6受容体(IL-6R,interleukin 6 receptor)、インテグリンアルファ-Vベータ-3(αVβ3)、インテグリンアルファ-Vベータ-5(αvβ5)、インテグリンアルファ-5ベータ-1(α5β1)、L6、MPG、黒色腫関連抗原1タンパク質(MAGE-1)、黒色腫関連抗原3(MAGE-3)、メソセリン(MSLN)、MPG、MS4A、p21、p97、ポリオウイルス受容体様4(PVRL4,polio virus receptor-like 4
)、プロテアーゼ活性化受容体(例えばPAR1)、前立腺特異的膜抗原タンパク質(P
SMA,prostate-specific membrane antigen protein)、栄養膜糖タンパク質(TPGB)、及び腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子(TACSTD,tumor-associated calcium signal transducers)を標的にする結合領域が、先行技術に存在する(例えばLui B
et al., Cancer Res 64: 704-10 (2004)、Novellino L etal., Cancer Immunol Immunother 54: 187-207 (2005)、BagleyRet al., IntJ Oncol 34: 619-27 (2009)、Gerber H et al.,mAbs 1: 247-53 (2009)、Beck A etal., Nat RevImmunol 10:345-52 (2010)、Andersen J et al., J BiolChem 287:22927-37(2012)、Nolan-Stevaux O etal., PLoSOne
7:e50920 (2012)、Rust S et al., Mol Cancer 12: 11(2013)を参照されたい)。標的生体分子のこのリストは、非限定的であることを意図したものである。志賀毒素エフェクター領域と結合させて本発明のタンパク質を産生するための結合領域を設計又は選択するために、がん細胞又は他の所望の細胞タイプに関連したいずれの所望の標的生体分子を使用してもよいことは、当業者には理解されるであろう。
【0167】
がん細胞と強く会合する他の標的生体分子、及びそれらに結合することが公知の免疫グロブリン型結合領域の例は、BAGEタンパク質(B黒色腫抗原)、基底細胞接着分子(BCAM又はLutheran式血液型糖タンパク質)、膀胱腫瘍抗原(BTA,bladdertumorantigen)、がん-精巣抗原NY-ESO-1、がん-精巣抗原LAGEタンパク質、C
D19(Bリンパ球抗原タンパク質CD19)、CD21(補体受容体-2又は補体3d受容体)、CD26(ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4,dipeptidyl peptidase-4)又はアデノシンデアミラーゼ複合体形成受容体2)、CD33(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン-3)、CD52(CAMPATH-1抗原)、CD56、CS1(SLAMファミリーメンバー7又はSLAMF7)、細胞表面A33抗原タンパク質(gpA33)、エプスタイン・バーウイルス抗原タンパク質、GAGE/PAGEタンパク質(黒色腫関連がん/精巣抗原)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR,hepatocyte growth factor receptor、又はc-Met)、MAGEタンパク質、T細胞1タンパク質によ
って認識される黒色腫抗原(MART-1,melanoma antigen recognized by T-cell 1
/MelanA、MARTI)タンパク質、ムチン、優先的に発現される黒色腫抗原(PRAME)タンパク質、前立腺特異的抗原(PSA,prostate specific antigen)タン
パク質、前立腺幹細胞抗原(PSCA,prostate stem cell antigen)タンパク質、終末糖化産物受容体(RAGE,Receptor for Advanced Glycation Endroduct)、腫瘍関連
糖タンパク質72(TAG-72,tumor-associated glycoprotein 72)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR,vascular endothelial growth factor receptor)、ウィルム
ス腫瘍抗原を含む。
【0168】
がん細胞と強く会合する他の標的生体分子の例は、炭酸脱水酵素IX(CA9/CAIX,carbonicanhydraseIX)、クローディンタンパク質(CLDN3、CLDN4)、
エフリンA型受容体3(EphA3,ephrin type-A receptor 3)、葉酸結合タンパク質(FBP,folate binding protein)、ガングリオシドGM2,インスリン様増殖因子受容体、インテグリン(例えばCD11a~c)、核因子カッパB活性化受容体(RANK)、受容体型チロシンプロテインキナーゼerB-3、腫瘍壊死因子受容体10A(TRAIL-R1/DR4)、腫瘍壊死因子受容体10B(TRAIL-R2)、テネイシンC、及びCD64(FcγRI)である(Hough C et al., Cancer Res 60: 6281-7 (2000)、Thepen T et al.,Nat Biotechnol 18: 48-51 (2000)、Pastan I et al.,Nat Rev Cancer 6: 559-65 (2006)、Pastan, Annu Rev Med 58: 221-37 (2007)、FitzgeraldDet
al., Cancer Res 71: 6300-9 (2011)、Scott A et al.,Cancer Immun 12: 14-22 (2012)
を参照されたい)。標的生体分子のこのリストは、非限定的であることを意図したものである。
【0169】
加えて、ADAMメタロプロテイナーゼ(例えばADAM-9、ADAM-10、ADAM-12、ADAM-15、ADAM-17)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART1、ART4)、抗原F4/80、骨髄間質抗原(BST1、BST2)、破断点クラスター領域-c-ablがん遺伝子(BCR-ABL)タンパク質、補体成分3a受容体(C3aR,complement component 3a receptor)、CD7、CD13、CD14、CD15(Lewis X又はステージ特異的胎児抗原1)、CD23(FCイプシロンRII
)、CD49d、CD53、CD54(細胞間接着分子1)、CD63(テトラスパニン)、CD69、CD80、CD86、CD88(補体成分5a受容体1)、CD115(コロニー刺激因子1受容体)、CD123(インターロイキン-3受容体)、CD129(インターロイキン9受容体)、CD183(ケモカイン受容体CXCR3)、CD191(CCR1)、CD193(CCR3)、CD195(ケモカイン受容体CCR5)、CD203c、CD225(インターフェロン誘導膜貫通タンパク質1)、CD244(ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、CD282(toll様受容体2)、CD284(Toll様受容体4)、CD294(GPR44)、CD305(白血球関連免疫グロブリン様受容体1)、エフリンA型受容体2(EphA2,ephrin type-A receptor 2)、FceRIa、ガレクチン-9、アルファ-フェトプロテイン抗原17-A1タンパク質、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ(HAAH)、免疫グロブリン様転写物ILT-3、リゾホスファチジルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ1(LPGAT1,lysophosphatidlglycerol acyltransferase 1/IAA020
5)、リソソーム膜タンパク質(LAMP,lysosome-associated membraneprotein、例
えばCD107)、メラニン細胞タンパク質PMEL(gp100)、骨髄関連タンパク質-14(mrp-14,myeloid-related protein-14)、受容体型チロシンプロテイン
キナーゼerbB-3、SARTタンパク質、スカベンジャー受容体(例えばCD64及びCD68)、Siglec(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン)、シンデカン(例えばSDC1又はCD138)、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP-1,tyrosinease-related protein 1)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-
2,tyrosinease-related protein 2)、チロシナーゼ関連抗原(TAA,tyrosinase associated antigen)、APO-3、BCMA、CD2、CD3、CD4、CD8、CD18、CD27、CD28、CD29、CD41、CD49、CD90、CD95(Fas)、CD103、CD104、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、C
D152(CTLA-4)、ケモカイン受容体、補体タンパク質、サイトカイン受容体、組織適合性タンパク質、ICOS、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、c-myc、破骨細胞分化抑制因子、PD-1、RANK、TACI、TNF受容体スーパーファミリーメンバー(TNF-R1、TNFR-2)、Apo2/TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3及びTRAIL-R4などの、考えられる標的生体分子の他の例が非常に多くある(標的生体分子については、Scott A et al., Cancer Immunity 12: 14 (2012)、Cheever M et al., Clin Cancer Res 15: 5323-37 (2009)を参照されたく、それらに記載されている標的分子が非限定的な例であることに留意さ
れたい)。脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域と結合させて本発明のタンパク質を産生するための結合領域を設計又は選択するために、いずれの所望の標的生体分子を使用してもよいことは、当業者には理解されるであろう。
【0170】
特定の実施形態において、結合領域は、免疫系の細胞タイプの細胞表面との特異的及び高親和性結合のために選択される免疫グロブリン型ポリペプチドを含む、又はそのような免疫グロブリン型ポリペプチドから本質的になる。例えば、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11、CD12、CD13、CD14、CD15、CD16、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD40、CD41、CD56、CD61、CD62、CD66、CD95、CD117、CD123、CD235、CD146、CD326、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、核因子カッパB活性化受容体(RANKL)、SLAM結合タンパク質(SAP)及びTNFSF18(腫瘍壊死因子リガンド18又はGITRL)と結合する免疫グロブリン型結合ドメインは公知である。
【0171】
特定の実施形態について、脱免疫化された細胞毒性タンパク質は、配列番号53、配列番号54、配列番号55若しくは配列番号56のアミノ酸を含む、又は、配列番号53、配列番号54、配列番号55若しくは配列番号56のアミノ酸から本質的になる。これらの脱免疫化されたCD20結合細胞毒性タンパク質実施形態を用いて、骨がん、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主病、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ様関節炎、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎及び/又は血管炎を処置及び/又は診断することができる。
【0172】
特定の実施形態について、脱免疫化された細胞毒性タンパク質は、配列番号57、配列番号58若しくは配列番号59のアミノ酸を含む、又は、配列番号57、配列番号58若しくは配列番号59のアミノ酸から本質的になる。これらの脱免疫化されたHER-2結合細胞毒性タンパク質実施形態を用いて、乳がん、子宮頚がん、頭頸部がん(例えば中咽頭)、胃腸がん(例えば食道又は結腸直腸)、腎・尿路がん(例えば膀胱)、肺/胸膜がん、及び卵巣がんを処置及び/又は診断することができる。
【0173】
特定の実施形態において、結合領域は、細胞外受容体の標的化のために選択されるリガンドを含む、又はそのようなリガンドから本質的になる。いくつかの代表的リガンドは、下記の骨形成タンパク質及びアクチビン膜結合阻害剤BAMBI(TGFBRとしても公知)、CD137L(4-1BBとしても公知)、デコイ受容体3(DcR3,decoy receptor 3)(TR6及びTNFRSF6Bとしても公知)、及び腫瘍壊死因子TWEAK(TNFSF12及びAPO3Lとしても公知)を含むが、これらに限定されない。より多くの非限定的例示的リガンドについては、実施例の表12を参照されたい。
【0174】
エピトープ破壊後に非毒性になる脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域、例えば、R179Aを含む志賀毒素エフェクター領域は、細胞への外因性物質の送達になお有用であることもある。触媒活性の有意な志賀毒素機能レベルのみを保持する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、分子の酵素的に活性な脱免疫化された成分としてなお有用である。
【0175】
機能性細胞外標的生体分子結合部位を含有する、及びよりいっそう好ましくは(例えばKDによって示されるような)高い親和性で標的生体分子に結合することができる、本発明のポリペプチド及びタンパク質の断片、バリアント及び/又は誘導体を使用することは、本発明の範囲内である。例えば、本発明の分子(例えば、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞毒性タンパク質)の製造及び本発明の方法における使用に、標的生体分子、好ましくは、細胞表面で発現される標的生体分子と1リットル当たり10-5~10-12モル、好ましくは200nM未満の解離定数で結合するポリペプチドを含む任意の結合領域を代用してもよい。
【0176】
IV.脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及びタンパク質の一般的な機能
本発明のポリペプチド及びタンパク質は、哺乳動物において望ましくない免疫応答を生じる可能性が低いために、治療剤及び/又は診断剤のいずれかとして哺乳動物種に投与するための改善された実用性を有する。重要なことに、本発明のポリペプチドでは、B細胞エピトープが破壊された後、元の志賀毒素エフェクター領域の望ましい生物学的機能が保存された。加えて、B細胞エピトープは、成熟CD4+T細胞のエピトープと一致するか又は重複することが多いため、B細胞エピトープの破壊は、同時にCD4+T細胞エピトープを破壊することが多い。
【0177】
本発明の様々な脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、様々な哺乳動物に投与された場合のそれらの抗原性プロファイルの点で異なっている可能性があるが、低下した抗原性及び/又は免疫原性を有することが予測される。哺乳動物への投与を含むその医療適用における使用を改善するために志賀毒素に由来するポリペプチドから全ての免疫原性を完全に消滅させることは、必ずしも必要ではない(Nagata, Adv Drug Deliv Rev61: 977-85(2009)を参照)。治療用タンパク質におけるごく少数の優勢なアミノ酸の改
変は、タンパク質の全体的な安定性、構造、及び機能を乱すことなくその抗原性及び/又は免疫原性を大きく低下させることができる。しかしながら、不要なB細胞及び/又はCD4+T細胞免疫応答を回避することが望ましい場合、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域においてより多くの免疫原性B細胞エピトープが破壊されていることが、哺乳動物への投与にとってより有利であると予測される。
【0178】
本発明は、様々な物質の組成物、例えば細胞標的化細胞毒性タンパク質及び診断用組成物の成分として使用される可能性がある様々な脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを提供する。特定には、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、がん、免疫障害、及び微生物感染を含む様々な疾患を治療するための特異的な細胞型の標的化された殺滅のための、例えば免疫毒素及びリガンド-毒素融合体などの様々なタンパク質治療剤の成分としての用途を有する。
【0179】
本発明はまた、細胞毒性タンパク質が、特異的な細胞型を選択的に殺滅する、その成長を阻害する、それに外因性物質を送達する、及び/又はそれを検出するように細胞標的化を引き起こすための結合領域と機能的に関連する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む様々な細胞毒性タンパク質も提供する。本発明のタンパク質の結合領域は、細胞表面上で発現される標的生体分子などの細胞と物理的に関連する少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することが可能である。細胞標的化結合領域と脱免疫化され
た志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドとの連結は、有力な志賀毒素の細胞毒性及び/又は細胞性塞栓の細胞型特異的な標的化の操作を可能にする。
【0180】
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、特定の細胞型の細胞表面に関連する細胞外標的生体分子と結合し、細胞に侵入することが可能である。本発明のタンパク質の特定の実施形態は、標的化された細胞型内に内在化されたら、標的細胞のサイトゾルに酵素的に活性な細胞毒性の志賀毒素エフェクターポリペプチドフラグメントの経路を定めることが可能である。本発明の細胞毒性タンパク質の特定の実施形態は、標的化された細胞型のサイトゾル中に入れば、リボソームを酵素的に不活性化し、最終的に細胞を殺滅することが可能である。その代わりに、本発明のタンパク質の非毒性バリアントは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、及び検出促進剤などの追加の外因性物質を標的細胞に送達するのに使用される可能性もある。この系は、この有力な細胞毒性を様々な多様な細胞型に標的化するためにあらゆる数の多様な結合領域を使用することができるモジュール式構造である。
【0181】
A.標的化された志賀毒素細胞毒性を介した細胞殺滅
志賀毒素ファミリーのメンバーは真核細胞を殺滅するようになっているため、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を使用して設計された細胞毒性タンパク質は、有力な細胞殺滅活性を示すことができる。志賀毒素ファミリーメンバーのAサブユニットは、細胞のサイトゾルに入れば真核細胞を殺滅することが可能な酵素ドメインを含む。B細胞エピトープの破壊は、本発明の特定の志賀毒素エフェクター領域の細胞毒性メカニズムを有意に変更しない。したがって、本発明の脱免疫化された細胞毒性タンパク質は、哺乳動物に投与された場合、一定の免疫応答が起こる可能性を低下させながら、有力な細胞毒性を維持する。
【0182】
本発明の脱免疫化された細胞毒性タンパク質の特定の実施形態において、本発明の細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞を接触させると(標的+細胞)、細胞毒性タンパク質は、細胞の死を引き起こすことが可能である。細胞殺滅は、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織サンプル中の標的細胞、又はインビボの標的細胞などの標的細胞の様々な条件下で本発明の細胞毒性タンパク質を使用して達成され得る。
【0183】
B.細胞型間で選択的な細胞毒性
特異的な細胞型への高親和性結合領域を使用して酵素的に活性な脱免疫化された志賀毒素領域の送達を標的化することによって、この有力な細胞殺滅活性を、選択された細胞型を優先的に殺滅することに限定することができる。
【0184】
特定の実施形態において、細胞型の混合物に本発明のタンパク質を投与するとき、タンパク質は、細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされていない細胞型と比較して、細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞を選択的に殺滅することが可能である。志賀毒素ファミリーのメンバーは真核細胞の殺滅に適していることから、志賀毒素エフェクター領域を使用して設計された細胞毒性タンパク質は、有力な細胞毒性の活性を示す可能性がある。高親和性結合領域を使用して特異的な細胞型への酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することによって、この有力な細胞殺滅活性を、標的化が望ましい細胞型と選ばれた結合領域の標的生体分子との物理的な関連によってそのような細胞型のみを殺滅することに限定することができる。
【0185】
特定の実施形態において、本発明の細胞毒性タンパク質は、2又は3以上の異なる細胞型の混合物内で特異的な細胞型の死を選択的又は優先的に引き起こすことが可能である。これは、高い優先性で、例えば標的生体分子を発現しない「バイスタンダー」細胞型に対
して3倍の細胞毒性作用で、細胞毒性活性を特異的な細胞型に標的化することを可能にする。その代わりに、標的生体分子が十分低い量で発現されるか及び/又は標的化されるべきではない細胞型と少量で物理的に組み合わされる場合、結合領域の標的生体分子の発現は、1つの細胞型に限られない場合がある。これは、高い優先性で、例えば有意な量の標的生体分子を発現しないか、又は有意な量の標的生体分子と物理的に組み合わされない「バイスタンダー」細胞型に対して3倍の細胞毒性作用で、細胞殺滅を特異的な細胞型に標的化することを可能にする。
【0186】
特定のさらなる実施形態において、2種の異なる細胞型集団に細胞毒性タンパク質を投与するとき、細胞毒性タンパク質は、そのメンバーが細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子を発現する標的細胞集団に対する半最大細胞毒性濃度(CD50、half-maximal cytotoxic concentration)が、そのメンバーが細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子を発現しない細胞集団に対する同じ細胞毒性タンパク質のCD50用量の少なくとも3分の1の用量であることによって定義されるような細胞死を引き起こすことが可能である。
【0187】
特定の実施形態において、細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞型集団に対する細胞毒性活性は、結合領域のいかなる細胞外標的生体分子とも物理的に組み合わされていない細胞型集団に対する細胞毒性活性より少なくとも3倍高い。本発明によれば、選択的な細胞毒性は、(a)結合領域の標的生体分子と物理的に組み合わされた特異的な細胞型の細胞集団に対する細胞毒性の、(b)結合領域の標的生体分子と物理的に組み合わされていない細胞型の細胞集団に対する細胞毒性に対する比率(a/b)に関して定量化されてもよい。特定の実施形態において、細胞毒性の比率は、結合領域の標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞集団又は細胞型について、結合領域の標的生体分子と物理的に組み合わされていない細胞集団又は細胞型と比較して、少なくとも3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、250倍、500倍、750倍、又は1000倍高い選択的な細胞毒性であることを示す。
【0188】
この優先的な細胞殺滅機能は、様々な条件下で、非標的化バイスタンダー細胞の存在下で、例えばエクスビボで操作された細胞型の混合物、インビトロで細胞型の混合物と共に培養された組織、又はインビボの複数の細胞型の存在下で(例えばインサイチュで、又は多細胞生物内におけるその天然位置で)本発明の特定の細胞毒性タンパク質によって、標的化された細胞を殺滅することを可能にする。
【0189】
C.標的化細胞内部への追加の外因性物質の送達
細胞毒性及び細胞増殖抑制性の適用に加えて、本発明のタンパク質は、情報収集及び診断機能のために使用されてもよい。さらに、本発明の細胞毒性タンパク質の非毒性バリアント、又は毒性バリアントは、細胞毒性タンパク質の細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞に追加の外因性物質を送達すること、及び/又はそのような細胞の内部を標識することに使用されてもよい。少なくとも1つの細胞表面に標的生体分子を発現する様々な種類の細胞及び/又は細胞集団は、外因性物質を受け取るために本発明のタンパク質によって標的化されてもよい。本発明の機能的な成分は、モジュール式構造であり、それにおいて、様々な志賀毒素エフェクター領域及び追加の外因性物質が、腫瘍細胞の非侵襲的なインビボでのイメージングなどの多様な適用を提供するために様々な結合領域に連結されていてもよい。
【0190】
それらの非毒性形態を含む本発明のタンパク質は、その結合領域によって認識される細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞に侵入することが可能であることから、本発明のタンパク質の特定の実施形態は、標的化された細胞型の内部に追加の外因性物質を送達するのに使用することができる。ある意味では、本発明のタンパク質全体が細胞に
侵入する外因性物質であり、したがって「追加の」外因性物質は、コアの細胞毒性タンパク質そのもの以外に連結される異種材料である。エピトープ破壊後に非毒性になる脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域は、それでもなお細胞に外因性物質を送達するのに有用であり得る(例えばR179A)。
【0191】
「追加の外因性物質」は、本明細書で使用される場合、一般的にネイティブの標的細胞中に存在しないことが多い1又は2以上の分子を指し、ここで本発明のタンパク質は、このような材料を細胞内部に特異的に輸送するのに使用することができる。追加の外因性物質の非限定的な例は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、小分子の化学療法剤、及び検出促進剤である。
【0192】
特定の実施形態において、追加の外因性物質は、酵素を含むタンパク質又はポリペプチドを含む。特定の他の実施形態において、追加の外因性物質は、核酸であり、例えば低分子阻害RNA(siRNA,small inhibiting RNA)又はマイクロRNA(miRNA,microRNA)として機能するリボ核酸などである。特定の実施形態において、追加の外因性物質は、抗原であり、例えば、細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、がんにおいて変異したタンパク質、がんにおいて異常に発現されたタンパク質、又はT細胞相補性決定領域に由来する抗原などである。例えば、外因性物質としては、抗原、例えば細菌感染した抗原提示細胞に特徴的な抗原、及び外因性抗原として機能することが可能なT細胞相補性決定領域が挙げられる。外因性物質のさらなる例としては、酵素などの抗原性ペプチドよりも大きいポリペプチド及びタンパク質が挙げられる。ポリペプチド又はタンパク質を含む外因性物質は、熟練した作業者にとって公知か又は未知かにかかわらず1又は2以上の抗原を含んでいてもよい。
【0193】
D.診断機能のための情報収集
本発明の特定のタンパク質は、インビトロ及び/又はインビボにおける特異的な細胞、細胞型、及び/又は細胞集団の検出において用途を有する。特定の実施形態において、本明細書で説明されるタンパク質は、診断と治療の両方、又は診断単独に使用される。診断と治療の両方に同じ細胞毒性タンパク質が使用される場合、診断のための検出促進剤を取り入れている細胞毒性タンパク質バリアントは、本明細書で説明される例示的な置換などの1又は2以上のアミノ酸置換を介した志賀毒素エフェクター領域の触媒による不活性化によって非毒性にされてもよい。検出促進剤にコンジュゲートされる本発明の細胞毒性タンパク質の非毒性形態は、診断機能に、例えば同じ又は関連する結合領域を含む治療レジメンと共に使用されるコンパニオン診断に使用されてもよい。
【0194】
当業界において公知の検出促進剤を様々な本発明のタンパク質にコンジュゲートする能力は、がん、腫瘍、免疫及び感染細胞の検出に有用な組成物を提供する。これらの本発明のタンパク質の診断の実施形態は、当業界において公知の様々なイメージング技術及びアッセイを介した情報収集に使用される可能性がある。例えば、本発明のタンパク質の診断の実施形態は、患者又は生検サンプルにおける個々のがん細胞、免疫細胞、又は感染細胞の細胞内のオルガネラ(例えばエンドサイトーシス、ゴルジ、小胞体、及びサイトゾル区画)のイメージングを介した情報収集に使用される可能性がある。
【0195】
様々な種類の情報は、診断での使用のためか又は他の使用のためかにかかわらず、本発明のタンパク質の診断の実施形態を使用して収集することができる。この情報は、例えば、新生細胞のタイプを診断すること、患者の疾患の治療感受性を決定すること、経時的に抗新生物療法の進行をアッセイすること、経時的に免疫調節療法の進行をアッセイすること、経時的に抗菌療法の進行をアッセイすること、移植材料中の感染細胞の存在を評価すること、移植材料中の不要な細胞型の存在を評価すること、及び/又は腫瘤の外科的切除後に残留した腫瘍細胞の存在を評価することにおいて有用であり得る。
【0196】
例えば、本発明のタンパク質の診断用バリアントを使用して収集された情報を使用して患者の部分集団を確認できる可能性があり、そうなれば、個々の患者を、そのような診断の実施形態を使用して解明されたそれらの固有の特徴に基づき部分集団に類別することができる。例えば、具体的な医薬品又は療法の有効性が、患者の部分集団を定義するのに使用される基準の1つのタイプとなる可能性がある。例えば、本発明の特定の細胞毒性タンパク質の非毒性の診断用バリアントは、どの患者が、同じ本発明の細胞標的化分子の細胞毒性バリアントに対して陽性に応答すると予測される患者のクラス又は部分集団に属するのかを識別するのに使用することができる。したがって、本発明の細胞毒性タンパク質の非毒性バリアントを含む本発明の脱免疫化されたタンパク質を使用した患者の同定、患者の層別化、及び診断のための関連方法は、本発明の範囲内であるとみなされる。
【0197】
E.免疫化/ワクチン接種材料及び抗毒素
本発明のポリペプチドは、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドの存在下で特異的なエピトープに対する免疫応答の惹起を促進するための、偏向した免疫化及び/又はワクチン接種材料としての用途を有する。志賀毒素を産生する微生物による感染は、罹患率及び死亡率に関連する(Johannes, Nat Rev Microbiol 8:105-16(2010))。志賀毒素を産生する細菌は、溶血尿毒症症候群(HUS,hemolytic uremic syndrome)及び細菌性赤痢、加えて出血性大腸炎及び下痢などの関連する状態の主な原因である
(Karmali M, Mol Biotechnol 26: 117-22 (2004)を参照)。加えて志賀毒素は、米国疾
病対策予防センター(CDC,Disease Control and Prevention)により、生物兵器として使用されるそれらの可能性のためにカテゴリーBの生物学的脅威物質(biothreat agent)に分類される。
【0198】
志賀ホロトキシン又は志賀毒素サブユニットに対する免疫応答中に惹起された哺乳動物の抗体は、エピトープに応じて中和又は非中和のいずれかであり得る。さらに、志賀毒素を認識する抗体は、どの志賀毒素サブユニットが抗体のエピトープを含むかに応じて異なる中和作用を有する可能性がある(Krautz-Peterson Get al., Infect Immun 76: 1931-9 (2008))。したがって本発明の特定のポリペプチドは、例えば望ましくない非中和抗体を惹起するエピトープ領域などの特定のエピトープ領域とは別に、例えば望ましい中和及び/又は防御抗体を惹起するエピトープなどの他のエピトープに対する哺乳動物の免疫応答を人工的に促進するための方法において有用である。
【0199】
本発明の特定のポリペプチドは、破壊されていないネイティブのエピトープに対する免疫応答の惹起を許容しながら、特異的なエピトープの抗原性及び/又は免疫原性を低下及び/又は消滅させるための方法における、偏向した免疫化及び/又はワクチン接種材料としての用途を有する。志賀毒素Aサブユニットの選択されたエピトープ領域とは別に偏向している抗志賀毒素抗体を生成するために、哺乳動物に関する免疫化技術を使用することができる。
【0200】
加えて、本発明の特定のポリペプチドは、例えば、スクリーニングの選択が志賀毒素Aサブユニットの選択されたエピトープ領域とは別に偏るように志賀毒素に結合する免疫グロブリン型ドメインなどの様々な結合ドメインの生成、同定、及び親和性成熟のための、例えばタンパク質ディスプレイスクリーニング及びインビトロでの選択などの様々なスクリーニング方法で使用することができる(Glockler J et al.,Molecules 15: 2478-90 (2010)、Bradbury A et al., Nat Biotechnol 29: 245-54 (2011)、ChenT, Keating A, Protein Sci 21: 949-63 (2012)、Geyer C etal., Methods Mol Biol 901: 11-32 (2012)を参照)。これらの方法は、他の非標的化エピトープの非存在下で標的化することができない不連続のエピトープを標的化するのに特に有用である。これらの方法は、志賀毒素の毒性を阻害する新規の中和抗体及び非免疫グロブリン型のドメインを生成するのに使用さ
れる(Perera L et al., J Clin Microbiol 26: 2127-31(1988)、Mukherjee J et al., Infect Immun70: 5896-9 (2002)、Smith M et al., InfectImmun77: 2730-40 (2009)
、Rocha L et al., Toxins 4: 729-47 (2012)、Tremblay J et al., Infect Immun 81:4592-603 (2013)、Skinner C et al., PLoSOne 9: e99854 (2014)を参照)。
【0201】
本発明の特定のポリペプチドは、偏向した抗志賀毒素抗体又は抗毒素の作製及び/又は生産のための方法において免疫化材料として使用することができる。志賀毒素のAサブユニットの選択されたエピトープ領域とは別に偏向している抗志賀毒素抗体を生成するために、哺乳動物のための免疫化技術を使用することができる。例えば、本発明の特定のポリペプチドは、志賀毒素のAサブユニットの選択されたエピトープ領域とは別に偏向している抗志賀毒素Aサブユニット抗体を生成するために、免疫化材料として使用することができる。加えて、本発明の脱免疫化された志賀毒素Aサブユニットを志賀毒素のBサブユニットと組み合わせることによって、免疫化技術を使用して、ネイティブの志賀毒素のBサブユニット及び/又はホロトキシン中に存在する志賀毒素サブユニット間の境界に存在するエピトープに偏向した抗志賀毒素抗体を生成することができる。これらの抗志賀毒素抗体は、免疫検出アッセイを含む方法及び志賀毒素中和抗体又は抗毒素の作製のための方法において用途を有する(Mukherjee J et al., Infect Immun 70:5896-9(2002)、SheoranA et al., Infect Immun 71: 3125-30(2003)、Cheng L etal., Toxins 5: 1845-58 (2013)、He X et al., J Immunol Methods 389: 18-28 (2013)、Tremblay J et al., Infect
Immun 81: 4592-603 (2013)を参照)。それゆえに、本発明の特定のポリペプチドは、志
賀毒素中和抗体をよりよく生成するのに使用することができ、次いで志賀毒素中和抗体は、予防剤、治療剤として投与されてもよいし、又は志賀毒素を産生する微生物による感染若しくはその他の志賀毒素への曝露を治療するための予防剤及び/若しくは治療剤に加工されてもよい(Fujii J et al., Microb Pathog 25: 139-46 (1998)、Mukherjee J et al., Infect Immun 70:5896-9 (2002)、Sheoran A et al., Infect Immun 71: 3125-30 (2003)、Gao X et al., Vaccine 29: 6656-63 (2011)、ChengLet al., Toxins 5: 1845-58
(2013)、He X et al., JImmunolMethods 389: 18-28 (2013)、Tremblay J et al.,
Infect Immun 81: 4592-603 (2013)、Vance D et al., JBiolChem 288: 36538-47(2013)を参照)。
【0202】
本発明の特定のポリペプチドは、偏向した抗志賀毒素抗体の作製及び/又は生産のための方法において、ワクチン接種材料として使用することができる。志賀毒素を産生する微生物による将来的な感染若しくはその他の志賀毒素への曝露に対する活性な免疫性を哺乳動物に付与するために、本発明の特定のポリペプチドを含む組成物と共にワクチン接種技術を使用することができる(Bosworth B et al., Infect Immun 64: 55-60(1996)、Rabinovitz B et al., J Dairy Sci 95: 3318-26 (2012)を参照)。ワクチンの設計は、非中
和抗体が対象における防御抗体、中和抗体と干渉する可能性がある非中和抗体よりも、中和抗体を惹起するエピトープ間の差を考慮に入れてもよい。
【0203】
例えば、志賀ホロトキシンに対する5つの抗体の研究において、1つのみが中和活性を示し、この1つがA及びBサブユニットの両方に結合した(He X et al., J Immunol Methods 389: 18-28 (2013))。AB毒素のリシンの場合と同様に、中和抗体は、A及びBサブユニット間の境界を認識し、Aサブユニットフラグメントの遊離を防ぐ(O'Hara J, Mantis N, J Immunol Methods 395: 71-8 (2013))。
【0204】
ワクチン接種目的の場合、主として外来のエピトープ及び/又はホロトキシン構造中のAサブユニットとBサブユニットとの境界にわたるエピトープに対する抗体反応を惹起するようにワクチン材料を偏らせることが、より好都合な可能性がある(O'Hara J, MantisN, J Immunol Methods 395:71-8 (2013)、O'Hara J et al.,CurrTop Microbiol Immunol 357: 209-41 (2012))。例えば、リシンに対するワクチン接種は、非防御抗体、非中和
抗体のみを惹起するネイティブの免疫原性領域をなくすことによって利益を得ていた可能性がある(Olsnes S, Toxicon 44: 361-70 (2004))。同様に、リシンの免疫優性領域
の除去は、特定のエピトープに対する非中和抗体を生産することとは別に(O'Hara J etal.,Vaccine 28: 7035-46 (2010))、又は毒素を強化する抗体を生産することとも別に(MaddaloniMet al., J Immunol 172: 6221-8(2004))、偏向した抗体反応をもたらす可
能性がある。その目的のために、志賀毒素Aの単離された領域内の特定のエピトープの消滅は、望ましくないエピトープを除去して、志賀毒素サブユニットの境界にわたるエピトープなどのより望ましいエピトープの抗体作製を促進することができる。
【0205】
偏向した免疫化及び/又はワクチン接種材料として有用な本発明のポリペプチドは、酵素活性及び/又は細胞毒性などの志賀毒素エフェクター機能の低下及び/又は消滅によって利益を得る可能性がある(He X et al., J Immunol Methods 389: 18-28 (2013)、Skinner C et al., PLoS One 9: e99854(2014))。志賀毒素エフェクター機能の低下又は消
滅は、熟練した作業者に公知又は周知の方法を使用して熟練した作業者により発見された1又は2以上のトランケーション及び/又はアミノ酸置換を使用することによって達成することができる。加えて、志賀毒素エフェクター機能の低下又は消滅は、志賀毒素エフェクターアッセイにおける活性、例えばリボソーム阻害及び標的化された細胞毒性などの弱毒化、著しい低下及び/又は損失を示す、実施例で説明される置換を使用することによって達成される可能性がある。
【0206】
V.脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及びタンパク質のポリペプチド配列におけるバリエーション
熟練した作業者であれば、例えば、抗原性及び/又は免疫原性を示す可能性を低下させる1又は2以上のエピトープ破壊と共に毒素エフェクター領域の全体の構造及び機能を維持することによって、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及びタンパク質、並びに前者のいずれかをコードするポリヌクレオチドに、それらの生物活性を低減させることなくバリエーションをもたらすことができることを理解していると予想される。例えば、いくつかの改変が、発現、精製、並びに/又は薬物動態学的特性及び/若しくは免疫原性を容易にする可能性がある。このような改変は熟練した作業者に周知であり、例えば、開始部位を提供するためのアミノ末端に付加されたメチオニン、都合よく配置された制限部位若しくは終止コドンを作製するためのいずれかの末端に配置された追加のアミノ酸、並びに便利な検出及び/若しくは精製のために提供されるいずれかの末端に融合した生化学的な親和性タグが挙げられる。
【0207】
また、エピトープタグ又は他の部分に関する配列などの、アミノ及び/又はカルボキシ末端における追加のアミノ酸残基の包含も本明細書において検討される。追加のアミノ酸残基は、例えば、クローニングの容易化、発現の容易化、翻訳後修飾、合成の容易化、精製、検出の容易化、及び投与などの様々な目的に使用することができる。エピトープタグ及び部分の非限定的な例は、キチン結合タンパク質ドメイン、エンテロペプチダーゼ切断部位、Xa因子切断部位、FIAsHタグ、FLAGタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP,green fluorescent protein)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ部分、HAタ
グ、マルトース結合タンパク質ドメイン、mycタグ、ポリヒスチジンタグ、ReAsHタグ、strep-タグ、strep-タグII、TEVプロテアーゼ部位、チオレドキシンドメイン、トロンビン切断部位、及びV5エピトープタグである。
【0208】
上記実施形態の特定のものにおいて、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質のポリペプチド配列は、少なくとも1つのアミノ酸が本明細書に示される少なくとも1つの天然位置のエピトープ領域において破壊されている限りは、ポリペプチド領域に導入される1又は2以上の保存的アミノ酸置換で変更される。用語「保存的置換」は、本明細書で使用される場合、1又は2以上のアミノ酸が別の
生物学的に類似するアミノ酸残基で置き換えられることを示す。その例としては、類似の特徴を有するアミノ酸残基、例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸及び芳香族アミノ酸の置換が挙げられる(例えば、下記の表Bを参照)。内因性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質に通常存在しない残基での保存的置換の例は、アルギニン又はリシン残基の、例えばオルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸での保存的置換である。ペプチド及びタンパク質において表現型ではサイレントな置換に関するさらなる情報については、例えば、Bowie J et al., Science 247: 1306-10 (1990)を参照されたい。
【0209】
【0210】
表Bにおける保存的置換のスキームでは、例示的なアミノ酸の保存的置換は、物理化学的な特性によって、I:中性、親水性;II:酸及びアミド;III:塩基性;IV:疎水性;
V:芳香族、嵩高なアミノ酸、VI:親水性で非荷電性、VII:脂肪族で非荷電性、VIII:
非極性で非荷電性、IX:シクロアルケニル結合、X:疎水性、XI:極性、XII:小さい、XIII:ターン許容性、及びXIV:フレキシブルにグループ分けされる。例えば、保存的アミノ酸置換としては、以下:1)Sは、Cで置換されていてもよい;2)M又はLは、Fで置換されていてもよい;3)Yは、Mで置換されていてもよい;4)Q又はEは、Kで置換されていてもよい;5)N又はQは、Hで置換されていてもよい;及び6)Hは、Nで置換されていてもよいことが挙げられる。
【0211】
追加の保存的アミノ酸置換としては、以下:1)Sは、Cで置換されていてもよい;2)M又はLは、Fで置換されていてもよい;3)Yは、Mで置換されていてもよい;4)Q又はEは、Kで置換されていてもよい;5)N又はQは、Hで置換されていてもよい;及び6)Hは、Nで置換されていてもよいことが挙げられる。
【0212】
特定の実施形態において、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質は、それが実施例で示される天然位置のエピトープ領域(表1
、2、3、4、及び/又は5)において少なくとも1つのアミノ酸の破壊を保持する限り、さらにそれが単独で、並びに/又は治療及び/若しくは診断用組成物の成分として、志賀毒素エフェクター機能の有意なレベルを示す限り、本明細書で列挙されたポリペプチド配列と比較して、最大で、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つのアミノ酸置換を有する本発明のポリペプチド領域の機能的なフラグメント又はバリアントを含んでいてもよい。本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質のバリアントは、変化した細胞毒性、変化した細胞増殖抑制作用、変化した免疫原性、及び/又は変化した血清中半減期などの所望の特性を達成するために、例えば結合領域又は志賀毒素エフェクター領域内で、1又は2以上のアミノ酸を変更すること又は1又は2以上のアミノ酸を欠失させるか若しくは挿入することによって、本発明のタンパク質のポリペプチドを変化させる結果として本発明の範囲内である。本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質のポリペプチドはさらに、シグナル配列を含んでいてもよいし、又は含んでいなくてもよい。
【0213】
特定の実施形態において、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質は、それが実施例で示される天然位置のエピトープ領域(表1、2、3、4、及び/又は5)において少なくとも1つのアミノ酸の破壊を保持する限り、本明細書で列挙されたタンパク質のアミノ酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれより高いアミノ酸配列同一性と、測定可能な生物活性、例えば細胞毒性、細胞外標的生体分子の結合、酵素による触媒作用、細胞レベル下の経路決定、又はリボソームの触媒的な不活性化とを共有する。
【0214】
特定の実施形態において、少なくとも1つのアミノ酸が実施例で示される天然位置のエピトープ領域(表1、2、3、4、及び/又は5)で破壊されている限り、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質を変更して、志賀毒素エフェクター領域の酵素活性及び/又は細胞毒性を変化させてもよい。この変化は、変更された志賀毒素エフェクター領域がその成分である志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド又は細胞毒性タンパク質の細胞毒性における変化をもたらす場合もあるし、又はそうでない場合もある。可能性のある変更としては、実施例で示される天然位置のエピトープ領域(表1、2、3、4、及び/又は5)において少なくとも1つのアミノ酸が破壊されている限り、トランケーション、欠失、転位、挿入及び置換からなる群より選択される志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドへの突然変異が挙げられる。
【0215】
志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの細胞毒性は、変異又はトランケーションによって低減又は消去され得る。チロシン-77、グルタメート-167、アルギニン-170、チロシン-114、及びトリプトファン-203と名付けられた位置は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性にとって重要であることが示されている(Hovde C et al.,Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988)、Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992)、Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993)、Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993)、Cao C etal., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994)、Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9(1998))。無細胞リボソーム不活性化アッセイにおいて、グルタメート-167とアルギニン-170の両方を変異させると、Slt-I A1の酵素活性が消去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体でSlt-I A1のデノボ発現を使用する別のアプローチにおいて、グルタメート-167とアルギニン-170の両方を変異させると、Slt-I A1フラグメントの細胞毒性がその発現レベルで消去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。トランケーション分析から、残基75から268までのStxAのフラグメントが、インビトロで有意な酵素活性をなお保持していることが実証された(Haddad, J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1~239を含有す
るSlt-I A1のトランケートされたフラグメントは、インビトロにおいて有意な酵素活性及びサイトゾルにおいてデノボ発現による細胞毒性を示した(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体中の残基1~239にトランケートされたSlt-I A1フラグメントの発現は、サイトゾルにレトロ転移(retrotranslocate)することができないことから、細胞毒性ではなかった(LaPointe,JBiolChem 280: 23310-18 (2005))。
【0216】
志賀毒素のAサブユニットにおける酵素活性及び/又は細胞毒性にとって最も重要な残基は、なかでも以下の残基位置:アスパラギン-75、チロシン-77、チロシン-114、グルタメート-167、アルギニン-170、アルギニン-176、及びトリプトファン-203にマッピングされた(Di, Toxicon 57: 535-39 (2011))。特定には、グル
タメート-E167からリシン、及びアルギニン-176からリシンの変異を含有するStx2Aの二重ミュータントコンストラクトは完全に不活性化され、それに対して、Stx1及びStx2における多くの単一の変異は細胞毒性の10分の1の低下を示した。さらに、Stx1Aの1~239又は1~240へのトランケーションは、その細胞毒性を低下させ、同様に、Stx2Aの保存された疎水性残基へのトランケーションは、その細胞毒性を低下させた。志賀毒素のAサブユニットにおける真核性リボソーム及び/又は真核性リボソーム阻害の結合にとって最も重要な残基は、なかでも以下の残基位置、アルギニン-172、アルギニン-176、アルギニン-179、アルギニン-188、チロシン-189、バリン-191、及びロイシン-233にマッピングされている(McCluskey A et al., PLoS One 7: e31191(2012))。
【0217】
志賀毒素様毒素1のAサブユニットのトランケーションは、インビトロでリボソームを酵素的に不活性化することが可能な場合、触媒活性を示し、細胞内で発現される場合、細胞毒性である(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。完全な酵素活性を示す最小の志賀毒素のAサブユニットフラグメントは、Slt1Aの残基1~239で構成されるポリペプチドである(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。実質的な触媒活性を保持すると報告された志賀毒素のAサブユニットの最小のフラグメントは、StxAの75~247残基であるにもかかわらず(Al-Jaufy, Infect Immun62: 956-60 (1994))、真核細胞内でデノボ発現されたStxAのトランケーションは、サイトゾルに到達してリボソームを触媒的に不活性化させるのに、わずか240残基しか必要としない(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
【0218】
SLT-1A(配列番号1)又はStxA(配列番号2)に由来する本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質の特定の実施形態において、これらの変化は、75位におけるアスパラギン、77位におけるチロシン、114位におけるチロシン、167位におけるグルタメート、170位におけるアルギニン、176位におけるアルギニンの置換、及び/又は203位におけるトリプトファンの置換を包含する。このような置換の例は、従来技術に基づき熟練した作業者に公知であると予想され、例えば、75位におけるアスパラギンからアラニンへの置換、77位におけるチロシンからセリンへの置換、114位におけるチロシンからセリンへの置換、167位におけるグルタメートからグルタメートへの置換、170位におけるアルギニンからアラニンへの置換、176位におけるアルギニンからリシンへの置換、及び/又は203位に
おけるトリプトファンからアラニンへの置換である。志賀毒素の酵素活性及び/又は細胞毒性を強化するか又は低下させるかのいずれかの他の変異は本発明の範囲内であり、周知の技術及び本明細書で開示されたアッセイを使用して決定され得る。
【0219】
本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質は、1又は2以上の追加の薬剤にコンジュゲートされていてもよく、このような薬剤としては、本明細書で説明されるような薬剤を含む当業界において公知の治療剤及び/又は診
断剤を挙げることができる。
【0220】
VI.脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド又はタンパク質の産生、製造、及び精製
本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及びタンパク質は、当業者に周知の生化学工学の技術を使用して産生され得る。例えば、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な合成方法、組換え発現系の使用、又は他のあらゆる好適な方法によって製造され得る。したがって、本発明のポリペプチド及びタンパク質は、多数の方法で合成することが可能であり、このような方法としては、例えば、(1)標準的な固相又は液相の手法を使用して、段階的に又はフラグメントのアセンブリのいずれかによってタンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分を合成するステップと、最終的なペプチド化合物生成物を単離し精製するステップとを含む方法;(2)宿主細胞中の本発明のタンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを発現させるステップと、宿主細胞又は宿主細胞培養から発現生成物を回収するステップとを含む方法;又は(3)インビトロで本発明のタンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを無細胞発現させるステップと、発現生成物を回収するステップとを含む方法;又は(1)、(2)又は(3)の方法のあらゆる組合せによって、ペプチド成分のフラグメントを得て、その後フラグメントを合体させ(例えばライゲートして)ペプチド成分を得て、ペプチド成分を回収する方法が挙げられる。
【0221】
本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド又はタンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド成分を、固相又は液相ペプチド合成の手段によって合成することが好ましい場合がある。本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及びタンパク質は、好適には、標準的な合成方法によって製造されてもよい。したがって、ペプチドは、例えば、標準的な固相又は液相手法で、段階的に又はフラグメントのアセンブリのいずれかによってペプチドを合成するステップと、最終的なペプチド生成物を単離し精製するステップとを含む方法によって合成されてもよい。これに関して、国際公開第1998/11125号パンフレット、又はとりわけFields G et al., Principles and Practice of Solid-Phase PeptideSynthesis (Synthetic Peptides, Grant G, ed.,Oxford University Press, U.K., 2nd ed., 2002)及びそこに記載された合成の実施例を参照して
もよい。
【0222】
本発明の脱免疫化されたポリペプチド及びタンパク質は、当業界において周知の組換え技術を使用して調製(産生及び精製)されてもよい。一般的に、コード化ポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を培養すること、及び細胞培養からポリペプチドを回収することによってポリペプチドを調製するための方法は、例えばSambrook J et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, U.S., 1989)、Dieffenbach C et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., U.S., 1995)で説明されている。本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質を産生するために、あらゆる好適な宿主細胞を使用することができる。宿主細胞は、本発明のポリペプチドの発現を駆動させる1又は2以上の発現ベクターで安定して若しくは一時的にトランスフェクションされた、形質転換された、形質導入された、又は感染した細胞であり得る。加えて、本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質は、変化した細胞毒性、変化した細胞増殖抑制作用、変化した免疫原性、及び/又は変化した血清中半減期などの所望の特性を達成するために、1又は2以上のアミノ酸の変更又は1又は2以上のアミノ酸の欠失若しくは挿入をもたらす本発明のポリペプチド又はタンパク質をコードするポリヌクレオチドの改変によって産生されてもよい。
【0223】
本発明のタンパク質を産生するために選ばれる可能性がある多種多様の発現系がある。例えば、本発明のタンパク質の発現のための宿主生物としては、原核生物、例えば大腸菌(E. coli)及び枯草菌(B. subtilis)、真核細胞、例えば酵母及び糸状菌(S.セレビジエ(S. cerevisiae)、P.パストリス(P. pastoris)、黒麹菌(A. awamori)、及びK.ラクティス(K. lactis)など)、藻類(コナミドリムシ(C. reinhardtii)など)
、昆虫細胞株、哺乳動物細胞(CHO細胞など)、植物細胞株、並びに真核生物、例えばトランスジェニック植物(シロイスナズナ(A. thaliana)及びベンサミアナタバコ(N. benthamiana)など)が挙げられる。
【0224】
したがって、本発明はまた、上記で列挙した方法に従って、本発明のタンパク質の本発明のポリペプチド若しくはポリペプチド成分の一部若しくは全てをコードするポリヌクレオチド、宿主細胞に導入される場合は本発明のポリペプチドの一部若しくは全てをコードすることが可能な本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は本発明のポリヌクレオチド若しくは発現ベクターを含む宿主細胞を使用して、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質を産生するための方法も提供する。
【0225】
組換え技術を使用して宿主細胞又は無細胞系中でポリペプチド又はタンパク質が発現される場合、高純度を有するか又は実質的に均一な調製物を得るために、宿主細胞の要素などの他の成分から所望のポリペプチド又はタンパク質を分離(又は精製)することが有利である。精製は、当業界において周知の方法、例えば遠心分離技術、抽出技術、クロマトグラフ及び画分化技術(例えばゲルろ過によるサイズ分離、イオン交換カラム、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、シリカでのクロマトグラフィー又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEなどによる電荷分離、クロマトフォーカシング、及び汚染物質を除去するためのプロテインAセファロースクロマトグラフィー)、並びに沈殿技術(例えばエタノール沈殿又は硫酸アンモニウム沈殿)によって達成することができる。本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド並びに/又はタンパク質の純度を増加させるために、相当数の生化学精製技術を使用することができる。特定の実施形態において、本発明のポリペプチド及びタンパク質は、ホモ多量体の形態(すなわち2又は3以上の本発明の同一なポリペプチド又はタンパク質のタンパク質複合体)で精製されてもよい。
【0226】
以下の実施例は、本発明のタンパク質を産生するための方法の非限定的な例、加えて本発明の例示的なタンパク質の産生の具体的な、ただし非限定的な態様の説明である。
【0227】
VII.脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド又はタンパク質を含む医薬
及び診断用組成物
本発明は、以下のさらなる詳細で説明される状態、疾患、障害、又は症状(例えばがん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、成長異常、免疫障害、及び微生物感染)の治療又は防止のための医薬組成物において、単独で、又は1又は2以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するためのポリペプチド及びタンパク質を提供する。本発明はさらに、本発明に従って、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は媒体と共に、本発明のポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明のポリペプチド又はタンパク質のホモ多量体及び/又はヘテロ多量体の形態を含んでいてもよい。医薬組成物は、以下のさらなる詳細で説明される疾患、状態、障害、又は症状を治療、緩和又は予防する方法において有用であると予想される。このような疾患、状態、障害、又は症状はそれぞれ、本発明に係る医薬組成物の使用に対して別の実施形態であると想定される。本発明は、さらに、以下でより詳細に説明されるように、少なくとも1つの本発明に係る治療方法で使用するための医薬組成物を提供する。
【0228】
用語「患者」及び「対象」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用され、あらゆる生物、一般的に脊椎動物、例えば少なくとも1つの疾患、障害、又は状態の症状、症候、及び/又は徴候を示すヒト及び動物を指す。これらの用語は、哺乳動物、例えば霊長類の非限定的な例、家畜動物(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、コンパニオンアニマル(例えばネコ、イヌなど)及び実験動物(例えばマウス、ウサギ、ラットなど)を包含する。
【0229】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」及びそれらの文法上の変化形は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチを指す。この用語は、状態、障害若しくは疾患の発病又は進行速度を遅延させること、それに関連する症状を低減又は軽減すること、状態の完全又は部分退縮をもたらすこと、又は上記いずれかのいくつかの組合せを指す場合もある。本発明の目的に関して、有益な又は所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能か又は検出不可能かにかかわらず、症状の低減又は軽減、疾患の程度の減少、疾患の状況の安定化(例えば悪化しないこと)、疾患進行の遅延又は減速、病状の緩和又は一時的緩和、及び寛解(部分又は完全にかかわらず)が挙げられる。「治療する」、「治療すること」、又は「治療」はまた、治療を受けない場合に予測される生存時間と比べて生存を長くすることを意味する場合もある。したがって治療が必要な対象(例えばヒト)は、すでに問題の疾患又は障害に罹っている対象であり得る。用語「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、治療しない場合と比較して病理学的状況又は症状の重症度の増加を阻害又は低減することを包含し、関連する疾患、障害、又は状態の完全な停止を暗に示すことを必ずしも意味するわけではない。腫瘍及び/又はがんに関して、治療は、全体的な腫瘍負荷量及び/又は個々の腫瘍サイズの低減を包含する。
【0230】
本明細書で使用される場合、用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及びそれらの文法上の変化形は、状態、疾患、若しくは障害の発症を予防する、又はその病状を変更するためのアプローチを指す。したがって、「予防」は、防止的又は予防的措置を指す場合もある。本発明の目的に関して、有益な又は所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能か又は検出不可能かにかかわらず、疾患の症状、進行又は発症の予防又は減速が挙げられる。したがって予防が必要な対象(例えばヒト)は、まだ問題の疾患又は障害に罹っていない対象であり得る。用語「予防」は、治療しない場合と比較して疾患の発病を減速させることを包含し、関連する疾患、障害又は状態の永続的な予防を暗に示すことを必ずしも意味するわけではない。したがって状態を「予防すること」又は状態の「予防」は、特定の状況において、状態を発症する危険を低下させること、又は状態に関連する症状の発症を予防若しくは遅延することを指す場合がある。
【0231】
「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、標的の状態を予防若しくは治療すること、又は状態に関連する症状を有利に軽減することなどの対象における少なくとも1つの望ましい治療効果を生じる組成物(例えば治療用組成物又は薬剤)の量又は用量である。最も望ましい治療有効量は、それを必要とする所与の対象について当業者によって選択された特定の治療の望ましい効能を生じると予想される量である。この量は、これらに限定されないが、治療化合物の特徴(活性、薬物動態学、薬力学、及び生物学的利用率など)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患のタイプ、疾患の段階、全般的な身体状態、所与の投薬量に対する反応性、及び薬物療法のタイプなど)、製剤中の薬学的に許容される1又は複数の担体の性質、及び投与経路などの熟練した作業者によって理解されている様々な要因に応じて異なると予想される。臨床及び薬理学分野における熟練者は、慣例的な実験を介して、すなわち化合物の投与に対する対象の応答をモニターし、それに応じて投薬量を調整することによって治療有効量を決定することが可能であると予想される(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro A, ed.
, Mack Publishing Co., Easton, PA, U.S., 19th ed.,1995)を参照)。
【0232】
診断用組成物は、本発明のポリペプチド又はタンパク質及び1又は2以上の検出促進剤を含む。同位体、色素、比色法用の薬剤、コントラスト増強剤、蛍光剤、生物発光剤、及び磁気性の薬剤などの様々な検出促進剤が当業界において公知である。これらの薬剤は、本発明のポリペプチド又はタンパク質にあらゆる位置で取り込まれていてもよい。薬剤の取り込みは、細胞毒性タンパク質のアミノ酸残基を介して、又はリンカー及び/又はキレート化剤を介した連結などの当業界において公知のいくつかのタイプの連結を介していてもよい。薬剤の取り込みは、スクリーニング、アッセイ、診断手順、及び/又はイメージング技術において診断用組成物の存在の検出が可能になるような方法でなされる。
【0233】
本発明の診断用組成物を生産又は製造する場合、本発明のタンパク質は、1又は2以上の検出促進剤に直接的又は間接的に連結されてもよい。情報収集方法のために、例えば生物の疾患、障害、又は状態に対する診断及び/又は予後の適用のために、本発明のポリペプチド又はタンパク質に機能するように連結できる、熟練した作業者に公知の極めて多くの検出促進剤がある(例えばCai W et al., J Nucl Med 48: 304-10 (2007)、NayakT,BrechbielM, Bioconjug Chem 20: 825-41 (2009)、PaudyalPet al.,Oncol Rep 22: 115-9 (2009)、Qiao J et al.,PLoSONE 6: e18103 (2011)、Sano K et al., Breast CancerRes14: R61 (2012)を参照)。例えば、検出促進剤としては、画像を強調する造影剤
、例えば蛍光色素(例えばAlexa680、インドシアニングリーン、及びCy5.5)、同位体及び放射性核種、例えば11C、13N、15O、18F、32P、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu,67Cu、67Ga、68Ga、72As、73Se、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、110In、111In、120I、123I、124I、125I、131I、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、177Lu、186Re、188Re、及び223R;常磁性イオン、例えばクロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)又はエルビウム(III);金属、例えばランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III);超音波コントラスト増強剤、例えばリポソーム;放射線不透物質、例えばバリウム、ガリウム、及びタリウム化合物が挙げられる。検出促進剤は、中間官能基、例えば2-ベンジルDTPA、PAMAM、NOTA、DOTA、TETA、それらの類似体、及び前述のもののいずれかの機能的な均等物のようなキレート化剤を使用することによって直接的又は間接的に取り込まれていてもよい(Leyton J et al., Clin Cancer Res 14: 7488-96 (2008)を参照)。
【0234】
タンパク質に、特に免疫グロブリン及び免疫グロブリンに由来するドメインに様々な検出促進剤を取り込む、取り付ける、及び/又はコンジュゲートするための、熟練した作業者に公知の極めて多くの標準的な技術がある(Wu A, Methods 65: 139-47 (2014))。同
様に、医療分野で一般的に使用される非侵襲的なインビボでのイメージング技術などの熟練した作業者に公知の極めて多くのイメージングアプローチがあり、例えば、コンピューター断層撮影イメージング(CTスキャニング)、光学的イメージング(直接の、蛍光による、及び生物発光によるイメージングなど)、磁気共鳴映像法(MRI,magnetic resonance imaging)、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET,positron emission tomography)、単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT,single-photon emission computed tomography)、超音波、及びX線コンピューター断層撮影イメージングである(総論については、Kaur S et al., Cancer Lett 315: 97-111 (2012)を参照)
。
【0235】
脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド又はタンパク質を含む医薬及び/又は診断用組成物の生産又は製造
本発明のポリペプチド及びタンパク質のいずれかの薬学的に許容される塩又は溶媒和物も、同様に本発明の範囲内である。
【0236】
本発明の内容における用語「溶媒和物」は、溶質(この場合、本発明に係るポリペプチド化合物又はそれらの薬学的に許容される塩)と溶媒との間で形成された規定の化学量論の複合体を指す。それに関して、溶媒は、例えば、水、エタノール、又は別の薬学的に許容される、典型的には小分子の有機種、例えば、これらに限定されないが、酢酸又は乳酸などであり得る。問題の溶媒が水である場合、このような溶媒和物は通常、水和物と称される。
【0237】
本発明のポリペプチド及びタンパク質又はそれらの塩は、典型的には薬学的に許容される担体中に治療有効量の本発明の化合物又はそれらの塩を含む、貯蔵又は投与のために調製された医薬組成物として製剤化されてもよい。用語「薬学的に許容される担体」は、あらゆる標準的な医薬用担体を包含する。治療用途のための薬学的に許容される担体は薬学分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (MackPublishing Co. (A. Gennaro, ed., 1985)で説明される。「薬学的に許容される担体」とし
ては、本明細書で使用される場合、ありとあらゆる生理学的に許容できる、すなわち適合する溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容される担体又は希釈剤としては、経口、直腸、経鼻又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、及び経皮など)投与に好適な製剤で使用されるものが挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる。本発明の医薬組成物で採用される可能性がある好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注射可能な有機エステル、例えばエチルオレエートが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液のケースで求められる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。特定の実施形態において、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば注射又は点滴による)に好適である。選択された投与経路に応じて、細胞毒性タンパク質又は他の医薬成分は、特定の投与経路によって患者に投与されたときに活性細胞毒性タンパク質が遭遇する可能性がある低いpH及び他の天然の不活性化条件の作用から化合物を保護することを意図した材料でコーティングされていてもよい。
【0238】
本発明の医薬組成物の製剤は、単位剤形で便利なように提供されてもよいし、薬学分野において周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。このような形態において、組成物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージ化された調製物、別々の量の調製物を含有するパッケージ、例えば、バイアル又はアンプル中にパケット化された錠剤、カプセル、及び粉末であってもよい。また単位剤形は、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤そのものであってもよいし、又は適切な数のこれらのパッケージ化された形態のいずれかであってもよい。単位剤形は、単回用量の注射可能な形態で、例えばペンの形態で提供されてもよい。組成物は、あらゆる好適な経路及び投与手段に合わせて製剤化されてもよい。皮下又は経皮の投与様式は、本明細書で説明される治療用タンパク質に特に好適であり得る。
【0239】
本発明の医薬組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有していてもよい。微生物の存在の防止は、滅菌手順と、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、
例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含との両方によって確実にすることができる。組成物への等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなども望ましい場合がある。加えて、注射可能な医薬の形態の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる物質の包含によって達成することができる。
【0240】
また本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤を包含していてもよい。例示的な薬学的に許容される抗酸化剤は、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA,butylated hydroxyanisole)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT,butylated hydroxytoluene)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;及び金属キレー
ト剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA,ethylenediamine tetraacetic acid)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などである。
【0241】
別の態様において、本発明は、本発明の異なるポリペプチド及び/若しくはタンパク質、又は前述のもののいずれかのエステル、塩若しくはアミドの1つ又は組合せと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0242】
治療用組成物は、典型的には滅菌されており、製造及び貯蔵条件下で安定である。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序ある構造として製剤化されてもよい。担体は、例えば、水、アルコール、例えばエタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、又はあらゆる好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、当業界において周知の調合の化学に従って、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液のケースで求められる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。特定の実施形態において、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムが組成物において望ましい可能性がある。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンなどの吸収を遅延させる物質を包含させることによって達成することができる。
【0243】
皮内又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液は、典型的には、滅菌希釈剤、例えば注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩;及び張度調節剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロースなどの1又は2以上を包含する。pHは、酸又は塩基、例えば塩酸若しくは水酸化ナトリウム、又はクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩を含む緩衝剤などで調整することができる。このような調製物は、ガラス又はプラスチックで製作された、アンプル、使い捨てのシリンジ又は複数回用量用のバイアル中に封入されていてもよい。
【0244】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて上述した成分の1つ又は組合せを含む適切な溶媒中に本発明のポリペプチド又はタンパク質を必要な量で取り込み、続いて滅菌精密ろ過することによって調製されてもよい。分散液は、分散媒及び上述したものなどの他の成分を含有する滅菌媒体に活性化合物を取り込むことによって調製されてもよい。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末のケースにおいて、調製方法は、それらの滅菌ろ過溶液から任意の追加の望ましい成分に加えて活性成分の粉末を生じる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0245】
本発明のポリペプチド又はタンパク質の治療有効量が、例えば静脈内、皮膚又は皮下注射によって投与するために設計される場合、結合剤は、パイロジェンフリーの非経口的に許容できる水溶液の形態であると予想される。適切なpH、等張性、安定性などを検討して非経口的に許容できるタンパク質溶液を調製するための方法は、当業界における能力の範囲内である。静脈内、皮膚、又は皮下注射にとって好ましい医薬組成物は、結合剤に加えて、等張の媒体、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンゲル注射液、又は当業界で公知の他の媒体を含有すると予想される。また本発明の医薬組成物は、安定剤、保存剤、緩衝液、抗酸化剤、又は当業者に周知の他の添加剤を含有していてもよい。
【0246】
本明細書の他所で説明されるように、本発明のポリペプチド又はタンパク質は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化された送達系を含む放出制御製剤などの、急速な放出から化合物を保護すると予想される担体を用いて調製されてもよい。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような製剤を調製するための多くの方法は特許化されているか、又は一般的に当業者に公知である(例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (Robinson J, ed., Marcel Dekker, Inc., NY, U.S., 1978)を参照)。
【0247】
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、インビボにおいて望ましい分布を確実にするように製剤化されてもよい。例えば、血液脳関門は、多くの大きい及び/又は親水性の化合物を排除する。特定のインビボにおける配置に本発明の治療化合物又は組成物を標的化するために、それらを例えばリポソーム中に製剤化してもよく、ここでリポソームは、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送されることにより標的化された薬物送達を強化する1又は2以上の部分を含んでいてもよい。例示的な標的化部分は、葉酸塩又はビオチン;マンノシド;抗体;界面活性プロテインA受容体;p120カテニンなどを包含する。
【0248】
医薬組成物は、インプラント又は微粒子系として使用するように設計された非経口製剤を包含する。インプラントの例は、エマルジョン、イオン交換樹脂、及び可溶性塩溶液などの高分子又は疎水性成分で構成されるデポ製剤である。微粒子系の例は、マイクロスフェア、微粒子、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子である(例えばHonda M et al., Int J Nanomedicine 8: 495-503 (2013)、Sharma A et al., Biomed Res Int 2013: 960821 (2013)、Ramishetti S,Huang L, Ther Deliv 3:1429-45 (2012)を参照)。放出制御製剤は、イオンに対する感受性を有するポリマー、例えばリポソーム、ポロキサマー407、及びヒドロキシアパタイトなどを使用して調製されてもよい。
【0249】
VIII.ポリヌクレオチド、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明のポリペプチド及びタンパク質のほかにも、本発明のポリペプチド及びタンパク質、又はそれらの機能的な部分をコードするポリヌクレオチドも、本発明の範囲内にある。用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と同等であり、その両方が、デオキシリボ核酸(DNA,deoxyribonucleic acid)のポリマー、リボ核酸(RNA,ribonucleic acid)のポリマー、ヌクレオチド類似体を使用して生成されたこれらのDNA又はRNA
の類似体、並びにそれらの誘導体、フラグメント及びホモログを包含する。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、又は三本鎖であり得る。開示されるポリヌクレオチドは、例えば、RNAコドンの第三の位置で許容されるが異なるRNAコドンとして同じアミノ酸をコードすることが公知のゆらぎを考慮に入れて、例示的な細胞毒性タンパク質をコードすることが可能な全てのポリヌクレオチドを包含するように具体的に開示されている(Stothard P,Biotechniques 28: 1102-4 (2000)を参照)。
【0250】
一態様において、本発明は、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質、又はそれらのフラグメント若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、例えば、タンパク質のアミノ酸配列の1つを含むポリペプチドに対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又はそれよりより高い同一性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を包含し得る。また本発明は、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質、又はそれらのフラグメント若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、又はあらゆるこのような配列のアンチセンス若しくは相補物を含むポリヌクレオチドも包含する。
【0251】
本発明のポリヌクレオチド(又は、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/若しくはタンパク質)の誘導体又は類似体は、とりわけ、例えば、同じサイズのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に対して、又は当業界において公知のコンピューター相同性プログラムによってアライメントが行われる並べられた配列と比較した場合に、少なくとも約45%、50%、70%、80%、95%、98%、又は99%もの同一性で(好ましい同一性は80~99%である)、本発明のポリヌクレオチド、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド、又はタンパク質に実質的に相同な領域を有するポリヌクレオチド(又はポリペプチド)分子を包含する。例示的なプログラムは、Smith T, Waterman M, Adv. Appl. Math. 2: 482-9 (1981)のアルゴリズムを使用するデ
フォルト設定を使用した、GAPプログラム(Wisconsin Sequence AnalysisPackage、
UNIX用バージョン8、Genetics Computer Group、University Research Park、Madison、WI、U.S.)である。また、ストリンジェントな条件下で本発明のタンパク質をコードする配列の相補物にハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドも包含される(例えばAusubel F et al.,Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley& Sons, New York, NY, U.S., 1993)、及び以下を参照)。ストリンジェントな条件は当業者公知であり、Current Protocols in Molecular Biology (JohnWiley& Sons, NY, U.S., Ch.Sec. 6.3.1-6.3.6 (1989))で見出すことができる。
【0252】
本発明はさらに、本発明の範囲内のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質をコードすることが可能なポリヌクレオチドは、発現ベクターを生産するための当業界において周知の材料及び方法を使用して、細菌プラスミド、ウイルスベクター及びファージベクターなどの公知のベクターに挿入されてもよい。このような発現ベクターは、いずれかの選択された宿主細胞又は無細胞発現系(例えば以下の実施例で説明されるpTxb1及びpIVEX2.3)内での検討される本発明の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質の産生を維持するのに必要なポリヌクレオチドを包含すると予想される。特定のタイプの宿主細胞又は無細胞発現系と共に使用するための発現ベクターを含む具体的なポリヌクレオチドは当業者周知であり、それらを慣例的な実験を使用して決定してもよいし、又は購入してもよい。
【0253】
用語「発現ベクター」は、本明細書で使用される場合、1又は2以上の発現単位を含む直鎖状又は環状のポリヌクレオチドを指す。用語「発現単位」は、所望のポリペプチドをコードし、宿主細胞中で核酸セグメントの発現をもたらすことが可能なポリヌクレオチドセグメントを示す。発現単位は、典型的には、転写プロモーター、所望のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、及び転写ターミネーターを含み、全て機能できるように配置される。発現ベクターは、1又は2以上の発現単位を含有する。したがって、本発明の内容において、単一のポリペプチド鎖を含む、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質(例えば、志賀毒素エフェクター領域が遺伝子組換えされたscFv)をコードする発現ベクターは、少なくとも単一のポリペプ
チド鎖のための発現単位を包含し、それに対して例えば2又は3以上のポリペプチド鎖(例えばVLドメインを含む1つの鎖及び毒素エフェクター領域に連結されたVHドメインを含む第二の鎖)を含むタンパク質は、そのタンパク質の2つのポリペプチド鎖それぞれにつき1つずつの少なくとも2つの発現単位を包含する。本発明の多重鎖のタンパク質を発現させるために、各ポリペプチド鎖のための発現単位が、異なる発現ベクターに別々に含有されていてもよい(例えば発現は、各ポリペプチド鎖のための発現ベクターが導入された単一の宿主細胞で達成され得る)。
【0254】
ポリペプチド及びタンパク質の一過性の又は安定な発現を指示することが可能な発現ベクターは当業界において周知である。発現ベクターは、一般的に、これらに限定されないが、以下:それぞれ当業界において周知の、異種シグナル配列又はペプチド、複製起点、1又は2以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列の1又は2以上を包含する。任意の調節制御配列、統合配列、及び採用される可能性がある有用なマーカーは、当業界において公知である。
【0255】
用語「宿主細胞」は、発現ベクターの複製又は発現を維持することができる細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌又は真核細胞(例えば酵母、昆虫、両生類、鳥類、又は哺乳動物細胞)であり得る。本発明のポリヌクレオチドを含むか又は本発明のポリペプチド及び/若しくはタンパク質を産生することが可能な宿主細胞株の作出及び単離は、当業界において公知の標準的な技術を使用して達成することができる。
【0256】
本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド及び/又はタンパク質は、宿主細胞でのより最適な発現などの所望の特性を達成するのにより好適にすることができる、1又は2以上のアミノ酸の変更又は1又は2以上のアミノ酸の欠失若しくは挿入によってポリペプチド及び/又はタンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変することによって生産される、本明細書で説明されるポリペプチド及びタンパク質のバリアント又は誘導体であってもよい。
【0257】
IX.送達デバイス及びキット
特定の実施形態において、本発明は、1又は2以上の本発明の物質の組成物、例えば対象に送達するための医薬組成物を含むデバイスに関する。したがって、1又は2以上の本発明の化合物を含む送達デバイスを使用して、静脈内、皮下、筋肉内又は腹膜内注射;経口投与;経皮投与;肺内又は経粘膜投与;インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ又はマイクロポンプによる投与;又は当業者によって認識される他の手段による投与などの様々な送達方法によって本発明の物質の組成物を患者に投与することができる。
【0258】
また、少なくとも1つの本発明の物質の組成物を含み、包装及び使用説明書を含んでいてもよいキットも本発明の範囲内である。キットは、薬物の投与及び/又は診断の情報収集に有用であり得る。本発明のキットは、少なくとも1つの追加の試薬(例えば、標準、マーカーなど)を含んでいてもよい。キットは、典型的には、キット内容物の意図した使用を表示するラベルを包含する。キットは、サンプル又は対象中で細胞型(例えば腫瘍細胞)を検出するための、又は患者が、本明細書で説明されるような本発明の化合物、組成物又は関連する方法を利用する治療方策に応答するグループに属するかどうかを診断するための試薬及び他のツールをさらに含んでいてもよい。
【0259】
X.脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの医薬及び/若しくは診断用組成物を使用するための方法
一般的に、本発明の目的は、特定のがん、腫瘍、成長異常、免疫障害、又は本明細書で述べられるさらなる病的状態などの疾患、障害、及び状態の予防及び/又は治療において使用することができる薬理活性薬剤、加えてそれを含む組成物を提供することである。し
たがって、本発明は、標的化された細胞の殺滅のために、標的化された細胞に追加の外因性物質を送達するために、標的化された細胞の内部を標識するために、診断の情報を収集するために、及び本明細書で説明されるような疾患、障害、及び状態を治療するために、本発明のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物を使用する方法を提供する。
【0260】
特定には、本発明の目的は、現在のところ当業界において公知の薬剤、組成物、及び/又は方法と比較して一定の利点を有するこのような薬理活性薬剤、組成物、及び/又は方法を提供することである。したがって、本発明は、特定のポリペプチド配列を有するポリペプチド及びタンパク質並びにそれらの医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、配列番号4~59のポリペプチド配列のいずれかが、以下の方法で使用されるタンパク質の成分として具体的に利用される可能性がある。
【0261】
本発明は、細胞を殺滅する方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。本発明のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物を使用して、1又は複数の細胞を特許請求された物質の組成物の1つと接触させたときに特異的な細胞型を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物を使用して、がん細胞、感染細胞、及び/又は血液学的な細胞を含む混合物などの異なる細胞型の混合物中の特異的な細胞型を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物を使用して、異なる細胞型の混合物中のがん細胞を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物を使用して、移植前の組織などの異なる細胞型の混合物中の特異的な細胞型を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物を使用して、治療目的の投与前の組織材料などの細胞型の混合物中の特異的な細胞型を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物を使用して、ウイルス又は微生物に感染した細胞を選択的に殺滅するか、又はそれとは別に細胞表面生体分子などの特定の細胞外標的生体分子を発現する細胞を選択的に殺滅することができる。本発明のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物は、例えば、インビトロ又はインビボのいずれかで組織から不要な細胞型を枯渇させることにおける使用、移植片対宿主病を治療するために免疫応答をモジュレートすることにおける使用、抗ウイルス剤としての使用、抗寄生虫剤としての使用、及び移植組織から不要な細胞型を取り除くことにおける使用などの様々な適用を有する。
【0262】
特定の実施形態において、本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物は、単独で、又は他の化合物又は医薬組成物と組み合わせて、インビトロで、又は対象において、例えば治療が必要な患者においてインビボで細胞集団に投与されると、有力な細胞殺滅活性を示すことができる。特異的な細胞型に対して高親和性の結合領域を使用して酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することによって、生物内の、例えば特定のがん細胞、新生細胞、悪性細胞、非悪性腫瘍細胞、又は感染細胞内の特定の細胞型を特異的且つ選択的に殺滅することに、この有力な細胞殺滅活性を限定することができる。
【0263】
本発明は、それを必要とする患者において細胞を殺滅する方法であって、患者に、少なくとも1つの本発明の細胞毒性ポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0264】
細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、又はそれらの医薬組成物の特定の実施形態を使用して、がん又は腫瘍細胞と物理的に組み合わされていることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者におけるがん細胞を殺滅することができる。用語「がん細胞」又は「癌細胞」は、異常に速い速度の様式で成長し分裂する様々な新生細胞を指し
、当業者には明らかであると予想される。用語「腫瘍細胞」は、悪性及び非悪性細胞の両方を包含する。一般的に、がん及び/又は腫瘍は、治療及び/又は予防を受けることが可能な疾患、障害、又は状態と定義することができる。がん細胞及び/又は腫瘍細胞で構成されるがん及び腫瘍(悪性又は良性のどちらも)は、当業者には明らかであると予想される。新生細胞は、以下:制御不能な成長、分化の欠如、局所的な組織浸潤、血管新生、及び転移の1又は2以上を伴うことが多い。
【0265】
本発明の細胞毒性ポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの医薬組成物の特定の実施形態を使用して、免疫細胞と物理的に組み合わされていることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者における免疫細胞(健康か又は悪性かどうかにかかわらず)を殺滅することができる。
【0266】
本発明の細胞毒性ポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの医薬組成物の特定の実施形態を使用して、感染細胞と物理的に組み合わされていることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者における感染細胞を殺滅することができる。
【0267】
悪性、新生物、又はそれとは別の意味で不要なT細胞及び/又はB細胞の細胞集団(例えば骨髄)を患者から取り出し、次いでT細胞及び/又はB細胞が枯渇した材料を患者に再注入する目的のために、本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物を利用することは、本発明の範囲内である(例えばvan Heeckeren W et al., Br J Haematol 132: 42-55 (2006)を参照;例えばAlpdogan O, van den Brink M, SeminOncol 39: 629-42 (2012)を
参照)。
【0268】
患者から取り出された単離された細胞集団からT細胞及び/又はB細胞をエクスビボで枯渇させる目的で、本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物を利用することは、本発明の範囲内である。1つの非限定的な例において、本発明のタンパク質は、臓器及び/又は組織の移植による拒絶反応を防止するための方法で使用することができ、ここでドナーの臓器又は組織は、臓器からドナーのT細胞及び/又はB細胞を取り除くために、移植前に、本発明の細胞毒性タンパク質又はそれらの医薬組成物で潅流される(例えばAlpdoganO, van denBrink M, Semin Oncol 39: 629-42 (2012)を参照)。
【0269】
また、骨髄及び又は幹細胞移植を受けようとする患者における移植片対宿主病及び耐性の誘発に対する防止策として、ドナー細胞集団からT細胞及び/又はB細胞を枯渇させる目的で本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物を利用することも本発明の範囲内である(例えばvan Heeckeren W et al., Br J Haematol 132: 42-55 (2006)を参照;例えばAlpdogan O, vanden Brink M, Semin Oncol 39: 629-42 (2012)を参照)。
【0270】
本発明の細胞毒性のポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの医薬組成物の特定の実施形態を使用して、感染細胞と物理的に組み合わされていることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者における感染細胞を殺滅することができる。
【0271】
加えて、本発明は、患者において疾患、障害又は状態を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本発明の細胞毒性ポリペプチド若しくはタンパク質、又はそれらの医薬組成物の少なくとも1つの治療有効量を投与するステップを含む方法を提供する。本方法を使用して治療が可能な検討される疾患、障害、及び状態としては、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、成長異常、免疫障害、及び微生物感染が挙げられる。本発明の化合物の「治療上有効な投薬量」の投与は、疾患の症状の重症度の減少、疾患の症状がない期間の頻度及び持続時間の増加、又は疾患の苦しみによる損傷若しくは能力障害の予防をもたらすことができる。
【0272】
本発明の化合物の治療有効量は、投与経路、治療される哺乳動物のタイプ、及び検討される具体的な患者の身体的特性によって決まると予想される。この量を決定するためのこれらの要因及びそれらの関係は、医療分野における熟練した技術者に周知である。この量及び投与方法は、最適な効能を達成するように調整されてもよく、体重、食事、並行して行われる薬物療法のような要因、及び医療分野における当業者に周知の他の要因によって決めてもよい。ヒトでの使用にとって最も適切な投薬量及び用量レジメンは、本発明により得られた結果から導くことができ、適切に設計された臨床試験で確認してもよい。有効な投薬量及び治療プロトコールは、実験動物において低用量で開始して、次いで作用をモニターしながら投薬量を増加させ、同様に投薬レジメンを系統的に変更するという従来の手段によって決定してもよい。所与の対象ごとの最適な投薬量を決定する際に、臨床医により極めて多くの要因を検討に入れることができる。このような検討は当業者公知である。
【0273】
許容できる投与経路は、これらに限定されないが、エアロゾル、経腸、経鼻、眼、経口、非経口、直腸、経膣、又は経皮(例えばクリーム、ゲル又は軟膏の局所投与、又は経皮パッチ手段による)などの当業界において公知のあらゆる投与経路を指す場合がある。「非経口投与」は、典型的には、作用が意図される部位での注射又はそのような部位と連通する注射に関連し、眼窩下、点滴、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹膜内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、クモ膜下、被膜下、皮下、経粘膜、又は経気管投与などが挙げられる。
【0274】
本発明の医薬組成物の投与のために、投薬量範囲は、一般的には、宿主の体重に対して、約0.0001~100ミリグラム/キログラム(mg/kg)及びそれより多く、通常は0.01~5mg/kgであると予想される。例示的な投薬量は、体重1kg当たり0.25mg、体重1kg当たり1mg、体重1kg当たり3mg、体重1kg当たり5mg若しくは体重1kg当たり10mg、又は1~10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療計画は、1日1回若しくは2回の投与、又は週1回若しくは2回の投与、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、月1回、2若しくは3ヶ月毎に1回、又は3~6ヶ月毎に1回である。投薬量は、特定の患者ごとに治療的有用性を最大化するために必要に応じて、熟練した健康管理の専門家によって選択及び再調整が可能である。
【0275】
本発明の医薬組成物は、典型的には、同じ患者に複数の機会で投与されると予想される。1回の投薬間の間隔は、例えば2~5日、1週間、1ヶ月、2若しくは3ヶ月、6ヶ月、又は1年であり得る。また投与間の間隔は、対象又は患者における血中濃度又は他のマーカーの調節に基づいて不規則であってもよい。本発明の化合物のための投薬レジメンは、体重1kg当たり1mg又は体重1kg当たり3mgの静脈内投与を包含し、ここで本化合物は、2~4週間毎に6回の投薬、次いで3ヶ月毎に体重1kg当たり3mg又は体重1kg当たり1mgで投与される。
【0276】
本発明の医薬組成物は、当業界において公知の様々な方法の1又は2以上を使用する1又は2以上の投与経路を介して投与してもよい。熟練した作業者は認識しているものと予想されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて様々であると予想される。本発明のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物のための投与経路としては、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、腹膜内、皮下、脊髄、又は他の非経口投与経路、例えば注射又は点滴による投与経路が挙げられる。他の実施形態において、本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物は、非経口経路、例えば、局所、表皮又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、口腔、経膣、直腸、舌下、若しくは局所での投与経路などによって投与され得る。
【0277】
本発明の治療用ポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物は、当業界において公知の
様々な医療用デバイスの1又は2以上を用いて投与されてもよい。例えば、一実施形態において、本発明の医薬組成物は、無針皮下注射デバイスを用いて投与されてもよい。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例は、当業界において、例えば、制御された速度で送達するための埋め込み型マイクロ点滴ポンプ;経皮投与するためのデバイス;正確な点滴速度で送達するための点滴ポンプ;連続的に薬物送達するための流量可変の埋め込み型点滴デバイス;及び浸透性薬物の送達系などが挙げられる。これらの及び他のこのようなインプラント、送達系、及びモジュールは、当業者公知である。
【0278】
本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物は、単独で、又は1又は2以上の他の治療剤又は診断剤と組み合わせて投与されてもよい。組合せ療法は、治療しようとする特定の患者、疾患又は状態に基づき選択された少なくとも1つの他の治療剤と組み合わされた、本発明の細胞毒性タンパク質又はそれらの医薬組成物を包含していてもよい。他のこのような薬剤の例としては、とりわけ、細胞毒性の抗がん剤若しくは化学療法剤、抗炎症剤若しくは増殖抑制剤、抗微生物剤若しくは抗ウイルス剤、成長因子、サイトカイン、鎮痛薬、治療活性を有する小分子若しくはポリペプチド、単鎖抗体、古典的な抗体若しくはそれらのフラグメント、又は1又は2以上のシグナル伝達経路をモジュレートする核酸分子、及び治療的又は予防的処置レジメンを補足するか又は別の方法でそのようなレジメンにおいて有益な可能性がある類似のモジュレートする治療剤が挙げられる。
【0279】
本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物を用いた患者の治療は、好ましくは、標的化された細胞の細胞死及び/又は標的化された細胞の成長の阻害をもたらす。そのようなものとして、本発明の細胞毒性タンパク質、及びそれらを含む医薬組成物は、標的細胞の殺滅又は枯渇が有益であり得る様々な病理学的障害、例えば、とりわけ、がん、腫瘍、他の成長異常、免疫障害、及び感染細胞を治療するための方法において有用であると予想される。本発明は、細胞増殖を抑制し、新形成、過剰に活性なB細胞、及び過剰に活性なT細胞などの細胞の障害を治療するための方法を提供する。
【0280】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物は、がん、腫瘍(悪性及び良性)、成長異常、免疫障害、及び微生物感染を治療又は予防するのに使用することができる。さらなる態様において、上記のエクスビボの方法を上記のインビボの方法と組み合わせて、骨髄移植のレシピエントにおける拒絶を治療又は予防する方法、及び免疫寛容を達成するための方法を提供することができる。
【0281】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトなどの哺乳動物の対象において悪性腫瘍又は新生物及び他の血液細胞に関連するがんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に本発明の細胞毒性タンパク質又は医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む方法を提供する。
【0282】
本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物は、例えば、不要なT細胞を除去することにおける使用、免疫応答をモジュレートして移植片対宿主病を治療することにおける使用、抗ウイルス剤としての使用、抗菌剤としての使用、及び移植組織から不要な細胞型を取り除くことにおける使用などの様々な適用を有する。本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物は、一般的に抗新生物剤であり、すなわちそれらは、がん又は腫瘍細胞の成長を阻害すること及び/又はそれらの死を引き起こすことによって、新生物又は悪性細胞の発生、成熟、又は蔓延の治療及び/又は予防が可能であることを意味する。
【0283】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物は、B細胞、形質細胞又は抗体が媒介する疾患又は障害、例えば白血病、リンパ腫、骨髄腫、ヒト免疫不全ウイルス関連の疾患、アミロイド症、溶血尿毒症症候群、多発性動脈炎、敗血
症性ショック、クローン病、リウマチ様関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、喘息、シェーグレン症候群、移植片対宿主病、移植片拒絶反応、糖尿病、血管炎、強皮症、及び全身性エリテマトーデスなどを治療するのに使用される。
【0284】
別の態様において、本発明のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物の特定の実施形態は、抗菌剤であり、すなわちそれらは、例えばウイルス、細菌、菌類、プリオン、又は原生動物によって引き起こされる微生物学的な病原性感染の獲得、発達、又は結果の治療及び/又は予防が可能であることを意味する。
【0285】
患者におけるT細胞又はB細胞を殺滅する目的で本発明の細胞毒性タンパク質、又はそれらの医薬組成物を患者に投与することによるT細胞又はB細胞が媒介する疾患又は状態の予防又は治療を提供することは、本発明の範囲内である。この使用法は、移植される材料の源、例えばヒト又はヒト以外の源であるかどうかに関係なく、骨髄移植、幹細胞移植、組織移植、又は臓器移植のために患者を準備又は調整することに適合する。
【0286】
本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物を使用して宿主T細胞の標的化された細胞を殺滅することによって、宿主対移植片病の予防又は治療のために骨髄のレシピエントを提供することは、本発明の範囲内である。
【0287】
本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物は、本発明の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物の治療有効量をそれを必要とする患者に投与することを含むがんの治療方法に利用することができる。本発明の方法の特定の実施形態において、治療されるがんは、骨がん(例えば多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系のがん(例えば脳がん、神経線維腫症、又は膠芽腫)、消化器がん(例えば胃がん又は結腸直腸がん)、生殖細胞がん(例えば卵巣がん及び睾丸がん)、腺がん(例えば膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば鼻咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓から尿道のがん(例えば腎臓がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば基底細胞癌、扁平上皮癌、又は黒色腫)、及び子宮がんからなる群より選択される。
【0288】
本発明のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物は、本発明の細胞毒性タンパク質又は医薬組成物の治療有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む免疫障害の治療方法に利用することができる。本発明の方法の特定の実施形態において、免疫障害は、アミロイド症、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、橋本甲状腺炎、溶血尿毒症症候群、HIV関連の疾患、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、多発性動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ様関節炎、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎からなる群より選択される疾患に関連する炎症に関する。
【0289】
本発明の特定の実施形態は、がん、腫瘍、他の成長異常、免疫障害、及び/又は微生物感染を治療又は予防するための医薬組成物又は医薬品の成分として、本発明のポリペプチド又はタンパク質を使用することである。例えば、患者の皮膚上に現れる免疫障害は、炎症を低下させようとする努力において、このような医薬品で治療され得る。別の例において、皮膚の腫瘍は、腫瘍サイズを低下させるか又は腫瘍を完全になくそうとする努力において、このような医薬品で治療され得る。
【0290】
有益な臨床作用は、本発明の多重的な細胞毒性タンパク質を同じ対象に逐次投与することを含む治療レジメンによって得られる可能性があり、ここで同一な治療剤の連続投与を
含む治療レジメンからの単一の細胞毒性タンパク質に対する持続的な免疫応答の発生を回避するか又は低下させるために、各細胞毒性タンパク質は、異なる領域で脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む。
【0291】
本発明の特定の細胞毒性ポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物は、免疫の破壊(immunolesioning)及びニューロンのトレースなどの分子神経外科適用で使用することが
できる(総論については、Wiley R, Lappi D,Adv Drug Deliv Rev55:1043-54 (2003)
を参照)。例えば、標的化ドメインは、様々なリガンド、例えば神経回路に特異的なGタンパク質共役受容体などのニューロン表面の受容体と結合することによって特異的な神経細胞型を標的化する神経伝達物質及び神経ペプチドから選択又は誘導されてもよい。同様に、標的化ドメインは、ニューロン表面の受容体と結合する抗体から選択又は誘導されてもよい。志賀毒素がそれら自身の逆行性軸索輸送をロバストに指示することから、本発明の特定の細胞毒性タンパク質を使用して、細胞体から遠位の細胞毒性タンパク質注射部位で細胞外標的を発現するニューロンを殺滅することができる(Llewellyn-Smith I et al., J NeurosciMethods 103: 83-90 (2000)を参照)。これらの神経細胞型特異的な標的化細胞毒性ポリペプチド及びタンパク質は、例えば感覚のメカニズムを解明するための神経科学の調査(例えばMishra S, Hoon M, Science 340: 968-71(2013)を参照)、及びパーキンソン及びアルツハイマーなどの神経変性疾患のモデル系を作製すること(例えばHamlinA et al., PLoS One e53472 (2013)を参照)において用途を有する。
【0292】
本発明の特定の実施形態は、新生細胞及び/又は免疫細胞型の内部を標識又は検出するために、本発明のポリペプチド、タンパク質、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用する方法である。本発明の特定のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物の、逆行性細胞内輸送を介して細胞内の特異的な細胞型及び経路に侵入する能力に基づいて、特異的な細胞型の内部区画が、検出のために標識される。これは、患者内のインサイチュの細胞に、又は生物から取り出された細胞及び組織、例えば生検材料に行うことができる。
【0293】
本発明の特定の実施形態は、疾患、状態及び/又は障害に関する情報収集の目的で細胞型の存在を検出するために、本発明のポリペプチド、タンパク質、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用する方法である。本方法は、細胞を診断に十分な量の細胞毒性分子と接触させて、アッセイ又は診断技術によって細胞毒性分子を検出するステップを含む。成句「診断に十分な量」は、利用される特定のアッセイ又は診断技術によって情報収集目的で十分な検出及び正確な測定がもたらされる量を指す。一般的に、インビボでの診断での使用における生物全体にとって診断に十分な量は、対象1kg当たり0.1mg~100mgの非累積用量の、検出促進剤が連結された本発明のタンパク質と予想される。典型的には、これらの情報収集方法で使用される本発明のポリペプチド又はタンパク質の量は、なお診断に十分な量であるという条件で、可能な限り低いと予想される。例えば、生物におけるインビボでの検出の場合、対象に投与される本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物の量は、実行可能なレベルで可能な限り低いと予想される。
【0294】
検出促進剤と組み合わされた本発明のポリペプチド及びタンパク質の細胞型特異的な標的化は、本発明の分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞を検出及びイメージングする方法を提供する。本発明のポリペプチド又はタンパク質を使用する細胞のイメージングは、当業界において公知のあらゆる好適な技術によってインビトロ又はインビボで行ってもよい。診断の情報は、生物の全身イメージングなどの当業界において公知の様々な方法を使用して、又は生物から採取したエクスビボのサンプルを使用して収集してもよい。本明細書において使用される用語「サンプル」は、これらに限定されないが、流体、例えば血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門の分泌物、膣の分泌物、及び精液、並びに生検手順により得られた組織などのあらゆるものを指す。例えば、様々な検出促進剤は、磁気共鳴映像法(MRI)、光学的方法(例えば直接の、蛍光による、
及び生物発光によるイメージング)、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)、単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、超音波、X線コンピューター断層撮影、及び上述のものの組合せなどの技術による、非侵襲的なインビボでの腫瘍イメージングために利用することができる(総論については、Kaur S et al., Cancer Lett 315: 97-111 (2012)を参照)。
【0295】
本発明の特定の実施形態は、がん、腫瘍、及び/又は免疫細胞型の内部を標識又は検出するための診断用組成物として、本発明のポリペプチド、タンパク質、又は医薬組成物を使用する方法である(例えば、Koyama Y et al., Clin Cancer Res 13: 2936-45 (2007)
、Ogawa M et al., Cancer Res 69: 1268-72 (2009)、Yang L et al., Small 5: 235-43 (2009)を参照)。本発明の特定のポリペプチド、タンパク質、及び医薬組成物の、逆行性細胞内輸送を介して細胞内の特異的な細胞型及び経路に侵入する能力に基づいて、特異的な細胞型の内部区画が、検出のために標識される。これは、患者内のインサイチュの細胞に、又は生物から取り出された細胞及び組織、例えば生検材料に行うことができる。
【0296】
本発明の診断用組成物は、疾患、障害、又は状態を本発明の関連医薬組成物によって潜在的に治療可能であると特徴付けるのに使用することができる。本発明の特定の物質の組成物は、患者が、本明細書で説明されるような本発明の化合物、組成物又は関連方法を利用する治療方策に応答するグループに属するのかどうか、又は本発明の送達デバイスの使用に十分な適正があるのかどうかを決定するのに使用することができる。
【0297】
本発明の診断用組成物は、疾患、例えばがんが検出された後、その疾患をより十分に特徴付けるために、例えば遠隔転移、不均質性、及びがん進行のステージをモニターするために使用することができる。疾患、障害又は感染の表現型の評価は、治療の決定をする間の予想及び予測を助けることができる。疾患の再発において、本発明の特定の方法は、局所的な問題か又は全身性の問題かを識別するのに使用することができる。
【0298】
本発明の診断用組成物は、治療剤のタイプ、例えば小分子薬物、生物学的薬物、又は細胞ベースの療法に関係なく、治療剤に対する応答を評価するのに使用することができる。例えば、本発明の診断の特定の実施形態は、腫瘍サイズの変化、数及び分布などの抗原陽性細胞集団の変化を測定すること、又はすでに患者に施された療法によって標的化された抗原とは異なるマーカーをモニターすることに使用することができる(Smith-Jones P etal., Nat. Biotechnol 22: 701-6 (2004)、Evans Met al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108: 9578-82(2011)を参照)。
【0299】
細胞型の存在を検出するのに使用される方法の特定の実施形態は、例えば骨がん(例えば多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系のがん(例えば脳がん、神経線維腫症、又は膠芽腫)、消化器がん(例えば胃がん又は結腸直腸がん)、生殖細胞がん(例えば卵巣がん及び睾丸がん)、腺がん(例えば膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば鼻咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓から尿道のがん(例えば腎臓がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば基底細胞癌、扁平上皮癌、又は黒色腫)、子宮がん、AIDS、アミロイド症、強直性脊椎炎、喘息、自閉症、心臓発生、クローン病、糖尿病、エリテマトーデス、胃炎、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、溶血尿毒症症候群、HIV関連の疾患、紅斑性狼瘡、リンパ増殖性障害、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎症、多発性動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ様関節炎、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、血管炎、細胞増殖、炎症、白血球活性化、白血球接着、白血球走化性、白血球成熟、
白血球遊走、ニューロンの分化、急性リンパ芽球性白血病(ALL,acute lymphoblasticleukemia)、T急性リンパ性白血病/リンパ腫(ALL)、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML,acutemyeloid leukemia)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL,B-cellchronic lymphocytic leukemia)、B細胞前リンパ球性リンパ腫、バーキ
ットリンパ腫(BL,Burkitt's lymphoma)、慢性リンパ球性白血病(CLL,chronic lymphocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML-BP,chronic myelogenous leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML,chronicmyeloid leukemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病(HCL,hairy cell leukemia)
、ホジキンリンパ腫(HL,Hodgkin's Lymphoma)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ形質細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM,multiple myeloma)、ナチュラルキラー細胞白血病、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL,Non-Hodgkin's lymphoma)、プラズマ細胞性白血病、形質細胞腫、原発性滲出液リンパ腫、前リンパ球性白血病、前骨髄球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(TCL,T-cell lymphoma)、重鎖病、単クローン性免疫グロブリン血症、単クローン性免疫グロブリン沈
着症、骨髄異形成症候群(MDS,myelodusplastic syndrome)、くすぶり型多発性骨髄腫、及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症などの疾患、障害、及び状態に関する情報を収集するのに使用することができる。
【0300】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド及びタンパク質、又はそれらの医薬組成物は、診断と治療の両方、又は診断単独に使用される。
【0301】
本発明のポリペプチドは、選択されたエピトープ領域における破壊の存在に基づき特異的なエピトープに対する免疫応答を惹起するための免疫化材料としての用途を有する。本発明のポリペプチドは、哺乳動物に投与するための免疫化材料として使用することができ、及び/又は志賀毒素を認識する免疫グロブリンドメインを生成するためのディスプレイスクリーニングにおいて使用することができる。
【0302】
志賀毒素ファミリーメンバーのAサブユニットに由来する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域と、特異的な細胞型と物理的に組み合わされた細胞外標的生体分子と結合することが可能な結合領域とを含む、選択的に細胞毒性のタンパク質の以下の非限定的な例によって、本発明をさらに例示する。
[実施例]
【0303】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を証明する。しかしながら、これらの実施例は例示目的のためのものに過ぎず、本発明の条件及び範囲に関して全体的に明確であると意図されるものではなく、解釈されるべきでもないと理解される。以下の実施例における実験は、そうでなければ詳細に説明される場合を除いて、当業者には周知であり、日常的である標準的な技術を用いて実行された。
【0304】
哺乳動物における治療及び診断適用のために志賀毒素に由来するポリペプチド領域を改善するために、哺乳動物のB細胞媒介免疫応答を弱める目的で、毒素エフェクター領域全体にわたる予測されたB細胞エピトープを系統的に破壊した。多重的な志賀毒素のAサブユニットを表すアミノ酸配列を分析して、推定上の抗原性及び/又は免疫原性エピトープを同定した。コンピューターによるツールを使用して、公共的に利用可能なタンパク質データベースの構造データを考慮に入れて、B細胞及びT細胞エピトープを予測した。エピトープ予測を実験的に検証した。様々な脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを、ネイティブの志賀毒素Aサブユニット中に存在するエピトープの損失と志賀毒素エフェクター機能の保持に関して実験的に試験した。様々な細胞毒性タンパク質の成分としての例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの生物活性を、本明細書
では「野生型」又は「WT」と称される脱免疫化されていない志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞毒性タンパク質と比較した。
【0305】
以下の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの実施例は、様々な細胞毒性タンパク質の成分としての志賀毒素エフェクター機能の保持を実証する。例示的な細胞毒性タンパク質は、標的化された細胞型によって発現された標的生体分子に結合し、標的化された細胞に侵入した。内在化した細胞毒性タンパク質は、それらの脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域をサイトゾルに効果的に経路決定してリボソームを不活性化し、その後、野生型志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タンパク質と類似して標的化された細胞のアポトーシスによる死をもたらした。さらに、以下の実施例は、多重的なエピトープ破壊を、志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド中で組み合わせることにより、有力な細胞毒性を保持しながら、本発明の細胞毒性タンパク質の全体的な抗原性及び/又は免疫原性を低下させることができることを実証する。
【実施例1】
【0306】
志賀毒素Aサブユニットにおける免疫原性及び抗原エピトープの予測
志賀毒素のAサブユニット内の抗原性及び/又は免疫原性部位は、これまで系統的にマッピングされていなかった。コンピューターによる方法を利用して、様々な志賀毒素Aサブユニットにおける抗原性及び/又は免疫原性エピトープを予測した。哺乳動物の免疫系において応答を惹起する可能性があるB細胞エピトープとCD4+T細胞エピトープの両方をインシリコで予測した。
【0307】
ProImmune Inc.社(Sarasota、FL、U.S.)により、それらのREVEAL(登録商標)システムを使用して、志賀毒素様毒素鎖A(PDB番号:1DM0_A)のポリペプチド配列及び3次元構造データから、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(SLT-1A;配列番号1)に関して、直鎖状B細胞エピトープを予測した。
【0308】
平行して、志賀毒素のAサブユニット(StxA;配列番号2)、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A;配列番号1)、及び志賀毒素様毒素2のAサブユニット(Stx2A;配列番号3)のアミノ酸配列から、BcePredウェブサーバー(SahaS, Raghava G,LectureNotes in ComputSci 3239: 197-204 (2004))、Bepipred Linearエピ
トープ予測(Larsen J et al., Immunome Res 2: 2 (2006))、及びElliPro抗体エピトープ予測(HasteAndersen P etal.,Protein Sci 15: 2558-67 (2006)、Ponomarenko J,Bourne P,BMC Struct Biol 7: 64 (2007))を使用して、B細胞エピトープを予測した。様々なコンピューターによる方法によって、3つの原型的な志賀毒素AサブユニットにおけるB細胞エピトープ領域に関して類似の予測が明らかになった(表1~3)。
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
以前の配列アライメント研究では、中和抗体と結合するリシン中のエピトープに基づき抗原性及び/又は免疫原性である可能性がある志賀毒素Aサブユニットにおける免疫エピトープ領域が予測された(Lebeda F, Olson M,Int J Biol Macromol 24: 19-26 (1999)
、Zemla A, Ecale Zhou C, BioinformBiol Insights 2:5-13(2008))。StxAにお
いておよそ残基90~107及びStx2Aにおいておよそ残基112~129の保存された免疫原性エピトープが存在する可能性があることが予測された(Zemla A, Ecale Zhou C,Bioinform BiolInsights 2: 5-13 (2008))。しかしながら、この予測は、広く認
められている通り、植物性毒素リシンと細菌性の志賀毒素との間の主要な差、例えばリシンと志賀毒素間の大量の配列の変動、志賀毒素のAサブユニットにおけるN末端アルファへリックスの欠如などのために信頼できるものではなく、さらにリシンと比較して志賀毒素では、予測された領域はより短く、溶媒露出がより少ない((Fraser M et al., Nature
Struct Biol 1: 59 (1994)、Lebeda F, Olson M, Int J Biol Macromol 24: 19-26(1999)、Zemla A, Ecale Zhou C,BioinformBiol Insights 2: 5-13 (2008))。
【0313】
米国の国立アレルギー感染症研究所(NIAID,National Institutes of Allergyand Infectious Diseases)によって企画された免疫エピトープデータベース(IEDB,Immune Epitope Database)は、志賀毒素の全ての実験的に特徴付けられたB及びT細胞
エピトープを提供するといわれている。現在のところ、IEDBは、唯一の志賀毒素Aサブユニット(Stx2dA)に関する唯一のエピトープ:IEDB識別番号110493を提供しており、これは、アミノ酸42~49、96~100、及び245~260を含む実験的に決定された不連続のB細胞エピトープである(Smith M et al., Infect Immun77: 2730-40 (2009))。
【0314】
以下の実施例で、SLT-1Aにおいて1つより多くの方法によって同定された9つの予測されたB細胞エピトープ領域(表4)を破壊した。
【0315】
【0316】
加えて、B細胞エピトープ及び免疫原性の残基を予測するためのEpitopiaウェブサーバーを使用して志賀毒素のAサブユニットを分析した(Rubinstein N et al., BMC Bioinformatics 10: 287 (2009))。Epitopiaを使用して、直鎖状アミノ酸残基ストレッチにおけるアミノ酸残基の大部分にわたり4又は5(「高い」)のEpitopiaスコアに基づき、SLT-1Aにおいて免疫原性であることが予測される直鎖状アミノ酸残基領域を同定した。Epitopia分析から、免疫原性領域は、SLT-1Aにおいてアミノ酸残基1~15に存在することが予測された(以下でエピトープ領域0と称される。下記の表5を参照)。Epitopia分析に基づき、SLT-1Aにおける免疫原性エピトープ領域2(表4を参照)は、49位を包含する可能性がある。Epitopia分析に基づき、SLT-1Aにおける免疫原性エピトープ領域3(表4を参照)は、53位を包含し、およそ62~66位まで伸長する可能性があり(以下でエピトープ領域3*と称される。下記の表5を参照)、SLT-1Aにおけるエピトープ領域4(表4を参照)は、94位を包含する可能性があり(以下でエピトープ領域4*と称される。下記の表5を参照)、SLT-1Aにおけるエピトープ領域6(表4を参照)は、179位から始まり、およそ188~190位まで伸長する可能性がある(以下でエピトープ領域6*と称される。下記の表5を参照)。星印の付いたB細胞エピトープ領域は全て、同じ数値の識別子を有するそれら各々の重複領域を完全に包含することに留意されたい。
【0317】
これらの10のエピトープ領域(番号0~9)を、予測されたCD4+T細胞エピトープとの重複に関して比較した。ProImmuneInc.社(Sarasota、FL、U.S.)によって行われ
たREVEAL(商標)免疫原性システム(IS,ImmunogenicitySystem)T細胞アッセイに
よって、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)に関してT細胞エピトープを予測した。このアッセイは、対象のタンパク質からの複数の重複するペプチド配列を使用して、CD8+T細胞を枯渇させた健康なドナー細胞サンプルからのCD4+T細胞によるあらゆる免疫応答の惹起を試験する。13種の予測されたB細胞エピトープ領域のうち、それら全てが少なくとも1つの予測されたCD4+T細胞エピトープと重複した(表5)。以下の実施例において、表5に記載の予測されたB細胞エピトープ領域は全て、
個々に又は組み合わせて破壊又は欠失されていた。
【0318】
【実施例2】
【0319】
志賀毒素エフェクターポリペプチドの脱免疫化
志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来する志賀毒素エフェクターポリペプチドの推定上のB細胞及びT細胞エピトープ中に、欠失及び/又はアミノ酸置換を作製した。一部のコンストラクトは、予測されたエピトープを破壊した記載された点突然変異に加えて、志賀毒素エフェクターの酵素活性又は細胞毒性への明確な作用がない1又は2以上の点突然変異、例えばSLT-1AにおけるR223A、SLT-1AにおけるC242S、及び/又はSLT-1AにおけるC261Sなどを含んでいた。
【0320】
この実施例において、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来した。SLT-1Aのアミノ酸1~251をコードしたポリヌクレオチドをテンプレートとして使用して、予測されたB細胞エピトープの1又は2以上の破壊を有する様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドをコードする様々なポリヌクレオチドを作製した。これらのポリヌクレオチドから1又は2以上のエピトープ破壊を含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを発現させて、どの破壊が、本発明の細胞毒性タンパク質の状況において様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドを最も効果的に脱免疫化する可能性があるかを調査した。
【0321】
SLT-1Aのカルボキシ末端を配列番号1のアミノ酸1~251にトランケートすることにより、最後の2つのB細胞エピトープ領域(表5の8番及び9番)、最後の2つのCD4+T細胞エピトープ領域(表5、8番及び9番)、及びElliProによって予測され
た最も高くスコア付けされた不連続のB細胞エピトープ(289~293)が除去された
。加えて、251位でのトランケーションは、推定上のB細胞及びT細胞エピトープを含む第7のエピトープ領域を破壊する可能性がある(表5)。
【0322】
合理的に選択されたアミノ酸置換(表6を参照)を、当業界において公知の方法を使用して、配列番号1のアミノ酸1~251を含むトランケートされた志賀毒素エフェクターポリペプチドで作製した。エピトープ領域番号0(表5を参照)において、少なくとも7つの異なるアミノ酸置換を作製して、試験した(表6を参照)。エピトープ領域番号0において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では1位に配置されたリジンを、メチオニン(K1M))に変異させた。エピトープ領域番号0において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では4位に配置されたスレオニンを、イソロイシン(T4I)に変異させた。エピトープ領域番号0において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では8位に配置されたセリンを、イソロイシン(S8I)に変異させた。エピトープ領域番号0において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では9位に配置されたスレオニンを、イソロイシン(T9I)及びバリン(T9V)に変異させた。エピトープ領域番号0において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では11位に配置されたリジンを、アラニン(K11A)及びヒスチジン(K11H)に変異させた。エピトープ領域番号0において変異した以下の5つのアミノ酸残基:K1、T4、S8、T9、及びK11は、Epitopiaウェブサーバーによって、溶媒に露出していることが予測された。
【0323】
エピトープ領域番号1(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では33位に配置されたセリンを、イソロイシン(S33I)に変異させた。
【0324】
エピトープ領域番号2(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)において天然では45位に配置されたセリンを、バリン(S45V)及びイソロイシン(S45I)に変異させた。エピトープ領域番号2(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)において天然では47位に配置されたアスパラギン酸を、グリシン(D47G)に変異させた。エピトープ領域番号2(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)において天然では48位に配置されたアスパラギンを、バリン(N48V)及びフェニルアラニン(N48F)に変異させた。
【0325】
エピトープ領域番号3*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では53位に配置されたアスパラギン酸を、アラニン(D53A)、グリシン(D53G)、及びアスパラギン(D53N)に変異させた。D53残基は、Epitopiaウェブサーバーによって、溶媒に露出しており、5又は「高」の免疫原性スケール値を有することが予測された。エピトープ領域番号3及び番号3*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では55位に配置されたアルギニンを、アラニン(R55A)、バリン(R55V)、及びロイシン(R55L)に変異させた。エピトープ領域番号3及び番号3*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では58位に配置されたアスパラギン酸を、アラニン(D58A)、バリン(D58V)、及びフェニルアラニン(D58F)に変異させた。エピトープ領域番号3及び番号3*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では59位に配置されたプロリンを、アラニン(P59A)に変異させた。エピトープ領域番号3及び番号3*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志
賀毒素(配列番号2)において天然では60位に配置されたグルタメートを、イソロイシン(E60I)、スレオニン(E60T)、及びアルギニン(E60R)に変異させた。エピトープ領域番号3及び番号3*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では61位に配置されたグルタメートを、アラニン(E61A)、バリン(E61V)、及びロイシン(E61L)に変異させた。エピトープ領域番号3及び番号3*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では62位に配置されたグリシンを、アラニン(G62A)に変異させた。
【0326】
エピトープ領域番号4*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では94位に配置されたアスパラギン酸を、アラニン(D94A)に変異させた。このD94残基は、Epitopiaウェブサーバーによって、溶媒に露出しており、5又は「高」の免疫原性スケール値を有することが予測された。エピトープ領域番号4及び番号4*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では96位に配置されたセリンを、イソロイシン(S96I)に変異させた。エピトープ領域番号4及び番号4*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では109位に配置されたセリンを、バリン(S109V)に変異させた。エピトープ領域番号4及び番号4*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では110位に配置されたグリシンを、アラニン(G110A)に変異させた。エピトープ領域番号4及び番号4*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では112位に配置されたセリンを、バリン(S112V)に変異させた。
【0327】
エピトープ領域番号5(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では147位に配置されたグリシンを、アラニン(G147A)に変異させた。
【0328】
エピトープ領域6*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では179位に配置されたアルギニンを、アラニン(R179A)に変異させた。このR179残基は、Epitopiaウェブサーバーによって、露出しており、5又は「高」の免疫原性値を有することが予測された。エピトープ領域番号6及び番号6*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では180位に配置されたスレオニンを、グリシン(T180G)に変異させた。エピトープ領域番号6及び番号6*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では181位に配置されたスレオニンを、イソロイシン(T181I)に変異させた。エピトープ領域番号6及び番号6*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では183位に配置されたアスパラギン酸を、アラニン(D183A)及びグリシン(D183G)に変異させた。エピトープ領域番号6及び番号6*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では184位に配置されたアスパラギン酸を、アラニン(D184A)又はフェニルアラニン(D184F)に変異させた。エピトープ領域番号6及び番号6*(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では185位に配置されたロイシンを、バリン(L185V)に変異させた。エピトープ領域番号6及び番号6*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では186位に配置されたセリンを、アラニン(S186A)及びフェニルアラニン(S18
6F)に変異させた。エピトープ領域番号6及び番号6*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では187位に配置されたグリシンを、アラニン(G187A)に変異させた。エピトープ領域番号6及び番号6*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では188位に配置されたアルギニンを、アラニン(R188A)及びロイシン(R188L)に変異させた。エピトープ領域番号6及び番号6*において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では189位に配置されたセリンを、アラニン(S189A)に変異させた。
【0329】
エピトープ領域番号7(表5を参照)において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では248位に配置されたアルギニンを、アラニン(R248A)に変異させた。エピトープ領域番号7において、志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では251位に配置されたアルギニンを、アラニン(R251A)に変異させた。
【0330】
志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では49位に配置されたロイシンを、アラニン(L49A)に変異させた。このL49残基は、Epitopiaウェブサーバーによって、溶媒に露出しており、4の免疫原性値を有することが予測された。志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)において天然では205位に配置されたアルギニンを、アラニン(R205A)に変異させた。このR205残基は、Epitopiaウェブサーバーによって、溶媒に露出しており、5又は「高」の免疫原性値を有することが予測された。
【0331】
【0332】
アミノ酸置換を含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを、細胞を標的化する結合領域を有する推定上の細胞毒性タンパク質の成分として試験した。細胞毒性タンパク質は、一緒に連結されて融合タンパク質を形成する免疫グロブリン型の結合領域と志賀毒素エフェクター領域とを含んでいた。これらの推定上の細胞毒性融合タンパク質を、当業界において公知の細菌系を使用してそれらをコードするポリヌクレオチドから発現させることによって生産した。
【実施例3】
【0333】
1又は2以上の志賀毒素エフェクター機能の保持に関して脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの実験的試験
様々な脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを、酵素活性及び細胞毒性の保持に関して実験的に試験した。
【0334】
脱免疫化後における志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性の保持を、志賀毒素エフェクターポリペプチドが細胞毒性タンパク質の成分であるという状況でリボソーム阻害アッセイを使用して試験した。特定の実験で、検出及び精製を容易にするために、この実施例の細胞毒性タンパク質の全長コード配列は、Strep-tag(登録商標)IIをコードす
るポリヌクレオチドを始めと終わりに有していた。
【0335】
脱免疫化された細胞毒性タンパク質のリボソームの不活性化能力は、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translationキット(L1170Promega社、Madison、WI、U.S.
)を用いた無細胞の、インビトロでのタンパク質翻訳アッセイを用いて決定した。このキットには、LuciferaseT7Control DNA(L4821 Promega社、Madison、WI、U.S.)及びTNT
(登録商標)Quick Master Mixが含まれる。リボソーム活性反応は製造業者の説明書に従って調製した。変異した志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む、被検タンパク質の10倍希釈系列は適切な緩衝液中で調製し、同一のTNT反応混合物成分系列を各希釈液
について作製した。希釈系列中の各試料は、Luciferase T7 Control DNAと共に各TNT反応混合物と合わせた。被験試料を30℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、Luciferase Assay試薬(E1483 Promega社、Madison、WI、U.S.)を全ての被験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質翻訳量を製造業者の説明書に従って発光により測定した。翻訳阻害のレベルを、相対発光単位に対する総タンパク質の対数変換された濃度の非線形回帰分析により決定した。統計ソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を用いて、見出し用量応答阻害の下でlog(阻害剤)対応答(3つのパラメ
ータ)のPrismソフトウェア関数[Y=最低値+((最高値-最低値)/(1+10^(
X-LogIC50)))]を用いて最大半量阻害濃度(IC50)値を各試料について計算した。脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む各タンパク質及び内部エピトープ破壊がない野生型志賀毒素エフェクター領域を含む対照タンパク質のIC50を計算した。
【0336】
表7に、リボソーム阻害を示した例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を表示する。表7で報告されるように、野生型SLT-1A対照コンストラクトの10倍以内のIC50を示す置換を含むコンストラクトは、野生型に匹敵するリボソーム阻害活性を示すとみなされ、野生型SLT-1A対照の10倍~100倍IC50を示すコンストラクトは、野生型と比較して減弱された活性を示すとみなされ、野生型SLT-1A対照の100倍より大きいIC50を示すコンストラクトは、著しく能力が損なわれたか又は不活性であるとみなされる(著しく能力が損なわれた/不活性)。
【0337】
【0338】
発現されて、標的細胞(すなわち「標的を発現する細胞」又は「標的生体分子陽性細胞」)の細胞表面に発現し、物理的に組み合わされた細胞外標的生体分子に特異的に且つ高親和性で結合することが可能な結合領域を有する、細胞毒性タンパク質の成分としての志賀毒素エフェクターポリペプチドという状況で、脱免疫化後の様々な例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性活性の保持を、標的細胞殺滅アッセイを使用して試験した。脱免疫化された細胞毒性タンパク質の細胞毒性レベルを、標的を発現する細胞を使用して、細胞毒性タンパク質の結合領域の標的生体分子を発現しない細胞と比較して決定した。
【0339】
標的を発現する細胞を384ウェルプレート中の20μLの細胞培養液に播種した(接着細胞はウェル当たり2×103細胞、タンパク質追加の前の日に播種し、浮遊細胞はウェル当たり7.5×103細胞、タンパク質追加と同じ日に播種した)。試験対象の変異志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む各タンパク質の10倍希釈系列を適切な緩衝液で調製し、5μLの希釈液又は緩衝液対照を細胞に加えた。培地のみを含む対照のウェルを、ベースライン補正に用いた。細胞試料を、タンパク質又は緩衝液のみと共に、37℃で3日間、5%二酸化炭素(CO2)の雰囲気中でインキュベートした。全細胞生存
又は生存率を、製造業者の説明書に従って、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent CellViabilityAssay(G7573 Promega社、Madison、WI、U.S.)を用いる発光読み出しを用
いて決定した。
【0340】
実験ウェルの生存率を、以下の式:(試験RLU-平均培地RLU)/(平均細胞RLU-平均培地RLU)*100を用いて計算した。Logポリペプチド濃度対生存率を、Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)中にプロットし、log(阻害剤)対応答(3つのパラメーター)分析を用いて、被検タンパク質に関する最大半量細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド及び内部エピトープ破壊がない野生型対照タンパク質を含む各タンパク質のCD50を計算した。
【0341】
表8に、例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の細胞毒性を表示する。表8で報告されるように、野生型SLT-1A対照コンストラクトの10倍以内のCD50を示す置換を含むコンストラクトは、野生型に匹敵する細胞毒性を示すとみなされ、野生型SLT-1A対照の10倍~100倍のCD50を示すコンストラクトは、野生型と比較して減弱された細胞毒性を示すとみなされ、野生型SLT-1A対照の100倍より大きいCD50を示すコンストラクトは、著しく能力が損なわれた/不活性であるとみなされる。
【0342】
【0343】
用語「成功した」は、予測されたエピトープ領域における1又は2以上のアミノ酸残基置換によって、1又は2以上の志賀毒素エフェクター機能を保持した志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドが得られたことを意味するのに使用される。同じエピトープ領域(番号6及び6*)において個々に成功した3つの置換(D183A、D184A、及びR188A)を組み合わせて、野生型に匹敵する志賀毒素エフェクター機能を保持する脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド(D183A/D184A/R188A)を生成した(表7及び8)。これらの結果から、志賀毒素エフェクターポリペプチドの同じエピトープ領域におけるいくつかの成功したアミノ酸置換を組み合わせて、有意なレベルの1又は2以上の志賀毒素エフェクター機能をなお保持しつつもより大規模に全体的なエピトープ破壊がなされたエピトープ破壊を作製できることが示唆される。同様に、エピトープ領域番号0と番号4及び4*はどちらも、それら各々の領域内に多重的なアミノ酸置換をうまく許容した(表7及び8:K1M/K11A及びD94A/S96I)。これは、同じエピトープ領域における様々な例示的な置換を組み合わせて、有意なレベルの1又は2以上の志賀毒素エフェクター機能をなお保持しつつもより大規模に全体的なエピトープ破壊がなされたエピトープ破壊を作製できるという概念を強化した。
【0344】
加えて、他の志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを、本明細書における実施例で説明したような方法を使用して志賀毒素エフェクター機能及びエピトープ破壊に関して試験したところ、志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、単一の予測されたB細胞エピトープ領域内に多重的なアミノ酸置換を含んでいた。試験された領域は、以下の志賀毒素様毒素1の成熟Aサブユニット(配列番号1)及び志賀毒素(配列番号2)中に存在する天然位置の領域:4~12、43~52、53~61、104~112、及び180~188であった。これらの単一の領域に多重的な置換を有するコンストラクトを、SLT-1A(配列番号1)の残基1~251を含む志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タンパク質という状況において、様々な組合せで作製した。これらのコンストラクトは、野生型SLT-1Aのエフェクターコンストラクトに匹敵するリボソーム阻害を保持し、標的細胞に対して選択的に細胞毒性であった。これらのコンストラクトは、単一の領域に、以下のアミノ酸置換:領域4~12:T4I、T9V、及びK11H;領域43~52:S45V、D47G、N48V、N48F、及びL49A;領域53~61:D53G、D53N、R55V、R55L、D58V、E60T、E61V及びE61L;領域104~112:S109V、G110A、及びS112V;領域180~188:T180G、T181I、D183G、L185V、S186F、及びR188Lの1又は2以上を他のアミノ酸置換との様々な組合せで含んでいた。加えて、これらのコンストラクトのウェスタン分析から、野生型SLT-1Aを認識することができる1又は2以上の抗体(実施例4で説明されるmAb1、pAb1、及びpAb2)による、各コンストラクトの認識の低下又は消失が示された。
【0345】
加えて、エピトープ領域番号7は、リボソーム阻害活性又は細胞毒性のいずれにもいかなる有意な作用を起こすことなく、置換R248A又はR251によって破壊される。R248A又はR251Aは、リボソーム阻害又は細胞毒性のいずれも変更することなく、上述した例示的な志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドにうまく導入することができる。
【0346】
上述の個々のエピトープ破壊、加えて新しい破壊を組み合わせて、2又は3以上のエピトープ領域の破壊を含む志賀毒素エフェクターポリペプチドの様々な組合せ(表9)を作製し、次いでこの実施例で説明されるように志賀毒素エフェクター機能の保持に関して実験的に調査した。表9に、単一のエピトープ領域内又は5つもの異なるエピトープ領域中にアミノ酸置換の組合せを有するコンストラクトによって示される活性を、これまでに説明された用語を使用して列挙した。
【0347】
【0348】
これらの結果から、全般的に、志賀毒素エフェクターポリペプチドの1つのエピトープ領域における全てではないとしてもほとんどの成功したアミノ酸置換は、志賀毒素エフェクター機能を保持することが実験的に示され、エピトープを破壊すると予測されたあらゆ
る置換を意味し、このような置換は、異なるエピトープ領域における全てではないとしてもほとんどの他の成功したアミノ酸置換と組み合わされて、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能をなお保持しつつも破壊された多重的なエピトープ領域を有する、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成することが示唆される。
【実施例4】
【0349】
抗原性及び/又は免疫原性エピトープの破壊のための脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの実験的試験
公知の抗体によって認識される実験的に検証可能なエピトープに基づきB細胞エピトープの破壊を確認するために、実験的試験を行った。変性条件下でエピトープ破壊を決定するために、ウェスタン分析を行った。よりネイティブのタンパク質フォールディング条件(すなわち非変性条件)下でエピトープ破壊を決定するために、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA,enzyme-linked immunosorbent assay)分析を行った。
【0350】
Streptag(登録商標)II及び野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド領域又は脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む細胞毒性タンパク質を等量でローディングして4~20%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル(Lonza社、Basel、CH)を複製し、変性条件下で電気泳動した。得られたゲルはクマシー染色により分析するか、製造業者の説明書に従って、iBlot(登録商標)(LifeTechnologies社、Carlsbad、CA、U.S.)システムを用いてポリビニルジフルオライド(PVDF、polyvinyldifluoride)膜に転写した。得られたメンブレンに、以下の抗体を使用して標準条件下でプローブを付けた:Streptag(登録商標)IIとしても公知のポリペプチドNWSHPQFEK(配列番号:134)を認識するウサギポリクローナルα-NWSHPQFEK(配列番号:134)(A00626、Genscript社、Piscataway、NJ、U.S.)、マウ
スモノクローナルα-StxA(抗SLT-1A mAb1又はmAb1)(BEI NR-867BEIResources社、Manassas、VA、U.S.)、ウサギポリクローナル抗体α-SLT-1A
(抗SLT-1A pAb1又はpAb1)(Harlan Laboratories, Inc.社、Indianapolis、IN、U.S.、SLT-1Aアミノ酸1~251に対して生じた特注の抗体産生)、及
びペプチドRGIDPEEGRFNN(配列番号:135)及びHGQDSVRVGR(配列番号:136)に対して生じたウサギポリクローナル抗体α-SLT-1A(抗SLT-1A pAb2又はpAb2)(Genscript社、Piscataway、NJ、U.S.、特注の抗体
産生)。ペプチド配列RGIDPEEGRFNN(配列番号:135)は、推定上のB細胞エピトープ領域番号3(表5)にかかり、ペプチド配列HGQDSVRVGR(配列番号:136)は、SLT-1A及びStxAにおいて214~223に配置されている。抗体に結合した膜は標準的な条件下で検出し、適切な場合は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP、horseradish peroxidase)合成二次抗体(ヤギ抗ウサギHRP又はヤギ抗マウスHRP、Thermo Scientific社、Rockford、IL、U.S.)を用いた。
図2~5は、ゲル及
び/又はメンブレンのレーンに番号付けされたウェスタンブロットを示しており、図の凡例は、各レーンにローディングしたタンパク質内にどの志賀毒素エフェクター領域が含まれていたのかを、同じそれぞれの番号付けにより表示する。
【0351】
D58A置換は、ポリクローナルα-SLT-1A pAb2によって認識されるエピトープの1つをうまく破壊した(
図2)。同様に、D58A/G110A/G147Aの三重置換及びS33I/S45I/D58A/G110A/G147Aの五重置換ミュータントも、α-SLT-1A pAb2によって認識されるエピトープの少なくとも1つの強い破壊(
図3;
図4)及びα-SLT-1A pAb1によって認識されるエピトープの少なくとも1つの部分的な破壊を示した(
図3)。
【0352】
S45I/G110A/G147A及びS33I/G110A/G147A三重置換ミュータントは、α-SLT-1A pAb1によって認識されるエピトープの少なくとも
1つの部分的な破壊を示した(
図3)。S45I/G110A/G147A三重ミュータントは、モノクローナル抗体mAb1によって認識されるエピトープを強く破壊し、さらに、ポリクローナルα-SLT-1A pAb2によって認識されるエピトープを部分的に破壊した(
図3;
図4)。D58A/G110A/G147A三重ミュータントは、モノクローナル抗体mAb1によって認識されるエピトープ及びポリクローナルα-SLT-1A pAb2によって認識されるエピトープの少なくとも1つを極めて効果的に破壊した(
図3;
図4)。
【0353】
D183A/D184A/R188A三重ミュータントは、モノクローナル抗体mAb1によって認識されるエピトープの極めて有効な破壊を示した(
図5)。D58A/G110/G147A/R188A四重ミュータントは、モノクローナル抗体mAb1によって認識されるエピトープ及びポリクローナルα-SLT-1A pAb2によって認識されるエピトープの少なくとも1つを極めて効果的に破壊し、さらに、α-SLT-1A pAb1によって認識されるエピトープの少なくとも1つを部分的に破壊した(
図5)。
【0354】
D58A/G110A/G147A三重、S45I/G110A/G147A三重、及びD58A/G110A/G147A/R188A四重ミュータントにおいて破壊されたエピトープ(1つはmAb1によって認識され、その他のものはpAb2によって認識される)は、2つの連続しない領域に存在する可能性が最も高いようである。したがって、D58A/G110A/G147A三重、S45I/G110A/G147A三重、及びD58A/G110A/G147A/R188A四重置換ミュータントはそれぞれ、少なくとも2種の異なるエピトープが同時に破壊されていることが実験的に検証された、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含んでいた。
【0355】
同様に、D58A/G110A/G147A三重、S45I/G110A/G147A三重、S33I/G110A/G147A三重、D58A/G110A/G147A/R188A四重、及びS33I/S45I/D58A/G110A/G147A五重ミュータントにおいて破壊された特定の優勢なエピトープ(pAb1及びpAb2によって認識されるエピトープ)は、少なくとも2つの連続しない領域に存在する可能性が最も高いようである。したがって、D58A/G110A/G147A三重、S45I/G110A/G147A三重、S33I/G110A/G147A三重、D58A/G110A/G147A/R188A四重、及びS33I/S45I/D58A/G110A/G147A五重ミュータントは、少なくとも2種の異なるエピトープが同時に破壊されていることが実験的に検証された、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含んでいた可能性がある。
【0356】
標準的なELISAを使用して、細胞毒性タンパク質の状況で、破壊された多重的なエピトープ領域を有する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を認識するmAb1の能力を測定した。細胞毒性タンパク質は、そのscFv結合領域の標的生体分子に結合した。リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)(Hyclone Brand、Fisher Scientific社、Waltham、MA、U.S.)中のNunc社のMaxiSorp(登録商標)プレートのウェルを、細胞毒性タンパ
ク質の結合領域の組換えヒト標的タンパク質でコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。ウェルを1×PBS 0.05%Tween-20(PBS-T)で洗浄し、ウェルをPBS-T中の3%乳汁と共に室温で1時間インキュベートすることによって、非特異的結合をブロックした。Streptag(登録商標)II及び脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域(D58A/G110A/G147A/R188A)を含む細胞毒性タンパク質を、結合解離定数(KD)を超えると決定された濃度でウェルに添加した。野生型活性の陽性対照及び参照として、野生型志賀毒素エフェクター領域及びStreptag(登録商標)IIを含む細胞毒性タンパク質を同じ濃度でウェルに添加した。
【0357】
プレートを室温で1時間インキュベートし、非変性条件下で細胞毒性タンパク質を結合させた。ウェルをPBS-Tで洗浄し、次いでPBS-T又はマウスモノクローナル抗体の抗SLT-1A mAb1のいずれかと共に室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBS-T中で洗浄し、次いで検出抗体:Streptag(登録商標)IIに対して向けられたHRP-コンジュゲート抗体又は抗マウス-HRP-コンジュゲート抗体と共にインキュベートした。ウェルをPBS-T中で洗浄し、次いでPierce TMB Ultra(Thermo Scientific Inc.社、Rockford、IL、U.S.)と共にインキュベートした。反応を250mM塩酸(HCl)で止めた。450ナノメートル(nm)の波長に設定された吸光度(Ab)を測定するプレート読み取りデバイスによって、HRP活性の生成物を検出した。いずれかの志賀毒素コンストラクトの代わりにPBSと共にインキュベートされた、コーティングされブロックされたウェルの吸光度値を引くことによって、測定された吸光度値をバックグラウンドに対して補正した。
【0358】
Streptag(登録商標)II抗体の高い吸光度値によって測定されたように(
図6)、両方の細胞毒性タンパク質が、ヒト組換えタンパク質、scFvの標的生体分子に結合した。脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タンパク質(D58A/G110A/G147A/R188A)は、モノクローナル抗体である抗SLT-1A mAb1によって認識されなかった(
図6)。陽性対照の、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞毒性タンパク質は、抗体である抗SLT-1A mAb1と結合した(
図6)。これらの結果から、抗SLT-1A mAb1によって認識されるエピトープは、ネイティブに折り畳まれた野生型志賀毒素エフェクター領域中に存在するが、ネイティブに折り畳まれた脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域において、変異D58A/G110A/G147A/R188Aの組合せによってエピトープが破壊されたことが示された。
【実施例5】
【0359】
志賀毒素エフェクターポリペプチドにおける抗原性及び/又は免疫原性エピトープの破壊の予測
BcePredウェブサーバーを使用して、以下:親水性2、接近しやすさ2、露出した表面
2.4、抗原性の性質1.8、フレキシビリティー1.9、ターン1.9、極性2.3、及び複合化1.9のデフォルト設定を用いたフレキシビリティーの読み出しにより、志賀毒素エフェクター機能を保持しつつ志賀毒素エフェクターポリペプチドを脱免疫化する目的で実施例4で作製された各置換を、置換を含むエピトープ領域における予測されたB細胞エピトープの壊滅に関して調べた(Saha S, Raghava G, Lecture Notes in ComputSci3239: 197-204 (2004))。表10は、分析中に存在する置換と、最後の列にB細胞エピ
トープ予測の結果とを示す。注目すべきことに、エピトープ領域番号0(1~15)及び番号7(243~257)は、野生型SLT-1Aでは、デフォルト設定を用いたBcePredフレキシビリティーアプローチによって予測されなかった。エピトープ領域番号0にお
けるK1M、S8I、T9I、K11A;エピトープ領域番号4*におけるD94A;及びエピトープ領域番号4及び4*におけるS96Iなどの試験された置換(表6を参照)は、BcePredフレキシビリティーアプローチによれば、デノボのいかなる予測されたB細
胞エピトープも生じなかった(例えば表10を参照)。加えて、表10に、BcePredコン
ピューター使用アプローチを使用して分析された、ただし実験的にはまだ試験されていない他の置換の結果を列挙する。
【0360】
【0361】
SLT-1A D58Aと比較したSLT-1A野生型のウェスタン分析(
図2)から、BcePredコンピューター使用フレキシビリティーアプローチは、SLT-1Aの55~66位におけるB細胞エピトープの存在を正確に予測し(表1)、D58A置換によるそのエピトープ領域の破壊も正確に予測された(表10)ことが示された。
【実施例6】
【0362】
野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較した、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの相対的な免疫原性の哺乳動物モデルを使用した実験的試験
この実施例において、脱免疫化されていない細胞毒性タンパク質と比較した、本発明の脱免疫化された細胞毒性タンパク質の相対的な免疫原性を、ヒト免疫系の哺乳動物モデルを使用して決定した。哺乳動物の免疫系のマウスモデルを使用して、例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む例示的な細胞毒性タンパク質の、野生型配列のみを有する志賀毒素エフェクター領域を含む親の細胞毒性タンパク質に対する相対的な免疫原性を比較した。細菌に由来する志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは哺乳動物に対して外来(又は非自己)の分子構造であるため、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドはある程度の免疫原性を示すであろうということが予測された。マウスを使用して決定された非哺乳動物タンパク質の相対的な免疫原性は、一般的に、全ての哺乳動物にとってその相対的な免疫原性の指標である。
【0363】
溶液中のELISAアッセイ(in-solution ELISA assay)を使用して、異なる細胞毒
性タンパク質サンプルに特異的な血清マウス抗体:野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(SLT-1Aのアミノ酸1~251)又は例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド(特定のアミノ酸置換を有するSLT-1Aのアミノ酸1~251)のいずれかを含む細胞毒性タンパク質の相対量を決定した。雌BALB/cマウスを無作為にグループに割り振って、それぞれ6匹のマウスを含むグループを形成した。最初に、細胞毒性タンパク質に曝露する前に、各マウスから血清サンプルを収集した。次に、グループ中の各マウスに、野生型(SLT-1Aのアミノ酸1~251)又は例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域(D58A/G110A/G147A/R188Aを含むSLT-1Aのアミノ酸1~251)のいずれかを含む細胞毒性タンパク質を、12日間にわたり合計6回の注射に相当する2週間の持続時間にわたり週3回の腹腔内注射によって、1用量当たり0.25mg/kgで投与した。細胞毒性タンパク質投与の経過中及びその後、全てのグループのマウスからマウスの血清を収集して、溶液中のELISAアッセイを使用して抗「投与タンパク質」のレベルを観察した。
【0364】
溶液中の抗「細胞毒性タンパク質」ELISAアッセイを以下のようにして行った。マウスグループにおける注射に使用された同じ細胞毒性タンパク質を、そのグループからのマウスの血清を含む溶液中で4℃で一晩インキュベートし、次いで免疫複合体(血清中のいずれかの誘導された抗体に結合した細胞毒性タンパク質からなる)を、適切な標的タンパク質でコーティングしたELISAプレートウェルを使用して捕獲した。捕獲されたマウスIgGを含む免疫複合体を、二次抗体のホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗マウスIgGを使用して検出した。ELISAプレートを展開してホースラディッシュ(horsereadish)ペルオキシダーゼ活性を検出し、プレートリーダーを使用して450nmでホースラディッシュペルオキシダーゼ活性又は「ELISAシグナル」を測定した。「ELISAシグナル」又は「ELISA値」を、「血清なし」の陰性対照を用いて測定した場合のバックグラウンドシグナルを引いた後に、吸光度値として計算した。この溶液中のELISAアッセイ及び設定の場合、より大きいELISA値は、より強い免疫応答(抗体誘導)を示す。
【0365】
いずれのグループのマウスも、この溶液中のELISAアッセイによれば、注射を介した細胞毒性タンパク質への曝露前に細胞毒性タンパク質のいずれかを認識する前もって形成された血清抗体を有するとは測定されなかった。したがって、これらのマウスにおける溶液中のELISAアッセイを使用した抗「細胞毒性タンパク質」抗体の投与後の検出はいずれも、投与後に起こった誘導されたデノボ抗体形成を表す。
【0366】
この実施例の相対的な免疫原性の研究に関して、マウスのグループに注射された同じ細胞毒性タンパク質を、そのグループのマウスから血清抗体を捕獲するためのELISAアッセイで使用した。言い換えれば、「野生型志賀毒素エフェクター領域」グループのマウスからの血清中に存在する抗体を、野生型志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タン
パク質を用いたELISAアッセイで捕獲し、「脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド」グループのマウスからの血清中に存在する抗体を、例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む例示的な細胞毒性タンパク質を用いたELISAアッセイで捕獲した(D58A/G110A/G147A/R188A)。
【0367】
15日目(6回目の用量投与後の3日)及び22日目(6回目の用量投与後の10日)に、上述した溶液中のELISAアッセイによって抗「細胞毒性タンパク質」IgG応答を測定した(
図7)。
図7において、記号は、個々のマウスを表し、塗り潰しの記号は、野生型志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タンパク質が投与されたマウスを表し、白い記号は、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む例示的な細胞毒性タンパク質が投与されたマウスを表す。
図7において、垂直線は、各グループそれぞれの平均IgG応答シグナルを示す。
【0368】
野生型志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タンパク質が投与されたグループのマウスは、ELISAシグナルによって示された通り、15及び22日目の両方に脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タンパク質(D58A/G110A/G147A/R188A)が投与されたグループのマウスより高い規模の抗体反応を有していた(
図7)。「脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド」グループに関する平均ELISAシグナル(抗体反応の定量化)は、「野生型志賀毒素エフェクター領域」グループの25%(15日目)及び39%(22日目)であった。「脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド」グループと「野生型志賀毒素エフェクター領域」グループとのELISAシグナルの差は、t検定に基づき、統計学的に有意であった(p値は0.005未満であった)。「強い」抗体反応を表すのに0.9Abs単位の基準の吸光度値カットオフを使用して、「野生型志賀毒素エフェクター領域」グループにおける6匹中6匹(100%)のマウスが15又は22日目に強い抗体反応を有したが、それに対して「脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド」グループでは6匹中わずか3匹(50%)のマウスしか強い抗体反応を有していなかった。
【0369】
脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む例示的な細胞毒性タンパク質(D58A/G110A/G147A/R188A)は、哺乳動物モデルにおいて免疫原性の低下を示した(
図7)。「脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド」グループのマウスにおける抗体誘導の全体的な規模の減少、加えて「野生型志賀毒素エフェクター領域」グループと比較して有力な抗体反応を誘導したこのグループにおけるマウス数の低下は、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド(D58A/G110A/G147A/R188A)がうまく脱免疫化され(すなわち哺乳動物において起こり得る免疫原性を低下させ)、それを含む例示的な細胞毒性タンパク質は、脱免疫化された細胞毒性タンパク質である(すなわち哺乳動物において起こり得る免疫原性が低下されている)ことを示す。
【0370】
この例示的な脱免疫化された細胞毒性タンパク質は、3又は4以上の志賀毒素エフェクター機能:触媒性のリボソーム阻害、細胞内の経路決定、及び細胞毒性を保持しつつ、4つの異なるB細胞エピトープ領域の破壊を含む志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含んでいた(表9)。加えて、この細胞毒性タンパク質の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、ウェスタンブロットでmAb1、pAb2、及びpAb1によって認識される破壊されたエピトープ(
図5)及びELISAアッセイでmAb1によって認識される破壊されたエピトープ(
図6)を有することが示された。それゆえに、この例示的な細胞毒性タンパク質は、哺乳動物の免疫系に対する抗原性と免疫原性の両方が低下した、脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む脱免疫化された細胞毒性タンパク質である。この例示的な細胞毒性タンパク質の抗原性及び/又は免疫原性は、同じ又は追加の予測されたB細胞エピトープ領域に追加の変異を導入することによ
ってさらに低下する可能性がある。加えて、すでに破壊されたB細胞エピトープ領域における同一又は異なる位置での代替の置換は、相対的な免疫原性の低下をもたらすと予想される。
【0371】
様々な例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド又は様々な脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む例示的な細胞毒性タンパク質の相対的な免疫原性が類似の方式で試験される。1.(1-251:K1M/K11A/S33I/S45I/D58A/G110A/G147A/R188A)、2.(1-251:K1M/K11A/S33I/S45I/D58A/G110A/G147A/D183A/D184A/R188A)、3.(1-251:K1M/K11A/S33I/S45I/D58A/E60I/G110A/G147A/D183A/D184/R188A)、4.(1-251:K1M/K11A/S33I/S45I/R55A/D58A/P59A/E60I/E61A/G62A/G110A/G147A/D183A/D184A/R188A)、5.(1-251:K1M/K11A/S33I/S45I/D58A/G110A/G147A/D183A/D184A/S189A)、及び6.(1-251:K1M/K11A/S33I/S45I/R55A/D58A/P59A/E60I/E61A/G62A/G110A/G147A/D183A/D184/R188A/R205A)、並びに配列番号4~52を含む特定の例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドは、本明細書で説明されるか又は熟練した作業者に公知の動物モデル及びアッセイを使用して、野生型アミノ酸配列のみを含む志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド領域を含む親の細胞毒性タンパク質と比較される。
【0372】
この実施例において、マウスに、脱免疫化された形態又は野生型の形態のいずれかを7日の間隔で4回静脈内投与する。注射されたマウスから血液サンプルを採取し、細胞毒性タンパク質及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドに対する反応性に関してELISAアッセイにより試験する。特定の例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド又はそれを含む細胞毒性タンパク質が注射されたマウスにおいて、野生型アミノ酸配列のみを含む志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む分子と比較して比較的低い免疫原性の応答が測定されると予想される。
【0373】
多重的なB細胞エピトープ領域の破壊を含む例示的な脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む特定の例示的な脱免疫化された細胞毒性タンパク質は、有意なレベルの1又は2以上の志賀毒素エフェクター機能:触媒性のリボソーム阻害、細胞内の経路決定、及び細胞毒性を保持し、ウェスタンブロット及び/又はELISAアッセイの両方で抗志賀毒素様毒素Aサブユニット抗体を認識する前もって形成された抗体による認識が低下されると予想される。多重的なB細胞エピトープ領域の破壊を有する脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含むこれらの例示的な細胞毒性タンパク質は、抗原性及び/又は免疫原性が低下した脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドである。
【0374】
要約
前述の実施例から、志賀毒素エフェクター領域ポリペプチド内のB細胞エピトープ領域をアミノ酸置換により破壊して、抗原性と免疫原性の両方における低下をもたらすことができることが実証された。表11に、細胞毒性タンパク質が少なくとも1つの志賀毒素の機能を保持するという状況における、志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドの予測されたエピトープ領域内のアミノ酸残基の置換を要約する。例示的な置換の全てが、2又は3以上の志賀毒素エフェクター機能に干渉する置換R179Aを除いて、1又は2以上のB細胞エピトープが同時に破壊されることにより高い細胞毒性を機能的に保持した志賀毒素エフェクター領域をもたらした。
【0375】
【0376】
推測的に成功する置換を予測しようとする挑戦にもかかわらず、本明細書に記載の実施例で示されるデータから、特定のアミノ酸置換が、有意な志賀毒素エフェクター機能を維持しながら抗原性及び/又は免疫原性をうまく低下させる可能性があると考えられる理由が示される。例えば、置換をうまく許容するものとしての本明細書に示される特異的なアミノ酸位置における置換(表11)は、特定の他のアミノ酸で置換された場合、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能の保持に成功する可能性が最も高い。多重的な単一の
アミノ酸置換(エピトープ領域を破壊すると予測され、細胞毒性を保持していた)を組み合わせたところ(表9;表11)、志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タンパク質は細胞毒性を保持したという実証から、一般的に、成功した単一のアミノ酸置換を異なるエピトープ領域における他の成功したアミノ酸置換と組み合わせて、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持する脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを生成することが可能なことが示唆される。同様に、同じエピトープ領域内に多重的な単一のアミノ酸置換を有する志賀毒素エフェクター領域を含む細胞毒性タンパク質が酵素活性を保持したという実証(表9;表11)から、一般的に、同じエピトープ領域における成功した単一のアミノ酸置換を同じエピトープ領域における他の単一のアミノ酸置換と組み合わせて、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持する脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを生成することが可能なことが示唆される。同じエピトープ領域内に多重的な単一のアミノ酸置換を有する志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを含む細胞毒性タンパク質が細胞毒性を保持するという事実(表9;表11)から、エピトープ領域における成功した単一のアミノ酸置換を同じエピトープ領域における他の単一のアミノ酸置換と組み合わせて、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持する脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを生成することが可能なことが示唆される。
【0377】
実験的なデータから、特定の置換(K1M、S8I、T9I、K11A、S33I、S45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、D183A、D184A、D184F、R188A、R205A、及び/又はそれらの組合せ)及び特定の位置が、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能に関して有意なレベルの活性を保持しつつ置換(1、4、8、9、11、33、45、48、53、55、57、58、59、60、61、62、94、96、109、110、147、180、181、183、184、185、186、187、188、189、205、248、及び251)を許容したことが実証された。この実験的なデータから、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持する脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを生成するのに使用することができる特定の他のエピトープを破壊する置換及びエピトープを破壊する置換の組合せが示唆される。保存的官能基のアミノ酸残基への他のアミノ酸置換も許容されることが予測可能である。例えば、K1M、T4I、S8I、T9V、T9I、K11A、S33I、S45V、S45I、D47G、N48V、N48F、L49A、D53A、D53G、D53N、R55A、R55L、I57F、D58A、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、D94A、S96I、S109V、G110A、S112V、G147A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184F、L185V、S186A、S186F、G187A、R188A、R188L、S189A、R205A、R248A、又はR251Aのいずれかに類似していることが熟練した作業者に公知の他の置換が、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能を維持しつつもエピトープを破壊することができるとも予想される。特定には、K1M、T4I、S8I、T9V、T9I、K11A、S33I、S45V、S45I、D47G、N48V、N48F、L49A、D53A、D53G、D53N、R55A、R55L、I57F、D58A、D58F、P59A、P59F、E60I、E60T、E60R、E61A、E61V、E61L、G62A、D94A、S96I、S109V、G110A、S112V、G147A、T180G、T181I、D183A、D183G、D184A、D184F、L185V、S186A、S186F、G187A、R188A、R188L、S189A、R205A、R248A、又はR251Aに類似した保存的アミノ酸残基へのアミノ酸置換は、同じ作用を有すると予想される。類似の保存的アミノ酸置換の例としては、K1からA、G、V、L、I、F、及びH;T4IからA、G、V、L、F、M、及びS;S8からA、G、V、L、F、及びM;T9からA、G、L、F、M、及びS;K11からG、V、L、I、F、及びM;S33からA、G、V、L、F、及びM;S45からA、G、L、F、及びM;T
45からA、G、V、L、I、F、及びM;D47からA、V、L、I、F、S、及びQ;N48からA、G、L、I、及びM;L49からG;D53からV、L、I、F、S、及びQ;R55からG、I、F、M、Q、S、K、及びH;D58からG、V、L、I、S、及びQ;P59からG;E60からA、G、V、F、S、Q、N、D、及びM;E61からG、I、F、S、Q、N、D、M、及びR;D94からG、V、L、I、F、S、及びQ;S96からA、G、V、L、F、及びM;S109からA、G、I、L、F、及びM;T109からA、G、V、I、L、F、及びM;S112からA、G、L、I、F及びM;T180からA、V、L、I、F、M、及びS;T181からA、G、V、L、F、M、及びS;D183からV、L、I、F、S、及びQ;D184からG、V、L、I、S、及びQ;L185からA及びG;S186からG、V、I、L、F、及びM;R188からG、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S189からG、V、I、L、F、及びM;R204からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;R205からA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K、及びH;S247からA、G、V、I、L、F、及びM;Y247からA、G、V、L、I、及びF、R248からG、V、L、及びI;R250からA、G、V、L、I、及びF;並びにR251からG、V、L、及びIが挙げられる。
【0378】
電荷、極性を除去する、及び/又は側鎖長を短くするアミノ酸置換も、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能を維持しつつもエピトープを破壊することができると予想される。例えば、側鎖の電荷が除去される、極性が除去される、及び/又は側鎖長が短くなるように、アミノ酸残基K1、T4、S8、T9、K11、S33、S45、D47、N48、L49、D53、R55、I57、D58、P59、E60、E61、G62、D94、S96、S109、T109、G110、S112、G147、T180、T181、D183、D184、L185、S186、G187、R188、S189、R205、R248、又はR251が、A、G、V、L、I、P、C、M、F、S、D、N、Q、H、及びKで置換される。特定には、以下のアミノ酸置換:D47、D53、D58、D94、D183、D184、D264からA、G、V、L、I、S、及びN;E60又はE61からA、G、L、V、I、S、N、Q、D、及びM;G62、G110、G147、G187、又はG265からA;K1又はK11からA、G、L、V、I、F、C、M、P、S、T、N、H、及びQ;L49又はL185からA及びG;N48からA、G、V、L、及びI;R55、R188、R205、R247、R248、R250、又はR251からA、G、L、V、I、S、Q、K、M、F、及びH;S33、S45、S96、S109、S112、S186、又はS189からA、G、V、及びL、並びにT4、T9、T45、T109、T180、T181、T286からA、G、V、L、I、M及びFは、少なくとも1つの志賀毒素エフェクター機能を維持しつつもエピトープを破壊することができると予想される。
【0379】
加えて、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持しつつエピトープを破壊する志賀毒素エフェクターポリペプチドの1つのエピトープ領域におけるアミノ酸置換は、一般的に、志賀毒素エフェクター機能の有意なレベルをなお保持しつつも破壊された多重的なエピトープ領域を有する脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを形成するために、有意な志賀毒素エフェクター機能を保持しつつエピトープを破壊する同じ又は異なるエピトープ領域において他のアミノ酸置換と組合せ可能であると予測される。本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドを作製するために、例えば、K1M、S8I、T9I、S9I、K11A、S33I、S45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、G110A、G147A、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、及び/又はR205Aは、可能であれば、K1M、S8I、T9I、S9I、K11A、S33I、S45I、D53A、R55A、D58A、D58F、P59A、E60I、E60R、E61A、G62A、D94A、S96I、
G110A、G147A、D183A、D184A、D184F、S186A、G187A、R188A、S189A、及び/又はR205Aと組み合わせることができる。
【実施例7】
【0380】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド及びCD20に特異的な結合領域を含む細胞毒性タンパク質(SLT-1Aと融合したαCD20)
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドである。免疫グロブリン型結合領域αCD20抗原は、ヒトCD20を認識する免疫グロブリン型ドメインに由来し(例えば、Haisma et al.,Blood 92: 184-90 (1999)、GengSet al., Cell Mol Immunol 3:
439-43 (2006)、Olafesn Tetal., Protein EngDes Sel 23: 243-9 (2010)を参照されたい)、CD20の細胞外部分に結合することができる免疫グロブリン型結合領域を含む。CD20は、例えば、B細胞リンパ腫細胞、有毛細胞白血病細胞、B細胞慢性リンパ球性白血病細胞、及びメラノーマ細胞などの複数のがん細胞型で発現する。さらに、CD20はいくつかの自己免疫疾患、障害、及び過活動B細胞を含む状態を治療するための治療学への魅力的な標的である。
【0381】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCD20の構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αCD20及び志賀毒素エフェクター領域(例えば、配列番号4~52など)を共に連結した。例えば、融合タンパク質は、αCD20抗原結合タンパク質SLT-1A::αCD20をコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される(例えば、配列番号53、54、55、及び56を参照されたい)。SLT-1A::αCD20細胞毒性タンパク質の発現は、前の実施例で説明したような、又は熟練した作業者に公知の、細菌及び/又は無細胞のタンパク質翻訳系のいずれかを使用して達成される。
【0382】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCD20のインビトロでの特性の決定
CD20+細胞及びCD20-細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性、最大特異的結合(Bmax)及び平衡結合定数(KD)は、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定する。CD20+細胞へのSLT-1A::αCD20のBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはCD20-細胞への有意な結合はない。
【0383】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCD20のリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT-1A::αCD20のIC50は約0.1~100pMである。
【0384】
CD20+細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCD20の細胞毒性の決定
SLT-1A::αCD20の細胞毒性特性を、CD20+細胞を用いて前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT-1A::αCD20の選択的細胞毒性特性を、CD20+細胞と比較してCD20-細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、CD20+細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にCD20を発現する細胞と比較して細胞表面上にCD20を発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0385】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1A::αCD20の相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【0386】
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCD20のインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCD20のインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にCD20を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を試験する。
【実施例8】
【0387】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、並びにHER2に特異的な結合領域を含む細胞毒性タンパク質(「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」)
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含んでいた。免疫グロブリン型結合領域は、米国特許出願第2011/0059090号に記載される、ラクダ抗体の単ドメイン可変領域(VHH)であるタンパク質5F7に由来するαHER2 VHHである。
【0388】
細胞毒性タンパク質「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」の構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域及び志賀毒素エフェクター領域は共に連結して、融合タンパク質を形成した(例えば、配列番号57、58、及び59を参照されたい)。本実施例において、タンパク質5F7に由来するαHER2-VHH可変領域をコードするポリヌクレオチドは、当技術分野で既知のリンカーをコードするポリヌクレオチドを有するフレーム、及び配列番号4~52のアミノ酸を含む志賀毒素エフェクター領域をコードするポリヌクレオチドを有するフレームにクローニングすることができる。細胞毒性タンパク質「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」のバリアントは、結合領域を志賀毒素エフェクター領域のアミノ末端の隣に配置していてもよく、カルボキシ末端にKDELファミリーの小胞体シグナルモチーフを含んでいてもよいように作製した。細胞毒性タンパク質バリアント「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」の発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
【0389】
細胞毒性タンパク質「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」のインビトロでの特性の決定
HER2+細胞及びHER2-細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定する。HER2+細胞への「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」のBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはHER2-細胞への有意な結合はない。
【0390】
細胞毒性タンパク質「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」のリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対する「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」のIC50は約0.1~100pMである。
【0391】
HER2+細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」の細胞毒性の決定
「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」バリアントの細胞毒性特性を、HER2+細胞を用いて前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、「SLT-1Aと融合したαHER2-VHH」の選択的細胞毒性特性を、HER2+細胞と比較してHER2-細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、HER2+細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にHER2を発現する細胞と比較して細胞表面上にHER2を発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0392】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1Aと融合したαHER2-VHHの相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【0393】
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT-1Aと融合したαHER2-VHHのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質SLT-1Aと融合したαHER2-VHHのインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にHER2を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を試験する。
【実施例9】
【0394】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、並びに抗体αエプスタイン・バー抗原に由来する結合領域を含む細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドである。免疫グロブリン型結合領域αエプスタイン・バー抗原は、エプスタイン・バー抗原に対するモノクローナル抗体(Fang C et al., J Immunol Methods 287: 21-30 (2004))に由来し、エプスタイン・バーウイルスに感染したヒト細胞又はエプスタイン・バー抗原を発現する形質転換細胞に結合することができる免疫グロブリン型結合領域を含む。エプスタイン・バー抗原は、エプスタイン・バーウイルスに感染した細胞やがん細胞(例えば、リンパ腫及び上咽頭がん細胞)などの複数の細胞型で発現する。さらに、エプスタイン・バー感染は、他の疾患、例えば、多発性硬化症を伴う。
【0395】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αエプスタイン・バー抗原及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDEL(配列番号:60)を付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、αエプスタイン・バー抗原結合タンパク質SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
【0396】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELのインビトロでの特性の決定
エプスタイン・バー抗原陽性細胞及びエプスタイン・バー抗原陰性細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定する。エプスタイン・バー抗原陽性細胞へのSLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELのBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはエプスタイン・バー抗原陰性細胞への有意な結合はない。
【0397】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELのIC50は約0.1~100pMである。
【0398】
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELの細胞毒性の決定
SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELの細胞毒性特性を、エプスタイン・バー抗原陽性細胞を用いて、前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELの選択的細胞毒性特性を、エプスタイン・バー抗原陽性細胞と比較してエプスタイン・バー抗原陰性細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、エプスタイン・バー抗原陽性細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にエプスタイン・バー抗原を発現する細胞と比較して細胞表面上にエプスタイン・バー抗原を発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0399】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1A::αエプスタインバー::KDELの相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【0400】
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質SLT-1A::αエプスタイン・バー::KDELのインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にエプスタイン・バー抗原を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を試験する。
【実施例10】
【0401】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、並びに抗体αリーシュマニア抗原に由来する結合領域を含む細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドである。免疫グロブリン型結合領域αリーシュマニア抗原は、当技術分野で既知の技術を用いて生成された、細胞内トリパノソーマ原虫を保有するヒト細胞に存在する細胞表面のリーシュマニア抗原への抗体に由来する(Silveira T et al., Int J Parasitol 31:1451-8 (2001)、Kenner J et al., J CutanPathol 26: 130-6 (1999)、BermanJ and Dwyer, Clin Exp Immunol 44: 342-348 (1981)を参照されたい)。
【0402】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αリーシュマニア::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αリーシュマニア抗原及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDEL(配列番号:60)を付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、リーシュマニア抗原結合タンパク質SLT-1A::αリーシュマニア::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT-1A::αリーシュマニア::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
【0403】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αリーシュマニア::KDELのインビトロでの特性の決定
リーシュマニア抗原陽性細胞及びリーシュマニア抗原陰性細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、蛍光に基づくフローサイトメトリーにより決定する。リーシュマニア抗原陽性細胞へのSLT-1A::αリーシュマニア::KDELのBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはリーシュマニア抗原陰性細胞への有意な結合はない。
【0404】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αリーシュマニア::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT-1A::αリーシュマニア::KDELのIC50は約0.1~100pMである。
【0405】
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT-1A::αリーシュマニア::KDELの細胞毒性の決定
SLT-1A::αリーシュマニア::KDELの細胞毒性特性を、リーシュマニア抗原陽性細胞を用いて前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT-1A::αリーシュマニア::KDELの選択的細胞毒性特性を、リーシュマニア抗原陽性細胞と比較してリーシュマニア抗原陰性細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、リーシュマニア抗原陽性細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にリーシュマニア抗原を発現する細胞と比較して細胞表面上にリーシュマニア抗原を発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0406】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1A::αリーシュマニア::KDELの相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【実施例11】
【0407】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、並びに免疫グロブリン型結合領域αニューロテンシン受容体に由来する結合領域を含む細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドである。免疫グロブリン型結合領域αニューロテンシン受容体は、DARPin(商標)(GenBank受託番号:2P2C_R
)又はヒトニューロテンシン受容体と結合するモノクローナル抗体(Ovigne J et al.,Neuropeptides 32: 247-56 (1998))に由来する。ニューロテンシン受容体は、乳がん、結
腸がん、肺がん、メラノーマ、及び膵臓がん細胞など様々ながん細胞で発現する。
【0408】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αニューロテンシンR及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結した、カルボキシ末端にKDEL(配列番号:60)を付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、ニューロテンシン受容体結合タンパク質SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成した。
【0409】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELのインビトロでの特性の決定
ニューロテンシン受容体陽性細胞及びニューロテンシン受容体陰性細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、蛍光に基づくフローサイトメトリーにより決定する。ニューロテンシン受容体陽性細胞へのSLT-1A::αニューロテンシンR::KDELのBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはニューロテンシン受容体陰性細胞への有意な結合はない。
【0410】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT-1A::αニューロテンシンR::KDELのIC50は約0.1~100pMである。
【0411】
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELの細胞毒性の決定
SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELの細胞毒性特性を、ニューロテンシン受容体陽性細胞を用いて、前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELの選択的細胞毒性特性を、ニューロテンシン受容体陽性細胞と比較してニューロテンシン受容体陰性細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、ニューロテンシン受容体陽性細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にニューロテンシン受容体を発現する細胞と比較して細胞表面上にニューロテンシン受容体を発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0412】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELの相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【0413】
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質SLT-1A::αニューロテンシンR::KDELのインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にニューロテンシン受容体を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を
試験する。
【実施例12】
【0414】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、並びに免疫グロブリン型結合領域αEGFRに由来する結合領域を含む細胞毒性タンパク質
本実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクター領域である。結合領域αEGFRは、AdNectin(商標)(GenBank受託番号:3QWQ_B)、Affibody(商標)(GenBank受託番号:2KZI_A;米国特許第8,598,113号明細書)、又は、その全てが1又は2以上のヒト上皮増殖因子受容体に結合する抗体に由来する。上皮増殖因子受容体の発現は、例えば、肺がん細胞、乳がん細胞、及び結腸がん細胞などのヒトがん細胞と関連がある。
【0415】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEGFR::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αEGFR及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDEL(配列番号:60)を付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、EGFR結合タンパク質SLT-1A::αEGFR::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEGFR::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
【0416】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEGFR::KDELのインビトロでの特性の決定
EGFR+細胞及びEGFR-細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、蛍光に基づくフローサイトメトリーにより決定する。EGFR+細胞へのSLT-1A::αEGFR::KDELのBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはEGFR-細胞への有意な結合はない。
【0417】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEGFR::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT-1A::αEGFR::KDELのIC50は約0.1~100pMである。
【0418】
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEGFR::KDELの細胞毒性の決定
SLT-1A::αEGFR::KDELの細胞毒性特性を、EGFR+細胞を用いて、前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT-1A::αEGFR::KDELの選択的細胞毒性特性を、リーシュマニア抗原陽性細胞と比較してEGFR-細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、EGFR+細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にEGFRを発現する細胞と比較して細胞表面上にEGFRを発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0419】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1A::αEGFR::KDELの相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【0420】
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEGFR::KDELのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEGFR::KDELのインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にEGFRを発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を試験する。
【実施例13】
【0421】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、並びに抗体αCCR5に由来する結合領域を含む細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドである。免疫グロブリン型結合領域αCCR5は、ヒトCCR5(CD195)に対するモノクローナル抗体(Bernstone L etal., Hybridoma 31: 7-19 (2012))に由来する。CCR5は主に、T細胞、マ
クロファージ、樹状細胞、及びミクログリアで発現する。さらに、CCR5はヒト免疫不全ウイルス(HIV、humanimmunodeficiency virus)の発症及び蔓延に影響を与える。
【0422】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCCR5::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αCCR5及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDEL(配列番号:60)を付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、αCCR5結合タンパク質SLT-1A::αCCR5::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCCR5::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
【0423】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCCR5のインビトロでの特性の決定
CCR5+細胞及びCCR5-細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、蛍光に基づくフローサイトメトリーにより決定する。CCR5+陽性細胞へのSLT-1A::αCCR5::KDELのBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはCCR5-細胞への有意な結合はない。
【0424】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCCR5::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT-1A::αCCR5::KDELのIC50は約0.1~100pMである。
【0425】
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCCR5::KDELの細胞毒性の決定
SLT-1A::αCCR5::KDELの細胞毒性特性を、CCR5+細胞を用いて前記の実施例において上記ように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT-1A::αCCR5::KDELの選択的細胞毒性特性を、CCR5+細胞と比較してCCR5-細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、CCR5+細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にCCR5を発現する細胞と比較して細胞表面上にCCR5を発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0426】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1A::αCCR5::KDELの相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【0427】
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCCR5::KDELのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、ドナー材料のT細胞を枯渇し(Tsirigotis P etal.,Immunotherapy 4: 407-24 (2012)を参照されたい)、細胞毒性タンパク質SLT-1A::αCC
R5::KDELのインビボでの効果を決定する。非ヒト霊長類を用いて、SLT-1A::αCCR5のインビボでの効果を決定する。ドナー臓器をSLT-1A::αCCR5::KDELで前処理したとき(Weaver T et al., Nat Med 15: 746-9 (2009)を参照
されたい)、腎臓移植後のアカゲザルの移植片対宿主病について分析する。異なる用量のSLT-1A::αCCR5::KDELの非経口投与後、霊長類カニクイザルの末梢血Tリンパ球のインビボでの枯渇を観察する。SLT-1A::αCCR5::KDELを使用したHIV感染の阻害は、サル免疫不全ウイルス(SIV、simian immunodeficiency virus)にさらされたときに循環するT細胞を大きく枯渇させるために、非ヒト霊長類
に急性用量のSLT-1A::αCCR5::KDELを与えることによって試験する(Sellier Petal.,PLoS One 5: e10570 (2010)を参照されたい)。
【実施例14】
【0428】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、並びに抗Env免疫グロブリンドメインに由来する結合領域を含む細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素のAサブユニット(StxA)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドである。免疫グロブリン型結合領域αEnvは、GP41、GP120、GP140、又はGP160(例えば、Chen W et al., JMol Bio 382: 779-89 (2008)、ChenW et al.,Expert OpinBiol Ther 13:657-71 (2013)、vanden Kerkhof T et al.,Retrovirology 10: 102(2013)を参照されたい)など
のHIVエンベロープ糖タンパク質(Env)に結合する既存の抗体、又は標準的な技術を用いて生成された抗体(Prabakaranetal., Front Microbiol 3: 277 (2012)を参照さ
れたい)に由来する。EnvはHIV複製中のHIV感染細胞の細胞表面に提示される、HIV表面タンパク質である。Envは、主に感染細胞のエンドソーム区画に発現するが、本発明の強力な細胞毒性タンパク質によって、十分な量のEnvが標的とされる細胞表面に存在させることができる。さらに、Env標的細胞毒性タンパク質は、HIVビリオンと結合でき、ビリオンと宿主細胞が融合する間に、感染細胞に新たに進入することができる。
【0429】
HIVが高割合の変異を提示するので、複数株のHIVのEnvに結合する広域中和抗体(vandenKerkhof T et al., Retrovirology10: 102 (2013))などの、Envの機能
的束縛部分に結合する免疫グロブリンドメインを使用することが好ましい。感染細胞の表面に存在するEnvは立体的に制限されたエピトープを提示するとされているので(ChenW et al., J Virol 88: 1125-39 (2014))、sdAb又はVHHドメインなどの100
kDより小さい、理想的には25kDより小さいものを使用することが好ましい。
【0430】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEnv::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αEnv及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDEL(配列番号:60)を付加し、細胞毒性タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、αEnv結合タンパク質SLT-1A::αEnv::KDE
Lをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEnv::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
【0431】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEnv::KDELのインビトロでの特性の決定
Env+細胞及びEnv-細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、蛍光に基づくフローサイトメトリーにより決定する。Env+陽性細胞へのSLT-1A::αEnv::KDELのBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはEnv-細胞への有意な結合はない。
【0432】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEnv::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT-1A::αEnv::KDELのIC50は約0.1~100pMである。
【0433】
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEnv::KDELの細胞毒性の決定
SLT-1A::αEnv::KDELの細胞毒性特性を、Env+細胞を用いて前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT-1A::αEnv::KDELの選択的細胞毒性特性を、Env+細胞と比較してEnv-細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株及び/又は細胞に感染して、細胞をEnv+にするのに使用されるHIV株に応じて、Env+細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にEnvを発現する細胞と比較して細胞表面上にEnvを発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0434】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1A::αEnv::KDELの相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【0435】
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT-1A::αEnv::KDELのインビボでの効果の決定
SLT-1A::αEnv::KDELを使用したHIV感染の阻害は、サル免疫不全ウイルス(SIV)に感染した非ヒト霊長類(Sellier P et al., PLoS One 5: e10570(2010)を参照されたい)に、SLT-1A::αEnv::KDELを投与することによ
って試験する。
【実施例15】
【0436】
脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチド、並びに抗体αUL18抗体に由来する結合領域を含む細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT-1A)に由来し、前の実施例で説明した1又は2以上の脱免疫化アミノ酸置換を含む脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドである。免疫グロブリン型結合領域αUL18は、当技術分野で既知の技術を用いて、細胞表面サイトメガロウイルスタンパク質UL18に生成され、サイトメガロウイルスに感染したヒト細胞に存在する(Yang Z, Bjorkman P, Proc Natl Acad Sci USA105: 10095-100 (2008))。ヒトサイトメ
ガロウイルス感染は、様々ながん及び炎症性障害を伴う。
【0437】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αUL18::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αUL18及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDEL(配列番号:60)を付加し、タンパク質を形成する。例えば、
融合タンパク質は、αUL18結合タンパク質SLT-1A::αUL18::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT-1A::αUL18::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
【0438】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αUL18::KDELのインビトロでの特性の決定
サイトメガロウイルスUL18陽性細胞及びサイトメガロウイルスUL18陰性細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、蛍光に基づくフローサイトメトリーにより決定する。サイトメガロウイルスタンパク質UL18陽性細胞へのSLT-1A::αUL18::KDELのBmaxは約50,000~200,000MFI、KDは0.01~100nMである一方、このアッセイにおいてはサイトメガロウイルスタンパク質UL18陰性細胞への有意な結合はない。
【0439】
細胞毒性タンパク質SLT-1A::αUL18::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT-1A::αUL18::KDELのIC50は約0.1~100pMである。
【0440】
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT-1A::αUL18::KDELの細胞毒性の決定
SLT-1A::αUL18::KDELの細胞毒性特性を、サイトメガロウイルスタンパク質UL18陽性細胞を用いて、前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT-1A::αUL18::KDELの選択的細胞毒性特性を、サイトメガロウイルスタンパク質UL18陽性細胞と比較してサイトメガロウイルスタンパク質UL18陰性細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、サイトメガロウイルスタンパク質UL18陽性細胞について約0.01~100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にサイトメガロウイルスタンパク質UL18を発現する細胞と比較して細胞表面上にサイトメガロウイルスタンパク質UL18を発現しない細胞について約10~10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
【0441】
抗原性及び/又は免疫原性の低下の決定
SLT-1A::αUL18::KDELの相対的な脱免疫化を、実施例4及び6で説明したようなウェスタン分析、ELISA分析、及びマウスモデルを使用して、野生型志賀毒素エフェクター領域ポリペプチドに関して決定した。
【実施例16】
【0442】
様々な細胞型を標的化する脱免疫化された細胞毒性タンパク質
本実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、上記B細胞エピトープ領域の任意の組合せが破壊された、志賀様毒素1、志賀毒素、及び/又は志賀様毒素2のAサブユニット(SLT-1A、StxA、SLT-2A)に由来する、脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドである。結合領域は表12の第1列から選択される分子の免疫グロブリンドメインに由来し、表12の第2列に示される細胞外標的生体分子と結合する。本
実施例の例示的細胞毒性タンパク質は、カルボキシ末端にKDEL型シグナルモチーフを有し及び/又は当技術分野で既知の試薬及び技術を用いて作製していてもよい。本実施例の例示的細胞毒性タンパク質は、前記の実施例において記載したように、適切な細胞外標的生体分子を発現する細胞を用いて試験される。本実施例の例示的タンパク質は、例えば、表12の第3列に示される疾患、状態、及び/又は障害を診断及び治療するために用いることができる。
【0443】
【0444】
本発明のいくつかの実施形態を例示によって説明してきたが、本発明を多くの改変、変更及び適合化と共に実行することができ、本発明の精神から逸脱するか、又は特許請求の範囲を超えることなく、いくつかの等価物又は代替的な解決法の使用が当業者の範囲内にあることが明らかである。
【0445】
全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許又は特許
出願の全体が参照により組み込まれると具体的かつ個別的に示されたのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国仮特許出願第61/777,130号明細書、第61/932,000号明細書、第61/951,110号明細書、第61/951,121号明細書、第62/010,918号明細書、及び第62/049,325号明細書の開示はそれぞれ、その全体が参照により組み込まれる。国際公開第2014164680号及び国際公開第2014164693号の開示はそれぞれ、その全体が参照により組み込まれる。本明細書で引用されるアミノ酸及び核酸配列に関するGenBank(National Center for BiotechnologyInformation、U.S.)からの全ての電子的に利用可能な生物学的配列情報の完全な開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【配列表】