(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】波刃包丁
(51)【国際特許分類】
B26B 9/02 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B26B9/02
(21)【出願番号】P 2023027077
(22)【出願日】2023-02-24
【審査請求日】2023-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028303
【氏名又は名称】株式会社マサヒロ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】服部 浩司
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-248278(JP,A)
【文献】特開2019-063390(JP,A)
【文献】中国実用新案第213703495(CN,U)
【文献】特開2005-003358(JP,A)
【文献】実開昭59-188067(JP,U)
【文献】特開昭58-105781(JP,A)
【文献】実開平04-000368(JP,U)
【文献】登録実用新案第3154901(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0208910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B1/00-11/00
B26B23/00-29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形の刃先、並びに前記刃先にそれぞれ連なる第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する刀身を備え、
前記刀身の延在方向及び幅方向をそれぞれ延在方向及び幅方向とするとき、
前記第1面は、
前記刃先の延在方向に並ぶ複数の凹刃と、
隣り合う前記凹刃同士の間に位置し、前記凹刃同士の内面のみにより形成される山部と、を有し、
前記凹刃と前記山部とが互いに平行に延在しており、
前記凹刃は、前記刃先を構成する弧状部を有し、
前記凹刃の前記幅方向における長さが、前記弧状部の端部と前記弧状部の中央部との前記幅方向における距離であって複数の前記弧状部のうちの最大値よりも大きい、
波刃包丁。
【請求項2】
全ての前記凹刃の前記幅方向における長さが、前記最大値よりも大きい、
請求項1に記載の波刃包丁。
【請求項3】
前記凹刃が、前記刀身の前記幅方向の全体にわたって設けられている、
請求項1または請求項2に記載の波刃包丁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波刃包丁に関する。
【背景技術】
【0002】
パン切り用や冷凍食品切断用の包丁として波刃包丁がある(例えば特許文献1参照)。
こうした波刃包丁は、波形の刃先、並びに刃先にそれぞれ連なる第1面及び第1面の反対側に位置する第2面を有する刀身を備える。第1面には、刃先の延在方向に並ぶ複数の凹刃が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした波刃包丁を、例えば洋包丁を研ぐための研ぎ器を用いて研ぐ方法が考えられる。しかしながら、この場合、山部の先端が徐々に削り取られる。これにより、波刃形状が崩れるとともに刃先角度が変化するという問題がある。
【0005】
また、凹刃を1つずつヤスリを用いて研ぐ方法が考えられる。しかしながら、この場合、複数の凹刃間で刃先角度を揃えることが難しいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための波刃包丁の各態様を記載する。
[態様1]
波形の刃先、並びに前記刃先にそれぞれ連なる第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する刀身を備え、前記刀身の延在方向及び幅方向をそれぞれ延在方向及び幅方向とするとき、前記第1面は、前記刃先の延在方向に並ぶ複数の凹刃を有し、前記凹刃は、前記刃先を構成する弧状部を有し、前記凹刃の前記幅方向における長さが、前記弧状部の端部と前記弧状部の中央部との前記幅方向における距離であって複数の前記弧状部のうちの最大値よりも大きい、波刃包丁。
【0007】
同構成によれば、刀身の第2面に沿って第2面を研ぐことで、凹刃の刃先である弧状部を、形状を維持したまま鋭利な状態に戻すことができる。ただし、第2面を研ぐことを繰り返すと、凹刃の幅方向の長さが次第に小さくなり、最終的には凹刃がなくなる。上記構成によれば、凹刃の幅方向の長さが従来の凹刃に比べて大きいので、凹刃がなくなるまでに行うことのできる研ぎの回数を増やすことができる。
【0008】
[態様2]
全ての前記凹刃の前記幅方向における長さが、前記最大値よりも大きい、態様1に記載の波刃包丁。
【0009】
同構成によれば、全ての凹刃の幅方向の長さが従来の凹刃に比べて大きいので、全ての凹刃がなくなるまでに行うことのできる研ぎの回数を増やすことができる。したがって、全ての凹刃の寿命を長くすることができる。
【0010】
[態様3]
前記第1面は、隣り合う前記凹刃同士の間に位置する山部を有し、前記凹刃と前記山部とが互いに平行に延在している、態様1または態様2に記載の波刃包丁。
【0011】
同構成によれば、凹刃と山部とが互いに平行に延在している。このため、刀身の第2面を研ぐことで、各凹刃の刃先である弧状部を未使用状態の形状を維持したまま鋭利な状態に戻すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凹刃がなくなるまでに行うことのできる研ぎの回数を増やすことで、凹刃の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態の波刃包丁の第1面を示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図1の波刃包丁の研ぎ方法を示す断面図である。
【
図6】
図6は、波刃包丁の第1変更例を示す側面図である。
【
図7】
図7は、波刃包丁の第2変更例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1~
図5を参照して、一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、右利き用の波刃包丁10について説明する。
図1及び
図2に示すように、波刃包丁10は、刀身11、口金31、及び柄32を備える。
【0015】
刀身11は、波形の刃先14、並びに刃先14にそれぞれ連なる第1面12及び第1面12の反対側に位置する第2面13を有する。刀身11は、幅方向W(
図1~
図4の上下方向)における刃先14とは反対側に、峰部15を有する。
【0016】
刀身11は、切っ先部23及びあご部24を有している。切っ先部23は、刀身11の長手方向L(
図1、
図2の左右方向)の先端に位置している。あご部24は、刃先14の長手方向Lの基端に位置している。
【0017】
<第1面12>
図1に示すように、第1面12は、平部16、凹刃17、及び山部18を有する。
平部16は、刀身11の長手方向Lの全体にわたって延在している。
【0018】
凹刃17は、刃先14の延在方向、すなわち刀身11の長手方向Lに複数並んでいる。凹刃17は、刃先14を構成する弧状部20を有する。
山部18は、隣り合う凹刃17同士の間に位置している。
【0019】
凹刃17と山部18とは互いに平行に延在している。
図3及び
図4に示すように、本実施形態の凹刃17は、第1凹刃17Aと第2凹刃17Bとを含む。長手方向Lにおける第2凹刃17Bの長さは、長手方向Lにおける第1凹刃17Aの長さよりも小さい。隣り合う第1凹刃17A同士の間に、2つの第2凹刃17Bが並んで配置されている。
【0020】
図4に示すように、第1弧状部20Aの端部21と第1弧状部20Aの中央部22との幅方向Wにおける距離w21は、第2弧状部20Bの端部21と第2弧状部20Bの中央部22との幅方向Wにおける距離w22よりも大きい。上記距離w21は、複数の弧状部20のうちの最大値w2maxである。第1弧状部20Aは、第1凹刃17Aの弧状部20であり、第2弧状部20Bは、第2凹刃17Bの弧状部20である。第1凹刃17Aの幅方向Wにおける長さw11及び第1凹刃17Aの幅方向Wにおける長さw12は、上記最大値w2maxよりも大きい。
【0021】
すなわち、凹刃17の幅方向Wにおける長さw11,w12が、弧状部20の端部21と弧状部20の中央部22との幅方向Wにおける距離であって複数の弧状部20のうちの最大値w2maxよりも大きい。全ての凹刃17の幅方向Wにおける長さw11,w12が、最大値w2maxよりも大きいことが好ましい。
【0022】
<第2面13>
図2に示すように、第2面13は平面状である。
本実施形態の刀身11は、所定の厚みの鋼板をプレス機により刀身11の外形に打ち抜いたものに対して、切削加工により凹刃17を形成することで製造される。なお、プレス機により、鋼板に凹刃17を形成するとともに鋼板を刀身11の外形に打ち抜くようにしてもよい。この場合、後工程において刃付け加工を行うことで刃先14が形成される。
【0023】
次に、波刃包丁10の研ぎ方法及び本実施形態の作用について説明する。
図5に示すように、例えば砥石90の平面91に対して第2面13を面接触させた状態で第2面13に沿って第2面13を研ぐことで、
図5に二点鎖線にて示すように、第2面13が均一に削り取られる。これにより、
図3に二点鎖線にて示すように、各凹刃17の刃先14である弧状部20を、形状を維持したまま鋭利な状態に戻すことができる。ただし、第2面13を研ぐことを繰り返すと、凹刃17の幅方向Wの長さが次第に小さくなり、最終的には凹刃17がなくなる。本実施形態の波刃包丁10によれば、凹刃17の幅方向Wの長さw11,w12が従来の凹刃に比べて大きいので、凹刃17がなくなるまでに行うことのできる研ぎの回数を増やすことができる。
【0024】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)凹刃17の幅方向Wにおける長さw11,w12が、弧状部20の端部21と弧状部20の中央部22との幅方向Wにおける距離であって複数の弧状部20のうちの最大値w2maxよりも大きい。
【0025】
こうした構成によれば、上記作用を奏するので、凹刃17がなくなるまでに行うことのできる研ぎの回数を増やすことで、凹刃17の寿命を長くすることができる。
(2)全ての凹刃17の幅方向Wにおける長さw11,w12が、最大値w2maxよりも大きい。
【0026】
こうした構成によれば、全ての凹刃17の幅方向Wの長さw11,w12が従来の凹刃に比べて大きいので、全ての凹刃17がなくなるまでに行うことのできる研ぎの回数を増やすことができる。したがって、全ての凹刃17の寿命を長くすることができる。
【0027】
(3)第1面12は、隣り合う凹刃17同士の間に位置する山部18を有する。凹刃17と山部18とが互いに平行に延在している。
こうした構成によれば、凹刃17と山部18とが互いに平行に延在しているため、第2面13を研ぐことで、各凹刃17の刃先14を、未使用状態の形状を維持したまま鋭利な状態に戻すことができる。
【0028】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0029】
・
図6に示すように、凹刃17及び山部18と平部16との間に、平部16に対して傾斜する傾斜面19を設けるようにしてもよい。この場合、上記実施形態の波刃包丁10を作製した後に、凹刃17及び山部18の基端部を削り取ることで傾斜面19を形成すればよい。こうした傾斜面19により、対象物を切る際の対象物との波刃包丁との接触面積を小さくすることができ、摩擦抵抗を小さくすること、すなわち切れ味の向上を図ることができる。
【0030】
・凹刃17の幅方向Wにおける長さは、上記実施形態において例示したものに限定されず、例えば刀身11の幅方向Wの半分に凹刃17を設けるようにしてもよい。また、
図7に示すように、刀身11の幅方向Wの全体にわたって凹刃17を設けるようにしてもよい。
【0031】
・波刃包丁10は、全ての凹刃17の幅方向Wにおける長さw11,w12が、最大値w2maxよりも大きいものに限定されず、一部の凹刃17については、幅方向Wにおける長さが最大値w2maxよりも小さいものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…波刃包丁
11…刀身
12…第1面
13…第2面
14…刃先
15…峰部
16…平部
17…凹刃
17A…第1凹刃
17B…第2凹刃
18…山部
19…傾斜面
20…弧状部
20A…第1弧状部
20B…第2弧状部
21…端部
22…中央部
23…切っ先部
24…あご部
31…口金
32…柄
90…砥石
91…平面
【要約】
【課題】凹刃がなくなるまでに行うことのできる研ぎの回数を増やすことで、凹刃の寿命を長くすることができる。
【解決手段】波刃包丁は、波形の刃先、並びに刃先にそれぞれ連なる第1面及び第1面の反対側に位置する第2面を有する刀身を備える。刀身の延在方向及び幅方向Wをそれぞれ延在方向及び幅方向Wとするとき、第1面は、刃先の延在方向に並ぶ複数の凹刃17A,17Bを有する。凹刃17A,17Bは、刃先を構成する弧状部20A,20Bを有する。凹刃17A,17Bの幅方向Wにおける長さw11,w12が、弧状部20A,20Bの端部21と中央部22との幅方向Wにおける距離であって複数の弧状部20A,20Bのうちの最大値w2maxよりも大きい。
【選択図】
図4