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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】個片体形成装置および個片体形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231214BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/78 V
H01L21/78 M
H01L21/68 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018090981
(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公開番号】P2019197809
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】杉下 芳昭
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】松永 稔
【審判官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-086611(JP,A)
【文献】特表2013-543262(JP,A)
【文献】特開2008-132710(JP,A)
【文献】特開2012-033636(JP,A)
【文献】特開2013-203799(JP,A)
【文献】特開2004-260083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/301, H01L21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成装置において、
所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性微粒子が添加されている接着シートを前記被着体に貼付するシート貼付手段と、
前記被着体に改質部を形成し、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域を前記被着体に形成する改質部形成手段と、
前記被着体に外力を付与し、前記改質部を起点として当該被着体に亀裂を形成し、当該被着体を個片化して前記個片体を形成する個片化手段とを備え、
前記個片化手段は、前記接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された接着シート部分に添加されている前記膨張性微粒子を膨張させ、当該接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて前記個片体を形成していきながら、前記エネルギーの付与を前記接着シートにおける前記被着体が貼付されている領域全体に行き渡らせて前記被着体を個片化することを特徴とする個片体形成装置。
【請求項2】
被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成装置において、
前記被着体には、改質部が形成され、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域が予め形成されており、
所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性微粒子が添加されている接着シートを前記被着体に貼付するシート貼付手段と、
前記被着体に外力を付与し、前記改質部を起点として当該被着体に亀裂を形成し、当該被着体を個片化して前記個片体を形成する個片化手段とを備え、
前記個片化手段は、前記接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された接着シート部分に添加されている前記膨張性微粒子を膨張させ、当該接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて前記個片体を形成することを特徴とする個片体形成装置。
【請求項3】
被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成方法において、
所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性微粒子が添加されている接着シートを前記被着体に貼付するシート貼付工程と、
前記被着体に改質部を形成し、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域を前記被着体に形成する改質部形成工程と、
前記被着体に外力を付与し、前記改質部を起点として当該被着体に亀裂を形成し、当該被着体を個片化して前記個片体を形成する個片化工程とを実施し、
前記個片化工程では、前記接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された接着シート部分に添加されている前記膨張性微粒子を膨張させ、当該接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて前記個片体を形成していきながら、前記エネルギーの付与を前記接着シートにおける前記被着体が貼付されている領域全体に行き渡らせて前記被着体を個片化することを特徴とする個片体形成方法。
【請求項4】
被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成方法において、
前記被着体には、改質部が形成され、当該改質部で囲繞または当該改質部と前記被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域が予め形成されており、
所定のエネルギーが付与されることで膨張する膨張性微粒子が添加されている接着シートを前記被着体に貼付するシート貼付工程と、
前記被着体に外力を付与し、前記改質部を起点として当該被着体に亀裂を形成し、当該被着体を個片化して前記個片体を形成する個片化工程とを実施し、
前記個片化工程では、前記接着シートに対して部分的に前記エネルギーを付与し、当該エネルギーが付与された接着シート部分に添加されている前記膨張性微粒子を膨張させ、当該接着シート部分に貼付されている前記個片化予定領域を変位させて前記個片体を形成することを特徴とする個片体形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個片体形成装置および個片体形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に形成した改質部を起点とし、当該被着体を個片化して個片体を形成する個片体形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-214457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来のウェーハ加工装置(個片体形成装置)では、ウェーハW(被着体)に貼付したダイシングテープ22(接着シート)を引っ張ることで当該被着体に張力を付与し、改質領域K(改質部)を起点にした個片化を行ってチップT(個片体)を形成するため、接着シートが破損したり、当該接着シートがフレームFや接着シート保持手段等から外れたりするといった不具合が起り、個片体を形成できなくなるという不都合を発生する。
【0005】
本発明の目的は、接着シートに張力を極力付与することなく被着体を個片化して個片体を形成することができる個片体形成装置および個片体形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着シートに添加されている膨張性微粒子を膨張させることで、個片化予定領域を変位させて個片体を形成するので、接着シートに張力を極力付与することなく被着体を個片化して個片体を形成することができる。
さらに、移動手段を備えれば、変位させたい個片化予定領域に個片化手段を移動させて個片体を形成することができる。
また、移動手段が、ライン状付与領域を第1方向と平行となるように移動させ、さらに、ライン状付与領域を第2方向と平行となるように移動させるように構成すれば、例えば、第1方向に沿う2つの辺と、第2方向に沿う2つの辺とで囲まれた四角形の個片体を形成することができる。
さらに、個片化手段が、第1エネルギーを付与する第1個片化手段と、第2エネルギーを付与する第2個片化手段とを備えていれば、第1エネルギーで膨張する第1膨張性微粒子と、第2エネルギーで膨張する第2膨張性微粒子とを時間差をもって膨張させることができる。
また、変位抑制手段を備えれば、変位する個片化予定領域と共に、隣接する個片化予定領域も一緒に変位し、改質部を起点とした亀裂の形成ができなくなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)、(B)は、本発明の実施形態に係る個片体形成装置の説明図。
図2】(A)~(D)は、上記個片体形成装置の動作説明図。
図3】(A)~(C)は、本発明の変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、図1(A)に示すY軸と平行な矢印BD方向から観た場合を基準とし、図を指定することなく方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な図1(A)中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
本発明の個片体形成装置EAは、被着体としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)WFを個片化して個片体としての半導体チップ(以下、単に「チップ」ともいう)CPを形成する装置であって、所定のエネルギーとしての赤外線IRが付与されることで膨張する膨張性微粒子SGが添加されている接着シートASをウエハWFに貼付するシート貼付手段10と、ウエハWFに改質部MTを形成し、当該改質部MTで囲繞された個片化予定領域WFPをウエハWFに形成する改質部形成手段20と、ウエハWFに外力を付与し、改質部MTを起点として当該ウエハWFに亀裂CKを形成し、当該ウエハWFを個片化してチップCPを形成する個片化手段30と、ウエハWFと個片化手段30とを相対移動させる移動手段40と、個片化手段30によって変位される前のウエハWF部分が変位することを抑制する変位抑制手段50と、ウエハWFを搬送するウエハ搬送手段60とを備えている。
なお、接着シートASは、基材BSと接着剤層ALとを備え、剥離シートRLに仮着されることで原反RSとされ、接着剤層ALのみに膨張性微粒子SGが添加されたものが採用されている。
【0011】
シート貼付手段10は、原反RSを支持する支持ローラ11と、原反RSを案内するガイドローラ12と、剥離縁13Aで剥離シートRLを折り曲げて当該剥離シートRLから接着シートASを剥離する剥離手段としての剥離板13と、ウエハWFに接着シートASを押圧して貼付する押圧手段としての押圧ローラ14と、駆動機器としての回動モータ15Aの図示しない出力軸に支持され、ピンチローラ15Bとで剥離シートRLを挟み込む駆動ローラ15と、ピンチローラ15Bとの間に存在する剥離シートRLに常に所定の張力を付与して当該剥離シートRLを回収する回収手段としての回収ローラ16と、駆動機器としてのリニアモータ17のスライダ17Aに支持され、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段(保持手段)によって吸着保持が可能な支持面18Aを有するウエハ搬送テーブル18と、ウエハ搬送テーブル18内に配置され、リフト台19Aを昇降させる駆動機器としての直動モータ19とを備えている。なお、リフト台19Aは、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段(保持手段)によって吸着保持が可能な支持面19Bを備えている。
【0012】
改質部形成手段20は、複数のアームによって構成され、その作業範囲内において、作業部である先端アーム21Aで支持したものを何れの位置、何れの角度にでも変位可能な駆動機器としての所謂多関節ロボット21と、多関節ロボット21の先端アーム21Aが嵌り込み、当該多関節ロボット21に保持されるレーザ保持部22Aを有するレーザ用ブラケット22と、レーザ用ブラケット22に支持され、ウエハWFにレーザLSを照射し、改質部MTを形成するレーザ照射機23とを備え、第1方向としてのY軸方向に沿う第1改質部MTYと、Y軸方向に交差する第2方向としてのX軸方向に沿う第2改質部MTXとを形成し、第1改質部MTYと第2改質部MTXとで囲繞された個片化予定領域WFPを形成するように構成されている。なお、多関節ロボット21は、例えば、特開2016-81974に例示されている多関節ロボット111等が例示できる。
【0013】
個片化手段30は、移動手段40に支持された光源ボックス31と、光源ボックス31内に支持され、赤外線IRを発光する発光源32と、当該発光源32で発光した赤外線IRを集光させる集光板33と、赤外線IRを透過可能な支持テーブル34とを備え、赤外線IRを付与した位置に、当該赤外線IRの付与領域が所定の方向に延びるライン状付与領域LGを形成し、接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与し、当該赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている膨張性微粒子SGを膨張させ、当該接着シート部分ASPに貼付されている個片化予定領域WFPを変位させてチップCPを形成する構成となっている。なお、支持テーブル34は、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段(保持手段)によって吸着保持が可能な支持面34Aを備えている。
【0014】
移動手段40は、駆動機器としての回動モータ41と、その出力軸41Aに支持され、光源ボックス31をそのスライダ42Aで支持する駆動機器としてのリニアモータ42とを備え、個片化手段30が形成したライン状付与領域LGをY軸方向と平行となるように移動させ、さらに、ライン状付与領域LGをX軸方向と平行となるように移動させる構成となっている。
【0015】
変位抑制手段50は、改質部形成手段20と共用される多関節ロボット21と、多関節ロボット21の先端アーム21Aが嵌り込み、当該多関節ロボット21に保持される押え板保持部51Aを有する押え板51とを備えている。
【0016】
ウエハ搬送手段60は、改質部形成手段20および変位抑制手段50と共用される多関節ロボット21と、多関節ロボット21の先端アーム21Aが嵌り込み、当該多関節ロボット21に保持される吸着アーム保持部61Aを有し、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段によって吸着保持が可能な保持手段としての吸着アーム61とを備えている。
【0017】
以上の個片体形成装置EAの動作を説明する。
先ず、図1(A)中実線で示す初期位置に各部材が配置された個片体形成装置EAに対し、当該個片体形成装置EAの使用者(以下、単に「使用者」という)が図1(B)のように原反RSをセットした後、操作パネルやパーソナルコンピュータ等の図示しない操作手段を介して運転開始の信号を入力する。すると、シート貼付手段10が回動モータ15Aを駆動し、原反RSを繰り出して先頭の接着シートASの繰出方向先端部が剥離板13の剥離縁13Aで剥離シートRLから所定長さ剥離されると、回動モータ15Aの駆動を停止する。一方、個片体形成装置EAに運転開始の信号が入力されると、ウエハ搬送手段60が多関節ロボット21を駆動し、先端アーム21Aを吸着アーム保持部61Aに嵌め込んで多関節ロボット21で吸着アーム61を保持する。
【0018】
次いで、使用者または多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、図1(A)、(B)中実線で示すように、ウエハWFをウエハ搬送テーブル18上に載置すると、シート貼付手段10が図示しない減圧手段を駆動し、支持面18A、19BでのウエハWFの吸着保持を開始する。その後、シート貼付手段10がリニアモータ17を駆動し、ウエハ搬送テーブル18を左方へ移動させ、ウエハWFが所定の位置に到達すると、回動モータ15Aを駆動し、ウエハWFの移動速度に合わせて原反RSを繰り出す。これにより、接着シートASは、図1(B)中二点鎖線で示すように、剥離板13の剥離縁13Aで剥離シートRLから剥離されつつ、押圧ローラ14によってウエハWFの上面に押圧されて貼付される。接着シートAS全体がウエハWFに貼付された後、次の接着シートASの繰出方向先端部が剥離板13の剥離縁13Aで剥離シートRLから所定長さ剥離されると、シート貼付手段10が回動モータ15Aの駆動を停止する。
【0019】
次に、接着シートAS全体が貼付されたウエハWFが押圧ローラ14の左方の所定位置に到達すると、シート貼付手段10がリニアモータ17の駆動を停止した後、図示しない減圧手段の駆動を停止し、支持面18AでのウエハWFの吸着保持を解除する。そして、シート貼付手段10が直動モータ19を駆動し、図1(B)中二点鎖線で示すように、リフト台19Aを上昇させてウエハWFを支持面18Aから離間させると、ウエハ搬送手段60が多関節ロボット21を駆動し、ウエハWFの下面に吸着アーム61を当接させた後、図示しない減圧手段を駆動し、吸着アーム61でのウエハWFの吸着保持を開始する。次いで、シート貼付手段10が図示しない減圧手段の駆動を停止し、支持面19BでのウエハWFの吸着保持を解除すると、ウエハ搬送手段60が多関節ロボット21を駆動し、接着シートASが貼付されたウエハWFを支持面19Bから離間させた後、シート貼付手段10がリニアモータ17および直動モータ19を駆動し、ウエハ搬送テーブル18およびリフト台19Aを初期位置に復帰させる。
【0020】
その後、ウエハ搬送手段60が多関節ロボット21を駆動し、吸着アーム61を天地反転させ、接着シートASが貼付されたウエハWFの当該接着シートAS側を支持テーブル34上に載置すると、個片化手段30が図示しない減圧手段を駆動し、支持面34AでのウエハWFの吸着保持を開始する。次に、ウエハ搬送手段60が図示しない減圧手段の駆動を停止し、吸着アーム61でのウエハWFの吸着保持を解除した後、多関節ロボット21を駆動し、吸着アーム61を初期位置に復帰させ、先端アーム21Aを吸着アーム保持部61Aから抜き取り、当該先端アーム21Aをレーザ保持部22Aに嵌め込んで多関節ロボット21でレーザ照射機23を保持する。そして、改質部形成手段20が多関節ロボット21およびレーザ照射機23を駆動し、レーザ照射機23を前後方向に移動させ、図2(A)に示すように、ウエハWFに第1改質部MTYを形成した後、レーザ照射機23を左右方向に移動させ、図2(B)に示すように、ウエハWFに第2改質部MTXを形成し、個片化予定領域WFPを形成する。次いで、改質部形成手段20が多関節ロボット21を駆動し、レーザ照射機23を初期位置に復帰させた後、先端アーム21Aをレーザ保持部22Aから抜き取り、当該先端アーム21Aを押え板保持部51Aに嵌め込んで多関節ロボット21で押え板51を保持する。
【0021】
その後、個片化手段30および移動手段40が発光源32およびリニアモータ42を駆動し、Y軸方向に延びるライン状付与領域LGを形成した後、図2(C)に示すように、光源ボックス31を左方から右方に向けて移動させ、ライン状付与領域LGをY軸方向と平行な状態で移動させる。すると、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている膨張性微粒子SGが同図に示すように次々に膨張し、接着剤層ALに無数の凸部CVが形成される。これにより、ウエハWFは、左方から右方に向けて次々に部分的に持ち上げられて変位し、第1改質部MTYが起点となってY軸方向に延びる亀裂CKYが形成され、Y軸方向に延びる短冊状のウエハWFSとなる。
なお、本実施形態では、上記のようにして亀裂CKYを形成する際、個片化手段30は、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている個々の膨張性微粒子SGが完全に膨張しないように、または、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている膨張性微粒子SG全てが膨張しないように赤外線IRを照射するようになっている。また、上記のようにして亀裂CKYを形成する際、変位抑制手段50が多関節ロボット21を駆動し、変位させたくない個片化予定領域WFP上に押え板51を配置させ、改質部MTを起点とした亀裂CKの形成ができなくなることを防止する。
【0022】
次に、光源ボックス31がウエハWFの右端部の右方所定位置に到達すると、個片化手段30および移動手段40が発光源32およびリニアモータ42の駆動を停止した後、移動手段40が回動モータ41を駆動し、個片化手段30をXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させる。そして、個片化手段30および移動手段40が発光源32およびリニアモータ42を駆動し、X軸方向に延びるライン状付与領域LGを形成した後、図2(D)に示すように、光源ボックス31を後方から前方に向けて移動させ、ライン状付与領域LGをX軸方向と平行な状態で移動させる。すると、同図に示すように、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている個々の膨張性微粒子SGが次々にさらに大きく膨張し、または、赤外線IRが付与された接着シート部分ASPに添加されている膨張性微粒子SGのさらに多くが膨張し、接着剤層ALに形成されていた無数の凸部CVが拡大する。これにより、短冊状のウエハWFSは、後方から前方に向けて次々に部分的に持ち上げられて変位し、第2改質部MTXが起点となってX軸方向に延びる亀裂CKXが形成され、当該亀裂CKXと先に形成されていた亀裂CKYとで複数のチップCPとなる。このときも、変位抑制手段50が多関節ロボット21を駆動し、変位させたくない個片化予定領域WFPを押え板51で押さえておく。
【0023】
次いで、光源ボックス31がウエハWFの前端部の前方所定位置に到達すると、個片化手段30が発光源32の駆動を停止した後、移動手段40が回動モータ41およびリニアモータ42を駆動し、光源ボックス31を初期位置に復帰させる。その後、変位抑制手段50が多関節ロボット21を駆動し、押え板51を初期位置に復帰させた後、先端アーム21Aを押え板保持部51Aから抜き取り、当該先端アーム21Aを含む各アームを初期位置に復帰させる。次に、ピックアップ装置や保持装置等の図示しないチップ搬送手段や使用者が、全てのチップCPまたは所定数のチップCPを接着シートASから取り外し、当該チップCPを別の工程に搬送すると、個片化手段30が図示しない減圧手段の駆動を停止し、支持面34Aでの接着シートASの吸着保持を解除した後、使用者または図示しない除去手段が支持テーブル34上から接着シートASを除去し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0024】
以上のような実施形態によれば、接着シートASに添加されている膨張性微粒子SGを膨張させることで、個片化予定領域WFPを変位させてチップCPを形成するので、接着シートASに張力を極力付与することなくウエハWFを個片化してチップCPを形成することができる。
【0025】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、改質部形成手段は、被着体に改質部を形成し、当該改質部で囲繞または当該改質部と被着体の外縁とで囲繞された個片化予定領域を被着体に形成可能なものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0026】
シート貼付手段10は、剥離シートRLに仮着された帯状の接着シート基材に閉ループ状または短寸幅方向全体の切込が形成されることで、その切込で仕切られた所定の領域が接着シートASとされた原反RSを繰り出してもよいし、帯状の接着シート基材が剥離シートRLに仮着された原反RSを採用し、接着シート基材に閉ループ状または短寸幅方向全体の切込を切断手段で形成し、その切込で仕切られた所定の領域を接着シートASとしてもよいし、支持ローラ11やガイドローラ12等の各ローラの代わりに、板状部材やシャフト部材等で原反RSや剥離シートRLを支持したり案内したりしてもよいし、原反RSを巻回することなく例えばファンフォールド折りにして支持してもよいし、回収手段は、巻回することなく例えばファンフォールド折りにして剥離シートRLを回収してもよいし、シュレッダ等で切り刻んだりして回収してもよいし、巻回したりファンフォールド折りにしたりすることなく単に集積して回収してもよいし、剥離板13で剥離された接着シートASを接着面の反対側から保持部材で保持し、保持した接着シートASをウエハWFに押圧して貼付する駆動機器を備えた構成でもよいし、ウエハWFを移動させずにまたは移動させつつ、剥離板13や押圧ローラ14等を移動させ、当該ウエハに接着シートASを貼付してもよいし、支持面18A、19Bに保持手段がなくてもよいし、天地反転して配置したり横向きに配置したりして、接着シートASをウエハWFに貼付してもよいし、リニアモータ17およびウエハ搬送テーブル18の代わりに、多関節ロボット21でウエハWFを保持して移動させることで当該ウエハWFに接着シートASを貼付してもよいし、押圧ローラ14をウエハWFに離間接近させる押圧部材接離手段としての駆動機器を採用し、ウエハWFにストレスがかかったり損傷したりすることを防止するようにしてもよいし、他の装置でウエハWFを移動させる場合、リニアモータ17、ウエハ搬送テーブル18、直動モータ19等が備わっていなくてもよい。
【0027】
改質部形成手段20は、レーザ照射機23を移動させずにまたは移動させつつ、ウエハWFを移動させて当該ウエハWFに改質部MTを形成してもよいし、X軸またはY軸と平行な1本または複数本の改質部MTを形成してもよいし、X軸またはY軸と平行でない1本または複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に等間隔または不等間隔な複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に平行または平行でない複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に交差しない複数本の改質部MTを形成してもよいし、相互に直交または斜交する複数本の改質部MTを形成してもよいし、第1、第2方向以外に、その他の1または2以上の方向それぞれに1本または複数本の改質部MTを形成してもよいし、曲線状または折線状の1本または複数本の改質部MTを形成してもよく、そのような改質部MTによって形成される個片化予定領域WFPやチップCPの形状は、円形、楕円形、三角形または四角形以上の多角形等、どのような形状でもよい。
改質部形成手段20は、レーザ光、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等の付与によって、ウエハWFの特性、特質、性質、材質、組成、構成、寸法等を変更することで、ウエハWFを脆弱化、粉砕化、液化または空洞化して改質部MTを形成してもよく、このような改質部MTは、膨張性微粒子SGの膨張を外力とし、被着体を個片化して個片体を形成することができればどのようなものでもよい。
改質部形成手段20は、変位抑制手段50やウエハ搬送手段60と共用することのない駆動機器でレーザ照射機23を保持して移動させる構成でもよいし、ウエハWFに改質部MTが形成され、当該改質部MTで囲繞または当該改質部MTとウエハWFの外縁とで囲繞された個片化予定領域WFPが予め形成されている場合、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよいし、備わっていてもよい。
【0028】
個片化手段30は、図3(A)に示すように、接着シートAS全体に一括で赤外線IRを付与可能な発光源35と、当該発光源35で発光した赤外線IRを反射させる反射板36と、反射板36の上部の開口部36Aを開閉可能な開閉板37とで構成してもよい。この場合、発光源35を駆動して赤外線IRを発光し、開口部36Aを開閉板37で全閉にした状態から当該開閉板37を左方から右方に向けて徐々に移動させ、図3(A-1)に示すように、左方から右方に向けて次々に亀裂CKYを形成し、Y軸方向に延びる短冊状のウエハWFSを形成する。次いで、開口部36Aを開閉板37で全閉にした後、個片化手段30をXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させる。その後、開閉板37を後方から前方に向けて徐々に移動させ、図3(A-2)に示すように、後方から前方に向けて次々に亀裂CKXを形成し、亀裂CKXと亀裂CKYとでチップCPを形成してもよい。
個片化手段30は、開閉板37の代わりに、図3(B-1)、(B-2)に示すように、発光源35が発光した赤外線IRでライン状付与領域LGを形成するスリット38Aを備えた移動板38を採用してもよいし、スリット38Aに赤外線IRを集光させたり平行光としたりするレンズを設けてもよいし、開閉板37や移動板38を例えば支持テーブル34側に設けてもよい。
個片化手段30は、集光板33や反射板36がなくてもよいし、集光板33の代わりにまたは集光板33と併用し、赤外線IRを集光させたり平行光としたりするレンズを設けてもよいし、膨張性微粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して、接着シートASに赤外線IRを照射する時間を任意に決定することができるし、発光源32、35として、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等何を採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりしてもよいし、エネルギーとしてレーザ光、電磁波、振動、熱、薬品、化学物質等を付与するものを採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりしてもよく、膨張性微粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して任意の構成を採用することができるし、接着シートASが貼付されたウエハWFの当該ウエハWF側を支持テーブル34上に載置し、支持テーブル34の反対側から赤外線IRを照射してもよいし、被着体が所定のエネルギーを透過可能なものの場合、当該所定のエネルギーを被着体側から付与してもよいし、接着シートAS側から付与してもよいし、被着体側と接着シートAS側との両方から付与してもよい。
個片化手段30は、前記実施形態では、ライン状付与領域LGを形成して接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与したが、赤外線IRの付与領域が点状となる点状付与領域を形成し、接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与したり、個片化予定領域WFPの平面形状に対応した面状付与領域または、個片化予定領域WFPの平面形状に対応していない面状付与領域を形成して接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与したりしてもよいし、例えば、任意の位置の個片化予定領域WFPの1つまたは複数の区画に対応する接着シート部分ASPだけに赤外線IRを付与し、当該接着シート部分ASPに貼付されている1つまたは複数の区画からなる個片化予定領域WFPを変位させてチップCPを形成してもよい。
支持テーブル34は、保持手段がなくてもよいし、被着体が所定のエネルギーを透過不可能なものであれば、当該所定のエネルギーを透過可能なもので構成すればよいし、被着体が所定のエネルギーを透過可能なものであれば、当該所定のエネルギーを透過不可能なもので構成してもよいし、透過可能なもので構成してもよいし、多関節ロボット21でウエハWFを保持する場合や、他の装置でウエハWFを支持する場合、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよい。
【0029】
移動手段40は、図3(C)に示すように、第1改質部MTYおよび第2改質部MTXに斜交するライン状付与領域LG(不図示)をウエハWFの一端から他端に向けて移動させることで、第1、第2改質部MTY、MTXの両方を起点として亀裂CKY、CKXを同時に形成し、チップCPを形成してもよい(図3(C)には、ウエハWFに貼付されている接着シートASは不図示)。なお、この場合の斜交角度は、例えば、X軸やY軸に対して1度、5度、10度、45度、60度、89度等、どのような角度でもよい。
移動手段40は、個片化手段30を移動させずにまたは移動させつつ、ウエハWFを移動させ、個片化手段30に対してウエハWFをXY平面内で上面視反時計回転方向に90度回転移動させたり、ライン状付与領域LGをY軸方向と平行となるように移動させたり、ライン状付与領域LGをX軸方向と平行となるように移動させたりしてもよいし、ライン状付与領域LGをX軸やY軸方向と平行とならないように移動させてもよいし、個片化手段30およびウエハWFの少なくとも一方を右方から左方に向けて移動させてもよいし、個片化手段30およびウエハWFの少なくとも一方を前方から後方に向けて移動させてもよいし、個片化手段30およびウエハWFの少なくとも一方をその他の方向から別の方向に向けて移動させてもよいし、個片化手段30およびウエハWFの少なくとも一方をXY平面内で上面視時計回転方向に90度回転移動させてもよいし、個片化手段30およびウエハWFの少なくとも一方をXY平面内で90度以下または90度以上回転移動させてもよいし、本発明の個片体形成装置EAを構成する構成物として備わっていてもよいし、他の装置で個片化手段30およびウエハWFの少なくとも一方を移動させる場合、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよいし、例えば、ウエハWFの1箇所だけに個片化予定領域WFPが形成されており、個片化手段30がこの個片化予定領域WFPの平面形状に対応または対応していない面状付与領域を形成し、接着シートASに対して部分的に赤外線IRを付与して1つのチップCPを形成する場合等においても、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよい。
【0030】
変位抑制手段50は、変位させたくない個片化予定領域WFP上に押え板51を当接させてもよいし、当接させなくてもよいし、気体の吹き付けにより、個片化手段30によって変位される前のウエハWFが変位することを抑制したり、プーリとベルトとで個片化手段30によって変位される前のウエハWFが変位することを抑制したりする他の構成を採用してもよいし、改質部形成手段20やウエハ搬送手段60と共用することのない駆動機器で押え板51を保持して移動させる構成でもよいし、押え板51を一方向(例えば左右方向)に移動させる駆動機器と、他の押え板を他方向(例えば前後方向)に移動させる別の駆動機器とを採用してもよいし、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよい。
【0031】
ウエハ搬送手段60は、改質部形成手段20や変位抑制手段50と共用することのない駆動機器で吸着アーム61を保持して移動させる構成でもよいし、接着シートASが貼付されたウエハWFを他の装置で移動させる場合、本発明の個片体形成装置EAに備わっていなくてもよい。
【0032】
例えば、膨張性微粒子SGが、第1エネルギーとしての80℃の熱エネルギーで膨張する図示しない第1膨張性微粒子と、第2エネルギーとしての120℃の熱エネルギーで膨張する図示しない第2膨張性微粒子とを有し、個片化手段30が、80℃の熱エネルギーを付与する図示しない第1個片化手段と、120℃の熱エネルギーを付与する図示しない第2個片化手段とを備えていてもよい。この場合、上記実施形態と同様の動作で、個片化手段30が、80℃の熱エネルギーを付与して第1改質部MTYを起点として亀裂CKYを形成した後、120℃の熱エネルギーを付与して第2改質部MTXを起点として亀裂CKXを形成し、チップCPを形成することができる。なお、第1エネルギーや第2エネルギーは、何度の熱エネルギーでもよいし、膨張性微粒子SGが、第1、第2エネルギー以外の他の温度の熱エネルギーで膨張する他の膨張性微粒子を有する場合、個片化手段30は、他の温度の熱エネルギーを付与する他の個片化手段を増設することができる。
また、膨張性微粒子SGとして、第1エネルギーとしての赤外線で膨張する図示しない第1膨張性微粒子と、第2エネルギーとしての紫外線で膨張する図示しない第2膨張性微粒子とが添加されている接着シートASを採用し、個片化手段30が、赤外線を付与する図示しない第1個片化手段と、紫外線を付与する図示しない第2個片化手段とを備えていてもよい。この場合、上記実施形態と同様の動作で、個片化手段30が、赤外線を付与して第1改質部MTYを起点として亀裂CKYを形成した後、紫外線を付与して第2改質部MTXを起点として亀裂CKXを形成し、チップCPを形成してもよい。なお、第1エネルギーと第2エネルギーとの組み合わせは、以外の他のエネルギーで膨張する他の膨張性微粒子が添加されている接着シートASが採用された場合、当該他のエネルギーを付与する他の個片化手段を増設することができる。
さらに、前記実施形態では、ウエハWFの一端から他端に向けて徐々にライン状付与領域LGを移動させたが、改質部MTが形成されている位置のみにライン状付与領域LGが位置するように個片化手段30を移動させ、改質部MTを起点として亀裂CKを形成したり、発光源32、35を消灯させておき、改質部MTが形成されている位置にライン状付与領域LGが位置するように個片化手段30やスリット38Aを移動させてから発光源32、35を駆動し、改質部MTを起点として亀裂CKを形成したりしてもよい。
また、接着シートASとして、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等の熱を所定のエネルギーとして膨張する膨張性微粒子SGが添加されているものが採用されてもよく、個片化手段30は、それら膨張性微粒子SGの特性、特質、性質、材質、組成および構成等を考慮して当該膨張性微粒子SGを膨張させ、被着体を個片化して個片体を形成できればよい。
個片体形成装置EAは、接着シートASからチップCPを取り外すことなく、搬送手段や使用者が接着シートASごとチップCPを別の工程に搬送するものいでもよい。
【0033】
接着シートASは、当該接着シートASを構成する基材BSのみに膨張性微粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層ALと基材BSとの両方に膨張性微粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、接着剤層ALと基材BSとの中間に1または複数の中間層が存在し、当該中間層、接着剤層ALおよび基材BSのうち少なくとも1つまたは少なくとも2つに膨張性微粒子SGが添加されているものが採用されてもよいし、ウエハWFにおける回路が形成された面に貼付されてもよいし、回路が形成されていない面に貼付されてもよいし、ウエハWFの両面に貼付されてもよく、このように、ウエハWFの両面に接着シートASが貼付される場合、それら接着シートASは、同一のものでもよいし、同一でないものでもよいし、一方の接着シートには、膨張性微粒子SGが添加されていなくてもよいし、支持面18A、19Bに当接する面に予め接着シートASまたは接着シートASとは異なる接着シートが貼付されていてもよいし、接着剤層ALと基材BSとの両方に膨張性微粒子SGが添加されている場合や、中間層、接着剤層ALおよび基材BSのうち少なくとも2つに膨張性微粒子SGが添加されている場合、それら膨張性微粒子SGは、同一のものでもよいし、同一でないものでもよい。なお、個片化手段30でチップCPを形成する際、邪魔な接着シートは、当該個片化手段30で外力を付与する前に、公知のシート剥離手段でウエハWFから剥離してもよい。
個片体は、チップCPに限らず、例えば、短冊状のウエハWFSでもよく、この場合の個片化予定領域は、第1改質部MTYとウエハWFの外縁とで囲繞された領域となり、移動手段40は、個片化手段30が形成したライン状付与領域LGを1つの方向(例えばY軸、X軸またはその他の方向)に移動させるだけでよい。
被着体が予め短冊状のウエハWFSのようなものであれば、移動手段40は、個片化手段30が形成したライン状付与領域LGを1つの方向(例えばY軸、X軸またはその他の方向)にだけ移動させてチップCPを形成してもよい。
個片化予定領域は、改質部MTとウエハWFの外縁とで囲繞されたものでもよく、このような個片化予定領域から形成される個片体は、例えば、X軸と平行な1つの辺とY軸と平行な1つの辺とウエハWFの外縁とで形成される略扇状のものや、X軸と平行な2つの辺とY軸と平行な1つの辺とウエハWFの外縁とで形成される形状のもの等、どのような形状のものでもよい。
膨張性微粒子SGは、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱によって容易にガス化して膨張する物質が弾性を有する殻内に内包された微粒子等が例示でき、特願2017-73236、特開2013-159743、特開2012-167151、特開2001-123002等で開示されている熱発泡性微粒子や、特開2013-47321、特開2007-254580、特開2011-212528、特開2003-261842等で開示されている膨張性微粒子等、何ら限定されるものではなく、例えば、熱分解して、水、炭酸ガス、窒素を発生させて膨張性微粒子と類似の効果を奏する発泡剤を採用してもよいし、特開2016-53115、特開平7-278333で開示されている紫外線により気体を発生するアゾ化合物等の気体発生剤で殻を膨張させるものでもよいし、例えば、加熱によって膨張するゴムや樹脂等でもよいし、その他、重曹、炭酸水素ナトリウム、ベーキングパウダ等でもよい。
ウエハWFは、一方の面および他方の面のうち少なくとも一方に所定の回路が形成されていてもよいし、それら両方に回路が形成されていなくてもよい。
接着シートASは、無数の凸部CVが形成されることで、チップCPとの接着領域が減少して当該チップCPとの接着力が減少してもよいし、チップCPとの接着力が減少しなくてもよく、チップCPとの接着力を減少させて当該チップCPの取り外しを容易にするために、例えば、赤外線、紫外線、可視光線、音波、X線またはガンマ線等の電磁波や、熱湯や熱風等の接着力低減エネルギーによって、接着剤層ALの接着力が低減するものを採用してもよい。この場合、接着力低減エネルギーを照射する接着力低減エネルギー付与手段を採用し、チップCPを接着シートASから取り外す前段で、当該接着シートASに接着力低減エネルギーを照射するようにすればよい。
【0034】
本発明の個片体形成装置EAは、ウエハWFを所定の厚みにまで研削(研磨)する公知の研削(研磨)手段が備わっていてもよいし、チップCPを接着シートASから取り外す公知のピックアップ手段が備わっていてもよいし、接着シートASから取り外したチップCPを基板や載置台等の他の部材に接着する公知の接着手段が備わっていてもよい。
【0035】
本発明における接着シートASおよび被着体の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の接着シートASが採用された場合は、当該接着シートASを加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプの加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、このような接着シートASは、例えば、接着剤層ALだけの単層のもの、基材BSと接着剤層ALとの間に中間層を有するもの、基材BSの上面にカバー層を有する等3層以上のもの、更には、基材BSを接着剤層ALから剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層又は複層の中間層を有するものや、中間層のない単層又は複層のものであってよい。また、被着体としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物であってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物であってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートASは、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0036】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、ローラ等の回転部材が採用されている場合、当該回転部材を回転駆動させる駆動機器を備えてもよいし、回転部材の表面や回転部材自体をゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、回転部材の表面や回転部材自体を変形しない部材で構成してもよいし、ローラの代わりに回転するまたは回転しないシャフトやブレード等の他の部材を採用してもよいし、押圧ローラや押圧ヘッド等の押圧手段や押圧部材といった被押圧物を押圧するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、ローラ、丸棒、ブレード材、ゴム、樹脂、スポンジ等の部材を採用したり、大気やガス等の気体の吹き付けにより押圧する構成を採用したりしてもよいし、押圧するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし、剥離板や剥離ローラ等の剥離手段や剥離部材といった被剥離物を剥離するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、板状部材、丸棒、ローラ等の部材を採用してもよいし、剥離するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材を支持または保持するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよいし、切断手段や切断部材等の被切断部材を切断または、被切断部材に切込や切断線を形成するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、カッター刃、レーザカッタ、イオンビーム、火力、熱、水圧、電熱線、気体や液体等の吹付け等で切断するものを採用したり、適宜な駆動機器を組み合わせたもので切断するものを移動させて切断するようにしたりしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
EA…個片体形成装置
10…シート貼付手段
20…改質部形成手段
30…個片化手段
40…移動手段
50…変位抑制手段
AS…接着シート
ASP…接着シート部分
CK…亀裂
CP…半導体チップ(個片体)
IR…赤外線(エネルギー)
LG…ライン状付与領域
MT…改質部
MTX…第2改質部
MTY…第1改質部
SG…膨張性微粒子
WF…半導体ウエハ(被着体)
WFP…個片化予定領域
図1
図2
図3