(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】型枠ユニット
(51)【国際特許分類】
E02D 5/20 20060101AFI20231214BHJP
E04G 9/00 20060101ALI20231214BHJP
E04G 11/06 20060101ALI20231214BHJP
E04G 19/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E02D5/20
E04G9/00 102
E04G11/06 A
E04G19/00 B
(21)【出願番号】P 2018124950
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】前川 慎喜
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-10460(JP,B1)
【文献】実開平6-47498(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/20
E04G 9/00
E04G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられる型枠ユニットであって、
それぞれ隣り合うように配置され、水平方向において互いに当接している第1型枠及び第2型枠と、
前記第1型枠に対して前記第2型枠側とは反対側の位置に配置され、水平方向において前記第1型枠に当接している第3型枠と、を備え、
前記第1型枠において、前記第2型枠に当接する第1当接部と、前記第3型枠に当接する第2当接部とのうち一方の当接面が、前記第1型枠の下方から上方へ向かうに従って他方の当接面から離れるように傾斜して延びており、
前記第1型枠よりも上方に配置され、複数並べられた型枠の上面に沿って延びている延出部材と、
前記第1型枠と前記延出部材を連結し、前記第1型枠に対して前記延出部材の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられる高さ調整部材と、
前記第1型枠と前記延出部材の上下方向の間に隙間を形成するために、前記延出部材と、前記第2型枠及び前記第3型枠それぞれとの間に配置される中間部材と、をさらに備えていることを特徴とする型枠ユニット。
【請求項2】
前記高さ調整部材は、前記第1型枠のうち前記第1当接部と前記第2当接部の間の中央位置に配置され、かつ、前記第2型枠及び前記第3型枠それぞれの上面に配置される前記中間部材の間の中央位置に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の型枠ユニット。
【請求項3】
コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられる型枠ユニットであって、
それぞれ隣り合うように配置され、水平方向において互いに当接している第1型枠及び第2型枠と、
前記第1型枠に対して前記第2型枠側とは反対側の位置に配置され、水平方向において前記第1型枠に当接している第3型枠と、を備え、
前記第1型枠において、前記第2型枠に当接する第1当接部と、前記第3型枠に当接する第2当接部とのうち一方の当接面が、前記第1型枠の下方から上方へ向かうに従って他方の当接面から離れるように傾斜して延びており、
前記第1型枠のうち前記第1当接部に取り付けられ、前記第1型枠に対して前記第2型枠を着脱可能となるように連結する連結部材と、
該連結部材と接続され、前記第1型枠よりも上方位置において前記連結部材の連結状態を解除するために操作される操作部を有する連結解除部材と、をさらに備えていることを特徴とする型枠ユニット。
【請求項4】
前記連結解除部材は、長尺な弾性部材であって、
前記連結解除部材は、前記連結部材に対して取り付けられる末端部と、前記第1型枠よりも上方位置に張り出すように配置される先端部と、を有し、
前記操作部は、前記弾性部材のうち、前記第1型枠よりも上方位置に張り出した前記先端部側の位置に設けられていることを特徴とする請求項
3に記載の型枠ユニット。
【請求項5】
前記第1当接部と前記第2当接部との双方の当接面が、前記第1型枠の下端部から上端部まで向かうに従って互いに離れるように延びており、かつ、上下方向に対して傾斜する方向に延びていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の型枠ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠ユニットに係り、特に、コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられる型枠ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の基礎工事において型枠ユニットが用いられている。
主な基礎工事の流れとしては、まず基礎が形成される部分の地盤を根切りし、根切りされた地盤に対して地耐力を確保すべく砕石を敷き詰めて固める。そして、床下からの湿気防止のため防湿フィルムを敷き込むと共に、基礎外周部において捨てコンクリートを打設して基礎配筋用の墨出しを行った上で、配筋作業を実施する。そして、基礎の形状に合わせて型枠を組み、基礎のベース部分に対しコンクリートを打設した後、さらに基礎内部の立ち上がり部分の型枠を組み、当該立ち上がり部分に対しコンクリートを打設する(当該型枠を組む際には建物の基礎と土台を繋ぐアンカーボルトを合わせて設置する)。そして、コンクリートの十分な養生期間を経た後、組み立てられた型枠を取り外すこととなる。
上記基礎工事において、作業者による作業性の効率を上げるべく、型枠ユニットの形状、構成を工夫したものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の型枠ユニットでは、コンクリートを打設した後に型枠ユニットを容易に取り外すことを目的として、隣り合う型枠同士の当接面が斜めになるように型枠を組み立てる構成が開示されている。詳しく言うと、組み立てられた型枠同士を上面から見たときに、当該当接面が、従来は型枠の幅方向に沿って真っ直ぐに延びているところ、型枠の幅方向に対して傾斜する方向に沿って延びている。
上記構成により、当接面において摩擦を軽減することができ、組み立てられた型枠を当該型枠の幅方向外側へ引っ張ることで、当該型枠を容易に取り外すことができる。
【0004】
特許文献2に記載の型枠の建て込み方法においても、隣り合う型枠同士が傾斜面を有し、互いの傾斜面を当接させて型枠全体を組み立てる構成が開示されており、組み立てられた型枠を幅方向の外側へ引っ張るときに打設コンクリートから剥離し易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平8-236号公報
【文献】特開平5-295887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、狭小地に建てられる狭小住宅のように、隣の建物との距離が例えば30~50cm程度しかないような狭小地において建物を建築する場合には、作業者による基礎工事において型枠の取り外し作業が困難になることがある。
詳しく言うと、通常の作業者は、組み立てられた型枠を当該型枠の幅方向外側へ引っ張ることで、当該型枠を真横に倒して取り外しているところ、上記のような狭小地においては、作業者が型枠を真横に倒すことが可能なスペースが十分に確保できない場合が生じていた。
上記の場合には、特許文献1や特許文献2のような型枠ユニットをそのまま採用することができないため、作業者が現場レベルで特殊な工具や治具を別途使用する等して対応していた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、隣の建物と接近して建築される建物の基礎工事の場合であっても、作業者の負担を軽減することが可能な型枠ユニットを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、建物の基礎工事において組み立てられた型枠を容易に取り外すことが可能な型枠ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の型枠ユニットによれば、コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられる型枠ユニットであって、それぞれ隣り合うように配置され、水平方向において互いに当接している第1型枠及び第2型枠と、前記第1型枠に対して前記第2型枠側とは反対側の位置に配置され、水平方向において前記第1型枠に当接している第3型枠と、を備え、前記第1型枠において、前記第2型枠に当接する第1当接部と、前記第3型枠に当接する第2当接部とのうち一方の当接面が、前記第1型枠の下方から上方へ向かうに従って他方の当接面から離れるように傾斜して延びており、前記第1型枠よりも上方に配置され、複数並べられた型枠の上面に沿って延びている延出部材と、前記第1型枠と前記延出部材を連結し、前記第1型枠に対して前記延出部材の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられる高さ調整部材と、前記第1型枠と前記延出部材の上下方向の間に隙間を形成するために、前記延出部材と、前記第2型枠及び前記第3型枠それぞれとの間に配置される中間部材と、をさらに備えていること、により解決される。
このとき、前記高さ調整部材は、前記第1型枠のうち前記第1当接部と前記第2当接部の間の中央位置に配置され、かつ、前記第2型枠及び前記第3型枠それぞれの上面に配置される前記中間部材の間の中央位置に配置されていると良い。
上記構成により、隣の建物と接近して建築される建物の基礎工事の場合であっても、作業者の負担を軽減することが可能な型枠ユニットを実現することができる。
詳しく説明すると、本発明の型枠ユニットであれば、作業者が第1型枠を上方へ引っ張って取り外すときに第1型枠にかかる摩擦を軽減することができ、第1型枠を容易に取り外すことができる。また、従来のように、作業者が第1型枠を真横に倒して取り外す必要がないため、狭小地において十分な幅スペースが確保できない場合であっても、作業者が型枠の取外し作業を効率良く実施することができる。
また上記構成により、第1型枠に対する延出部材の高さ位置を低くするように高さ調整部材を用いて調整することで、第2型枠及び第3型枠を支点として第1型枠に対し上方向の反力が生じるため、第1型枠が第2型枠及び第3型枠に対して浮き上がる又は浮き上がり易くなる。従って、作業者が高さ調整部材を利用しながら第1型枠を上方へ引っ張ることで、第1型枠を一層容易に取り外すことができる。
【0010】
また前記課題は、本発明の型枠ユニットによれば、コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられる型枠ユニットであって、それぞれ隣り合うように配置され、水平方向において互いに当接している第1型枠及び第2型枠と、前記第1型枠に対して前記第2型枠側とは反対側の位置に配置され、水平方向において前記第1型枠に当接している第3型枠と、を備え、前記第1型枠において、前記第2型枠に当接する第1当接部と、前記第3型枠に当接する第2当接部とのうち一方の当接面が、前記第1型枠の下方から上方へ向かうに従って他方の当接面から離れるように傾斜して延びており、前記第1型枠のうち前記第1当接部に取り付けられ、前記第1型枠に対して前記第2型枠を着脱可能となるように連結する連結部材と、該連結部材と接続され、前記第1型枠よりも上方位置において前記連結部材の連結状態を解除するために操作される操作部を有する連結解除部材と、をさらに備えていること、により解決される。
また、前記連結解除部材は、長尺な弾性部材であって、前記連結解除部材は、前記連結部材に対して取り付けられる末端部と、前記第1型枠よりも上方位置に張り出すように配置される先端部と、を有し、前記操作部は、前記弾性部材のうち、前記第1型枠よりも上方位置に張り出した前記先端部側の位置に設けられていると良い。
上記構成により、型枠同士を連結部材で強固に連結することができるだけでなく、連結された型枠同士の連結状態を解除する際には、型枠よりも上方位置にある連結解除部材の操作部を操作すれば良いため、狭小地における建物の基礎工事においては、作業者による型枠取外し作業の効率性が格段に向上する。
【0011】
このとき、前記第1当接部と前記第2当接部との双方の当接面が、前記第1型枠の下端部から上端部まで向かうに従って互いに離れるように延びており、かつ、上下方向に対して傾斜する方向に延びていると良い。
上記構成により、作業者が第1型枠を上方へ引っ張って取り外すときに第1型枠にかかる摩擦を一層軽減することができ、第1型枠を一層容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の型枠ユニットによれば、隣の建物と接近して建築される建物の基礎工事の場合であっても、作業者の負担を軽減することが可能となる。
また、建物の基礎工事において組み立てられた型枠を容易に取り外すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の型枠ユニットを用いた建物の基礎工事を示す図である。
【
図4】型枠に取り付けられる連結部材、連結解除部材を示す要部拡大図である。
【
図5】型枠に取り付けられる延出部材、高さ調整部材、中間部材を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について
図1~
図8を参照して説明する。
本実施形態は、コンクリートを打設して建物の基礎を形成するために用いられる型枠ユニットであって、それぞれ隣り合うように配置され、水平方向において互いに当接している第1型枠及び第2型枠と、第1型枠に対して第2型枠側とは反対側の位置に配置され、水平方向において第1型枠に当接している第3型枠とを備え、第1型枠において第2型枠に当接する第1当接部と、第3型枠に当接する第2当接部との双方の当接面が、第1型枠の下端部から上端部まで向かうに従って互いに離れるように延びており、かつ、上下方向に対して傾斜する方向に延びていることを特徴とする発明に関するものである。
なお、基礎工事において型枠に対し打設コンクリートが当接する面を型枠の正面とする。
【0015】
<型枠ユニットを用いた建物の基礎工事>
本実施形態の型枠ユニット1は、
図1に示すように、基礎工事において、目的とする基礎の形状に沿って基礎(基礎となる空間)の幅方向の両側部分にそれぞれ対向するように設けられ、基礎の延出方向に沿って複数並ぶように組み立てられる型枠10を備えている。
組み立てられた型枠10の上面には、建物の基礎と土台を繋ぐ不図示のアンカーボルトの位置決めを行うために、これら型枠10の上面に沿って複数並ぶようにアンカー定規2が組み付けられる。アンカー定規2は、型枠10の並び方向において間隔を空けて配置されるアンカー固定ピン2aによって型枠10の上面に固定されている。
組み立てられた型枠10の幅方向の外側面(背面)には、型枠10を支持するための支保工として、上下方向に間隔を空けて配置され、型枠10の延出方向に沿って延びる連結パイプ3がクリップ3aを介して組み付けられる。
なお、型枠10を支持するための支保工として、そのほか型枠10を幅方向の外側から支持するサポート板4が設けられている。
【0016】
上記構造において、建物の基礎となる部分に対しコンクリートを打設し、コンクリートの十分な養生期間を経た後、組み立てられた型枠10を取り外すこととなる。
なお、型枠10は、
図1に示すように、建物の基礎のベース部分に対しコンクリートを打設する際に用いられるほか、基礎内部の立ち上がり部分にコンクリートを打設する際にも用いられる。
【0017】
<型枠ユニットの構成>
型枠ユニット1は、上述した複数の型枠10と、
図3~
図4に示すように、隣り合う型枠10同士を着脱可能となるように連結する連結部材20と、連結部材20と接続され、連結部材20の連結状態を解除するための連結解除部材30と、を備えている。
また型枠ユニット1は、
図5に示すように、組み立てられた型枠10を取り外すべく、型枠10よりも上方に配置され、複数並べられた型枠10の上面に沿って延びている延出部材40と、所定の型枠10及び延出部材40を連結し、所定の型枠10に対して延出部材40の高さ位置を変更可能な状態で取り付けられる高さ調整部材50と、所定の型枠10の両隣にある型枠10及び延出部材40の間に配置される中間部材60と、を備えている。
なお、型枠ユニット1は、
図2に示すように、それぞれ隣り合うように配置され、水平方向において互いに当接している第1型枠10a及び第2型枠10bと、第1型枠10aに対して第2型枠10b側とは反対側の位置に配置され、水平方向において第1型枠10aに当接している第3型枠10cと、を含む複数の型枠10を備えている。
【0018】
型枠10は、上下方向に長尺な鋼製型枠であって、
図2、
図3に示すように、上下方向に延出し、基礎工事のときに打設コンクリートに当接する縦壁部11と、縦壁部11の上端及び下端からそれぞれ連続して屈曲し、型枠10の幅方向の外側(背面側)に向かって延出する上壁部12及び底壁部13と、を備えている。
また型枠10は、縦壁部11の背面において縦壁部11の水平方向の両端から張り出すようにそれぞれ設けられ、複数の型枠10が並べられたときに隣り合う型枠10にそれぞれ当接する第1当接部14及び第2当接部15と、縦壁部11の背面から張り出すように設けられ、第1当接部14及び第2当接部15の間に配置される補強部16を備えている。
【0019】
型枠10(縦壁部11)の正面は、
図2に示すように、第1型枠10a、第2型枠10b及び第3型枠10cが組み付けられたときに連続した平坦面を形成し、当該連続した平坦面が基礎工事において打設コンクリートに当接する当接面となっている。
また型枠10の背面においては、
図3に示すように、縦壁部11、第1当接部14、第2当接部15及び補強部16によって略蛇腹形状が形成されている。
なお、型枠10は、例えば矩形状の金属板の縁全体を内側に折り曲げて形成した板状部材と、金属板を折り曲げて中空状に形成した複数の中空部材とを溶接等で組み付けることで製造することができる。
【0020】
上壁部12には、基礎工事のときにアンカー固定ピン2aを締結させるための締結穴12aが形成されており、締結穴12aは、型枠10の並び方向において所定の間隔を空けて複数形成されている。締結穴12aは、
図5に示すように、型枠10の取外し作業のときには高さ調整部材50を締結させるための穴として利用される。
また上壁部12のうち、型枠10の並び方向において締結穴12aと異なる位置には、
図3に示すように、連結解除部材30を挿通させるための挿通穴12bが形成されている。
【0021】
第1当接部14、第2当接部15は、
図3に示すように、それぞれ上下方向に長尺な断面略矩形状の中空部材からなり、縦壁部11の背面に溶接等で固定されており、かつ、上壁部12及び底壁部13にそれぞれ当接し、当該当接した部分がそれぞれ溶接等で固定されている。
第1型枠10aにおいて第2型枠10bに当接する第1当接部14と、第3型枠10cに当接する第2当接部15との双方の当接面は、第1型枠10aの下端部から上端部まで向かうに従って互いに離れるように延びており、かつ、上下方向に対して傾斜する方向に延びている。
言い換えると、第1型枠10aは、
図3に示すように、その上端部を下底とし、その下端部を上底とする略台形形状(略逆台形形状)を有する型枠部材となっている。
なお、当然ながら、第2型枠10bにおいて第1型枠10aに当接する当接面は、第1型枠10aの第1当接部14の当接面に沿って傾斜している。また、第3型枠10cにおいて第1型枠10aに当接する当接面も同様に、第1型枠10aの第2当接部15の当接面に沿って傾斜している。
【0022】
補強部16は、
図3に示すように、上下方向に長尺な断面略凸形状の中空部材からなり、縦壁部11の背面に溶接等で固定されており、かつ、上壁部12及び底壁部13にそれぞれ当接し、当該当接した部分がそれぞれ溶接等で固定されている。
第1型枠10aにおいては、補強部16が、第1当接部14及び第2当接部15の間の中央部分に配置されている。
第2型枠10b及び第3型枠10cにおいては、補強部16が、第1型枠10a側に近い位置に配置されている。
なお、これら型枠10は、第2型枠10bのように、断面略凸形状の補強部16のほか、矩形板状の補強部17をさらに備えていも良い。その場合、第2型枠10bのように、補強部16と補強部17とが、所定の間隔を空けて配置されていると良い。
【0023】
連結部材20は、
図3、
図4に示すように、型枠10の第1当接部14及び第2当接部15それぞれに取り付けられ、隣り合う型枠10同士を連結するための連結金具であって、上下方向に所定の間隔を空けて複数取り付けられている。
具体的には、連結部材20は、隣り合う型枠10同士の当接部分にそれぞれ形成された不図示の挿通穴に挿通可能となるように設けられたベース軸部21と、ベース軸部21の表面から連続してベース軸部21の軸方向とは交差する方向に延出し、型枠10同士の当接部分を挟み込むように設けられたフック形状のクリップ部22と、を有している。
連結部材20は、ベース軸部21を中心軸としてクリップ部22を回転可能となるように構成されている。
そのため、連結部材20は、クリップ部22を回転移動させることで、型枠10同士を連結した連結状態と、型枠10同士の連結状態を解除した解除状態との間で切り替えることができる。
ベース軸部21の一端部には、
図4に示すように、連結解除部材30が取り付けられている。
【0024】
連結解除部材30は、
図4に示すように、長尺な弾性バンド(弾性部材)であって、連結部材20の軸方向の一端部に取り付けられる末端部31と、末端部31から連続して上方へ延出し、型枠10の上壁部12に設けられた挿通穴12bを通過して型枠10よりも上方位置に張り出すように延びている先端部32と、を有している。
また、連結解除部材30は、型枠10よりも上方位置に張り出した先端部32側の位置において、連結部材20の連結状態を解除するために操作される操作部33を有している。
【0025】
上記構成において、連結部材20の連結状態を解除するためには、作業者が操作部33を把持して連結解除部材30を上下方向に揺らすことで、連結部材20に振動が伝わり、当該振動に伴って連結部材20のクリップ部22が回転移動する。その結果、連結部材20の連結状態が解除されることとなる。
そのため、特に狭小地における建物の基礎工事においては、作業者による型枠取外し作業の効率性が格段に向上する。
【0026】
延出部材40は、
図5に示すように、断面略L字形状の長尺な板状部材であって、型枠10(第1型枠10a)の上壁部12に対して高さ調整部材50を介して組み付けられている。
また延出部材40は、第1型枠10aの両隣にある第2型枠10b及び第3型枠10cそれぞれの上面に載置された矩形板状の中間部材60によって下方から支持されている。
高さ調整部材50は、第1型枠10aの上壁部12に設けられた締結穴12aを通じて下方から組み付けられる固定ボルト51と、固定ボルト51の軸部分に対して螺合される高さ調整ナット52と、を有している。
高さ調整部材50は、上下方向において第1型枠10aの上壁部12及び延出部材40を挟み込むように設けられており、高さ調整ナット52の螺合位置を調整することで、延出部材40の高さ位置を変更可能となるように構成されている。
なお、高さ調整部材50は、第1型枠10aのうち第1当接部14と第2当接部15の間の中央位置に配置され、かつ、第2型枠10b及び第3型枠10cそれぞれの上面に配置される中間部材60の間の中央位置に配置されている。
【0027】
上記構成において、第1型枠10aに対する延出部材40の高さ位置を低くするように高さ調整ナット52の螺合位置を調整することで、第2型枠10b及び第3型枠10c上の中間部材60を支点として第1型枠10aに対し上方向の反力が生じることになる。
その結果、第1型枠10aが第2型枠10b及び第3型枠10cに対して浮き上がる又は浮き上がり易くなる。
従って、作業者が高さ調整部材50を利用しながら第1型枠10aを上方へ引っ張ることで、第1型枠10aを一層容易に取り外すことが可能となる。
【0028】
<型枠ユニットの第2実施形態>
次に、型枠ユニットの第2実施形態について、
図6に基づいて説明する。
なお、上述した型枠ユニット1と重複する内容は説明を省略する。
第2実施形態に係る型枠ユニット100では、型枠ユニット1と比較して、それぞれ隣り合う第1型枠110a、第2型枠110b及び第3型枠110cの形状がそれぞれ異なっている。
【0029】
具体的には、第1型枠110a及び第3型枠110cがそれぞれ略台形形状、第2型枠110bが略矩形状となるように形成されている。
すなわち、第1型枠110aにおいて第3型枠110cに当接する第2当接部115の当接面が、第1型枠110aの下端から上端まで向かうに従って、第2型枠110bに当接する第2当接部115の当接面から離れるように延びており、かつ、上下方向に対して傾斜する方向に延びている。
一方で、第1当接部114の当接面は、上下方向に沿って真っ直ぐに延びており、言い換えれば、第2当接部115の当接面から離れるように延びておらず、かつ、近づくようにも延びていない。
【0030】
上記構成であっても、作業者が第1型枠110aを上方へ引っ張って取り外すときに第1型枠110aにかかる摩擦を軽減することができ、第1型枠110aを容易に取り外すことができる。
【0031】
<型枠ユニットの第3実施形態>
次に、型枠ユニットの第3実施形態について、
図7に基づいて説明する。
第3実施形態に係る型枠ユニット200では、第1型枠210aが略椀型形状となるように形成されている。
すなわち、第1型枠210aにおける第1当接部214、第2当接部215それぞれの当接面が、まず第1型枠210aの下端から上下方向の所定位置まで向かうに従って互いに離れるように延びており、かつ上下方向に対して傾斜する方向に延びている。
そして、第1当接部214、第2当接部215それぞれの当接面が、第1型枠210aの上記所定位置から上端まで向かうに従って、丸みを帯びた形状を形成するように互いに離れて延びている(緩やかな傾斜となるように延びている)。
上記構成であっても、作業者が第1型枠210aを上方へ引っ張って取り外すときに、第1型枠210aを容易に取り外すことができる。
【0032】
<型枠ユニットの第4実施形態>
次に、型枠ユニットの第4実施形態について、
図8に基づいて説明する。
第4実施形態に係る型枠ユニット300では、第1型枠310aが略ネジ型形状となるように形成されている。
すなわち、第1型枠310aにおける第1当接部314、第2当接部315それぞれの当接面が、まず第1型枠310aの下端から上下方向の所定位置(第1位置314a,315a)まで向かうに従って互いに離れるように延びており、かつ上下方向に対して傾斜する方向に延びている。
そして、第1当接部314、第2当接部315それぞれの当接面が、第1型枠310aの第1位置314a,315aから、第1位置314a,315aよりも上方にある第2位置314b,315bまで上下方向に沿って真っ直ぐに延びており、言い換えれば、互いに離れるように延びておらず、かつ、近づくようにも延びていない。
そして、第1当接部314、第2当接部315それぞれの当接面が、第1型枠310aの第2位置314b,315bから上端まで向かうに従って、再び互いに離れるように延びており、かつ上下方向に対して傾斜する方向に延びている。
上記構成であっても、作業者が第1型枠310aを上方へ引っ張って取り外すときに、第1型枠310aを容易に取り外すことができる。
【0033】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、型枠10が鋼製の型枠としているが、特に限定されるものではなく、木製の型枠や樹脂製の型枠等であっても良い。
【0034】
上記実施形態では、隣り合う型枠10同士の形状(特に当接面の形状)について第1実施形態から第4実施形態まで説明したが、これら実施形態以外にも種々の形状を採用することが可能である。
すなわち、所定の型枠10(第1型枠10a)において所定の型枠10の両隣りにある型枠10(第2型枠10b、第3型枠10c)それぞれに当接する第1当接部14と、第2当接部15とのうち一方の当接面が、所定の型枠10(第1型枠10a)の下方から上方へ向かうに従って他方の当接面から離れるように傾斜して延びている構成を有していれば、型枠10の当接面について種々の形状を採用することが可能である。
なお、上記の構成(当接面が傾斜して延びている構成)には、
図7のように当接面が湾曲して延びている構成や、
図8に示すように当接面の一部が上下方向に沿って真っ直ぐに延びている構成も含まれる。また、当接面の一部が水平方向に沿って延びている構成も含まれるものである。
【0035】
上記実施形態では、主として本発明に係る型枠ユニットに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
特に、それぞれ隣り合う型枠同士の当接面の形状について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1,100,200,300 型枠ユニット
2 アンカー定規
2a アンカー固定ピン
3 連結パイプ
3a クリップ
4 サポート板
10 型枠
10a,110a,210a,310a 第1型枠
10b,110b,210b,310b 第2型枠
10c,110c,210c,310c 第3型枠
11 縦壁部
12 上壁部
12a 締結穴
12b 挿通穴
13 底壁部
14,114,214,314 第1当接部
15,115,215,315 第2当接部
16,17 補強部
20 連結部材(連結金具)
21 ベース軸部
22 クリップ部
30 連結解除部材(弾性バンド)
31 末端部
32 先端部
33 操作部
40 延出部材
50 高さ調整部材
51 固定ボルト
52 高さ調整ナット
60 中間部材
314a,315a 第1位置
314b,315b 第2位置