(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】低スパークルマットコート及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20231214BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231214BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20231214BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G02B5/02 C
B32B7/023
B32B7/12
B32B27/18 Z
(21)【出願番号】P 2018513506
(86)(22)【出願日】2016-09-15
(86)【国際出願番号】 US2016051943
(87)【国際公開番号】W WO2017048957
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-09-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-04
(32)【優先日】2015-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ルードマン,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アスク,デイヴィッド ティー.
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】河原 正
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-97011(JP,A)
【文献】特開2008-40064(JP,A)
【文献】特開2010-152080(JP,A)
【文献】特開2010-280203(JP,A)
【文献】特表2015-511639(JP,A)
【文献】特表2011-521776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低スパークルマットコート
の製
造方法であって、
フィルム形成硬化可能混合物及び複数の形成体を含む形成組成物を調製する工程であって、前記フィルム形成硬化可能混合物は、
反応性高分子材料とナノ粒子
とを含むとともに、少なくとも75cpsの粘度、及び少なくとも0.95の密度を有し、前記形成体は、少なくとも1.1の密度、屈折率(n
b)、及び平均主要寸法を有する、工程と、
前記形成組成物を、主表面を有するコーティングへと堆積させる工程と、
前記堆積された前記形成組成物を乾燥させる工程と、次いで、
前記コーティングの前記硬化可能混合物を、前記硬化可能混合物が重合し、収縮してポリマーマトリックスを生じるように硬化させる工程であって、前記ポリマーマトリックスは前記ポリマーマトリックスの前記主表面上に複数の隆起を有し、前記複数の隆起は、前記ポリマーマトリックス内に取り込まれている形成体に対応する、工程と、
を含み、
前記形成体と
、乾燥後かつ硬化前の、前記反応性高分子材料と前記ナノ粒子とを含む前記フィルム形成硬化可能混合物と
、の密度の差が0.25未満であ
り、
n
b
は、前記ポリマーマトリックスの屈折率(n
m
)の0.1以内である、
低スパークルマットコートの製造方法。
【請求項2】
発光面を提供することと、
前記発光面の上に請求項1の方法により低スパークルマットコートを形成することと、を含む、
光学アセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットコート(例えば、ディスプレイの前面フィルム等に使用されるものなど)、特に、低スパークル及び低グレインを示すマットコート、並びにこのようなコートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスを保護するために、及び他の所望の利点をおそらくは付与する(例えば、プライバシーフィルム等)ために、ディスプレイ、タッチスクリーン、窓、及び他の光学デバイス上に使用されるような前面フィルムにコートを組み込むことは周知である。このような用途のために選択される多くの材料は、滑らかな、光沢のある表面を有するコート又はフィルムをもたらす。このような表面は光学デバイスから反射される外部光による望ましくないグレアをもたらす傾向にあり、光学デバイスの所望の使用及び性能を妨げる傾向にある。
【0003】
このため、前面フィルム用のコートの形成に使用される場合、一部のコーティング材料に粗面処理又はヘイズ誘導処理を施し、得られるコートにより生じるグレアを低減する。このようなアンチグレアフィルムでは、表面不規則性により生じる光の散乱現象(表面拡散)が利用されている。
【0004】
場合によっては、時として表面処理とともに、バインダーマトリックスの屈折率と異なる屈折率を有する粒子をバインダーマトリックスに混合し、フィルムを通過する光の内部散乱(内部拡散)を付与するアンチグレアフィルムも知られている。光の内部散乱は、バインダーマトリックスの屈折率と粒子の屈折率の差、及び得られる光学的界面により生じる。
【0005】
米国特許第7,708,414号(Kameshimaら)は、バインダーマトリックス中に粒子を含むアンチグレアフィルムの例示を開示している。
【0006】
アンチグレア(「AG」)処理又はアンチグレアコーティングと呼ばれることもある多くの従来のグレア低減のための処理は、明暗の小規模な変化を呈し、望ましくない不鮮明なちらつき効果を生じるフィルムをもたらす。この効果は一般に「スパークル」と呼ばれている。認められる効果は角度に高度に依存し、視野角のわずかな変化が「ちらつき」、「スパークル的」又は「不鮮明なノイズ」と様々に表される効果を発生させる。
【0007】
この理論によって拘束されることを望むものではないが、
図1は、光学ディスプレイ上の従来のAGフィルムによって引き起こされた望ましくないスパークルのメカニズムであると考えられるものを示す概略図である。この典型的な用途では、発光物品10(例えば、電子ディスプレイ)は、光線16a、16b、16c(以下参照)を放出する発光画素14a、14b、14cのアレイ12(以下参照)を含む。光線16a、16b、16cは、カバーガラス18の面19を通して物品10から放出される。グレアを低減するために、アントグレア(ant-glare)表面24を有するフィルム22を含むアンチグレアフィルム20が接着剤26によって面19に接着されている。フィルム20は面19により生じるはずのグレアを低減するよう機能するものの、フィルム20は光線16a、16b、16c(以下参照)を均一に透過せず、むしろ、光線16a、16cそれぞれから光線28a、28cを比較的一直線に放出する一方で、光線28bなどの他の光線は、ディスプレイが放出する光線16bから実質的に軸外の向きに放出する。このため、観察者には、光線28a、28cが画像の比較的高輝度部分として認識される一方、光線28bは比較的暗く認識される。影響は、視野角によって、視野のわずかな変化で異なる。このような変化の影響はスパークルとして認識される。
【0008】
その最も無害な形態において、スパークルは単なる軽微な、審美的散漫要因であり得る。しかしながらより顕著な場合、スパークルは得られる画像品質を低下させ、光学デバイスの性能及び有用性を妨げる。
【0009】
スパークルの原因は完全には理解されていないが、観察から、スパークルの規模は、対象のコーティングの表面テクスチャ、対象のフィルムと光学デバイスの下にある構成要素(例えば、ディスプレイの画素)との間の距離、及びディスプレイ画素のサイズなどのパラメータに依存し得ることが明らかとなっている。厄介な傾向は、下にあるディスプレイの画素サイズが減少するにつれてスパークルが増大する傾向にあることである。したがって、構成画素のサイズを低減することでディスプレイ解像度を増加させたディスプレイは、厄介なスパークルを呈する傾向にある。
【0010】
所望のアンチグレア性能をもたらす一方で、所望の低スパークルももたらす改良されたマットコートに対する需要がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、光透過率、低いスパークル、低いグレイン(即ち、コーティングにおける目に見える、ゆえに、望ましくない特性及び特徴)、及び高い均一性という驚くべき組み合わせをもたらす新規なマットコートを提供する。所望であれば、本発明のコーティングは、これらの特徴と併せて高い硬度を呈するように作製してもよい。本発明の態様は、このようなマットコート、このようなマットコートを含む光学アセンブリ、及びこのようなマットコートの製造方法を含む。
【0012】
本発明のマットコートは第1主表面を有し、性質の驚くべき組み合わせを特徴とする。簡潔に述べると、本発明のマットコートは、マットコートの第1主面を画定する第1層を含み、マットコートの第1主面を画定する第1層から本質的になってもよい。第1層は、ポリマーマトリックスとポリマーマトリックス中に取り込まれている複数の形成体とを含み、ポリマーマトリックスとポリマーマトリックス中に取り込まれている複数の形成体とから本質的になってもよい。形成体は、屈折率(nb)及び選択した平均主要寸法を有する。第1層のポリマーマトリックスは、屈折率(nm)、並びに第1主表面及び第2主表面を有する。第1主表面の表面領域には、第1層内に取り込まれている形成体に対応する複数の隆起がある。本発明では、nbとnmは互いに比較的近接しており(例えば、典型的には約0.1の範囲内)、好ましくは同一である。そのため、本発明のマットコートは、光学的性質の望ましい組み合わせをもたらすことができる。
【0013】
本発明のマットコートは、本発明のマットコートがポリマーマトリックス中に取り込まれている形成体を含むという点で新しく、本発明の特有の特徴には、突起の存在及び複数の形成体のZ軸相対位置を含む。
【0014】
要約すると、本発明の光学アセンブリは、発光物品の発光面に光学的に結合された本発明のマットコートを含む。
【0015】
本発明のコートの表面領域内の、取り込まれている形成体の高いZ軸相対位置は新規な方法を用いて実現される。この新規な方法は、驚くべき結果をもたらすことが分かっている。
【0016】
コーティング組成物が液体媒体中の粒子を含むとき、この粒子が媒体より高い密度を有する場合、粒子は沈む傾向がある。この現象は、ストークスの法則を考慮することで理解され得る。ストークスの法則は数学的に以下のように表される。
Fd=6πμRV
式中、
Fdは、流体と粒子の間の界面に作用する摩擦力(「ストークスの抵抗」)、
μは、流体の動的粘度(kg/m*s)、
Rは、球状物体の半径(m)、及び
Vは、物体の流速(m/s)である。
【0017】
粒子が媒体より高密度である液体媒体中の粒子の場合、粒子がその重量とその相対浮力との間の差によって媒体中に沈む傾向は、過剰力Fgの関数であり、以下のように表される。
Fg=(ρp-ρf)g4/3πR3
式中、
それぞれ、
ρpは、粒子の質量密度(kg/m3)、
ρfは、流体の質量密度(kg/m3)であり、
gは、重力加速度(m/s2)、及び
Rは、球状物体の半径(m)である。
【0018】
沈む速度を求めるために力を平衡Fd=Fgとし、速度Vについて解くと終速度Vsが与えられる。本発明では、コーティングされたとき、本明細書中に記載される隆起を有する表面領域が形成されるほど十分に短時間で組成物が硬化され得るように形成体が選択され、形成組成物が作製される。浮力はR3に応じて増加し、ストークスの抵抗はRに応じて増加するため、終速度はR2に応じて増加し、粒径によって大きく異なることに留意されたい。粒子が粘性流体中でその自重により落下する場合、浮力と合成したこの摩擦力が重力とちょうど釣り合うときに終速度即ち沈降速度に達する。
【0019】
驚くべきことに、好適な粘度、密度、固形分負荷、及び硬化速度を有する硬化可能な液体成分を選択することと併せて、好適なサイズ及び密度を有する形成体を選択することによって、後述の方法により、本明細書中に記載される表面領域を有するマットコートがもたらされることを見出した。このような得られたマットコートは、更に形成体がポリマーマトリックスの屈折率に比べて好適な屈折率を有する場合、本明細書に記載される驚くべき結果をもたらす。
【0020】
要約すると、本発明の方法は、低スパークルマットコートを製造する方法を含み、当該方法は、
フィルム形成硬化可能混合物及び複数の形成体を含む、本明細書中に記載される形成組成物を調製する工程と、
形成組成物を、主表面を有するコーティングへと堆積させる工程と、次いで、
コーティングの硬化可能混合物を硬化させる工程と、を含む。本明細書中に記載される形成組成物を使用することにより、ポリマーマトリックスを形成するためにコーティングを硬化させる(即ち、溶剤が除去され、反応構成成分が反応する)際、コーティングは収縮し、その主表面上に、ポリマーマトリックス内に取り込まれている形成体に対応する隆起を発生させる傾向にある。本発明では、フィルム形成硬化可能混合物はある粘度及び密度を有し、形成体は、コーティング後、硬化可能構成成分を乾燥及び反応させ、ポリマーマトリックスの外皮が、上方に膨らんだ部分即ち隆起を形成している状態で、形成体が対象層の第1主表面の近傍に位置するように、限られた程度のみ沈んだ有効数の形成体を含む所望のポリマーマトリックスを得ることができるような密度及び平均主要寸法を有する。
【0021】
上記の有用な性質の驚くべき組み合わせを有する本発明のマットコートは低コストで作製することができる。本発明の方法は、堅牢で高速な製造が可能であり、産業用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明について、図面を参照して更に説明する。
【
図1】光学ディスプレイ上の従来のAGフィルムによって引き起こされた望ましくないスパークルを示す概略図である。
【
図2】本発明のマットコートの例示的な実施形態の理想的な断面図である。
【
図3】本発明のマットコートの別の例示的な実施形態の理想的な断面図である。
【
図4】本発明の方法の例示的な実施形態の概略図である。
【
図5a】本発明のマットコートの形成の実施形態の理想的な断面図である。
【
図5b】本発明のマットコートの形成の実施形態の理想的な断面図である。
【
図6】実施例の選択したマットコートの走査型電子顕微鏡図である。
【
図7】実施例の選択したマットコートの走査型電子顕微鏡図である。
【
図8】実施例の選択したマットコートの走査型電子顕微鏡図である。
【
図9】実施例の選択したマットコートの走査型電子顕微鏡図である。
【
図10】実施例の選択したマットコートの走査型電子顕微鏡図である。
【
図11】実施例の選択したマットコートの走査型電子顕微鏡図である。
【0023】
これらの図は単に例証であり、限定を意図するものではない。
図1~
図4、
図5a及び
図5bは均一の縮尺ではない。
【0024】
要点及び用語集
以下に定義する用語については、異なる定義が特許請求の範囲又は本明細書中の他の箇所で与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
【0025】
「透明度」という用語は、物体又は物体を通して見る像の細かな細部を透過する、試料の能力を意味するために使用される。透明度は、吸収及び散乱による負の影響を受ける。透明度の定量的値は、透過光の許容可能な(小さな)広がり角を指定することにより決定することができる。したがって、透明度は、その広がり角内において透過される全透過光の割合である。
【0026】
「ヘイズ」という用語は、試料を通過する際、前方散乱によって入射ビームから特定の角度を超えて逸脱する透過光の割合を意味するために使用される。ヘイズは、2つの成分に細分することができ、1つの成分は「バルクヘイズ」(場合により、「内部ヘイズ」とも呼ばれる)、もう1つの成分は「表面ヘイズ」である。
【0027】
「バルクヘイズ」という用語は、不純物、空洞、気泡、粒子、混在物、異なる屈折率の領域、又は他の光学的不均質性の存在など、試料のバルク(即ち、内部)の条件により生じるヘイズを意味するために使用される。
【0028】
実際には、バルクヘイズ及び表面ヘイズの値は、まず、適切な光学試験により総ヘイズの値を得、次いで、表面を屈折率整合材料(多くの場合、流体)の滑らかなコーティングで覆い、バルクヘイズの値を得るために再び試験を行い、次いで、表面ヘイズを総ヘイズとバルクヘイズ値との差として特定することにより特定することができる。
【0029】
「光透過性」という用語は、入射光の大部分の透過を可能にすることを意味するために使用される。全入射光は、試料により反射される、吸収される、又は透過される、のいずれかでなければならない。このため、吸収、鏡面反射、及び後方散乱では透過が減少するが、前方散乱では減少しない。
【0030】
用語「ポリマー」は、ポリマー、コポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーを使用して形成されるポリマー)、オリゴマー及びこれらの組み合わせ、並びに、例えば、共押出又はエステル交換などの反応によって混和性ブレンド中に形成され得るポリマー、オリゴマー、又はコポリマーを含むと理解される。別段の指示がない限り、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーの両方が含まれる。
【0031】
「スパークル」という用語は、表示された画像がディスプレイと観察者の相対運動によりちらつく細かいハイライトによって覆われているように見える、光学ディスプレイに関連する現象を意味するために使用される。
【0032】
「表面ヘイズ」という用語は、表示された画像がディスプレイと観察者の相対運動によりちらつく細かい有色のハイライトによって覆われているように見える、光学ディスプレイに関連する現象を意味するために使用される。
【0033】
「Z軸」という用語は、第1主面からマットコートの後部に向かって垂直に延びる軸線に沿った、マットコートの第1主面に対する位置を指すために使用される。Z軸、「X軸」及び「Y軸」は互いに垂直である。マットコートが平ら又は平面構成で配置される場合、X軸及びY軸はコーティングの長さ及び幅によって画定され、マットコートの厚さはZ軸で画定される。
【0034】
別段の指示がない限り、本明細書及び「特許請求の範囲」において先に使用した分子量や反応条件などの成分の量や特性を表す全ての数値は、いかなる場合においても「約」という語で修飾されているものと理解されるべきである。したがって、別段の指示がない限り、上記の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の教示を利用して得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限でも、各数値パラメータは、少なくとも、報告される有効桁の数を踏まえて、通常の四捨五入法を適用することによって、解釈されるべきであるが、このことは特許請求の範囲への均等論の適用を制限するものではない。本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体例に記載されている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、どの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じるある一定の誤差を本質的に含んでいる。
【0035】
重量パーセント(weight percent)、重量パーセント(percent by weight)、重量%(% by weight)、wt%、及び同種のものは、材料の重量を組成物の重量で除して100を乗じたものとして、材料の濃度を指す同義語である。
【0036】
端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に包括される全ての数が含まれる(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物」を含む組成物といった場合には、2個以上の化合物の混合物が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、「又は」という用語は、その内容に別段の明確な指示がない限り、「及び/又は」を含む意味で概ね用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
マットコート
図2は、本発明のマットコートの例示的な実施形態の一部分の断面図である。マットコート110は第1層112を含み、第1層112は、第1主表面114及び第2主表面116を有するポリマーマトリックス113を含む。マットコート110は、ポリマーマトリックス113中に取り込まれている複数の形成体118を含む。第1主表面114は、形成体118に対応する複数の隆起120を有する。本実施形態では、マットコート110は、第2主表面116(即ち、ポリマーマトリックス112の後面)上に任意の接着剤層122を更に含む。
【0038】
図3は、本発明のマットコートの別の例示的な実施形態の一部分の断面図である。マットコート210は、第1層212及び第2層215を含む。第1層212は、第1主表面214及び第2主表面216を有するポリマーマトリックス213を含む。第2層215は、ポリマーマトリックス212の第2主表面216上にある。マットコート210は、第1層213中に取り込まれている複数の形成体218を含む。第1主表面214は、形成体218に対応する複数の隆起220を有する。本実施形態では、マットコート210は、第2層215の第2主表面224上に接着剤層222を更に含む。
【0039】
本発明では、所望であれば、3つ以上の層を有するマットコートを形成してよい。
【0040】
通常、本発明のマットコートは、5.0未満、場合によっては3未満のスパークルレーティング(sparkle rating)を有する。スパークルレーティング3は、ヒトの肉眼で認識できるほぼ限界であると一般に考えられる。
【0041】
硬化可能構成成分は、光がマットコートを透過する際のバルクヘイズ及び他の効果を最小限にするために、使用される形成体の屈折率と比較的同様の屈折率を有するポリマーマトリックスを生じるように選択される。通常、ポリマーマトリックスの屈折率(nm)と形成体の屈折率(nb)との間の差は、約1.0以下、好ましくは約0.05以下、最も好ましくは約0.03以下である。マトリックス層は、屈折率nbが屈折率nmと異なる程度まで、マットフィルムを通して見る画像等に干渉し得るバルクヘイズを呈する傾向がある。
【0042】
本発明のマットコートは、複数の隆起と、層中に取り込まれている複数の対応する形成体とを有する表面領域の存在によって特徴付けられる。表面領域は、第1層の、その第1主面の一部分であり、複数の形成体が第1主面の近傍に配置されており、複数の形成体上に高分子材料の外皮があり、隆起を画定する。外皮は通常、厚さ約0.4~約0.8マイクロメートルであることが好ましい。
【0043】
通常、第1層(即ち、第2主面から第1主面上の隆起の最も遠い部分まで)の厚さは、形成体の平均主要寸法より少なくとも0.7マイクロメートル大きい。
【0044】
形成体は、隣接する高分子体間にポリマーマトリックスを有するように隔置されていることが好ましく、場合によっては、実質的に単一層中にあることが好ましい。
【0045】
本発明のマットコートは、驚くべき、従来実現できなかった性質の組み合わせを付与する。
【0046】
典型的な実施形態では、本発明のマットコートの前面(即ち、第1層の第1主表面)は、約40%以下、及びいくつかの実施形態では、約25%以下の表面ヘイズを有する。本発明によりもたらされる有利なスパークル低減の利点は、より低いヘイズレーティングにおいてより顕著となる傾向がある。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明のマットコートは約10パーセント以下のバルクヘイズを有する。
【0048】
典型的な実施形態では、本発明のマットコートは、約95未満、好ましくは90未満、最も好ましくは80未満の透明度を有する。
【0049】
適切な材料の選択に応じて、本発明のマットコートを望ましい硬さに作製してもよい。所望であれば、本発明のマットコートは、ASTM D3363-00による少なくとも約Hの硬さを有して作製されてもよい。
【0050】
典型的な実施形態では、本発明のマットコートは、約10マイクロメートル以下の厚さを有する。理解されるように、本発明では、より大きな厚さを有するマットコートの実施形態を作製してもよい。
【0051】
製造方法
驚くべきことに、所望の光学的効果を付与する選択したトポグラフィを有する第1主面を備えるマットコートを、本明細書中に記載される選択した材料の組み合わせを硬化させることにより形成できることが明らかになった。このため、本発明は、性能と容易さという驚くべき組み合わせをもたらす。
【0052】
図4は、本発明の方法の例示的な実施形態400を示す。当該方法は、
構成成分(即ち、フィルム形成硬化可能混合物406、形成体408、溶剤412、及び任意の高密度化粒子410)を本発明に従い混合404することによって形成組成物402を調製する工程と、
形成組成物402を、主表面418を有するコーティング416へと(例えば、ロールから巻き出された再利用可能ライナーなどの基材420上の、所望の表面上等に)堆積させる414工程と、次いで、
コーティング416の硬化可能混合物を、適切な化学線(例えば、赤外線、紫外線等)への曝露424などによって硬化させ、コーティングを硬化させる(即ち、溶剤を飛ばすことによりコーティングを乾燥させ、構成物質間に反応を生じさせ、硬化可能混合物を重合させ、隆起426を有する所望の第1層424を形成する)工程と、を含む。本発明では、フィルム形成硬化可能混合物はある粘度及び密度を有し、形成体は、コーティング後、硬化可能構成成分を乾燥及び反応させ、ポリマーマトリックスの外皮が、上方に膨らんだ部分即ち隆起を形成している状態で、形成体が対象層の第1主表面の近傍に位置するように、限られた程度(例えば、形成体の直径の約10%以下)のみ沈んだ有効数の形成体を含む所望のポリマーマトリックスを得ることができるような密度及び平均主要寸法を有する。
【0053】
その後、第1層は、保管、輸送、所望の表面への適用、その後面への接着剤の適用等のためにロール形態へと巻かれてもよい。
【0054】
本発明では、硬化工程時、溶剤がコーティングから除去され、反応性成分が反応して所望のポリマーマトリックスを形成する。これを行う過程で、得られる第1主面が複数の隆起によって非平坦化するように、コーティングの高さが減少し、第1表面の近傍の形成体間に沈む傾向にある。硬化組成物の比較的高い粘度によって、形成体は露出せず、形成体のほぼ全てが少なくとも、硬化された高分子マトリックス材料の層又は外皮の隆起によって覆われる。得られた隆起(少なくとも、外皮の高分子マトリックス材料、並びに場合によっては、第1主表面の周辺部分の基準線より上にある取り込まれている形成体の一部分及び上を覆う外皮で構成された)。
【0055】
驚くべきことに、比較的高粘度の組成物中に比較的高密度の形成体及び硬化性材料を含む形成組成物を使用して、本明細書中に記載されるテクスチャ表面を有する層を形成することができることが見出された。
【0056】
本発明では、フィルム形成硬化可能混合物はある粘度及び密度を有し、形成体は、コーティング後、硬化可能構成成分を乾燥及び反応させ、ポリマーマトリックスの外皮が、上方に膨らんだ部分即ち隆起を形成している状態で、形成体が対象層の第1主表面の近傍に位置するように、限られた程度のみ沈んだ有効数の形成体を含む所望のポリマーマトリックスを得ることができるような密度及び平均主要寸法を有する。
【0057】
図5aは、表面504上のコーティング組成物の堆積物502を示す。堆積物502は、液体コーティング組成物の質量508中に分散した形成体506を含む。形成体506の一部は第1表面510のより近傍に配置されている。硬化可能構成成分が硬化される(即ち、溶剤が除去され、構成成分が反応する)につれて、第1表面510の高さは減少し、
図5bに示される構造を生じる傾向にあり、マットコーティング520は、取り込まれている形成体506に対応する複数の隆起522を有する。隆起522は第1表面510のランド部分524によって分離されている。各隆起は取り込まれている形成体506を覆っているポリマーマトリックスの層526である。場合によっては、隆起内において、取り込まれている形成体506の一部分528は外皮即ち層526によって覆われてはいるものの、ランド部分524の高さ(点線524aとして示される)より上に延びている。場合によっては、隆起内において、取り込まれている形成体506は高さ524aより上に延びておらず(例えば、形成体506aなど)、隆起530は完全に層即ち外皮で構成されている。隆起は、本明細書中に記載される所望のマット性質をもたらす。第1層内のより深くに位置する他の形成体506bは対応する隆起を有しない。
【0058】
例示的実施形態では、フィルム形成組成物は、コーティング形態へと堆積されたときに、約75~約3,000cps、時として好ましくは約150~約1,200cpsの粘度を有する。より長い硬化時間を伴う場合(例えば、このような硬化可能構成成分の選択、より低強度の化学線の使用、より遅い加工速度等により)には、通常、より高粘度の組成物を使用することが好ましい。
【0059】
例示的実施形態では、フィルム形成組成物は、コーティング形態へと堆積されたときに約0.95以上の密度を有する。より長い硬化時間を伴う場合(例えば、このような硬化可能構成成分の選択、より低強度の化学線の使用、より遅い加工速度等により)には、通常、より高密度の組成物を使用することが好ましい。
【0060】
例示的実施形態では、形成体は、約1.1~約2.5の密度を有する。より長い硬化時間を伴う場合(例えば、このような硬化可能構成成分の選択、より低強度の化学線の使用、より遅い加工速度等により)には、通常、より低密度の形成体を使用することが好ましい。
【0061】
得られた層は、従来実現できなかった性質の組み合わせをもたらす低スパークルマットコートとして使用するのに適している。
【0062】
形成組成物は、多くの既知のコーティング技術(例えば、スロットダイ、ロールコーティング等)により、所望のように(例えば、剥離ライナーなどの一時的な支持体上、又は形成組成物が恒久的に結合される基板部材上に)堆積させてもよい。本発明の例示的な実施形態では、本発明のコーティングはスライドコーティングを用いて作製することができる。このような手法は、多層コーティングの形成を単一の適用工程において可能にする。本発明では、スライドコーティングは、形成体の沈殿及び凝集を防止するために高密度高粘度流体を用いて実施される。その結果、スライドコーティングでは、高負荷量の形成体において用いられる従来のコーティング技術で発生する顕著な形成体の凝集及びベアスポット(「くぼみ(lake)」と呼ばれることもある)の形成が、通常、防止される傾向にある。
【0063】
フィルム形成硬化可能混合物は、1種以上の反応性高分子材料及び1種以上の溶剤を含む。いくつかの実施形態では、混合物は、反応性高分子材料のうち少なくとも1つと反応する1種以上のモノマーを含んでもよい。
【0064】
通常、モノマー及び溶剤の相対量が増加すると、形成組成物の粘度が低下する傾向にあり、それにより、形成組成物中で形成粒子が沈みがちになる速度が加速し、硬化を実施することができる時間窓が短縮される傾向にある。
【0065】
反応性高分子材料の例示としては、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメタクリル酸メチル(「PMMA」)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン(「PP」))、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、エポキシ等などの熱硬化性又は熱可塑性ポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましいポリマーとしては、セルロースアセテートブチレート及びエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
【0066】
選択されるモノマーは、アクリレートなどの、選択される溶剤(単数又は複数)中のポリマーと相溶性がなければならない。
【0067】
好適な溶剤は、当業者によって容易に選択され得る。例示としては、同じく比較的高密度の、多くの好適な反応性ポリマー及びモノマーにとって効果的な溶剤であるプロピレングリコールメチルエーテル(例えば、DOWANOL(登録商標)PM)である。
【0068】
本発明の一態様は、比較的高密度のコーティング流体を使用して、得られた第1層の表面領域に形成体の位置決めを所望の通りに実現することである。いくつかの実施形態では、(例えば、比較的低粘度のポリマー、溶剤、及びモノマー(もしあれば)の組み合わせを使用する場合)、シリカなどのナノ粒子をフィルム形成組成物中に組み込み、その有効密度又は粘度を増加し、硬化が完了する前に形成体が第1主表面から離れて沈む傾向を遅らせてもよい。このような添加剤の利点は、添加剤が、得られるマットコートに対し硬さの増加も付与できることである。
【0069】
いくつかの実施形態では、他の添加剤を加えて硬化を加速させてもよい(例えば、紫外線硬化性成分の場合には光開始剤)。
【0070】
いくつかの実施形態では、形成体は、形成組成物の約0.5~約60重量%固形分の重量負荷で存在する。重量負荷が高すぎる場合、形成体は凝集する傾向にあり、それにより、得られたマットコーティング中に、物理的破壊部分、露出しかつ疎な形成体、及びスパークルのない所望のグレア低減が達成されない介在ベアスポット即ち「くぼみ」などの欠陥が生じる場合がある。また、高重量負荷では、形成体がポリマーマトリックス内に取り込まれ損なう傾向にあり、露出した形成体が第1層の第1主面から突出しているマットコーティングが生じる可能性がある。部分的に露出した形成体は使用中剥離しやすく、望ましくない屑を発生し、審美的又は機能的に望ましくない可能性のあるマットコートの欠陥を生じさせるため、これは全般的に望ましくない。露出した形成体がないこと(及び露出した形成体により生じる有害な効果の防止)は、本発明の驚くべき結果のうちの一部である。
【0071】
形成体
本発明では、形成体は、マットコートの前面(即ち、ポリマーマトリックスの第1層の第1主面)に所望のテクスチャ又は隆起を付与するとともに、また、光が望ましくない効果なしにマットコートを透過できるようにポリマーマトリックスと光学的に結合するように機能する。
【0072】
多くの実施形態では、形成体は丸みのある形状であり、場合によっては、実質的に球状である。このような形状は必須ではないが、使用がより簡単であり、より均一な結果をもたらす傾向にあるため、好ましい場合がある。
【0073】
形成粒子は、サイズ(即ち、平均主要寸法(球体の場合はその直径))を特徴とする。
【0074】
場合によっては、マットフィルムで使用される形成粒子は寸法及び形状が様々である。他の場合では、寸法、形状、又はその両方は実質的に均一である。
【0075】
形成粒子を、本発明の方法において所望の隆起を得るために使用できるためには、形成体と液体樹脂組成物との密度の差が約0.25未満であることが好ましい場合がある。密度の差が大きい材料が使用される例(例えば、高密度形成体)では、形成体は所望するより急速に沈む傾向にあり、硬化中における隆起の形成の程度が減少する場合がある。
【0076】
形成体とポリマーマトリックスは、少なくとも、マットコートが使用されることになる光の波長帯域(単数又は複数)に関して同色(即ち、彩色的に類似している)のものであり、また、本明細書中に記載されるポリマーマトリックスと同様の屈折率を有することが、典型的には好ましい。
【0077】
典型的な実施形態では、マットフィルムが見る者からほぼ腕の長さに配置される用途では、形成体の平均主要寸法は約0.8~約10マイクロメートルであり、形成体は約2~約5マイクロメートルが典型的には好ましく、約3マイクロメートルが典型的にはより好ましい。このような用途では、形成体が約5マイクロメートルより大きな平均主要寸法を有する場合、得られるマットフィルムは望ましくないスパークル及び望ましくない粒状性の1つ又は両方を生じやすい場合がある。このような用途では、ヒトの肉眼で検知することができる形成体の限界は約3マイクロメートルである。
【0078】
接着剤
いくつかの実施形態では、本発明のマットコートは一時的な支持体上に形成することができ、この一時的な支持体からマットコートを分離し、その後、所望の表面に結合させる(例えば、接着剤による積層又は結合によって)。
【0079】
いくつかの実施形態では、マットコートを所望の表面に結合するために、任意選択的に保護用剥離ライナーで覆われた接着剤をマットコートの後面に付与する。光学用途の多くの好適な接着剤が知られており、当業者であれば所望の用途に適した接着剤を容易に選択することができよう。
【0080】
光学アセンブリ
本発明のマットコートの有利な性能特性を、種々の発光面への有益な効果のために使用してもよく、この組み合わせを、本明細書においては、光学アセンブリと称する。例示としては、プライバシーフィルム、窓用フィルム、電話、タブレット、ノート型コンピュータ、モニタ、テレビ、サイネージディスプレイ等が挙げられる。
【実施例】
【0081】
本発明は、以下の例示的な実施例を参照して更に理解されるであろう。「部」及び「%」で表される量は特に指示のない限り重量基準である。
【0082】
材料
実施例のコーティングの作製では、以下の材料を用いた。
【0083】
【0084】
25.25グラムの3-メタクリルオキシプロピル-トリメトキシシラン(「SILQUEST(登録商標)A174」)及び0.5グラムの4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(5wt%、「PROSTAB」)を450グラムの1-メトキシ-2-プロパノールに加え、これを更に、室温で10分間撹拌しながら、ガラスジャー内の400グラムのSiO2ゾル(直径20nm、Nalco Companyから「NALCO(登録商標)2327」の商品名で入手)に加えた。この瓶を封止し、80℃のオーブン内に16時間置いた。得られた溶液から、溶液の固形分重量%がほぼ45重量%になるまで、ロータリーエバポレーターを用いて60℃にて水を除去した。200グラムの1-メトキシ-2-プロパノールを得られた溶液に投入し、その後、残存する水を、ロータリーエバポレーターを用いて60℃にて除去した。この後者のステップを再度繰り返し、溶液から水を更に除去した。1-メトキシ-2-プロパノールを加え、SiO2ナノ粒子の濃度を45重量%に調節した。本明細書では、このゾルをゾルLと称する。
【0085】
コーティングフィルム
実施例で記載されたようにコーティングフィルムを調製するため、表1、表3、表5及び表7に示す組成物を有する溶液をスライドコーティングによりポリエチレンテレフタレートフィルムの一表面上に適用し(本明細書中に記載される選択材料を使用した以外は米国特許第6,214,111号及び同第6,576,296号に全般的に記載されている通り)、70℃で1.5分間加熱し、乾燥させ、次に、紫外線に1~2秒間曝露させた。得られたコーティングフィルムの性質を表2、表4、表6、及び表8に報告する。
【0086】
分析方法
スパークル
スパークルの測定を、Display-Messtechnik & Systeme(Display-Messtechnik & Systeme Gmbh & C.KG、Lenaustr.3-D72108 Rottenburg/Neckar、Germany(www.display-metrology.com))製のSMS-1000を用いて実施した。SMS-1000はスパークルを高周波輝度分散値として定量化する。
【0087】
SMS-1000で測定されたスパークルのレベルは、スパークルの特定に精通した研究員により行われる一対比較法に基づく階層分析法(AHP)を用いた目視評価とよい相関がある。スパークルレーティング又は数自体が、標準偏差を、ユーザが定義した画像内の関心領域の輝度の平均値によって除した比率である。報告を容易にするために、測定値に100を乗じて整数スケールを得る(例えば、スパークルのない光沢ディスプレイの基準測定値は0.030と表示されるが、3.0として報告される)。他の高周波輝度変動源(ディスプレイバックライト及びカメラのモアレの両方による)は完全には排除されないため、観察可能なスパークルのない光沢ディスプレイは測定器でゼロとは表示されない。最小レベルはディスプレイに依存し、通常、2~4である。5未満のスパークルレベルは許容可能とされ、5~6は限界値とされ、6より高い値は許容できないとされる。
【0088】
ヘイズ及び透明度
ヘイズ及び透明度は、BYK Gardner Haze-gard(BYK-Gardner USA、Columbia、MD)で測定される。透明度95未満がアンチグレア特性の限界値である。透明度90未満がアンチグレア特性として許容可能である。
【0089】
実施例1~5
同一の乾燥厚さ及び類似のヘイズを有するこれら5つの実施例に試験を実施した。各サンプルのコーティングの配合を表1に示し、得られたコーティングの性質を表2に示す。
【0090】
配合密度が低下するにつれて、3及び5マイクロメートル両方の粒子におけるスパークルは減少した。溶液密度及び粘度が高くなるほど表面に残る粒子の濃度が高くなる。
【0091】
【0092】
【0093】
実施例6~11
これら実施例3セットは、スパークルへの粒径の影響を示すために作製した。これらセットは厚さ及びヘイズが異なっていた。各サンプルのコーティングの配合を表3に示し、得られたコーティングの性質を表4に示す。
【0094】
スパークルは粒径が増加するにつれて低下した。3つの実施例の各セット内におけるヘイズ、密度、及び厚さは類似するものであった。
【0095】
【0096】
【0097】
実施例12~24
これら実施例3セットは、スパークルへの乾燥厚さの影響を示すために作製した。溶液中の低粒子濃度(♯12)を有する5マイクロメートル粒子1セット、及び高レベル粒子濃度(♯13)を有する1セットを使用した。第3及び第4のセットはそれぞれ、3マイクロメートル粒子及び1.5マイクロメートル粒子用であった。各サンプルのコーティングの配合を表5に示し、得られたコーティングの性質を表6に示す。
【0098】
実施例の全セットにおいて、スパークルは乾燥厚さが増加するにつれて低下した。3つの実施例の各セット内におけるヘイズ、密度、及び粒径は類似するものであった。
【0099】
【0100】
【表7】
Tdは、コーティングの乾燥厚さである。表5の配合12を使用して、実施例12~15の表6の反応を生じさせた。表5の配合13を使用して、実施例16~18の反応を生じさせた。表5の配合14を使用して、実施例19~21の反応を生じさせた。表5の配合15を使用して、実施例22~24の反応を生じさせた。
【0101】
実施例25~29
これら実施例2セットは、層の下に、微粒子を有する第2層を付加したことによるスパークルへの影響を示すために作製した。この下層は、微粒子を有しないものと同じ配合であった。コーティングの総乾燥厚さは全て7マイクロメートルであった。各サンプルのコーティングの配合を表7に示し、得られたコーティングの性質を表8に示す。
【0102】
このデータは、より薄い微粒子厚みによりスパークルの低下を実現することができることを示した。より厚い層は、乾燥及び硬化させた層の硬さの増加が所望される場合に重要となり得る。
【0103】
【0104】
【表9】
Td及びTdNPは、それぞれ、微粒子を有する及び微粒子を有しない、得られたコーティングの乾燥厚さである。表7の配合16は、表8の実施例25で使用した配合であった。表7の配合17及び配合18を、表8の実施例26~29の配合として使用し、配合17は下層に用いた。
【0105】
図6~
図11は、以下のような実施例の選択したマットコートの走査型電子顕微鏡画像である。
【0106】
【0107】
図6~
図11のそれぞれにおいて、第1主表面S及び隆起Pが見える(それぞれ、ポリマーマトリックス内の下に取り込まれている形成体を有する)。断面
図7及び断面
図9では、形成体B及びポリマーマトリックスMが見える。断面
図11では、ポリマーマトリックスMが見えるものの、この図では形成体は偶然見えない。
【0108】
本明細書に引用される全ての特許、特許書類、及び刊行物の全ての開示内容が、参照により組み込まれる。上記の詳細な説明及び実施例は、理解しやすいように示したものにすぎない。それによって不要な限定がなされるものではない。本発明は図示及び記載された細部そのものに限定されず、当業者に明白な変形形態は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれる。以下、本発明の実施形態の一例を記載する。
[1]
第1主表面を有するマットコートであって、当該マットコートは当該マットコートの前記第1主面を画定する第1層を含み、前記第1層は、ポリマーマトリックスと、前記ポリマーマトリックス中に取り込まれている複数の形成体と、を含み、
前記形成体は屈折率(n
b
)及び平均主要寸法を有し、
前記第1層は、屈折率(n
m
)、並びに第1主表面及び第2主表面を有し、前記第1主表面は、前記第1層内に取り込まれている形成体に対応する複数の隆起を有し、
n
b
は、n
m
の約0.1以内である、
マットコート。
[2]
5未満のスパークルレーティングを有する、[1]に記載のマットコート。
[3]
3未満のスパークルレーティングを有する、[1]に記載のマットコート。
[4]
約10パーセント以下のバルクヘイズを有する、[1]に記載のマットコート。
[5]
約95未満の透明度を有する、[1]に記載のマットコート。
[6]
ASTM D3363-00による少なくとも約Hの硬さを有する、[1]に記載のマットコート。
[7]
前記第1層は、約10マイクロメートル以下の厚さを有する、[1]に記載のマットコート。
[8]
前記第1層の厚さは、前記形成体の前記平均主要寸法の約1.5倍である、[1]に記載のマットコート。
[9]
前記形成体は、約1.1~約2.5の密度を有する、[1]に記載のマットコート。
[10]
前記形成体は、約1.35~約2.2の屈折率(n
b
)を有する、[1]に記載のマットコート。
[11]
前記形成体は、約50nm以上の平均主要寸法を有する、[1]に記載のマットコート。
[12]
前記第1層の前記第2主表面上に第2層を更に含み、前記第2層は、硬化された高分子材料を含み、前記第1層及び前記第2層はその場で硬化させられている、[1]に記載のマットコート。
[13]
当該マットコートの前記第1主面の反対側に第2主面を有し、前記第2主面上に接着剤層を更に含む、[1]に記載のマットコート。
[14]
前記形成体の前記平均主要寸法は約0.8~約10マイクロメートルである、[1]に記載のマットコート。
[15]
前記形成体は実質的に球状である、[1]に記載のマットコート。
[16]
n
b
はn
m
の約0.05以内である、[1]に記載のマットコート。
[17]
n
b
はn
m
の約0.03以内である、[1]に記載のマットコート。
[18]
前記ポリマーマトリックスと前記形成体は彩色的に類似している、[1]に記載のマットコート。
[19]
発光面上に[1]に記載のマットコートを含む、光学アセンブリ。
[20]
低スパークルマットコートを製造する方法であって、
フィルム形成硬化可能混合物及び複数の形成体を含む形成組成物を調製する工程であって、前記フィルム形成硬化可能混合物は、少なくとも約75cpsの粘度、及び少なくとも約0.95の密度を有し、前記形成体は、少なくとも約1.1の密度、屈折率(n
b
)、及び平均主要寸法を有する、工程と、
前記形成組成物を、主表面を有するコーティングへと堆積させる工程と、次いで、
前記コーティングの前記硬化可能混合物を、前記硬化可能混合物が重合し、収縮してポリマーマトリックスを生じるように硬化させる工程であって、前記ポリマーマトリックスは前記ポリマーマトリックスの前記主表面上に複数の隆起を有し、前記複数の隆起は、前記ポリマーマトリックス内に取り込まれている形成体に対応する、工程と、
を含む、方法。
[21]
前記形成組成物は、コーティング形態へと堆積されたときに約75~約3,000cpsの粘度を有する、[20]に記載の方法。
[22]
前記形成組成物は、コーティング形態へと堆積されたときに約150~約1,200cpsの粘度を有する、[20]に記載の方法。
[23]
前記形成組成物は、コーティング形態へと堆積されたときに約0.95以上の密度を有する、[20]に記載の方法。
[24]
前記形成体は、約1.1~約2.5の密度を有する、[20]に記載の方法。
[25]
前記形成体は、約1.35~約2.2の屈折率(n
b
)を有する、[20]に記載の方法。
[26]
前記フィルム形成硬化可能混合物は、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーからなる群から選択される1種以上の反応性ポリマーを含む、[20]に記載の方法。
[27]
前記フィルム形成硬化可能混合物は、セルロースアセテートブチレート及びエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートのうち少なくとも1つを含む、[20]に記載の方法。
[28]
前記フィルム形成硬化可能混合物は、ナノ粒子を更に含む、[20]に記載の方法。
[29]
前記第1の層は約10マイクロメートル以下の厚さを有する、[20]に記載の方法。
[30]
前記フィルム状堆積物の厚さは前記形成体の前記平均主要寸法の約1.5倍である、[20]に記載の方法。
[31]
前記形成体の前記平均主要寸法は約0.8~約10マイクロメートルである、[20]に記載の方法。
[32]
前記形成体は実質的に球状である、[20]に記載の方法。