(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】超電導マグネット
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20231214BHJP
H01F 6/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01F6/06 110
H01F6/04
(21)【出願番号】P 2019103926
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直哉
(72)【発明者】
【氏名】和久田 毅
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-267119(JP,A)
【文献】特開2009-043912(JP,A)
【文献】特開2012-114230(JP,A)
【文献】特開2012-182265(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/018144(JP,A1)
【文献】国際公開第2014/162379(WO,A1)
【文献】特開平03-099408(JP,A)
【文献】特開昭61-065407(JP,A)
【文献】特開昭56-004211(JP,A)
【文献】特開2014-103139(JP,A)
【文献】特開昭62-170109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01F 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線を巻きボビンの周りに巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる超電導コイルを備え、
前記超電導コイルは、
各層の超電導線の断面の外形寸法が所定の数値で、かつ、層によって前記超電導線の素線電流密度が異なり、
前記超電導コイルは、外径側の層で並列接続される前記超電導線の並列数を、内径側の層で並列接続される前記超電導線の並列数よりも少なくし、
前記超電導コイルは、各層の前記超電導線の並列数と巻き回数とを乗じた巻き数が、各層の並列数の公倍数である
ことを特徴とす
る超電導マグネット。
【請求項2】
超電導線を巻きボビンの周りに巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる超電導コイルを備え、
前記超電導コイルは、
各層の超電導線の断面の外形寸法が所定の数値で、かつ、層によって前記超電導線の素線電流密度が異なり、
前記超電導コイルは、外径側の層で並列接続される前記超電導線の並列数を、内径側の層で並列接続される前記超電導線の並列数よりも少なくし、
前記超電導コイルは、隣り合う並列数の異なる層の内径側の層の終端または外径側の層の開始端に段落とし部と、前記段落とし部において異なる並列数の並列超電導線の接続がされる接続部と、を有する
ことを特徴とする超電導マグネット。
【請求項3】
超電導線を巻きボビンの周りに巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる
超電導コイルを備え、
前記超電導コイルは、
各層の超電導線の断面の外形寸法が所定の数値で、かつ、層によって前記超電導線の素線電流密度が異なり、
前記超電導コイルは、外径側の層で並列接続される前記超電導線の並列数を、内径側の層で並列接続される前記超電導線の並列数よりも少なくし、
前記超電導コイルは、隣り合う並列数の異なる前記超電導線で構成される層の内径側の層の終端または外径側の層の開始端で、前記巻きボビンの外にそれぞれの並列超電導線を引き出して接続がされる接続部を有する
ことを特徴とする超電導マグネット。
【請求項4】
超電導線を巻きボビンの周りに巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる超電導コイルを備え、
前記超電導コイルは、
各層の超電導線の断面の外形寸法が所定の数値で、かつ、層によって前記超電導線の素線電流密度が異なり、
前記超電導線は、1または複数本の超電導線材を素線として有し、
前記超電導コイルは、
外径側の前記超電導線の前記素線の数を、内径側の前記超電導線の前記素線の数よりも少なくした前記超電導線の前記素線の数が異なる層と、
隣り合う前記素線の数の異なる層の内径側の層の終端または外径側の層の開始端に段落とし部と、
前記段落とし部において異なる前記素線の数の前記超電導線の接続がされる接続部と、を有する
ことを特徴とする超電導マグネット。
【請求項5】
超電導線を巻きボビンの周りに巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる超電導コイルを備え、
前記超電導コイルは、
各層の超電導線の断面の外形寸法が所定の数値で、かつ、層によって前記超電導線の素線電流密度が異なり、
前記超電導線は、1または複数本の超電導線材を素線として有し、
前記超電導コイルは、前記超電導線の前記素線の数が異なる層を有し、
前記超電導コイルは、外径側の前記超電導線の前記素線の数を内径側の前記超電導線の前記素線の数よりも少なく
されており、
前記超電導コイルは、隣り合う前記素線の数の異なる前記超電導線の層の内径側の層の終端または外径側の層の開始端で、前記巻きボビンの外にそれぞれの前記超電導線を引き出して接続がされる接続部を有する
ことを特徴とする超電導マグネット。
【請求項6】
前記超電導コイルは、複数本の前記超電導線が巻き軸方向に並べられた並列超電導線として巻き回される層と、
前記並列超電導線とは並列数が異なって巻き軸方向に並べられた前記超電導線が並列超電導線として巻き回される層と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の超電導マグネット。
【請求項7】
前記超電導コイルは、1本の前記超電導線が巻き回される層をさらに有する
ことを特徴とする請求項6に記載の超電導マグネット。
【請求項8】
前記超電導コイルは、各層の前記超電導線の並列数と巻き回数とを乗じた巻き数が、各層の並列数の公倍数である
ことを特徴とする請求項1に記載の超電導マグネット。
【請求項9】
前記超電導コイルは、隣り合う並列数の異なる層の内径側の層の終端または外径側の層の開始端に段落とし部と、前記段落とし部において異なる並列数の並列超電導線の接続がされる接続部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の超電導マグネット。
【請求項10】
前記超電導コイルは、隣り合う並列数の異なる前記超電導線で構成される層の内径側の層の終端または外径側の層の開始端で、前記巻きボビンの外にそれぞれの並列超電導線を引き出して接続がされる接続部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の超電導マグネット。
【請求項11】
前記超電導コイルは、前記並列超電導線が転位される
ことを特徴とする請求項9に記載の超電導マグネット。
【請求項12】
前記並列超電導線が転位される位置が層の折り返し端の前記段落とし部である
ことを特徴とする請求項11に記載の超電導マグネット。
【請求項13】
前記超電導コイルは、1本の前記超電導線を巻き回し、外径側の前記素線の数を内径側より少なくする
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の超電導マグネット。
【請求項14】
前記超電導コイルは、伝導冷却により超電導体が冷却される
ことを特徴とする
請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の超電導マグネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導マグネットに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材を用いた超電導マグネットはMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)、NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)、粒子線医療装置などで利用されており、また発電機等新たな応用先も日々検討されている。超電導マグネットは、常伝導体のマグネットと比べ線材の電流密度を大きく取れることから、小形で高磁場を実現できる利点がある。また、超電導マグネットの多くはNbTi、Nb3Snといった超電導体を線材とし、冷媒に液体ヘリウムを用いる。しかし、液体ヘリウムは高価で、かつ運用中に蒸発して失われるため補充が必要であり、コスト要因となる。そこで、液体ヘリウムを用いず伝導冷却により超電導体を冷却する方法で超電導マグネットを構成することが望ましい。
【0003】
伝導冷却は、一般に液体ヘリウムを用いるよりも冷却しづらく技術的な難易度が高い。伝導冷却による超電導マグネットを冷却コストを抑えて合理的に実現するためには、超電導マグネット内の発熱、外部からの熱侵入を可能な限り低減し、超電導マグネット全体を熱伝導率が高い構造とするのが望ましい。
超電導マグネット内の発熱は、起動、停止時など、運用上、超電導マグネット電流を変動させる場合、一般にヒステリシス損によるものが主となる。ヒステリシス損は、超電導体に印加される磁場の変動により生じ、超電導マグネット内の超電導体の体積が多いほど全体の損失が大きい。
冷却の面では、超電導マグネットは一般に超電導線を巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる場合が多い。この場合、超電導線の隙間をできるだけ密に巻いて熱伝導率を向上させるのが望ましい。また、超電導マグネットを巻きボビンを介して冷却する場合、各層の端部と巻きボビンの間の熱抵抗のばらつきを抑え、ホットスポットを生じないようにすることで冷却コストを低減することが望ましい。
【0004】
超電導マグネット内の発熱量を低減するために超電導マグネット内の超電導体体積を最小化するには、グレーディング(grading)を実現することが有効である。グレーディングは、超電導マグネットの各層で超電導線を流れる電流密度を変える技術である。グレーディングは、高磁場下ほど流せる電流密度が小さくなるという超電導線の特徴から、超電導マグネットの内径側ほど高磁場となるため低電流密度とし、外径側は逆に低磁場となるため高電流密度とする。これにより、超電導マグネット全体の電流を最大化する効果がある。この効果は超電導体の量を最小化することと等価である。
【0005】
グレーディングには、内径側では太く素線断面積の大きい超電導線を用い、外径側は細く素線断面積の小さい超電導線を用いる、という手段をとることが多い。または、磁場中の臨界電流密度が大きい超電導材を内径側に適用するという手段をとる場合もある。このような構成によると、超電導マグネットの各層が異なる形状の超電導線で構成されるため、マグネットを密にまき回すことが困難となる。また、各層の寸法ばらつきが大きくなる。そのため、伝導冷却を適用すると冷却コストが大きくなる課題がある。
【0006】
特許文献1には、高温超電導コイルの内側では各層ごとの超電導線材の本数を多くし、高温超電導コイルの外側に向かうほど各層ごとの超電導線材の本数を少なくするようにして、高温超電導コイル全体での通電電流を向上させ、超電導線材の使用量を抑えつつも高い磁場を生成することができるように構成したことを特徴とするグレーディングされた高温超電導コイルが記載されている。特許文献1に記載のグレーディングされた高温超電導コイルは、高温超電導のテープ線材を層方向に巻き回すパンケーキ形超電導コイルで、内径側の層は同じ種類の高温超電導線を層方向に複数重ねた並列導体で構成し、外側の層は1本の高温超電導線で構成することでグレーディングを実現している。この構成によれば、同じ種類の高温超電導線を利用しつつグレーディングを実現できるとする。
【0007】
伝導冷却による超電導マグネットを実現するためには、超電導マグネットを多層巻きにする際の各層の熱抵抗ばらつきを抑えてかつグレーディングにより超電導体の投入量を最小化することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の高温超電導コイルは、内径側では並列接続した高温超電導線を巻き回し、外径側では一本の高温超電導線を巻き回すことでグレーディングを実現し、高温超電導体の投入量を低減している。一方、線材は、高温超電導線であるため、アスペクト比が大きいテープ状である。テープ状は、層方向に並べて並列接続するのには適している。しかしながら、NbTi、Nb3Snといったいわゆる低温超電導線は、概円形、概矩形(アスペクト比が10未満)の線断面である。このため、低温超電導線を、層方向にならべて並列化するのは作業が煩雑である。
また、特許文献1に記載の高温超電導コイルは、パンケーキ形であり、本発明が対象とする超電導マグネットのように巻き軸方向に巻線を巻き進める構成は示されていない。さらに、伝導冷却することは考えられていない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、冷却コストを低減しつつグレーディングを実現可能な超電導マグネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の超電導マグネットは、超電導線を巻きボビンの周りに巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる超電導コイルを備え、前記超電導コイルは、各層の超電導線の断面の外形寸法が所定の数値で、かつ、層によって前記超電導線の素線電流密度が異なり、前記超電導コイルは、外径側の層で並列接続される前記超電導線の並列数を、内径側の層で並列接続される前記超電導線の並列数よりも少なくし、前記超電導コイルは、各層の前記超電導線の並列数と巻き回数とを乗じた巻き数が、各層の並列数の公倍数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷却コストを低減しつつグレーディングを実現可能な超電導マグネットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る超電導マグネットの超電導コイルの断面図である。
【
図2】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの超電導コイルの並列数が変わる層間の接続構造の例を示す図である。
【
図4】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの3並列超電導線の段落としにおけるスペーサ配置の例を示す図である。
【
図5】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの超電導コイルの並列数が変わる層間の接続構造の接続部の別の構造例を示す図である。
【
図6】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの超電導コイルの並列数が変わる層間の接続構造の接続部の別の構造例を示す図である。
【
図7】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの変形例の超電導コイルの並列数が変わる層間の接続構造の例を示す図である。
【
図8】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの変形例の超電導コイルの並列数が変わる層間の接続構造の例を示す図である。
【
図9】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの並列数が3種類の超電導コイルの断面図である。
【
図10】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの外径側(最外径側)を並列接続にしない超電導コイルの断面図である。
【
図11】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの3並列超電導線の転位位置の例を示す図である。
【
図12】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの3並列超電導線の転位方法の例を示す図である。
【
図13】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの4並列超電導線の転位方法の例を示す図である。
【
図14】上記第1実施形態に係る超電導マグネットの変形例の超電導コイルの断面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る超電導マグネットの超電導コイルの断面図である。
【
図16】上記第2実施形態に係る超電導マグネットの素線数が変わる層間の接続構造の例を示す図である。
【
図17】本発明の応用例に係る超電導マグネットの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る超電導マグネットの超電導コイルの断面図である。
図1は、超電導コイルのコイル巻き軸中心を線対称として右側の詳細断面を示す。
本実施形態は、本発明を伝導冷却型の超電導マグネットに適用した例である。
図1に示すように、超電導マグネット1は、超電導コイル10を備える。
超電導コイル10は、巻きボビン11に矩形断面の超電導線20を内周側から俵積み状に巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる。巻き巻きボビン11に巻きまわされた超電導線20は、エポキシを代表とする樹脂(図示省略)を注入して固定され、コイル形成される。
【0015】
超電導線20は、例えばニオブチタン(NbTi)が金属で被覆された超電導線材21と、線材21を被覆する絶縁被膜22と、からなる。超電導線材21には、上記ニオブチタン(NbTi)やニオブ3スズ(Nb3Sn)、二ホウ化マグネシウム(MgB2)等の金属超電導体が選択できる。
【0016】
本実施形態では、外径側の超電導線20の線材21の数(以下、素線数という)と内径側の超電導線20の素線数とは、同じである。
【0017】
超電導コイル20は、各層の超電導線の断面の外形寸法(形状)が所定の数値である特徴を有する。所定の数値は、理想的には同じであることが望ましいが、例えば外形寸法が±0.05mm(より好ましくは±0.02mm)の誤差の範囲に含まれるのであれば十分な効果が得られる。ここで、外形形状の同一性も所定の数値に含まれるものとする。例えば、超電導線の断面形状が矩形断面形である場合の、平行する辺同士の形状(直線形状や湾曲形状、角部のRなど)がある。以下の説明において、説明の便宜上、外形寸法が同じには、上記誤差の範囲内で同じものをいうものとする。
【0018】
超電導線20の断面形状は、特に制限されないが、本実施形態においては、矩形断面形状である。超電導線20の断面形状が矩形断面形状となっていることにより、超電導コイル10を製造する際の巻きボビン11への捲回を行い易いという利点がある。超電導コイル20を密に巻けるため(隙間が生じないため)、超電導マグネット1内の熱抵抗を低減することができる。
【0019】
<超電導コイル10の並列接続の詳細構造>
図1に示すように、超電導コイル10は、超電導線20を巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる。
本実施形態では、超電導コイル10は、複数本の超電導線20が並列接続され、当該並列接続される超電導線20は巻き軸方向に並べて配置され、超電導コイル10外径側で並列接続される超電導線20の並列数は、内径側で並列接続される超電導線20の並列数よりも少なくすることを特徴とする。
【0020】
図1の例では、超電導コイル10は、内径側の2層では巻き軸方向に並んだ3本の超電導線20を並列接続した3並列超電導線20-3を巻き軸方向に巻き進めて層が構成され、外径側の2層では巻き軸方向に並んだ2本の超電導線20を並列接続した2並列超電導線20-2を巻き軸方向に巻き進めて層が構成される。
図1の太破線囲みに示すように、3本の超電導線20を3本一組で並列接続した3並列超電導線20-3は、層あたり4回巻きまわされて、内径側の2つの層を構成する。また、2本の超電導線20を2本一組で並列接続した2並列超電導線20-2は、層あたり6回巻きまわされて、外径側の2つの層を構成する。
各層の端部は、巻きボビン11のフランジ11aの位置で揃えられる。
【0021】
前記のように、3本の超電導線20を3本一組で並列接続した3並列超電導線20-3は、層あたり4回巻きまわされ、2本の超電導線20を2本一組で並列接続した2並列超電導線20-2は、層あたり6回巻き回される。したがって、各層の超電導線20の巻き数(並列数×巻き回数)は12回であり、超電導線20の巻き数「12回」は、内径側の超電導線並列数「3」と外径側超電導線並列数「2」の公倍数とされる。
【0022】
<超電導コイル10の層間の接続構造>
図2は、第1実施形態に係る超電導マグネット1の超電導コイル10の、並列数が変わる層間の接続構造の例を示す図である。
図3は、
図2のA-A矢視断面図である。なお、
図3において、コイル巻き中心軸方向は、Oである。
図2および
図3に示すように、3並列超電導線20-3と2並列超電導線20-2は、3並列超電導線20-3の層の巻き終わりと2並列超電導線20-2の巻き始めの巻きボビン11のフランジ11aの位置(フランジ11aに接する位置)で接続部12を用いて接続される。
接続部12は、層の段落とし部14の隙間を利用して、3並列超電導線20-3の端部と2並列超電導線20-2の端部とをラップ接続(後記)する。
【0023】
接続部12は、ニオブチタン(NbTi)等を含んでなる焼結体である。接続部12は、ニオブチタン(NbTi)等が露出した端面を含む3並列超電導線20-3と2並列超電導線20-2の端面同士を、ニオブチタン(NbTi)等を含む焼結体を介して接続(固着)する。
【0024】
超電導コイル10は、隣り合う並列数の異なる層の内径側の層の終端または外径側の層の開始端に段落とし部14と、段落とし部14において異なる並列数の並列超電導線の接続がされる接続部12と、を有する。接続部12を、層が巻きあがるスペースを利用して接続することができ、超電導コイル10の外形寸法を小さくすることができる。
【0025】
図4は、第1実施形態に係る超電導マグネット1の、3並列超電導線の段落としにおけるスペーサ配置の例を示す図である。
図3および
図4に示すように、3並列超電導線20-3の端部と接続部12と2並列超電導線20-2の巻き始めの内周面とにより画成された、空いた隙間には、スペーサ13が設けられて巻線が支持されるとともに隙間が低減される。
超電導コイル10は、樹脂含浸されてもよいが、この場合はスペーサ13が隙間の樹脂量を制限することで樹脂割れ(クラック)に起因するクエンチを抑えられる。スペーサにはFRP(Fiber-Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)が選択できる。スペーサ13の材質として、熱伝導性がよいものが好ましい。
【0026】
このように、含浸樹脂が溜まるクエンチ源をスペーサ13で埋めて緩和することで、前記のようにスペーサ13が隙間の樹脂量を制限することができ、樹脂割れに起因するクエンチを防止することができる。
【0027】
<超電導コイル10の層間の接続構造の接続部12の別の構造例>
図5および
図6は、第1実施形態に係る超電導マグネット1の超電導コイル10の、並列数が変わる層間の接続構造の接続部12の別の構造例を示す図である。
図5に示す接続部12Aは、巻きボビン11のフランジ11aに設けた切欠き11bから3並列超電導線20-3と2並列超電導線20-2を、コイル巻き中心軸に沿うように巻きボビン11の外に引き出す構造である。接続部12Aは、3並列超電導線20-3の端部と2並列超電導線20-2の端部とを半径方向に並列に引き出してラップ接続し、ひとつに束ねられるような外観になる。接続部12Aは、周囲をポリイミドフィルムのような電気絶縁体で覆われる。
【0028】
図6に示す接続部12Bは、巻きボビン11のフランジ11aに設けた切欠き11bから3並列超電導線20-3と2並列超電導線20-2を、コイル巻き中心軸に沿うように巻きボビン11の外に引き出す構造である。接続部12Bは、3並列超電導線20-3の端部と2並列超電導線20-2の端部とを周方向に並列に引き出してラップ接続し、ひとつに束ねられるような外観になる。接続部12Bは、周囲をポリイミドフィルムのような電気絶縁体で覆われる。
【0029】
接続部12Aおよび接続部12Bは、上述したように、ニオブチタン(NbTi)等を含んでなる焼結体で超電導接続してもよいし、はんだ付けなどの接続方法でもよい。はんだ付けされる場合は、冷却のため、例えば接続部12A,12Bの損失が0.01W未満となるように規定され、通電電流が300Aの場合0.1μΩ以下となるように施工(規定)される。
【0030】
超電導コイル10は、隣り合う並列数の異なる超電導線20で構成される層の内径側の層の終端または外径側の層の開始端で、巻きボビン11の外にそれぞれの並列超電導線を引き出して接続がされる接続部12A,12Bを有する。接続部12A,12Bを、巻きボビン11のフランジ11aから引き出した位置に設けることで、接続作業を容易にすることができる。
【0031】
<超電導コイル10の層間の接続構造の接続部12が無い層の移り変わり>
図1に示す超電導コイル10の内径側から1層目から2層目、3層目から4層目のように、超電導線20の接続部が無い層の移り変わりについては、
図2および
図3で示した超電導コイル10の層間の接続構造において接続部12を取り去ったものと同じである。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る超電導マグネット1の超電導コイル10は、超電導線20を巻きボビン11の周りに巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる。
【0033】
超電導コイル10は、各層の超電導線20の断面の外形寸法が同じで、かつ、層によって超電導線20の素線電流密度が異なる。具体的には、超電導コイル10は、外径側の層で並列接続される超電導線20の並列数を、内径側の層で並列接続される超電導線20の並列数よりも少なくする。
【0034】
この構成により、超電導コイル10は、各層の超電導線20の断面の外形寸法が同じであるので、断面寸法が同じ線材用いて素線電流密度を変えるグレーディングを実現することができ、超電導コイルの全体的な電流密度を最大化することができる。
【0035】
すなわち、一種類の超電導線20で構成する超電導コイル10であっても、外径側の2並列超電導線20-2の電流密度が内径側の3並列超電導線20-3の電流密度の1.5倍となる。これにより、超電導コイル10の内径側を低電流密度に、外径側を高電流密度にすることができ、超電導マグネット1全体の電流を最大化する効果、換言すれば、超電導体の投入量を最小化することができる。また、各層の超電導線20を密に巻けるため、超電導コイル10内の熱抵抗を低減することができる。その結果、ヒステリシス損(交流損)が小さく、層毎の冷却効率が均一になることで冷却コストを最小限に抑えた伝導冷却型の超電導マグネット1を実現できる。
【0036】
また、本実施形態では、
図1に示すように、各層の超電導線の巻き数(並列数×巻き回数)を各層の超電導線並列数(2本、3本)の公倍数である12巻きとすることで、各層の寸法ばらつきを抑えることができる。このため、層端部と巻きボビン11のフランジ11a間の熱抵抗のばらつきが低減され、冷却コストをより一層低減できる。
【0037】
[変形例]
<超電導線並列数>
本実施形態では内径側の超電導線並列数を「3」、外径側を「2」としたが、外径側が内径側より小さければよく、並列数は限定されない。例えば内径側の超電導線並列数を「4」、外径側を「2」、内径側の超電導線並列数を「4」、外径側を「3」などとしてよい。
図7および
図8は、変形例の超電導コイル10の、並列数が変わる層間の接続構造の例を示す図である。
図7および
図8に示す超電導コイル10は、
図17に示す超電導マグネット1に適用可能である。
図7は、内径側の超電導線並列数を「4」、外径側を「2」にした場合の例である。
図7に示すように、4並列超電導線20-4と2並列超電導線20-2は、4並列超電導線20-4の層の巻き終わりと2並列超電導線20-2の巻き始めの巻きボビン11のフランジ11a位置で接続部12を用いて接続される。
接続部12は、層の段落としの隙間を利用して、4並列超電導線20-4の端部と2並列超電導線20-2の端部とをラップ接続する。
【0038】
図8は、内径側の超電導線並列数を「4」、外径側を「3」にした場合の例である。
図8に示すように、4並列超電導線20-4と3並列超電導線20-3は、4並列超電導線20-4の層の巻き終わりと3並列超電導線20-3の巻き始めの巻きボビン11のフランジ11a位置で接続部12を用いて接続される。
接続部12は、層の段落としの隙間を利用して、4並列超電導線20-4の端部と3並列超電導線20-3の端部とをラップ接続する。
【0039】
また、
図7および
図8に示す変形例の超電導コイル10において、
図5および
図6に示すように、巻きボビン11のフランジ11aに設けた切欠き11bから内径側の超電導線と外径側の超電導線とをそれぞれ構造としてもよい。
【0040】
<超電導線並列数の種類>
以上は、並列数が2種類の例であるが、並列数は2種類でなくてもよく、例えば、内径側から順に4並列、3並列、2並列と、3種類以上を選択してもよい。
図9は、並列数が3種類の超電導コイル10の断面図である。
図1と同一構成部分には同一番号を付している。
図9に示す超電導コイル10は、後記
図17に示す超電導マグネット1に適用可能である。
【0041】
図9の太破線囲みに示すように、最内径側で4本の超電導線20を3本一組で並列接続した4並列超電導線20-4は、層あたり3回巻き回され、3本の超電導線20を3本一組で並列接続した3並列超電導線20-3は、層あたり4回巻き回され、2本の超電導線20を2本一組で並列接続した2並列超電導線20-2は、層あたり6回巻き回される。各層の超電導線20の巻き数(並列数×巻き回数)は12回であり、超電導線20の巻き数「12回」は、最内径側の超電導線並列数「4」と内径側の超電導線並列数「3」と外径側超電導線並列数「2」の公倍数とされる。
【0042】
図10は、外径側(最外径側)を並列接続にしない超電導コイル10の断面図である。
図1と同一構成部分には同一番号を付している。
図10に示す超電導コイル10は、
図17に示す超電導マグネット1に適用可能である。
図10に示す超電導コイル10は、3本の超電導線20を並列接続した3並列超電導線20-3と、2本の超電導線20を並列接続した2並列超電導線20-2と、外径側を並列接続にしない超電導線20と、を備えて構成される。
図10に示す超電導コイル10は、1本の超電導線20が巻き回される層をさらに有する。すなわち、
図10に示す超電導コイル10は、最外径側は並列接続にせず、一本の超電導線20で構成される。この場合も、各層の巻き数(並列数×巻き回数)を並列数の公倍数とする。
【0043】
このように、超電導コイル10は、各層の超電導線20の並列数と巻き回数とを乗じた巻き数が、各層の並列数の公倍数であることで、各層の寸法ばらつきを抑えることができる。このため、層端部と巻きボビン11のフランジ11a間の熱抵抗のばらつきが低減され、冷却コストをより一層低減できる。
【0044】
<並列超電導線の層端部の転位>
図11は、超電導マグネット1の超電導コイル10の、3並列超電導線の転位位置の例を示す図である。
図12は、3並列超電導線の転位方法の例を示す図である。
図13は、4並列超電導線の転位方法の例を示す図である。なお、
図12および
図13の表記において、図中の矩形は並列超電導線を示し、その中の数値は並列超電導線の列数を示す。
【0045】
並列超電導線間のインダクタンス差による結合損が大きい場合は、
図11に示すように並列超電導線(ここでは3並列超電導線20-3)に層端部で転位25を施すことで、結合損を低減できる。
【0046】
3並列超電導線20-3の転位25の方法は、
図12の破線矢印に示すように、ある層の巻き始めにおいて、3並列超電導線20-3の1列目を2列目に転位するとともに、2列目を1列目に転位し、3列目はそのままとする。そして、次の層(内径側からみて外側の隣の層)の巻き終わりにおいて、3並列超電導線20-3の1列目はそのままとし、2列目を3列目に転位するとともに、3列目を2列目に転位する。例えば、
図12の破線矢印aに示すように、巻き始めにおいて、最内径の層の1列目「1」は、段落としで1つ下げられて(転位して)隣の内径の層の2列目となり、そのまま下方に巻き回しされ(
図12の↓矢印参照)、
図12の破線矢印bに示すように、巻き終わりにおいて、段落としでさらに1つ下げられて(転位して)隣の層の最終列目(
図1の例では12列目)となる。そして、上方に巻き回しされ(
図12の↑矢印参照)、
図12の破線矢印cに示すように、巻き始めにおいて、転位することなく隣の層の3列目となる。以下同様に、巻き始めと巻き終わりにおいて、2回の転位と、転位しないこととを繰り返す。他の並列超電導線の列についても同様である。
【0047】
4並列超電導線20-4の転位25の方法は、
図13の破線矢印に示すように、並列超電導線のコイル巻き中心軸方向の両端部において複数の(ここでは3つの)パターン1~3を繰り返し用いる。
パターン1:
ある層の巻き始めにおいて、4並列超電導線20-4の1列目を2列目に転位するとともに、2列目を1列目に転位し、3列目および4列目はそのままとする。そして、次の層(内径側からみて外側の隣の層)の巻き終わりにおいて、4並列超電導線20-4の1列目と4列目はそのままとし、2列目を3列目に転位するとともに、3列目を2列目に転位する。
【0048】
パターン2:
次の層の巻き始めにおいて、4並列超電導線20-4の1列目および2列目はそのままとし、3列目を4列目に転位するとともに、4列目を3列目に転位する。さらに次の層の巻き終わりにおいて、4並列超電導線20-4の1列目を2列目に転位するとともに、2列目を1列目に転位し、3列目と4列目はそのままとする。
パターン3:
次の層の巻き始めにおいて、4並列超電導線20-4の1列目および4列目はそのままとし、2列目を3列目に転位するとともに、3列目を2列目に転位する。さらに次の層の巻き終わりにおいて、4並列超電導線20-4の1列目と2列目はそのままとし、3列目を4列目に転位するとともに、4列目を3列目に転位する。
パターン3のあとは、パターン1に戻って4並列超電導線20-4の転位25を繰り返す。
なお、本発明は、
図12および
図13に示す転位の方法には限定されない。
【0049】
<超電導線の断面形状>
以上は、矩形断面の超電導線20による構成を示したが、矩形断面以外の断面形状の超電導線でもよい。
図14は、変形例の超電導コイル10Aの断面図である。
図1と同一構成部分には同一番号を付している。
図14に示す超電導コイル10Aは、後記
図17に示す超電導マグネット1に適用可能である。
図14に示すように、超電導コイル10Aは、巻きボビン11に円形断面の超電導線20Aが並列接続され、当該並列接続される超電導線20Aは巻き軸方向に並べて配置され、超電導コイル10外径側で並列接続される超電導線20Aの並列数は、内径側で並列接続される超電導線20Aの並列数よりも少なくすることを特徴とする。
【0050】
図14の例では、超電導コイル10Aは、内径側の2層では巻き軸方向に並んだ3本の超電導線20Aを並列接続した3並列超電導線20A-3を巻き軸方向に巻き進めて層が構成され、外径側の2層では巻き軸方向に並んだ2本の超電導線20Aを並列接続した2並列超電導線20A-2を巻き軸方向に巻き進めて層が構成される。
図1の太破線囲みに示すように、3本の超電導線20Aを3本一組で並列接続した3並列超電導線20A-3は、層あたり4回巻きまわされて、内径側の2つの層を構成する。また、2本の超電導線20Aを2本一組で並列接続した2並列超電導線20A-2は、層あたり6回巻きまわされて、外径側の2つの層を構成する。
各層の端部は、巻きボビン11のフランジ11aの位置で揃えられる。
【0051】
<他の変形例>
本実施形態(
図17~
図6)と各変形例(
図7~
図14)を組み合わせて構成してもよい。例えば、
図17に示す超電導マグネット1本体に部分的に異なる種類の線材を用いたり、層の巻き数(並列数×巻き回数)が、各層の並列数の公倍数でない個所を含む場合も可能である。
【0052】
(第2実施形態)
図15は、本発明の第2実施形態に係る超電導マグネットの超電導コイル10Bの断面図である。
図1と同一構成部分には同一番号を付している。
図15に示す超電導コイル10Bは、
図17に示す超電導マグネット1に適用可能である。
図15に示すように、超電導コイル10Bは、巻きボビン11に矩形断面の超電導線30を内周側から俵積み状に巻き回しながら巻き軸方向に巻き進めて巻線の層を構成し、層の端部で巻き進める方向を折り返して外側の層を巻き回す、多層巻きの構造をとる。巻き巻きボビン11に巻きまわされた超電導線30は、エポキシを代表とする樹脂(図示省略)を注入して固定され、コイル形成される。
各層の端部は、巻きボビン11のフランジ11aの位置で揃えられる。
【0053】
超電導線30は、素線数が100本の超電導線材31100とこの超電導線材31100を被覆する絶縁被膜32とからなる超電導線30aと、素線数が50本の超電導線材3150とこの超電導線材3150を被覆する絶縁被膜32とからなる超電導線30bと、を有する。超電導線材31100と超電導線材3150の断面は、概略同寸である。すなわち、素線1本当たりの断面積は同じであるが、素線の本数が異なる。超電導線材31100および超電導線材3150は、ニオブチタン(NbTi)やニオブ3スズ(Nb3Sn)等の金属超電導体が選択できる。
【0054】
本実施形態では、超電導コイル10Bは、外径側の超電導線30の素線数を内径側の超電導線30の素線数よりも少なくすることを特徴とする。
【0055】
超電導コイル30は、第1実施形態の超電導コイル20(
図1参照)と同様に、各層の超電導線の断面の外形寸法(形状)が同じ特徴を有する。超電導コイル20と同様に、超電導コイル30を密に巻けるため(隙間が生じないため)、超電導マグネット1内の熱抵抗を低減することができる。
【0056】
図15の例では、超電導コイル10Bは、巻きボビン11に超電導線30を巻き回して構成され、内径側の2層では素線数が100本の超電導線30aを巻き軸方向に巻き進めて層が構成され、外径側の2層では素線数が50本の超電導線30bを巻き軸方向に巻き進めて層が構成される。
素線数が100本の超電導線30aと素線数が50本の超電導線30aは、第1実施形態の超電導コイル10と同様に、巻きボビン11のフランジ11aの位置で接続される。
また、第1実施形態の
図5および
図6と同様に巻きボビン11のフランジ11aの切欠き11bから超電導線30aおよび超電導線30aの端部を引き出して接続部12Aに接続してもよい。
【0057】
図16は、超電導マグネットの、素線数が変わる層間の接続構造の例を示す図である。
図16に示すように、素線数が100本の超電導線30aと素線数が50本の超電導線30aは、第1実施形態と同様に、巻きボビン11のフランジ11aの位置で接続される。
なお、第1実施形態の
図5および
図6と同様に、巻きボビンのフランジ11aの切欠き11bから引き出して接続してもよい。
【0058】
以下、上述のように構成された超電導マグネット1の動作について説明する。
高磁場下ほど流せる電流密度が小さくなるという超電導線の特徴から、超電導マグネット1の内径側ほど高磁場となるため低電流密度とし、外径側は逆に低磁場となるため高電流密度とする。本実施形態では、超電導コイル10Bは、外径側の超電導線30の素線数を内径側の超電導線30の素線数よりも少なくすることで、外径側の素線数が50本の超電導線30bの電流密度が内径側の素線数が100本の超電導線30aの2倍となる。これにより、超電導マグネット1全体の電流を最大化、換言すれば、超電導体の量を最小化することができ、超電導体の投入量が低減できる。
【0059】
また、超電導コイル10Bの各層が同一形状の超電導線30で構成されるため、巻き回し作業が容易であることに加えて、各層において超電導線30を密に巻き回すことができ、超電導マグネット1内の熱抵抗を低減することができる。また、各層の超電導線30断面が概略同寸であることから、各層を同じ巻き数だけ巻いて層の寸法ばらつきを抑えることができる。このため、層端部と巻きボビン11のフランジ間の熱抵抗のばらつきが低減され、伝導冷却を適用する場合の冷却コストを低減できる。
【0060】
また、本実施形態は、線材31100および線材3150を、一つの超電導線30に集約したものである。第1実施形態のように、超電導線20を並列接続しない構成であるので、巻き作業が容易になる。
【0061】
さらに、本実施形態は、内径側、外径側の電流密度の比率をより細かく設計できることから、超電導線の投入量をより削減できる。
【0062】
なお、本実施形態では内径側の素線数を100、外径側の素線数を50としたが、外径側の素線数が内径側の素線数より小さければよい。
【0063】
本発明は、以上に説明した各実施形態および変形例に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を加えることも可能である。例えば、下記(1),(2)の応用例も可能である。
【0064】
(1)
図17は、本発明の応用例に係る超電導マグネットの構造を模式的に示す断面図である。本応用例は、永久電流運転する伝導冷却型の永久電超電導マグネットに適用した例である。
図17に示すように、超電導マグネット1Aは、超電導コイル10(10A,10B)と、電源駆動モードと永久電流モードを切り替える永久電流スイッチ2と、端部間接続部3と、直流電源と超電導コイル10とを連結する電流リード4と、超電導コイル10、永久電流スイッチ2および冷凍機7を熱的に接続する支持板5(伝熱経路)と、冷却容器6と、超電導コイル10および永久電流スイッチ2を冷却する冷凍機7と、を備える。
ただし、永久電流運転には、線材同士の超電導接続が必須である。このため、線材同士の接続は、電気抵抗が生じるハンダに代えて超電導接続構造を採る必要がある。
【0065】
(2)
上記各実施形態に係る超電導マグネットは、例えば冷凍機により冷却する伝導冷却型の超電導マグネットとして説明したが、超電導コイルおよび永久電流スイッチを液体ヘリウム等の冷媒により冷却する浸漬冷却型の超電導マグネットに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1,1A 超電導マグネット
2 永久電流スイッチ
3 端部間接続部
4 電流リード
5 支持板(伝熱経路)
6 冷却容器
7 冷凍機
10,10A,10B 超電導コイル
11 巻きボビン
12,12A,12B 接続部
13 スペーサ
14 段落とし部
20,20A,30,30a,30b 超電導線
20-2,20A-2 2並列超電導線
20-3,20A-3 3並列超電導線
20-4 4並列超電導線
21,31100,3150 超電導線材
22,32 絶縁被膜
25 転位