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<図1>
  • -X線メモリ箔システム 図1
  • -X線メモリ箔システム 図2
  • -X線メモリ箔システム 図3
  • -X線メモリ箔システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】X線メモリ箔システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20231214BHJP
   A61B 6/14 20060101ALI20231214BHJP
   G03B 42/04 20210101ALI20231214BHJP
【FI】
A61B6/00 300T
A61B6/14
G03B42/04 Z
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019109237
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020014835
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】10 2018 114 460.1
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507063595
【氏名又は名称】デュール デンタル ソシエタス オイロペア
【氏名又は名称原語表記】DUERR DENTAL SE
【住所又は居所原語表記】Hoepfigheimer Str. 17, 74321 Bietigheim-Bissingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【弁理士】
【氏名又は名称】平方 伸治
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ベーバー
(72)【発明者】
【氏名】ベルント フィリップス
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014014056(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0011976(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3586756(EP,A1)
【文献】米国特許第10816890(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
G03B 42/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線メモリ箔システム(10)であって、
a)記録領域内でX線光によって露光されるように構成され、かつ、少なくとも一方の側に造影マーカー(16)を支持するX線メモリ箔(12)であって、前記造影マーカーが、前記記録領域内に配置されている、X線メモリ箔(12)と、
b)X線記録(36、36')を発生させるために、露光された前記X線メモリ箔(12)を読み出すように構成される、メモリ箔リーダー(14)と、
を備え、
記造影マーカー(16)が、X線光に対する造影作用を有し、ーザーが前記X線記録(36、36')を観察する場合に記造影マーカー(16)が画像人工物によってのみかすかに認識できかつ/又は認識できない程度に、X線光に対する前記造影マーカー(16)の前記造影作用が小さいものであって、特に入射するX線強度の最大で約30%であり、かつ
記メモリ箔リーダー(14)が、認識アルゴリズム(40)を有し、前記認識アルゴリズムが、露光する際にX線光が前記造影マーカー(16)によって陰らされたか否かを認識するように、構成され
前記造影マーカー(16)が、前記X線メモリ箔(12)に取り付けられた無線マーカー(20)の少なくとも一部である、ことを特徴とする、X線メモリ箔システム。
【請求項2】
前記造影マーカー(16)が、特徴的な目印(22)を有する幾何学的な形状を有し、かつ
前記認識アルゴリズム(40)が、可能な造影作用を認識するために、前記特徴的な目印(22)を使用する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のX線メモリ箔システム。
【請求項3】
前記造影マーカー(16)が、定められた周期性(22)を有し、かつ、前記認識アルゴリズム(40)が、前記周期性(22)に関して前記X線記録(36、36')を評価する、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のX線メモリ箔システム。
【請求項4】
前記認識アルゴリズム(40)が、前記X線記録(36、36')を場所空間から周波数空間(469)へ移行させ、かつ、前記周波数空間(46)内で前記造影マーカー(16)の前記周期性(22)に属する周波数(50)を求める、ことを特徴とする、請求項3に記載のX線メモリ箔システム。
【請求項5】
前記造影マーカー(16)が、前記無線マーカー(20)のアンテナ構造(18)である、ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のX線メモリ箔システム。
【請求項6】
前記無線マーカー(20)の前記アンテナ構造(18)が螺旋形状を有し、前記認識アルゴリズム(40)が前記X線記録(36、36'、46)内の前記螺旋形状の特徴的な目印(22)を求めて、それに基づいて造影作用が存在するか否かを判定する、ことを特徴とする、請求項に記載のX線メモリ箔システム。
【請求項7】
X線メモリ箔システム(10)であって、
a)記録領域内でX線光によって露光されるように構成され、かつ、少なくとも一方の側に造影マーカー(16)を支持するX線メモリ箔(12)であって、前記造影マーカーが、前記記録領域内に配置されている、X線メモリ箔(12)と、
b)X線記録(36、36')を発生させるために、露光された前記X線メモリ箔(12)を読み出すように構成される、メモリ箔リーダー(14)と、
を備え、
前記造影マーカー(16)が、X線光に対する造影作用を有し、ユーザーが前記X線記録(36、36')を観察する場合に前記造影マーカー(16)が画像人工物によってのみかすかに認識できかつ/又は認識できない程度に、X線光に対する前記造影マーカー(16)の前記造影作用が小さいものであって、特に入射するX線強度の最大で約30%であり、かつ
前記メモリ箔リーダー(14)が、認識アルゴリズム(40)を有し、前記認識アルゴリズムが、露光する際にX線光が前記造影マーカー(16)によって陰らされたか否かを認識するように、構成され、
前記造影マーカー(16)が、電気的に導通する材料から形成されている、ことを特徴とする、線メモリ箔システム。
【請求項8】
前記造影マーカー(16)が、プリント方法を用いて前記X線メモリ箔(12)上にプリントインクとしてプリントされている、ことを特徴とする、請求項7に記載のX線メモリ箔システム。
【請求項9】
前記造影マーカー(16)が、入射するX線強度の約20%より少ない影作用をもたらす、ことを特徴とする、請求項7又は8に記載のX線メモリ箔システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線メモリ箔システムに関するものであって、同システムは、
a)記録領域においてX線光によって露光されるように構成されかつ少なくとも1つの側に造影マーカーを支持するX線メモリ箔であって、造影マーカーが、記録領域内に配置されている、X線メモリ箔と、
b)X線記録を発生させるために露光されたX線メモリ箔を読み出すように構成されている、メモリ箔リーダーと、
を備える。
【背景技術】
【0002】
X線メモリ箔システムは、工業、医療及び/又は歯科医療において、たとえば顎内の歯のような、所定の調査領域のX線記録をユーザーのためにタイムリーに形成するために、使用される。そのために、X線メモリ箔システムは、X線源に対して、X線照射すべき調査領域の(たとえば顎の)下流側に配置されて、X線源からのX線光によって露光される。メモリ箔は潜像を支持し、その潜像がメモリ箔リーダーによって読み出されて、X線記録として表示器上で従来のX線フィルム記憶と比較できるように表示される。
【0003】
そのために、現在一般的なX線メモリ箔システムは、メモリ箔として、いわゆるフォトルミネッセンスメモリ箔を使用し、それがメモリ箔リーダー内で活性化光によって点状又はライン状にスキャンされて、読み出される。したがってこの種のメモリ箔リーダーは、短くスキャナとも称される。その場合に特に歯科医療においては、ロータリースキャナが使用され、それにおいてX線メモリ箔はカセットケースなしで装置を通して1方向に移送され、その際にスキャンされて、次に消去される。
【0004】
原則的にこの種のメモリ箔は、メモリ箔の一方の側又は他の側からX線光によって露光することができる。というのは、X線光がメモリ箔を完全に貫通するからである。それにもかかわらず、多くのメモリ箔は区別可能な前側と後ろ側とを有している。というのは、しばしばメモリ箔の片側の読みだしが優先されるからである。特にメモリ箔は、しばしば後ろ側に保護層を有しており、その保護層がたとえば移送の理由から、メモリ箔リーダー内で所定の摩擦ホィール又はバンドドライブに適合されている。しかしこのコーティングは、X線光に関しては最小の減衰作用しかもたない。
【0005】
したがってメモリ箔は、優先される前側と後ろ側とを有している。
【0006】
米国特許第7140769号明細書に記述されるように、クリニックの日常では、特にカセットに入れずに移送される歯科用のメモリ箔は、露光する際にうっかりとその前側の代わりにその後ろ側をX線源へ向けて配置してしまうことが起こり得る。それによってX線記録内に画像情報のミラーリングがもたらされる。
【0007】
したがってX線記録を後に評価する際に、メモリ箔がどの側から露光されたかを認識できることが、望まれる。
【0008】
そのために、同様に米国特許第7140769号明細書に記述されるように、造影マーカーを使用することが知られており、それがメモリ箔の記録領域内でメモリ箔の片側に取り付けられている。この造影マーカーは、X線光用の高い作用横断面を有する材料からなり、露光が造影マーカーの側から行われる場合に、X線光を著しく陰らせる。それによってX線記録を見る場合に、ある場合には造影マーカーが見られ、他の場合には見られない。
【0009】
さらに、X線源に対するメモリ箔の方位についての更なる帰納的推論もしくはリーダー内部で場合によっては行われる画像変換を認識するために、造影マーカーを非対称に形成することも、知られている。
【0010】
しかしこれらの従来の造影マーカーには欠点があって、造影マーカーの側からメモリ箔を露光する場合に、調査領域の部分領域が覆われ、したがって診断のために利用できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第7140769号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の課題は、造影マーカーに関して改良され、特に画像情報を失うことなしに露光方向を認識することを可能にする、冒頭で挙げた種類のX線メモリ箔システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これは、本発明によれば、冒頭で挙げた種類のX線メモリ箔システムによって解決され、それにおいて
c)造影マーカーがX線光に対して造影作用を有し、その造影作用は、ユーザーがX線記録を観察する場合に、造影マーカーは画像人工物によってのみわずかに認識されかつ/又は認識できない程度に小さく、特に最大で入射するX線強度の約30%であり、
d)メモリ箔リーダーが認識アルゴリズムを有しており、その認識アルゴリズムは、露光する際にX線光が造影マーカーによって陰らされたか否かを認識するように、構成されている。
【0014】
発明者は、既知のシステムとは異なり、造影マーカーが高い造影作用を有しそれによって最終的に示されるX線記録内の造影マーカーを通常の観察においてユーザーが直接見ることができることは、必要でないことを認識した。その代わりに、発明者は、通常ユーザーに表示される本来のX線記録内に造影マーカーが見えず、あるいは見えるにしてもかすかに見えるだけであるような、小さい造影作用を有する造影マーカーを設けることを、提案する。
【0015】
特に小さい造影作用によるX線記録は、診断可能であり続けなければならない。すなわち、それぞれの診断にとって興味をひく構造は、認識可能であり続けなければならない。これは特に、調査すべき構造が記録領域の、造影マーカーも配置されている部分内にある場合に、効果的である。
【0016】
その場合に画像人工物というのは、造影マーカーの一部のみが見えることでもある。というのは他の部分は調査すべき構造が重畳されているからである。
【0017】
したがってこの種の造影マーカーによって、影になった箇所におけるX線記録のダイナミック領域は、わずかしか制限されない。
【0018】
それにもかかわらず、メモリ箔がどの側から露光されたか、を定めるために、リーダー内に認識アルゴリズムが設けられており、その認識アルゴリズムは特に、造影マーカーによってもたらされたわずかな影を認識し、それに応じて露光側を定めるように、構成されている。
【0019】
そのために認識アルゴリズムは、たとえば、場合によっては存在する、たとえば弱い影のような画像人工物を求めることができる。
【0020】
しかしこの種の画像人工物は、調査領域の本来の構造の認識可能性を阻止しない。というのは造影作用がそれだけ小さいからである。
【0021】
造影作用は一般に、使用されるマーカー材料、及び、たとえばX線電圧、X線強度、X線記録の信号-ノイズ比などのような露光パラメータに依存するので、造影マーカーのきわめて様々な正確な形態が可能であり、それらはそれぞれ予測すべき露光パラメータ及び予測すべき調査領域に依存している。しかし各適用場合について、本発明に係る考えによって、一方では通常の観察においてかすかにしか見えないようにし、他方においては認識アルゴリズムの充分な強靱性を得るために、適切な選択を行うことができる。
【0022】
本発明の枠内においてメモリ箔リーダーとは、認識アルゴリズムに関連して、もちろん、認識アルゴリズムが読みだし用の別体のスキャナユニット内に直接内蔵されている、メモリ箔リーダーでもあり、市場で一般的なPCのような別体のデータ処理装置内に認識アルゴリズムを備えたしかるべき評価ソフトウェアを有する、メモリ箔リーダーでもある。その場合に、認識アルゴリズムが、ハードウェア内に、あるいはソフトウェア内に、あるいは特にサーバー上に移されたサービスとして実装されているかは、重要ではない。
【0023】
X線記録というのは、ここではX線強度分布の任意の表現である。大体において、測定された強度値が2次元のアレイに記憶され、あるいはすでにグレイ値として格納されている。
【0024】
好ましくは、造影マーカーは、特徴的な目印を備えた幾何学的な形状を有しており、認識アルゴリズムは、可能な造影作用を認識するために特徴的な目印を使用する。
【0025】
それによって認識アルゴリズムは目的に合わせて、評価された画像内の造影作用を探求することができ、かつ造影作用、すなわちしかるべき露光が造影マーカーの側から行われたか否かを求めることができる。したがって特徴的な目印がX線を当てるべき調査領域内に存在しない場合にも、確実な認識を行うことができる。特徴的な目印は、たとえば造影マーカーの寸法とすることができる。
【0026】
好ましくは、造影マーカーは定められた周期性を有し、かつ認識アルゴリズムがX線記録を周期性に関して評価する。
【0027】
X線メモリ箔システムが、医療又は歯科医療において使用される場合に、調査領域内には典型的には周期的構造は発生しない。したがってたとえばその幾何学的形状及び/又は造影作用内に既知の周期性を有する造影マーカーは、認識アルゴリズムによって確実に認識することができる。
【0028】
好ましくは、認識アルゴリズムはX線記録を場所空間から周波数空間へ移行させ、周波数空間内で、造影マーカーの周期性に属する周波数を求める。
【0029】
周期性は、周波数空間内では特に良好に認識することができる。その場合に選択肢としては、たとえばフーリエ空間への、たとえば離散フーリエ変換(DFT)を介しての移行がある。
【0030】
しかしまた、場所及び周波数空間と適切な画像評価フィルタとの間の関連に基づいて、造影マーカーのこの種の周期性は、場合によっては直接場所空間内で動作する、他の画像フィルタによって生じることも可能である。
【0031】
好ましくは、造影マーカーはメモリ箔に取り付けられた無線マーカーの少なくとも一部である。
【0032】
無線マーカー、特にRFIDマーカーは、対象に割り当てられた固有のIDを対応づけることにより、多数の対象を個別化するためにしばしば技術的に使用され、そのIDは無線を介して読み出される。これは、メモリ箔においても効果的である。というのは、その場合に、それぞれのメモリ箔は、直接的に、又は、しかるべきデータベースを用いて間接的に、所定の露光プロセス及び/又は患者に対応づけることができるからである。無線マーカーが読みだしパラメータを定めることもでき、その読みだしパラメータがメモリ箔リーダー内の最適な読みだしをもたらす。そのために、X線露光装置とメモリ箔リーダーに、適切な無線読みだし及び/又は書込み器具を設けることができる。
【0033】
したがって製造の理由からは、もともとX線メモリ箔の片側に設けられている無線マーカーを同時に造影マーカーとして使用すると、効果的である。
【0034】
その場合に好ましくは、認識アルゴリズムは造影を認識する場合に、それぞれ個別の無線マーカーと結合されている情報にアクセスする。
【0035】
たとえばデータベースは、それぞれの無線マーカーの特徴的な目印を含むことができるので、無線マーカー情報の読みだし後に認識アルゴリズムは、関連する造影マーカーを所望に求めることができる。
【0036】
すなわちたとえば、認識アルゴリズムがしかるべき情報を得ることによって、製品育成の枠内で、様々な大きさのメモリ箔において造影認識が改良され、あるいは使用されている無線マーカーを他のように形成された無線マーカーに代えることが可能である。
【0037】
好ましくは、造影マーカーは、無線マーカーのアンテナ構造である。
【0038】
この種のアンテナ構造は、たとえばRFIDマーカーのアンテナとすることができる。
【0039】
好ましくは無線マーカーのアンテナ構造が螺旋形状を有し、認識アルゴリズムはX線記録内の螺旋形状の特徴的な目印を求めて、それにもとづいて造影作用が存在するか否かを定める。
【0040】
螺旋形状のアンテナ構造は、螺旋アームの間にほぼ等しい間隔を有し、その間隔が多数回繰り返されるので、周期性が存在する。この周期性は、周波数空間内ではきわめて良好に認識することができる。
【0041】
好ましくは、造影マーカーは、電気的に導通する材料から形成されている。
【0042】
これによって、造影マーカーを同時にアンテナ構造のような他の目的に使用することが可能になる。
【0043】
そのために造影マーカーは、たとえば銅から形成することができる。しかしまたそれは、他の軽金属から、特にアルミニウムから形成することもできる。軽金属からなる造影マーカーは、X線光をわずかしか陰らさない。というのは、そのX線相互作用横断面積が小さいからである。
【0044】
好ましくは、造影マーカーは、プリント方法を用いてX線メモリ箔上にプリントインクとしてプリントされている。
【0045】
たとえばスクリーンプリントのようなプリント方法は、X線メモリ箔上の造影マーカーのための簡単な製造プロセスである。造影作用のために、プリントインクは、たとえば硫酸バリウムを有することができる。
【0046】
好ましくは、造影マーカーは、入射するX線強度の約20%未満、好ましくは約10%未満、特に好ましくは約5%未満の造影作用をもたらす。
【0047】
このように小さい造影作用は、X線照射すべき調査領域の興味をひく構造がユーザーにとってまだ認識可能であるような観察において、造影マーカーはまさに見えないことを、保証する。
【0048】
好ましくは、造影マーカーは、入射するX線強度の約1%より多い、好ましくは約2%より多い、特に約4%より多い、造影作用をもたらす。
【0049】
エラー露光が存在するか否かを迷いなく定めるために、造影作用の下限が、認識アルゴリズムの充分な強靱性を保証する。
【0050】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は造影マーカーを有するX線メモリ箔システムを図式的に示している。
図2図2はノーマルに観察する場合にユーザーに示されるX線記録の表示であって、その場合に露光は造影マーカーの側から行われている。
図3図3はX線記録を周波数空間へ変換した後の、このX線記録の周波数空間画像である。
図4】造影マーカーの側からの露光に基づいてミラーリングされ、かつ露光側についての有益な示唆を示す、図2に基づくX線記録の表示である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、図1の下方部分に示されるX線メモリ箔読みだしシステム10を有する、歯科医療領域におけるX線記録の典型的なサイクルを全体的に示している。
【0053】
X線メモリ箔読みだしシステム10は、X線メモリ箔12とメモリ箔リーダー14を有している。
【0054】
図1の左上から明らかなように、X線メモリ箔12は造影マーカー16を有しており、その造影マーカーはX線メモリ箔12の一方の側、特に後ろ側に配置されている。造影マーカー16は、少なくともX線メモリ箔12の、本来の露光用に設けられた記録領域内にも配置されている。しかし造影マーカー16は、たとえば銅からなる既知の造影マーカー16に比較して、小さい造影作用しか有していない。
【0055】
造影マーカー16は、ここに示される実施例においては、RFIDマーカー20の螺旋形状のアンテナ構造18として形成されており、そのRFIDマーカーは、X線メモリ箔12をX線メモリ箔読みだしシステム10の他のX線メモリ箔12に対して容易に対応づけるために個別化する。
【0056】
アンテナ構造18の螺旋形状は個々のアルミニウム導体路の間で、電磁的な特性によって定められた、螺旋形状に沿って実質的に変化しない間隔22を有する。
【0057】
ここに図示される実施例において、造影マーカー16は、変化しない間隔22によって、特徴的な目印として、導体路の間で周期的に交代するアルミニウム導体路と間隙の領域を有している。
【0058】
図1の右上の部分に示されるように、X線メモリ箔12は顎24の内部空間内へ露光のために挿入されて、必ずしもX線メモリ箔システム10に属さないX線露光装置26とその中に配置されたX線源28によって露光される。
【0059】
その場合に造影マーカー16を支持するX線メモリ箔12の裏側がX線源28を向いているので、露光は造影マーカー16の側から行われる。これは、うっかりとして正しく挿入されていないX線メモリ箔12に相当する。
【0060】
異なる露光方向を理解しやすくするために、さらに、X線露光装置26’とX線源28’の補完的な位置が破線で示されている。
【0061】
X線メモリ箔12の露光後に、このX線メモリ箔がメモリ箔リーダー14内へ挿入される。メモリ箔リーダーはメモリ箔12を読み出すために、スキャンユニット30内に、この種のメモリ箔リーダー14によって知られたコンポーネントを有している。
【0062】
スキャンユニット30は、ここではロータリースキャナとして形成されているが、X線メモリ箔12の蛍光検出に適した任意のスキャン方法を使用することができる。
【0063】
さらにスキャンユニット30は、RFIDリーダー38を有しており、それによって無線を介してRFIDマーカー20の情報が読み出される。
【0064】
読み出されたX線記録のデータ及び場合によってはRFIDマーカー20の情報が、その後評価ユニット32へ伝達され、その評価ユニットはここでは市場で一般的なPCとして示されている。
【0065】
評価ユニット32の表示器34上に、X線記録の通常のグレイ値画像36を示すことができる。しかしこのグレイ値画像36においては、ユーザーが通常のように観察する場合には、造影マーカー16は、造影作用が小さいことに基づいて認識できない。
【0066】
したがって評価ユニット32は、認識アルゴリズム40を有しており、その認識アルゴリズムは、X線記録内の造影マーカー16の造影作用が探求されることにより、X線メモリ箔12がどの側から露光されたかを認識するように、構成されている。
【0067】
認識アルゴリズム40は、以下のように作動する:
【0068】
認識アルゴリズム40は入力情報としてX線記録を受け取り、そのX線記録はユーザーにグレイ値画像36として表示され、これが図2に再度示されている。図2から明らかなように、グレイ値画像36の隣及び/又は上に患者情報42が示される。さらにエラー露光示唆44が設けられており、これはX線メモリ箔12がどの側から露光されたかを表示する。
【0069】
図2からさらに明らかなように、ユーザーによるノーマルな観察用に設けられている、このグレイ値画像36からユーザーによっては、造影マーカー16の造影作用の存在を光学的に推定することはできない。
【0070】
認識アルゴリズム40は、画像データをフーリエ変換することによって、X線記録を場所空間から周波数空間へ移動させる。該当する周波数空間画像46の表示は、たとえば図3に示すように見ることができる。
【0071】
間隔22を有するアンテナ構造18の周期性に基づいて、図3に示すように、周波数空間画像46の周期性によって定められる位置48に強度ピーク50が形成される。
【0072】
したがって認識アルゴリズム40は、既知の位置48においてこの種の強度ピーク50の存在を求める。
【0073】
その場合に既知の位置48は、RFIDマーカー20によって得られる情報に従って、X線メモリ箔12に対してかつそれに伴ってその上に取り付けられている造影マーカー16に対しても定められることができる。
【0074】
したがって認識アルゴリズム40は、決定判断基準の適用によって、この例において強度ピーク50が存在していることに基づいて、造影マーカー16の側からのX線メモリ箔の露光が存在すると、判定する。
【0075】
したがって認識アルゴリズム40は、図4に示すように、エラー露光示唆44を作動させることができ、そのエラー示唆からは、造影マーカー16の側からの露光が行われたことが、明らかになる。
【0076】
さらに造影効果の認識に基づいてX線記録をミラーリングすることができるので、図4に示すグレイ値画像36’は、顎24の正しい方位を示している。
【0077】
付加的に、認識アルゴリズム40は、造影マーカー抑圧アルゴリズムを有することもでき、これは、造影作用によってもたらされた、たとえばかるい背景影のような効果を無効にする。
【0078】
もちろん認識アルゴリズム40は、中間ステップの表示を省くことができるので、ユーザーには最終的なグレイ値画像36’のみが表示される。
上述の実施形態は下記のように記載され得るが、下記に限定されるものではない。
[構成1]
X線メモリ箔システム(10)であって、
a)記録領域内でX線光によって露光されるように構成され、かつ、少なくとも一方の側に造影マーカー(16)を支持するX線メモリ箔(12)であって、前記造影マーカーが、前記記録領域内に配置されている、X線メモリ箔(12)と、
b)X線記録(36、36')を発生させるために、露光された前記X線メモリ箔(12)を読み出すように構成される、メモリ箔リーダー(14)と、
を備え、
c)前記造影マーカー(16)が、X線光に対する造影作用を有し、前記造影作用は、ユーザーが前記X線記録(36、36')を観察する場合に、前記造影マーカー(16)が画像人工物によってのみかすかに認識できかつ/又は認識できない程度に小さいものであって、特に入射するX線強度の最大で約30%であり、かつ
c)前記メモリ箔リーダー(14)が、認識アルゴリズム(40)を有し、前記認識アルゴリズムが、露光する際にX線光が前記造影マーカー(16)によって陰らされたか否かを認識するように、構成される、
ことを特徴とする、X線メモリ箔システム。
[構成2]
前記造影マーカー(16)が、特徴的な目印(22)を有する幾何学的な形状を有し、かつ
前記認識アルゴリズム(40)が、可能な造影作用を認識するために、前記特徴的な目印(22)を使用する、
ことを特徴とする、構成1に記載のX線メモリ箔システム。
[構成3]
前記造影マーカー(16)が、定められた周期性(22)を有し、かつ、前記認識アルゴリズム(40)が、前記周期性(22)に関して前記X線記録(36、36')を評価する、ことを特徴とする、構成1又は2に記載のX線メモリ箔システム。
[構成4]
前記認識アルゴリズム(40)が、前記X線記録(36、36')を場所空間から周波数空間(469)へ移行させ、かつ、前記周波数空間(46)内で前記造影マーカー(16)の前記周期性(22)に属する周波数(50)を求める、ことを特徴とする、構成3に記載のX線メモリ箔システム。
[構成5]
前記造影マーカー(16)が、前記X線メモリ箔(12)に取り付けられた無線マーカー(20)の少なくとも一部である、ことを特徴とする、構成1から4のいずれか1項に記載のX線メモリ箔システム。
[構成6]
前記造影マーカー(16)が、前記無線マーカー(20)のアンテナ構造(18)である、ことを特徴とする、構成5に記載のX線メモリ箔システム。
[構成7]
前記無線マーカー(20)の前記アンテナ構造(18)が螺旋形状を有し、前記認識アルゴリズム(40)が前記X線記録(36、36'、46)内の前記螺旋形状の特徴的な目印(22)を求めて、それに基づいて造影作用が存在するか否かを判定する、ことを特徴とする、構成6に記載のX線メモリ箔システム。
[構成8]
前記造影マーカー(16)が、電気的に導通する材料から形成されている、ことを特徴とする、構成1から7のいずれか1項に記載のX線メモリ箔システム。
[構成9]
前記造影マーカー(16)が、プリント方法を用いて前記X線メモリ箔(12)上にプリントインクとしてプリントされている、ことを特徴とする、構成1から8のいずれか1項に記載のX線メモリ箔システム。
[構成10]
前記造影マーカー(16)が、入射するX線強度の約20%より少ない、好ましくは、約10%より少ない、特に約5%より少ない造影作用をもたらす、ことを特徴とする、構成1から9のいずれか1項に記載のX線メモリ箔システム。
図1
図2
図3
図4