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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】基体
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20231214BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/04 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019132821
(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2021019043
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2021-03-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】笹島 菜美子
(72)【発明者】
【氏名】今枝 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大門 正美
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慎士
(72)【発明者】
【氏名】須永 友博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】松永 稔
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-75478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00-19/08, H01F27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部上に配置された多層金属膜とを備え、
前記多層金属膜は、前記本体部上に配置される導電性を有する第1金属膜と、前記第1金属膜上および前記本体部の上方に配置され耐はんだ食われ性を有する第2金属膜と、前記第2金属膜上に配置されはんだ濡れ性を有する第3金属膜とを備え、
前記第3金属膜は、前記第2金属膜と前記本体部との間に入り込む入り込み部を有し、
前記入り込み部の一部が前記第1金属膜と接触している、基体。
【請求項2】
本体部と、前記本体部の主面上に配置された多層金属膜とを備え、
前記多層金属膜は、前記本体部上に配置される導電性を有する第1金属膜と、前記第1金属膜上および前記本体部の上方に配置され耐はんだ食われ性を有する第2金属膜と、前記第2金属膜上に配置されはんだ濡れ性を有する第3金属膜とを備え、
前記本体部および前記第2金属膜の間に非磁性体の絶縁膜をさらに備え、
前記第3金属膜は、前記第2金属膜と前記絶縁膜との間に入り込む入り込み部を有し、
前記本体部の前記主面に直交する方向から見たときに、前記第2金属膜および前記第3金属膜が前記絶縁膜に重なり、前記第1金属膜が前記絶縁膜に重ならない、基体。
【請求項3】
前記本体部は金属磁性粉を含み、
前記入り込み部の端縁は、前記第2金属膜の下方に位置する前記金属磁性粉上に位置する、請求項1または2に記載の基体。
【請求項4】
前記入り込み部の厚みは、前記第3金属膜における前記入り込み部以外の部分の厚み以下である、請求項1から3の何れか一つに記載の基体。
【請求項5】
前記第3金属膜は、前記第1金属膜および前記第2金属膜よりも貴な金属を含む、請求項1からの何れか一つに記載の基体。
【請求項6】
前記第1金属膜は、Cuを含む、請求項1からの何れか一つに記載の基体。
【請求項7】
前記第2金属膜は、Niを含む、請求項1からの何れか一つに記載の基体。
【請求項8】
前記第3金属膜は、Auを含む、請求項1からの何れか一つに記載の基体。
【請求項9】
前記本体部内に配置されたインダクタ配線をさらに備え、
前記本体部は、樹脂と前記樹脂に含有された金属磁性粉とを含み、
前記インダクタ配線が、前記多層金属膜に電気的に接続されることにより、前記多層金属膜は外部端子を構成する、請求項1からの何れか一つに記載の基体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品などの基体においては、電気素子を構成する内部電極や、電気素子の端子となる外部端子に、金属膜が積層された多層金属膜が用いられる。例えば、特開2014-13815号公報(特許文献1)に記載されたインダクタ部品は、基板と、基板の両面に配置されたスパイラル配線と、スパイラル配線を覆う磁性層と、磁性層の表面に配置された外部端子と、スパイラル配線と外部端子を電気的に接続する引出配線とを備える。スパイラル配線は、基板上に無電解めっき工程で形成されたCuの下地層と、下地層上に2度の電解めっきで形成された2層のCuの電解めっき層からなる多層金属膜である。外部端子は、個片化前にスパッタリングまたはスクリーン印刷により形成され、個片化後にめっき処理された多層金属膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-13815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインダクタ部品では、本体部の一例である、基板や磁性層の上に多層金属膜が配置される。本体部は、例えばフェライトやアルミナなどの焼結体や、樹脂などで構成されており、本体部と多層金属膜とは異種材料の界面において化学的または物理的な結合力によって密着している。ここで、基体は、製造、実装、使用する際などに熱、電気、物理的な力が加えられるが、この力が本体部と多層金属膜との間で内部応力となって蓄積し、剥離が発生する場合がある。今後、より一層の電子部品の小型化を受け、本体部及び多層金属膜の微細化、薄膜化が進むと、従来は問題のなかった製造、実装、使用条件であっても、上記のような剥離が発生する可能性がある。
そこで、本開示の目的は、本体部と多層金属膜との密着性を向上できる基体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本開示の一態様である基体は、
本体部と、前記本体部上に配置された多層金属膜とを備え、
前記多層金属膜は、前記本体部上に配置され導電性を有する第1金属膜と、前記第1金属膜上および前記本体部の上方に配置され耐はんだ食われ性を有する第2金属膜と、第2金属膜上に配置されはんだ濡れ性を有する第3金属膜とを備え、
前記第3金属膜は、前記第2金属膜と前記本体部との間に入り込む入り込み部を有する。
【0006】
本明細書において、A膜がB膜の上方に配置されるとは、A膜がB膜上に配置、すなわちA膜がB膜に接触するようにして直接的に配置されること、およびA膜が他のC膜を介してB膜の上側に間接的に配置されることの両方の意味を含む。
【0007】
前記態様によれば、多層金属膜の第2金属膜と本体部との間に、第2金属膜よりも密着性の高い第3金属膜が配置されるため、本体部と多層金属膜との密着性が向上する。
【0008】
また、基体の一実施形態では、
前記本体部は金属磁性粉を含み、
前記入り込み部の端縁は、前記第2金属膜の下方に位置する前記金属磁性粉上に位置する。
【0009】
前記実施形態によれば、本体部は金属磁性粉を含むため、第1金属膜は本体部の金属磁性粉と金属結合による強固な接合を形成する。そして、入り込み部の端縁は、第2金属膜の下方に位置する金属磁性粉上に位置し、入り込み部が本体部と第1金属膜との間に入り込むことが抑制されている。これにより、本体部と多層金属膜との間の密着性の低下を抑制できる。
【0010】
また、基体の一実施形態では、
前記入り込み部の厚みは、前記第3金属膜における前記入り込み部以外の部分の厚み以下である。
【0011】
前記実施形態によれば、入り込み部の厚みが比較的薄いため、入り込み部自体による密着性の低下を抑制できる。
【0012】
また、基体の一実施形態では、
前記本体部と、前記第2金属膜との間に、非磁性体の絶縁膜をさらに備え、
前記入り込み部は、前記第2金属膜と前記絶縁膜との間に入り込む。
【0013】
前記実施形態によれば、非磁性体の絶縁膜は、金属磁性体(より具体的には、金属磁性粉等)を含まない。このため、第1主面と第2金属膜との間の密着性は、非磁性体の絶縁膜を備えない基体に比べ、低下する。このように、本体部と第2金属膜との間に多層金属膜との密着性が比較的低い絶縁膜を備えることで、入り込み部が第2金属膜と絶縁膜との間に入り込みやすくなる。
【0014】
また、基体の一実施形態では、
前記第3金属膜は、前記第1金属膜および前記第2金属膜よりも貴な金属を含む。
【0015】
前記実施形態によれば、第3金属膜は、第1金属膜および第2金属膜との置換反応により形成することができる。
【0016】
また、基体の一実施形態では、
前記第1金属膜は、Cuを含む。
【0017】
前記実施形態によれば、多層金属膜の導電性を低コストで確保できる。また、第1金属膜の硬度を小さくできるので、多層金属膜の内部応力の蓄積を緩和できる。
【0018】
また、基体の一実施形態では、
前記第2金属膜は、Niを含む。
【0019】
前記実施形態によれば、多層金属膜の耐はんだ食われ性を容易に向上できる。
【0020】
また、基体の一実施形態では、
前記第3金属膜は、Auを含む。
【0021】
前記実施形態によれば、多層金属膜のはんだ濡れ性に加えて化学的安定性を容易に向上できる。また、第3金属膜を置換反応により容易に形成することができる。
【0022】
また、基体の一実施形態では、
前記本体部内に配置されたインダクタ配線をさらに備え、
前記本体部は、樹脂と前記樹脂に含有された金属磁性粉とを含み、
前記インダクタ配線が、前記多層金属膜に電気的に接続されることにより、前記多層金属膜は外部端子を構成する。
【0023】
前記実施形態によれば、本体部と外部端子との密着性が向上したインダクタ部品としての基体を提供できる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一態様である基体によれば、本体部と多層金属膜との密着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】インダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。
図1B図1AのA-A断面図である。
図2図1BのC部拡大図である。
図3図1AのB部拡大図である。
図4A】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図4B】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図4C】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図4D】インダクタ部品の製造方法について説明する説明図である。
図5】インダクタ部品の第2実施形態を示す拡大断面図である。
図6】インダクタ部品の第3実施形態を示す拡大断面図である。
図7】インダクタ部品の実施例の走査型電子顕微鏡の画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の一態様としてインダクタ部品である基体を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0027】
(第1実施形態)
(構成)
図1Aは、インダクタ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。図1Bは、図1AのA-A断面図である。図2は、図1Bの一部拡大図(C部の拡大図)である。図3は、図1Aの一部拡大図(B部の拡大図)である。
【0028】
インダクタ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載される回路基板に実装される表面実装型の電子部品である。ただし、インダクタ部品1は,表面実装型ではなく、基板内蔵型の電子部品であってもよい。また、インダクタ部品1は、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0029】
図1A図1Bに示すように、インダクタ部品1は、絶縁性を有する本体部10と、本体部10内に配置された第1インダクタ素子2Aおよび第2インダクタ素子2Bと、本体部10の第1主面10aから端面が露出するように本体部10に埋め込まれた第1柱状配線31、第2柱状配線32、第3柱状配線33および第4柱状配線34と、本体部10の第1主面10aに配置された第1外部端子41、第2外部端子42、第3外部端子43および第4外部端子44と、本体部10の第1主面10a上に配置された絶縁膜50とを備える。図中、インダクタ部品1の厚みに平行な方向をZ方向とし、順Z方向を上側、逆Z方向を下側とする。Z方向に直交する平面において、インダクタ部品1の長手側となる長さに平行な方向をX方向とし、インダクタ部品1の短手側となる幅に平行な方向をY方向とする。
【0030】
本体部10は、絶縁層61と、絶縁層61の下面61aに配置された第1磁性層11と、絶縁層61の上面61bに配置された第2磁性層12とを有する。本体部10の第1主面10aは、第2磁性層12の上面に相当する。本体部10は、絶縁層61、第1磁性層11および第2磁性層12の3層構造であるが、磁性層のみの1層構造、磁性層と絶縁層のみの2層構造、複数の磁性層及び絶縁層からなる4層以上の構造のいずれであってもよい。
【0031】
絶縁層61は、絶縁性を有し、主面が長方形の層状であり、絶縁層61の厚みは、例えば、10μm以上100μm以下である。絶縁層61は、例えば、低背化の観点からガラスクロスなどの基材を含まないエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂などの絶縁樹脂層であることが好ましいが、NiZn系やMnZn系などのフェライトのような磁性体や、アルミナ、ガラスのような非磁性体からなる焼結体層であってもよく、ガラスエポキシなどの基材を含む樹脂基板層であってもよい。なお、絶縁層61が焼結体層である場合は、絶縁層61の強度や平坦性を確保でき、絶縁層61上の積層物の加工性が向上する。また、絶縁層61が焼結体層である場合は、低背化の観点から研磨加工されていることが好ましく、特に積層物のない下側から研磨されていることが好ましい。
【0032】
第1磁性層11及び第2磁性層12は、高い透磁率を有し、主面が長方形の層状であり、樹脂135と、樹脂135に含有された金属磁性粉136とを含む。樹脂135は、例えば、エポキシ系樹脂やビスマレイミド、液晶ポリマ、ポリイミドなどからなる有機絶縁材料である。金属磁性粉136は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金などの磁性を有する金属材料である。金属磁性粉136の平均粒径は、例えば0.1μm以上5μm以下である。インダクタ部品1の製造段階においては、金属磁性粉136の平均粒径を、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径(いわゆるD50)として算出することができる。金属磁性粉136の含有率は、好ましくは、磁性層全体に対して、20Vol%以上70Vol%以下である。金属磁性粉136の平均粒径が5μm以下である場合、直流重畳特性がより向上し、微粉によって高周波での鉄損を低減できる。なお、金属磁性粉でなく、NiZn系やMnZn系などのフェライトの磁性粉を用いてもよい。
【0033】
第1インダクタ素子2A、第2インダクタ素子2Bは、本体部10の第1主面10aと平行に配置された第1スパイラル配線21、第2スパイラル配線22を含む。これにより、第1インダクタ素子2Aおよび第2インダクタ素子2Bを第1主面10aと平行な方向で構成でき、インダクタ部品1の低背化を実現できる。第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22は、本体部10内の同一平面上に配置されている。具体的に述べると、第1スパイラル配線21と第2スパイラル配線22は、絶縁層61の上方側、つまり、絶縁層61の上面61bにのみ形成され、第2磁性層12に覆われている。
【0034】
第1、第2スパイラル配線21,22は、平面状に巻回されている。具体的に述べると、第1、第2スパイラル配線21,22は、Z方向から見たときに、半楕円形の弧状である。すなわち、第1、第2スパイラル配線21,22は、約半周分巻回された曲線状の配線である。また、第1、第2スパイラル配線21,22は、中間部分で直線部を含んでいる。なお、本願において、スパイラル配線の「スパイラル」とは、渦巻形状を含む平面状に巻回された曲線形状を意味し、第1スパイラル配線21、第2スパイラル配線22のような1ターン以下の曲線形状も含み、また当該曲線形状は、部分的な直線部を含んでいてもよい。
【0035】
第1、第2スパイラル配線21,22の厚みは、例えば、40μm以上120μm以下であることが好ましい。第1、第2スパイラル配線21,22の実施例として、厚みが45μm、配線幅が40μm、配線間スペースが10μmである。配線間スペースは、絶縁性の確保の観点から、3μm以上20μm以下が好ましい。
【0036】
第1、第2スパイラル配線21,22は、導電性材料からなり、例えばCu、Ag、Auなどの低電気抵抗な金属材料からなる。本実施形態では、インダクタ部品1は、第1、第2スパイラル配線21,22を1層のみ備えており、インダクタ部品1の低背化を実現できる。なお、第1、第2スパイラル配線21,22は多層金属膜であってもよく、例えば、無電解めっきにより形成されたCuやTiなどの下地層上に、CuやAgなどの導電層が形成された構造であってもよい。
【0037】
第1スパイラル配線21は、第1端、第2端がそれぞれ外側に位置する第1柱状配線31、第2柱状配線32に電気的に接続され、第1柱状配線31および第2柱状配線32からインダクタ部品1の中心側に向かって孤を描く曲線状である。また、第1スパイラル配線21は、その両端にスパイラル形状部分よりも線幅の大きいパッド部を有し、パッド部において、第1、第2柱状配線31,32と直接接続されている。
【0038】
同様に、第2スパイラル配線22は、第1端、第2端がそれぞれ外側に位置する第3柱状配線33、第4柱状配線34に電気的に接続され、第3柱状配線33および第4柱状配線34からインダクタ部品1の中心側に向かって孤を描く曲線状である。
【0039】
ここで、第1、第2スパイラル配線21,22のそれぞれにおいて、第1、第2スパイラル配線21,22が描く曲線と、第1、第2スパイラル配線21,22の両端を結んだ直線とに囲まれる範囲を内径部分とする。このとき、Z方向からみて、第1、第2スパイラル配線21,22について、その内径部分同士は重ならず、第1、第2スパイラル配線21,22は、互いに離隔している。
【0040】
第1、第2スパイラル配線21,22の第1から第4柱状配線31~34との接続位置からX方向に平行な方向であってインダクタ部品1の外側に向かってさらに配線が伸びており、この配線はインダクタ部品1の外側に露出している。つまり、第1、第2スパイラル配線21,22は、インダクタ部品1の積層方向に平行な側面(YZ方向に平行な面)から外部に露出している露出部200を有する。
【0041】
この配線は、インダクタ部品1の製造過程において、第1、第2スパイラル配線21,22の形状を形成後、追加で電解めっきを行う際の給電配線と接続される配線である。この給電配線によりインダクタ部品1を個片化する前のインダクタ基板状態において、追加で電解めっきを容易に行うことができ、配線間距離を狭くすることができる。また、追加で電解めっきを行うことで、第1、第2スパイラル配線21,22の配線間距離を狭くすることにより、第1、第2スパイラル配線21,22の磁気結合を高めたり、第1、第2スパイラル配線21,22の配線幅を大きくして電気抵抗を低減したり、インダクタ部品1の外形を小さくすることができる。
【0042】
また、第1、第2スパイラル配線21,22は、露出部200を有するので、インダクタ基板の加工時の静電気破壊耐性を確保できる。各スパイラル配線21,22において、露出部200の露出面200aの厚み(Z方向に沿った寸法)は、好ましくは、各スパイラル配線21,22の厚み(Z方向に沿った方向)以下で、かつ、45μm以上である。露出面200aの厚みがスパイラル配線21,22の厚み以下であることにより、磁性層11,12の割合を増やすことができ、インダクタンスを向上できる。また、露出面200aの厚みが45μm以上であることにより、露出面200a付近の断線の発生を低減できる。露出面200aは、好ましくは、酸化膜である。これによれば、インダクタ部品1とその隣接部品との間でショートを抑制できる。
【0043】
第1から第4柱状配線31~34は、各スパイラル配線21,22からZ方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通している。第1柱状配線31は、第1スパイラル配線21の一端の上面から上側に延在し、第1柱状配線31の端面が、本体部10の第1主面10aから露出する。第2柱状配線32は、第1スパイラル配線21の他端の上面から上側に延在し、第2柱状配線32の端面が、本体部10の第1主面10aから露出する。第3柱状配線33は、第2スパイラル配線22の一端の上面から上側に延在し、第3柱状配線33の端面が、本体部10の第1主面10aから露出する。第4柱状配線34は、第2スパイラル配線22の他端の上面から上側に延在し、第4柱状配線34の端面が、本体部10の第1主面10aから露出する。
【0044】
したがって、第1柱状配線31、第2柱状配線32、第3柱状配線33、第4柱状配線34は、第1インダクタ素子2A、第2インダクタ素子2Bから上記第1主面10aから露出する端面まで、当該端面に直交する方向に直線状に伸びる。これにより、第1外部端子41、第2外部端子42、第3外部端子43、第4外部端子44と、第1インダクタ素子2A、第2インダクタ素子2Bとをより短い距離で接続することができ、インダクタ部品1の低抵抗化や高インダクタンス化を実現できる。第1から第4柱状配線31~34は、導電性材料からなり、例えば、スパイラル配線21,22と同様の材料からなる。
【0045】
第1から第4外部端子41~44は、本体部10の第1主面10a(第2磁性層12の上面)に配置された多層金属膜である。第1外部端子41は、第1柱状配線31の本体部10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第1柱状配線31と電気的に接続されている。これにより、第1外部端子41は、第1スパイラル配線21の一端に電気的に接続される。第2外部端子42は、第2柱状配線32の本体部10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第2柱状配線32と電気的に接続されている。これにより、第2外部端子42は、第1スパイラル配線21の他端に電気的に接続される。
【0046】
同様に、第3外部端子43は、第3柱状配線33の端面に接触し、第3柱状配線33と電気的に接続されて、第2スパイラル配線22の一端に電気的に接続される。第4外部端子44は、第4柱状配線34の端面に接触し、第4柱状配線34と電気的に接続されて、第2スパイラル配線22の他端に電気的に接続される。
【0047】
インダクタ部品1では、第1主面10aは、長方形状の辺に相当する直線状に伸びる第1端縁101、第2端縁102を有する。第1端縁101、第2端縁102は、それぞれ本体部10の第1側面10b、第2側面10cに続く第1主面10aの端縁である。第1外部端子41と第3外部端子43は、本体部10の第1側面10b側の第1端縁101に沿って配列され、第2外部端子42と第4外部端子44は、本体部10の第2側面10c側の第2端縁102に沿って配列されている。なお、本体部10の第1主面10aに直交する方向からみて、本体部10の第1側面10b,第2側面10cは、Y方向に沿った面であり、第1端縁101、第2端縁102と一致する。第1外部端子41と第3外部端子43の配列方向は、第1外部端子41の中心と第3外部端子43の中心を結ぶ方向とし、第2外部端子42と第4外部端子44の配列方向は、第2外部端子42の中心と第4外部端子44の中心を結ぶ方向とする。
【0048】
絶縁膜50は、本体部10の第1主面10aにおける第1から第4外部端子41~44が配置されていない部分上に配置されている。ただし、絶縁膜50は第1から第4外部端子41~44の端部が乗り上げることで、第1から第4外部端子41~44とZ方向に重なっていてもよい。絶縁膜50は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド等の電気絶縁性が高い樹脂材料から構成される。これにより、第1から第4外部端子41~44の間の絶縁性を向上できる。また、絶縁膜50が第1から第4外部端子41~44のパターン形成時のマスク代わりとなり、製造効率が向上する。また、絶縁膜50は、樹脂135から金属磁性粉136が露出していた場合に、当該露出する金属磁性粉136を覆うことで、金属磁性粉136の外部への露出を防止することができる。なお、絶縁膜50は、シリカや硫酸バリウムなどの絶縁材料からなるフィラーを含有してもよい。
【0049】
図2に示すように、多層金属膜である第1外部端子41は、本体部10(第2磁性層)に接触する第1金属膜411と、第1金属膜411に対して本体部10と反対側から第1金属膜411を覆う第2金属膜412と、第2金属膜412上に配置された第3金属膜413とを有する。なお、第1外部端子41は、触媒層をさらに有してもよい。触媒層は、例えば、第1金属膜411と第2金属膜412との間、および第2金属膜412と第3金属膜413との間に配置されてもよい。第2、第3、第4外部端子42,43,44の構成は、第1外部端子41の構成と同じであるため、以下、第1外部端子41のみについて説明する。
【0050】
第1金属膜411は、導電性を有し、第1外部端子41の電気抵抗を低減する役割を有する。第2金属膜412は、耐はんだ食われ性を有し、第1金属膜411を直接的または間接的に覆うことで第1外部端子41の第1金属膜411の実装はんだによるはんだ食われを抑制できる。第3金属膜413は、はんだ濡れ性を有し、第1外部端子41をはんだで濡らすことができる。第3金属膜413は、第2金属膜412と本体部10との間に入り込む入り込み部414を有する。すなわち、入り込み部414は、第1外部端子41の端部から第1外部端子41の内部側に向かって回り込んでいる。
【0051】
一般的に、はんだ濡れ性を有する金属は、耐はんだ食われ性を有する金属に比べて、硬度が低く柔らかい。このため、はんだ濡れ性を有する金属は、耐はんだ食われ性を有する金属に比べ、第1主面10aの凹凸に沿って密着しやすくなる。よって、第3金属膜413と本体部10との密着性は、第2金属膜412と本体部10との密着性よりも高くなる。このため、はんだ濡れ性を有する第3金属膜413は、耐はんだ食われ性を有する第2金属膜412に比べて、第1主面10aとの密着性が高い。よって、上述した入り込み部414の構造では、多層金属膜の第2金属膜412と本体部10との間には、第2金属膜412よりも第1主面10aとの密着性の高い第3金属膜413が配置されている。したがって、本実施形態では、本体部10と多層金属膜(第1外部端子41)との密着性が向上する。
【0052】
入り込み部414は、端縁415を有する。図2および図3に示すように、入り込み部414の端縁415は、第2金属膜412の下方に位置する金属磁性粉136上に位置することが好ましい。本体部10は金属磁性粉136を含むため、第1金属膜411と本体部10の金属磁性粉136との間には、金属結合による強固な接合が形成される。入り込み部414の端縁415は、第2金属膜412の下方に位置する金属磁性粉136上に位置し、入り込み部414が第1金属膜411と金属磁性粉136との接合部分に阻止されて、本体部10と第1金属膜411との間に入り込むことが抑制されている。よって、入り込み部414の端縁が第2金属膜412の下方に位置する金属磁性粉136上に位置すると、本体部10と第1金属膜411との間の密着性の低下を抑制する。なお、図3は、第1外部端子41のうちの入り込み部414で切断した平面断面を示す。ただし、第1金属膜411を図示していない。
【0053】
入り込み部414の厚みは、第3金属膜413における入り込み部414以外の部分の厚み以下であることが好ましい。かかる場合、入り込み部414の厚みを第3金属膜413における入り込み部414以外の部分の厚み以下とすることで、入り込み部414の厚みを薄くできる。このように、入り込み部414の厚みが比較的薄いため、入り込み部414自体による密着性の低下を抑制できる。
【0054】
また、入り込み部414以外の第3金属膜413の厚みは、入り込み部414の厚みに対して1倍以上であることが好ましい。かかる場合、入り込み部414以外の第3金属膜413(第2金属膜412上に配置された第3金属膜413)の厚みが一定以上の厚みを有する。このため、第3金属膜413は、はんだ濡れ性を確保することができる。
【0055】
厚みの計測条件(以下の厚みの計測を含む)としては、計測対象(上記の場合は第1外部端子41)の計測寸法(厚み)に垂直な面の中心で計測対象を切断した断面の走査透過型電子顕微鏡(SEM)画像で観察して計測する。具体的に述べると、インダクタ部品1などの試料を加工して測定対象の多層金属膜の上記中心を通る断面(例えば、図1AにおいてA-A断面線で形成される断面)を露出させ、SEMを用い、1万倍の倍率にて取得した当該断面の画像において当該断面の厚みを測定する。なお、入り込み部414の厚み及び入り込み部414以外の部分の厚みについては、それぞれの端部を除いた5か所の厚みを測定し、その平均値を算出すればよい。以下の厚みも同様に算出する。
【0056】
好ましくは、第1金属膜411は、Cuを含む。これにより、多層金属膜の導電性を低コストで確保できる。また、第1金属膜411の硬度を小さくできるので、第1金属膜411を含む第1外部端子41の内部応力を低減できる。なお、第1金属膜411の厚みは、第1外部端子41の他の金属膜よりも厚いことが好ましく、この場合第1外部端子41の導電性を向上しつつ、内部応力をより低減できる。なお、第1金属膜411は、Cuに限られず、Ag、Au、Al、Ni、Fe、Pdのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0057】
好ましくは、触媒層は、Pdを含む。これにより、触媒層を第1金属膜411が含む金属より貴な金属で容易に構成でき、かつ第2金属膜412を無電解めっきで形成する際に、次亜リン酸などの還元剤の酸化を容易に促進でき、第2金属膜412の析出をより促進することができる。なお、触媒層は、Pdに限られず、Ag、Cu、Pt、Auのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。なお、触媒層が、第1金属膜411よりも貴な金属を含む場合、第1金属膜411との置換反応により触媒層を容易に形成することができる。
【0058】
好ましくは、第2金属膜412は、Niを含む。これにより、第2金属膜412の耐はんだ食われ性を容易に向上できる。また、これにより、第1金属膜411のマイグレーションを低減することもできる。なお、第2金属膜412は、Niに限られず、Pd、Pt、Co、Feのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0059】
好ましくは、第3金属膜413は、Auを含む。これにより、第3金属膜413のはんだ濡れ性に加えて化学的安定性を容易に向上できる。また、第3金属膜413を置換反応により容易に形成することができる。なお、第3金属膜413は、Auに限られず、Sn、Pd、Agのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。好ましくは、第3金属膜413は、第1金属膜411および第2金属膜412よりも貴な金属を含む。これにより、第3金属膜413は、第1金属膜411および第2金属膜412との置換反応により第3金属膜413を形成することができる。
【0060】
(製造方法)
次に、インダクタ部品1の製造方法について説明する。
【0061】
図4Aに示すように、複数のスパイラル配線21,22と複数の柱状配線31~34を本体部10により覆った状態において、本体部10の上面を研磨などによって研磨加工し、柱状配線31~34の端面を本体部10の上面から露出させる。
その後、図4Bに示すように、本体部10の上面全体に、スピンコートやスクリーン印刷などの塗布法、ドライレジスト貼付などの乾式法などにより、ハッチングにて示す絶縁膜50を形成する。絶縁膜50は、例えば感光性レジストである。その後、外部端子を形成する領域において、フォトリソグラフィやレーザ、ドリル、ブラストなどにより、絶縁膜50を除去することにより、柱状配線31~34の端面および本体部10(第2磁性層12)の一部が露出する貫通孔50aを形成する。この際、図4Bに示すように、貫通孔50aからは柱状配線31~34の端面全体を露出させてもよいし、柱状配線31~34の端面の一部を露出させてもよい。また、1つの貫通孔50aから、複数の柱状配線31~34の端面を露出させてもよい。
【0062】
その後、図4Cに示すように、貫通孔50a内に、ハッチングにて示す多層金属膜410を後述の方法により形成して、マザー基板100を構成する。多層金属膜410は、切断前の外部端子41~44を構成する。その後、図4Dに示すように、マザー基板100、すなわち封止された複数のスパイラル配線21,22を、ダイシングブレードなどを用いてカット線Dにて2つのスパイラル配線21,22ごとに個片化して、複数のインダクタ部品1を製造する。多層金属膜410は、カット線Dにて切断されて、外部端子41~44を形成する。なお、外部端子41~44の製造方法は上記のように多層金属膜410を切断する方法であってもよいし、あらかじめ貫通孔50aを外部端子41~44の形状となるように絶縁膜50を除去した上で多層金属膜410を形成する方法であってもよい。
【0063】
金属膜410を形成する工程は、例えば、本体部10上に第1金属膜411を形成して、第1金属膜411上および本体部10上に第2金属膜412を形成する。さらに、第2金属膜412上に第3金属膜413を形成する。この工程は、第1金属膜411の形成後で第2金属膜412の形成前、および第2金属膜412の形成後で第3金属膜413の形成前に触媒層を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0064】
第1金属膜411は、例えば、無電解めっきにより形成されるが、電解めっきにより形成されてもよい。第1金属膜411が無電解めっきにより形成される場合、本体部10は金属磁性粉136を含むので、本体部10の主面10aに露出している金属磁性粉136との置換反応により第1金属膜411の金属成分を析出させ、第1金属膜411を形成する。それによって、本体部10と第1金属膜411との間の密着性を向上できる。
【0065】
第2金属膜412は、例えば、第1金属膜411上に形成された触媒層を使用した無電解めっきにより形成される。触媒層は、例えば、第1金属膜411との置換反応により形成される。
【0066】
第3金属膜413は、例えば、無電解めっきにより形成される。第3金属膜413は、例えば、第2金属膜412との置換反応により形成される。
【0067】
入り込み部414の形成について説明する。インダクタ部品1の製造方法において、第2金属膜412の形成後に第3金属膜413を形成する。入り込み部414は、毛細管現象により第2金属膜412と本体部10との間に進入する。これにより、入り込み部414を第2金属膜412と本体部10の主面10aとの間に形成する。そして、本体部10は金属磁性粉136を含むため、第1金属膜411と本体部10の金属磁性粉136との間には、金属結合による強固な接合が形成される。このため、入り込み部414は、第1金属膜411と金属磁性粉136との接合部分に阻止されるまで、本体部10と第1金属膜411との間に進入することができる。その結果、入り込み部414の端縁は、第2金属膜412の下方に位置する金属磁性粉136上に位置する。このようにして入り込み部414は形成される。
【0068】
入り込み部414は、その厚みが第3金属膜413における入り込み部414以外の部分の厚み以下に形成されることが好ましい。このように入り込み部414の厚みを薄くすることにより、入り込み部414におけるはんだ濡れ性をより向上させることができる。なお入り込み部414の厚みは、第3金属膜の形成時間や条件によって調整できる。
【0069】
入り込み部414の形成は、例えば、以下の方法を用いて促進することができる。例えば、1)本体部10の主面10aにおいて金属磁性粉136が露出している領域を減らす方法、2)第2金属膜412と本体部10の主面10aとの間に膜(より具体的には、酸化膜等の密着性阻害層、絶縁膜50)を形成する方法(第2実施形態参照)、3)2)の絶縁膜50に緩やかな勾配を設ける方法(第3実施形態参照)、および4)凹凸を低減する方法である。
【0070】
1)の方法は、本体部10の主面10aにおける金属磁性粉136の露出領域を低減させることで、本体部10と第2金属膜412との間に金属結合による強固な接合を形成しにくくする。これにより、第2金属膜412と本体部10との間の境界面に入り込み部を進入しやすくし、入り込み部414が形成されやすい領域を増加させることを狙っている。本体部10を形成する塗布液における樹脂135に対する金属磁性粉136の含有量を低下させることで実現できる。
【0071】
4)の方法は、例えば、1)の方法において本体部10の主面10aの凹凸を低減する方法、ならびに2)および3)の方法においてそれぞれ膜および絶縁膜50の表面の凹凸を低減する方法である。前者は、主面10aを形成する研磨条件を調整することで実現できる。後者は、例えば、絶縁膜50を形成する塗布液の粘度、乾燥条件を調整することにより実現できる。
【0072】
(第2実施形態)
図5は、インダクタ部品1Aの第2実施形態を示す拡大断面図であり、図1Bの一部拡大図(C部の拡大図)の変形例である。第2実施形態は、本体部10と、第2金属膜412Aとの間に非磁性体の絶縁膜50Aをさらに備える点で第1実施形態と相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態を同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0073】
(構成)
図5に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aは、本体部10と、第2金属膜412Aとの間に非磁性体の絶縁膜50Aを備える。絶縁膜50Aは、第1金属膜411Aと同一平面上に配置され、第2金属膜412Aに覆われている。第1金属膜411Aと絶縁膜50Aとは、好ましくは同じ厚みを有し、それらの上面は同一平面上に存在する。絶縁膜50Aの断面形状は、矩形である。入り込み部414Aは、第2金属膜412Aと絶縁膜50Aとの間に入り込む。さらに、入り込み部414Aは、第1金属膜411Aと絶縁膜50Aとの間に入り込む。入り込み部414Aの端縁415Aは、本体部10の主面10aにおける金属磁性粉136上に位置する。
【0074】
インダクタ部品1Aが、本体部10と第2金属膜412Aとの間に絶縁膜50Aを有すると、入り込み部414Aをより確実に形成して、本体部10と第1外部端子41Aとの間の密着性の低下を抑制できる。絶縁膜50Aは、金属磁性粉136のような金属磁性体を含まない。このため、第1金属膜411Aおよび第2金属膜412Aと、絶縁膜50Aとの間に金属結合のような強固な接合が形成されない。よって、第1主面10aと第2金属膜412との間の密着性は、非磁性体の絶縁膜50Aを備えない基体に比べ、低下する。つまり、絶縁膜50Aは、金属磁性体を含まないため、第1主面10aとの密着性が低くなる。このように、本体部10と第2金属膜412との間に多層金属膜との密着性が比較的低い絶縁膜50Aを備えることで、入り込み部414Aが第2金属膜412と絶縁膜50Aとの間に入り込みやすくなる。よって、インダクタ部品1Aの製造方法において第3金属膜413Aを形成すると、入り込み部414Aは、第2金属膜412Aと絶縁膜50Aとの間に進入し、さらに第1金属膜411Aと絶縁膜50Aとの間に進入する。そして、入り込み部414Aは、第1金属膜411Aと金属磁性粉136との接合部分に阻止される。入り込み部414Aの端縁は、金属磁性粉136上に位置する。このように入り込み部414Aが本体部10と多層金属膜との間に入り込むことが抑制されている。これにより、本体部10と多層金属膜との間の密着性の低下を抑制できる。
【0075】
(製造方法)
インダクタ部品1Aの製造方法では、図4Cに示す金属膜410を形成する工程において、第1金属膜411Aを形成する。このとき、第1金属膜411Aは、絶縁膜50Aと同じ厚みとなるように形成する。その後、第1金属膜411Aと絶縁膜50Aとの境界面を覆うように、第2金属膜412Aを形成する。このようにして、絶縁膜50Aを本体部10と第2金属膜412Aとの間に配置する。その後、第2金属膜412A上に第3金属膜413Aを形成する。このとき、本体部10と第2金属膜412Aとの間に多層金属膜との密着性が比較的低い絶縁膜50Aが備えられている。このため、入り込み部414Aが第2金属膜412と絶縁膜50Aとの間に入り込みやすくなる。さらに、絶縁膜50Aは第1金属膜411Aと界面を形成し、この界面の密着性は比較的低い。このため、入り込み部414Aは、第1金属膜411Aと絶縁膜50Aとの間にも入り込みやすくなる。その結果、入り込み部414Aは、第2金属膜412Aと本体部10との間、および第1金属膜411Aと絶縁膜50Aとの間に入り込む。そして、端縁415Aが第2金属膜412Aの下方に位置する金属磁性粉136上に位置するように、入り込み部414Aが形成される。
【0076】
(第3実施形態)
図6は、インダクタ部品の第3実施形態を示す拡大断面図である。第3実施形態は、絶縁膜50Bの断面形状が緩やかな傾斜を有する点で、第2実施形態と相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態および第2実施形態と同一の符号は、第1実施形態および第2実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0077】
図6に示すように、第3実施形態のインダクタ部品1Bでは、絶縁膜50Bが第1金属膜411Bに向かって緩やかな傾斜を有する。入り込み部414Bは、第2金属膜412Bと絶縁膜50Bとの間に入り込み、入り込み部414Bの端縁415Bは、第1金属膜411Bおよび金属磁性粉136と接触する。
絶縁膜50Bが第1金属膜411Bに向かって緩やかな傾斜を有すると、インダクタ部品1Bの製造方法において第3金属膜413Bを形成する場合、第2金属膜412Bの端部に第3金属膜413Bが一層入り込みやすくなる。よって、インダクタ部品1Bが絶縁膜50Bを有すると、第3金属膜413Bを一層確実に形成して、本体部10と第1外部端子41Bとの間の密着性をより一層向上させることができる。
【0078】
(製造方法)
インダクタ部品1Bの製造方法において、絶縁膜50Bに緩やかな傾斜を形成する方法としては、例えば、絶縁膜50Bを形成する塗布液の粘度を調整することで実現することができる。塗布液の粘度は、例えば、塗布液における溶媒、樹脂の種類および含有量により調整することができる。
【0079】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。また、第1~第3実施形態の特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0080】
前記実施形態では、本体部内には第1インダクタおよび第2インダクタの2つが配置されたが、3つ以上のインダクタが配置されてもよく、このとき、外部端子および柱状配線は、それぞれ、6つ以上となる。
【0081】
前記実施形態では、インダクタ部品が有するスパイラル配線のターン数は、1周未満であるが、スパイラル配線のターン数が、1周を超える曲線であってもよい。また、インダクタが有するスパイラル配線の総数は、1層に限られず、2層以上の多層構成であってもよい。また、第1インダクタの第1スパイラル配線と第2インダクタの第2スパイラル配線は第1主面と平行な同一平面に配置される構成に限られず、第1スパイラル配線と第2スパイラル配線が第1主面と直交する方向に配列された構成であってもよい。また、インダクタ部品の本体部内に配置されるのはスパイラル配線に限られず、公知の構造、形状であってもよく、例えばミアンダ形状やヘリカル形状であってもよい。
【0082】
前記実施形態では、多層金属膜は、インダクタ部品の外部端子として適用している。具体的には、インダクタ部品は、本体部10内に配置されたインダクタ配線をさらに備え、本体部10は、樹脂135と樹脂135に含有された金属磁性粉136とを含み、インダクタ配線が多層金属膜に電気的に接続することにより、多層金属膜は外部端子を構成する。これにより、インダクタ部品は、本体部10と多層金属膜との密着性が向上する。なお、インダクタ配線とは、電流が流れた場合に磁束を発生させることによって、インダクタ部品にインダクタンスを付与させるものであり、前述のスパイラル配線を含む、公知の構造、形状の配線形状を含む。
【0083】
前記実施形態では、多層金属膜は、インダクタ部品の外部端子として適用しているが、これに限られず、例えば多層金属膜がインダクタ部品の内部電極であってもよい。また、例えば、基体はインダクタ部品の基体に限られず、コンデンサ部品や抵抗部品などの他の電子部品であってもよいし、これらの電子部品を搭載する回路基板であってもよい。すなわち、多層金属膜として、回路基板の配線パターンであってもよい。
【0084】
上記した製造条件は、あくまで一例であり、入り込み部が得られるのであれば製造条件に限定はない。また、上記した製造条件に限定されず、絶縁膜50bの表面粗さ等を調整することで、上記入り込み部を形成することができる。
【0085】
(第1実施例)
図7は、第3実施形態に係るインダクタ部品1bの実施例のSEMの断面画像図である。図7は、インダクタ部品1bを中央部分で切断した画像図である。この断面は、図1Aに示すように、金属膜の中心を通る断面(A-A断面線で形成される断面)である。図7では、上方向がZ方向となる。
【0086】
第1金属膜411bは、Cuからなる。触媒層416は、Pdからなり、第1金属膜411b上に配置されている。第2金属膜412bはNiからなり、触媒層416上および本体部10の上方に配置されている。第3金属膜413bはAuからなり、第2金属膜412b上に配置されている。第3金属膜413bは、入り込み部414bを有する。入り込み部414bは、第1外部端子41bの端部から第1外部端子41bの内部側に向かって回り込み、第2金属膜412bと本体部10との間に入り込んでいる。また、入り込み部414bの端縁415bは、第2金属膜412bの下方に位置する金属磁性粉136上に位置する。また、インダクタ部品1bは、本体部10と、第2金属膜412bとの間に、絶縁膜50bを備える。絶縁膜50bは第1金属膜411bに向かって緩やかな傾斜を有する。入り込み部414bは、第2金属膜412bと絶縁膜50bとの間に入り込んでいる。
【符号の説明】
【0087】
1,1A,1B,1b インダクタ部品(基体)
2A 第1インダクタ素子
2B 第2インダクタ素子
10 本体部
21 第1スパイラル配線
22 第2スパイラル配線
41,41A,41B,41b 第1外部端子(多層金属膜)
411,411A,411B,411b 第1金属膜
412,412A,412B,412b 第2金属膜
413,413A,413B,413b 第3金属膜
414,414A,414B,414b 入り込み部
415,415A,415B,415b 端縁
42,42A,42b 第2外部端子(多層金属膜)
43,43A,43b 第3外部端子(多層金属膜)
44,44A,44b 第4外部端子(多層金属膜)
50A,50B,50b 絶縁膜
136 金属磁性粉
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7