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特許7402630ポリカルボジイミド組成物、ポリカルボジイミド組成物の製造方法、水分散組成物、溶液組成物、樹脂組成物および樹脂硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ポリカルボジイミド組成物、ポリカルボジイミド組成物の製造方法、水分散組成物、溶液組成物、樹脂組成物および樹脂硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/79 20060101AFI20231214BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20231214BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20231214BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20231214BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C08G18/79 070
C08G18/00 B
C08G18/00 C
C08G18/73
C08G18/32 003
C08G18/28 015
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019138079
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2020026520
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018150929
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山下 達也
(72)【発明者】
【氏名】小山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】森田 広一
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-030024(JP,A)
【文献】特開2000-154226(JP,A)
【文献】特開2010-285603(JP,A)
【文献】特開2013-018824(JP,A)
【文献】特開2006-016556(JP,A)
【文献】特表2007-521360(JP,A)
【文献】特表2009-525380(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123362(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類とのウレタン化反応生成物がカルボジイミド化反応したカルボジイミド変性体を含むポリカルボジイミド組成物であって、
前記アルコール類は、ポリオールおよびモノオールを含み、
前記アルコール類において、前記モノオール由来の水酸基数に対する前記ポリオール由来の水酸基数のモル比(ポリオール由来の水酸基/モノオール由来の水酸基)が2.0未満であり、
前記ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量が、300g/mol以上550g/mol未満である
ことを特徴とする、ポリカルボジイミド組成物。
【請求項2】
前記ポリオールの分子量が、120以上1000以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリカルボジイミド組成物。
【請求項3】
前記ポリオールの平均官能基数が、2である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリカルボジイミド組成物。
【請求項4】
前記直鎖脂肪族ジイソシアネートが、1,5-ペンタンジイソシアネートである
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物。
【請求項5】
前記ポリカルボジイミド組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、
ポリスチレン換算分子量500以下のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積率が、6.5%以下であり、
ポリスチレン換算分子量1000以下のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積率が、10.0%以下である
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のポリカルボジイミド組成物の製造方法であって、
直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類とをウレタン化反応させるウレタン化工程と、
前記ウレタン化工程における反応生成物を、カルボジイミド化触媒の存在下において加熱し、カルボジイミド化反応させ、ポリカルボジイミド組成物を得るカルボジイミド化工程と
を備え、
前記アルコール類は、ポリオールおよびモノオールを含み、
前記アルコール類において、前記モノオール由来の水酸基数に対する前記ポリオール由来の水酸基数のモル比(ポリオール由来の水酸基/モノオール由来の水酸基)が2.0未満であり、
前記ウレタン化工程において、前記モノオールの水酸基、および、前記ポリオールの水酸基の総量に対する、前記直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、3以上8未満である
ことを特徴とする、ポリカルボジイミド組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物が、
固形分濃度5質量%以上90質量%以下の割合で水に分散された水分散液である
ことを特徴とする、水分散組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物が、
固形分濃度5質量%以上90質量%以下の割合で有機溶媒に溶解された溶液である
ことを特徴とする、溶液組成物。
【請求項9】
カルボキシル基を有する主剤と、
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物を含む硬化剤と
を含有することを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする、樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボジイミド組成物、ポリカルボジイミド組成物の製造方法、水分散組成物、溶液組成物、樹脂組成物および樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤、コーティング剤などの分野においては、主剤と硬化剤とを含む樹脂組成物が知られており、硬化剤として、例えば、カルボジイミド系硬化剤が知られている。
【0003】
より具体的には、ペンタメチレンジイソシアネートと、分子量550のポリエチレングリコールモノメチルエーテルおよび1-メトキシ-2-プロパノール(いずれもモノオール)とをウレタン化反応させた後、カルボジイミド化反応させ、さらに、1-メトキシ-2-プロパノールを添加してウレタン化反応させることにより得られるポリカルボジイミド組成物が、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【0004】
そして、このようなポリカルボジイミド組成物(硬化剤)と主剤とからなる樹脂組成物を、乾燥および硬化させることによって、塗膜などの樹脂硬化物を得ることができる。
【0005】
このポリカルボジイミド組成物および樹脂組成物は、低温速硬化性に優れ、また、得られる樹脂硬化物は、耐水性、耐薬品性などの各種物性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WO2017/119443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、ポリカルボジイミド組成物には、用途に応じて、熱安定性が要求される場合があり、さらに、樹脂硬化物には、用途に応じて、さらなる耐薬品性が要求される場合がある。
【0008】
本発明は、耐薬品性に優れる硬化物を得ることができ、熱安定性に優れるポリカルボジイミド組成物、そのポリカルボジイミド組成物の製造方法、また、そのポリカルボジイミド組成物を含む水分散組成物および溶液組成物、また、ポリカルボジイミド組成物を含む樹脂組成物、さらには、その樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応生成物のカルボジイミド変性体を含むポリカルボジイミド組成物であって、前記アルコール類は、ポリオールおよびモノオールを含み、前記アルコール類において、前記モノオール由来の水酸基数に対する前記ポリオール由来の水酸基数のモル比(ポリオール由来の水酸基/モノオール由来の水酸基)が2.0未満であり、前記ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量が、300g/mol以上550g/mol未満である、ポリカルボジイミド組成物を含んでいる。
【0010】
本発明[2]は、前記ポリオールの分子量が、120以上1000以下である、上記[1]に記載のポリカルボジイミド組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記ポリオールの平均官能基数が、2である、上記[1]または[2]に記載のポリカルボジイミド組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、前記直鎖脂肪族ジイソシアネートが、1,5-ペンタンジイソシアネートである、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物を含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、前記ポリカルボジイミド組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以下のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積率が、6.5%以下であり、ポリスチレン換算分子量1000以下のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積率が、10.0%以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物を含んでいる。
【0014】
本発明[6]は、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類とをウレタン化反応させるウレタン化工程と、前記ウレタン化工程における反応生成物を、カルボジイミド化触媒の存在下において加熱し、カルボジイミド化反応させるカルボジイミド化工程とを備え、前記アルコール類は、ポリオールおよびモノオールを含み、前記アルコール類において、前記モノオール由来の水酸基数に対する前記ポリオール由来の水酸基数のモル比(ポリオール由来の水酸基/モノオール由来の水酸基)が2.0未満であり、前記ウレタン化工程において、前記モノオールの水酸基、および、前記ポリオールの水酸基の総量に対する、前記直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、3以上8未満である、ポリカルボジイミド組成物の製造方法を含んでいる。
【0015】
本発明[7]は、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物が、固形分濃度5質量%以上90質量%以下の割合で水に分散された水分散液である、水分散組成物を含んでいる。
【0016】
本発明[8]は、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物が、固形分濃度5質量%以上90質量%以下の割合で有機溶媒に溶解された溶液である、溶液組成物を含んでいる。
【0017】
本発明[9]は、カルボキシル基を有する主剤と、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリカルボジイミド組成物を含む硬化剤とを含有する、樹脂組成物を含んでいる。
【0018】
本発明[10]は、上記[9]に記載の樹脂組成物の硬化物である、樹脂硬化物を含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリカルボジイミド組成物では、原料成分のアルコール類が、ポリオールおよびモノオールを所定割合で含んでいるため、アルコール類がポリオールを含まない場合に比べて、カルボジイミド変性体が高分子量化される。具体的には、直鎖脂肪族ジイソシアネートと、ポリオールを含むアルコール類との反応によりプレポリマーが得られ、そのプレポリマーがカルボジイミド化されるため、比較的高分子量のカルボジイミド変性体が得られる。その結果、ポリカルボジイミド組成物から、耐薬品性に優れる硬化膜を得ることができる。
【0020】
一方、過度にカルボジイミド変性体が高分子量化されると、増粘しやすく、熱安定性に劣る場合がある。これに対して、本発明のポリカルボジイミド組成物において、カルボジイミド変性体は、ポリオールおよびモノオールの割合が調整されているため、適度に高分子量化されるに留まり、熱安定性にも優れる。
【0021】
さらに、本発明のポリカルボジイミド組成物は、カルボジイミド当量が、所定割合に調整されているため、外観および耐薬品性に優れる硬化膜を得ることができる。
【0022】
そのため、本発明のポリカルボジイミド組成物、そのポリカルボジイミド組成物を含む本発明の水分散組成物および本発明の溶液組成物、また、ポリカルボジイミド組成物を含む本発明の樹脂組成物は、熱安定性に優れており、さらに、外観および耐薬品性に優れる硬化物を得ることができる。
【0023】
また、本発明の樹脂硬化物は、外観および耐薬品性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施例1において得られたポリカルボジイミド組成物のGPCクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のポリカルボジイミド組成物は、主成分として(例えば、ポリカルボジイミド組成物に対して90質量%以上の割合で)、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応生成物のカルボジイミド変性体を含有する。
【0026】
カルボジイミド変性体は、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応生成物を、カルボジイミド化反応させることにより得ることができる。
【0027】
直鎖脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、1,3-プロパンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、1,5-ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)、1,6-ヘキサンジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)1,8-オクタンジイソシアネート(オクタメチレンジイソシアネート)、1,12-ドデカンジイソシアネート(ドデカメチレンジイソシアネート)などの炭素数1~20の直鎖脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0028】
これら直鎖脂肪族ジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0029】
直鎖脂肪族ジイソシアネートを用いることにより、熱安定性に優れるポリカルボジイミド組成物を得ることができ、また、外観および耐薬品性に優れる樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0030】
直鎖脂肪族ジイソシアネートとして、熱安定性、外観および耐薬品性の観点から、好ましくは、1,5-ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)、1,6-ヘキサンジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)が挙げられ、より好ましくは、1,5-ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)が挙げられる。
【0031】
とりわけ、1,5-ペンタンジイソシアネートは、1,6-ヘキサンジイソシアネートに比べて炭素数が少なく、分子量が小さいため、同じ分子量のポリカルボジイミド組成物を製造する場合、1,5-ペンタンジイソシアネートを用いると、1,6-ヘキサンジイソシアネートを用いる場合に比べ、ポリカルボジイミド組成物中のカルボジイミド基濃度を高くすることができる。その結果、低温速硬化性に優れたポリカルボジイミド組成物を得ることができ、さらに、各種物性(外観および耐薬品性など)に優れた樹脂硬化物(後述)を得ることができる。また、炭素数が奇数である1,5-ペンタンジイソシアネートは、炭素数が偶数である1,6-ヘキサンジイソシアネートに比べ、奇数炭素数に由来する非晶構造によって結晶性が低いため、流動性および分散性に優れ、得られる樹脂硬化物(後述)の物性が向上する。
【0032】
さらに、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを用いると、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを用いる場合に比べ、後述するウレトンイミン基の熱分解が起こりやすく、そのため、ポリカルボジイミド組成物を収率よく得ることができる。また、低い温度でもハンドリングできるため、ウレトンイミンの高分子量化を抑制できる。
【0033】
アルコール類は、ポリオールおよびモノオールを含んでおり、好ましくは、ポリオールおよびモノオールからなる。
【0034】
ポリオールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する有機化合物であって、単量体ポリオール、重合体ポリオールが挙げられる。
【0035】
単量体ポリオールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する有機モノマー(単一化合物(以下同様))であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-、テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C2~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0036】
これら単量体ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0037】
単量体ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオールが挙げられる。
【0038】
重合体ポリオールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する有機ポリマー(重合化合物(以下同様))であり、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられ、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0039】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0040】
ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとしては、例えば、単量体ポリオールや、公知の単量体(低分子量)ポリアミンなどを開始剤とする、炭素数2~3のアルキレンオキサイドの付加重合物が挙げられる。
【0041】
単量体ポリオールとしては、上記した単量体ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0042】
炭素数2~3のアルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド(1,2-プロピレンオキサイド)、エチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0043】
ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとして、具体的には、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール(プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体)などが挙げられる。
【0044】
また、ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとしては、さらに、ポリトリメチレングリコールなども含まれる。
【0045】
ポリトリメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、植物成分由来の1,3-プロパンジオールの重縮合反応により得られるグリコールなどが挙げられる。
【0046】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコール(結晶性))や、テトラヒドロフランなどの重合単位に、アルキル置換テトラヒドロフランや、上記した2価アルコールを共重合した非晶性(非結晶性)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0047】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、単量体ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0048】
単量体ポリオールとしては、上記した単量体ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0049】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸(C11~13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0050】
これら多塩基酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0051】
多塩基酸として、好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、酸無水物が挙げられる。
【0052】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した単量体ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなども挙げられる。
【0053】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した単量体ポリオール(好ましくは、2~3価アルコール)を開始剤として、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L-ラクチド、D-ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられ、さらには、それらに上記2価アルコールを共重合したアルコール変性ラクトンポリオールなどが挙げられる。
【0054】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した単量体ポリオール(好ましくは、上記2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物(結晶性ポリカーボネートポリオール)や、例えば、炭素数4~6の2価アルコール(1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど)と、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。また、イソソルバイドなど植物由来原料から誘導された植物由来ポリカーボネートポリオールなど挙げられる。なお、非晶性とは、常温(25℃)において液状であることを示す。また、結晶性とは、常温(25℃)において固形状であることを示す。
【0055】
これら重合体ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0056】
重合体ポリオールとして、ポリカルボジイミド組成物の熱安定性の向上を図る観点から、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール(好ましくは、ラクトン系ポリエステルポリオール)が挙げられ、より好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0057】
これらポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
ポリオールとして、好ましくは、重合体ポリオールが挙げられる。
【0059】
ポリオールの分子量(複数併用される場合には、ポリオールの平均分子量)は、ポリカルボジイミド組成物の熱安定性の観点から、例えば、60以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、120以上、さらに好ましくは、150以上、とりわけ好ましくは、200以上であり、樹脂硬化物(後述)の耐薬品性の観点から、例えば、5000以下、好ましくは、2000以下、より好ましくは、1000以下、さらに好ましくは、800以下、とりわけ好ましくは、500以下である。
【0060】
ポリオールの分子量が上記範囲であれば、ポリカルボジイミド組成物が優れた熱安定性を得ることができ、また、耐薬品性に優れた樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0061】
なお、単量体ポリオールの分子量は、分子骨格および原子数から算出することができる。また、重合体ポリオールの分子量は、数平均分子量として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定による標準ポリスチレン換算分子量として求められる。そして、ポリオールの分子量は、各成分の分子量の平均値として算出される。
【0062】
また、ポリオールの平均官能基数は、ポリカルボジイミド組成物の熱安定性の観点から、例えば、2以上であり、例えば、8以下、好ましくは、6以下、より好ましくは、4以下、さらに好ましくは、3以下であり、とりわけ好ましくは、2である。
【0063】
モノオールは、分子中に1つの水酸基を有する有機化合物であって、単量体モノオール、重合体モノオールが挙げられる。
【0064】
単量体モノオールは、分子中に1つの水酸基を有する有機モノマーであって、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デカノール(炭素数10)、ラウリルアルコール(炭素数12)、セチルアルコール(炭素数14)、ステアリルアルコール(炭素数18)、オレイルアルコール(炭素数18)、エイコサノール(炭素数20)などの脂肪族モノオール、例えば、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名エチルカルビトール)などのエーテルモノオール、例えば、フェノールおよびその誘導体、ベンジルアルコールおよびその誘導体、フェネチルアルコールおよびその誘導体、ナフトールおよびその誘導体などの芳香族アルコールなどが挙げられる。
【0065】
これら単量体モノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0066】
単量体モノオールとして、好ましくは、脂肪族モノオールが挙げられ、より好ましくは、炭素数2~6の脂肪族モノオールが挙げられ、さらに好ましくは、イソブタノールが挙げられる。
【0067】
重合体モノオールは、分子中に1つの水酸基を有する有機ポリマーであって、例えば、重合体ポリオールの末端が、1つの末端を除いてアルキル基などにより封止された封止体
などが挙げられる。
【0068】
より具体的には、例えば、2官能の重合体ポリオール(重合体ジオール)の片末端がアルキル基などにより封止された封止体(以下、片末端封止重合体ジオールと称する場合がある)などが挙げられる。
【0069】
片末端封止重合体ジオールとしては、例えば、片末端封止ポリエーテルジオール、片末端封止ポリエステルジオール、片末端封止ポリカーボネートジオール、片末端封止ポリウレタンジオール、片末端封止エポキシジオール、片末端封止植物油ジオール、片末端封止ポリオレフィンジオール、片末端封止アクリルジオール、片末端封止ビニルモノマー変性ジオールなどが挙げられ、好ましくは、片末端封止ポリエーテルジオールが挙げられる。
【0070】
片末端封止ポリエーテルジオールとしては、より好ましくは、片末端封止ポリオキシエチレングリコール、片末端封止ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0071】
片末端封止ポリオキシエチレングリコールは、ポリオキシエチレングリコールの片方の末端水酸基をアルキル基により封止(すなわち、水酸基をオキシアルキレン基に置換)したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである。
【0072】
片末端封止ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールは、特に制限されず、公知の方法により得ることができる。
【0073】
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数は、1以上であり、例えば、20以下、好ましくは、8以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、4以下、とりわけ好ましくは、2以下である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0074】
そのようなポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとして、具体的には、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0075】
片末端封止ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールの片方の末端水酸基をアルキル基により封止(すなわち、水酸基をオキシアルキレン基に置換)したポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルである。
【0076】
片末端封止ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールは、特に制限されず、公知の方法により得ることができる。具体的には、例えば、上記した2価アルコールの片方の末端水酸基がアルキル基で封止された1価アルコール(ジプロピレングリコールのモノアルキルエーテルなど)を開始剤として、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを付加反応させることにより、得ることができる。
【0077】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数は、1以上であり、例えば、20以下、好ましくは、8以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、4以下、とりわけ好ましくは、2以下である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0078】
そのようなポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルとして、具体的には、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0079】
また、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルにおいて、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の総質量に対するオキシエチレン基の割合は、水分散性および耐水性のバランスの観点から、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。
【0080】
これら重合体モノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0081】
重合体モノオールとして、熱安定性、外観および耐薬品性の観点から、好ましくは、片末端封止ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。
【0082】
これらモノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0083】
モノオールとして、好ましくは、重合体モノオールを単独使用するか、または、重合体モノオールと単量体モノオールとを併用する。より好ましくは、重合体モノオールを単独使用する。
【0084】
重合体モノオールと単量体モノオールとを併用する場合、その併用割合は、熱安定性、外観および耐薬品性の観点から、それらの総モルに対して、重合体モノオールが、例えば、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上であり、例えば、90モル%以下、好ましくは、80モル%以下である。また、単量体モノオールが、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上であり、例えば、50モル%以下、好ましくは、30モル%以下である。
【0085】
モノオールの分子量(複数併用される場合には、モノオールの平均分子量)は、ポリカルボジイミド組成物の熱安定性の観点から、例えば、50以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、200以上、さらに好ましくは、400以上であり、樹脂硬化物(後述)の耐薬品性の観点から、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下、さらに好ましくは、1000以下である。
【0086】
モノオールの分子量が上記範囲であれば、ポリカルボジイミド組成物が優れた熱安定性を得ることができ、また、耐薬品性に優れた樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0087】
なお、単量体モノオールの分子量は、分子骨格および原子数から算出することができる。また、重合体モノオールの分子量は、数平均分子量として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定によるポリスチレン換算分子量として求められる。そして、モノオールの分子量は、各成分の分子量の平均値として算出される。
【0088】
アルコール類において、ポリオールとモノオールとの併用割合は、ポリオールに由来する水酸基数と、モノオールに由来する水酸基数とのモル比を基準として設定される。
【0089】
具体的には、熱安定性、外観および耐薬品性の観点から、モノオール由来の水酸基数に対するポリオール由来の水酸基数のモル比(ポリオール由来の水酸基/モノオール由来の水酸基)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.8以上であり、2.0未満、好ましくは、1.8以下、より好ましくは、1.5以下、さらに好ましくは、1.2以下である。
【0090】
すなわち、カルボジイミド変性体を含むポリカルボジイミド組成物は、まず、原料成分としての直鎖脂肪族ジイソシアネートと上記のアルコール類(モノオールおよびポリオール)とを所定の条件で反応させ、反応生成物としてイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、さらに、イソシアネート基末端プレポリマーをカルボジイミド化反応させることにより、得ることができる。
【0091】
このような場合において、ポリオールとモノオールとの併用割合が上記範囲であれば、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応(後述)により、適度に高分子量化されたプレポリマーが得られ、そのプレポリマーがカルボジイミド化される。そのため、カルボジイミド変性体が比較的高分子量化され、比較的低分子である場合に比べ、優れた熱安定性、外観および耐薬品性を得ることができる。
【0092】
以下において、ポリカルボジイミド組成物の製造方法について、詳述する。
【0093】
この方法では、まず、上記の直鎖脂肪族ジイソシアネートと上記のアルコール類とをウレタン化反応させる(ウレタン化工程)。
【0094】
ウレタン化工程において、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応割合は、アルコール類の水酸基に対する、直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)として、ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量(g/mol)が後述する範囲になるように、直鎖脂肪族ジイソシアネートおよびアルコール類の種類(分子量など)に応じて、設定される。
【0095】
より具体的には、直鎖脂肪族ジイソシアネートおよびアルコール類の種類にもよるが、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応割合は、アルコール類の水酸基に対する、直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)として、例えば、2を超過し、好ましくは、3以上、より好ましくは、4以上、さらに好ましくは、5以上であり、例えば、16以下、好ましくは、10以下、より好ましくは、8未満、さらに好ましくは、6以下である。すなわち、ウレタン化工程では、好ましくは、水酸基に対してイソシアネート基が過剰となる割合で反応させる。
【0096】
直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応割合が上記範囲内であれば、耐薬品性に優れる樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0097】
また、この反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加してもよい。
【0098】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0099】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート(ジラウリン酸ジブチル錫(IV))、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0100】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0101】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0102】
なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0103】
また、ウレタン化工程における反応条件は、ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量(g/mol)が後述する範囲になるように、直鎖脂肪族ジイソシアネートおよびアルコール類の種類や、上記の当量比(NCO/OH)などに応じて、設定される。
【0104】
より具体的には、ウレタン化工程における反応条件は、例えば、常圧および不活性ガス(例えば、窒素ガス)雰囲気下において、反応温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上であり、例えば、50時間以下、好ましくは、40時間以下である。
【0105】
これにより、直鎖脂肪族ジイソシアネートとアルコール類との反応生成物として、プレポリマーを得ることができる。なお、プレポリマーは、分子末端にイソシアネート基を有する(すなわち、イソシアネート基末端プレポリマーである。)。
【0106】
次いで、この方法では、上記のウレタン化工程における反応生成物を含む反応液を、カルボジイミド化触媒の存在下において加熱し、カルボジイミド化反応させる(カルボジイミド化工程)。
【0107】
カルボジイミド化触媒としては、特に制限されないが、例えば、トリアルキルリン酸エステル系化合物、フォスフォレンオキシド系化合物、フォスフォレンスルフィド系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、ホスフィン系化合物などが挙げられる。
【0108】
トリアルキルリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェートなどの炭素数3~24のトリアルキルリン酸エステル系化合物などが挙げられる。
【0109】
フォスフォレンオキシド系化合物としては、例えば、3-メチル-1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシド(MPPO)、1-エチル-3-メチル-2-フォスフォレン-1-オキシド(EMPO)、1-ブチル-3-メチル-2-フォスフォレン-1-オキシド、1-ベンジル-3-メチル-2-フォスフォレン-1-オキシド、1,3-ジメチル-2-フォスフォレン-1-オキシド、1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシド、1-メチル-2-フォスフォレン-1-オキシド、1-エチル-2-フォスフォレン-1-オキシドおよびこれらの二重結合異性体などの炭素数4~18のフォスフォレンオキシド系化合物などが挙げられる。
【0110】
フォスフォレンスルフィド系化合物としては、例えば、1-フェニル-2-フォスフォレン-1-スルフィドなどの炭素数4~18のフォスフォレンスルフィド系化合物などが挙げられる。
【0111】
ホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリトリルホスフィンオキシドなどの炭素数3~21のホスフィンオキシド系化合物などが挙げられる。
【0112】
ホスフィン系化合物としては、例えば、ビス(オキサジフェニルホスフィノ)エタンなどの炭素数3~30のホスフィン系化合物などが挙げられる。
【0113】
これらカルボジイミド化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0114】
カルボジイミド化触媒として、好ましくは、フォスフォレンオキシド系化合物が挙げられ、より好ましくは、3-メチル-1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-フォスフォレン-1-オキシドが挙げられる。
【0115】
上記のカルボジイミド化触媒を用いれば、カルボジイミド化の活性を向上して、反応温度を低下させることができ、また、ウレトンイミン化などの副反応を抑制して、ポリカルボジイミド組成物を収率よく得ることができ、また、カルボジイミド基の含有量の向上を図ることができる。
【0116】
カルボジイミド化触媒として、耐水性に優れた樹脂硬化物(後述)を得る観点から、とりわけ好ましくは、3-メチル-1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシドが挙げられる。
【0117】
カルボジイミド化触媒の配合割合は、直鎖脂肪族ジイソシアネート(ウレタン化工程において用いられた直鎖脂肪族ジイソシアネート)100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0118】
また、カルボジイミド化工程における反応条件は、得られるポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド基の含有割合(カルボジイミド当量)が、後述する特定範囲となるように設定される。より具体的には、カルボジイミド化反応の進行を図り、ウレトンイミンの低減を図る観点から、常圧および不活性ガス(窒素ガスなど)雰囲気下において、反応温度が、例えば、125℃以上、好ましくは、130℃以上、より好ましくは、135℃以上であり、例えば、180℃以下、好ましくは、170℃以下、より好ましくは、160℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上であり、例えば、50時間以下、好ましくは、40時間以下である。
【0119】
このような条件で反応させることにより、ウレタン化工程で得られた反応生成物(イソシアネート基末端プレポリマー)が、イソシアネート基を介して脱炭酸縮合し、効率よくカルボジイミド基を生成することができる。
【0120】
より具体的には、反応温度が上記下限以上であれば、生成したウレトンイミンがカルボジイミドとイソシアネート基に分解する反応を促進しつつ、カルボジイミド化反応を進行させることができる。上記下限未満の温度であると、この熱分解反応が非常に起こりにくくなり、ウレトンイミンの含有量が増加し、カルボジイミド基の含有率が低下する。また、ウレトンイミンの増加による分子量が増加し、反応液が固化する場合がある。一方、反応温度が上記上限以下であれば、重合ロスを低減することができる。上記上限温度を超えてしまうと、カルボジイミド化、ウレトンイミン化以外の重合反応が促進され、カルボジイミド基の含有量が低下するだけでなく、分子量増加によって反応液が固化しやすくなる。
【0121】
また、カルボジイミド化工程では、円滑にカルボジイミド化反応させ、また、脱炭酸縮合を促進する観点から、好ましくは、有機溶媒の存在下において、反応液を還流させる。すなわち、還流下において、カルボジイミド化反応させる。
【0122】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル1,2-ジエトキシエタンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することもできる。
【0123】
有機溶媒として、好ましくは、還流時の温度が、上記した反応温度の範囲内である有機溶媒が挙げられる。
【0124】
そのような有機溶媒として、具体的には、キシレン、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0125】
有機溶媒の配合割合は、特に制限されないが、優れた外観の樹脂硬化物(後述)を得る観点から、直鎖脂肪族ジイソシアネート(ウレタン化工程において用いられた直鎖脂肪族ジイソシアネート)100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上であり、例えば、2000質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。
【0126】
有機溶媒の存在下で反応液を還流させることにより、ウレトンイミンの分解反応を促進しつつ、円滑にカルボジイミド化反応させることができ、また、イソシアネート基のカルボジイミド化に伴って生じる炭酸ガスを脱離させることができるため、カルボジイミド化の促進を図ることができる。
【0127】
そして、このような方法によって、ウレタン基およびカルボジイミド基を含有し、また、場合によりウレトンイミン基を含有するカルボジイミド変性体が得られる。
【0128】
より具体的には、まず、ウレタン化工程において、直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基に由来するウレタン基が生成する。
【0129】
次いで、ウレタン化工程で得られた反応生成物(イソシアネート基末端プレポリマー)が、カルボジイミド化工程において加熱されると、分子末端のイソシアネート基に由来するカルボジイミド基が生成し、また、場合により、生成したカルボジイミド基の一部が分子末端のイソシアネート基と反応し、ウレトンイミン基が生成する。なお、ウレトンイミン基は、カルボジイミド化工程において加熱が継続されることにより熱分解され、カルボジイミド基と、分子末端のイソシアネート基とが再生し、さらに、分子末端のイソシアネート基に由来するカルボジイミド基が生成する。
【0130】
このようにして、直鎖脂肪族ジイソシアネートのイソシアネート基が、ウレタン基およびカルボジイミド基(さらに、場合によりウレトンイミン基)に変換される。
【0131】
その結果、ウレタン基およびカルボジイミド基を含有し、また、場合によりウレトンイミン基を含有するカルボジイミド変性体が得られる。
【0132】
また、これによって、カルボジイミド変性体を主成分として含むポリカルボジイミド組成物が得られる。また、ポリカルボジイミド組成物は、副成分として、未反応の直鎖脂肪族ジイソシアネートを含有することもできる。直鎖脂肪族ジイソシアネートの含有割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜設定される。
【0133】
また、この方法では、必要に応じて、上記したカルボジイミド化工程において得られたポリカルボジイミド組成物と、アルコール類とを、さらに反応させることもできる。なお、以下において、カルボジイミド化工程の前のウレタン化工程を、第1ウレタン化工程と称し、また、カルボジイミド化工程の後のウレタン化工程を、第2ウレタン化工程と称する場合がある。
【0134】
具体的には、カルボジイミド化工程において得られたポリカルボジイミド組成物が、さらに、分子末端にイソシアネート基を有する場合には、そのポリカルボジイミド組成物とアルコール類とを反応させることにより、分子末端のイソシアネート基をウレタン化することができる。
【0135】
なお、第2ウレタン化工程が実施されると、アルコール類由来の副生成物が多くなり、分子量が急激に増加して流動性が低下し、作業性が低下する場合や、また、水分散組成物における分散性が低下する場合がある。そのため、好ましくは、第2ウレタン化工程を実施せず、第1ウレタン化工程およびカルボジイミド化工程のみを実施する。
【0136】
なお、ポリカルボジイミド組成物の製造方法は、上記に限定されず、例えば直鎖脂肪族ジイソシアネートとカルボジイミド化触媒とアルコール類とを一括配合し、加熱することもできる。
【0137】
また、必要に応じて、ポリカルボジイミド組成物から、例えば、未反応の直鎖脂肪族ジイソシアネート、未反応のアルコール類、低分子量化合物(副生成物)、有機溶媒、カルボジイミド化触媒、ウレタン化触媒などを、蒸留、抽出、ろ過などの公知の方法によって除去することもできる。
【0138】
また、ポリカルボジイミド組成物には、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、例えば、貯蔵安定剤(o-トルエンスルホンアミド、p-トルエンスルホンアミドなど)、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、触媒、顔料、表面調整剤、分散剤、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを、適宜のタイミングで添加することができる。なお、添加剤の添加割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0139】
また、ポリカルボジイミド組成物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0140】
このようにして得られるポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量(g/mol)は、300以上、好ましくは、350以上、より好ましくは、400以上、さらに好ましくは、410以上、とりわけ好ましくは、430以上であり、550以下、好ましくは、530以下、より好ましくは、500以下、さらに好ましくは、480以下、とりわけ好ましくは、460以下である。
【0141】
なお、カルボジイミド当量(g/mol)は、後述する実施例に準拠して、13C-NMRにより測定される。
【0142】
すなわち、カルボジイミド当量(g/mol)は、仕込み比から算出することもできるが、13C-NMRによる実測値が採用される。
【0143】
また、このようなポリカルボジイミド組成物は、ポリオールおよびモノオールを所定割合で含むアルコール類を用いるため、モノオールのみを用いるポリカルボジイミド組成物に比べて、高分子量化されており、低分子量体が低減されている。
【0144】
具体的には、ポリカルボジイミド組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量500以下のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積率が、熱安定性、耐薬品性および外観の向上を図る観点から、例えば、7.0%以下、好ましくは、6.5%以下、より好ましくは、6.0%以下、さらに好ましくは、5.0%以下、とりわけ好ましくは、4.5%以下である。
【0145】
また、ポリカルボジイミド組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量1000以下のピーク面積の、全ピーク面積に対する面積率が、熱安定性、耐薬品性および外観の向上を図る観点から、例えば、12.0%以下、好ましくは、10.0%以下、より好ましくは、9.0%以下、さらに好ましくは、8.0%以下、とりわけ好ましくは、7.0%以下である。
【0146】
なお、面積率は、後述する実施例に準拠して、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の分子量分布を、示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって測定し、得られたクロマトグラム(チャート)における面積比率として、算出することができる。なお、分子量500以下のピーク面積の面積率、および、分子量1000以下のピーク面積の面積率は、標準ポリスチレンの検量線に基づく。
【0147】
そして、分子量500以下のピーク面積の面積率が上記範囲であり、かつ、分子量1000以下のピーク面積の面積率が上記範囲であれば、外観、耐薬品性および熱安定性の向上を図ることができ、とりわけ、樹脂硬化物(後述)の外観の向上を図ることができる。
【0148】
そして、このようなポリカルボジイミド組成物では、原料成分のアルコール類が、ポリオールおよびモノオールを所定割合で含んでいるため、アルコール類がポリオールを含まない場合に比べて、カルボジイミド変性体が高分子量化される。具体的には、直鎖脂肪族ジイソシアネートと、ポリオールを含むアルコール類との反応によりプレポリマーが得られ、そのプレポリマーがカルボジイミド化されるため、比較的高分子量のカルボジイミド変性体が得られる。その結果、ポリカルボジイミド組成物から、耐薬品性に優れる樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0149】
一方、過度にカルボジイミド変性体が高分子量化されると、増粘しやすく、熱安定性に劣る場合がある。これに対して、本発明のポリカルボジイミド組成物において、カルボジイミド変性体は、ポリオールおよびモノオールの割合が調整されているため、適度に高分子量化されるに留まり、熱安定性にも優れる。
【0150】
さらに、上記のポリカルボジイミド組成物は、カルボジイミド当量が、所定割合に調整されているため、外観および耐薬品性に優れる樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0151】
すなわち、上記したポリカルボジイミド組成物は、熱安定性に優れており、さらに、外観および耐薬品性に優れる樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0152】
また、上記のポリカルボジイミド組成物の製造方法によれば、ポリカルボジイミド組成物を、効率よく製造することができる。
【0153】
そして、ポリカルボジイミド組成物は、熱安定性に優れており、さらに、外観および耐薬品性に優れる樹脂硬化物を得ることができるため、樹脂組成物における硬化剤として好適に用いられる。
【0154】
樹脂組成物は、ポリカルボジイミド組成物を含む硬化剤と、カルボキシル基を有する主剤とを含有している。
【0155】
硬化剤は、ポリカルボジイミド組成物を含んでいれば、特に制限されないが、例えば、ポリカルボジイミド組成物が水に分散された水分散液(以下、水分散組成物と称する。)や、ポリカルボジイミド組成物が有機溶媒に溶解された溶液(以下、溶液組成物と称する。)などとして調製される。
【0156】
水分散組成物は、ポリカルボジイミド組成物と水とを含有している。
【0157】
ポリカルボジイミド組成物を水に分散させる方法としては、特に制限されず、ポリカルボジイミド組成物に水を添加し、撹拌する方法や、水にポリカルボジイミド組成物を添加し、撹拌する方法などが挙げられる。好ましくは、ポリカルボジイミド組成物に水を添加する。
【0158】
ポリカルボジイミド組成物と水との割合は、特に制限されないが、水分散組成物におけるポリカルボジイミド組成物(樹脂成分)の濃度(すなわち、固形分濃度)が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0159】
硬化剤が水分散組成物であれば、水系樹脂(主剤)との相溶性の向上を図ることができ、また、外観および耐薬品性に優れた硬化物を得ることができる。また、このような水分散組成物は、上記ポリカルボジイミド組成物を含むため、熱安定性に優れる。
【0160】
溶液組成物は、ポリカルボジイミド組成物と有機溶媒とを含有している。
【0161】
有機溶媒としては、上記した有機溶媒が挙げられ、好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが挙げられる。
【0162】
また、カルボジイミド化工程で使用する溶媒を、溶液組成物の有機溶媒として使用してもよい。例えば、カルボジイミド化工程後において使用した溶媒を、留去することなく、そのまま溶液組成物の有機溶媒として用いることもできる。
【0163】
ポリカルボジイミド組成物を有機溶媒に溶解させる方法としては、特に制限されず、ポリカルボジイミド組成物に有機溶媒を添加し、撹拌する方法や、有機溶媒にポリカルボジイミド組成物を添加し、撹拌する方法などが挙げられる。好ましくは、ポリカルボジイミド組成物に有機溶媒を添加する。
【0164】
ポリカルボジイミド組成物と有機溶媒との割合は、特に制限されないが、溶液組成物におけるポリカルボジイミド組成物(樹脂成分)の濃度(すなわち、固形分濃度)が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0165】
硬化剤が溶液組成物であれば、油系樹脂(主剤)との相溶性の向上を図ることができ、また、外観および耐薬品性に優れた硬化物を得ることができる。また、このような溶液組成物は、熱安定性に優れる。
【0166】
カルボキシル基を有する主剤としては、カルボキシル基を有する水系樹脂、カルボキシル基を有する油系樹脂などが挙げられる。
【0167】
カルボキシル基を有する水系樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有する親水性高分子が挙げられ、具体的には、カルボキシル基を有する親水性ポリエステル樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリアミド樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂(親水性ポリウレタンポリオール)、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂(親水性アクリルポリオール)、カルボキシル基を有する親水性ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン-ポリエチレン(ランダム・ブロック)共重合体、その他、繰り返し単位の炭素数が4以上のポリオレフィン)樹脂などが挙げられる。これらカルボキシル基を有する水系樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0168】
カルボキシル基を有する水系樹脂として、好ましくは、カルボキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂(親水性ポリウレタンポリオール)、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂(親水性アクリルポリオール)が挙げられる。
【0169】
カルボキシル基を有する油系樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有する疎水性高分子が挙げられ、具体的には、カルボキシル基を有する疎水性ポリエステル樹脂、カルボキシル基を有する疎水性ポリアミド樹脂、カルボキシル基を有する疎水性ポリウレタン樹脂(疎水性ポリウレタンポリオール)、カルボキシル基を有する疎水性アクリル樹脂(疎水性アクリルポリオール)、カルボキシル基を有する疎水性ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン-ポリエチレン(ランダム・ブロック)共重合体、その他、繰り返し単位の炭素数が4以上のポリオレフィン)樹脂などが挙げられる。これらカルボキシル基を有する油系樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0170】
カルボキシル基を有する油系樹脂として、好ましくは、カルボキシル基を有する疎水性ポリウレタン樹脂(疎水性ポリウレタンポリオール)、カルボキシル基を有する疎水性アクリル樹脂(疎水性アクリルポリオール)が挙げられる。
【0171】
これらは単独使用または2種類以上併用することができる。
【0172】
主剤および硬化剤として、好ましくは、主剤が水系樹脂であり、硬化剤が水分散組成物である組み合わせが挙げられる。また、好ましくは、主剤が油系樹脂であり、硬化剤が溶液組成物である組み合わせも挙げられる。
【0173】
樹脂組成物として、有機溶媒を低減し、地球環境を保護する観点から、好ましくは、水系主剤と水分散組成物との組み合わせが挙げられる。
【0174】
また、樹脂組成物は、上記した主剤と上記した硬化剤とを含有していれば、特に制限はなく、主剤および硬化剤が個別に用意され、使用時に混合される二液タイプであってもよく、また、主剤および硬化剤が予め混合されている一液タイプであってもよい。
【0175】
樹脂組成物として、好ましくは、二液タイプの樹脂組成物が挙げられる。
【0176】
主剤および硬化剤の含有割合は、それらの総量100質量部に対して、主剤が、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、99.5質量部以下、好ましくは、95.0質量部以下である。また、硬化剤が、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0177】
また、主剤中のカルボキシル基に対する、硬化剤中のカルボジイミド基のモル比が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上、より好ましくは、0.5以上であり、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下、より好ましくは、1.5以下である。
【0178】
また、主剤および硬化剤には、必要に応じて、そのいずれか一方またはその両方に、例えば、エポキシ樹脂、触媒(ウレタン化触媒など)、塗工改良剤、レベリング剤、粘性調整剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、表面調整剤、分散剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
【0179】
また、主剤として、上記したカルボキシル基を有する水系樹脂、および/または、上記したカルボキシル基を有する油系樹脂と、その他の樹脂(例えば、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂など)とを併用することもできる。
【0180】
また、硬化剤として、上記したポリカルボジイミド組成物と、その他の硬化剤(例えば、ポリイソシアネート系樹脂(ブロックポリイソシアネートなど)、エポキシ系樹脂、メラミン樹脂など)とを併用することもできる。
【0181】
そして、このような樹脂組成物では、硬化剤として、上記したポリカルボジイミド組成物が用いられるため、熱安定性に優れ、また、外観および耐薬品性に優れる樹脂硬化物を得ることができる。
【0182】
樹脂硬化物を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、樹脂組成物が一液タイプの場合は樹脂組成物をそのまま、被塗物または被着物に塗布する。また、樹脂組成物二液タイプの場合は主剤および硬化剤を混合して、得られた混合物を、被塗物または被着物に塗布する。そして、樹脂組成物を加熱硬化させることにより、樹脂硬化物が得られる。
【0183】
上記の樹脂組成物では、硬化温度が比較的低温であって、具体的には、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上である。
【0184】
また、硬化時間が比較的短時間であって、具体的には、例えば、1時間以下、好ましくは、30分以下である。また、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上である。
【0185】
また、必要により、加熱硬化された樹脂硬化物を、さらに乾燥させることもできる。
【0186】
そのような場合、乾燥温度は、室温でよく、例えば、10℃以上、好ましくは、15℃以上であり、例えば、40℃以下、好ましくは、30℃以下である。
【0187】
また、乾燥時間は、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上であり、例えば、2時間以下、好ましくは、1時間以下である。
【0188】
そして、得られた樹脂硬化物は、熱安定性に優れる樹脂組成物の硬化物であるため、生産性に優れており、また、外観および耐薬品性に優れる。
【0189】
また、ポリカルボジイミド組成物が、直鎖脂肪族ジイソシアネートを用いて得られているため、そのポリカルボジイミド組成物を用いて得られる樹脂硬化物は、耐光性(耐候性)にも優れる。
【0190】
そのため、樹脂組成物および樹脂硬化物は、コーティング材料、接着材料(接着剤)、粘着材料(粘着材)、インキ、シーラント、成形材料、フォームおよび光学材料、さらには、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコールなどの樹脂を改質する樹脂改質剤、捺染処理剤、繊維処理剤などの各種分野において、好適に用いられる。
【0191】
コーティング材料として用いられる場合には、例えば、プラスチック用塗料、自動車外装用塗料、自動車内装用塗料、電気・電子材料用塗料、光学材料(レンズなど)用塗料、建材用塗料、ガラスコート塗料、木工塗料、フィルムコーティング塗料、インキ塗料、人工および合成皮革用塗料(コート剤)、缶用塗料(コート剤)、紙コート塗料、感熱紙コート塗料などが挙げられる。
【0192】
上記プラスチック用塗料としては、例えば、プラスチック材料(例えば、ポリオレフィン類、ABS、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエステル類およびこれらの複合体などの各種高分子材料)が用いられる成形品用塗料、具体的には、筐体(携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレットなど)用塗料、自動車部品(自動車内装材やヘッドランプなど)用塗料、家庭用電化製品用塗料、ロボット材料用塗料、家具用塗料、文具用塗料、ゴム、エラストマーおよびゲルなどの柔軟な素材用の塗料、アイウエア材料(レンズなど)用塗料、電子機器の光学レンズ用塗料(表面コート剤)などが、挙げられる。
【0193】
また、上記フィルムコーティング塗料としては、例えば、光学用部材(光学フィルム、光学シートなど)用塗料、光学用コーティング材料、繊維用塗料、電子電機材料用塗料、食品パッケージ用塗料、医療フィルム用塗料、化粧品パッケージ用塗料、加飾フィルム用塗料、離形フィルム用塗料などが挙げられる。
【0194】
接着剤としては、例えば、包材用接着剤、電気機器用接着剤、液晶ディスプレイ(LCD)用接着剤、有機ELディスプレイ用接着剤、有機EL照明用接着剤、表示装置(電子ペーパーやプラズマディスプレイなど)用接着剤、LED用接着剤、自動車用内外装向け接着剤、家電用接着剤、建築材料用接着剤、太陽電池バックシート用接着剤、各種電池(リチウムイオン電池など)用接着剤などが挙げられる。
【0195】
また、上記インキ塗料としては、各種インキ(版インキ、スクリーンインキ、フレキソインキ、グラビアインキ、ジェットインキ、捺染インキなど)のビヒクルが挙げられる。
【0196】
なお、ポリカルボジイミド組成物の用途は、上記に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ乳酸などに対する固体耐加水分解防止剤、例えば、ポリエステルポリオールなどに対する液状耐加水分解防止剤、例えば、酸変性ポリオレフィン(マレイン酸変性ポリオレフィンなど)、酸変性ポリオレフィンを水分散したポリオレフィン系エマルション、酸部位を含有するアクリルエマルションなどに対する複合材料、例えば、各種繊維(カーボンファイバー、ガラス繊維など)の収束材、例えば、繊維強化プラスチック(CFRP、FRPなど)の強化材、さらには、サイジング剤、硬化剤などとして、好適に用いることができる。
【実施例
【0197】
次に、本発明を、製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0198】
<IRスペクトル>
ポリカルボジイミド組成物の製造方法におけるカルボジイミド化反応の終了は、下記の装置および条件にてIRスペクトルを測定することにより、確認した。
【0199】
IR測定装置:Perkin Elmer社製Frontier FT-IR
測定法: ATR(反射法)
波数範囲: 4000~400cm-1
分解能 4cm-1
<ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量(g/mol)>
ポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド当量は、13C-NMRの測定結果より実測値を求めた。また、参考値として、仕込み量からのカルボジイミド当量の計算値を求めた。
【0200】
すなわち、下記の装置および条件にて13C-NMRを測定し、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、アロファネート基、ウレタン基との合計1モルに対する、ウレトンイミン基の含有割合を、以下の式により算出した。なお、化学シフトppmの基準として、CDCL溶媒中のテトラメチルシラン(0ppm)を用いた。
装置; ECA-500型(日本電子製)
条件; 測定周波数:125MHz、溶媒:CDCL、溶質濃度:50質量%
測定温度:室温、スキャン回数8500回
繰返し時間:3.0秒、パルス幅:30°(3.70μ秒)
カルボジイミド基(カルボジイミド基内のN=C=N基)の炭素の帰属ピーク
:139ppm
ウレトンイミン基(ウレトンイミン基内のC=O基、C=N基)の炭素の帰属ピーク
:159ppm、145ppm
アロファネート基(アロファネート基内のC=O基)の炭素の帰属ピーク
:154ppm
ウレタン基(ウレタン基内のC=O基)の炭素の帰属ピーク)
:156ppm
(カルボジイミド当量)={(仕込み固形分重量)―(ウレタン基に対する発生した二酸化炭素のモル比率)×(総アルコール仕込みモル数)×44.01}}/{(ウレタン基に対するカルボジイミド基のモル比率)×(総アルコール仕込みモル数)
なお、ウレタン基に対する発生した二酸化炭素のモル比率とウレタン基に対するカルボジイミド基のモル比率は以下のように算出する。
【0201】
(ウレタン基に対する発生した二酸化炭素のモル比率)={(カルボジイミド基の積分値)+(ウレトンイミン基の積分値)}/{(ウレタン基の積分値)+(アロファネート基の積分値)}
(ウレタン基に対するカルボジイミド基のモル比率)=(カルボジイミド基の積分値)/{(ウレタン基の積分値)+(アロファネート基の積分値)}
<面積率>
示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって、以下のGPC測定条件において得られたクロマトグラムにより、全ピーク面積に対するポリスチレン換算分子量500以下のピーク面積の割合と、全ピーク面積に対するポリスチレン換算分子量1000以下のピーク面積の割合とを、それぞれ求めた。
【0202】
なお、後述する実施例1において得られたポリカルボジイミド組成物のGPCクロマトグラムを図1に示す。また、図中において、ピーク番号/保持時間/ピークトップの分子量を、併せて示す。
【0203】
装置;HLC-8320GPC(東ソー社製)
カラム;LF-804(Shodex社製商品名)3本を直列に連結
カラム温度;40℃
溶離液;テトラヒドロフラン
流量;1.0mL/min
検出方法;示差屈折率
標準物質;標準ポリスチレン
製造例1(ペンタンジイソシアネートの製造)
国際公開パンフレットWO2012/121291号の明細書における実施例1と同じ操作にて、99.9質量%の1,5-ペンタンジイソシアネート(以後PDIと略する場合がある。)を得た。
【0204】
製造例2(ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノメチルエーテルの製造)
開始剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒として水酸化カリウム(以下、KOH)をそれぞれ用いて、温度110℃、最大反応圧力0.4MPaゲージ(G)において、ポリオール中のエチレンオキシドとプロピレンオキサイドとの質量比が50:50となるように、水酸基価(以下、OHV)が102mgKOH/gまで、これらのアルキレンオキシド(エチレンオキシドおよびプロピレンオキサイド)をランダム付加重合させ、粗製ポリオールを調製した。
【0205】
次いで、窒素雰囲気下、80℃に加熱した粗製ポリオールに対し、イオン交換水、および、KOHに対して1.05当量のリン酸(75.2重量%の水溶液の形態)を添加し、80℃において、2時間中和反応させた。
【0206】
次いで、昇温しながら、減圧脱水を開始し、圧力が40kPaの時点で、吸着剤を添加した。最終的に、105℃、1.33kPa以下の条件で3時間加熱減圧処理した。
【0207】
その後、ろ過することにより、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノメチルエーテルを得た。
【0208】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノメチルエーテルの、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基の総量に対するオキシエチレン基の割合(以下、EO比率とする。)は、50質量%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定された数平均分子量は、550であった。
【0209】
このポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル(EO比率50質量%、分子量550)を、モノオールAとした。
【0210】
実施例1
・ポリカルボジイミド組成物の製造
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、製造例1で得られたペンタメチレンジイソシアネート(PDI)を100.0質量部、PTG-250(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量250)を16.2質量部、モノオールA(製造例2で得られたポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル(EO比率50質量%、分子量550))を71.4質量部、装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、4時間撹拌した(ウレタン化工程)。
【0211】
続けて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を758.3質量部、3-メチル-1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシド(MPPO)を2.0質量部装入し、還流下(150℃)で撹拌した(カルボジイミド化工程)。反応が完結したことは赤外吸収(IR)スペクトル測定にて、イソシアネート基の伸縮振動由来の2260cm-1付近の吸収ピークがほぼ消失したことにより確認した。
【0212】
反応終了後、80℃まで冷却し、PMAの残存率が2%以下になるまで、減圧下でPMAを留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を13C-NMRで測定した結果、カルボジイミド当量は450g/mol(計算値は317g/mol)であった。
【0213】
また、得られたポリカルボジイミド組成物の一部を取り出し、25℃におけるE型粘度を測定した結果、4000mPa・sであった。
【0214】
・ポリカルボジイミド組成物の水分散体(水分散組成物)の調製
ポリカルボジイミド組成物をフラスコに入れ、樹脂固形分が40%になるように蒸留水を徐々に加え、撹拌することで、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を得た。
【0215】
・水系の樹脂組成物の調製
得られたポリカルボジイミド組成物の水分散体を硬化剤とした。主剤としてポリウレタンディスパージョン(固形分30質量%、固形分のカルボキシル基当量1122g/mol)を用い、硬化剤中のカルボジイミド基と主剤中のカルボキシル基の当量比が0.5となるように混合し、樹脂組成物を調製した。
【0216】
実施例2
PTG-250を21.2質量部、モノオールAを62.0質量部、PMAを740.8質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0217】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0218】
実施例3
PTG-250を9.5質量部、モノオールAを83.9質量部、PMAを781.9質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0219】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0220】
実施例4
PTG-250の代わりにPTG-650(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量650)を35.1質量部、モノオールAを59.5質量部、PMAを786.4質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0221】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0222】
実施例5
PTG-250の代わりにPTG-850(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量850)を45.9質量部、モノオールAを59.5質量部、PMAを829.6質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0223】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0224】
実施例6
PTG-250の代わりにPPG-280(ポリプロピレングリコール、分子量280)を18.2質量部、PMAを766.1質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0225】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0226】
実施例7
モノオールA(製造例2で得られたポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル(EO比率50質量%、分子量550))とイソブタノールとをモル比3:1の割合で混合した。この溶液を、モノオールBとした。
【0227】
そして、モノオールBを55.9質量部、PMAを696.6質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1(ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル(EO比率50質量%、分子量550)とイソブタノールがモル比で3:1に混合された溶液を表中でモノオールBと表記する)に記載する。
【0228】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0229】
実施例8
PTG-250の代わりに1,10-DD(1、10-デカンジオール)を11.3質量部、モノオールAを71.4質量部、PMAを738.6質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0230】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0231】
実施例9
PTG-250の代わりに1,6-HD(1、6-ヘキサンジオール)を7.7質量部、PMAを724.1質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0232】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0233】
実施例10
PTG-250の代わりにPTG-1500(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量1500)を69.5質量部、モノオールAを51.0質量部、PMAを889.9質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0234】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0235】
実施例11
PTG-250の代わりにPCL 303(プラクセル 303、ポリカプロラクトントリオール、分子量300、ダイセル社製)を13.0質量部、PMAを745.3質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0236】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0237】
実施例12
PDIの代わりにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を100.0質量部、PTG-250を14.9質量部、モノオールAを65.4質量部、PMAを729.1質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0238】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0239】
実施例13
PMAを1724.1質量部、MPPOを4.0質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0240】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0241】
実施例14
・ポリカルボジイミド組成物の製造
PTG-250を20.3質量部、モノオールAの代わりにイソブタノール(iBA)を12.0質量部、PMAを537.2質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0242】
・ポリカルボジイミド組成物の溶液(溶液組成物)の調製
ポリカルボジイミド組成物をフラスコに入れ、樹脂固形分が40%になるように酢酸ブチルを徐々に加え、撹拌することで、ポリカルボジイミド組成物の溶液を得た。
【0243】
・溶剤系の樹脂組成物の調製
得られたポリカルボジイミド組成物の溶液を硬化剤とした。主剤としてアクリル樹脂(固形分50質量%、固形分のカルボキシル基当量2004g/mol)を用い、硬化剤中のカルボジイミド基と主剤中のカルボキシル基の当量比が0.5となるように混合し、樹脂組成物を調製した。
【0244】
比較例1
PTG-250を0.0質量部、モノオールAを101.9質量部、PMAを815.7質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0245】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0246】
比較例2
PTG-250を24.9質量部、モノオールAを54.9質量部、PMAを727.35質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0247】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製したが、均一な水分散体が得られなかった。
【0248】
比較例3
PTG-250を27.0質量部、モノオールAを118.9質量部、PMAを991.8質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0249】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0250】
比較例4
PTG-250を8.1質量部、ユニオックスM550(ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、分子量550、日本油脂社製)を35.7質量部、PMAを583.1質量部使用した以外は実施例1と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の分析値を表1に記載する。
【0251】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0252】
比較例5
・ポリカルボジイミド組成物の製造
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を200.0質量部、3-メチル-1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシド(MPPO)を2.0質量部、封入した。窒素を導入しながら、170℃で7時間反応させ、1分子にカルボジイミド基を3個有し、両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミドを得た(カルボジイミド化工程)。
【0253】
次に、撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、得られたカルボジイミドを100.0質量部、PTG-250を13.6質量部、ユニオックスM550(ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、分子量550、日本油脂社製)を60.0質量部、封入し、窒素を導入しながら、120℃で反応させた(ウレタン化工程)。反応が完結したことは赤外吸収(IR)スペクトル測定にて、イソシアネート基の伸縮振動由来の2260cm-1付近の吸収ピークがほぼ消失したことにより確認した。
【0254】
・ポリカルボジイミド組成物の水分散体(水分散組成物)の調製
得られたH12MDI由来のポリカルボジイミド組成物をフラスコに入れ、80℃に加温しながら、樹脂固形分が40%になるように蒸留水を徐々に加えた。5分間撹拌した後に冷却することで、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を得た。
【0255】
・水系の樹脂組成物の調製
得られたポリカルボジイミド組成物の水分散体を硬化剤とした。主剤としてカルボキシル基を有する親水性ポリウレタン(ポリウレタンディスパージョン、固形分30質量%、固形分のカルボキシル基当量1122g/mol)を用い、硬化剤中のカルボジイミド基と主剤中のカルボキシル基の当量比が0.5となるように混合し、樹脂組成物を調製した。
【0256】
比較例6
特開2018-104605の合成例5に記載の方法に従って、ポリカルボジイミド組成物を合成し、また、各実施例と同様にして、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製した。
【0257】
すなわち、撹拌器、温度計、還流管および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を100.0質量部、3-メチル-1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシド(MPPO)を0.5質量部、封入した。窒素を導入しながら、180℃で7時間反応させ、両末端にイソシアネート基を有するカルボジイミドを得た(カルボジイミド化工程)。
【0258】
次に、撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、得られたカルボジイミドに、ユニオックスM550(ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、分子量550、日本油脂社製)を86質量部(カルボジイミドの両末端イソシアネートに対して、0.5当量)封入し、150℃で1時間反応させた後、PEG-1000(ポリオキシエチレングリコール、重量平均分子量1000)を77質量部加えて、さらに1時間反応させた(ウレタン化工程)。反応が完結したことは赤外吸収(IR)スペクトル測定にて、イソシアネート基の伸縮振動由来の2260cm-1付近の吸収ピークがほぼ消失したことにより確認した。
【0259】
・ポリカルボジイミド組成物の水分散体(水分散組成物)の調製
得られたH12MDI由来のポリカルボジイミド組成物をフラスコに入れ、80℃に加温しながら、樹脂固形分が40%になるように蒸留水を徐々に加えた。5分間撹拌した後に冷却することで、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を得た。
【0260】
・水系の樹脂組成物の調製
得られたポリカルボジイミド組成物の水分散体を硬化剤とした。主剤としてカルボキシル基を有する親水性ポリウレタン(ポリウレタンディスパージョン、固形分30質量%、固形分のカルボキシル基当量1122g/mol)を用い、硬化剤中のカルボジイミド基と主剤中のカルボキシル基の当量比が0.5となるように混合し、樹脂組成物を調製した。
【0261】
<評価>
<安定性試験>
・熱安定性試験
得られたポリカルボジイミド組成物1.0gを10mLのスクリュー瓶に入れて、窒素ブローをした後に、スクリューキャップで蓋をし、40℃にて保管し、流動性を観測した。評価の基準を下記する。
3:2週間未満で流動性は消失しなかった。
2:1週間以上2週間未満で消失した。
1:1週間未満で流動性は消失した。
【0262】
<塗膜の評価>
250ミルのドクターブレードを用いて、樹脂組成物を標準試験板(JIS-G-3303 SPTE)に塗布した後、80℃で5分間および10分間乾燥させ、さらに室温で1時間乾燥させ、樹脂硬化物からなる塗膜を得た。得られた塗膜を下記の方法で評価した。なお、比較例2は水分散体が得られなかったので、評価しなかった。
【0263】
・塗膜外観
塗膜(80℃5分乾燥塗膜)の外観を目視で評価した。評価の基準を下記する。
5:皺はほとんど見られなかった。
4:一部に皺が見られた。
3:多数の皺が見られた。
2:皺や割れが見られた。
1:皺や割れが多く、後述の耐溶剤性の評価が出来なかった。
【0264】
・耐溶剤性(耐薬品性)
塗膜(80℃5分乾燥塗膜、および、80℃10分乾燥塗膜)に、水系の樹脂組成物の場合には、メチルエチルケトン、溶剤系の樹脂組成物の場合には50%エタノール水溶液を浸透させたガーゼを、50gの荷重で押し当てながら擦り、塗膜が割れるまでの回数を測定した。評価の基準を下記する。
5:350回以上で塗膜が割れた
4:300回以上350回未満で塗膜が割れた。
3:250回以上300回未満で塗膜が割れた。
2:100回以上250回未満で塗膜が割れた。
1:100回未満で塗膜が割れた。
【0265】
【表1】
【0266】
【表2】
【0267】
【表3】
【0268】
【表4】
図1